○第二讀會第十二回
明治十八年七月廿八日
欠席 細川委員
仝 箕作委員
仝 渡邊委員
仝 周布委員
仝 岸本委員
仝 河上委員
午前第九時開會
（委員長）
第十二條ノ第二項ヲ第三十六條及第百五十四條ノ次ニ分載スル事ニ決セシカ其文案ハ本尾委員ニ於テ起稿スヘシ
（本尾委員）
諾
○第十三條
（委員長）
本條ハ別段修正スルニ及ハサルカ如シ
（本尾委員）
「且登記ノ爲メ」トアルハ我邦文ニ於テハ不用ナルカ如シ
（鶴田委員）
然リ「登記ノ時」トセハ有用ナラン歟
（委員長）
「登記ノ爲メ」ノ數語ヲ削除スヘシ
（長森委員）
本條ニ第二十七條ニ揭タル裁判所トアリ是レ登記公吿ヲ掌ル所ヲ指スナリ先回ヨリ種々論議アリシカ登記ハ裁判所ヲシテ管理セシムルカ又ハ郡區役所ヲシテ管理セシムルカ之ヲ決定セサレハ第二十七條云々ヲ修正スルニ由ナシ就テハ今日之ヲ議決セラルヽヤ又ハ第二十七條ニ至リ議決スルコトヽ爲スヤ
（委員長）
第二十七條ニ至リ裁判所ト爲スカ又ハ郡區役所ト爲スカヲ議決スルコト丶セン
○本條ハ「登記ノ爲メ」ヲ削除シ他ハ原案ニ決ス
○第十四條
（鶴田委員）
廣吿ニ社印ヲ捺スヘシトアリ然レトモ廣吿ハ重モニ新聞紙ヲ以テスルニ依リ新聞紙ニハ捺印スルヲ得サルナリ
（委員長）
然リ「廣吿」ヲ削除スヘシ
（長森委員）
公報トハ如何
（本尾委員）
公報トハ總會ニ差出ス報吿書ノ如キモノヲ云フ
（塩田委員）
然ラハ之ヲ「報吿」トセハ如何（之ニ決ス）
（本尾委員）
爲替手形ト云フトキハ振出手形ヲ包含セサルナリ然レトモ本條ノ精神ハ振出手形ニモ亦捺印セシムルノ意ナリ
（鶴田委員）
然ラハ單ニ之ヲ「手形」ト爲シ兩種ノ手形ヲ包含セシムヘシ（之ニ決ス）
○本條ハ「公報」ヲ「報吿」ニ改メ「廣吿」及ヒ「爲替」ノ語ヲ削除ス他ハ原案ノ儘ニ決ス
○第十五條
（長森委員）
第一項ハ「會社ハ社名ヲ以テ財產ヲ所有シ契約ヲ爲シ又ハ原吿被吿トナルモノトス」トセハ如何
（鶴田委員）
特別ノ財產ト云ヒ又動產不動產ト云フカ如キハ少シク錯雜スルノ冒愛ヒアリ
（本尾委員）
不動產ノコトヲ揭ケタルハ昔日ハ會社不動產ヲ所有スルコトヲ得サリシ故ニ特ニ之ヲ記載シタルナラン然レトモ我邦ニ於テハ斯ル舊慣モナク又邦文ニテ「財產ヲ有シ」トセハ不動產ヲモ包含スルヲ以テ特別ニ不動產云々ヲ揭クルニ及ハサルナラン歟
又本條殊ニ以下ハ上文ヲ說明スルニ止ルモノトス尤モ長森委員修正ノ如ク「財產ヲ有シ」トセハ其內ニハ權利義務及債負債及動產不動產云々ヲ包含スルニ依リ差支ナシト雖モ「契約ヲ爲シ」ノ上ニ「總}テノ」語ヲ冠セハ完全ナルヘシ
又長森委員ノ修正ニ「社名ヲ以テ」トアルハ三百代言者流ニ解釋ヲ下ストキハ少ク不都合ヲ免レサルヘシ何トナレハ契約書ニ社名ヲ脆シタルトキハ之ヲ會社ノ取引ニアラスト云フヲ得ヘケレハナリ故ニ其名義ヲ以テトセハ如何
（鶴田委員）
原吿又ハ被吿トナルヲ得ヘシトアリ是レ聽任法ノ記載方ニ依ルト雖トモ其精神ハ原吿又ハ被吿トナルモノトスト云フニアルナラン
（本尾委員）
然リ「獨立シテ權利ヲ有シ義務ヲ負フ」ヲ「其名義ヲ以テ權利ヲ有シ義務ヲ負フ」トシテハ如何
（委員長）
「會社ハ獨立シテ特別ノ財產」トセハ如何
（鶴田委員）
然ルトキハ普通ノ財產トハ如何ノ疑ヲ生スルノ恐レアリ
（本尾委員）
委員長ノ意ハ特別ノ文字ヲ冠シ社員ノ財產ト會社ノ財產トヲ判然區別セシメサルトスルニ在ルナラン
（鶴田委員）
左ノ如ク修正セハ如何
「會社ハ獨立シテ財產ヲ所有シ其名義ヲ以テ契約ヲ爲シ權利義務ヲ生シ又原吿被吿ト爲ルモノトス」
（塩田委員）
「會社ハ社名ヲ以テ權利ヲ有シ義務ヲ負ヒ又原吿被吿ト爲ルモノトス」トセハ契約ノ語ヨリ意味廣ク義務ヲ負ヒノ中ニハ契約又ハ準契約ニテ負フコトモ包含スルヲ得ヘシ
（鶴田委員）
「會社ハ獨立シテ自己ノ財產ヲ所有シ其名義ヲ以テ權利ヲ有シ義務ヲ負ヒ又原吿被吿ト爲ルモノトス」トセハ如何（之ニ決ス）
（長森委員）
第二項裁判管轄ノ上ニ「通常」ノ語ヲ冠セル理由如何
（本尾委員）
土地ニ關スル裁判管轄ノ如キ特別ノ裁判管轄ヲ取除キ普通ノ管轄ヲ云フナリ
（長森委員）
「會社通常ノ裁判管轄ハ其住所ヲ管轄スル」云々トセハ如何（之ニ決ス）
（本尾委員）
第十六條ヨリ第二十四條迄ハ先般附則中ニ移載スルコトニ決セシヲ以テ直ニ第二十五條ノ議事ニ着手スルヤ
（委員長）
然リ
○本條ハ左ノ如ク修正ヲ加ヘラレタリ
第十五條會社ハ獨立シテ自己ノ財產ヲ所有シ其名義ヲ以テ權利ヲ有シ義務ヲ負ヒ又原吿被吿ト爲ルモノトス
會社通常ノ裁判管轄ハ其住所ヲ管轄スル裁判所ニ屬スルモノトス
○第二十五條
（本尾委員）
本條中「其業體中ニ行ハルル慣例ニ從ヒ」トアルハ一己商人ニ對シテハ不可ナカルヘシト雖トモ會社ニ至テハ寬ニ過キテ反テ取締上不都合ヲ生スルノ恐レナシトセス故ニ獨逸商法第二十八條ノ精神ヲ採用シテハ如何
（委員長）
獨乙商法ノ精神ハ如何
（本尾委員）
獨法第二十八條ニ「商人ハ帳簿ヲ製シ商業及ヒ財產ノ現狀ヲ明知スルコトヲ得ヘキ記載ヲ爲スノ義務アルモノトス」トアリ
（委員長）
其文ヲ本條ノ冒頭ニ挿入スルヲ可トス「兩ナカラ之レカ爲メニ設ケタル帳簿ニ記入ス可シ」トハ如何
（本尾委員）
財產目錄及貸借對照表ヲ製シタルトキハ共ニ之ヲ特別ノ帳簿中ニ記入シ置クヘシト云フニ在リ
（委員長）
此ニ表ハ記入後如何トスルヤ
（本尾委員）
會社ニ於テ保存スルモノトス
（鶴田委員）
保存ノ爲メ記入スルナレハ單ニ「財產目錄及對照表ヲ製シ之ヲ保存スヘシ」トセハ可ナルヘシ
（長森委員）
「每年度ノ初三ケ月」ト修正セハ如何（之ニ決ス）
（本尾委員）
「兩ナカラ之カ爲メ設ケタル」ヲ「共ニ之ヲ別冊ノ」ト修正シテハ如何
（長森委員）
四季又ハ每半年云々トアルヲ以テ前項ノ每年度初メノ三ケ月云々トニ對シ差支ナキヤ尤モ第一項ハ一ケ年ヲ以テ一年度トシ第二項ハ四季又ハ每半年ヲ以テ年度ト爲スモノト見レハ不可ナキカ如シ
（委員長）
四季ニ利足又ハ益金ヲ配當スルノ會社モ一年ニ兩度此ニ表ヲ作ルモノナルヤ又ハ四度作ラサルヘカラサルヤ
（本尾委員）
四季ノモノト雖モ一ケ年ニ兩度此ノニ表ヲ作ルヲ以テ可ナルノ精神ナリ
○本條ハ左ノ如ク修正セラレタリ
第二十五條會社ハ帳簿ヲ備ヘ其商業及財產ノ現狀ヲ明知シ得ヘキ記載ヲ爲スノ義務アルモノトス又開業ノ時及每年度初ノ三ケ月內ニ總財產ノ目錄並ニ貸方借方ノ對照表ヲ製シ共ニ之ヲ別冊ノ帳簿ニ記入ス可シ
四季又ハ每半年ニ利足又ハ益金ヲ社員ニ配當スル會社ハ每半年ニ財產目錄及貸借對照表ヲ製シ前項ノ規定ヲ履行ス可シ
○第二十六條
（委員長）
本條ノ規定ヲ遵奉セサルトキハ罰アリヤ
（本尾委員）
特ニ本條ニ對シ設ケタル罰則ナシト雖モ總テ本案ノ命令的ノ條ニ背犯シタルモノヲ罰スルノ條アルニ依リ其條ニ照シテ處斷スルナリ
第十二條ノ第二項及第三項ヲ第三十六條及第百五十四條ニ分載スルノ文案ハ次回ニ提出スヘシ
○本條ハ左ノ如ク修正セラレタリ
第二十六條帳簿ハ其記載終尾ヨリ十年間保存シ亡失損傷セサル爲メ注意ヲ加フ可シ
于時正午第十二時閉會