旧商法(明治23・26年)

会社条例編纂委員会 商社法第二読会筆記 第11回

参考原資料

備考

  • 未校正のテキストデータです.
○第二讀會第十一回
欠席 箕作委員
仝  渡邊委員
仝  周布委員
○第十二條
(本尾委員)
先回缺席アリシ各員ノ爲メ=應本條第二項ノ一地方トアル精神ヲ陳シ置クヘシ此一地方トハ一地方官廳トヲ云フニアラスシテ東京又ハ大坂若クハ橫濱ト云フカ如キ一區域ヲ指示スルモノナリ然ルニ河上委員ノ意見ハ一府縣管內トセサレハ到底取締上其目的ヲ達スルコト能ハサルヲ以テ原案ノ精神ト異ナリト雖モ一府縣管內ト定メンコトヲ希望セラルルナリ
(岸本委員)
先回ニモ辯シタル如ク之ヲ一地方トナシ區域ヲ設クルハ實ニ至難ナルモノトス好シヤ之ヲ定ムルモノトスルモ總則ハ合名合資株式會社共ニ遵守スルノ規定ナレハ此ニ之ヲ設クルトキハ皆俱ニ之ヲ守ラサルヘカラサルナラン故ニ本項ハ之ヲ削除シ合名株式各別ニ揭載シ合名合資ニハ一管內ニ於テハ同名ノ社名ヲ設クルモノハ一方ハ之ヲ改メシムルコトニナシ株式ハ全國ニ於テ同名ヲ禁スルモノトナサハ雙方其權衡ヲ得ルナラン實ニ株式ノ爲メ區域ヲ廣フセントスルトキハ合名ニ差支ヘ之ヲ狹小ニシテ合名ニ適當セシメントスルトキハ株式ニ不都合ヲ生ス可シ故ニ之ヲ何方ニ該當セシメントスルトキハ各章ニ分揭セサレハ其目的ヲ達スルコト能ハス故ニ本條中ニハ揭ケサルヲ可トス而シテ登記ハ裁判所ニ於テ取扱フモノトナサンカ然ルトキハ同名ヲ調査スルニ非常ノ困難アルノミナラス或ハ細密ニ調査シ能ハサル事情ナキニモアラサルヘシ故ニ此等ノコトハ直ニ農商務省ノ管轄ニ歸セシムルヲ可トス然ルトキハ充分ニ其目的ヲ達スルヲ得ルニ至ラン
(鶴田委員)
若シ之ヲ一地方トナサンニ登記ヲシテ裁判所ノ管理ニ屬セシムルトキハ裁判所管轄內ト見認メサルヲ得サルニ至ラン
(本尾委員)
岸本委員ノ說ノ如ク株式合名ノ各章ニ分揭シ合名合資兩會社ハ一地方管轄內ニ於テ同名ナルヲ得ストシ株式會社ハ全國內同名ナルヲ禁スト爲スヲ可トセンカ如何トナレハ株式會社ハ何レノ場合ト雖モ皆中央政府ノ許可ヲ得サル可カラサレハナリ而シテ登記公吿ハ裁判所ニ於テ之ヲ取扱ノ精神トシテハ如何
(岸本委員)
先ツ登記ハ何廳ニ於テ取扱ハシムル力ヲ決定セサレハ單一ニ府廳管內トスルモ實際不都合アラソ之ヲ始審廳ノミニ委スルヤ又ハ支廳治安廳ニモ登記セシムルカ之ヲ支廳治安廰ニ於テモ取扱ハシムルトセハ隨分困難ナルモノト信セリ
(本尾委員)
登記公吿ハ始審裁判所ニテ取扱ハシムルモノトシテ可ナラン然ルニ社名ハ一地方管轄內ニ於テ同一ナルヲ得ストシ而シテ登記ハ始審廳ニテ取扱フモノトスルトキハ一地方管轄內ニ數多ノ始審廳アルトキハ登記ノ際同管轄內ニ同一ノ社名存在スルヤ否ヲ調査スルニ不都合ナラントノ問題アルモ是決シテ差支ナカル可シ例之ハ一府縣內ニ四ケ所ノ登記所アラソニ甲登記所ニ本尾會社ノ登記ヲ願出ルトキハ外三ケ所ニ同名ノ無有ヲ取調ヘサルヲ得スト雖モ空シク登記ヲ猶豫スルノ理ナキヲ以テ卽日ニ登記ヲ爲シ而シテ果シテ他ノ三ケ所ニ於テ同名ノモノナキトキハ其登記ハ効力ヲ得ルモ若シ他ノ登記所ニ於テ既ニ同名ノ登記アルトキハ後ノ登記ヲ無効トシテ更ニ他ノ社名ヲ屆出シムルモ別ニ不都合ナカルヘシト信ス
(岸本委員)
本尾委員ノ說可ナリト雖モ登記役所ハ獨立廳ニアラサレハ登記役人モ登記事務ヲノミ取扱フヲ得ス裁判所ノ事務兼テ繁雜ナルニ尙繁雜ヲ加フルニ至リ或ハ其通知方等ニ付間違ナシトハ云フヲ得サルヘシ就テハ可成ハ繁雜ヲ避ケテ簡便ナル方法ヲ求メサルヘカラス
舊商法委員ノ草案ニハ社名ハ法律ヲ以テ同一ナルヲ禁セスシテ人民ノ意思ニ任シ同名アルモ互ニ之レカ故障ヲ申立テサル以上ハ官之ニ關涉セストセリ此法實際ニ便宜ナルノミナラス登記官ノ手數ヲ省略スルコトモ亦大ナリトス本員ハ此精神ヲ以テ改案アランコトヲ希望ス
(本尾委員)
本法ノ如キハ私法ナルヲ以テ可成丈人民相互ノ意思ニ放任スルヲ可トストノ說亦一理アリト雖モロエスレル氏ノ所論ハ初メヨリ法律ヲ以テ社名ノ同一ナルヲ禁スルハ取締上必用ナリトセリ如何トナレハ之ヲ人民相互ノ意思ニ任スルトキハ甲ハ乙ヲ欺カントシ丙ハ丁ヲ凌カントシテ之ヲ取締ルニ困難ヲ生スルノミナラス又無用ノ裁判ヲ煩ハスニ至ルノ患アレハナリト
(河上委員)
本員ノ考フル所ニ依レハ法律ヲ以テ同名ノコトヲ禁スルヲ可トス先般發行アリシ商標條例ト同一ノ觀アルヲ以テ成ルヘク法律上ヨリ禁スル方宜シカルヘシ
(細川委員)
異名ニシテ訓解稱呼ヲ同フスルモノハ差支ナキヤ例之ハ順天堂ヲ遒天堂ト書スカ如シ
(本尾委員)
獨逸商法ニ於テハ同社名及ヒ紛ハシキ社名ヲ付スルコトヲ禁セリ故ニ順天堂ヲ遒天堂トナスカ如キハ勿論禁止スルモノトス
(細川委員)
獨逸法ハ何條ニアルヤ
(本尾委員)
第二十條ノ精神卽チ然リ
(委員長)
登記ヲ願出ルトキハ同名アルヤ否ヲ調査スルノ日限ヲ與ヘサルヘカラス
(本尾委員)
第三十一條二五日內ニ登記公吿ス可シトアルヲ以テ幾分歟其猶豫アルナリ
(長森委員)
實際ハ本法發布ノトキ一時ニ登記スル場合ニ於テハ或ハ困難ナルヘシト雖モ其後ニ至リテハ登記役所ニ於テ互ニ社名ノ調査整頓シアレハ敢テ手數ヲ要スルコトナカルヘシト信ス
(鶴田委員)
登記役所ノ一管轄ト爲サヽレハ實際取調上ニ於テ差支アラン
(岸本委員)
然リ
(細川委員)
獨逸ノ商事裁判所トハ如何
(本尾委員)
昔時ハ特別ノ商事裁判所ヲ置キシカ當今ハ通常裁判廳內ニ商事課ヲ置キテ商事ニ關スルモノハ總テ該課ニ於テ處分セリ若シ始審裁判所トスルトキハ地方ニ於テ不都合ナリトセラルヽナレハ三府五港ノ如キヲ始審廳トシ其他ノ地方ニ在テハ治安廳ト爲スモ妨ケナカラン歟
(細川委員)
然リ治安廳ニ於テ登記ノ一管轄トスルハ可ナリ止タ三府ニ限リ始審廳ニ於テ管轄ストナスハ可ナリヤ
(本尾委員)
區長ニ於テ戶長事務ヲ蒹攝スルト同一理ナレハ敢テ不都合アルコトナシト信ス又登記管轄ノコトハ第二十七條ニ於テ別段ノ布達ヲ以テ定ムルモノト規定シテハ如何
(岸本委員)
登記管轄ハ別段ノ布達ヲ以テ其區域ヲ定メ本條ハ登記管轄內ニテハ同一ナルヘカラストスルノ意ナリヤ
(本尾委員)
然リ
(岸本委員)
一登記管轄內ニ於テ同名ナルヲ得ストセハ株式ハ全國ニ於テ同名ヲ禁スルモノトスルヤ
(本尾委員)
然リ然リト雖モ株式會社モ登記公吿ハ始審又ハ治安裁判所ニ於テ之ヲ爲サヽル可カラス
(岸本委員)
右ノ論ニ決スルトキハ第三十六條ノ二項ト第百五十三條ニ此事ヲ追加セハ如何
(本尾委員)
合名株式各別ニ揭載スルトキハ第三項ニ至リ少シク不都合アルヲ免レス依テ本條ニ雙方トモ包含セシメテ揭載スルトセハ如何則其案文ハ左ノ如シ
株式會社ノ社名ハ全國合名及合資會社ノ社名ハ登錄管內ニ於テ他ノ會社ト同名ナルヲ得ス若シ新設ノ社名既ニ登記ヲ經タル社名ト同一ナルトキハ其社名ト區別セサル可カラス
(鶴田委員)
左ノ如ク修正セハ如何
株式會社ノ社名ハ全國中同一ナル可カラス其他ノ會社ノ社名ハ登記官廳ノ管轄內ニ於テ同一ナル可カラス
(細川委員)
新ニ社名云々ノ一ケ條ヲ設ケ本條ト分離シテハ如何
(岸本委員)
新ニ一條ヲ設クルニハ第三項ノ會社已ニ存在セル營業云々ヲ冒頭ニ置クヲ可トス何トナレハ社名同一ノ事ハ一般ニ通セス如何トナレハ株式ト合名トハ同一ナラサレハナリ
又襲用云々ノコトハ獨逸ニモ明條アリヤ
(本尾委員)
本文ニハ明條ナシ
(鶴田委員)
會社ヲ引受ケタル時其會社社名ノ人ハ此ノ社ト關係ヲ絕チシヲ以テ此條ナキモ舊社名ヲ襲用スルコトヲ得ス故ニ本條ハ削除スルモ可ナリ
(本尾委員)
否之ヲ揭ケサル時ハ引受人ニ於テ假令性名ヲ異ニスルモ從來ノ社名ヲ其儘ニ襲用シ之ヲ改ムルヲ好マサルモノアルヘシ如何トナレハ舊社ノ名聲廣ク衆人ノ記憶ニ存スルナレハ自然取引上ニ於テ之レカ爲メ利益ヲ受クルコト少カラサルヘシ然ルトキハ舊社員ニ於テハ之ニ反シ大ナル迷惑ヲ蒙ムルコトナシトセス故ニ明條ヲ存シテ弊害ヲ未然ニ防カサルヘカラス
(岸本委員)
會社引受人中ニ舊社員ノ性名ト同一ナルモノアルトキハ舊社名ヲ其儘ニ襲用シテ差支ナキヤ
(本尾委員)
此場合ニ於テハ舊社名ヲ其儘襲用スルニアラスシテ假令舊社名ト同一ナルモ新ニ設ケタル社名ナルヲ以テ差支ナカルヘシ
(岸本委員)
本條ハ此㸃ヲ防クカ爲メニ設ケタルニハアラスヤ
(本尾委員)
否然ルニアラサル可シ一己商人ニ於テハ屋號ヲ營業ト共ニ販賣讓與スルコトヲ得ルモ會社ニ於テハ如此場合ト雖モ社名ハ從來ノモノヲ襲用スルヲ許サヽルノ精神ナラン何トナレハ社名中ニ在ル社員ハ責任無限ナレハナリ
(岸本委員)
株式會社ニ就テハ有用ナルカ如シト雖モ合名合資ニ在テハ無用ナルカ如シ
(塩田委員)
襲用ヲ禁スルノ理由ハ如何
(本尾委員)
之ヲ禁スル所以ノモノハ社名中ニ在ル社員ノ責任ハ無限ナラサル可カラサルヲ以テ舊社名ヲ襲用セシムルトキハ其責任ヲ負擔スルノ人異ナルヲ以テナリ且信用上ニ於テ詐僞ヲ行フニ容易ナルコトナキニアラス是之ヲ禁スルノ理由ナリトス
(委員長)
存在セル營業トハ一己人ノコトヲモ包括スルヤ
(本尾委員)
然リ
(細川委員)
他ノ會社ノ營業ヲ引受クルトキハ矢張登記公吿スルノ手續ヲナスモノナルヤ
(本尾委員)
然リ
(河上委員)
本項ハ會社ノ營業ヲ引受タルトキノミヲ指ス方可ナリトス如何トナレハ一己人ニ於テ同一ノ名ヲ以テ營業スルヲ爲シ得サルモノナレハ襲用スルトキハ必ス名ヲ異ニセサルヲ得ス則第三十六條ニ明文アリ依テ本條ハ左ノ如ク改案セハ如何
「既ニ存在セル營業ヲ引受クル會社ハ其舊社名ヲ襲用スルヲ得ス」トセハ如何
(本尾委員)
一己商人ノ營業ヲ會社ニテ引受ル場合モ本條ニ包含スル精神ナリ然レトモ舊社名ト爲ストキハ一己人ノ營業ヲ引受クルノ場合ヲ包含セサルヲ以テ舊名トセハ如何
(鶴田委員)
然リ舊社名トスルトキハ一己人ノ營業ヲ引受クルトキハ其舊屋號ヲ用ユルコトヲ得ヘシト誤解スルノ恐レアリ就テハ其以下ヲ左ノ如ク修正セハ如何
其營業者ノ名號ヲ襲用スルコトヲ得ス
(河上委員)
株式會社ニ於テハ之ヲ他人ニ讓ルハ取締役ノ隨意ナリヤ
(本尾委員)
是レ定款ノ規定如何ニ依ルナラン
(委員長)
襲用云々ノ法文ヲ解釋シ易カラシムル樣修正スルハ容易ナリト雖モ實施スルニ至テハ實ニ困難アルヲ免カレサルヘシ
先本條中ノ第二項ハ株式合名ノ各章ニ分載シ第三項ハ先ツ之ヲ削除シテ後日合名ノ章ニ至リテ揭載スルコトエシ本條ハ初項ト四項ヲノミ揭クルトセソ其文案ハ其時ニ至リ修正スヘシ
(本尾委員)
然ラハ第三十六條ノ項ト第百五十四條ノ項ニ第二項ノ精神ヲ記載スルトセハ如何(之ニ決ス)
○本條ハ第一項ト四項ノ二項ニ決ス