○第二讀會第八回
明治十八年七月十六日
欠席 箕作委員
仝 鶴田委員
仝 周布委員
仝 長森委員
午前第時開會
○第六條
（本尾委員）
第六條ニ對スル質問ハロエスレル氏多忙ニシテ時間ナキヲ以テ未タ之ヲ爲ス能ハサリシ
（委員長）
夫ノ許諾ヲ得ルノ必要ハ何レノ㸃ニアルヤ
（本尾委員）
有夫ノ婦ハ獨立シテ契約ヲ爲シ能ハサル原則ヨリ來ルモノナリ然ルニ社員トナルトキハ獨立シテ契約ヲ爲シ又原吿被吿トナリテ裁判所ニ出頭セサルコトヲ得サルヲ以テ必ス夫ノ許諾ヲ要スルナリ
（岸本委員）
若シ本條ヲ揭クルトキハ原則ヲ云ハスシテ變則ヲ述フルモノタレハ大ニ不都合アルヲ感スルナリ
（本尾委員）
本條ヲ存スルトキハ原案ノ儘ニテハ不充分タルヲ免レス故ニ新ニ一條ヲ設ケ獨立シテ社員トナルハ丁年者ニ限ルモノトシ而シテ本條ノ取除ヲ設ケテハ如何然ラサレハ本條ノ意ヲ解スルコト甚難カル可シ如此ナストキハ丁年者ハ獨立シテ社員タルコトヲ得未丁年者ト雖モ十八年以上ノ者父又ハ後見人ノ許諾ヲ得タルトキハ亦獨立シテ社員トナリ十八年以上以下ノ者ハ渾テ獨立シテ社員トナルコトヲ得サルモ後見人又ハ代理人ノ行爲ニ依テ社員トナルコトヲ得ルニ至ルヘシ
（委員長）
能ク考フル時ハ本條ハ本案中ニ記載スルハ不都合ナルヲ以テ削除スルモ可ナリ併シ後見人ノコトニ關シテ規定ナケレハ或ハ實際不便ナランカ
（細川委員）
然リ極メテ幼少ナルモノニ在テハ不都合ナシト雖モ十三四歲トナリ少シク文字ヲ知ルモノニ在テハ後見人ノ制規ヲ設ケサレハ可ナラサルカ如シ
（岸本委員）
夫ハ商法ニ於テ規定スルヲ可トス尤モ實際法律ヲ不完全ナリトスルニ於テハ特別法ヲ以テ其年限ヲ定ムルモ可ナリ
（本尾委員）
第七條第八條ハ合併シテ討議セラレンコト望ム而シテ右二條中官吏ニ關スル規定ノ精神ハ官吏タル者ハ會社ノ社員又ハ役員タルコトヲ得サルモ株劵ヲ所有スルハ妨ケナシトノ意ナリ本邦ノ現行法ニ於テハ株劵ヲ所有スルモ亦商業ヲ爲スモノトシテ官吏ニ之ヲ許サヽルナリ尤公衆ノ利益トナル營業ヲ爲ス會社ノ株劵ヲ所有スルハ此限ニアラストス是レロエスレル氏ノ草案ト現行法ト異ナル所ナリ
（委員長）
第七條第八條トハ合併スルヲ可トス
（岸本委員）
第七條第八條ハ現行法アルヲ以テ削除ス可シ而シテ其異ナル所ハ現行法中ニ取除ヲ設ク可シ
（委員長）
別段現行法ニ取除ヲ加ヘサルモ若シ伺アルトキハ株主トナルモ差支ナシト指令シテ可ナリ
併シ岸本委員ノ說ヲ以テ一應細削除ノコトヲ質問スヘシ
（本尾委員）
然ラハ第六條モ先回討議ノ旨趣ヲ以テ削除スルコトヲ併セテ質問ス可シ
（委員長）
然リ
○第九條
（岸本委員）
權利義務上ノ關係トアルヲ社員相互ノ權利義務トセハ如何
（本尾委員）
本條ハ第五十條ヲ削リテ之ヲ設ケタルモノニシテ第五十條ニ於テハ社員相互ノ權利義務トアリシモ夫ニテハ意味狹少ナルヲ以テ本條ニ於テ會社ノ權利義務ノ關係トナシタルナリ而シテ本條ニ云フ所ハ會社自己ノ權利義務上ノ關係ハ勿論社員相互間及ヒ會社ト社外人トノ間ノ權利義務ノ關係モ亦包含スルヲ以テ岸本委員ノ修正ノ如クスルトキハ本條ノ意ヲ失フニ至ラン
（岸本委員）
本條ハ佛法第十八條ト同一ナリ
又本條第一項ノ必要ナル㸃ハ何處ニアリヤ
（本尾委員）
凡權利義務ハ契約ニ依テ定マルモノナルモ法律ニ矛盾スル契約ニ依ルヲ得サルヲ以テ法律及契約ニ依ラサルヲ得サルコトヲ示スナリ
（岸本委員）
第一項ニ法律及契約トアルニ據リ第一法律第二契約ニ從フハ明文ニ於テ明瞭ナレトモ併シ法律中ニモ行政法アリ民法アリ商法アリ其他數種ノ法律アリ此等ノ順序ハ如何ニ爲サシムルノ意ナルヤ聊カ疑ナキニアラサルナリ
（本尾委員）
本條ニ於テハ法律ノ順序ヲ示スニアラス其順序ニ付テ商法草按第一條ニ規定スル所アルモ本條例ニハ之ヲ揭ケサルナリ既ニ述ルカ如ク本條ハ單ニ會社ノ權利義務上ノ關係ハ法律ト契約トニ依テ定マルモノナリト云フニ過キス敢テ法律ノ順序ヲ論スルニアラサルナリ
（岸本委員）
本尾委員ノ說ニ從ヘハ「會社ト社員幷ニ社員相互ノ權利義務上ノ關係ハ」ト爲サヽルヘカラス
（本尾委員）
詳悉セントスルトキハ夫ニテモ未タ充分ナラサル可シ何トナレハ其外尙會社自己ノ權利義務上ノ關係アルアレハナリ卽チ會社ハ一ツノ無形人ナリト云フカ如キ是レナリ
（岸本委員）
然ラハ前案ニ「會社自己ノ云々」ヲ挿入スルモ可ナリ尤短縮シテ之ヲ規定スルトキハ會社ノ權利義務上ト云フヲ以テ充分ナリトス
（細川委員）
「關係」ノ文字穩當ナラサルヲ以テ區域ト修正シテハ如何
（本尾委員）
不可ナカル可シ
（委員長）
區域ニテモ充分ナラサレトモ先ツ之ニ改ムヘキカ（之ニ決ス）
（細川委員）
第二項ノ本分トアルハ如何
（本尾委員）
猶「資格」ト云フカ如シ
○本條ハ「關係」ヲ「區域」ニ改メタルノミ
○第十條
（岸本委員）
法律規則ハ一己人ト雖モ遵奉セサルヘカラサルモノナレハ會社モ亦遵守スヘキハ言ヲ竢タサルナリ若シ本條ヲ揭クルトキハ施政上ハ差支ナカルヘキモ立法上大ニ錯雜ヲ生スルノ憂ヒナキニアラサレハ寧ロ之ヲ削除スルノ優レルニ若カサルナリ又縱令ヒ本條ナキモ法律ニ從ハサルヘカラサルハ第一條ノ二項ニ於テモ既ニ明瞭ナリトス尤モ本條全體ヲ削除スルトキハ許可ノ際政府ヨリ特命シタル命令書ヲ遵奉セサルヘカラサルノ一事ヲ脫スルニ依リ此事ハ第一條ノ二項ニ追加スルモ不可ナカル可シ傍ラ以テ削除アランコトヲ望}一ム
（本尾委員）
立法上錯雜ヲ生スルノ恐レハ毛頭ナカル可シ故ニ左ノ如ク修正セハ之ヲ存シテハ如何
會社ハ法律布達及規則ハ勿論許可ノ際政府ヨリ達シタル命令書ニモ服從セサルヘカラス
（細川委員）
第一條ニ法律ニ背戾トアレトモ布達及規則ニ背戾シタルコトヲモ包含ノ意ナルヤ
（本尾委員）
然リ先回ニ於テ議論セシ處ニシテロエスレル氏ニ質問ヲ爲シタルニ第一條ニアル法律ニ背戾スルトハ總テ禁止止セラレタル事業ヲ目的トスルト云フ意ナリト又歐洲ニ於テハ禁止ハ總テ法律ヲ以テ爲スモノナルカ故ニ單ニ法律ニ揭ケタルモ本邦ニ於テ布達及其他ノモノヲ以テ禁止スルコトアルトキハ又布達等モ包含セサル可カラスト
（委員長）
「許可」ハ「免許」ト改ムルヲ可トス
○本條ハ左ノ如ク修正セラレタリ
第十條會社ハ法律布達及規則ハ勿論政府ヨリ免許ニ付キ達スル特別ノ命令ニ服從ス可キモノトス
于時正午第十二時五分閉會