○第二讀會第七回
明治十八年七月十四日
欠席 細川委員
仝 箕作委員
仝 渡邊委員
午前第九時開會
先回ノ續キ
（鶴田委員）
第一條ハ商事會社トハ何々ヲ云フト爲スヨリハ「二人以上資本ヲ集合シ損益ヲ分擔シテ商業ヲ營ムモノヲ商事會社トナス」ト則チ原案ニ爲スヲ可トス如何トナレハ商社ナル語ハ商事會社ノ略語ナルコトヲ知ラシムルニ於テ容易ナリトス
（岸本委員）
先回ニ於テ商事會社ノ義解ヲ付スルハ不用ナリト論セシカ尙熟考スルニ我國ニ於テハ佛ト異ナリ民法ニテ會社ノ義解ヲ揭ケサルニ依リ本案ニ於テ義解ヲ付スルハ實ニ要用ナルコトヲ發見セリ
（委員長）
結合スルノ目的ナルコトヲ加フルヲ以テ可トスヘシ
（鶴田委員）
本案ニハ共同シテト云ヒ分擔シテト云ヒ共ニト云ヒ總テ結合ノ意味ヲ包含シアレハ故ラニ結合ノ文字ヲ加ヘサルモ可ナルカ如シ
（岸本委員）
先回塩田委員ヨリ呈出アリシ修正案中旨趣トアルヲ分擔スルノ約ヲ以テ云々トセハ如何
（本尾委員）
資本ヲ集合シ云々ト云ヘハ已ニ約束ノアリシコトハ明瞭ナルヲ以テ別段ニ其明文ヲ揭クルニハ及ハサルヘシ
（委員長）
然リ佛法ニハ約ノ文字アリト雖モ我邦文ヲ以テスルトキハ要用ナラサルカ如シ
（塩田、長森、岸本委員）
本條ヲ左ノ如ク改正セハ如何
共同シテ商業ヲ營ムカ爲メニ二人以上資本ヲ集合シ損益分擔ノ約ヲ以テ結合スルモノヲ商事會社ト爲ス
（河上委員）
約ノ字不用ナルカ如シ如何トナレハ約トハ將來ニ關係ヲ有スル所ノ文字ナレハ或ハ之レアルカ爲メ現今ニアラスシテ未來ノコトヲ契約スルニ至ランモ亦謀ラレサルナリ故ニ本案ニハ約ノ字削除スル方可ナルヘシ
（委員長）
未來ノコトヲ契約スルコトナシトセサルヘシ然レトモ之ヲ約スルトテ敢テ不都合ヲ生スルコトトナカルヘシ
（河上委員）
若シ未來ノコトヲ約スルヲ不可ナシトセハ一人ハ營業ヲ爲スノ初メニ出金シ一人ハ後日ニ至リ出金センコトヲ契約スルニ至ルヘシ
（岸本委員）
先ニ共同ノ文字ヲ入ルニヲ可トナシ修正案ヲ呈シタレトモ尙熟考スルトキハ全ク不用ナルカ如シ何トナレハ該文字ナキモ法文ニ於テ明瞭ナレハナリ
（長森委員）
商業ヲ營ムトノミニテハ假令ハ甲乙ノ二人アリテ甲ナルモノハ漁船問屋ヲ營ミ乙ナルモノハ反物商ヲ業トシ而シテ其損益ニ至テハ共ニ分擔スルノ契約ヲ爲スモ可ナルカ如シ然レトモ本條ハ同一ノ事業ヲナサシムルモノナレハ該文字ハ必ス挿入シ置カサルヘカラス
（周布委員）
本員モ共同ノ文字ハ不用ナリト信ス如何トナレハ二人以上資本ヲ集合シトアレハ一人別ニ商業ヲ營ムコトヲ得サルハ自カラ明瞭ナレハナリ
（鶴田委員）
凡會社トハ登記公吿ノ濟マサル以前ニ於テハ假令社員間ノ契約ハ成リタリトモ會社ト爲スコトヲ得サルモノトス
（塩田委員）
然リ若登記公吿前會社ニ於テ他人ト爭論ヲ生シタル時ハ裁判所ニ於テハ無論會社トナサス一己人ノ契約ト認定シテ判決ヲ下タスナラン
（岸本委員）
登記公吿ヲ爲サヽルモ會社ハ成立ス可シ故ニ登記公吿前ニ他人ト取引ヲ爲シタルトキハ假令會社無効トナルモ該社員ハ他人ニ對シ會社タルノ義務ヲ負擔セサルヘカラス
（本尾委員）
登記公吿前ニ在テハ社員間ノ契約ハ成立スルモ社外ニ對シ未タ會社ハ成立セサルナリ故ニ登記公吿前ニ會社ノ名義ヲ以テ他人ト取引ヲ爲スヲ得サルナリ（第四十一條）若シ登記公吿前ニ取引ヲ爲シタルトキハ會社トシテ其義務ヲ負擔スルヲ要セスシテ之ニ對シ民法上ノ義務ヲ負フニ止マルナリ然レトモ登記公吿ノ濟タル上ハ會社トシテ其義務ヲ負フモノナリ
（河上委員）
資本又ハ結合ノ文字ハ會社ノ性質上ヨリ稱スルモノナルヤ
（鶴田委員）
性質上ヨリ爲スモノカ又ハ手續上ヨリナスモノナルカ何レニシテモ二人以上資本ヲ集合シ損益ヲ分擔シテ共ニ商業ヲ營ムモノヲ商事會社トストアリテハ登記公吿セサルモ商事會社ハ成立スルモノヽ如シ
（岸本委員）
登記公吿ハ契約ノ一原素ナルヤ否ヲ討究セサルヘカラス
（本尾委員）
登記公吿ハ社員間ノ契約ノ一要件ニアラサルモ會社設立ノ要件タル疑ヒナキナリ
（鶴田委員）
實際營業ヲ爲サヽルモ會社ハ成立チシモノナルヤ
（岸本委員）
會社契約ハ雙方ノ承諾ノミヲ以テ成立スル契約ナルヲ以テ實際ニ營業ヲ爲サヽルモ契約アルトキハ契約ハ已ニ成立チシモノト爲ス之ニ反シ實踐契約卽チ附托質入等ノ如キ契約ハ現在其物件ノ取引ヲ爲サヽルトキハ其契約成立タサルモノトス舊委員ニ於テ撰定シタルモノニハ少シク嚴ナリシカ知ラサレトモ契約ノミナラス公正證書ヲ得サレハ成立タストセリロエスレル氏ハ佛法ノ主義ニ依テ本條ヲ設ケシモノナランカ故ニ契約ハ社員間ニ成立ツモノナリト雖モ第三者ニ對シテハ登記公吿ナキヲ以テ無論効力ナキモノトセリ
（委員長）
登記公吿ヲ願出ルニハ金員ヲ募集セシ後ナリヤ
（本尾委員）
株式會社ニ於テハ百分ノ二十五ヲ拂込サル前ニハ登記公吿ヲ爲ス可カラストノ明文アリ合名合資ハ契約ノ已ニ確定シタル以上ハ登記公吿ヲ受ルコトヲ得ルナリ
（委員長）
然ラハ登記公吿以前ニ於テハ會社ト稱スルコトヲ得サルヘシ
（本尾委員）
然リ他人ニ對シ商事會社ト稱スルコトヲ得サルナリ尤モ社員間ニ於ル契約ハ既ニ成立シアル場合ナキニアラス
舊委員案第二十四條ニ會社ノ無効トナリタルトキハ社員ハ會社タルノ義務ヲ負フヘシトアリ本案ニモ亦該條ノ如キモノヲ挿入スルヲ要スルヤ否ノ質疑ニ對シロエスレル氏ノ答辯ニ該條ノ精神ハ法理ニ戾ルモノナルヲ以テ挿入スルヲ得サルモノナリ何トナレハ會社登記公吿以前ニ於テ無効トナリタルトキハ社外ニ對シテハ初メヨリ會社ハ成立セサルモノナルヲ以テ基社員會社ノ社員トシテ義務ヲ負フ可コ理由ナケレハナリ株式會社ニ於テ如此場合ヲ生スル時ハ發起人自己ニ其義務ヲ負ハサル可カラス此㸃ニ付テハ本案ニ明條アルヲ以テ別ニ辯ヲ費ヤサヽルヘシ合名合資會社ニ於テハ如此契約ハ普通民事上ノ契約ト見認メ取扱フ可キモノナリト
（鶴田委員）
約束ヲ以テト爲ストキハ將來商業ヲ營ンカ爲メノ約束ヲ結ヒタルトキト雖モ之ヲ商事會社ト爲ササルヲ得ス然ルトキハ會社ハ約束ノミニテ登記公吿ヲ爲サヽルモ公然商社ト稱スルコトヲ得ルニ至ラン
（本尾委員）
然リ故ニ約束ノ文字ヲ加フル不可ナリ
（委員長）
約束ノ文字ナキモ契約ナクシテ會社ノ成立スルコトナケレハ可ナリト雖モ若口約ノミヲ以テ會社ヲ設立スルコトアルトキハ甚タ不都合ヲ生スルナラン
（本尾委員）
第三十七條第百三十三條及第百四十三條ニ至リ其規定設ケタリ卽チ會社ハ契約書作ルニアラサレハ設立スルコトヲ得サルノ精神ナリ
（委員長）
若シ本條ニ登記公吿ヲ爲スニアラサレハ商社トナラサルコト迄ヲ揭ケントスルハ到底能ハサルコトナリ何トナレハ公然商社タルニハ登記公吿ノ外尙ホ必要ナル條件數多アレハナリ故ニ本條ニハ單ナル義務ヲ付スルヲ以テ充分ナリトス
（鶴田委員）
若シ登記公吿ヲ爲サヽル以上ハ裁判官之ヲ商社トシテ裁決スルコトヲ得サルノ趣旨ナランニハ第一條ニ登記公吿以前ハ商社ト稱スヘカラサルコトヲ揭ケサルヘカラス
（岸本委員）
然リ佛法ニ於テハ有式契約ニシテ未タ其式ヲ履行セスト雖モ裁判官ハ之ヲ契約ノ成立セシモノトス故ニ會社ニ在テモ登記公吿前ト雖モ之ヲ會社ト看做シ其社員ニ連帶義務ヲ負擔セシメタリ然ルニロエスレル氏ハ登記公吿前ノ契約ニシテ若シ會社登記公吿前ニ於テ無効トナリタルトキハ之ヲ民法上ノ契約ト爲スハ實ニ穩當ナラサルナリ
（塩田委員）
登記公吿セサル以上ハ未タ會社ト稱スルヲ得サルニ岸本委員ハ之ヲ會社トナシテ裁判セシメントスルハ穩當ナラス
（岸本委員）
登記公吿セサレハ第三者ニ對シ會社ト稱スルヲ得サルハ變則トス更ニ之ヲ原則上ヨリ論スルトキハ縱令ヒ登記公吿ノ濟マサルモノト雖モ既ニ團結體ヲ爲ス以上ハ會社ト看做シテ處分スルニ何ノ差支カアラン
（塩田委員）
未タ登記公吿ヲ爲ササルモノト雖モ裁判官ハ之ヲ會社トシテ論スルヤ否ヲ論セハ本官ハ本法ニ依テ會社ヲ爲シテ裁判セサルヘシ何トナレハ一方ニ蜀シテハ之ヲ會社トシ又他ノ一方ニ向フテハ之ヲ會社トセサルカ如キ裁判ハ爲シ能ハサルヘシ故ニ此場合ニ於テハ普通ノ契約ヲ以テ裁決スルノ外ナカルヘシ
（岸本委員）
第四十一條ヲ見ルニ其會社ニ罰金ヲ科ストアリ然ラハ登記公吿ヲ爲サヽルモ會社ト稱スルヲ得ヘキカ如シ
登記モ亦會社成立ノ一原素ト爲スヤ
（本尾委員）
然リ社外ニ對シ會社ト稱スルノ要件ナリ
（岸本委員）
若シ登記公吿セサルトキハ其會社契約ハ成立セサルモノト爲スヤ
（本尾委員）
否契約ハ既ニ成立スルモ社外ニ對シ會社トシテ取引ヲ爲スヲ許サヽルナリ
（岸本委員）
然リ然ラハ社員間ニ於テハ縱令ヒ登記ノ濟マサルトキト雖モ會社契約ハ既ニ成立シタルモノト爲サヽルヲ得ス
（本尾委員）
然リ會社契約ハ社員間ニ成立セシト雖モ未タ第三者ニ對シテ會社トシテ取引ヲ爲スヲ得サルナリ
（委員長）
本案ニ於テハ未タ登記公吿ヲ爲サヽル以上ハ會社タルノ義務ヲ擔當セシムルヲ得サルノ精神ト思考ス
（岸本委員）
先回ニ於テモ陳述セシカ實際ノ弊害ヲ防カンカ爲メ登記公吿セスシテ會社ト稱スルモノアルトキハ本案ニ於テ會社タルノ義務ヲ擔當セシメ第三者ノ利益ヲ保護スルヲ要ス若シ此制裁ヲ與ヘサルトキハ奸曲ノ徒ヲ懲戒セシムルニ足ラサルナリ
（鶴田委員）
第一條ニ於テハ社員問ニハ會社ト爲スヤ否ヲ払跚スルノ條ニアラスシテ會社ノ成立ヨリ終迄ノ義解ヲ付スルニ止ルナリ
（岸本委員）
然ルトキハ登記公吿ノ如キ原素ヲモ記載セサルヘカラス
（委員長）
會社タルノ原素ヲ盡ク第一條ニ記載セント爲スカ如キハ爲シ能ハサルナリ又登記ハ官許ノ一部分ナルヘシ
（岸本委員）
否官許ノ一部ト云フヲ得サルナリ何トナレハ今日ニ於テハ會社ハ登記ヲ爲サシムルノ權利ヲ有スルモノナレハ若シ登錄官之ヲ拒ムトキハ行政裁判ヲ仰クヲ得ヘシト雖モ之ニ反シ官許願ノ性質ト爲ストキハ行政裁判ヲ仰クヲ得サレハナリ
（委員長）
登記ヲ爲サヽルモノヽ如キハ第二項ニ初メヨリ無効トアルニ依テ手續ヲ履行セサルモノハ本項ニ從テ處分スルナルヘシ
（長森委員）
否第二項ハ事業上ノ目的ニ就テ云ヒ其會社成立ノ手續上ニハ關係セサルヘシ
（本尾委員）
第二項ハ則法律ニ禁制シタル事業ヲ起スノ目的ナル會社ハ初メヨリ無効ト爲シテ處分スルノ精神ナリ
（委員長）
法律ニ背戾スル目的ノ解釋如何
（長森委員）
例ヘハ阿片賣買ヲ目的ト爲ス會社ノ如キヲ云フ
（委員長）
阿片賣買ノ如キ法律ヲ以テ明ニ禁シタル事業ハ勿論其他例ヘハ鐵道敷設ノ如キ許可ヲ受クヘキモ其許可ヲ受サリシ場合モ亦第二項ニ依テ處分スルナリ
（鶴田委員）
鐵道敷設ノ如キハ行政上ノ關係アルヲ以テ許可ヲ要スルハ勿論ナリト雖モ若シ許可ヲ受ケスシテ之ヲ敷設シタランニ許可ヲ受ケサルハ卽チ法律ニ背戾シタルモノトシテ初メヨリ無効ノ會社ト爲スハ甚タ嚴酷ナル處置ト爲サヽルヲ得ス
（岸本委員）
然リ許可ヲ受クルノ手續ヲ履行セサルトテ之ヲ法律ニ背戾スル會社ト爲シテ論スルハ少シク酷ニ失スルカ如シ
（鶴田委員）
假令ハ賭博會社ヲ設立シタル時ハ其會社ハ初メヨリ無効ニシテ其社員間ノ貸借金圓ノ如キモ法律上無効ナリトス依テ裁判上ニ之ヲ爭論スルコトヲ得ス
（岸本委員）
旅店及鐵道敷設ノ如キハ免許ヲ受クヘキ明文アルヲ以テ第二項ニ依テ處分スルモ不可ナカルヘシト雖モ其他ノ者ハ會社設立後之ヲ無効ト爲スモノ卽チ取消スモノニシテ不成立ノ會社ト混同シテ論スルヲ得サルナリ
（委員長）
第一條第一項ニ疑㸃アリ登記公吿ヲ爲サヽル以上ハ公然會社ト稱スルヲ得スト雖モ本質ニ依ルトキハ猶會社ト稱ヌルヲ得ヘキカ如シ若シ登記前ニ會社解散シタルトキハ會社ハ既ニ成立シタルモノナルヤ否ヲ質問スヘシ
又第二項ニ法律ニ背戾スル目的ノ場合ハ如何ナルモノヲ云フヤ且其精神ヲ質問スヘシ
右ノ質問ヲ爲シタル上修正ヲ爲スコトトセン
（本尾委員）
第十六條ヨリ第二十四條ニ揭ケタル組合ニ關スル規定ハ總則中ニ揭載スルノ穩當ナラサルコトヲ質問セシニ右ノ規定ハ第三款ノ前又ノ罰則ノ次二一款ヲ設ケテ之ヲ置モ差支ナシトノ答辯ナリ
○第六條ヨリ第八條迄
（本尾委員）
第六條ニ對スル質問卽チ我邦ニ於テハ年齡ニ關スル民法ナキヲ以テ實際第六條ノ規定ノ如ク履行セシムルコトヲ得ス且有夫ノ婦ニシテ獨立商業ヲ營ムモノハ稀ニアルモノナレハ共ニ削除シテハ可ナラスヤトノ質議ニロエスレル氏ノ答辯ニハ否假令現行法ニ明文ナキモ實際ニ於テハ種々慣習法アリテ之レニ依ルナル可シ殊ニ有夫ノ婦ノ如キモ實際ニ於テハ必ス此規定ノ如クナサヽルヲ得サルヘシ故ニ本條ヲ削除スルハ不可ナラント
（岸本委員）
滿十八年以下ハ總テ會社ニ加入シテ商業ヲ營ムコトヲ得ストセハ從來ノ慣習ヲ一攣スルモノト云フヘシ
（鶴田委員）
若シ本條ヲ削除スルニ於テハ何人ト雖モ入社スルヲ得ルニ至ルヘシ若シ然リトセハ婦人ニシテ社員トナリシ時其會社不幸ニシテ倒產シ解散スルノ場合ニ至ラハ其婦人ノ負擔スル義務ハ如何スルヤ我邦現今ノ有樣ニテ婦人ノ特有財產トテハ一品モアルコトナケレハ實際甚タ困難ナルニ至ルヘシ
（本尾委員）
本條ハ民法ノ取除ヲ示スモノナルヲ以テ單ニ本條ノミヲ揭クルハ不完全ト云ハサルヲ得ス何トナレハ本邦ニ於テハ丁年者未丁年者又ハ幼者ニ對スル民法上ノ規定ナケレハナリ故ニ本條ヲ存セントスルトキハ本條ノ前ニ一條ヲ設ケ普通ノ規則ヲ明揭スルニアラサレハ本條ノ精神ヲ了知スルコト難カル可シ
（岸本委員）
單ニ未丁年者ト爲ス時ハ三歲ノ童子モ社員トナルヲ得ヘク外國人ヨリ之ヲ見ル時ハ奇怪ノ感想ヲ起シ甚タ不完備ナル法律トナスニ至ラン歐州各國ニ於テハ多クハ十八歲以上トセリ故ニ本案ニ於テハ寧ロ全條ヲ削除シテ之ヲ朦朧ノ中ニ存セシムルトセハ如何
（委員長）
佛法ニハ記載アリヤ
（岸本委員）
佛ニハ商法中ニ記載アルヲ以テ會社法ニハ別ニ載ケス
（本尾委員）
本條ヲ削除スルトキハ餘リ自由ニ過キ何人モ亦入社スルコトヲ得ルニ至リ會社ノ害トナルコトヲ生ス可シ故ニ本條ヲ削除スルモ充分討議ノ上ニアラサレハ之ヲ爲シ得サル可シ
（岸本委員）
若シ會社ノ害トナルトキハ各社員ノ意思必ス齟齬スルナラン其際ニ至テハ解散ノ一原因ト爲スコトヲ得ルニ依リ敢テ差支ナカルヘシ
（鶴田委員）
若シ本條ヲ存スルモ財產法ノ關係ハ歐州ト異ナルヲ以テ別段利益スル所ナキノミナラス之ヲ存セハ却テ困難ヲ生スルノ恐レ少シトセス
（委員長）
本條ハ我國ノ慣行ト異ナリ何分實際ニ施行シ難キ場合少カラサレハ削除シテハ如何トノ意味ヲ以テ質問スヘシ
（本尾委員）
諾
于時十二時閉會