○第五十七回附錄
明治十八年七月二日
欠席 細川委員
欠席 渡邊委員
○第二百六十九條
（本尾委員）
本條ノ私利トアル譯字ハ適當ナラス傍ラ以テ質問セシニ本條ノ如キハ各國ノ法律ニ見ヘサリシモ元老院ニ於テ制定シタル會社法ニ此條アリシヲ以テ可ナリト信シテ之ヲ本案ニ加ヘタリ取締役ハ主人ノ資格ヲ以テ爲シ之ヲ取扱ヒタルモノハ其命令ニ依テ爲シタルモノナレハ會社ノ金庫ヨリ其科セラレタル罰金ヲ徵收セラルヘシ然レ供取締役一己ノ失錯ニ歸スヘキ場合ハ此等ノ者自ラ擔當セサルヘカラサルノ意味ナリトテ左案ノ如ク改正セラレタリ
第二百六十九條 科スヘキ罰金ハ該員ノ失錯ニアラサルモノニ限リ會社ノ財產ヨリ徵收ス可シ
（鶴田委員）
社員ノ失錯ナル時ハ自ラ罰金ヲ擔當スヘシト云フニ在ルヤ
（本尾委員）
然リ
（委員長）
社員ノ相續ニ依テ爲シタル場合ハ如何
（本尾委員）
其場合ニ三ツアリ第一ハ社員ノ協議ニ依テナシタル失錯ハ會社ノ財產ヨリ支辨シ第二ハ社員中一人ノ命令ニ依リ爲シタル失錯ハ自ラ支辨シ第三ハ取締役其職務內ニ於テ失錯シタルモノハ常亦會社ノ財產ヨリ支辨スルモノトス
（委員長）
取締役等ノ犯罪ニ就テハ總テノ會社財產ヨリ徵收スルモノト爲スヲ可トス何トナレハ先ツ社員ノ失錯ナルヤ否ヲ知ルハ容易ナラサレハナリ而シテ會社ハ其社員一己ノ失錯ニ歸スヘキモノナル時ハ其社員ヨリ會社ニ償還セシムルト否トヲ隨意ニ爲サシムヘシ
（鶴田委員）
然リ正當ニ之ヲ論スル時ハ取締役ハ元來總會ノ撰擧ニ依リ其職ニ任スルモノナレハ取締役ノ犯罪アルカ如キハ卽チ總會ノ過失ナリ總會ノ過失ハ卽チ會社全體ノ過失ニ歸スルハ當然ナレハナリ
（周布委員）
元老院ニ於テ制定セシ會社法ハ先ツ會社ニ罰金ヲ科シ而シテ其犯則取締役ノ故意ニ出ル時ハ別ニ又取締役ニモ罰金ヲ科スルモノトセリ