○第二讀會第二回
明治十八年七月二日
欠席 細川委員
仝 渡邊委員
午前第九時開會
先回ノ續キ
（本尾委員）
第三條商ヒノ取引ノ釋義ニ付キ委員長ヨリ命セラレタル質問ノ要領ハ該條ヲ閱スルニ其解釋實ニ困難ナリ第一讀會ニ於テ改案セシモ之ヲ實際ノ事物ニ照シテ未タ商業ノ區域判然ナラス又之ヲ明瞭ニ解釋セントスルモ簡便ニシテ了解シ易キ方法ナシ顧フニ佛國民法中會社ノ義解ハ卽チ本案ノ商事會社ニモ亦之ヲ適用ツ得ラルムカ如シ是ヲ以テ本案第一條ノ一項並ニ二條ヨリ五條迄ヲ削除シ之ニ代ルニ佛國民法中ノ會社ノ義解ヲ以テシ本條例ニ依ラシムルヲ要セサル會社ヲ擧ケテ之ヲ取除トナシ而シテ商ヒノ取引ノ義解ノ如キハ他日商法編纂ノ際ニ至リ之ヲ設ケ本條例ハ右ノ方法ニ基キ簡便ノ法律トセハ如何ト云フニ在リ
右ノ質問ニ對スルロエスレル氏ノ答辯ニハ抑民商ノ區別徃昔人民ノ職業ニ於テ其區別判然ナリシ時代ニ在テハ難事ニアラサリシモ農工商混同シテ各隨意ニ其業ヲ營ムノ今日ニ在テハ簡單ノ法文ヲ以テ確定シ易カラスハ然レトモ今會社條例ヲ領布スルニ委員長ノ考案ノ如ク民商ヲ區別スルコトナク總テノ會社ニ對シ本條例ヲ適用スルモノト爲スハ甚穩當ナラサルカ如シ何トナレハ民事上ノ結社ハ單ニ雙方間ノ契約ニ止ルモ商事上ノ會社ニ在テハ雙方間ノ契約ノミニ止マラス之カ爲メ一ツノ無形人ヲ設ケ本條例第十五條ノ結果ヲ生スルモノナレハナリ又委員長ノ考按ノ如クスルトキハ民事上ノ結社ト看做ス可キモノ例之ハ二人ノ靴職縫裁器械ヲ購求シ互ニ之ヲ使用シテ利益ヲ分擔セントスルモノニモ亦本條例ニ定ル如ク會社ノ設置所及社名ヲ設ケ登記公吿ノ爲サシムル等ノ義務ヲ履踐セシメサルヲ得サルニ至ル可シ元來本案ニ於テ第三條ノ如キ義解ヲ揭クルハ微生ノ本意ニアラサリシヲ以テ當初會社條例單行ノコトニ付御質問ノ際微生ノ草按セシ會社條例總則中軻二條ヲ設ケ商ヒノ取引ニ對シ簡單ナル義解ヲ與エシモ第一讀會ニ於テ委員長ノ請求アリシヲ以テ之ニ應シ本案第三條第四條第五條ノ如ク修正セシナリ然ルニ復タ今日ノ第二讀會ニ於テ之ヲ削除シ前述ノ如キ改正ノ質問ヲ受ルニ至ルハ實ニ遺憾ニ堪ヘサルナリ然レトモ委員長ニ於テ必ラス之ヲ改正セサルヲ得サルモノト思慮セラルヽトキハ他ニ便方ナキニアラサル可シ故ニ此槪略委員長ニ報吿セラレタシトノコトナリ
岸本委員ノ質問ニ前顯ノ質問ニシテ若シロエスレル氏我請求ニ應セサレハ商事ノ義解ハ總テ之ヲ削除シ單行布吿ヲ以テ之ヲ定ムルハ如何何トナレハ該義解ヲ商事會社條例中ニ揭クルハ體裁上宜ヲ得サレハナリトノ答辯ニ或ハ可ナラン然レトモ該義解ノミヲ單行布吿ヲ以テ發布スルノ要用モ亦ナカル可シ併シ本案發布ノ後該義解ノ明瞭ナラスシテ不都合ヲ生スルトキハ營[業ノ種類ヲ枚擧シテ民商ノ區域ヲ定ムル法律ヲ發布スルハ妨ケナカル可シ英國ノ法律ニ於テモ此例ナキニアラス然レトモ初メヨリニ法ヲ發布スルハ要用ニアラサルカ如シト
（委員長）
二人ノ靴職ノ例モ商事ニアラサルヤ
（本尾委員）
其例第五條第二項卽チ專ラ賃錢ヲ得ルノ目的ナル場合ニ於テハ商事ニアラサルナリ
（委員長）
如斯論シ來レハ商事ノ區分甚タ困難ナリ例之ハ燒芋屋ノ如キモ合資ヲ以テ爲ストキハ商事ト爲ササルヲ得ス
（本尾委員）
然リ燒芋屋ト雖モ商業ナルヲ以テ會社ヲ以テ其業ヲ營ムトキハ商事會社ナリ
（委員長）
職人ハ第五條ノ第二項ニ當ルモノナレトモ沓ヲ作ラシムル主人ノ如キハ職工ニ賃錢ヲ與ヘテ商業ヲ營ムモノナレハ矢張リ商亠事ト云ハサルヲ得ス
（本尾委員）
然リ雇入主ハ賃錢ヲ與ヘテ沓製造ノ事業ヲ爲スモノナレハ卽チ商事ナリトス
（委員長）
自店ニ於テ自ラ草鞋ヲ作リ之ヲ賣捌クモノハ商事ナルヤ
（本尾委員）
會社ニ於テハ如斯モノアルコトナカル可シ商法ヲ以テ之ヲ論スルトキハ商人ト看做ノ限ニアラサル可シ
（岸本委員）
要スルニロエスレル氏ノ意見ハ學問上ノ議論ニ過キス同氏ハ民商ノ區別ニ付キ羅馬法ヨリノ沿革ヲ演ヘ且各國ニ於テモ皆其區別ヲ爲スノ證ヲ擧ルト雖モ我邦ニ於テハ人民}般ニ民商ノ區別ヲ知ルモノナシ然ルニ徇ホ此區別ヲ規定セントスルトキハ其區別ノ境界ニ困難ナルノミナラス實際其要用ナカル可シ若シ商法中ニ於テ會社ノ規定ヲ設ルトキハ商事會社ニノミ適用セラル可キモ今本案ヲ單行布吿ト爲ストキハ商民ノ區別ハ不用ニ屬スト云ハサルヲ得ス佛法ニ於テ民事商事ノ區別アリト雖モ實際ニ至テハ槪ネ商事會社ニシテ民事會社ナルモノハ僅々二三ニ過キサルナリ
（委員長）
英法ニ於テハ病院ノ如キハ如何
（岸本委員）
會社ノ部類ニアラス若シ之ヲ會社トセンカ會社ニ必要ナル四ケノ條件ヲ具備セサルヘカラス
（委員長）
「ケセルシヤツフト」ト云ヘハ病院ノ如キモノモ包含スルヤ
（本尾委員）
病院ハ「ケセルシヤフト」ニアラス「ケセルシヤフト」トハ二人以上集合シテ事ヲ爲スモノヲ云フナリ病院モ「ケセルシヤフト」（會社）ヲ以テ成立スルモノアリ又一箇人ノ所有ニ歸スルモノアリ
（岸本委員）
ロエスレル氏ノ意見ニ從ヘハ商事ノ區域ハ最モ擴張セリ
（本尾委員）
ロエスレル氏ノ云フニ若シ本案ヲ商事會社條例トセスシテ會社條例トシ民商會社ヲ包含スルモノトストキハ例之ハ結婚ノ爲メ財產共通ノ契約ヲ結フ者ニモ之ヲ適施セサルヘカラス何トナレハ財產共通ノ契約ハ卽チ民事上ノ結社契約ニ外ナラサレハナリ
（委員長）
ロエスレル氏ノ意見ニ從ヘハ會社ノ種類ハ凡ソ如何ナルモノヲ云フヤ
（本尾委員）
會社ノ種類ハ民事商事ノニツナリ而シテ民事會社トハ二人以上財產ニ關シ結合スルモノヲ云フ卽チ財產共通ノ契約ナリ又商事會社ハ二人以上商業ヲ營ム爲メ結合スルモノヲ云フナリ
（委員長）
英法ニ於テモ民商區別ノ如キハ大小ニ依テ爲スコトヲ得サルノ議論アルヘシ
（河上委員）
然リ倒產法ニ於テモ此區別ニ付隨分議論アリタリ
（岸本委員）
昨日質問ノ際佛國民法中ノ會社ノ義解ヲロエスレル氏ニ閱覺セシメシニ是レ商事會社ノ義解ト同一ナリト云ハレタリ然ラハ民事會社ノ義解ハ如何ナルヤヲト攻擊スヘキヲ失念セシハ遺憾ナリシ
（箕作委員）
佛法ノ注解ニ依ルトキハ佛國商法第六百三十二條以下ニ列記セサルモノハ總テ民事ト爲スナリ故ニ本案ト異ナリ佛法ノ商事ノ區域ハ最モ狹隘ニシテ鑛山、開墾等ノ如キハ總テ民事會社ト爲ス
（委員長）
佛法ニ依レハ賣捌クノ目的ナルトキハ總テ商事會社ト爲スカ如シ
（本尾委員）
箕作委員ノ述ラルヽ如ク佛法商事ノ區域ハ狹隘ナルモ本案商事ノ區域ハ之ニ反シ至テ廣大ナリ
（委員長）
今一應質問スルノ意ナレハ充分討議スヘシ
（岸本委員）
質問ノ要㸃ハ民事會社ノ義解ヲ如何記載スルヤニテ充分ナルヘシ
（箕作委員）
然ルトキハ商事ノ外ハ總テ民事ナリト云ヒ彼ノ婚姻ノ如キ例ヲ述フルコト思料ス
質問ノ要㸃ハ左ノ如キ主趣ニテ可ナラン
一 商事會社トハ如何
二 民事會社トハ如何
三 商事ノ義解ハ如何
四 婚姻共通財產契約及地理學會ノ如キ團結ハ之ヲ何ト名稱スルヤ
（委員長）
惟フニロエスレル氏ハ第三條第四條及第五條ニ區別ヲ揭ケタリ其他ニ區別スルコトナシト答辯セン
（箕作委員）
開墾ノ如キハ如何
（本尾委員）
其場合ノ如何ニ依テ區別セサル可カラス自己所有ノ土地ヲ開墾スルカ如キハ民事ナレトモ請負仕事トシテ他人ノ土地ヲ開墾スルモノヽ如キハ第四條ノ第六項ニ該當シ之ヲ商事ト爲ス
（箕作委員）
鑛山採堀ノ爲メ資本ヲ集合シ會社ニテ之ヲ爲スカ如キハ如何
（本尾委員）
產生物ノ事業ナルヲ以テ第三條ニ依リ商事會社トス
（箕作委員）
堤防事業ハ如何
（本尾委員）
開墾ノ例ノ如クニ一ノ村落集合シテ自己ノ爲メニ之ヲ爲ス場合ハ商事ニアラサル可キモ若シ請負ヒ仕事トシテ他人ノ爲メニ爲スモノハ商事會社ト云ハサルヲ得サル可シ
（箕作委員）
本案ヲ要スルニ第三條第四條ノ事項ヲ不斷ニ爲ス會社ハ總テ商事會社トナシ第五條ニ揭クルモノヽ如キハ其細大ニ係ラス民事會社トナスノ意ナルカ如シ
（本尾委員）
然リ
（箕作委員）
然ラハ地學協會ノ如キハ如何
（本尾委員）
地學協會等ノ如キ學問上ノ團結ハ商事會社ニアラサルハ勿論ニシテ亦民事會社ニモ囑セサル可シ
（周布委員）
ロエスレル氏ノ立案ニハ如何ナルモノヲ以テ民事會社ト稱スルヤヲ質問セハ民商ノ區別ハ自カラ明瞭ナルヘシ
（箕作委員）
若シ周布委員ノ說ノ如ク質問セハ必スヤ夫婦共通財產ニ關スル如キヲ以テ民事會社ト云フナラン然レトモ此共通財產ノ如キハ民事會社トナスヘキモニアラサレハ逐ニ民事會社トナスヘキモノハナキニ至ラン
（岸本委員）
昨日ロエスレル氏ノ說ニ昔時羅馬ニ在テ民商ノ區別ヲナサヽリシカ中古ニ至リ之レカ區別ヲ設クルノ必要ヲ感シタルヨリ其區別ヲ明定セリ法律モ亦隨テ其法ヲ異ニスルニ至レリ故ニ今日ニ於テ之レカ區別ヲ設ケサルハ甚タ不可ナリトノ答辯ナリシヲ本官ノ考フル所ニ依レハ中古ハ商事ノ範圍實ニ狹小ナルヲ以テ之レカ區別ヲナスモ容易ナレトモ今日ニ至リテハ其範圍頗ル廣大ヲ極ル民事ノ部分ニモ亦侵入スルノ勢ナレハ之レカ區別ヲ設ケスシテ一般ノ會社ノ規定ヲ設ル方可ナルカ如シ如何
（本尾委員）
之レニ對シロエスレル氏ニ答ヘシメハ商事ノ範圍往時ニ比スレハ大ニ擴張シテ民事ノ部分ニ侵入スルノ勢ニ至ルト雖モ是レ民商ノ混同シタルニアラス商事ノ範圍廣大トナリ民事區域狹少トナリタルモノナルヲ以テ民商ノ區別ハ消滅シタルニアラス故ニ民商ヲ混同スルコトヲ得スト云フナラン
（岸本委員）
一己人ノ事業ニ於テハ民商ノ區域ヲ瞭カニセサルヲ得スト雖モ會社ニ至テハ之レカ區別ヲ設ケス均シク會社ヲ保護スルノ法律ヲ設クルヲ以テ至當ナリトスヘシ
（箕作委員）
商事民事ヲ區別セハ單ニ會社條例トシ之ヲ發行シ其後果シテ差支ヲ生スルコトアレハ其際單行布吿ヲ以テ之レカ區別ヲ設ケハ如何
（委員長）
敢不可ナリトスルニハアラサレトモ他日之ヲ設クルノ容易ナラサルヲ懸念スルナリ故ニ昨日本尾岸本委員ヲ以テ質問セシメタル如ク本案第一條ノ一項及第二條第三條第四條第五條ヲ消除シ其代リニ佛國民法中ノ會社ノ義解ヲ新設スルコトニ付キ今一應本官ヨリ質問セハ如何
（岸本委員）
ロエスレル氏ハ義解ヲ入ルヽニ就テハ異議ナシトノコトナリシ
（本尾委員）
佛國民法中ノ會社ノ義解ノ如キヲ入ルヽコトハ異議ナシト云ヒシモ第一條ノ一項幷ニ二條三條四條五條ヲ削ルハ不同意ナリト云ヘリ
（委員長）
舊商法編纂委員カ附シタル義解ニ於テ充分ナルヘシ
（鶴田委員）
然リ舊委員ノ編纂シタル商法第四條第五條ヲ以テ充分足レリトス可シ
（岸本委員）
人民ノ只タ疑フ所ハ從來ヨリ農商ノ區別判然セルヲ以テ若シ商事トナシ發布スルニ至ラハ農事ニ關スルモノハ本案ノ制裁ヲ受ケサルヤ否ノ㸃ニ付キ疑惑ヲ起スモノアルニ至ラン
（委員長）
利益ヲ得ルヲ目的トスルモノハ商事ニシテ然ラサルモノハ民事ナルコトヲ示サハ其區別ヲ立ルニ於テ敢テ難事トスルニ足ラス
（本尾委員）
本件ニ付テハ佛法等ヲ援引シテ論究スルハ決シテ無用ニアラサルモ先ツ第一ニ會社條例發布ヲ要スルハ何レノ㸃ニアリヤヲ論セサル可カラス之ヲ詳言スレハ日本ノ現狀ニ於テハ二人以上資本ヲ集合シテ事業ヲ營ムニ付大ナル弊害アリ故ニ此㸃ヲ取締ルヲ以テ尤モ緊要ナリトスルカ將タ二人以上資本ヲ集合シテ商業ヲ營ムモノヲ取締ルヲ以テ要用トスルカ又ロエスレル氏ノ云フ商事會社ノ外ニ取締ヲ要用トスル會社アリヤ否ヲ論究シ然ル後本條例ヲ商事會社トナスカ將タ民商混同ノ會社條例トナスカニ付質議セハ如何
（箕作委員）
夫ハ現今ノ有樣ヲ以モ改正ヲ望ムニ外ナラサルモノトス
（委員長）
「ケセルシヤツフト」トハ獨乙ニテハ如何ナル意味ヲ含蓄スルヤ
（本尾委員）
單ニ「ケセルシヤフト」ト云フトキハ夜會ニ往クモ「ケセルシヤフト」ニ往クト云ヒ又甲ト同行セシト云フニ代フルニ甲トノ「ケセルシヤフト」ニテ行シナトヽ云フ然レトモ法律上ニテ云フトキハ二人以上財產ニ關シ結合スルモノヲ云フナリ
昨日ロエスレル氏ニ吿ルニ第一條ニ商事會社ハ商業ヲ營ムモノトシ第二條ニ商業ヲ營ムトハ商ヒノ取引ヲ云々ト其義解ヲ示シ第三條ニ至リ商ヒノ取引トハ云々ト義解ヲ附シ商業ヲ營ムト云フコトノ義解ヲ二段ニナセリ是レ商法中ニ於テハ必用トスルモ會社條例中ニ於テハ反テ混雜シテ爲メニ精神ヲ得ルニ苦ムカ如シ故ニ第二條ト第三條ヲ合併シ第二條トシ而シテ簡單ニ商業ヲ營ムト云フコトノ義解ヲ明示セハ却テ解釋上ニ便ナルカ如ク思惟ス云々ヲ以テセシニロエスレル氏モ其邊ニ就テハ敢テ異議ナキノミナラス左ノ如キ一條ヲ置クハ敢テ支障ナシト云ヘリ第二條商業ヲ營ムトハ常業トシテ商賣ヲ爲シ貨物及行客運輸ノ事業銀行事業保險事業製造事業及賣捌ノ目的ヲ以テ貨物產生ノ事業ヲ爲スヲ云フ
（長森委員）
會社條例ノ原因タル集合資本ヲ保護スルノ旨趣ナルヲ以テ之ヲ根トシ質議スルトセハ如何
（周布委員）
第一條ヲ左案ノ如ク改メ第二三四五條ヲ削除シ第六條ヲ第三條トセハ如何
二人以上資本ヲ集合シ損益ヲ分擔シテ事業ヲ爲ス會社ハ本條例ヲ遵奉セサルヘカラス
（委員長）
第十一條ノ行政及警察ノ區域ノ差別ハ實ニ困難ナルモノナリ
（岸本委員）
行政ノ文字ヲ省キ警察ノミニテ取締充分ナリト信ス
（箕作委員）
普通ニハ敢テ之レカ規定ナキモ行政及警察ノ區域內ニ入ルモノハ假令一己人ト雖モ許可ヲ受クルモノナレハ明文ヲ設ケサルモ特別法ヲ以テ之カ取締ヲ付スレハ削除スルモ不可ナキカ如シ
（本尾委員）
之ヲ削ルヨリハ寧ロ「法律上許可ヲ要ス可キ事業ノ會社ハ之ヲ受クルヲ要スト」ナシテハ如何然ラスシテ單ニ之ヲ削除スルト爲ストキハロエスレル氏ハ必ス承諾セサルヘシ
（箕作委員）
夫ハ或ハ然ラン
（委員長）
尙其他ニ質問スヘキ條項アリヤ
（本尾委員）
第十六條ヨリ第二十四條迄ハ會社ト稱スヘキモノニアラス然ルニ之ヲ總則中ニ揭載スルハ不可ナリ凡ソ總則ハ合名合資株式ノ三種ノ會社ニ適用スルモノナレハ右數條中ニ云ル三種ノ類似會社ノ如キハ附舫錄トナシ卷尾ニ揭載スルヲ以テ稱當ナリト思惟ス
（委員長）
三種ノ類似會社トハ如何
（本尾委員）
三種類ハ卽チ第十六條第十七條第十八條ニ云ルモノナリ其區別左ノ如シ
第一假令ハ二人以上米ヲ買入ルヽノ契約ヲ以テ互ニ金員ヲ供出シ營業ノ目的ニアラスシテ其米ヲ一時賣買スルモノ第二假令ハ海蓮回漕ヲ業トスル者一ハ橫濱ヨリ長崎迄ヲ業トシ一ハ橫濱ヨリ札幌迄ヲ業トスル者二人共同シテ札幌ヨリ長崎迄ノ物貨運送ヲ引受ルモノノ如シ第三匿名組合ニシテ例ヘハ甲商人又ハ甲會社ノ營業ニ加ルニ公然氏名ヲ顯ハサス止タ金員ヲ出シテ其利益ヲ共ニスルモノヽ如シ
（鶴田委員）
第十六條ヨリ第二十四條迄ハ三會社ニ適用スルヲ得サルモノナレハ之ヲ附則トナス方可ナルカ如シ
（周布委員）
會社條例ノ附則トスヘシ
（箕作委員）
附則トナスコトヲ質問セハ如何
（本尾委員）
諾
（鶴田委員）
僻遠ノ地ニ於テハ兩三名相集合シテ事業ヲ營ムモアリ此等ハ直ニ本條例ノ規定ニ從ハサルヲ得サルヤ又ハ之ヲ設立スルニ當リ毫モ本條例ノ規定ニ從ハサルヲ以テ會社ト見認メス從テ本條例 制裁モ亦與ヘスシテ可ナルヤ
（箕作委員）
彼ノ合名會社ノ如キハ許可ヲ受ケスシテ設立スルヲ得ルモ法律ハ之ニ制裁ヲ與フルト等シク鶴田委員ノ說ノ如キモ亦本條例ノ規定ヲ履行セシメサルヘカラス
（本尾委員）
第六條及第十條ノ如キニ付テハ質問ヲ要セサルヤ
（岸本委員）
第六條ハ削除スルヲ可トス且本官ハ別ニ一項ヲ設ケタキモノアリ則第二條第二項ハ場合ニ於テ會社ノ設立セサリシ時ノ制裁是ナリ舊委員ニ於テハ商法草案第二十四條ニ於テ之レカ處分法ヲ記載シ置キタリ若シ此制裁ナキトキハ種々ノ弊害ヲ生セン如何トナレハ開業ノ廣吿ハナサゞルモ人民ニハ會社ト看做シ種々ニ契約ヲ取組ムナラン此時ニ當リ其制裁ナキ時ハ之レカ爲メ人民ニ大ナル損害ヲ蒙ラシムルニ至ルヘシ故ニ此場合ニ於テハ會社ト看做シ義務ヲ盡サシムルモノトセハ如何一應質問アリタシ
于時第十二時閉會