○第五十七回
明治十八年六月三十日
欠席 細川委員
仝 渡邊委員
午前第九時開會
○第二百六十五條
（本尾委員）
本條但書ノ場合ニ就キ質問セシ處各國ニ此例ナキニアラサレ供委員ニ於テ之ヲ欲セサルノ意見ナランニハ左案ノ如ク改正スヘシトノ事ナリシ
第二百六十五條ーヲ届出ルトキハ百圓以上五百圓以下ノ罰金ニ處シ事情ノ重キトキハ之一ニ年以內ノ禁錮ノ罰ヲ附加スルコトヲ得
右改案ニ於テ禁錮ヲ附加スル事ト爲セシハ百圓ニ百圓ノ金額ハ會社ニ對シ一向感觸ヲ與フルニ充分ナラサレハ之ニ禁錮ヲ附加シテ以テ懲戒スル亠事ト爲セリト
○第二百六十六條
（本尾委員）
本條ニ記名ノ數又ハ株金拂込高ニ就キトセハ如何且然ラサレハ氏名ノ記載ノミニ付キ虛僞アルモノヲモ罰スルニ至ルヘシトノ質問ニ原文ニ於テハ數及高ノ語ヲ加ヘサルモ可ナリ併シ譯文ニハ之ヲ挿入シテ差支ナシト但シ記名ノミヲ僞リタル者ハ罰スルノ精神ニハアラサルナリ
又本條ノ罰則ハ輕キニ過ルトノ質問アリシカ發起人此條ニ關シ詐僞ヲ爲スハ實ニ難事ナリ且從令ヒ之ヲ爲スモ發見スルハ容易ナリトス尤モ前諸條ト權衡ヲ比スル時ハ或ハ少ク輕キニ失スルノ憂ナキニアラサルヲ以テ「百圓」ヲ「ニ百圓」ニ改正スヘシノ答辯ナリシ
○第二百六十八條
（本尾委員）
コ過失」ナル原語ノ意義ヲ質問セシ處故意ヲ以テ爲ス事及ヒ怠ヨリ生スル事ヲ云フ故ニ「トールス」「クルハー」「クルハーラター」「クルハーレーヒス」ノ數種ノ內「クルハーラター」ヲ指示スルナリ故ニ惡シキ事ト知ラスシテ爲シタル場合ノ外總テ之ヲ罰スルノ精神ナリト又本條ハ使用人等ト共ニ業務擔當人又ハ取締役ヲモ罰スルノ意ナリ但シ人ヲ罰スルニアラスシテ會社ヲ罰スルニ在リト
（岸本委員）
然ラハ「加功シ又ハ其犯則ヲ生セシメタル時ハ該員ニ施スヘキ罰ヲ以テ之ニ處ス可シ但シ少過失ハ此限ニアラス」ト爲シ最大及大過失ヲ罰スル事トセハ立案者ノ精神ニ違フ事ナカルヘシ
（本尾委員）
然リ
○本條ハ左ノ如ク修正セラレタリ
第二百六十八條商社ノ業務擔當人取締役又ハ淸算人ノ外他ノ役員及ヒ使用人當該役員ノ犯則ヲ助成シ又ハ自己ノ失錯ニ由テ犯則ヲ生シタルトキハ當該役員ト同一ノ罰ニ處セラルヘシ
說明了
○第二百六十九條
合資及株式會社ノ業務擔當人取締役又ハ淸算人ニ科スヘキ罰金ハ會社ノ財產ヨリ徵收ス可シ此人員ノ私利ニ歸スヘキ犯則ハ此限ニ在ラス
（本尾委員）
合名會社ノ社員ニ就キ規定ナキヲ以テ質問セシニ各社員ノ財產ヨリ徵收スルハ卽チ會社ヨリ徵收スルト異ナラサルヲ以テ別此之ヲ記載スルニ及ハストノ答辯ナリ
本條ノ區域ハ業務擔當人又ハ取締役若クハ淸算人タルノ身分ヲ以テ犯シタル時ハ其罰金ヲ會社ヨリ徵收ス若シ其人一身上ノ犯則ナレハ素ヨリ會社ニ關係スヘキ事ニアラサレハ各自己ヨリ之カ罰金ヲ納ムヘシ
（岸本委員）
然ラハ淸算人職務執行上ニ係リ科セラレタル罰金ハ會社ノ財產ヨリ徵收スヘキモノトストセハ如何
（箕作委員）
「私利」ノ文字ハ原文ニ見ヘス而シテ原文ノ精榊ハ其一身上ノ失錯ニ歸スヘキモノニアラサレハ會社ノ財產ヨリ徵收ス可シト云フニ在リ
（委員長）
「ヘルソソリヒー」トハ如何ナル意味ナルヤ又會社ヨリ償フヘキ罰金ハ如何ナル性質ノ犯罪ニ用ユルモノナルヤヲ質問スヘシ
（本尾委員）
諾
○本條ハ質問ノ上修正スル事ニ決セリ
于時午前第十一時二十分前閉會