○第五十六回
明治十八年六月廿七日
欠席 細川委員
仝 鶴田委員
仝 渡邊委員
仝 河上委員
午前第九時開會
○第二百六十二條
株式會社ノ取締役ハ左ノ場合ニ於テ五圓以上五十圓以下ノ罰金ニ處セラル可シ
一株式名簿ヲ製セス又ハ不正ノ記載ヲ爲シ又ハ之ヲ商事裁判所ニ呈示セサル時（第百五十五條第百五十八條）
二會社解散ノ場合ニ於テ規則上ノ總會招集解散ノ決議ノ公吿及裁判所ヘシ屆出ヲ怠リタル時（第二百三十四條第二百四十二條）
（本尾委員）
第二ハ解散決議ノ公吿トアルハ穩當ナラサルヲ以テ質問セシ處「株主ヘシ報知」ノ誤リナリシ依テ左案ノ如ク改正セラレタリ
第二百六十二條
二會社解散ノ場合ニ於テ總「會ノ招集株主ヘシ報知又ハ裁判所ヘシ居出ヲ怠リタルトキ（第二百三十四條第二百四十二條）
說明了
○第二百六十三條ノ續キ
（本尾委員）
第一ニ「之ニ關シ」トアルヲ質問セシ處債主ノ事ニ關係シノ精神ナリト
（塩田委員）
然ラハ「債主ノ事ニ關シ」トセハ如何（之ハ決ス）
（箕作委員）
第五ニ益金トアリ第百二十七條迄亦同シ而シテ第二百十九條乃至第二百二十一條ニハ配當金トセリ原語同一ナルヲ以テ譯語ヲ一定スルヲ可トス
○本條ハ左ノ如ク修正セラレタリ
第二百六十三條（本文原案ノ陷儘）
一會社ノ資本減少ノ場合（第二百八條）ニ於テ會社ノ債主ヲ隱匿シ又ハ債主ノ事ニ關シテ不正ノ申立ヲ爲シタルトキ
二會社檢査ノ場合（第二百二十七條）ニ於テ會社ノ帳簿及書類ノ呈示又ハ供述ヲ肯セサルトキ
三第二百十八條ノ規定ニ背キ會社ノ株劵ヲ其會社ノ所有ト爲シ若クハ其會社ニ質ニ取リ又ハ成規ニ從テ之ヲ賣却セサルトキ
四（原案ノ儘）
五第二百十九條第二百二十條第二百二十一條ノ規定ニ背キ利足又ハ配當金ヲ株主ニ拂渡シタル時
六（原案ノ儘）
末項（第二百八十七條）トアルヲ（第二百二十七條）ト改ム
○第二百六十四條
左ノ場合ニ於テハニ十圓以上百圓以下ノ罰金ニ處セラル可シ
一商社ノ淸算人會社ノ財產總債主ニ完償スルニ足ラサル場合ニ於テ破產處分ノ手續ヲ爲ス事ヲ怠リタル時
二株式會社ノ淸算人第二百四十八條ニ規定シタル負債主及債主ノ名簿ノ調製及其公吿ヲ怠リタル時
（本尾委員）
本案ハ誤謬アリシヲ以テ左案ノ如ク改正セラレタリ第二百六十四條株式會社ノ淸算人ハ左ノ場合ニ於テニ十圓以上百圓以下ノ罰金ニ處セラル可シ
一會社ノ財產總債主ニ完償スルニ足ラサル場合ニ於テ破產處分ノ手續ヲ爲ス事ヲ怠リタル時
二第二百四十八條ニ規定シタル負債主及債主ノ名簿ノ調製及負債主及債主ヘシ催促ヲ怠リタルトキ
○本條ハ別段異議ナク左ノ如ク修正セラレタリ
第二百六十四條株式會社ノ淸算人ハ左ノ場合ニ於テニ十圓以上百圓以下ノ罰金ニ處セラル可シ
一會社ノ財產總債主ニ完償スルニ足ラサル場合ニ於テハ破產處分開始ノ手續ヲ爲ス事ヲ怠リタルトキ（第二百五十七條）
ニ第二百四十八條ニ規定シタル負債者及債主名簿ノ調製又ハ負債者及債主ヘシ催促ヲ怠リタルトキ
○第二百六十五條
株式又ハ合資會社ノ取締役檢査役又ハ決算人ニ於テ官廳若クハ裁判所若クハ總會ニ對シ若クハ公吿ノ時書面或ハロ演ヲ以テ會社財產ノ實況若クハ業務上ノ關係ニ就キ故ラニ虛僞ヲ吿ケ又ハ奸曲ノ意ヲ以テ之ヲ隱匿シ又ハ官簿ニ登記スル時故ラニ虛僞ヲ屆出ル時ハ百圓以上五百圓以下ノ罰金又ハ事情ノ重キ時ハ一年以內ノ禁錮又ハ之ヲ併科スル事ヲ得ヘシ但併科スル時ハ之ヲ合シテ各自ノ最高㸃ヲ超ル事ヲ得ス
（本尾委員）
「但併科スル時ハ之ヲ合シテ各自ノ最高㸃ヲ超ル事ヲ得ス」トハ例之ハ一ケ年ヲ百分ノ百ト看做シ又五百圓ヲ百分ノ百ト看做シ之ヲ併科スル時ハ兩科ヲ合シテ百分ノ百ヲ超越スル事ヲ得サルヲ云フ故ニ一ケ年百分ニ十五帥三ケ月ト五百圓ノ百分ノ七十五卽三百七十五圓トヲ併科スルヲ得ルモ該額ヨリ超過スル事ヲ得サルナリ總テ此比例ニ準シテ併科スルモノトス
（長森委員）
金圓ト禁錮トヲ比較シテ計算シ其平均ヲ量ルモノナルヤ
（本尾委員）
然リ故ニ一ニ百七十五圓ト三ケ月トヲ合シテ之ヲ百分ノ百ト看做シ此高ヨリ超ル事ヲ許サヽルナリ
（箕作委員）
佛法ニ此罰則アリヤ
（岸本委員）
如斯處斷方ハ佛及ヒ日本ノ法律ニモ見ヘサル處ナリ
（箕作委員）
我邦ニ如斯處斷方ナキヲ以テ本案ニ於テハ之ヲ普通ノ處斷法方ニ改定スルヲ得サルモノヤ否ヲ質問アラン事ヲ望ム
（本尾委員）
諾然ラハ先ツ削除セハ如何ナルヤノ精神ヲ以テ質問セン
（長森委員）
「之ヲ隱匿シ」トハ如何
（本尾委員）
財產ノ實況若クハ業務上ノ關係ヲ隱匿スルヲ云フ
○本條ハ左ノ如ク修正セラレタリ但書ハ質問ノ上修正ニ決ス
第二百六十五條株式會社又ハ合資會社ノ取締役檢査役淸算人ニ於テ官廳裁判所若クハ總會ニ對シ又ハ廣吿ニ於テ書面或ハロ演ヲ以テ會社ノ財產若クハ業務上ノ宀貫況ニ就キ」雇僞四ヲ吿ケ又ハ奸曲ノ意ヲ以テ之ヲ隱匿シ又ハ官簿ノ登記ニ就キ虛僞ヲ屆出ル時ハ百圓以上五百圓以下ノ罰金ニ處ス事情重キ者ハ一年以內ノ禁錮ニ處シ又ハ之ヲ併科スル事ヲ得ヘシ（但書ハ未定）
○第二百六十六條
發起人株式申込又ハ株金拂込ニ就キ第百四十一條第百四十七條第百四十八條虛僞ヲ吿ル時ハニ十圓以上百圓以下ノ罰金ニ處ス
（本尾委員）
株式申込ハ例ニ依リ株式記名ト改ムヘシ
（岸本委員）
然ルトキハ千株ノ株主アルハ相違ナキモ株主中自己ノ氏名ヲ記スルハ差支アルヲ以テ他人ノ氏名ヲ記シ以テ株主トナランニ卽チ記名ノ虛僞アリシニ依リ本條ニ循ヒ罰セラル又場合ナキニアラス然レ供本條ノ精神ハ此等ヲ罰スルノ意ニハアラサルヘシ
（本尾委員）
或ハ之ヲモ罰スルノ精神ナルヤ詳カナラサレハ一應質問スル事トセン
（岸本委員）
記名ノ數又ハ拂込ノ高トセハ如何蓋シ立案者ノ精神此意ヨリ外ナラサルヘシ又實際ハ本條ノ虛僞ヲ最モ恐ルヘキモノトス會社ノ弊害アルハ單ニ此虛僞ヨリ生スルモノト云フモ過言ニアラサルヘシ果シテ然ランニハ罰金ハ少ク輕キニ過ルカ如シ
（本尾委員）
然リ就テハ之ヲ質問セン
（箕作委員）
本條ニハ第百三十七條以下ヲ援引スル方可ナルカ如シ
（委員長）
前條虛僞ノ上ニ「故ラ」ノ語アリ本條ニ至リ之ナキハ如何ナル理由ナルヤ質問スヘシ
（本尾委員）
諾
（箕作委員）
原語ニ據レハ前條虛僞ノ上ニ「故ラ」ノ語ナキモ本條ト同一ノ精神ナルニ依リ前條ノ「故ラ」トアル語ヲ削除セハ別段質問スルニ及ハサルカ如シ（之ニ決シ前條中「故ラ」ノ語ヲ削除ス）
○本條ハ左ノ如ク修正セラレタリ
第二百六十六條發起人ニ於テ株式ノ記名又ハ株金拂込ニ就キ（第百四十一條第百四十七條第百四十八條）虛僞ヲ吿ル時ハニ十圓以上百圓以下ノ罰金ニ處セラル可シ
○第二百六十七條
前諸條ニ於テ時ニ設ケタル罰則ノ外第五款中ノ規定ヲ犯ス者ニハ五圓以上百圓以下ノ罰金ニ處スル事ヲ得
○本條ハ別段異論ナク「犯ス者ニハ」ヲ「犯ス者ハ」ニ改メ他ハ原案ノ儘ニ決ス
○第二百六十八條
商社ノ業務擔當人取締役又ハ淸算人ノ外他ノ役員及ヒ使用人ニシテ故ラニ該員ノ犯則ニ加功シ又ハ自己ノ過失ニ由テ其犯則ヲ生セシメタル時ハ該員ヘ施スヘキ罰ヲ以テ之ニ處スヘシ
（本尾委員）
本條ハ業務擔當社員取締役又ハ淸算人ハ從令ヒ自己ノ所爲ヨリ生シタル犯則ニアラサルモ其他ノ役員又ハ使用人ノ過失等ヨリ起リタル犯則ニ對シ其役員又ハ使用人ト共ニ同一ノ刑ニ處斷セラルヽモノト爲スノ精紬肌ナリ
（周布委員）
例之ハ招牌ヲ揭クヘキ義務アル使用人之ヲ揭ケサリシ時ハ其使用人ヲ罰スルト共ニ取締役モ亦其刑ニ處斷セラルヽ場合ヲ云フ
（岸本委員）
若シ使用人故意ヲ以テ招牌ヲ揭ケサル事到然ナル時ハ取締役又ハ業務擔當人ヲ罰スル事ヲ得サルノ精神ナルヘシ
（本尾委員）
否兩者共ニ罰セラルヽノ精神ナリ
（岸本委員）
「フオート」卽チ過失トハ犯者ノ內心如何ヲ論セス其所爲ノ結果ヲ法律ニ於テ過失ナリト爲シタル時ニ限リタルモノトス
（本尾委員）
否立案者ノ意ハ使用者ニシテ善意ナル時ハ之ヲ過失トシ罰スルヲ得サルノ精神ナリ
（箕作委員）
「フオート」トハ過失ノミニアラサルカ如ク思料スルナリ
（委員長）
「フオート」ノ語ハ如何ナル意義ナルヤ一應質問スヘシ
（本尾委員）
諾
○本條ハ質問ノ上修正スル事ニ決セリ