○第五十回
明治十八年二月十三日
午前第十時開會
○第二百六十八條
（本尾委員）
本條會社トアルハ役員ト誤認スルノ恐レアルヲ以テ之ヲ總會ト改メソ亠事ヲ質セシニロエスレル氏モ異心議ナキ旨ノ答轍犲ヲ得タレハ先回開議ノ時訂正セシ如ク總會ニ改メン
○第二百六十九條
（本尾委員）
本條ニ每年トアルハ每年期ニ計算スルノ精神ナルヘシ然ルニ前條ノ半年每ニ總勘定云々ノ語ニ比較スルトキハ權衡其平ヲ得サルカ如シロエスレル氏ノ答辯ニハ之ヲ酷ニ論スルトキハ或ハ不都合ナルカ如シト雖モ凡利益ノ勘定ハ半年每ニナスモノトハ云ヘ一ケ年ノ積ヲ以テ計算スルヲ通例トス尤モ日本文ニテ反譯スルニ適當ノ文字ナシトセハ每年ノ文字ヲ削除スルモ可ナリ余ハ之ヲ削ルモ敢テ異議スル所ナシトノコトナレハ每年ノ文字ハ削除スル方可ナラン歟（之ニ決ス）
（渡邊委員）
然リ削除スヘシ
○第二百七十條
（本尾委員）
本條ハ準備金ニ就テノ質問ニシテ例之ハ此ニ百萬圓ノ會社ニシテ準備金ニ十萬圓ヲ積立アランニ商業ノ踐跌ヨリ十萬圓ノ損失ヲ釀シタル時其缺額ヲ準備金ヨリ補填シ置タルニ其後利益ヲ得タルヲ以テ準備金ノ缺額ハ此利益中ヨリ直ニ補嗔スヘキモノナルヤ若シ然リトスルトキハ利益配當ノ順序ハ如何スルヤノ質議ナリシロエスレル氏ノ答ニ準備金ナルモノハ利益中ヨリ單ニ積立置クニ止マリ利益ナキ時ニ當リ補嗔スヘキ性質ノモノニアラス此精ハ立ヲ爲ス所以ノモノハ咨ハ本減額ヲ補フカ爲メニ備ヘ置ク所ノモノナリ尤モ補嗔ノ順序ニ就テハ定款ニ於テ實際便宜トスル所ニ定ムルヲ得ヘシ例之ハ減額ヲ補填スルニハ利益アリタル時ニ當リ一時ニ繰入ルヘシト定ムルカ又ハ漸次ニ補嗔スヘシト定ムルカハ定款ニ於テ隨意之ヲ取極ムル事ヲ得ヘシ故ニ法律ニ於テハ準備金ハ減額ノ時ノ外補填スル事ヲ得ストノ原則ヲ設クルヲ以テ足レリトス
○第二百七十五條第二百七十八條
（本尾委員）
本條ハ檢査費用支出方ノ質議ナリロエスレル氏ノ答辨ニ株主ヨリ檢査ノコトヲ申立タルトキハ先ツ株主ヨリ差出サシメ檢査シタル後會社ニ於テ果シテ株主ノ申立ノ如ク不都合ノ所爲ヲ呈出シタルトキハ會社ニ之レカ費用ヲ支辨セシメ若シ又株主ノ申立正當ナラサル時ハ其申立タル株主ニ於テ負擔スヘキモノナリ而シテ第二百七十八條ノ場合ノ如キハ無論官ノ費用ニ屬スルモノトス
○第二百七十六條
（本尾委員）
前條ト本條トハ注解ニ依レハ株主ノ申立ヲ竢タス官ヨリ直ニ檢査スル事モ爲シ得ラル義カ如ク解釋セラルヽト雖モ此兩條ハ株主ノ申立アルトキニ限ルノ精神ナルヤ或ハ官ヨリ直ニ檢査スルモ亦本條ニ據ルヤノ質議ニ對シロエスレル氏ノ答辯モ此場合ニ於テハ官ニ於テ直ニ檢査スル事ヲ得ス注解ニ官ニ於テ直ニ爲シ得ルカ如ク陳述セシモ其精神ニ於テハ株主カ申立テタルトキハ官吏直ニ出張シテ會社ノ業務上ニ就キ取調フヘキハ恰モ官許ノ會社ニ官吏カ出張シテ檢査スルニ等シキモノナルコトヲ示シタルモノナリト
○第二百七十一條
（本尾委員）
本條ハ拂出後三ケ年ヲ經過スルトキハ惡意ナルモノト雖モ償還ノ義務ヲ免ルルヤ否ノ質議ナリロエスレル氏ノ答辨噛ニニ年間ヲ經過スルトキハ假令惡意ナルモ株主ヨリ償還セシムル事ヲ得ス然レ供其惡意ヲ以テ拂渡シタル役員ニ對シテハ何ケ年ヲ經過スルモ償還ノ義務ハ消滅スル事ナシト
○第二百七十九條
（本尾委員）
本條ハ代理委員ハ株主中ニ限リ撰任スルヤ或ハ又株主外ノ者ヨリ選任スルモ差支ナキヤ否ノ質議ナリシロエスレル氏ノ答辯ニ何レヲ撰任スルモ差支ナシ然レ供實際ニ於テハ株主中ヨリ委員ヲ撰ムヲ普通トナス而シテ此委員中ニテ代言人ヲ撰定シテ其取扱ヲ委任スルハ勿論始メヨリ代言人ニ委托シ取扱ハシムルモ法律上敢テ禁スル所ニアラス
又代理者ハ株主ニ代リタルモノトスルヤ或ハ總會ニ代リタルモノトスルヤノ質議ニ對シ同氏ノ答辯ニハ總會ハ無形人ニアラサルヲ以テ總會ノ代理トスルヲ得ス必ス株主ノ代理トセサルヲ得ス故ニ訴ヲ起スニ當テハ委任狀中ニ總會ノ決議ヲ以テ總株主何某コヽノ代理タルコトヲ起載セハ法律上ニ於テハ充分ノ効力アルモノトスト
○第二百八十三條
（本尾委員）
本條ニ何レノ場合トアルハ第二百八十一條ノ第一項ヨリ第六項迄ヲ包括スルヤ果シテ然ルトキハ第二項ノ如キ一回決議シタルモノ本條ニ於テ再ヒ決議セサルヲ得ス少シク重複ノ恐レナキニアラス如何ロエスレル氏ノ答辯ニ本條何レノ場合トアルハ第一項ヨリ第六項迄ヲ包含スルモノトス第二項ノ場合ノ如キハ再ヒ同一ノ決議ヲ爲スカ如シト雖モ本條ノ規定ハ會社解散ニ付テハ重大ナル關係ヲ有スルヲ以テ鄭重ニ之レカ手續ヲ履行セシムルニ過キス併シ實際ハ第二項ノ場合ニ於テハ直ニ本條ノ規定ヲ履行スルヲ以テ足レリトスルニ依リ別ニ之レカ爲メ決議ヲ要セサルナリ
第二間第六項ノ場合ニ於テ株主中解散ヲ不服ナリトシ尙裁判所ニ其解散處分ノ不當ナル事ヲ申立タル時ハ裁判所ニ於テ再ヒ判決ヲ下タスハ如何ナル理由ナルヤ
答辯ニ再度判決スルト雖モ其事柄ニ於テハ異別ナリトス如何トナレハ始メハ解散ヲ命シタル丈ノ處分ニシテ第二ノ判決ハ此解散ヲ不服ナリトシ申立タルニ就キテノ處分方ナレハ實際同一事件ヲ再度處分スルニハアラサルナリト
然ラハ第一項第二項ノ事柄ノ如キハ「事ヲルマーリテー」ヲ爲サシメサルモ可ナランカ
答否怠慢ヲ防クカ爲メノ再會ナレハ別段之ヲ爲サシムルモ差支ナカルヘシ
以上說明了
○第 條 商法草案第二百八十四條
第二百八十一條第三項ノ場合ニ於テ會社其營業ヲ六ケ月以上保續スル時ハ其株主ハ社員減少ノ後ニ取結タル會社ノ總テノ義務ニ就キ合名社員ト均シク責任ヲ負フ者トス
（本尾委員）
「社員減少」トアルハ「株主減少」ト改ムヘシ本條ノ精神ハ株主七名以下ニ至リタルニ尙ホ六ケ月以上營業ヲ保績スル時ハ合名社員ト均シク無限ノ責任ヲ負ハシムルヲ云フナリ
（細川委員）
本條ノ場合ハ解散シタル後ノ事ナリヤ
（本尾委員）
否解散スヘキニ解散セスシテ營業シ居ル場合ヲ云フ
（塩田委員）
資本額減少セスシテ人員ノミ減少スルノ場合アリヤ
（渡邊委員）
例ヘハ六名ノ株主ニシテ他ノ株主ノ株劵ヲ悉皆買入レタル時ノ如シ
（岸本委員）
合名會社トナルノ精神ナルヤ或ハ合名會社ト同一ノ處分ヲ爲スニ過キサルノ意ナルヤ
（本尾委員）
矢張株式會社トシテ之ヲ保續シ其責任ハ合名社員ト均シクシ無限ノ責任ヲ負ハシムルニ過キサルナリ
（岸本委員）
然ル時ハ株式會社ト稱シ合名會社ノ組織ト爲ス是レ法律ニ背キ且ツ會社法上アルヘカラサルノ事ナラスヤ
（本尾委員）
止タ合名社員ト同一ノ責任ヲ負フト云フニ過キス敢テ合名會社ト爲スニアラス
（委員長）
第二百八十一條ニ十日以內ニ解散スヘシトアル以上ハ六ケ月以上營業ヲ保續スル場合ハ生セサルカ如シ
（本尾委員）
七名以下ニ減少シタル事ヲ發覺セシ時ハ直ニ解散ヲ命スヘキナレ供場合ニ依リ三ケ月若クハ二ケ月モ其減少ノ發覺セサル事アリ例ヘハ無記名株劵ナルカ如キ會社ニ於テハ其株劵ノ名簿ナキヲ以テ實際六名ノ株主悉皆之ヲ攪有セシモ會社ハ容易ニ覺知スル事ナシ而シテ之ヲ覺知シタヤ既ニ六ケ月ヲ經過シタルトキハ其六名ハ無限責任ヲ負フヘキモノトスルナリ
（岸本委員）
株主ニハ實ニ不利益ナル條ト云ヘシ何トナレハ株主ノ知ラサル內ニ既ニ五名ニ減シタル場合アリ又無記名株劵ノ場合ニ於テハニ三年前ヨリ七名以下ニ減シタル事ナシトセス之ヲ判別スルハ晶裁判官ト雖モ容易ニ爲シ得サル事ナルヘシ
（本尾委員）
會社ハ每半年總勘定ヲ爲スヲ以テ實際分明ナラサル事少カルヘシ
（鶴田委員）
若シ株主カ故意ヲ以テ七名以下ノ減少ヲ隱諾シタル場合ニ於テハ本條ノ制裁ヲ付スル事最モ當ヲ得タルモノト認定ス
（渡邊委員）
原則ハ解散スヘキモノナレ供若シ發覺セスシテ解散セサル時ハト云フノ精融唄ナルヘシ
（周布委員）
本條ノ場合ハ既ニ解散後ノ事ナルヘシ如何トナレハ七名以下ニ減少スルヤ直ニ解散ノ處分ヲ爲サヽルヲ得サレハナリ故ニ若シ裁判所ニ於テ七名以下ニ減少シタル事ヲ發見シタル時ハ直ニ鯉襯散ノ處分ヲ命スルモノナルヘシ
（本尾委員）
否裁判所ニ於テ解散スヘシト命スルモ會社ハ七名以下ト雖モ利益ハ充分ナルヲ以テ若シ保護ノ意アル時ハ人員ヲ增加シテ七名以上ト爲シ營業スルヲ得ルナリ其減少スルヤ直ニ解散ノ處分ヲ爲シ得サルヨリ本條ノ制裁ヲ受クルニ至ルナリ
（長森委員）
註解ニ知ラサル株主トハ如何
（本尾委員）
七名以下ニ減少シタル事ヲ知ラサル株主ハ合名社員ノ責任ヲ負ハシムルニ及ハサルヲ云フ故ニ減少ヲ知ラサル株主ヲシテ本條ノ責任ヲ負ハシムルヲ得サルナリ必ス知リ得タル時ヨリ責任ヲ負フノ精神ナリトス
（岸本委員）
然レ供假令ニ月ニシテ知ルモ之レカ區別ナク法律ハ六ケ月經過ノ後ハ減少ヲ知リタルモノト看做シテ責任ヲ負ハシムルモノナルヘシ
（本尾委員）
然ラス株主五人ノ內ニ人ハ一月ニ殘三人ハ三月ニ之ヲ知リ得タル時ハ其時ヨリ合名社員ト均シキ責任ヲ負フノ精神ナリ
（岸本委員）
果シテ知リ得タル時ヨリ責任ヲ負フヘキモノトナラハ本條ハ實ニ了解シ難キ文面ナリ若シ本尾委員ノ說ノ如クソハ宜シク左ノ如ク改正スヘシ否ラサル時ハ決シテ正當ノ說明ト認定スルヲ得サルナリ
「株主ハ社員減少ヲ知リ得タルヨリ後ニ取結ヒタル會社ノ義務」云々
（渡邊委員）
六ケ月間ニ於テハ既ニ七名以下ニ減少シタル事ヲ知ラサル株主ハ決シテ無限責任ヲ負フ事ナシ要スルニ無限責任ヲ負フヘキ株主ハ必ス之ヲ知リ得タル時ヨリ起算スルノ精神ナルヘシ
（岸本委員）
法文ニ於テハ知リ得タル時ヨリ責任ヲ負フヘキ事ト見ル事ヲ得ス如何トナレハ六ケ月ノ期限ヲ支ヘタル以上ハ此期限後ハ悉ク知リ得タルモノト法律ヨリ推測スルノ精神ナルヘシ
（委員長）
六ケ月ノ起算ハ減少シタル時ヨリ爲スカ又ハ各株主ノ知リ得タル時ヨリ爲スカ及ヒ六ケ月ト爲セシハ如何ナル理由ニ據ルハ力ヲ質問スヘシ
（本尾委員）
孕諾
（委員長）
本條ノ修正ハ質問ノ上爲スヘシ
正午第十二時中止
午後第十二時三十分開會
○第 條 商法草案第二百八十五條
會社解散ノ後頭取ニ於テ第二百八十三條ニ記載シタル決議ヲ爲サンカ爲メニ速ニ總會ヲ招集スル事ヲ怠リ或ハ其決議ヲ株主ニ報知スル事ヲ怠リ或ハ官簿ニ登記スル事ヲ怠ル時ハ其怠慢ノ爲メニ會社又ハ他人ニ生セシメタル損害ニ就キ自己ノ全財產ヲ以テ責任ヲ負フ者トス
（本尾委員）
解散ノ後トアルハ不都合ナルヲ以テ「解散ノ際」ト改ムヘシ`
（長森委員）
本條ハ營業ヲ爲シ居ル場合ナルヤ
（本尾委員）
營業シ居ル場合莞アリ又既ニ營業ヲ停止セシ後ナル事モアルヘシ-
（長森委員）
取締役總會ヲ爲サヽル爲メ六ケ月以上營業ヲ保續スル事アリ此場合ニ於テハ取締役ハ本條ニ依リ株主ハ前條ニ從ヒ責任ヲ負フモノニシテ要スルニ取締役ト株主トヲ分テ兩條ニ記載シタルモノナルヘシ
（本尾委員）
然リ
（岸本委員）
「他人」ヲ「第三者」ト改メシカ是迄第三者ト云フ時ハ社外人ノミヲ指スノ語ナリ然ルニ本條ニ於テハ株主ヲモ包含スルナルヘシ
（本尾委員）
然リ
（岸本委員）
本條ニ連帶ノ文字ナキヲ以テ見レハ取締役ハ各自ニ全部ソ財產ヲ以テ負擔スレハ足レルカ如シ
（本尾委員）
本案ハ連帶ツテ負擔スルノ精神ナリ
（周布委員）
然レ供第二百二十七條第二百二十八條及ヒ本條ヲ比較スルニ連帶ノ文字ナキ時ハ或ハ疑ナキニアラサルナリ
（渡邊委員）
本條ハ怠リテ爲シタル者ノミ全財產ヲ以テ責ヲ負フヘキニアラス之ニ關係セサル取締役ト雖モ怠リヲ爲シタル者ト連帶スルノ精神ナリ
（委員長）
連帶ノ文字ナキモ全財產ヲ以テトアル時ハ連帶ノ意味ナルヤ否ヲ一應質問スヘシ
（本尾委員）
諾
○本條ハ左ノ如ク修正スル事ニ決セリ
第二百八十五條會社解散スヘキ場合ニ於テ取締役第二百八十三條ニ記載シタル決議ヲ爲サンカ爲メ速ニ總會ヲ招集スル事ヲ怠リ或ハ其決議ヲ株主ニ報知スル事ヲ怠リ或ハ登記スル事ヲ怠ル時ハ其怠慢ノ爲 メニ會社又ハ第三去判ニ生セシメタル榻一害ニ就キ自己ノ全財產ヲ以テ責任ヲ負フモノトス
○第 條 商法草案第二百八十六條
會社解散ノ時ハ直ニ營業ヲ停止スヘシ但シ仕懸リノ取引ヲ完結シ或ハ在來ノ會社義務ヲ盡ス爲メナル時ハ此限ニ在ラス
頭取若シ會社解散ノ後ニ於テ尙ホ營業ヲ保續スル時ハ自己ノ全財產ヲ以テ責任ヲ負フ者トス
（本尾委員）
第二項ハ營業ヲ停止スヘシノ下ニ挿入シテ一文章ト爲スヲ可トス卽チ左ノ如シ「會社解散ノ時ハ仕懸リノ取引ヲ完結シ或ハ在來ノ會社義務ヲ盡ス爲メノ外直ニ營業ヲ停止スヘシ取締役若シ尙ホ營業ヲ保續スル時ハ自己ノ全財產ヲ以テ委任ヲ負フモノトス」
（細川委員）
本條ヲ完結スルニハ期限ナキヤ
（本尾委員）
然リ
（長森委員）
既ニ解散シタル時ハ決算人ニ於テ處分スヘキモノナレハ本條ハ決算人ノ爲ス場合ナルヘシ
（本尾委員）
本條ノ場合ハ決算人ニ引渡迄ノ事業ナレハ矢張「取締役ニ於テ之ヲ爲スモノ」トス
（岸本委員）
次條ニ依テ見ル時ハ決算人ノ爲ス場合ノ方多カルヘシ故ニ本條ニ於テハ決算人ノ關係スル事ナキニアラサルヘシ
（本尾委員）
否本條ハ決算人ヘ引渡ス迄ノ手續ニシテ未タ決算人ノ業務ト爲ラサルナリ
（岸本委員）
併シ注解ニ依テ見ル時ハ既ニ解散スルヤ否直ニ事業ヲ決算人ニ移轉スルモノトス果シテ然ラハ本條ノ場合ハ決算人ノ爲スヘキ事業ニシテ取締役ノ關涉スヘキモノニアラス其取締役ノ爲ス場合ハ第二百八十九條ニアルカ如ク決算人ノ補助トシテ爲スニ過キサルナリ
（渡邊委員）
本條第一項ハ金目社ハ斯クコノ外ハ業務ヲ取扱フ事ヲ得ストノ意ニ外ナラスシテ之ヲ爲スモノハ決算人ナルモ取締役ナルモ法律ハ毫モ關係ナク止タ會社ニテ爲ス事ヲ得サル旨ヲ示シ第二項ハ取締役カ隨意ニテ營業シタル時ノ制溫裁ヲ規定スルニアリ
（本尾委員）
合名會社ハ總會ナク又社員ニ報吿スル等ノ手續ヲ爲スニ及ハス直ニ決算人ニ事務ヲ引渡スヲ得ヘシト雖モ之ニ反シ株式會社ハ總會ヲ開キ報吿ヲ爲ス等ノ手續ヲ爲ス間幾千ノ日時ヲ費サヽルヲ得ス故ニ其間取締役カ此等ノ事業ヲ爲シ決算人ヲ定メタル時ハ直ニ決算人ニ引渡スヘキモノトス
（渡邊委員）
要スルニ本條ノ精神ハ會社ニ對シテノ規定ナレハ取締役ニテモ決算人ニテモ更ニ關係ナキモノトス
（周布委員）
本條ハ決算人ニ引渡迄取締役ニ於テ爲スナレ供決算人カ引續ク後ニ於テモ矢張取扱ハサルヲ得ス然ルニ其決算人カ新タナル事業ヲ始メタルトキノ處分ハ如何スルヤ
（本尾委員）
其場合ニ於テハ決算人ヲ罰スルノミナリ又法文ニ決算人ノ名義ヲ揭ケタル以上ハ決シテ取締役ノ爲スヲ得サルモノナリ
（細川委員）
解散シタル時トアルハ前條ノ場合ト同シク未タ總會ニ於テ解散ノ決議ヲ爲サヽル前ヲ云フヤ
（本尾委員）
然リ尤モ原文ニ於テモ聊カ疑ヒナキニアラサルヲ以テ一應質問シテ訓說明ヲ要スヘシ
○本條ハ左ノ如ク修正ヲ爲ス事ニ決セリ
第二百八十六條會社解散シタル時ハ仕懸リノ取引ヲ完結シ或ハ在來ノ會社義務ヲ盡スノ外直ニ業務ヲ停止スヘキモノトス
取締役ニ於テ仍ホ業務ヲ保續スル事アル時ハ之ニ對シテハ自己ノ全財產ヲ以テ責任ヲ負ハサルヘカラス
午後第二時閉會