○第四十七回附錄
明治十八年二月三日
欠席 岸本委員
午前第十時開會午前ハ農商務卿上申會社說立處分方布達案ニ付討議アリシヲ以テ要㸃ヲ筆記スル事左ノ如シ
農商務卿上申書
會社設立處分方布達之義ニ付上申
會社設立願ニ付處分方之義ハ曾テ內務省管理中明治七年一時假權ノ意ヲ以テ會社創立ノ申牒ニ封スル指令文按ヲ經伺シ同年以來其創立願ニハ「追テ一般ノ會社條例制定相成候迄人民ノ相對ニ任セ候義ト可相心得事」トノ指令ヲ付シ來リ今日ニ至ル實ニ十年ノ久シキヲ重ネ示後條例ノ急旋ヲ熱望スル所以井ニ其頒布ヲ遲繧鵬セラルヽ時ハ會社ノ敝万定口漸川ク將サニ增長セントスルノ實勢アル次第等事實ヲ陳シ再三及上申候義ニ有之今日未タ其制定ヲ見ルノ場合ニ至ラス其弊害ノ盆々相加ハルハ民業振起上ニ於テ最モ遺憾トスル處ニシテ試ニ其近キモノニ付一ニヲ擧レハ石川縣下金貸會社東京府下勤業資本會社ノ內情ノ如キハ良民ニ害毒ヲ流スノ最太シキモノニ有之畢竟會社法ノ準據スヘキモノナク單ニ人民ノ契約ニ放任スルノ結果ト云ハサルヘカラス然ルニ今日速ニ之ヲ檢束スルノ方ヲ設ケサレハ人民ハ會社ヲ以テ單ニ欺騙詐術ノ機關トシ終ニ此有盆ノ方法ヲモ蛇蝎視シ目下ノ急務タル共カ合資ヲ以テ海外貿易ヲ振起スヘキ機ニ際シ却テ結合力ヲ沮喪セシムルハ自然ノ勢ニシテ實ニ慨嘆ノ至ニ堪ヘス事業奬勵財產保護ノ上ニ於テ一大缺典トス現ニ會社條例編纂局ノ設アリト雖モ該條例御制定ニ至ル迄ハ尙少クモ一兩年ノ日子ヲ費サ」ルニ得サル義ト被相考候間右御制定迄ハ行政上ノ取扱ヲ以テ會社設立ハ總テ當省ノ允許ヲ要シ候事ニ相定メ適宜ノ取締向相立度然ル時ハ從來ノ弊害ヲ防止スルヲ得ヘキハ勿論其內人民ニ於テモ會社ニ盆ノアル處ヲ發明シ却テ他日完全ノ條例ヲ利用スルノ階梯トモ相成ヘクト被相考候ニ付差向便宜取締方相設ケ篤ク保護相加候樣致旁以テ玆ニ聊鄙見ヲ具シ別紙布達按府縣ヘ內達案及ヒ會社取扱內則相添相伺候間事情御洞察至急御裁定相成候樣致度此段申請候也
明治十八年一月十四日
農商務卿伯爵西郷從道
太政大臣公爵三條實美殿
布達按
第 號
諸會社設立之儀從來人民相對ニ任セ候處自今營利ノ目的ヲ以テ設立スル諸會社（銀行事業ヲ營ム會社、鐵道、電信、燈臺、鑛山ノ會社ヲ除ク）ハ會社條例制定相成候迄總テ農商務卿ノ許可ヲ受ク可シ
右布達候事
年 月 日
太政大臣
農商務卿
各府縣ヘ內達案
今般第號布達相成候條ニ付ハ會社設立願等之義當省限リ別紙內則取設候條右ニ準據シ可取扱尤モ會社組織上必要ノ條項ハ其時々及指令候積ニ付爲心得此旨及內達候也
年 月 日
農商務卿
各府縣知事縣令宛
會社取扱內則
第一款
無限會社（ニ人以上供資營業シ其責任各自ノ財產ニ及フモノ）
第一條 無限會社ヲ設立セントスル者ハ契約證書ヲ作リ總社員連、署シ農商務卿ノ許可ヲ受ク可シ
但申合規則等ヲ設クル時ハ契約證書ニ添テ差出スヘシ
第二條 契約證書ニハ左ノ各項ヲ揭載ス可シ
一 社名
二 設立ノ場所
三 營業ノ種類及其目的方法等
四 資本總額及各自ノ持部高
五 各社員ノ氏名住所
六 無限責任タル事
七 存立ノ期限
八 會社決議勘定ノ期月
第三條 會社設立ノ許可ヲ得タル時ハ開業前ニ左ノ各項ヲ公吿ス可シ
一 社名
二 設立ノ場所
三 營業ノ種類
四 資本ノ總額
五 各社員ノ氏名住所
六 無限責任タル事
七 設立ノ年月日
八 存立ノ期限
第四條 社名ニハ社員一名又ハ數名ノ氏名ヲ用ヒ會社タルノ稱號ヲ付ス可シ
第五條 社員ハ其持部高ノ全部又幾部ヲ他人ニ讓渡スヲ得ス
第六條 社員退社セントスル時ハ總社員ノ承諾ヲ得テ農商務卿ニ屆出可シ
第七條 新ニ入社セントスル時ハ總社員ノ承諾ヲ得其者ノ氏名住所及特部高等ヲ農商務卿ニ屆出ヘシ
第八條 社員若シ死亡シ相續人之カ嗣員トナリタル時ハ其旨ヲ農商務卿ニ屆出可シ
第九條 社員在社中ニ係ル會社ノ義務ニ付テハ退社後一ケ年間ハ其責ヲ負擔スヘキ旨ヲ契約セシムヘシ
第十條 社員身代限又ハ刑事等ニ因リ社員タルノ資格ヲ保續スル能ハサル時ハ其事由ヲ書面三記シ總社員連署ヲ以テ農商務卿ニ屆出可シ
第十一條 會社ハ社員ノ決議又ハ事故ニ依リ其會社ヲ解散セントスル時ハ總社員ノ連署ヲ以テ農商務卿ニ屆出且公吿ス可シ但此場合ニ於テ特ニ結算人ヲ撰定シタル時ハ其者ノ氏名住所等ヲ記載シ總社員ノ連署ヲ以テ農商務卿ニ屆出且公吿ス可シ
第二款
差金會社（發起人五人以上ニシテ發起人及役員ヲ除クノ外社員ノ責任其供資ニ止ルモノ）
第十二條 本款ニ定メタル規則ノ外ハ總テ無限會社ノ規則ヲ適用スヘシ
第十三條 差金會社ノ契約證書ニハ左ノ各項ヲ揭載スヘシ
一 社名
二 設立ノ場合
三 營業ノ種類及其目的方法等
四 資本總額
五 有限責任タル事
六 有限無限責任社員ノ別及其氏名住所並各自ノ持部高
七 存立ノ期限
八 會社決算勘定ノ期月
第十四條 會社設立ノ許可ヲ得タル時ハ開業前ニ左ノ各項ヲ公吿ス可シ
一 社名
二 設立ノ場所
三 營業ノ種類
四 資本總額
五 有限主貝任タル事
六 有限無限責任社員ノ別及其氏名住所井各自ノ持部高
七 設立ノ年月日
八 存立ノ期限
第十五條 社名ニハ差金ノ二字ヲ加フヘシ但責任有限社員ノ氏名ヲ用ルコトヲ得ス
第十六條 有限社員ハ社務ニ干涉スル事ヲ得ス但業務ノ景況ヲ推問シ又ハ帳簿ヲ展閱スル事ヲ得
第十七條 有限社員ヲ入社セシムルニハ有限社員ノ承諾ヲ要セスト雖供其氏名住所及持部高等ヲ農商務卿ニ屆出可シ
第十八條 無限社員ハ會社解散スルニ非サレハ退社スル事ヲ得ス第十九條會社存立中ハ供資ノ引出ヲ許サス
第二十條 會社損失等ニテ資本額ヲ減少シタル時ハ其資本額ニ充ル地迄利釜配當ヲ停ムヘシ
第二十一條 有限社員ハ會社ノ承諾ヲ得ルニ非サレハ其持部高ヲ他人ニ讓與スルコトヲ得ス
第二十二條 會社ハ每年一回以上總會議ヲ開キ其議事認定ハ出席社員ノ多數決ヲ以テス可シ
但社員五人以上ノ請求アル時ハ役員ニ於テ臨時總會ヲ開クヘシ
第三款
株式會社（發起人七人以上ニシテ株主ヲ募リ株劵ヲ發行スルモノ）
第二十三條 株式會社ヲ設立セントスル者ハ起業目論見圭ロヲ作凵リ發起人連署シ農商務卿ノ許可ヲ受クヘシ
第二十四條 起業目論見書ニハ左ノ各項ヲ揭クヘシ
一 社名
二 設立ノ場所
三 起業ノ目的
四 營業ノ方法
五 資本ノ金額及ヒ其使用ノ槪算
六 株式ノ總罫數及ヒ一株ノ金額
七 發起人所持ノ株數
八 株主ノ責任
九 存立期限
第二十五條 發起人ハ資本總額四分ノ一以上ノ株數ヲ所有ス可シ而シテ退社後ト雖モ一ケ年間ハ在社中ト同一ノ責任ヲ負シムル旨ヲ定款中ニ揭クヘシ
第二十六條 發起人ハ募集ノ株數資本ノ全額ニ滿タル時ハ株主ヲ招集シテ創業會ヲ開キ定款申合規則等ヲ議定スヘシ
第二十七條 創業會ノ議事ハ株主總員ニ分ノ一以上ニシテ資本總額ニ分ノ一以上ヲ引受ル者ノ同意ヲ以テ決ス可シ
第二十八條 會社ハ各株主ヲシテ各株式四分ノ一以上ノ金額ヲ拂込マシメ定款申合規則ヲ地方廳ニ差出スヘシ
第二十九條 地方廳ハ之ヲ受ケ其金額拂込ノ相違ナキニ於テハ之ヲ農商務卿ニ差出シ開業冤狀ノ下付ヲ申出可シ
第三十條 株金拂込殘額ノ仕拂期限及ヒ其方法ハ之ヲ定款中ニ揭ク可シ
第三十一條 會社ハ開業免狀ヲ得タル上ハ左ノ件々ヲ新聞紙其他ノ方法ヲ以テ公吿スヘシ
一 社名
二 設立ノ場所
三 營業ノ種類
四 資本金額、株數及一株ノ金額井既納額
五 株主ノ責任
六 重立タル役員ノ氏名住所
七 設立許可シ年月日
八 存立ノ期限
第三十二條 社名ハ株主ノ氏名ヲ用ル事ヲ得ス又他ノ株式會社ト同名ナル事ヲ得ス
第三十三條 社名ニハ會社タルノ稱號ヲ付シ株式ノ二字ヲ加フ可シ
第三十四條 會社ハ社名ヲ刻シタル社印ヲ作リ印鑑ヲ其所在ノ郡區役所ニ納ムヘシ若シ重立タル役員ノ役印ヲ刻シタル時ハ同樣其印鑑ヲ納ム可シ
第三十五條 會社ハ公文報吿證劵約定證書類ニ其社名ヲ記シ社印井主務役員ノ印ヲ併捺ス可シ
第三十六條 株式ハ一株每ニ株劵一通ヲ作リ番號ヲ付シ社印ヲ捺シ社名及ヒ株主ノ氏名ヲ付シ且重立タル役員ノ印ヲ押捺ス可シ第三十七條株金全額ノ拂込以前ニ於テハ會社役員ノ承諾ヲ得ルニ非サレハ株式ヲ受授賣買スルヲ得ス但其承諾ヲ得タル時ト雖モ原所有主ハ一ケ年間其未納額ヲ保證ス可シ
第三十八條 會社存立中ハ株金ノ拂戾ヲ要求スル事ヲ得ス
第三十九條 會社ハ株主名簿ヲ作リ左ノ件々ヲ記載ス可シ
一 各株主ノ氏名住所
二 各株主所有ノ株數及株劵ノ番號
三 株金既納額
四 株式ノ受授賣買及其年月日
第四十條 重立タル役員ハ三名以上ニシテ相當ノ株式ヲ所有スルモノトス但シ其株式ハ會社ニ預ケ置ク可シ
第四十一條 重立タル役員在任中ニ生シタル會社ノ義務ニ付テハ解任後一ケ年間ハ連帶シテ無限ノ責任ヲ負ハシムル事ヲ定款ニ定ムヘシ
第四十二條 會社株主ハ株主中ヨリ檢査役ヲ置キ會社ノ業務及出納其他ノ要務ヲ監督【セシムヘシ
第四十三條 重立タル役員及檢査役ハ株主總會ニ於テ之ヲ撰擧シ地方廳ニ屆出可シ
第四十四條 株主ハ會社ノ出納損盆勘定業務ノ景況等ノ報吿ヲ認定スル爲メ定期ノ總會ヲ開ク事ヲ得ヘシ
第四十五條 株主五人以上ニシテ資本總額五分ノ一以上ニ當ル者ノ請求アル時又ハ重立タル役員ニ於テ要用ト認ル時ハ臨時總會ヲ開ク事ヲ得ヘシ
第四十六條 左ノ件々ハ株主總員三分ノ一以上ニシテ資本總額ニ分ノ一以上ニ當ル株主出席ノ上其議決權四分ノ三以上ノ同意ニ非サレハ決スル事ヲ得ス
一 社名ヲ改ル事
二 本店ヲ移轉シ及支店ヲ廢置スル事
三 資本金額ヲ增減シ及株金ヲ變更スル事
四 滿期ニ至ラスシテ解散スル事
第四十七條 前四項ヲ改ムル事ヲ議決シタル時ハ農商務卿ノ認可ヲ得テ新聞紙又ハ其他ノ方法ニ依リ之ヲ公吿ス可シ
但資本金額ノ減少ハ公吿ノ日ヨリ六十日ヲ經過シタル後實行ス可シ
第四十八條 重立タル役員ハ株金拂込延滯ノ株主ニ對シ十五日以上ノ期限ヲ定メ督促シ筒拂込マサル時ハ其株式ヲ會社ヘ引取リ之ヲ公賣ニ付シ其延滯ノ金額利子等壹差引剩餘アラハ之ヲ還付シ不足アラハ之ヲ償ハシムヘシ
第四十九條 會社ハ其株式ヲ所有シ又ハ抵當トシテ之ヲ受取ル事ヲ得ス
第五十條 會社ハ每年一度以上損盆ノ精算ヲナシ財產目錄及出納比較表ヲ作リ株主總會ノ認定ニ十日以內ニ出納比較表ヲ公吿ス可シ
第五十一條 會社資本鴃額ヲ生シタル時ハ利益ノ配當ヲ停止シ其缺額ヲ補フヘシ
第五十二條 會社ハ每年利益ノニ十分ノ一以上ヲ引去資本總額四分ノ一ニ充ル迄準備金トシテ之ヲ貯藏ス可シ
第五十三條 會社ハ其本店及支店ニ株主名簿起業目論見書定款申合規則財產目錄帳出納比較表ヲ備置キ營業ニ妨ケナキ時間ハ望ノ者ニ檢閱ヲ許ス可シ
第五十四條 會社ハ左ノ場合ニ於テ解散スルモノトス
一 總會ニ於テ議決シタル時
二 資本金額四分ノ一未滿ニ減シタル時
第五十五條 會社解散スル時ハ直ニ營業ヲ停止シ各株主ニ通知シ解散ノ事由及其年月日ヲ記シタル書面ヲ差出シ農商務卿ノ認可ヲ受ク可シ
第五十六條 會社解散ノ場合ニ於テハ結算ノ爲メニ非サレハ其財產ヲ處分スル事ヲ得ス
第五十七條 株主ハ會社解散ノ通知ヲ得タル時ハ株式ヲ賣渡シ又ハ蝋議池假ス事ヲ得ス
第五十八條 會社解散ノ場合ニ於テハ株主總會ヲ開キ結算人ヲ撰擧シ其者ノ氏名住所ヲ役員連署ノ上農商務卿ニ屆出可シ
第五十九條 結算人ハ其任ヲ定メタル日ヨリ六十日以內ニ債主負債主ノ名簿及負債額資產額ヲ調査シテ其比較表ヲ作リ株主總會ノ認定ヲ經テ地方廳ニ差出シ且ツ公吿ス可シ
第六十條 結算人ハ株式ノ未納額タル時ハ結算ノ爲メニ之ヲ徵收スル事ヲ得ヘシ
第六十一條 結算人其事務ヲ結了シタル時ハ結算報吿書ヲ株主總會ニ差出シ認定ヲ受ケ其旨ヲ地方長官ニ屆出且公吿ス可シ
第六十二條 會社ハ每期計算報吿書ノ寫ヲ地方廳ニ差出ス可シ第六十三條會社設立ノ許可ヲ受ケタル日ヨリ一ケ年以內ニ開業免狀ノ下付ヲ請ハサル時ハ其許可シ效ヲ失フ者トス但延期ノ許可ヲ與ヘタル時ハ此限ニアラス
第四款
雜則
第六十四條 會社ノ創業費ハ社員又ハ株主ノ承諾ヲ得ルニ非サレハ發起人自己ノ財產ヲ以テ擔當セサル可ラス
第六十五條 會社ノ社員拜株主ハ內國人ニ限ルヘシ
第六十六條 會社ノ設立ヲ出願シタル時ハ株式會社及差金會社ハ發起人無限會社ハ其社員平素ノ行狀等篤ト調査ノ上具申ス可シ第六十七條無限會社ノ設立ヲ出願シタル時ハ地方廳ニ於テ社員ノ財產其會社ノ資本額ニ適應スルヤ否ヲ査明ス可シ
第六十八條 株式會社第一期拂込金高ハ郡區役所又ハ戶長役場ニ於テ其會社ノ帳簿等ヲ査閱シ確實ナルヲ證明セシメ然ル後開業免狀下付ノ手續ヲ爲ス可シ
第六十九條 地方長官ハ會社資本五分ノ一以上ニ當ル社員株主ヨリ正當ノ申立ヲ爲ス時又ハ長官ニ於テ必要ト認ル時ハ特ニ官吏ヲ派遣シ會社ノ業務及財產ノ實況ヲ檢査セシム可シ
（渡邊委員）
本官ハ如此粗造ナルモノヲ發布スル時ハ却テ欺騙ヲシテ增長セシメ一モ取締ノ主義ヲ貫徹スル事能ハス故ニ會社條例施行ノ楷梯トアレ供若此ノ如キモノヲ發布セント欲セハ完全ナルモノヲ發布セサルヘカラス又本案ニテハ現在設立ノ會社ニハ一モ制裁ナク是ヨリ後設立セントスル所ノ會社ノミヲ制裁セントスルニアリ故ニ本案ハ先ツ發布セサルヲ可トス
（河上委員）
勿論法律ニ於テハ欺騙ヲ塞ク事ヲ得ス何ントナレハ其欺騙タル事實ノ外部ニ發顯スル以上ニアラサレハ塞ク事能ハサレハナリ然レ供又幾分カ其欺騙ヲ未然ニ防クノ策ナキニアラス其策タルヤ先ツ會社ハ亠農商務卿ノ許可ヲ受クヘキモノト爲シ農商務卿ニ於テ欺騙ヲ爲スノ恐レアル會社ト看認ル時ハ許可ヲ與フルヲ許サストセハ可ナルヘシ定款ノ如キハ附從スル所ノモノニシテ農商務卿ノ主トスル見込ハ許可シ一㸃ニアリトス
（細川委員）
本官ハ本案ヲ以テ弊害ヲ全ク消除スルハ保證シ能ハスト雖モ之レカ發布ノ利害ヲ論セハ先ツ利益アルモノト認定ス
（渡邊委員）
本官ハ決シテ內規ヲ設クヘカラスト云フニアラス本案ノ如キ粗造ノ內規ナレハ寧ロ設ケサルノ優レニ如カスト云フニア騙リ故ニ强テ今日內規ヲ設ケサルヲ得サル事實アルニ於テハ會社條例草案ヲ以テ當分內規ト爲スヲ可トス
（長森委員）
內規ハ太政官ノ決裁ヲ經ヘキモノナルヤ或ハ屆ノミニテ可ナルモノナルヤ
（周布委員）
內規ノ如キハ屆ナク供施行スルヲ得
（長森委員）
本案ハ素ヨリ完全ノモノニアラサレ供今少ク會社條例中ヨリ必要ノ部分ヲ拔率シテ追補セハ或ハ發布スルモ可ナルヘシ併シ內規ハ別段太政官ヘ屆クルニ及ハサルモノトナレハ今此ニ於テ修正スルモ盆ナキカ如シ
（本尾委員）
本案起草ノ精神ハ會社條例發布ノ楷梯タランヲ欲シ併冨セテ條例制定迄ノ弊害ヲ防クニアリ而シテ實際ノ手續ヲ聞ケハ會社設立ヲ出願スル者アル時ハ縣令ニ於テ如此內規アルニ依リ此內規ニ從フテ規則ヲ設クヘキ樣命令スルトノ事ナレハ本案ノ如キ不完全ノ內規ヲ設クルハ不可ナルヘシ何トナレハ一閱スルニ會社條割ノ楷梯ニモナラサルノミナラス卸テ欺騙者ノ弊害ヲ醗生スルノ標率トナルノ恐レアレハナリ
（委員長）
上申書中會社條例制定ハ今ヨリ少ク供一兩年ノ日子ヲ費ス事云々依テ此間本案ヲ以テ取締ヲ爲サントスルカ如シ併シ會社條例制定ハ今ヨリ一兩年ノ日子ヲ費ス事トモ思ハレス況シテ本案ノ如キ不完全ノ內規ヲ設タルハ害アルモ寧旨盆ナキモノト認定ス
（箕作委員）
嘗ツテ細川委員ト協議セシコトアリコト建言ニ似タリト雖トモ聊サカ管見ヲ申述セン抑々モ法律ハ實際イニ適合ウスルモノニアラサレハ發布スルモ利益エキナキノミナラスカヘツテ弊害ヲ釀生スルノ恐レアリ是ヲ以テ單行ノ法律ト雖モ立法官タルモノハ須ラク謹愼實際ノ狀況ヲ視察シテ立案セサルヘカラサルナリ我邦今日ノ如キ日ニ月ニ法律ノ發布ナキハアラス然ルニ其發布後實際ニ適合セス或ハ改正或ハ取消シ若クハ一時處分法ヲ設クルニ至ルハ恐クハ實際ノ如何ヲ論セス重モニ机上ノ推察法タルニ過キサルヲ以テナリ本官以爲ラク會社條例モ亦如此轍ヲ履マサラン事ヲ希望ス而シテ其轍ヲ履マサルノ法他ニアラス先ツ反譯ノ校正ヲ完了シタル時ハ之ヲ農商務卿ニ下付シ其實況ニ適合スルヤ否ヤヲ經驗シテ其利害得失ニ付更ニ意見變ヲ差出サシメ其間一先ツ當局ヲ閑チ其意見書呈出ノ上更ニ復タ本草案編纂トシテ開局セラレン事ヲ望ム民法草案モ亦今日ノ場合ニテハ會社條例ト同シク反譯校正會ト爲シ其校了ノ草案ヲ諸裁判所ニ下付シ實際況狀如何ヲ申述セシメタル上更ニ眞ノ民法草按ヲ作ラントスル本官ノ意見ナリ併シ民法編纂全委員ノ意見ニアラサレ供亦殆ント一致贊成ヲ得ソトスルノ里鼠況ナリ要スルニ本官ノ意見ハ如斯
（渡邊委員）
民法ノ如キハ慣例法ニ基クモノ少カラサルニ由リ或ハ可ナラン然レ供商法ニ至テハ民法ト同一ニ論スルヲ得サルヘシ
（細川委員）
此內規ハ箕作委員ノ述フル所ノ會社條例草按ヲ農商務卿ニ下付シ實際ノ經驗ヲ爲スト同一ノ效力アルモノト思料ス
（箕作委員）
農商務卿ノ配慮スル所ハ今ヨリ少ク供一兩年ノ日子ヲ費弘ト云ラニ在リ故ニ會社條例ヲ先ツ校正會ノミトセハ來ル五月中ニハ整頓スルナラン然ル時ハ會社條例草案ヲ內規ト爲シテ施行スルヲ可トス
（渡邊委員）
若シ會社條例草案ヲ內規トセンカ罰判及ヒ公吿ニ至テハ如何施行スルヤ此條例ニシテ罰則及ヒ公吿ナケレハ施行スルモ殆ント利益ナキモノナリ
（箕作委員）
然リ罰則ニ至テハ實ニ困難ナリ公吿ノ如キハ一々縣令ヨリ命令スル事トセハ行ハレサル事ニモアラサルヘシ
（塩田委員）
本官ハ先ツ會社條例ヲ布吿シ實際ノ景況ニ依リ改正增補スルヲ可ト思料ス
（本尾委員）
然リ民法刑法ノ如キハ殆ント慣例ニ基クモノニシテ之カ增減ヲ議スルハ机上ノ敢テ能クスヘキ所ニアラス然レ供會社設立ハ近來歐州ヨリ輸入シ來リタルモノニシテ未タ今日ニ於テハ慣例ト稱スル程ノ事項アラス故ニ會社條例ヲ議定スルハ民法刑法ノ如ク困難ナルモノニアラサルナリ
（渡邊委員）
本官モ速ニ會社條例ヲ布吿シ然ル後實際ノ都合ヲ斟酌シテ時々改正墸補スルヲ以テ可ナリト思料ス併シ良策ハ商法草案ヲロエスレル氏ノ建白書ト爲シ民間ニ發布シ又ハ賣捌カセ商人及學士ヲシテ充分硏究セシメ一兩年ヲ經テ後眞ノ草案ヲ編纂シテ布吿スルニ在リ然レ供此策ハ或ハ言フヘクシテ行ハレ難カルヘシ
（鶴田委員）
本案ノ精神ハ都テ會社條例制定迄許可ヲ受クルヲ要スルナリ然ル時ハ此內規ニ依リ設立シタルニニ年ノ後會社條例ノ發布アル時ハ會社條例ニ從ヒ組織ヲ變更スルヤ或ハ設立ノ際存立期限ヲ十五年トスル時ハ假令會社條例發布スルモ其十五年間ハ此內規ニ依テ處分スルモノナルヤ
（河上委員）
立案ノ精神ハ會社條例發布ノ時ハ組織ヲ變更スルモノナリ
（鶴田委員）
然レ供此案ニ依テ見ル時ハ今日此案ニ基キ設立期限ヲ定メタルモノハ假令會社條例ノ發布アリト雖モ矢張此案ニ許可書ニ基キ十五年間トスルトキハ其年限中ハ此案ニ依テ支配セサルヘカラス
（渡邊委員）
會社ノ弊害ハ許可シニ字ニアルヲ以テ此案ヲ發布スルヨリ一ノ布達ヲ出シ是迄會社ノ設立ハ相對ニ任セ官許ノ文字ヲ用ヒ不苦候處爾來ハ會社設立スルモ官許ノ二字ヲ用ユルコト不相成旨ヲ達セハ現今ノ弊害ヲ防壓スル此案ヲ須布シテ緊束スルニ勝ル萬々ナラン
（河上委員）
先刻會社設立期限十五年內ニ會社條例頒布ニナリタルトキハ如何此案ニ依許可シタルモノナレハ假令頒布アルモ十五年間ハ會社條例ノ支配ヲ受サルヘシトノ質議アリシカ如此場合ニ至テハ酷ヨリ寬ニ移ヲ以テ新法ニ服從スルハ勿論ノ義ナリト信ス
（細川委員）
本官ハ始メヨリ此按ヲ頒布スルモ不可ナキコトヲ陳述シ置キタリ故ニ諸官ノ論スラル々如ク弊害ヲ防壓スルニハ寸毫ノ利益ナシトハ斷言シ得サルナリ一體此案ノ精紳ハ弊害ヲ防壓セントスルニ在ルナレ供一方ニ於テハ會社ニハ盡ク許可ヲ與ヘテ盆團結力ヲ盛ナラシメ會社ヲシテ勃與セシムルノ精神ニモアルナレハ一毫タモ不可アルコトナシ加之主務省ニ於テハ此案ヲ以テ先ツ弊害ヲ防クニ足ルモノト認メテ呈出シタルモノナレハ今日此會場ニ於テ弊害ヲ防壓スルニ足ラスト斷言スルヲ得サルヘシ故ニ主務省ノ意見ニ從テ內規ヲ設クヘシ然シ供諸官ノ論㸃會社條例迄總シテ現今ノ儘トシ一ノ布達ヲ要セスト謂フニ歸着セハ勿論本官ニ於テ異存ヲ抱クコトナシト雖モ此案ニテハ不完全ナリ其方法ヲ變セヨト云フカ如キ論者ニハ加擔スル事ヲ得サルナリ
（委員長）
鶴田委員ニ向テ曰ク會員ノ意見一尸テハ會社條例頒布ニ至ル迄ハ此案ヲ發布セサル方可ナリト認ムルモノ多數ナルヲ以テ先ツ本條例頒布迄ハ內規則等ハ達セラレサル方可ナルヘシトノ旨ヲ內閣ニ上申アリタシ而シテ主務省ニテハ一兩年モ時日ヲ費ヤスノ見込ナレ供本會ニ於テハ可成急速編纂ニ從事シ數月ヲ出スシテ內閣ヘ腹令スルノ粗連ニ到ラシムヘシ
（鶴田委員）
諾
（周布委員）
本局ニ於テハ發布スルハ不可ナリト認メ內閣ヘ上申スルモ內閣ニ於テハ許可スルノ見込ナリトセンニ此案ヲ布達トスルハ宜シカラサルカ如シ如何トナレハ此案ノ如キハ人民ノ身體財產ニ關シ實ニ重大ニシテ人民既ニ得タル所ノ權利ヲ緊束スルモノナレハ布吿ヲ以テ頒布セサルヲ得ス若シ之ヲ布達トナストキハ會社條例モ亦布達トセサルヘカラス然ル時ハ到底布吿トナスヘキモノハ其類ナキニ至ラン尤モ參事院ニ於テモ此案布達案ナルモ布吿トナスヘキモノタルコトハ已ニ認定セル所ニシテ是非身體財產ニ關スルモノナレハ布吿ヲ以テ頒布アルヘキコトニ取扱アリタシ
（細川委員）（渡邊委員）
無論布吿ヲ以テ頒布スヘキモノナリ
此ニ於テ閉會于時正午十二時ナリ