○第四十三回
明治十八年一月十六日
欠席 塩田委員
仝 周布委員
○午前第十時開會
○第二百四十條
（本尾委員）
本條ニ二箇ノ質問アリ第一ハ「此員數ニ關シ規則ナキトキ」小アルハ穩當ナラサルナリ何トナレハ立法者自ラ立案スルニ規則ナキトキ云々ト漠然ト規定スルハ不都合ナリト云フニ在リロエスレル氏云規則トハ第二百四十一條第百九十條是ナリ故ニ第二百四十一條第百九十條ノ外規則ナキトキハト云フノ意味ナレハ敢テ差支アル事ナシト就テハ左ノ如ク改案セハ如何
若シ員數ニ關シ定款及ヒ此法ニ規則ナキトキハ云々
畢竟スルニ「規則ナキトキハ」トハ第二百四十一條ニ列記スル事項ノ外ト云フニ外ナラス
（渡邊委員）
第二百四十一條ニハ半額以上ニアラサレハ決議スルヲ得ストナシ若シ規則ナキトキハ四分一ニテ決議スル事トナスハ不都「合ナラスヤ
（本尾委員）
其疑ナキニアラス然レトモ第二百四十一條ノ事件ハ株金半額云々トアルニ依リ定款ヲ以テ之ヲ減少スルヲ得サレハ決シテ不都合アル事ナシ
（鶴田委員）
此規則及ヒ定款ニ定メナキトキハト云フノ意味ナレハ法律ノ規定ヲ先ツ揭載シ本條ノ如キハ第二百四十一條ノ次ニスヲ可トス
（箕作委員）
「規則」ノ文字中ニハ法律及ヒ定款ヲ包含スルヤ
（本尾委員）
然リ
（渡邊委員）
本條ハ左ノ如ク修正スヘシ
總會ニ於テハ定款又ハ本條例中ニ定メタル員數ノ株主出席スルニアラサレハ決議スル事ヲ得ス若シ此等ノ規定ナキ場合ニ於テハ總株金ノ四分一云々（之ニ決ス）
（本尾委員）
第二ノ質問ハ此四分一云々トアルヲ定款ニ於テ八分ノ一ト定ルモ効アリヤト云フニアリ定款ヲ以テ八分一ト定ルモ自由ナレハ決シテ差支ナシト
以上質問論明了
○第 條 商法草案第二百四十三條
規則ニ從テ招集シタル總會ニ於テ申合規則中又ハ法律ニ定メタル員數ノ株主出席セサルトキ其出席人員中ノ多數ニ依テ（第二百四十二條）爲シタル決議ハ柔後三週日ヲ出テサル內規則ニ依テ第二會ヲ招集シ其出席株主過半數ノ之ヲ認可スルニ非サレハ無効ノ者トス
（本尾委員）
第二百四十條ノ場合ニ於テ四分一出席セサルトキ決議シタル事項ハ無効ナリト雖モ其無効ノ車丁項（ヲシテ有數 ト爲スニハ本條ノ手續ヲ履行シ三週日後ニ再開會シテ認可ヲ受クルトキハ有敷トナリ而シテ再會出席員ハ多寡ヲ論セス出席員ノ過半數ニテ之ヲ決議スルヲ以テ足レルヲ示スニ在リ
（長森委員）
法律規則ニ定メタル員數ノ株主出席セサルトキ決議スル事アリヤ
（本尾委員）
無効ノ決議ヲ爲スヲ得レトモ之ヲ有効ト爲サンニハ本條/定規ニ從ハサルヲ得ス
（箕作委員）
本條中第二百四十二條ヲ示スハ如何
（本尾委員）
玆ニ第二百四十二條ヲ示スハ比較員數ニアラスシテ過半數ニ依テ決議 スル事ヲ示シタルニ過キサルナリ
（委員長）
三邇日ヲ出サル內規則トハ如何
（本尾委員）
此譯文ハ少ク原文ニ違ヘリ卽チ原文ノ意ハ「三週日ヲ出サル內」トハコニ週日ノ後」及ヒ「許可スルニアラサレハ無効云々」ハ「認可スルトキハ有効ノモノト爲ス」ノ精吐胛ナリ
（渡邊委員）
三週日內ノ如ク見ユレトモ三週日後ノ意味ナルヤ
（細川委員）
三週日ヲ經ルヤ否ヤト云フノ意ナルヘシ
（岸本委員）
本條ノ如クスルトキハ無効ノモノヲ轉シテ有効トナスニ依リ甚タ不都合ナル規定ナリトス
（渡邊委員）
一體本條ノ精神ハ株主ノ出席ヲ促スノ精神ニシテ若シ出席セサレハ第二項會ニ於テ決議スト云フニ外ナラサルナリ
（箕作委員）
然リ出席ヲ促スノ意見ナラン
（鶴田委員）（長森委員）
本條ハ變則ノ復變則ト云フヘシ
（本尾委員）
英法ニ於テハ如何ナル事項ヲ論セス決議ハ皆第二次會ノ認可ヲ要シ又佛ニ於テハ事重大ナルモノニ限リ第二次會ノ認可ヲ受ルモノトセリ
（渡邊委員）
注ノ「第二百四十二條」ハ「多數」ノ下ニ移スヘシ（之ニ決ス）
（委員長）
規則ニ從テ又ハ規則ニ依テ」トアルハ穩當ナラス
（渡邊委員）
「規則ニ從テ」ハ「相當ノ手續ヲ以」ト爲シ規則ニ依テ乃「規則」ノ文字ハ削除スルモ可ナリ
（本尾委員）
「規則ニ從テ」ハ穩當ナラストナラハ「第二百三十七條ニ從テ」云々ト改正スル樣質問セン歟
（渡邊委員）
第二百三十七條ノミナラス其他ニモ關係スルヲ以テ長文ノ恐レアレハ別段挿入スルニ及ハサルヘシ
○本條ハ左ノ如ク修正ヲ加ヘタ叺
第二百四十三條適則ニ招集シタル總會ニ於テ定款又ハ本條例ニ、定メタル員數ノ株主出席セサルトキ其出席人員中多數（第二百四十二條）ニ依テ爲シタル決議ハ示後三週日ヲ過キ適則ニ招集シタル第二次會ノ出席株主過半數ノ認可ヲ以テ其効力ヲ得ル者トス
○第 條 商法草按第二百四十四條
參決權ハ一株ニ付キ一口ヲ通例ト爲ス但シ十株以上ヲ有スル株主ノ參決權ハ申合規則中ニ於テ制限スル事ヲ得ヘシ
（鶴田委員）
本條參決權ハ一株ニ付キ一ロヲ以テ通例ト爲ス但十株以上云々トア花ヲ以テ考レハ假令日本鐵道會社ニ於テ百株以上ヲ有スルモノニ非レハ參決權ヲ與ヘサル旨ニ定メタルトキハ本條ハ之ニ適用スルコトヲ得サルヤ
（本尾委員）
該會社ノ如キモ本條例ニ依テ一株ニ付一參決權ト爲サヽルヘカラス故ニ現今百株以上一參決權ヲ有ストスルノ定款ハ本條例ヲ發布スルニ於テハ改正セサルヘカラス
（細川委員）
假令本條例ノ發布アルモ一人ニシテ數人ノ代理ヲナスハ妨ケナキヤ
（本尾委員）
明文ナシト雖モ代理ヲナスハ差支ナカルヘシ
（河上委員）
假令ハ千株ノ會社ニ一人ニシテ五百株ノ代理ヲナス時ハ殘リニ十五人ノ出席アルトキハ決議ヲナスニ差支ナキヤ
（渡邊委員）
無論差支ナカルヘシ
（河上委員）
代理權ハ一人ニシテ何人迄トノ制限ヲ設クルヲ以テ普通トセリ本條例モ必ス制限スル所アルヘシ然ラサレハ弊害ヲ生スル事ナシトセス
（細川委員）
本員モ河上委員ノ如ク信ス式法ニ於テハ代理ハ一人ニ付一人トセリ此ノ法制ナキトキハ必ス不都合ヲ生スルニ至ラン
○本條ハ遂ニ左ノ如ク修正アリ
第二百四十四條株主ノ參決權ハ一株每ニ一箇ヲ以テ通則ト爲ス然レトモ十株以上ヲ有スル株主ノ參決權ハ定款ニ於テ制限スル事ヲ得ヘシ
○第七款 社名ノ變更及ヒ會社位置ノ移轉
○第 條 商法草案第二百四十五條
至當ノ理由アルトキハ總會ノ決議（第二百四十一條）ヲ以テ社名ヲ變更シ又會社ノ設置所ヲ他ニ移轉スル事ヲ得ヘシ此決議ハ判事ノ許可ヲ受クル事ヲ要ス但シ會社ヨリ其決議ヲ公吿シ且債主若クハ其他ノ關係人ニ於テ異議アルトキハ之ヲ申出ヘキ事ヲ示シ終ニ異議スル者ナキカ或ハ其異議ノ不理ト決シタル後ニアラサレハ判事之ヲ許可スル事ヲ得ス
（本尾委員）
本條ハ第二百四十一條ノ第一項第二項ヲ受ケタルノ條ナリトス
（渡邊委員）
款目ニ社名ノ變更及ヒ會社云々トアレトモ移轉トハ法律上ノ移轉ニシテ一番地ヨリニ番地ニ轉居スルカ如キヲ云フニアラサルナリ故ニ款目ハ社名及會社住所ノ變更トスルヲ可トス
（本尾委員）
本條會社ノ設置所其他ニ移轉スル事ヲ得ヘシトアルハ譯文適當ナラス原文ニテハ移轉スルコトヲ決議スルヲ同一トスルノ意味ナリ且此決議ハ云々但シトアレトモ此場合ハ上文ヲ受ケテ其許可ハ會社ヨリ云々ト改ムルヲ可トス
（箕作委員）
本條ニ至當ノ理由トアレトモ判事ニ於テハ決シテ至當ナラスト認メテ認可ヲ與ヘサルコトアレハ會社ニ於テ至當ノ理由アリトテ勝手ニ社名ヲ變更シ會社ノ位置ヲ移轉スルコトハ爲シ得ヘカラサルモノナラン
（長森委員）
第二百四十九條第二百五十四條ニハ同一ノ事柄ニシテ至當ノ理由タル文字ナリシテ本條ニノミ之レアルモノハ如何ナル、意味ナリヤ
（本尾委員）
住所移轉ノ如キハ第二百四十九條等ト異ナリ事重大ニ屬スルヲ以テ故ラニ之ヲ加ヘタルモノナリ
（長森委員）
資本減額等モ事重大ニシテ決シテ會社住所ノ移轉ニ劣ラサル所ノモノトス本員ノ考フル所ニ依レハ此「至當ノ理由」トアルハ削除スルヲ可トス
（渡邊委員）
本條ニハ公吿スルノ期限ハナキヤ
（本尾委員）
本條ニハ其規定ナシ故ニ定款ニ於テ定メサルヘカラス
○本條ハ左ノ如ク修正アリ
○第七款 社名ノ變更及會社住所ノ移轉
○第二百四十五條
社名ノ變更及會社住所ノ移轉ハ總會ニ於テ完然ノ理由ヲ以テ之ヲ決議（第二百四十一條）スル事ヲ得ヘシト雖モ此決議ハ裁判所ノ許可ヲ受クル事ヲ要ス其許可ハ會社ノ決議ヲ公吿シ債主又ハ其他ノ關係者ニ於テ異議アルトキハ之ヲ申出ヘキ事ヲ示シ異議スル者ナキカ或ハ其異議ノ不理ト決シタル後ニアラサレハ之ヲ與フル事ヲ得ス
午後十二時十分中止
午後十二時三十分開會
○第 條 商法草案第二百四十六條
許可ヲ經タルトキハ其變更シタル社名ト其許可得タル事ヲ商業簡明簿ニ答記シ且之ヲ公吿スヘシ其登記及ヒ公吿前ニ在テハ變更シタル社名ヲ唱フル事ヲ得ス
（本尾委員）
「許可ヲ經タル」トアルハ「許可ヲ得タル」トナシ「變更シタル社名」トアルハ「新社名」ト改ムル方可ナルヘシ
（渡邊委員）
「變更」ノ方可ナラン如何トナレハ變化シタルト云フノ意味ナレハナリ且社名ノ變更ハ許可ヲ得タル後其旨ヲ商業登錄簿ニ登記シ云々トナスヘシ
（本尾委員）
單ニ其旨トノミナルトキハ變更ト許可トノニ事ヲ包含セシムル事能ハサルヘシ故ニ此ニ事ヲ包含セシムル所ノ文字ヲ以テセサレハ實際不都合ヲ生スルコトアリ故ニ「其許可ヲ得タル旨ヲ附シテ」トナサハ前述ノ意味ヲシテ明瞭ナラシムル事ヲ得ヘシ
○本條ハ左ノ如ク修正セリ
第二百四十六條社名ノ變更ハ許可ヲ得タル後其許可ヲ得タル旨ヲ附シテ之ヲ商業登錄簿ニ登記シ且公吿スヘシ其登記及公吿前ニ在テハ新社名ヲ用ユル事ヲ得ス
○第 條 商法草案第二百四十七條
設置所移轉ノ許可ヲ得タル時ハ之ヲ舊地ノ商業簡明簿ニ登記シ且之ヲ公吿スヘシ其移轉地ノ裁判所ニ於テハ新設ノ會社ニ於ケルト同樣ノ手續（第百九十四條以下）ヲ以テ登記及ヒ公吿スヘシ登記及ヒ公吿前ニ在テハ其移轉地ニ於テ會社ノ營業ヲ始ルヲ得ス又其移轉地ノ登記ニハ第二百四十五條ノ許可ヲ得タル事ヲ附記スヘシ
（本尾委員）
設置所移轉ノ許可ヲ得タル時トアル下ニ「前條ト同シク」ノ文字ヲ脫セリ而シテ移轉地トアルハ新住所ト改ムルヲ可トス
（鶴田委員）
住所ノ移轉若シ以前ノ商業登錄簿ヲ有スル裁判所管轄內ナルトキハ更ニ新設ノ手續ヲナスニハ及ハサルヘシ
（本尾委員）
矢張新設同樣ノ手續ハナサヽルヘカラス
（渡邊委員）
本條ノ手續タルヤ從前ノ登錄簿ニハ移轉ノコトヲ記シ更ニ新設ノ手續ヲ以テ登錄スルモノナルヘシ
（箕作委員）
本條ハ裁判管轄ノ異ナリタル場合ニノミ適用スルモノナラン
（鶴田委員）
本員ノ考フル所ハ一番地ヨリニ番地ニ移轉スルノミニテ管轄ヲ異ニセサル限リハ新設同樣ノ手續ヲナスニ及ハスト信ス故ニ此場合ハ止タ番地移轉ノコトヲ屆出ルモノナラン尤モ他ニ異論ナシトセサレハ一應質問スルモ可ナリトス
（細川委員）
然リ裁判管轄ノ異ナラサル場合ニモ亦之ヲ適用スルモノナル力ヲ確定シ置キタシ
（本尾委員）
裁判管轄ノ替リタル場合ニノミ適用スルノ條ナリヤ否ヲ一肱憑質問スヘシ
（渡邊委員）
別段質問スルニ及ハサルヘシ何トナレハ裁判管轄ノ替ラサルトキハ從前ノ登記簿ニ其旨ヲ記載セハ新住所ニハ他ニ之ヲ管轄スル裁判所ナキヲ以テ別ニ移轉ノ手續ヲ爲ス事ヲ能ハサルナリ依テ故ラニ質問セサルモ差支ナカラン
（細川委員）
渡邊委員ニ於テ右ニ記ス所ノ如ク解釋スルニ於テハ別段質問スルヲ要セス
○本條ハ左ノ如ク修正セリ
第二百四十七條住所ノ移轉ハ許可ヲ得タル後前條ニ同シク從前ノ商業登錄簿ニ登記シ且之ヲ公吿スヘシ其新住地ノ裁判所從前ト異ナル時ハ新後ノ會社同樣ノ手續（第百九十四條以下）ヲ以テ登記及公吿ヲナスヘシ其登記及公吿前ニハ新住地ニ於テ會社ノ營業ヲ始ルヲ得ス又此登記ニモ第二百四十五條ノ許可ヲ得タル旨ヲ附スヘシ
○第 條 商法草案第二百四十八條
第二百四十五條ニ記載シタル決議ノ爲ニ會社ノ從前ノ權利義務ハ決シテ變更セサル者トス
（本尾委員）
本條ハ會社他ニ移轉シタルトキハ從前ノ權利義務上ニ大關係ヲ生スルカ如ク疑ヲ抱クモノナシトセサレハ其等ノ爲メニ此ニ本條ヲ設ケテ假令會社カ幾百里外ニ移轉スルモ移轉ノ時存立スル所ノ權利義務ニ於テハ之レカ爲メ毫モ變更セサルコトヲ示シタルモノナリトス
○本條ハ左ノ如ク修正セリ
第二百四十八條第二百四十五條ニ記載シタル決議ノ爲ニ會社ニ存立スル權利義務ハ決シテ變更セサル者トス
午後二時三十分閉會