○第二十七回
明治十七年十一月四日
欠席 岸本委員
午前第十時開會
○商法第百六十八條
（本尾委員）
本條意見陳ノ語ハ文法上ヨリ論スレハ監督上ニノ、、、關係スル樣ナレトモロエスレル氏ノ精神ハ實況及ヒ効果幷ニ監督上ニモ關スルモノトス
右ノ精神ニ依リ本條修正ハ前回ノ修正ヲ以テ可ナリトス
○商法第百六十九條
（本尾委員）
本條中目的及ヒ事項ヲ示スハ年會及ヒ臨時會ニモ關係スルモノトス依テ前回修正ハ尙ホ復タ改正セサルヘカラス
（渡邊委員）
「但シ集會ヲ開クニハ其目的及ヒ事項ヲ示サニルヘカラス」トセハ如何
○本條修正ハ左ノ如ク改正セラレタリ
○商法第百六十九條業務擔當社員又ハ取締役ハ少クトモ年々一回總集會ヲ開クヘシ其他社員四分ノ一ノ申立アルトキハ總社員ヲ招集スヘシ凡集會ヲ開クニハ其目的ト事項トヲ示サヽルヘカラス
○商法第百七十條
（本尾委員）
本條財產比較表ト記シ「アクチシフ、ハツシーフ」ヲ冠セサルモノハ先ニ貸方借方財產比較表トアルヲ以テ此ニ之ヲ略記セシナリ
○商法第百七十一條
（本尾委員）
本條ハ如何ニモ錯雜ヲ極ムルニ依リ前回ノ趣旨ヲ以テ質問センニ之ヲニ項ニ分チテ記載セハ可ナラント左案ノ如ク改案セラレタリ
「會社前條記載外ノ事項ニ付キ決議ヲ要スルトキハ其事項ヲ集會ノ當日ヨリ遲クトモ十四日以前ニ各社員ニ通知スヘシ
○其事項ニ付キ集會ニ於テ爲シタル多數ノ決議ハ總社員過半數ノ出席ニテ決シタルモノニシテ其後十四日過キ再ヒ集會ヲ開キ其出席人員ノ多數ヨリ認定サレタルモノニ限リ各社員ニ對シ効力アルモノトス」（之ニ決ス）
（箕作委員）
遲クトモハ「少クトモ」ト改ムヘシ
（之ニ決ス）
（渡邊委員）
第二項ハ「其多數決ハ總社員過半數ノ出席ニ於テ爲シタルモノニシテ其後十四日ヲ過キ再タヒ集會ヲ開キ其出席人員ノ多數ニ依リ認定セラレタルモノニ限リ各社員ニ對シ効力アルモノトス」ト爲スヘシ
○本條第一項ハ「遲クトモ」ヲ「少クトモ」ニ改メ第二項全文ハ渡邊委員ノ修正ニ決ス
以上質問說明了
○第百八十九條 商法草案第百七十二條
利金又ハ利益配當ハ損失ニ依テ差入財產ノ減額シタル間ハ之ヲ計算シテ社員ニ拂渡スコトヲ得ス此規則ト牴觸スル會社ノ契約條件又ハ決議ハ無効トス但既ニ拂渡シタル當然ノ利金又ハ利益配當ハ爾後ノ損失ヲ補フ爲メニ之ヲ還納セシムルコトヲ得ス
（渡邊委員）
「計算シテ拂渡スコトヲ得ス」トアリ拂渡サヽル以上ハ計算スルモ差支ナカルヘシ然ルニ之レカ計算ヲ禁スルハ穩カナラサルナリ
（本尾委員）
本條ノ場合ハ例令ハ會社供資額千圓ナリシニ損失ヲ被リ八百圓ニ減シタルトキハ利益金ニ百圓アリト雖トモ此利益ハ先ツ減額ヲ補充スル爲メニ用ヒ社員ノ供資ノ利息及ヒ利益金トシテ分配スルヲ得サルヲ云フ
（周布委員）
假令減額シタルトキト雖モ頭取ノ給料ハ拂渡スモ差支ナキヤ
（本尾委員）
然リ此給料ハ社費ナルヲ以テ拂渡スヘシ敢テ利益配當ト云フヲ得サルモノナリ
獨逸合名會社法ニ於テハ第一ニ供資ノ利息ヲ拂渡シ第二ニ利益アルトキハ之レカ利益ヲ社員分頭ニ準シ拂渡スヘシトセリロエスレル氏ハ第二ノ利益分配ハ供資ノ額ニ準シ分配スヘキモノト爲ス蓋シ獨逸ノ精神ハ利益金ハ社員ノ勉强部勞力ヨリ生シタルモノナレハ之ヲ分配スルニ供資ノ額ニ準セサルナリロエスレル氏ノ立案ノ精神ハ利益金ハ元來供資ヨリ生シタルモノニシテ社員ノ勉强ヨリ生スルモノニアラストスルヲ以テ供資額ニ準シ分配スルニ在リ
（細川委員）
合名會社ニモアリシカ社員ニシテ會社ニ貸金セシモノアランニ其貸金ニモ本條ノ場合ニ於テハ利息ヲ拂渡サヽルヤハ若シ之ヲ拂渡サストセハ穩當ナラサルカ如シ
（本尾委員）
夫レハ會社他人ヨリ借受タル金額ト同一ノ性質ナレハ本條ノ場合ト雖トモ之ヲ拂渡サヽルヲ得サルナリ
（渡邊委員）
本條計算スルコトヲモ禁スルハ穩カナラササレハ之ヲ質問セラレタシ
（本尾委員）
諾
（鶴田委員）
差金額ニ對スル利息ト明瞭ニ記載スルヲ要ス
（本尾委員）
本條ハ先ツ計算ト拂渡トニケノ場合アルモノト看做シ左ノ如ク修正セハ如何
「供資ニ對スル利金又ハ利益配當ハ損失ニ依テ供資額ノ減額アル間ハ之ヲ計算シ又ハ社員ニ拂渡スコトヲ得ス」
（長森委員）
會社ハ損失ヲ補フ爲メニ既ニ拂渡シタル利息及ヒ益金ヲ畑遠納セシムルコトヲ得ストアリ若シ別段ノ契約ヲ以テ畑還納スルコトヲ預約スルトキハ之ヲ有効トナスヤ
（本尾委員）
本文ヲ受ルトキハ縱令ヒ還納スルコトヲ社員ヨリ別段ノ契約ヲ爲スモ之ヲ無効トスルナラン
（渡邊委員）
還納ヲ預約スルハ有効ナルカ如シ之ヲ無敷ト爲スハ穩カナラス
（周布委員）
若シ還納スルモノアルトキハ之ヲ寄付金ト看做シテ取扱フモノナルヘシ
（渡邊委員）
併シ預約ヲ以テ還納スルヲ法律ニ於テ之ヲ禁制スルノ理由ナカルヘシ萬一之アルトキハ有効ト爲スモノナルヘシ
（塩田委員）
預メ損失アル場合ヲ慮リ還納スルヲ約スルモノナキヲ保セス後果シテ損失アルトキ之カ還納ヲ要ムルハ効アルニ似タリ
（本尾委員）
如斯契約ヲ結フモノナルヘシト雖モ若シ萬一之アルトキハ有効ナルヤ否ヲロエスレル氏ニ質問セン
午後零時一分中止
午後零時三十分開會
欠席鶴田委員
○第百九十條 商法草案第百七十三條
社員七名以上ノ會社ニ在テハ社員中四分ノ三ナル多數ニ依テ會社契約ノ變更ヲ決議スルコトヲ得ヘシ但此ノ如キ場合ニ於テハ其不同意ノ社員假令ハ矛盾シタル契約條件アルモ直ニ退社スルノ權利アル者トス
（本尾委員）
「本條七名以上」トアルハ原第百六十條ノ例ニ依リコニ名ヲ超ユル會社」云々ト改ムヘシ
○本條ハ左ノ如ク修正スルニ決ス
○商法第百七十三條社員三名ヲ超ユル會社ニ在テハ社員四分三ノ多數ニ依テ會社契約ノ變更ヲ決議スルコトヲ得ヘシ此ノ場合ニ於テハ不同意ノ社員ハ假令反對シタル契約條款アルモ直ニ退去スルノ權アル者トス
○第百九十一條 商法草案第百七十四條
本卷ノ第一章ニ制定シタル合名會社ニ關スル條則ハ此第二章ニ於テ他ノ規定ナキ以上ハ差金會社ニ關シテモ亦準用スヘシ
（本尾委員）
本條ハ條數ニ變更アルヲ以テ他日決定ノ上修正スルトセンロエスレル氏ノ意見ニ依レハ本條ハ款末ニ置クモ可ナリト雖モ一體ハ第百五十四條ト第百五十五條トノ間ニ置クヲ可トセリ然ル時ハ第百五十五條ノ精神モ能ク了解シ得ラルルニ至ラン如何トナレハ本款ニ記載ナキ規定ハ合名會社ノ條則ヲ適要スヘシ而シテ登記公吿ハ特ニ合名會社ノ規定ニ從フヘシトノ意ヲ明カニスルニ至ラント
（箕作委員）
本官ハ第百七十三條ノ次ニ置クヲ可トス
（渡邊委員、塩田委員）
本官等モ款末ニ在ルヲ可トス尤モロエスレル氏ニ質問スルモ不可ナカラン
（本尾委員）
一應協晃議スヘシ
○本條ハ左ノ如ク假リニ修正スルニ決ス
○商法第百七十四條第三款ニ揭ケタル合名會社ノ條則ハ本款ニ於テ別ニ規定ナキモノハ合資會社ニ於テモ亦適用スヘシ
第三章 株式會社
總則
第百九十二條 商法草案第百七十五條
社員七名以上ノ商社ニシテ其資本ヲ確定ノ平均額（株金）ニ分テ流通スルヲ得可キ株劵狀ヲ發行シテ社員（株主）ハ其代理者ニアラサル者是ヲ株式會社ト爲ス
（本尾委員）
「確定ノ平均額」トハ假令ハ資本一萬圓ノ株式ヲ割付スルニ其劵面ヲ拾圓ト定ムルトキハ盡ク拾圓劵トシ其間ニニ拾圓劵或ハ三十圓劵ヲ雜ユルヲ許サス則此ニ確定ト記セシモノハ拾圓劵トセハ皆盡ク拾圓劵ヲ以テ發行スルノ精神ナリトス
（箕作委員）
原文ニ擦ルト（株金）ノ文字ハ株劵狀ノ下ニ挿入スルヲ可トセルカ如シ
（本尾委員）
然リ株劵狀ノ下ニ（株式）ト入ルヽヲ正當トス
（委員長）
株主當然其代理者ニアラサルモノトカ又ハ株主其資格ニ於テ代理者ニ云々トスルニハ先ツ質問シタル上ニテ之ヲ決スヘシ
（渡邊委員）
質問スルニ及ハス左ノ如ク修正セハ可ナリ
○商法第七十五條社員七名ヨリ少カラサル商社ニシテ其資本ヲ唱定平等ノ額ニ分チ移轉シ得ヘキモノトシ社員ハ其本分ヲ以テ商社ヲ代表セサル者ヲ株式會社ト爲ス
○本條ハ渡邊委員ノ修正ニ決ス
午後二時二十分閉會