○第二十五回
明治十七年十月廿八日
欠席 鶴田委員
午前第十時開會
○第百六十二條ト第百二十一條トノ比較
（本尾委員）
原第百六十二條ニ於テハ業務擔當者又ハ取締役ノ代表權利ノ制限ハ善意ヲ以テ之ト取引ヲ爲シタル第三者ニ對シテハ無効トストアリ第百二十一條ハ業務擔當者ノ制限ハ善意惡意ノ第三者ヲ論セス無敷ト爲ス該兩條ニ於テ一方ハ惡意ノ第三者ニ對シ有効トシ一方ハ益口惡意ヲ問ハス無効トス其理由ハ合名會社ニ在テハ社員皆無限責任者ニシテ社業ヲ爲スハ恰モ一箇商人ト異ナルヘキ理由ナシ是ヲ以テ一箇商人タル者自己ノ商業ニ制限ヲ付スルモ第三者ニ於テハ之ヲ了知シ及ハサルノミナラス又時トシテハ之ヲ知リ得ルコト能ハサル場合アリ故ニ盞口惡意共ニ第三者ニ對シ無効ト爲ス差金會社ノ業務擔當社員ハ之ニ反シ有限責任者ニシテ且ツ業務擔馨田スルハ擔當者又ハ取締役タル資格ヲ有スル者ニ限ル故ニ社外人ヨリ之ヲ觀ルモ先ツ役員タルノ性質ナレハ幾部分カ其權利ニ制限アルヘキ理由ハ容易ニ知得スルコトヲ得ヘシ是ヲ以テ善意ノ第三者ニ對シテハ無効トスルモ惡意ノ第三者ニ對スルトキハ有効ト爲ル原由ナリトス
（塩田委員）
然ラハ前回解釋セシ如ク第百二十一條ハ第三者ノ善惡意ヲ論セス無効トナスノ精神ナリ
（本尾委員）
然リ
○第一條（商法第六十七條）ノ法律及ヒ新設第九條二項ノ違法
（本尾委員）
違法（前回不正ト譯セシモノ）ノ法ナル語ノ範圍ニ付キ質問セシ處原文ノ意議ハ總テ法律ニ背反シタルモノハ勿論爲スヘカラサルコトヲ爲シタルトキト雖モ責任ヲ負フヘキヲ云フ之ヲ民法上ニ於テ云フトキハ過失又ハ懈怠タリトモ責任ヲ有セサルヘカラサルナリトアル是ナリ違法ノ語英語又ハ佛語ニ於テハ之ヲ「イリシツト」ト云フ
例令ハ各省ノ長官ナリ地方長官ナリ又ハ郡區戶長ノ命令ニモ背反スルコトヲ得サルヤト質セシニ然リ政府ノ法律ノミナラス總テ右等ノ命令ヲモ包含スルモノナリト
（委員長）
「モラール」道德ニモ背反スルコトヲ得サルノ意義ヲ包含スルヤ
（本尾委員）
「モラール」ノ事ハ質問セサレトモ包含セサルハ勿論ノコトナルヘシ如何トナレハ法律ハ「モラール」上ノ責任ヲ逼責スルコト舶肥ハサルモノナレハナリ
又法律卽チ成法トナルヘキ手續ヲ經タル法ノミナラス「ヲルトナソス」モ法律ノ部中ニ入ルモノトス
（箕作委員）
各省ノ吿示ハ如何
（本尾委員）
諸省卿ノ法律ヲ以テ許與セラレタル權限內ヲ以テ發シタルモノハ法律ト同一ノ効力ヲ有ス
前回違法ト譯セシカ尙ホ之ヲ改譯スルヤ
（委員長）
違法トシテ可ナリ
（長森委員）
違法ト爲スハ少ク不都合ナラン何トナレハ法律ニ違犯スルモノト解釋シ法律ナル語ニ依着スルノ恐レアリ依テ不法又ハ不當ト改譯セハ不正ナル語ト同意義ヲ顯ハスモ其性質ノ異ナルコトヲ發見シ易カラン
（本尾委員）
違法ノ文字ヲ藉ルモ其精神ハ既ニ陳述セシ如ク了解シ置カハ故ラニ改正セサルモ可ナラン
（長森委員）
然リト雖モ一般人民ノ爲メニハ不法ノ方可ナルヘシ
（岸本委員）
此所ニ於テハ意義ノ廣キ文字ヲ用ヒサルヘカラス若シ之カ狹キ文字ヲ用ユルトキハ不都合ヲ生スルコトナシトセス
（渡邊委員）
然ラハ非違ト改ムルモ可ナラン
○新設第九條ニ項中違法前ニ不正ト譯セシモノハ不適當ナルヲ以テ衆議ノ「不正」ト爲スコトニ決ス
（渡邉委員）
商社ノ代表人ニシテ其本分ノ所業ニ付キ責任ヲ有シ義務ヲ負フ所ノ明條ナキヤ
（本尾委員）
合名會社ノ第百二十一條差金會社ノ第百六十二條是ナ厂リ
（渡邊委員）
然ルトキハ不正等ノ語ヲ用ヒス單ニ「爲シタルモノハ責任ヲ有シ云々」トセハ如何不法ナル文字ヲ用ヒサル方却テ可ナルヘシ
（本尾委員）
論究スルトキハ新設第九條ニ項ハナキモ可ナリ如何トナレハ例令ハ本官カ使用人ノ爲シタル所業ニ付キ責任ヲ有シ義務ヲ負フヘキハ勿論ナレハナリ
（箕作委員）
「不正」ハ「不法」ト改ムヘシ
○不正ハ「不法」ト改ムルコトニ決議セリ
（本尾委員）
第一條（商法第六十七條）ノ法律ナル語ノ範圍ヲ質セシニ此法律ナル原語ニ於テハ時トシテ成法卽チ法律トナルヘキ正當ノ手續ヲ經タルノミヲ云フアリ又時トシテハ下郡區戶長ノ命令ニ至ル迄包含スルコトアリテ時ト場合ニ依リ解釋ヲ異ニシ預メ之ヲ確定スルコト能ハス併シロエスレル氏カ此ニ法律ト云ヒシハ成法ヲ指シタルモノトス卽チ純粹ノ法律ニ於テ禁止シタル事業ヲ目的トスル會社ニ對シテ云フナリト
右答辯ニ依ルトキハ我邦ニ於テハ實際困難ナルヘシ如何トナレハ法律ハ之ヲ禁制スルノ明條ナクシテ諸省卿ヨリ布達ヲ以テ之ヲ禁制スルコトアリ若シ代言人ニ於テ法律ト布達等ニ付キ爭ヲ起ストキハ實ニ大ナル障害ヲ與フルニ至ルヘク到底我邦ニ於テハロエスレル氏答一辯ノ如ク法律ナル駈胆ヲ解釋スルモノナカルヘシト軍ハニ質疑セシニ然ラハ左ノ如ク之ヲ改正セハ可ナルヘシトテ第一條ノ「法律」ニ背反スル云々ヲ削除シ「禁止セラレタル事業ヲ目的トシタル」ト爲シタリ併シ之ヲ改正スルト否ハ委員ノ撰擇ニ任ス余ニ於テハ別ニ異議ナシ云々ト
（周布委員）
單ニ「禁止シタル」トアリテ法律カ之ヲ禁止スルヤ何人カ之ヲ禁止スルヤ明瞭ナラス
（本尾委員）
原文モ單ニ「禁止云々」トアリテ何人ノ禁止スルヤヲ嚇詳カニセス併シ法律ヲ以テ定メタル權限內ニ於テ當衙ノ長官ヨリ禁止ノ命令ヲ出スヤ蓋シ疑義ナカルヘシ
午後第十二時二十分中止
午後第十二時五十分開會
○商法第百五十四條
（本尾委員）
差金會社人員制限ノ事ニ付キロエスレル氏ニ質セシ處左ノ如ク之ヲニ樣ニ立案セラレタリ
第一案ハ
「十五人ヨリ多カラサル商社ニシテ社員ノ責任其名又ハ數名ニ對シ別段ノ契約アルニアラサレハ供資ト爲シタル金圓又ハ有價物件ノ額ニ止ルモノヲ差金會社ト爲ス
第二案ハ第二項〔ト爲シ
「差金會社ハ沚員十五名ヨリ多數ナルヲ得ス」
右孰レヲ可十スルヤト云ハヽロエスレル氏ハ第一案ヲ可トス併シ日本文ニテ反譯充分ニ爲シ得サルニ於テハ第二案ヲ操擇セラルヽモ不可ナルコトナシト
（長森委員）
日本文ニ於テハ第二案ヲ可トス
（渡邊委員）
「ヨリ多數ナル」ヲ「ヲ超ルコト」ト改ムヘシ
○第二案ヲ採用シ修正ハ渡邊委員ノ詭ニ決ス
（本尾委員）
差金會社人員制限ノ理由ニ付ロエスレル氏意見ヲ左ニ陳述セン
差金會社ニ人員ノ制限ヲ附スルハ正當ナリト云フヲ得ス如何トナレハ差金會社ハ株式會社ト違ヒ人ト人トノ契約ヨリ成立スルモノニシテ株劵ヲ發行シテ組織スル所ノ會社ノ如ク人員ノ多數ヨリ成立スルモノニアラス之レ株式ハ劵面ノ賣買ニ止マルモノナレトモ差金會社ハ人ト人トノ契約ニ成立ツヲ以テ多數ナルトキハ互ニ信用スルヲ得サル場合アルヲ以テ名ヲ儂リ株式ヲ營業センコトハ爲シ得サルモノナリ然レトモ日本ニ於テ當時此ノ制限ヲ付スルヲ以テ必要トセハ之ヲ設クルモ可ナリト雖モ其人員ハ十五名ヲ超過スルヲ得ス尤モ實際上ヨリ之ヲ論スレハ制限ヲ立ルヲ可トスヘシト
雖モ理ニ於テハ決シテ正當トスルヲ得ス獨逸ニ於テモ古昔名稱ヲ藉リテ其實株式ヲ主トスル會社アリタリ前ニ陳フル如ク日本ニ於テモ今日如斯ノ患アリトセハ制限ヲ附スルモ可ナリ然レトモ此制限ハ永ク保續セシムヘカラス他日之カ制限ヲ廢スルノ時期到來セハ須ク鯉 除スヘシ依テ一時制限ヲ設クルハ余モ亦贊成スル」處ナリト
○商法第百六十五條
（本尾委員）
第一問ハ合名會社ニ於テハ會社ノ財產及ヒ社員ノ財產ヲ會社ノ負債ニ充當スル順序ヲ規定シアルヲ以テ差金會社モ合名會社ト同一ノ規定ヲ設ルハ如何第二問ハ本條ヲ二項ニ分チ第一項ニ於テハ無限社員ノ財產ヲ云ヒ第二項ニ氏名ヲ社名ニ加ヘタルモノヽ財產ニ付キ記載セハ如何第三問ハ有限社員ニシテ氏名ヲ社名ニ加ヘタルトキハ無限社員ト看做ストノ條項ヲ新設セハ如何トノ質義ナリシロエスレル氏ハ財產順序ノ事ハ至要トスル程ニアラサルハ別ニ明文ヲ要セサルヘシ併シ委員ニ於テ之ヲ設定シ度シトナラハ立案ヲ呈スヘシ又有限社員ニシテ社名ニ氏名ヲ加ヘタルトキノ處分ハ委員質義ノ如ク明揭スルヲ可トス依テ第百五十六條ニ二項ヲ追加シ左ノ如ク記載スヘシ
○第百五十六條二項「社名ニ氏名ヲ加ヘタル社員ハ會社ノ負債ニ對シ自己ノ全財產ヲ以テ其責ヲ負ハサルヘカラス」（追加スルコトニ決ス）
（渡邊委員）
然ハ有限社冒只ナリト雖モ氏名ヲ社名ニ加フルトキハ無限社員ト看做スノ精神ナリヤ
（本尾委員）
然リ無限社員ト看做スノ精神ナリ
（渡邊委員）
原第百五十六條ハ有限社員ニシテ社名ニ氏名ヲ附加スルコトハ之ヲ禁スルノ條ナレハ此ニ第二項ヲ設ケテ社名ニ氏名ヲ加ヘタル有限社員ノ責任ヲ辯揭スルトキハ或ハ前後着ノ惑ナキニアラス依テ有限社員ニシテ若シ氏名ヲ社名ニ加フルトキハ無限責任タルヘキコトヲ一條中ニ記載スルトセハ其精神ヲシテ明亮ナラシムルコトヲ得ヘシ此意ヲ以テ尙ロエスレル氏ニ改正ノコトヲ質議セハ如何
（本尾委員）
諾
○第百八十二條 商法草案第百六十五條
會社ノ義務ニ就テハ會社財產及ヒ本姓ヲ社名ニ加ヘタル社員ノ全財產ヲ以テ之ニ充ツヘキモノトス又未タ會社ニ差金ヲ拂込サル社員ハ此差金高ヲ其義務ニ充ツヘシ
（本尾委員）
本條負債ノ辨償ニ充ツル財產ノ順序ニ付テハロエスレル氏ニ於テ更ニ左ノ如ク改案セラレタリ
「會社ノ負債ニ對シテハ左ノ順序ヲ以テ其義務ヲ負擔スヘシ」
第一會社財產
第二未納ノ供資アルトキハ其供資
第三無限責任社員ノ全財產
（渡邊委員）
餘リ名文ト云フヲ得ス今少シク善良ナル改正アランコトヲ依賴セハ如何
（本尾委員）
諾尙質議スルコトヽセン
（岸本委員）
未納供資ノコトハ別項トシテ記載セサルモ會社財產中ニ包含スヘシ故ニ本案ニハ會社財產幷ニ社員ノ財產ヲノミ揭クルトセハ如何此意ヲ以テ質議アリタシ
（周布委員）
本官ノ考フル所ニ依レハ原案ニ於テ敢テ不都合ナキカ如シ
（本尾委員）
本官モ亦改正セサルモ原案ニ於テ不可ナシト信スレトモ尙質議スルコトニセン
差金會社ノ原語「コソマソチツト」ノ淵源性質ハ如何ナル㸃ヨリ生シタルモノナルヤ我邦ニ於テ之レカ譯字ヲ付スルニ適當ノ文字ナク差金ト譯スルモ聊カ穩當ナラサル所アリ且之ヲ譯スルニモ立案ノ主義モ亦斟酌セサルヲ得サレハ此語ノ生シタル初ソヨリ其性質上ニ付テ一應說明アリタキ旨ヲ求メタルニロエスレル氏曰ク羅甸「マ融ス」「タ鴎ニ兩語言出セシモノ三ア則重一一匿名會社ノコトヲ云ヘリ尤モ余ノ立案セシ差金會社ハ少シク是レニハ合ハサルカ如シ英ニ於「リミツテツト、ハイ、カラソチー」ト「リミツテツト、ハイ、セール」トノニツアリ此內「ハイ、セール」ハ株式ノコトニシテ「リミツテツトカラソチー」ナルモノ則余カ奎セシ所差書社ニ當ルモナー尤モ「リ獻ツテ隙ト」トハ普通ニ株式會社ノコトヲ稱スルナレハ若シ此語ヲ用ユル時ハ該會社トノ區別ニ付困難ヲ生スルコトアルナラン又獨逸ニ於テハ無限會社ノコトヲ開カレタル會社ト云ヒ有限會社ノコトヲ閉ラレタル會社ト云フ而シテ無限ノコトヲ開カンタル會社ト云フ意味ハ關係ノ宀廣キ場合ヲ示シ閉サレタル金田社トハ關係ノ狹キ場合ヲ示スニアリ如此意味ナルヲ以テ余ノ考フル所ニ依レハ供資會社トナスカ又ハ有限保證會社ト名附クルヲ以テ適當ナランカトノ答ナリシ
（箕作委員）
佛ニテハ「コンマンチツト」ノ淵源ハ羅甸ノ托スルト云フノ字ヨリ生ス古昔吝嗇家アリテ切リニ利益ヲノミ攫取シテ損失ハ之ヲ蒙ラサラソコトヲ苦慮シタリシカ漸クニシテ一ノ妙計ヲ、案出シタリ其方法タルヤ或ル商人ニ金額ヲ附托シテ物品ノ賣買ヲ爲サシメ而シテ其賣買上ニ就テ得タル所ノ利益ハ幾許ナルヲ問ハス分配ヲ受クルモノナレトモ損失ニ至テハ一步タモ負擔セサルコトヲ契約スル所ノモノナリ此ノ金ヲ托スルコトヲ佛ニ於テハ「コソトラコンマソチテシル」ト云フ
（細川委員）
能ク了解セリ則物ヲ遣リテ利益ヲ與ヘヨト云フノ意味ナレハ枩「コソマソチート差金」ニ能適合督
（委員長）
利益配當ノ割合如何
（箕作委員）
托スルトキ契約シ置クモノト見ヘタリ則損失ナクシテ利益ヲ受クルト云フノ意味ナレハナリ
（本尾委員）
ロエスレル氏ニ會社條例ハ合名差金株式ノ三會社ヨリ成立テリ第一合名ハ無限責任ニシテ第二ノ株式ハ有限ナリ第三ノ差金ハ有限無限ノ間ニ成立テル會社ニシテ日本ノ文字ニテハ之ヲ命スルノ名目ナシ如何シテ可ナルヤヲ問ヒシニ氏ノ答ニハ若シ文字ナケレハ法律ヲ以テ「コソマソチツト」會社ト命令ヲ下サハ如何トテ互ニ一哭シタリシ
（長森委員）
合本會社トセハ如何
（委員長）
有限供資會社ト改メハ如何
（長森委員）
供資トスルモ合本トナスモ其實ニ於テ異ナル所アルヲ見ス或ハ現資會社トナスヲ以テ適當ナランカ
（渡邊委員）
合資會社トセハ如何
（委員長）
合資會社適當ナリ今ヨリ差金ヲ改メテ合資トナスヘシ
○「差金」ハ「合咨ハ」ト改ムルコトニ決ス
○第百八十三條 商法草案第百六十六條
會社ノ財產ヲ以テ債主ノ辨償ヲ竭シ得サル時ニ當リ業務擔當社員又ハ頭取ノ總員又ハ其中幾員ノ全財產ヲ以テ連帶シテ其業務取扱中ニ生シタル會社ノ義務ニ充ツヘキ乎ヲ會社契約又ハ會社決議ニ依テ取極ムルコトヲ得ヘシ
（本尾委員）
本條「竭シ得サル時ニ當リ」トアルニニ樣ノ意味ヲ有スルカ如ク見ユ則チ豫メ一竭シ得サル時ニ至レハ辨償スヘシト契約スルト現ニ竭シ得サル時ニ當リ辨償スルトノニ樣ナリ去レトモ本條ノ主意ハ「竭シ得サルトキニ至レハ」トナスニ在リトス
（長森委員）
「其中幾員」トアル內ニハ無限社員ヲモ包含スルナラン
（本尾委員）
否此場合ハ總テ無限社員ノコトヲ云フモノニシテ「其中幾分」トハ業務擔當社員ノ幾分又ハ頭取ノアル場合ナレハ頭取ノ幾員ト云フノ意味ナリ
（箕作委員）
全財產トアレハ連帶ノ字不用ナルカ如シ（此ノ修正ニ決シテ「連帶シテ」ノ四字ヲ削ル）
（渡邊委員）
會社ノ決議ヲ以テ連帶義務負擔ノコトヲ取極メ置クハ聊カ不都合ナルカ如シ
（本尾委員）
之モ信用ヲ得ルノ手段ナレハ契約中取極メ置クコトナシセス又會社契約ニ相照應スルモ一モ不都合ノ㸃アルヲ見ス
（箕作委員）
取締役ハ社員中ヨリ撰定スルハ勿論ナレトモ之ヲ撰定スルノ規定アリヤ
（本尾委員）
別ニ規定ノ明條ナシ併シ原第百六十條ノ註解中ニ明了セリ
（箕作委員）
別ニ明條ナキニ於テハ原第百六十條中ニ「祉員ヨリ之ヲ撰定スヘシ」トノ數語ヲ加フルヲ可トス
（周布委員）
ロエスレル馬ニ質問シテ第百六十條ノ契約ヲ以テノ下ニ「社員中ヨリ」ノ數字ヲ挿入スルコトヽセハ如何
（箕作委員）
可ナリ
（本尾委員）
諾
（周布委員）
本官ハ左ノ修正說ヲ呈スヘシ
會社ノ財產ヲ以テ債主ヘ辨償ヲ竭シタル餘分ノ負債ニ對シテハ業務擔當社員又ハ取締役總員若クハ幾員各個ノ全財產ヲ以テ其業務擔當中ニ生シタルモノニ充ツヘシトノコトヲ會社契約又ハ會社ノ決一議ニ依テ取極ムルコトヲ得ヘシ
（渡邊委員）
本官ハ左ニ修正說ヲ呈ス
業務擔當社員又ハ取締役其業務取扱中ニ生シタル會社ノ負債ニシテ會社ノ財產ヲ以テ債主ヘ辨質シ得サル分ハ其總員若クハ其中幾員各個ノ全財產ヲ以テ之ニ充ツヘシトノコトヲ會社契約又ハ會一駐ノ決唱議ニ依テ取趣ムルコトヲ得ヘシ
（委員長）
渡邊委員ノ修正ニ決スヘシ
○本條ハ渡邊委員修正ニ可決ス
于時三時閉會