○第二十四回
明治十七年十月廿四日
欠席 鶴田委員
午前第十時開會
○第百五十七條
（本尾委員）
本條減額ナル語ヲ社名中ニ加フルヲ以テ必要トセハ增加ノコトヲモ加ヘサレハ不可ナラン且ツ之ヲ加ヘタル要用何レニアルヤヲ尋ネタルニロエスレル氏ノ答ニハ此減額ノコトヲ附加スヘキヲ設ケタルハ第幅英國ニ倣ヒ且會社條例草案ニモ記載シアリタルヲ以テ加ヘタルナリ然レトモ委員中ニテ之ヲ削ルモ差支ナシトノ見込ナレハ削除スルモ不可ナシ尤モ必要不必要ノ㸃ヨリ論セハ餘ハ必要ナリト云ハン如何トナレハ有限責任ノ原則ナルヲ以テ他人ノ未タ知ラサリシ以前已ニ減額スルニ至リ大ニ他人ニ損害ヲ蒙ラスル如キ場合ナシトセサレハナリト本官又質議ヲ起シテ曰ク減額トハ資本ヲ減少スルノコトニシテ事實上益スル所ナカルヘシ假令ハ百萬園ノ會社ニシテニ百萬圓ノ負債アレハ減額セサルモ社外ニ對シテ大ナル損害ヲ與フヘシ之ニ反シ百萬圓ノ資本ニシテニ百萬圓ノ利益アルトキハ之ヲ減額スルモ益スル所ノモノハ多シトス故ニ此ニ減額ノ語ヲ加ヘサルモ事實上差支アルヲ見サレハ之ヲ削ルモ不可ナキカ如シロエスレル氏曰ク然レハ之ヲ削ルモ餘ハ施テ其不可ナルヲ主張セスト則チ本條ハ削除スルニ決シタレハ第二ノ問ヒハ質サヽリシ
又英國等ニ於テ看板ニ資本額ヲ顯スコトニ付テ質議セシニ英ニ於テハ法律ヲ以テ之ヲ命スルニ非ス我邦ニ於テモ看板ヘ揭出スルコトニ付テハ法律ヲ以テ命令スルニ及ハサルヘシ此事ハ全ク會社ノ信用上ニ屬スルモノナレハ會社ノ隨意ニ任シテ可ナリシ
右ノ理由ニ依リ原第百五十七條ハ削除ニ決シタリ
○第百七十六條第百七十八條
（本尾委員）
兩條代表ノ語ハ實際會社ヲ直接ニ代理シテ諸務ヲ取扱フモノト云フノ義ニシテ第九十六條ノ代理トハ異ナレリ如何トナレハ該條ニハ利益保衞ノ意味ヲ包含スルモノナレハナリ由之兩條トモ代表トシテ差支ナシトノコトナリ
○第百七十七條
（本尾委員）
本條人員ノ制限ヲ三人以上ト改正セラレタリ其理由ハ原案七名トナセシモノハ合名會社ノ制限ニ基キ最少數ヲ七名トナシタルモノナレトモ能ク考フルトキハ合名會社ハ無限責任ナルヲ以テ社員ニ於テハ皆勉ムル所アルヘシト雖モ有限會社ニ在テ七名以下ナルトキハ第百七十四條ニ從ヒ合名會社ノ規則ヲ適用シ社員皆業務ヲ擔當スルノ權利アルモノトスルハ少ク理由ノ缺乏ナキヲ免カレス依テ三名又ハ四名以下ト改ムヘシ尤モ四名ハ丁數ナルヲ以テ不都合ナレハ宜ク之ヲ三名以上トセン之ヲ改ムル時ハ曩ニ最高數ノ人員ヲニ十名ヨリ三十名トノ間ヲ以テ撰定アルヘキ旨ヲ述ヘ置キタレトモ最少數ヲ三名ト改メタルニ依リ隨テ最高數モ減少セシメサルヘカラス則之ヲ十名ヨリ十五名マテトナシ此間ニ於テ撰定アリタシト
又後日之ヲ要スル時トハ七名以上ニ至リタル場合ノミナルヤ或ハ初メヨリ七名以上ナルトキ又ハ改選ノ時ノ如キモ此內ニ包含スルヤヲ質シタルニ之ヲ要スル時トハ全ク三名ノモノ七名以上ニ增加セシ場合ニ限ルナリト又契約ニ於テ一名又ハ數名ノ取締役ヲ撰定スヘシトノ意昧ニ改正アリタキ旨ヲ依賴セシニ之ヲ改正シ難シト雖モ併シ立案聊カ不都合ナキニアラサレハ改正スヘシトテ左ノ譯文ノ如ク改メタリ
社員三名以上ノ會社ニ在テハ直ニ會社契約ヲ以テ又ハ爾後如此場合ニ至リタルトキハ社員中四分三ノ同意決定ヲ以テ一名又ハ數名ノ取締役ヲ選定スヘシ
右ハ直譯ニシテ意味ノ解シ難キ所アリ之ヲ我邦普通ノ文章ニ改ムルトキハ左ノ如シ
社員三名以上ノ會社ニ在テハ直チニ會社契約ニ於テ一名又ハ數名ノ取締役ヲ撰定ス可シ爾後三名以上ニナリタルトキハ社員中四分三以上ノ同意決定ヲ以テ之ヲ爲ス可シ
（委員長）
二項ニ分裁スル方原文ヲ讀マサル人ニハ解釋シ易カラン則「社員三名以上ノ會社ニ在テハ直ニ會社契約ヲ以テ一名又ハ數名ノ頭取ヲ撰定スヘシ
又設立後三名以上ニ至リタル時ハ社員四分三以上云々」ト改メハ如何
（渡邊委員）
左ノ如ク改メテハ如何
差金會社設立ノ時社員三名以上ナル時ハ直ニ會社契約ヲ以テ一名又ハ數名ノ取締役ヲ撰定スヘシ
設立後三名以上ニ至リタル時ハ社員中四分ノ三以上ノ同意決定ヲ以テ之ヲ撰定スヘシ
取締役一名又ハ數名ヲ撰任シタル時ハ取締役各自ニテ會社ノ爲メニ云々以下原案ニ同シ
（本尾委員）
ロエスレル氏ニ若シ以下ハ別項トナシ差支ナキヤ否ヲ問ヒタルニ差支ナシト答ヘタリ依テ若シヲ削リ取締役數名ヲ撰定シタルトキハ云々トセハ如何
（箕作委員）
三人ナルトキハ四分ノ三ト云フノ數ハ生セサルヘシ之ヲ四人トセハ可ナラン
（渡邊委員）
少クモ四分ノ三以上トセハ可ナリ
（本尾委員）
然リ
（細川委員）
「少クモ」トアレハ「以上」ノ字ハ不用ナリ「以上」ヲ置カハ「少クモ」ノ三字ハ省クヘシ孰レカ一方ニテ可ナリ
（渡邊委員）
然ラハ「少クモ」ノ方ヲ削ルヘシ
（周布委員）
原第百四十條第三項ト同シク「總社員四分三以上ノ同意決定」云々ト改メハ如何
（渡邊委員）
結文ノ同時ナル語ニ照應セス不都合ナラン
（周布委員）
否同時トハ撰定シタル時トアルニ照應スルモノナレハ不可ナカルヘシ
（渡邊委員）
「同時ニハ」ヲ「撰定ノ時」又ハ「之レト共ニ」ト改メナハ如何
（本尾委員）
此ニ撰定トアルハ會社契約中ニ誰某ヲ以テ取締役トナスヘキコトヲ定ムルモノニシテ取締役ヲ置クヤ否ヤヲ記載スルノ精神ニハアラサルナリ
○本條ハ遂ニ左ノ如ク修正セラル
○商法第百七十七條
差金會社設立ノ時社員三名以上ナルトキハ直ニ會社契約ヲ以テ一名又ハ數名ノ取締役ヲ撰定スヘシ設立後三名以上ニ至リタルトキハ總社員四分ノ三以上同意ノ決定ヲ以テ之ヲ爲スヘシ
取締役數名ヲ撰定シタルトキハ取締役各自ニテ會社ノ爲メニ業務ヲ取扱フコトヲ得ルカ又ハ其中數名又ハ總員共同ニアラサレハ之ヲ取扱フコトヲ得サル力ヲ之ト共ニ取極ムヘシ
○第百七十九條 商法草案第百六十一條
業務擔當者又ハ頭取ハ裁判上ト裁判外トニ拘ラス總テ會社ヲ代理スル權利ヲ專有スルモノトス但シ會社契約中ノ定規及ヒ會社ノ決議ヲ遵守セサルヘカラス
（本尾委員）
本條ロエスレル氏ノ精神ヲシテ充分明瞭ナラシメソカ爲メ同氏ハ左ノ如ク改案セラレタリ
○第百六十條及ヒ第百六十一條ニ記載シタル業務擔當者又ハ取締役ノ代理權利ノ制限ハ善意ヲ以テ之ト取引ヲ爲シタル第三者ニ對シ無効ノモノトス
「不正ノ所業」ニ就キロエスレル氏ニ間フニ說明ニ依テ見ル時ハ法律ニ禁スル所迄モ包含スルカ如シ而シテ合名會社株式會社ノ規定中ニハ此事ナクシテ獨リ差金會社ニ限リ此ノ法ヲ設クルハ聊カ不都合ナキニアラスヤ尤モ之ヲ本條ヨリ除去シテ他ニ此ノ規定ヲ設ケスシテ可ナリト云フニ決シテ然ラサルモノアラン則之ヲ總則ノ部類ニ編入セハ三會社ニ適用セラレテ始メテ完全ナル條項トナルヘシトテ改正第九條ニ左ノ項ヲ加フルコトニ決セリ
商社ハ代表人其資格ヲ以テナシタル犯法ノ所業ニ付責任ヲ有シ義務ヲ負フヘキモノトス
此責任義務ノ區別ハ會社解散又ハ犯罪ノ場合ハ之ヲ責任トシ他人ニ損害ヲ與ヘタル如キ場合ハ之ヲ義務ト云フナリ
（委員長）
善意トハ如何ナル意味ナルヤ
（本尾委員）
之ヲ讐フルニ頭取會社內ニ於テハ他人ト契約スルヲ許サヽルノ制限ヲ設ケテ束縛センニ社外ニ對シテハ其契約ハ毫モ敷ナク他人頭取ヲ契約シ得ヘキモノト信シ之レト約束ヲ結フトキハ其制限ハ無効トスルナリ尤モ如此契約アルコトヲ知テ契約シタル第三者ニ對シテハ有効ナルハ無論ナリトス
（周布委員）
合名會社ノ第七十四條商法第百二十一條ト本條トハ同一ノ精神ナラン然ルニ本條ハ善意ナル語ヲ加ヘ第七十四條ニ此語ヲ加ヘサルトキハ善意ナラサルモ無効トスルノ嫌ヒアリ之ヲ同一トナスヘシ
（渡邊委員）
然リ能ク唫味スルトキハ第七十四條アラハ本條ヲ削除スルモ可ナルヘシ
（箕作委員）
第七十四條ハ取締役ノ文字ナキヲ以テ本條ヲ削除シ得サルヘシ
（周布委員）
之ヲ削除スルヨリモ同一ナラサルコトヲ質問スルトセハ如何
（本尾委員）
諾匿
（長森委員）
註釋ニ依レハ兩條共同ク善意惡意ノ區別ヲ定ムルカ如シ
（本尾委員）
然リ此說明ニ依ルトキハ必ス之カ區別アルヲ示スコト明瞭ナリ
（箕作委員）
冤角質問スヘシ
（渡邊委員）
新設第九條ニ項中「犯法」ハ「不法」ト爲スヘシ
（委員長）
「犯法」ノ方可ナルヘシ
（渡邊委員）
代表人ノナシタル犯法云々トセハ如何例令ヘハ元老院議官ノ資格ヲ以テ爲シタルコトハ則チ其議官ハ元老院ノ代表人タルト同一ナレハナリ
（本尾委員）
「資格」ヲ止メ「代表人基本分 以テ」ト爲スヘシ
○新設第九條ニ項ハ左ノ如ク修正ヲ加ヘラレタリ
「商社ハ代表人基本分ヲ以テ爲シタル犯法ノ所業ニ付キ責任ヲ有シ義務ヲ負フモノトス」
（岸本委員）
第十條卽商法第六十八條ヲ以テ見ルトキハ此第二項ハ揭載スヘキ程ノ要用ナシ如何トナレハ服從セサルモノハ其責任ヲ負擔セサルヘカラサルハ第十條ニ依テ充分解釋シ得ヘケレハナリ
（渡邊委員）
「犯法」ハ「違法」ト改ムル方實際穩當ナラン
（周布委員）
然リ「違法」ト改ムヘシ〔犯法ハ違法ニ改ムルコトニ決定ス〕
（委員長）
「犯法」ノ「法」ノ中ニハ如何ナル種類ノ法迄ヲ包含スルヤ質問スヘシ
（本尾委員）
諾
（細川委員）
人數ヲ定ムルコト如何
（委員長）
十五人トナスヘシ
（渡邊委員）
ニ人以上十五人以下トセハ如何
（本尾委員）
然ラハ第百五十四條ニニ人以上十五人以下ト制限スルノ精神ヲ以テ改正ヲロエスレル氏ニ申述セン
（岸本委員）
歐州ニ於テ差金會社ニ人員ノ制限ヲ規定シタル法律アリヤ
（本尾委員）
未タ嘗テ聞カサルナリロエスレル氏モ委員ノ質問ニ應シ人員ニ制限ヲ定ムルコトトシ預メ人數ヲモ指示サレシカ果シテ之ヲ定ムルヲ可トナスヤ否ヲ考定シタル理由書ヲ呈示セラレソコトヲ尙ホ同氏ニ依賴セハ如何
（細川委員）
然リ可ナルヘシ
以上質問說明了
于時正午時喫飯ノ爲メ中止
午後第一時十分前開會
○第百八十條 商法草案第百六十三條
社員ハ會社ノ承諾ヲ得テ持部高ヲ他人ニ販賣讓與スルコトヲ得ヘシ此承諾ヲ得タルトキハ其販賣讓與者ハ退社人ト視做シ其買受人讓受人ハ總テ會社ニ係ル權利義務上ニ於テ全ク前員ノ地位ニ代リタル者トス
（本尾委員）
本條ハ商法第九十三條ト同一ナル精神ナリ
（渡邊委員）
「販費」ノ字ヲ削除スヘシ
（周布委員）
「販賣讓與」ヲ「移轉」トセハ如何卽チ原文ノ意ハ賣渡讓渡ヲ包含スルモノナレハナリ
（河上委員）
移轉トスルモ可ナリ如何トナレハ持分高ハ會社ニ差入レアルモノニシテ其權利ヲ他人ニ移轉スルヲ以テナリ
（本尾委員）
本條ニハ第百三十九條ノ一ケ年責任ヲ受ルコトヲ包含スルモノナレトモ本文面ニ於テ之ヲ解釋スルコトヲ得ルヤ
（箕作委員、渡邊委員）
第百七十四條ニ據リ勿論之ヲ解釋スルコトヲ得ヘシ
（周布委員）
本條ハ全持分高ヲ讓ラスシテ半額ヲ讓渡シタルトキニモ適用スルヤ
（本尾委員）
本條ハ持部高ノ全部ヲ讓渡シタル場合ヲ云フ如何トナレ台持部高ノ幾部分ヲ讓渡スコトハ愁不スル所一ナレハナリ
（岸本委員）
自分持部高ノ幾分ヲ減額シテ其減額シタル高ヲ讓渡スニ付テモ本條ヲ適用スルヤ
（本尾委員）
性質ヲ異ニスルニ付本條ヲ適用スヘシ
（渡邊委員）
權利ノ上ニ「諸般ノ」三字ヲ加フヘシ
○本條ハ遂ニ左ノ如ク修正ヲ加ヘラレタリ
○商法第百六十三條社員ハ會社ノ承諾ヲ以テノミ持分ヲ他人ニ讓與スルコトヲ得ヘシ讓與シタルトキハ讓與者別離社員ト看做シ讓受人ハ前社員ノ會社ニ係ル諸般ノ權利義務ヲ繼承スル者トス
○第百八十一條 商法草案第百六十四條
業務擔當ノ權利アル社員又ハ頭取ニ撰定サレタル社員ノ所業ニ因リ會社其權利義務ヲ得ルモノトス
（渡邊委員）
權利アル云々反譯穩カナラス
（岸本委員）
今日新設ニ爲リタル第九條ニ項ノ過半ハ此條中ニ包含セリ
（本尾委員）
然リ
（箕作委員）
合名會社ニ於テハ業務取扱ハ社員ノ承諾ナキモ隨意ニナスヲ得レトモ本條ハ明カニ業務擔當者ノ所業ニ依ラサレハ權利義務ヲ生スルコトナシトスルナル可シ
（岸本委員）
業務擔當者又ハ業務罐當ノ社員又ハ業務擔當ノ權利アル社員ト書シ種類アルカ如ク見ユルノ嫌アレハ之ヲ一定ニ爲スヘシ
（本尾委員）
原文ニテハ皆同一ノ語ナリ
（渡邊委員）
「權利アル」ノ四字ハ必要ナリ如何トナレハ本條ハ業務擔當ノ權利アルモノニアラサレハ會社ノ權利義務ヲ生スルコトナキヲ以テ此四字ハ本條ノ主要ナル文字ト看認メサルヲ得ス
（本尾委員）
本條ハ商法第百二十條ト相對スルモノナリ
（塩田委員）
會社ノ文字ハ冒頭ニ置クヲ可トス
（渡邊委員）
否直接ニ受クルヲ以テ原案ヲ可ト爲ス
（本尾委員）
差金會社三名以下ナルトキハ業務擔當者又ハ取締役アリト雖モニ名ナル場合ニ於テハ此ニ名ノ所業ニ因リ權利ヲ得義務ヲ負フモノナレトモ本條ニ於如斯解釋スル得ルヤ
（渡邊委員）
解釋スルコトヲ得ヘシ
○本條ハ左ノ如ク修正ヲ爲スコトニ決ス
○商法第百六十四條業務擔當ノ任アル社員又ハ取締役ニ撰ハレタル社員ノ所業ニ因テノミ會社ハ權利ヲ得義務ヲ負フモノトス
○第百八十二條 商法草案第百六十五條
會社ノ義務ニ就テハ會社財產及ヒ本姓ヲ社名ニ加ヘタル社員ノ全財產ヲ以テ之ニ充ツヘキモノトス又未タ會社ニ差金ヲ拂込サル社員ハ此差金高ヲ其義務ニ充ツヘシ
（箕作委員）
有限社員ノ供資モ必ス負債ニ充ツヘキ理ナリ然ルニ本條之カ明文ナシ
（本尾委員）
有限社員ノ供資ハ勿論負債ニ充ツヘキモノトス
（箕作委員）
「氏名ヲ社名ニ加ヘタル社員トアル」ヲ改メテ無限社員云々トセハ適當ナランカ此意見ヲ以テロエスレル氏ニ改正ヲ質問セハ如何
（岸本委員）
若シ有限社員氏名ヲ社名ニ顯シタルトキハ他人該社名ヲ信用シテ損害ヲ負擔セサルヘカラサルカ如キ不都合ヲ生スルヲ恐ルルナリ併シ有限社員ト雖モ社名ニ氏名ヲ顯ハストキハ無限責任トスルノ條項トセハ可ナリト雖モ若シ否ラストセハ實ニ不完全ノ條項タルヲ免レス
（渡邊委員）
若シ有限社員ニシテ氏名ヲ社名ニ加ヘタリト雖モ本案ニ於テ之ヲ處理スルノ規定ナシ依テ第百五十六條鴨ニ項ヲ追加シ「有限社員ニシテ氏名ヲ社名ニ加ヘタルトキハ無限社員ト看做ス」ト爲シ之カ處分法ヲ規定セハ如何ナルヤヲ質問セラレタシ
（本尾委員）
合名會社ニ於テハ明條アルモ差金會社ニ付何ノ規定モナキヲ以テ有限社員ノ氏名ヲ社名ニ加ヘタルトキハ之ヲ如何處分スルヤ又第百五十六條ニ追加ノ事ヲモ併セテ一質問スヘシ
（周布委員）
商法第百ニ十二條ニ於テハ會社ノ負債ニ對シ財產ヲ充ツルノ順序ヲ規定スト雖モ本條ニハ別段順序ナシ然レトモ第百七十四條ニ據リ第百ニ十二條ヲ適用シ該順序ニ準據スルモノト爲スノ精神ナルヤ
（本尾委員）
合名會社ノ第百ニ十二條ヲ適用スルヲ以テ別段ニ明條ヲ揭クルニ及ハサルカ如シ併シ一應ロエスレル氏ニ質問スヘシ
（細川委員）
說明ニ「臨時附帶差金」ト云ヘル語アリ如何ナル意義ナルヤ
（本尾委員）
全資本五千圓トナシ事故アリタルトキハ其ニ倍トカ三倍トカ多ク負擔セント契約スルコトアリ是等ヲ云フナリ
○本條ハ質問ノ上修正スルコトニ決ス尤モ假リニ修正ヲ加フルコト左ノ如シ
○商法第百六十五條 會社ノ負債ニ對囲シテハ會社財產ハ無限責任社員及ヒ氏名ヲ社名ニ加ヘタル社員自己ノ財產ヲ以テ之ニ充ツヘキモノトス社員會社ニ拂込マサル供資アルトキハ其供資モ亦同シ
午後第二時二十分閉會