本日會議議案戶主及家族ニ關スル別案報吿委員ヨリ呈出相成候付及御送付候也
明治二十二年六月
庶務擔任報吿委員
戶主及家族ニ關スル別案 完
第十二章 戶主及ヒ家族
第一條 獨立シテ一家ヲ成ス者ヲ戶主ト爲ス
戶主ノ配偶者及ヒ其家ニ在ル親族ヲ家族ト爲ス
家族ハ戶主ノ氏ヲ稱ス
第二條 戶主ハ其資格ニ於テ家族ニ對シ養育ヲ爲シ及ヒ普通教育ヲ與フルノ義務ヲ負擔ス但戶主ノ承諾ヲ受ケスシテ他所ニ在ル家族ニ對シテハ此例ニ非ス
第三條 戶主カ家族ニ許諾ヲ與フ可キ場合ニ於テ未成年ナルトキ又ハ其意ヲ表スル能ハサルトキハ戶主ノ親族會之ヲ代表ス
第四條 戶主ハ未成年ニシテ父、母及ヒ祖父アラサル未成年ノ家族ノ爲メ當然後見人ト爲ル
第五條 家族ハ推定家督相續人及ヒ未成年ヲ除クノ外分家シ又ハ親族ニ係ル廢家若クハ絕家ヲ再興スルコトヲ得
第六條 他家ニ入リテ夫、婦又ハ養子ト爲リタル者ハ婚姻ノ無効又ハ緣組ノ無効若クハ解除ノ場合ニ於テハ實家ニ復歸ス又離婚又ハ離婚ノ場合ニ於テハ實家ノ戶主ノ許諾ヲ受ケテ實家ニ復歸スルコトヲ得
第七條 他家ニ入リテ夫又ハ婦ト爲リタル者ハ其配偶者ノ死亡シタルトキハ實家ノ戶主ノ許諾ヲ受ケテ實家ニ復歸スルコトヲ得
第八條 實家ニ復歸ス可キ者カ復歸スルコトヲ欲セス又ハ實家ニ復歸セントスル者カ復歸スル能ハサルトキハ一家ヲ新立シ又ハ親屬ニ係ル廢家若クハ絕家ヲ再興スルコトヲ得
第九條 戶主ノ許諾ヲ受ケスシテ普通婚姻ヲ爲セシ家族タル男子ハ一家ヲ新立シタル者トス
第十條 家族カ戶主ノ許諾ヲ受ケスシテ認知シタル私出子及ヒ父母ノ知レサル子ハ一家ヲ新立シタル者トス
第十一條 戶主カ國民分限ヲ喪失シタルトキハ廢家シタルモノト看做シ其家族ハ一家ヲ新立シタルモノトス
第十二條 分家シ又ハ一家ヲ新立シタル者ハ本家又ハ實家ノ氏ヲ稱ス
第十三條 分家シ又ハ一家ヲ新立シタル者ハ他家ノ家督ヲ相續スル爲メ自家ヲ廢スルコトヲ得
第十四條 分家シ廢家若クハ絕家ヲ再興シ又ハ一家ヲ新立シタル者ノ婦及ヒ卑屬親又廢家シテ他家ニ入リタル者ノ家族ハ當然其者ノ家ニ入ル
第十五條 卑屬親ヲ有スル者カ婚姻又ハ養子緣組ニ因リテ他家ニ入ルトキ又婚姻若クハ緣組ノ無効又ハ離婚若クハ離緣ニ因リテ其實家ヲ去ルトキハ卑屬親ハ仍ホ原家ニ屬ス
第十六條 他家ニ入リテ夫、婦又ハ養子ト爲リタル者ハ兩家ノ戶主ノ許諾ヲ受ケテ實家ニ在ル卑屬親ヲ其家ニ引取ルコトヲ得
婚姻若クハ緣組ノ無効又ハ離婚若クハ離緣ニ因リテ婚家又ハ緣家ヲ去リタル者ハ養親及ヒ配偶者タリシ者ト協議ノ上兩家ノ戶主ノ許諾ヲ受ケテ其家ニ在ル卑屬親ヲ自家ニ引取ルコトヲ得
前二項ノ場合ニ於テハ地方裁判所ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
然レトモ卑屬親カ他家ノ推定家督相續人タルトキ又引取人カ惡意ニ因リテ婚姻ノ無効ヲ惹起セル一方タリシトキハ本條ノ規定ヲ適用セス
第十七條 入夫婚姻ノ場合ニ於テハ婚姻ノ繼續中入夫ハ戶主ノ權ヲ行フ
第十八條 原第三百九十八條
第十九條 原第三百九十九條
第二十條 戶主ノ死亡シテ一个年内ニ家督相續人ノ定マラサルトキハ當然絕家トス
第二十一條 家督相續ニ因リテ戶主ト爲リタル者ハ其家ヲ廢スルコトヲ得ス
第二十二條 第七條第十四條及ヒ第十六條ニ揭ケタル場合ニ於テハ家族ノ入來レル家ノ戶主ヨリ本住所ノ地ノ身分取扱人ニ之ヲ申述ス可シ