旧民法・法例(明治23年)

離婚養子縁組ノ方式離縁及養子縁組ノ解除ニ関スル別案

参考原資料

○別案
第四十七條 滿二十五年ニ至ラサル男子及ヒ滿二十年ニ至ラサル女子ハ父母ノ許諾ヲ受クルニ非サレハ婚姻ヲ爲スコトヲ得ス
(第二項第三項ハ原案)
第四十九條 家族ハ年齡ニ拘ハラス戶主ノ許諾ヲ受ク可シ但推定家督相續人ヲ除クノ外家族カ其家ヲ出ツルノ意思アル場合ハ此限ニ在ラス
戶主カ父母祖父又ハ祖母ナルトキハ一箇ノ許諾ヲ以テ足ル
第五十七條第五十九條第八十六條及ヒ第八十七條中ノ「尊屬親」ノ下ニ「戶主」ノ二字ヲ加フ
第九十二條 第二號ニ左ノ別項ヲ加フ
第二 ヽヽヽヽヽヽ
然レトモ戶主ハ配偶者ノ成年ニ至リタルニ拘ハラス無効ヲ請求スルコトヲ得
第五章 離婚
第一節 協議ノ離婚
第百十九條 夫婦ハ下ニ定メタル條件及ヒ方式ニ從ヒ協議ヲ以テ離婚ヲ爲スコトヲ得
第百二十條 如何ナル場合ニ於テモ離婚セントスル夫婦ハ婚姻許諾ノ爲メ第四章第一節ニ定メタル順序ニ從ヒ各其父母、組父母又ハ親族會ノ許諾ヲ得ルコトヲ要ス但親族會ノ許諾ヲ要スルハ未成年者ノ離婚スル場合ニ限ル
離婚ニ因リテ實家ニ復歸セントスル者ハ實家ノ戶主ノ許諾ヲ受ク可シ
第百二十一條 離婚セントスル夫婦ハ豫メ證書ヲ作リテ左ノ諸件ヲ定ム可シ
 第一 離婚ノ後其子ニ關スル處置
 第二 財產ニ關スル夫婦相互ノ權利ノ割合
第百二十二條 夫婦ハ相應ナル年齡ノ親族又ハ知友ノ二人ヲ同伴シ自身ニテ本住所又ハ寄住所ノ區裁判所ニ出頭シ公開セサル法廷ニ於テ判事ニ離婚セントスルノ意思ヲ申述シ且左ノ書類ヲ差出タス可シ
 第一 前條ニ記載シタル證書
 第二 夫婦ノ婚姻證書
 第三 子ノ出生證書又ハ死亡證書
 第四 離婚ノ許諾ヲ與フ可キ者ノ自身出頭セサル場合ニ於テハ其許諾書若シ死亡シ又ハ其意ヲ表スル能ハサルトキハ死亡證書又ハ其事由ヲ證スル書類
親族會ノ許諾ヲ要スルトキハ其許諾書
第百二十三條 判事ハ同伴人ノ前ニ於テ夫婦ニ對シ懇切ニ說諭ヲ爲シ詳細ニ離婚ノ結果ヲ示シテ和諧ヲ試ム可シ
和諧ノ見込アルトキハ判事ハ期日ヲ定メテ更ニ出頭セシムルコトヲ得
第百二十四條 夫婦カ離婚セントスルノ意思ヲ固執スルトキハ判事ハ公開ノ法廷ニ於テ夫婦ノ前數條ノ條規ヲ遵守シタルコトヲ審定シ檢事ノ意見ヲ聽キテ離婚ヲ認許スル旨ヲ言渡ス可シ
若シ離婚ヲ認許セサルトキハ理由ヲ附シテ其旨ヲ言渡ス可シ夫婦ハ此裁判ニ對シテ抗吿ヲ爲スコトヲ得
第百三十一條 
 第一 姦通但夫ノ姦通ハ重大ノ侮辱ヲ成ス場合ニ非サレハ離婚ノ原因ト爲ラス
第百四十三條 裁判所ハ離婚ヲ言渡ス裁判ニ於テ子ノ監護ニ任スル夫婦ノ一方ヲ定ム可シ
然レトモ親族又ハ檢事ノ請求ニ因リ子ノ利益ヲ慮ツテ之ヲ第三者ノ監護ニ付スルコトヲ得
第二節 養子緣組ノ方式
第二百三條 普通養子緣組ハ契約ニ因リテ成ルモノトス
緣組契約ハ養親又ハ養子ノ本住所又ハ寄住所ノ身分取扱人ノ前ニ於テ證人二人ノ立會ニテ之ヲ爲ス可シ
當事者ハ公正ノ部理委任狀ヲ與ヘタル代理人ヲ以テ此契約ヲ爲サシムルコトヲ得
第二百四條 滿十八年ニ至ラサル子ノ緣組ハ父母之ヲ承諾スルコトヲ得
父母ノ一方カ死亡シ又ハ其意ヲ表スル能ハサルトキハ他ノ一方ニ於テ緣組ヲ承諾スルコトヲ得
父母共ニ死亡シ又ハ其意ヲ表スル能ハサルトキハ親族會ハ緣組ヲ承諾スルコトヲ得
第二百五條 滿二十五年ニ至ラサル者ハ父母ノ許諾ヲ受ケテ緣組ヲ承諾スルコトヲ得
父母ノ一方カ死亡シ又ハ其意ヲ表スル能ハサルトキハ他ノ一方ニ於テ許諾ヲ與フルコトヲ得
父母共ニ死亡シ又ハ其意ヲ表スル能ハサルトキ二十年未滿ノ者ニ限リ親族會ノ許諾ヲ受クルコトヲ要ス
第二百五條ノ第二 育兒院ニ在リテ父母ノ知レサル子ノ緣組ハ其普通ノ未成年中ニ限リ前二條ノ規定ニ從ヒテ院長之ヲ承諾シ又ハ許諾ヲ與フルコトヲ得
第二百六條 未成年者ノ緣組ハ其契約ヲ爲シタル地ノ區裁判所ノ認可ヲ經ルニ非サレハ未成年者ニ對シテ完成セス
裁判所ノ認可アリタル緣組ハ契約ノ日ヨリ其効果ヲ生ス
第二百七條 右ノ場合ニ於テ未成年者ノ代表人ハ契約後一ケ月內ニ契約書ノ謄本ヲ區裁判所判事ニ差出タス可シ
裁判所ハ緣組ノ條件ノ具備スルヤ緣組カ未成年者ノ不利ト爲ラサルヤ及ヒ養親ハ不名譽ノ者ニ非サルヤヲ考査シ公開セサル法廷ニ於テ檢事ノ意見ヲ聽キ他ノ手續ヲ要セス又理由ヲ附セス單ニ緣組ヲ認可ス又ハ緣組ヲ認可セスト言渡ス可シ
第二百八條 緣組ノ契約ヲ爲シ未タ區裁判所ノ認可ヲ經サル前ニ養親ノ死亡シタルトキト雖モ未成年者ノ代表人ハ其手續ヲ繼續シテ緣組ヲ完成スルコトヲ得
第二百九條 身分取扱人ハ豫メ當事者ヨリ左ノ書類ヲ呈示セシム可シ
 第一 養親及ヒ養子ノ出生證書又ハ之ニ代用スル保證書
 第二 養親ノ本住所ノ身分證書簿册ニ記載シタル正出又ハ私出ノ子孫ナク及ヒ養子孫ナキコトヲ證スル認定書又ハ緣組特許書
 第三 配偶者アリタルトキハ其失踪宣言書又ハ其死亡證書
 第四 監視後見人ニ管理計算書ヲ差出シタル證明書
 第五 父母、戶主、親族會又ハ育兒院長ノ許諾ヲ要スルトキハ其許諾書又ハ許諾ヲ得ル能ハサル事由ヲ證スル書類
第二百十條 身分取扱人ハ緣組ノ障碍ト爲ル可キ法律上ノ原因アルニ非サレハ其緣組ヲ拒ムコトヲ得ス
身分取扱人ハ理由ヲ記シタル拒斥書ヲ授付ス可シ
當事者拒斥ヲ不當ナリト思料スルトキハ區裁判所ニ抗吿ヲ爲スコトヲ得
第二百十一條 婚姻ノ章第七十八條乃至第八十條ノ條規ハ緣組ニ之ヲ適用ス但本章第一節ニ定メタル條件ニ違背セサルコトヲ要ス
第二百十二條 婿養子緣組ハ婚姻ノ公式ニ因リテ成立ス
此場合ニ於テハ緣組ニ必要ナル條件ノ欠缺ヲ原因トシ婚姻ノ章ノ規定ニ從ヒテ故障ヲ爲スコトヲ得
第二百十三條 婚姻ノ認許ヲ受クル時ニ於テ養親ハ婿養子緣組ヲ爲スノ意思ヲ身分取扱人ニ申述ス可シ
養子ト爲ル者ノ婚姻ノ承諾ハ緣組ノ承諾ヲ帶フ
第二百十四條 遺言養子緣組ハ公正ノ遺言書ヲ以テ之ヲ爲ス可シ
此緣組ハ養親死亡ノ日ニ家督相續ヲ爲ス可キ正出又ハ私出ノ子孫アリ及ヒ生存ノ日ノ養子孫アルトキハ其効ヲ失フ
此緣組ノ受諾ハ相續發開ノ地ノ身分取扱人ノ前ニ於テ之ヲ爲ス可シ
第二百十五條 養子ノ滿二十五年ニ至ラサル前ニ遺言ノ發開シタルトキハ(新)第二百四條及ヒ第二百五條ノ規定ニ從ヒテ其受諾ヲ爲ス可シ
第二百十六條 身分取扱人ハ緣組契約、婚姻屆出又ハ遺言受諾ノ後第四百七十六條ノ規定ニ從ヒテ緣組證書ヲ作ル可シ
第二百十七條 未成年者ノ緣組ハ第四百七十八條ノ規定ニ從ヒテ其認可ノ言渡ヲ緣組證書ノ欄外ニ追記シタル後ニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第二百二十五條 父母、親族會又ハ育兒院長ノ許諾ナクシテ爲シタル緣組ノ無効ハ許諾ヲ與フ可キ者又ハ許諾ヲ受ク可キ者ニ非サレハ之ヲ請求スルコトヲ得ス
婚姻ノ章第九十條第二項第九十一條及ヒ第九十二條ノ規定ハ此無効訴權ニ之ヲ適用ス
第六節 離緣
第一款 協議ノ離緣
第一條 養親及ヒ養子ハ協議ヲ以テ離緣ヲ爲スコトヲ得
然レトモ十八年未滿ニテ養子ト爲リタル者ノ離緣ハ滿十八年ニ至ラサル間ニ限リ養親ト緣組承諾ノ權ヲ有スル者トノ協議ヲ以テ之ヲ爲ス
養親ノ一方ノ死亡後他ノ一方ト養子トノ協議ノ離緣ハ死者ノ離緣ヲ帶フ
第二條 協議ニ因リテ離緣ヲ爲サントスルトキハ當事者ハ豫メ金錢上ノ事項ヲ約束ス可シ
養子ハ養家ニ於テ生ミタル十八年未滿ノ子ヲ帶去スルノ約束ヲ爲スコトヲ得但區裁判所判事ハ離緣ヲ言渡スト雖モ子ノ不利ナリト認ムルトキハ此約束ヲ認許セサルコトヲ得
第三條 離緣ヲ爲サントスル當事者ハ自身ニテ養親ノ本住所ノ區裁判所ニ出頭シ判事ニ其意思ヲ申述シ且左ノ書類ヲ差出ス可シ
 第一 前條ニ記載シタル約束書
 第二 緣組證書
 第三 緣組中ニ養子ノ生ミタル子ノ出生證書
此外第百二十三條及ヒ第百二十四條ノ規定ハ離緣ノ場合ニ之ヲ適用ス
第二款 特定原因ノ離緣
第四條 離緣ハ法律ニ定ムル原因アルニ非サレハ之ヲ請求スルコトヲ得ス其原因ハ左ノ如シ
 第一 暴虐、脅迫又ハ重大ノ侮辱
 第二 惡意ノ遺棄
 第三 重罪ノ處刑但國事犯ニ係ル處刑ハ此例ニ非ス
 第四 竊盜、詐僞取財、受寄財物、贓物、家資分散又ハ私印私書僞造ノ罪ニ因レル重禁錮一年以上ノ處刑
 第五 養家ノ祖父母、父母ニ對スル罪ノ處刑
離婚ノ章第百三十二條第百三十三條及ヒ第百四十條ノ規定ハ離緣ニ之ヲ適用ス
第五條 離緣ヲ請求スルノ訴權ハ養親及ヒ養子ノミニ屬ス
養親又ハ養子カ死亡シタルトキハ離緣ノ訴權ハ消滅ス但訴訟中ニ死亡シタル場合ニ於テハ現實ノ利益ヲ有スル者ヨリ其訴訟ヲ繼續スルコトヲ得
第六條 夫又ハ婦ハ其配偶者ノ承諾ヲ要セスシテ離緣ヲ請求スルコトヲ得
養親ノ一方ヨリ又ハ養親ノ一方ニ對シ爲ス離緣ハ他ノ一方ノ離緣ヲ帶フ但他ノ一方ノ死亡後ト雖モ亦同シ
第七條 養親又ハ養子カ禁治產ヲ受ケタルトキハ後見人又ハ監視後見人ハ親族會ノ認許ヲ受ケテ離緣ヲ請求スルコトヲ得但養子ニ付テハ必要アルトキハ次條ノ規定ノ適用ヲ妨ケス
第八條 養子ノ滿十八年ニ至ラサル間ハ緣組承諾ノ權ヲ有スル者ヨリ離緣ヲ請求スルコトヲ得
此場合ニ於テハ緣組ヲ認可シタル裁判所ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
第九條 養子カ養親ト同住スルトキハ裁判所ハ離緣ノ訴訟中養子ヲシテ養親ノ住家ヲ去ラシムルコトヲ得
此場合ニ於テハ養子ハ衣服其他ノ日用物品ヲ持去リ且必要アルトキハ請求スルコトヲ得
裁判所ハ養子又ハ其代表人ノ請求ニ因リテ權利保存ノ爲メニ必要ナル處分ヲ命スルコトヲ得
第三款 離緣ノ効果
第十條 離緣ハ之ヲ言渡シタル裁判ノ確定後ニ非サレハ其効果ヲ生セス
若シ適法ノ公示ナキトキハ離緣ノ裁判ヲ以テ善意ナル第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第十一條 養子カ養家ニ於テ生ミタル子ハ離緣後ト雖モ養家ニ屬ス緣組前ニ生マレタル子ニシテ緣組ト同時ニ養孫ト爲リタル者モ亦同シ
養子ト其子トノ間ニ於ケル養料ノ義務ハ離緣ノ爲メニ變更スルコト無シ
第十二條 養子ノ過失ニ因リテ離緣ト爲リタルトキハ養子ハ養親ノ過失ノ有無ニ拘ハラス其所有財產ニ非サレハ之ヲ請求スルコトヲ得ス但養家ノ爲メニ消費シタルモノハ此限ニ在ラス
養親ノ過失ニ因リテ離緣ト爲リタルトキハ養子ハ養料ヲ請求スルコトヲ得但前項ノ規定ノ適用ヲ妨ケス
第十三條 養子ハ養家ニ於テ相續シタル財產ノ現存スルモノハ之ヲ返還ス可シ
然レトモ養子ハ實家ニ於テ他ノ人ノ爲メ既ニ發開シタル相續ニ權利ヲ有セス
第七節 養子緣組ノ解除
第十四條 滿十八年ニ至ラサル前ニ養子ト爲リタル者ハ滿十八年ニ至リシ日ヨリ一个年內ニ本住所ノ區裁判所ニ出頭シテ判事ニ緣組ノ解除ヲ請求スルコトヲ得
判事ハ相當ノ說諭ヲ加ヘ若シ其効アラサルトキハ解除ヲ言渡ス可シ但事情ニ因リ更ニ期日ヲ定メテ養親及ヒ實親又ハ實家ノ戶主ヲ呼出タシ其意思ヲ陳述セシムルコトヲ得
第十五條 緣組解除ノ場合ニ於テハ養子ハ養家ニ於テ相續シタル財產ヲ返還ス可シ但相續財產ノ讓渡ハ善意ナル第三者ノ爲メ有効タルヲ妨ケス
又養子ハ實家ニ於テ他ノ人ノ爲メ既ニ發開シタル相續ニ權利ヲ有セス
第十六條 養子ハ其所有財產ノ返還ヲ請求スルコトヲ得但養家ノ爲メ消費シタルモノハ此限ニ在ラス
養子ハ養家ニ於テ受ケタル養育及ヒ敎育ノ費用ヲ償還スルノ義務ナシ
第十七條 緣組ノ解除ニ拘ハラス養子カ養家ニ於テ生ミタル子ハ養家ニ屬ス但養料ノ義務ハ此カ爲メニ變更スルコト無シ