旧民法・法例(明治23年)

法律取調委員会 民法草案再調査案議事筆記(要録)

参考原資料

備考

  • 未校正のテキストデータです.
財產編
總則
第四十二條
(今村)
本條第六ハ所有權ヲ消滅セシメザルモノアルニ付キ不都合アリ何トナレバ春畫ノ如キハ其賣買ヲ禁ズルモ其所有ヲ禁ゼザレバナリ起案者之ヲ修正シタルモ誤テ其記入ヲ洩ラシタル如シ
(南部)
追テ其修正案ヲ持出サルベシ
第四十五條
(箕作)
本條ハ父權及ビ相續ニ關スルトアルハ別ニ定ムルト云フニシタシ
(淸岡)
第二項ハ全部ヲ刪除シタシ
(栗塚)
將來定ムルトシテハ如何
(松岡)
將來ト云フモ特別ト云フモ性質ニ變リナシ
(北畠)
此回ハ元老院ノ意見アル條項ニ付可否スルニ止メ其他ハ別義ニ讓リ去ルベシ其議ニ決ス
第四十六條
本條第二項ハ元老院ノ修正ヲ可トス
第五十九條
(委員長)
元老院ノ修正ニ國、府廳、市町村トシテ郡ヲ認メザルハ如何
(元尾崎)
郡ハ未ダ自治制ト爲ラザルカ爲メナラン
(淸岡)
公ノ無形人ト云フニテハ如何
(栗塚)
公ノ無形人ト云ヘバ學校病院迄ヲ含ムニ至ルノ嫌ヒアリ
第六十八條
(栗塚)
第一項ノ末ニ但父母ノ用益權ハ此限ニ在ラズト云フ文字ヲ附加スベキニ誤テ之ヲ說セリ
第八十九條
本條第二ハ起案者更ラニ增稅又ハ新稅但其臨時又ハ非常ノ性質ガ法令ニ明示アルトキ又ハ明示ナキモ明カニ情況ヨリ生ズルトキニ限ルト改正セリ
(淸岡)
明カニ情況ヨリ生ズルト云フガ如キハ不都合ナリ
(栗塚)
情況ヨリ生ズルト云ヘバ時々臨時非常ノ命令ヲ爲サザルモ其事足ルベシ
第百二十八條
(栗塚)
元老院ニテ此條ノ末ニ本條ノ規定ハ反對ノ合意ヲ妨ゲズト云フヲ附加セリ
(元尾崎)
此修正ハ明言セザルモ無論ナレバ本條ノ規定ニ反對ノ慣習アルトキハ其慣習ニ從フコトヲ妨ゲズトスルヲ可トス
可決ス
第百三十九條
(元尾崎)
此條ハ別ニ明記ヲ要セザレバ刪除シタシ
可決ス
第百四十四條
(栗塚)
本條ハ元老院ニテ日本ノ如キ屡火災アル土地ニシテ此等ノ義務ヲ一々盡サザルベカラザルニ至テハ人民ノ困難言フベカラズト云フニアリ
(淸岡)
火災ノ多キ土地ニハ家屋ノ一箇ノ建物ニ數人ノ賃借者アルトキ火災ノ難ニ罹リシトキハ其責ヲ受ケシムルヲ不可ナリトセバ貧弱社會ノ人民ハ借金ノ返濟ヲ爲スニ及バズト云フ法律ヲ立ツルガ如シ不都合モ亦タ甚シ
(寺島)
起案者ノ精神ハ人ノ家屋ニ火災ノ難ヲ及シタル者ハ其責ヲ受ケザルヲ得ズト云フニアリ
(元尾崎)
類燒ト出火ノ場合トハ同一視スルヲ得ズ
(寺島)
原案ノ精神ハ類燒ノ場合ト雖ドモ其責ヲ辭スルコトヲ得ズ
(栗塚)
日本人ノ腦髓ニハ貸家ニ類燒ヲ受ケタル爲メ其借主ニ對シ損害賠償ヲ請求セントスルノ感ヲ起ス者ナシ
(松岡)
刑法附則ニ失火ハ此限ニ在ラズト云フ取除アレバ本條ハ元老院ノ意見ヲ採用シテ可ナリ其議ニ決ス
第百八十三條
(今村)
正權原ト云ヘバ其反對ハ不正ノ權原ト云フヲ惹起スル故有權原トスルヲ可トス
(栗塚)
追テ詮スベシ
第二百二十九條
(栗塚)
本條ノ水流トアルハ浩闊ナル河川ニアラズ狹少ノ水流ナレバ其意味ヲ明ニセン爲メニ溝渠ノ文字ヲ加ヘリ此等ニ付テハ主務省ヘ照會シタル儀モアレバ取得篇ニ至テ報吿スベシ
第二百五十六條
(箕作)
本條ノ末項ニ平分スルコトヲ得トアリシヲ平分ストシタルハ如何
(箕作)
歐洲ハ平分スト云フ意味ナリ
(村田)
平分シトシテハ如何
可決ス
第二百六十條
窓戶トアルヲ〓孔トス
第三百七十八條
(栗塚)
本條ハ起案者末尾ニ但ヲ加ヘ但共謀ノ場合ニ於テハ其義務ハ連帶ナリトシテ元老院ニ於テ採用セラレタリ
可決ス
第三百八十條
(箕作)
親屬ヲ親族トシタルハ相親族ト云ヘバ血族姻族共ニ包含スルヲ以テ單ニ血族タルヲ明ナラシメンガ爲メナリ
第四百條
(箕作)
訴訟ヲ却下スルト云フヲ得ルヤ
(南部)
原案ノ通リ請求ヲ却下スルト云フヲ可トス
可決ス
第四百十四條
(箕作)
隨意ナラザルト云フハ妥當ナラズ偶然ニ係ルモノナルトキト云フヲ可トス
可決ス
第四百二十條
(箕作)
全部喪失ノ場合ハ同意ヲ解除スルヲ得ザルヤ
(栗塚)
全部喪失スル場合ハ解除ナシ
第四百二十條
(箕作)
本條ニ於ケル元老院ノ修正ハ別ニ良ヲ加ヘズ
(委員長)
原案ニ復スベシ
可決ス
第四百五十四條
本案ノ第一項利害ノ云々問ハズト云ヘルハ元老院ノ刪除ナリ
(箕作)
刪除セザルヲ可トス末項トノ照應アレバナリ
可決ス
第五百二十條
(栗塚)
本條第三項但書ハ元老院ニ於テ刪除ニ屬セリ
可決ス
第五百二十三條
(南部)
解除ヲ不成立ト改メタルハ宜シカラズ此ノ如キ關係ノアル文字ハ漫リニ修正スベカラズ
(箕作)
相殺モ亦解除ストシタシ
可決ス
第五百二十五條
(栗塚)
第二ニ使用ヲ許セルトアルヲ元老院ニテ消費ノ文字ニ改メラレシバ妥當ナルベシ
可決ス
第五百三十五條
(栗塚)
本條ハ元老院ニテ一分ノ償金ヲ供シ又ハ受取ルニトアルヲ刪除シタルモ此文字ハ存在セラレタシ卽チ其議ニ決ス
第五百四十九條
(淸岡)
末項ノ必要ハ如何
(寺島)
此明文アラザレバ自治ノ未成年者ハ抵當ヲ設定スルコトヲモ得ザルヤト云フノ疑ヒアリ
(淸岡)
未成年者ト雖ドモ既脫後見人ニ至リタル以上ハ不動產ヲ讓渡スルハ自由ニ屬セシムベシ
(栗塚)
不動產ノ賣讓ハ嚴重ニ取扱フヲ穩當トス
(寺島)
之ヲ明記セザルトキハ自治ノ未成年者ハ不動產ヲ讓渡スルヲ得ザルベシ
(南部)
別項ハ人事篇中ニ屬スベキモノナリ卽チ刪除ニ決ス
新第 條
(淸岡)
但以下ハ刪除セザレバ甚ダ奇異ナリ
(南部)
然レドモ以下ヲ刪除スベシ否ラザレバ不法ノ原因ニ自然義務ノ成立スルニ至ル如クナレバナリ其議ニ決ス
以下傍聽ヲ缺ク
財產取得篇
總則
第一條
(松岡)
第二項ハ相續篇ニ屬スト云フヲ以テ刪除セシヤ
(栗塚)
然リ
(村田)
取得篇ニハ包括名義ナシトセバ別ニ特定名義ニ依リト云フノ必要ナシ特定名義ト云フハ包括名義ニ對スルヲ以テナリ
(栗塚)
包括名義ニ依ル取得方法ハ別ニ之ヲ定ムトシテハ如何
(北畠)
包括名義ニ依リテ取得スル方法ハ別ニ之ヲ定ムトスベシ
可決ス
第十一條
(箕作)
草木ノ栽植ト云フモ自己ノ栽植ト云フ義ヲ明ニシタシ
(今村)
原案ニシテハ如何
可決ス
第三十三條
(栗塚)
賣買ノ豫約ト云ヒシヲ賣渡ノ豫約トシタルハ買受ノ豫約ト對シタルニアリ
(元尾崎)
賣渡ト云フモ賣買タルベシ何ノ賣渡ト修正セザルヲ得ザルノ理アランヤ又相應ノト云フ文字ハ存在セシムルヲ可トス
(松岡)
相應ノ効力ト云フハ賣買ノ成立ニ相應ナル効力ト云フ如クナレバ賣買ガ成立シタリトノ判決ヲ爲ストスベシ
可決ス
(元尾崎)
賣渡ノ豫約ト云フハ如何
(栗塚)
買受ノ義務未ダ確定セズ賣渡ノ提供アリタルニ止マルトキヲ云フ
第七十四條
(松岡)
第三項但書ヲ一層廣大ナル擔保ノ明約アルトキハ此限ニ在ラズ又云々妨ゲズト云フガ如キ文例ハアラザルナリ
(村田)
原案ニ復スルヲ可トス
可決ス
第八十三條
(元尾崎)
又ハ若シトアルハ又ハト云ヘバ若シト云フハ不要ナリ卽チ「若シ」ヲ刪除セリ
第九十九條
(委員長)
部分ニ付テニ非ザレバトシタルハ非理ナリ
(栗塚)
部分ノミニ非ザレバトシテハ如何
第百三條
(松岡)
隱秘シタルト云フハ隱シタルトシタシ隱レタルト隱シタルトノ區別明カナレバナリ
(栗塚)
隱秘ト云フニテ妨ゲナシ
(松岡)
隱秘ハ元ト隱蔽トアルニ依リ隱蔽トスベシ
可決ス
第百十九條
(淸岡)
元老院ニ於テ第二項ノ既ニ爭ヲ落着セシメタル場合ニ於テト云ヘルヲ既ニ落着シタル爭ニ付キト修正シタルハ不可ナリ
(委員長)
落着シタル爭ニ付キト云ヘバ落着ニ付キ爭ヒアルモノノ如クナレバ原案ノ通リヲ可トス
(委員長)
既ニ爭ノ落着セシメタル場合ニ於テ云々トスベシ
可決ス
第百二十一條
(委員長)
本條第一項ハ爲メ以下ノ文字ヲ刪除シタルハ如何
(栗塚)
包括會社ハ取得篇ニ存入セザル旨意ナレバナリ
(寺島)
包括會社ト云フハ夫婦財產契約ノ如キヲ指スニ過ギザレバ取得篇ニ存入スベキモノニアラズ
第百二十二條
(栗塚)
又ハ特別法ノ文字ヲ刪除シタルハ商法ノ上ニ定リアレバナリ
第百二十五條
(村田)
目的ノ上ニ「合意ノ」ト云フ三字ヲ挿入シタルハ如何
(栗塚)
當事者ノ目的ト云フニ惑ヒアレバナリ
(松岡)
冒頭ニ合意ノ一般ノ規則ト云フ文字アル以上ハ目的ノ上ニ合意ノト云フ三字ヲ挿入スルニ及バズ
(箕作)
元老院ノ修正ニテ妨ナシ
第百四十九條
(淸岡)
訴追債權者ト云フハ解釋シ難キヲ以テ元ノ如ク訴追シタル債權者トスベシ
可決ス
第百七十四條
(槇村)
繼續シタル疾病ト云フハ奇異ナリ
(元尾崎)
繼續シタル疾病ト云ヘバ疾病ニ少シモ間斷アラザルヲ云フヤ
(栗塚)
然リ原案ハ既ニ罹レルト云ヘルヲ以テ疾病ニ間斷ナキヲ見ハサザレバナリ
(松岡)
原案ノ文字ニテ病ミ續キト云フ意味アリト認ムルヲ得ベシ原案ニ決ス
第百七十五條
(箕作)
得ザルモノ且ト云フハ文ヲ成サズ原案ニ復ス可シ其議ニ決ス
第百八十三條
(南部)
「モノナル」ト云フ字ヲ挿入シタルハ如何
(栗塚)
死亡ノ當時ニ年金權ヲ設定シタルニアラズ年金權ハ死亡ノ後ニ至テ効ヲ生ズル義ヲ明ニセンガ爲メナリ
(松岡)
「モノナル」ノ文字ヲ挿入セザルモ其惑ヒナシ卽チ「モノナル」ノ文字ハ採用セザルニ決ス
第百八十六條
(箕作)
場所ハ刪除スベカラズ
(松岡)
日ヲ示セバ場所ハ自ラ明ナラン
(淸岡)
及ビ場所ハ存シタシ
(委員長)
商法ノ文例モアレバ及ビ場所ハ存スルヲ可トス
可決ス
第百九十三條
(元尾崎)
第二項其不正ノ利息トアルヲ何等ノ利息云々トシタルハ不都合ト云フベシ何等ノ利息云々ト云ヘバ總テノ利息ヲモ辨濟スルヲ要セズト云フニ至ラン如此ハ元來利息制限法ニモ牴觸スベシ利息制限法ニシテ既ニ不理ナリ一不正ノ爲メニ全利息ヲ收取スルヲ得ザルハ殆ンド何ノ理タルヲ知ラズ
(南部)
其不正當ノ利息ヲ辨濟スルコトヲ要セズトシタシ
可決ス
(栗塚)
若シ云々ハ若シ辨濟シタルトキハ之ヲ取戻スコトヲ得トスベシ
可決ス
第百九十四條
(松岡)
元老院ニ於ケル本條ノ修正ハ不都合ナリ
(箕作)
但書ヲ除クノ外原案ニ復スベシ其議ニ決ス
第百九十五條
(箕作)
辨濟ス可キモノナルトキハト云ヘルハ不明ナレバ辨濟ス可キトキハトスベシ
可決ス
以下傍聽ヲ缺ク
第一部 對人擔保
第十五條
(栗塚)
本條ノ修正ハ何程ノ價値ヲモ有セズ如何
(村田)
敢テ不都合ナシ
第二十一條
(村田)
訴追シタル債權者ト云ヘルハ訴追債權者トシテハ如何
(栗塚)
追訴債權者トセラレタシ
第二十八條
(元尾崎)
「利シ」又ハ「之ヲ」ノ二字ヲ除去シタルハ如何
(栗塚)
誓ヲ刪リシガ故ナリ
第二十九條
(村田)
賠償ヲ言渡サシムル爲メトシタルハ元トノ如ク賠償ノ言渡ヲ得ル爲メト云フヲ可トス
(元尾崎)
然リ人民ヨリ裁判官ニ對シ言渡サシムル爲メト云フハ穩當ナラザレバナリ原案ニ復決ス
第四十五條
(栗塚)
本條ニ擔保ヲ減ジ又ハ危クシタルトアルハ擔保ヲ減ジ又ハ害シタルトスベキ誤ナリ
第五十六條
(栗塚)
本條ノ末尾ニ其責ニ任ズトアルハ起案者ヨリ對手タル可シト改メ來レリ
(箕作)
對手人タル可シトシテハ如何
可決ス
第八十八條
(村田)
任意上不可分トアルハ任意ノ不可分トスベキニアラズヤ
(栗塚)
第一項ノ任意上不可分トアルハ副詞ナレバ任意上トスベシ
可決ス
第九十二條
本條ハ又ハ相續人ノ數字ヲ刪除ス
第百條
(南部)
次ノ第二章及ビ第三章トシタルハ原案ノ如ク次ノ二章トシテ可ナリ
(村田)
後ノ二章トシテハ如何
(元尾崎)
次ノト云フ文字ヲ刪除シ朱記ハ採用スベシ其議ニ決ス
第百四條
本條ハ確定日附ノ論ニ關係アルヲ以テ未定ナリ
第百七條
(南部)
第三者ナル債務者トシタルハ原案ノ如ク第三債務者トスルヲ可トス
可決ス
第百十三條
(箕作)
其辨償ヲ擔保スト云フハ意義明瞭ヲ缺クニ依リ其出費ノ辨償ヲ擔保ストシタシ
可決ス
第百三十一條
(南部)
本條田畑山林ノ如キヲ質取シ其收益ヲ得タル債權者ハ自己ノ收益ヲ抛棄シテ抵當權ノミヲ存スルコトヲ得ト云フハ質及ビ抵當ノ慣習ニ反スルニアラズヤ
(栗塚)
利益ヲ收穫スルニ莫大ノ費用ヲ要シ損得相償ハザルトキハ其質權ヲ棄テ抵當權ノミヲ存スルヲ得セシメザルベカラズ
(元尾崎)
質權ヲ棄ツルトキハ當然法律上ノ利益ヲ生ズベキニアラズヤ
(栗塚)
利子ニ代ハルベキ收穫ノ權利ヲ抛棄スルトキハ卽チ利子ヲ抛棄スルモノト云フベシ
(南部)
第二項ヲ刪除スルトキハ從來ノ質タル目的ニ反スベシ
(淸岡)
曩ニ建物宅地ト田畑山林トヲ區別シタルヲ誤謬ナリト思惟スベシ
(元尾崎)
建物宅地ハ質取少ナク抵當ノ例多キモ田畑山林ハ之ニ反セリ
(栗塚)
抵當權ノミヲ存スルコトヲ得ト云ヘル上ニ無利息ニテノ數字ヲ加ヘテハ如何
可決ス
第百四十一條
(栗塚)
訴訟費用ヲ訟事費用トシタルハ登記公證ノ如キ訴訟費用ニアラザルモノヲモ含ムヲ以テナリ
第百四十二條
(箕作)
財產ヲ配當スルト云ヲ得ベキヤ
(栗塚)
財產ヲ換價シテ之ヲ配當スベシ
(元尾崎)
換價ノ文字ヲ刪除スルハ不可ナリ
(栗塚)
淸算ト云ヘバ換價ヲ含ムベケレバナリ
第二百四十七條
本條ハ原案ニ復決ス
第二百四十九條
本條朱書公正ノ文字ヲ除去セリ
第二百五十七條
(栗塚)
本條第二項ハ元老院ニテ刪除スベシト云フ說ニ對シ必要ナル場合ノ事實ヲ發見スル能ハザルナリ
(元尾崎)
元老院ノ修正ヲ採用スベシ其議ニ決ス
第二百六十四條
(南部)
本條ハ原案ニ復スベシ
(栗塚)
公正證書ヲ刪除シタル以上ハ自然原案ニ復セザルヲ得ズ其議ニ決ス
第三款
(元尾崎)
財產ノ檢索抗辯ハ財產檢索ノ抗辯トスベシ
可決ス
證據篇
第一部
總則
第一條
(栗塚)
有的無的ノ文字ハ元老院ニテ排斥セラレ事實ノ有無トシタルモ事實ノ有無トスルモ亦妥當ナラズ
(淸岡)
事實ノ有無ト云ヘバ有的無的ト云フト意味ヲ異ニスベシ
(箕作)
原案ニ依ルヲ可トス
可決ス
第二十一條
(元尾崎)
私書證書二通ヲ要スルト云フハ如何
(栗塚)
双務契約ハ反對ノ利益ヲ有スル當事者ノ員數ニ應ゼザルモ二樣ニテ足レリ
(元尾崎)
原案ノ文面ニ於テモ自ラ二通ヲ作ルニ至ルベシ故ニ正本二通ト明記シテ差支ナシ
可決ス
第二十三條
(元尾崎)
本案ハ原案ニ復シタシ自筆ニテ金額若クハ數量ヲ記載シ又ハ他ノ手書シタル金額若クハ數量ノ文字ノ上ニ捺印スルコトヲ得セシムルヲ可トス
(尾崎)
金額若クハ數量ノ上ニ捺印スルハ正確ノモノトスルニ足ラズ
(南部)
其議論ハ本會ノ目的ノ外ニ逸出スト云フベシ
(栗塚)
尙ホ以下ハ尙ホ金額若クハ數量ノ文字ニ捺印スルコトヲ要ス但數人ノ債務者アルトキハ其中ノ一人此捺印ヲ爲スヲ以テ足レリトストシテハ如何
可決ス
第二十七條
(栗塚)
元老院ニ於テハ日附ハ確定ナルトキニ非ザレバト云フヲ存シ且ツ第二十八條第二十九條第三十條ヲ存スベシ確定日附ノ方法ハ他ノ行政規則ヲ以テ規定スルモ可ナリ人民ノ權利義務ニ關スル保護ハ須ラク政府ノ干渉ヲ要スベシト云フニアリ
(松岡)
確定日附ノ方法ハ他ノ行政規則ニ讓ルト云フ淡泊ナル法律ヲ立ツルヲ得ズ權利保護ノ上ニハ唯リ確定日附ヲ要用トスルニ止マラザルベシ
(元尾崎)
確定日附ノ必要ナル場合ハ如何
(寺島)
動產物ナリ不動產物ナリ賣買ノ契約成立シタルニ販賣シタル目的物件ヲ引渡サザルトキハ確定日附ヲ求メザレバ權利上ニ害アリ
(村田)
確定日附ハ物件ノ握有者ニ勝ツ能ハザレバ必要ヲ感ゼズ確定日附ヲ爲シタルモ第三者其物件ヲ收去シタルトキハ物權ヲ失スベシ
以下傍聽ヲ缺ク
財產編
第百三十一條
(寺島)
本條第一項ハ元老院ニ於テハ賃借人ハ每年ノ收益ノ三分一以上損失ヲ致シタルトキニアラザレバ借賃ノ減少ヲ要求スルヲ得ザルニ限ルトキハ賃借人ノ爲メニハ往々不利益ヲ被ムルコトナシトセズト云フニアレバ主務省ヘモ問議シタルニ通常小作人ハ三分一ノ不收穫ヲ生ズルトキハ自己ノ損失ヲ惹起スルニ至ルベシト故ニ三分一ノ制限ニシテ不可ナシトスルモ個ハ少シク例外ヲ認メ置カザルヲ得ズト云フニアリテ遂ニ但書ヲ加ヘ但地方ノ慣習之ニ異ナルトキハ其慣習ニ從フコトヲ妨ゲズト云フヲ附セリ
(尾崎)
收益ト云フハ小作人ノ收入ニ歸スルモノカ
(寺島)
田畑ヨリ收穫スルモノヲ云フ
(北畠)
果シテ然ラバ收穫ト云フ文字ヲ用ヒザルベカラズ
(寺島)
收益ノ文字ハ用益權ノ規定時分ヨリ使用シ來ンリ
(箕作)
但書ヲ附スルノ可否ハ如何
(南部)
但書ヲ附スルヲ可トス可決シ第二項建物ノ以下ヲ刪除スルニ決ス
第百四十八條
(栗塚)
本條第一項ヲ元老院ニテ修正スベシト云フ旨意ハ意外又ハ不可抗ノ原因ニ由リ賃借物ノ一分ノ滅失シタルトキハ賃借人ハ第百三十一條ニ記載シタル條件ニ從ヒテ賃貸借ノ銷除ヲ要求シ又ハ賃貸借ヲ維持シテ借賃ノ減少ヲ要求スルコトヲ得トスベシト
結局意外又ハ不可抗ノ原因ニ由リテ賃借物ノ一分ヲ減失シタルトキハ賃借人ハ第百三十一條ニ記載シタル條件ニ從ヒテ賃貸借ノ銷除ヲ要求シ又ハ賃貸借ヲ維持シテ借賃ノ減少ヲ要求スルコトヲ得但滅失シタル物ノ部分ガ住居若クハ營業ニ必要ナルトキハ第百三十一條ノ條件ニ從フコトヲ要セズトス
第二百二十九條
(寺島)
本條ハ元老院ノ論議ノ上主務省ヘモ質議シ第一項ハ沿岸者ニシテ其ノ七字ヲ刪除シ第三項第四項ハ刪除スベシト云フニアリ
(箕作)
沿岸者ニシテ其ノ文字ヲ存スルモ不可ナシ
(槇村)
沿岸者ノ文字アルトキハ少シク沿岸ニ離隔シタル者ハ如何ト云フ問題ヲ生ズルノ掛念アルモ此等ノ文字ハ差支ナシ
結局本條ハ原案ニ決ス
第四十二條
(今村)
本條第六ハ物ヲ不融通ト爲シタル官府ノ命令アルトキハ所有權消滅ニ歸スルモノト爲レルモ個ハ實際上不都合ナリ何トナレバ華族世襲財產ノ如キ又ハ春畫ノ如キハ賣買ヲ禁ゼラルルモ決シテ所有權ヲ失フモノニアラザレバナリ故ニ曩ニ起案者ニ質議シ起案者ハ之ヲ改メテ物ヲ不融物ト爲シ且ツ各人ニ占見ヲ禁ジタル相當官府ノ命令トセリ
可決ス
財產取得篇
第十二條
(今村)
同篇ハ原案ノ第十二條乃至第十八條ヲ刪リ此條ニ換ヘントスルニアリ曰ク舟筏ノ通ズルト否トヲ問ハズ河川ノ寄洲、中洲、干瀉ノ所有權又ハ水路ノ變換ニ因リ生ズル浸沒地及ビ舊川床ノ所有權ハ特別法ヲ以テ之ヲ規定ス但海ノ干瀉ニ付テハ財產篇第二十三條ノ規定ニ從フ
(委員長)
特別法ヲ以テ之ヲ規定ストアルハ別ニ之ヲ定ムトスベシ
可決ス
第三十三條
(小松)
登記ノ縁邊ニトスルヲ登記ニトセリ
第四十一條
(小松)
本條ニハ附記ノ文字ヲ加ヘタルノミ
債權擔保篇
第三十六條
修正案ニ可決ス
第百二十三條
第百二十四條
第百八十三條
第百八十四條
以上同上
第百八十五條
(南部)
之ヲ登記シタルトアルハ其擔保ヲ登記シタルトスベシ
可決ス
第百八十六條
(村田)
本條ハ第百八十三條ノ精神ニ應ジ生ジタルモノナレバ意味ヲ異ニスルヲ得ズ
(箕作)
第百八十三條及ビ第百二十四條ノ修正案ヲ再考スベシ
(村田)
何時ニテモ其補脫ヲ公示スルコトヲ得ト云フノミニテハ法律上ノ抵當ニ變性シタル所以ヲ明知スルヲ得ザレバ何時ニテモ抵當ト同ジク其補脫ヲ公示スルコトヲ得ト云フ意義ニセザルベカラズ
(南部)
登記ニハ所有權ノ登記ト抵當ノ登記ト二種アルニ依リ抵當ノ方式ニ從ヒト云フヲ顯ハスヲ可トス
(北畠)
抵當ノ方式ニ從ヒ云々ト云ハザルモ可ナリ修正案ニ可決ス
第百八十八條
(村田)
第一調書ニ依ル工事トアルハ第一調書ニ依ル登記ト云フベキニアラズヤ
(小松)
誤寫ナリ
第百八十九條
(南部)
二箇ノ調書ニ依レル登記トアルハ二箇ノ調書ニ依レル二箇ノ登記中ノト云ハザルベカラズ
(元尾崎)
修正案ノ儘ニテ可ナリ
可決ス
第二百三十七條
(南部)
本條ハ刪除スベカラズ
(箕作)
少シク越權ノ嫌ヒアレハ回存スベシ其議ニ決ス
第六節 登記官吏ノ責任
(南部)
本節ハ全廢スベカラズ何トナレバ所有權徵收トモ關係ヲ有シタルモノニシテ登記官ノ責任ハ小ナリトスルヲ得ザレバナリ依テ第三百三條ノミ刪除スルニ止メ第三百四條以下ハ存載セザルヲ得ズ
(箕作)
登記官吏ノ責任ヲ全廢スベカラズトセバ存刪ノ廉々ヲ詮スベシ
第四十八條
(村田)
本條ノ數人同時ニト云ヘルハ數人同時ニ且不分ニテト云ハザルベカラズ第百條ニモ且不分ノ文字アレバナリ
(南部)
不分ノ文字ナキモ不都合ナシ第百條ニ不分ノ字アルハ鄭寧ニ過ギザルノミ用益權ハ不分ニテ設定スベキモノナルハ勿論ナレバナリ
(南部)
不分ノ字ナキ爲メ誤謬ヲ生ゼザレバ此儘ニ置クベシ
第五十條
(村田)
第二項ニハ根枝ニ由リト云フ文字ナキモ可ナリ
(栗塚)
個ハ條件タルベシ
第五十九條
(村田)
採筏方ノ未ダ確ニ定マラザルトキハトアル上ニ所有者ノ慣習ナリト云フ字ヲ加ヘタシ
(南部)
此儘ニシテ妨ナシ
第六十三條
(村田)
第三項ハ前二項ノ區別ニ從ヒ云々收益スルコトヲ得トアルモ第二項ノ如キハ收益ヲ爲サシメザルモノニシテ牴觸タルヲ免レス
(南部)
第二項モ收益タルベシ
(元尾崎)
採取モ收益ニ外ナラズ
第六十九條
(村田)
本條ハ第八十七條ノ第二項ト牴觸ヲ生ズベシ
(元尾崎)
本條ハ改良ヲ加フル場合ヲ想像シ第八十七條ハ虛有者ノ大修繕ヲ加ヘザルベカラザルニ用益者自ラ代ハリ其修繕ヲ爲シタルモノナレバ之ヲ同一視スルヲ得ズ
第七十條
(村田)
第三項處決ノ文字ハ決定トスベシ
(北畠)
決定ノ確定ト云フハ文ヲ成サズ
第八十九條
(村田)
第一項ニ租稅及ビ每年通常ノ公課トアルハ每年通常ノ租稅及ビ公課トスベシ
可決ス
第九十條
(村田)
通常又ハ非常ノ租稅ヲ納メザルトキハ不動產ノ全部ヲ差押ヘ且ツ賣却スルニ至ルハ不都合ナリ
(南部)
完全ノ所有權ト云ヘル文字ハ用益權ヲモ包含スルノ意味ナリ
(栗塚)
負債額丈ケ賣却セントスルモ土地ノ區分賣ヲ爲シ得ラレズ筆限リノ部丈ケハ賣却セザルヲ得ズ
第九十一條
(村田)
本條ハ虛有者ノ保險ニ附スル場合ヲ云ヒ第九十二條ハ用益者ノ保險ニ附スル場合ヲ云フ故ニ本條末項ノ意味ハ次條ノ末尾ニ置カザルベカラズ
(南部)
此點ハ別ニ變更セズ此儘ニ存スベシ
第九十七條
(村田)
本條ハ最初ニ虛有者ノ敗訴シタルトキハ其元本ヲ賠償シ用益者其利息ヲ仕拂フベシト云フニアレバ明カナルモ此條ノ儘ニ於テハ第二項ニ用益者ハ右訴訟費用ノ利息云々ト云フヲ得ベキヤ
(栗塚)
末項ノ明文ニ依リ意義明白ナリ
第百九條
(村田)
本條ニハ產出物ノ文字アルモ第五十條ニハ其文字ナシ如何
(南部)
一ハ產出物ノ字アリ一ハ其文字ナキノ產アリ別ニ不可ナシ
第百二十二條
(村田)
代理人ト云フ文字ハ取得篇ニモ合意上ノ管理人トアレバ同樣ニシテハ如何
(栗塚)
代理人ト云ヘバ合意上ノ管理人タルニ外ナラズ
第百四十條
(村田)
本條ニ銷除トアルハ解除トスベシ義務不履行ノ場合ニハ解除ト云フヲ可トス
第百四十一條
(村田)
第一項非常ノ租稅ヲ負擔セズトアルハ非常ノ租稅其他ノ公課ヲ負擔セズトシタシ
可決ス
第百七十九條
(村田)
本條第三項ニ建物存立ノ時間繼續スト云ヒテ樹木ヲ明記セザルハ如何
(南部)
樹木ハ明記スルヲ得ザルベシ
第百九十五條
(村田)
第一項土地ヨリ歸シタルトアルモ產出物ト云ヘバ牛馬ノ子ヲモ含ムニ依リ土地ヨリ離シタルト云フヲ得ズ
(栗塚)
本條ノ產出物ト云ヘルハ砂石ノ類ヲ指スモノニシテ牛馬ノ子ノ如キヲ包含セザルモノトス
第二百十四條
(村田)
占有ハ喪失スト云ハズ消滅ト云ハザルベカラズ
(栗塚)
占有ヲ失フ義ナレバ喪失ト云フニテ不都合ナシ
第二百十五條
(村田)
人爲ハ人意トシテハ如何人意卽チ人爲ナレバ之ヲ區別スルニ及バズ
第二百三十五條
(村田)
第二項建物ノ下ヲ經云々スルヲ得ズト云ヘバ建物ノ傍ラニ水ノ通過ヲ爲スニ妨ゲナキニ至ル依テ建物ニ接シ又ハ云々トシテハ如何
(栗塚)
然スルトキハ遂ニ建物ノ前後左右ト云ハザルヲ得ザルニ至ラン
財產篇
自治未成年者不動產讓渡ヲ爲スコトヲ得サルコト
擔保篇
公正證書
建物宅地ヲ分離シテ抵當ト爲スコトヲ得サルコト
證據篇
確定日附
署名捺印ノコト
(元尾崎)
右問題ノ元老院ト異見ヲ生ジタルニ付キ委員長ノ高案ヲ伺ヒ度キハ委員長ハ内閣ニ出デテ委員長ノ資格ヲ以テ法律取調委員會ノ意見ヲ主唱セラルルカ將タ内閣員タル資格ヲ以テ一己ノ所見ヲ吐露セラルルヤ
(委員長)
自分ハ法律取調委員長ナレバ委員會ノ決議ノ精神ヲ内閣ニ陳辯スベキモ亦或ル場合ニ於テハ内閣員ノ資格ヲ以テ一己ノ意見ヲ吐露スルコトナキヲ期スベカラズ委員會ノ決議ヲ主唱セントスルニハ右問題ニ付キ本會ノ意見ヲ一定シ置カザルベカラズ
(元尾崎)
自治未成年者云云ニハ別ニ意見ナキモ他ノ問題ニ付テハ往日本會ガ議決シタル精神ヲ動カスベカラズ
(南部)
公正證書ト確定日附トハ方法ノ宜シキヲ得レバ其制ニ從フヲ妨ゲス
(村田)
署名捺印其一ヲ要スルト云フハ日本ハ實印ヲ重スル風柄ニアレバ捺印ノミヲ要ストシタシ
(槇村)
公正證書ニ由ルノ一義ハ贊成スベシ
(栗塚)
公正證書ノ方法ニハ異議アルベキモ其旨意ニハ間然ナカルベシ如何
(元尾崎)
人民ヲ抑制シテ公正證書ニ由ラシムルハ寧ロ不便ヲ與フルノ感アルヲ以テ人民各自ノ便利ト思惟スルニ任シテ可ナリ
(箕作)
元老院ノ論旨ニ依レバ唯リ不動產ノ讓渡ヲ得ズトスルニ止マラズ抵當質入マデヲモ禁止セザルベカラズ
結局元老院ノ意見ハ不可ト視認ス
(箕作)
公正證書ヲ可トスル元老院ノ意見ハ如何
(栗塚)
元老院ハ現行公證人ノ數ニ依リ此制ヲ施行スベシト云フニアラズ普ネク公證人ヲ設ケタル以上ノ場合ニ於テ之ヲ是認スルナリ
(松岡)
許多ノ公證人ヲ設キ其方法ノ不都合ナキ場合ニ至レバ公正證書ニ由ラシムルヲ可ナリトスルモ今日ハ未ダ此制ヲ可トスルヲ得ズ公正證書ヲ否認スル理由ハ各同ジカラザルモ今此制ヲ施行スベカラズト云フハ一ナリ
民法財產篇
第三百七十三條
(栗塚)
公ノ事務所ト云フハ或ル說ニハ官廳ヲ包含スルカ否ノ點ニ付テ郵便電信局ノ如キ迄ハ之ヲ包含スルモ官廳ヲ包含セズト云ヘリ然ルニ民法草案ノ註解ニハ官廰ヲ指スノミナラス國家モ其責ニ任ゼザルベカラズト云フ於是國家ノ責任論ヲ紬起シタル所以ナリ國家責任ノ有無ニ就テハ既ニ今村報吿委員ノ詳細ニ調査シタル所アルモ吾々報吿委員ハ爲以ラク國家ト人民トノ關係ハ民法上ニ明定セザルヲ可トス單純ノ觀察ニテハ國家ト雖ドモ曲事ヲ爲シタルトキハ其責ニ任ゼザルベカラザルハ勿論ナリト雖ドモ國家ト人民トノ關係ハ人民互相ノ關係ト均シカラザレバ國家ト人民トノ關係ハ行政上ニ於テ別ニ規定スルヲ可トス行政上ノ關係ヲ民法中ニ不易ノ規定トスルヲ得ザレバ之ヲ明定セザルヲ妙味アリトス
(元尾崎)
國家モ人民ニ對シテ損害ヲ及ボシタルトキハ其責ニ任ゼザルベカラズ依テ本員ハ今村報吿委員ノ說ニ贊成スベシ
(松岡)
國家ノ事務ハ國家自ラ最大漏ラスナク其責任アルモノニアラズ今責任ヲ受クベキ部分ヲ擧ゲントスルモ到底擧ゲ盡スコトヲ得ザルベシ
(箕作)
國家モ委託者ト認メラルトキハ責任アリトスルヤ
(栗塚)
然リ卽チ公私ノ事務所ハトアルヲ總テノ委託者ハトシ屬員ヲ受任者トスルニ決ス
別調査民法草案
(尾崎)
別調査草案ヲ議セントスルニハ如何ナル旨趣ナルカ
(委員長)
別調査案ハ箕作松岡兩員ノ力ヲ以テスルモ既ニ二十日以上ヲ費シ又「ボアソナード」ノ註解未ダ成就セザル位ナレバ別調査ヲ完成セントスルニハ蓋シ僅少ノ日時ヲ以テ終了スベキニアラズ抑モ我政府ガ條約改正ノ中止ナリシモ日本ノ法典完備セザリシニ根因スルヲ以テ成ル丈ケ急日時ヲ以テ其準備ニ應セザルベカラズ故ニ政府ニ於テモ假スニ日時ヲ以テセザルベシ政府ノ旨意ハ「ボアソナード」ノ草案ニ因據シテ之ヲ急成セシメントスルニアレバ別調査ノ如キ假令金玉ノ法典タリト雖ドモ其完成ヲ吿グルノ遑マナカルベシ別調査案ノ如キハ全ク其編成ヲ異ニシタルモノナレバ此編成ニ於テモ一手段ナルベシト雖ドモ此案ハ「ボアソナード」ノ草稿ニ對シテハ大修正ヲ用ヒタルヲ以テ自分ニ於テモ多少驚色ナキニアラズ依テ此別調査ハ他日民法改正ノ際其材料ニ供スベキハ勿論ナリト雖ドモ今之ヲ逐條審議トセザルヲ欲ス
(淸岡)
民法草案ノ組織ト異ニシ新組織ヲ爲サントスルハ長日月ヲ假スニアラザレバ能ハザルベシ
(元尾崎)
民法草案ニ付テハ日本ノ民俗ニ恰當シタルモノニアラズト雖ドモ今委員長ノ示サルル如ク既ニ時期ヲ定メテ完成セシメントスルニハ假スニ時日ヲ以テスルヲ得ザルベシ然ルニ委員長ノ賢慮ヲ以テ之ヲ政府ニ申立ラレ編成方法ヲ改ムルヲ得ザルヤ
(松岡)
自分等ガ此別調査案ヲ起シタルハ強チ「ボアソナード」草案ノ要旨ヲ全變スルト云フニアラズ寧ロ同氏ノ意見ニ基キ日本ノ民俗ニ恰當ナラシメントシタルモノナリ
(村田)
最初別調査ヲ命ゼラレシハ「ボアソナード」ノ草案ト共ニ政府ニ呈出セルルノ意カ
(委員長)
然ラズ別調査案ハ先ヅ如何樣ノモノノ成立スルヤヲ見ルニ過ギズ然レドモ委員會ニ於テ別調査案ヲ是認セララルニ決スルトキハ一應其趣旨ヲ以テ政府ニ申立ヲ爲スヲ得ザルニアラズ
(尾崎)
別調査案ハ民法中ノ一班ニ過ギザレバ是ニ由テ以テ全貌ヲ議スルコトヲ得ズ
(村田)
一班ニ依レバ全貌ヲ窺フニ足ルベシ
(委員長)
一班ニ依テ以テ全貌ヲ窺フニ足ラズト云ヘルト否トノ兩說ハ之ヲ一應朗讀シタル以上ニスベキヤ
(淸岡)
然リ
(松岡)
一班ニ依テ全貌ヲ窺フニ足ラズト否トノ說ヲ決セザレバ朗讀モ無用ナリ
(元尾崎)
朗讀シタル以上議決スルモ不可ナシ
(箕作)
朗讀シタル以上該案ヲ是認スルトキハ「ボアソナード」ノ原案ハ撤棄スルヤ
(淸岡)
朗讀シタル以上ニテ「ボアソナード」ノ原案ヲ撤棄スルヤ否ヲ決スベシ
(南部)
只朗讀スルト云ヘバ格別大體ノ判決ヲ措キ朗讀スルト云フハ其理由ヲ知ラズ
(委員長)
全篇ヲ見ザレバ可否ヲ決スルヲ得ズト云フハ可然シト雖ドモ先ヅ質問會トシテ朗讀シテハ如何
(栗塚)
報吿委員ハ下調査ヲ爲スモノナルヲ以テ質問會ニ列シ質問シタシ
(委員長)
報吿委員各自質問スルハ混難スルヲ以テ委員ノ質問ヲ洩ラシ尙ホ質問ヲ要スル點アラバ質問スベシ
第二篇
總則
第一條
(元尾崎)
前置條例ヲ總則トシタルハ如何
(箕作)
前置條例ト云フハ總則トスルヲ可トスト云フニアリ
(西)
財產ノ定義ヲ除キシハ如何
(箕作)
財產ハ權利ナリト云フハ議員選擧權ト云フガ如キニモアラザレバ權利ナリト云ハザルモ財產ノ種類ノミヲ示セバ足レリト云フニアリ
(南部)
財產ハ如何ナル性質ナルヲ指示セス單ニ區別ノミヲ示スモ明了ナラズ
(西)
然リ
(今村)
本條ハ質問旁各員ノ注意ヲ促サントス財產ハ權利ナリト云フヲ得ベキヤ否ハ財產ハ物權ニ付テハ權利ナリト云フヲ得ベキモ人權ニ付テハ權利ナリト云フベカラザル場合アリ人事篇ノ人權ニ付テハ財產ト云フヲ得ザルニ付キ直チニ財產ハ權利ナリト云フヲ得ズ依テ財產ハ權利ナリト云フヲ示スニ及バザルベシ
第二條
(箕作)
本條ハ對抗ト云フ字ヲ主張トシ物權中用益權ハ人事篇ニ於テ必要ナルヲ以テ之ヲ存シ使用權及ビ住居權ノ二權ヲ刪除シ又賃借權永借權ノ如キハ物權ノ類似タルモノト雖ドモ佛蘭西民法ニ於テハ人權中ニ多分ノ運用ヲ爲スベキニ付キ之ヲ人權中ニ挿入ス
(今村)
佛蘭西ハ永借權ハ物權ナリ
(箕作)
伊太利ニ於テハ永借權ヲ人權トス
第三條
(委員長)
本條或物ヲ與ヘト云フヲ挿入シタルハ如何
(箕作)
佛國法ニ依レリ
(栗塚)
法律ノ認ムル原因ニ由リト云フヲ刪リハ如何
(松岡)
法律ノ認ムル原因ニ由リト云フハ假令ヒ之ヲ明記セザルモ不法ノ行爲ヲ許スベキモノニアラザレバナリ
(南部)
原案第四條第五條第六條ヲ刪リシハ如何
(箕作)
該三條ハ殆ンド講義書ニ類スルヲ以テ無用ナルベシト思惟シタリ
第四條
此儘ニ通過ス
第五條
(箕作)
本條ハ原案ヲ改正シタルニアラズ其類例ヲ滅シタルニ過ギズ凡ソ例示ハ稀有ノモノニ就テ之ヲ擧グルハ不可ナレバナリ
第六條
(箕作)
原案ハ兩條ナリシモ別調査ニ於テハ之ヲ一條トシタリ
第七條
(箕作)
本條ハ簡短ニ其類例ヲ一示シタルノミ
第八條
此儘ニ通過ス
第九條
(箕作)
「ボアソナード」ハ用方ニ因ル動產ト云ヘルモノヲ揭ゲタルガ建築ノ足場及ビ支柱等ノ如キハ用方ニ因ル動產ニアラズ個ハ元來動產ナリト云フヲ以テ之ヲ刪レリ
第十條
(箕作)
本條モ原案ヲ整理シタルニ過ギズ又原案第十五條ハ其義明白ニシテ殆ンド記示ヲ要セザルベシト云フニアリ
第十一條
(箕作)
本條モ原案第三項ハ既ニ再調査案ニテ之ヲ刪除シタルヲ以テ別調査ニ於テモ之ヲ刪ルベシト云フニアリ
第十二條
此儘ニ通過ス
第十三條
此儘ニ通過ス
第十四條
(箕作)
原案ニハ當事者ノ意思ニ因ルト云ヘルノミヲ示シタルヲ以テ其例示ハ之ヲ刪レリ
(栗塚)
同種ノ物ヲ以テト云フヲ刪リシハ如何
(箕作)
簡略ニシタルノミ
第十五條
(箕作)
本條モ原案ヲ簡略シテ其不要ヲ省キタリ
(委員長)
地役ハ性質ニ因ル不可分物ナリト云フハ之ヲ省略シテ可ナルヤ
(箕作)
然リ
(栗塚)
原案第二十一條乃至第二十三條ヲ刪リシハ如何
(箕作)
此類ハ法律ノ適用モ殆ンド稀少ニシテ無用ナルベシト云フニアリ
(栗塚)
原案第二十一條ヲ刪リシハ如何
(箕作)
第二十一條ノ如キハ明示ヲ要セズト云フニアリ
(松岡)
眺望ノ權ノ如キハ如何
(栗塚)
眺望ノ權ハ地役ノ權ニ屬シ物ノ區別ニ屬セズ
(松岡)
民法ハ天外ニ屬スルモノニ干渉スルヲ得ズ
第十六條
(元尾崎)
無主物ト公共物トヲ區別シタルハ如何
(松岡)
「ボアソナード」ハ之ヲ區別シタレバナリ
第十七條
(箕作)
融通物ト不融通物トハ單ニ其讓渡ヲ禁ズルト禁ゼザルトニ從テ區別ヲ附スレバ原案ノ如ク二種ノ區別ヲ用ビザルモ可ナリト云フニアリ
第十八條
(箕作)
本條ハ原案第二十九條ト同ジ時効成ルト云フ字ヲ不可トスレバ時効ニ係ルトシテモ可ナリ本條ハ敢テ要用トモ認メザルモ空氣太陽ヲ示スヨリハ必要ニ近シト云フニアリ
第十九條
(元尾崎)
第十八條ハ假令之ヲ存在セシムルモ本條ハ不用ナリ
(委員長)
本條マデ質問經過シタルヲ以テ全體ノ可否決ヲ擧グベシ
(西)
然リ既ニ原案ト別調査案トノ關係ハ了知セルニ付キ最早全體ノ可否ヲ決セラレタシ
(委員長)
全篇ヲ通過シタル以上ニアラザレバ全體ノ可否ヲ決スベカラズト云フモノハ同意ヲ表セラレタシ起立者九名ニ對スル四名ノ反對アリ
(委員長)
此分ハ此儘ニ附シ置一ノ參考物トシテ内閣ニ呈出スベシト云フニ付キ同意者ハ起立アリタシ
(淸岡)
原案ト別調査案トニ關シ孰レガ可ナルヤト云フ存發論ニ付テハ寔ニ判斷ニ惑ヲ生ズベシ別調査ニ於テモ小部分ヲ見レバ可否相半セリ
(元尾崎)
假令別調査案ヲ採用スルト云フニ決スルモ更ラニ小部分ニ就テ是非ヲ糺スノ餘地ハ留保セザルベカラズ
(村田)
「ボアソナード」ノ原案ハ從來議過シ來リタルヲ以テ今半途ニシテ之ヲ廢スルヲ得ザルベシ假令此別調査案ヲ原案トスルニ採用スルモ他日故障ヲ惹起スレバ又其原案ヲモ變更スルニ至ラズト云フヲ得ズ如是スレバ民法ノ完備ハ殆ンド何日ニ至リ成稿スベキヤヲ知ラズ故ニ「ボアソナード」ノ案ハ此儘ニ議過シ別調査案ハ過日ノ如ク其掛員ノミヲ以テ別ニ成稿セシメタシ
(委員長)
政府ハ假令編纂ノ時日ヲ寛假スルモ「ボアソナード」ハ本年十一月ニハ必ラズ歸國スベキニ依リ此儀モ各員ノ領知ヲ乞フ
(松岡)
別調査案ハ「ボアソナード」ノ草案ヲ破リタルモノニアラズ該草案ニ就キ修正ヲ加ヘタルノミ
(南部)
別調査ハ「ボアソナード」ノ起案ト大ニ其趣旨ヲ異ニスレバ尋常ノ修正ト云フヲ得ズ
(松岡)
別調査案ト云フモ再調査案ニ一歩ヲ進メタルモノニ過ギズ
(委員長)
再調査案ハ「ボアソナード」ニ質問シテ其意見ヲ聽クヲ得ベキモ別調査案ハ全ク之ニ異ナレバ「ボアソナード」ニハ其意見ヲ聽クコトヲ得ザルベシ
(今村)
議決ヲ擧ゲラルルニ前シテ委員長竝ニ各委員ヘ對シ一言ヲ呈シタシ自分ニ於テモ「ボアソナード」ノ起案ニハ不同意ノ點少シトセズ別調査案ヲ見ルニ過度ノ修正ヲ爲シタリト云フベシト雖ドモ其修正ハ物權人權ノ部分ニ止マレリ其他ハ暇令別調査ニ附スルモ物權人權中ノ如キ修正ハ要セザルベシ依テ大修正ヲ要スル點ハ特別委員ヲ以テ之ヲ修正シ「ボアソナード」ニ協議シタシ如是ナレハ「ボアソナード」モ蓋シ其協議ヲ諾セサンニアラザルベシ併シ萬一「ボアソナード」ニシテ其協議ヲ承知セザルトキハ委員會ニ於テハ其條項ハ刪除セザルヲ得ズ
(松岡)
然ルベシ彼ノ再調査ト云ヘルモノハ最初ハ文字ノミニ止マルト云フ筈ナルモ今日ニ至テハ再調査ノ働ヲ呈張シ往々意味ノ上ニ不都合ヲ認ムルニ至テハ之ヲ變更スルヲ得ベキモノタルヲ以テ最初委員會ガ別調査ヲ要スベシト思惟シタル點度ハ今日再調査ニ於テ充分之ヲ求メ得ベキニ到來シタレバナリ
(委員長)
今村氏ノ建議ハ可ナリト雖ドモ現ニ成稿セシ別調査案ハ如何處分スベキヤ
(今村)
此別調査案ハ此儘ニ附シ置キ賃借權ノ如キ用收權ノ如キ大修正ヲ要スベキ部分ハ特別ノ委員ニ附セラレテハ如何
(元尾崎)
特別委員ヲ命ズルト云ヘバ卽チ別調査トナルベシ
(委員長)
特別委員ノ修正ヲ要スベキ場合ハ之ヲ報吿委員ニ於テ調査スルモ可ナリ別調査案ノ呈案者ガ今村氏ノ建議ニ同意スレバ先刻擧ゲントシタル決議ハ取消スベシ
(箕作)
所有權マデノ部分ハ再應其逐條ニ付キ再別兩調査案ト比照ヲ乞ヒタシ要スルニ再調査案ヲ再應委員會ニテ參照アランコトヲ希望ス
(南部)
兩調査案ノ逐條比照ハ要用ニアラザルベシ
(尾崎)
再調査案ノ議了シタル部分ヲ比照スルモ僅少ノ部分ニ過ギザレバ敢テ其勞ヲ執ルニ及バズ
(栗塚)
兩調査案ヲ比照スレバ所有權以前ノ各條ハ其以後ノ各條ト文章ヲ異シ勢ヒ今ノ別調査案ノ文體ニ從ハザルヲ得ズト云フ結果ヲ生ズルニアラズヤ
(淸岡)
別調査案ヲ採取セザル以上ハ更ニ兩調査案ヲ闘ハスノ必要ナシ
(松岡)
闘ハスト云フ思意ニアラズ
(委員長)
開卷第一ニシテ人ノ耳目ニ觸レ易ケレバ成シ得ベキ丈ケハ之ヲ比照シ其修正ニ付テハ起案者ニ協議シタシ
(尾崎)
然ルトキハ第一條ヨリ逐條ニ審議ヲ盡サザルベカラザルニ至ラン
(委員長)
折角箕作松岡兩委員ノ勞ヲ取シモノナレバ鄭重ヲ盡シタシ
(箕作)
別調査案ノ爲メ委員長ノ配慮ヲ受クルニ至ルナラバ別調査案ハ塗抹ニ附セラレンコトヲ希望ス