第千二百九十三條 前條ノ場合ニ於テハ競落ノ不動產ト第三所持者ニ屬スル他ノ不動產トノ間ニ成立セシ地役權ハ一旦混同シタルモ働方及ヒ受方ニテ再生シ其混同ハ解除セラル
第三所持者ニ其取得前ヨリ屬セシ用益權、賃借權其他ノ所有權ノ支分ニ付テモ亦同シ
無異議
第千二百九十四條 右競落ノ孰レノ場合ニ於テモ第三所持者カ競落ノ不動產ニ付キ記入シタル抵當ヲ有セシトキハ其順位ニテ配當ニ加入ス
(箕作)
冒頭ノ「右」ト云ヘルハ如何
(栗塚)
前條ノ場合ニ於テノ競落ト云フ義ナリ
(元尾崎)
第三所持者ガ抵當ヲ有セシトキト云フハ如何ナル場合ナリヤ
(栗塚)
債權者ガ競落人トナリシトキハ第三所持者ナルモ債權者ノ資格ヲ以テ有スル抵當アルベシ
(箕作)
「右」ハ刪除スベシ
可決ス
第千二百九十五條 各債權者ニ其記入ノ順序ニ從ヒ競落代價ヲ辨濟シ尙ホ剰餘アルトキハ其剰餘ハ競落人タルト否トヲ問ハス第三所持者ニ屬ス
若シ競落前ニ第三所持者ノ債權者カ右ノ不動產ニ付キ抵當ノ記入ヲ爲シタルトキハ其債權者ハ前所有者ニ對シテ記入シタル債權者ニ次キ配當ニ加入ス
(元尾崎)
前所有者ト云フハ如何
(箕作)
讓渡人等ヲ指スベシ
第千二百九十六條 第三所持者カ抵當不動產ノ占有中其所爲ニ因リ之ヲ毀損シ又ハ之ニ必要若クハ有益ノ出費ヲ爲シタルトキハ第三所持者ト抵當債權者トノ間ニ於テ其計算ヲ爲ス
(元尾崎)
第三所持者ト抵當債權者トノ間ニ於テ其計算ヲ爲スト云フハ如何
(南部)
第三所持者ガ必要若クハ有益ノ出費ヲ爲シタルトキハ抵當債權者之ヲ償ヒ抵當債權者之ヲ爲シタルトキハ第三所持者之ヲ償ハザルベカラズ
第千二百九十七條 第三所持者ハ委棄スルヤ辨濟スルヤノ催吿ヲ受ケタル後ニ非サレハ債權者ニ對シテ果實ノ計算ヲ爲スコトヲ要セス
無異議
第千二百九十八條 如何ナル場合ニ於テモ代價ノ辨濟又ハ其供託ノ後ハ記入シタル總抵當ハ之ヲ抹殺シ不動產ハ滌除ヲ受ク縱令其元資ノ不足シタルモノモ亦同シ
(箕作)
不足シタルモノモトアルヲ不足シタル抵當モトスベシ
可決ス
(淸岡)
假令ノ文字ヲ刪除スベシ
可決ス
(村田)
元資ト云フハ金錢ノミニアラザルベシ
(栗塚)
此場合ハ金錢ヲ指スベシ
(箕作)
滌除ハ不動產ヲ淸洗スルト云フ義ハ同一意ナリト雖モ其手續ハ同一ナラズ
(元尾崎)
滌除セラルトシテハ如何
(栗塚)
滌除方法ノ滌除ト云フ義ニハアラザルモ滌除方法ノ款中ナレバ此儘ニ措キタシ
(南部)
滌除セラルト爲シ置クベシ
可決ス
(元尾崎)
代價ノ上ニ競落ノ二字ヲ加ヘテハ如何
(淸岡)
競落ノ場合ニ限ルカ
(栗塚)
然リ
第千二百九十九條 競落ノ後、第三所持者ハ左ノ如ク讓渡人ニ對シテ擔保ノ求償權ヲ有ス
第三所持者カ競落人ト爲リタルトキハ第千二百八十一條ニ記載シタル滌除ヲ目的トスル提供カ受諾アリタル場合ノ如ク賠償ヲ受ク
若シ外人ノ利益ニ於テ競落ノ宣吿アリタルトキハ第三所持者ハ普通法ニ依リテ追奪擔保ニ付テノ權利ヲ有ス但有償又ハ無償ノ契約ノ左ノ區別ニ從フ
第一 賣買其他ノ有償名義ノ取得ノ場合ニ於テ競落代價カ取得ノ原代價又ハ對價物ヲ超過シタルトキハ此差額ハ第三所持者カ權利ヲ有スル損害賠償中ニ增價トシテ之ヲ加フ
第二 贈與又ハ遺贈ノ場合ニ於テハ第三所持者ハ競落カ贈與者若クハ遺言者又ハ其相續人ヲシテ抵當債務ヲ免カレシメタル限度ニ非サレハ贈與者若クハ遺言者又ハ其相續人ヨリ賠償ヲ受ケス
手續ノ費用ハ競落人ヨリ之ヲ第三所持者ニ辨償ス
(箕作)
第二項冒頭ノ「若シ」ハ刪除スベキヤ
(栗塚)
刪除スルモ存在セシムルモ可ナルベシ
(箕作)
第千二百八十一條ニ記載シタル滌除ヲ目的トスル提供ガ受諾アリタル場合ノ如クト云フハ如何
(栗塚)
第千二百八十一條ニ記載シタル如ク滌除ヲ目的トスル提供ガ受諾アリタル場合ノ如クト云フ意ナリ
(箕作)
第千二百八十一條ニ記載シタル如クト云フノミニ止メタシ
(栗塚)
第千二百八十一條ニ記載シタル場合ノ如クトスベシ
(箕作)
場合ノ文字必要ナシ
(淸岡)
但有償又ハ無償ノ契約ノ左ノ區別ニ從フト云フハ意義晦澁ナリ
(栗塚)
但左ノ區別ニ從フトシテハ如何
可決ス
第六節 登記官吏ノ責任
第千三百條 第千二百二十九條ニ定メタル受取簿ニ付キ記載シタルモノノ外登記竝ニ記入ノ帳簿ノ數、性質、記載ノ方法及ヒ登記官吏ノ義務ニ違ヒタル場合ニ於テ言渡サル可キ罰金ハ特別規則ヲ以テ之ヲ定ム
(栗塚)
受證簿トアルハ受取證トシ義務ハ職務トスベシ
可決ス
第千三百一條 登記官吏ノ民事上ノ責任ニ關スル第三百七十五條ハ抵當記入ノ脫漏ハ訛誤ニ之ヲ適用ス
無異議
第千三百二條 登記官吏カ第三所持者ノ證書登記ノ後之ニ交付シタル認證書中一箇又ハ數箇ノ記入ヲ脫漏シ此脫漏ニ因リ記入シタル債權者カ滌除ノ提供又ハ競落ノ手續ニ加ハラサリシトキト雖モ猶ホ不動產ノ抵當ハ滌除ヲ受ク
(栗塚)
此脫漏ニ因リトアルヲ此脫漏ノ爲メトシタシ
(南部)
脫漏ノ爲メト云フハ不可ナリ
(村田)
脫漏ノ爲メト云フハ可ナリ
可決ス
(箕作)
記入シタル債權者トアルハ記入債權者トスベシ
可決ス
(栗塚)
滌除ヲ受クトアルハ滌除セラルトスベシ
可決ス
第千三百三條 滌除ノ提供ニ對スル增價競賣ノ爲メ第千二百七十八條ニ定メタル時期ノ滿了セサル間ハ脫漏セラレタル債權者ハ其脫漏ヲ第三所持者ニ吿知シ之ニ提供ノ通知ヲ求メ增價競賣ヲ要求シ又ハ所有權徵收ノ手續カ終了セサルトキハ之ニ加ハルコトヲ得然レトモ之カ爲メ其手續ヲ遲延スルコトヲ得ス
如何ナル場合ニ於テモ右ノ債權者ハ熟議上又ハ裁判上ニテ發開シタル順序配當手續ノ閉鎖セサル間ハ之ニ加ハルコトヲ得
右ハ前記ノ債權者カ脫漏ニ因リ損害ヲ受ケタルコトヲ疏明スルニ於テハ登記官吏ニ對スル求償權ヲ妨ケス
登記官吏ハ主タル債務者又ハ其保證人ノ免責ノ爲メ右ノ求償ニ因リ辨濟シタルモノニ付テハ之ニ對シテ求償權ヲ有ス
(栗塚)
發開シタルト云フ文字ハ第千二百八十條ニテ刪リシニ此場合ハ如何
(南部)
閉鎖ノ文字アルヲ以テ可ナリ
(槇村)
右ハ前記ノト云ヘルハ如何
(栗塚)
右ニ示シタル場合ハ之ヲ妨ゲズト云フ義ナリ
第千三百四條 登記官吏ハ登記、記入又ハ縁邊附記ノ要求ヲ拒ムコトヲ得ス但其要求カ方式ニ適セサルトキ又ハ法律ノ要スル疏明書類ニ錄製費用其他登記官吏ノ收受ス可キ費用ヲ添ヘテ差出ササルトキハ此限ニ在ラス
拒絕ノ場合ニ於テ登記官吏ハ要求ヲ受ケタルコトヲ認ムル書面及ヒ之ヲ拒絕シタル理由ノ陳述書ヲ交付ス可シ
右書類ノ交付アリタル上ハ利害關係人ハ其地ノ裁判所ニ訴フルコトヲ得但其裁判所ハ短キ期間ニ於テ拒絕ノ當否及ヒ登記官吏ノ責任ニ付キ裁決スルコトヲ要ス
(栗塚)
報吿委員中ニテハ方式ニ適セザルトキトアルヲ合法ナラザルトキトシタシト云フ可決ス
(箕作)
第二項但以下ハ不用ナルニ付キ刪除スベシ
(栗塚)
訴フルコトヲ得トアルヲ抗吿スルコトヲ得トシ但以下ヲ刪除シテ可ナリ
可決ス
(淸岡)
要求ヲ受ケタルコトヲ認ムル書面ト云フハ如何
(南部)
登記ノ請求アルモ登記上不都合アルニ依リ之ヲ拒絕スト云フ理由ヲ付スルナリ
(村田)
認ムル書面云々トアルヲ認ムル書面ニ之ヲ拒絕シタル理由ヲ記載シテ交付ス可シトシテハ如何
第七節抵當ノ消滅
第千三百五條 抵當ハ左ノ諸件ニ因リ消滅ス
第一 主タル義務全部ノ確定ノ消滅但更改ノ場合ニ付キ第五百二十五條ニ記載シタルモノヲ妨ケス
第二 債權者ノ抵當ノ抛棄
第三 時効
第四 滌除但債權者提供ヲ受諾シ且第千二百八十條ニ從ヒ提供金額ノ辨濟又ハ供託アリタルトキ
第五 競落但第千二百七十二條及ヒ第千二百九十八條ニ從ヒ競落代價ノ辨濟又ハ供託アリタルトキ
第六 抵當不動產ノ全部ノ滅失但第千二百七條ニ從ヒ債權者ノ權利カ其滅失ヨリ生ス可キ賠償ニ移轉スルコトヲ妨ケス
第七 公用徵收但抵當債權者ニ其償金ヲ辨濟スルコトヲ妨ケス
(村田)
債權者ノ抵當ノ抛棄トアルハ債權者ノ抛棄トシテハ如何標題ノ示ス處ハ抵當ノ消滅ナレバナリ
(南部)
不可ナリ
(村田)
第五百二十五條ニ記載シタルモノヲ妨ゲズトアルハ第五百二十五條ノ但書ヲ指スヤ
(栗塚)
然リ
第千三百六條 義務ノ消滅カ裁判上ニテ認メラレタル原因ニ由リテ取消サレタルトキハ記入ヲ抹殺シタリト雖モ抵當ハ其原順位ニ復ス
然レトモ其抵當ハ抹殺ノ後新記入ヲ爲ス前又ハ記入ヲ復シタル判決ヲ原記入ノ縁邊ニ附記スル前ニ記入ヲ爲シタル債權者ヲ害スルコトヲ得ス
(村田)
原因ニ由リト云フ上ニ法律上ノ文字ヲ記入スベシ
(栗塚)
法律上ノ文字ナキモ明了ナリト云フニアリ
(箕作)
裁判上ニテ認メタル法律上ノ原因ニ由リト云フ義ナリ
(元尾崎)
原順位ニ復スト云ヘバ例ヘバ明治十五年一月ニ一番抵當ト爲シ翌年一月ニ二番抵當ト爲シタルトキ其抵當ハ甲ノ債權者ニ復スベキニアラズヤ
(村田)
甲ハ最初其抵當ヲ抹殺シタルモノナレバ乙丙ヲ害スル能ハズ例バ金二百五十圓ノ代價物ニ對シ乙丙共ニ百圓金ノ貸付アレバ乙丙ハ貸金額ヲ償却セシムルヲ得甲ハ幾圓ノ貸ハ金アルニモ拘ハラズ受取額ハ五十圓金ニ止マルベシ
(栗塚)
二百圓ノ對價額ニシテ甲ハ最初百圓額ニ對シ之ヲ抵當ニ得取シタルニ一時之ヲ抹殺シタリ此時乙ハ第一位ヲ得更ラニ丙ナル者又貸金百圓ニ對スル抵當ヲ得タレバ其原順位ニ復スト云フトキハ乙丙共ニ貸金額ヲ得甲ハ殘額アルニアラザレバ之ヲ得ルコト能ハザルナリ
第千三百七條 抵當ノ抛棄ハ場合ニ從ヒ有償又ハ無償ノ名義ニテ債權ヲ處分スルノ能力ヲ有スル債權者ニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
債權者其抵當順位ノミノ抛棄ヲ爲ストキモ亦同シ
抵當又ハ順位ノ抛棄ハ默示タルコトヲ得
債權者カ讓渡人ト共ニ抵當不動產ノ讓渡ニ參加シタルトキハ其參加カ法律上或ル特別ノ名義ニテ要セラレサル場合ニ限リ追及權ノミニ關シテ其抵當ヲ抛棄シタリト看做サル
(元尾崎)
場合ニ從ヒト云フ文字ハ刪除シテハ如何
(栗塚)
場合ニ從ヒト云フ文字ヲ刪除スルトキハ有償又ハ無償ノ名義ニテ抛棄スルヲ得ト云フニ意味セラルル感アルヲ以テナリ
第千三百八條 抵當ノ時効ハ不動產カ債務者ノ財產中ニ存スル場合ニ於テハ債權ノ時効ト同時ニ非サレハ成就セス
右ノ場合ニ於テ債權ニ關シ時効ノ進行ヲ中斷スル行爲及ヒ之ヲ停止スル原因ハ抵當ニ關シテ同一ノ効力ヲ生ス
(松岡)
本條ハ第千二百三十四條ト同意義ニ屬スルモ牴觸スベシ何トナレバ本條ハ抵當ノ時効ハ債權ノ時効ト同時ニ非ザレバ成就セズトアルモ第千二百三十四條ハ三十年後債權ノ時効ガ中斷又ハ停止ニ係リタルトキト雖モ抵當ハ記入ノ効力ヲ失フトアレバナリ
(栗塚)
抵當ノ効力ト記入ノ効力トハ起案者モ之ヲ別視セリ三十年後ニ至ルモ抵當ハ存在シ記入ノミ其効力ヲ失フニ止マルベシ
(南部)
記入ハ効力ヲ失スルニ至ルモ抵當ノ効力ヲ消滅セザルトキハ更ラニ記入スルヲ妨ゲズ
(松岡)
抵當ハ記入ニ依リ第三者ニ對抗スルヲ得ルヲ以テ効力アリト云フ然ルヲ記入ノ効力ヲ失スルトキハ第三者ニ對抗スルヲ得ザルベシ
(栗塚)
三十年後ニ至ルトキハ證據ノ効力ヲ失スルヲ以テ之ヲ更新セザルベカラザルモ債權ト抵當トハ相伴フベシ
(松岡)
證據ノ効力ヲ失スルトキハ其時間中ニ生出シタル第三者ノ行爲ニ對抗スルヲ得ザルベシ
(栗塚)
其時間中ニ爲シタル丙者ノ行爲ニ對抗スルヲ得ザルモ甲乙間ニハ無抵當ト云フヲ得ズ
(松岡)
抵當ハ占有權ヲ有シ第三者ニ先ンズルト云フ効力ヲ以テ定義トスベシ然ルヲ記入ヲ無効トスルトキハ其定義ニ及スベシ
(元尾崎)
抵當ハ記入アラザレバ其効用ナシ効用ナキモノハ抵當ナキガ如シ
(村田)
抵當ト記入トヲ混視スルハ不可ナリ
(委員長)
抵當ト記入トノ區別ハ判然タリ記入アラザレバ第三者ニ對シテ効力ナキモ其他ノ場合ニハ効力アレバナリ
(元尾崎)
抵當ノ必要ハ第三者ニ對抗スルヲ得ルニアルベシ
(南部)
抵當ト記入トハ恰モ所有權ノ移轉ハ登記ナキモ其移轉ヲ妨ケズ只第三者ニ對抗スルヲ得ズ抵當其物ノ性質ハ記入セザルモ成立スベシ
(村田)
財產中ニ存スルト云フ文字ハ妥當ナラズ
(栗塚)
資產中ニ存スルトシテハ如何
可決ス
第千三百九條 抵當不動產ノ所有者タル債務者カ其不動產ヲ讓渡シテ取得者又ハ其承繼人カ之ヲ占有スルトキハ記入シタル抵當ハ抵當上ノ訴訟ヨリ生スル妨碍ナキニ於テハ取得者カ其證書ヲ登記シタル日ヨリ起算シ三十个年ノ時効ニ因リテノミ消滅ス但債權カ免責時効ニ因リテ其前ニ消滅スヘキ場合ヲ妨ケス
(元尾崎)
抵當不動產ヲ讓渡スルモ其抵當ハ存續スベシト云フ譯カ
(栗塚)
然リ
(元尾崎)
債務者其債務ヲ完結スル能ハザルトキハ取得者ニ對抗スルヲ得ルヤ
(栗塚)
然リ
第千三百十條 眞ノ所有者ニ非サル者カ不動產ヲ讓渡シタルトキハ占有者ハ其善意ナルト惡意ナルトニ從ヒ所有者ニ對シテ時効ヲ得ル爲メニ必要ナル時間ノ經過ニ因リ記入シタル抵當債權者ニ對シテ時効ヲ取得ス
無名義ニテ不動產ヲ占有スル者ニ付テモ亦同シ
(元尾崎)
善意ナルト惡意ナルトニ從ヒト云フハ如何
(栗塚)
善意ノ時効ト惡意ノ時効トハ年限ニ差異アリ
(元尾崎)
眞所有者事故アツテ朋友故人ノ名義ト爲シ置キシ場合ニモ適用スルヲ得ベキヤ
(栗塚)
其理ノ脈絡ヲ示シタルモノナリ
第千三百十一條 第三所持者ノ爲メノ抵當消滅ノ時効ハ記入ノ更新ニ因リテ中斷セラレス然レトモ其時効ハ占有者ノ任意ノ追認及ヒ第千二百七十四條ニ規定シタル如ク其占有者ニ爲シタル催吿其他總テ抵當權ニ効力ヲ與フル行爲ニ因リテノミ中斷セラル
右ノ時効ハ債權ニ附着スル期限又ハ條件ニ因リテ停止セラレス〔第千三百十三條〕
(元尾崎)
記入ノ更新ハ時効ノ中斷ト爲ラザルヤ
(箕作)
記入ノ更新ハ第三所持者ノ干知セザレバナリ
(委員長)
右ノ時効ハ債權ニ附着スル期限又ハ條件ニ因リテ停止セラレズトアルハ如何
(南部)
債權ハ生存シアルモ抵當ハ停止セラレズト云フ義ナリ
(栗塚)
第千三百十三條ヲ刪リシバ第千二百條ニ加入シタレバナリ故ニ附錄ヲモ揭グルニ及バザルニ至レリ
第百五十二條 一箇ノ建物ニ數人ノ賃借人アルトキハ各賃借人ハ所有者ニ對シ其賃借部分ノ價額ニ應シテ火災ノ責ニ任ス但各賃借人又ハ其幾人ニ過失ナキノ證據アルトキハ此限ニ在ラス
(栗塚)
本條ハ報吿委員ニテ一箇ノ建物ニ數人ノ賃借人アルトキハ其賃借人ハ所有者ニ對シ全部ニテ火災ノ責ニ任ズ但各賃借人又ハ其幾人ニ過失ナキノ證據アルトキハ此限ニ在ラズトセリ
(寺島)
火災ノ原因何レヨリ起リシモノナルヤ知ルベカラザルトキハ各自ニ於テ其自己ノ借受部分ニ對シ責任ヲ負ハサルベカラスト權測スルモノナレバ隨テ第百五十四條モ右ト同意義ニ反セサル改正ヲ求メタシト云フニテ起案者ニ質問ノ末本條及ビ第百五十三條第百五十四條ヲ修正シ呈出シタルナリ
(松岡)
火災ノ責任ニ付テ不可分ト云フハ如何
(寺島)
過失ニ付キ其義務ノ不可分ト云フハ學者ノ唱道スル所ナリ
(松岡)
第百五十四條ノ如キハ借用人ト所有者ト分割ノ責任トスベシト云フハ不可ナリ
(栗塚)
本條ノ別項ニ所有者カ燒失セシ建物ノ一部分ニ住居セシトキモ亦同シトシ第百五十四條ヲ刪除スルトシタシ
結局更ラニ所有者カ燒失セシ建物ノ一部分ニ住居セシトキモ亦同シトシテ第百五十四條ヲ刪除スルニ可決ス
第四款 賃借權ノ消滅
第百五十七條 賃借權ハ左ノ諸件ニ因リテ當然消滅ス
第一 賃借物ノ全部ノ滅失
第二 賃借物ノ全部ノ公用徵收
第三 賃貸人ニ對スル追奪又ハ賃貸物ニ存スル賃貸人ノ權利ノ取消但其追奪及ヒ取消ハ賃貸借契約以前ノ原因ニ由リ裁判所ニ於テ之ヲ宣吿セシトキニ限ル
第四 明示若クハ默示ニテ定メタル期間ノ滿了又ハ約束シタル解除ノ未必條件ノ成就
第五 初ヨリ期間ヲ定メサルトキハ解約吿知ノ後法律上ノ期間ノ滿了
右ノ外賃貸借ハ法律ニ定メタル條件ノ不履行其他ノ原因ノ爲メ當事者ノ一方ノ請求ニ因リ裁判所ニテ宣吿シタル取消ニ因リテ終了ス
(栗塚)
本條ハ「法律ニ定メタル其他ノ原因」トハ如何ナルコトナルヤヲ質問シタルニ無能力又ハ承諾ノ瑕疵ノ爲メノ銷除、債權者ヲ詐害スルガ爲メノ解除並ニ明示ノ解除等ヲ云ヘリト
第百八十條 永貸人ハ三个年間引續キ貸賃ノ拂入ヲ受ケサルトキハ永貸借ノ解除ヲ請求スルコトヲ得
又永借人カ他ノ債權者ノ追訴ニ因リテ破產者又ハ無資力者ト宣言セラレタルトキハ永貸人ハ拂入ノ不足ノ多少ニ拘ハラス解除ヲ請求スルコトヲ得但其債權者カ借賃ヲ規約ニ依リテ拂入ルルコトヲ擔保スルトキハ此限ニ在ラス
(栗塚)
本條ハ借賃延滯セザルモ無資力トナリタルトキハ如何ニ之ヲ處分スベキヤヲ質問シタルニ起案者ヨリ第千百五十七條及ビ第千百五十八條ニ依循スベシト云フノ回答アリ依テ拂入ノ不足ノ多少ニ拘ハラズトアルヲ借賃滯高トシタシ此借賃滯高ニハ來年ノ拂入分ヲモ包含セシムルヲ得ベシ
(元尾崎)
滯高ト云フ以上ハ來年ノ拂入分ヲモ包含シタリト云フヲ得ズ既往ノ分ノミニ限ルベシ
(箕作)
辨濟ノ如何ナル不足ニ拘ハラズトシテハ如何
(委員長)
滯高ト云ヘバ已往ノミニ限ル如クナルヲ以テ辨濟ノ如何ナル不足ニ拘ハラズト爲シ置キタシ
可決ス
(南部)
第一項拂入ヲ受ケザルト云フ文字モ辨濟ヲ受ケザルトキハトシタシ
(箕作)
第一項ハ已往ノ分ノミニ限ルヲ以テ此儘ニシテ可ナリ
第二百七十七條ノ二 所有者ハ石造煉瓦造ニ非サル建物ヲ築造スルトキハ其建物ト土地ノ分界線トノ間ニ少クトモ一尺ノ距離ヲ存スルコトヲ要ス
此距離ヲ存セスシテ築造スルトキハ一方ノ相隣者ハ築造ノ間ハ第二百十四條ニ從ヒ新工吿發ノ占有訴權ヲ行フコトヲ得
右築造竣成ノ後一方ノ相隣者カ建物ヲ築造セントシ其工事ノ爲メ自己ノ地上ニ於テ分界線ヨリ一尺ヲ超ユル距離ヲ要スルニ因リ建物ヲ一尺外ニ却ケタルトキハ其餘分ニ却ケタル地面ニ應シ前築造者ニ對シ償金ヲ要求スルコトヲ得
(栗塚)
本條第一項分界線トノ間以下ハ分界線トノ間ニハ其地方ノ慣習ニテ定マリタル尺度ノ距離ヲ存スルコトヲ要ストスベシ
可決ス
(栗塚)
本條第三項「一尺ヲ」トアルヲ習慣ノ尺度ヲトシ「一尺外」ヲ其尺度ヲトスベシ
可決ス
第三百四十七條 契約ノ證書ニ原因ヲ明示シタルト否トヲ問ハス其原因ノ不成立、虛妄又ハ不法ナルコトノ證明ハ被吿ヨリ之ヲ爲ス可キモノトス但原因ノ明示ナキトキハ被吿ハ先ツ債權者ヲシテ其原因ヲ陳述セシムル爲メニ之ニ催吿スルコトヲ得
(栗塚)
本條ハ但原因ノ明示ナキトキハトアル但ヲ若シトシ催吿スルコトヲ得トアル下ニ但其原因ニ付キ爭フコトヲ妨ゲズトシタシ
可決ス
第三百八十八條 第三百八十一條第二號ニ揭ケタル供與ヲ惡意ニテ領受シタル者ハ其不當ニ得タル物ノ外ニ尙ホ左ノ物ヲ返還ス可シ
第一 元本ヲ領受セシトキヨリノ適法ノ利息
第二 特定物ノ果實及ヒ產出物但其收取ヲ怠リタルトキト雖モ亦同シ
第三 自己ノ過失又ハ懈怠ニ因ル物ノ滅失又ハ毀損ノ替償縱令其滅失又ハ毀損カ意外ノ事又ハ不可抗ノ力ニ因ルモ其物カ供與者ノ方ニ在ルニ於テハ其損害ヲ受ケサリシトキハ亦同シ
(栗塚)
領受シタル者ハノ下訴ヲ受ケタル日ニ於テト云フ數字ヲ加フベシ又第三百八十四條絕テ其文字ハ訴ヲ受ケタル日ニ於テ現ニ得タル物ト改ムベシ
(箕作)
訴ヲ受ケタル日ニ於テ現存シタルトシテハ如何
(南部)
己ヲ利シタル物ノト云フ義ナラン
(元尾崎)
現ニ己ヲ利シタル物トスベシ
可決ス
(委員長)
其不當ニ得タルトアルヲ其不當ニ己ヲ利シタルトスベシ
可決ス
第二ハ收取ヲ怠り又ハ消費シタル特定物ノ果實及ビ產出物トシ第三ハ自己ノ過失スル懈怠ニ因ル物ノ價額ノ滅失又ハ減少ノ償金縱令其滅失又ハ減少ガ意外ノ事又ハ不可抗力ニ因ルモ其物ガ供與者ノ方ニ在ルニ於テハ此損害ヲ受ケザルベカリシトキハ亦同ジトス
第五百三十一條 連帶債務者ノ一人ニ對シ單ニ其連帶ヲ免除シタルトキハ其一人ヲシテ他ノ債務者ノ部分ヲ免カレシメ且他ノ債務者ヲシテ其一人ノ部分ヲ免カレシム
又契約上ノ不可分債務者ノ一人ニ對シ單ニ其不可分ヲ免除シタルトキモ亦同シ性質ニ因ル不可分債務ニ付テハ債權者ハ債務者ノ各自ニ對シ全部ノ要求ヲ爲スノ權利ヲ失ハス然レトモ免除ヲ受ケタル債務者ノ負擔ス可キ債額ヲ扣除スルコトヲ要ス
(栗塚)
本條ハ起案者更ラニ第二項以下ヲ改正シ第二項ハ性質ニ因ル不可分ノミノ免除ニ付テハ債權者ハ債務者ノ各自ニ對シ全部ノ要求ヲ爲ス權利ヲ失ハズ但免除ヲ受ケタル債務者ノ負擔ス可キ債額ヲ扣除スルコトヲ要ストシ第三項ハ又債權者ハ免除ヲ受ケタル債務者ニ對シ全部ノ要求ヲ爲スコトヲ得但他ノ債務者ノ負擔ス可キ債額ヲ扣除スルコトヲ要ストセリ
可決ス
第六百六十七條 卽時ノ賣買ニ於テハ手附ハ之ヲ與ヘタル者ノ利益ノ爲メニノミ解約ノ方法ト爲ル但買主ノ與ヘタル手附カ金錢ナルトキハ之ニ解約ノ性質ヲ明示スルコトヲ要ス
契約ノ全部又ハ一分ノ履行アリタルトキハ如何ナル場合ニ於テモ解約ヲ爲スコトヲ得ス
(松岡)
本條ハ商法第三百四十六條ノ全文ノ如ク改メテハ如何
(栗塚)
手附ガ金錢ナルトキハトアル下ニ其他ノ慣習アルノ外之ニ解約ノ性質ヲ明示スルコトヲ要ストシテハ如何
(栗塚)
第一項但以下ハ但手附ガ金錢ナルトキハ其地ノ慣習ニテ之ニ解約ノ性質ヲ附スル場合ノ外合意ニテ此性質ヲ明示スルコトヲ要ストシテハ如何
可決ス
第七百八十七條 社員ハ自己ノ選任シタル又ハ選任ス可キ社員又ハ外人タル一人若クハ數人ノ仲裁人ヲシテ會社解散ノ際各自ノ持分ヲ定メシムルコトヲ會社契約又ハ其後ノ行爲ヲ以テ約束スルコトヲ得
仲裁人ノ爲シタル定方ハ仲裁人カ仲裁契約ヲ以テ授ケラレタル方式若クハ條件ヲ履行セサルカ又ハ顯然公平ヲ失シタルトキニ非サレハ之ヲ攻撃スルコトヲ得ス
右定方ノ無効ノ請求ハ此ニ因リテ害ヲ受ケタリト主張スル社員ニ在テハ其社員カ定方ノ執行ニ加ハリタルトキ又ハ此ヲ知リタルヨリ三个月ヲ經過シタルトキハ之ヲ受理セス
(栗塚)
本條ハ第二項ヲ仲裁人ノ爲シタル定方ハ仲裁人カ仲裁ノ法律上ノ方式又ハ仲裁ヲ以テ授ケラレタル條件云々トスベシ
可決ス
第七百九十條 各社員ハ自己ノ持分ニ第三者ヲ組合サシメ又其持分ヲ質入シ又ハ之ヲ讓渡スコトヲ得然レトモ是等ノ行爲ヲ以テ會社ニ對抗スルコトヲ得ス但會社契約ヲ以テ社員ニ此權利ヲ認許シ又ハ會社資本ヲ株式ニ分チタルトキハ此限ニ在ラス
右二箇ノ場合ニ於テ會社カ社員ノ讓渡サント欲スル持分又ハ株式ヲ消却スル爲メ先買權ヲ留保シタルトキハ自己ノ持分ヲ讓渡サントスル社員ハ會社カ其先買權ヲ行フカ又ハ抛棄スルカニ付キ之ヲ遲滯ニ付スルコトヲ要ス
(栗塚)
本條ハ最初會社ノ下ニ第三者ノ文字ヲ加フルノ義アリト雖モ立案ノ趣意ヲ案ズルニ合意ハ結約者双方間ニ非ザレバ其効力アラザル原則ナレバ契約外ノ第三者ニ對抗スルヲ得ザルハ勿論ナリ故ニ其例ヲ擧ゲタル以上ハ更ニ第三者ノ文字ヲ加フルノ必要ナカルベシ
可決ス
第八百八十一條 利息ハ要約シタルニ非サレハ借主ニ對シテ之ヲ要求スルコトヲ得ス
借主ヨリ利息ヲ辨濟ス可キノ契約アリテ其額ノ定メ無キトキハ其利息ハ法律ノ制限ニ從フ
諾約セサル利息ヲ法律ノ制限内ニテ任意ニ辨濟シタル借主ハ之ヲ取戻シ又ハ之ヲ元本ノ辨濟ニ充當スルコトヲ得ス
本條ハ其利息ハトアルヲ其割合ハトシ法律上ノ割合ニトアルヲ法律上ノ利息トス
第八百八十二條 契約上ノ利息ハ法律ヲ以テ特ニ制禁スル場合ノ外ハ法律ノ制限ヲ超ユルコトヲ得
法律ノ制限ヲ超エテ顯然ニ利息ヲ定メタルトキハ之ヲ法律ノ制限ニ減却シ此制限ヲ超エテ爲シタル辨濟ハ之ヲ元本ノ辨濟ニ充當シ又ハ之ヲ取戻スコトヲ得
債權者カ實際ニ貸付シタル元本ヲ超ユル元本ノ認定其他ノ方法ヲ以テ不正ノ利息ノ全部又ハ一分ヲ隱蔽シタルトキハ債務者ハ其不正ノ利息ノ何等ノ都分ヲモ辨濟スルコトヲ要セス若シ之ヲ辨濟シタルトキハ其全部ヲ取戻スコトヲ得
(栗塚)
本條ハ第一項ヲ合意上ノ利息ハ法律ノ制限ヲ超ユルコトヲ得ズ但法律ヲ以テ特ニ制禁セザル場合ハ此限ニ在ラズトシタシ
可決ス
第九百三十四條 指定ノ代價ニテ物ヲ買入ルルノ委任ヲ受ケタル代理人カ其指定ヲ超ユル代價ヲ以テスルニ非サレハ之ヲ得ル能バサリシトキハ代理人ハ其超過額ヲ抛棄シテ買入ノ承諾ヲ委任者ニ要求スルコトヲ得又委任者ハ代理人ノ辨濟シタル代價ヲ以テ物ノ引渡ヲ要求スルコトヲ得
物ヲ賣却スルノ委任ヲ受ケタル場合ニ於テ代理人カ指定ノ代價以下ニテ之ヲ賣却シタルトキハ代理人ハ代償ノ差額ヲ補足シテ其賣却ヲ承諾セシムルコトヲ得
(栗塚)
本條ハ最初代理人ニテ其超過額ヲ抛棄シテ買入ノ認諾ヲ委任者ニ要求スルハ穩當ナラズト云フ義アリ依テ質問シタルニ起案者ハ敢テ不都合ナシト云ヘリ
第千十七條 商證券ノ保證ノ特例及ヒ仲買人カ委託者ニ對シテ諾約シタル擔保ハ商法ニ於テ之ヲ規定ス
(栗塚)
商證券云々ハ商法ニ於テ規定アルニ依リ別ニ不都合ナシトス
第千二十八條 主タル債務者ノ爲シタル債務ノ自白又ハ認知及ヒ債務者ト債權者トノ間ニ爲シタル裁判外ノ宣誓又ハ其拒絕ハ保證人ヲ利シ又ハ之ヲ害ス
保證人ト債權者トノ間ニ爲シタル右同一ノ所爲ハ債務者ヲ利ス然レトモ委任又ハ連帶アル場合ニ非サレハ之ヲ害セス
(栗塚)
本條ハ自白ト認知トノ區別アリヤト云フヲ質問セシニ區別ナシト云ヘリ依テ「又ハ認知」ノ四字ヲ刪除スベシ
可決ス
第千五十六條 連帶債務者ニシテ債務ニ於ケル全部又ハ自己ノ部分ヨリ多額ニ付キ訴ヘラレタル者ハ共同債務者ヲ訴訟ニ召喚スル爲メ必要ナル期間ヲ請求スルコトヲ得
且附帶ノ擔保方法ヲ以テ其債務者ヲシテ答辯又ハ辨濟ヲ分擔セシムル爲メ必要ナル期間ヲ請求スルコトヲ得
共同債務者ハ亦其利益保護ノ爲メ任意ニ自費ヲ以テ訴訟ニ參加スルコトヲ得
(栗塚)
本條第一項ハ連滯債務者ニシテ債務ニ於ケル全部又ハ自己ノ部分ヨリ多額ニ付キ訴ヲ受ケタル者ハ共同債務者ヲ訴訟ニ召喚シ附滯ノ擔保方法ヲ以テ其債務者ヲシテ答辯又ハ辨濟ヲ擔任セシムル爲メ必要ナル期間ヲ請求スルコトヲ得但債權者ニ對シテハ訴追ヲ受ケタル債務者ノミ其責ニ任ズトセリ
可決ス
第四款 全部義務
第千七十四條 第三百九十八條、第五百十九條、第二項及ヒ其他法律カ數人ノ債務者ノ義務ヲ其各自ニ對シ全部ノモノト定メタル場合ニ於テハ相互代理ニ付シタル連帶ノ効力ヲ適用スルコトヲ得ス但其總債務者又ハ其中ノ一人カ債務ノ全部ヲ辨濟スルノ言渡ヲ受ケタルトキモ亦同シ
然レトモ一人ノ債務者ノ爲シタル辨濟ハ債權者ニ對シ他ノ債務者ヲ免レシム又辨濟シタル者ハ事務管理ノ訴權ニ依リ又ハ債權者ノ代位訴權ニ依リ他ノ債務者ニ對シ其部分ニ付キ求償權ヲ有ス
(栗塚)
本條ハ全部義務ノ場合ニ於テ共同債務者ヲ訴訟ニ參加セシムルヲ得ザル旨アルニ依リ質問シタル個ハ訴訟ニ參加セシムルヲ得ベシト依テ此註釋ヲ除クベシ
可決ス
第千七十八條 債務者ハ債權者ノ一人ヨリ訴追又ハ合式ノ要求ヲ受ケサル間ハ債務ノ全額ノ辨濟ヲ受取ルコトヲ債權者ノ各自ニ強要スルコトヲ得此ニ反スル場合ニ於テハ要求者ニ對スルニ非サレハ辨濟ヲ爲スコトヲ得ス
若シ同時ニ數人ノ要求者アルトキハ債務者ハ總要求者ニ對スルニ非サレハ辨濟ヲ爲スコトヲ得ス
(栗塚)
本條第一項及ビ第二項ノ要求者ノ上ニ訴追者又ハノ五字ヲ挿入スベシ
可決ス
第千百十九條 質物カ質取債權者ノ方ニ存スル事實ノミニテハ其債務ノ免責時効ノ成就ヲ停止セス
(栗塚)
質物ガ債權者ノ方ニ存スル間ハ債務者ハ常ニ義務ヲ承認シタルモノナレバ時効ノ生ズル理由ナシトス
(南部)
時効ハ道理一片ヨリ觀察スルトキハ不都合タルヲ免レザルモ各國皆其期限ヲ規定シタルモノナリ質ハ元來附從物タリ故ニ主タル債務ハ從タル質物ニ依テ其存立ヲ證スベカラズ且ツ債務ヲ完結スルモ其質物ヲ回收セザル場合ナキニアラザレバナリ
(委員長)
尙ホ此點ハ再調スベシ
第五編 證據時効編
第一部 證據
總則
第千三百十四條 有的又ハ無的ノ事實ヨリ利益ヲ得ンカ爲メ裁判上ニテ之ヲ主張スル者ハ此事實ヲ證シ卽チ其眞正ナルヲ表明スルコトヲ要ス
相手方ハ亦自己ニ對シテ證セラレタル事實ニ對抗スル反言ヲ疏明シ或ハ此事實ノ効力ヲ滅却セシムル事實トシテ主張スルモノヲ證スルコトヲ要ス
(栗塚)
本編ニ證據時効編トアル時効ノ文字ハ誤入ニ付刪除セラレタシ
可決ス
(箕作)
第一項此事實ヲ證シ云々トアルヲ此事實ヲ證スルコトヲ要ストシタシ
(松岡)
此事實ヲ證明スルコトヲ要ストシテハ如何
(栗塚)
此事實ヲ證スルコトヲ要ストスルヲ可トス
可決ス
(村田)
有的無的ハ有爲無爲トスベキニアラズヤ
(栗塚)
第四百三十六條ニ有的無的トアリ
(村田)
第二百九十四條有爲地役無爲地役トアルハ如何
(南部)
第二百九十四條ハ措キ本條ハ有的無的ト云フヲ可トス
(松岡)
反言ヲ疏明シト云フハ反對ノ事項ヲ證明シトスベシ
(南部)
反言ヲ疏明スルト云フハ妥當トス
(箕作)
反言ト云ヘバ自己ノ前言ニ反致スルヲ云フ如キ意味アルニアラズヤ
(松岡)
原文ノ意味ハ如何
(箕作)
原文ニハ先方ノ言フ處ニ對シテ辯明スルノ意ナリ
(尾崎)
反對ノ事項ヲ證シトシテハ如何
(松岡)
事實ノ反對ヲ證シトシタシ
可決ス
第千三百十五條 自己ノ主張ノ全部又ハ一分ヲ法律ニ從ヒテ疏明セス又ハ判事カ□證據ヲ査定スルノ權ノ自由ナル場合ニ於テ判事ニ此主張ノ心證ヲ起サシメサリシ原吿若クハ被吿ハ其疏明セサリシ點ニ付キ請求又ハ抗辯ニ於テ敗訴ス
(松岡)
疏明ノ文字ハ皆證明トシタシ
(栗塚)
疏明ト證スルトハ原文ニ明別アルヲ以テ其區別ヲ混淆セシメザルヲ要ス
(箕作)
證スルト證明トノ二樣ヲ使用スルヤ
(栗塚)
疏明ト云フタ字ハ之レヲ證明トシ證明ト證スルトノ二樣トシタシ
(松岡)
證スルト證明トノ區別ナシ
(箕作)
疏明ト云ヒ證明ト云フ原字ニハ異文同義ナルガ如シ
(松岡)
證明モ疏明モ證トスベシ
(渡)
曰同一ニ證明ノ文字ヲ用ヒタシ
(栗塚)
疏明ト云ヘバ意義汎ク證朋ハ意義狹シ唯自己ニ權利アリト云フ主張モ疏明ト云フ範囲ナリ證明ト云フハ證據ヲ立ルヲ云フニアリ然ルニ其汎義ノ場合ヲ證明トシ狹義ノ場合ヲ證スルトスルモ可ナリ
(北畠)
皆一樣ニ證明トスベシ
(委員長)
證明ト疏明トノ區別ナキヤ或ハ登記請求ノ場合ニ於テハ汎義ノ意義ニ屬スベシ
(南部)
第千三百十六條ニハ疏明ト云フ文字全ク汎義ニ使用シタリ
(元尾崎)
本條ハ證明トシ次條ハ疏明ト云フヲ可トス
(箕作)
訴訟法ニ疏明ト云ヘル如ク疏明ヲ必要トスルトキハ疏明トシ其他ハ證明トシテハ如何
(元尾崎)
疏明ト證明トハ事實ニ從ヒ使用シテハ如何
(槇村)
第千三百十四條反言ヲ疏明シト云フ文字ト第千三百十五條疏明セズトアル文字訴訟法ノ疏明ト云ヒ證スルト云フ文字ニ恰當スルカ
(本多)
恰當セズ訴訟法ノ疏明ト云フ文字ハ理由ヲ附スルト云フ義ニ過ギズ證スルト云フハ理由ヲ附スルト云フ事柄ヨリ一歩ヲ進タル場合ヲ云フニアリ
(委員長)
證明ト疏明トノ二種ニ分チ恰當ナルヤ否ノ各條ヲ詮議スベシ
(箕作)
然ルベシ
(松岡)
要スルニ疏明ハ相手方ナキ場合ヲ云ヒ證明ト云フハ相手方アル場合ヲ云フトシテ調査スルヲ可トス
(委員長)
證據立ルト云フトキハ證明トシ其他ノ場合ハ疏明トスベシ
(南部)
證明ト證スルトハ之ヲ證スルト云フニ定メタシ商法ニモ關係スベケレバナリ
結局證スルト云ヒ又ハ疏明トスルニテ調査スルニ
可決ス依テ本條ニ示セル疏明ノ文字ハ證ノ字ニ修正ス
第千三百十六條 當事者ノ一方ハ或ル事實ノ證據カ將來己レノ爲メニ利益アルトキハ其利益ト證據喪失ノ危險トヲ疏明シテ未タ訴訟手續ノ始マラサル前其事實ノ證ヲ立ツルコトヲ裁判上主トシテ請求スルコトヲ得
(箕作)
未ダ訴訟手續ノ始マラザル前ト云フハ歐文ニ就ザレバ如何
(槇村)
個ハ兼テト云フ義ニ讀ムヲ得ベシ
(箕作)
註解ニハ未ダト云フ意味ニアラズ豫メ主トシテト云フ義ヲ示セリ
(淸岡)
訴訟前ト雖モトシテハ如何
(栗塚)
訴訟ノ起ラザル前ト雖モトスベシ
可決ス
第千三百十七條 下ニ定メタル規則ハ物權、人權及ヒ人ノ身分ニ關スル證據ニ共通ノモノトス但特別ノ規定ヲ妨ケス
右ノ規則ハ證據ノ事項ニ關シテ前三編ニ記載シタル特別ナル條例ノ妨ケト爲ラス
右ノ規則ハ人ノ身分ノ問題ニモ之ヲ適用ス但特ニ第一編ニ定メタルモノハ此限ニ在ラス
(栗塚)
本條ハ第二項及ビ第三項ヲ刪除シタシ
可決ス
(村田)
人ノ身分ニ關スルト云フハ如何
(栗塚)
子タル身分ノ如キヲ云フベシ
(箕作)
下ニ定メタル規則ト云フ文字アルト雖モ前三條モ物權、人權等ニモ適用スベシ
(南部)
然リ
(栗塚)
下ニ定メタル規則ト云フ文字アルモ絕則ナレバ前三條ノ適用ヲ妨ゲズ
第千三百十八條 證據ハ左ノ諸件ヨリ成ル
第一 裁判所自己ノ考覈
第二 直接證據
第三 間接證據
(栗塚)
本條第一裁判所ノ文字ハ判事トスベキ誤リナリ
(松岡)
考覈ト云フ文字ハ妥當ナリヤ
(箕作)
妥當ナルベキモ耳聞ニ熟セ覈
結局考覈トスルニ可決ス
第一章 判事自己ノ考覈
第千三百十九條 判事ハ左ノ諸件ニ依リ主張セラレタル事實ノ確定ヲ得タルトキハ自己ノ考覈ニ依リテ爭ヲ決スルコトヲ得
第一 當事者又ハ其代人ノ申述ノ聽取、係爭物竝ニ證書外ノ書類ノ調査及ヒ法律ノ解釋
第二 臨檢
第三 鑑定
(栗塚)
本章判事ノ下「自己」ノ二字ハ先例ニ從ヒ刪ルベシ
可決ス
第一節 當事者申述ノ聽取係爭物竝ニ證書外ノ書類ノ調査及ヒ法律ノ解釋
第千三百二十條 當事者ノ自白アル場合ノ外當事者又ハ其代人ノ申述及ヒ說明ヨリ請求ノ證明セラレサル事又ハ請求ノ尙ホ早キコトノ顯ハルルニ於テハ裁判所ハ其請求ヲ棄却シ又ハ其裁判ヲ爲スコトヲ中止ス
右裁判所ノ心證カ係爭物及ヒ訴訟書類ノ調査ヨリ生スルトキモ亦同シ
(栗塚)
本條中止ノ文字ハ猶豫ノ義ナルヤ又ハ棄却スルノ義ナルヤト云フニ付キ質問中ナリ又本條第一項ハ當事者ノ自白アル場合ノ外當事者又ハ其代人ノ申述及ヒ說明ヨリ請求若クハ抗辯ノ證セラレザルコト又ハ尙ホ早キコトノ顯ハルルニ於テハ判事ハ其請求若クハ抗辯ヲ棄却シ又ハ其裁判ヲ爲スコトヲ中止ストシ第二項ハ右判事ノ心證ガ係爭物及ビ證書外ノ書類ノ調査ヨリ生ズルトキモ亦同シトスベシ
可決ス
第千三百二十一條 爭カ受ケタル損害若クハ失ヒタル利益ニ付キ又ハ爭ハレサル原因ノ爲メニ供給ス可キ其他ノ價額ニ付キ爲ス可キ評價ノミニ存スル場合ニ於テ裁判所カ當事者又ハ其代人ノ陳述ヲ聽キテ右ノ評價ニ必要ナル元素ヲ得タルトキハ自ラ其評價ヲ爲スコトヲ得
(栗塚)
本條ハ受ケタル損害若クハ失ヒタル利益其他原因ニ爭ヒナク供給スベキ價額ニ付爲ス可キ評價ノミニ爭ヒノ存スル場合ニ於テ判事ハ當事者又ハ其代人ノ陳述ヲ聽キ此評價ニ必要ナル元素ヲ得タルトキハ自ラ其評價ヲ爲スコトヲ得ルトスベキヲ然ラザリシハ誤ナリ
(元尾崎)
爭ナク供給トアルヲ爭ヒナクシテ供給トスベシ
可決ス
第千三百二十二條 若シ爭ハレサル事實ニ關シ法律ノ點ノミニ爭ノ存スルトキハ裁判所ハ當事者又ハ其代辯人ノ陳述ヲ聽キタル後其精神ト其明文トニ因リ解釋シ且公正ト條理トノ普通原則ニ因リテ完補スヘキトキハ之ヲ以テ完補シタル法律ノ條例トニ基キ自己ノ心證ヲ取ル
(栗塚)
本條モ事實ニ爭ヒナク法律ノ點ノミニ爭ノ存スルトキハ判事ハ當事者又ハ其辯護人ノ陳述ヲ聽キタル後其精神ト其明文トニ因リ解釋シ且公正ト條理トノ普通原則ニ因リ之ヲ完補シテ自己ノ心證ヲ取ルトスベキ誤ナリ
(箕作)
陳述ヲ聽キトアル下法律ノ規定ヲ其精神ト其明文トニ因リトシ且公正ト條理トノ普通原則トアルヲ且條理ト公道トノ普通原則トスベシ
可決ス
(箕作)
辯護人ハ代理人トシテハ如何
(松岡)
訴訟法ニハ代人トアルニ付同一樣ニシタシ
可決ス
第二節 場所ノ臨檢
第千三百二十三條 所有地ノ境界、地役、占有、財產ノ損害、不動產ニ於ケル工事ノ執行ニ關スル爭其他右ニ類似ノ爭ニ付テハ勿論裁判所ニ移送スルコトヲ得サル動產ノ景狀ヲ證明スルニ關スルトキト雖モ若シ判事カ陳述セラレタル事實ヲ直接ニ且自ラ知ルコトヲ以テ訴訟事件ヲ明カナラシムルニ必要又ハ有益ナリト思考スルトキハ或ハ職權ヲ以テ或ハ當事者一方ノ請求ニ因リテ此カ爲メ保爭物又ハ爭ノ決定元素ノ存在スル場所ニ臨檢スルコトヲ得
若シ裁判所カ數名ノ判事ヨリ構成セラルルトキハ裁判所ハ其中一人右臨檢ノ爲メ委員判事ニ選任シ其臨檢ノ報吿ヲ爲サシム
(栗塚)
本節場所ノ臨檢トアル場所ノト云フ三字ヲ刪リ本條モ境界、地役占有、財產ノ損害及ビ不動產工事ノ執行ニ關スル爭其他之ニ類似ノ爭ニ付ラルル勿論裁判所ニ移送スルコトヲ得ザル動產ノ形狀ヲ證スルニ關スルトキト雖モ判事カ主張セラレタル事實ヲ直接ニ知ルコトヲ以テ訴訟事件ヲ明カナラシムルニ必要ナリト思考スルトキハ或ハ職權ヲ以テ或ハ當事者ノ請求ニ因リテ係爭物又ハ爭ヲ決定スベキ元素ノ存在スル場所ニ臨檢スルコトヲ得トスベキ誤ナリ
(箕作)
請求ニ因リハ申立ニ因リトスベシ
可決ス
(栗塚)
第二項ハ刪除シタシ何トナレバ訴訟法ニ規定スベキ手續ナレバナリ
可決ス
第千三百二十四條 當事者ハ判事ノ臨檢ニ當リ其判事ノ定メタル日時ニ於テ其定メタル場所ニ自身ニテ出頭シ又ハ其代理人ヲ出頭セシムルノ催吿ヲ豫メ受ク可シ然レトモ其出頭セサル事ハ臨檢ノ有効ヲ妨ケス
(栗塚)
本條モ訴訟法ニ規定スベキモノト思考スルニ依リ除去シタシ
(松岡)
訴訟法第二百七十九條及ビ第二百八十三條等ニ於テ此規定アレバ刪去スルモ妨ゲナシ卽チ刪除ニ決ス
第千三百二十五條 判事ハ場所ノ臨檢ノ爲メ爭ノ性質ニ從ヒテ適當ノ鑑定人ヲ己レニ添ユルコトヲ得
臨檢ヲ命シタル判決ヲ以テ鑑定人ヲ選任シタルトキハ次節ニ定メタル鑑定ノ規則ヲ遵守ス可シ
若シ鑑定人カ物ノ調査ニ於テ判事ヲ補佐スル爲メ臨檢ノ當時ニ於テ召喚セラレタルトキハ其鑑定人ハ宣誓ヲ爲サス又裁判所ニ報吿ヲ爲ササルモノトス然レトモ其出頭ト其意見ハ判事ノ報吿中ニ之ヲ記載ス
(栗塚)
本條ハ第一項「場所ノ」ヲ刪リ添ヲ副トシ第二項判決ヲ裁決トシ第三項當時ニ於テトアル「ニ於テ」ノ三字ヲ刪ルベシ且本條ハ訴訟法ニ入ルベキモノナレバ刪除シタシ
(松岡)
本條ハ刪除シ訴訟法ニ入ルベキヤ否ハ別ニ訴訟法ニ於テ論決シタシ
可決ス
第三節 鑑定
第千三百二十六條 法律ニ於テ裁判所カ鑑定ニ依ル可キ旨ヲ定メタル場合ノ外爭ノ判決ニ付キ特別ノ知識ヲ要スル時ハ裁判所ハ何時ニテモ或ハ職權ヲ以テ或ハ當事者一方ノ請求ニ因リテ自己ノ經驗ヲ助ケシムル爲メ鑑定人ノ報吿ヲ爲ス可キ旨ヲ命スルコトヲ得鑑定ヲ命スル判決ニハ其鑑定ヲ爲ス可キ事實ヲ定ム
(栗塚)
木條ハ第一項法律ニ於テトアル下「裁判所カ」ヲ刪リ爭ノ判決ト云ヘル上ニ裁判所ハト云フ文字ヲ挿入シ何時ニテモノ下裁判所ハノ文字ヲ刪除シ當事者一方ノ請求ニ因リトアルヲ當事者ノ申立ニ因リトシ第二項ハ訴訟法ニ屬スベキモノナレバ刪除シタシ
可決ス
(村田)
經驗ノ文字ハ考覈トスベシ
可決ス
(栗塚)
第千三百三十一條第一項ノミヲ本條ノ第二項ニ移シタシ
可決ス
(渡)
裁判所ハ爭ノ判決トアルヲ判事ハ爭トスベシ
可決ス
第千三百二十七條 其判決ニ於テハ爭ノ輕重又ハ難易ニ從ヒテ一人又ハ三人ノ鑑定人ヲ選任ス
然レトモ當事者ハ裁判所ヨリ自己ノ權利ノ吿知ヲ受ケタル後協議ノ上自ラ一人又ハ三人ノ鑑定人ヲ選任スルコトヲ得
若シ當事者カ各一人ノ鑑定人ヲ選任スルコトノミヲ協議シタルトキハ裁判所ヨリ第三ノ鑑定人ヲ選任ス
(栗塚)
本條モ訴訟法ニ屬スベキ義ニ付キ刪除スベシ
(松岡)
訴訟法第三百二十二條ハ假決ニ附シアルニ依リ之ヲ回存セシムレバ可ナリ刪除ニ決ス
第千三百二十八條 何人ニテモ日本臣民ニシテ且國士權ヲ行使スルノ權利ヲ有スル者ニ非サレハ鑑定人ニ選任セラルルコトヲ得ス
然レトモ若シ爭ノ判決カ外國ノ書類又ハ產物ノ調査ヲ要スルトキ其地ニ於テ必要ノ能力ヲ有スル日本臣民ヲ發見スルコト能ハサルニ於テハ裁判所ハ此事ニ付キ當事者ノ申立ヲ聞キタル後判決中ニ右不能ノ旨及ヒ當事者ノ申立ヲ聽キタル旨ヲ證記シテ一人又ハ數人ノ外國鑑定人ヲ選任スルコトヲ得
本條第一項ハ訴訟法第三百二十三條ニ入ルベキ旨ヲ以テ刪除ニ決ス
(松岡)
第二項ハ訴訟法ニ加入スルコトトスベシ
可決ス
第千三百二十九條 鑑定人ハ民事訴訟法ニ定メタル方式ニ從ヒ「謹愼且誠實ニ其委任ヲ履行ス可シ」トノ宣誓ヲ爲ス
宣誓ハ鑑定ヲ命シタル裁判所又ハ鑑定ヲ爲ス可キ裁判所ニ於テ之ヲ爲スモノトス
本條ハ訴訟法第三百二十五條ノ乙トスル旨ヲ以テ刪除ニ決ス
第千三百三十條 鑑定ハ當事者ヲ立會ハシメ又ハ合式ニ之ヲ召喚シタル上ニテ之ヲ爲ス鑑定人忌避ノ原由及ヒ鑑定人ノ報吿書ヲ錄製シテ之ヲ裁判所ニ差出スノ方式ハ民事訴訟法ニ之ヲ規定ス
(栗塚)
本條ハ訴訟法ニ屬スル義ニ付キ刪除スベキ同法ニ記示ナクンバ更ニ記入スベキモノト思考ス
(元尾崎)
訴訟法第三百二十四條ノ義ニ該當スベシ
第千三百三十一條 裁判所ハ鑑定人總員一致ノ說ト雖モ之ニ從フノ義務ナシ
又裁判所ハ再度ノ鑑定ヲ命スルコトヲ得且其再度ノ鑑定ニ付キ更ラニ鑑定人ヲ選任スルノ必要アリト思量スルトキハ之ヲ命スヘシ
總テノ場合ニ於テ裁判所ハ訴訟本案ノ判決文中ニ鑑定人ノ報吿ヲ取調ヘタル旨ヲ附記スルコトヲ要ス
(栗塚)
本條第一項ハ第千三百二十六條ノ別項トシ又本條第二項第三項ハ訴訟法ニ入ルベキ義ニ付キ刪除スベシ
可決ス
第千百二十四條
(栗塚)
本條第三項證明スル證書又ハ判決書トアルヲ設定シタル證書又ハ遺言書トスベシ
可決ス
第千百二十五條
(栗塚)
本條ノ「又ハ判決書」トアルモ又ハ遺言書トスベシ
可決ス
第千百三十二條
(栗塚)
本條ハ起案者ヨリ第一項冒頭質取債權者ハトアル上ニ建物宅地ノ五字ヲ加エ更ラニ第二項ヲ設ケ田畑山林ノ質取債權者ハ其抵當權ヲ併セ失フニ非ザレバ收益權ヲ抛棄スルコトヲ得ズトセリ
(淸岡)
質物ヲ抛棄シテ其利子ヲ收領スルヲ得レバ質物ノ厄介物ハ自由ニ之ヲ抛棄シ自己ニ便ナル利子ヲ得ルハ債權者ノ利益ナリト雖モ債務者ノ小利益ナルベシ
(栗塚)
最初ノ議決ニ從ヒ第二項ヲ設ケ其例外ヲ擧ゲタリ
(尾崎)
建物宅地モ田畑山林モ同樣ノ不動產ナルニ之ヲ抛棄スルヲ得ルト否ラザルトノ差別アルハ如何
(淸岡)
前條第二項質ガ田畑山林ニ存スルトキハトアルヲ質ガ不動產ニ存スルトキハトシタシ
(南部)
從來建物宅地ヲ質入スル慣習ナシ
(栗塚)
質ヲ抛棄セントスルニハ抵當權ヲモ併セ失フニ非ザレバ收益權ヲ抛棄スルコトヲ得ズトハ擔保ノ性質ニ反スルモノト雖モ田畑山林ハ別ニ慣習アルヲ以テ之ニ理論上ハ些少ノ不都合アルモ其慣習ニ從ハザルベカラズト云フニアリ
(村田)
建物宅地ト田畑山林トノ區別ヲ爲サズ同一ニ不動產トスルヲ可トス
(栗塚)
不動產ノ文字ニ拘泥スルハ不可ナリ
(元尾崎)
本條ハ刪除シテ可ナリ前條ノ規定アレバ足リナン
(松岡)
第千三百三十一條ノ規定ニ依リ自然本條ノ記示ヲ要スルモノトス故ニ前條ヨリ修正ヲ加エ建物宅地ト田畑山林トノ區別ヲ置カズ均シク不動產トシタシ
(西)
起案者修正ノ精神ニテ不都合ヲ見ズ
(委員長)
本條ノ可否ヲ決スベシ
(淸岡)
今ノ論ハ前條ニアリ
(渡)
本條ヲ議スル因テ以テ前條ニ議及セリ
(松岡)
前條ニ立戻リ再議アランコトヲ希望ス
(委員長)
前條ニ立戻ル再議ノ意見ハ如何
(松岡)
前條ハ第一項及ビ第三項ヲ刪リ第二項ノミトシテ田畑山林ト云ヘルヲ不動產トシタシ否決セラル
(元尾崎)
本條第一項如何ナル反對ノ合意アルニ拘ハラズト云ヘル數字ヲ刪リ第二項ハ其抵當權ヲ併セ失フニ非ザレバ收益權ヲ抛棄スルコトヲ得ズトアルヲ其抵當權ヲ併セ失フニ非ザレバ質權ヲ抛棄スルコトヲ得ストシタシ
(松岡)
第一項ニ如何ナル反對ノ合意アルニ拘ハラズト云フ規定アルモ質債權者ハ自己ノ出資ト相殺スルヲ得ベキニ付キ質權ヲ抛棄セラレ債務者其責ニ任ズルト同一ナルベシ
結局起案者ノ修正ニ可決ス
第千二百五十一條
(栗塚)
本條ハ更ラニ抹殺若クハ減少ヲ得ルノ判決又ハ債務者トノ合意ニテ銷除若クハ解除シタルトキハ其判決又ハ合意ヲ更ニ記入シ又ハ前記入ノ縁邊ニ附記ス此場合ニ於テハ前記入ハ前債權者ノ爲メ其効力ヲ回復ス然レドモ抹殺若クハ減少ノ後ニ於テ不動產ニ付キ權利ヲ得取シ抵當ノ復舊ノ公示前ニ其權利ヲ記入シタル第三者ニハ此記入ヲ以テ對抗スルコトヲ得ズトスベシ
可決ス
第千二百八十四條
(栗塚)
本條ハ第二項主タル債務者ノトアル下連合債務者又ハト云ヘル數字ヲ挿入スベシ
可決ス
第千二百八十六條
(栗塚)
本條第二項モ冒頭ノ債務者ノトアル下ニ連合債務者又ハト云ヘル數字ヲ加フベシ
可決ス
第二章 直接證據
第千三百三十二條 左ノ諸件ニ於テハ人ノ證言ヨリ生スル直接ノ證據アリトス
第一 私書
第二 裁判上ノ自白
第三 宣誓
第四 公正證書
第五 證人ノ陳述
(南部)
本條宣誓刪除建議ナリ然ルニ個ハ宣誓ノ條ニ於テ議セラレタシ
(松岡)
私書ト公正證書トヲ以テ人ノ證言ヨリ生ズル證據トスルヲ得ルヤ
(栗塚)
私書及ビ公正證書モ到底ハ人ノ證言タルニ屬スベシ個ハ事實ノ推定法律上ノ推定トノ外ヲ指スモノナリ
(淸岡)
人ト云フハ自己ヲモ包含セルヤ
(栗塚)
然リ
(松岡)
左ノ諸ニ於テハ直接ノ證據アリトストシテハ如何
(栗塚)
爰ニ證書ノ文字アレバ此後ニ便ナリ
(委員長)
證言ノ文字ハ各自妥當ノ文字ヲ熟考スルコトトスベシ
第一節 私書
第千三百三十三條 私書ノ證據力ニハ其私書ノ對抗ヲ受クル當事者ノ之レニ署名シ又ハ捺印シタルト否トニ從ヒテ輕重アリ
(渡)
其私書ノ對抗ヲ受クル當事者ト云フハ如何
(箕作)
借用證文アリト云フ證據ヲ以テ請求セラルル如キ之レナリ
(淸岡)
其私書ヲ以テ對抗セラルルトシテハ如何
可決ス
第一款 私署證書
第千三百三十四條 私署證書ノ對抗ヲ受クル者ニ不利ナル事實ノ陳述又ハ追認ヲ記載シ且其署名及ヒ印章又ハ其一アル私署證書ハ署名捺印者ノ己レニ對スル自白卽チ裁判外ノ證言ヲ成スモノトス
右同一ノ條件ヲ有スル書狀ハ私署證書ト同一ノ證據力ヲ有ス
(栗塚)
私書證書ノ對抗ヲ受クル者トアルハ前例ニ從ヒ私署證書ヲ以テ對抗セラルル者トナルベシ
(元尾崎)
本條ハ文理明暢ヲ缺ク
(本多)
自白ト云ヘルハ訴訟法ニハ自認トセリ
(箕作)
本條ハ私署證書ハ之ヲ以テ對抗セラルル者ニ不利ナル事實ノ陳述又ハ追認ヲ記載シ且其署名及ビ印章又ハ其一アルトキハ署名捺印者ノ自白卽チ裁判外ノ證言ヲ爲スモノトストシテハ如何
(村田)
自白ニハ裁判内ト裁判外トノ別アルヲ以テ裁判外ノ白白卽チ證言ヲ成スモノトストスベシ
可決ス
第千三百三十五條 自己ノ利益ニ於テ私署證書ヲ有スル者ハ爭ノ生スル前ト雖モ其署名者ナリト主張シ又ハ思考スル者ニ對シテ手跡、署名及ヒ印章ノ追認ヲ講求スルコトヲ得
署名者ナリト主張セラレタル者ハ或ハ合併シテ或ハ各別ニ其手跡、署名又ハ印章ノ眞正ナルコトヲ明確ニ追認シ又ハ否認スルコトヲ得ルノミ
裁判所ヨリ本條ノ規定ノ口論ヲ受ケタル者右ノ否認ヲ肯セサルトキハ裁判所ハ明確ニ其否認セサルモノニ付テハ之ヲ追認シタリト爲ス旨ヲ認定スルコトヲ得
(尾崎)
合併各別ト云フハ如何
(箕作)
手跡署名及ビ印章ヲ合併シテ追認スルト又ハ手跡ハ追認スルモ署名ハ追認セサル等ノ如シ
(尾崎)
否認ヲ肯セザルト云フハ奇異ナリ
(箕作)
第一項ヨリ順次ニ論究シタシ其署名者ナリト主張シ又ハ思考スル者ト云フハ妥當ナリヤ其署名者ト云ヘルハ私署證書ノ署名者ニアラズ其主張シ又ハ思考スル者ヲ指スベシ
(元尾崎)
第一項ハ別ニ解釋ノ困難ナシ
(栗塚)
口論ヲ受ケタル者ト云フハ報吿委員ニテ發明シタル文字ニシテ俗ニ所謂心得ベシト云フ義ナリ
(淸岡)
否認ヲ肯セザルトキト云フハ穩當ナラズ否認ヲ爲サザルトシテハ如何
可決ス
(村田)
右ノト云フ文字ハ尙ホトスベシ
(元尾崎)
右ノト云フ文字ハ必要ナシ
可決ス
(松岡)
「明確ニ」三字ヲ刪除スベシ
可決ス
(淸岡)
「爲ス旨ヲ」トアル四字ヲモ除去スベシ
可決ス
第千三百三十六條 印章ニ關シテハ其印章ヲ提示セラレタル者ハ其印章ノ自己ノ印章ニ相違ナキコトヲ追認スルモ押捺ハ自身又ハ自己ノ許諾ニテ之ヲ爲シタルコトヲ否認スルヲ得但總テノ方法ヲ以テ其證據ヲ供スルコトヲ要ス其追認證書ヲ與フル前ニ右ノ異議ヲ留メサリシトキハ其後ニ至リ最早右ノ抗辯ヲ利唱スルコトヲ得ス
又其署名又ハ印章ヲ追認シタルトキハ其署名又ハ印章ノ得ラレシ手段タル強暴錯誤又ハ詐欺ヲ最早主張スルコトヲ得ス但強暴カ既ニ止ミ又ハ錯誤若クハ詐欺ヲ既ニ發見シ且此事ニ付キ何等ノ異議ヲモ留メサリシトキニ限ル異議ヲ留メタルトキハ追認證書ニ之ヲ記ス可シ
(松岡)
其後ニ至リノ下最早ノ二字ハ必要ヲ見ザレバ刪除スベシ
可決ス
第千三百三十七條 署名者ナリト主張セラレタル者ノ相續人、承繼人又ハ代表人ニ對シテ追認ノ請求アリタルトキハ被吿ハ或ハ自己ノ代表スル者ノ署名若クハ印章ヲ知ラサル旨或ハ其署名若クハ印章ノ相違ナキヤ又ハ現實之ヲ用ヰシヤ不確實ナル旨ヲ陳述スルニ止マルコトヲ得
右ノ相續人、承繼人又ハ代表人ハ此事ニ關シ異議ヲ留ムルコトヲ怠リタルトキト雖モ印章ノ不正當ナル押捺又ハ承諾ノ瑕疵ヨリ生スル無効ノ方法ヲ利唱スルノ權利ヲ失ハス
(村田)
代表人トアルハ代人トスベシ
可決ス
(箕作)
自己ノ代表スルト云フハ相續人ノ先主ニ於ケルガ如ク相續人ハ先主ヲ代表スル者ナリ
(淸岡)
印章ヲ知ラザル旨ト印章ノ相違ナキヤ不確實ナル旨ト云フニ逕庭アリヤ
(箕作)
知ラズト云フモ相違ナキヤト云フモ區別ナキガ如シ
(栗塚)
或ハ其使用ノ不確實ナル旨トシテハ如何
可決ス
(箕作)
「此事ニ關シ異議ヲ留ムルコトヲ怠リタルトキト雖モ」ノ文字ハ位置順當ナリヤ
(栗塚)
個ハ但書ニスベキ誤リナレバ正誤ヲ請ヒタシ
可決ス
第千三百三十八條 被吿ハ異議ヲ留メスシテ署名又ハ印章ヲ追認シタリト雖モ後ニ捺印白紙ノ濫用又ハ署名若クハ印章ノ偽造アリタルコトヲ證スルノ權利ヲ失ハス
然レトモ捺印白紙ノ濫用ニ付キ異議ヲ留メスシテ追認アリタルトキハ之ヲ知リ其證書ニ依リ善意ニテ約定シタル第三者ニ證書無効ノ方法トシテ此ノ濫用ヲ以テ對抗スルコトヲ得ス
(淸岡)
捺印白紙ノ濫用ニ付異議ヲ留メズト云フハ如何
(松岡)
第三者ニ對シテ然ルモノヲ云フニアリ
第千三百三十九條 一人又ハ數人ノ證人カ私署證書ニ加署シ又ハ加印シタルトキ其證人ヲ手跡驗眞ニ召喚スルヲ得ルニ於テハ之ヲ召喚ス可シ
(松岡)
本條ハ訴訟法ニ屬スベシ民法中ニモ示シ置クヲ可トスベシ
(今村)
驗眞ハ訴訟法第三百四十九條及ビ第三百五十條ニ示シタリ
(松岡)
本條ハ證據ノ原則トスベキ事義ニアラザルガ如シ
(箕作)
訴訟法ニ記入シテハ如何
(本多)
訴訟法ニ記入スルヲ得ズ
(栗塚)
然ラバ民法ニ記存スベシ
可決ス
第千三百四十條 手跡印章又ハ署名ノ驗眞ノ請求ニ關スル方式竝ニ期間及ヒ被吿又ハ其代表人ノ出席セサルニ因リ是等ノ者ニ於テ印章又ハ署名ヲ追認シタリト爲スコトヲ得ヘキ場合ハ民事訴訟法ニ於テ之ヲ定ム
署名者ナリト主張セラレタル者ノ明確ニ否認シ又ハ其相續人若クハ承繼人ノ追認ヲ爲ササル場合ニ於ケル手跡驗眞手續ノ規則ニ付テモ亦同シ
(栗塚)
本條ニモ代表人トアルヲ代人トスベシ
可決ス
(今村)
本條ノ期間ト云ヘル文字ハ刪除セラレタシ
(栗塚)
訴訟法ニハ期間ヲ示サザルヤ
(松岡)
訴訟法ニハ期日ヲ示シ期間ヲ示サズ
(栗塚)
本條ノ期間ノ文字ヲ期日トシテハ如何
(松岡)
期日ハ裁判官ノ定ムルモノナレバ記示スベカラズ
(箕作)
竝ニ期間ノ文字ヲ刪除スベシ
(松岡)
本條ノ如キ規定ハ訴訟法ニ屬スベキモノタリ
(南部)
訴訟法ニ驗眞ノ規定ヲ示シタル場所ハ曩ニ同法議事ノ際民法證據篇ノ議定マデ讓リ置クト云フニ決シタレバ訴訟法報吿委員ニテ調査セラレタシ
(今村)
本條ハ此儘ニ附シ置カレ訴訟法ニテ調査ヲ盡シタル上期間ト云フ字ヲ刪ルトカ方式ト云フ字ヲ除クトカ決定アランコトヲ希望ス
(委員長)
然ラバ假決ニ附シ置クベシ
第千三百四十一條 雙務契約ヲ證記スル私署證書ハ反對ノ利益ヲ有スル主タル當事者ノ員數ニ應スル正本ヲ作リ且之ニ署名又ハ捺印スルコトヲ要ス
又各正本ニハ其作リタル正本ノ數ヲ附記スルコトヲ要ス
然レトモ當事者ハ一通ノミノ證書ヲ作ルコトヲ得但其證書中指定シタル第三者ノ方ニ之ヲ寄託スルコトヲ合意シタルトキニ限ル
右ノ場合ニ於テ第三者ハ各當事者ノ求メニ應シテ其證書ヲ示ササル可カラス但總當事者ノ承諾ナクシテ之ヲ交付スルコトヲ得ス
(松岡)
反對ノ利益ヲ見スル主タル當事者ノ員數ニ應ズルヤ
(南部)
員數ニ應ズル證書ナキトキハ一方ハ武器ヲ有シ他ノ一方ニハ武器ナクシテ雌雄ヲ決スルガ如クナレバナリ
(村田)
證書數通ヲ作製セザルモ双務契約ノ場合ニ於テハ第三者ニ寄託スル者トシテ可ナリ
(南部)
双務契約ハ双方ニ其義務アルニ依リ當事者互ニ其證書ヲ授受セザルベカラズ若シ之ヲ片務契約ナラシムルトキハ一方ノ義務ハ權利者ニ對スル證書ヲ附與セザルヲ得ザルト同然双務契約ノ場合ハ各義務者ハ其義務ヲ證スル契約書ヲ權利者ニ立付シ置カザルベカラズ
(松岡)
證書交付ハ契約當事者ノ自由ニ任シテハ如何
結局多數ニ依リ原案ニ可決ス
第千三百四十二條 正本數通ノ證書ノ錄製及ヒ其數ノ附記又ハ此ニ代ハル證書ノ寄託ハ當事者カ合意ノ組成ヲ繋ラシメタル條件ト看做ス
然レトモ前條ニ從ヒテ證書ノ錄製アラサリシ契約ノ全部又ハ一分ヲ履行シタル當事者ハ最早條件ノ不履行ヲ利唱スルコトヲ得ス
(村田)
此ニ代ルノ文字ハ除去スベシ
可決ス
第千三百四十三條 片務契約ヲ明定スル私署證書ニ金錢其他ノ定量物ヲ與ヘ辨濟シ又ハ返還スルノ諾約ヲ包有スル場合ニ於テ債務者又ハ其代人カ證書ノ本文ヲ錄製セサルトキハ債務者ハ其署名若クハ捺印ノ外ニ自筆ニテ金額若クハ數量ヲ記載シ又ハ金額若クハ數量ノ文字ニ捺印スルコトヲ要ス
然レトモ二名ノ證人ノ加署又ハ加印ヲ以テ右ノ認濟又ハ認諾ニ代フルコトヲ得
若シ連帶ナルト否トヲ問ハス數人ノ債務者アルトキハ其中ノ一人右ノ方式ニ從フヲ以テ足レリトス
若シ外國文字ニテ證書ヲ錄製スルトキハ金額又ハ數量ヲ全キ文字ヲ以テ證書ニ記載ス可ク數字ヲ以テ此ヲ記載ス可カラス
(栗塚)
本條ハ第二項及ビ第四項ヲ刪除スベキ意見ヲ以テ第一項及ビ第三項ハ報吿委員ニテ修正ヲ其ノ修正ノ儘ヲ印刷ニ附シタレバ諒知セラレタシ
(元尾崎)
報吿委員ノ修正ハ至當ナリ
(松岡)
本條第二項第四項ヲ刪除スルハ可ナルモ第四項ニ記示シタル全キ文字ト云フハ甚ダ可ナリ商法第七百十五條ニ此意義ヲ表シタル文意ハ穩當ナラザルニ依リ全キ文字ト改正シタシ
(槇村)
第二項ハ刪除シテ第四項ハ記存シ置キタシ
(松岡)
第一項本文ヲ錄製セザルトキハトアルヲ本文ヲ自書セザルトキハトシタシ
可決ス
(北畠)
第二項及ビ第三項ハ刪除シテ可ナリ
可決ス
第千三百四十四條 若シ證書ノ本文ト認濟又ハ認諾トノ間ニ金額又ハ數量ノ差違アルトキハ其證書ノ本文及ヒ認濟又ハ認諾カ共ニ債務者ノ手ニ成レルトキト雖モ義務ハ其内ノ小ナル金額又ハ數量ノ爲メニ非サレハ證明セラレス但其錯誤ノ孰レノ方ニ在ルヤ書面又ハ其他ノ方法ニテ證明セラルル場合ハ此限ニ在ラス
(栗塚)
既ニ認濟及ビ認諾ノ手續ヲ刪除シタル以上ハ本條ハ刪除スベシ
可決ス
第千三百四十五條 債務者ノ署名又ハ捺印アルノミニテ前條ノ方式ニ從ハサル證書ハ其證書ニ記載シタル金額又ハ數量ニ滿ツルマテ人證ヲ許ス爲メ書面ニ因ル證據端緒トシテ有効タリ
全キ文字ニテ記載スルノ條件カ必要ナル場合ニ於テ金額ヲ全キ文字ニテ記載セサル證書ニ付テモ亦同シ
右ノ證書ニ記載シタル義務ヲ全部又ハ一分履行シタル債務者ハ其履行シタル限度ニ於テ最早其義務ヲ爭フコトヲ得ス
(栗塚)
本條第二項ハ刪除セラレタシ
可決ス
(松岡)
證據ノ輕重ニ關シテハ裁判官ニ委任シテ可ナルニアラズヤ
(元尾崎)
債務者自己ノ名下ニ捺印アルニ尙ホ金額ヲ記シタル上ニ自印セザリシトキハ更ニ證明セザルベカラズト云フハ無用ナリ
(箕作)
然リ
(栗塚)
然ラバ則第千三百四十三條ノ修正可決モ必要ヲ見ザルニ至ラン
(委員長)
假決ニ附シ置キ追テ不都合ノ場合アルトキハ回復スベシ
第千三百四十六條 數通ノ正本及ヒ認濟又ハ認諾ノ方式ハ商人ニ付テハ特ニ商法ニ定メタル場合ニ非サレハ之ヲ要セス
(栗塚)
認濟又ハ認諾ト云ヘルハ第千三百四十三條トスベキ誤ナリ
(村田)
本條ハ商業上ノミニ適用スベシ
(松岡)
商人ト非商人トノ取引ニ付テハ如何
(委員長)
個ハ商事ナリ商業ニアラズ
(松岡)
商人ト非商人トヲ問ハズ其所爲商事ニ屬スレバ商法ノ支配ヲ受ケザルベカラズ
(南部)
本條ハ商人ニハ適用セザルモ非商人ニハ適用セザルベカラズ
(栗塚)
商人ニ付テハ之ヲ要セズトスベシ
可決ス
第千三百四十七條 前數條ノ方式ニ從ヒ錄製シタル私署證書ニシテ其對抗ヲ受クル者ノ追認シ又ハ裁判上ニテ其者カ追認シタリト爲シタルモノハ其主要ノ文言及ヒ之ト直接ノ關係ヲ有シ又ハ之ヲ補足スル文言ニ付テハ其者ニ對シテ完全ナル證トス
此他ノ文言ハ書面ニ因ル證據端緒ノミニ之ヲ用ユルコトヲ得
第千三百六十五條ニ記載シタル自白不可分ナル原則ハ同條ノ區別ヲ以テ證書ノ各部分ニ之ヲ適用ス
(箕作)
前數條ト云フハ如何
(栗塚)
第千三百四十一條以下ヲ指スベシ
(松岡)
主要ノ文言及ビ之ト直接ノ關係ヲ有シト云フハ如何
(栗塚)
金幾圓借用申處實證也ト云フハ主要ノ文言ナリ返濟期限ヲ示シタル如キハ之ト直接ノ關係ト云フ譯ナリ
(松岡)
主要ノ文言ハ主文トスベシ
可決ス
(委員長)
錄製ノ文字ハ構成法ニハ作製ト記證スルトノ兩意ヲ包含スベキナレバ本條ノ錄製ノ意義トハ同轍ナラザルナリ
(南部)
構成法ニ就キ尙ホ調査スベシ
第千三百四十八條 證書カ第千三百三十八條ニ規定シタル如ク捺印白紙ノ濫用又ハ僞造ノ攻撃ヲ受ケタルトキハ其證據力ハ刑事裁判所ニ被吿ノ送致アルニ因リテ停止セラレ其裁判所ノ判決ノ確定ト爲ルマテ民事ノ判決ヲ中止ス
嫌疑アル人ノ死亡其他ノ原由ニ因リテ刑事審問ノ開カレサリシトキハ民事裁判所ハ主張セラレタル犯罪ヨリ生スル不受理ノ理由ニ付キ裁判アルマテ本案ノ判決ヲ中止ス
又刑事審問中ナルトキハ民事裁判所ハ當事者ノ要求ニ因リ又ハ職權ヲ以テ其判決ヲ中止スルコトヲ得
(今村)
本條ハ訴訟法第三百四十八條ト對照ヲ有セリ
第千三百四十九條 私署證書ハ其證書ヨリ後ニ當事者ト約定シタル特定承權人ノ利害ニ於テ當事者間ニ於ケルト同一ノ證ヲ爲スモノトス然レトモ其日附ハ確定ナルトキニ非サレハ之ヲ援用スルコトヲ得ス
無異議
第千三百五十條 私署證書ハ左ノ諸件ニ因リテ確定ノ日附ヲ取得ス
第一 租稅ノ爲メノ記錄
第二 財產ノ封印若クハ目錄ノ調書其他ノ公正證書又ハ確定ノ日附ヲ有スル他ノ私署證書ニ於ケル記載
第三 手署シタル當事者中一人又ハ加署若クハ加印シタル證人ノ死亡又ハ是等ノ者ノ失踪ニ關スル裁判上ノ宣吿
右ノ場合ニ於テ證書ハ記載死亡又ハ最後ノ音信ノ日ヨリ確定ノ日附ヲ有スルモノトス
(栗塚)
本條第一租稅ノ爲メノ記錄トアルハ確定日附ノ記錄トスベシ
(箕作)
確定日附ノ記錄ト云フハ如何
(栗塚)
日附ノ確定ヲ證明セン爲メ登記所ニ記錄ヲ請求スルガ如シ
(淸岡)
登記所ニ請求シタル記錄ノ日附ハ他ノ權利者ニ勝ツベキヤ
(栗塚)
記錄ヲ請求シタル日附ハ前後ノ爭ヒニ於テ効力アリ
(栗塚)
日附ノ詐欺ヲ防グガ爲メナリ私人間ノ取引ニ付キ確定ノ日附ノ認ヲ請求サレタルトキハ政府ハ其認ヲ與ヘテ可ナリ
(松岡)
僞造ノ疑ヒアルトキハ其擧證ヲ爲スコトヲ得ベシ
(南部)
僞造ノ擧證ハ實際上困難ナルニ一登記ノ爲メ其煩勞ヲ省クヲ得ルハ利ニアラズヤ
(松岡)
其記錄ノ請求ヲ爲ストキハ金錢ヲ納メザルベカラズ實ニ租稅ノ爲メノ記錄ト云フハ誣ヒザルナリ又確定日附ノ記錄ニ依ルモノトスルトキハ例ヘバ甲者一個ノ財物ヲ乙者ニ贈與スベキ契約ヲ爲シ爾後又之ヲ丙者ニ贈與セントスル契約ヲ爲シタリトセンニ丙者日附ノ確定ヲ登記所ニ請求シタルトキハ乙者ハ前契約ノ効ヲ受クルヲ得ザルニ至ルベシ
結局起案者ニ質問スベキニ決ス
(栗塚)
第千三百五十一條及ビ第千三百五十二條ハ右ト關係ヲ有スルニ付キ共ニ留保スベシ其議ニ決ス
第千三百五十一條 一箇ノ證書ヲ他ノ證書ニ附記シタル場合ニ於テ二箇ノ證書ヲ以テ設定シタル權利カ竝存ス可カラサルモノナルトキハ優先ハ先キニ成立シタルモノトシテ記載セラレタル權利ニ屬ス
二箇ノ證書カ同時ニ確定ノ日附ヲ有スル其他ノ場合ニ於テハ優先ハ物ノ占有ニ因リテ維持セラレタル證書ニ屬シ又占有アラサルトキハ最初ニ裁判上ノ請求ノ用ニ供セラレタル證書ニ屬ス
二箇ノ證書何レニモ確定ノ日附ナキトキハ優先ハ同一ノ區別ヲ以テ之ヲ規定ス
然レトモ如何ナル場合ニ於テモ當事者ニシテ其自白ニ因リ約定シタル當時ニ於テ確定ノ日附ナキモ自己ノ證書ト竝存セサル證書タルコトノ證セラレタル者ハ優先權ヲ失フ
第千三百五十二條 受取證書又ハ免責若クハ相殺ノ證書ハ確定ノ日附ヲ有セスト雖モ其日附ヲ以前ノ日附ニ爲サレタリト思考ス可カラサルニ於テハ之ヲ以テ債權ノ讓受人、被代位人及ヒ差押債權者ニ對抗スルコトヲ得商事ニ於テハ私署證書ノ日附ハ眞誠ノモノト推定ス但錯誤又ハ詐欺ヲ證スルハ此限ニ在ラス
第二款 署名捺印セサル證書
第千三百五十三條 商人ノ帳簿ハ總テノ人ノ爲メ其商人ニ對シテ證ヲ爲ス然レトモ其帳簿ヲ援用スル者ハ此ヨリ生スル自白ヲ分ツコトヲ得ス
商人ノ帳簿ハ商人ノ爲メ商人ニ非サル者ニ對シ證ヲ爲サス
此他右帳簿ノ證據力ハ商法ニ於テ之ヲ規定ス
(箕作)
本條ハ商法ト對査スベキ必要アルニアラザルカ
(渡)
此ヨリ生ズル自白ヲ分ツコトヲ得ズト云フハ如何
(栗塚)
利益ノ部分ハ是認シ不利益ノ部分ハ否認スルガ如クナルヲ得ズ
(淸岡)
本條ハ第一項ノミヲ存シ第二項ハ刪除スベシ
(南部)
第一項ハ商人ト非商人トニ關係シタル場合ニ適用スルヲ得ベキニ依リ個ハ之ヲ存シ第二項ハ商法ニ示シタルニ付キ刪除スベキ可決ス
第千三百五十五條 商人ニ非サル者ノ帳簿、覺書及ヒ家内ノ書類ハ其者ノ爲メ決シテ證ヲ爲サス
右ノ帳簿、覺書及ヒ家内ノ書類ハ其者ニ對シ下ノ區別ニ從ヒテ證ヲ爲ス
(栗塚)
第千三百五十四條ハ修正シテ前條ニ合併スベキ建議アリ故ニ之ヲ省除シタリ
(委員長)
第一項「決シテ」ノ三字ヲ刪除スベシ
可決ス
第千三百五十六條 債權者ノ書面ハ左ノ場合ニ於テハ其債權者ニ對シテ證ヲ爲ス
第一 債務者ノ辨濟其他ノ免責ヲ明カニ揭クルトキ但債權者ニ於テ債務者ニ交付スル爲メニ準備セル受取證書タルコトヲ證スルトキハ此限ニ在ラス
第二 債務者ノ證書又ハ從來ノ受取證書ニ免責ヲ書込ミ且其書類カ債務者ノ手ニ存スルトキ
無異議
第千三百五十七條 債務者ノ書面ニ其義務ヲ揭ケ且之ヲ以テ債權者ノ證書ノ用ニ供スルモノタルコトヲ記載スルトキハ其書面ハ債務者ニ對シテ證ヲ爲ス
無異議
第千三百五十八條 前二條ノ場合ニ於テ抹殺シタル書面ハ之ヲ斟酌セス但其抹殺カ詐害又ハ錯誤ニ因リテ出タルノ證アルトキハ此限ニ在ラス
(栗塚)
錯誤ニ因リテトアル「因リテ」ノ三字ヲ刪除スベシ
可決ス
第千三百五十九條 商人ニ非サル者ハ裁判上ニテ其家内ノ帳簿及ヒ書類ヲ差出スノ義務ナシ然レトモ任意ニテ之ヲ差出シタルトキハ爭ニ關スルモノヲ拔抄シタル後ニ非サレハ之ヲ取戻スコトヲ得ス
(委員長)
拔抄ノ文字ハ抄錄トスベシ
可決ス
第二節 口頭自白
第千三百六十條 一方ノ當事者カ己レニ對シテ權利上ノ結果ヲ生スルコト有ル可キ事實ニ付キ爲セル口頭自白ハ或ハ裁判上ノモノ有リ裁判外ノモノ有リ
(元尾崎)
己レニ對シテ權利上ノ結果ヲ生スルコト有ル可キト云フハ如何
(栗塚)
己レノ不利益ナル事實ニ付キト云フ義ナリ
(北畠)
口頭自白ト云ヘルハ口頭自認トスルカ或ハ自白トノミニテハ如何口頭ト云フニハ自白ノ意義ヲ包含セルニ依レリ
(村田)
本條ハ口頭自白ハ一方ノ當事者ガ己レノ不利益ヲ自ラ認ムルモノニシテ裁判上ノモノ有リ裁判外ノモノ有リトシテハ如何
(栗塚)
己ニ不利ナル權利上トスベシ
結局口頭自白ハ一方ノ當事者ガ己レニ不利ナル權利上ノ結果ヲ生ズルコト有スベシ其自白ハ裁判上ノモノ有リ裁判外ノモノ有リトスルニ決ス
(村田)
千三百三十二條第二裁判上ノ自白トアルハ口頭自白トスベシ
(栗塚)
裁判上口頭ノ自白ト云フ義ナレバ口頭自白トスルモ不可ナシ
(箕作)
個ハ口頭自白トスベシ
可決ス
第一款 裁判上ノ自白
第千三百六十一條 裁判上ノ自白ハ特發ノモノアリ又ハ民事訴訟法ニ規定シタル本人訊問ニ因リテ爲スモノアリ
(元尾崎)
特發ノモノ有リト云フハ如何
(栗塚)
訊問ヲ受ケザルニ偶然自白シタル義ナリ
(元尾崎)
自發トシテハ如何
可決ス
第千三百六十二條 自白ハ其自白ニ繋ル權利ヲ處分スルノ能力ヲ有スル者ニ非サレハ有効ニ之ヲ爲スコトヲ得ス但法律上自白ノ證據ヲ禁シタル事實ニ非サルトキニ限ル
代理人ノ爲シタル自白ハ其管理所爲ニ關スルノ外特別ノ委任ニ依リタルトキニ非サレハ有効ナラス但裁判上ノ代人ノ自白ト其陳述ノ不認ノ方式及ヒ條件ニ關スル民事訴訟法ノ規定ヲ妨ケス
(村田)
自白ヲ禁ジタル事實トハ如何
(栗塚)
親子及ビ夫婦ノ間ニハ自白スルヲ得ザルモノアリ
(南部)
「條件ニ」トアルハ「條件トニ」トスベキ誤ナリ
(松岡)
不認ハ取消ストスベシ
(箕作)
然ルベシ其陳述ノ不認ハ其陳述ノ取消トスルニ可決ス
第千三百六十三條 相手方カ前條ニ從ヒテ爲シタル自白ヲ受諾シ又ハ裁判所ヨリ其證書ヲ與ヘタルトキハ其自白ハ之ヲ爲シタル者ニ對シテ完全ノ證ヲ爲ス
然レトモ其自白ハ事實ノ錯誤ノ爲メニ之ヲ言消スコトヲ得
(松岡)
訴訟法ニ自白ノ錯誤ヲ言消スコトヲ得ト云フ規定ナキハ如何
(今村)
個ハ民法ニ依ルヲ得ベシ
(村田)
第一項ハ前條ニ從ヒテ爲シタル自白ヲ相手方ノ受諾シ又ハ其證書ヲ裁判所ヨリ與ヘタルトキハ其自白ハ之ヲ爲シタル者ニ對シテ完全ノ證ヲ爲スベシ
可決ス
第千三百六十四條 自白ハ法律ノ錯誤ノ爲メ之ヲ言消スコトヲ得ス
然レトモ相手方ノ權利ノ直接又ハ間接ノ追認ハ之ヲ爲シタル者ヲシテ其權利ノ原因及ヒ存續ヲ爭フノ權能ヲ失ハシメス
(元尾崎)
存續ヲ爭フノ權能ト云フハ妥當ナラズ
(栗塚)
現存ヲ爭フノ權能ト云フ義ナリ
(村田)
直接又ハ間接ト云フ文字ハ詳悉ヲ求メントシテ却テ說明ニ苦シムノ嫌ヒアレバ個ハ刪除シテハ如何
(栗塚)
假ヘバ個ノ兒ハ誰某ノ產出シ係ルト云ヘバ其誰某ハ何處ニ住居セシトキハ兒ナリト云フヲモ認ラルベシ
(元尾崎)
利息ヲ拂ヒシコトアレバ元債アルハ判然タルベシ
(村田)
個ハ間接ノモノト云フヲ得ズ起案者ニ質問シタシ
(栗塚)
然カズベシ
第千三百六十五條 複雜ナル自白ヲ援用セント欲スル者ハ陳述セラレタル數箇ノ事實ニ關シ其自白ヲ分ツコトヲ得ス卽チ自白ノ効力ヲ全ク毀滅スル事實ハ勿論其効力ヲ制限スル事實ヲモ斥クルコトヲ得ス但是等ノ事實カ主タル事實ノ以前又ハ以後ナルヲ問ハス之ト牽連スルコトヲ要ス
然レトモ主タル事實ヲ變更スル事實ノ主張ハ通常ノ證據方法ヲ以テ之ヲ駁撃スルコトヲ得
(松岡)
自白ハ分ツベカラザルモ自白ト追認トハ分ツベシ例ヘバ金錢ヲ借用セリト云フト之ヲ返濟セリト云ヘルトヲ不可分トスルヲ得ズ
(元尾崎)
自白ハ權利ノ主張ニアラズシテ不利益ヲ自言スルノ意義ナルベシ
(松岡)
佛蘭西法ハ借用セリト云ヒ返濟セリト云フハ分ツベカラザルモノトナレリ
(松岡)
此點ハ金圓ヲ借用セリト云ヘバ其金額ハ幾干ナリトシト云フヲ認メザルベカラザルノ意味ナラン
(松岡)
受託者或ル物件ノ依託ヲ受ケタリト自認シ又之ヲ返却セリト云フコトアランニ其寄託者ハ返却サレベキ地ニアラザリシコトノ證明判然シタルトキハ之ヲ不可分トスルトキハ事實ニ且吾シタル判決ヲ爲スニ至ルベシ故ニ之ヲ返却セリト云フガ如キハ自白ト云フヲ得ズ
(箕作)
自己ニ不利ナル事實ニ限リ不可分ト看ザレバ之ヲ自利ノ場合モ及スヲ得ザルガ如シ依テ卽チ自白ノ効力乃至斥クルコトヲ得ズト云ヘルヲ刪除スベシ
可決ス
(栗塚)
但以下ハ但是等ノ事實ガ相牽連スルコトヲ要ストスベシ
可決ス
第千三百六十六條 裁判上ノ自白ノ効力ハ裁判所ノ管轄違カ公ノ秩序ニ關セサルモノタルトキハ其管轄違ニ因リテ無効ト爲ラス
反對ノ場合ニ於テハ自白ハ裁判外ノモノトシテノミ有効ナリ
(元尾崎)
公ノ秩序ト云フハ如何
(栗塚)
行政官廳ニ係ル訴狀ハ始審裁判所ニ訟ヘザルベカラズサルニ之ヲ區裁判所ニ訟タルガ如キハ公ケノ秩序ニ反スルモノナリ
第千三百六十七條 一方ノ當事者カ訴訟事件ノ或ル事實ノ成立ニ付キ陳述ス可キノ求メヲ受ケテ其事實ヲ爭ハサルニ因リテ之ヲ追認シタリト看做ス場合ハ民事訴訟法ニ於テ之ヲ規定ス
無異議
第千三百六十七條第二 一方ノ當事者カ廢疾其他ノ原因ニ由リ語ルコトヲ得スト雖モ書面又ハ容態ヲ以テ裁判所ニ答フルコトヲ得ルニ於テハ裁判上ノ自白ノ規則ヲ之ニ適用ス
(村田)
廢疾其他ノ原因トアルモ廢疾篤疾其他ノ原因トセザルベカラス
(箕作)
此廢疾ノ文字ハ原ニ疾病ト云フ義ナルベシ原案ニ可決ス
第二款 裁判外ノ自白
第千三百六十八條 裁判外ノ自白ハ相手方又ハ其代人ノ面前ニ於テ口頭ニテ又ハ是等ノ者ニ送致シ若クハ交付シタル借書若クハ書類ニテ之ヲ爲シタルニ非サレハ其効ヲ有セス
此末ノ場合ノ外口頭ノ自白ヲ受ケ及ヒ證スルノ資格ヲ有スル官廳ニ於テ其自白ヲ爲ササリシトキハ人證ヲ許ス場合ニ非サレハ證人ヲ以テ之ヲ證スルコトヲ得ス
(村田)
第二項官廳ト云ヘルハ如何ナル官廳ナルヤ
(栗塚)
登記所公證人役場及ビ區戶長役場ノ如キヲ云フ
第千三百六十九條 裁判上ノ自白ノ有効ナル爲メ要スル能力、其證據力、其言消及ヒ其不可分ニ關スル前數條ノ規定ハ裁判外ノ自白ニ之ヲ適用ス
然レトモ判事ハ十分確實ニシテ明白ナル自白ニ非サレハ之ヲ斟酌スルコトヲ得ス
(栗塚)
第二項十分ノ文字ハ除去スベシ
可決ス
(尾崎)
斟酌ノ文字ハ採用トスベシ
(箕作)
個ハ計算中ニ加ワルヲ得ズト云フ義ナレバ斟酌ト云フ文字ハ妥當ナラズ
(渡)
斟酌ト云フ文字ニテ可ナリ
(北畠)
斟酌スルヲ得ズト云ヘバ到底採用スルヲ得ズト云フニ同樣ナリ斟酌ニ可決ス
第千三百七十條 前記ノ規定ハ義務ノ全部又ハ一部ノ履行ヲ法律上ニテ其默示ノ自白ト看做ス可キ場合ヲ妨ケス
無異議
第千三百七十一條 裁判外ノ自白ハ有効ニ之ヲ言消シタリト雖モ相手方ノ利益ニ於テ時効ノ停止ヲ生ス然レトモ時効ハ言消ノ日ヨリ再ヒ進行ス
(栗塚)
本條ハ停止ノ文字ハ起案者之ヲ中斷トシアルヲ報吿委員ニテ停止トスベキニ付キ目下起案者ニ質問中ニ係レリ
(箕作)
中止トシテハ如何
結局中斷ニ可決ス
第三節 裁判外ノ誓
第千三百七十二條 判事ハ如何ナル場合ニ於テモ原吿タルト被吿タルト又主タル者ナルト參加人ナルトヲ問ハス當事者ノ一方ニ對シ其請求又ハ抗辯ニ付テモ又爭ニ係ル利益ノ額ニ付テモ誓ヲ爲サシムルコトヲ得ス
當事者双方モ亦右ノ諸件ニ付キ裁判上ニテ互ニ誓ヲ爲サシムルコトヲ得ス
誓ヲ爲サシムルコトハ裁判外ノモノニシテ下ニ定メタル條件ニ從フ
(栗塚)
宣誓ハ日本ニ於テハ從來神佛ニ誓フ例ナキニシモアラズト雖モ之レガ爲メニ神佛ニ誓フヲ名トシテ寧ロ詐欺ノ門ヲ開クガ如キ効驗ヲ顯ハスベキニ依リ宣誓ハ刪除シタシ
可決ス
第千三百七十三條 當事者双方ハ未タ其一方ノ利益ニ於テ何等ノ證據ノ端緒モ成立セサルトキト雖モ爭ヲ豫防シ又ハ之ヲ止マシムル爲メ互ニ裁判外ノ誓ヲ爲サシムルヲ合意スルコトヲ得
此合意ハ和解ノ性質ヲ有シ下ノ變更ヲ以テ第七百五十七條乃至第七百六十二條ノ規定ニ從フ
第千三百七十四條 當事者双方ハ其爭論ノ全部又ハ一分ヲ一方ノ誓ニ因リテ決ス可キコトヲ合意スルニ當リ左ノ諸件ヲ定ムルコトヲ要ス
第一 孰レノ一方ニ對シテ誓ヲ爲サシム可キヤノコト
第二 有的又ハ無的ノ如何ナル事實ニ付キ誓ヲ爲サシム可キヤノコト
第三 如何ナル場所時期及ヒ何人ノ面前ニ於テ誓ヲ爲ス可キヤノコト
第四 當事者ハ其宗教ノ神ヲ誠實ナルコトノ證人トシテ誓可キヤ將タ單ニ「其名譽又ハ良心ニ依リテ」確言ス可キヤノコト
第千三百七十五條 前記ノ合意ハ爭ノ性質及ヒ輕重カ下ノ第八節ニ從ヒテ人證ヲ許ス可キ場合ニ非サレハ證人ヲ以テ之ヲ證スルコトヲ得ス
誓ヲ爲シタルコト又ハ嚴正ナル確言ヲ爲シタルコト及ヒ其誓又ハ確言ノ合意ニ適合スルコトハ其誓又ハ確言ニ立會フ爲メ當事者ノ召喚シタル各人ノ證ヲ以テ之ヲ證スルコトヲ得
第千三百七十六條 誓ノ求メヲ受ケタル一方ハ同一ノ方式ト同一ノ條件トヲ以テ他ノ一方ニ誓ヲ反求スルコトヲ得
第千三百七十七條 誓ハ相手方ノ一身上ノ事實ニ關シ又ハ相手方ニ關係ナキ事實ヲ相手方ノ自ラ知得スルコトニ關シ且此孰レノ場合ニ於テモ其事實カ爭ノ決定ニ影響ヲ及ホス可キ性質ノモノタルニ非サレハ之ヲ求メ又ハ之ヲ反求スルコトヲ得ス
第千三百七十八條 和解ノ體裁ニテ裁判外ノ誓ヲ提出シ又ハ此ノ和解ヲ承諾シテ誓ヲ反求シタル一方ノ者ハ誓ヲ求メ又ハ之ヲ反求シタル有的又ハ無的ノ事實ヲ追認セルモノト看做ス但其事實ヲ合式ニテ確言スルコトヲ要ス
其提供ノ承諾アリタルトキ及ヒ誓ノ爲メニ許與シタル期間カ滿了セサル間ハ右一方ノ者ハ其提出ヲ取消スコトヲ得ス
此ニ反シ其提出ヲ承諾シテ誓ヲ爲スコト及ヒ其相手方ニ誓ヲ反求スルコトヲ拒絕スル者ハ右事實ノ眞實ナルコトヲ暗ニ追認シタルモノト看做ス
第千三百七十九條 其提出ノ言消ナキトキハ定マリタル期間ノ滿了後ト雖モ相手方自身ニテ出席シ又ハ特別ノ代人ヲシテ出席セシムルニ於テハ仍ホ誓ヲ爲スコトヲ得
然レトモ相手方ノ不在ハ定マリタル時間ト場所トニ於テ爲シタル誓ノ有効ナルコトヲ妨ケス
第千三百八十條 誓ヲ和解ニ從テ一旦爲シタル上ハ之ヲ求メ又ハ之ヲ反求シタル者ヨリ民事上其虛僞ヲ陳辯スルコトヲ得ス
第千三百八十一條 保證、連帶及ヒ合意上ノ不可分ノ場合ニ在テ種種ノ利害關係人ノ間ニ於ケル裁判外ノ誓ノ効力ハ第千二十八條、第千五十九條、第千六十條、第千六十二條及ヒ第千九十二條ニ於テ之ヲ規定ス
第四節 公正證書
第千三百八十二條 公正證書ハ公吏カ當事者ヨリ證スルコトヲ託セラレタル事實ニ付テノ證言タリ
又官廳ノ代人トシテ事ヲ行フ官吏ノ錄製シタル證書ハ公正ナリ
證書ハ之ヲ受ケタル公吏カ場所、證書ノ性質及ヒ其證書ニ關係スル人トニ付キ管轄ヲ有シ且一時無能力ノ形狀ニ在ラスシテ法律ニ定メタル方式ニ從ヒテ之ヲ作リタルニ非サレハ公正ナラス
公證人當事者ノ囑託ニ應ス可キ其他ノ公吏ノ管轄及ヒ其證書ノ方式ハ特別法及ヒ規則ヲ以テ之ヲ定ム
(松岡)
官廳ノ代人ト云フハ如何
(箕作)
府廳ニ在テハ知事郡區ニ在テハ郡區長ヲ云フベシ
(松岡)
公正證書ノ定義トシテ示シタル本條第二項ハ不備ナルニアラズヤ官廳ノ代人ト云ヘバ單ニ役人ト云フ意義トナルベケレバナリ
(淸岡)
囑託ニ應ズベキト云フハ公吏ノ囑託ニ應ズベキト云フ義カ
(栗塚)
當事者ノ囑託ニ應ズベキ公吏ヲ云フ
(箕作)
公證人其他當事者ノ囑託ニ應ズ可キ公吏ノ管轄及ビ其證書ノ方式ハ特別法ヲ以テ之ヲ定ムトシテハ如何
可決ス
(栗塚)
第二項ハ官吏其資格ヲ以テ錄製シタル證書ト云フ義ナリ
(松岡)
此點ハ民法上ノモノナレバ知事ノ作製シタル書面ハ公正證書ト云フヲ得ズ知事人民トノ爭ヒアル場合ニ於テ自ラ作製シタルモノヲモ之ヲ公正證書トスルニ至テハ不都合ト云フベシ
(南部)
布吿及ビ布達ノ如キハ公正證書ト云フベシ
(松岡)
此點ハ起案者ニ質問シタシ
(村田)
第一項ハ公正證書ハ公證人其公吏ガトシテハ如何
(栗塚)
末項ニ記示アルヲ以テ自ラ明カナリ
(淸岡)
證書ハ之ヲ受ケタル公吏ガ云シトアルハ如何
(栗塚)
證書ハ其作製ヲ申出ラレタル公吏ガ云々ト云フ義ナリ
(淸岡)
「之ヲ受ケタル」ノ文字ハ刪除スベシ
可決ス
(村田)
一時無能力ト云フハ如何
(栗塚)
公證人タル夫ハ公證人タリシ間其婦ノ爲メニハ公證スルヲ得ザル如キ是ナリ
第千三百八十三條 前條ニ從ヒテ作リタル證書ハ僞造ノ訴アルマテハ公吏自身ニテ又ハ其面前ニテ爲シタル事實及ヒ申述ニ付キ其吏員ノ總テノ陳述ノ證ヲ爲ス
此證書ハ之ニ記載シタル日附ニ付キ右同一ノ證ヲ爲ス
公吏ノ名ニテ作リ且其署名及ヒ印章ヲ具ヘタル證書ハ僞造ノ訴アルマテハ其吏員ヨリ出テタルモノト推定ス
僞造ノ訴ノ手續ハ民事訴訟法ニ於テ之ヲ規定ス
(箕作)
其吏員ト云フハ如何
(南部)
公吏ヲ指スベシ
(今村)
本條及ビ次條ハ訴訟法ノ關係ニ付キ僞造ノ訴トアルヲ僞造ノ主張トセラレタシ訴ト云ヘバ中間判決ニ於テスルヲ得ザレバナリ
(元尾崎)
第二項ハ確定日附ノ議決ニ至ル迄市木定ニ附スベシ其議ニ決ス
(栗塚)
僞造ノ訴ヲ僞造ノ申立トシテハ如何
(松岡)
個ハ中間判決ノミニ止ムラザル場合アルベシ
(今村)
其補員ハ訴訟法第三百六十八條ニ規定アリ僞造ノ訴トスルトキハ訴訟法中別ニ其手續ヲ規定セザルヲ得ザレバナリ
結局僞造申立トスルニ可決ス
(箕作)
第一項事實ノ文字ハ行爲トシタシ
可決ス
(松岡)
總テノト云ヘル文字ハ刪除スベシ
(栗塚)
總テノト云フハ徹頭徹尾ト云フ義ナリ
(元尾崎)
「總テノ」ハ削除スベシ
可決ス
第千三百八十四條 追認アリタル私署證書ノ證據力ヲ僞造ノ訴ニ因リテ中止スルコトニ關スル第千三百四十八條ノ規定ハ公正證書ニ之ヲ適用ス
主要ノ文言ト直接又ハ間接ノ關係アル各箇ノ說明ニ關スル第千三百四十七條モ亦同シ本條第一項僞造ノ訴トアルヲ僞造ノ申立トシ第二項主要ノ言ハ主文トシ說明ヲ文言トス
(南部)
各個ノト云フ文字ハ必要ヲ見ズ卽チ刪除ニ決ス
(松岡)
僞造ノ申立ニ因リテ中止スルコトニ關スル第千三百四十八條ノ規定ト云ヘルハ前條ニ之ヲ民事訴訟法ニ規定ストシタレバ別ニ記示スルニ及バザルベシ
(南部)
證據力ノ中止サルルモノハ之ヲ記示セザルベカラズ
結局第一項ハ公正證書ノ證據力ハ僞造ノ申立ニ因リ之ヲ停止ストシ第二項ハ主文ト直接又ハ間接ノ關係アル文言ニ關シテハ第千三百四十七條ノ規定ヲ適用ストスルニ可決ス
第千三百八十五條 證書ニ公正證書トシテ有効ナル爲メ上ニ定メタル條件ノ一ヲ缺クコトアルモ各當事者カ現實ニ之ニ署名シ又ハ捺印シタルトキハ其證書ハ第千三百四十一條及ヒ第千三百四十三條ニ定メタル條件ヲ履行セスト雖モ私署證書トシテ有効ナリ
無異議
第五節 反對證書
第千三百八十六條 當事者ハ秘密ニ存シ置ク可キ反對證書ヲ以テ公正證書又ハ私署證書ノ効力ノ全部又ハ一分ヲ變更シ又ハ滅却スルコトヲ得然レトモ其反對證書ハ公正證書又ハ確定ノ日附ヲ有スル私署ニ係ルトキト雖モ署名者及ヒ其相續人ニ對スルニ非サレハ効力ヲ有セス
然レトモ各當事者ノ債權者及ヒ特定名義ノ承繼人カ當事者ト約定スルニ當リ反對證書アルヲ知リタルコトノ證セラルルニ於テハ反對證書ヲ以テ其債權者及ヒ承繼人ニ對抗スルコトヲ得
(元尾崎)
秘密ニ存シ置ク可キト云フハ如何
(栗塚)
返リ證文ノ外見ヲ忌ムモノノ如シ
(栗塚)
私署證書ニ係ルトアルヲ私署證書タルトスベシ
可決ス
(渡)
第二項反對證書ヲ以テトアルハ之ヲ以テトスベシ
可決ス
(箕作)
反對證書アルヲ知リタルコトノ證セラルルニ於テハトアルヲ反對證書アルヲ知リタル證アルニ於テハトスベシ
可決ス
第千三百八十七條 不動產權利ニ關スル反對證書カ或ハ登記、記入ニ因リ或ハ其縁邊附記ニ因リテ公ニ爲サレタルトキハ其反對證書ハ通常ノ効力ヲ取得ス
(村田)
表題證書ノ通常ノ効力ト云ヘルヲ通常證書ノトスベシ
可決ス
第千三百八十八條 總テノ場合ニ於テ各當事者ノ一般及ヒ特別ノ承繼人ハ他ノ當事者及ヒ其相續人ニ反對證書ヲ以テ對抗スルコトヲ得
(村田)
一般及ビ特別ト云ヘルハ總テノトシタシ
(栗塚)
孰レノ場合ニ於テ各當事者ノ總テノトスルヲ可トス
可決ス
第六節 追認證書
第千三百八十九條 當事者ノ一方カ從來ノ公正又ハ私署ノ證書ノ成立ヲ己レニ對シテ追認スル證書ナリ
右ノ證書ハ債權者ヲシテ其原證書ヲ差出スノ義務ヲ免カレシメス又其證書中ニ原證書ヨリ更ニ多ク又ハ更ニ少ナキ事項ヲ記シ又ハ之ト異ナリタル事項ヲ記スモノハ其効ナシ
(栗塚)
本條ハ第一項冒頭ニ追認證書ハノ文字ヲ冠セシムベキヲ誤脫セリ本項ハ追認證書ハ當事者ノ一方ガ己レニ不利ナル公正又ハ私署ノ原證書ノ成立ヲ追認スル證書ナリトス
第千三百九十條 然レトモ左ノ三箇ノ場合ニ於テハ追認證書ハ原證書ニ代ハルモノトス
第一 追認證書ニ原證書ノ包有事項ヲ再揭シタル旨ヲ記載スルトキ
第二 追認證書ニ之ヲ原證書ニ代用ス可キ旨ヲ明示スルトキ
第三 追認證書ノ日附ヨリ二十箇年ヲ經過シ且債權者カ其證書ノミヲ既ニ權利ノ行使ニ用ヒタルトキ
(元尾崎)
包有事項ハ旨趣トセズ此儘ニ措キタシ
(松岡)
包有ノ二字ヲ刪除シ原證書ノ事項ヲトスベシ
(村田)
包有事項ハ渾テ事項トスベキヤ
(松岡)
本條ノミ事項ト爲シ其他ハ各本條ノ適宜ニ從フベシ
第千三百九十一條 前記ノ場合ノ外債權者カ原證書ヲ差出スコトヲ得サルトキハ追認證書ハ其利益ニ於テハ書面ニ因ル證據端緒トシテ有効ナリ
總テノ場合ニ於テ追認證書ハ時効ヲ中斷ス
無異議
第七節 證書ノ寫
第千三百九十二條 證書ノ寫ハ之ヲ援用スル者ヲシテ其正本ヲ差出スノ義務ヲ免カレシメス但其者カ正本ノ滅失ヲ證シタルトキハ此限ニ在ラス
公正ノ正本又ハ裁判上追認アリタル私署ノ正本カ公吏ノ原本中ニ藏メラレタルトキハ裁判所ヘ其正本ヲ差出スコトハ民事訴訟法及ヒ公吏ノ規則ニ從ヒ裁判所ノ定メタル方式及ヒ條件ヲ以テ之ヲ爲ス
(松岡)
第二項公吏ノ規則ニ從ヒ裁判所ノ定メタル方式及ビ條件ヲ以テ之ヲ爲ストアルヲ公吏ノ規則ニ從ヒ之ヲ爲ストシタシ
(栗塚)
公吏ノ規則ニ從ヒテ之ヲ爲ストスベシ
可決ス
第千三百九十三條 正本ノ滅失シタルトキ其寫ハ左ノ四箇ノ場合ニ於テハ正本ト同一ノ證據力ヲ有ス
第一 公正證書ヲ受ケタル公吏ノ作リシ正式謄本タルトキ
第二 公正證書又ハ裁判上追認アリタル私署證書ニシテ公吏ノ原本中ニ藏メタルモノヽ寫ヲ當事者ノ要求ニ因リ其面前ニテ其公吏ノ作リタルトキ
第三 適法ニ正本ヲ預カリタル公吏カ裁判所ノ命ニ依リ當事者出席ノ上又ハ合式ニ之ヲ召喚シタル上ニテ其寫ヲ作リタルトキ
第四 右三箇ノ場合ノ外適法ニ正本ヲ預カリタル公吏ノ作リシ寫カ異議ヲ受ケスシテ其日附ヨリ二十箇年ヲ經過シタルトキ
寫ニハ左ノ諸件ヲ附記スルコトヲ要ス
右第一ノ場合ニ於テハ其寫ハ正式謄本タルコト
右第二ノ場合ニ於テハ當事者ノ出席シタルコト
右第三ノ場合ニ於テハ當事者ヲ裁判所ノ命ニ依リテ召喚シタルコト及ヒ當事者ノ出席シ又ハ出席セサリシコト
總テノ場合ニ於テ其寫ヲ正本ト校合シタル旨又ハ其寫ノ正本ニ符合スル旨ヲ之ニ附記スルコトヲ要ス
(南部)
本條ハ第一ノ公正證書ヲ受ケタルトアル受ケタルノ文字ハ除去スベシ
(栗塚)
公正證書ヲ受ケタルト云ヘル數字ヲ除去シテ可ナリ
結局公吏ノ作リシ公正證書ノ正式謄本タルトキトス
(松岡)
第二其面前ニテ其公吏トアル公吏ノ上其ノ文字ハ刪除シテハ如何
(箕作)
其公吏ト云ハザレバ他ノ公吏ト雖ドモ之ヲ爲スヲ得ベキヤノ嫌ヒアリ
(栗塚)
右第二右第三トアル「右」ヲ刪除スベシ
可決ス
(松岡)
第三ハ如何ナル場合ニ此規定ニ依ルヤ
(箕作)
第二ト第三トハ相類似シタル規定ニシテ第二ノ場合ハ當事者ノ出席シタルトキヲ云ヒ第三ハ當事者ノ出席セザル場合ヲ云フニアルベシ若シ當事者出席シタルトキハ第二ノ場合ト異ルコトナシ第二其面前ニテトアルヲ其双方ノ面前ニテトスベシ
可決ス
(栗塚)
第三ハ公吏ガ裁判所ノ命ニ依リ其寫ヲ作リタルトキトスベシ
可決ス
(箕作)
第四ハ右三箇ノ場合ノ外公吏ノ作リシ寫ガ云々トシ第三項ハ當事者ノ出席シタルコトトアルヲ當事者ノ面前ニテ作リタルコトトシ第四項ハ裁判所ノ上當事者ヲノ文字ヲ刪リ命ニ依リノ下ハ作リタルコトトシテハ如何
可決ス
第千三百九十四條 前條ニ記載シタル四箇ノ場合ノ外ハ公吏ノ作リタル證書ノ寫ハ書面ニ因ル證據端緒ノ用ヲ爲スノミ
無異議
第千三百九十五條 公吏ノ作リタル寫ノ複寫ハ人證ヲ許ス可キ場合ニ限リ單純ナル參考書ノ用ヲ爲スノミ
然レトモ登記又ハ記入ノ公簿ニ於ケル公正證書ノ寫又ハ謄本ノ附記ハ書面ニ因ル證據端緒ナリ
裁判上追認アリタル私署證書ノ正本ノ右ニ同シキ寫又ハ附記ハ亦書面ニ因ル證據端緒ノ効力ノミヲ有ス然レトモ寫カ全文ノモノニシテ且異議ヲ受クルコト無ク其日附ヨリ二十箇年ヲ經過シタルトキハ其寫ハ第千三百九十三條第四號ニ從ヒテ完全ノ證トス
(元尾崎)
本條第二項ハ如何
(箕作)
公正證書ノ登記又ハ記入ハ書面ニ因ル證據端緒ナリト云フ義ナリ
(栗塚)
謄本ノ寫又ハ附記ト云フ義ナリ
結局然レドモ公正證書ノ謄本ヲ登記又ハ記入ノ公簿ニ寫又ハ附記シタルトキハ其寫又ハ附記ハ書面ニ因ル證據端緒ナリトスルニ決ス
(箕作)
然レドモ寫ガ全文ノモノニシテトアル全ノ義ハ登記官吏ノ寫ヲ云フベキヤ
(栗塚)
然リ
(箕作)
然レドモ以下前條第四ノ場合ニ該當スルヤ蓋シ否ラザルベシ
(栗塚)
然レドモヲ刪リ寫ガ以下ヲ別項トシテハ如何可決ス
第八節 證人陳述
第千三百九十六條 物權又ハ人權ヲ創設シ、移轉シ、變更シ又ハ消滅セシムル性質アル總テノ所爲ニ付テハ其所爲ヨリ各當事者又ハ其一方ノ爲メニ生スル利益カ當時五十圓ノ價額ヲ超過スルトキハ公正證書又ハ私署證書ヲ作ルコトヲ要ス
人證ハ右ノ價額ヲ超過セサルトキ又ハ法律上明示若クハ默示ニテ例外ト爲シタルトキニ非サレハ裁判所之ヲ受理セス但此事ニ關シ商法ニ定メタルモノハ此限ニ在ラス
(南部)
第二項但書ハ除去スベシ商法ニモ五十圓ヲ限度トシタレバ但書ノ必要ヲ見ズ卽チ但以下刪除ニ可決ス
第千三百九十七條 双務契約ニ於テハ證書ノ必要ニ付テハ最高ナル權利ノ價額ノミヲ考察ス然レトモ第七百六十六條ノ明文ニ從ヒテ無形人ノ性質ヲ有スル會社ニ於テハ其關係アル利益ノ評價ハ會社資本ノ全額ニ付キ之ヲ爲ス
(村田)
本條第二項ハ如何
(栗塚)
個ハ會社卽チ無形人ノ場合ナルヲ以テ其資本ノ評價ヲ目度トスベシ然ルニ會社ニシテ五十圓以下ノ成立ニ係ルモノアリヤ佛蘭西ニ於テモ骨牌ノ玩弄ヲ爲ス會社ノ如キハ些少ノ資本ニテ成立セリ
(松岡)
第一項ハ双務契約ニ於ケル證書ノ必要ハ最高ナル權利ノ價額ノミニ依ルトシタシ
可決ス
第千三百九十八條 請求ノ目的カ金額ニ非サル場合ニ於テ被吿カ爭ノ價額五十圓ヲ超過スル旨ヲ陳述シテ人證ニ異議ヲ申立ツルトキハ裁判所ハ訴訟ノ元素ニ從ヒ又ハ鑑定ニ從ヒテ豫メ假ノ評價ヲ爲ス
(箕作)
元素ト云フ文字ハ妥當ナリヤ
(栗塚)
事情トシテハ如何
(箕作)
訴訟ノ原因ヲ指スベシ
(南部)
目的トシテハ如何
可決ス
第千三百九十九條 書面ヲ作リタル場合ニ於テハ書面ニ反スル事項若クハ書面外ノ事項ヲ證スル爲メ又ハ書面ノ意義ヲ變更ス可キ樣其錄製ノ際若クハ其前後ニ申述シタルモノヲ證スル爲メニハ縱令五十圓ヨリ少ナキ利益ニ關スルモ人證ヲ許サス
此禁止ハ辨濟、免除、更改其他ノ義務消滅ノ原因ヲ證スル爲メ又ハ書面ヲ以テ證シタル權利ノ日後ノ變更ヲ證スル爲メ上ニ定メタル制限内ニ於ケル人證ヲ阻却セス
總テノ場合ニ於テ主張セラレタル事實ノ日附及ヒ場所又ハ履行ノ爲メニ定メタル時期及ヒ場所ノ脫漏ハ人證ヲ以テ之ヲ補足スルコトヲ得但此事ヨリ生スル利益ヲ主タル利益ニ加ヘテ價額五十圓ヲ超過セサルトキニ限ル
(元尾崎)
時期及ビ場所ノ脫漏ハ五十圓以上ナルトキハ人證ヲ以テ之ヲ補足スルコトヲ得ザルト云フハ如何元來證書アルトキハ五十圓ヲ超過スルト否トニ依ラズ人證ヲ許スベキニ時期及ビ場所ノ脫漏ハ五十圓以下ニ非ザレバ人證ヲ許サズト云フハ事理不通ト云フベシ
(松岡)
證書ハ人證ニ依リ之ヲ破ルヲ得ザルモ其時期及ビ場所ノ脫漏ハ人證ニ依テ變揺スルヲ得ベケレバナリ
(淸岡)
阻却セズト云ヘルハ如何
(委員長)
妨ゲズノ義ナリ
(淸岡)
妨ゲズトシタシ
可決ス
第千四百條 爭ノ利益カ五十圓ヲ超過スル場合ニ於テハ原吿ハ縱令其以下ノ數額ニ請求ヲ減スルモ證人ヲ以テ之ヲ證スルコトヲ得ス
五十圓ヲ超過セサル價額ノ請求カ此數額ヲ超過シタル價額ノ殘餘ナルトキモ亦同シ
(村田)
數額ト云ヘルハ金錢ノミニ止マラザルニ因ルヤ
(栗塚)
然リ
第千四百一條 前條ニ規定シタル二箇ノ場合ニ於テ人證ノ効ニ依リ最初五十圓ヲ超過シタル利益ナルコトヲ發見シタルトキハ人證ヲ許シタル裁判所ハ之ヲ取消スコトヲ要ス
此他人證ニ依リ法律上之ヲ許ササル事情ヲ發見シタル場合ニ於テモ亦同シ
(村田)
最初ト云ヘルハ本來ト云フ義ニ非ズヤ
(松岡)
本條ハ第二項ノ明記ヲ必要トスルカ
(栗塚)
不動產質ノ如キハ五十圓以下ト雖モ證書ノ必要アリ
(松岡)
取消ノ言渡ハ相手方ノ申立アルニアラザレバ職權ヲ以テスルヲ得ザルベシ
(箕作)
然リ
(栗塚)
人證ノ効ニ依リトアルハ證人訊問ニ因リトシテハ如何訴訟法ニ證人訊問アルニ依レリ
可決ス
(箕作)
第二項ノ人證ニ依リトアルモ證人訊問ニ因リトスベシ
可決ス
第千四百二條 前記ノ規定ハ塡補利息又ハ過怠約款ヲ加フルカ爲メニ五十圓ノ額ヲ超過スル場合ニ於テ原吿カ證人ヲ以テ其主タル債權ヲ證スル爲メ此ノ從タル債權ヲ抛棄シ得ルノ妨ト爲ラス
右超過カ遲延利息又ハ要約セサル損害賠償ノミヨリ生スルトキハ全部ニ付キ人證ヲ許ス
(箕作)
塡補利息ト云フモ過怠約款ト云ヘルモ其性質ハ同一意ナリ
(栗塚)
右超過トアルハ右ノ超過ガトスベシ
可決ス
(本多)
塡補利息ト云フハ如何
(栗塚)
遲延利息ノ反對ニシテ最初契約ヲ爲シ置キタルモノニ係ルベシ
第千四百三條 書面ニ依リ全ク證セラレスシテ人證ノ許サル可キ數箇ノ請求ヲ爲スコトヲ得ヘキ者ハ其原因ノ如何ニ拘ハラス一箇ノ訴狀ニ其數箇ノ請求ヲ併合スルヲ要ス但其請求カ總テ滿期ノモノニシテ同一裁判所ノ管轄ニ屬スルモノタルトキニ限ル
右ノ手續ヲ爲ササルニ於テハ最早其脫漏シタル請求ヲ證人ヲ以テ證スルコトヲ得ス
(元尾崎)
本條ハ例ヘバ貸金催促トスレバ其數箇ヲ合併スルヲ得ト云フ義ナリヤ
(栗塚)
例ヘバ百圓額ノ請求ニ付キ之ヲ三分シテ三十三圓餘額トスルヲ得ザルモノニシテ要スルニ可成證書ニ依ラシムルト云フ義ナリ
(元尾崎)
貸方百圓額ヲ請求セントスルニ證書ニ依ラザラントスルヲ爲サシメザル禁止ナルベシ
(松岡)
貸金又ハ賣懸代金ノ如キ原因ノ異ナル請求額アルニ之ヲ合併シテ書面證ヲ作製セシメントスルハ不都合ナリ請求額ノ原因異ナル場合ニ於テハ合計五十圓以上ナルモ人證ヲ許サザルヲ得ザルナリ
(元尾崎)
個ハ本條ノ目的外ニ於ケル事實ニ延及スルノ虞アリ
(南部)
數箇ノ請求ヲ爲ス者ハ一箇ノ訴狀ニ其數箇ノ請求ヲ合併スルヲ要ストシテハ如何
(箕作)
本條ハ原因ノ如何ナルニ拘ハラズト云ヘルハ原因ノ同一ナルトキハトスルヲ得ザルヤ尙ホ起案者ニ質問シタシ其議ニ決ス
第千四百四條 當事者ノ一方カ他ノ一方ニ對シテ數箇ノ別異ナル權利ヲ利唱シ之ヲ併合スレハ五十圓ノ價額ヲ超過スルトキハ此ノ權利ヲ併合シ證人ヲ以テ之ヲ證スルコトヲ得ス但此權利カ相異ナレル人及ヒ相異ナレル原因ヨリ生スルトキハ此限ニ在ラス
(松岡)
本條ハ前條ノ意義ト異ナラス又但以下ハ殆ンド記示スルヲ要セザルベシ
(南部)
但以下「相異ナル人及ヒ」ノ文字ハ過誤ノ修正ニアラズヤ
(栗塚)
然リ刪除スベシ
(松岡)
本條ハ其修正ニ依リ明了ナレバ前條ハ冗文ナリトス
(箕作)
數箇ノ別異ナルトアル別異ナルノ文字ハ刪除シテ可ナリ刪除ニ決ス
(松岡)
前條ト本條トハ前後互ニ轉置シテハ如何然スルトキハ敢テ不都合ナシ
(箕作)
轉置スルモ可ナリト雖モ其爲メニ明了ナリト思惟スルヲ得ザレバ一應質問スルヲ可トス其議ニ決ス
第千四百五條 左ノ場合ニ於テハ爭ノ價額ノ如何ニ拘ハラス又書面外ノ事項又ハ書面ニ反スル事項ヲ證セントスルトキト雖モ人證ヲ許ス
第一 書面ニ因ル證據端緒ノ存スルトキ證據端緒トハ之ヲ以テセラルル人又ハ其人ヲ代表シタル者ヨリ出テタル總テノ書面ニシテ主張シタル事柄ヲ實ラシク爲スモノヲ謂フ
第二 債權者カ自白ノ過失又ハ懈怠ニ歸ス可カラサル不可抗力又ハ意外ノ事ニ因リ其證書ヲ失ヒタルコトヲ證スルトキ
第三 主張シタル事柄ノ有リタル當時原吿カ書證ヲ得ル能ハサリシトキ
(南部)
第一ニ之ヲ以テセラルル人トアルハ之ヲ以テ對抗セラルル人トスベキ誤ナリ
(箕作)
證據端緒トハ云々ハ第一ノ別項トスルカ又ハ刪除シテハ如何
(栗塚)
他ニ證據端緒ノ說明ナキヲ以テ別項トシテ存置スベシ
可決ス
(淸岡)
實ラシクト云フ詞ハ虛僞ノ意味トナルベシ
(箕作)
事實ニ近カラシムルトシテハ如何
(尾崎)
端緒ナルニ依リ實ラシクト云フヲ可トス
(栗塚)
實ラシクスルモノトシテハ如何
可決ス
第千四百六條 前條第三號ノ例外ハ殊ニ左ノ場合ニ之ヲ適用ス
第九百十六條及ヒ第九百十七條第一項ニ規定シタル急迫寄託
事變、不期ノ危險又ハ急迫ナル必要ノ場合ニ於テ負擔シタル義務
合意以外ノ原因ヲ有スル義務
然レトモ此末ノ場合ニ於テ不當ノ利得、不正ノ損害又ハ法律ノ規定ヨリ生シタリト主張スル義務カ書面ヲ以テ證ス可キ性質ノモノタル權利行爲ヲ豫想セシムルトキハ豫メ此證ヲ供スルコトヲ要ス
無異議
第千四百七條 法律カ人證ヲ許ス場合ノ外人證ヲ爭フニ利益ヲ有スル當事者カ人證ニ依リテ證ヲ立ツルコトヲ承諾スルトキハ裁判所ハ人證ヲ拒絕シ又ハ事件ヲ簡單ナリト思料スルトキハ之ヲ許スコトヲ得但人證ヲ許シタルトキハ簡略ナル證人訊問ノ方式ノミヲ以テス可シ
(箕作)
訴訟法ニ簡略ナル證人訊問ノ手續アリヤ
(今村)
其手續ナシ證人訊問ト云ヘバ既ニ簡略ナルモノトス
(松岡)
但以下ハ刪除シタシ
可決ス
(箕作)
又ハ事件ヲ簡單ナリト思料スルトキハ之ヲ許スコトヲ得トアルヲ又ハ之ヲ許スコトヲ得トシタシ
可決ス
第千四百八條 證人ハ陳述ヲ爲スニ先チ誠實ノ陳述ヲ爲スヘキコトニ付キ定マリタル方式ニ從テ誓ヲ爲ス
證人訊問竝ニ反證人訊問ノ方式期間ニ關スル規則、證人ヲ以テ證ス可キ事實ニ於テ必要ナル性質及ヒ證人ノ忌避又ハ異議ノ原由ハ民事訴訟法ニ之ヲ定ム
(栗塚)
本條ハ訴訟法ニ明記スベキ條目ニ付キ刪除サレタシ
(今村)
此意義ハ訴訟法第三百六條ニ規示セリ刪除ニ決ス
第千四百九條 相手方ノ利益ニ於テ反證人訊問ノ方法ニ依リ證人ヲ差出シタルト否トヲ問ハス又當事者ノ一方及ヒ他ノ一方ヨリ差出シタル證人ノ員數竝ニ分限ノ如何ニ拘ハラス證人訊問カ終結シテ其證人カ有効ニ忌避セラレス又ハ異議ヲ申立テラレサルトキト判事ハ證人ノ證ニ因リテ拘束セラレス其心證ニ從ヒテ裁決ス
(栗塚)
本條ハ判事ハ證人ノ證ニ因リ以上ヲ刪除シタシ
可決ス
第九節 世評
第千四百十條 法律上特ニ世評ニ因ル證ヲ許ス場合ノ外法律カ其規定ヲ或ル事實カ顯著ナルトキ其事實ニ適用ス可キコトヲ定メタル各箇ノ場合ニ於テハ此證ヲ用フルコトヲ得
世評ニ因ル證ニ於テハ證人ハ事實ニ付キ直接ニ自ラ知ラサルモ公然顯著ナルニ因リテ知リタル所ノモノヲ陳述スルコトヲ得
(栗塚)
本條ハ法律ガ其規定ヲ或ル事實ガ顯著ナルトキト云ヘルノ指ス處如何ト云フニ付キ當時起案者ニ質問中ニ係レルヲ以テ追テ報吿スベシ
第三章 間接證據
第千四百十一條 間接證據ナル推定ハ法律カ直接證據ナキ場合ニ於テ知レタル事實ヨリ知レサル事實ニ自ラ推及シ又ハ裁判官ノ明識ト思慮トニ委ヌル結果ナリ
右第一ノ推定ヲ法律上ノ推定ト謂ヒ第二ノ推定ヲ事實ノ推定ト謂フ
無異議
第一節 法律上ノ推定
第千四百十二條 法律上ノ推定ニハ其證據力ト其原因トニ從ヒテ左ノ區別アリ
第一 完全ニシテ公益ニ關スルモノ
第二 完全ニシテ私益ニ關スルモノ
第三 單純ナルモノ
無異議
第一款 公益ニ關スル完全ナル法律上ノ推定
第千四百十三條 公益ニ關スル完全ナル法律上ノ推定ハ法律ノ明示シテ定メタル場合及ヒ方法ニ從フニ非サレハ反對ノ證ヲ許サス此推定ハ左ノ如シ
第一 既判力
第二 取得又ハ免責ノ時効
(村田)
公益ニ關スルト云フハ如何ナル意義ナリヤ
(栗塚)
裁判ニ對シテ之ヲ錯誤ナリト云ヒ或ハ免責時効ニ係リシニ其時効ニ服セザル如キハ公益ニ關スルモノトス
第千四百十四條 既判力ハ眞正ト推定セラル
然レトモ確定ト爲ラサル判決ハ民事訴訟法ニ定メタル方式及ヒ期間ニ於テ之ヲ攻撃スルコトヲ得
無異議
第千四百十五條 判決ノ確定ト爲リタルトキ同一ノ爭ヲ再ヒ訴フルニ於テハ其爭ハ既判力ニ依リテ斥ケラル
(松岡)
斥ケラルト云ヘルハ之ヲ斥クトシタシ
可決ス
第千四百十六條 請求カ全部又ハ一部ニ付キ公ノ秩序ニ關スルトキハ既判力ニ因ル不受理ノ理由ハ裁判所職權ヲ以テ之ヲ補足スルコトヲ得
此他ノ場合ニ於テハ利害關係人ヨリ其不受理ノ理由ヲ以テ對抗スルコトヲ要ス
(元尾崎)
裁判所職權ヲ以テ之ヲ補足スルコトヲ得ト云フハ裁判所ガ右ノ理由ニ因リ却下スルモノナリトノ言渡スルヲ云フナラン
(松岡)
前條ニ於テ一事再理セザルノ原則ヲ示シタル以上ハ本條ノ規定ヲ置ク可キ必要ナシ
(箕作)
本條ハ刪除シテ可ナリ
(栗塚)
刪除ハ次日迄待レタシ其議ニ決ス
第千四百十七條 既判力ノ抗辯ヲ以テ新請求ニ對抗スルヲ得ルニハ其請求カ舊請求ニ比較シテ左ノ諸件アルコトヲ要ス
第一 目的又ハ權利ノ同一ナルコト
第二 權利ノ原由ノ同一ナルコト
第三 原吿被吿ノ權利上ノ資格ノ同一ナルコト
(栗塚)
原由ハ原因ノ誤ナリ
第千四百十八條 新請求ノ目的カ數量ニ付テノミ舊請求ノ目的ト異ナリタルトキハ新請求ノ目的ハ舊請求ニ包含シタルモノト看做サル但舊請求ノ結論ニ依レハ其判事カ此數量ヲ許與スルノ權力ヲ有セシトキニ限ル
(松岡)
但書以下ハ刪除セラレタシ口頭辯論ノ後「コンクルシヨン」ノ手續アラザレバナリ
(箕作)
此數量ト云フハ舊請求ノ數量ナリヤ
(栗塚)
然リ
(元尾崎)
新請求ノ數量ナルベシ
(松岡)
最初金額五十圓ニ對スル請求ヲ爲シ次後九十圓ノ請求ヲ爲シタレバ區裁判所ニ在テハ權限内ニアルモノナレバ之ヲ裁判スルコトヲ得ベシ
(栗塚)
但以下ハ但舊請求ヲ裁判セシ判事ガ新請求ノ數量ヲ許與スルノ權力ヲ有セシトキニ限ルトシテハ如何
(箕作)
新請求ヲ正當ナリトスレバ之ヲ許與スルノ權力ト云フ義ナラン
(栗塚)
然リ
(元尾崎)
新請求ノ數量ヲ正當トスルニ於テハ之ヲ許與スルノ權力云々トスベシ
可決ス
第千四百十九條 舊請求カ合意又ハ遺言ノ銷除、廢罷又ハ解除ヲ目的トシタルトキハ其請求ノ際成立シタルモ原吿ノ知リテ申立テサリシ訴ノ原因ハ原吿之ヲ抛棄シタリト推定セラレ更ニ之ヲ新請求ノ原因トシテ用フルコトヲ得ス
方式ノ瑕疵ニ基因シタル行爲ノ無効ニ於ケル舊請求中ニ申立テサリシ他ノ方式ノ瑕疵ニ付テモ亦同シ
本條ノ適用ニ於テ銷除又ハ無効ノ訴ノ爲メニハ承諾ノ各種ノ瑕疵及ヒ各種ノ無能力ヲ同性質ノ原因ト看做シ又解除ノ訴ノ爲メニハ合意不履行ノ各種ノ場合ヲ同性質ノ原因ト看做ス
(松岡)
第二項行爲ノ無効ニ於ケルトアルハ行爲ヲ無効トスルトシテハ如何
可決ス
(松岡)
第三項銷除又ハ無効ノ訴トアル銷除又ハヲ刪除シタシ
(南部)
「又ハ無効」ヲ刪除スベシ
可決ス
(元尾崎)
第一項成立シタルモトアルハ何ノ成立ナリヤ
(南部)
訴ノ原因ヲ指スベシ
(元尾崎)
訴ノ原因ト云ヘルヲ訴ノ他ノ原因ノトシテ成立ノ上ニ移シタシ
(栗塚)
原案ノ儘ニシテ原因ノ上ニ他ノ字ヲ挿入スレバ可ナリ
可決ス
(松岡)
「本條ノ適用ニ於テ」ト云ヘル文字ハ刪除スベシ
(南部)
刪除スルヲ得ズ此等ノ文字ヲ記存シ置カザレバ他ノ場合ニモ適用セラル恐レアレバナリ
(尾崎)
他ノ原因ハノ上「訴ノ」ヲ刪除スベシ
可決ス
第千四百二十條 既判力ハ判決ノ式文ニ附着スルノミナラス判決ノ理由カ主張シタル權利ノ原因又ハ其原因ノ欠缺ニ出ツルトキハ其理由ニモ亦附着ス
(栗塚)
本條ハ理由ニモ既判力ヲ附着スト云フハ不都合ナリト云フニテ起案者ニ質問中ニ係レリ
(箕作)
判決ノ理由ニ既判力ナキコト當然ナリ故ニ起案者ノ答案ヲ待ツヲ要セザルベシ
(栗塚)
然ラバ本條ハ既判力ハ判決ノ主文ノミニ存ストシタシ
可決ス
(箕作)
斯ノ如ク本條ヲ修正スレバ第千四百十七條第二ト照應セザルニ付キ位置ヲ此儘ニ附スルヲ得ズ
(栗塚)
第千四百十三條ノ次ニ置クベシ
可決ス
第千四百二十一條 當事者カ或ハ自身ニテ同一ノ資格ヲ以テ既ニ舊訴訟ニ出テタルトキ或ハ舊訴訟ニ於テ其先主若クハ代理人ニ因リテ代表セラレタルトキ或ハ利害關係人ノ結合カ暗ニ相互代理ヲ包含スルトキハ當事者ノ權利上ノ資格ハ同一ナリトス
(箕作)
包含ノ文字ハ明了ナラザレバ修正シタシ
(栗塚)
代理タルトシテハ如何
可決ス
第千四百二十二條 刑事裁判所カ犯罪ノ所爲ノ爲メニ要求セシ民事上ノ賠償ニ付キ判決シタル場合ノ外重罪、輕罪又ハ違警罪ノ判決ハ犯罪ニ附着スル民事上ノ利益ニ付キ既判力ヲ有ス但犯罪所爲ノ眞實、其犯罪ノ性質及ヒ被吿人ノ罪責ニ付テノ裁判ニ關スルモノニ限ル
(箕作)
場合ノ外トアル下ニ尙ホノ文字ヲ入ルベシ
可決ス
(松岡)
本條ハ如何ナル意義ナリヤ
(栗塚)
私訴ハ公訴ト同時ニ判決ヲ受クルモノニシテ既判力ヲ有スルハ勿論尙ホ刑事上ノ判決ハ他日民事上ニ付キ對抗スルノ利益ヲ有スト云フニアリ
(村田)
但書ハ贓物ノ現ニ犯罪人ノ手裡ニ在ルトキニアラズヤ
(南部)
但書刪除ノ建議トアルハ既ニ刪除シアリ此但書ヲ刪除スベキ云々ニアラザルナリ
(尾崎)
本條ノ但書ハ必要ナシ
(松岡)
例ヘバ詐欺取財ト云フニ付キ刑事ノ裁判アリタルトキハ未ダ民事上ノ判決ナキモ民事上ニ於テ利益アルモノナレバ但書ハ存スベシ
第二款 私益ニ關スル完全ナル法律上ノ推定
第千四百二十三條 法律上ノ推定ハ法律カ或ル行爲ヲ其規定ニ觸ルルモノト推定シ定マリタル資格ノ人ノ爲メ之ヲ取消ス場合ニ於テハ私益ニ關スル完全ノモノタリ
此犯則ノ法律上ノ推定ハ法律ノ明示シテ定メタル場合及ヒ方法ニ從フニ非サレハ反對ノ證ヲ許サス
然レトモ此推定ハ口頭自白ヲ以テ何時ニテモ之ヲ覆ヘスコトヲ得
(松岡)
本條ハ第一項冒頭ニ私益ニ關スル完全ナル法律上ノ推定ハト云ヘル文字ヲ加ヘザレバ第千四百十三條ノ文例ト同シカラズ
(箕作)
第一項ノ末文ニ私益ニ關スル完全ノモノタリトアルニ依リ冒頭ニ加フルヲ得ズ
(南部)
資格ノ人ノ爲メト云ヘル文字ハ如何ナル種類ノ人ヲ指スカ當時起案者ニ質問中ナリ
(箕作)
定マリタル資格ノ人ト云ヘルハ醫士ノ如キヲ指スナラン
(元尾崎)
此犯則ノ法律上ノ推定ト云フハ如何
(箕作)
例ヘバ破產者ガ幾日前ニ財產ヲ贈與シタル如キ是ナリ
(南部)
第二項モ質問中ニ係レリ
第三款 單純ナル法律上ノ推定
第千四百二十四條 前記ノ法律上ノ推定ニ非サルモノハ單純ナル法律上ノ推定ナリ此推定ニ付テハ法律カ明示シテ反對ノ證ヲ留存セサルトキト雖トモ總テ之ヲ許ス
此他反對ノ證ハ前章ニ規定シタル如ク其各固有ナル法式及ヒ條件ヲ以テスルニ非サレハ之ヲ擧クルコトヲ得ス
又單純ナル法律上ノ推定ハ次條ノ場合ニ於テハ事實ノ推定ヲ以テ之ヲ駁撃スルコトヲ得
(元尾崎)
法律ガ明示シテト云ヘルハ必要ナリヤ
(南部)
單純ナル法律上ノ推定ハ法律ニ明示ナキ場合ト雖ドモ之ヲ許スベシト云フニアリ
(栗塚)
法律ガ反對ノ證ヲ明許セザルトキト雖モトスベシ
可決ス
(箕作)
第二項冒頭ノ此他ノトアルハ此反對ノ證トシテハ如何
(栗塚)
右反對ノ證人トスベシ
可決ス
(松岡)
第二項ハ如何ナル意義カ
(栗塚)
反對ノ證ハ直接證據ニアラザレバ推定ヲ以テスルヲ得ズト云フニアリ
(南部)
規定シタルノ下「如ク其各固有ナル」ノ文字ヲ刪除スベシ
可決ス
第二節 事實ノ推定
第千四百二十五條 法律カ裁判所ニ其決定ノ元素ヲ訴訟ノ事情ニ就キ採取スルコトヲ許ス特別ナル場合ノ外尙ホ裁判所ハ人證ヲ許ス可キ場合ニ於テハ何等ノ直接ノ證ヲモ擧ケサルトキト雖モ事情ヨリ生スル心證ニ從ヒテ爭ヲ決スルコトヲ得
(栗塚)
採取ハ釆取トスベシ採取ト云ヘバ春陽郊外ニ出デテ若葉ヲ摘ムト云フ場合ニ用ユル文字ナレバナリ
第二部 時効
第一章 時効ノ性質及ヒ適用
第千四百二十六條 時効ハ時ノ効力ト法律ニ定メタル其他ノ條件トヲ以テスル取得又ハ免責ノ法律上ノ推定ナリ但動產ノ瞬間時効ニ關シ第千四百八十一條以下ノ規定ヲ妨ケス
無異議
第千四百二十七條 正當ナル取得又ハ免責ノ推定ハ完全ニシテ公ノ秩序ニ關スルモノトス此推定ハ第千四百九十八條ノ如キ法律ノ定メタル場合及ヒ方法ニ從フニ非サレハ反對ノ證ヲ許サス
(南部)
第千四百九十八條ノ如キトアルハ第千四百九十八條ニ規定シタル如キトスベシ
可決ス
第千四百二十八條 取得時効ノ効力ハ占有ノ有益ニ始マリタル日ニ遡ル
免責時効ノ効力ハ債權者カ其權利ヲ第千四百六十一條以下ニ記載シタル區別ニ從ヒテ行フコトヲ得ヘカリシ日ニ遡ル
無異議
第千四百二十九條 或ル訴權ノ行使ノ爲メ法律ニ定メタル期間ハ其訴權ノ性質ニ因リテ取得時効又ハ免責時効ノ一般ノ規則ニ從フ但法律カ明示又ハ默示ニテ例外ヲ設ケタル場合ハ此限ニ在ラス
(南部)
損害賠償ノ如キハ免責時効ニシテ占有ノ訴ノ如キハ得取時効ナリ
第千四百三十條 時効ハ總テノ人ヨリ之ヲ援用スルコトヲ得
又時効ハ總テノ人ニ對シテ進行ス但法律ニ依リ時効停止ノ利益ヲ受クル人ニ對シテハ此限ニ在ラス
無異議
第千四百三十一條 總テ融通物ハ時効ニ罹ルコトヲ得但法律上之ニ異ナル規定ヲ設ケタルモノハ此限ニ在ラス
不融通物ハ時効ニ罹ルコトヲ得ス公有ノ財產ハ動產ト雖トモ亦同シ
(栗塚)
第二項ノ「公有ノ財產ハ動產ト雖トモ亦同シ」ハ刪除シタシ既ニ公有財產ハ不融通物ト云フ定メアレバナリ
(箕作)
法律上ト云フハ本法ナリヤ特別法ナリヤ
(栗塚)
特別法ヲ指スベシ
第千四百三十二條 自己ノ財產ニ付キ又ハ他人ニ對シ行フコトヲ得ル單純ナル權能ハ幾許ノ時期間之ヲ行ハサルモ爲メニ喪失セス但法律、合意又ハ遺言ニ於テ之ニ異ナル定ヲ設ケタル場合ハ此限ニ在ラス
(栗塚)
本條ハ隣地ヨリ水ヲ引入スルヲ得ル如キ場合ヲ云フ
(村田)
權能ト云フハ行フコトヲ得行ハザルコトヲモ得ベキ性質ノモノナリ
(松岡)
權利ハ強意ヲ有シ權能ハ弱意ヲ有セリ
第千四百三十三條 判事ハ職權ヲ以テ時効ヨリ生スル訴又ハ抗辯ノ方法ヲ補足スルコトヲ得ス時効ハ其條件ノ成就シタルカ爲メ利益ヲ受クル者ヨリ之ヲ申立ツルコトヲ要ス
(栗塚)
本條ハ時効ヨリ生ズル訴又ハ抗辯ノ方法トアルハ時効ヨリ生ズル方法ニシテ其方法ハ訴ニ依リ抗辯ニ依ルヲ得ベシト云フニアリ
第千四百三十四條 時効ヲ援用スルニ利益ヲ有スル當事者ノ總テノ承繼人ハ或ハ原吿ト爲リ或ハ被吿ト爲リ其當事者ノ權ニ基キテ時効ヲ援用スルコトヲ得
債權者ハ第三百五十九條ニ從ヒテ右ト同一ノ權利ヲ有ス
(委員長)
當事者ハ如何
(箕作)
當事者ハ勿論ナルベシ
第千四百三十五條 時効ハ訴訟中何時ニテモ之ヲ申立ツルコトヲ得又控訴ニ於テモ始メテ之ヲ申立ツルコトヲ得然レトモ上吿ニ於テハ之ヲ申立ツルコトヲ得ス
無異議
第千四百三十六條 年又ハ月ニ依リテ成就ス可キ時効ハ暦ニ從ヒテ之ヲ算ス
日ニ依リテ成就ス可キ時効ハ滿二十四時間ヲ一日ト爲シテ之ヲ算ス
時効ノ進行ノ始マリタル日又ハ其中斷若クハ停止ノ後再ヒ進行ノ始マリタル日ハ之ヲ算セス
最後ノ日ハ全ク經過スルコトヲ要ス
無異議
第二章 時効ノ抛棄
第千四百三十七條 時効ハ豫メ之ヲ抛棄スルコトヲ得ス但第千四百五十六條第二項ニ記スル如ク占有者カ將來ニ向ヒテ其占有ノ容假ヲ認ムルノ權利ニ妨ナシ
成就シタル時効ハ之ヲ抛棄スルコトヲ得又其進行中ト雖トモ既ニ經過シタル時期ノ利益ハ之ヲ抛棄スルコトヲ得
此場合ニ於テハ第千四百五十四條以下ニ記載セル相手方ノ權利ヲ追認シタル場合ニ於ケルト同シク時効ハ中斷セラル
(村田)
時効ヲ抛棄シタルトキハ中斷スベキ場合ナシ
(栗塚)
既ニ經過シタル時効ヲ抛棄シ將來ハ更新スベケレバ中斷アリ
(村田)
既往ノ時効ヲ抛棄スレバ將來ハ更新スベキニ付キ中斷スルニアラズ
(栗塚)
個ハ敢テ咎ムルニ及バザルベシ「中斷セラル」トアルヲ中斷ストスベシ
可決ス
第千四百三十八條 抛棄ハ默示タルコトヲ得ルト雖トモ明カニ事情ヨリ顯ハルルコトヲ要ス
(淸岡)
默示ハ事情ヨリ顯ハルルモノナリ
第千四百三十九條 成就シタル時効ヲ有効ニ抛棄スルニハ取得シタリト推定セラルル權利ヲ讓渡シ又ハ消滅シタリト推定セラルル義務ヲ負擔スルノ能力アルコトヲ要ス
(栗塚)
本條ハ取得時効ト免責時効トヲ示シタルモノナリ起案者ハ時効ヲ證據ノ一部分トシタル以上ハ本條ハ推定ノ文字ニ必要アリ注意セラレンコトヲ希望ス
(松岡)
取得シタリト推定セラルルト云ヒ消滅シタリト推定セラルルト云フ如キ文字ハ刪除シテハ如何
(淸岡)
刪除スベカラズ
第千四百四十條 債權者ハ其權利ヲ詐害シテ債務者ノ爲シタル時効ノ抛棄ニ對シテハ第三百六十條以下ニ定メタル條件及ヒ方法ニ從ヒ自己ノ名ヲ以テ之ヲ攻撃スルコトヲ得
無異議
第三章 時効ノ中斷
第千四百四十一條 經過シタル時期ノ利益カ下ニ記シタル原因ノ一ニ由リテ消滅スルトキハ時効ハ中斷セラル
中斷セラレタル時効ハ中斷ノ原因ノ止ミタル時ヨリ再ヒ進行ス
(栗塚)
本條ノ中斷セラルルト云ヘルモ中斷ストスベシ
(箕作)
中斷ノ文字ハ起案者モ之ヲ妥當ナリトセザレドモ停止トスルヲモ得ザレバ已ムヲ得ズ中斷トシタルナラン
(村田)
再ビ進行ストアルヲ更ニ進行ストセザレバ前後ヲ通算スルニ至ルノ不都合ヲ見ルベシ
(松岡)
更ニトスルヲ可トス
可決ス
第千四百四十二條 時効ノ中斷ハ自然ノモノ有リ法定ノモノ有リ自然ノ中斷ハ取得時効ニ關シテノミ生ス
法定ノ中斷ハ二種ノ時効ニ共通ナリ
無異議
第千四百四十三條 不動產ノ占有者又ハ動產及ヒ特定不動產ノ包括ノ占有者カ眞ノ所有者又ハ第三者ノ所爲ニ因リテ一箇年以上其占有ヲ奪ハレタルトキハ自然ノ中斷アリ
若シ占有ノ剥奪カ不可抗力ヨリ生スルトキハ自然ノ中斷ナシ
占有ヲ取回シタルトキハ新ナル時効ハ進行ヲ始ム
(栗塚)
本條第一項ハ不動產、動產包括又ハ特定動產ノ占有者云々トスベキ誤ナリ
(箕作)
動產ニハ包括アルモ不動產ニハ包括アラザルニ依リ然リ改正シタルモノナリヤ實ニ明瞭ナラズ依テ動產又ハ不動產ノ占有者云々トシテハ如何
可決ス
(村田)
第二百六十條ニ占有ノ侵奪トアリ
(箕作)
該條ノ場合ハ占有物ニ係ルモ本條ハ占有物ニアラズ
(村田)
取回ノ文字ハ回收トスベシ
(松岡)
第二項ハ若シ不可抗力ニ因リテ占有ヲ奪ハレタルトキハ自然ノ中斷ナシトシタシ
可決ス
(栗塚)
占有ヲ回收スルト云フハ回收訴權ニ紛レアルニ依リ占有ヲ取戻シタルトスベシ
可決ス
(箕作)
第二項及ビ第三項ハ互ニ轉置スルヲ可トス
可決ス
(栗塚)
時効ハ進行ヲ始ムトアルヲ時効ハ更ニ進行ストスベシ
可決ス
第千四百四十四條 自然ノ中斷ハ各利害關係人ノ爲メニ其効ヲ生ス
(元尾崎)
法廷上ノ中斷ハ各利害關係人ノ爲メニ其効ヲ生ゼザルヤ
(箕作)
法廷ノ中斷ハ申立人ノミニ其効アリ自然ノ中斷ハ各利害者ノ爲メニ効アリ恰モ物權ト人權トノ殊差アルガ如シ自然ノ中斷ノ場合ハ其物體ノ存在ヲ失シタルニアレバナリ
第千四百四十五條 占有者カ或ル時間任意ニテ其占有ヲ止メタルトキハ其占有不繼續ノ効力ハ第千四百七十五條ニ於テ之ヲ規定ス
無異議
第千四百四十六條 法定ノ中斷ハ左ノ諸件ヨリ生ス
第一 裁判上ノ請求
第二 勸解上ノ召喚又ハ任意出席
第三 執行文提示又ハ催吿
第四 差押
第五 任意ノ追認
右ノ手續又ハ追認ノ行爲カ時効ノ爲メ害ヲ受クル者ノ權利ニ關係スルコトヲ要ス
(箕作)
執行文提示ト云ヘルハ「コンマントマン」ノ意義カ
(栗塚)
督促書ヲ送致スベキ猶豫期間ハ之ヲ廢シタリ
第千四百四十七條 本訴ト支訴ト反訴トヲ問ハス裁判上ノ請求ハ時効ヲ中斷ス但其請求カ方式ニ於テ無効タリ又ハ管轄違ノ裁判所ニ之ヲ爲シタルトキモ亦同シ
然レトモ右但書ノ場合ニ於テ中斷ハ初ノ請求ヲ棄却セシ判決アリタル時ヨリ一ケ月内ニ更ニ合式ナル召喚ヲ爲ササルニ於テハ之ヲ不成立ト看做ス
(村田)
支訴ト云フ文字ハ新奇ナリ
(栗塚)
支訴ト云フハ附帶ノ訴ヲ指シタリ
(元尾崎)
本條第二項ハ刪除シタシ
(松岡)
一ケ月内以下ハ一ケ月内ニ更ニ訴ノ提起ヲ爲サザルニ於テハ之ヲ不成立ト看做ストセザレバ訴訟法ト牴觸スベシ斯ク修正シタ上ニテ刪否ヲ決セラレタシ
(南部)
然ルベシ
(元尾崎)
時効ノ意義ハ歳月ハ事件ヲ消滅セシムルト云フ原則ニ起ルモノナレバ管轄違若クハ方式無効タリシ如キニ依リ棄却後一ケ月内ニ訴ノ提起ヲ爲サザルモ未ダ之ヲ不成立ト看做スヲ得ズ
(松岡)
一ケ月ハ二ケ月トシテ本項ヲ存スベシ
可決ス
(南部)
支訴ノ文字ハ訴訟法ニ附帶ノ訴トアル旨意ニ付キ之ニ倣フベシ
可決ス
第千四百四十八條 中斷ハ左ノ場合ニ於テモ亦之ヲ不成立ト看做ス
第一 請求カ其基本ニ於テ棄却セラレタルトキ
第二 原吿カ取下ヲ爲シタルトキ
第三 訴訟カ民事訴訟法ニ定メタル時間其手續ヲ中止シタルニ因リテ無効ナリト宣言セラレタルトキ
(松岡)
佛國訴訟法ニハ原吿訟狀ヲ提出シタル儘三ケ年間等閑ニ附シ去リシトキハ其訴狀無効トナレリ我ガ訴訟法草案ハ如何
(今村)
訴訟法第百七十五條ニ依ルベシ我訴訟法ハ一ケ年ノ滿了後ハ無効ニ歸セシムル事ト爲セリ
第千四百四十九條 裁判上ノ請求ヨリ生スル中斷ハ訴訟ノ起頭ヨリ其判決ノ確定ト爲ルマテ繼續ス
(松岡)
起頭ハ提起トシタシ
可決ス
(淸岡)
中斷ハ繼續スト云フハ奇異ナリ
(栗塚)
中斷ノ繼續スル義ナレバナリ
第千四百五十條 勸解上ノ召喚又ハ任意出席ニ因ル時効ノ中斷ハ勸解ヲ要セサル場合ニ於テモ亦生ス
時効ノ中斷ハ勸解上ノ主タル請求ト同シク其反對ノ請求ヨリ生ス
召喚ノ無効ハ方式ノ瑕疵ニ因ルモ管轄違ニ因ルモ中斷ヲ妨ケス但初ノ召喚ノ無効トナリタルヨリ一ケ月内ニ更ニ合式ノ召喚ヲ爲スコトヲ要ス
合式ノ召喚ノ上勸解不調ノ場合及ヒ被吿ノ缺席ノ場合ニ於テ中斷ハ一ケ月内ニ裁判上ノ請求ヲ爲ササルトキハ之ヲ不成立ト看做ス
(栗塚)
本條一ケ月内トアルモ第千四百四十九條ニ倣ヒ二ケ月内ト修正セザルベカラズト雖ドモ本條ハ勸解上ノ場合ニシテ始審裁判所ノ場合トハ異レバ一ケ月内ト爲シ置テハ如何
(南部)
本條ハ第一項及ビ第二項ヲ合シ勸解上ノ召喚又ハ任意出席ニ因ル時効ノ中斷ハ主タル請求ト同ジク其反對ノ請求ヨリ生ズトシタシ
(箕作)
勸解ヲ要セザル場合ニ於テモ亦生ズト云ヘル數字ヲ刪除スレバ第一項ハ無用ナリ
結局第一項及ビ第二項ヲ合シ勸解上ノ召喚又ハ任意出席ニ因ル時効ノ中斷ハ主タル請求ハ勿論其反對ノ請求ヨリモ生ズトスルニ決ス
(松岡)
本條ハ第三項及ビ第四項ヲ刪除シタシ
(箕作)
勸解上ハ無方式ナリヤ
(委員長)
個ハ難問題ニシテ各地方官ニ於テモ其意見一樣ナラズ
結局此等ハ原案ニ可決ス
(松岡)
第千四百四十八條第三ハ訴訟ガ民事訴訟法ニ定メタル時間其手續ヲ休止シタルトキトスベシ
可決ス
第千四百五十一條 執行文提示ヨリ生スル中斷ハ一ケ年内ニ差押ヲ爲ササルトキハ之ヲ不成立ト看做ス
方式ノ瑕疵ニ因ル執行文提示ノ無効ハ時効ヲ中斷スルコトヲ妨ケス但催吿ヨリ生スル中斷ノ爲メ下ニ定メタル條件ヲ履行スルコトヲ要ス
(箕作)
本條ハ第千四百五十三條第一項ト意義重複スルニアラズヤ
(松岡)
然リ本條ノ第一項ヲ刪除スベシ
結局本條ハ執行文提示ヨリ生ズル中斷ハ方式ノ瑕疵ニ因リ其提示ノ無効ナルトキト雖ドモ尙ホ生ズ但催吿ヨリ生ズル中斷ノ爲メ下ニ定メタル條件ヲ履行スルコトヲ要ストス
第千四百五十二條 義務履行ノ催吿ハ義務ノ目的及ヒ原因ヲ明カニ指示シ且六ケ月内ニ裁判上又ハ勸解上ノ請求ヲ爲シタルトキニ非サレハ時効ヲ中斷セス
第千二百七十四條ニ記載シタル如ク抵當ノ不動產ヲ委棄スルヤ債務ヲ辨濟スルヤニ付キ其第三所持者ニ爲シタル催吿ハ之ニ對シテ抵當消滅ノ時効ヲ中斷ス
(箕作)
催吿後六ケ月内ニ請求ヲ爲シタルニ非ザレバ時効ヲ中斷セズト云ヘルハ訴訟法ニハ影況ヲ及ボサザルベシ
(栗塚)
然リ
第千四百五十三條 差押及ヒ拂渡差押ヨリ生スル中斷ハ其差押ノ手續カ合式ニ其終結マテ繼續シタルニ非サレハ其効力ヲ存續セス
假差押ハ六ケ月内ニ執行文提示差押又ハ裁判上若クハ勸解上ノ請求ヲ爲シタルニ非サレハ時効ヲ中斷セス
時効ノ益ヲ受クル者ニ對シテ差押ヲ爲ササルトキハ其差押ハ此者ニ之ヲ吿知シタル後ニ非サレハ之ニ對シテ中斷ノ効力ヲ有セス
(栗塚)
本條第一項ハ最初ノ議決案ニアリシ但書ヲ刪除シテ此案ヲ呈出シタリ
(箕作)
及ビ拂渡差押トアル文字ハ必要ナシ刪除ニ決ス
(松岡)
假差押ヲ爲シタルトキハ勸解上ノ手續ヲ要セズ
(南部)
第二項ハ假差押ハ相當ノ期間内ニ裁判上ノ請求ヲ爲シタルニ非ザレバ時効ヲ中斷セズトシタシ
結局假差押ハ裁判所ノ定メタル期間内ニ裁判上ノ請求ヲ爲シタルニ非ザレバ時効ヲ中斷セズトス
第千四百五十四條 任意ノ追認ヨリ生スル時効ノ中斷ハ裁判上ヨリ又ハ口頭タルト書面タルトヲ問ハス裁判外ノ行爲ヨリ生スルコトヲ得
裁判上ノ追認ハ自發ナルコト有リ又ハ判事ノ訊問ヨリ生スルコト有リ
(松岡)
本條ノ第二項ハ第千三百六十一條ト同意義ナレバ刪除スベシ原案ニ可決ス
第千四百五十五條 追認ハ明示又ハ默示ナルコトヲ得
占有者カ占有物ニ關スル果實又ハ賠償ノ要求ニ承服スルトキ又ハ此ニ反シテ占有者カ物ニ付キ爲シタル必要若クハ有益ノ費用ノ爲ノ賠償ヲ要求スルトキハ殊ニ取得時効ニ對スル默示ノ追認アリトス
債務者カ利息又ハ債務ノ辨濟ノ請求ニ承服スルトキ又ハ此ニ反シテ債務者カ提供ヲ爲シ若クハ恩惠期間ノ請求ヲ爲ストキハ殊ニ免責時効ニ對スル默示ノ追認アリトス
無異議
第千四百五十六條 眞所有者ノ權利ヲ追認シタル占有者ハ新時効ヲ再ヒ始ムルノ權利ヲ失ハス然レトモ占有者ハ最早其以前ノ善意ノ利益ヲ援用スルコトヲ得ス
若シ其占有者カ容假ノ占有者ト爲リタルトキハ將來ニ向テ時効ノ利益ヲ失フ但第百九十七條ノ二箇ノ場合ノ適用ヲ妨ケス
(箕作)
二箇ト云フハ如何
(栗塚)
第百九十七條ノ第二項及ビ第三項ノ場合ヲ指スベシ
(箕作)
然リ
可決ス
第千四百五十七條 追認ニ因リテ中斷セラレタル免責時効ハ卽時ニ再ヒ進行ス然レトモ其時効ハ最初短期ノモノタリシトキト雖モ將來ニ向ヒテ長期時効ノ期間ニ從フ
(村田)
本條ハ再ビトアルヲ更トスベシ
可決ス
第千四百五十八條 時効ヲ中斷スル追認ハ自己ノ財產ヲ管理スルノ能力又ハ時効ニ罹ルコト有ル可キ財產ヲ他人ノ爲メニ管理スルノ權力ヲ有スル者ニ於テ之ヲ爲シタルトキハ有効ナリ
然レトモ婦、無能力者又ハ委任者ノ利益ニ於テ不動產ノ取得時効ヲ中斷スル爲メ夫、後見人又ハ代理人ノ爲シタル追認ハ不動產ノ請求ニ承服スル特別權力アルニ非サレハ有効ナラス
(松岡)
本條ハ第千四百三十九條ノ例ニ依リ推定セラルト云ヘル文字ヲ挿入セザレバ不都合ナリ
(南部)
文ヲ略シタルノミ
(松岡)
勝手ナル議論ト云フベシ
第千四百五十九條 時効ヲ中斷スル追認ノ所爲ニ付キ爭アルトキハ通常ノ證據方法ヲ以テ之ヲ證スルコトヲ得
(栗塚)
本條ハ舊案ノ但書ヲ刪除セリ
可決ス
第千四百六十條 保證連帶及ヒ不可分ノ場合ニ於テ各利害關係人ニ對スル追認其他ノ方法ニ因ル時効中斷ノ効力ハ第千二十七條、第千六十條、第千六十一條、第千八十二條及ヒ第千九十一條ニ於テ之ヲ規定ス
無異議
第四章 時効ノ停止
第千四百六十一條 時効ハ物權又ハ人權ニシテ其廣狹又ハ行使カ相續ノ發開ニ繋ルモノニ對シテハ其發開後ニ非サレハ進行ヲ始メス
(栗塚)
時効ハ相續ノ發開後ニ非ザレバ進行ヲ始メズト云フ義ナルガ如シト雖ドモ何ヲ以テ相續ヲ旨トシタルカ當時質問中ニ係レリ
第千四百六十二條 遺言又ハ前主ノ合意ニ對シ相續人ニ屬スル銷除訴權ノ時効ハ其遺言又ハ合意ヲ相續人ニ對シテ援用シ又ハ其相續人ヲ害スル權利行使ノ基礎トシテ用ヒタル後ニ非サレハ進行ヲ始メス
(村田)
本條モ前條ト同樣質問スベシ
第千四百六十三條 權利ハ其行使カ確定若クハ不確定ノ期限ニ服從シ又ハ其發生カ停止ノ條件ニ繋ルトキハ其期限又ハ條件ノ到來後ニ非サレハ時効ニ罹ラス
(松岡)
時効ニ罹ラズトアルハ時効ハ進行ヲ始メズトシテハ如何
(栗塚)
權利ノ行使ガ確定若クハ不確定ノ期限ニ服シ又ハ其發生ガ停止ノ條件ニ繋ルトキハ其期限又ハ條件ノ到來後ニ非ザレバ時効ハ進行ヲ始メズトシタシ
可決ス
第千四百六十四條 前記ノ場合ニ於テ時効ハ第三所持者ニ對シテ停止セス但所有權ノ取得時効又ハ抵當ノ免責時効ヲ中斷セント欲スル利害關係人ニ於テ自己ノ權利ノ追認證書ヲ得ント請求スルコト又ハ裁判上其權利ヲ單ニ追認セシムルコトヲ妨ケス
(松岡)
前記ト云フハ前三條ヲ受クルカ
(南部)
然ルベシ
第千四百六十五條 時効カ其進行中ニ停止セラルルトキハ既ニ經過シタル時間ハ其時効ノ更ニ進行ヲ始ムル時ニ之ヲ併算ス
(松岡)
進行中ノ文字ハ刪除シタシ
(村田)
併算ハ通算トシタシ
可決ス
第千四百六十六條 時効ハ法律ノ定メタル場合及ヒ法律ノ定メタル人ノ利益ニ於ケルニ非サレハ停止ス
無異議
第千四百六十七條 期間五ケ年ナル時効ハ成年者ニ對スル如ク未成年者及ヒ禁治產者ニ對シテ進行ス但後見人カ其行フ可キ權利ヲ覺知セサルコトニ付キ正當ノ原因ヲ有セサル場合ニ於テハ是等ノ者ヨリ其後見人ニ對スル求償權ヲ妨ケス
五ケ年ヲ超ユル時効ニ關シテ成規上ノ期間カ未成年中又ハ禁治產中ニ經過シタルトキハ成年ト爲リタル未成年者、能力ヲ回復シタル禁治產者又ハ是等ノ者ノ成年ノ相續人ヲシテ其權利ノ効用ヲ致サシムル爲メ之ニ一ケ年ノ補足期間ヲ付與ス
若シ權利カ無能力者ニ移リタル當時ニ於テ尙ホ進行ス可キ殘期カ一ケ年以下ナルトキハ補足期間ハ其殘期ノ繼續期ノミヲ有ス
(南部)
冒頭ノ期間五ケ年ナルトアルハ期間五ケ年又ハ其以下ノトスベキ誤ナリ
(箕作)
期間五ケ年以下ノトシタシ
可決ス
(栗塚)
第三項ハ意義質問中ナリ
(箕作)
殘期ガ一ケ年ニ足ラザルトキハ一ケ年ニ足ルノ時日ヲ補足スベシト云フニアラズヤ
(栗塚)
尙ホ起案者ノ回答ヲ俟ツベシ
第千四百六十八條 時効ハ婦ニ對シ第三者ノ利益ニ於テ進行ス但夫カ婦ノ爲メニ管理スル財產ニ關シ其夫ノ方ニ於テ懈怠アル場合ニ於テハ婦ヨリ夫ニ對スル求償權ヲ妨ケス
然レトモ時効ノ成規上ノ期間カ結婚中ニ成就シタルトキハ婦又ハ其相續人ハ左ノ場合ニ於テハ解婚ノ後未成年者及ヒ禁治者ト同一ノ補足期間ヲ享有ス
第一 婦ニ因ル行使カ婚姻上ノ合意ノ効力又ハ法律ニ依リテ遲延セラレタル選擇ニ繋ル權利ニ關スルトキ
第二 第三者ニ對スル婦ノ訴カ擔保其他ノ方法ニテ夫ニ對シテ反響ス可キトキ
(栗塚)
本條第二項ハ起案者ニ質問中ナリ元來人事篇未ダ成定セラレザルニ該篇ニ係ル事項ヲ既ニ規定シテ不都合ヲ見ズヤト云フ疑點アリ
(槇村)
本條ニハ成就ト云ヒ前條ニハ經過ト云フ其差異ハ如何
(栗塚)
質問ニ係ル條項ハ未ダ文字ノ修正ヲ爲サザレバナリ
第千四百六十九條 前二條ノ規定ハ無能力者自身ニテ爲シタル行爲ノ銷除訴權ノ時効停止ニ關シ第五百六十七條及ヒ第五百六十八條ニ定メタルモノヲ妨ケス
(箕作)
佛國民法第五百六十七條ニハ時効停止セストアリテ同法第五百六十八條ニハ時効進行ストアリ起案者ハ如何ナル意見ナリヤ
第千四百七十條 配偶者ノ一人ヨリ他ノ一人ニ對シテ行フ可キ權利ニ關シテハ配偶者間ニ在テ結婚中ニ時効進行セス
(松岡)
本條ハ「配偶者間ニ在テ」ト云ヘル文字ヲ刪除スベシ
可決ス
第千四百七十一條 時効ハ他人ノ財產ノ管理人ト其管理ヲ受クル者トノ間ニ於テ其保存スルコトヲ任セラレタル權利ニ付テハ管理人ニ對シテ停止ス
(南部)
本條モ起案者ニ質問中ナリ
(松岡)
本條ハ自ラ明了ニシテ質問ヲ要セズ
第千四百七十二條 上ニ定メサル場合ニ於テ時効ノ期間ノ滿了スル時ニ當リ有權者カ交通ノ塞カリタルニ因リ又ハ地方ノ裁判事務ノ停止セラレタルニ因リテ其權利ノ効用ヲ致サシムル爲メ又ハ時効ヲ中斷スル爲メニ全ク手續ヲ爲スコト能ハサリシトキハ有權者其妨碍ノ止ム後直チニ請求ヲ爲スニ於テハ其失權ヲ免カルルコトヲ得
右ノ規定ハ陸海軍人カ内國又ハ外國ノ戰亂ノ時ニ於テ服役ノ爲メ其權利ヲ行フコトヲ妨ケラレタル場合ニ於テハ其利益ノ爲メ之ヲ適用ス
(箕作)
致サシムル爲メトアルヲ致サシメトシ時効ヲ中斷スル爲メニトアルヲ時効ヲ中斷スルノトシタシ
(南部)
致サシメトスルハ可ナリ中斷スルノト云フハ不可ナリ依テ中斷スル爲メトシタシ
可決ス
第千四百七十三條 物權又ハ人權ノ不可分ヨリ生スル時効ノ停止ハ第三百十一條、第四百六十七條及ヒ第千九十二條第二項ニ於テ之ヲ規定ス
無異議
第五章 不動產ノ取得時効
第千四百七十四條 不動產ノ取得時効ニ付テハ所有者ノ名義ニテ占有シ其中斷ナリ且平穩、公顯ニシテ下ニ定メタル繼續期アルコトヲ要ス
第百九十五條及ヒ第百九十七條ニ定メタル如キ容假、強暴又ハ隱密ノ占有ハ時効ヲ生セス
(箕作)
第一項其中斷ナクトアル其ハ不用ナリ
(栗塚)
其ハ且ト云フ字ノ筈ナルモ衍字ニ付キ刪除スベシ
可決ス
(村田)
第二項容假強暴又ハ隱密トアルハ強暴隱密又ハ容假トスベシ
可決ス
(箕作)
占有シ中斷ナクト云ヘルハ意義不足ニアラズヤ
(栗塚)
占有シ其占有ハ繼續シテ中斷ナクトスベキニ落字シタレバ訂正ヲ乞フ
第千四百七十五條 占有者カ時効ニ因リテ取得セントスル物ニ付キ或ル長キ時間所有者ニ行爲ヲ行フコトヲ任意ニテ止メタルトキハ其占有ハ不繼續ニシテ時効ヲ生セス
占有者カ再ヒ所有者ノ行爲ヲ行フトキハ其以前ノ占有ノ時間ハ占有者ノ爲メニ之ヲ算セス
無異議
第千四百七十六條 若シ占有カ上ニ定メタル條件ノ外第百九十三條ニ記載シタル如キ正名義ニ基因シ且第百九十四條ニ從ヒテ善意ナルトキハ占有者ハ不動產ノ所在地ト時効ノ爲メ害ヲ受クル者ノ住所又ハ居所トノ間ノ距離ヲ區別セス十五ケ年ヲ以テ時効ヲ得
無異議
第千四百七十七條 方式上無効タリ又ハ裁判上取消サレタル名義ハ時効ノ爲メニ有益ナラス
(箕作)
名義ト云ヘル文字ハ妥當ニアラザルナリ
(栗塚)
證書トモ云フヲ得ザレバナリ
(淸岡)
有益ナラズト云フハ如何
(箕作)
役ニ立タズト云フ意味ナリ
第千四百七十八條 占有者カ正名義ヲ證スルコトヲ得ス又ハ之ヲ證スルモ第百九十九條ニ規定シタル如ク其惡意カ證セラルルトキハ取得時効ノ期間ハ三十ケ年トス
(尾崎)
惡意アルトキハ取得時効ヲ生ゼシメズシテ可ナリ
(南部)
惡意ト云フモ強奪ニアラズ其事情ヲ知了シタルトキニアリト云フ譯ナリ
(箕作)
半途ニシテ惡意トナリシトキハ如何
(南部)
最初ノ善意ハ止息スベシ故ニ三十ケ年間ヲ計算スベシ
(箕作)
半途ニシテ惡意ヲ生ジタルモ最初善意ノ場合ト通算シ十五ケ年ヲ期限トスルモノニアラズヤ
(村田)
半途ニシテ惡意ヲ生ジタルトキハ其當時ヨリ三十ケ年ヲ經過スベキヲ要ス
(栗塚)
最初ヨリ三十ケ年ヲ通算スベシ
(南部)
最初ヨリ惡意タリシ者ハ三十ケ年ニテ時効ヲ得ベキモ半途ニシテ惡意ヲ生ジタル者ハ四十年若クハ五十年ノ期間ヲ要スベキ理由ナシ
(委員長)
權利者ハ取得時効期間ノ長キヲ利益トスベシ
(南部)
其利益ヲ見ルノ必要ナシ
第千四百七十九條 性質上登記ヲ爲ス可キ正名義ニ基因シタル時効ハ其名義ノ證書ヲ登記シタル後ニ非サレハ之ヲ算セス
(栗塚)
名義ノ證書ト云ヘルハ名義ヲ登記スルト云フニ妥當ナラザレバ證書ト云フ文字ヲ附セリ
(箕作)
登記ハ證書ナキモ爲シ得ベキニアラズヤ
(南部)
證憑アラザレバ登記スルヲ得ズ
(淸岡)
本條ノ名義ノ證書ト云ヘバ第千四百七十七條ニ示シタル名義ト云ヘル意義ハ之ト各別ニ屬スルガ如クナルニアラズヤ
(尾崎)
占有者ハ證書アリヤ第一ノ占有者ニハ讓渡證書ナカルベシ
(南部)
甲乙丙丁轉々スル間ニハ必ラズ證書アルベシ
(栗塚)
占有者ノ第一ヲ尋索スルトキハ往々不明ナルコトアルベシ
第千四百八十條 前主ノ占有ヲ其相續人及ヒ包括若クハ特定ノ承繼人ノ占有ニ併合シ又ハ繼續スルコトハ第二百四條ニ於テ之ヲ規定ス
無異議
附錄 自然義務
第五百八十六條 自然義務ノ履行ハ訴ノ方法ニ依リテモ相殺ノ排斥ニ依リテモ之ヲ要求スルコトヲ得ス其履行ハ債務者ノ任意ナルコトヲ要シ法律ハ其道義心ニ委ス
又自然義務ハ第三者ヨリ債務者ノ名ヲ以テシ又ハ自己ノ名ヲ以テ之ヲ辨濟スルコトヲ得
(栗塚)
附錄ハ之ヲ第四章トシ本條ノ第二項ヲ刪除アランコトヲ希望ス
(南部)
第二項ハ第一項ト牴觸セリ何トナレバ第三者ヨリ代償セラレタルトキハ債務者ハ其第三者ニ對シ辨償セザルベカラザル義務ヲ生ジ殆ド法定ノ義務ヲ生ズルニ至ルベシ
(村田)
自然義務ト云フハ佛國ニ於テモ命脈ヲ一縷ノ間ニ存シタルモノニシテ他日民法改正ノ場合ニハ必ラズヤ自然義務ハ刪除サルベシ抑モ民法ハ互相間ニ確定シタル義務ヲ認ムベキモノニシテ良心ニ委シタル自然義務ニ迄侵入スベキモノニアラザルベシ
(栗塚)
自然義務ノ要點ハ既判力ト時効トノ場合ニ存スルモノナリ歳月ヲ徒過シタル爲メニ時効ノ不利益ヲ受ケ證據不充分ノ爲メニ既判力ノ束縛ヲ受ケタル者ハ心裡ニハ其義務アルヲ憶存スベシ果シテ然ラバ良心ノ義務履行ヲ許サザレバ社會ノ毀害ヲ醫正スル道ヲ失フモノト云フベシ
(村田)
既判力又ハ時効ノ如キハ確定動カスベカラザルモノト云フベシ又自然義務ノ定義ニ至テハ實ニ暖昧摸稜トシテ根據ナキガ如シ此等定義ノ判然ナラザルモノハ法律上ニ認置スルヲ穩當ナラズトス
(松岡)
自然義務ノ規定ハ存在シタキモ其名稱ハ穩當ナラズ
(委員長)
自然義務ノ規定ハ存刪如何
(箕作)
起案者モ自然義務ト云フ規定ヲ置クベキ心意ヲ以テ本法ノ起草ヲ爲シタルモノナレバ之ヲ存在シタシ卽チ存置ニ可決ス
(栗塚)
自然義務ト云フ題號穩當ナラズトセバ不完全義務トシテハ如何
(松岡)
義務ト云ヘバ權利ニ對スル名稱ナルヲ以テ不完全ト云フ語辭ヲ冠シ確然タル權利ノ對稱物ニアラザルヲ示スベキヲ可トス
(委員長)
義務ト云フ文字ノ上ニ不完全ト云フ語辭ヲ冠セシメシ効用ハ如何
(松岡)
義務ハ繩索ノ如シ繩索ニ完全ナルモノト不完全ナルモノトアルベシ
(栗塚)
繩索ニ不完全ト云フコトヲ得ザルベシ
(委員長)
自然義務ト云フモ不可ナシ
可決ス結局第二項ハ刪除シ道義心ヲ良心トシ排斥ハ抗辯トスルニ決ス
第五百八十七條 債務者又ハ第三者ノ任意ノ辨濟又ハ供與ハ不當ノ辨濟ナリトシテ之ヲ取戻スコトヲ得ス
自然義務ヲ辨濟シタル意思ノ證據カ事情ヨリ生スルニ於テハ辨濟ノ原因ヲ明示センコトヲ必要トセス
(栗塚)
本條第一項「又ハ第三者」及ビ「又ハ供與」ノ文字ヲ刪除スベシ
可決ス
(南部)
第二項ハ自然義務ヲ辨濟シタリト云ヘル證據ガ事情ヨリ生ズルトキハ其證據ハ明示スルニ及バズト云フ義ナルベシ
(栗塚)
本條ハ第一項ニ於テ自然義務ハ不當ノ辨濟トシテ之ヲ取戻スコトヲ得ズト云フニアリ第二項ハ然ラバ證文中ニ自然義務ノ辨濟ニ係ル旨ヲ明記シ置カザルヲ得ザルヤト云フニ然セザルモ其證據ガ事情ヨリ顕ハルルトキハ可ナリト云フニアリ
(松岡)
第二項ハ刪除スベシ
可決ス
第五百八十八條 自然義務ハ債務者ノ明白ナル認定、第三者ノ保證、債務者若クハ第三者ノ爲セル更改又ハ動產質若クハ抵當ノ供與ノ目的タルコトヲ得
此諸種ノ場合ニ於テ自然義務ハ通常ノ法定ノ効力ヲ生ス
(栗塚)
本條第一項認定ヲ追認トシ第二項此諸種トアルヲ右諸種トスベシ
可決ス
(村田)
動產質ト云ヘルハ單ニ質トスベシ質ハ動產不動產ニ係ルヲ以テナリ
可決ス
(栗塚)
第一項自然義務ハ債務者ノ追認、更改又ハ質若クハ抵當ノ供與ノ目的タルコトヲ得トシテハ如何
(淸岡)
更改ト云ヘルハ自然義務ヲ法定ノ義務トスルノ義カ
(南部)
賣懸代金ヲ貸金ニ直スガ如シ
(松岡)
供與ヲ刪除シテハ如何
(南部)
供與ヲ刪除スルトキハ自然義務ヲ抵當トスルガ如クナルヲ以テ刪除スベカラズ
結局本項ハ自然義務ハ追認、更改又ハ質若クハ抵當ノ供與ノ目的タルコトヲ得トスルニ決ス
第五百八十九條 第三者カ債務者ノ代理ノ委任ヲ受ケスシテ自然義務ノ履行、更改又ハ擔保ヲ爲シタルトキハ債務者ハ其償還ニ付テハ自然義務ノミヲ負擔ス
本條ハ刪除ス
第五百九十條 自然義務ノ任意履行、更改、認定又ハ擔保ハ讓渡ヲ爲シ又ハ義務ヲ負擔スルノ能力アル人ニ出ツルニ非サレハ其効ナシ
(淸岡)
本條ハ刪除シテ可ナリ
(箕作)
法定義務ハ無能力者ニハ無効ナルモ自然義務ナレバ有効ナルベシト云フ疑アラント思惟シ爲メニ記示シタルナルベシ
(松岡)
法定義務ニシテ有能力者ニ限ルモノトスレバ自然義務ハ固ヨリ然ラザルヲ得ズ依テ刪除スベシ
可決ス
第五百九十一條 自然義務ハ法定ノ承諾ヲ阻却スル錯誤ノ爲メ、目的ノ指定ノ欠缺若クハ不足ノ爲メ又ハ必要ナル公式ノ欠缺ノ爲メ根源無効ナル契約ヨリ生スルコトヲ得
然レトモ方式ノ欠缺ノ爲メ無効ナル生贈ニ關シテハ生贈者自ラ自然義務ノ履行又ハ認定ヲ爲スコトヲ得ス其相續人又ハ承接人ノミ之ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ハ方式上無効ナル遺言ヲ爲セル者ノ相續人ニ之ヲ適用ス
(栗塚)
生贈ハ贈與トシ承接人トアルハ承繼人トスベシ
可決ス
(淸岡)
本條ハ少シモ必要ヲ見ズ
(栗塚)
第一項ハ必要ナリ
(南部)
第二項モ必要アリ
(村田)
第一項ハ冒頭ノ自然義務ハト云ヘルヲ生ズルコトヲ得ト云ヘル文字ノ上ニ轉置シテハ如何
(南部)
自然義務ハト云ヘル冒頭ハ當然ナルベシ
(委員長)
法定義務ハ生ゼザルモ自然義務ハ之ニ因リ生ズルコトヲ得ト云フ意タラザルベカラズ
(松岡)
合意ヨリ生ズルコトヲ得ト云フ文義ニテハ不都合ナリ
(南部)
本項ハ原案ノ儘ニスベシ
可決ス
(槇村)
第二項ハ如何ナル意義ナリヤ
(箕作)
假令バ自己ノ財產ヲ讓與セザルベカラザル子アルニ之ヲ措キ他人ニ其財產ノ全部ヲ讓與シタルトキノ如キ又ハ公正證書ヲ要スベキニ其手續ヲ缺キシ場合ノ如シ
(松岡)
自己ノ子ニ讓與セザルベカラザル財產ヲ他人ニ讓與シタルガ如キハ方式ノ欠缺ト云フヲ得ズ
(栗塚)
第五百九十條ヲ刪除シタル以上ハ本條ノ第二項以下ハ之ヲ存置スルヲ得ズ
(村田)
相續人ハ受續スベキ財產ニ希望シタルモノナレバ相續人ノ承諾アラザレバ有効トスルヲ得ズ
(松岡)
親父ハ自己ノ子息ニ遺續スベキ以上ノ財產ヲ有シタルトキト雖モ之ヲ他人ニ讓與スルヲ得ザルガ如シ
結局第二項以下ハ此儘ニ可決ス
第五百九十二條 原因ノ欠缺又ハ不法ノ原因ノ爲メ無効ナル契約ハ自然義務ヲ生スルコトヲ得ス公ノ秩序ノ爲メ契約ノ目的トスルコトヲ禁シタル物ヲ目的ト爲ス契約ニ付テモ亦同シ
(栗塚)
本條ハ公ノ秩序ノ爲メ云々トアルヲ公ノ秩序ノ爲メ契約スルコトヲ禁ジタル物ヲ目的トスル合意ニ付テモ亦同ジトシテハ如何
(箕作)
契約ノ目的ト云フ語ハ必要ニアラズヤ
(栗塚)
契約スルコトヲ禁ジタルトシテ合意トセザレバ畢竟動詞ニ屬スレバナリ
(箕作)
同一ニ合意トスルヲ可トス
可決ス
第五百九十三條 第三百四十三條及ヒ第三百四十四條ニ因リ無効ナル契約ハ諾約者ノ自然義務ヲ生スルコトヲ得
(栗塚)
本條ハ舊案ノ如ク第三者ノ所爲ノ諾約及ビ第三者ノ利益ニ於ケル要約ニ關シテ第三百四十三條及ビ第三百四十四條ニ定メタル無効ハ諾約者ノ自然義務ヲ生ズルコトヲ妨ゲズトスベシ
(淸岡)
第三者ノ所爲ノ諾約ト云フハ語意不足ナリ
(村田)
本條ハ或ル俳優ヲシテ踏舞セシムルト云フ契約ヲ爲スノ意義ノ如シ個ハ刪除シテ可ナリ
(南部)
本條ヲ刪除スレバ權衡ヲ失スベシ
結局刪除ニ決ス
第五百九十四條 債務者カ不當ノ利得、不正ノ損害又ハ法律ノ規定ニ因リ法定義務ヲ負擔スルコト有ル可キ場合ノ外債務者ハ此名義ニテ自然義務ヲ負擔シタリト有効ニ自ラ認定スルコトヲ得
(松岡)
本條ハ假令バ人ニ疵傷ヲ生ゼシメタル爲メ其養療費トシテ十圓額ヲ贈與スベキ場合ニ二十圓ヲ贈與スルガ如キヲ指スヤ
(栗塚)
然リ
第五百九十五條 自然義務ハ法定義務ノ銷除、廢罷又ハ解除カ裁判上ニテ宣吿セラレタル後存立スルコトヲ得
此他法定義務カ法律上ノ消滅方法ニ因リ消滅シタル後ニ於テモ亦同シ
(栗塚)
本條ハ報吿委員ニテ第二項冒頭ノ此他ト云ヘル文字ヲ法律上ノトアル下ニ轉置シタシト云フニアリ
(松岡)
「法律上ノ」ト云ヘル文字ハ除去シテ可ナリ
可決ス
第五百九十六條 免責又ハ取得ノ時効ノ利益ヲ用ヒタル者確定シタル判決ノ利益ヲ受タル者又ハ其他ノ推定若クハ證據ヲ申立ツルコトヲ得ヘキ者ハ尙ホ自然義務ヲ負擔セリト自ラ認定スルコトヲ得
(栗塚)
確定シタル判決ノト云ヘルハ既判力ノトスベシ
可決ス
(箕作)
利益ヲ用ヒタル者ノ下「ヽ」ヲ附スベシ
(栗塚)
然リ
(村田)
其他ノ上ニアル「又ハ」ハ刪除スベシ
可決ス
(淸岡)
利益ヲ用ヒタルト云フハ奇異ナリ
(栗塚)
利益ヲ援用シタル者トスベシ
可決ス
第五百九十七條 自然債權ノ法定ノ讓渡ハ協諧契約ヲ以テ破產者ニ免除シタル金額ニ付キ其債權者ノ之ヲ爲シタル場合ノミ有効ナリ
(村田)
自然債權ノ法定ノ讓渡ハト云ヘルハ自然義務ニ對スル債權法定ノ讓渡ハトシテハ如何
(栗塚)
迂回ナリ
(箕作)
自然債權ノ讓渡ハ債務者ニ爲ス意義ナラン
(松岡)
債務者ニ讓渡スルニアラズ債權ノ讓渡ハ協諧契約ノ場合ノミ第三者ニ之ヲ讓渡スルヲ得ベシ
(淸岡)
讓渡スルヲ得ベキモノトセバ自然義務ニ關係ナシ
(箕作)
協諧契約ノ場合ハ債權者ニ訴權ナキモ債務者身代ヲ挽回シタルトキハ之ヲ償還セザルベカラズ本條ハ純然タル自然義務ニアラズ稍ヤ法定義務ニ近キモノト云フベシ
第五百九十八條 連帶又ハ不可分ノ資格ヲ有スル法定義務ニ代替シ又ハ其消滅後ニ存立スル自然義務ハ連帶又ハ不可分タルコトヲ得
第五百九十九條 裁判所カ自然義務ノ任意履行認定其他ノ法律上ノ効力ヲ裁判ス可キトキハ全權ヲ以テ債務者ノ意思ヲ判決ス然レトモ裁判所カ前數條ノ規定ニ付誤謬ノ適用ヲ爲シタルトキハ其判決ハ之ヲ破毀ニ付ス
第六百條 當事者ハ自然義務ノ任意ノ履行又ハ認定アラサル前ト雖モ仲裁契約ヲ以テ其自然義務ノ成立又ハ廣狹ヲ仲裁人ノ決定ニ委スルコトヲ得此場合ニ於テハ自然義務ヲ宣言シタル其決定ハ法定ノ義務ヲ生ス然レトモ法律カ自然義務ヲ無シトスル場合ニ於テ有リトシ之ヲ有リトスル場合ニ於テ無シト宣言シタルトキハ其決定ハ無効ナリ但右孰レノ場合ニ於テモ當事者カ仲裁人ニ仲裁ノ全權ヲ與ヘタルトキハ此限ニ在ラス
(栗塚)
右三條ハ必要ナキニ付キ刪除シテ可ナリ
第千二十一條
(栗塚)
本條ハ動產ニ就テモ亦討索ヲ許スベキニアラズヤヲ以テ起案者ニ質問シタルニ其答案ニハ動產ニ討索ヲ許スモ動產ハ轉々スベキモノナレバ實際討索ノ手續ヲ爲スコト能ハザルベシト云フニアリ
第千百五條
(栗塚)
本條ハ最初證據篇ノ議事ニ至ルマデ留保ニ歸シタルニ依リ報吿委員ニテ更ニ第一項ヲ修正シ動產質權ハ債權及ビ質物ヲ明ニ指定セル證書ヲ以テスルニ非ザレバ之ヲ設定スルコトヲ得ズトシタリ
可決ス
第千百十九條
(栗塚)
本條ハ質物債權者ノ掌裡ニ在ルニ拘ハラズ債務ノ消滅ヲ推定スルヲ得ルトスルハ頗ル實際ノ事理ニ反スルニ似タリト云ヘルヲ以テ質問シタルニ起案者ノ答案ニ曰ク質ハ原附從タルモノナリ主タル債務法律上ノ推定ニ依リ消滅スルトキハ從タル質權モ自ラ消滅スベシ債務者死ンデ相續人ノ如キハ往々質物ノ存在ヲ知ラザルコトアリト云ヘリ
(尾崎)
債權者ハ免責時効ニ因リ質物ノ回取ヲ受クルハ迷惑ナルベシ
(栗塚)
時効ヲ生ジタル以上ハ質物ヲ回戻スルヲ得ザルベシ債務者ガ質物ヲ取戻サントスルトキハ他ノ免責方法ヲ出スヲ要ストシテハ如何
(尾崎)
然ルベシ
(淸岡)
債權者ハ債務者ヨリ他ノ證據方法ヲ提出セザレバ之ヲ返還スルノ義務ナシトシテハ如何
(委員長)
報吿委員ノ修正ヲ可トス
(栗塚)
但書トシテ右樣ノ文字ヲ加ヘラレタシ
(松岡)
債務者質物取回ヲ求メザレバ債權者ハ得取時効ヲ得ズ債務者質物ヲ取回セザレバ如何
(南部)
三十年ノ期間ヲ經過スルトキハ得取時効ヲ得ベシ
(松岡)
債權者ハ債務者ノ取戻ヲ受ケザレバ其質權ヲ處分スルヲ得ザルベシ又動產不動產ヲ同一手續ニ依リ之ヲ處理セントスルハ不都合ナリ
(淸岡)
質物ガ債權者ノ手ニ存スル間ハ時効ノ成就スベキ理由ナシ
(栗塚)
質物ガ質取債權者ノ方ニ存スル間ハ其債務ノ免責時効ノ成就ヲ停止ストシハ如何
可決ス
第千百三十八條
(栗塚)
本條ハ商法第條ニ記載シタルモノヲ妨ゲストアルヲ「第九十四條ニ記載シタルモノヲ妨ケス」トスベシ
可決ス
第千二百四十四條(ノ二)
(栗塚)
本條第一項ハ語譯ニ係レルヲ以テ訂正シ債務ガ半額以上消滅シタルトキハ債權者ハ債務者ノ要求ニ因リ三種ノ抵當ニ付キ金額ノミノ記入ヲ減少ス可シトスベシ
可決ス
第千三百二十條
(栗塚)
本條第一項又ハ其裁判ヲ爲スコトヲ中止ストアルヲ其請求若クハ抗辯ヲ棄却シ又ハ本按ノ判決ヲ爲スコトヲ中止ストスベシ
可決ス
(尾崎)
中止スト云フハ不穩當ナリ
(栗塚)
爲サズトシテハ如何
(委員長)
爲サズト云ヘバ抛棄シ置クガ如クナルヲ以テ不可ナリ
(箕作)
又ハ他日本按ノ判決ヲ爲ス可キ旨ヲ言渡ストシテハ如何
可決ス
第千三百四十五條
(南部)
本條ハ最初假決ニ屬シタルモ第千三百四十三條トノ照應アルヲ以テ存置セラレンコトヲ希望ス
(村田)
然リ
(松岡)
正確ナル氏名ノ記載アル以上ハ最初別段ノ手續ヲ要セズ
(南部)
世間往々詐欺ノ增生スル以上ハ充分ナル防禦手續ヲ爲シ置カザルヲ得ズ
(尾崎)
正確ナル氏名アルニ金額數量ニ捺印ヲ缺キタルノミヲ以テ之ヲ充分ナル證據ト爲スニ足ラズト云フハ不都合ナリ
(委員長)
債務者ハ自己ノ厄窮ニ頻シテハ往々白紙ニ氏名捺印シタル證文ヲ要求セラレ之ニ應ズル等ノ事實アルトキハ債務者ハ言フベカラザル迷惑ヲ生ズベシ
(渡)
第千四百四十三條ノ金額若クハ數量ノ文字ニ捺印スルヲ要スト云ヘル數字ヲ刪除シテ兩條ヲ併存シテハ如何
結局本條ハ刪除ニ決ス
第千三百五十條
(栗塚)
本條ハ確定日附ノ義ニ付キ第千三百四十九條第千三百五十一條第千三百五十二條ト相連テ起案者ニ質問シタルニ其回答ニハ確定日附ハ證明上必要ニ係ルヲ以テ刪除スベカラズト云フニアリ報吿委員ハ記錄ノ文字ヲ登錄トシ又確定ノ日附ト云ヘルモノハ民法上ニ明記シ民政上ノ保護ヲ盡スノ手段ニ供セザルベカラズトス
(松岡)
證書面ニ於ケル詐欺ノ有無ヲ判別スルノ方法ヲ講ゼズシテ其日附ノミノ正否ヲ審明セントスルハ人間ハ詐僞ヲ爲スモノナリト云ヘル推測ヲ爲スモノノ如シ
(栗塚)
證書面中ニ記載セル事實ノ正否ヲ明別シ得ラルル以上ハ之ヲ爲スベキモ個ハ容易ニ知了スルヲ得ザルニ付日附ノミノ正確ヲ求メタシ
(淸岡)
確定日附ノ規定ハ詐僞ヲ防禦セントスルヨリ寧ロ風俗ヲ害スベシ
(松岡)
人民ガ不便ヲ感ゼザル方法アリヤ
(栗塚)
實地施行ノ方法ハ豫メ之ヲ論述スルヲ得ザルモ此旨趣ハ善美ナリト云ハザルベカラズ
(委員長)
確定日附ヲ請求スルノ方法ハ裁判所又ハ區戶長役場等孰レノ官署ニ請求スルモ可ナリトシ又其手數料ノ如キモ僅々額ヲ以テ之ヲ受クルコトヲ得ベシト爲シ置ケバ不都合ナカルベシ
(栗塚)
確定日附ハ之ヲ攻撃スルヲ得ザルベシ
(松岡)
方法ノ明カナラザル以上ハ之ヲ是認スルヲ得ズ
(栗塚)
確定日附ヲ是認スルハ公證人ノ公認ヲ請求スルニ及バザルベシ
(尾崎)
公證人ノ公證ヲ請求スルモ可ナリ
(松岡)
刪除スベシ
(南部)
刪除スベキナラバ第千三百四十九條乃至第千三百五十二條ヲモ包刪セザルベカラズ
(松岡)
其各條ヲ刪除シテ可ナリ
(栗塚)
此各條ハ實ニ喧論アリ元老院ノ會議ニ回付サルル迄存置シテハ如何
(委員長)
收稅主義ヲ惡シトスルハ多數ノ論趣ナリト雖ドモ確定日附ノ要否ニ付テハ餘ニ暫時調査セシムヘキ猶豫ヲ與ヘラレタシ
(淸岡)
委員長ノ高案ハ他日再論シテ可ナリ
(栗塚)
至急印刷ノ都合モアレバ此各條ハ之ヲ存置シ愈刪除スベシト云フニ決スレバ他日抹殺スベシ而シテ第一ハ登錄トシ又記載死亡トアル上ニ登錄ノ文字ヲ挿入セラレタシ
(松岡)
本日ハ刪除說多數ナルモ他日同說者缺席シテ反對論者多數ヲ占メタルトキハ如何
(委員長)
或ル事件ニ付テハ確定日附ヲ要スベキモノナキニシモアラズ本日ハ確定日附ノ旨義各員ノ心思ヲ動スニ足ラザルノ感アレバ其點ヲ詮義スベシ
第千三百八十二條
(栗塚)
本條ハ第二項官廳ノ上ニ「國又ハ」ノ文字ヲ挿入スベシ
可決ス
第千百三十四條
(栗塚)
第千三百三十三條第二項ハ「債務者又ハ」ノ數字ヲ刪除セラレタシ
(松岡)
債務者ヨリハ滿期後ノ故障ヲ申立ツルコトヲ得ザルヤ
(栗塚)
滿期後債務者ノ申立スルニ差支ナシ
(松岡)
「債務者又ハ」ノ文字ヲ刪除スレバ申立ツルヲ得ズ
(南部)
債務者ノ文字ハ前回ノ場合之ヲ否認シタルニアラズヤ依テ速カニ論決アランコトヲ希望ス
(槇村)
債務者ノ文字ハ刪除スベカラズ
結局同條ハ債務者又ハノ文字ヲ存置シ其第二項質取債權者ハトアル下ニ滿期後ノ文字ヲ挿入スルニ決ス
(松岡)
本條ハ得取者之ヲ處理スルヲ得ザルガ如シ
(箕作)
得取者ハ之ヲ滌除セザレバ留置權ヲ妨グルヲ得ザルモノトス
(栗塚)
取得者ハ質取債權者ノ權利ヲ犯カスコトヲ得ズト云フ義ナリ又本條ハ起案者ノ改正ニ係レリ
(箕作)
他ノ債權者ヨリトアルヲ他ノ債權者又ハトシ「ニ對シ」トアルヲ「ヨリ」トシ「其抵當ヲ行ヒ」トアルヲ「其抵當權ヲ行ヒ」トシ「先ソセラルルトキト雖モ」トアルヲ「先ンセラルルモ」トスベシ
可決ス
(松岡)
尊重ノ文字ハ妨ゲザルトシタシ
(南部)
妨ゲザルノ責アリト云フハ當ヲ得ズ債權者ノ債權ヲ尊ブノ意ナレバナリ
(栗塚)
遵フトスベシ
可決ス
(箕作)
然レドモ以下ハ如何
(南部)
報吿委員ニテハ刪除シタシトス
(箕作)
改正案第二項ハ如何
(栗塚)
起案者ノ增加ニ係レリ
(松岡)
質ノ終了スベキ時期ト云ヘルハ債務ノ期限ナリヤ
(栗塚)
然リ
第千四百三條
(栗塚)
本條ハ第千四百四條ト轉置スベシ最初此問題ハ原因ノ如何ニ拘ハラズト云ヘルニ付キ疑ヒアリシニ起案者ノ回答ニハ訴訟ノ濫起ヲ防グノ必要アリト云フニアリト云フニアリ
(箕作)
五十圓ヲ超過シ原因ノ異ナルトキハ如何
(栗塚)
原因ノ異ナル爲メ五十圓ヲ超過シタルトキハ人證ヲ許スベシ只訴件ヲ一齊ニ提出スベシト云フニアリ
(松岡)
起案者ノ回答ハ不明ナリ
(南部)
起案者ノ回答ハ訴狀ヲ一併ニスベシト云フニアレバ決シテ不明ナルニアラズ原案ノ可否ハ自ラ別論ナリ
第千四百十條
(栗塚)
本條ハ第一項ハ法律上特ニ世評ニ因ル證ヲ許ス場合ノ外或ル事實ガ顯著ナルトキ法律ガ其規定ヲ此事實ニ適用ス可キコトヲ定メタル各箇ノ場合ニ於テハ此證ヲ用フルコトヲ得トスベシ
(箕作)
本項ハ如何ナル意味ナリヤ
(栗塚)
顯然タル無資力ノ場合ノ如シ
第千四百二十三條
(栗塚)
本條ノ類例ハ醫士ニ贈遺スル場合ノ如キヲ云フニアリ
第千四百二十五條
(栗塚)
本條ノ特別ナル場合ト云フハ第千四百五條及ビ六條等ノ場合ヲ指スベシ
第千四百二十九條
(栗塚)
本條ハ起案者ノ回答ニ默示シテ例外ヲ設クルト云ヘルハ買戻權或ハ隱レタル瑕疵ヲ原因トシテ消除ヲ請求スル場合ヲ云フニアリト
(箕作)
明示ハ如何
(栗塚)
明示ノ場合ハ質問セザリシナリ
第千四百六十一條
(栗塚)
起案者ヨリ第千四百六十三條ヲ第千四百六十一條トシ本條ヲ第千四百六十二條トシ原案第千四百六十二條ヲ第千四百六十三條ト改正シ來レリ
(村田)
廣狹ノ文字ハ廣狹トシタシ
(委員長)
既ニ範圍ノ文字ヲ使用シ來リタレバ此儘ニ存置スベシ
可決ス
第千四百六十七條
(栗塚)
本條第三項ハ起案者ニ質問シタルニ有能力者ニ存セル期間ノ殘期一个年アルトキハ無能力者ニ移ルベキ期間モ一个年ナリト云フニアリ
(松岡)
然ルトキハ補足期間ト云フヲ得ズ
(松岡)
有能力者ニ存シタル期間三个年アリシトキハ如何
(栗塚)
假令三个年ノ殘期アルモ無能力者ニ移リタルトキハ一个年ニ止マルベシ
(南部)
本條第二項ハ假令バ十个年ノ時効期間アルトキ既ニ五ケ年ヲ經過シテ死亡シタルトキハ成規上ノ期間ガ未成年中又ハ禁治產中ニ經過シタルトキハ他日成年者ト爲リ又ハ能力ヲ回復シタルトキハ相續シタル者ハ既ニ時効ノ經過シタルニ拘ハラズ一个年ノ補足期間ヲ付與スベシ第三項ハ殘期ガ一个年以下ナルトキハ相續シタル當時ニ於テ既ニ殘餘ニ屬シタル期間ヲ與フベシト云フニアリ
(箕作)
第三項ハ刪除シテ其區別ヲ廢シテハ如何
(委員長)
五个年ノ期間ハ殘期ノ部分ナリヤ否ラザルヤ判明ナラズ第二項ニハ一个年以下ヲ包含スルヤ否
(南部)
第二項ニハ一ケ年以下ヲ包含セズ一个年以下ノ場合ハ次項ニ於テ規定セリ
(委員長)
尙ホ報吿委員ニテ考案ヲ費ヤサルベシ
(南部)
此儘ニ經過シテハ如何其議ニ決ス
第千四百六十八條
(栗塚)
本條ハ其相續人ハ左ノ場合トアルヲ其相續人ハ法律ノ規定シタル場合トシ第一第二ノ兩號ヲ刪除スベシ
可決ス
第千四百七十條
(栗塚)
本條ハ起案者ヨリ改正シ來レリ結婚中ハ時効進行セズトアルヲ結婚中ト雖ドモ時効ハ進行ストシ更ニ別項ヲ設ケ然レドモ時効ガ結婚中ニ成就シタルトキハ時効ノ爲メ害ヲ受クル配偶者ハ第千四百六十七條ニ從ヒ解婚後一个年間其物權又ハ人權ヲ行フコトヲ得トセリ
(村田)
該修正ヲ妥當トス
可決ス
第千四百七十一條
(栗塚)
本條ハ起案者ヨリ管理人ニ對シテ停止ストアルヲ管理人ノ利益ニ於テ進行セズト改メ來レリ
(箕作)
日本文ニテハ管理人ニ對シテ停止スト云ヘルヲ明了ナリトス第千四百六十六條ト關係アレバナリ原案ニ可決ス
第六章 動產ノ取得時効
第千四百八十一條 正名義且善意ニテ有體動產物ノ占有ヲ取得スル者ハ卽時ニ其所有者ト爲ル
此場合ニ於テ反對カ證セラレサルトキハ占有者ハ正名義ニテ占有スルモノト推定セラル
無異議
第千四百八十二條 動產物ノ占有者カ正名義ヲ有シ且善意ナル場合ニ於テモ其物カ所有者ノ盜取セラレ又ハ遺失シタルモノナルトキハ其所有者ハ遺失又ハ盜難ノ時ヨリ一个年間ハ占有者ニ對シテ其物ノ回復ヲ請求スルコトヲ得但占有者カ其物ヲ有償名義ニテ受ケタルトキハ其讓渡人ニ對スル求償ヲ妨ケス
背信ニ因リテ隱竊シ又ハ詐欺ヲ以テ得タル物ニ本條ヲ適用セス前條ノ規定ニ從フ
(委員長)
詐欺ニ係リタル場合ハ之ヲ回復スルヲ得ズト云フハ不都合ナリ
(村田)
詐欺ハ契約ヲ無効トスルヲ得ズ惟損害賠償ヲ請求スルニ過ギズ
(箕作)
佛國民法ハ詐欺ノ場合ハ盜難中ニ含蓄セシメ其取戻ヲ得ベシトセリ元來盜難ハ注意周到ナル人ト雖モ不虞ノ遭難ヲ免レズ詐欺モ亦欺クニ其道ヲ以テスレバ注意深キ人ト雖ドモ之ヲ欺クヲ得ベシト云フニアリテ詐欺ト盜難トヲ同一視シタリト雖ドモ原案ハ盜難ト詐欺トヲ區別シタルヲ以テ佛蘭西法ノ如ク適用スルヲ得ズ
(委員長)
第一項ヘ詐欺ノ文字ヲ挿入シタシ
(渡)
原案ノ精神ハ如何
(箕作)
原案ハ詐欺ヲ以テ盜難ヲ豫防スル如キ困難ト思惟セズ輕々其人ヲ妄信シ遂ニ詐欺セラルルニ至ル如キハ遭難者モ亦タ過失アルヲ免レズト云フ意思ナラン
(尾崎)
一个年ノ期限ハ二个年トシタシ
(箕作)
原案ノ期限ニテ可ナリ
(委員長)
年限ハ延長スルヲ可トス
結局二个年ニ可決ス
(村田)
詐欺ト盜取トヲ同一視スルハ頗ル輕重ヲ失スルモノト云フベシ詐欺ハ遭害者ノ承諾上不虞ノ間ニ成立シタル者ニシテ盜取ハ承諾ナキ場合ニ掠取セラレタル者ナレバ之ヲ混淆スベカラズ
(委員長)
詐欺ノ場合ト雖ドモ盜取サレタルトキト同一視セザレバ從來ノ習慣ニ反スベシ
(渡)
背信ヲモ前項ニ揭グベキヤ
(南部)
背信ヲ前項ニ揭グルヲ得ズ
(渡)
詐欺ト背信トハ同視セザルヲ得ズ
結局第一項盜取セラレノ下「詐欺セラレ」ノ文字ヲ挿入シ「其所有者ハ」ノ下ハ盜難、詐欺又ハ遺失ノ時ヨリ二个年間ハ云々トシ第二項ハ「又ハ詐欺ヲ以テ得」ノ文字ヲ刪除シ「物ニ」トアルヲ「物ニハ」トスルニ可決ス
第千四百八十三條 遺失シ又ハ盜取セラレタル物ヲ競賣又ハ公ノ市場ニ於テ又ハ此類ノ物ノ商人若クハ古物商人ヨリ善意ニテ買受ケタルトキハ所有者ハ其買受代價ヲ辨償スルニ非サレハ回復ヲ爲スコトヲ得ス
此場合ニ於テハ右ノ代價ニ付所有者ハ賣主ニ對シ又賣主ハ讓渡人ニ對シテ求償權ヲ有シ終ニ盜取者又ハ拾得者ニ遡ル
(栗塚)
本條第一項ハ冒頭ヲ盜取セラレ詐欺セラレ又ハ遺失シタル物トシ第二項盜取者ノ下詐欺者ノ文字ヲ挿入スベシ
可決ス
(南部)
第一項買受ケタルトキハトアルヲ買受ケタル者アルトキハトスベシ
可決ス
第千四百八十四條 無記名債權證書ヲ遺失シ又ハ之ヲ盜取セラレタル場合ニ於テ其證書回復ノ期間及ヒ條件ハ特別規則ヲ以テ之ヲ定ム
(栗塚)
本條モ前例ニ遵ヒ盜取セラレタル場合トアルヲ盜取セラレ詐欺セラレ又ハ遺失シタル場合トスベシ
可決ス
(箕作)
特別規則ト云フハ如何
(栗塚)
大藏大臣ノ吿知ニ出ヅル如キモノヲ云フベシ依テ特別ノ規則トスベシ
可決ス
第千四百八十五條 前記ノ場合ニ於テ回復者カ占有ノ無名義タリ又ハ惡意タルコトヲ證スルトキハ時効ハ三十个年ヲ經過スルニ非サレハ成就セス
無異議
第千四百八十六條 前記ノ規定ハ用方ニ因リテ不動產ト爲リタル動產カ其附着シタル不動產ヨリ分離セラレタル場合ニ於テハ其動產ニ之ヲ適用ス
前記ノ規定ハ記名債權又ハ文學技術若クハ工藝ノ所有權ノ如キ無體動產ニモ又動產ノ包括ニモ之ヲ適用セス但此等ノ物ニ關スル時効ノ期間ハ第千四百七十四條乃至第千四百七十六條ニ記載シタル區別ニ從ヒ不動產ニ關スルモノト同一ナリ
(栗塚)
本條乃至第千四百七十六條トアルハ起案者ヨリ改正シ來レリ其關係スル所第千四百七十六條ニ止マラザレバナリ
(南部)
本條第一項ハ明記セザルモ分明ナリト云フヲ以テ刪除建議ナリ
(箕作)
第一項ハ刪除スルニ及バズ場合ノ異ナルモノアルヲ以テナリ
(村田)
然リ
可決ス
第七章 免責時効
第千四百八十七條 義務ノ免責時効ハ債權者カ其權利ヲ行フコトヲ得ヘキ時ヨリ三十个年間之ヲ行ハサルニ因リテ成就ス但法律上別段短キ期間ヲ定メ又ハ債權ヲ時効ニ罹ラサルモノト定メタルトキハ此限ニ在ラス
無異議
第千四百八十八條 債務ノ元本カ年賦ニテ辨濟ス可キモノタルトキハ利息ヲ包含スルト否トヲ問ハス時効ハ各年賦ノ要求期ニ達シタル時ヨリ格別ニ之ヲ算ス
(村田)
格別トアルハ各別トナルベシ
可決ス
第千四百八十九條 債權カ年金權ナルトキハ無期又ハ終身ノモノト雖トモ其時効ハ證書ノ日附ヨリ三十个年ヲ以テ成就ス
然レトモ右ノ日附ヨリ二十八个年ノ後ニ至リ債權者ハ債務者ニ對シ時効ヲ中斷スル爲メ双方ノ費用ヲ以テ其權利ノ追認證書ヲ得ント要求スルコトヲ得
若シ債務者右ノ要求ヲ拒絕シ債權者裁判上自己ノ權利ヲ追認セシムルノ必要アルトキハ其費用ハ全ク債務者ノ負擔タリ
(栗塚)
本條第一項ハ三十个年ヲ以テ成就ストアル上ニ又ハ第八百八十七條ニ從ヒ債務者ノ元本ヲ償還スルヲ得ベキ時ヨリノ額高ヲ挿入スベシ個ハ起案者ニ質問ノ末回答アリタル結果ナリ
(箕作)
第一項冒頭債權ガ年金權ナルトキハトアルヲ債權ガ無期又ハ終身ノ年金權ナルトキトシ原案ノ同無期又ハ終身ノモノトアル數字ヲ刪除スベシ
可決ス
(淸岡)
二十八个年ノ後ト云ヘル限ヲ附シタルハ如何
(栗塚)
期限ノ將サニ盡ナントスル場合ニ爲スベキヲ云フニアリ
第千四百九十條 動產質又ハ不動產質ノ返還ヲ得ル爲メノ對人訴權ハ適法ナル方法又ハ免責時効ニ因リテ債務ノ消滅シタル後ニ非サレハ時効ニ罹ラス其時効ハ第千百十九條ニ記スル如ク債權者カ質ヲ有スル事實ノミニ因リ停止セス
(栗塚)
本條ハ「又ハ免責時効」トアルヲ刪リ其時効ハ以下ヲ除ク可シ第千百十九條ヲ修正シタル結果ナリ
可決ス
第八章 特別ノ時効
第千四百九十一條 人ノ身分ニ關スル訴權ハ法律カ其行使ヲ特別ノ期間ニ繋カラシムル場合ニ非サレハ時効ニ罹ラス
無異議
第千四百九十二條 相續人又ハ包括名義ノ受遺者若クハ受贈者ノ分限ヲシテ効用ヲ致サシムル爲メノ遺產請求ノ訴權ハ相續人又ハ包括名義ノ受贈者若クハ受遺者ノ名義ニテ占有スル者ニ對シテハ相續發開ノ時ヨリ三十个年ヲ經過スルニ非サレハ時効ニ罹ラス
(村田)
遺產請求ノ訴權トアル請求ノ文字ハ刪除ス可シ
(栗塚)
訴權ト云ヘバ請求ノ意義ヲ包有スベキモ尙ホ詳明ニ記載シ置クヲ可トス
第千四百九十三條 免責時効ハ左ニ揭クル諸件ノ辨濟ノ訴權ニ對シテハ五个年トス
第一 明額ナル金額ノ塡補又ハ遲延ノ利息
第二 無期又ハ終身ノ年金權ノ年金
第三 養料又ハ恩給ノ一期ノ支拂金
第四 借家賃又ハ借地賃
第五 果實又ハ日用品ノ每期ノ給與額
第六 教師、番頭、手代、使用人、僕婢、乳母ノ謝金又ハ給料ニシテ一个年每ニ定メラレタルモノ
此他一般ニ一个年每ニ又ハ更ニ短キ時期ヲ以テ定メタル金額又ハ有價物ニ係ル債務ニ付テハ亦同シ但其辨濟ノ方法如何ニ拘ハラス且下ニ規定シタル場合ハ此限ニ在ラス
(栗塚)
本條末項ハ世風ニ害アルヲ以テ報吿委員ニテハ之ヲ刪除スベシトス又第六ノ別項ハ此他一般ニ一个年每ニ又ハ更ニ短キ時期ヲ以テ定メタル金額又ハ有價物ニ係ル債務ニ付テモ亦同シ但其辨濟ノ方法如何ニ拘ハラズ且下ニ規定シタル場合ハ此限ニ在ラズトセリ
可決ス
第千四百九十四條 時効ハ左ノ訴權ニ對シテハ三个年トス
第一 内科外科ノ醫師、產婆、製藥者ノ世話、治術及ヒ調剤ニ關スル其訴權
第二 前條第六號ニ指定シタル教師、使用人其他ノ者ノ給料カ一个年ヨリ短ク一个月ヨリ長キ時期ヲ以テ定ラレタル場合ニ於テハ其訴權
第三 技師、工匠、測量師、製圖師ノ雇使ノ終ラサルトキト雖モ其經畫、意見及ヒ工事ニ關スル其訴權
第四 不動產ニ關スル築造、地均其他ノ工作ニ付テノ請負人ノ訴權
(渡)
第一「内科外科ノ」トアル文字ハ刪除スベシ
可決ス
(淸岡)
製藥者トアルヲ藥剤者トスベシ
可決ス
(村田)
第二給料ノ上ニ「謝金又ハ」ノ四字ヲ加入スベシ
可決ス
第千四百九十五條 公證人、辯護士、執達吏其他訴訟代人若クハ輔佐人カ職務ニ關シテ受ク可キモノニ付テノ其訴權ニ對スル時効ハ二个年トス
此場合ニ於テ時効ハ右各人ノ債權ヲ生セシメタル行爲又ハ訴訟ノ了終後ニ非サレハ進行ヲ始メス
然レトモ了終セサル事件ニ關シテハ右各人ハ五个年餘ニ遡ル行爲ノ爲メニ謝金ヲ要求スルコトヲ得ス
此規定ハ右各人カ其職務ノ爲メニ爲シタル立替金及ヒ支出金ニ之ヲ適用ス
(村田)
了終ノ文字ハ終了トスベキ前例ナレバ終了トスベシ
(尾崎)
五个年餘ニ遡ルコトヲ得ザルハ如何
(箕作)
行爲ノ繼續シタルトキハ五个年ヲ以テ時効ニ係リ行爲ノ繼續セザルトキハ二个年ヲ以テ時効成就スト云フニアリ
第千四百九十六條 時効ハ左ノ訴權ニ對シテハ一个年トス
第一 非商人ニ爲シタル供給ニ關スル日用品、衣服其他動產物ノ卸賣又ハ小賣商人ノ訴權但商人又ハ工業人ニ爲シタル供給ト雖トモ其者ノ商業又ハ工業ニ關セサル場合ニ於テハ亦同シ
第二 前記ノ區別ヲ以テ注文者ノ材料又ハ動產物ニ付キ仕事ヲ爲ス居職ノ職工又ハ製造人ノ訴權
第三 生徒又ハ習業者ノ教育、飮食及ヒ止宿ノ代料ニ關スル校長、塾頭又ハ師匠ノ訴權
(栗塚)
師匠ノ文字ハ奇異ナルモ個ハ私立學校ノ教師ノ如キ者ヲ云フニアリ
(村田)
居職ト云フハ如何
(栗塚)
出稼セザル職工ヲ云フ
(北畠)
非商人ニ對シテハ卸賣ト云フヲ得ズ非商人ニ對シテハ卸賣並ト云フ套語アリ
(箕作)
卸賣ト云ヘルハ卸賣商人ノ義ニシテ商人ノ資格ヲ指シタリ
(栗塚)
卸賣商人トスベシ
可決ス
(村田)
師匠ハ親方ト相關連セザルベカラズ
(北畠)
塾頭ハ生徒ノ頭首タリ
(南部)
校長、塾主、又ハ師匠トシ親方ハ師匠中ニ含蓄スル意味ニ看做シテハ如何
(委員長)
親方ヲ包含セシムルト云フハ不明ナルニアラズヤ
(栗塚)
實際上師匠ト云ヘバ親方ヲモ同樣視スルニ妨ナシ
(栗塚)
最初ハ教師ノ文字ヲ用ヒシモ本條ニハ校長塾主ノ文字ヲ採リタルニ依リ師匠ノ文字ハ親方ノ意味ヲ包含セシムルトシテ差支ナシ
結局師匠親方ノ訴權トスルニ決ス
第千四百九十七條 時効ハ左ノ訴權ニ對シテハ六个月トス
第一 第千四百九十三條第六號及ヒ第千四百九十四條第二號ニ指定シタル教師、使用人、僕婢其他ノ者ノ給料カ一个月又ハ更ラニ短キ時期ニ定メラレタル場合ニ於テハ其訴權
第二 旅店又ハ料理店ノ主人ヨリ供給シタル宿泊料、飮食料、及ヒ消費物ニ關スル其訴權
第三 日雇月雇ノ職工及ヒ勞力者ノ給料及ヒ其仕事ニ際シ爲シタル些少ノ供給ニ關スル其訴權
(村田)
第一給料ノ上ニ「謝金又ハ」ノ文字ヲ加入スベシ
可決ス
(村田)
第三供給ノ文字ハ材料トシテハ如何
(栗塚)
供給ト云フハ材料ノ義ナリ
(委員長)
爲シタルノ文字ハ何レニ關スルヤ
(栗塚)
職工又ハ勞力者ノ爲シタルト云フ義ナリ
(淸岡)
此等ノ者ノ爲シタルトスベシ
可決ス
第千四百九十八條 前四條ニ規定シタル時効ノ期間中債權者ノ不行爲ヨリ生スル辨濟ノ推定ハ自發ニ因リ又ハ判事ノ訊問ニ因リ現實ニ辨濟セサリシコトヲ自白シタル債務者之ヲ援用スルコトヲ得ス
若シ債務者ノ相續人、寡婦其他ノ一般承繼人カ右ノ場合ノ一ニ於テ債務者ノ權ニ基キ時効ヲ援用スルニ於テハ其前主カ此名義ニテ原吿ニ對シ何等ノモノヲモ負擔セスト善意ニテ思考スル旨ヲ確言ス可キノ要求ヲ受クルコト有リ
(栗塚)
本條ハ第二項ヲ刪除スベシ何トナレバ證據法中確言ノ文字ヲ除斥シタレバナリ
可決ス
(栗塚)
第一項ハ「自發ニ因リ又ハ判事ノ訊問ニ因リ」ト云ヘルハ數字ヲ刪除スベシ
可決ス
(村田)
推定ハ援用スルヲ得ズト云フヲ得ベキヤ
(栗塚)
差支ナシ
(村田)
援用スルヲ得ズト云ヘバ推定ハト云ハズ時効ハト云フベシ
(栗塚)
佛蘭西文ニテハ推定ハ援用スルヲ得ズト云フニ妨ナシ
(南部)
前四條トアルハ前五條トナルベシ
(箕作)
本條ハ前五條ニ規定シタル時効ハ現實ニ辨濟セザリシコトヲ自白シタル債務者之ヲ援用スルコトヲ得ズトシテハ如何
可決ス
第千四百九十九條 公證人、裁判所書記、辯護士、執達吏ハ三个年ノ後ハ其職務ノ事件ニ關シテ交附セラレタル書類ノ責任ヲ免カレ其書類返還ノ證ヲ提示スルノ義務ヲ免除セラル
然レトモ右等ノ者ハ豫メ規則ニ定メタル搜索手數料ノ辨濟ヲ受ケテ一个月内ニ其記錄保藏所ニ於テ搜索ヲ爲サシム可キノ要求ヲ受クルコト有リ
(栗塚)
本條第二項ハ刪除スベシ現行ノ官制ニテハ書記ハ搜索ヲ爲スベキ爲メ手數料ヲ收取スルヲ得ザルニ依レリ
可決ス
(村田)
書類ノ責任ヲ免カレトアルヲ書類ニ付キ責任ヲ免カルトシタシ
可決ス
第千五百條 本章ニ規定シタル時効ハ當事者ノ間ニ明確ナル計算書、定マリタル數額ニ付テノ債務ノ追認書又ハ債務者ニ對スル判決書アルトキハ之ヲ適用スルコトヲ得ス
(村田)
定マリタル數額ニ付テノ債務ノ追認書トアルハ數額ヲ揭ゲタル債務ノ追認書トシタシ
(栗塚)
數額ヲ記載シタル債務ノ追認書トスベシ
可決ス
補則
第千五百一條 本法頒布ノ當時ニ於テ進行中ナル時効ハ上ニ定メタル規則ニ從フ
然レトモ其繼續期ニ關シ舊時効カ新時効ヨリ一層長キ期間ヲ要スル場合ニ於テ債務者又ハ占有者ハ本法頒布ノ時ヨリ算シタル新時効ノ期間ヨリ舊時効ノ經過ス可キ殘期カ短キトキハ舊時効ヲ利スルコトヲ得
新時効ヨリ一層短キ繼續期ノ舊時効ニ關シテハ其期間ハ本法ニ定メタルモノニ同シキ期間ニ達スルマテ之ヲ伸長ス可シ
(委員長)
民法施行ニ付テハ本條ノ補則ニ止マラズ全部ニ關スルモノナキヤ
(箕作)
全部ニ關スルモノアルベシ
(委員長)
事柄ノ可否ハ本條ニテ論決シ置條ノ場所ハ更ニ適當ノ場所ヲ撰定スベシ其議ニ決ス
(箕作)
舊時効ノ必要ハ出訴期限ニ在ルベシ
(淸岡)
舊時効ヲ利用スルト云フハ穩當ナリトス