旧民法・法例(明治23年)

法律取調委員会 民法草案議事筆記(要録)

参考原資料

備考

  • 未校正のテキストデータです.
民法草案
第二編 財產
前置條例 財產及物ノ區別
第五百一條 財產ハ各個人若クハ社團又ハ國「デパルトマン」若クハ「コンミユヌ」又ハ公設所ノ資產ヲ組成スル權利ナリ
此權利ニ二種アリ物權及ヒ人權卽チ債權是ナリ
本條ハ報吿委員修正案ヲ提シタルニ付栗塚說明委員曰起案者公私無形人ノ文字ヲ用ヒサルハ冒頭ニ如是文字ヲ用置スルハ自ラ欲セサル所アリシナラン然ルニ報吿委員ハ此等ノ文字ヲ用ルノ妥當ナルヲ信シ卽チ修正案ヲ呈シタリト箕作委員曰財產ハ權利ナリト云ヘルハ理論上固リ如此ナルヘシト雖トモ之ヲ法文ニ揭クルハ頗ル學理的ノ教科書ニ類スルカ如キ嫌アリ又西洋各國ニモ殆ント如是文例ナシト今村說明委員曰財產トハ何ソト云ハハ卽チ權利ナリト云ハサルヲ得ス物ナリトハ云フヘカラス何トナレハ權利アツテ其物ヲ支配スルカ故ナリ栗塚說明委員曰貸金アレハ貸金ノ權ヲ有スルナリ家屋アレハ其家屋ヲ處分スルノ權アルナリト箕作委員曰此法ノ組織ニ於テハ此ノ法文ニ依ルヘキナリト雖トモ如何ニモ學理的ノ傾アルナリト今村說明委員曰ボアソナードハ當初ニ於テハ物ト財產ノ區別判然タルモ後々ニ至テハ其區別往々分明ナラサル所アリト栗塚說明委員建議シテ曰此草案ハ寔ニ綿密ニ草成セルヲ以テ之ヲ修正スルモ點々修正ヲ加フルニ過キサルカ之ヲ以テ未タ日本現實ノ情況ニ適スルヤ知ルヘカラサルカ故ニ若シ委員會ニシテ許可サルルナレハ此草案ハ別ニ之ヲ擱キ更ニ吾々ノ考案ヲ以テ一草ヲ起サント欲ス云々委員長曰其刪正ヲ加フヘキハ之ヲ加ヘ此案ヲ以テ議了スヘシト遂ニ報吿委員ノ修正案ニ決ス
第五百二條 物權ハ直チニ之ヲ物ノ上ニ行ヒ且總テノ人ニ對抗シ得ヘキモノニシテ主タルアリ又從タルアリ
主タル物權ハ左ノ如シ
第一 完全又ハ虧缺ノ所有權
第二 用收權使用權及ヒ住居權
第三 賃借權永借權及ヒ地上權
第四 占有權
此等ノ權利ハ一ノ所有權ヲ他ノ所有權ノ利益ニ於テ虧缺セシムル所ノ地役ト共ニ本編ノ第一部ニ之ヲ記載ス
人權ノ擔保ヲ爲ス從タル物權ハ左ノ如シ
第一 移動物質
第二 不動物質
第三 留置權
第四 先取特權
第五 抵當
右權利ハ第四編ニ之ヲ記載ス
本條第二第三ハ通過セルモ議定セス「此等ノ權利」云々ノ項地役ハ分ツヘキカ否ノ論アルニ際シテ委員長曰爰ニ數戶ノ通行權ヲ有スル地役ニ對シテ數戶中ノ一戶カ他轉シタルトキハ如何ト南部委員曰クソハ其跡ニ移リ來レル人ニ移轉スト鶴田委員曰物權ハ主タルモノアリ從タルモノアリトシテ其主タル物權ヲ明示シタルニ從タル物權ヲ明示セサルカ云々ニ際シテ地役ハ所有權ノ從ナリト云ヘル說錯出セシカ栗塚說明委員曰地役ハ所有權ノミノ從ニアラス用收使用權等ニモ屬スト箕作南部兩委員曰用收權使用權ハ所有權ノ支分權ナレハ到底地役ハ所有權ノ從タラサルヲ得スト栗塚說明委員曰此點ハ起案者カ地役ハ物權ノ從ト書クヘカラサルカ故ニ因ニ唯從タル意義ヲ示スニ止マルノミト交々討議ノ末遂ニ「所有權ノ從タル物權ハ地役トス」ト修正ス又人權擔保ノ從タル物權中第一第二ハ新奇ノ文字ヲ用置シタルニ付交々論議アリタル所委員長曰此點ハ第五百七條ニ於テ之カ動產タリ不動產タルノ意義ヲ明示スヘキヲ宜シトスト依テ此第一第二モ動產質不動產質ト修正ス末段右權利云々ハ刪除ス
第五百三條 人權卽チ債權ハ定マリタル人ニ對シ法律ノ認ムル原由ニ因テ其負擔スル行爲ノ義務又ハ封止ノ義務ヲ盡サシムル爲メニ行フモノニシテ亦主タルアリ又從タルアリ
主タル人權ハ本編ノ第二部ニ之ヲ記載ス
從タル人權ニシテ他ノ債權ヲ擔保スルモノ例ヘハ保證及ヒ連帶ノ如キハ第四編ニ之ヲ規定ス
本條ハ報吿委員ノ修正說ニ決ス
第五百四條 著述者其著書ノ發行技術者其技術物ノ製出又ハ發明者其發明ノ適用ニ付テノ權利ハ特別法ヲ以テ之ヲ規定ス〔伊民第四百三十七條〕
本條ニハ特別法ヲ以テ之ヲ規定ストアリテ權利ノ所屬タルヲ明示セサルハ缺點タルカ故ニ報吿委員ヲシテ其意義ニ修正セシムルニ決ス
第五百五條 權利ハ物權人權ヲ問ハス其目的タル物ノ種々ノ區別ニ從ヒ改樣ス其區別ハ物ノ本性又ハ人ノ意思又ハ法律ノ條例ヨリ生スルモノニシテ以下ニ揭クル如シ
原案ノ通リ
第五百六條 物ニ有體ナルアリ又無體ナルアリ
有體ナル物トハ人ノ感官ニ觸ルルモノヲ謂フ例ヘハ地所建物動物用具ノ如シ
無體ナル物トハ智能ノミニテ理會スルモノヲ謂フ卽チ左ノ如シ
第一 物權又ハ人權其モノ
第二 第五百四條ニ記載シタル著述技術又ハ製作上ノ所有權
第三 發開シタル相續ニ解散シタル會社ニ又ハ淸算中ノ共通ニ係ル財產及ヒ債務ヲ包括シタルモノ
本條ハ別項ノ例ヘハノ文字ヲ刪除シ他ハ第一ノ其モノノ三字ヲ刪除シ第二ノ所有權ヲ權利ト修正スル報吿委員ノ修正說ニ決ス
第五百七條 物ハ其本性ニ因リ又ハ所有者ノ用方ニ因リ又ハ法律ノ規定ニ因リ其遷移スルコトヲ得ルト否トニ從ヒ移動物タリ又不動物タリ〔佛民第五百十六條第五百十七條及ヒ第五百二十七條〕
原案ノ通
第五百八條 本性ニ因ル不動物ハ左ノ如シ
第一 地所平路堆地及ヒ其他土地ノ部分〔第五百十八條〕
第二 牆籬柵
第三 貯水所、湖、池、溝渠、漕河、泉源及ヒ種々ノ水流〔伊民第四百十二條〕
第四 水ヲ湛ヘ又ハ水力ヲ殺ス爲メニ設ケタル堰堤杭及ヒ其他ノ工作物
第五 土地ニ附着シタル浴場及ヒ土地ニ附着シテ水力若クハ風力ヲ用ユル輾磨機並ニ用方ノ何タルヲ問ハス定着シタル水力若クハ蒸氣ノ機器〔第五百十九條〕
第六 森林、大小ノ樹木及ヒ其他土地ニ接着シタル種々ノ植物但第五百十三條ニ記載シタル培養草木ハ此限ニ在ラス〔第五百二十條〕
第七 果實及ヒ收穫物ノ成熟シタリト雖モ未タ土地ヨリ離レサルモノ但第五百十三條ニ記載シタルモノハ此限ニ在ラス〔第五百二十一條〕
第八 本性ノ如何ヲ問ハス礦物及ヒ坑石ノ未タ土地ヨリ離レサルモノ
肥料土及ヒ泥炭モ亦右ニ同シ〔千八百十年四月二十一日ノ佛法律第一條乃至第四條第八條及ヒ第九條〕
第九 所用又ハ用方ノ如何ナルト定期内ニ取毀ツヘキモノナルトヲ問ハス土地ニ定着シ又ハ支置シタル建物但第五百十三條ニ記載シタルモノハ此限ニ在ラス〔第五百十八條〕
第十 土地又ハ建物ニ附着シタル筒管ニシテ水ノ流入引入若クハ流出ノ爲メ又ハ瓦斯若クハ溫氣ノ引入ノ爲メニスルモノ〔第五百二十條〕
第十一 土地又ハ建物ニ附着シタル電氣器及ヒ其附屬物
第十二 前數項ノ建物ノ外部ノ戶扉
其他總テ本性ニ因リ轉移スヘキモノト雖モ建物ニ必要ナル一切ノ附屬物
本條列次セシ例示ハ成ル可ク日本ニ於テ現實普通ナル案件ヲ擧示スヘシト云フ動議ニ依リ報吿委員ノ修正ニ附ス
第五百九條 移動物體ノ所有者カ其土地又ハ建物ノ利用便益若クハ裝飾ノ爲メニ永遠又ハ不定ノ時間其土地又ハ建物ニ供ヘタル移動物ハ本性ノ何タルヲ問ハス用方ニ因ル不動物タリ〔第五百二十四條第一項第二項及ヒ第十三項〕
土地又ハ建物ニ付テ有期ノ使用若クハ收益ノ權利ヲ有スル者カ右ニ同シキ目的ヲ以テ其土地又ハ建物ニ供ヘタル移動物體ニ付テモ亦右ニ同シ〔第五百二十五條〕
本條ハ報吿委員ノ修正案ニハ其二項ヲ刪除セントスルニアリ
移動物件ヲ以テ暫時他人ノ所有地若クハ其家屋内ニ附置シタルヲ其他人自己ノ所有權ヲ他轉スルニ際シ其附置物件モ共ニ第三者ニ獲取サルルカ如キ不幸アルハ最モ不都合ニ屬ストノ動議ニテ假ニ其修正案ニ決ス
第五百十條 前條ニ從ヒ用方ニ因ル不動物ト看做スモノハ左ノ如シ但反對ノ證據アルトキハ此限ニ在ラス〔第五百二十四條第三項乃至第十二項參照〕
第一 土地ノ耕作又ハ利用ノ爲メニ供ヘタル駄負ノ獸又ハ牽挽ノ獸
第二 肥料ノ爲メニ土地ニ畜ヒ置キタル獸類
第三 耕作ノ道具及ヒ用具
第四 土地ノ耕作ノ爲メニ供ヘタル種子、藁及ヒ肥料但其土地ヨリ生シタルモノニアラサルトキモ亦同シ
第五 養蠶場ノ利用ノ爲メニ供ヘタル蠶種
第六 葡萄果樹及ヒ其他ノ樹木ヲ支持スル爲メニ供ヘタル棚架杭柱及ヒ竹竿
第七 土地ノ農產物ニ變體ヲ加ヘ又ハ其價直ヲ有セシムル爲メニ供ヘタル器具及ヒ用具例ヘハ搾器、金、蒸溜器、桶及ヒ樽ノ如シ
第八 工業場ノ利用ニ供ヘタル機器器具及ヒ用具
第九 水ニ浮フ浴場土地ノ常用ニ供ヘタル舟梁又ハ小舟但其水流ノ公有ニ係リ又ハ他ノ所用者ニ屬スルトキモ亦同シ〔伊民第四百九條〕
第十 園庭ニ裝置シタル石燈籠水鉢及ヒ岩石
第十一 建物ニ附着セシメタルモノニシテ毀損スルニアラサレハ取離スコトヲ得サル匾額玻鏡彫刻物及ヒ種々ノ裝飾物〔第五百二十五條〕
第十二 疊建具及ヒ其他之ニ類スル居宅ノ補足物但所有者ノ仕附ケタルモノニシテ其家屋ニ人ノ住セス又ハ他人之ニ住スルトキ
第十三 修復中ノ建物ヨリ取離シテ再ヒ之ニ用ユヘキ材料〔第五百三十二條〕
第十四 池中ノ魚窩中ノ蜜蜂鳩舎中ノ鳩
本條ハ箕作委員ノ此條列項ノ例示モ第五百八條ト同斷ニ報吿委員ノ修正ヲ望ムト云フニ決シ又第十二ノ但書ハ箕作委員曰起案者ノ意ニハ所有者自身ノ住スル時疊建具ハ屏風箪笥ト等シク動產類ニ屬スルモ他人ノ之ニ住スル時ハ其疊建具ヤ用方ニ依テ不動物タル意思ヲ顯ハスモノトシタルヘシト各委員ハ何分但書ノ不都合タルヲ認メラレ報吿委員ノ修正案ニ決ス又第十四モ報吿委員ハ刪除說ナリシ委員長曰此レヲ刪除スレハ此點ハ何ニ屬スヘキカ栗塚說明委員曰動產ニ屬スヘシト夫ヨリ動產不動產ノ所屬ニ付各動議アリシカ淸岡委員曰此ノ動產不動產ヲ決スルハ容易ニアラス依テ先ツ此所ヲ除省スルカ否ヲ決スレハ足レリト委員長曰存スレハ用方ノ不動產トナリ省ケハ動產トナルカ故ニ用捨ヲ決スルカ肝要ナリト栗塚說明委員曰又駄負ノ獸牽挽ノ獸ノ如キ日本ノ現實ニ於テ土地ヲ賣却スレハ共ニ附從スルノ感アルカ俄カニ明言シ難シ佛國ノ如キハ此ノ習慣アリ卽チ農業ヲ保護スルノ精神ヨリ土地ヲ賣却スレハ右ノ類件ハ共ニ附從スヘキ法律アリト雖モ日本人民ノ如キ未タ其感ヲ惹起スル習慣アラストセハ速了ニ之ヲ議定スルモ如何ト遂ニ報吿委員ノ再調ニ附ス
第五百十一條 法律ノ規定ニ因ル不動物ハ左ノ如シ
第一 上ニ列記シタル有體ノ不動物ニ係ル物權〔第五百二十六條〕
第二 不動物ニ係ル物權ヲ得ントシ又ハ回復セントスル人權
第三 建築者ノ材料ヲ以テスル建物ノ築造ヲ目的トスル債權
第四 國ニ對スル年金權及ヒ其他移動物ニ係ル債權ニシテ法律ニ因テ不動物ト爲シ又ハ法律ノ條例ニ依リ各個人カ不動物ト爲シタルモノ
本條ハ第四ノ國ニ對スル年金權及ヒ其他ノ文字ヲ刪除スヘキ報吿委員ノ修正說ニ決ス
第五百十二條 動物ノ如キ自力ニ因リ又ハ生活セサル物ノ如キ他力ニ因テ遷移スルコトヲ得ヘキ物ハ本性ニ因ル移動物ナリ但第五百八條及ヒ第五百十條ニ記載シタルモノハ此限ニ在ラス〔第五百二十八條〕
原案ノ通
第五百十三條 一時ノ目的ヲ以テ假ニ土地ニ定着セシメタル物體ハ用方ニ因ル移動物ナリ卽チ左ノ如シ
第一 建築ノ足場及ヒ支柱
第二 建築ノ間職工及ヒ材料ヲ蓋フカ爲メニ供ヘタル小屋
第三 樹藝者及ヒ園工カ賣ル爲メニ土地ニ培養シ又ハ保存シタル草木
第四 取毀ツ爲メニ移付シタル建物及ヒ其他ノ工作物並ニ拔取ル爲メニ移付シタル大小ノ樹木及ヒ收穫物
原案ノ通
第五百十四條 法律ノ規定ニ因ル移動物ハ左ノ如シ
第一 前ニ指定シタル移動物ニ係ル物權
第二 金錢飮食品及ヒ其他有體ノ移動物ヲ得ントシ又ハ回復セントスル債權但不動物ヲ以テ債權ノ擔保ニ充テタルトキモ亦同シ
第三 所爲ノ成就ヲ又ハ不動物ニ係ル權利タリトモ權利行用ノ封止ヲ他人ニ要求スル債權
第四 無形人タル民事又ハ商事ノ會社ノ解散ニ至ラサル間社員カ其會社ニ對シテ有スル權利但會社ニ不動物ノ屬スルトキモ亦同シ〔第五百二十九條〕
第五 第五百四條ニ指定シタル著述技術及ヒ製作上ノ所有權
本條第五ノ所有權ヲ權利ト修正シ第一ノ前ノ字ヲ上ノ字ニ改ム
第五百十五條 發開シタル相續、解散シタル會社又ハ淸算中ノ共通ノ一分ニ付テ有スル權利ノ移動物タリ又ハ不動物タル本性ハ分配ノ時ニ其各當事者カ受クル財產ノ本性ニ因テ定マルモノナリ
當事者ノ一方ノ撰擇ニ任スル移動物又ハ不動物ヲ目的トスル擇一債權ノ本性モ亦辨濟ニ付テ撰擇シタル物ノ本性ニ因テ定マルモノナリ
原案ノ通
第五百十六條 物ハ他ニ附屬セスシテ完全ナル效用ヲ爲スト否トニ從ヒ主タルアリ又從タルアリ
例ヘハ用方ニ因ル不動物ハ本性ニ因ル不動物ノ從タリ地役ハ要役地ノ從タリ債權ノ擔保ハ其債權ノ從タリ
主タル物ノ移付ハ其從タル物ノ移付ヲ帶フ但反對ノ明言アルトキハ此限ニ在ラス
委員長曰但書ノ明言ハ證言等ノ意義ト異ル所以ヲ質シタシ淸岡委員曰明言ハ別ニ證據人アラサルハ確認スヘカラス云々結局原案ニ決ス
第五百十七條 物ハ特定物卽チ確定物トシテ之ヲ觀定スルコトヲ得例ヘハ殊別シ卽チ定マリタル一箇ノ家一箇ノ田一箇ノ獸ノ如シ
或ハ數量尺度ヲ以テ定ムル量定物トシテ之ヲ觀定スルコトヲ得例ヘハ金幾圓米幾石酒幾樽ノ如シ
或ハ增減シ得ヘキ多少類似ナル物ノ聚集トシテ之ヲ觀定スルコトヲ得例ヘハ畜群書庫ノ書籍店舖ノ商品ノ如シ
或ハ資產ノ全部又ハ一分ヲ組成スル財產ノ包括トシテ之ヲ觀定スルコトヲ得例ヘハ相續ノ總テノ移動物若クハ不動物又ハ相續ノ全部若クハ一部ノ如シ
栗塚說明委員曰本條ハ物ヲ視ルノ方角ヲ示指スルモノナリ數量尺度ハ目方員數長短等ヲ以テスルノ意味ナリ特定物ハ例ハ肥後米ト稱スルカ如シト鶴田委員曰本條ハ第五百十四條ノ文例ト異ルモ矢張左ノ如シノ文例ヲ用テハ如何種々動議ノ末原案ニ可決ス
第五百十八條 物ハ其本性ニ因リ一回ノ使用ニテ直チニ消費スルコトヲ得ヘキモノアリ又否ラサルモノアリ〔第五百八十七條〕
右區別ハ用收權及ヒ消費貸借ノ事項ニ付キ主トシテ之ヲ適用ス
淸岡委員曰本條ハ是迄性質トシタリシニ此ニハ更ニ本性トセシハ如何栗塚說明委員曰本性ハ天然ノ意ヲ指シ性質ハ契約ノ性質ト云フニ用ユル例ナルヲ以テ別リト淸岡委員曰本性トハ神經アリ良心アルモノニ對シテ云ヒ無神經ノモノニ對シテ云ハス云々遂ニ原案ニ可決ス
第五百十九條 物ハ當事者ノ意思ニ因リ又ハ法律ノ條例ニ因リ等シキ物ヲ以テ代フルコトヲ得ルト否トニ從ヒ代補スルコトヲ得ルモノアリ又代補スルコトヲ得サルモノアリ〔第千二百九十一條〕
量定物及ヒ使用ニ因テ直チニ消費スル物ハ槪シテ當事者ノ意思ニ因ル代補物ト看做ス
委員長曰當事者ハ之ヲ復稱ニ用ルト單稱ニ用ルトノ差ハ如何栗塚說明委員曰復稱ナリ單稱ノ際ハ第百十五條ノ例ニ依ルト別項ハ量定物及ヒノ下ヘ一回ノノ三字ヲ挿入シ因ノ字及ヒ直チニノ三字ヲ刪除ス
第五百二十條 物ハ實體上又ハ智能上分割スルコトヲ得ルト否トニ從ヒ可分ノモノアリ又不可分ノモノアリ〔第千二百十七條第千二百十九條及ヒ第千二百二十一條〕
過半ノ地役及ヒ事ヲ爲シ若クハ爲ササル若干ノ義務ハ本性ニ因リ不可分ノモノタリ
抵當及ヒ其他債權ノ物上擔保ハ法律ノ條例ニ因リ不可分ノモノタリ〔第二千八百十三條及ヒ第二千百十四條〕
物ノ一分ノ給付ニテハ當事者其合意ニ於テ見込ム所ノ便益ヲ得ル能ハサルトキハ其物ハ當事者ノ意思ニ因リ不可分ノモノタリ
原案ノ通
第五百二十一條 物ハ所有ニ係ルモノアリ又所有ニ係ラサルモノアリ
所有ニ係ル物トハ私ノ資產又ハ公ノ資產ノ部分ヲ爲スモノヲ謂フ
所有ニ係ラサル物ハ無主ノモノアリ又公共ノモノアリ〔第五百三十七條以下〕
原案ノ通リ
第五百二十二條 無主ノ物トハ何人ニモ屬セスト雖モ所有權ノ目的トナルコトヲ得ルモノヲ謂フ例ヘハ委棄シタル財產山野ノ鳥獸河海ノ魚介ノ如シ
本條ハ稍動議アリシカ遂ニ原案ニ決ス
第五百二十三條 公共ノ物トハ所有權ハ何人ニモ屬スルコトヲ得スシテ其使用ハ總テノ人ニ屬スルモノヲ謂フ例ヘハ空氣光線大洋流水並ニ湖ノ水及ヒ圍ハサル池ノ水ノ如シ〔第七百十七條〕
淸岡委員曰河流ノ如キハ最モ錯雜困難ナルモノ故輕々ニ看過スヘカラスト松岡委員曰此場合ニテハ所有權ハ禁止セルモ便用權ヲ許與シアル以上ハ從來使用セサリシ流水ヲ更ニ使用スルカ如キアラサルカ箕作委員曰圍ハサル池ノ水ハトアルハ頗ル不穩當ニ屬スルカ故ニ刪除シタリト卽チ可決ス
第五百二十四條 所有ニ係ル物ニシテ各個人ニ屬セサルモノハ公有物又ハ國「デパルトマン」若クハ「コンミユヌ」ノ私有物ノ部分ヲ爲スモノナリ
此物ノ移付及ヒ管理ハ行政法ヲ以テ之ヲ規定ス
箕作委員曰本條各個人ハ第五百一條ニ照スニ公私兩議ヲ帶ヒサル可ラストセハ此所ニハ私ニ屬スルノ意義ヲ脫スト依テ各個人ノ下ヘ又ハ私ノ無形人ノ數字ヲ塡補シ公有物ノ物字ヲ刪ル又栗塚報吿委員ノ說明ニヨリ國「デパルトマン」「コンミユヌ」ヲ刪リ更ニ公ノ無形人ト改メ且ツ私有物ノ物字ヲ刪除ス別項行政法ヲ以テトアルニ付キ委員長曰此種ノ文字ハ構成法ニハ特別法トアリ民法ニ行政法トアルハ一樣ナラス云々箕作委員曰其點ハ起案者ハ一定ノ積ナリ特ニ明ニ行政法ニ屬スルモノノ如キハ行政法ト記スルモノノ如キモ何法ニ屬スルヤ不明ノ者ハ特別法ト記スルナリト
第五百二十五條 國ノ使用又ハ用益ニ供ヘタル物ハ公有物ノ部分ヲ爲ス例ヘハ左ノ如シ〔第五百三十八條〕
第一 國領ノ海及ヒ海濱但海濱ハ春分秋分最高潮ノ到ル處ヲ以テ限ト爲ス
第二 道路、鐵道、舟ノ通スヘク若クハ筏ノ通スヘキ川、又ハ堀割及ヒ其河川ノ床
第三 城塞壘壁及ヒ其他陸海防守ノ工作物
第四 陸海軍ノ武庫並ニ其中ニ在ル各種ノ兵器器械運輸具及ヒ軍用品
第五 海軍ヲ構成スル軍艦、軍用ノ運送船及ヒ其他ノ船舶並ニ其附屬物
第六 皇宮並ニ中央及ヒ地方ノ官廳ノ建物
淸岡委員曰本條ハ報吿委員之レヲ修正シテ國用云々トセシカ國用ト云ハ廣キ意義ナルヘシト雖トモ道路ノ如キハ一般ニ屬スルモノナルモ炮堡ノ如キハ政府一部ニ屬スルカ如キモノナレハ原案ノ如ク別記セルヲ妥當ナリトス云々箕作委員ハ此說ヲ贊成サレタリ松岡委員曰用益ノ字ハ既ニ極定セルカ箕作委員曰然ラス種々動議アリシカ遂ニ報吿委員ノ修正案ハ成立セス南部委員曰第一ノ春分秋分潮水ノ最高ハ鹿児島ト北海道ノ如キハ右二季ノ際決シテ最高ナラスト故ニ此點ハ刪除シテハ如何ト委員長曰春秋分ニハ或ル地方ハ最高潮ナラサルモ全體上ニ於テ最高潮時ナレハ存置スヘシ第二ハ淸岡委員曰佛國ニハ舟筏ノ通スヘキ河水ハ極定アリ日本ニハ如何ト委員長曰此點ハ目下内務省ノ調査中ニ係ルト第六ハ淸岡委員曰皇宮ハ國ノ使用ニモ又ハ用益ニモ屬セサルモノナルニ此法律ニ明記スルハ不都合ニアラスヤ依テ之ヲ刪除スヘシ委員長曰如是セハ最モ不都合ニ屬ス何トナレハ皇宮ハ天子ノ私有ニアラス天子ノ君臨上ニ於テ國民ノ奉供セサルヘカラサルモノナレハナリ天子ハ法律ノ範圍内ニアラサルトキハ最モ刑法上ノ議論ナルカ民法ニ於テモ人事ニ屬スル所ハ餘程取除アリ將來ハ取除ノ場合ハ特ニ之ヲ取除クモ亦タ取除クヘカラサル所ハ明ニ之ヲ記定セサルヘカラス各員曰此點ヲ取除ケハ却テ皇室ノ尊威ヲ損スルニ至ラン何トナレハ各個私有中ノモノナラシメハ地役ノ義務モ守ラサルヘカラス租稅ノ義務モ免ルヘカラスト淸岡委員曰離宮ノ如キハ之ヲ如何委員長曰君臨上必用ニ屬スル芝遠遼館ノ如キ外國貴紳ヲ接待スルニ缺クヘカラサル所ハ素ヨリ公有ニ屬スヘシ云々原案ニ決ス
第五百二十六條 公ノ無形人カ各個人ト同一ナル名義ニテ有スル物ニシテ金錢ヲ見積ルヲ得ル收入ヲ生スヘキモノハ此無形人ノ私有物ノ部分ヲ爲ス例ヘハ國有ノ海潟森林牧場ノ類ノ如シ
所有者ナキ不動物ハ當然國ニ屬ス相續人ナクシテ死セシ者ノ相續モ亦同シ〔第五百三十九條及ヒ第七百十三條〕
遺失物及ヒ漂流物ノ所有權ハ特別法ヲ以テ之ヲ規定ス〔第七百十七條〕
本條二項相續云々ハ松岡委員曰此相續ハ遺產相續ナルヘキカ相續物ニ關スルカ相續權ニ關スルカノ點ニ至テハ頗ル不明ヲ感スト栗塚報吿委員ハ相續物ト見サルヘカラサルヲ說明シタリ
第五百二十七條 物ハ私ノ所有權又ハ私ノ債權ノ目的ト爲スコトヲ得ルト否トニ從ヒ又所有者カ其物ヲ合意ノ目的ト爲スコトヲ得ルト否トニ從ヒ通易スルコトヲ得ルモノアリ又通易スルコト得サルモノアリ〔第百二十八條〕
發開セサル相續、爵位、勳章、官職、文武ノ恩給ノ如キ公ノ秩序ノ爲メ法律ニテ通易ヲ禁シタル物及ヒ公有ノ財產ハ通易スルコトヲ得サルモノタリ
本條文武ノ恩給ハ第五百三十條ニ例示スルヲ以テ報吿委員ノ修正案ニ決ス
第五百二十八條 物ニ移付スルコトヲ得ルモノアリ又移付スルコトヲ得サルモノアリ
所有權ヨリ支分シタル後ノ使用權若クハ住居權、要役地ヨリ引離セルモノト看做シタル地役並ニ政府ノ與ヘタル開礦ノ特許及ヒ其他ノ特權若クハ專占權ハ槪シテ通易スルコトヲ得ルモノナリト雖モ移付スルコトヲ得サルモノタリ〔第千五百五十四條及ヒ第千五百九十八條〕
其他法律ニテ移付ヲ禁セサル物又ハ人意ヲ以テ之ヲ禁スルコトヲ法律上允許スル場合ニ於テ之ヲ禁セサル物ハ移付スルコトヲ得ルモノタリ
箕作委員曰本條ニ特權若クハ專占權トアルハ其區別實ニ明瞭ナラスト松岡委員曰通易スルモ移付スルヲ得ストハ如何ナルカ南部委員曰政府カ人民ニ特許スルヲ得ルモ其人民ハ又之ヲ他ニ轉付スルヲ得サルノ義ナリト箕作委員曰此點ハ起案者カ一ノ老婆心ヨリ移付ノ禁止ヲ挿入シタルナラント松岡委員曰政府ノ特許ハ卽チ政府ノ保護ニアラスヤ栗塚說明委員曰否ナ契約ナリ松岡委員曰特許云々通易スルヲ得ルトアルモ特許カ既ニ通易シタルニアラスヤ然ラバ過去ニ屬スルモノニ似タリト此意義ハ已ニ明知セルモ文字上ハ實ニ不明ニ屬ス之ハ扨置キ法律ニ義解ヲ加フルノ利害ハ種々議論アル所ナルレトモ先夫ハ措キ此草案ニ於テハ既ニ義解ヲ加フルカ成例ニ屬スルモノトセハ移付ノ文字ハ何故ニ義解セサルヤ栗塚說明委員曰ソハ此點ニ止ラス外ニモ加フヘキ所少シトセス云々遂ニ通易スルコトヲ得ルモノナリ修正シテ通易物ナリ云々トス
第五百二十九條 物ハ法律ニ定メタル條件ヲ具備スル占有ニ因リ得取スルコトヲ得ルト否トニ從ヒ時效ニ係ルコトヲ得ルモノアリ又之ニ係ルコトヲ得サルモノアリ〔第千五百六十條第千五百六十一條及ヒ第二千二百二十六條〕
原案通
第五百三十條 物ハ其所有者ノ債權者カ其代價ヲ以テ辨濟ヲ得ル爲メ強賣ヲ請求スルコトヲ得ルト否トニ從ヒ差押フルコトヲ得ルモノ又差押フルコトヲ得サルモノアリ
通易スルコトヲ得サル物、移付スルコトヲ得サル物及ヒ其他法律若クハ人ノ處分ニテ差押ヲ禁シタル物ハ差押フルコトヲ得サル物タリ例ヘハ國ニ對スル年金權及ヒ恩惠ノ設定ニ因リ差押フヘカラスト定メタル終身ノ年金權若クハ養料ノ如シ〔佛訴訟法第五百八十一條第五百八十二條第五百九十二條及ヒ第五百九十三條〕
本條ハ報吿委員ノ修正案ニ文武ノ恩給トアルヲ文武官ノ恩給トスヘキ修正動議アリシカ文武ノ恩給ハ在官ト否ラサル場合トアルナリト云フヲ以テ報吿委員ノ修正案ニ決ス
第一部 物權
第一章 所有權
第五百三十一條 所有權トハ法律又ハ合意ヲ以テ定メタル制限及ヒ條件ニ從フテ最モ廣ク物ヲ使用シ之ヨリ收益シ及ヒ之ヲ處分スル自然ノ權利ヲ謂フ〔第五百四十四條〕
所有者ノ其所有物ニ合體シ若クハ附添シタルモノ又ハ其全キ變體ヨリ生シタルモノヲ得取スルノ規則及ヒ條件ハ第三編ニ之ヲ定ム〔第五百四十六條〕
本條ハ報吿委員ノ修正說ニ依リ天然ノ二字ヲ刪除ス
第五百三十二條 不動物ノ所有者ハ適法ニ認定シ及ヒ宣吿シタル公益ニ因由シテ所有權徵買法ニ從ヒ定メタル償金ヲ占有ニ先タチ拂渡サルルニアラサレハ國「デパルトマン」又ハ「コムミユーン」ノ爲メ其所有權ノ讓渡ヲ強要セラルルコトナシ〔第五百四十五條〕
有體又ハ無體ノ移動物ニ付キ公益ニ因由スル所有權徵買ハ每回定ムル特別法ニ依ルニアラサレハ之ヲ行フコトヲ得ス
國又ハ官廳ニ屬シ若クハ屬スヘキ先買權及ヒ戒嚴戰爭又ハ一般凶災ノ時ニ行フ飮食品ノ徵求ニ付テハ前項ノ例ヲ用ヰス
南部委員曰國「デパルトマン」又ハ「コムミユーン」ヲ報吿委員ニ於テ公用ノノ三字ニ修正シタルハ自然行政法等ニ關スルヲ以テ他日地方制度變更ノ爲メ此處モ亦變更セサルヲ得サルノ恐アレハナリ云々又末項戒嚴戰爭ノ下ニ修正ヲ加ヘタルハ原案ノ儘ニテハ飮食物ニ止リ其他ノ物ニ及ホシ難キ嫌アリ現行ノ徵發令ハ飮食物ニ止マラサルカ故如斯修正シタリト又前項ノ文字ハ本條ト修正ス又徵買ノ字ニ付此點ハ引上ノ意味ナルヘケレハ徵買ト云ハンヨリ別ニ妥當ノ文字ナキヤ各員動議ノ末假ニ徵收ニ決ス二項每回ノ字ニ付キ松岡委員曰此所ハ每度ノ意義ニアラスシテ每種ノ意義ニハアラスヤ如此ナラサレハ他日國會開設ノ後ハ動產物ニ關シテハ度々議院ノ決議ヲ要スルコトトナルヘシト南部委員曰動產ノ徵收殆ント絕テ無クシテ稀ニ有ノ事實ニシテ弊害ヲ避ルノ主旨ナリト松岡委員曰法律ヲ每回ニ設クルト云フハ今日ノ如キ其容易ナルヘキ時ハ可ナルヘシト雖トモ國會設立ノ後ニ至レハ其事甚困難ナルヘキニ付キ修正セラレタシト南部委員曰每回ヲ除ケハ動產不動產モ差別ナキニ至ラン松岡委員曰法律ヲ確實ニ設定スルヲ得レハ時ニ之ヲ設立スルヲ要セスト栗塚說明委員曰動產ハ容易ニ徵收スヘカラサルヲ其原則トスルモノナレハ其特別ニ屬スル徵收ハ行政官ニ委ヌヘカラス必ラス立法官ノ立會ヲ要スヘシト松岡委員曰此動產ノ法則ハ金釜畫幅ノ類ヲシモ云ニアラス或ハ兵器ノ如シ若シ兵端ヲ開カントスル敵國ニ之ヲ賣附スレハ國ノ安危ニモ關スルカ如キ場合ニ際シテハ不動產トノ輕重ヲ比スルモ決シテ輕ニアラサルモノアルヘシト尾崎委員曰每回ハ必要ノ字ナリ動產ハ時々價直ノ差モアルヘケレハ法律ヲ以テ一定スヘカラスト松岡委員曰立法ハ其大體ノ區別ヲ立ルモノニシテ代價ノ如キ細密ニ立チ入ルモノニアラス云々シタルカ遂ニ原案ノ儘ニ決ス三項ハ更ニ各員ノ動議ヲ起シ遂ニ戒嚴戰爭ヲ刪除シ徵發令ヲ以テ定メタル物ノ徵求ト云ヲ補塡シ又ハ一般凶災トアル一般ノ字ヲ刪除シ凶災ノ時ニ行フノ下ヘ物ノ字ヲ加フ飮食品ノ字ヲ刪除シ前項ヲ本條ノ字ニ換正ス
第五百三十三條 所有者ハ公益ノ工事ノ實行ヲ容易ナラシムル爲メ償金ヲ得テ其所有物ノ一時占據ノ許諾ヲ強要セラルルコトアリ本條許諾ノ文字ハ箕作委員ノ動議ニ依リ承諾ト修正ス
第五百三十四條 物料ノ採堀道路ノ劃線樹木ノ伐採水及ヒ其他ノ物ノ占取ニ付一般又ハ一地方ノ公益ノ爲メ設ケタル地役ハ行政法ヲ以テ之ヲ規定ス〔第六百五十條〕
原案ノ通
第五百三十五條 土地ノ所有者ハ便宜ニ從ヒ其地上ニ一切ノ建築植付耕作ヲ爲シ池ヲ設ケ又ハ之ヲ廢スルコトヲ得
又其地下ニ一切ノ開墾試堀及ヒ物料ノ採堀ヲ爲スコトヲ得
但右何レノ場合ニ於テモ一般ノ利益ノ爲メ行政法ヲ以テ定メタル規定及ヒ制限ニ從フコトヲ要ス
相隣地ノ利益ノ爲メ所有權ノ行用ニ付シタル其他ノ制限及ヒ條件ハ地役ノ章ニ之ヲ規定ス〔第五百五十二條〕
本條一項池ヲ設ケノ四字及ヒ二項ノ試堀三項ノ但ヲ刪除ス四項其他ノ字ハ淸岡委員曰此ハ何ノ其他ナルヤ栗塚說明委員曰前項ヲ受クト遂ニ修正シテ其他ノ制限及ヒ條件ニシテ相隣地ノ利益ノ爲メ所有權ノ行用ニ生シタル者ハ云々トス
第五百三十六條 所有者ハ其所有地ニ存スルコトアルヘキ礦物搜索ノ爲メ試堀ヲ爲スコトヲ得然レトモ礦物ニ關スル特別法ニ從ヒ政府ノ特許ヲ得シ後ニアラサレハ開坑ヲ爲スコトヲ得ス〔第五百五十二條〕
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第五百三十七條 所有者其物ノ占有ヲ妨ケラレ又ハ奪ハレタルトキハ總テノ保有者ニ對シ回收訴權又ハ占有ノ訴權ヲ行フコトヲ得但移動物及ヒ不動物ノ時效ニ付キ第五編ニ記載シタルモノハ此限ニ在ラス〔伊民第四百三十九條〕
又所有者ハ自己ノ土地ニ地役ノ權利ヲ行フ者ニ對シ其權利存セスト主張シテ拒却訴權ヲ行フコトヲ得
右何レノ場合ニ於テモ裁判管轄及ヒ訴訟手續ハ民事訴訟法ヲ以テ之ヲ規定ス
本條三項訴訟手續ハノ下ヘ帝國裁判所構成法及ヒノ數字ヲ補修ス栗塚說明委員曰一項又奪ハレタルトキハノ意義ハ所有權ヲ奪ハルト云フ譯ニシテ占有ヲ奪ハレタル義ニアラスト此點ハ解釋上各員意見ヲ異ニシ「ボアソナード」氏ニモ質問シタル所其物ノ占有ヲ奪ハレタルトキノ意義ナリト答ヘラレタリ
第五百三十八條 數人一物ヲ不分ニテ共有スルトキハ部分ノ均不均ニ拘ハラス各共有者其物ノ全部ヲ使用スルコトヲ得但其用方ニ從ヒ且他ノ共有者ノ使用ヲ妨ケサルコトヲ要ス
各共有者ノ部分ハ相均シト看做ス但反對ノ證據アルトキハ此限ニ在ラス
果實及ヒ產物ハ各共有者ノ權利ノ分度ニ應シテ定期ニ之ヲ派分ス
各共有者ハ其物ノ保存ニ必要ナル管理ノ行爲ヲ爲スコトヲ得
各共有者ハ其部分ニ應シテ負擔ニ任ス
右ハ之ト異ナリテ使用收益又ハ管理ヲ定メ殊ニ假派分ヲ以テ之ヲ定ムルノ合意ヲ妨ケス〔伊民第六百七十三條乃至第六百八十四條〕
本條五項負擔ニ任スノ文字ニ付キ松岡委員曰負擔ニ任スト云フハ恰モ責任ニ任スト云フカ如キ重言ニ屬スルノ嫌ヒアリ云々ノ動議アリタルモ遂ニ原案ニ決ス
第五百三十九條 處分權ニ付テハ各共有者ハ他ノ共有者ノ承諾ナクシテ其物ノ實況ヲ改容スルコトヲ得ス又其物ニ付キ自己ノ不分ノ部分外ニ物權ヲ設クルコトヲ得ス
共有者中ノ一人其不分ノ部分ヲ移付スルトキハ讓受人ハ他ノ共有者ニ對シ讓渡人ノ地位ヲ有ス但第五百十五條ニ揭ケタル派分ノ效力ヲ妨ケス〔伊民第六百七十六條〕
淸岡委員曰本條ノ讓渡人ハ移付人ノ義ナルヘキカ栗塚說明委員曰然リト松岡委員曰不分ノ部分外トハ如何ナル意義カ栗塚說明委員曰假令ハ爰ニ共有ナル一個ノ書籍アラン此書籍ハ共有ナルモ其幾部分ハ一方ニ屬スルモノナラン卽チ其幾部分ノ一方ニ屬シタル以外ヲ云フト松岡委員曰不分ノ部分ニ内外アルカ南部委員曰假令ハ地價二百圓ノ共有地アリトセン其地ニ付キ共有者ノ一方ハ必ラス之レヲ百圓以外ノ質入ニ附スルヲ得サルカ如シト
第五百四十條 各共有者ハ常ニ共有物ノ派分ヲ請求スルコトヲ得但之ニ反スル合意アルヲ問ハス
然レトモ共有者ハ五個年ヲ超過スルコトヲ得サル定期ノ時間不分ニ止マルヲ約スルコトヲ得〔第八百十五條及ヒ伊民第六百八十一條〕
此時間ハ何時ニテモ常ニ之ヲ更新スルコトヲ得但其更新ハ右五個年以上當事者ヲ拘束スルコトヲ得ス
此條例ハ數箇ノ所有地ニ共通ナル内庭、通路、井、籬、壁、溝渠、ノ互有ヨリ生スル不分ノ共有權ニ之ヲ適用セス〔伊民第六百八十三條〕
本條二項ノ内庭ノ文字ヲ刪除ス
第五百四十一條 相續人ノ間夫婦ノ間又ハ社員ノ間ノ共有權ニ各別ナル規則ハ第三編相續ノ章夫婦財產契約ノ章及ヒ會社ノ章ニ之ヲ定ム
淸岡委員曰本條相續人ノ間トハ日本ニテハ相續ヲ讓與スル者ト其讓與ヲ受ルモノトノ間ヲ云フヘキ習慣ナレハ佛國ノ如キ受讓者數人間ヲ指スニアラスト栗塚說明委員曰一字中ノ實際ニ於テハ兄弟姉妹其財產ノ幾干ニ對シテハ分受スルノ習慣アリト淸岡委員曰如是ハ相續編ニ於テ別段ニ定ムル所アルヘシト
第五百四十二條 數人ニテ一家屋ヲ分別シ各其一部分ヲ所有スルトキハ互相ノ權利及ヒ義務ハ左ノ如ク之ヲ規定ス
各共有者ハ分別シタル所有物ノ如クニ自己ノ部分ヲ處分スルコトヲ得
國稅、地方稅並ニ門戶、圍障、基礎、重モナル柱梁、大壁、屋蓋、階梯、井、雨水溜、箇管等ノ如キ數人同時ニ用ヰル建物及ヒ其附屬物ノ部分ノ保持及ヒ修繕ハ家屋中各自ノ部分ノ價格ニ應シテ共ニ之ヲ負擔ス
各自ハ己ニ屬スル部分ノ床板及ヒ中仕切ニ關スル費用ヲ一人ニテ負擔ス又家ニ數層アルトキハ各己レノ方ニ至ル階梯ノ部分ノ保持ヲ分擔ス〔第六百六十四條及ヒ伊民第五百六十二條乃至第五百六十四條〕
原案ノ通
第五百四十三條 所有權ハ當事者ノ間ニ於ケルモ又第三者ニ對スルモ本編第二部並ニ第三編ニ記シタル原由及ヒ方法ニ因リ得取シ保存シ及ヒ轉付ス
原案ノ通
第五百四十四條 所有權ハ左ノ諸件ニ因テ消失ス
第一 任意又ハ強要ノ移付
第二 自己ノ物ノ他人ニ屬スル物ノ附添又ハ合體但利ヲ得タル者ハ其賠償ヲ爲スコトヲ要ス
第三 刑事法律ニ依テ宣吿シタル沒收
第四 得取ノ解除取消又ハ廢罷
第五 處分スル能力アル所有者ノ任意ニ爲シタル其物ノ抛棄
第六 物ヲ通易スルコトヲ得サルモノト爲シタル相當官廳ノ行爲
第七 物ノ全部ノ毀滅但他人其責ニ任スヘキトキハ所有者ニ賠償ヲ爲スコトヲ要ス
本條第三刑事ノ法律トアルニ付キ刑事ノ二字ハ贅文ニ屬スルヲ以テ刪除シタト云フ動議出ルニ及ンテ原案維持者ハ此ヲ刪除シテハ原文ノ意義殆ント何タルヲ知ルヘカラスト云ヒシカ原案維持論ハ少數ニテ刪除ニ決ス
第五百四十五條 移動物及ヒ不動物ノ所有權ノ得取及ヒ消失ニ關スル得取ト名クル時效ノ性質及ヒ效力ハ第五編ノ末章ニ之ヲ規定ス
本條ハ各員動議ノ末得取ト名クルト云フト名クルノ四字ヲ刪除ス
第二章 用收權使用權及ヒ住居權
南部委員曰第二章ハ報吿委員ニ於テ其全章ノ刪除說ヲ呈出シタルカ逐條審議ノ前ニ當リテ大體ノ存廢ヲ決スルカ又ハ逐條每ニ之ヲ決ストスルカヲ希望スト委員長曰先ツ本章ノ始ヲ立ツヘシト卽チ朗讀ス
第五百四十六條 用收權トハ所有權ノ他人ニ屬スル物ヲ其用方ニ從ヒ及ヒ其本性ヲモ又其元質ヲモ變スルコト無ク有期ニテ且善良ナル管理者ノ如ク使用シ及ヒ之ヨリ收益スルノ權利ヲ謂フ
使用權及ヒ住居權ニ特別ナル規則ハ本章ノ附錄ト爲ス〔第五百七十八條〕
今村報吿委員曰此章ハ報吿委員會ニ於テハ全ク廢案ニ決セシカ今其詳細ヲ辨明シテ各員ノ參考ニ供セントス用收權ハ從來日本ニ於テ其習慣アラサリシニ殊更ニ之ヲ設定セントスレハ言フヘカラサル弊害アリ用收權ハ所有權ノ閏所有者ト云フヘキモノニシテ恰モ正閏二種ノ所有者アルカ如シ如是所有權ノ分割スルハ最モ弊害アルモノナリ又用收權ノ命數ハ何レノ場合ト雖モ用收者カ死亡シタルトキハ其權消滅ニ屬スルモノナリ人ノ性命ハ且夕ヲモ料ルヘカラサルカ故ニ今日有償ニテ用收權ヲ得タル者明日其權ノ消滅シテ有償ノ損耗ニ歸スルヤモ知ルヘカラス又租稅徵收ニ於ケルモ租稅ハ用收者ヨリ徵收スヘキモノナレハ用收者租稅ヲ未納シ爲メニ公賣處分ヲ受ルニ至テ誰カ危險ナル其用收權ニ向テ屬望ヲ表スヘキヤ果シテ其屬望者ナキニ於テハ政府卽チ用收者タラサルヘカラス如是ナレハ政府ハ一個人ノ資格ヲ帶テ所有者ニ對スル權利義務アルニ至ラン或ハ云ンカ用收權存スレハ所有權ノ賣却ヲ欲セサル時用收權ヲ賣却シテ金融ヲ得ルノ便アルヘシト如是ハ用收權ナキモ賃貸借質入等ニ依テ以テ行フコトヲ得ヘシ又使用住居ノ二權ハ用收權中ニ屬スルモノナリト栗塚說明委員曰用收權存スレハ如此事件モ爲スヲ得ヘキニト云フカ如キ事實アラサルカヲ研究スルニ決シテ其虞アラスト信セリ用收權ナシト雖トモ有償ノ名義ニ於テハ賃貸借ヲ以テスヘク又無償ノ名義ニ於テハ使用貸借ヲ以テスヘシ今法律上用收權ナルモノアルニ依リ今日有償ノ名義ヲ以テ用收權ヲ買得シタルモノアラン其買得者若シ明日死亡スルカ如キアレハ用收權ハ直チニ回收セラルルノ不幸アラン若シ之ヲシテ賃貸借ナラシメハ其買得金額ニ應シテ使用スルヲ得ヘシ佛法ノ如キモ習慣上此點ヲ存置シタルモ可成廢棄セント欲スルモノナリ故ニ限ルニ畢生間ヲ以テ之ヲ絕タシメント欲スレハナリト委員長曰最早報吿委員ノ說明モ盡キタルヘケレハ各其刪除案ニ就キ意見ヲ述ヘラレタシト箕作委員曰佛國ニハ不得已習慣アルカ故ニ畢生間ヲ期限トシ之ヲ現存セリト渡委員曰此用收權ハ經濟ト習慣トヨリ考ルニ日本ニハ必要ナシト村田委員曰試ニ問ハン爰ニ或ル地所ノ所有者アラン自ラ其地面ヲ所有スルノ不便ヲ感ス然ルニ之ヲ賃貸スルハ己レカ欲セサル所ナリ賃取セスシテ之ヲ貸付セント欲スルトキハ如何今村報吿委員曰ソハ用收權ニ限ラス賃貸權ニモ適用サルル問題ナリ佛國ノ用收權ハ父カ子ノ財產ヲ收益スルノ例アリテ其他ニ例ナシ使用權住居權ノ如キハ絕テ成例ナシト村田委員曰全體ヲ刪除スヘシトスルモ尙ホ逐條朗讀アランコトヲ希望スト淸岡委員曰愈刪除論ト決スレハ逐條朗讀ハ無益ナリト三好委員曰親子夫婦間ノ用收權ハ如何今村報吿委員曰ソハ相續法ノ定メ方ニ依ルヘシト雖モ子ノ財產ニ就テハ親カ子ノ後見人タルヘキ管理法ニ於テ定ムヘシ又婦ノ財產ヲ夫カ用收スルコトハ爲サシメサルヲ可トスト三好委員曰追々内地雜居ノ禁ヲ許セハ宗教上ノ關係等モ生スルモノナルカ故ニ今日用收權ノ害アリトスルモ他日如何ナル必要アルヤモ知ルヘカラスト栗塚報吿委員曰用收權ハ親又ハ夫タル權ノ附屬權ノ一ナリト三好委員曰親ノ權ハ人事篇ニ定メ用收權ハ財產權ニ屬スルモノナレハ彼ノ附屬權ニアラス此法律ハ羅馬法ニ淵源シタルモノ故多少ノ添刪ヲ加ルモ羅馬法ニ依ルノ實ヲ失フヘカラスト箕作委員曰用收權ハ羅馬法ヲ旨トシタル西洋各國採捨如何ヲ示サレタシト栗塚報吿委員曰凡ソ法律ハ風俗ニ從テ立ツモノニシテ風俗ヲ造ルモノニアラス尙ホ一歩ヲ讓テ之ヲ論スルモ害ナキ風俗ハ之ヲ造ルトスルモ害アル風俗ハ之ヲ造ルヘカラスト箕作委員曰本項ハ西洋各國其法ノ何國ニアルヤト云フノ問ナリト栗塚說明委員曰ソハ各國ニアリト云フヘシ三好委員曰法律ハ風俗ヲ作ラサルモ風俗ノ變遷ニ付スハ法律ノ必要ヲ生スヘシ欧州ニ存スル風俗ハ必ラス日本ニモ輸來スヘシ特リ日本今此風俗ナキカ爲メニ其法律ノ不必要ナリト云フヘカラス羅馬法ニ從フ諸國ハ用收權ノ法アルヘキニ同ク羅馬法ニ依遵スル日本國ニシテ何故ニ之ヲ採ラサルカ松岡委員曰法律ヲ立ツルニハ其國ノ風俗ニ從フモノニシテ民法ノ如キハ其最モナルモノナリ唯日本ノ法律ハ基督教國ノ法律ニ依ルモノニシテ基督教國ニアル法律カ日本ニモアラサルハ如何ト云フノ一懸念アリト雖モ如此ナラハ西洋ノ風俗ハ悉ク取ラサルヘカラサルニ至ラン豈ニ奇事ニアラスヤ故ニ報吿委員ノ全體刪除說ハ至極感服ニ堪ヘサル所ナレハ斷然刪除スヘシ又刪除スル以上ハ逐條朗讀ハ無益ナリト委員長曰餘委員長ノ資格ニアラスシテ一言スヘキコトアリ契約上ノ用收權ニ付テハ其刪除ハ同意ナルカ親又ハ夫タルノ用收權必要ナルヘシ果シテ其必要タルヲ認ムレハ本章ノ如ク數多ノ條項ハ要セサルモ親又ハ夫ノ權ニ適用スヘキ點ハ本章中ヘ多少存置スヘキナリ財產ノ部ニ於テ用收ノ義ヲ明示セサルトキハ最モ不都合アルカ如シ云々夫ヨリ種々報吿委員ト問答アリシカ結局假ニ刪除スヘキニ決ス以下逐條朗讀スヘシト
第一節 用收權ノ設定
第五百四十七條 用收權ハ法律人意又ハ時效ニ因テ之ヲ設定ス〔第五百七十九條〕
法律上ノ用收權ハ父權ノ章及ヒ相續ノ章ニ之ヲ規定ス
人意ニ因リ用收權ヲ設定スルノ方法ハ所有權ヲ得取シ及ヒ轉付スルノ方法ニ同シ
又用收權ハ有償又ハ無償ノ名義ニテ移付シタル財產ニ付キ留置權ニ因リ之ヲ設定スルコトヲ得
夫婦ノ共通財產又ハ婦ノ自有財產ニ係ル夫ノ用收權ハ第三編夫婦財產契約ノ章ニ之ヲ規定ス
用收權ノ時効ハ所有權ノ時効ト同一ノ期限及ヒ條件ニ從フテ成就ス
栗塚說明委員曰本條留置ハ其收實ヲ貯存シテ虛有ヲ移付スルナリト
第五百四十八條 用收權ハ移動物ト不動物ト又有體物ト無體物トヲ問ハス一切ノ物ニ付キ之ヲ設定スルコトヲ得但其物ハ通易物タルコトヲ要ス〔第五百八十條〕
又用收權ハ他ノ用收權又ハ終身ノ年金權ニ付キ之ヲ設定スルコトヲ得
又用收權ハ包括名義ニテ資產ニ付キ之ヲ設定スルコトヲ得卽チ一切ノ移動物若クハ不動物ニ付キ又ハ資產ヲ組成スル一切ノ財產ニ付キ又ハ其資產ノ移動物不動物若クハ全部ノ不分ノ部分ニ付キ之ヲ設定スルカ如シ
委員長曰此ノ終身年金權ノ如キハ本章ヲ刪ルトキハ何レニ屬スルカ南部委員曰贈與ニ屬スト栗塚說明委員曰有償名義ナレハ賣買ニシテ無償名義ナレハ贈與ナリト
第五百四十九條 用收權ハ單純ニ又ハ始時若クハ終時ノ期限ヲ定メテ之ヲ設定スルコトヲ得
又未必條件ヲ附シ其成就ニ因リ用收權ノ始時又ハ終時ヲ定メテ之ヲ設定スルコトヲ得〔第五百八十一條〕
用收權ハ單純ナルト定期ナルト未必條件ヲ附シタルトヲ問ハス用收者ノ一生ヲ超過スルコトヲ得ス
異議ナシ
第五百五十條 用收權ハ一人又ハ數人ノ爲メニ之ヲ設定スルコトヲ得但數人ノ爲メニ設定シタルトキハ數人同時ニ又ハ順次ニ之ヲ行フ如何ナル場合ニ於テモ用收權ハ其權利發開ノ時既ニ出生シ又ハ胎内ニ在ル者ノ爲メニアラサレハ之ヲ設定スルコトヲ得ス
異議ナシ
第二節 用收者ノ權利
第五百五十一條 用收者ハ其權利ノ發開シ及ヒ期限ノ到來セシ上ハ次節ニ定メタル財產目錄及ヒ保證ニ關スル義務ヲ履行シタル後其用收權ニ屬スル物ノ占有ヲ始ムルコトヲ得
用收者ハ其物ノ修繕又ハ調適ヲ求ムルコトヲ得ス現在ノ形狀ニテ之ヲ取ルヘシ但權利發開ノ後設定者若クハ其相續人ノ過愆ニ因リ又ハ其發開前ト雖モ惡意ニテ其物ヲ毀損シタルトキハ此限ニ在ラス〔第六百條〕
異議ナシ
第五百五十二條 用收者收益ヲ始メ得ル後ニ處有者ノ收取シタル果實ハ用收者自ラ其收益ヲ遲延セシトキト雖モ之ヲ得ルノ權利ヲ有ス但其果實ノ收穫及ヒ保存ノ費用ハ處有者ニ之ヲ償還スルコトヲ要ス
用收者收益ヲ始ムル時枝又ハ根ニ由テ土地ニ附着スル果實ハ成熟ノ時之ヲ收取スルノ權利ヲ有ス但耕耘種子栽培ノ費用ヲ所有者ニ償還スルコトヲ要セス〔第五百八十五條〕
異議ナシ
第五百五十三條 用收者ハ其權利ノ繼續間其物ヨリ生スル天然上及ヒ民法上一切ノ果實ニ就キ所有者ニ等シキ權利ヲ有ス〔第五百七十八條及ヒ第五百八十二條〕
委員長曰本條天然上ノ果實民法上ノ果實ハ本條ヲ刪除スレハ如何スルカ栗塚說明委員曰所有權ニ屬スヘシト委員長曰果實ノ文字ハ金錢ノ利息マテモ含畜セルトハ用收權アレハ之ヲ知ルヘキモ用收權ナキニ於テハ之ヲ見ルニ不都合ナラスヤ栗塚說明委員曰ソハ所有權ノ部ニアラスト
第五百五十四條 天然上ノ果實ハ自然ニ生レタルト栽培ニ因リ得タルトヲ問ハス其土地ヲ離ルル時直チニ用收者之ヲ得取ス但其土地ヲ離レタルハ用收者ノ所爲若クハ其名代人ノ所爲ニ由ルト又事變若クハ盜奪ノ所爲ニ由ルトヲ問ハス
然レトモ果實其成熟前ニ土地ヲ離レ且用收權モ通常ノ收取時期前ニ了終セシトキハ其利益ハ所有者ニ歸ス
異議ナシ
第五百五十五條 獸畜ノ子ハ其產出ノ時ヨリ用收者ニ屬ス剪毛ノ時期ニ剪取シタル羢毛モ亦同シ
乳汁及ヒ肥料モ亦用收者ニ屬ス〔第五百九十三條〕
異議ナシ
第五百五十六條 民法上ノ果實ハ其給付又ハ其要求ノ時期如何ヲ問ハス收益ヲ始メ得ル時ヨリ用收權ノ了終マテ日每ニ用收者之ヲ得取ス〔第五百八十六條〕
此規則ハ用收權ニ屬スル物タルノ故ヲ以テ第三者ヨリ拂フヘキ金錢ノ納額ニ殊ニ土地家屋ノ借賃、貸金若クハ預金ノ利息、會社ノ株式若クハ持分ニ宛タル配當金、年金權ノ利子並ニ第三者ノ開堀ニ係ル鑛坑及ヒ石坑ノ借料ニ適用ス〔第五百十四條〕
異議ナシ
第五百五十七條 金錢穀類葡萄酒及ヒ其他飮食品ノ如キ消費スルニアラサレハ使用シ及ヒ收益シ得サル移動有償物ノ用收權ニ係ルトキハ用收者ハ其物ヲ消費シ又ハ移付スルコトヲ得但用收權了終ノ時同數量同品質ノ物ヲ返還シ又ハ收益ヲ始ムルノ際評價ヲ爲シタルトキハ其價額ヲ返還スルコトヲ要ス〔第五百八十七條〕
此規則ハ用收權ニ屬スル商業ノ資本ヲ組成スル商品及ヒ前置條例第五百十九條ニ定メタル他ノ代補物ニ適用ス
異議ナシ
第五百五十八條 用具布具及ヒ衣服ノ如キ使用ニ因リ早晩毀損スヘキ家具及ヒ其他ノ物體ニ付テハ用收者其用方ニ從ヒ之ヲ使用シ及ヒ了收權了終ノ時現在ノ形狀ニテ之ヲ還付スルコトヲ得但用收者ノ過愆又ハ懈怠ニ因リ重大ナル毀損アリシトキハ此限ニ在ラス〔第五百八十九條〕
又其物ノ本性賃貸スルコトヲ得ヘキモノナルトキハ用收者自己ノ責任ヲ以テ之ヲ賃貸スルコトヲ得
異議ナシ
第五百五十九條 終身年金權ノ用收者ハ年金ノ權利者ト等シク其利子ヲ收取スルノ權利ヲ有ス但反對ノ條件アルトキハ此限ニ在ラス〔第五百八十八條〕
前ニ設定シタル用收權ニ付キ用收權ヲ有スル者モ亦本用收者ニ屬スル一切ノ權利ヲ行フ
異議ナシ
第五百六十條 牧場、牛羊ノ畜群、養蠶場、家畜及ヒ其他特ニ種類及ヒ員數ヲ以テ定メタル獸類ノ用收者ハ保存ヲ要セサル獸類ノ一分ヲ每年處分スルコトヲ得但其子ヲ以テ畜群ノ全數ヲ保ツコトヲ要ス
異議ナシ
第五百六十一條 用收者ハ小樹林及ヒ竹林ハ勿論大樹林ニ付テモ前來ノ所有者ノ襲用シタル慣習及ヒ栽伐方ニ從ヒ定期ノ採伐ヲ爲シテ收益ス
栽伐方ノ未タ正シク定マラサルトキハ用收者ハ重立チタル所有者又ハ國「デパルトマン」若クハ「コンミユヌ」ニ屬スル近傍森林ノ慣習ニ從フ但採伐スル一箇月前ニ虛有者ニ豫吿スルコトヲ要ス〔第五百九十條及ヒ第五百九十一條〕
淸岡委員曰前來云々トハ從前ヨリノ所有者ニシテ一時ノ所有者ニアラサルヘシ栗塚說明委員曰然リト又曰栽伐方トハ栽伐ノ規則ニ從フノ意ナリト委員長曰用收權ノ全部ヲ刪除スレハ此點ノ如キハ如何ナルカ栗塚說明委員曰賃借權ニ屬スト
第五百六十二條 前來ノ所有者ノ定期採伐ヲ爲ササリシ保存木及ヒ大樹木ニ付テハ用收者ハ其樹木ノ定期產物ノミヲ得ルノ權利ヲ有ス
然レトモ用收權ニ屬シタル建物ノ大修繕ヲ要スルトキハ用收者ハ枯レタル大樹木又ハ事變ニ因テ倒レタル大樹木ヲ之ニ用ユルコトヲ得又然ノミナラス之ニ用ユル爲メ生木ヲ要スルトキハ處有者立會ノ上其必要ナルコトヲ證明セシ後採伐スルコトヲ得〔第五百九十二條〕
異議ナシ
第五百六十三條 森林及ヒ竹林ノ用收者ハ其樹木ヲ支持スルニ必要ナル棚架抗柱又ハ架柱ニ用ユル竹木ヲ何時ニテモ其森林及ヒ竹林ヨリ取ルコトヲ得〔第五百九十三條〕
異議ナシ
第五百六十四條 用收者ハ樹木ノ植續キ又ハ植足ス爲メ其土地ノ培養場ヨリ苗木ヲ取ルコトヲ得
又用收者ハ其培養場ノ大小樹木ヲ定期ニ賣ルコトヲ得但前來ノ用方此ノ如クナルトキ又ハ其生殖カ用收權ニ屬スル土地ノ需用ニ餘ルトキニ限ル
然レトモ右何レノ場合ニ於テモ用收者ハ苗芽又ハ種子ヲ以テ培養場ヲ保持スヘシ〔第五百九十條第二項〕
南部委員曰以上ノ四條ハ賃貸借ノ部ニ於テ定ムル所アリト
第五百六十五條 用收權ニ屬スル土地ニ既ニ開掘ニ係ル石若クハ大理石又ハ石灰、灰沙、砂利及ヒ其他ノ礦物ノ石坑ニシテ特別法ニ從フヲ要セサルモノアルトキハ用收者ハ前來ノ所有者ノ如ク自己ノ利益ノ爲メ其開掘ヲ繼續ス
其石坑ヲ未タ開掘セサルトキハ用收者ハ其用收權ニ屬スル財產中ノ建物、牆壁及ヒ其他ノ部分ノ保持及ヒ修繕ニ必要ナル物料ノミヲ取ルコトヲ得但第五百六十二條ニ記載シタル如ク豫メ其必要ナルコトヲ證シ且其土地ヲ損スルコトナキヲ要ス
又用收者ハ前ノ區別ニ從ヒ其土地ノ泥炭及ヒ肥料土ヲ使用スルコトヲ得〔第五百九十八條〕
栗塚說明委員曰本條モ礦物ヲ除クノ外賃貸借ノ部ニ定ムヘシ
第五百六十六條 用收權ニ政府ノ特許又ハ許可ヲ得テ開掘シタル礦坑ヲ包含スルトキハ用收者ハ開掘ノ方法及ヒ條件ニ付キ坑法ニ從ヒ收益ス〔第五百九十八條〕
用收權ヲ設定シタル土地ニ其所有者カ特許ヲ得タル礦坑アルモ其設定證書ニ明記アルニアラサレハ礦坑ノ用收權ヲ付與セス
異議ナシ
第五百六十七條 用收者ハ用收權ニ屬スル土地ヲ增ス所ノ漸積地寄洲中洲又ハ其他ノ附添地ニ付キ收益ス〔第五百九十六條〕
然レトモ虛有者カ償金ヲ拂フニアラサレハ附添地ヲ得取スルコトヲ得サリシトキハ用收者ハ用收權ノ期限間虛有者ニ其償金ノ利息ヲ拂フヘシ
用收權ニ屬スル土地ニ於テ第三者カ埋藏物ヲ發見スルモ用收者ハ其埋藏物ニ付キ權利ヲ有セス〔第五百九十八條第二項〕
南部委員曰本條ハ賃借權ノ部ニ定ムヘキモ唯一項ハ之ヲ賃借ノ部ニ定ムルハ不都合ナリ賃借者ハ賃借物ニ付キ缺損ヲ生シタルトキハ賃錢低下ヲ請求スヘキモノナルヲ以テナリト委員長曰若シ沿岸地ノ贈與ヲ受シ者偶然ニ寄洲ノ漸積シタルカ如キアレハ如何ト今村報吿委員曰贈與ノ名義ナレハ別ニ明記アラサル以上ハ其寄洲ハ贈與中ニ包入セス賣買名義ナレハ其賣買中ニ屬スベシト
第五百六十八條 用收者ハ用收權ニ屬スル土地ニ於テ狩獵及ヒ捕漁ノ權利ヲ有ス
今村報吿委員曰佛國ニ於テハ狩獵地ニ付別ニ明記ナキモノノ所有者ニ屬スルカ用收者ニ屬スルカ學者ノ議論モ一定セサルカ其推定法ヲ思考スルニ明記ナキ場合ハ所有者ニ屬スルモノトスヘシ左スレハ之ヲ賃貸借ニ定ムルニハ此條ノ意義ト反スヘシト委員長曰之ヲ明記セサルトキハ卽チ借主ニ屬セシムヘキニアラスヤ渡委員曰日本ノ習慣ハ借主ニ屬スヘシト淸岡委員曰其點ハ賃借權ノ部ニ於テ議定シタシト
第五百六十九條 用收者ハ用收地ニ屬スル一切ノ地役ヲ行フ若シ不使用ニ因リ之ヲ消滅セシメシトキハ虛有者ニ對シ其責ニ任ス〔第五百九十七條〕
南部委員曰本條ハ賃借權ノ部ニ入ルヘシ
第五百七十條 用收者ハ直チニ虛有者及ヒ第三者ニ對シ其收益權ニ關シテ占有及ヒ權原ノ物上訴訟ヲ行フコトヲ得
又用收者ハ用收地ノ利ノ爲メニ主張シ又ハ其害ニ於テ主張セラレタル地役ニ關シ自己ノ權利ノ範圍内ニ於テ占有ニ係ルト權原ニ係ルトヲ問ハス要請又ハ拒却ノ訴權ヲ行フ
栗塚說明委員曰本條ノ意義ハ賃借ノ第六百四十二條ニアリト今村報吿委員曰第一項ノ意ハ既ニ用收權トナリタルモノヲ抵當ニ附スルヲ得ルト云フ譯ナリ委員長曰轉貸スルヲ得ルハ不都合ニアラスヤ栗塚說明委員曰ソハ物權タルヲ以テ致方ナカルヘシト然ルニ此點ハ報吿委員ニ於テハ日本ノ習慣ニ乖戻スルノ嫌アルヲ憂ルモノナリト委員長曰尙ホ能ク考究スヘシト
第五百七十一條 父母ノ外用收者ハ有償又ハ無償ノ名義ニテ其權利ヲ讓渡シ賃貸シ又ハ用收ニ付スルコトヲ得又然ノミナラス用收權ニ屬スル物カ抵當ト爲スコトヲ得ヘキモノナルトキハ之ヲ抵當ト爲スコトヲ得〔第二千百十八條〕
如何ナル場合ニ於テモ用收者ノ付與シタル權利ハ其用收權ト同シキ期限、制限及ヒ條件ニ從フ〔第五百九十五條及ヒ第二千百二十五條〕
原案ノ通
第五百七十二條 用收者ハ用收權ノ終ニ於テ其收取セサリシ果實及ヒ產物ノ爲メ報酬ヲ求ムルノ權利ヲ有セス但其果實及ヒ產物ノ猶ホ土地ニ附着スルトキト雖モ亦同シ〔第五百九十五條第一項〕
又用收權ニ屬スル物ニ改良ヲ加ヘテ價直ヲ增シタルトキト雖モ其改良ノ爲メ所有者ニ對シ償金ヲ求ムルコトヲ得ス
用收者ハ自己ノ設ケタル建築物、植付物、裝飾物其他ノ附加物ヲ收去スルコトヲ得ルノミ但最初ノ形狀ニ復スルコトヲ要ス〔第五百九十九條〕
南部委員曰本條ノ意義ハ賃借ノ第六百六十四條ニアリト
第五百七十三條 虛有者ハ用收權ノ終ニ於テ用收者又ハ其相續人ヲシテ前條ニ從ヒ其收去スルコトヲ得ヘキ建築物及ヒ植付物ヲ鑒定人ノ評價ニ從ヒ現時ノ價直ヲ以テ讓渡サシムルコトヲ要求スルコトヲ得
右ニ付キ用收者ハ所有者ニ先買權ヲ行フノ意アルヤ否ヲ述フヘキノ催吿ヲ爲シ其後十日ヲ過キ又ハ所有者ノ拒絕セシ後ニアラサレハ其取去ニ着手スルコトヲ得ス
所有者先買權ヲ行ハント欲スルコトヲ述フルト雖モ鑒定人又ハ裁判所ノ處決確定シタル時ヨリ一月内ニ其代價ヲ拂ハサルトキハ其先買權ヲ失フ但損害アルトキハ賠償ノ責ニ任ス
用收者カ右ノ建築物及ヒ植付物ヲ除却セントスルトキハ所有者ハ先買スルノ意思ヲ常ニ吿知スルコトヲ得
用收者及ヒ其相續人ハ鑒定人又ハ裁判所ノ處決及ヒ代價ノ辨濟アルマテハ建物ヲ占有スルコトヲ得
南部委員曰本條ハ賃借ノ第六百五十六條ニ入ルヘシト
第三節 用收者ノ義務
第五百七十四條 用收者ハ其權利ニ屬スル財產ノ占有ヲ始ムル前虛有者ト立會ヒ又ハ合式ニ之ヲ召喚シ移動物體ニ付テハ完全精確ナル目錄ヲ製セシメ不動物ニ付テハ其形狀ヲ認記セシムヘシ〔第六百條〕
南部委員曰本條ハ賃借ノ第六百四十五條ニ入ルヘシト栗塚說明委員曰此ノ目錄ヲ製スルハ訴訟ノ濫起ヲ豫防スルノ旨意ナリト
第五百七十五條 當事者雙方出會シ共ニ能力者タルトキ又ハ有効ニ代理セラレタルトキハ目錄及ヒ不動物ノ形狀書ハ私署ヲ以テ之ヲ作ルコトヲ得反對ノ場合ニ於テハ公吏之ヲ製ス
南部委員曰本條ハ修正ヲ加テ賃借ノ第六百四十五條ニ入ルヘシト
第五百七十六條 目錄ニ記シタル代補物ノ評價ハ賣買ニ等シキ効力ヲ有ス但反對ノ明言アルトキハ此限ニ在ラス不代補物ニ付テノ評價ハ目錄ニ明記アルニアラサレハ賣買ニ等シキ効力ヲ有セス
目錄及ヒ評價ノ費用ハ用收者及ヒ虛有者各其半額ヲ負擔ス
南部委員曰本條ハ刪除スヘシ此意義ハ消費賃借ト使用貸借ニ存スルナリト
第五百七十七條 用收權設定ノ時用收者移動物ノ目錄又ハ不動物ノ形狀書ヲ作ルノ義務ヲ免除セラレタリト雖モ虛有者ハ常ニ用收者ト立會ヒ自費ヲ以テ目錄又ハ形狀書ヲ作ラシムルコトヲ得但右ニ付キ虛有者ハ十一日以上收益ヲ始ムルコトヲ遲延セシムルコトヲ得ス〔伊民第四百九十六條〕
第五百七十五條及ヒ第五百七十六條第一項ハ本條ノ場合ニ之ヲ適用ス
栗塚說明委員曰本條ハ刪除スヘシト又曰此ノ作ラシムルノ文字ハ公吏ニ作ラシムルノ意義ナリト又曰十一日以上トシタルハ日本テハ十日以上十日以下トスレハ共ニ十日ヲ數ヘ込ムノ習慣ナレハナリト
第五百七十八條 用收者財產ノ目錄及ヒ形狀書ヲ作ルノ義務ヲ免除セラレサリシトキ之ヲ作ラシメスシテ收益ヲ始メタルトキハ用收者ハ善良ナル形狀ニテ不動物ヲ受取リシモノト推測ス但反對ノ證據アルトキハ此限ニ在ラス
移動物ニ付テハ虛有者ハ通常ノ總テノ證據ハ勿論世評ヲ以テ其實態及ヒ價格ヲ證スルコトヲ得
南部委員曰本條ハ第六百四十五條三項四項ニ入ルヘシト
第五百七十九條 又用收者ハ用收權ノ終ニ於テ擔任スルコトアルヘキ返還ノ爲メ及ヒ其他ノ償金ノ爲メ保證人又ハ他ノ相應ナル擔保ヲ供ヘタルニアラサレハ收益ヲ始ムルコトヲ得ス
異議ナシ
第五百八十條 供フヘキ擔保ノ本性ニ付キ當事者ノ間ニ議協ハサルトキハ裁判所ハ顯然資力アル第三者ノ約務ヲ認許シ又ハ寄託金取扱所若クハ當事者ノ諾認スル第三者ニ金錢若クハ有價物ヲ寄託スルコトヲ認許スルコトヲ得又ハ移動物質若クハ抵當ヲ認許スルコトヲ得
南部委員曰本條ハ刪除スヘシト
第五百八十一條 擔保スヘキ金額ニ付テハ裁判所ハ用收權ニ直チニ屬シタル金錢ノ數額ヨリ以下ニ之ヲ定ムルコトヲ得ス又移動物體ノ評價カ賣買ニ等シキ効力ヲ有スルトキハ其評價ノ全額ヨリ以下ニ之ヲ定ムルコトヲ得ス又評價カ賣買ニ等シキ効力ヲ有セサルトキハ其評價ノ半額ヨリ以下ニ之ヲ定ムルコトヲ得ス
然レトモ右終リノ場合ニ於テ若シ用收者カ用收權ノ繼續中評價シタル移動物ニ係ル其權利ヲ讓渡シ又ハ賃貸スルトキハ常ニ其評價ノ全額ニ對スル擔保ヲ供フルノ要求ニ應スヘシ
不動物ニ付テハ裁判所ハ擔保全額ノ多寡ヲ裁定ス
南部委員曰本條ハ刪除スヘシト
第五百八十二條 擔保ヲ設定スル證書ニハ前條ニ定メタル金額ニ對スル保證人又ハ用收者ノ一身ノ約務ヲ併記ス
同上
第五百八十三條 用收者移動物又ハ不動物ニ對シ相應ナル擔保ヲ供フルコト能ハサルトキハ左ノ如ク處辨ス但當事者ノ間ニ合意アルトキハ此限ニ在ラス
飮食物及ヒ其他ノ代補物ハ之ヲ公賣シ其代價ハ有權者二人ノ連名ニテ金錢ト共ニ寄託金取扱所ニ寄託シ又ハ之ヲ國ニ對スル年金權ニ換ヘ用收者ハ其利息若クハ利子ヲ收取ス
其他ノ移動物ハ虛有者ノ占有ニ存ス
不動物ハ虛有者之ヲ第三者ニ賃貸シ又ハ賃借ノ名義ニテ之ヲ保存シ用收者ハ保持費及ヒ其他每年ノ負擔ヲ扣除シテ借家賃又ハ借地賃ヲ收取ス〔第六百二條第六百三條〕
異議ナシ
第五百八十四條 用收者擔保ノ一分ニアラサレハ供フルコト能ハサルトキハ其受取ルコトアルヘキ物體ニ付キ擔保ノ限度ニ應シテ撰擇ヲ爲ス
同上
第五百八十五條 用收者ハ設定證書ヲ以テ保證人ヲ立ツルノ義務ヲ免除セラルルコトヲ得但用收者其權利發開ノ後無資力ト爲リタルトキハ此免除ハ止ム〔第六百一條〕
右ノ場合ニ於テハ其物體ヲ之ヲ虛有者ニ返還シ前二條ニ從テ處辨ス
報吿委員曰本條別項ハ既ニ收益ヲ始メタル時ハ其物ハ之ヲ虛有者云々トスル筈ナリト
第五百八十六條 父母ノ有スル其法律上ノ用收權ハ常ニ保證ヲ供フルコトヲ免除セラル
贈與者其生存中ノ贈與物ニ付キ自己ノ利益ノ爲メ貯存シタル用收權ニ付テモ亦同シ〔第六百一條〕
然レトモ父母又ハ贈與者ノ無資力ノ場合ニ於テハ金錢ニ對シ及ヒ第五百七十六條ニ從ヒ賣買ニ等シキ効力ヲ有スル評價額ニ對シテ保證人ヲ供フルコトヲ要ス
栗塚說明委員曰本條ハ父母ト雖トモ無資力トナレハ保證人ヲ立ツヘシトシタルカ父母ノ權ヲ定ムル所ニハ如是事項ハ除省シタシト委員長曰父母若シ不行狀ニシテ子ノ財產ヲ危クシ爲メニ親戚ヨリモ苦情ヲ表スル場合ハ如何ト今村報吿委員曰如是ハ父權ヲ定ムル部ニ於テ屹度制限ヲ置カサルヘカラスト
第五百八十七條 用收者收益ヲ始メタル上ハ善良ナル管理者ノ如ク用收物ノ保存ニ注意スヘシ
用收者ハ其過愆又ハ懈怠ヨリ生スル其物ノ喪失又ハ毀損ノ責ニ任ス但所有者ノ權利ヲ保護スル爲メ用收者ニ對シ第六百七條ニ許可シタル處置ヲ行フコトヲ妨ケス
南部委員曰本條ハ修正ノ上賃借ノ部ニ入ルヘシト
第五百八十八條 用收權ニ屬シタル物ノ全部又ハ一分火災ニテ喪失シタルトキハ用收者ノ過愆ニ出テタルモノト推測ス但反對ノ證據アルトキハ此限ニ在ラス
栗塚說明委員曰第六百五十二條ニ賃借人ノ法ヲ設定シアリト
第五百八十九條 用收者ハ請求權ナク移動物及ヒ不動物ノ保持修繕ヲ擔任ス
大修繕ハ用收者其過愆ニ因リ又ハ保持修繕ヲ爲ササルニ因テ其必要ト爲リタルトキニアラサレハ之ヲ擔任セス〔第六百五條〕
用收者若シ大修繕ヲ爲シタルトキハ假令義務ナキニ之ヲ爲シタルモ此事ニ付キ決シテ賠償ヲ求ムルノ權利ヲ有セス
南部委員曰本條二項以下ハ第六百三十五條及ヒ第六百三十六條ニ入ルト
第五百九十條 虛有者モ亦大修繕ヲ擔任セス若シ之ヲ爲シタルトキハ費用ノ分擔ヲ用收者ニ訟求スルコトヲ得ス〔第六百七條〕
南部委員曰本條モ第六百三十五條ニ入ル
第五百九十一條 重モナル壁又ハ天井ノ修繕ハ一分タリト雖モ之ヲ建物ノ大修繕ト看做シ一箇又ハ數箇ノ重モナル梁柱ノ變更モ亦其大修繕ト看做ス
屋根、土除壁、水除壁及ヒ圍障壁ノ全部ノ改造又ハ其表面全部ノ十分一ヲ超過スル改造モ亦大修繕タリ〔第六百六條及ヒ伊民第五百四條〕
南部委員曰本條モ第六百三十五條ノ末項ニ入ルヘキカ尙ホ修正スヘキ點アリト
第五百九十二條 用收者ハ其收益ヲ爲ス土地ニ賦課スル租稅及ヒ其他每年ノ通常ノ公ノ負擔ハ其一般ニ係ルト一地方ニ係ルトヲ問ハス之ヲ擔任ス〔第六百八條〕
南部委員曰本條ハ第六百四十九條ニアリト
第五百九十三條 用收權ノ期限間所有物ニ賦課セラルルコトアルヘキ非常ノ負擔又ハ租稅ニ付テハ虛有者ハ其元金ヲ拂ヒ用收者ハ用收權ノ期限間每年ノ利息ヲ負擔ス〔第六百九條〕
非常ノ負擔ト看做スモノハ左ノ如シ
第一 強要ノ借入
第二 舊稅ノ增加又ハ新稅但之ヲ設ケタル法令ニ於テ臨時又ハ非常ノ名稱ヲ付シタルトキニ限ル
委員長曰新稅ニハ臨時トカ非常トカノ名稱アラサルヘシト渡委員曰其名稱ヲ附セサレハ此點ニ當ラスト尙ホ第六百四十九條ニ於テ議スヘシ
第五百九十四條 所有者用收權設定ノ前ニ火災ニ對シ其建物ヲ保險ニ付シタルトキハ用收者ハ每年保險料ノ利息ヲ拂フノ要求ニ應スヘシ但所有者ハ火災ノ場合ニ於テ受取リタル償金ノ收益ヲ用收者ニ與フヘシ
又用收者ハ所有者ト自己トノ利益ノ爲メ自費ヲ以テ保險ヲ約スルコトヲ得此場合ニ於テハ用收者ハ償金ノ中ヨリ自己ノ拂ヒシ保險料ノ額ヲ扣取シ其殘額ニ付テ收益ス
海上ノ危險ニ對シ保險ニ付シタル船舶ニ付キ用收權ヲ設定シタルトキモ亦右ノ條例ヲ適用ス
異議ナシ
第五百九十五條 又用收者ハ用收權ノ價格ノミニ付キ建物ヲ保險ニ付スルコトヲ得此場合ニ於テハ用收者一人ニテ每年ノ保險料ヲ負擔シ火災アリシトキハ償金ノ額ハ總テ用收者ノ所有權ニ屬ス
凍、雹及ヒ其他天然ノ事變ニ對シ用收者カ收獲物又ハ產物ヲ保險ニ付シタルトキモ亦同シ
南部委員曰本條モ賃借ノ部ニ入ルルヲ得ヘシト
第五百九十六條 第五百四十八條ニ定メタル如ク相續ノ包括用收者又ハ包括名義ノ用收者ハ其得益ノ割合ニ應シ相續ノ債務ノ利息ヲ擔任ス〔第六百十二條第一項〕
又右相續ノ負擔タル終身年金權ノ利子又ハ養料モ同上ノ割合ニ應シテ之ヲ擔任ス〔第六百十條〕
南部委員曰本條ハ刪除トナルヘシト
第五百九十七條 一箇又ハ數箇ノ特定財產ノ用收者ハ其用收權ニ屬スル財產ニ抵當又ハ先取特權ノ負擔アリシトキト雖モ設定者ノ債務ノ辨濟ヲ分擔セス〔第六百十一條及ヒ第千二十四條〕
用收者若シ保有者トシテ訴追セラレタルトキハ債務者ニ對シ求償權ヲ有ス但設定者又ハ其相續人ニ對シ追奪ノ擔保ニ係ル訴權ニ妨ケナシ〔第八百七十四條〕
南部委員曰本條モ刪除トナルモ二項ハ第六百三十七條ヲ參照シテ議スルコトアルヘシ
第五百九十八條 虛有者元金ヲ擔任シ用收者其利息ヲ擔任スヘキ負擔ノ諸般ノ場合ニ於テハ左ノ三箇ノ方法中其一ニ依リ處辨ス
或ハ虛有者ハ元金ヲ拂ヒ用收者ハ其每年ノ利息ヲ拂フ
或ル用收權ノ終ニ用收者ハ元金ヲ立替ヘ虛有者ハ之ヲ用收者ニ償還ス
或ハ要求スルコトヲ得ヘキ金額ニ達スルマテ用收權ニ屬スル財產ノ一分ヲ賣却ス〔第六百十二條〕
栗塚說明委員曰本條ハ賃借ニハ適用スヘカラスト
第五百九十九條 用收權ノ期限間其土地ニ於テ第三者カ虛有者ノ權利ヲ害スヘキ占奪又ハ企作ヲ爲ストキハ用收者ハ其事實ヲ虛有者ニ發吿スヘシ若シ用收者之ヲ爲ササルトキハ爲メニ生シタル總テノ損害及ヒ第三者ノ得取スルコトヲ得ヘキ時効又ハ占有權ニ付キ其責ニ任ス〔第六百十四條〕
南部委員曰本條ノ幾部ハ第六百五十一條ヘ入ルヘシト
第六百條 若シ所有者カ原吿又ハ被吿ト爲リテ土地ノ完全ナル所有權ニ係ル訴訟ヲ爲ストキハ用收者ヲ其訴訟ニ召喚スヘシ用收者ハ訴訟入費ノ利息ヲ擔任ス
用收者ハ收益ノミニ關スル訴訟ノ入費ヲ一人ニテ擔任ス
右何レノ場合ニ於テモ用收權設定ノ證書ヲ以テ用收者ニ追奪擔保ノ權利ヲ與ヘタルトキハ用收者ハ入費ヲ免カル
如何ナル場合ニ於テモ用收者ハ虛有權ノミニ關スル訴訟入費ヲ分擔セス〔第六百十三條〕
村田委員曰所有者ハ何故ニ用收者ヲ訴訟ニ召喚スルヲ得ルヤ箕作委員曰援兵ノ爲ナリト南部委員曰賃借人カ所有者ヲ訴訟ニ召喚スルノ場合アルヘキモ所有者ノ賃借人ヲ召喚スルノ必要ナカルヘシト尙ホ研究スヘシト
第六百一條 虛有者又ハ用收者訴訟ニ參カルヘキ場合ニ於テ之ニ參カラシメラレサリシトキハ裁決ハ其訴訟ニ參カラサリシ者ニ害スルコトヲ得ス然レトモ事務管理ノ規則ニ從ヒ其者ニ利スルコトヲ得
栗塚說明委員曰本條ハ賃借ノ部ヘ入ルカ否ハ猶ホ報吿委員ニ於テ考究シタシト
第四節 用收權ノ消滅
第六百二條 用收權ハ第五百四十四條ニ從ヒ所有權ヲ終ハラシムル原由ト同一ノ原由ニ因テ消滅ス
用收權ハ尙ホ左ノ原由ニ因テ消滅ス
第一 用收者ノ死去
第二 用收權ヲ設定シタル期限ノ經過
第三 用收者ノ明示シタル其權利ノ抛棄
第四 三十年間繼續セシ不使用
第五 用收者ノ收益ノ濫用ニ因ル用收權ノ廢棄〔第六百十七條〕
本條第五廢棄ハ廢罷ト修正ス
第六百三條 數人ノ爲メ同時ニ且不分ニテ用收權ヲ設定シタルトキハ死去シタル用收者ノ部分ハ生存者ニ利ス其用收權ハ最後ニ死スル者ノ死去ニアラサレハ消滅セス
南部委員曰本條ノ外贈遺ノ點ニ關シテハ起案者ニ注吿スヘシト
第六百四條 無形人ノ爲メニ設定シタル用收權ハ三十年ノ期限ニ因テ消滅ス但三十年ヨリ少ナキ期限ヲ以テ設定シタルトキハ其期限ニ從フ〔第六百十九條〕
異議ナシ
第六百五條 用收者ハ其權利ノ抛棄ヲ以テ其抛棄以前ニ執行セサリシ義務ヲ免カレス
又其抛棄ハ用收者ヨリ物ニ付キ權利ヲ得取シタル第三者ニ害スルコトヲ得ス〔第六百二十二條〕
異議ナシ
第六百六條 不使用ハ未成人ニモ及ヒ其他ノ人ニシテ之ニ對シ時効ノ經過スルコトヲ得サルモノニモ之ヲ以テ對抗スルコトヲ得ス
免債時効ニ關スル其他ノ規則ハ不使用ニ之ヲ適用ス
南部委員曰本條ハ賃借ノ部ニ入レサルナリト
第六百七條 用收者其物ニ重大ノ毀損ヲ爲ストキ又ハ其保持ヲ缺キ若クハ收益ヲ濫用シテ其物ノ保存ヲ危フスルトキハ裁判所ハ用收權消滅ノ他ノ原由中其一ノ到來スルマテ用收者ノ入費ヲ以テ其物ヲ監守ニ付スルコトヲ得又ハ虛有者ヨリ每年用收者ニ拂フヘキ金額又ハ果實若クハ入額ノ部分ヲ定メ虛有者ノ爲メ用收權ノ消滅ヲ宣吿スルコトヲ得
裁判所ハ右ト同時ニ其年ノ果實及ヒ產物ノ派分ヲ規定ス
將來用收者ニ拂フヘキ金錢又ハ果實ハ前年用收權ノ繼續シタル時間ニ應シ用收者日每ニ之ヲ得取ス〔第六百十八條〕
栗塚說明委員曰本條ハ第六百五十七條第五ニ當ルト
第六百八條 用收權ノ廢棄ハ其廢棄前ニ用收者ノ加ヘタル損害ニ付キ賠償ヲ求ムルコトヲ妨ケス〔第六百十八條第二項〕
本條モ廢棄ヲ廢罷ト修正ス
第六百九條 用收權ノ絕止ノ時尙ホ土地ニ附着シタル果實及ヒ產物ハ第六百七條ニ揭ケタル場合ヲ除クノ外虛有者ニ屬ス栽培又ハ利用ノ入費ハ之ヲ償還スルコトヲ要セス但土地賃借人又ハ分收小作人ノ既ニ得タル權利ニ妨ケナシ〔第五百八十五條第二項〕
栗塚說明委員曰本條ハ第六百六十四條及第六百六十五條ヲ參看アリタシト
第六百十條 事變又ハ朽廢ニ因リ用收權ニ屬スル建物ノ全部壞頽シタルトキハ用收者ハ土地ニ付テモ又物料ニ付テモ收益スルコトヲ得ス但建物カ用收權ニ屬スル土地ノ從タルトキハ此限ニ在ラス〔第六百二十四條〕
栗塚說明委員曰本條ハ第六百五十七條第一及ヒ第六百五十八條ニ當ルト
第六百十一條 若シ燒失シタル建物カ所有者又ハ用收者ノ保險ニ付シタルモノナルトキハ用收者ハ第五百九十四條及ヒ第五百九十五條ニ記載シタル區別ニ從ヒ其償金ニ付キ收益ス
異議ナシ
第六百十二條 若シ用收權ニ屬スル物ヲ公益ノ爲メ徵買シタルトキハ用收者ハ其償金ニ付キ收益ス〔千八百四十一年五月三日ノ佛法律第三十九條〕
栗塚說明委員曰本條ハ第六百五十七條第二及ヒ第六百五十八條ト參看アリタシト
第六百十三條 前二條ニ揭ケタル場合ニ於テ用收者ハ其收益スル金額ニ對シ保證人ヲ立ツヘシ但右ノ場合ヲ豫見シテ特ニ保證人ヲ立ルノ義務ヲ免除セラレタルトキハ此限ニ在ラス〔同上〕
松岡委員曰本條ハ用收者ノ占利ノ弊ヲ慮リ保證人ヲ立テシメタル譯カ栗塚說明委員曰然リト委員長曰用收者ノ保證ヲ立ルト云ルカ第五百九十四條一項但書ノ場合ハ如何今村報吿委員曰右ノ場合ハ處有者カ受取ルヘキモノニアラスシテ保險會社ヨリ拂ハシタル償金ハ用收者ニ讓與スヘキモノナリト
第六百十四條 湖又ハ池ノ用收權ハ其永久乾涸スルニ至リシトキハ消滅ス
之ニ反シテ耕地ノ用收權ハ水ノ永久其土地ヲ浸沒スルニ至リシトキハ止ム
然レトモ土地ノ不使用三十年ヲ經過セサル前ニ湖若クハ池ノ水自然ニ再來シ又ハ耕地ノ浸沒自然ニ止ミテ舊狀ニ復シタルトキハ本條ニ依リ用收權消滅ノ判決アリシトキト雖モ其用收權ハ再生ス
栗塚說明委員曰本條ハ第六百二十八條ト又此ノ三項ハ第六百五十七條ニ當ルト
第六百十五條 畜群ノ用收權ハ全群ノ喪失スルニアラサレハ消滅セス
右ノ場合ニ於テ卒然ノ事變ニ因テ滅盡シタルトキハ用收者ハ皮ヲ虛有者ニ還付スヘシ〔第六百十五條及ヒ第六百十六條〕
委員長曰畜群ニハ鳥類ヲモ包含スルカ栗塚說明委員曰然リ蠶虫迄モ包含ス且ツ用收者カ其皮ヲ得ルハ畜類徐々ニ斃死スル時ト雖トモ同シト
附錄 使用權及ヒ住居權ニ特別ナル規則
此ノ附錄ト云フ文字ハ法文ニハ餘リ使用セサルニ依リ尙ホ報吿委員ニ於テ篇卷章節等ノ順序ヲ正スヘシト
第六百十六條 使用權ハ使用者ノ需用ノ程度及ヒ其家族ノ需用ニ限ル用收權ナリ〔第六百三十條〕
住居權ハ建物ノ使用權ナリ〔第六百三十二條及ヒ第六百三十三條〕
使用權及ヒ住居權ハ用收權ト同一ノ方法ニ因テ成立チ及ヒ同一ノ原由ニ因テ消滅ス〔第六百二十五條〕
本條ハ使用者ノ需用ノ程度ト云フニ付キ見解上種々議論アリ尾崎委員曰此迄ハ增生シタル子女ノ類ヲ指スト今村報吿委員曰增生シタル子女ノ如キハ家族中ニ包含スト淸岡委員曰此文ヲ修正シテ使用者及ヒ家族ノ需用ノ程度ニ限ルトシタシト委員長曰程度ノ二字ヲ刪除スヘシト結局使用者及ヒ其家族ノ需用ノ程度ニ限ル云々修正スヘシト云フニ決ス
第六百十七條 使用權及ヒ住居權ノ程度ヲ定ムル爲メ使用者ノ家族ヲ組成スル者ト看做スモノハ使用者ト同居スル其正當ノ配偶者其正當養私ノ卑屬親又ハ奪屬親及ヒ此等ノ者ノ隨身ノ僕婢ナリ〔第六百三十條及ヒ第六百三十二條〕
委員長曰此ノ使用權ヲ與フルニハ其戚屬ニ及フ程度ヲ定メサルヘカラスト栗塚說明委員曰佛國ノ如キハ已ニ兄弟ニ至レハ相看顧セサルナリト今村報吿委員曰日本ノ慣習ハ縁族間ト雖トモ相厄介スルモノナルカ法律ニハ成ル可ク此等ヲ許ササルヲ望ムト尙ホ報吿委員ノ考案ニ附ス
第六百十八條 設定證書又ハ設定以後ノ合意ヲ以テ土地ノ使用權行用ノ方法ヲ定メス又ハ住居權ヲ行フヘキ建物ヲ定メサルトキハ當事者立會ノ上裁判所ハ其意見ヲ聽キテ之ヲ定ム〔第六百二十八條及ヒ第六百二十九條參照〕
南部委員曰使用住居權ノ如キハ賃貸借ニハ適用スヘカラサルニ依リ刪除スト
第六百十九條 使用權及ヒ住居權ハ之ヲ讓渡シ又ハ之ヲ賃貸スルコトヲ得ス〔第六百三十一條及ヒ第六百三十四條〕
異議ナシ
第六百二十條 使用權又ハ住居權ヲ有スル者ハ用收者ト同シク移動物ノ目錄及ヒ不動物ノ形狀書ヲ作リ竝ニ保證人ヲ立ツヘシ〔第六百二十六條〕
又用收者ト同一ノ注意ヲ爲シ及ヒ自己ノ過愆ニ付キ之ト同一ノ責ニ任スヘシ〔第六百二十七條〕
又用收者ト同シク其收益ノ割合ニ應シ修繕每年ノ負擔及ヒ訴訟入費ヲ分擔ス〔第六百三十五條〕
本條ハ末項分擔ノ意義ニ付キ栗塚說明委員曰此ノ文字ハ原文ニモ分擔トアルカ用收者ハ元來分擔スヘキモノニアラサレハ或ハ起案者ノ誤ナラン南部委員曰此點ハ使用者カ唯收益ノ割合ニ應スル分擔ノミヲ示シタリト
第五百八條
本條ハ嘗テ報吿委員ノ修正ニ附シタル條ナリシカ今其修正案ニ付キ議スルモノナリ
第一渡委員曰築山ハ宅地中ノモノヲ指スカ今村報吿委員曰宅地中ニ拘ハラス其他ノ堆地ヲモ包含スト栗塚說明委員曰堆地ト稱シテハ日本人ハ感シ易カラサルヲ以テ築山トスルヲ可トスト卽チ其修正案ニ決ス
第二ハ原文ノ儘
第三ハ貯水所ヲ溜井ト修正シタルニ付一二ノ動議アリシモ成立セス其修正案ニ決ス
第四モ其修正案ニ決ス
第五ハ本條ハ其修正案ヲ是認シテ尙ホ風車場ノ三字ヲ增補ス
第六ハ其修正案ニ決ス
第七第八第九ハ原文ノ儘
第十ハ大體ハ其修正案ヲ是認シテ其引入ノ二字ヲ刪除ス
第十一ハ原文ノ儘
第十二ハ其修正案ニ決ス
第五百十條
本條モ第五百八條ト同斷其修正案ニ附キ議スルモノナリ本條ノ第一第二ハ其事例シタルモノハ日本ノ習慣上決シテ用方ノ不動產ト認メス全ク動產物タリト云フ多數說ニ依リ一且之ヲ刪除スルニ決シタル所以下其類例ヲ推シテ大抵刪除スヘキモノトナルカ故ニ如是ナルトキハ殆ント用方ニ因ル不動產ナキニ至ルヲ以テ再度報吿委員ニ附シテ今一層近ク且ツ適切ナル用例ヲ擧示スヘシト云フニ決ス
用收權
三好委員曰今マ用收權カ人事篇ニ交渉スル點ニ付キ人事篇起案委員ヨリ其意見ヲ陳述サルルヲ以テ別ニ本員ノ意見ヲ陳述スルヲ要セスト雖トモ尙ホ一言ノ反對ヲ刪除論者ニ試ントス第一本員カ用收權ヲ存置シタキハ用收權ハ所有權ノ作用ヲ爲ス一大支持者ニシテ二者相須テ存成セサルヘカラス若シ之ヲ刪除セハ所有權ノ大部分ヲ失却スルカ如シ從來人民專制政治ノ下ニ服從シ自己ノ財產ト雖モ自由ニ處分スルヲ得ス故ニ用收權ノ如キハ其事實アリトスルモ其名稱ノ生スヘキ場合ナシ卽チ彼ノ隱居料ト云フモノヤ養料ト稱スルモノヤ又寺院ノ收入ノ如キハ全然用收權ニ外ナラサルナリ第二用收權弊害ヲ考察スレハ又其弊害モ存スヘシト雖モ其弊害ニ陷ル方ニハ成ル丈ケ之ヲ許與セス其之ヲ與許スルハ父子夫婦ノ間ニアルヘシ卽チ善良ナル管理者ノ看察ニ附スヘシ報吿委員ハ其弊害ノミヲ視テ其利用スヘキ所ヲ察セサルナリ第三用收權ノ設定ハ訴訟ノ原因ヲ增スヘシト云フモ訴訟ノ原因ヲ增スハ特リ用收權設定ニ於テセス權利義務ヲ明ニスル民法成定スルニ至レハ必ラス訴訟ヲ增スヘシ訴訟ヲ增スヲ欲セサレハ報吿委員ハ「ボアソナード」氏ハ用收權ヲ好シカラスト云ヒシナリト云ハルルモ「ボアソナード」氏ハ又用收權ハ他日甚望ミアルヘシト云ハレタリ且追々内外人雜居スルニ至テ財產權ノ自由ヲ働スニ際シ日本ノ法律ハ之ヲ認メストセハ日本法律ノ缺點ヲ表揚スルニアラスヤ云々
磯部報吿委員曰用收權ハ所有權ノ不確定ニ屬スルモノニシテ所有權ノ改良ニ害アリト云ハ本員モ同意スヘシト雖モ如此ノ害用アルカ爲メニ之ヲ刪除スヘキモノニアラス買戻契約ノ如キハ所有權ノ不確定ナリ生存中ノ贈與契約モ亦タ所有權ノ不確定ナリ且ツ停止未必條件解除ノ未必條件ノ如キハ其最モ不確定ニ屬ス又借地料アル土地ハ其期限間改良ニ着手セス永借地ノ如キハ期了ノ際等閑ニ附シ去ルモノニシテ所有權ノ改良ニ害アルモノナリ如何ニ反對論者モ之ヲ刪除スヘシトハ云ハサルヘシ又用收權ハ訴訟ノ增多ナル原因ナリト云フモ畢竟訴訟ノ增多ハ法律ノ不確定ニアルノミ假令如何ナル事件ノ生出スルモ明確ノ法文アレハ立チトコロニ之レニ依テ處分スルヲ得ヘシ又アコラスムーロンノ如キモ用收權ハ所有權ノ改良ニ害アリト云フニ過キス「ボアソナード」ノ如キハ決シテ之ヲ禁スルノ意思ニアラサルハ民法草案ニ擧示シタルヲ以テ知ルヘシ云々又次テ井上熊野兩報吿委員モ同シク用收權刪除說ニ對シテ反對ノ意見ヲ陳述シタリ
村田委員曰用收權ノ必要ナルハ西洋各國ニ其法アルヲ以テ知ルヘシ西洋各國已ニ用收權ノ規定アルニ之ニ模倣スル民法ニシテ日本特リ其規定ヲ缺クハ殆ント跛歩ニ屬スト
南部委員曰用收權ノ弊害ハ已ニ諸君ノ知ル所ナリ日本ニ於テハ未タ其習慣アラサルニ何ソ喜ンテ有害ノ用收權ヲ此ノ民法ニ制定スヘケンヤ
今村報吿委員曰今マ磯部報吿委員等ハ過日吾々組合ヨリ呈出セシ理由中明記シタル點ニノミ駁撃セラレタルモ亦タ其理由中ニ明記セサル點ニハ論及セラレサルナリ抑モ用收權ハ一種特別ノモノナリ賃借ニハ二種ノ所有者ナキモ用收權ニハ權所有者アルモノナリ其弊害ハ「ボアソナード」氏ノ草案ニハ費用ノ負擔ハ用收者ヘ課スルモノトシ大修繕ハ双方負擔セスト又租稅ノ徵收ハ用收者ヘ課ス可キカ故ニ未納ノ際ニハ用收權ヲ沒收スルナラン其結果官損トナルヘシ日本ハ山國ニシテ隨分奔水急流アルカ爲ニ屡々水害ヲ被ルモノアリ如此ハ固ヨリ大修繕ニ屬スヘキニ大修繕ハ双方共ニ其負擔ニ任セスト云ヘハ被吿ノ地面ハ遂ニ粗惡用ユヘカラサルニ至ラン賃貸借ノ如キハ多少弊害アリトスルモ習慣ノ存スルモノアルヲ以テ廢スヘカラサルナリ用收權ニ至テハ啻ニ習慣ナキノミナラス最モ有害ニ屬スレハナリ又親子ノ間ニ於ケル用收權ノ如キ子タルモノ自己ノ財產ノ收益ヲ其親ニ與フルハ大ニ理由ナクンハアルヘカラス卽チ子タルモノ自己ノ成育ヲ受ケシ恩愛ニ報スルモノニシテ一種ノ謝儀ニ過キス然ルニ其謝儀ヲ報スルハ子タルモノ自己ノ需用ヲ際キ其餘分ヲ以テ之ニ充ツヘシ又夫婦ノ用收權ニ於テハ婦ヲ虛有者ニシテ夫カ用收者トナルカ如キハ甚不都合ニ屬スルモノナレハ如此ハ用收權ヲ許與スヘカラス云々
高野報吿委員曰本員ハ用收權ノ已ニ日本ニ於テ其習慣アルヲ認ム封建制度ノ上ニ於テモ主人ヨリ配下ノモノニ其一代限リ領地ヲ與フルノ事實アリ又地面ヲ社寺ニ寄附シ弔料ニ供スルアリ其他近時本員ノ行政裁判ニ於テ了知シタル所ハ學田ニ供用セル土地ノ如キ是ナリ如此ハ所有者ノ名義ヲ以テ其收入ノミヲ學校ニ寄附シタルモノナリ抑モ用收權ノ如キハ洋ノ東西ヲ問ハス或ハ愛情ノ注ク所ニ依リ設定セラルル場合モ尠少ナラサルカ故ニ古來其名稱ナキモ決シテ其實ナキト斷言スヘカラスト其他甲論乙駁互ニ利害ヲ論難ス其可否決ヲ擧クルニ至テ結局刪除說多數ヲ得委員長曰先ツ刪除スルニ決スト
第五百九條
本條ハ報吿委員ヨリ再修正案ヲ呈出シタルカ卽チ其再修正案ニ可決ス
第五百十條
本條モ右ト同樣再修正案ナリ第一ハ鶴田委員ノ動議ニ依リ土地ノ耕作又ハ利用ニ供ヘ付ケタル獸類トス第二ハ大體修正案ヲ可トシ置ノ字ノ上ニ飼ノ字ヲ挿入ス第三ハ原文ノ通リ第四原文ノ通リ第五原文ノ通リ第六ハ葡萄ノ二字及ヒ竹竿等ノ文字ヲ刪除ス第七原文ノ通第八原文ノ通リニシテ修正案ハ成立セス第九水ニ浮フ浴場ヲ刪ル第十修正案ヲ可トス第十一修正案ヲ可トス第十二修正案ヲ可トシ但以下ヲ刪除ス第十三原文ノ通リ第十四刪除
第三章 賃借權、永借權及ヒ地上權
栗塚說明委員曰此ノ賃借ニ貸ノ字ヲ挿入セサルハ原文ニアラサルカ爲メナリ實ハ賃貸借ト云フ契約ナリト又曰原文ニハ權ノ字ナシ此等ハ權ノ字ヲ用ヒサルモ釋セラルヘシト雖トモ地上權ニ至テハ是非權ノ字ヲ置カサレハ不明瞭タルヘシ然ルニ權ノ字ハ他日箕作委員ヨリ刪否ノ意見ヲ呈出スヘキニ付キ此點モ其節決セラレンコトヲ希望スト卽チ其議ニ附ス
前置條例
第六百二十一條 動產タルト不動產タルトヲ問ハス有體物ノ賃借又ハ賃貸ハ賃借人ヨリ賃貸人ニ定期ニ金額又ハ其他ノ有價物ヲ供フルコトヲ約スルノ方法ニテ或ル時間賃借人ニ賃借物ヲ使用シ及ヒ之ヨリ收益スルノ權利ヲ與フ但後ノ第二節及ヒ第三節ニ定メタル如ク合意ニ憑リ又ハ法律ノ効力ニ因リ當事者ノ負擔スル互相ノ義務ニ妨ケナシ〔第千七百八條第千七百九條及ヒ第千七百十三條〕
本條飮食品ノ文字ニ付キ松岡委員曰之ハ例示ナレハ此儘ニテ差閊ナシト雖トモ之ヲ狹義ノ意トスレハ更ニ妥當ノ文字ヲ撰マサルヘカラスト各員曰之ヲ飮食品ニ限リ其他ノ有價物ニ及ササルハ不都合ナリト栗塚說明委員曰起案者ハ最初ニハ其他ノ有償物トセシヲ後飮食品ト改修シ來レリト遂ニ金錢又ハ其他ノ有價物ト修正シ報吿委員修正案ニ從ヒ(又ハ賃貸)ノ四字ヲ刪除ス又末段ニ永貸借權及ヒ地上權ハ本章ノ附錄トナスノ數字ヲ增補ス松岡委員曰貸借ハ西洋各國ノ法皆人權ナルニ此草案ニハ之ヲ物權トシタルハ如何栗塚說明委員曰之ヲ物灌ニスレハ用收權ノ代用ヲモスヘシ用收權ハ元ト所有權ノ支分權ニシテ貸借ノ如キモ之ニ類似スルカ故ナリ西洋各國ト雖トモ不動產ノ貸借ハ契約ヨリ成立スヘキヲ以テ人權ニ屬スト雖トモ實際其使用ハ物權ノ取扱トナレリ動產ハ報吿委員中ノ說ハ貸夜具ノ如キ人權ノ如クナリト雖トモ之ヲ轉貸シタルトキハ物權トナルト然ルニ此點ハ本章ヲ經過シタル後各所ニ就キ其得失ヲ議セラレテハ如何委員長曰其點ハ重大ノ問題タルニ付キ一應經過ノ上其得失ヲ議スヘシト
第六百二十二條 工作又ハ工業ノ賃借及ヒ傭使ノ賃借ノ契約ヨリ生スル權利及ヒ義務ハ第三編ニ之ヲ規定ス〔第千七百十條及ヒ第千七百十一條〕
農作用ノ獸畜ノ賃借ニ特別ナル規則モ亦第三編ニ之ヲ載ス〔第千七百十一條〕
本條ハ工業ノ賃借トアル(ノ賃借)及ヒ賃貸借ノ契約ヨリ生スル權利及ヒ義務ハトアルヲ賃貸借ノ契約ハ云々ト修正シ又報吿委員ノ說ニ從ヒ(農作用ノ)ノ四字ヲ刪除シ且ツ載スノ字ヲ規定スト修正ス
第六百二十三條 國「デパルトマン」「コンミユヌ」及ヒ公設所ノ財產ノ賃借ハ行政法ヲ以テ之ヲ規定ス〔第千七百十二條〕
本條ハ報吿委員ノ修正案ニ可決ス
第一節 賃借權ノ設定
第六百二十四條 賃借權ハ賃借又ハ賃貸ト稱スル契約ヲ以テ之ヲ設定ス〔第千七百十四條〕
遺囑ヲ以テ賃借權ヲ贈遺シタル場合ニ於テハ相續人ハ其遺囑書ニ載セタル條目及ヒ條件ニ從ヒ受囑者ト賃貸契約ヲ爲スヘシ
賃貸ヲ豫約シタル場合ニ於テモ右ト同シク諾約者ハ要約者ト賃貸契約ヲ爲スヘシ
本條ハ報吿委員ノ修正案ニ從ヒ又ハ賃貸ト稱スルノ數字ヲ刪除ス委員長曰貸借ニ物ト勞力トヲ區別シテハ如何栗塚說明委員曰起案者ハ之ニ區別セス南部委員曰此點ハ勞力ニハ關係セス勞力ハ人權ナレハナリト委員長曰賃借賃貸ハ悉ク賃貸借トスヘシト栗塚說明委員曰其點ハ名詞ト動詞トノ場合ニ依リ區別シタシト可決ス
第六百二十五條 物ノ賃借契約ハ有償ノ名義ニシテ且雙務ナル契約ノ總則ニ從フ但後ニ揭ケタル變例ハ此限ニ在ラス
原案ノ通
第六百二十六條 他人ノ物ノ法律上又ハ裁判上ノ管理者ハ其物ヲ賃貸スルコトヲ得
然レトモ管理者時期ニ付キ特別ナル委任ヲ受ケスシテ承諾シタル賃貸ハ左ノ時期ヲ超過スルコトヲ得ス
獸畜又ハ其他ノ移動物體ニ付テハ二年
居宅、店舖又ハ其他ノ建築物ニ付テハ五年
耕地、森林、池、石坑又ハ土地ノ其他ノ部分ニ付テハ十年〔第千四百二十九條第千四百三十條及ヒ第千七百十八條〕
本條ハ年限ニ關シテ報吿委員ノ修正案モアリシカ更ニ五ケ年ヲ三ケ年ニ十年ヲ五ケ年ト修正ス
第六百二十七條 管理者ハ前條ニ載セタル賃貸物ノ區別ニ從ヒ前期ノ滿了前三箇月六箇月又ハ一箇年内ニアラサレハ同一ノ時期ヲ以テ賃貸ヲ更新スルコトヲ得ス〔同上〕
然レトモ期前ノ更新ハ管理者ノ委任ノ止ムニ臨ミ新期ノ始マリシトキハ無効ナラス〔第千四百三十條〕
本條モ報吿委員ノ修正案アリシカ更ニ六箇月ヲ四箇月一個年ヲ六箇月ト修正ス又別項ハ然レトモ右ノ期ニ先チ爲シタル更新云云委任ノ止ム前既ニ新期云々ト修正ス
第六百二十八條 他人ノ物ノ管理者ハ果實ノ一分ヲ貸賃トナシ卽チ分收小作ニテ賃貸ヲ爲スコトヲ得
又他人ノ物ノ管理者ハ土地ノ產物ノ定量ヲ要約スルコトヲ得但賃借人好ムニ於テハ地方ノ時價ニ從ヒ全部又ハ一部ヲ金錢ニテ辨濟スルコトヲ得
淸岡委員曰金錢辨濟ヲ許スハ借主ニ便利ヲ與フルモ貸主ハ借主ノ撰ム所ニ從ハサル可ラサルヲ以テ實ニ迷惑ヲ極ムルモノナリト松岡委員曰本員ハ此條ヲ刪除セントス管理者カ分收小作ノ契約ヲ爲スヲ得ヘキハ第六百二十六條ニ貸借ヲスルヲ得ルトアルヲ以テ右條ヲ以テ其契約ヲ爲スヲ得ヘシ又此ノ六百二十八條ハ前原案ノ如ク得スノ制限ナレハ必要ナリト雖モ現原案ノ如ク得ヲ示スノ法文ハ敢テ必要ニアラスト委員長曰ク「ボアソナード」前原案ノ意味ナレハ可ナルヘキヲ以テ報吿委員中ニテ再修正シテハ如何南部委員曰前原案ハ「ボアソナード」カ已ニ取消シタルモノナレハ之ヲ採取スヘカラス現原案ノ意義ニテ可ナリ若シ此現原案ヲ不可ナリトセハ更ニ如何ナル意義ニ修正スヘキヤ渡委員現原案ハ刪除スヘシト思考スルヲ以テ何卒報吿委員ノ再修正ヲ乞ヒタルト結局刪除ニ決ス淸岡委員曰委員長ヘ建議シタシ現案ノ儘ニテハ刪除セサルヘカラサルモ尙ホ報吿委員ノ再調査ヲ需タント渡委員曰本員モ淸岡委員ノ建議ニ同意ナリト遂ニ前原案ヲ基ニシ之ニ報吿委員ノ再修正ヲ加フヘシト云ニ決ス
第六百二十九條 前三條ニ定メタル規則ハ總理ナルト部理ナルトヲ問ハス合意上ノ代理人又ハ管理者ニ之ヲ適用ス但委任ノ書面ヲ以テ其權限ヲ伸縮シタルトキハ此限ニ在ラス
原案之通
第六百三十條 既脫後見ノ未成人及ヒ自己ノ財產ヲ管理スルコトヲ得ル婦ハ他人ノ物ノ管理者ト同一ノ條件ニ從フニアラサレハ其財產ヲ賃貸スルコトヲ得ス
淸岡委員曰單ニ婦トアルハ有夫ノ婦トシタシト松岡委員曰此儘ニテ不都合ナシト栗塚說明委員曰此等ノ文字ハ人事篇ニ至テ決定スヘキモノナルヲ以テ反譯局ニ附セラレタシト委員長曰可ナリト
第六百三十一條 前數條ニ反シタル賃借又ハ更新ニシテ所有者其權利ヲ自在ニスルコトヲ得ルニ至リ追認シタルモノニ付テハ賃借人ハ其無効又ハ短縮ヲ請求スルコトヲ得ス〔第千百二十五條〕
賃借人ハ何時ニテモ第六百二十六條ニ區別シタル賃借物ノ本性ニ從ヒ八日、十五日又ハ三十日ノ期間内ニ右ノ事ニ付キ所有者ノ其意思ヲ述フルコトヲ要求スルコトヲ得ルノミ
若シ所有者其意思ヲ述フルコトヲ拒絕スルトキハ賃借人ハ從前定メタル如ク賃借時期ヲ存續セント述フルコトヲ得
本條三項絕スルノ三字ヲ刪除シ他ハ異議ナシ
第六百三十二條 所有者ノ爲シタル不動物ノ賃貸三十年ヲ超過スルトキハ其賃借ハ永借ト爲リ此種ノ賃借ノ爲メ附錄ニ定メタル時別ナル規則ニ從フ
本條ハ三十年ヲ二十年ト修正ス
第二節 賃借人ノ權利
第六百三十三條 賃借人ハ賃借物ニ付キ用收者ト同一ナル利益ヲ收ムルコトヲ得但其設定證書ヲ以テ爲スコトヲ得ヘキ賃借人ノ權利ノ增減及ヒ法律ノ條例ヨリ生スル其增減ハ此限ニ在ラス
本條ハ報吿委員ノ修正案ニ可決ス
第六百三十四條 賃借人ハ其收益ヲ始ムル爲メニ定メタル時期ニ於テ賃借物ノ占有ヲ賃貸人ニ請求スルコトヲ得財產ノ目錄又ハ形狀書ヲ作リ及ヒ保證人ヲ立ルノ責ニ任セス但契約ニ依リ其責ニ任スルトキハ此限ニ在ラス
本條モ報吿委員ノ修正案ニ可決ス
第六百三十五條 賃借人ハ物ノ引渡前ニ其用方ニ從ヒ一切ノ修繕ヲ完好ニスルコトヲ賃貸人ニ要求スルコトヲ得
其他賃貸人ハ賃借ノ期限間一切ノ大繕復及ヒ保持修繕ヲ爲スノ責アリ但賃借人及ヒ其僕婢ノ過愆又ハ懈怠ニ因リ修復ヲ要スルニ至リシトキハ賃借人其負擔ニ任ス
賃貸人ハ賃貸ノ期限間疊、建具、塗彩及ヒ壁紙ノ保持ヲ擔任セス
又井戶、雨水溜、下水溜、雨水又ハ家用水ノ管筒ノ疏浚及ヒ一般ニ賃借ト稱スル修繕ニ任セス〔第千七百五十條第千七百五十四條乃至第千七百五十六條〕
本條二項以下ニ報吿委員ノ修正案アリ一項二項ハ報吿委員ノ修正案通リ三項ハ刪除四項ハ其修正案通リ報吿委員補設ノ末項ハ未定ニ屬ス又報吿委員ハ本條ノ次ニ第五百九十一條ノ意義ニ因リ之ヲ修正シテ新置スルモノアリ淸岡委員曰報吿委員ノ此ノ新設ハ何ノ必要アルカ南部委員曰大修繕ト云フコトアルヲ以テ之レカ說明ヲ示ササレハ其大修繕分明ナラスト栗塚說明委員曰用收權存在スレハ第五百九十一條ニ依リ大修繕ノ旨意ヲ知ルヘシト雖モ既ニ用收權消滅セシ以上ハ斯ニ之ヲ明示セサルヘカラスト松岡委員曰修繕ノ區別ハ用收權存在スレハ要用ナリト雖モ既ニ用收權消滅セシ以上ハ其區別ヲ用ルノ必要ナシト然ルニ結局其補設案ニ尙ホ修正ヲ加テ之ヲ可決ス委員長曰大修繕ノ類例ヲ示シタレハ小修繕ハ知ルヘキカ栗塚說明委員曰「ボアソナード」ハ此他ハ皆保持修繕トハ言フヘカラスト云ヘリ松岡委員曰此他ハ保持修繕ト云フヘカラストセハ保持修繕ハ賃借修繕トノ區別ヲ立テサルヘカラスト委員長曰大修繕小修繕ノ議ハ第六百三十五條再修正案呈出ノ際ニ於テスヘシト
第六百三十六條 賃貸人ハ建物ニ必要トナリタル大修繕ヲ賃借人ヨリ要求セス且之カ爲メ賃借人ニ多少ノ不便ヲ生スヘシト雖トモ之ヲ爲スコトヲ得
然レトモ右修繕一月ヨリ多ク繼續スルニ因リ賃借人損害ヲ被リタルトキハ其賠償ヲ受クヘシ又時間ノ如何ヲ問ハス右修繕ノ爲メ其賃借物ノ住居スヘキ全部又ハ其商業若クハ工業ニ十分必要ナル部分ヲ失フヘキトキハ賃借人ハ賃借ヲ銷除セシムルコトヲモ得〔第千七百二十四條〕
尾崎委員曰其賠償ヲ受クヘシト云フハ金額ニ定限ナキヲ以テ何程ノ要求ヲ受クヘキヤ知ルヘカラス責テ家賃ヲ減スル位ナレハ可ナリト南部委員曰家賃ノミヲ以テ損害ノ賠償トスルモ家賃以上ノ損害アルトキハ相當ノ賠償ヲ與ヘサル可ラスト反對論者ハ佛國民法ニ依據シテ立論セラルルモ佛國民法ハ既ニ修正案ヲ議院ニ呈出シタル位ナレハ決シテ該民法ヲ以テ完全ナリト認ムヘカラスト各員ノ意見正半數ニ分レタルニ依リ委員長ノ意見ヲ以テ原案据置ニ決ス
第六百三十七條 若シ賃借人カ第三者ノ所爲ニ因リ收益ニ係ル權利ニ妨害又ハ爭論ヲ受ケ其原由賃借人ノ責ニ歸スヘキモノニアラサルトキハ賃借人ヨリ合式ニ吿知ヲ受ケタル賃貸人ハ之ニ參與シテ賃借人ヲ擔保シ又ハ其損害ヲ賠償スヘシ〔第千七百二十五條乃至第千七百二十七條〕
原案ノ通
第六百三十八條 若シ妨害カ戰爭、洪水若クハ火災ノ如キ抗拒スルコトヲ得サルカ又ハ官廳ノ處分ヨリ生シ賃借人之カ爲メ收益卽チ每年ノ利得ノ三分一以上ノ損失ヲ受ケタルトキハ賃借人ハ其割合ニ應シテ借賃ノ減少ヲ求ムルコトヲ得
若シ右ノ妨害引續キ三年間ニ及フトキハ賃借人ハ賃借ヲ銷除セシムルコトヲモ得又然ノミナラス建物ノ燒失又ハ其他ノ毀滅ノ場合ニ於テ所有者其毀滅ノ年内ニ之ヲ再設セサルトキモ亦同シ〔第千七百六十九條及ヒ第千七百七十條〕
本條ハ報吿委員ノ修正案ニ可決ス
第六百三十九條 土地又ハ建物ヲ以テ主タル目的物ト爲シタル賃借ニ於テ其坪數カ契約書ニ記載シタルモノヨリ少ナク又ハ多キトキハ右ト同一ノ物ノ賣買ニ於ケルト同一ノ條件ニテ借賃ノ增減又ハ契約ノ銷除ヲ爲スヘシ〔第千七百六十五條〕
本條モ報吿委員ノ修正案ニ可決ス
第六百四十條 若シ小賣商業ヲ營ム爲メ建物ノ賃借ヲ爲シ賃貸人其建物ニ連接シタル建物又ハ同一ノ構内ニ在ル建物ノ一分ヲ保存シタルトキハ其賃貸人ハ之ト同一ナル商業ヲ營ム爲メ其一分ヲ他人ニ賃貸シ又ハ自身ニ占據スルコトヲ得ス
栗塚說明委員曰起案者ハ賃貸人ハ賃借人ニ收益ヲ爲サシムルハ其義務ナルヲ以テ之レカ擔保スヘキハ勿論ナリト云フ譯ナルカ報吿委員中ノ議論ヲ刪除說ニ決シタルモ本員ハ獨リ反對說ナリシ若シ此條ヲ刪除スルトスルモ實際損害ヲ生スルトキハ被害者ヨリ損害賠償ヲ訴フヘキヲ以テ其事柄ハ息マサルモノナリト然ルニ遂ニ報吿委員ノ刪除案ヲ可トス
第六百四十一條 賃借人ハ賃貸人ノ明許ナクシテ賃借地ニ適宜ニ建築又ハ植付ヲ爲スコトヲ得但現在ノ建築又ハ植付ニ何等ノ變更ヲモ爲スコトヲ得ス
賃借人ハ舊狀ニ復スルコトヲ得ル時ニ限リ其爲シタル建築又ハ植付ヲ賃借ノ終ニ收去スルコトヲ得但第六百五十六條ニ於テ賃貸人ニ與ヘタル權能ハ此限ニ在ラス
原案ノ通
第六百四十二條 賃借人ハ賃借ノ經過スヘキ殘期ノ爲メ其賃借權ヲ無償又ハ有償ノ名義ニテ讓渡シ又ハ其物ヲ轉貸スルコトヲ得但反對ノ要約アルトキハ此限ニ在ラス〔第千七百十七條〕
第一ノ場合ニ於テ賃借人ハ贈與者又ハ賣主ノ權利ヲ有シ第二ノ場合ニ於テ賃貸人ノ權利ヲ有ス
右何レノ場合ニ於テモ賃借人ニハ賃貸人ニ對シ其義務ヲ免カルルコトヲ得ス但賃貸人カ轉借人ト更改ヲ爲シタルトキハ此限ニ在ラス
金錢ニ換フヘカラサル果實又ハ產物ノ一分ヲ以テ借賃ト爲ストキハ賃借權ノ讓渡若クハ轉貸ハ賃貸人ノ承諾ナクシテ之ヲ爲スコトル得ス〔第千七百六十三條〕
本條(殘期ノ爲メ)トアルヲ殘期中トス又四項金錢ニ換フヘカラサルノ數字ヲ刪除シ(產物ノ一部)トアルヲ修正シテ產物ノ幾分ニシテ金錢ニ換フヘカラサルモノヲ以テ借賃云々トス
第六百四十三條 不動產ノ賃借人ハ其權利ヲ抵當ト爲スコトヲ得但讓渡又ハ轉貸ヲ禁セルトキニ限ル
本條ハ原案ニ異議ナシ然シテ報吿委員ハ用收權第五百六十一條乃至第五百六十四條又第五百六十七條乃至第五百六十九條又第五百九十五條及ヒ第五百七十條末項ヲイロハ符號ヲ以テ此ノ所ニ挿入スルノ修正案アリ(ロ)ハ前來所有者ニ更ニ前來賃貸人ト修正シテ挿入ス(ハ)ハ修正文ノ通(ニ甲)修正文ノ通(ニ乙)ハ刪除說アリシカ更ニ然レトモ賃貸人ハ苗芽又ハ種子ヲ以テ培養場ヲ保持スヘシノ一項ヲ加入シテ据置ニ決ス(ホ)箕作委員曰本項ニ日本坑法ニ從フヲ要セサルトアルヲ以テ別項ハ無用ニ屬スルニアラスヤ栗塚說明委員曰別項ハ報吿委員ヨリ刪除セシモノトセラレタシト(ヘ甲)賃借ヲ賃貸借トシテ他ハ修正ノ通リ(ヘ乙)同上(ト)修正文ノ通(チ)松岡委員曰本項ハ物ノ保險ナルカ栗塚說明委員曰權ノ保險ナリ各員大抵刪除說ナリケレハ委員長曰此點ハ熟考セサレハ權利ノ保險ハ他ニアラサルヲ以テナリト淸岡委員曰權ヲ保險ニ附スルハ奇妙ナリト云フヘシ栗塚說明委員曰賃借權ハ已ニ賣買ノ目的トナリタルモノナルヲ以テ之ヲ保險ニ附スルコトモアルヘキナリト然ルニ結局全部刪除ニ決ス
第六百四十四條 賃借人ハ其權利ノ保存及ヒ土地ニ附着スル地役ノ收益ノ爲メ第三者ニ對シ用收權ノ章第五百七十條ニ記載シタル訴權ヲ行フコトヲ得
本條ハ報吿委員用收權第五百七十條末項ヲ以テ修正セリ箕作委員曰本條ノ修正案ハ要請又ハ拒却ノコトノミナルカ故元五百七十條ニハ別ニ物上訴權ト云フコトアリ之ヲ除キシハ如何ト遂ニ賃借人ハ其權利ノ保存ノ爲メ第三者ニ對シ占有及ヒ權原ノ物上ノ訴權ヲ行フコトヲ得又土地ニ附着スル地役ニ付キ第三者ニ對シ自己ノ權利ノ程度ニ於テ占有ニ係ルト權原ニ係ルトヲ問ハス要請又ハ拒却ノ訴權ヲ行ヲ得ト修正ス
第三節 賃借人ノ義務
第六百四十五條 賃貸人其權利ヲ保存スル爲メ動產ノ目錄及ヒ賃貸シタル場所ノ形狀書ヲ作ラント欲スルトキハ賃借人ハ收益ヲ始ムル時又ハ其他何時ニテモ己レト立會ヒ賃貸人ノ之ヲ作ルコトヲ許諾スヘシ但賃借人ハ右書類ノ費用ヲ分擔ス
賃借人モ亦賃貸人ヲ召喚シタル後自費ニテ右ノ目錄又ハ形狀書ヲ作ラシムルコトヲ得
動產又ハ不動產ノ形狀書ヲ作ラサリシトキハ賃借人ハ修繕完好ノ形狀ニテ之ヲ受取リタリト推測セラル但反對ノ證據アルトキハ此限ニ在ラス
動產ノ目錄ナキトキハ其實體及ヒ形狀ノ證明ハ賃貸人ノ責ニ歸シ通常ノ方法ニ從ヒ之ヲ爲ス〔第千七百三十一條〕
本條一項ハ異議ナシ第二項ハ報吿委員ノ修正案ニ從ヒ召喚シノ下ヘ立會ノ四字ヲ挿入シ形狀書ヲ作ラシムルコトトアルラシムノ三字ヲ刪除ス其三項ハ報吿委員ニ於テ元五百七十五條ヲ修正シテ斯ニ挿入セントスルノ修正案ヲ可トス此修正案中淸岡委員ノ動議ニヨリ不動產ノ三字ヲ刪ル松岡委員ハ本項ハ用收權アル場合ニ必要ニシテ賃貸借ノ如キ契約上ニ成立スヘキモノニ必要ナラサルニ付キ刪除スヘキノ動議ヲ起セシカ成立セス四項五項ハ別ニ異議ナシ
第六百四十六條 金錢ヲ以テ借賃ト爲シタルトキハ賃借人ハ合意ノ時期ニ之ヲ拂ヒ其合意ナキトキハ每月ノ終ニ之ヲ拂フヘシ〔第千七百二十八條第二項〕
右ト同一ノ名義ニテ拂フヘキ果實ノ部分ニ付テハ其部分ハ收穫ノ後ニアラサレハ之ヲ要求スルコトヲ得ス然レトモ收穫ノ後ニ於テハ其全部ヲ要求スルコトヲ得
本條一項ハ報吿委員ノ修正案ヲ可認シテ但云々ノ一句ヲ增補ス
第六百四十七條 賃借人カ右給付ノ執行ヲ爲サス又ハ賃借ノ其他ノ特別ナル條目及ヒ條件ヲ執行セサルトキハ賃貸人ハ訴訟ニ因リ賃借人ニ對シテ直接ニ其執行ヲ強要シ又ハ損害アルトキハ其賠償ヲ得テ賃貸ヲ銷除スルコトヲ得〔第千七百四十條及ヒ第千七百六十條〕
委員長曰其他トハ何ヲ指スカ栗塚說明委員曰給付ノ外ニアル條件ニシテ卽チ賃貸物ヲ至當ニ使用シテ決シテ濫用セシメサルカ如キヲ云フト
第六百四十八條 賃貸シタル場所カ土地ノ產物ヲ貯藏スル爲メニ調適セラレタルトキハ賃借人其產物ヲ賣ルマテハ賃貸人ノ擔保ノ爲メ之ヲ其場所ニ貯藏スヘシ但賃借人其年ノ借賃ヲ前拂ニスルコトヲ好ムトキハ此限ニ在ラス〔第千七百六十七條〕
本條調適ノ二字ハ報吿委員ニ於テ供セラレ云々修正シタル分可決ス
第六百四十九條 賃借人ハ直接ニ賃借物ニ賦課セラルルコトアルヘキ通常又ハ非常ノ租稅ハ如何ナルモノト雖モ賃借人之ヲ擔任セス歳法ニ依リ賃借人ニ賦課スルコトアルヘキ租稅ハ其借賃中ヨリ扣除シ又ハ賃貸人ニ之ヲ償還スヘシ但反對ノ合意アルトキハ此限ニ在ラス
然レトモ賃借人ノ構造シタル建物ニ賦課シ又ハ賃借地ニ於テ賃借人ノ營ム商業及ヒ工業ニ賦課スル租稅及ヒ負擔ハ賃借人之ヲ擔任ス
松岡委員曰冒頭ニ賃借人云々シテ又賃借人之ヲ擔任セスト云フト冗文ニ屬スト各員曰贊成ナリト然ルニ村田委員ハ冒頭ノ賃借人ノ三字ヲ不用トシテ後ノ賃借人云々ハ必要ナリト遂ニ此點ハ反譯局ノ修正ニ附ス又歳計法ノ文字ニ付キ議論アリシカ
(委員長)
此所ハ尙ホ大藏省ヘモ詮議スヘシトテ亦タ反譯局ノ修正ニ附ス
第六百五十條 賃借人又ハ其讓受人ハ明示ト默示トヲ問ハス合意ヲ以テ定メタル用方ニ從フニアラサレハ賃借物ヲ使用スルコトヲ得ス又此事ニ關シ合意ナキトキハ契約ノ時ノ用方又ハ物ノ本性ニ因リ毀損セスシテ爲スコトヲ得ル用方ニ從フニアラサレハ之ヲ使用スルコトヲ得ス〔第千七百二十八條第一項〕
原案通
第六百五十一條 賃借人ハ賃借物ノ看守及ヒ保存ニ付キ用收者ト同一ノ義務ヲ擔任ス
若シ第三者カ賃借物ニ付キ占奪又ハ其他ノ企作ヲ爲ストキハ賃借人ハ用收者ニ關シ第五百九十九條ニ記載セル如ク且之ト同一ノ責罰ニテ其旨ヲ賃貸人ニ吿知スヘシ〔第千七百二十六條及ヒ第千七百二十七條〕
本條ハ報吿委員ノ修正案アリ卽チ其修正案ヲ可決ス其一項ハ其修正案中松岡委員ノ動議ニ因リ注意スヘシトアルヲ注意スルノ義務アリトス其三項ノ修正ハ元五百九十九條ヲ採リテ此ニ移シ來リタルモノナリト
第六百五十二條 一箇ノ建物又ハ同一ノ構内ニ在リテ同一ノ所有者ニ屬スル數箇ノ建物ニ數人ノ賃借人アルトキハ其賃借人ハ所有者ニ對シ連帶シテ火災ノ責ニ任ス但總テノ賃借人又ハ其中ノ或者ニ過愆ナキノ證據アルトキハ此限ニ在ラス〔第千七百三十三條第千七百三十四條及ヒ千八百八十三年一月五日ノ佛法律反對〕
(工藤)
此條ハ報吿委員中意見兩端ニ分レ修正論者ノ說ハ失火ノ起始明知スベカラザル場合ハ其一構内中一般ニ過愆アルノ推測ヲ下シ連帶責任ヲ負ハシムベシト云フト雖ドモ本員ノ如キハ否ラズト思考ス借家ハ大抵各自各別ノ契約アリテ一樣ナラズ又借家隣壁近接スルモ相面識セザルモノ往々之レアルガ故ニ決シテ連帶ノ性質ヲ存セザルモノトスト村田委員ハ此點ニ付テハ述帶責任ヲ贊成スト云フ
(松岡)
日本ノ火災ハ特殊ノモノニ屬スヲ以テ刑法附則ニ於テモ其責ニ任ゼザルノ定メナルニ此法ヲ以テ責任ヲ負ハシムベキカ
(栗塚)
失火ノ過愆誰某ナルヤ不明了ナルトキハ其責任ハ連帶セザルベカラズ舊時町内ニ五人組ノ制規アリテ互相ノ家事ニ注意セシコトアリシガ今此連帶責任法モ此等ノモノニ類似スト
(委員長)
此過愆ニ付テハ要償ヲ是トスルヤ否各員同要償スルヲ是トスト
(委員長)
其過愆ノ明了ナラザルトキハ其責任ハ連帶ナルカ否
(淸岡)
連帶責任ヲ負ハシムレバ何人モ火災ノ虞アル隣家ニ接スルヲ好マザルベシ其際ニ於テハ故障ヲ云フノ權アルカ
(栗塚)
ナシト
(委員長)
連帶責任ニスレバ其中無資力者アルベキハ他ノ有力者責ヲ併受セザルヲ得ザルニ付キ不都合ナリト
遂ニ連帶シノ三字ヲ刪除ス
第六百五十三條 賠償ヲ辨濟セシ者ノ求償ハ裁判所ニ於テ各借用場所ノ廣狹ト賃借人ノ營業及ヒ常習ヨリ生スヘキ危害ノ輕重トヲ斟酌シテ總テノ賃借人ノ間ニ之ヲ分ツヘシ〔伊民第千五百九十條〕
(淸岡)
本條ハ連帶責任アルニ付キ要スベキモノナルガ連帶ハ已ニ刪除セラレタルヲ以テ殆ンド不用ニ屬スト尙ホ報吿委員ニ於テ協議スベシトゾ
第六百五十四條 若シ所有者カ同一ノ構内ニ在ル燒失セシ建物ノ一分ニ住居セシトキハ火災己レノ方ヨリ起ラサリシコトヲ證スルニアラサレハ賃借人ニ對シ償金ヲ求ムルコトヲ得ス又此場合ニ於テモ賃借人ノ連帶責任ハ其借用セル場所ノ價格ヲ以テ限トス〔伊民同上〕
本條モ連帶責任ヲ刪除スル以上ハ修正ヲ要スヘシト卽チ報吿委員ニ附ス
第六百五十五條 若シ賃借ノ終ニ賃借人賃借物ヲ返還セサルトキハ賃借人ハ之カ爲メ賃貸人ノ擇ニ隨ヒ對人訴權又ハ物上訴權ニテ訴追セラルルコトアルヘシ
原按通
第六百五十六條 賃貸人ハ賃借ノ終ニ第六百四十一條ニ因リ賃借人ノ收去スルコトヲ得ヘキ建築物及ヒ植物ヲ鑑定人ノ評價ニ從ヒ現價ヲ以テ己レニ讓渡スコトヲ要求スルコトヲ得第五百七十三條ハ右ノ先買權ニ適用ス
本條ハ報吿委員ノ修正案アリ其一項ハ報吿委員中ニモ建築物及ヒ植付物ヲノ下ヘ他ニ讓渡サントスルトキハ鑑定人云々修正スヘキ意見ト原案維持說トアリ修正論者ノ說ハ賃借人退去ノ際自己ノ爲シタル建築物及ヒ植付物ノ類ヲ收去セントスルモ原案ノ意義ニ依レハ自己ニ之ヲ收去スルヲ得ス猥リニ人ノ處分權ヲ害スルモノナリト原案維持論者ノ說ハ賃借人ハ右等ノ物件ヲ收去スルト云フモ必ラス賣却等ニ附スルモノナリ又借家ニ附着シタルモノヲ取毀ツヘキハ經濟ノ理ニ反スルモノナレハ賃貸人ヲシテ先買セシムルニ若カスト又各員中本條ヲ刪除スヘキ意見モアリシカ遂ニ報吿委員ノ修正案ニ可決ス其二項ハ報吿委員之ヲ刪除シテ元五百七十三條二項以下ヲ移補スルノ修正案ヲ可トス
第四節 賃借權ノ絕止
第六百五十七條 賃借權ハ左ノ諸件ニ因テ當然終ハル
第一 賃借物ノ全部ノ喪失但自己ノ過愆ニ因リ其喪失ヲ來セシ者ハ其償ヲ爲スヘシ〔千七百二十二條及ヒ第千七百四十一條〕
第二 公用ノ爲メ物ノ全部ノ所有權徵收
第三 賃貸人ノ追奪又ハ賃貸物ニ對スル賃貸人ノ權利ノ取消但右ノ追奪及ヒ取消ハ賃貸契約前ノ原由ニ因リ裁判所ニ於テ其追奪及ヒ取消ヲ宣吿セシトキニ限ル
第四 明示若クハ默示ニテ定メタル期限ノ滿了終又ハ要約セラレタル解除ノ未必條件ノ成就〔第千七百三十七條第千七百七十四條及ヒ第千七百七十五條〕
第五 最初ヨリ期限ヲ定メサルトキハ賃借了終申入書送逹ノ後法律上ノ期間ノ經過〔第千七百三十九條〕
尙ホ賃借ハ條件ノ不履行ノ爲メ又ハ法律ニ定メタル其他ノ原由ノ爲メニ當事者中一方ノ請求ニ因リ裁判所ニテ宣吿シタル解除又ハ銷除ニ因テ終ハル〔第千七百二十九條第千七百四十一條第千七百六十條第千七百六十四條及ヒ第千七百六十六條〕
原案通
第六百五十八條 抗拒スルコトヲ得サル原由又ハ意外ノ原由ニ因リ賃借物一分ノ喪失ノ場合ニ於テハ賃借人ハ第六百三十八條ニ記載シタル條件ニ從ヒ賃借ノ解除ヲ請求シ又ハ借賃ヲ減シテ其賃借ノ存續ヲ請求スルコトヲ得〔第千七百二十二條〕
公用ノ爲メ其一分ノ所有權徵收ノ場合ニ於テハ賃借人ハ常ニ借賃ノ減少ヲ請求スルコトヲ得
原按通
第六百五十九條 時期ノ定メアル賃借ノ終ニ於テ賃借人仍ホ收益シ賃貸人之ヲ知リテ故障ヲ爲ササルトキハ新賃借暗ニ成立ス但前賃借ト同一ノ負擔及ヒ條件ニ從フ〔第千七百三十八條及ヒ第千七百五十九條〕
然レトモ最初ノ賃借ヲ擔保シタル保證人ハ義務ヲ免カレ又之ト同一ノ名義ニテ供シタル抵當ハ消滅ス〔第千七百四十條〕
新賃借ハ以下數條ニ記載シタル如ク賃借了終申入ニ因テ止ム〔第千七百三十六條及ヒ第千七百三十九條〕
原按通
第六百六十條 家具ノ附キタル家屋母屋又ハ房屋ヲ賃借ニシテ其時期ヲ明示シテ定メサルモノハ其借賃ヲ一年、一月又ハ一日ヲ以テ定メタルニ於テハ一年、一月又ハ一日ニ之ヲ爲シタルモノト推測ス但前條ニ記載シタル默示ノ賃借更新ハ此限ニ在ラス〔第千七百五十八條〕
(淸岡)
母屋ノ字ハ明記セザルヲ得ザルカ
(栗塚)
家屋ト云ヘバ家屋惣體ヲ指スモノナレバ母屋ハ特記セザルヲ得ズト
又ハ一日ニ之ヲ爲シタルモノトアルハ又ハ一日間之ヲ爲シタルモノト修正ス
第六百六十一條 家具ノ附カサル建物ノ賃借ニ付キ時期ヲ定メサルトキ又ハ定メタル期限ノ滿了ニ於テ默示ノ賃借更新アリタルトキハ賃借ハ其年内何時ニテモ當事者ノ一方ヨリ他ノ一方ニ爲シタル賃借了終申入ニ因テ終ハル〔第千七百三十六條〕
賃借了終申入ノ時ヨリ退去マテノ時間ハ左ノ如シ
全家屋ニ付テハ三个月
建物ノ一分又ハ母屋又ハ尙ホ狹隘ナリト雖モ賃借人ノ商業又ハ工業ヲ營ム場合ニ付テハ二个月
總テ其他ノ家具ノ附カサル場所ニ付テハ一个月
(淸岡)
家具ト云ヘバ日本ニテハ膳椀砲丁ノ類ヲ指スニ斯ニ家具トアルハ不都合ナキヤ
(栗塚)
斯ノ家ト云ヘバ椅子卓臺等ノ類ヲ指スト各員曰然ラバ家具ノ字ハ更ニ妥當ノ文字ヲ撰ムベシト
其年内ノ三字ハ刪除ニ決ス
第六百六十二條 家具ノ附キタル場所ニ賃借ニ付キ默示ノ賃借更新アリタルトキハ賃借ノ初ノ時期ヲ三介月又ハ其以上ニ定メタルニ於テハ賃借了終申入ノ時ヨリ退去マテノ時間ヲ一介月トス
三个月以下ノ賃借ニ付テハ其時間ハ最初ノ時期ノ三分一トス
日々ノ賃借ニ付テハ二十四時トス
右ノ期間ハ默示ノ賃借更新ノ後動產ノ賃借ニ之ヲ適用ス又初メニ時期ヲ定メスシテ賃借ヲ爲シタルトキ其賃借ヲ止ムル爲メニハ十五日前ニ賃借了終ノ申入ヲ爲スコトヲ要ス
然レトモ賃貸シタル建物ニ具ヘタル動產又ハ用方ニ因ル不動產ト看做シタル動產ニ付テハ其賃借ハ建物ノ賃借ノ止ムニアラサレハ止マス〔第千七百五十七條〕
時期ヲ定メスシテ爲シタル田舎ノ財產ノ賃借ニ付テハ賃借了終申入ハ其年ノ主タル收穫ノ期節ヨリ一个年前ニ之ヲ爲スヘシ
畜類ノ賃借ノ時期ハ第三編ニ規定ス
本條ハ報吿委員ノ修正案ニ於テ田舎ノ財產ヲ田畑ト修正シタリシカ本會ニ於テ更ニ田野ノ財產ト修正ス
第六百六十三條 賃借了終申入ノ期節及ヒ退去ノ期節ニ關スル前三條ノ條例ハ其期節ニ付キ確實ナル地方ノ習慣ナキニアラサレハ之ヲ適用セス〔第千七百三十六條及第千七百五十六條乃至第千七百五十九條〕
原案通
第六百六十四條 何レノ場合ニ於テモ賃借人ノ權利ヲ有スル一切ノ收穫物ヲ離分シ又ハ收去スル前ニ賃借ノ滿了シタルトキハ賃貸人又ハ新賃借人ハ前賃借人ニ其權能ヲ委ネ置クヘシ
之ニ反シテ賃借人ハ收穫物ヲ取拂ヒタル土地ノ部分ニ於テ賃借滿了前ニ必要ノ工事ヲ爲スコトヲ賃貸人又ハ新賃借人ニ許サルルコトヲ得ス但賃借人之カ爲メ顯實ノ妨害ヲ受クヘキトキハ此限ニ在ラス
原案通
第六百六十五條 若シ賃貸人カ賃借物ノ移付ノ場合又ハ自己ノ爲メ若クハ總テ其他ノ特別ナル原由ノ爲メ收益ヲ復スル場合ニ於テ定期滿了ノ前ニ賃借ヲ銷除スルノ權能ヲ留保シタルトキ又賃借人カ其賃借ノ無用トナルヘキ未定事故ヲ慮カリテ右ノ同一ノ權能ヲ留保シタルトキハ各自互ニ前數條ニ定メタル期限ニ於テ豫メ賃借了終ノ申入ヲ爲スヘシ但合意ニ從ヒ其經過スヘキ殘期カ尙ホ短キトキハ此例ニ在ラス〔第千七百四十四條以下第千七百六十一條及ヒ第千七百六十二條〕
原案通
附錄 永借權及ヒ地上權
第一款 永借權
第六百六十六條 永借トハ長キ期限卽チ二十年ヲ踰ユル不動產ノ賃借ヲ謂フ
永借ハ五十年ヲ超過スルコトヲ得ス若シ尙ホ此ヨリ長キ時期ニテ永借ヲ爲シタルトキハ之ヲ五十年ニ短縮ス
永借ハ常ニ更新スルコトヲ得然レトモ更新ヨリ五十年ヲ超過スルコトヲ得ス〔伊民第千五百五十六條〕
此法頒布以前ニ時期ヲ定メテ爲シタル不動產ノ賃借ハ五十年ヲ踰ユルモノト雖モ其指定シタル全期間有効タリ
右ノ期日以前ニ時期ヲ定メスシテ爲シタル荒蕪地又ハ未耕地ノ賃借ハ豫メ十年前ニ當事者ノ一方ヨリ他ノ一方ニ爲シタル賃借了終申入ニ因テ止ム
明確ニ無期ナリト要約シタル賃借ニ付キ永借人ノ其納額ヲ買戻スノ權能及ヒ條件ハ日後特別法ヲ以テ之ヲ定ム
本條一項ハ報吿委員ニ於テ三十年ヲ二十年ト修正ス卽チ其修正案ヲ可トス其三項及ヒ四項ハ報吿委員ニ於テ三項中未耕地ノ賃貸借ノ下ハ豫メ云々ヨリ四項中ノ要約シタル迄ヲ刪除シ及ヒ其他從來永小作ト稱スル賃貸借ニ付キ其了終ノ期限及ヒ條件ハノ數字ヲ塡補ス
(南部)
永借人ノ其納額ヲ買戻ノ權能ヲ定ムルハ行政法ニ關係スルモノニシテ斯ニ明記スベキニアラズト
(淸岡)
永借人ヲシテ其納額ヲ買戻サシムルハ甚ダ不都合ナリ又此點ハ永借人ノ買戻ナルモ永貸人ノ買戻ニ關スル所ハ之ヲ明記セザルカ
(村田)
貸地人ハ元自己ノ所有ニ屬スルモノナレバ買戻スベキ理由ナシト
(南部)
賃貸借ニ付キ其了終ノ期限及ビ條件ハ日後云々トスベシト
(淸岡)
日後ノ二字ハ之ヲ刪除シテハ如何又曰了終ノ文字ハ何ヲ云フカ
(南部)
其買戻ハ永貸借ノ了終スルモノナリト
(栗塚)
報吿委員修正ノ要旨ハ當事者ノ一方ヨリ了終申入レニ因テ止ムハ如何ニモ不都合ナルベキニ付キ此點ハ特別法ヲ以テ之ヲ定ムルノ意ナリト
南部委員ノ修正動議ニ可決セラル
第六百六十七條 永借ハ永借契約ヲ以テスルニアラサレハ之ヲ設定スルコトヲ得ス第六百二十四條ハ永借ノ贈遺又ハ豫約ニ之ヲ適用ス
原案通
第六百六十八條 當事者互相ノ權利及ヒ義務ハ永借ノ設定證書ヲ以テ之ヲ定ム
特別ノ合意ナキトキハ上ニ定メタル通常ノ賃借ノ規則ヲ以下ノ改樣ヲ以テ永借ニ適用ス
原案通
第六百六十九條 土地ノ永借人ハ其土地ノ本性ヲ變スルコトヲ得但永久ノ毀損ヲ生セシメサルコトヲ要ス
永借人ハ常ニ沼ヲ涸ラスコトヲ得
又永借人ハ土地利用ノ爲メ或ル利益ヲ生スヘキトキハ其土地ヲ通過スル水流ヲ改樣スルコトヲ得
(箕作)
本條二項ハ刪除シテハ如何ト云ヘルルモ此動議ハ成立セズ
(委員長)
土地ノ本性ヲ變ズルヲ得ベキニ永久ノ毀損ヲ生ゼシメザルヲ要スト云フハ如何
(寺島)
將來損害ノアラザル限リハ其本性ヲ變ズルモ可ナリト
毀損ノ文字ニハ種々議論モアリシニ箕作委員ノ意見ニ依リ反譯局ノ耳考ニ附ス
第六百七十條 永借人ハ原地、叢地、竹林ヲ開墾スルコトヲ得然レトモ所有者ノ承諾アルニアラサレハ小樹林ノ樹木ハ勿論定期ニ採伐スルノ用ニ供セサル樹木ニシテ既ニ二十年餘ニ及ヒ且其成長ノ年期カ賃借ノ時期ノ外ニ延フヘキモノヲモ拔取ルコトヲ得ス
本條ハ報吿委員ノ修正案ヲ可トス
(尾崎)
原地叢地ヲ開墾スルヲ得トアリテ樹木ヲ拔キ取ルヲ得ズト云フハ如何
(南部)
全部拔取スルヲ得ザルモノニシテ僅々ノ拔取ヲ禁ジタルモノニアラズト
(淸岡)
樹木ノ二字ハ刪除スベシト
卽チ可決ス
第六百七十一條 永借人ハ何レノ場合ニ於テモ所有者ノ承諾アルニアラサレハ主タル建物ハ勿論從タル建物ト雖モ其存立ノ時期カ賃借ノ時期ニ超過シ得ルモノハ之ヲ取拂フコトヲ得ス
原案通
第六百七十二條 前二條ニ從ヒ永借人カ建築又ハ樹木ヲ取拂フコトヲ得ル總テノ場合ニ於テ其取拂ヒタル物料及ヒ木材ハ所有者ニ屬ス
(尾崎)
建築トハ建物ト云フコトカ
(栗塚)
然リト
遂ニ建築物ト修正ス
(淸岡)
前條ハ永借人ノ爲スヘカラザル禁止ヲ擧テ本條ニハ其爲スヲ得ルトセシハ如何
(栗塚)
ソハ永貸人ノ承諾アレバ爲スヲ得ベキモノトス
第六百七十三條 永借人ハ其分限ヲ以テ底地ニ在ル地下ノ坑物ノ利用ヲ繼續スルコトヲ得ス
永借人ハ礦坑ノ特許ヲ得タル者ノ拂ヘル納額ニ付キ何等ノ權利ヲモ有セス〔同上第千五百六十一條〕
然レトモ永借人ハ右特許ヲ得タル者ノ地表ニ加ヘタル損害ノ爲メ其賠償ヲ受ク
(委員長)
此二項ハ者ノノ下ヘ所有者ニノ文字ヲ挿入スベシト
可決ス
第六百七十四條 永借地ニ鑛屬又ハ石、石灰、砂利若クハ其他ノ礦物ノ石坑アルトキハ賃借人ハ既ニ始マリタル利用ヲ己レノ利益ノ爲メ繼續スルコトヲ得
若シ石坑カ未タ開カレス又ハ其利用ノ廢セラレタルトキハ賃借人ハ其土地ノ改良ノ爲メ石又ハ其他ノ物料ヲ採取スルコトヲ得ルノミ
本條一項ハ報吿委員ノ修正アリ
(寺島)
此一項ハ賃借權ノ場合ト異ナラサルモ二項ハ此條ノ必要ノ點ナリト
第六百五十二條
本條ハ曩ニ本會ニ於テ連帶シテノ文字ヲ刪除スルニ可決シタルヲ以テ報吿委員ハ更ニ本條ノ再修正案ヲ呈出シタリ卽チ可決ス
第六百五十三條
本條ハ前條ノ再修正ニ屬スヘキヲ以テ自ラ不用ノ條項トナリシカ故ニ報吿委員ハ其刪除案ヲ呈出ス卽チ刪除ニ決ス
第六百五十四條
本條モ前條ト同一ノ理由ニ屬スルヲ以テ報吿委員ハ又以下ノ刪除案ヲ呈出ス卽チ其刪除案ニ可決ス
第六百七十五條 賃貸人ハ永借契約ノ當時ニ於ケル形狀ニテ賃貸物ヲ引渡ス
賃貸人ハ賃借權ノ時期ノ間大修繕ヲモ又保存修繕ヲモ決シテ擔任セス
(村田)
賃貸人ノ文字ハ本款中皆永貸人トナラザルベカラズト
(淸岡)
本員ハ此條ノ立言ヲ不可ナリトスルニハ非ザレドモ起案者ヲシテ充分ノ注意ヲ請ハザルベカラザルモノアリ我邦ハ屡々洪水野ヲ浸スノ殃ヒアリ爲メニ田地ノ形狀ヲ荒變スルコト少シトセズ如是ニ際シテ永借人ノ如キハ敢テ資力アルモノニアラズ將タ或ハ永借期限ニ近カラントスル場合ノ如キハ永借人タルモノ決シテ田地ノ修繕ヲ營ムモノニアラズ元來田地ノ修繕ノ如キハ未ダ雨降ラザルニ之ヲ綱膠セザルベカラザルモノナルニ既ニ右樣ノ禍殃ニ遭遇シタルニモ拘ハラズ永借人之ヲ設置ニ附シテ修繕ニ着手セザルトキハ
遂ニ田地ノ全形ヲ失スベシト
(南部)
永貸人此修繕ノ義務アリトスレバ賃貸借ト異ナラズト
(尾崎)
此修繕ニ關シテハ永貸人ト永借人ト共ニ其割前ノ出金ニセザレバ不都合ナリト
(委員長)
保持修繕ハ永借人ノ義務ナルモ大修繕ハ双方割前出金ニシテ如何
(栗塚)
永貸借ハ賃金モ安廉ニモアリ又新墾地ノ如キハ自然豐饒ニアルベキヲ以テ永借人ノ利益少ナカラザルモノナレバ修繕ノ義務ヲ負フベキモノトス
(淸岡)
本員ハ此條ヲ不可ナリト云フニアラズ惟起案者ニ注意ヲ與ヘタシト云フニアリ
(尾崎)
我邦田地ノ現狀ハ屡其修繕ヲ要スベキモノナルニ永貸人ハ其義務ナシトスレバ微力ノ小作人ハ此修繕ヲ爲ス能ハザラン果シテ然ラバ其田地ハ勢ヒ荒廢ニ屬スト
(西)
永貸借ニ附スル地面ハ決シテ良田地ニアラズ既ニ荒廢ニ屬シタルガ如キ地面ニアラザレバ良田地ヲ永貸スルノ云ハレナント
(南部)
此條ヲ變更スルニ至レバ永貸借ノ性質ヲ失フベシ就テハ反對論者ノ修正案ヲ承知シタシト
(委員長)
此條ハ永貸借ノ定義ヲ立タルモノナルガ然ルニ永借人ノ義務ニ屬スベキ者ヲ永貸人之ヲ代爲シタルトキハ永借人ハ償還ノ義務ヲ負ハザルベカラズト
(松岡)
此定義ハ甚不明ニ屬ス何トナレバ永借人此修繕ヲ爲サザルトキハ永貸人ノ爲スモノト云フコト不明ナレバナリト
(栗塚)
西委員ノ云ハルル如ク例ヘバ爰ニ甲者所有ノ荒地アリ乙者之ヲ永借シテ耕作スルガ如キ場合ニ屬スルモノナレバ永貸者ハ其收穫ニ擔保セズ永借者ハ其一切ノ負擔ニ任セザルベカラズト
(委員長)
此修繕ハ小作人ノ爲スベキモノトナルガ小作人其修繕ヲ爲サザル場合地主之ニ立入テ其修繕ヲ爲シタルトキハ小作人ニ於テ彼實ニ無用ノ干渉ヲナスモノナリト云ハザルカ將又追償ヲ受クベキカト
(栗塚)
永借權ハ恰モ所有主ノ如キ働力ヲ有スルモノナレバ決シテ地主ノ干渉スベキヲ要セズト
(委員長)
例ヘバ爰ニ一町歩ノ田地アリ久シク其修繕ヲ爲サザルニ依リ其田地ハ實際九反部ノ收穫ニ減ズルガ如キアレバ地主ノ所有權ニ害アルヲ以テ干渉セザルヘカラズト
(南部)
永貸借ニ附シタル地面ノ如キハ元ト荒蕪地ノ如キモノナレバ假令一町歩ニシテ一町歩ノ收益アラズトスルモ其實ハ尙初ヨリ幾分カ收益ヲ增加シタルベシト
(委員長)
荒地ノ貸附ハ追々收益ヲ增多スルハ當然ナリ故ニ地主ハ全ク借地料ヲ收納スルモ小作人ハ實際收益ノ減少スル場合ナシトセズ其際地主其地ニ修繕ヲ加ヘントスレバ借主ハ之ヲ拒否スベシ勢ヒ如此ナルニ至テハ小作人自身ノ收益ハ益減少シ倒底國家ノ損耗ヲ見ルベシト
種々討議セシニ尙ホ報吿委員ノ修正ニ附ス
第六百七十六條 意外ノ事又ハ抗拒スルコトヲ得サルカニ因テ永借ノ時期ノ間ニ起リシ損壞ハ借賃ヲ減少スルノ理由ヲ生セス但第六百八十一條ヲ以テ賃借人ニ留保シタル解除ノ權利ヲ妨ケス
原案通
第六百七十七條 賃借人ハ求償權ナクシテ通常ト非常トヲ問ハス一切ノ地稅ヲ拂フ但非常稅ヲ設定スル法律カ格別ニ定メタルトキハ此限ニ在ラス〔同上第千五百五十八條〕
(淸岡)
原案ハ地所ノミナルニ報吿委員ノ修正案ニハ永借物汎稱スルハ如何
(栗塚)
地稅ハ外國ニ於テハ家屋地面ト併着シテ一個ノ不動產ナレバナリト
(委員長)
賦課セラルルコトアルベシト言辭ヲ未來ニ置キシハ如何
(南部)
セラルベキトシテモ別ニ不都合ナカルベシト報吿委員ノ修正案ヲ可トス
(鶴田)
此修正案ニハ償還トアルモ不穩當ニ屬スルニ付キ賃金中ニ入ルベシト
(栗塚)
惟名義ヲ所有者ニスルモ其實ハ永借人ノ負フ所ナリト
(南部)
此所ハ現行法ニ依レリト
(淸岡)
賃貸金ハ三年間納額ノ辨濟アラザルトキハ契約ノ解除ヲ請求スルト雖ドモ租稅不納ノ際ニハ何ノ制裁ナキハ如何ト
(栗塚)
償還スベシトアルヲ以テ身代限リニ至ル迄出訴スルヲ得ベシト
(松岡)
租稅ノ文字ハ堤防費ノ如キニ至ルマデモ包入スルカ
(栗塚)
然リ國稅ヨリ區町村費ニ至ルマデ皆租稅ト云ヲ得ト
(鶴田)
國庫ニ對スルノ文字ハ不用ナリト
卽チ之ヲ刪除ス
第六百七十八條 唯一ノ契約ヲ以テ一箇ノ土地ヲ數人ニ永借ニ付シタルトキハ每年借料ヲ拂フノ義務ハ各賃借人又ハ其相續人ニ在テハ連帶ニシテ且不可分ナリ
(栗塚)
連帶義務ハ其中ノ一人ニ數名ノ相續者アルトキハ過分ナルコトヲ以テ此ニ殊ニ不過分ナルヲ示シタリ又唯一ノ契約ハ一個ノ契約ト云フコトナリト
原案通
第六百七十九條 永借ノ讓渡又ハ轉貸ノ場合ニ於テハ前ニ記載シタル義務ハ其讓受人又ハ轉借人ニ移リ讓渡人ハ保證人トシテ其擔保ヲ爲ス但賃貸人カ明示シテ義務ヲ免シタルトキ又ハ己レノ權利ヲ留保セスシテ讓渡ヲ承諾シ之ニ參與シタルトキハ此限ニ在ラス〔同上第千五百六十二條〕
原案通
第六百八十條 賃貸人ハ引續キ三年間納額ノ辨濟ナキトキハ永貸ノ解除ヲ請求スルコトヲ得〔同上第千五百六十五條〕
然ノミナラス賃借人他ノ債權者ノ訴追ニ因リ破產又ハ無資力ト宣言セラレタルトキハ賃貸人ハ辨濟ノ如何ナル不足ニ付テモ解除ヲ請求スルコトヲ得但此債權者ヨリ納額ノ正シキ辨濟ヲ保スルトキハ此限ニ在ラス
(栗塚)
辨濟ノ如何ナル不足ニ付テモト云フハ假令ヒ其三年間ヲ經過セザルモノト云フノ意義ナリト
(尾崎)
前項貸主ニ對シテ納付セザリシトキハ三年間ヲ經過セシムベキニ二項ノ他人ニ對シテ償債スルヲ得ザルトキハ三年ヲ待タザルハ如何
(栗塚)
他人ニ對スルトキハ無資力トナリタル故ナリ
(尾崎)
然ラバ貸主ニ對スルトキモ無資力ノ顯ハレタルトキハ解除スルヲ得ベキカ
(委員長)
永賃貸借ナルヲ以テ憐憫ヲ加ヘ解除セザルベシト
(栗塚)
借料不納ノ際之ヲ身代限リニスルヲ得ルモ契約ヲ解除スルヲ得ズト
(淸岡)
租稅ノ償還ヲ爲ス能ハザルトキハ契約ノ解除ヲ許サザルベカラズト
(松岡)
本員ハ淸岡委員ニ同意ナリ其際或ハ地主ノ困却アルヨリ地面ノ賣却ヲ欲スルナシトセズ然ルニ其地ハ永賃貸借ノ契約中ナルガ故ニ賣却價値モ低下ナルベシト
(栗塚)
如是ハ原因ノ異ナルモノナリ永借金ヲ三年間償却スル能ハザレバ契約ノ解除トナルモ公租ノ償還ヲ爲ス能ハザルトテ直チニ解除スルヲ得ズト
(淸岡)
償還ノ文字ニハ頗ル弊害アリト
遂ニ第六百七十七條ハ報吿委員ノ修正ニ附ス
第六百八十一條 賃借人ハ意外ノ事若クハ抗拒スルコトヲ得サルカニ因リ引續キ三年間土地ノ收益ヲ全ク爲ス能ハサルニ至リ又ハ一分ノ毀損ニ因リ每年拂フヘキ借料ヲ踰ユル利益ヲ將來得ヘカラサルトキハ賃借ノ解除ヲ請求スルコトヲ得〔同上第千五百五十九條及ヒ第千五百六十條〕
(委員長)
賃借永借等文字ノ不同ハ報吿委員ニ於テ之ヲ一定ニスベシト
原案通
第六百八十二條 賃借ノ滿了又ハ其解除ニ當リ賃借人ハ其土地ニ爲シタル植付及ヒ改良ヲ賠償ナクシテ遺シ置クヘシ
建築ニ付テハ通常ノ賃借ノ爲メ第六百五十六條ニ載セタル條例ヲ適用ス〔同上第千五百六十六條〕
原案通
第二款 地上權
第六百八十三條 地上權トハ他ノ所有者ニ屬スル地上ニ於テ建築又ハ樹木若クハ竹ノ植付ヲ完全ナル所有權ニテ占有スルノ權利ヲ謂フ
原案通
第六百八十四條 地上權ハ不動產ノ所有權ヲ得取シ及ヒ轉付スル通常ノ方法ヲ以テ之ヲ設定シ及ヒ之ヲ轉付ス
(栗塚)
地上權ノ存スル所ハ借受ケ地所一面ニアラズ家屋ノ蓋葺ノ蔽フ分ニ止マルモノナリト
原案通
第六百八十五條 地上權設定ノ當時既ニ其土地ニ建築ノ存スルトキハ其設定證書ノ基本及ヒ方式ト公示トハ場合ニ隨ヒ有償又ハ無償ノ名義ヲ以テスル不動產移付ノ一般ノ規則ニ從フ
(尾崎)
基本トハ何ヲ云フカ
(栗塚)
契約ノ能力無能力ニ關スルコトヲ云ヒ又方式トハ書方公示トハ登記ヲ云フト
(委員長)
此建築ノ文字モ建築物トシテ他ノ所ト之レヲ同ジクシ間違ヒナキ樣注意スベシ
(栗塚)
此點ハ悉ク反譯局ニ於テ整正スベキ故此儘ニ措カレタシ
第六百八十六條 地上權者其讓受ケタル建築又ハ植付ノ存スル地面ニ應シテ土地ノ所有者ニ每年ノ納額ヲ拂フヘキコトヲ設定證書ニ定メタルトキハ其權利及ヒ義務ハ此事ニ付キ通常ノ賃借ノ爲メニ上ニ定メタル條例ニ從フ但下ノ第六百八十八條ニ定メタル如ク建築又ハ植付ノ時期ニ關シテハ此限ニ在ラス
築造スル爲メ又ハ植付ヲ爲ス爲メ土地ヲ賃借シタルトキモ右ニ記載シタル納額ニ關シテハ亦同シ
本條每年ノ文字ハ報吿委員ニ於テ之ヲ定期ト修正シタルニ
(淸岡)
原案ノ通リ每年ヲ可トス
(委員長)
讓受ノ文字ハ賣受モ又只貰受シモノモ混同セルカ
(栗塚)
然リト
其每年ヲ定期ト修正シタルハ遂ニ可決ス但下ノトアル下ノ字ハ之ヲ刪除ス
第六百八十七條 既ニ爲シタル建築及ヒ植付ニ於ケル地上權ノ設定ニ際シ從トシテ之ニ屬スル周圍ノ土地ノ部分ヲ明記セサルトキハ地上權者ハ建築ノ周邊ニ於テ其建坪ノ全面積ニ均シキ土地ノ部分ニ付キ權利ヲ有ス此地面ノ配當ハ鑒定人ヲシテ土地及ヒ建物ノ面形ト建物各部ノ用方トヲ斟酌セシメテ之ヲ爲ス
樹木又ハ竹ノ植付ニ關シテハ地上權者ハ最長大ニ至リタル外部ノ枝ノ蔭蔽スルコトアルヘキ部分ニ付キ權利ヲ有ス
原案通
第六百八十八條 既ニ爲シタル建築又ハ地上權者ノ爲スヘキ建築ニ付キ設定證書ニ地上權ノ時期ヲ定メサルトキハ其權利ハ右建築ノ時期ニ均シキ時ノ間設定シタルモノト推測ス但其建築ノ大修繕ハ土地ノ所有者ノ承諾アルニアラサレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
既ニ土地ニ植付アリ又ハ上ニ記載セル如ク地上權者植付ヲ爲スヘキトキハ地上權ハ樹木ヲ採伐スル期節マテ又ハ其有用ナル最長大ニ至ルヘキ期節マテ引續ク爲メ之ヲ設定シタルモノト看做ス
其他地上權ハ通常ノ賃借權ト同一ナル原由ニ因リ消滅ス但土地ノ所有者ヨリ爲ス賃借了終申入ヲ除ク
地上權者ハ一个年前ニ豫吿ヲ爲シ又ハ未タ拂期限ノ到ラサル一个年分ノ年賦金ヲ拂フトキハ常ニ賃借了終ノ申入ヲ爲スコトヲ得
本條ハ報吿委員ノ修正ニ可決ス
(松岡)
柱梁基礎等ハ之ヲ例示シタルモノトスレバ効用甚ダ薄シ
(委員長)
大修繕ノ文字アルヲ以テノ如キハ要用ニアラズヤト
遂ニ梁柱基礎等ノ如キ大修繕ハ云々トス
(鶴田)
建築ノ時期ニ均シキ時ノ間トアルハ何トカ修正シタシト
遂ニ建築物ノ存續シ均シキ時間云々ト修正ス
(村田)
二項ノ樹木ヲ採伐云々ハ竹ノ字ヲ入レタシ
(南部)
竹ハ存續時期ノ終ル時ナケレバ之ヲ除クベシト
(委員長)
ソハ契約ヲ以テ定限スベシト
遂ニ竹木トス
(委員長)
年賦金ト云フハ如何
(村田)
此點ハ一个年分ノ借料ナルニ付キ年賦金ト云フハ宜シカラズト
遂ニ納額ト修正ス
第六百八十九條 建築及ヒ植付ハ契約前ニ設ケタルモノト地上權者ノ爲シタルモノトヲ問ハス土地ノ所有者カ鑑定人ノ評價ニ從ヒ其讓渡ヲ要求セサルニアラサレハ地上權者之ヲ收去スルコトヲ得ス
地上權者ハ土地ノ所有者ニ先買權ヲ行フノ意アルヤ否ヲ述フヘキノ催吿ヲ一月前ニ爲シタル上ニアラサレハ前ニ記載シタル植付又ハ建築ヲ收去スルコトヲ得ス
第五百七十三條ノ此餘ノ條例ハ右ノ場合ニ之ヲ適用ス
本條ハ報吿委員ノ修正ニ於テ初項問ハス以下ヲ其先買權ニ付テハ第六百五十六條ノ規則ヲ適用ストシ其二項及ヒ三項ハ之ヲ刪除シタリ卽チ其修正案ニ決ス
第六百九十條 此法頒布ノ當時ニ存在スル地上權ハ左ノ如ク之ヲ規定ス
時ヲ定メテ設定シタル地上權ハ其指定シタル時ト共ニ當然止ム
當事者定マリタル時期ヲ指定セス且右ノ當時ニ其就レヨリモ式ニ遵ヒ賃借了終ノ申入ヲ爲ササリシ地上權ハ第六百八十八條ニ從ヒ建物ト等シク引續ク
右何レノ物上權モ第六百八十九條ニ規定シタル先買權ニ從フ
(尾崎)
此二項ハ時ヲ定メテ云々トアリ然ルニ從來ノ借用證ノ習慣ニハ貸主入要ノ際ハ異議ナク返還スベシ等ノ記示アルニ其入要ト云ヲ以テ時期ト看做サルルニ至テハ不都合ナリ
(南部)
如是ハ裁判官ノ認定ニ委スルヨリ外ナシト
(松岡)
此法頒布ノ當時ニ存在スル地上權ト云フモ此法頒布前ニ地上權アルカ
(栗塚)
地上權ノ名稱ナキモ其事實ハアルベシ
(淸岡)
地上權ニ屬スルトカ認ムトカ云ヘバ可ナリ
(委員長)
地上權ノ說明ハ第六百八十三條ニ示シタルガ其通リニアラザレハ此法律ニ於テ支配スルヲ得ザルベシ然ルニ從來存在セル事實ハ未ダ其稱號アラザレバ此後ニ設定スル地上權トハ同ジカラザルコトアランニ等シク之ヲ地上權ト云ヲ得ルカ
(栗塚)
ソハ等シク之ヲ地上權ト云ヲ得ベシ暇令バ以前ノ兵隊ハ劍鎗弓矢ヲ持シタリ今日ノ兵除ハ之ニ異ニシテ火器ヲ携フニ其兵隊タルニ至テハ一ナリ又起案者モ日本ノ如キ地上權ノ事實多キ國ハ稀レナリト云ヘリト
(委員長)
賃借權ノ如キハ日本ノ習慣上了知サレタルモ地上權ト云フハ新奇ナルヲ以テ當時ニ存在スル地上權ト稱スルヲ得ルカ
(栗塚)
其事實アル以上ハ此法ニ當篏スルモ敢テ不都合ナカルベシ
(淸岡)
此三項ハ報吿委員修正ノ如クスレバ時期ヲ指定セザルトキハ地主ハ何時ニ至ルモ之ヲ處分スルヲ得ザルニアラズヤ
(栗塚)
此點ハ容易ニ立除カザルニ不幸ヲ避ケシムルモノナリ
(委員長)
報吿委員ノ修正ノ如クスレバ借主ハ便利ナルモ地主カ到底迷惑スベシ云々
然ルニ遂ニ其修正案ニ決ス
第四章 占有
第一節 占有ノ種類及ヒ占有スルコトヲ得ヘキ物
第六百九十一條 占有ニ天然ノモノアリ又法定ノモノアリ
原案通
第六百九十二條 天然ノ占有ハ有體物ノ保有ニシテ保有者カ此物ノ上ニ權利ノ何等ノ主張ヲモ爲ササルモノナリ
公有ノ財產ニ付テハ各個人天然ノ占有ノミヲ爲スコトヲ得〔伊民第六百九十條〕
(栗塚)
天然ノ占有ハ事實ニ屬スルモノニシテ權利ノ有無ニ關セザルモノナリ他人ノ所有品ヲ其許可ナク使用シタルコトノ如キハ卽チ天然ノ占有ナリ又二項公有ノ財產ニ付テハ云々トハ假令バ公園地ニ敷物シテ飮食スルガ如キ之ニ當ル然ルニ其敷物セシ部分ニ於テ權利アルニアラズ云々
夫レヨリ討議ノ末遂ニ公有ノ財產ヲ公有物ト修正ス
第六百九十三條 法定ノ占有ハ有體物ノ保有又ハ權利ノ行用ニシテ自己ノ爲メニ之ヲ有スルノ意思アルモノナリ〔第二千二百二十八條〕
總テノ權利ニ付テハ物權ト人權トヲ問ハス法定ノ占有ヲ爲スコトヲ得其種々ノ効力ハ場合ニ從ヒ下ニ定ムル如シ
人ノ身籍ニ適用スル占有ハ第一編ニ之ヲ規定ス〔第三百二十條乃至第三百二十二條〕
(淸岡)
有體物ノ保有又ハ權利ノ行用トハ如何
(栗塚)
有體物ノ保有ニシテ自己ノ爲メニ之レヲ有スル意思アルモノ又權利ノ行用ニシテ自己ノ爲メニ之ヲ有スルノ意思アルモノナリ
(村田)
身籍トハ報吿委員修正ノ如ク身分トスルヲ可トス
(栗塚)
人ノ身分ト云フハ華士族平民ト云フガ如キ段階的ヲ稱スルノ嫌アルヲ以テ本員ハ身籍トスルヲ可ナリト思考スルモ報吿委員多數ノ議論ハ身分ヲ可トスト云フニアリ此點ハ彼ノ妾ニシテ妻ノ身分ヲ占有シタルガ如キヲ指スト
遂ニ其修正案ニ可決ス
第六百九十四條 法定ノ占有ハ占有シタル權利ヲ付與スヘキ本性アル權利行爲ニ基クトキハ讓渡人ニ其分限ナキヲ以テ此効力ヲ生スル能ハサルトキト雖モ之ヲ名義又ハ正原由ノ占有ト稱ス〔五百五十條〕
奪ヒタル占有ハ之ヲ無名義又ハ無原由ノ占有ト稱ス
原案通
第六百九十五條 正名義ノ占有ハ其名義ヲ創設シタル當時ニ占有者カ其名義ノ瑕疵ヲ知ラサリシトキハ之ヲ善意ナル占有ト稱ス
反對ノ場合ニ於テハ之ヲ惡意ナル占有ト稱ス
法律ノ錯誤ハ善意ノ利益ヲ與フル爲メニ之ヲ認許セス但第七百六條ニ記載シタル者ハ此限ニ在ラス
善意ハ名義ノ瑕疵ヲ發見スルトキハ止ム〔第五百五十條〕
(委員長)
本條ノ之ヲ認許セズトハ法律ノ錯誤ハ之ヲ認許セズト云フ意義ナルカ
(栗塚)
然リト
原案通
第六百九十六條 占有カ強暴又ハ隱密ナルモノナルトキハ之ヲ瑕疵アル占有ト稱ス〔第二千二百二十九條〕
占有カ暴力又ハ脅迫ヲ以テ得ラレ又ハ保存セラレタルトキハ強暴ナル占有ナリ
占有カ公然ニシテ且外見ノ所爲ニ因リ當事者ニ相應ニ現ハレサルトキハ隱密ナル占有ナリ
占有カ平穩ト爲リ又ハ公然ト爲リタルトキハ其占有ハ瑕疵アルモノタルコトヲ止ム
本條ハ報吿委員ノ修正ヲ可トス
第六百九十七條 占有者カ他人ノ名ヲ以テ他人ノ爲メニ物ヲ保有シ又ハ權利ヲ行フトキハ其天然ノ占有ハ容假ノ占有ト稱ス
占有者自己ノ爲メニ占有スルコトヲ始メタルトキハ其占有ハ容假ノモノタルコトヲ止ノ法定ノモノト爲ル〔第二千二百三十六條及ヒ第二千二百三十七條〕
然レトモ容假ナルコトカ其占有ノ基本タル名義ノ本性ヨリ生スルトキハ其容假ナルコトハ下ノ二原由ノ一ニ因ルニアラサレハ止マス
第一 其占有ノ爲メ利益ヲ受クル者ニ吿知シタル裁判上又ハ裁判外ノ所爲ニシテ其者ノ權利ニ對スル明確ノ異議ヲ含メルモノ
第二 契約者又ハ第三者ニ出テタル名義ノ轉換ニシテ其占有ニ新ナル原由ヲ付スルモノ〔第二千二百三十八條〕
本條初項ニモ報吿委員修正アリ
(鶴田)
占有ノ基本タル名義ノ本性ヨリ生ズルトキハトハ如何ノ意義カ
(栗塚)
占有ノ基本トハ假令バ爰ニ甲某ノ所有品アリ甲某旅行スベキニ依リ之ヲ乙某ニ寄託ス乙某ハ其占有者ナリ此レ占有ノ基本ナリ又其本性トハ其占有タル性質ニシテ所有等ノ性質ニアラザルヲ云フ
(鶴田)
此二項中第一第二ハ如何ノ意義カ
(栗塚)
假令バ爰ニ甲乙丙ノ三人アリ甲自己ノ占有品ヲ乙ニ寄託シタルトキハ乙ハ假占有者ニシテ甲ハ其受益者ナリ此際丙乙ニ對シテ其假占有物ハ甲ノ占有品ニアラザルコトヲ證明シタルトキハ乙占有ノ假ノ名義ハ止息シテ本占有ノ性質トナル第二ハ乙甲ノ物ヲ受託シタルニ其受託物ヲ以テ更ニ丙ニ對シテ假占有ニ付ス日後乙曩ニ其假占有ニ附シタル物ヲ更ニ丙ニ賣讓スレバ丙ハ乙ノ賣買契約ニ對シ且ツ甲ノ第三者ニ對シテ其占有ニ新名義卽チ本占有ノ名義ヲ得タルモノトスト
初項ハ其修正案ニ可決シ以下原案通
第六百九十八條 占有者ハ常ニ自己ノ爲メニ占有スル者ト推定セラル但容假ナルコトカ其占有者ノ名義ニ因リ又ハ事實ノ狀況ニ因リ證セラルルトキハ此限ニ在ラス〔第二千二百三十條〕
(栗塚)
此占有スル者トアルハモノトスベキ筈ナルニ未ダ反譯局ニ協議スルヲ得ザリシト卽チモノト修正ス
(淸岡)
占有者ノ名義トハ占有ノ名義ニハアラズヤ
(栗塚)
占有者其人ノ名義ナリト
第六百九十九條 正名義ニ憑リ占有スルコトヲ證スル者ハ善意ニテ占有スルモノト推定セラル但反對ノ證アルトキハ此限ニ在ラス〔第二千二百六十八條〕
原案通
第七百條 強暴カ證セラレサルトキハ占有ハ平穩ナリト推定セラル
公然ナルコトハ推定セラレス必ス之ヲ證スルコトヲ要ス
各別ナル二箇ノ期節ニ於テ證セラレタル占有ハ其時間中繼續シタルモノト推定セラル但其占有カ中斷又ハ停止セラレタルノ證アルトキハ此限ニ在ラス〔第二千二百三十四條〕
(栗塚)
末項格別ナル二個ノ期節トハ假令バ年頭一月ニ立證シ又年末十二月ニ立證シタルトキハ其間ハ繼續ト看做サルルヲ云フ
(委員長)
初項ハ占有ハ暴行ガ證セラレザルトキハ平穩ナリト推定セラルトシテハ如何
(栗塚)
原文ノ儘宜シカラント
卽チ原案通
第二節 占有ノ得取
第七百一條 法定ノ占有ハ物ノ所有權又ハ其行用セル權利ヲ自己ノ有ト爲スノ意思ヲ以テスル其物ノ握有ノ所爲又ハ其權利ノ實際ノ行用ニ因テ之ヲ得取ス
(委員長)
其行用トアル其ノ文ハ如何
(栗塚)
此ハ反譯局ニ協議シテ除却セントス依テ刪除セラレタシト
卽チ之ヲ刪除ス
第七百二條 物ノ保有又ハ權利ノ行用ハ第三者ノ所爲ニ因テ之ヲ爲スコトヲ得占有スルノ意思ハ占有ニ付キ利益ヲ得ント主張スル其人ニ存スルコトヲ要ス〔第二千二百二十八條〕
然レトモ無能力者及ヒ無形人ハ其名代人ノ所爲及ヒ意思ニ因リ占有ニ付キ利益ヲ得ルコトヲ得
本條二項ハ報吿委員修正ニ依リ利益ヲ得ルヲ利益ヲ受クト改ム
(委員長)
占有スルノ意思ハ占有ニ付キ利益ヲ得ント主張スル其人ニ存スルコトヲ要ストハ如何
(栗塚)
占有物ヲ他人ニ寄託スルモ自分ニ於テ之ヲ占有スルノ意思アレバ可ナリ
(委員長)
本占有者ノ意思ト假占有者ノ所爲ト齟齬シタルトキハ不都合ニアラザヤ
(栗塚)
本占有者ハ其物件ニ付キ自己ノ爲メニスルノ意思アレバ假占有者ノ用方ヲ問フニ及バズト
原案通
第七百三條 刑體上ノ占有ノ取得ハ簡短ノ引渡又ハ占有ノ代辨ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得從來容假ノ名義ヲ以テ占有シタル物ヲ其占有者ニ以後自己ノ物ト看做スコトヲ得セシムル新ナル名義ニ憑リテ留存スルトキハ簡單ノ引渡アリトス
從來自己ノ物トシテ物ヲ占有シタル者カ以後他人ノ名ヲ以テ他人ノ爲メ其占有ヲ保存スルコトヲ述フルトキハ占有ノ代辨アリトス
本條報吿委員修正ニ於テ代辨ノ字ヲ改設ト修正セリ
(栗塚)
一項ハ假令バ借用物ヲ更ニ買得シタル如キ場合ヲ云ヒ二項ハ其借用物ヲ更ニ買得シタルトキハ卽チ簡短ナル引渡アリタリトス又代辨ノ文字ハ報吿委員中ニテモ種々議論アリ要スルニ占有者其占有物ヲ他人ニ賣讓シ尙ホ其物件ハ買取人ノ爲メニ之ヲ自分ニ保存スルガ如キヲ云フ
(委員長)
改設ヨリハ代辨ノ字妥當ナラン然ルニ文字ノ修正ハ反譯局ニ於テセザレバ不都合ナリト
遂ニ代辨ハ反譯局ノ詮議ニ付ス
第七百四條 占有ハ相續人及ヒ包括承繼人ニ轉移ス但其占有ハ先主其人ニ在テ存シタル性格及ヒ瑕疵ヲ以テ繼續ス
物又ハ權利ノ特定名義ノ得取者ハ其利益ニ隨ヒ或ハ自己ノ占有ノミヲ援唱シ或ハ自己ノ占有ニ讓渡人ノ占有ヲ併合シテ之ヲ利唱スルコトヲ得〔第二千二百三十五條〕
(栗塚)
援唱利唱等ノ熟字ハ反譯局ニ於テ甚ダ妥當ノ字ナリト信ゼリ
(鶴田)
性格トハ如何ノ意味カ
(栗塚)
性格ハ流議ト云フガ如ク瑕疵ハ醉狂又ハ無頼者ト云フガ如シト
(鶴田)
援唱利唱トハ如何
(栗塚)
援唱トハ此物件ハ自分ニ占有アリトテ其占有ノ事實ヲ援用スルヲ云ヒ又利唱トハ此物件ハ元何某ノ占有セシモノナリ自分ハ之ヲ正ニ買取シタリトテ曩ニ其何某ノ占有シタル次第ヲ自分ノ占有ニ利用スルヲ得ルナリ
(鶴田)
特定ノ名義トハ如何
(栗塚)
買受ノ如キモノニシテ尋常ノ相續人ニアラザルヲ指ス
(委員長)
自己ノ占有ヘ賣渡人ノ占有ヲ併合ストハ如何
(栗塚)
假令バ自己ノ占有物ハ先キニ何某ノ占有シタリシ物件ナルニ其當時他ヨリ之ニ故障セル者アラズ自分ハ正ニ之ヲ何某ヨリ買得シタルモノナレバ決シテ瑕瑾アラズト云フガ如シ
(委員長)
既ニ自分ノ占有物ニ歸シタルトキ先人ヲ援用スルハ何ノ利益アルカ
(南部)
買得者ハ相續人ト異ニシテ買得ノ際ヨリ新ニ占有ノ開始スルモノナレバナリ
(栗塚)
占有ハ買得者ニハ其性格瑕瑾ノ移續セザルモ相續人ニハ其繼續スベキヲ以テ占有者ハ之ヲ援唱スルヲ得ザルモノトスルヤモ知ルベカラザレバ斯ニ其差障ナキ旨ヲ明記シタルナリト
遂ニ原案ニ可決ス
第三節 占有ノ効力
第七百五條 法定ノ占有ヲ爲ス者ハ反對ノ證アルマテハ其行用セル權利ヲ適法ニ有スルモノト推定セラル因テ其占有者ハ常ニ此權利ニ關スル權原又ハ回收ノ訴ニ付テハ被吿タリ
原案通
第六百二十八條
本條ハ報吿委員再修正案ヲ量出シタリ卽チ其修正ニ可決ス
第六百三十五條
本條モ報吿委員再修正案ヲ呈出シタリ
(村田)
地方ノ習慣ト云フモ東京ノ如キハ其有樣種々ノ區別アルヲ以テ困却ニ屬スベシト
(工藤)
其種々區別アルヲ以テ卽チ習慣ニ依ルモノトナルベシ
(松岡)
此ノ雨水溜ヲ疏浚スルハ決シテ利用ノ目的ニアラズシテ卽チ汚留物ヲ掃除スルモノナルベシ
(工藤)
然リト
(村田)
雨水溜ハ利用ノ目的ナルベシ
(委員長)
起案者ハ歐洲風ニ雨水ヲ儲溜スルヲ指シタルモノニシテ利用ノ目的ナラン又曰水道管ハ東京ノ如キハ水道管ヲ用ユルモ田舎ニ在テハ大抵溝域ナリ
(淸岡)
管ノ字ヲ除去スレバ可ナリ
(委員長)
雨水下水トスルヲ可トス
(南部)
溜ハ或ハ管ノ字ヲ除去シテハ疏浚ト云ヒ難シ
遂ニ水道又ハ溝ノ疏浚ニ任セズト修正ス
(委員長)
規程ノ文字ハ他ニ用ヒタル所ト能ク調査一定スヘシ
新第六百三十五條
本條ハ報吿委員ノ新設ニ係ル
(村田)
床板ノ全部又ハ過半トアルモ過半ト云ヘバ自然全部ニモ及ブモノナレバ別ニ全部ノ文字ハ要セザルナリト卽チ全部又ハノ四字ヲ刪除ス
(淸岡)
雨戶壁紙ノ如キ一部全部ノ區別何ニ依ルヤ
(委員長)
ソハ裁判官ニ任スノ外ナシ
(淸岡)
全部ノ字ハ之ヲ除クベシ之ヲ除ケバ一部ノ修繕ハノ借人自ラ之ヲ爲スベシ良シ全部ノ字ヲ必要トスレバ壁紙ノ字ヲ除クベシト
(村田)
大修繕ハ家根天井床板ノ全部ヲ修繕シ保持修繕ハ家根天井床板ノ一部ヲ修繕シ疊建具雨戶壁紙ノ全部ヲ修正ストシタレバ賃借修繕ハ疊建具雨戶壁紙ノ一部ヲ修繕スルモノトスレバ其權衡甚宜シカラント
遂ニ壁紙ノ二字ヲ刪除ス
人證 人證ノ採否ニ關シ各報吿組合委員モ本會ニ出頭シテ互ヒニ其要否ノ意見ヲ陳述シ本會ノ參考ニ供セラレタリ
(栗塚)
民法報吿委員中ニハ人證採否ニ關シ兩端ノ議論アツテ一方ハ書面證據ノミヲ以テ足レリトシ他ノ一方ハ人證ハ裁判官自ラ心證ヲ鞏固ナラシムルニ足ルモノトスレバ凡テ之ヲ採取スベシト云ヘルニ遂ニ双方置制限ノ上人證ヲ採取スルノ協議ニ調和セリ本員以爲ラク人間ノ記憶ハ存外ニ薄弱ナルモノナレバ已往ノ事跡ヲ忘却シ故ラニ虛言ヲ陳述スルニ非ラザルモ識ラズ知ラズ事實相違ノ陳述スルヲ保スベカラザルモノナレバ人證ハ實ニ危險ナルモノト云フベシ又人心ハ啗利ニ依テ動カザルモノ稀ナルガ故ニ賄賂ヲ受テ偽證ヲ申述スルヤモ知ルベカラズ佛國ノ諺ニモ酒ヲ飮マシムレバ能ク證言ヲ爲シ呉ルルト云ヘリ此等ノ危險ヲ有スル人證ヲシテ豈漫ニ之ヲ爲サシムベケンヤ故ニ置制限ヲ以テ之ヲ許スヲ可トス日本人ハ從來契約ニハ必ラズ證文ヲ要スルノ習慣アリ僻陬田舎ニ至ルモ契約ノ如キハ大抵書面ニ依ルノ風習アルモノナレバ書面證據ヲ要スベキモ別ニ難キニアラザルベシ
(長谷川)
本員ノ意見ハ今栗塚報吿委員ノ所說ニ異ナルナシ
(三阪)
訴訟法報吿委員中ニテハ人證ハ制限ヲ置クベカラズ其證言ハ裁判官ノ取捨ニ任スベシト云フニアリ
(井上)
人證ハ未ダ成文法アラザル時代ナレバ裁判官之ニ信用ヲ置クニ足レルモノナレバ充分ナルベキモ其人證ヨリ一層確實ナルベキ書面證據ヲ取ルコトヲ得ベシトスレバ其證據ヲ存置スベシ然ルニ悉皆書面證據ヲ要スト云フニ至テハ煩累ニ屬スルヲ以テ其制限ヲ附スルヲ可トス歐洲諸國ハ證言スルニ神誓スルモ日本入ハ宗教心ニ乏シキヲ以テ歐洲ニ比シテハ蓋シ偽證モ多カルベシ
(南部)
人證ニハ其制限ヲ附セズ之ヲ自由ニ任セテ可ナリ明治六年二百三十六號布吿ニ於テ實印證據ノ義ヲ定メラレシ當時裁判官ハ書面證據ニアラザレバ總テ其効ナシトスルヨリ爲ニ其損害ヲ被リシ濟輩モ少ナカラズ今日訟庭ニ提出スル書面ハ熟ラ之ヲ審問スレバ書面ト事實ト齟齬スルコトアリ是レ畢竟人民ノ文字ニ富マザルヨリ言文一致ヲ表スルコトヲ得ズ故ニ書面ハ必ラズ人證ヨリ確實ナリト云フベカラズ又書面證據ナレバ能ク訴欺ヲ防クベシト云ハンカ果シテ然ラバ其制限以下ニ於テハ人證ノ爲メニ訴欺ヲ被ムルノ憂アルヲ免レザルナリ
(栗塚)
刑事ハ凡テ證人ノ證言ヲ許シ民事ハ之ニ反スルハ不都合ニ似タリト雖ドモ刑事ニ在テハ證言ニ依ラザルヲ得ザレバナリ
(松岡)
從來ノ證人ハ引合人ニシテ眞ノ證人ニアラズ獨乙商法ニ於テモ證人ハ好キモノニアラザルヲ認メタルニ日本民法ニ之ヲ採取スルハ甚不可ナリ少額ノ金數ニハ人證ヲ許スモ僞言ナシト云フモ少額ハ頻屡起ルベキ訟ヘナルヲ以テ便宜上ヨリ之ヲ許シタルモノナリ書面證據ハ確實ノモノナリト云フハ通常一般ニ認ルモノナリ故ニ人證ハ或ル金額以下ニ制限ヲ附スルヲ可ナリトス
(尾崎)
明治六年實印證據ノ布吿ハ從來身分アルモノハ金銀貸借上往々無證文ナリシ習慣アルヲ以テ一朝爭論ヲ惹起セル場合ハ所謂水掛論ノ結果トナルガ故ニ右ノ布吿ヲ要スルニ至リシ所以ナリ爾來此等ノ契約上ニハ證文アラズンバ其効ナシト云フハ既ニ人心ニ感染シ苟モ此等ノ契約ヲ結ブモノ皆其證文ヲ用ヒザルモノナキニ至リタレバ今日又人證ヲ許スト云フハ昔日ノ水掛論ヲ再起セシムルモノト云フベシ故ニ此點ハ之ヲ現時ノ儘ニ附シテ一切人證ヲ許サザルヲ可トスト
論駁數次遂ニ其制限說ニ可決ス
第七百六條 正名義ニシテ且善意ナル占有者ハ自身又ハ其名ヲ以テ天然ノ果實及ヒ產物ヲ土地ヨリ離ヒシ當時ニ之ヲ得取ス〔第五百三十八條〕
其占有者ハ用收者ニ付キ記載シタル如ク日每ニ法定ノ果實ヲ得取ス
占有者カ正名義ヲ有セスシテ事實又ハ法律ノ錯誤ニ因リ善意ナルトキハ其消費シタル果實ニ付キ利ヲ得サリシコトヲ辨明スルニ於テハ之ヲ返還スルコトヲ免除セラル
占有者カ其占有シタル物又ハ權利ノ自己ニ屬セサルコトヲ發見セシ上ハ右ノ利益ハ將來ニ在テ止ム又何レノ場合ニ於テモ裁判所ニ出許シ確定ニ勝訴ト爲リタルトキハ其出訴ノ時ヨリ止ム〔第五百五十條〕
(鶴田)
確定ニ勝訴ト爲リタルトキハト云フハ所有者確定ニ勝訴トナリシトキハ其占有者ハ卽チ敗訴ニ歸シタルヲ以テ其當時ヨリ占有止息スベシト云フノ意ナルベキモ立言正當ナラズ文意不通ナリ
(村田)
勝ハ敗ノ誤字ニハアラズヤ
(井上)
此點ハ占有者敗訴シタルヲ云フ
(箕作)
占有者確定ニ敗訴シタルトキハトシテハ如何
(栗塚)
何レノ場合ニ於テ訟アリテ占有者ガ確定ニ敗訴トナリタルトキハ云々トシテハ如何ト
卽チ可決ス
(松岡)
初項ニ云フ產物ヲ土地ヨリ離セシ當時ト云ハ其離去スベキ時期ニ至ラザルモ可ナルヤ
(栗塚)
風震ニ依リ離去シタル果實ヲ取得スルガ如キハ用收權ニ屬スト雖ドモ占有ハ離去ノ時期來ラザレバ之ヲ離去スベカラズ
其二項ハ用收者ニ付キ記載シタル如クノ十三字ヲ刪除ス
第七百七條 惡意ナル占有者ハ仍ホ現物ニテ占有スル果實竝ニ產物又ハ其消□シ若クハ過愆ニ因リ損敗セシメタル果實竝ニ產物ノ價額及ヒ其收取スルコトヲ怠リタル果實竝ニ產物ノ價額ヲ其回收セラルル物又ハ權利ト共ニ還スヘシ
又回收者ハ果實ノ通常ノ負擔タル入費及ヒ費用ヲ其占有者ニ償還スヘシ〔第五百四十八條〕
強暴ニ因リ又ハ隱密ニ占有スル者ハ其名義ノ正當ナルコトヲ信セシトキト雖トモ果實ニ付テハ常ニ惡意ナル占有者ト看做サル
(鶴田)
既ニ收取シタル物品モ權利ト共ニ回收セラルベキカ
(栗塚)
然リ
(鶴田)
其名義ノ正當ナルコトヲ信ゼシトキトハ如何ナル場合カ
(尾崎)
假令ヒ之ヲ自己ノ物ト信思スルモ最初其物ヲ強暴ニ因リ得取スルカ又ハ隱密ニ占有シタルモノハ之ヲ惡思スベシ
(南部)
強暴ニ因リ又隱密ニセシ占有ナルモ到底占有權アルベキ物ナラバ惡意ト看做サザルナリ
(井上)
名義ハ正當ナルモ強暴ト隱密ニ因テ消滅ニ屬スベシ
(村田)
此二項ニハ入費ト費用トアルハ如何
(栗塚)
入費ハ改良保存ノ爲メニ要スベキモノナリ費用ハ訴訟入費ノ如キヲ云フガ反譯局ノ名義ヲ以テ費用及ビ入費トシタシ
(箕作)
入費費用出費等ノ文字ハ其區別甚ダ困難ニ屬スト
遂ニ費用ト一定スルニ決ス
(松岡)
仍ホノ字ハ不用ナリ
(栗塚)
仍ハ金錢ニアラズ現物ト云フヲ示ス
(箕作)
現物ニテ仍ホ占有云々トシテハ如何
(淸岡)
其儘ニ差置ヲ宜シトス
其議ニ決ス
第七百八條 善意又ハ惡意ナル總テノ占有者ハ必要ナル卽チ物ノ保存ノ爲メニ爲シタル費用及ヒ有益ナル卽チ物ノ價格ヲ增加シタル費用ヲ回收者ヨリ償還セシムルコトヲ得〔第千六百三十四條〕
如何ナル占有者ト雖モ其資格ノミニテハ奢靡ナル卽チ純然タル娯樂ノ費用ノ償還ヲ求ムルノ權利ナシ
原案通
第七百九條 前二條ノ場合ニ於テ善意ナル占有者ハ回收者ノ言渡サレタル費用ノ全キ償還ヲ得ルマテハ其物ノ留置權ヲ享有ス
惡意ナル占有者ハ必要ナル費用ノミニ付キ留置權ヲ享有ス〔伊民第七百六條〕
原案通
第七百十條 若シ物カ占有者ノ責ニ歸スヘキ毀損又ハ減價ヲ受ケタルトキハ惡意ナル占有者ハ如何ナル場合ニ於テモ所有者ニ之ヲ賠償スヘシ又善意ナル占有者ハ其毀損又ハ減價ニ因テ利ヲ得タル場合及ヒ程度ニ於テノミ之ヲ賠償スヘシ〔第千六百三十二條〕
(松岡)
本條ハ利ヲ得タル場合及ビ限度トアルハ云々其限度トセザレバ文ヲ爲サズト
此動議ハ成立セズ
第七百十一條 占有者カ動產及ヒ不動產ノ所有權ノ得取時効ニ逹スルコトヲ得ヘキ條件ハ第五篇ニ之ヲ規定ス
原案通
第七百十二條 占有者ハ占有ヲ保持シ又ハ回復スル爲メ下ノ區別ニ從ヒ保持訴權、新工事又ハ急迫損害ノ吿發訴權及ヒ回復訴權ト稱スル占有ノ訴權ヲ有ス〔佛訴訟法第二十三條乃至第二十七條及ヒ千八百三十八年五月二十五日ノ佛法律第六條〕
原案通
第七百十三條 保持訴權ハ第三者ヨリ占有ニ反對セル權利主張ヲ暗示スル事實上又ハ權利上ノ妨害ヲ受ケタル占有者ニ屬ス
此訴權ハ妨害ヲ止マシメ又ハ其補償ヲ得ルヲ主旨トス
此訴權ハ一箇ノ不動產又ハ動產ノ包括若クハ特定ノ動產ノ占有者ニ屬ス
(松岡)
暗示トハ如何
(栗塚)
暗ニ占有者ニ對シ其權利上及ビ事實上ノ妨害ヲ指ス
(淸岡)
明示ハ無論ナリト云フヲ以テ記示セザルカ
(井上)
暗示ノ處作中ニ包存ス
(松岡)
二項ハ包括特定ノ區別ハ不要用ニシテ動產不動產ト云ヘバ足レリ
(村田)
此訴權ハ動產不動產ヲ問ハズ占有者ニ屬ストシテハ如何
(栗塚)
「ボアソナード」ハ佛蘭西民法ニ特定名義ノ動產ヲ明擧セザルヲ此草按ニハ之ヲ明示シテ疑點ヲ除去ス
(南部)
動產ノ包括名義ニ當ルハ大抵相續ノ場合ナリ
(委員長)
一個ノ不動產ニアラズンバ占有者ニ屬セズトセバ數種ノ不動產ナルトキハ如何
(栗塚)
此ニ一個ト云フハ不動產ト動產トノ包括ナリトセンコトヲ恐レテナリ元來不動產ニハ包括ナシ此家ト云ヒ此土藏ト云ヲ格別ニスレバナリ若シ其包括ノ場合アリトセバ此レ卽チ財產ノ包括ト云フベシ
(委員長)
此點ハ不動產ノ占有者又ハ動產ノ包括云々トシテハ如何ト可決ニ屬ス
(委員長)
暗示ト云フノミニテハ明示ノ意義ヲ顯ハサズ
(南部)
皆暗示ナリ例ハ他ノ占有者ノ地所ニ家屋ヲ建築セントスルハ其占有者ニ對シテ己レノ權利ヲ暗示スルナリ
(委員長)
如是ハ明示ニアラズヤ
(井上)
然ラズ自己ノ權利ヲ明言セズ只處作ニ屬スルヲ以テ暗示ナリトス
第七百十四條 新工事ノ吿發訴權ハ隣地ニ於テ始メ且成功カ占有ノ妨害ト爲ルヘキ事業ヲ止マシメ又ハ改樣セシムル爲メ不動產ノ占有者ニ屬ス
急迫損害ノ吿發訴權ハ或ハ建物、樹木又ハ其他ノ物體ノ墮倒ニ因リ或ハ堤、貯水所、水樋ノ破潰ニ因リ或ハ火、燃燒質又ハ爆發質ノ物料ノ必要ナル豫防ナキ使用ニ因リ損害アルヲ懼ルルノ正當ナル事由ヲ具フル不動產ノ占有者ニ屬ス
此訴權ハ右ノ危害ニ對スル豫防ノ處分ヲ命令セシメ又ハ未定ナル損害ノ補償ノ保證人ヲ得ルヲ主旨トス〔伊民第六百九十九條〕
(松岡)
吿發ノ文字ハ法罪法ノ意義ト異ナルカ
(栗塚)
自己ヨリ訴フルトキト雖ドモ吿發トシテ差障ナカルベキニ法罪法ニハ訴ヘニ自他ノ區別ヲ附センガ爲メ吿訴吿發ノ文字ヲ用置セリ
(委員長)
吿發ノ字ヲ用ユルハ刑事ニ混ズルノ嫌ナキヤ
(井上)
否ナ其虞ナシ
(淸岡)
吿發ハ人ノ隱事ヲ訐發スルノ嫌アルヲ以テ申吿トシタシト
成立セス本條ハ結局報吿委員ノ修正案ニ可決ス
第七百十五條 保持訴權及ヒ新工事又ハ急迫損害ノ吿發訴權ハ平穩ニシテ且公然ナル法定ノ占有ヲ爲ス者ノミニ屬ス其他不動產ニ付テハ其占有ノ滿一年以來繼續シタルコトヲ要ス
原案通
第七百十六條 回復訴權ハ暴行、脅迫又ハ詐術ヲ以テ不動產ノ全部又ハ一分、動產ノ包括又ハ特定ノ動產ノ占有ヲ奪レタル占有者ニ屬ス但占有其モノカ被吿ニ對シ之ト同一ナル瑕疵ノ一ヲモ帶ヒサルコトヲ要ス
此訴權ハ占奪セラレタル占有ヲ特定名義ニテ承繼シタル者ニ對シ之ヲ行用スルコトヲ得ス但其者カ占奪ヲ成シタル不法ノ所爲ニ關與シタルトキハ此限ニ在ラス
此訴權ハ法定ノ占有者ハ勿論容假ノ占有者及ヒ占有カ未タ一年ニ滿タサル者ニモ屬ス
本條容假ハ先例ニ依リ假リト修正ス
(鶴田)
此訴權ハ占有セラレタル占有ノ特定名義云々ト云フハ如何ナルヤ
(栗塚)
特定名義卽チ賣買賃借ニテ承繼シタル者ニ對シテハ之ヲ行用スルヲ得ズト云フノ意ナリ
(委員長)
特定名義ノ承繼者ハ必ラズ正當ナルベキカ
(南部)
特定名義ハ不法ノ所爲ニアラザレバ惡意ナシト看做スベシ
(鶴田)
占有權ノ妨害ヲ回復センガ爲メニ第三者ニ對抗スルヲ得ルヤ
(栗塚)
所有權回復訴權ハ第三者ニ對抗スルモ占有回收訴權ハ之ニ對抗スルヲ得ズ
第七百十七條 保持及ヒ回復ノ訴ハ妨害又ハ褫奪ヨリ一年内ニアラサレハ受理セラレス新工事ノ吿發訴權ハ爭論セラレタル事業ノ終ラサル間ハ受理セラル但其事業未タ成功セスト雖モ占有者ニ妨害ヲ加ヘタル時ヨリ一年ヲ經過シタルトキハ受理セラレス
急迫損害ノ吿發訴權ハ危害ノ存スル間之ヲ認許ス
(松岡)
新工事ノ落成後ハ其訴權ヲ生ズルヤ
(栗塚)
新工事終了ノ後ハ何等ノ訴權モアラズ
(松岡)
認許ノ文字ハ如何
(栗塚)
受理スト云フノ意ナリ
第七百十八條 占有ノ訴ハ權原ノ訴ヲ併スコトヲ得ス
占有ノ訴ノ判事ハ當事者ノ權利ノ基本ニ出テ且其權利ヲ豫決スヘキ本性ヲ有スル理由ニ基キテ其裁判ヲ爲スコトヲ得ス
又其判事ハ權原ノ訴カ既ニ審理中ナルトキト雖モ當事者其權原ノ訴ニ付キ判決ヲ受クルニ至ルマテ占有ノ訴ヲ決スルコトヲ中止スルヲ得ス
(栗塚)
本條ハ區裁判所ノ判事占有ノ訴訟ヲ判決スルヲ云フト
(淸岡)
民法ヘ判事ノ權限ヲ示定スルハ不可ナリ
(鶴田)
此點ハ占有權限ノ訴訟ナリ
(栗塚)
占有ニハ權限ナシ
(委員長)
判事ノ文字ハ改正シタシ
(松岡)
此點ハ訴訟法ヘ移スヲ得ザルヤ
(栗塚)
移セザルニハアラズトスルモ敢テ欲セザルナリ
(委員長)
之ヲ訴訟法ニ移セバ他ノ點ニモ影況スル所アルベキヲ以テ此儘ニテ修正ヲ加ヘタシ
(南部)
民法ヘ裁判官ヲ云ハレザル理由ナシ強テ此點ヲ訴訟法ニ移セズ又訴訟法ヘ民法ノ混入セシ如クナルベシ
(栗塚)
此點ハ訴訟法ニ關スルヲ以テ「モツセ」氏ニモ協議スルトシタシ
(委員長)
然カズレバ特ニ此點ノミニ止マラズ占有中右ト同一ノ點尠ナカラザルベシ若シ「モツセ」ト「ボアソナード」兩人ノ間ニ於テ占有ノ區域ニ異見ヲ生ズルニ至テハ不都合ナルベキニ付キ此點ハ報吿委員中ニテ修正スベシト
結局先ヅ此儘ニ附置シ他日訴訟法組合ト協議決定スベシ
第七百十九條 占有ノ訴ヲ起シタル後當事者ノ一方ヨリ同一ノ裁判所又ハ別異ノ裁判所ニ權原ノ訴ヲ起ストキハ占有ノ訴ニ付キ確定判決アルマテ權原ノ訴ノ訴訟手續ヲ猶豫スヘシ
權原ノ訴ノ被吿カ第七百二十一條ニ定メタル如ク其訴訟中ニ占有ノ訴ノ原吿ト爲ルトキモ亦同シ
(栗塚)
本條ハ簡易ニシテ迅速ヲ要スルニ依リ權原ヲ措キ先ヅ占有ノ判決ヲ爲スモノナリ
(委員長)
此點ハ占有ノ事實ノミカ
(栗塚)
然ラズ權利及ビ事實ヲ兼スルナリ佛國ニハ占有ヲ事實トスルモ「ボアソナード」ハ占有ニハ事實ト權利アリトシタリ
(委員長)
占有權ノ訴ヲ起ス際一方ニ所有權ノ訴ヘ起リシトキハ如何
(南部)
占有ト權原ノ訟ハ混同スベカラズ
(委員長)
占有權ヲ認ムルニハ其權ノ基ク所ヲ判決セザルベカラズ
(南部)
權原ニハ侵入スベカラズ
(委員長)
構成法ニ占有ノミノ訴トアルハ占有權モ包入スレバ保持回復ノ訴權ヲモ有スベキヤ
(南部)
然リ
(委員長)
彼所ニ於テ唯占有ニ關スル訴トテモアレバマダシモノミト云フ字アルニ付キ何分其權ニマデ及ブモノニアラザルベシ
(栗塚)
然ラズ
(委員長)
此ノ如クナレバノミノ字ハ要セザルベシ
(栗塚)
今日ノ如クナレバ決シテ要用ニアラザルモ其當時ハ權原ニ及バンコトヲ恐レテ特ニノミヲ用ヒタルナラン
(委員長)
曩ニ外務省會議ノ際モノミノ字アリシヲ以テ當時如何ノ意義ナリシカ尙ホ報吿委員中ニ於テ詮議スベシ
第七百二十條 權原ノ訴ヲ爲シタル者ハ之ヲ願下クルト雖モ最早其訴以前ノ事實ノ爲メニ占有ノ訴ヲ爲スコトヲ得ス然レトモ既ニ爲シタル占有ノ訴ニ付テハ原吿又ハ被吿人ト爲リテ繼續スルコトヲ得
如何ナル場合ニ於テモ權原ノ訴ニ於テ確定ニ敗訴ト爲リタル者ハ占有ノ訴ヲ爲スノ權利ヲ失フ
原案通
第七百二十一條 權原ノ訴又ハ占有ノ訴ノ被吿ハ亦其同一ノ訴訟中同樣ナル訴權ニ依リ又ハ其他ノ訴權ニ依リ反訴ニテ占有ノ訴ノ原吿ト爲ルコトヲ得
(松岡)
同一ノ訴訟中同樣ナル訴權トハ例バ保持訴權ニ依リ被吿タリシトキ其反訴ヲ爲スガ如キ場合アルカ
(栗塚)
例バ或ル物件ニ付キ互ニ其所有ヲ爭ヒ又其占有ヲ爭フガ如シ
(淸岡)
反訴ハ追項大抵答辮中ニ於テスベキニアラズヤ
(西)
答辯ト反訴トハ決シテ合併セザルナリ
第七百二十二條 占有ノ訴カ正ナリトセラレタルトキハ判事ハ場合ニ隨ヒ妨害ノ絕止奪レタル物ノ返還吿發セラレタル事業ノ斷止若クハ改樣又ハ急迫損害ノ豫防ノ處分ヲ命令スヘシ又損害アラハ同時ニ其賠償ヲ被吿ニ言渡スヘシ
又新工事又ハ急迫損害ノ吿發ノ訴ノ場合ニ於テハ判事ハ其斷定スヘキ未定ノ損害ノ額ニ付キ保證人ヲ立ツルコトヲ被吿ニ命令スルスコトヲ得〔伊民第六百九十九條〕
本條ハ報吿委員修正ニ依リ正ノ字ヲ證明ト改ム
(村田)
第七百十四條ニ新工事吿發事件ニハ證人ノ證言ヲ許サズ急迫損害ノ吿發ノ際ノミ其證言ヲ許シタルニ本條ニテハ新工事吿發又ハ急迫損害吿發共ニ其保證人ヲ立ツルヲ得セシムルハ如何
(栗塚)
本條ハ判事ヨリ立言シ七百十四條ハ訴訟ノ目的ヲ示シタルヲ以テ同シカラズ
(村田)
七百十四條ノ末項ハ不用ナルベシ此點ハ一應起案者ニ質問シタシ
(松岡)
七百十四條ハ伊國民法ニハ一項タリシモ此草案ニハ此ヲ二項ニシテ此訴權云々ハ新工事吿發ト急迫損害吿發トニ關スルモノトシタシ此文ノ儘ニテハ急迫損害吿發ノミニ係ルヲ以テ尙ホ起案者ニ質問シタシ
(栗塚)
然ルベシ
(淸岡)
判事ノ字ハ前例ニ依リ報吿委員ノ注意ヲ請ヒタシ
(栗塚)
追テ占有中ノ點ハ訴訟法ニ入ルベキ工合ヲ詮議スベシト
日後起案者ノ回示ニ依リ新工事又ハノ數字ヲ刪ル
第七百二十三條 占有ノ訴ニ敗訴シタル被吿ハ權原ノ訴ヲ爲スコトヲ得然レトモ己レノ受ケタル言渡ヲ履行セシ後ニ限ル
若シ其言渡ノ額カ淸算セラレサルトキハ其言渡ヲ履行スルニ相應ナル金額ヲ書記局ニ供託スヘシ
(栗塚)
此供託ハ一私人ノ間ニアラズシテ公ニ託スルナリ
第七百二十四條 申立タル事實ノ證ナキ爲メ占有ノ訴ニ敗訴シ又ハ訴ノ期ニ後レ若クハ其占有カ要用ナル條件ヲ具備セサル爲メ其訴不受理ナリト宣言セラレタル原吿ハ仍ホ權原ノ訴ヲ爲スコトヲ得

原案通

第七百二十五條 占有ノ訴ニ關スル裁判管轄及ヒ其他方式ノ規則ハ帝國裁判所構成法及ヒ民事訴訟法ヲ以テ之ヲ定ム
本條ハ異議ナシ
第四節 占有ノ喪失
第七百二十六條 占有ハ左ノ諸件ニ因テ喪失ス
第一 自己ノ爲メ又ハ他人ノ爲メニ占有スル意思ノ絕止
第二 物ノ保有又ハ權利ノ行用ノ任意ナル又ハ適法ニ強要セラレタル抛棄
第三 不適法ナリト雖モ第三者ノ占有取得但保持訴權又ハ回復訴權ノ行用セラレスシテ其占有カ一年ヨリ長ク繼續シタルトキニ限ル
第四 占有ノ目的タル物又ハ權利ノ全キ毀滅又ハ其喪失
(淸岡)
第二ノ適法ニ強要セラレタル抛棄ト云フハ適法ニ強要セラレタルモノハ抛棄ト云ヒ難キニアラズヤ
(栗塚)
此ハ手放スノ意ナリ
(村田)
第四ノ毀滅ト云フハ喪失モ滅ノ中ニ包含サルルニアラズヤ
(栗塚)
喪失トハ牛馬ノ逃喪ノ如シ毀滅ハ成存ヲ亡シ喪失ハ成存ハ全タカルベキモ現在セザルガ如キヲ云フ
(松岡)
毀滅ハ目的物ノ毀滅ニシテ喪失ハ權利ノ喪失スル謂ニアラズヤ
(南部)
喪失ハ物及ビ權ニ及ブト
卽チ其意ナリトシテ原案ニ決ス
第五章 地役
前置條例
第七百二十七條 地役トハ他ノ所有者ニ屬スル土地ノ便益ノ爲メ一箇ノ土地ニ付キ設ケタル負擔ヲ謂フ〔第六百三十七條及ヒ第六百三十九條〕
地役ハ法律又ハ人爲ヲ以テ之ヲ設ク〔伊民第五百三十二條〕
(委員長)
法律又ハ合意ヲ以テト爲スベキニ人爲ト云ヒシハ何ゾ
(栗塚)
人爲ト云ヒシハ人ノ手仕事ヲ以テ爲スノ意ナリト
原案通
第一節 法律ヲ以テ設ケタル地役
第一款 隣地ニ對スル立入又ハ通行ノ權利
第七百二十八條 總テノ所有者ハ土地ノ界ニ在リ又ハ自己ノ土地ニ於テ工事ヲ爲シ得ルノ餘地ナキ迫近ノ距離ニ在ル牆壁若クハ建物ノ建築又ハ修繕ノ爲メ隣地ニ對スル立入ノ權利ヲ得ルコトヲ得〔伊民第五百九十二條〕
本條隣地ニ對スルト云フヲ報吿委員ノ修正ニ於テ隣地ヘノト改メシバ之ヲ可トス
(栗塚)
得ルコトヲ得ト云フハ上ノ得ハ得失ノ得ニシテ下ノ得ハ得ベシノ得ナリ之ヲ權利ヲ得ト斷言スレバ過言ニ失シ又求ムルコトヲ得トスレバ未得ニ屬シ過不及アルヲ以テナリ
(村田)
上ノ得ハ穫トシテハ如何
(栗塚)
得ノ字モ耳朶ニ觸ルル響音ハ同ジキニアラズヤ
遂ニ求得スルヲ得ト決セシトスル際ニ
(松岡)
如是修正スルヨリハ求ムルコトヲ得トシタシ
(栗塚)
如是スレバ權利甚ダ微弱ナリ此ハ假令バ他ノ地面ニ立入リト云フ一個物ヲ得ベキノ意義ニシテ立チ入ルベキコトヲ求ムルヲ得ルト云フノ義ニアラズ此點ハ今求得ノ文字ニ決スベキノ多數說ナルガ尙ホ反譯局ニ詮議シタシト其意見ニ任ス
(委員長)
餘地ナキ迫近ト云ヘバ寸地モ餘サザルニアラズヤ
(栗塚)
然リ極短迫ノ意義ナリ
(村田)
總テノ所有者ト云フ總テノ三字ハ刪除シテハ如何
(栗塚)
總テノト云フ字ハ原文ニアルヲ以テナリ
(委員長)
土地及ビ家屋ノ所有者ヲ云ヒシナラント又界ハ經界ノ文字ト何レヲ妥當トスルヤヲ反譯局ニ詮議スベシ
第七百二十九條 急要又ハ極メテ必要ノ場合ヲ除クノ外右建築又ハ修繕ノ工事ハ收穫ヲ害スルコトアルヘキ期節ニ於テモ又隣地ノ所有者又ハ占有者ノ一時不在ノ場合ニ於テモ之ヲ爲スヘカラス
如何ナル場合ニ於テモ其工事ハ隣人ノ住家カ修繕ヲ要スル建物ニ連接スト雖モ隣人ノ承諾アルニアラサレハ其住家内ニ立入ルノ理由ト爲ルコトヲ得ス
(淸岡)
此條ハ所有主又ハ占有者不在ノ際ハ之ヲ其家屬ニ求得スルヲ得ルカ
(栗塚)
註解ニハ家屬ノ如キハ良番人ニアラズトセリ
第七百三十條 總テノ場合ニ於テ立入ノ權利ヲ與フル隣人ハ行ヒタル工事ノ本性及ヒ時期ヲ商量シテ己レニ受ケタル妨害ニ應スル償金ヲ得ルコトヲ得
(南部)
前例ニ依リ立入ノ權利ヲ與フルト云フノ權利ノ三字ハ刪除ス
(松岡)
工事ノ本性ヲ商量スルトハ如何ナルコトカ
(栗塚)
工事ノ大小輕重ヲ商量スル意ナリ
第七百三十一條 若シ一箇ノ土地カ他ノ一箇又ハ數箇ノ土地ニ圍繞セラレテ袋地タルカ爲メ公路ニ通スルコト能ハサルトキハ公路ニ至ルマテ圍繞地ニ於ケル通路ヲ其袋地ニ供スヘシ但下ニ記載シタル如クニ重ノ償金ヲ拂ハシムルコトヲ得〔第六百八十二條及ヒ伊民第五百九十三條〕
又土地カ公私ノ堀割若クハ河海ニ由ルニアラサレハ他ニ通スルコト能ハサルトキ又ハ土地カ公路ト著シキ高低アルトキハ之ヲ袋地ト看做スコトヲ得
本條ハ圍繞地ニ於ケルト云フ點ヲ報吿委員ノ修正ニ於テ圍繞地ハト修正セシニ可決ス
第七百三十二條 住居人ノ需用又ハ袋地ノ利用カ有期又ハ永久ニ車輛ヲ用ユルコトヲ要スルトキハ其通路ノ幅ハ之ヲ用ユルニ足ラシムヘシ
通行權ノ必要ニ付キ又ハ其行用ノ方法及ヒ條件ニ付キ當事者ノ議協ハサルトキハ裁判所ハ成ルヘク袋地ノ需用及ヒ通行ノ便利ト通行地ノ爲メ務メテ少ナキ損害トヲ調和スヘシ
本條ハ報吿委員修正ニ於テ通行權ヲ刪ル
(松岡)
唯住居人ノ需用ト云ヘバ袋地ニアラザル住居人ト云フニ似タリ
(栗塚)
袋地ノ住居人タルハ自然推知スベキニアラズヤ
(淸岡)
成ルベクト云フ字ハ成ル丈ケトカ成ル可ク丈ケトカ云ハザレバ明了ナラズ
(委員長)
調和スベシト云フハ需用損害便利ノ議協ハザルヲ調和スベシト云フ意カ
(栗塚)
然ラズ損害ト便利トヲ入合セニスルト云フ譯ナリ其結果當事者ヲ調和スルニ至ルモ直チニ當事者ノ異議ノ點ヲ指シタルニアラズ
(淸岡)
調和スベシト云ヘバ裁判ニアラズ勸解ノ如シ
(栗塚)
直チニ當事者ヲ調和スルナレバ勸解ナルモ其事柄ヲ調和スルモノナレバ勸解タルニアラズ又本條有期ノ字ハ起案者ニ問合セニ附シタルガ日後回示アリテ有期ハ定期トシ又永久ヲ不斷ト改案ス
第七百三十三條 通路ノ設定及ヒ保持ノ工事ハ袋地ノ負擔タリ
若シ建築物又ハ樹木ノ植付ヲ廢シ又ハ改樣スルコトノ必要ナルトキハ通行地ノ所有者ニ唯一回拂フヘキ第一ノ償金ヲ給與ス
他ノ償金ハ受役地ノ使用又ハ栽培ノ減少ノ爲メ及ヒ其地ノ永久ノ減價ノ爲メ每年之ヲ拂フヘシ
(鶴田)
栽培ノ減少ハ栽培物ノ減少ナルカ
(栗塚)
然リ
(淸岡)
唯一回拂フベキ第一ノ償金トハ次デ第二回第三回ヲ拂フ如クナルニアラズヤ
(南部)
一回拂フベキト云フニ付キ其一回中ニ於テ第一第二アルモノナリ卽チ他ノ償金ト云フガ第二ナリ
(栗塚)
第一ト云フテ分リ難キトセバ他ノ字ヲ第二トスレバ第一第二ノ釣合宜シカルベシ又栽培ノ字ハ曩ニ此字ヲ耕作トシタル例アルヲ以テ此所モ耕作トスベシト
卽チ栽培ヲ耕作ト修正シ其他ハ原案通
第七百三十四條 袋地ノ止ミタルトキハ通行及ヒ每年ノ償金ノ義務ハ各自互ニ之ヲ負擔スルコトヲ止ム
要役地ノ所有者ハ未タ拂期限ノ至ラサル年賦金ノ六个月分ヲ拂フテ常ニ通行ノ權利ヲ抛棄シ及ヒ之ニ對スル義務ヲ免カルコトヲ得
(鶴田)
本條ノ各自互ニト云フハ如何
(栗塚)
其通行ヲ爲サシムルノ義務又償金ヲ拂フノ義務ハ互ニ止息スト云フ譯ナリ
(村田)
各自ノ二字ハ刪除シタシト可決ス又曰年賦金ト云ヘバ年何圓ト云フ年額ニ束シタルモノナリ然ルヲ六ケ月ト云フハ妥當ヲ缺ク
(南部)
コハ年額ノ割合ヲ示スヲ以テ不都合ナシ
(委員長)
要役地ヲ止シ際若シ地形ノ變狀アリシナラバ之ヲ舊形ニ復セザルベカラザルカ
(栗塚)
否ナ六ケ月分ノ金額ヲ拂シナレバ他ニ何ノ義務モナカルベシ
(松岡)
其地形ヲ非常ニ變更シタルトキノ如キ六ケ月分ノ金額ヲ拂シノミヲ以テ足レリトスルハ地役者ノ損害ヲ償フニ充分ナラザルベシ
(委員長)
此點ハ尙ホ起案者ニ質問スベシ
(淸岡)
第七百三十二條ノ有期又ハ永久ト云フハ無用ナルニアラズヤ
(栗塚)
註釋ニハ有期トハ其年ノ中定期アル利用ト云フコトナリ
(南部)
其點ハ定期又ハ永續トシテハ如何
(栗塚)
其點ハ一應起案者ニ有期又ハ永久ハ要用ナルカ又註釋トハ意義同シカラザル何如ト云フヲ質議スベシ
第七百三十五條 五ケ年ノ後要役地ノ所有者ハ年賦金額ノ二十倍ニ均シキ元金ヲ拂フニ因リ通行ノ權利ヲ保存シテ年賦金ヲ免カルコトヲ得
受役地ノ所有者モ亦年賦金ト債務者カ合式ニ催吿セラレタル後其年賦金ヲ拂ハスシテ二个年ヲ過シタルトキハ右ト同一ノ元金ヲ請求スルコトヲ得
(松岡)
五ケ年ノ定度ハ何ノ標準ヨリ起ルカ
(栗塚)
受役地ノ繼續スルカ否ヲ見ルニアラザレバ其契約ヲ結ブベカラズ五ケ年ト云フハ大體ノ目安ニ過ギズ
(村田)
元金ハ原本トシテハ如何元金トハ利子ニ對スル稱號ナレバナリ
(栗塚)
反譯局ハ元金ヲ可トスル意見ナリ
第七百三十六條 土地ノ一分ノ讓渡又ハ共同所有者間ノ派分ニ因リ袋地ノ生スルトキハ其讓渡人又ハ共同派分者ハ償金ヲ受ケルコトナクシテ通行ノ義務ヲ負擔ス又其通行ノ義務ハ袋地ヲ止マシムル公路ノ創設ニ因リテ止ム〔新第六百八十四條〕
本條ハ共同所有者ヲ前例ニ依リ共有者トシ又共同派分ノ共同ヲ刪除ス
第二款 水ノ疏通、使用及ヒ引入
第七百三十七條 低地ノ所有者ハ人工ヲ用ヰスシテ天然ニ高地ヨリ流下スル雨水及ヒ泉源ノ水ヲ受クルノ義務アリ〔第六百四十條〕
人工ヲ以テ水ノ疏通ヲ創設シ又ハ改容セシトキト雖モ其工事カ三十年餘又ハ知レサル期節ニ遡ホルトキハ其地役ヲ爭フコトヲ得ス
(鶴田)
本條二項ノ其地役ヲ爭フコトヲ得ズトハ如何
(南部)
其地役ハ之ヲ爭フコトヲ得ズト云フコトナリ
(松岡)
又ハ知レザル期節トハ三十年以上ニ於テ云フコトナラン
(尾崎)
假令三十年ニ滿タザルモ其工事ノ時代ガ知ルベカラザルトキハ其地役ヲ爭フヲ得ザルベシ
(栗塚)
起案者ハ極古代ニ屬シタルモノヲ云ヒタル意思ナリ
(箕作)
新モ三十年古ハ不知ニ屬スルヲ云フコトナリ
(淸岡)
又知レザルト云フハ上ニ三十年餘ノ文字アレバ三十年以上ニ於ケル舊時ノ知レザルヲ云フ譯ナシ依テ三十年未滿中ナルベシ
(南部)
何年ナルカ證明ノ出來ザルトキハ古代ノ事業ト同視シタリ
第七百三十八條 堤、塘又ハ其他水ヲ湛フル工作物ノ破潰ニ因リ又ハ水樋若クハ堀割ノ阻塞ニ因リ水ノ高地ニ溢レテ流勢ヲ增シ又ハ其方向ヲ變セントスルトキハ低地ノ所有者ハ急迫損害ノ吿發ヲ爲シ第七百十四條及ヒ第七百二十二條ニ從ヒ高地ノ所有者ノ費用ヲ以テ其修繕ヲ爲スコトヲ得
若シ事變ニ因リ低地ニ於テ水流ノ塞カリタルトキハ高地ノ所有者ハ自費ニテ平常ノ疏通ニ復スル爲メニ必要ナル工事ヲ爲スコトヲ得然レトモ之ヲ爲スノ義務ナシ〔伊民第五百三十八條〕
本條ハ報吿委員ノ修正ニテ水ノノ下高地ニ溢レテノ數字ヲ刪リ其方向ヲ變ノ下セントスルトキハヲ刪リ變スヘキ泛溢ヲ高地ニ生スルトキハノ數字ヲ挿入シ低地ノ所有者ハノ下ヘ第七百十四條及ヒ第七百二十二條ニ從ヒノ數字ヲ急迫損害ノ吿發ヲ爲シノ下ヘ及ヒノ二字ヲ插塡シ其下第七百十四條及ヒ第七百二十二條ニ從ヒノ數字ヲ刪除ス
(淸岡)
原案ハ方向ヲ變ゼントスルトキトシテ言ヲ將來ニ屬シタルニ報吿委員ノ修正ニテハ泛溢ヲ高地ニ生ズルトキトシテ之ヲ現在ニシタルハ如何
(南部)
其方向ヲ變ゼントスハ泛溢ヲ高地ニ生ズルトキニシテ將サニ低地ニ及バントスル場合ナレバナリト
遂ニ其修正中其方向ヲ變ズベキトシテ之ヲ可決ス
第七百三十九條 所有者ハ家用水ヲモ又工業又ハ灌漑ニ因リ變質シタル水ヲモ隣地ニ流シ又ハ流レシムルコトヲ得ス但水樋ノ地役ニ付キ第七百五十二條ニ記載シタルモノハ此限ニ在ラス
又雨水カ直チニ隣地ニ落ツヘキ樣ニ屋根又ハ堆地ヲ設クルコトヲ得ス
(栗塚)
堆地ハ反譯上ニ於テ露臺トス
(南部)
家用水ハ水ノ變質スルト否トニ依ラズ流スベカラズ
(栗塚)
家用水ヲ變質ト見ルベシ
(尾崎)
家用水ハ假令變質セザルモ惡水ニ屬ス
(松岡)
雨水ガ直チニ隣地ニ落ツベキ樣ニ屋根又ハ露臺ヲ設クルヲ得ズト云ヘバ東京ノ屋根ノ如キハ大抵雨水ノ自ラ隣地ニ落フルヲ避ケザル丈牙ノ連棟ナルヲ以テ此法ニ牴觸スベシ
(尾崎)
習慣アルモノハ此限ニアラズトシテ取除サルベカラズ
(南部)
法ハ已往ニ遡ラズノ原則ニ依ルコトナルベシ
(村田)
巴理ノ如キハ連棟櫛比相接ス
(松岡)
巴理ニ於テハ之レガ習慣ナルカ將タ合意ナルカ起案者ニ聽合セタシト
第七百四十條 泉源ノ所有者ハ隨意ニ之ヲ使用スルコトヲ得又然ノミナラス天然ニ隣地ニ流ルヘキ餘分ノ水ヲ隣人ニ給セサルコトヲ得但後條竝ニ第七百九十六條ニ記載シタルモノ及ヒ鑛泉ノ利用竝ニ收益ニ付キ行政法ヲ以テ規定シタルモノハ此限ニ在ラス〔第六百四十一條及ヒ第六百四十二條〕
原案通
第七百四十一條 若シ泉源ノ水カ一邑又ハ一村落ノ住民ノ家内ノ使用ニ必要ナルトキハ所有者ハ其水ノ自己ニ不用ナル部分ヲ流過セシムヘシ
又邑ハ自費ニテ水ノ集合及ヒ引入ニ必要ナル工事ヲ泉源ノ土地ニ於テ行フコトヲ得但其工事ノ爲メ償金ヲ拂ヒ且其土地ニ永久ノ損害ヲ生セサルコトヲ要ス
其他邑ハ水ノ使用ノ爲メ償金ヲ拂フヘシ但三十年間無償ニテ其使用ヲ行ヒタルトキハ此限ニ在ラス〔第六百四十三條〕
本條ハ報吿委員ニ於テ一邑ヲ一町村ト一村落ヲ一部落トシ家内ノ使用ヲ家内用ト又邑ハヲ町村ハト其他邑ハヲ町村ト修正ス
(松岡)
家内ノ使用ト云フハ前ニモ家用水トアルヲ以テ此所モ家用ニ必要トシテハ如何
(箕作)
修正スベキナレバ家内用トスベシト
遂ニ反譯局ノ名義ニテ家内用ト修正ス
(尾崎)
其他町村トハ如何
(箕作)
其他ノ町村ト云フニアラズ其外町村ハト云フ意ナリ
(尾崎)
水ノ使用ニ付キ償金ヲ要スト云フハ殆ンド無ルベシ
(栗塚)
其償金ヲ要セザルハ三十年間無償ニテ之ヲ使用シタルトキナルベシ
(南部)
此水ハ自己ガ之ヲ娯樂ニ供スルノ目的ヲ以テ其流出ヲ防ギタキモ之ヲ防グヲ得ザルモノナレバ償金ヲ取ラザルベカラズ
第七百四十二條 其他ノ場合ニ於テ若シ私ノ泉源ノ餘分ノ水カ何人ニモ益スルコトナクシテ外ニ流出スルトキハ其水ノ出口ニ接シタル隣人ハ前條ニ記載シタル如ク必要ナル工事ヲ爲シ容假ニテ己レノ方ニ其水ヲ導クノ權能ヲ求ムルコトヲ得〔伊民第五百四十五條〕
本條ハ報吿委員ニ於テ權能ヲ求ムルト云フ求ムノ二字ヲ刪リ主唱スト修正シタルニ
(南部)
求ハ行フトシテハ如何ト此點ハ先ヅ原案ニ決ス
(村田)
容假ハ占有ノ場合ニ於テ假トシタレバ此所モ假トシテ同一ニシタシ
(西)
此所ノ容假ハ許容ノ意味ナルヲ以テ容假トアルヲ可トス
(箕作)
全體容假ハ反譯上假リノ意義ニ用ヒタルニアラズ許容ノ意味ニ使用セリ然ルヲ之ヲ假リノ意味ニ使用セラルルハ原語ノ意義ニ反スルヲ以テ此文字ハ此所ノミナラズ已決ニ屬シタル所モ校正ヲ加ヘザルベカラズ
(松岡)
此所ノ容假トハ如何ナルヤ
(栗塚)
何時ニテモ廢止スベキノ意ヲ示シテ契約スルコトナリ
(鶴田)
前條ニ記載シタル如クト云フハ何處ヲ指スカ
(栗塚)
水ノ集合及ヒ引入ヲ指ス
(南部)
本條ノ場合ハ前條ニ記載セル隣家内ノ水ノ集合スル場所ニ於テ引水ノ工事ヲ爲スコトナリ
(松岡)
泉源地ニ於テ工事ヲ設クルハ甚不都合ナリ且ツ如此ハ許否ノ權隣人ニアルヲ以テ我ガ權能ニアラズ
(淸岡)
前條ハ曩ニ元老院ニ於テ議シタル際謂ヘラク自己ノ地面ニ水溜ヲ設置シ泉源地ヨリ通樋スルカ若クハ溝ヲ通シテ其水ヲ自己ノ水溜ニ引取スルヲ得ルト云フノ意義ナリトアリシニ付キ本條モ隣地内ニ池ヲ掘リ水溜ヲ穿ツガ如キハ爲シ能ハザルモ溝若クハ樋ヲ通シテ隣地ノ泉水ヲ引取スルヲ得ベキ意ナラン
(箕作)
本條ハ引水ノ爲メ泉源地ニ於テ工事ヲ設爲スルト云フニ解釋セザルベカラズ
(松岡)
本條ノ意義ハ前條ニ關係ヲ有スベキカ前條果シテ隣地ニ立入ル設爲スルコトトスレバ所有權上ニ實ヲ及ス少カラズ如是最モ不當ノ法律タリ
(南部)
此ハ公益ノ爲メニスル義務ナルヲ以テ至當ナリ
(淸岡)
假令償金ヲ得ルニモセヨ自己ニ害アル工事ヲ其地内ニ起サルルニ至テハ甚ダ不都合ナリ
(栗塚)
起案者ハ公益ノ爲メニ償金ヲ取テ自己ノ地内ニ工事ヲ起サシムルヲ世益トシタルベシト
思考セラルルカ尙ホ此點ハ兩條共ニ一應起案者ニ質問スベシト云フニ決ス日後起案者ノ回答ニハ卽チ隣地内ニ於テ設クル工事ナリトアリ
第七百四十三條 第五百二十五條ニ從ヒ公有ハ部分ヲ爲サス又各個人ニモ屬セサル流水ニ聯接シタル土地ノ所有者ハ家内ノ使用又ハ自己ノ土地ノ灌漑又ハ自己工業ノ爲メ其流水ノ通路ニ於テ之ヲ用ユルコトヲ得然レトモ其水路ヲ變スルコトヲ得ス
若シ之ニ反シテ右ト同一ノ本性ノ流水カ土地ヲ通過スルトキハ其所有者ハ右ト同一ノ需用ノ爲メ其土地内ニ於テ水路ヲ轉スルコトヲ得然レトモ其土地ノ水ノ出口ニ於テハ之ヲ其天然ノ水路ニ復スルコトヲ要ス〔第六百四十四條〕
右何レノ場合ニ於テモ沿岸者ハ地方ノ規則ニ從ヒ捕漁ノ權利ヲ有ス
(鶴田)
公有私有ニアラザル水ト云フハ如何
(栗塚)
流水ハ所有者ナシ惟水床ニ所有者アルノミ
(松岡)
流水ガ自己ノ地内ヲ通過スルモ流水其者ハ己レノ所有ニアラザルベキヲ以テ各個人ニモ屬セザル云々トシタルナラン
(栗塚)
然リ
(松岡)
公有ニモアラズ私有ニモアラザル流水ノ如キハ甚稀少ナルベシ水流ハ大抵公有或ハ私有ノ性質ナルベキモノニシテ共有ト云ヘバ各個人ニ屬スルモノトナルベシト又委員中ニテ各個人ニモ屬セザル流水トハ町村共有ノモノニアラザルヤノ不審起ルニ及ンデ起案者ニ質議シタル所其回答ニハ町村ハ包含セズ全ク一私人間ニ就テ云ヒシモノナリトアリ
(鶴田)
末項ニハ何故ニ捕魚ノ權利ヲ有スト云ヒシヤ
(南部)
其水ノ公有又ハ私有ニアラザルニ捕魚スルヲ得ルモノトシタルヲ以テ特ニ記示セザル得ザルナリ
(委員長)
沿岸者ト云フハ區々タル小流ニハ些稱ニ屬スルニアラズヤトアリシカ先ヅ原案ノ儘ニス
第七百四十四條 前條ニ定メタル二個ノ場合ニ於テ其水ノ有用ナルコトアルヘキ低地ノ所有者ノ方ニ於テ爭アルトキハ民事裁判所ハ地方ノ慣習ヲ斟酌シ且家内ノ衞生ノ需用ト農業及ヒ工業ノ利益トヲ調和シテ決スヘシ〔第六百四十五條〕
(村田)
裁判所ノ上ニ民事ノ二字ヲ冠セシバ如何
(寺島)
佛國ニテハ之ヲ行政裁判所ト殊別センガ爲メ民事裁判所ト云フヲ以テナリ
(委員長)
本條ノ外ニアル裁判所ト云フハ皆民事裁判所ナルヲ以テ此所ヘ特ニ民事ノ二字ヲ冠シ佛國ガ行政裁判所ト殊別スル爲メニ民事裁判所ト稱スル例ニ倣ハントスルハ宜シカラズ
(南部)
單ニ裁判所ト云ヘバ合議體ニ屬スルモ民事裁判所ト云ヘバ其虞ナカルベシ
(松岡)
此事柄ノ如キハ必ラズ地方裁判所ニ出訴スルナルベシ
遂ニ民事ノ二字ハ刪除セラル
(松岡)
家内ノ衞生ノ需用ト云フハ前ニモ家内用等ノ文字アレバ此所モ家内ノ需用トシテハ如何
(栗塚)
此所ハ只家内用ニアラズ衞生上ノ需用ナリト
第七百四十五條 右ノ外同上ノ本性ノ水ニ關スル一般ノ取締ハ府縣廳ニ屬ス府縣廳ハ其水ノ疏通竝ニ保存ニ付キ及ヒ魚類ノ保存ニ付キ必要ナル處分ヲ令スルコトヲ得
(委員長)
令ズルコトヲ得ト云フハ爲スコトヲ得トシテハ如何
(栗塚)
必ラズ命令ヲ發スベキヲ以テナリ
(村田)
府縣廳ト云フハ地方廳トシタシ然ラザレバ北海道廳ノ如キヲ漏ラスベケレバナリ
(栗塚)
然ラバ地方廳ト云ハ府廳縣廳以下ノ官廳ニモ及ブヲ以テ道府縣廳ニ止マル郡區役所ノ如キハ管轄廳ト稱スルナリ
(淸岡)
府縣ト云ヘバ道廳モ包含スルハ無論ナリ
(栗塚)
此等ノ文字ハ反譯局ヘ其修正ヲ下命セラレテハ如何
(委員長)
先ヅ原案ノ儘ニ措キ尙ホ恰當ノ修正ヲ反譯局ニ附スベシ
第七百四十六條 前記ノ水路ノ疏浚ハ沿岸者ノ負擔トス其沿岸者ハ此事ニ付キ協合シ又ハ組合フコトヲ得
地方廳ノ定メタル期節ニ於テ沿岸者疏浚ヲ爲ササルトキハ地方廳ハ沿岸者ノ費用ニテ之ヲ爲ス
各沿岸者ノ分擔スヘキ部分ノ取立ハ他ノ地方分擔費ト同一ノ方法ヲ以テ之ヲ爲ス
(松岡)
本條ハ全體ヲ刪除シタシ
(栗塚)
報吿委員中ニモ其論アリシモ此點ハ公有ニモ屬セズ又一個人ノ所有ニモ屬セザル流水ノ浚渫ヲ爲スベキ場合ナレバ存置スルヲ宜シトス
(南部)
二項ノ未之ヲ爲ストアルヲ之ヲ爲スヲ得シテ本條ハ刪除セザルヲ可トス
(委員長)
此點ハ行政法ニ屬スルニ付キ此ニ議定セントスルニハ水理土功會又内務省ニモ關係スベキヲ以テ此所ハ前記ノ疏浚ハ沿岸者ノ負擔トス但シ地方ノ舊慣又ハ行政法ニ定メアルモノハ此限ニ在ラズトシテハ如何
(栗塚)
第七百四十八條ヘ別項ヲ增置シ右條例ガ行政法又ハ地方ノ習慣ニ反スルトキハ此限ニ在ラズトセバ卽チ以上各條ノ例外ヲ示セルモノトナレバ本條ハ此儘ニテ不可ナカルベシ
(寺島)
此川床ハ沿岸者ノ所爲ニ屬ス只其水ガ私有ニアラザレバ恰モ自家ノ泉水ヲ修覆スルガ如シ
(委員長)
此文面ニテハ川床ハ沿岸地ノ者ニ屬スト云フコト見ヘズ
(南部)
不動產ハ公有ニアラザレバ必ラズ私有ナルヲ以テ川床ノ如キモ其一方ニ屬スベキモノナリ
(委員長)
本條ハ七百四十三條ニ關係セルガ實際日本ノ如キハ川床ニ所有ノ如キモノナシ「ボアソナード」ハ此習慣ヲ知ラズシテ起案シタルモノナラン
(栗塚)
公有ニアラズ私有ニアラザル流水ノ川床ハ沿岸者ノ所有タルベキナリ
(松岡)
川床所有ノ證ハ地券面ニモアラザルナリ
(栗塚)
此民法ハ今地券面ニ依テ論ズベカラズ
(委員長)
「ボアソナード」ノ旨意ヲ貫カントセバ沿岸者ノ川床ハ其者ノ私有ト云フツモリナリシモ此點ハ其私有ニアラザル川床ハ之ヲ其者ノ私有トスレバ地方稅ノ負擔モ受ケザルベカラザレバ此會ニ於テ其得失ヲ決シ難シ故ニ刪除論ナレバ議定スルヲ得ルモ存置論ナレバ篤ト審査セザルベカラザルナリ
(南部)
本條ヲ刪除スルモノトセバ第七百四十七條ヲモ刪除スベシ
(淸岡)
起案者ハ私有地ヲ流通スル水ト云フ意ナレバ假令之ヲ修正スルモ原案ノ意思ハ私有ナリト認メザルベカラズ
(松岡)
本條ヲ刪リ七百四十八條ヘ別項ヲ附スベキト云フ議論ニ付キ決ヲ擧ゲラレンコトヲ望ム
(栗塚)
七百四十八條ノ別項ハ本法ノ頒布前ノ行政法ニ於テ規定シタルモノハ此限ニ在ラズト云フ意味ニ加附セラレタシ此ニ從前ノ行政法云々ノ取除アルハ不都合ニ付キ寧ロ刪除セラレンコトヲ希望ス
(寺島)
此所ハ沿岸ノ所有者ヲ保護スベキ所ナルヲ以テ行政法ノ關スル所ニアラズ若シ之ヲ刪除セントスレバ七百四十三條以下ヲ刪ルベシ
(松岡)
七百四十三條ハ其一項ハ公有ヲ云ヒ其二項ハ私有地ノミヲ云ヒシモノ故存置スベシ本條及ビ第七百四十七條ハ之ヲ刪除シタシ
(委員長)
本條ハ假ニ刪除スルトシテ又存置セントスレバ尙ホ報吿委員ノ修正ニ附スベシ
第七百四十七條 沿岸者ハ對岸者ニ損害ヲ及ホスヘキトキハ自己ノ側ニ堤ヲ築クコトヲ得ス
若シ地方ニ必要ナリト認メラレタル築堤カ數人ノ沿岸者ニ利益ノ關係アルトキニ於テ其沿岸者之ヲ行フ爲メニ協合セサルトキハ上ニ記載シタル如ク地方廳ハ當事者ノ費用ニテ之ヲ爲スコトヲ得
本條モ前條同樣ニ決ス
第七百四十八條 前五條ノ條例ハ右ト同一ノ景狀ニ在ル湖又ハ池ニ之ヲ適用スルコトヲ得
本條ハ前五條トアルヲ前三條ト修正ス
第七百四十九條 一般又ハ地方ノ公有ノ部分ヲ爲ス水ノ使用及ヒ取締ハ行政法ニ從ヒ高等又ハ府縣ノ官廳之ヲ定ム
(淸岡)
高等官廳トアルハ如何
(栗塚)
高等トハ上等ノ官廳ナリ然ルニ内閣ハ此ニ包含セザルニ付キ政府トハ云ハザルナリ
(委員長)
此所ハ高等官廳又ハ府縣廳之ヲ定ムト修正スベシ
可決ス
(委員長)
道廳ニ關スル點ハ尙ホ詮議スベシ
第七百五十條 自己ノ土地外ニ在ル天然又ハ人工ノ水ヲ用ユルノ權利ヲ有スル總テノ所有者ハ工業ノ爲メ及ヒ灌漑竝ニ家内ノ使用ノ爲メ償金ヲ拂ヒ中間ノ高地ヲ過キテ其水ノ通路ヲ要求スルコトヲ得〔千八百四十五年四月二十九日、千八百四十七年七月十一日ノ佛法律伊民第五百九十八條〕
(尾崎)
高地ヲ過ルト云ヘバ水道ヲ引クカ高樋ヲ掛ルカシテ其水ヲ引入スヘキガ從來如此ハ之ヲ拒ムコトヲ得ベシト雖モ此法頒布以後ハ之ヲ拒ムヲ得ズ稍習慣ニ違ヘリ
(鶴田)
總テノ所有者トハ何ゾ
(委員長)
天然ニテモ人工ニテモト云フコトナラン
(栗塚)
起案者ハ佛國ニハ之ヲ拒ムヲ得ルモ伊國ハ之ヲ拒ムヲ得ズ故ニ伊國法ニ從ヘリト云ヘリ
(尾崎)
之ハ數間向ヨリモ引クヲ得ベキニ付キ永久ノ損害トナルベシ
(淸岡)
之ヲ所有者ノミニ限ルハ不都合ナリ又此文ニ依レバ自己ノ所有地ニアラザレバ引入スルヲ得ザルガ如シ假令自己ノ所有地ニアラザル山間漢水ノ如キハ之ヲ引入スルモ差障ナキニアラズヤ
(尾崎)
此ハ自己ノ所有地内ニ引入スルコトナリ
遂ニ總テノ所有者ニシテ云々ハ之ヲ冒頭ニ轉置ス
(松岡)
高地ノ字ハ刪ルベシ
(淸岡)
中間高地ニアラズ若シ低地ナルトキハ頭上ノ掛ケ樋ヲセラルル故不都合ナリト
遂ニ土地ト修正ス
第七百五十一條 同上ノ條例ハ行政廳ヨリ特許シタル引水ニハ其時期ノ如何ヲ問ハス之ヲ適用ス又各己人ヨリ許シタル引水ニハ其許ヲ得タル者ノ終身間又ハ定マリタル時期ノ間之ヲ適用ス但其定マリタル時期カ水ノ通路ヲ求メタル當時ニ於テ尙ホ少ナクトモ五年間繼續スルコトヲ要ス〔伊民第六百四條〕
(南部)
當時ニ於テト云フハ報吿委員中ヲ當時ヨリトスル說アリシモ別ニ不都合ナキニ依リ此儘ニ差置ケリ
(村田)
行政廳ノ特許ナレバ何故ニ時期ノ如何ヲ問ハズ之ヲ適用スルカ
(松岡)
行政廳ノ特許ハ公益ニ關スナレバナリ
(委員長)
水ノ通路ヲ求メタルト云フ以下ハ反譯ニ誤譯アラザルカ
(栗塚)
當時ニト云フ譯ナリ
(尾崎)
要スルニ此點ハ水ノ通路ヲ求メタルトキヨリ將來五年間繼續セザルベカラザルノ意ナルベシ
(淸岡)
求メタルトハ相談ト云セルガ如シ其相談ヨリ水ガ通過スルニ至ルノ間工事ニ歳月ヲ費セバ後ハ五年ニ滿タザルベシ如何
(松岡)
是等ニ於テ歳月ヲ費ヤス大土功アルモノニアラズ
(委員長)
過去ノ年ヲ更新シ將來五年ト云フ意ガ分明ナルカ
(渡)
尙ホト云フコトガ更新スルノ意ニシカ見ヘズ
(渡)
原文ノ意ハ當時ニ於テト云フ意ナルカ此所ニテハ當時ヨリトシタシ
先ツ原案ニ決ス
第七百五十二條 右ニ均シク低地ノ所有者ハ水ノ浸シタル地ノ排水又ハ涸水ニ由來スル水ノ疏通ノ爲メ及ヒ家内用又ハ農工業用ノ餘水ノ排洩ノ爲メ公路又ハ下水樋又ハ公ノ水流ニ致ルマテ其通路ヲ供スヘシ
若シ通路ヲ求メタル水カ家内用又ハ農工業用ノ爲メ變質シタルトキハ其通路ハ地下ニアラサンハ之ヲ要求スルコトヲ得ス〔千八百五十四年六月十日ノ佛法律伊民第六百九條第六百十條〕
(淸岡)
涸水ハ乾水トシテハ如何
(鶴田)
可ナリ
(南部)
涸水ト云フモ差障ナシ假ニ乾水トス
公路又ハ下水樋又ハ公ノヲ卽チ公ノトス
第七百五十三條 水ノ通路ハ成ルヘク受役地ニ損害少ナカルヘキ場所ニ之ヲ取ルヘシ
如何ナル場合ニ於テモ建物又ハ居宅ニ接着シタル内庭又ハ庭園ヲ過キテ水ノ通路ヲ要求スルコトヲ得ス〔同上、伊民第五百九十八條〕
二項ハ建物ノ下ヲ過キノ三字ヲ挿入シ内庭又ハノ四字ヲ刪リ接着シタル庭園ヲ過キテ云々トス
第七百五十四條 總テノ場合ニ於テ水ノ通路ニ必要ナル工事ノ開設及ヒ保持ハ其工事ニ付キ利益ヲ得ル所有者ノ費用ニテ之ヲ行フヘシ
原案通
第七百五十五條 受役地ノ所有者ハ其土地ニ既ニ存スル堀割ヲ流入又ハ流出ノ爲メ水ノ全部又ハ一分ノ通路ニ供セント要求スルコトヲ得但堀割ノ廣深カ其水ヲ通スルニ足リ且其水カ通過シタル後要役地ニ供シタル水ヲ害スルノ本性ナラサルトキニ限ル
又受役地ノ所有者ハ其土地ニ要役地ノ所有者ノ爲シタル工作物ヲ右ト同一ノ條件ニ從ヒ水ノ通路ノ爲メ用ヒント請求スルコトヲ得
右何レノ場合ニ於テモ他人ノ爲シタル工作物ヲ用ユル者ハ自己ノ利益ノ割合ニ應シテ其開設及ヒ保持ノ入費ヲ分擔ス〔同上、伊民第五百九十九條〕
修正アリ之ヲ是トス
(尾崎)
流入流出ト分ルハ如何
(栗塚)
水ヲ出ス方ト水ヲ入ルル方ト立言シタレバナリ
(村田)
同一ノ條件トハ堀割ノ幅ト水ノ本性ヲ害セザルトヲ云フカ
(松岡)
然ルベシト
本條ニハ報吿委員ノ修正アリシガ卽チ可決シテ且其ノ下水ガノ二字ヲ刪リ堀割ヲ從來ノ五字ヲ挿入シ本會ニ於テ通過ノ下シタル後ノ四字ヲ刪リスル水ガノ四字ヲ插塡ス
第七百五十六條 若シ第七百四十三條第一項ニ從ヒ流水ヲ用ユルノ權利ヲ有スル所有者ニ堰ヲ設ケテ水ヲ高ムルノ要用アルトキハ償金ヲ拂フテ其堰ヲ對岸ニ支持スルコトヲ得
若シ堰ヲ設ケサル所有者カ右ト同一ノ流水ヲ用ユルノ權利ヲ有スルトキハ前條ニ記載シタル如ク其入費ヲ共分シテ自己ノ利益ニ前記ノ堰ヲ便用スルコトヲ得〔千八百四十七年七月十一日ノ佛法律〕
(南部)
本條初項ノ償金ハ相隣者ノ堤ヲ害スルモノナレバ之ニ損害ヲ償ハザルベカラズ
第三款 經界
第七百五十七條 總テ相隣ノ所有者ハ地方ノ慣習ニ從ヒ石樹又ハ杭ノ如キ相當ナル指示ノ標記ヲ以テ其連接シタル所有地ノ境界ヲ定メント互ニ強要スルコトヲ得〔第六百四十六條及ヒ伊民第四百四十一條〕
(松岡)
石、樹又ハ杭ヲ擧ゲシハ例示ニ過ギザルベシ
(箕作)
畛界溝域ノ如キハ固ヨリ相當ナル指示ノ標記ナルモ起案者ハ之ヲ知ラザルベキヲ以テ擧示サレザラン然ルニ此等ハ無論包含スルモノト視ザルベカラズ
第七百五十八條 經界ノ訴權ハ建物ニ付テモ又石造、土造又ハ木造ノ圍障アル土地ニ付テモ存立セス
公路又ハ公ノ水流ニテ互ニ相離レタル土地ニ付テモ亦右ノ訴權存立セス
本條初項ハ報吿委員ニテ又石造云々木造ノ迄ヲ刪リ塀矢來又ハ垣ノ如キト云フヲ插塡ス
(箕作)
石垣ノ如キハ石造ト云フ中ニ包含スベキモノナレバ石造土造塀瓦造トシテハ如何
(栗塚)
ソレニテハ矢來抔ノ除ケルヲ以テナリ
(南部)
土造ノ下ヘ竹造ヲ挿入シテハ如何
(松岡)
此點ハ例示カ
(箕作)
例示ニアラス限示ナリ
(松岡)
然ラバ服修可ナラン
遂ニ塀矢來又ハ垣ノ如キ圍障云々トス
第七百五十九條 經界ノ訴權ハ熟議上又ハ裁判上ニテ境界ノ定マラサル間ハ時効ニ係ルコトヲ得ス
然レトモ若シ相隣者ノ一人カ經界ヲ求メタル土地ノ全部又ハ一分ニ付キ得取時効又ハ唯一年ノ占有ヲ利昌スルトキハ原吿ハ豫メ回收訴權又ハ回復訴權ヲ行フヘシ
(尾崎)
豫メ回收訴權又ハ回復訴權ヲ行フベシト云フハ如何
(南部)
得取時効又ハ一年ノ占有ヲ利昌スルトキハ先ヅ經界訴權ハ扨置キ回收回復ノ訴權ヲ行フベシト云フ譯ナリ
(鶴田)
凡ソ時効ハ裁判ノ間過ルベキモノニアラズ故ニ之レヲ明示スルノ要ヲ見ズ
(尾崎)
經界ノ定ラザル際時効ノ生ル譯ナシ
(松岡)
然レドモノ字ハ前後連絡セズト
然ルニ遂ニ原案ニ決ス
第七百六十條 以上ノ場合ノ外限界ノ不確定ナリ又ハ爭論セラレタルトキハ經界ハ所有權ノ證書ニ記載シタル坪數及ヒ限界ニ從テ之ヲ定ム又其證書ナキトキハ之ヲ補フコトヲ得ヘキ他ノ證據又ハ證據書類ニ依テ之ヲ定ム
若シ所有權ニ付キ爭論アルトキハ管轄裁判所ハ其事ニ付キ豫メ決定ヲ爲スヘシ
(箕作)
之ヲ定ムハ之ヲ爲ストスベシ何トナレバ經界ヲ爲スノ意ナレバナリ
(松岡)
所有權ノ證書ハ地券ニ限ラズ獲得證書モ合言スルナラン
(南部)
不確定ナリヲ不確定ナルトキトシテ如何
可決ス
(箕作)
決定ノ字ハ修正セザルベカラズ
(栗塚)
判決トスル筈ナリ又曰經界爭ハ裁判所構成法ニハ地方裁判所ヘ訴フルコトトナリシニ各國皆治安廳ニ訴ヘザルナシ治安廳ノ訴權中ヨリ之ヲ刪リシハ不都合ナルニアラズヤ蓋シ之ハ經界爭ヲ所有權ノ爭ト誤視シタルナラン
(南部)
經界論ニ關スル議ハ更ニ再存スルヲ希望ス依テ之ヲ建議シタシ其當時ハ全ク之ヲ所有權ニ關スル爭論ト思惟シタレバナリ
(淸岡)
經界ノ不確定ノトキト云フハ必ラズ所有權ノ爭ナルベシ
(尾崎)
經界ガ不確定ノ場合ハ殆ンドナカルベシ
(松岡)
經界爭ヒノ際管轄ノ裁判所ノ定メナキハ不都合ナリ
(淸岡)
寸尺ノ爭論ナレバ治安廳ニ於テスルヲ以テ不都合ナシ
(松岡)
一尺ノ爭ト云ヘバ所有權ノ爭ヒナリ
(淸岡)
價格ニ見積ルベシ
(松岡)
價格ニハ見積ルヲ得ズ何トナレバ價格一定セザレバナリ
(栗塚)
置石ノ如キハ決シテ所有權ニ關スルモノニアラズ
(南部)
構成法ノ方ヲ再存スト云ハズ更ニ民法ヨリ論ジ及スベシ
(松岡)
然リ民法ノ方ヨリ此點ノ裁判スベキモノナシト云フヲ以テ其管轄所ヲ定ムルニ如カズ
遂ニ追テ委員長ニ建議スベキニ決ス
(南部)
然ラバ此管轄ノ字ハ存置スベシ
可決ス
(松岡)
以上ノ場合トハ何ヲ指スカ
(箕作)
得取時効又ハ唯一年ノ占有ヲ利唱スルトヲ指シタルナラン
第七百六十一條 相隣者ノ一人ニ不足スルモノカ他ノ一人ノ方ニ全部又ハ一分餘分ニテ在ル場合ニ於テハ第七百五十八條ニ定メタル如キ建物又ハ圍障アル土地ヲ裁斷スルノ必要ナラサルトキハ現物ニテ減殺ヲ爲ス反對ノ場合ニ於テハ償金ヲ以テ減殺ヲ爲ス
(南部)
本條ハ之ヲ刪除シタシ
(村田)
舊原案ヲ可トス
(南部)
舊原案ノ如クナルモ地券ノ受損シモアリ又間違ヒモアルベケレバ必ラズ隣地ヘ占メラレタルモノト推測スベカラズ容易ニ隣地ニ屬スル地面ヲ得取スベキモノニアラズ
(栗塚)
前案ト現案トハ大差ナシ前案ハ一地ノ爲ニ數軒ノ地主ニ及スベシ現案ナレバ之ニ反スト云フニ過ギズ抑モ此條ノ必要ハ我ガ坪數ノ他ノ坪中ニ併取セラレシトキハ隣地ノ建物ヲ毀ツカ又ハ償金ヲ得カト云フニアリ一地所ノ爲ニ數地主迄モ動揺セシムルハ不可ナルモ簡易ニシテ正當ニ歸スルヲ得ベキ方法アレバ可ナルニアラズヤ其地所取返シハ之ヲ恕スベシト云フハ別論ナルモ之ヲ酷ニ詮議スルハ社會ヲ撩擾スルノ憂虞アリト云フハ不可ナリ
(松岡)
本條ハ刪除スベシ地券面ト實地トノ差アルトキハ裁判官ニ於テ至當ニ裁判スルヲ以テナリ
(渡)
隣地ガ惡意上占有セザルトキハ或ハ地券上ノ錯誤ナシト云フベカラズ故ニ徒ラニ隣地ニ對シテ之ヲ要求スベカラズ
(尾崎)
此法ノ通リニスレバ漫ニ隣地ノ範圍ヲ干カスノ憂ヒアリ故ニ本條ハ存置スベカラズ
刪除ニ決ス
第七百六十二條 若シ界カ中間ノ土地ト二個ノ相隣地トノ間ニ爭ハレ且二箇ノ相隣地ニ共ニ餘分ノ土地アルトキハ各相隣地ノ餘分ト中間ノ土地ニ不足スルモノトノ割合ニ應シテ減殺ヲ爲ス
本條ハ前條刪除ノ例ニヨリ刪除セラル
第七百六十三條 若シ總テノ當事者ノ間ニ熟議ヲ以テ經界ヲ爲ストキハ其適宜ト考フル方式ニテ其證書ヲ製スヘシ此證書ハ土地ノ坪數及ヒ限界ニ付キ各當事者ノ利益トナルト損失トナルトヲ問ハス確定ノ名義ノ効アリ
當事者ノ議協ハサルトキハ裁判ヲ以テ坪數及ヒ限界ヲ定メ其裁判書ニ圖面ヲ添フヘシ此圖面ニハ各界標ノ間ノ距離及ヒ其地方ノ定マリタル標點ト各界標トノ距離ヲ記載シテ界標ヲ指示ス
(栗塚)
名義ノ字ハ證書トシタルガ明了ナルニアラズヤ
(箕作)
此ハ權利ノ基本ニ付キ證書ト云フ譯ニモアラズ
(村田)
權證ト云フ意ナリ先ヅ未定ニ屬ス
(松岡)
地方ノ定リタル標點トハ何ゾ
(南部)
里程標ノ如キ卽チ不動ノモノヲ云フ
第七百六十四條 石樹又ハ杭ノ費用及ヒ其設置ハ之ヲ以テ限界トスル相隣者平分シテ負擔ス
測量ノ費用ハ當事者其土地ノ廣狹ノ割合ニ應シテ之ヲ擔任ス
證書及ヒ訴訟ノ費用ハ之ヲ平等ニ派分ス然レトモ不當ナリト裁判セラレタル爭論ニ特ニ關スル訴訟ノ費用ハ敗訴者之ヲ負擔ス
原案通
第七百六十五條 經界訴訟ノ裁判管轄及ヒ其他ノ方式ハ帝國裁判所構成法及ヒ民事訴訟法ヲ以テ之ヲ規定ス〔千八百三十八年五月二十五日ノ佛法律第六條第二項〕
本條ハ報吿委員ノ刪除アリシカ七百六十條ノ議決ニ依リ本條モ存置セサルヲ得サルコトトナレリ
第七百四十二條
本條ハ第七百四十一條ト共ニ起案者ニ間合ニ附シタルカ起案者ノ回答ニハ七百四十一條ハ他人ノ地内ヘ立入ルト云フコトナルカ
(松岡)
此兩條ノ如キハ如是クスレバ僅ニ餘水ヲ受ケルモノガ他人ノ地内ヘ立入ルハ誠ニ不都合ニシテ且ツ永久ノ損害ヲ生ゼザルコトナシ故ニ此點ノ意義ハ之ヲ飮用ニ供スル爲メ引入スルコトヲ得トシタシ
(南部)
七百四十一條ニテハ他人ノ地内ヘ立入ルモ強テ他人ヲ害スルガ如キ工事モセザルベシ若シ立入ヲ許サザレバ町村人民ハ水ヲ得ルコト能ハザルナリ
(村田)
七百四十一條ハ原案ヲ可トス
(松岡)
村町ノ公用トシテ之ヲ引入スレバ不用ノ水ヲ流過セシムルニハナラザルベシ
(村田)
不用ノ水ナル故之ヲ町村ニ引カシムルナリ
(淸岡)
假令町村ノ需用ナルモ人ノ所有地内ヲ損害スルヲ許スベカラズ
(村田)
所有者ハ償金ヲ得ルヲ以テ可ナリ
(淸岡)
償金アレバ何事モ之ヲ爲サシムベシト云フニ至テハ不都合ナリ
(栗塚)
此點ハ泉源ノ地ハ數個ノ湧水スル所アルベキヲ以テ之ヲ一所ニ湊合スルノ目的ナリ
(渡)
泉源地ハ其餘水ヲ與フルノ義務アリ故ニ其工事ニ付テハ償金ヲ與フベシト云フニアレバ之ヲ他ニ引水セシメテ不可ナシト
遂ニ先ヅ原案ニ決ス
(松岡)
七百四十二條ハ之レ何等ノ法文ソ本員ハ其不理ニ驚クナリ外ニ流出スルトキハ其水ノ出口ニ接スルトハ如何ナル義カ
(栗塚)
此點ハ隣地ヨリ流出シタル水ガ我家ニ入ラントスル其入口ニ工事ヲ爲スモノナリ
(委員長)
此點ハ「前條ニ記載シタルカ如ク」ヲ刪レバ可ナルベシ
(松岡)
自己ノ地ヘ自己ガ工事シテ他ノ水引クハ何ノ權能トモ云フ譯ナシ殆ンド無用ニ屬スレバ刪除スベシ
(南部)
此所ハ故ナクシテ流水ノ方向ヲ變ズルヲ得ザルモノナレバ本條ハ要用ナリ
(渡)
容假ニト云フハ元ト權利義務アラザル故容假ニテ權能ヲ得タルモノナレバ他ノ所有者ハ地役アリト云フベシ
(委員長)
前條ニ溜池ヲ他ノ地内ヘ穿凹スルヲ得ベキトスレバ第七百四十二條ニテ前條ニ記載シタルトハ何ヲ指スカ水ノ出口ガ隣地外トスレバ無用ノ條トナリ又隣地内トスレバ眞正ノ權能ニシテ容假ニアラズ尙ホ此點ハ再ビ「ボアソナード」ニ吿問シタシト
卽チ其議ニ決ス
第七百四十三條
本條モ未定ニ屬シタルヲ卽チ再議ニ附ス
(松岡)
舟筏ノ通ゼザル小流ニシテ私有ニアラザル所アルベシ捕魚ノ權アルト云フ以上ハ非常ニ小流ニモアラザルベシ如之ノモノニシテ何レニモ屬セザルモノ殆ンド稀ナリ
(工藤)
起案者云ヘリ川床ハ沿岸者ニ屬スルモ流水ハ沿岸者ニ屬セズ用惡水路ノ如キハ町村ニ屬シタルモノナレバ此所ニ包含セズ
(委員長)
沿岸ノ二字ハ何ゾ妥當ノ字ナキカ
(栗塚)
沿岸川床ノ如キハ其區別各稱等モ現況ノ所如何ナルカ尙ホ詮議スルコトニシタシ
卽チ其議ニ決ス
第四款 圍障
第七百六十六條 總テノ所有者ハ其適宜ト考フル材料ヲ用ヒテ其適宜ト考フル高度ニ自己ノ土地ヲ圍フコトヲ得但第七百六十七條ニ定メタル最下限ハ此限ニ在ラス
若シ土地カ隣人ノ入來又ハ通行ヲ許ス法律上又ハ人爲上ノ地役ニ服スルトキハ其地役ヲ行フノ權能ヲ妨クルコトヲ得ス〔第六百四十九條及ヒ伊民第四百四十二條〕
原案通
第七百六十七條 若シ連接シタル土地カ居宅又ハ農工業ノ利用ノ建物ノ間ニ内庭又ハ庭園ヲ成シテ異別ナル所有者ニ屬スルトキハ各自何レノ場所ニ於テモ其隣人ニ分界圍障ヲ分擔スヘシト強要スルコトヲ得議協ハサルトキハ其園障ハ板塀又ハ竹塀ニアラサレハ之ヲ要求スルコトヲ得ス
其高度ハ分界線ノ平面ヨリ少ナクモ六尺タルヘシ
土地ノ一カ他ノ土地ヨリ堆地タルトキハ圍障ハ堆地ニ設ケ且其高サハ單ニ低地ヨリ六尺ニ逹スルヲ以テ定レリトス但三尺以下タルコトヲ得ス
(栗塚)
本條ハ報吿委員ニテ「各自何レノ場所ニ於テモ」ノ十一字ヲ刪リ市街ト村落トヲ問ハズ各自ノ十二字ヲ挿入スルハ何レノ場所ト云フノカ都卑ノ別ナリト云フ意義ナルヲ以テナリ内庭又ハノ四字ハ前例ニ依リ刪ル
(委員長)
板塀又ハ竹塀ハ竹垣ノ類ニアラザレバトスベシト
可決ス
(委員長)
分界線六尺ハ何故ニ六尺トセシヤ
(栗塚)
是ハ隣家ト見合ス所ノ垣塀ナルヲ以テ之ヲ六尺トス其他ノ所ハ強チ此尺ヲ要セザルベシ
(松岡)
七百六十六條ノ但書ハ刪除シタシ但書ノ變則ヲ示サザルモ次條ニ云々シタレバ足レリ故ニ前條ノ正變混同ハ此ヲ修正セザルベカラズ卽チ前條但書ハ刪除セラル
(淸岡)
隣家ヨリ見超サルル爲メニ高障塀ヲ設ケントセバ高地ニ居ルモノハ自ラ觀望ヲ失スベシ故ニ堆地アリテ自ラ見超ノ障塀ト爲リタルトキハ此上ニ尙ホ垣塀ヲ加ヘザルモ可ナルベシ
(工藤)
堆地アルモ場所ニ依リ高地ノ方ヨリハ隣家ヲ見超スコトヲ得ベケンバナリ
(南部)
觀望ヲ障フルニアラズ家畜ノ出入ヲ防止スルモノナリ
(寺島)
報吿委員ニテハ三尺ニテハ半身許ナルヲ以テ隣家ヲ見超サザルルニ付キ不都合ナリト思惟シ「ボアソナード」ニ吿問シタレバ「ボアソナード」ハ之ヲ刪レリ
(淸岡)
然ラバ觀望ヲ障止スル爲メナルベシ
遂ニ末項ハ刪除ニ決ス
第七百六十八條 相隣者中ノ一人カ他ノ隣人ノ圍障ヲ分擔スルノ遲滯ニ附セスシテ之ヲ作リ及ヒ之ヲ竣リタルトキハ其隣人ニ入費ノ共分ヲ要求スルコトヲ得ス〔第六百六十三條〕
(栗塚)
一層高圍障ヲ作ルニ付キ其增築代價ノ差額ヲ拂フハ然ルベキモ其保持修繕ヲモ負擔スルハ酷ニアラズヤ
(尾崎)
之ヲ負擔サスルモ可ナルベシ
第七百六十九條 開設保持及ヒ修繕ハ共通ノ費用ニテ之ヲ爲シ各自其半額ヲ負擔ス
然レトモ相隣者ノ一人カ上ニ定メタルモノヨリ他ノ材料ヲ以テ又ハ更ニ一層高ク圍障ヲ作ルコトヲ自己ノ利益ト信スルトキハ一人ニテ其建築ノ代價ノ差額ヲ拂ヒ常ニ之ヲ作ルノ權能アリ但此場合ニ於テハ保持及ヒ修繕ハ其專擔トス
(鶴田)
遲滯ニ付セズトハ如何ナル義カ
(栗塚)
隣人ニ催促スベキニ其催促ヲ爲サザリシトキハ費用ヲ要求スルコトヲ得ズト
本條ハ原案通
第五款 互有
第七百七十條 若シ本性ノ如何ニ拘ハラス圍障カ或ハ前款ニ定メタル義務ニ憑リ或ハ任意且協議ニテ共通ノ費用ヲ以テ土地ノ分界線上ニ作ラレタルトキハ其圍障ハ之ヲ支持スル土地ト共ニ不分ニテ相隣者ノ各自ニ屬シ之ヲ互有圍障ト稱ス
相隣者雙方ノ建物ヲ離隔スル石造煉瓦造又ハ土造ノ牆壁及ヒ連接シタル土地ノ分劃線上ニ共通ノ費用ヲ以テ掘リタル溝渠又ハ設ケタル生籬又ハ柴垣モ亦同シ〔第六百五十三條乃至第六百七十三條伊民第五百四十六條乃至第五百六十九條〕
本條ハ報吿委員ニテ若シノ下ヘ圍障カノ三字ヲ挿入シ拘ハラスノ下圍障カノ三字ヲ刪ル
(淸岡)
分界線上ニ垣スルニ不分ノ字ハ何ノ必要アルカ
(栗塚)
不分ノ字ハ双方ノ共有ニシテ分擔スベキ性質ニアラザル場合ヲ示セリ
(村田)
前ニハ分界線上トアリ後ニハ分劃線上トアルハ如何
(栗塚)
同意ナリ
(松岡)
是ハ一定シタシ
(栗塚)
同意ヲ以テ異字アルハ可ナリ強テ區別セントスレバ分界線ハ界スルトキヲ云ヒ分劃ハ土地ヲ分ケタルヲ云フ
(鶴田)
牆壁ハ壁ト云フ譯ニシテ牆ノ意アル所ニアラズ
(南部)
ソレノミニ限ラズ
(栗塚)
是ノ所ハ字ト字トノ間ニアル壁モ每戶間ノ壁モ包有スト
遂ニ牆壁ト云ヒ單ニ壁ト云フ不定ノ點ハ反譯局ノ意見ニ附ス
(委員長)
分界分劃ハ唯字ヲ變ジタルモノニアラズシテ趣味同ジカラザルモノアラン建物ノ如キ界スルヲ分界トシテ土地ヲ界スルトキ分劃トスルガ如キアルニアラザルカ
(村田)
假令分界ニ一定スルモ原意ハ異ラザルベシ
(箕作)
分界ハ二物ヲ引離スト云フ意ニシテ分劃ハ一物ヲ分離スルノ意ナリ字義ニハ違ヒアルモ意義ハ同ジ
(委員長)
此點ハ起案者ニ問合スベシ
第七百七十一條 土地又ハ建物ノ總テノ圍障又ハ分界ハ其本性及ヒ場所ノ如何ヲ問ハス共通ノ費用ヲ以テ分劃線上ニ作リタル互有界ト推定セラル或ハ證書ニ因リ或ハ三十年ノ時効ニ因リ又ハ下ニ指示シタル如キ法律カ非互有ノ推定ヲ付シタル有形ノ標記ノ一ニ因リ相隣者ノ一人ノ爲メ反對ノ證アルトキハ此限ニ在ラス〔第六百五十三條〕
(鶴田)
一方ノ費用ナルト兩方ノ費用ナルトヲ問ハズ分劃線上ニ作リタル分界ハ互有ト推定セラルルノ意カ
(工藤)
此點ハ惟推定ノコトヲ云ヒシナリ
(松岡)
圍障分界トアルモ此區別判然セズ
(栗塚)
圍障ハ分界ニアラズ圍障ハ前條ノ第一項ヲ指シ分界ハ二項ヲ指スモノノ如シ
(委員長)
圍障ハ何ヲ指シ分界ハ圍障ニ入ルヤ否モ不判然ニ屬スレバ何トカ決定セザルベカラズ
(松岡)
園障ハ上ニ出タ生籬ノ如キヲ云ヒ分界ハ下ニ入ル溝洫又木坑石等ノ類ヲ云フノ意義ニ決スベシト
可決ス
(尾崎)
從來ハ所有地内ヘ相互ニ境界ヲセシカ今後ハ之ヲ一箇ノ界トスルニ至ルヲ以テ屡界論起ルベシ
(栗塚)
ソハ次條ニテ界爭ヲ防止スベシ
(淸岡)
兩隣相互ニ生籬ヲ設ケアリシニ一方ノ隣家ニ之ヲ板塀ニシタルトキ他ノ一方モ其生籬ヲ取除キタリ然レバ其板塀ガ互有ノモノトナルカ
(南部)
ソハ互有ト爲ラザルコトヲ次條ニ示セリ
(栗塚)
自ラ板塀ヲ作ル爲メニ餘地ヲ生ジ其餘地ガ隣人ノ占有ニ入ルハ一方ノ不調法ナリ
(松岡)
圍障ハ從來ノ習慣ニテハ日表ノ牆根ハ目下ノ者之ヲ爲スモノナリ如是ハ如何ナルヤ七百六十七條ニハ何方ニ圍障スルトノ極リモアラザレバナリ故ニ同條ニ其習慣ニ安ジタルモノハ此限リニアラズト挿入シタシ
(南部)
ソハ習慣モアルベキカ向後ハ分擔スルトシテハ如何
(栗塚)
目下ノ者ニ害ヲスレバ六尺以上ニ過グベカラザルトスレバ足レリ
(淸岡)
七百七十一條ハ刪除スルヲ可トス習慣ノ如キハ此法頒布ノ後ハ其習慣ハ消滅スベキモノナリト
遂ニ此條ハ原案通ニ可決ス
第七百七十二條 相隣者ノ一人ノ獨專所有權ヲ定ムル證書又ハ時効アラサルトキハ非互有ノ標記ハ土地ニ付テ左ノ如シ
第一 石造、煉瓦造又ハ土地ノ牆壁ニ付テハ雨水流下ノ爲メ設ケタル傾斜面又ハ小簷、牖、凹其他種々ノ工作物又ハ粧飾物ノ單ニ一方ニ存スルコト
第二 板又ハ竹ノ圍障ニ付テハ其支柱ノ單ニ一方ニ存スル場合
第三 溝渠ニ付テハ其除土ノ單ニ一方ニ存スルコト
第四 生籬又ハ柴垣ニ付テハ一方ノ土地ノミ四面ヲ圍ハレタル場合〔第六百六十六條及ヒ千八百八十一年八月二十日ノ佛法律〕
右四個ノ場合ニ於テ獨專ノ所有權ハ相隣者中特別ナル工作物ノ存スル方ニ在ル者又ハ土地ノ全ク圍ハレタル方ニ在ル者ニ屬スト推定セラル〔第六百五十四條〕
(松岡)
此點ハ證書又ハ時効アラザルトキハ此四個ノ場合ノ外ハ之ヲ許サザルカ又之レハ例示制限カ
(南部)
例示ニ過キズ
(栗塚)
此ハ佛民法六百五十四條引用シタルガ佛民法ニ於テモ學者中ニモ例示ト云ヒ制限ト云ヒ其意見區々タリ然ルニ此條ハ制限ナルツモリナリ
(松岡)
之ヲ制限トシテハ裁判官ハ仕合セナルモ不可ナリ
(南部尾崎)
之ヲ贊ス
(栗塚)
標記ノ一方ニ存スルトキヲ非互有ト云フ其四種類其物ニ付テ制限シタルモノニシテ其他ノ非互有ハ未ダ擧示セザルナリ要スルニ此點ハ列次シタルモノノ非互有ヲ云フモノニシテ他ヲ云フニアラズ
(松岡)
是ハ非互有ノ制限トハ見ルベカラズ卽チ例示ナルベシトス
(松岡)
土地ニ付テハ左ノ如シト云フハ如何
(栗塚)
土地ニ付テ云フタルモノニシテ家屋ニ付テ云フタルモノニアラズ
(委員長)
土地ニ付テノ字ヲ非互有ノ上ニ置テハ如何
可決ス
(松岡)
土地ノミニシテ建物ナキハ如何
(南部)
七百七十一條ニ土地又ハ建物トアリテ七十二條ニハ土地ヲ云ヒ其次ハ建物ヲ云ヘリ
(委員長)
石垣ハ自己ガ之ヲ爲シ土揚ハ他ノ一方ニ之ヲ爲シタルトキハ互有ノ證據トスルモ土揚ゲノ如キハ必ラズ便宜ノ方ニ揚ルモノナリ故ニ之ヲ以テ非互有トスルハ如何
(栗塚)
法律ハ有形ノ標記ノ一ニ因リ非互有ハ推定セラルルハ不得止ナリ
(南部)
ソハ此外ニ裁判官ガ非互有ノ推定ヲ爲スヲ得セシムレバ可ナリ
(松岡)
之ヲ互有ト見ラルルトスレバ己レノ權利ヲ奪ハルル感ヲ爲スモ佛法ノ如キハ之ヲ專擔スルハ義務ヲ負フモノトシテ之ヲ避ケントスルナリ
(委員長)
法律ガ非互有ト看做シタルトキハ證書時効アラザルトキハ之ヲ打消スルヲ得ザルベシ
(栗塚)
ソハ他ノ證據物アレバ差閊ヘナシ又此點ハ互有ノ推定ヲ破ルヲ得ベキヲ云テ非互有ノ推定ヲ破ルヲ云ハズ互有ノ推定ハ上ノ三者ニ限ルモ非互有ノ推定ニ付テハ證人ヲ以テスルヲ得ベシ
(松岡)
互有ノ推定ハ通常ノ者故上ノ三者ノ限リヲ要スベキモ非互有ヲ破ルノ推定ハ義務ヲ負ハシムルコト故之ヲ推定スルハ證人ニテ可ナリトス
(南部)
若シ栗塚君ノ意ノ如クナレバ反對ノ證アルトキハ此限ニアラズト云ハザルベカラズ
(渡)
栗塚君ノ說明ニハ感服セズ非互有ノ性質ハ此條ニ列次シタルニ證人ヲ以テ之ヲ破ルヲ得セシムルハ此條ノ規定ヲ破ルト云フベシ
結局本條ハ報吿委員ニテ起案者ニ吿問スベシトス
第七百七十三條 不平等ナル高度ノ二箇ノ建物ヲ分界スル石造、煉瓦造又ハ土造或ハ木造ノ牆壁ニ關スルトキハ互有ノ推定ハ最モ高キ牆壁カ他ノ建物ヲ踰ユル部分ニ付テ止ム
若シ支持スル牆壁カ單ニ一箇ノ建物ヲ支持スルトキハ右ノ推定ハ如何ナル部分ニ付テモ存立セス
(鶴田)
二項ノ意ハ如何
(栗塚)
一幹立ノ場合ヲ云フタモノナリト
別ニ異議ナシ
第七百七十四條 二箇ノ土地ヲ分界スル同一ノ圍障又ハ其他ノ工作物ニ付キ同時ニ互有ノ標記ト非互有ノ標記アルトキハ裁判所ハ情狀ニ隨ヒ其所有權ハ相隣者ニ共通ナルヤ又ハ其一人ニ專屬スルヤヲ査定ス
(栗塚)
非互有ノ標記アルモ互有ノ標記アラズト思ヘリ
(南部)
兩側ニ窖竇アルガ如シ七百七十二條ノ反對ノ場ハ皆互有ナルモノナリ
(委員長)
互有ノ標記アルモ互有ノ證據ト見ルヲ得ベキヤ本條モ尙ホ七百七十二條ト
共ニ詮議スベシト云フニ決ス
第七百七十五條 互有界ノ修繕及ヒ保持ハ平分シテ共有者平分シテ之ヲ負擔ス但毀損カ一人ノ所爲ヨリ生シタルトキハ此限ニ在ラス
然レトモ第七百六十七條ニ從ヒ義務タルヘキ圍障ニ關セサルトキハ共有者ノ各自ハ互有ノ權利ヲ抛棄シテ保持ノ負擔ヲ免ルルコトヲ得但自己ニ屬スル建物ヲ支持スル牆壁ニ關スルトキ及ヒ自己ノ所爲ニ因リ既ニ必要ト爲リタル修繕ヲ負擔スヘキトキハ此限ニ在ラス〔第六百五十五條第六百五十六條及ヒ第六百五十七條〕
(委員長)
共有者ノ各自ハ互有ノ權利ヲ抛棄スト云フハ双方共ニ抛棄セザルベカラザルカ
(南部)
一方ニ於テ抛棄シ他ノ一方ニ於テ必要ナリトスレバ自ラ之ヲ修繕セザルベカラズ
第七百七十六條 互有ノ場合ニ於テハ各相隣者ハ互有ノ分界ヲ其本性及ヒ用方ニ從ヒ用ユルコトヲ得但其堅牢ヲ傷ハサルコトヲ要ス
各相隣者ハ互有壁ニ其厚サ四分ノ三ニ至ルマテ梁棟ヲ穿入シテ建物ヲ支持シ又ハ之ニ煖爐ヲ倚貼シ若クハ煙突、水管、瓦斯管其他家内用又ハ工業用ノ爲メ管筒ヲ通スルコトヲ得但其壁ノ本性及ヒ厚サ之ヲ爲スニ堪フルトキニ限ル然レトモ各相隣者ハ其壁ニ窓ヲ鑿チ又房室ノ使用ノ爲メ些少ノ凹穴ヲモ爲スコトヲ得ス〔第六百五十七條及ヒ第六百七十五條〕
又總テノ共有者ハ互有壁ヲ高ムルコトヲ得但其壁ノ堅牢之ニ堪フルトキ又ハ自費ニテ堅牢ナラシムル工事ヲ爲ストキニ限ル此場合ニ於テ其高メタル部分ハ互有ナラス〔第六百五十八條、第六百五十二條〕
互有ノ溝渠ニ關シテハ各相隣者ハ之ニ雨水工業用又ハ家用ノ水ヲ流入スルコトヲ得但其溝渠ニ水ノ有害ナル停滯ヲ避クルニ足ルヘキ傾キアルトキニ限ル
生籬ニ關シテハ各相隣者ハ剪伐木ノ半ヲ利スルコトヲ得又其生籬ニ存スル高幹ノ樹木ノ採伐ヲ請求スルコトヲ得
(栗塚)
二項ハ相隣者ハ互有壁ニ其厚サ四分ノ三ニ至ルマデ梁柱ヲ穿入シテ建物ヲ支持スベク又互有壁ニ煖〓ヲ倚貼スベク又煙突水管瓦斯管等ヲ互有壁ニ通ズルヲ得ルト云フ意義ナリ
(委員長)
窓ヲ鑿チ些少ノ凹穴ヲ爲ス如キハ相隣者ノ一方承諾アレバ可ナルベキカ
(栗塚)
然リ又曰各相隣者ハ一方ノ承諾アルニアラザレバ云々トシテハ如何
(南部)
其修正ヲ要セザルナリ
(委員長)
倚貼トハ如何
(栗塚)
脊ニ依附スト云フノ意ナリ
(渡)
但其溝渠ニ水ノ有害ナル停滯ヲ避クルニ足ルベキ傾キアルトキニ限ルトスレバ其勾配ナキニ於テハ流シ遣ルヲ得ザルベシ然ルトキハ日用忽チ困難ヲ生スベシ故ニ此但書ハ刪ルベシ
(鶴田)
傾キト云フ字ハ妥當ナラズト卽チ其但書ヲ刪除ス
(委員長)
剪伐木ノ半ヲ利スルコトヲ得トハ如何
(栗塚)
剪伐木ハ時ヲ定テ採伐スルヲ得高幹木ハ成長ノ後採伐スルモノナリト
遂ニ勢剪伐シタル樹木ノ半云々ト修正ス
(栗塚)
此條ハ佛民法ニ於テハ皆承諾アルトキハノ明示アリ何故ニ此草按ニハ之ヲ置カザルヤ本員之ヲ詮議スベシ
第七百七十七條 若シ相隣者ノ一人カ石造煉瓦造又ハ土造ノ分界壁ヲ建築シタルトキハ他ノ相隣者ハ其現時價セシ代價ニテ土地材料及ヒ工力ノ價格ノ半ヲ拂ヒテ常ニ其分界壁ノ全部又ハ一分ノ互有ヲ得取スルコトヲ得〔第六百六十一條及ヒ伊民第五百七十一條〕
前條ノ第三項ニ從ヒ爲シタル壁ノ增高ニ付テモ亦同シ〔第六百六十條〕
右ノ如ク牆壁ノ互有ヲ得取シタル者ハ前條ニ記シタル如ク之ヲ用ユルコトヲ得然レトモ其壁ニ存スル窓カ人爲ニ因リ看望ノ地役トシテ設ケラレタルトキハ之ヲ閉チシムルコトヲ得ス
此條例ハ倉又ハ土藏ニ適用スルコトヲ得ス
(工藤)
報吿委員ニテ材料及ビ工力ノ數字ヲ刪ルハ其價格知ルベカラザルヲ以テ之ヲ壁ト修正シタリ又末項又ハ土藏ノニ五字ヲ刪リ庫ニノ字ヲ挿入ス
(委員長)
代價ヲ拂テ其互有ヲ得ニ至レバ所有者之ヲ拒ムヲ得ザルハ不都合ナリ
(松岡)
此代價ヲ受ケタルガ爲メニ土地迄モ互有セラルルハ所有權ニ害アリ
(栗塚)
他ノ相隣者ノ上ニ其承諾アルニ於テハノ字ヲ加ヘテハ如何
(委員長)
如是スレバ滿足ナリ
(松岡)
然カスレバ地役ト云モノニナラズ其建築止息スレバ地所ノ互有ハ止息ニ屬セザレバ不可ナリ
(南部)
地役ノ義務ハ免ルベカラザル故ニ價格ヲ得タレバ之ヲ互有トスルハ至當ナリ
(栗塚)
起案者ハ自己ガ練塀ヲ立テタル場合ハ直グ破壞スベキモノニアラザルガ故ニ新ニ隣地ニ來接シタルトキハ其人更ニ練塀ヲ作ラザルモ代價ヲ受ケテ互有スルコトトスレバ便利ナリト云フニアリ
(委員長)
ソハ要スルニ土地ヲ減少スルニ至ルガ如キ形狀ニ屬スルヲ以テ不都合ナリ
(栗塚)
代價ヲ以テ其互有ヲ求ムル故不可ナルナシ但互有壁ニナル故別ニ土地減少スルニアラズ
(松岡)
獨有ノモノガ互有ニナル故其結果減少ニ至ルベシ
(委員長)
築塀ヲ變更スベカラズ隣家ヲ害スベカラズトスレバ自ラ互有ノ形狀ヲ有スベキカ他ノ所有權ヲ害スルガ如キ結果ヲ生ゼシムルハ不可ナリ
(松岡)
地上權ハ此所ニ包含スルカ
(栗塚)
地上權ヲモ包含スベシ
(渡)
壁ノ存スル限リハ互有トシ土地ハ所有權ヲ傷ハザル樣ニスベシ
(栗塚)
其點ニ止テ可ナリ
其意ニ可決ス
(委員長)
倉庫ニハ之ヲ適用スルヲ得ズト云フハ如何
(南部)
ソハ壁ト倉庫トハ同ジカラザルベシ倉庫ハ金貨寶玉ノ藏入アル所ナレバナリ
(委員長)
倉庫ト石造ノ分界壁ト何ノ差アルカ
(工藤)
倉庫ハ火災ヲ導センコトヲ恐ルルナリ
(渡)
火災ヲ恐ルルハ倉庫モ家宅モ同一ナリ故ニ倉庫云々ハ刪除スベシ
(委員長)
本條ハ猶ホ人數集リシ上議決スベシ
第六款 他人ノ所有地ニ對スル看望及ヒ寛假ノ取明窓
第七百七十八條 二個ノ土地ノ分界線ヨリ少ナリトモ三尺ノ距離アルニアラサレハ建物ニ物觀窓、樓縁又ハ縁側ニ因リ他人ノ所有地ニ對シ直卽チ正面ノ看望ヲ有スルコトヲ得ス〔第六百七十八條、伊民第五百八十一條〕
分界線ニ併行シ又ハ分界線ヨリ角度四十五度卽環線八分一ノミヲ距ツル建物又ハ工作物ヨリ得ル看望ハ直看望ト看做ス
其他四十六度乃至九十度ノ角度ニテ得ル斜卽チ側面ト稱スル看望ハ分界線ヨリ一尺ヲ距テテ之ヲ設クルコトヲ得〔第六百七十九條〕
右二個ノ場合ニ於テ距離ハ分界線ト看望ヲ與フル工作物ノ最モ突出シタル部分トノ間ニ之ヲ計算ス
(委員長)
一項三尺ハ前ニ當ルカ横ニ當ルカ
(栗塚)
前ニ當ル距離ナリ
(委員長)
家ニ對セズ地ニ對スルハ如何
(南部)
隣家ニ窓ナキトキハ三尺ノ距離ヲ要セズ
(委員長)
此點ハ築造學者ニ詮議スルニアラザレバ不可決ト
未定ニ屬ス
第七百七十九條 前條ニ定メタル距離ヲ遵守スルニ不便ナルトキハ目隱ヲ以テ窓ヲ蔽フヘシ但其目隱ハ分界線上ニ突出スルコトヲ得ス
目隱ヲ設クル能ハサル場合ニ於テハ寛假ト稱スル取明窓ニアラサレハ作ルコトヲ得ス其寛假ノ取明窓ハ其下部少ナクトモ床板ヨリ六尺以上ノ處ニ設ケテ鐵又ハ木ノ定着シタル格子ヲ付スヘシ但其槅眼ハ多クトモ二寸タルヘシ〔第六百七十六條及ヒ第六百七十七條〕
此場合ニ於テ相隣地ノ所有者カ目隱カ一尺又ハ其以上分界線ヲ踰ユルコトヲ承諾スルニ於テハ目隱ヲモ要求スルコトヲ得
(松岡)
寛假ハ容假トハ異ルカ
(栗塚)
異ナリ默許ト云フガ如シ〓限ハ格子眼ト修正ス
(委員長)
取明窓ハ其下部云々ハ如何
(栗塚)
取明窓ノ下端ガ床板ヨリ六尺以上ノ意ナリ
(松岡)
其寛假ノ取明窓ト云フ寛假ノ三字ヲ刪ルベシ
可決ス
(松岡)
末項ノ文意不明ナリ
(栗塚)
此點ハ相隣者ガ突出スルヲ許セバ目隱ヲ請求スルヲ得ト云フノ意ナリ
(南部)
所有者ガヲハトスベシ
(松岡)
承諾ノ字妥當ナラズ
(委員長)
惣テ承諾サヘ得レバ何事モ爲スヲ得ベシ故ニ承諾アレバ目隱ヲ設クルヲ得ベシ
(南部)
此點ハ取明窓ヲ設クルヨリモ寧ロ突出ヲ許シテ目隱ヲ作ラシムルノ意ナリ
(栗塚)
然ラズ取明窓ノ上ニ突出スルコトヲ許セバ目隱ヲ作ラシムルヲ得ベシト云フニアリ
結局原案ヲ決ス
第七百八十條 看望又ハ取明窓ノ自由ニ付キ前二條ニ設ケタル制限ハ其建築ニ對向スル隣地ノ部分モ窓ナキ建築ナルトキハ止ム
(栗塚)
本條ハ云々其建築ニ對向スル隣地ノ建築ニ窓ナキトキハ止ムトセバ更ニ明了ナラン
可決ス
第七款 或ル工作物ニ付キ要セラルル距離
第七百八十一條 自己ノ土地ニ或ハ井戶又ハ雨水溜ヲ穿チ或ハ家内用水又ハ人畜ノ糞ヲ貯フル坑ヲ穿タントスル所有者ハ少ナクトモ分界線ヨリ六尺ノ距離ヲ殘スヘシ但土ノ崩壞又ハ水液ノ滲漏ヲ防クニ必要ナル工事ヲ爲スコトヲ要ス〔第六百七十四條及ヒ伊民第五百七十三條〕
乾燥シテ覆蓋シタル窖ニ關シテハ其距離ヲ三尺ニ減ス
水ノ通路ニ供シタル小溝、石樋又ハ溝渠ノミニ關シテハ其距離ハ少ナクトモ其深サノ半ニ均シカルヘシ然レトモ三尺ヲ踰ユヘカラス其他溝渠ハ分界線ノ方ニ於テハ斜ニ削下シ又石垣又ハ柵ヲ以テ其側ヲ支持スヘシ〔伊民第五百七十五條乃至第五百七十七條〕
(淸岡)
分界線ヨリ六尺ノ距離ヲ殘スベシトハ家屋接近ノ地ニ於テハ不都合ナリ
(松岡)
雨水溜ト云ハズシテ水溜トスベシ
(今村)
原文ノ註ニハ雨水溜トアルモ水溜ト云フニスル方宜シカルベシ
(松岡)
水溜トシタシ
(委員長)
六百三十五條ニモ雨水溜ノ字アリ如何
(今村)
雨ノ字ハアラザルモ不可ナシ
(委員長)
此點ハ文字ニ屬スルモノナレバ反譯局ニ詮議スベシ
(村田)
糞坑ハ六尺ノ距離ヲ殘スベシト云フモ實際困難ナルベシ
(南部)
已往ノ分ハ其儘ニ附シ爾後ハ習慣アラザルトキハ此制限ニ依ルベシ
(松岡)
此點ハ宅地カ耕地カ
(尾崎)
宅地タルハ無論ナルベシ
(南部)
此等ハ今迄宅地耕地ヲ區別セズ
(工藤)
七百五十七條ニ於テ境界ヲ定ムル所ノ如キハ宅地耕地ノ區別ナシ故ニ本條ノ場合ノミ區別スルノ必要ナシ
(渡)
六尺ノ距離ハ之ヲ三尺トシタシ
(淸岡)
此距離ハ宅地非宅地ヲ區別セザレバ不可ナリ廣原新タニ開墾スベキ所モ人家稠密ノ餘地ナキ所モ同ジク六尺ノ距離トスルハ何ゾヤ
(委員長)
是迄出來タルモノハ之ヲ認許スモ爾後設クベキモノハ此法ノ制限ニ依ルベシト云フノ意ナリ
(渡)
慣習ト云ヘバ皆慣習アルヲ免レズ故ニ此制限ヲ實行スルヲ得ザルベシ恐クハ徒法ニ屬スルナラン
遂ニ原案ニ決ス
(委員長)
二項乾燥シテ覆蓋トハ如何
(今村)
乾燥シ及ビ覆蓋シタルト云ハザルベカラズト仍テ反譯上之ヲ修正ス
(松岡)
三項ノ三尺ヲ踰ユベカラズトハ如何
(今村)
三尺ヲ踰ユルヲ要セザルノ意ナリ
卽チ踰ユルコトヲ要セズト修正ス
第七百八十二條 高サ三間ニ踰ユル樹木ハ分界線ヨリ六尺ニ滿タサル距離ニ植付又ハ有スルコトヲ得ス
高サ三間ニ滿タス一間ニ踰ユル樹木ニ付テハ二尺ノ距離ヲ存スヘシ
其他ノ小樹又ハ矮樹ハ直チニ分界線ニ接着セシムルコトヲ得
總テノ場合ニ於テ相隣者ハ前記ノ樹木ノ所有者ニ分界線ヲ踰ユタル枝ヲ伐拂フコトヲ要求スルコトヲ得又自己ノ土地ヲ侵セル根ヲ自ラ截ルコトヲ得〔新第六百七十一條乃至第六百七十三條伊民第五百七十九條乃至第五百八十二條〕
原案通
第七百八十三條 古クシテ且爭ハレサル各地方ノ慣習アルトキハ前二條ノ條例ニ依ラスシテ其慣習ヲ遵守スヘシ
他又前二條ノ條例ハ二個ノ土地ノ分界カ互有ナルトキト雖モ之ヲ適用スルコトヲ得
本條一項ハ各地方ノ各ヲ刪リ慣習ノ上ヘ種々ノ字ヲ加ヘ二項ハ他又ノ二字ヲ刪リ適用スルコトヲ得ヲ適用スト修正ス
第七百八十四條 危害アリ衞生ヲ害シ又ハ不便ヲ生スル工業ヲ行フ爲メ近隣ノ利益ニ於テ要セラルル條件ハ行政法ヲ以テ之ヲ定ム
(今村)
本條ノ不便ヲ生ズハ反譯局ニテ障碍ヲ爲スト修正シ報吿委員ニテ工業ヲ行フヲ營業ノ爲トス
(鶴田)
危害アリハ危害ヲ生ジトスベシ
共ニ可決ス
前諸款ニ共通ノ通則
第七百八十五條 此節ニ定メタル所有者ノ負擔及ヒ條件ハ國「デパルトマン」又ハ「コンミユヌ」ノ私有財產又ハ其資產ニ付キ働方ニテ又ハ受方ニテ之ヲ適用スルコトヲ得
此負擔及ヒ條件ハ受方ニテハ公有財產ニ適用セス然レトモ之ヲ利ス〔伊民第五百五十六條〕
(松岡)
此條ハ公有地ニテ必要アルトキハ隣地ノ牆壁ニ接シテ穿窖スルヲ得ルカ
(今村)
然リ
(淸岡)
之ヲ利スト云ヘバ人民ニ害ヲ加ヘテモ可ナリト云フニ至ルト國デパルトマン云々ハ修正例ニヨリ公ノ無形人ノトス私有財產又ハヲ卽チト働方ニテ又ヲ及ビト反譯上ノ修正トス働方ニテノニテヲ刪ル
第二節 人爲ヲ以テ設ケタル地役
第一款 人爲ヲ以テ設ケタル地役ノ本性及ヒ其諸種類
第七百八十六條 相隣ノ所有者ハ互ニ其土地ノ利益及ヒ負擔ニテ諸種ノ地役ヲ設クルコトヲ得但其地役カ公ノ秩序ニ反セサルコトヲ要ス
所有者又ハ其土地ニ在ル或人ハ一個ノ勞力ニ要スル負擔又ハ所有者ノ一身若クハ之ニ代ル者ノ一身ヲ主トシテ利スル負擔ハ地役ト看做サレス此第一ノ負擔ハ雇使ニ係ル人權ノ効ヲ有シ第二ノ負擔ハ使用又ハ賃借ノ物權ノ効ヲ有スルコトヲ得但第八百五條第二項ニ記載シタルモノハ此限ニ在ラス〔第六百八十六條〕
(今村)
二項ノ如キ主旨ハ佛國ニ於テハ革命前貴族ノ所有地ニ接スル平民ノ所有地ハ自ラ地役ヲ有シ又之ヲ平民ニ賣ルモ其地役ハ依然タリ日本ニハ固ヨリ如此コトナシトスルモ或ハ萬一此ニ類スル契約ナシト云フベカラザルヲ虞リ爰ニ之ヲ示セシナリ
(淸岡)
日本ニハ此習慣ナシ
(南部)
如此事實モ或ハナシトセズ
(今村)
此項ノ賃借ノ物權トナリ又使用賃借ノ人權トナル如キ區別ハ甚ダ判然タラズト
卽チ報吿委員ノ修正ニ決ス
第七百八十七條 地役ハ土地ノ何人ノ手ニ移ルヲ問ハス働方ニテモ受方ニテモ其土地ニ從トシテ附着ス
働方ノ地役ハ要役地ヨリ離分シテ之ヲ讓渡シ賃貸シ又ハ抵當トスルコトヲ得ス又其地役ニ他ノ地役ヲ負ハシムルコトヲモ得ス
(松岡)
地役ニ他ノ地役ヲ負ハシムルコトヲ得ズトハ如何
(今村)
例バ乙地ノ甲地ニ地役ヲ有シタルニ又其地役ヲ丙ノ地役トスルヲ得ズト云フ譯ナリ一體地役ハ物權ノ無形物ナレバ一應ハ解釋ニ苦シムモ地役ヲ要スベキ其地ヲ又他人ニモ地役ニ供スルヲ得ズト云フガ如シ
第七百八十八條 地役ハ若シ土地カ不分ニテ數人ニ屬スルトキハ其一人自己ノ部分ニ付キ要役地ニ地役ヲ失ハシメ又受役地ニ之ヲ免レシムルコトヲ得サルノ意義ニテ不可分ナリ右ト同シク土地ノ派分又ハ其一分ノ讓渡ノ場合ニ於テ地役ハ不可分ニテ受役地ノ各分ヲ冒シ又ハ要役地ノ各分ヲ利ス但地役カ受役地ノ一分ニ對スルニアラサレハ有益ニ行ハルルコトヲ得ス又ハ要役地ノ一分ノ爲メニアラサレハ利益ヲ得セシメサル場合ハ此限ニ在ラス〔第七百九條、第七百十條、伊民第六百三十九條、第六百四十四條〕
(淸岡)
云々ノ意義ニテ不過分ナリト云フハ何ゾ
(今村)
地役ハ不可分ナラザル場合アルヲ以テ此ニハ殊ニ不可分ノ意ヲ示シタリ
(鶴田)
但云々ハ如何甲地ガ乙丙ニ對シ受役ノ義務アルトキカ其義務ガ甲地ノ一分ニ關スルトキニ於テ甲地ノ半分ヲ賣讓スルモ其賣讓ノ分ニハ受役ノ義務アラズ又要役地ノ一分ノ爲メニアラザレバ云々ノトキモ又義務ヲ免ルルヲ得ルモノナリ
第七百八十九條 要役地ノ所有者ハ自己ニ屬スルト主持スル地役ノ事ニ付キ占有ニ係ルト權原ニ係ルトヲ問ハス要請訴權ヲ行フコトヲ得
又受役地ナリト主張セラレタル土地ノ所有者ハ其爭フ地役ノ行用ヲ防キ又ハ之ヲ止マシムル爲メ占有ニ係ルト權原ニ係ルトヲ問ハス拒却訴權ヲ行フコトヲ得
右何レノ場合ニ於テモ占有ノ章ニ定メタル規則及ヒ區別ヲ遵守スヘシ
地役ノ事ニ付キ用收者及ヒ賃借人ノ權利、訴權竝ニ義務ハ第五百六十九條、第五百七十條、第五百九十九條、第六百四十四條及ヒ第六百五十一條ニ之ヲ定ム
(南部)
本條ハ第五百六十九條トアルハ第六百四十三條トナリ第五百七十條第五百九十九條ト云フハ自ラ刪除セラル
(今村)
此條ハ地役ガ占有ニ係ルト權原ニ係ルトヲ問ハズ要請訴權拒却訴權アルヲ示シタリ
(渡)
「自己ニ屬スルト主持スル」トアルハ之ヲ除去スルモ原文工差障ナカルベキニアラズヤ
(今村)
之ヲ除クモ不都合ナキモ然ルトキハ之ヲ忽焉ニ明瞭ナラシムル能ハズ
(松岡)
主持ト云フハ主張ト異ルカ
(今村)
主張ノ意ナリ
(委員長)
主持ヲ主張トスベシト可決ス
第七百九十條 前三條ノ條例ハ法律ヲ以テ設ケタル地役ニモ之ヲ適用ス
本條ハ異議ナシ
第七百九十一條 地役ハ左ノ如シ
第一 繼續又ハ不繼續
第二 表見又ハ不表見
第三 有爲又ハ無爲
右何レモ下ノ三款ノ規則ニ從ヒ設ケラレ行ハレ及ヒ消ユ
本條モ原案通
第七百九十二條 地役カ場所ノ位置ノミニ因リ人ノ協力ヲ要セスシテ要役地ニ永久ノ便益ヲ得セシメ又ハ間斷ナク受役地ヲ累ハストキハ其地役ハ繼續地役ナリ
地役カ要役地ニ有益ナル爲メ人ノ現時ノ所爲ヲ要スルトキハ其地役ハ不繼續地役ナリ〔第六百八十八條〕
(南部)
協力ヲ要セズトハ最初ヨリ之ヲ要セザルニアラズ繼續ノ場合ニ於ケルナリ
(淸岡)
協力トハ人ノ力ヲ借ラズシテ自然ニ行ハルルト云フコトカ
(今村)
水ノ自然ニ流通スルガ如キナリ
第七百九十三條 外面ノ工作物ニ因リ又ハ見ラルヘキ標記ニ因リ顯ハルルトキハ其地役ハ表見地役ナリ
反對ノ場合ニ於テハ地役ハ不表見地役ナリ〔第六百三十九條〕
原案通
第七百九十四條 地役ハ左ノ場合ニ於テハ有爲地役ナリ
第一 地役カ土地ノ所有者ニ他人ノ土地ヨリ或ル利益ヲ收ムルコトヲ許ストキ
第二 地役カ土地ノ所有者ニ自己ノ土地ニ於テ法律カ一般ニ隣人ノ利益ノ爲メ禁スル或ル工作ヲ爲スコトヲ許ストキ
地役ハ左ノ場合ニ於テハ無爲地役ナリ
第一 土地ノ所有者カ一般ニ所有者ニ許サレタル所爲ヲ隣人自己ノ土地ニ爲スコトヲ隣人ニ禁スルトキ
第二 土地ノ所有者カ普通法ニ從ヒ自己ノ土地ニ於テ隣人ノ利益ノ爲メニ成シ又ハ許スヘキ所爲ノ一ヲ其土地ニ於テ成シ又ハ許スコトヲ要セサルトキ
原案通
第二款 地役ノ設定
第七百九十五條 總テノ地役ハ所有者間ノ合意ニ因リ又ハ遺囑ニ因リ之ヲ設クルコトヲ得〔第六百九十條、第六百九十一條〕
右何レノ場合ニ於テモ當事者ノ間ニ於ケルト第三者ニ對スルトヲ問ハス地役ノ有効ナル爲メニハ無償名義又ハ有償名義ニ於ケル不動產物權ノ移付ノ通常規則ヲ遵守スヘシ
原案通
第七百九十六條 繼續ニシテ且表見ノ地役ハ不動產所有權ノ得取ニ付キ要セラレタル本性及ヒ時期ノ占有ヲ以テ時効ニ因リ之ヲ得取スルコトヲ得〔第六百九十條、第六百九十一條〕
隣地ヨリ引ク水ノ取得ニ關シテハ時効ノ期間ハ其時効ヲ採唱スル所有者カ自己ノ土地又ハ受役地ニ於テ自己ノ利益ノ爲メ水ヲ聚メ及ヒ引クノ用ニ供シタル表見ノ工作物ヲ作シタル當時ヨリ起算ス〔第六百四十六條、伊民第六百三十七條〕
(今村)
本性ハ性質ト云フガ如シ
(淸岡)
二項ハ取得トアルハ得取トハ同ジカラザルカ
(南部)
第七百一條ニハ得取トアリ第七百三條ニハ取得トアリテ既ニ成例アリ
(今村)
得取ハ賣得スルガ如キヲ云ヒ取得ハ平ク取ルト云フガ如シ
第七百九十七條 現時分レタリト雖モ最初一人ノ所有者ニ屬シタル二箇ノ土地ノ間ニ於テ繼續ニシテ且表見ノ地役ヲ設定スヘキ場所ノ位置ヲ設ケ又ハ留存シ且若シ其土地ノ離分ノ際此事物ノ形狀ヲ改樣スル事ヲ爲サス又要約セサリシトキハ所有者ノ用方ニ因リ此種ノ地役ヲ暗ニ設ケタルモノト看做ス〔第六百九十二條、第六百九十三條、第六百九十四條、伊民第六百三十二條、第六百三十三條〕
(今村)
二箇ノ土地ノ間ニ於テノ下ヘ所有者ガト云フ數字ヲ入ルルコトヲ反譯局ニ相談スベシ又曰人爲ノ地役ハ期滿免除ト合意トニ依テ設ケラルルカ又善良ナル家翁ノ爲シタル所爲ノ如ク卽チ惡意ナキニ於テハ其地面ヲ切賣スルトキ自己ノ地ハ其切賣地ニ對シテ地役ノ義務ヲ受クベシ
第七百九十八條 不繼續地役及ヒ不表見地役ハ第七百九十五條ニ定メタル二箇ノ名義ノ一ニ因ルニアラサレハ之ヲ設クルコトヲ得ス〔第六百九十一條〕
(今村)
二箇ノ名義トハ合意カ遺囑カノトキヲ云フ
原案通
第七百九十九條 要役地ナリト主張セラレタル土地ノ所有者カ受役地ノ所有者又ハ其前所有者ノ一人ヨリ出テタル證書ニシテ上ニ揭ケタル三箇ノ方法ノ一ニ因リ前來設ケタリト地役ヲ追認スルモノヲ差出スコトヲ得ルトキハ地役設定ノ原證書ヲ提示スルコト又ハ時効ニ因リ若クハ所有者ノ用方ニ因リ地役ノ取得ヲ直接ニ證スルコトヲ免除セラル〔第六百九十七條、伊民第六百三十四條〕
(南部)
所有者ガヲハトシタシ
(松岡)
三箇トハ何ゾ遺囑合意、時効、暗諾ヲ云フ
(淸岡)
要役地ナリト主張セラレタルト云ヘバ所働ナルニアラズヤ
(今村)
日本語ニテハ當ラザルモ此ハ地ヘ對シテ云フ辭ニシテ人ヲ指シテ云フタルニアラズ
(松岡)
要役地ナリト主張スル所有者トセズンバ不明ナリ
(今村)
此點ハ物ガ受身ニナリタルニ之ヲ不可ナリトスレバ立言ヲ改メザルベカラズ
(村田)
要役地ナリト主張セルトシテハ如何
遂ニ原案ニ決ス
第三款 地役ノ効力
第八百條 適法ニ得取シタル地役ノ權利ハ其本性ニ從ヒ其行用ニ必要ナル從タル權利及ヒ權能ヲ帶フ〔第六百九十六條、伊民第六百三十九條〕
右ノ外名義ヲ以テ地役ヲ設ケタルトキハ合意及ヒ遺囑ノ解釋ニ關スル一般ノ規則ヲ遵守スヘシ又時効ニ因リ地役ヲ得取シタルトキハ其廣狹ハ實際ノ占有ノ廣狹ニ因テ之ヲ量ル又地役カ所有者ノ用方ヨリ生スルトキハ其廣狹ハ設定者ノ推定セラレタル意思ニ從ヒテ之ヲ定ム
(栗塚)
本條ハ報吿委員ニテ末文ノ其廣狹ハ設定者ノ下ヘ意思ナリトノ五字ヲ挿入シ推定セラレタルノ下意思ノ二字ヲ刪リ處ノ一字ヲ挿入ス
(松岡)
權利及ビ權能ト云フニ其効用何ノ差アリヤ
(栗塚)
惟鄭寧ニ云フタルニ過ギズ
(鶴田)
名義ヲ以テト云フハ法律ニ依ラズ生ジタル地役ナルベキカ
(栗塚)
然リ此字ハチートルト云フ字ニシテ有償無償名義ノ意ナリ權原トカ權素トカ云フガ如キモノナリト
報吿委員修正ノ分ハ可決セラル
第八百一條 通行ノ地役、繼續又ハ不繼續ナル取水ノ地役、收蓄又ハ其他ノ地役ニシテ他人ノ土地ヨリ物料ヲ收ムルコトヲ許スモノノ場合ニ於テ設定證書又ハ其後ノ合意カ取ルコトヲ得ヘキ數量ヲモ又地役ノ行用ノ時、場所又ハ方法ヲ定メサリシトキハ各當事者ハ常ニ他ノ者ト立會ノ上之ヲ定メント裁判所ニ請求スルコトヲ得
此規定ニ於テハ裁判所ハ互相ノ需用ニ斟酌シ且地役ノ前來ノ行用ノ結果ヲ明カニスヘシ
(栗塚)
本條ハ反譯上ノ修正ニテ設定證書ヲ設定名義トシ又場所又ハ方法ヲノ下ヘモノ字ヲ入ル報吿委員修正ニテ常ニ他ノ下ヘ當事ノ二字ヲ加ヘ別項此規定ニ於テトアルヲ此定メヲ爲スニ付キト又行用ノ結果ヲ明ニスベシトアルヲ行用ノ成績ヲ照査スベシトス
(南部)
立會ノ上ト云フハ場所ニ立會ト云フ如ク見ラルルニアラズヤ
(栗塚)
論爭シテ之ヲ定ムルコトヲ裁判所ニ請求スルヲ得ルノ意ナリ
(淸岡)
對審トスベシ
(栗塚)
對審ト云ヘバ裁判所ヨリ立言スル如クナルヲ以テ妥當ナラズ
(委員長)
何時テモ請求スルヲ得ベキカ
(栗塚)
此點ハ各當事者ハ裁判所ニ請求スルヲ得ベシ如何シテナレバ常ニ他ノ當事者ト立會シテ之ヲ爲スヲ得ベシト云フ譯ナリ
(南部)
立會ト云フ字ハ極ク關係ノ狹縮ナル字ニシテ論爭ノ意アラズ
(委員長)
立會ト云フ字ハ論爭ノ意ヲ包マシムベシト
卽チ其旨意ニ認決ス
第八百二條 取水ノ地役ニ服スル土地ノ所有者ハ水ノ缺乏カ自己ノ所爲ヨリ生スルトキニアラサレハ其責ニ任セス
二箇ノ土地ノ需用ノ爲メニ水ノ不足ナル場合ニ於テハ先ツ之ヲ人身及ヒ家内ノ使用ニ供シ次ニ工業ノ需用ノ前ニ農業ノ需用ニ供ス右ハ總テ其土地ノ重要ニ割合フヘシ
若シ數箇ノ要役地アルトキハ其各要役地ハ家内ノ需要ノ爲メ相共ニ水ヲ使用ス農業及ヒ工業ノ需用ニ付テハ先取ハ要役地ノ中ニテ其權利ノ日附ノ先ナルモノヨリ始ム〔伊民第六百五十條乃至第六百五十二條〕
(栗塚)
本條ハ反譯上ノ修正ニテ二項ノ同一ノ權利ヲ以テノ數字ヲ刪リ先取ヲ優先トシ日付ノ先ナルモノヨリ始ムトアルヲ「モノニ屬ス」トス又報吿委員修正ニテ人身及ビノ四字ヲ刪除ス
(松岡)
二箇ノ土地トハ要役地受役地ヲ云フカ
(栗塚)
然リ
(南部)
優先ハト云フハ文理ヲ爲サズ
(委員長)
此字ハ當反譯局ニテ詮議スベシ
(鶴田)
農業及ビ工業ノ需用ト云フハ農業又ハ工業ノ意ニアラザルカ
(委員長)
農業ト工業トノ需用ナラン
(南部)
農業又ハ工業ト云フ意ナリ
(村田)
日附ノ先ナルモノト云フモ英文ハ日附ノ字ナシ權利ノ長續シタルモノガト云フノ意ナリ
(淸岡)
權利ノ先キナル者ガトスレバ可ナリ
遂ニ農業云云ハ農業又ハ工業ト修正ス
第八百三條 地役ヲ有スル者ハ正シク定メラレタル其行用ノ方法ヲモ時ヲモ又場所ヲモ受役地ノ所有者ノ承諾ナクシテ變スルコトヲ得ス但受役地ノ所有者如何ナル損害ヲモ受ケサルトキハ此限ニ在ラス
又受役地ノ所有者カ右ニ均シキ變更ニ付キ正當ナル利益ヲ有シ且之カ爲メ要役地ノ所有者カ如何ナル損害ヲ受ケサルトキハ受役地ノ所有者ハ其變更ヲ請求シ且之ヲ得ルコトヲ得〔第七百一條第百二條伊民第六百四十五條〕
(鶴田)
本條「其變更ヲ請求シ且之ヲ得ルコトヲ得」ハ求ムルコトヲ得トシテハ如何
(松岡)
此レハ前例モアレバ報吿委員ノ修正ヲ待タン
(松岡)
受役地ノ所有者ハ要役地ノ所有者ニ損害ナキトキハ請求セズトモ之ヲ爲スヲ得ベキニアラズヤ
(栗塚)
損害ナラザルモ不利益ナシトセズ
第八百四條 若シ地役ノ設定カ二個ノ土地ノ一ニ於テ或ル工作物又ハ工事ヲ必要トスルトキハ其工作物又ハ工事ハ要役地ノ所有者ノ負擔タリ但設定證書ニ於テ其工作物又ハ工事カ設定者ノ負擔タルヘキコトヲ要役シタルトキハ此限ニ在ラス〔第六百九十七條、第六百九十八條〕
(鶴田)
設定者トハ要役者ト同人ナルカ
(南部)
設定者ハ自己ノ地面ニ地役ヲ受ケタル設定者ナリ
(淸岡)
二個ノ土地トハ如何
(南部)
要役受役ノ兩地ナリ地役ノ必要ニ屬スル工事ナルヲ以テ受役地ヘ損害ヲ被ルナラン
(淸岡)
二個ノ土地ノ一ニ於テトアルモ要役地ニ要役者ガ工事ヲ起スハ其費用ハ要役地ノ所有者ニ屬スルハ無論ナルベシ何ゾ明記ヲ要スルヤ
(南部)
地役ヲ主トシテ立言スレバナリ
(村田)
二個ノ一ト云フモ兩方ヘ跨ルコトアルベキニ付キ二個ノ土地ノ一ト云フハ刪ルベシ
(尾崎)
然リ
(委員長)
受役地ノ所有者カ要役地ニ工事ヲ起スコトヲ想像シタルニアラズヤ
(栗塚)
要役地ノ所有者ガ要役地ニ設定スル工事ヲ想像セリ
(淸岡)
二個ノ土地ニ跨ルトキハ如何スベキカ
(栗塚)
二個ノ土地ノ下ハ甲ヨリ云ヘバ乙ハ其一方ナリ乙ヨリ云ヘバ甲ハ其一方ナルヲ以テ双方ハ自ラ此中ニアリ
(淸岡)
之ヲ削除シタシ
(栗塚)
之ヲ刪除セバ地役ノ設定ガ工事ヲ必要トスルトキ其設定ハ何レニスルヤト云フコト不明ナリ
(委員長)
二個ノ土地ノ一ト云フコトナケレバ工事ハ必ラズ受役地ニアルモノニシテ要役地ニ爲スト云フ場合ヲ知ルベカラズ
(淸岡)
要役地ノ所有者ガ自己ノ土地ニ工事ヲ作スハ殆ンド明示スルニ及バザルナラン
(栗塚)
此點ハ工作物ガ何レニアルモ要役地所有者ノ負擔ナリ但シ受役地ノ所有者設定證書ニ於テ要役地ニ爲ス工事モ受役者之ヲ負擔スベキト云フ契約ヲ爲シタルトキハ受役地ノ所有者其負擔ニ任ズベシト云フノ意ナリ
(村田)
二個ノ土地若クハ其一ニ於テトシテハ如何
(委員長)
此點ハ起案者特ニ注意シタル所ナレバ容易ニ側ルベカラザルナリ猶又時宜ニ依リ起案者ニ質問スベシトス
(鶴田)
設定者ヲ受役地ノ所有者ノトシタシ
(栗塚)
然セザルモ設定者ハ地役ヲ設定シタル義務者ト云フコト知ルベキニアラズヤ
原案可決ス
第八百五條 地役ノ行用ニ關スル工作物又ハ工事ノ保持及ヒ修繕ハ亦要役地ノ所有者ノ負擔タリ但修繕カ受役地ノ所有者ノ過愆ニ因リ必要ト爲リタルトキハ此限ニ在ラス〔第六百九十七條、第六百九十八條〕
又保持及ヒ修繕カ受役地ノ所有者ノ方ニ過愆ナキトキト雖モ其所有者ノ負擔タルヘシト合意スルコトヲ得然レトモ此場合ニ於テ受役地ノ所有者ハ地役ノ存スル受役地ノ部分ヲ受役地ノ所有者ニ委棄シテ常ニ右ノ負擔ヲ免ルルコトヲ得〔第六百九十九條〕
(松岡)
受役地ノ所有者受役ノ部分ヲ委棄シタルトキハ如何
(南部)
要役地ノ所有者ニ屬ス
原案通
第八百六條 受役地ノ所有者ハ地役ニ如何ナル妨碍ヲモ又其便益ノ如何ナル減少ヲモ生セサルニ於テハ其所有權ニ固着シタル總テノ適法ノ權能ヲ行フノ權利ヲ失ハス
又受役地ノ所有者ハ地役ノ行用ノ爲メ其土地ニ設ケラレタル工作物ヲ便用スルコトヲモ得但其所有者カ其工作物ヨリ收ムル相當ノ便益及ヒ其工作物ヨリ生スルコトアルヘキ費用ノ加重ノ割合ニ應シテ其開設又ハ保持ノ入費ヲ分擔スルコトヲ要ス
(村田)
但其所有者トハ如何
(南部)
受役地ノ所有者ナリ
(鶴田)
加重ト云フハ便益ニモ關スルカ
(南部)
然リ
(鶴田)
費用ノ加重ノ割合ハ便益ニ應ジテ分擔スト云フ意ニシテハ如何
(松岡)
加重ノ費用トシテハ如何
(尾崎)
割合ハ便益ノ割合ニシテ加重ハ費用ノ加重ナリ
(栗塚)
此點ハ相當ノ便益ト其工作物ヨリ生ズルコトアルベキ費用ノ割合ト云フ意ナリ
遂ニ相當ノ利益ノ割合及ビ其工作物
第四款 地役ノ消滅
第八百七條 地役ハ左ノ諸件ニ因リ消滅ス
第一 地役ヲ設ケタル期間ノ滿了
第二 設定證書又ハ設定者ノ權利ノ廢罷、解除又ハ取消
第三 公用ニ因由スル受役地ノ徵收
第四 抛棄
第五 混同
第六 三十年間ノ不使用
第七 第三者保有者ノ利益ニ於ケル受役地ノ自由ノ得取時効
〔第七百三條乃至第七百十條〕
(鶴田)
設定者ノ權利ノ廢罷トハ如何
(栗塚)
要役地ノ相續人ガ正當ニ相續スベキ人ニアラザルトキハ要役地權利廢罷ニ屬スルコトナリ
原案通
第八百八條 地役ノ抛棄ハ明示ナルコトヲ要ス然レトモ若シ繼續地役ノ行用ノ爲メ受役地ニ設ケタル工作物カ要役地ノ所有者ノ明示ノ承諾ニ因リ且將來ニ對スル留存ナクシテ壞頽セラレ又ハ使用外ニ付セラレタルトキハ地役ハ抛棄ニ因テ消滅シタリト看做サル抛棄ハ其抛棄者カ自己ノ不動產權利ヲ移付スルノ能力ヲ有スルトキニアラサレハ有効ナラス
原案通
第八百九條 地役ハ要役地及ヒ受役地カ一人ノ手裡ニ併合セラレタルトキハ混同ニ因テ消滅ス然レトモ若シ土地ノ併合ヲ爲シタル所爲カ裁判上ニ廢罷解除又ハ取消サレタルトキハ地役ハ曾テ消滅セサリシト看做サル
繼續ニシテ且表見ノ地役ニ關シ其場所ノ位置カ仍ホ同一ニシテ期節ト原由トノ如何ヲ問ハス再ヒ其土地ヲ分チタルトキハ地役ハ第七百九十七條ニ從ヒ再生ス
(南部)
裁判上ニノニハ除クベシ
(松岡)
可ナリ
(淸岡)
刪ルベカラズ
(南部)
然ラバニテトシタシ
可決ス
(栗塚)
此條ハ他人ノ家ヲ買フタルトキ元來地役アリシ地ハ要役地ニ買シタルニ依リ消滅ス然レドモ其地ハ購買スルヲ得ザルトキハ其地役ハ消滅セズト
原案通
第八百十條 地役ハ要役地ノ所有者カ任意タルト否トヲ問ハス地役ヲ行フコトナクシテ三十年ヲ經過セシメタルトキハ不使用ニ因テ消滅ス
其三十年ハ不繼續地役ニ關シテハ最後ノ使用ノ所爲ヨリ起算シ又繼續地役ニ關シテハ地役ノ自然ノ作用ニ對スル形體上ノ妨碍ノ起リタル當時ヨリ起算ス〔第七百六條、第七百七條〕
右何レノ場合ニ於テモ若シ地役ノ使用ニ對スル妨碍カ受役地ニ於テ發シタル事變ヨリ生スルトキハ要役地ノ所有者ハ自費ニテ事物ノ舊狀ニ復スルヲ許サルルコトヲ得其復舊ハ若シ妨碍カ受役地ノ所有者ノ所爲ヨリ生スルトキハ其所有者ノ費用ヲ以テ之ヲ爲ス
(淸岡)
形體上ノ妨害トハ例バ道路ノ往來止トナリタルガ如キモノカ
(栗塚)
然リ
(鶴田)
其復舊ハノ文字ヲ末端ノ其所有者ノ費用ヲ以テ之ヲ爲スノ上ニ加ヘタシ
(栗塚)
佛文ハ之ヲ前ニ置クモ英文ハ之ヲ後ニ置キタルヲ以テ差閊ナカルベシ
(南部)
然ラバ其ノ字ヲ除キ復舊ノミニスベシ
可決ス
第八百十一條 若シ要役地カ數人間ニ不分ナルトキハ共有者ノ一人ニ因レル地役ノ行用ハ他ノ者ノ權利ヲ保存ス〔第七百九條〕
右ノ外免責時効ノ進行ヲ停止シ又ハ中斷スル原由ハ地役ノ不使用ニ適用スルコトヲ得
(淸岡)
本條ハ因レルト云フ字ヲ刪リタシト
贊成ナシ
第八百十二條 受役地カ地役ヲ免カレタリトシテ第三者ニ因リ得取及ヒ占有セラレ且其地役カ不動產權利ノ得取時効ニ必要ナル時間行ハレサリシトキハ地役ハ時効ニ因リ消滅ス
(栗塚)
本條ハ甲受役地アリ乙ノ要役地タルヲ知ラズ第三者之ヲ買ヒタリ乙其地ニ對シ要役地ノ權ヲ施用セザルトキハ此地役若干年間ノ經過ニ依リ消滅スルモノナリ
原案通
第八百十三條 地役ニ因テ付與セラレタル利益ノ廣狹ハ其地役ノ行用ノ方法、時、及ヒ場所ニ關シテハ不使用又ハ時効ノ効力ニ因リ滅セラルルコトアリ〔第七百八條〕
(栗塚)
地役ノ權利者ニ於テ通行スベキ義務地ニ對シ最初假令バ三尺幅ニ對スル要役權ヲ有シタルニ爾來蔓草其地幅ヲ狹縮シタルトキ權利者之ヲ其儘ニ付シタルトキハ其蔓草シタル部分ノ地役ハ消滅ニ屬スルナリ
原案通