民法證據篇再調査案第四十一回議事筆記
自第千四百三十七條至第千四百六十條
明治二十一年十二月二十一日午前九時四十分開會
第千四百三十七條朗讀ス
第二章 時效ノ抛棄
第千四百三十七條 時效ハ豫メ之ヲ抛棄スルコトヲ得ス但第千四百五十六條第二項ニ記スル如ク占有者カ將來ニ向ヒテ其占有ノ容假ヲ認ムルノ權利ニ妨ナシ
成熟シタル時效ハ之ヲ抛棄スルコトヲ得ス又其進行中ト雖モ既ニ經過シタル時期ノ利益ハ之ヲ抛棄スルコトヲ得
此場合ニ於テハ第千四百五十四條以下ニ記載セル相手方ノ權利ヲ追認シタル場合ニ於ケルト同シク時效ハ中斷セラル
(淸岡委員)
權利ニ妨ゲナシト權利ヲ妨ゲズトハ違ヒマスカ
(松岡委員)
同ジコトダ
(栗塚委員)
「時效ハ中斷ス」デ宜シウ御座リマシヨウ
(村田委員)
末項ハ要用ダロウカ抛棄シテ仕舞ヘバ中斷ドコロデハナイ
(南部委員)
恰度中斷デス
(栗塚委員)
假令バ三十年ノ時效デ二十五年經ツタモノヲ抛棄シテ又始メル
(村田委員)
ソレダカラ中斷モ何モ入ラン
(南部委員)
治罪法ニモ中斷ト云フコトガアル
(村田委員)
假令バ自分ガ土地ヲ持チテ居ル三十年デ時效ニナル自分ハ我レノモノダト思フトキ外ヘ返シテ仕舞ヘバ抛棄ニナル
(南部委員)
ソレカラ又始マル
(村田委員)
中斷スルノデナイ新規ニナルノダ
(松岡委員)
經過シタ分ノ抛棄ガ出來ルト云ヘバ分ツテ居ル云ヒ詰メレバ村田サンノ云フ樣ニナル
(村田委員)
末項ハ云ハンデモ宜シイノダ
(淸岡委員)
「此場合ニ於テ時效ハ中斷セラル」デ結權ダ
(松岡委員)
既ニ經過シタ分ハ抛棄ガ出來ルト云ヘバ中斷ト云フコトハ無クテモ宜シイ
(淸岡委員)
アツテモ害ハナイ
(栗塚委員)
私モ必ズアルトハ申シマセンアツテ牴觸モ致シマセン
(松岡委員)
我々ガ書クノナレバ書カナイト云フノダ
(栗塚委員)
削ル理由モナク維持スル理由モナイ
(村田委員)
條ヲ引ク丈ケハ止メタラ良カロウ
(松岡委員)
條ヲ引カント尙ホ分ラン
(箕作委員)
村田サンノ御說モ御尤モダケレドモ之ハ參照ニ過ギナイ
本條末項「中斷セラル」ヲ「中斷ス」ト改ム
第千四百三十八條朗讀ス
第千四百三十八條 抛棄ハ默示タルコトヲ得ルト雖モ明カニ事情ヨリ顯ハルヽコトヲ要ス
(淸岡委員)
現ハレテ來ナケレバ默示ト云フコトハ分リハセン
(栗塚委員)
併シ明カト云フ字ニ力ガアルノデス默示中デモ明了ノ事情カラデナケレバナリマセン
(松岡委員)
曖昧ノ默示デ良シト云フコトハナイ
(栗塚委員)
多分斯ウダロウト云フ曖昧ガアリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第千四百三十九條朗讀ス
第千四百三十九條 成就シタル時效ヲ有效ニ抛棄スルニハ取得シタリト推定セラルヽ權利ヲ讓渡シ又ハ消滅シタリト推定セラルヽ義務ヲ負擔スルノ能力アルコトヲ要ス
(松岡委員)
詰リ讓渡能力ノ義務ヲ負擔スル能力ガナケレバナラント云フ丈ケデ宜シイ推定セラルルト云フテ公然出來ル能力ガアタラドウスル
(栗塚委員)
其方ガ本當デス時效ヲ有效ニ抛棄スルト恰度權利ヲ棄テルト同ジデス取得時效ト免責時效ト二ツヲ見セル積リデス
(松岡委員)
其物ヲ讓渡シタリ其物ヲ負擔スル能力ガアルト云フ丈ケデ澤山ダ推定ト云フノヲ持チ出スノハ良クナイ
(栗塚委員)
取得シタル權利消滅シタル義務ト云ヘルカト云フニ推定ト云ヘル丈ケデス
(淸岡委員)
推定セラルルハ消滅ノ方ニ係リハセンカ
(松岡委員)
ソウデハナイ權利ヲ取得シタト推定セラルルダ
(箕作委員)
一旦取得シタリト推定セラレタ權利ヲ讓渡スノデナケレバイケナイト云フノデス
(栗塚委員)
推定ト云フ言葉ニ起按者ノ意ヲ用ヒタ丈ケハ御解釋ヲ願ヒマスソレデハ時效ト云フモノヲ證據ノ内ニ入レルコトガ出來ナクナリマス既ニ時效ヲ證據篇ノ中ニ入レテ推定ト云フタ以上ハ此處モ推定ト云ハナケレバナリマセン
(松岡委員)
ソンナコトヲ云ヘバ一條一條推定セラルル時效ト云フカ
(栗塚委員)
推定セラルル時效デハアリマセン推定セラルル權利デ御座イマス時效デ得タル權利時效デ消滅セシメタル義務デ御座イマスカラ
(大尾崎委員)
時效ダカラ推定セラルルト云フノダカラ良カロウ
(村田委員)
時效ト云フモノハ幼者ニ保護スルコトハナランゾヨト云フコトダ
(松岡委員)
取消シタリト推定セラレ消滅シタリト推定セラルルト云フコトヲ削レバ宜シイ
(元尾崎委員)
削ツテモ宜シイ
本條ハ原按ニ決ス
第千四百四十條朗讀ス
第千四百四十條 債權者ハ其權利ヲ詐害シテ債務者ノ爲メタル時效ノ抛棄ニ對シテハ第三百六十條以下ニ定メタル條件及ヒ方法ニ從ヒ自己ノ名ヲ以テ之ヲ攻撃スルコトヲ得
(栗塚委員)
之ハ三百六十條以下デ廢罷訴權ヲ行フ
(箕作委員)
債權者ノ名ヲ以テヤルノデスカ
(栗塚委員)
ソウデス
本條ハ原按ニ決ス
第千四百四十一條朗讀ス
第三章 時效ノ中斷
第千四百四十一條 經過シタル時期ノ利益カ下ニ記シタル原因ノ一ニ由リテ消滅スルトキハ時效ハ中斷セラル
中斷セラレタル時效ハ中斷ノ原因ノ止ミタルトキヨリ再ヒ進行ス
(栗塚委員)
之モ「中斷セラル」ハ「中斷ス」トナリマス
(松岡委員)
村田サンノ云フ通リ三十七條ノ末項ヲ削ルガ立派デ宜シイ
(箕作委員)
原按者モ中斷ト云フコトハ惡ルイト云フコトヲ氣ガ付イテ居ナガラ書イテ居ル「中止ス」ト云ツタラ宜カロウ
(松岡委員)
困ツタコトニハ千三百七十一條ニ再ビ進行ストアルカラ此處デ再ビト云フト復タ再ビト云フ樣ニナル
(村田委員)
此再ビト云フ字ヲ削ルガ宜シイ
(栗塚委員)
元ト歩ルイテ居ツタガ又歩ルキ始メル
(松岡委員)
元ガ惡ルイカ前ノガ惡イカ
(栗塚委員)
「更ニ進行ス」デハ如何デス
(淸岡委員)
更ニガ宜シイ
本條第一項「中斷セラル」ヲ「中斷ス」ト改ム第二項「中斷セラル」ヲ「中斷ス」ト改メ「再ヒ」ヲ「更ニ」ト改ム
第千四百四十二條朗讀ス
第千四百四十二條 時效ノ中斷ハ自然ノモノ有リ法定ノモノ有リ
自然ノ中斷ハ取得時效ニ關シテノミ生ス法定ノ中斷ハ二種ノ時效ニ共通ナリ
(栗塚委員)
二種ノ事項ハ取消ト免責デ御座イマス
本條ハ原按ニ決ス
第千四百四十三條朗讀ス
第千四百四十三條 不動產ノ占有者又ハ動產及特定動產ノ包括ノ占有者カ眞ノ所有者又ハ第三者ノ所爲ニ因リテ一ケ年以上其占有ヲ奪ハレタルトキハ自然ノ中斷ナリ
若シ占有ノ剝奪カ不可抗力ニヨリ生スルトキハ自然ノ中斷ナシ
占有ヲ取回シタルトキハ新ナル時效ハ追行ヲ始ム
(栗塚委員)
之ハ起按者ガ直シテ來マシタ「不動產、動產包括又ハ特定動產ノ占有者カ」トナリマス
(箕作委員)
包括ノ不動產ガ占有ヲ奪ハレルコトハナイ動產ハ奪ハレルト云フ積リデ書イタノデシヨウカ
(松岡委員)
動產デモ不動產デモ占有シテ居ルモノハ前ノ用收者ニ取上ゲラレタカラ動產不動產ト云ヘバ澤山ダ包括ダノ特定ダノト云フニハ及バン
(栗塚委員)
不動產ノ包括ハナイト云フ旨意デス
(箕作委員)
物ノ占有者デ宜シイノダ
(松岡委員)
物デ宜シイ
(南部委員)
此處ハ動產不動產丈ケハ置イテ下サイ
(箕作委員)
動產又ハ不動產デ宜シイ
(松岡委員)
ソレデ宜シイ
(村田委員)
剥奪ト云フノハ無名ノ占有トアルカラ侵奪トスルガ宜シイ二百十六條ニ侵奪トアル
(松岡委員)
彼レハ占有スル人ガ侵奪スル占有ダ之ハ占有シテ居ルノヲ所有者ニ奪ハレタノダ
(村田委員)
併シ侵奪ヲセラレタルト云フノダカラ
(栗塚委員)
占有ヲ失ウコトガトスレバ宜シウ御座イマシヨウ
(箕作委員)
侵奪ト剥奪トハ原字ガ違ツテ居リマス
(村田委員)
占有回取ト云フテモ取回トハ違ヒマスカ
(栗塚委員)
彼レトハ違ヒマス併シ私ノ權ヲ取リ返ス丈ケデス
(淸岡委員)
取回ハ回取トシヨウデハナイカ
(箕作委員)
其レデハ回取トシヨウ
(栗塚委員)
剥奪占有ヲ失フコトト云フ意味デ宜シウ御座イマシヨウ
(南部委員)
喪失デモ宜シイ
(箕作委員)
前ノ一項ニ占有ヲ奪ハレタルト云フコトガアリマスカ
(松岡委員)
彼レハ第三者ノ所爲ニ依ルデ此ハ第三者ノ所爲デハアリマセン占有ガ不可抗力ヨリ奪ハレタルトキハデモ宜シイ
(栗塚委員)
「不可抗力ニ依リテ占有ヲ奪ハレタルトキハ」トスレバ宜シイ二百十六條ニ動產包括特定不動產トアリマスカラ此處モソウシナケレバナリマスマイ
(松岡委員)
ソウスルト向ウモ削ルト云フ論ニナリマス
(村田委員)
之ハ一時ト云フ字ヲ入レテハドウデス
(箕作委員)
前ニ一ケ年以下ト云フコトガアリマシタガ一時デ宜シイカネ
(栗塚委員)
其レデ有效ニテト云フ積リデアリマシタ若シ之ヲ失フトスレバ一時ト云フコトヲ入レナケレバナリマセンガ奪ハレルト云ヘバ一時ハ入リマセン
(箕作委員)
委シク云フト一ケ年以上奪ハレタルトキト雖モ時效ノ中斷ナシダ
(松岡委員)
一年以上ニナレバ回取ノ訴ハ出來ナイ
(南部委員)
此ハ回取訴權ヲ行ツタ場合デハナイカラ矢張リ取回スガ宜シイ
(大尾崎委員)
回取ト云フト回取訴權ノ樣ニナルカライケナイ
(松岡委員)
更ニ中斷シタトキハ更ニ進行スルト云フノダ
(栗塚委員)
ソウデス
(南部委員)
ソレデハ之ハ取回シト致シマス
(松岡委員)
元トハ取戻シトアル
(栗塚委員)
取戻シガ宜シウ御座イマシヨウ
(元尾崎委員)
之ハ三項ト二項ト入レ換フルガ宜シイ
(松岡委員)
贊成
(箕作委員)
ソレデナイト二項ノ事ヲ三項デ云フタ樣ニナル
(松岡委員)
「新ナル時效ハ進行ヲ始ム」ハ可笑シイ
(栗塚委員)
「時效ハ更ニ進行ス」デハ如何デス
(箕作委員)
其レデ良カロウ
本條ハ左ノ如ク改ム
動產又ハ不動產ノ占有者カ眞ノ所有者又ハ第三者ノ所爲ニ因リテ一ケ年以上其占有ヲ奪ハレタルトキハ自然ノ中斷アリ占有ヲ取戻シタルトキハ時效ハ更ニ進行ス若シ不可抗力ニ依リテ占有ヲ奪ハレタルトキハ自然ノ中斷ナシ
第千四百四十四條朗讀ス
第千四百四十四條 自然ノ中斷ハ各利害關係人ノ爲メニ其效ヲ生ス
(箕作委員)
法定ノ中斷ハドウシマスカ
(栗塚委員)
害ヲ受ケル者デナケレバ之ヲ申立ルコトハ出來ント云フコトデス
(箕作委員)
利ヲ受ケル者カラ申立ルト云フノハドウ云フモノデス
(栗塚委員)
自然ノ中斷ハ誰レカラデモ言ヘル
(元尾崎委員)
法定ノ占有ハ外ノ者ニ效ヲ生ゼンカ
(村田委員)
之ハ數人ノ共有ノ樣ナ場合ヲ云フノデハナイカソウスレバ一人ノ爲シタコトハ他ノ者ニ及ブト云フコトデハナイカ假令バ免責時效ノ進行ハ其一人ノ所爲ニ因テ他ノ人ノ權利ヲ保存スト云フコトガアルソウ云フコトデハナイカ
(栗塚委員)
法定ノ中斷ハ人ガシナケレバナランカラ其人ノ所作ヲ待ツテデナケレバ出來ン自然ノ中斷ハ人ノ所爲ヲ待タンデ出來ルト云フ方デハアリマセンカ
(松岡委員)
自然ト云フノハ實物ノ方デ法定ハ無形ノ方ダ
(箕作委員)
法定ノ方ハ申出タ一人ニ係ルト云フノデ恰度物權ト人權ノ違ウ樣ナモノダロウ
(南部委員)
完至ナル義務ト不完全ナル義務ハ一人ニ對シテ中斷シテモ他ノ者ニ對シテ效ガナイト云フ樣ナモノダ
(箕作委員)
自然ノ方ガ現ハレテ居ルカラ恰度物權ノ樣ナモノダ
(元尾崎委員)
中斷ノ利益ハ取返シタ後重モナル利益ガアル
(南部委員)
取返スベキ利益ガアル
(元尾崎委員)
取返サルベキ害ガアル
(箕作委員)
假令バ相續人ガ二人アルトキ法定ノ中斷ガ相續人ノ一人ヲ以テ裁判所ニ訴ヲスル其訴ヲ受ケタ一人ニ對シテ時效ヲ中斷スルノデ訴ヲ受ケンモノニ對シテハ少シモ效ガナイトナル自然ノ中斷ハ相續人ガ二人アツテモ三人アツテモ其三人ニ對シテ效ガアルト云フコトダロウ
本條ハ原按ニ決ス
第千四百四十五條朗讀ス
第千四百四十五條 占有者カ或ル時間任意ニテ其占有ヲ止メタルトキハ其占有不繼續ノ效力ハ第千四百七十五條ニ於テ之ヲ規定ス
(松岡委員)
矢張リ實ハ中斷ニナルノダ
(箕作委員)
千四百七十四條ニ間斷ナクシテトアリマスカラ間斷ナクシテヤルト云フノダガ矢張リ中斷ニナル
本條ハ原按ニ決ス
第千四百四十六條朗讀ス
第千四百四十六條 法定ノ中斷ハ左ノ諸件ヨリ生ス
第一 裁判上ノ請求
第二 勸解上ノ召喚又ハ任意出席
第三 執行文提示又ハ催吿
第四 差押
第五 任意ノ追認
右ノ手續又ハ追認ノ行爲カ時效ノ爲メ害ヲ受クル者ノ權利ニ關係スルコトヲ要ス
(箕作委員)
執行文提示ト云フノハ「コンマンドマン」デスカ
(栗塚委員)
ソウデス突然執行スル特ニ見セテ猶豫ヲ與ヘント云フノガ今度訴訟法デ出來マシタカラ
(箕作委員)
之ハ訴訟法デ宜シウ御座イマスカ
(松岡委員)
宜シウ御座イマシヨウ
(栗塚委員)
只執行文提示デ分ルカ分ランカト云フノデス
(箕作委員)
召喚又ハ任意出席ト云フハ
(栗塚委員)
勸解所ノ喚ビ出スカ又ハ喚バレンデモ勸解ニ出テ來タカデス
(松岡委員)
末項ハシタ人ガ其ノ所有者カ何カデナケレバナラント云フノダロウ
(栗塚委員)
人其人ニ對シテ時效ガ經過スルデ御座イマス
本條ハ原按ニ決ス
第千四百四十七條朗讀ス
第千四百四十七條 本訴ト支訴ト反訴トヲ問ハス裁判上ノ請求ハ時效ヲ中斷ス但其請求カ方式ニ於テ無效タリ又ハ管轄違ノ裁判所ニ之ヲ爲シタルトキモ亦同シ
然レトモ右但書ノ場合ニ於テ中斷ハ初ノ請求ヲ棄却セシ判決アリタル時ヨリ一ケ月內ニ更ニ合式ナル召喚ヲ爲サヽルニ於テハ之ヲ不成立ト見做ス
(村田委員)
支訴ト云フノハ初メテ出マシタネ
(松岡委員)
本訴附帶訴トシテ貰ヒタイ
(栗塚委員)
請求ノトキハ附帶ノ請求ト云ヒ訴ノトキハ支訴ノ方ガ宜シウ御座イマシヨウ
(松岡委員)
訴訟法ニモ附帶トナツテ居ル
(栗塚委員)
ソレデハ附帶トシテモ宜シウ御座イマス
(元尾崎委員)
二項ヲ削リタイ
(松岡委員)
二項ノコトデ注意ヲ請ヒタイノハ佛蘭西ノハ召喚ヲ裁判官ノ手ヲ經ズシテ執行吏ニ召喚狀デヤルノガ訴訟ノ起シ方デアル訴訟法ハ裁判所ヘ書面ヲ出セバ訴訟ノ提起ニナル訴訟ノ提起ハ今日出セバ今日ニナル召喚ハ四五日過ギル樣ニナル其權利ヲ主張スル人ガ損ニナルソレデ之ハ訴ノ提起トハ出來マセンガ「一ケ月内ニ更ニ訴ノ提起ヲ爲ササルトキハ」トシタラ良カロウ
(大尾崎委員)
ソレガ良カロウ
(南部委員)
ソレガ宜シイ
(淸岡委員)
削ルモ良イ樣ダガ向或ハ管轄違ヒヘ持ツテ來テ呉レソウデナイトキハ一寸近イ所ニ持ツテ來テ訴ヘル樣ニナルト時效ガ役ニ立タン樣ニナル
(元尾崎委員)
時效ヲ妨ゲル積リナレバ管外ヘ出シテモ宜シイ時效ハ止ムヲ得ナイコトデ到底利窟カラ云フトコウ云フコトハナイ筈ノモノダ百年經ツテモ債權ハ債權ダ併モ古クナルト譯ガ分ラナクナルカラ時效ヲ置クノダ其レヲ以テ一ツノ證據トスルノハ良クナイ
(栗塚委員)
免ガレザルト云フ推定ニ過ギナイ
(元尾崎委員)
ソレダカラ何カ忘レテ居ナイト云フコトガアレバ中斷スルトシナケレバナラン
(松岡委員)
管轄違ヒハ先日マデハ住居ガ長崎デアツタヤツデ見ルト東京ヘ移ツテ行衞ガ知レントキ一ケ月内ニシナケレバナラント云フノダガ隨分難義ナ話ダ
(箕作委員)
佛蘭西ハ尾崎サンノ說ノ樣ニナツテ居ルノヲ「ボアソナード」ガ折衷シテ來タノダ
(松岡委員)
一ケ月ヲモウ少シ長ク伸ベラレナイカ
(栗塚委員)
六ケ月位ニナスツテハ如何デス
(南部委員)
訴訟法ニハ本訴ト云フ字ハアルガ支訴ト云フ字ハナイト云フコトデ御座イマス
(委員長)
附帶ノ訴トスルカ
(松岡委員)
訴訟法ニハ附帶ノ請求ノ訴トアリマス
本條ハ左ノ如ク改ム第一項「支訴」ヲ「附帶ノ訴」ト改ム第二項「一ケ月」ヲ「二ケ月」ト改メ「更ニ合式ナル召喚ヲ爲ササル」ヲ「訴ノ提起ヲ爲ササル」ト改ム
第千四百四十八條朗讀ス
第千四百四十八條 中斷ハ左ノ場合ニ於テモ亦之レヲ不成立ト見做ス
第一 請求カ其基本ニ於テ棄却セラレタルトキ
第二 原吿カ取下ヲ爲シタルトキ
第三 訴訟カ民事訴訟法ニ定メタル時間其手續ヲ中止シタルニ因リテ無效ナリト宣言セラレタルトキ
(栗塚委員)
宣言ハ宣吿トナリマス
(箕作委員)
之ハ訴訟法ニ在リマスカ
(松岡委員)
アリマセン
(元尾崎委員)
之ハ當リ前ノ話シダ
(栗塚委員)
佛蘭西訴訟法第三百九十七條第三百九十八條第三百九十九條第四百條第四百一條ニ在リマス
(箕作委員)
民事訴訟法ニ定メタル期間ト云ヘマスカ
(松岡委員)
言ヘマセン
(委員長)
訴權ハドウシマスカ
(箕作委員)
訴權ハ民法ニアリマスカラ宜シウ御座リマシヨウ
(委員長)
佛蘭西ノ訴訟法ニハ手續ハ消ユルケレドモ訴權ハ存シテ居ルト云フコトガ明カニアル
(栗塚委員)
佛蘭西訴訟法ノ中間判決ノ十五條ニハ中間判決ヲ命ジテ期限ヲ定メテ四ケ月ノ問ヲ立ツト無效ニナツテ仕舞フ
(松岡委員)
佛蘭西ノハ訴ヘヲ出シテ手續ヲシナイデ三年立ツト消ヘテ仕舞ガ日本デハドウシマスカ
(今村信委員)
訴訟法デハ一ケ年往ク積リデス百七十五條ニアリマス兎ニ角一ケ年立テバイケナイ精神デ御座イマス
(委員長)
ソンナラ今村サン調ベテ貰ヒマシヨウ
(箕作委員)
ソレガアレバ此儘デ宜シイ
本條第三ハ訴訟法ノ取調迄未定
第千四百四十九條朗讀ス
第千四百四十九條 裁判上ノ請求ヨリ生スル中斷ハ訴訟ノ起頭ヨリ其判決ノ確定ト爲ルマテ繼續ス
(松岡委員)
之モ起頭ハ提起トスレバ宜シイ
(淸岡委員)
中斷ハ繼續スト云フノハオカシイ
(箕作委員)
中斷シツツアルト云フノデス
本條「起頭」ヲ「提起」ト改ム
第千四百五十條朗讀ス
第千四百五十條 勸解上ノ召喚又ハ任意出席ニ困ル時效ノ中斷ハ勸解ヲ要セサル場合ニ於テモ亦生ス
時效ノ中斷ハ勸解上ノ主タル請求ト同シク其反對ノ請求ヨリ生ス
召喚ノ無效ハ方式ノ瑕疵ニ因ルモ管轄違ニ因ルモ中斷ヲ妨ケス但初ノ召喚ノ無效トナリタルヨリ一ケ月內ニ更ニ合式ノ召喚ヲ爲スコトヲ要ス
合式ノ召喚ノ上勸解不調ノ場合及ヒ被吿ノ欠席ノ場合ニ於テ中斷ハ一ケ月內ニ裁判上ノ請求ヲ爲サヽルトキハ之ヲ不成立ト看做ス
(栗塚委員)
之モ一ケ月ハ二ケ月ニシナケレバナリマセンカ
(村田委員)
二ケ月ニシナケレバナランダロウ
(松岡委員)
今度ノ訴訟法ニ勸解ヲ要スルト云フコトハアリマセン
(淸岡委員)
勸解ヲ要セザルト云フノハ元譯ハ豫式ヲ要セザルトアル
(栗塚委員)
豫式デ御座リマス訴訟法ニ往ク前ニ豫メ勸解ヲ經テ來イト云フノデアリマスカラ
(委員長)
訴訟法ハ勸解ノコトハ言フテナイカ
(南部委員)
勸解ヲ必ラズシナケレバナラント云フ事件ハ言フテアリマセン治安裁判所ノ處ニ裁判官ガ勸解ヲスルト云フコトガアル
(箕作委員)
勸解ヲ要スル場合ト要セザル場合トアリマスカ
(松岡委員)
ソレハアリマセン
(箕作委員)
ソレデハ勸解上ノ召喚ト云フコトハ入ランダロウ
(松岡委員)
元トハ和解手續ヲ一節トシテ設ケテ置イタガ今度ハ勸解手續ヲ別ニシナケレバナランカラ三百七十八條ハ和解ヲ試ミル丈ケニシタトアリマス
(箕作委員)
詰リ一項ハ入ランコトニナル
(南部委員)
一項ト二項ト續ケズ宜シイ
(箕作委員)
召喚ダノ任意出席ナドト云フコトハ入ランダロウ
(元尾崎委員)
請求ヨリ生ズルト云フコトガアルカラ勸解上ト云フコトガ必要ニナル
(松岡委員)
獨乙ノハ勸解人ハ民事訴訟ニ付テ勸解ハ財產要求權ニ付テ双方又ハ一方ノ申立ニ因テ之ヲ爲ストアリマス
(南部委員)
ソレハ勸解員ダロウ
(委員長)
其時ハ勸解吏ダロウ
(淸岡委員)
此處ヘ來テ見ルト前ニ二ケ月トシタノハ良クナイ此處ハドウシテモ一ケ月トシナケレバナラン
(箕作委員)
前ヲ二ケ月トシテモ此處ハ一ケ月デ宜シイ
(南部委員)
「時效ノ中斷ハ主タル請求ハ勿論其反對ノ請求ヨリモ生ス」ト致シマシヨウ
(栗塚委員)
ソレデ宜シウ御座イマシヨウ
(松岡委員)
此二項、三項ト止メタラ宜カロウ勸解ノ召喚サヘアレバ宜シイコトニシタラ宜カロウ
(南部委員)
中斷ヲ妨ケズダカラ宜シイ
(栗塚委員)
併シ二人デ往カナケレバナラントカ出タ時ハ何ニカ云フトカ云フコトガアリマシヨウ
(箕作委員)
ソレデハ勸解ハ無方式デヤリマスカ
(委員長)
先逹テ地方官ニ間フタ處ガ先キニナレバ宜シイカロウガ未ダイケナイト云フコトデアリマシタ中ニハ隨分ヤツテ見マシヨウト云フ處モアル名譽官トナツテ無給デヤルト云フコトハドウシテモイケナイ何ニカヤツテ貰ハナケレバナラン少シ金ヲ取ルコトニナルト治安裁判所デヤルモ變ハツタコトハナイカラ皆ナガ進ンデ來テ地方ノ衞生委員ナドハ無給デヤル樣ニナレバ之レガ出來ル樣ニナルダロウト思ヒマス其中人民ガ望ンデ來レバ勸解吏員ノ規則丈ケ發布シテヤルト云フモ丈ケニヤラセルト云フコトニシタラ良カロウト思ヒマス
(箕作委員)
今日ノ治安裁判所デモ幾ラカ方式ガアリマシヨウ
(栗塚委員)
ソレハアリマス
(松岡委員)
ソレデハ急ギマシヨウ
本條第一項、第二項ヲ併セテ一項ト爲シ左ノ如ク改ム
勸解上ノ召喚又ハ任意出席ニ因ル時效ノ中斷ハ主タル請求ハ勿論其反對ノ請求ヨリモ生ス
于時正午休憩
午後一時開會
(松岡委員)
第千四百四十八條ノ第三ノ訴訟法ノ第百八十八條ニアリマス
(箕作委員)
併シ訴訟法ハ無效ナリト宣吿スルト云フコトハナイカラ之ハ「其手續ヲ休止シタルトキ」トシテ置ケバ宜シイ
(松岡委員)
二ノ方ヘ入レテモ宜シイ
(南部委員)
二ト三トハ違イマスカラ休止シタルトキデ宜シイ
第千四百四十八條ノ第三ハ左ノ如ク改ム
訴訟カ民事訴訟法ニ定メタル時間其手續ヲ休止シタルトキ
第千四百五十一條朗讀ス
第千四百五十一條 執行文提示ヨリ生スル中斷ハ一ケ年內ニ差押ヲ爲サヽルトキハ之ヲ不成立ト看做ス
方式ノ瑕疵ニ因ル執行文提示ノ無效ハ時效ヲ中斷スルコトヲ妨ケス但催吿ヨリ生スル中斷ノ爲メ下ニ定メタル條件ヲ履行スルコトヲ要ス
(村田委員)
佛蘭西ノ樣ニ要決書ヲ遣レバ宜シイ
(松岡委員)
執行文ヲ示スノハ差押ヲスルトキダカラ之ハ言ハン方ガ宜カロウ執行文ヲ下付セラルルトキニ異議ノアル時分ハドウ斯ウト云フコトガアリマス
(栗塚委員)
差押ニ入ツテ此通リノ執行文デ差押タト云フテ置イテ其カラ一年計リ捨テ置イタ時ト見レバ宜シイ
(南部委員)
餘計ナ話シダト云フ丈ケノコトダ執行吏ガ執行文ヲ示シタトキハ債務者ガ金ヲ拂ヒマシヨウト云フコトヲ執行吏ガ其ヲ許與シテ遲クナツタコトハナシトモ言ヘン
(松岡委員)
執行文ヲ示シタトキ其方式ガ缺ケテ居ルトカ云フコトデアリマシヨウ
(村田委員)
其ハ別ダ
(松岡委員)
差押ニ着手スルニハ執行力ノ生ジタルノダカラ前ノハ中斷サレテ居ル
(箕作委員)
千四百五十三條ニ「差押ヨリ生スル中斷ハ其差押ノ手續カ合式ニ其終結マテ繼結シタルニ非サレハ其效力ヲ存續セス」トアルカラ同ジコトニナリハセンカ
(松岡委員)
此條ハ催吿バカリニスレバ宜シイ
(南部委員)
併シ二項ハ宜シイデ御座イマシヨウ
(村田委員)
一項丈ケ刪ルガ宜シイ
(委員長)
刪ルガ宜シイ併シ冒頭方式ノ瑕疵ニ因ルト云フノハ變ダ
(栗塚委員)
「執行文提示ヨリ生スル中斷ハ其方式ノ瑕疵ニ因リ提示ノ無效ナルトキト雖モ尙ホ繼續ス」ト云フ樣ナコトデス
(南部委員)
中斷ハ方式ノ瑕疵ニ因リ其提示ノ無效ナルトキト雖モ尙ホ生ズ
(元尾崎委員)
生ズル中斷ハ尙ホ生ズト云フコトハナイ尙ホ成立スガ宜シイ
(委員長)
尙ホ成立ストスルカ
本條ハ左ノ如ク改ム
執行文提示ヨリ生スル中斷ハ方式ノ瑕疵ニ因リ其提示ノ無效ナルトキト雖モ尙ホ成立ス(但以下原案ノ通リ)
第千四百五十二條朗讀ス
第千四百五十二條 義務履行ノ催吿ハ義務ノ目的及ヒ原因ヲ明カニ指示シ且六ケ月內ニ裁判上又ハ勸解上ノ請求ヲ爲シタルトキニ非サレハ時效ヲ中斷セス
第千二百七十四條ニ記載シタル如ク抵當ノ不動產ヲ委棄スルヤ債務ヲ辨濟スルヤニ付キ其第三所持者ニ爲シタル催吿ハ之ニ對シテ抵當消滅ノ時效ヲ中斷ス
(南部委員)
抵當ノ不動產ト云フ「ノ」處ハ削ツテアルダロウ
(栗塚委員)
抵當不動產デ宜シウ御座リマシヨウ
(松岡委員)
催吿ノ手續ハ訴訟法ニナイカラ之モ定メナケレバナランカ
(箕作委員)
催吿ヲシテカラ六ケ月内ニ請求ヲ爲スト云フコトハ一向訴訟法ニ影響ヲ及ボサンダロウ
(南部委員)
左樣デス
(松岡委員)
附遲滯ノ方ハ私ノ手紙デモ認メタモノガアレバ宜シイガ之モソウハイカン
(南部委員)
其レハ宜カロウ
本條ハ「抵當ノ」トアル「ノ」ノ字ヲ削ル
第千四百五十三條朗讀ス
第千四百五十三條 差押及ヒ拂渡差押ヨリ生スル中斷ハ其差押ノ手續カ合式ニ其終結マテ繼續シタルニ非サレハ其效力ヲ存續セス
假差押ハ六ケ月內ニ執行文提示差押又ハ裁判上若クハ勸解上ノ請求ヲ爲シタルニ非サレハ時效ヲ中斷セス
時效ノ益ヲ受クル者ニ對シテ差押ヲ爲サヽルトキハ其差押ハ此者ニ之ヲ吿知シタル後ニ非サレハ之ニ對シテ中斷ノ效力ヲ有セス
(栗塚委員)
一項ハ元ト原文ニ御座イマス但書ヲ削除致シマシタノト
(松岡委員)
此場合ニモ中斷其者モ繼續ストアリマス
(栗塚委員)
ソレカラ削ツタ保存ト繼續トヲ合ハセテ存續ト致シマシタ
(松岡委員)
之ハ差押ニハ出來マセンカ
(栗塚委員)
次ノ項デ執行文提示ハ削ツテ宜シウ御座イマシヨウ
(松岡委員)
一項ハ差押ヘタモノガ幾日間ニ訴ヘナケレバナラント云フ其意味ヲ云ツタノダロウ
(南部委員)
ソウデハナイ差押手續ガ繼續シナケレバナラン中斷シテハイカント云フ意味丈ケデス貴君ノ云フノハ二項デス
(栗塚委員)
假着押ヲスレバ六ケ月内ニ訴ヘナケレバナラント云フコト一ア御座リマス
(箕作委員)
一項ノ拂渡差押ヲ削ツテハドウデス
(松岡委員)
六ケ月内ト云フノハ「定ムヘキ期間内ニ」トシテハドウダロウ訴訟法ニハ相當ノ期間内トアル
(箕作委員)
訴訟法ニ假差押ヲシテソレカラ本差押ヲドノ位ノ間ニシナケレバナラント云フコトハアリマセンカ
(松岡委員)
アリマセン假差押ヲスレバ裁判所ガ定メル期間内ニ訴ヲ起サナケレバイケナイト云フ丈ケニシテ置ケバ宜シウ御座イマシヨウ「假差押ハ裁判所ノ定メタル期間内ニ訴ヲ起シタルニ非サレハ時效ヲ中斷セス」トシテ置ケバ宜シイ
(南部委員)
假差押ハ相當ノ期間内ニ裁判所ニ請求シタルニ非ザレバ時效ヲ中斷セズ
(松岡委員)
裁判所ノ定メタル期間内ニ訴ヲ起スニ非レバ
(南部委員)
裁判上ノ請求ヲ爲シタルニ非ザレバ
(箕作委員)
裁判上ノ請求ガ宜シイ
(栗塚委員)
一項ハ差押ヨリト致シマス
本條第一項「及ヒ拂渡差押」ノ六字ヲ削ル
第二項左ノ如ク改ム
假差押ハ裁判所ノ定メタル期間内ニ裁判上ノ請求ヲ爲シタルニ非サレハ時效ヲ中斷セス
第千四百五十四條朗讀ス
第千四百五十四條 任意ノ追認ヨリ生スル時效ノ中斷ハ裁判上ヨリ又ハ口頭タルト書面タルトヲ問ハス裁判外ノ行爲ヨリ生スルコトヲ得
裁判上ノ追認ハ自發ナルコト有リ又ハ判事ノ訊問ヨリ生スルコト有リ
(松岡委員)
二項ハ削ロウ三百六十一條ニアルカラ宜シイ
(栗塚委員)
彼レハ自白ヲ論ズル處デ違ヒマス
本條ハ原案ニ決ス
第千四百五十五條朗讀ス
第千四百五十五條 追認ハ明示又ハ默示ナルコトヲ得
占有者カ占有物ニ關スル果實又ハ賠償ノ要求ニ承服スルトキ又ハ此ニ反シテ占有者カ物ニ付キ爲シタル必要若クハ有益ノ費用ノ爲ノ賠償ヲ要求スルトキハ殊ニ取得時效ニ對スル默示ノ追認アリトス
債務者カ利息又ハ債務ノ辨濟ノ請求ニ承服スルトキ又ハ此ニ反シテ債務者カ提供ヲ爲シ若クハ恩惠期間ノ請求ヲ爲ストキハ殊ニ免責時效ニ對スル默示ノ追認アリトス
(箕作委員)
此條ハ時效ヲ中斷ノ處デアリナガラ中斷ノコトガ一向云フテナイ
(南部委員)
因ミニ云ツタノデス
本條ハ原案ニ決ス
第千四百五十六條朗讀ス
第千四百五十六條 眞所有者ノ權利ヲ追認シタル占有者ハ新時效ヲ再ヒ始ムルノ權利ヲ失ハス然レトモ占有者ハ最早其以前ノ善意ノ利益ヲ援用スルコトヲ得ス
若シ其占有者カ容假ノ占有者ト爲リタルトキハ將來ニ向ヒテ時效ノ利益ヲ失フ但第百九十七條ノ二箇ノ場合ノ適用ヲ妨ケス
(村田委員)
百九十七條ノ二箇ト云フノハ第一項二項ノ場合ヲ云フノダロウ
(栗塚委員)
百九十七條ノ場合ト云ツテモ宜シイノデス
(村田委員)
二箇ノ場合ト云フト百九十七條ニ二箇ノ場合トアルカラ其レト思フダロウ
(元尾崎委員)
之ハ一項ニハ適用ハ出來ナイ
(南部委員)
二項三項デス
(箕作委員)
「第二項第三項」トシテハドウデス
(栗塚委員)
「第二項及ヒ第三項ノ場合」ト致シマシヨウ
本條第二項但書ヲ左ノ如ク改ム
但百九十七條第二項及ヒ第三項ノ場合ノ適用ヲ妨ケス
第千四百五十七條朗讀ス
第千四百五十七條 追認ニ因リテ中斷セラレタル免責時效ハ卽時ニ再ヒ進行ス然レトモ其時效ハ最初短期ノモノタリシトキト雖モ將來ニ向ヒテハ長期時效ノ期間ニ從フ
(松岡委員)
中斷シタルトスルカ
(栗塚委員)
中斷シタルデ御座イマス
(村田委員)
之モ「再ヒ」ハ「更ニ」トシナケレバナラナイ
(栗塚委員)
「師時更ニ進行ス」ト致シマス
本條第一項「中斷セラレタル」ヲ「中斷シタルト」改メ「卽時ニ再ヒ」ヲ「卽時更ニ」ト改ム
第千四百五十八條朗讀ス
第千四百五十八條 時效ヲ中斷スル追認ハ自己ノ財產ヲ管理スルノ能力又ハ時效ニ罹ルコト有ル可キ財產ヲ他人ノ爲メニ管理スルノ權力ヲ有スル者ニ於テ之ヲ爲シタルトキハ有效ナリ
然レトモ婦、無能力者又ハ委任者ノ利益ニ於テ不動產ノ取得時效ヲ中斷スル爲メ夫、後見人又ハ代理人ノ爲シタル追認ハ不動產ノ請求ニ承服スル特別權力アルニ非サレハ有效ナラス
(松岡委員)
之ハ「推定セラルル」ト云フ字ヲ入レント分リマセン
(南部委員)
ソレハモウ定マツテ居ル
本條ハ原案ニ決ス
第千四百五十九條朗讀ス
第千四百五十九條 時效ヲ中斷スル追認ノ所爲ニ付キ爭アルトキハ通常ノ證據方法ヲ以テ之ヲ證スルコトヲ得
(栗塚委員)
但各個ノ證據法ニ付キ其複重スベキ條件ヲ遵守スルコトヲ要ストアリマシタガ之ハ無論通常ノ證據方法ヲ以テシテモ一一其條件ヲ守ラナケレバナランカラ削リマシタ
本條ハ原案ニ決ス
第千四百六十條朗讀ス
第千四百六十條 保證連帶及ヒ不可分ノ場合ニ於テ各利害關係人ニ對スル追認其他ノ方法ニ因ル時效中斷ノ效力ハ第千二十七條、第千六十條、第千六十一條、第千八十二條及ヒ第千九十一條ニ於テ之ヲ規定ス
本條ハ原按ニ決ス
于時午後二時二十分閉會