旧民法・法例(明治23年)

法律取調委員会 民法草案再調査案議事筆記 第40回

参考原資料

備考

  • 未校正のテキストデータです.
民法證據篇再調査案第四十回議事筆記
自第千四百十一條至第千四百三十六條
第千四百十一條朗讀ス
第三章 間接證據
第千四百十一條 間接證據ナル推定ハ法律カ直接證據ナキ場合ニ於テ知レタル事實ヨリ知レサル事實ニ自ラ推及シ又ハ裁判官ノ明識ト思慮トニ委スル結果ナリ
 右第一ノ推定ヲ法律上ノ推定ト謂ヒ第二ノ推定ヲ事實ノ推定ト謂フ
(槇村)
法律上ノ推定ハ
(箕作)
法律ガ推定スル
(本多)
民法デハ當事者ト云フ訴訟法デハ原吿被吿ト云ヒマスガ宜シウ御座イマスカ
(箕作)
訴訟法モ當事者デ良カロウカ原吿被吿ト云フノハアルガ當事者ト云フノハ分ラント云フノデ原吿被吿トシテ置イタノデス
(栗塚)
併シ訴訟法モ「バルジー」ト云フノデスカ
(本多)
ソウデス
(南部)
原吿被吿ト云フト原吿被吿双方ガヤル樣ニナル
本條ハ原按ニ決ス
第千四百十二條朗讀ス
第一節 法律上ノ推定
第千四百十二條 法律上ノ推定ニハ其證據力ト其原因トニ從ヒテ左ノ區別アリ
 第一 完全ニシテ公益ニ關スルモノ
 第二 完全ニシテ私益ニ關スルモノ
 第三 單純ナルモノ
本條ハ原案ニ決ス
第千四百十三條朗讀ス
第一款 公益ニ關スル完全ナル法律上ノ推定
第千四百十三條 公益ニ關スル完全ナル法律上ノ推定ハ法律ノ明示シテ定メタル場合及ヒ方法ニ從フニ非サレハ反對ノ證ヲ許サス此推定ハ左ノ如シ
 第一 既判力
 第二 取得又ハ免責ノ時效
(松岡)
免責時效ハ突然時效トシテ仕舞ツタノダ
(槇村)
既判力ハ
(箕作)
既ニ裁判セラレタルモノガデス
(松岡)
被判事物ヨリ分ル
(村田)
公益ニ關スルト云フノハドウ云フコトカラ起ルカ
(栗塚)
裁判シタデモ彼レハ虛ダト云フト公益ニ關スル人ソレカラ三十年モ經テバ彼レノモノダロウト云フノモ公益カラ起ル
(淸岡)
十二條デ完全ニシテ公益ニ關スルモノト云フノヲ今考ヘバ公益ニ關スル完全ナルモノト反對ニシタノハドウ云フ譯デス
(南部)
同ジコトダ
(元尾崎)
平仄ノ其合デ時々換ヘルノモ宜シイ
(箕作)
十二條ヲ公益ニ關スル完全ナルモノトシタラ良カロウ
(淸岡)
其方ガ宜シイ
(南部)
分ランコトハナイ
本條ハ原案ニ決ス
第千四百十四條朗讀ス
第千四百十四條 既判力ハ眞正ト推定セラル
 然レトモ確定ト爲ラサル判決ハ民事訴訟法ニ定メタル方式及ヒ期間ニ於テ之ヲ攻撃スルコトヲ得
(箕作)
民事訴訟法ニ定メタ人ガト云フ「人」ノ字ヲ削リマシタカ
(松岡)
起按者ガ削リマシタ
本條ハ原案ニ決ス
第千四百十五條朗讀ス
第千四百十五條 判決ノ確定ト爲リタルトキハ同一ノ爭ヲ再ヒ訴フルニ於テハ其爭ハ既判力ニ依リテ斥ケラル
(松岡)
一事再理セズト云フ原則ヲ書イタノダガ餘リ直譯ダ
(南部)
之ヲ斥クトスルカ
(松岡)
斥クガ宜シイ
本條「斥ケラル」ヲ「之ヲ斥ク」ト改ム
第千四百十六條朗讀ス
第千四百十六條 請求カ全部又ハ一分ニ付キ公ノ秩序ニ關スルトキハ既判力ニ因ル不受理ノ理由ハ裁判所職權ヲ以テ之ヲ補足スルコトヲ得
 此他ノ場合ニ於テハ利害關係人ヨリ其不受理ノ理由ヲ以テ對抗スルコトヲ要ス
(松岡)
之ハ前條ヲ說イタノダロウカ
(南部)
補足スルコトガ出來ルト云フノデス
(元尾崎)
補足スルト云フノハ
(箕作)
云ハンデモ裁判所ノ方カラヤツテヤル
(南部)
裁判官ガ助ケテヤル
(松岡)
十五條デ斥クト云ツタカラ之ハ云ハンデモ良カロウ
(南部)
此他ノ場合ト云フノガアルカラ必要デス
(松岡)
一事再理セズト云原則ナラ言立ヲ待タンデ良カロウ土臺既判力ノ推定ハ公益ニ關シテ居ルモノト見テ居ルノダ
(元尾崎)
既判力ヲ動カシテ公ノ秩序ニ關スルト云フコトダロウ
(松岡)
公ノ秩序ダカラ私ノ利益ト云フコトハ見ナイデ宜シイ
(大尾崎)
此條ハ止メテ貰ヒタイ
(南部)
双方ガ云ハズシテ裁判官ガ云フノハ公ノ秩序ニ關スルカラ云フノデス所ガ此場合ニハ公ノ秩序ニ關セン分ガアル其時ハ裁判官ガ付ケンデ宜シイ
(栗塚)
帳令バ幼年者ダカラ金ヲ拂ハンデモ宜シイト云フ判決ガアツテ又後デ訴ヘラレテ彼レハ既判力カト云フト幼年者ガ自分デ拂ウト云ヘバ幼年者ノ私益ダカラ拂ハセテモ宜シイ
(南部)
假令バ既ニ此裁判ハ原吿被吿ガ同ジ人デナケレバナラン事柄モ同ジデナケレバナラン前ノ既判力モ何モ被吿カラ云ハンノハ被吿ガ承知シタノト同ジコトダ
(松岡)
ソレヲ前ハ返サンデ宜シイト云ツテ今度ハ返セト云フ裁判ヲシテハ變ダ
(南部)
原吿被吿ガ承諾シテ前ノ裁判ハ不充分ダカラ又裁判シテ貰ウト云ヘバ許シテ宜シイ
(元尾崎)
判決ノ確定シタ訴訟デ又訴ヘラレタ此方ハ扣訴モ上吿モシテ濟ンデ仕舞ツタト云フヲ棄テテ置イタトキハ缺席裁判ヲシナケレバナラン
(淸岡)
一ツノ裁判ヲ與ヘテ原吿被吿共ニ不服ノトキ今一遍裁判ヲヤリ直シテ下サイト云フコトガ出來ルダロウ
(南部)
ソレハ公ノ秩序ニ關スル
(淸岡)
此公ノ秩序ト云フノハ爭フ事柄ガ秩序ニ關スルト云フノデ手續デハナイ
(南部)
請求ノ公ノ秩序ハソウデスガ控訴院デ裁判シテ大審院マデ出タノヲ又再審スルト云フコトハ出來ナイ
(淸岡)
置クナレバ起案者ニデモ質問シテ置クガ宜シイ
(大尾崎)
削ツテ宜シイ
(松岡)
十五條ヲ止メテ仕舞ツテ十六條ヲ置ケバ宜シイガ十五條デ一事再理セズノ原則ガアレバ之ハナクテ宜シイ
(元尾崎)
十七條モ宜シイ
(箕作)
十七條ハ必要デス
(松岡)
十七條ハアツテモ宜シイ
(箕作)
十六條ハ削リマシヨウ
本條ハ削除ニ決ス
第千四百十七條朗讀ス
第千四百十七條 既判力ノ抗辯ヲ以テ新請求ニ對抗スルヲ得ルニハ其請求カ舊請求ニ比較シテ左ノ諸件アルコトヲ要ス
 第一 目的又ハ權利ノ同一ナルコト
 第二 權利ノ原因ノ同一ナルコト
 第三 原吿被吿ノ權利上ノ資格ノ同一ナルコト
(栗塚)
權利ノ原由ハ原因ノ誤リデス
(淸岡)
既判力ノ對抗ヲ以テト云フノハ前條ニ對抗スルコトヲ得トアリ然ルニ前條ヲ削ツテ仕舞ツテ此條ニ對抗スルコトヲ得ト云フノハ具合ハ惡ルイ
本條ハ原案ニ決ス
第千四百十八條朗讀ス
第千四百十八條 新請求ノ目的カ數量ニ付テノミ舊請求ノ目的ト異ナリタルトキハ新請求ノ目的ハ舊請求ニ包含シタルモノト看做サルヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽ丶但舊請求ノ結論ニ依レハ其判事カ此數量ヲ許與スルノ權力ヲ有セシトキニ限ル
(松岡)
百兩ヲ九十兩トデモ云フタトキハモウ濟ンデ居ルノカ
(箕作)
結論ニ依レバト云フノハドウ云フコトダロウ
(松岡)
但書ヲ削リタイ口頭審理ノ方デ結論ト云フコトハ立ツテ居ラン
(南部)
言論終結ト云フコトガアル
(栗塚)
口頭辯論ノトキニ一番仕舞ニ云フノガ「コンクリジヨン」デス原吿ハ被吿ノ申シマスノハ此處々々ニアリマスカラ判決シテ下サイ、被吿ノ方デハ原吿ハ彼云ヒマスガ斯ウデ御座イマスト突キ詰メガ出來ルト云フノデス
(松岡)
舊請求ノ結論ニ依レバト云フノヲ削レバ宜シイ
(村田)
ソウスレバ但ハ無クテモ宜シイ
(栗塚)
請求及ビ答辯ニ依レバト云フノデス
(箕作)
此數量ハ新數量デスカ舊數量デスカ
(栗塚)
舊數量ヲ許與スルノデス
(元尾崎)
之ハ斯ダ
(松岡)
斯ウダロウ
(元尾崎)
若シ始審裁判所ナレバ判事ハ百圓以上モヤレルカラ包含シテ居ツタモノト云ハナケレバナラン
(箕作)
但ヲ削ツテハドウデス別ニ必要ノコトハナイ
(松岡)
削ツテ宜シイ
(栗塚)
判事ニ此權限ガナケレバ困ル
(元尾崎)
矢張新請求ト看做シテヤル
(松岡)
前判事ガ正當ノ管轄ヲ持ツテ居タトキデナケレバ此所ヘ來ラレント云フコトニナリハセンカ
(栗塚)
舊請求ノ判事ハ此新請求ノ數量ヲ許與スル權力ヲ有スルトキニ限ル
(箕作)
包含シタルモノト云フノハ初メハ五十圓デ今度ハ百圓ト云フノモアル初メ百圓デ今度五十圓ト云フコトモアルダロウ
(栗塚)
昔ノ請求ガ少イトキデス
(箕作)
昔ノガ多イトキハ
(栗塚)
ソレハイケマセン
(松岡)
元ト八十圓デ今度五十圓ト云フトキハ五十圓ハ八十圓ノ中這入ツテ裁判ガ濟ンデ仕舞ツタモノト見ル
(栗塚)
但ヲ書イタノモ初メノハ少ナクテ後ノ請求ガ多イトキヲ見テ書イタノデ御座イマス
(箕作)
包含シタルハ入ラナイ
(栗塚)
「但舊請求ニ付イテハ判事カ新請求ノ數量ヲ許與スル權利ヲ有スルトキニ限ル」トナスツテハドウデス
(松岡)
ソレナラ宜シイ
(栗塚)
「舊請求ヲ裁判セシ判事カ」トシマスカ
(松岡)
「舊請求ニ於ケル判事カ新數量ヲ許與スル權力ヲ有スルトキニ限ル」デ宜シイ
(南部)
請求ニ於ケルト云フト判事ガ請求シタ樣ニナル
(元尾崎)
舊請求ヲ裁判セシ判事ガ
(栗塚)
新請求ノ數量ヲ許與スルノ權力ヲ有セシトキニ限ル
(南部)
新數量ヲ許與スルデ良カロウ
(箕作)
原文ニハ判事ガ其數量ヲ正當ト見タナレバ其レヲ許與スルトアル
(松岡)
其レデハ此許與ハ許諾ノ意味ガナケレバナラン
(栗塚)
御尤モデス
(元尾崎)
「新請求ノ數量ヲ正當ナリトスレハ許與スル權力ヲ」トスレバ宜シイ
(南部)
正當ナリトスレバトハ書ケナイ
(元尾崎)
「正當トスルニ於テハ」トシヨウ
(箕作)
ソレデ宜シイ
(栗塚)
新請求ノ數量ヲ正當トスルニ於テハ之ヲ許與スルノ權力ヲ有セシトキニ限ル
本條ハ左ノ如ク改ム
新請求ノ目的カ數量ニ付テノミ舊請求ノ目的ト異ナリタルトキハ新請求ノ目的ハ舊請求ニ包含シタルモノト看做ス但舊請求ヲ裁判セシ判事カ新請求ノ數量ヲ正當トスルニ於テハ之ヲ許與スルノ權力ヲ有セシトキニ限ル
第千四百十九條朗讀ス
第千四百十九條 舊請求カ合意又ハ遺言ノ銷除、廢罷、又ハ解除ヲ目的トシタルトキハ其請求ノ際成立シタルモ原吿ノ知リテ申立テサリシ他ノ原因ハ原吿之ヲ抛棄シタリト推定セラレ更ニ之ヲ新請求ノ原因トシテ用フルコトヲ得ス
 方式ノ瑕疵ニ基因シタル行爲ノ無效ニ於ケル舊請求中ニ申立テサリシ他ノ方式ノ瑕疵ニ付テモ亦同シ
 本條ノ適用ニ於テ銷除又ハ無效ノ訴ノ爲メニハ承諾ノ各種ノ瑕疵及ヒ各種ノ無能力ヲ同性質ノ原因ト看做シ又解除ノ訴ノ爲メニハ合意不履行ノ各種ノ場合ヲ同性質ノ原因ト看做ス
(箕作)
二項ノ無效ニ於ケルト云フノハ其行爲ヲ無效ニシヨウト云フ舊請求ト云フノデスカ
(栗塚)
ソウデス
(松岡)
「行爲ヲ無效トスル舊請求中ニ」トシヨウ
(箕作)
ソレガ宜シイ
(松岡)
三項ハ銷除卽チ無效デハナイカ
(栗塚)
無效ノ訴ノ爲メデ宜シウ御座イマス
(南部)
銷除ノ方ガ元トダロウ
(栗塚)
銷除ノ訴ノ爲メト致シマシヨウ
(元尾崎)
一項ハ請求ノ際成立シタルト云フノハ何ノ成立カ
(南部)
訴ノ原因カラ成立シタトキデス
(松岡)
之ヲ云ツテ跡ヲ云ハントキハ云ハンモノガ無效ニナル「モ」ト云フノハ分ラン
(栗塚)
成立シタリシニト云フノデ御座イマス
(箕作)
知リタルモダロウ成立シテモト云フノダカラ
(松岡)
「成立ノ際成立シタル原因ヲ現ニ知リテ申立サルトキハ」トシタラ良カロウ
(箕作)
知ツテルケレドモ云ハナイヨト云フコトダ
(元尾崎)
他ノ賠償ノ原因トカ何トカ云ハント良クナイ
(槇村)
成立シタルハ下ニ係ルノカ
(栗塚)
下ニ係リマス「他ノ」ト入レマシヨウ
(槇村)
成立ノ上ニ他ノ字ヲ入レルガ宜シイ
(栗塚)
他ノ字サヘ入レレバ分リマス
(松岡)
分ルカ知レンガ成立シタルモト云フノハ困ル「他ノ原因ニシテ現ニ申立サルモノハ」トスレバ宜シイ
(村田)
他ノ字ヲ入レル丈ケニシヨウ
(箕作)
其レガ宜シイ
(松岡)
本條ノ適用ニ於テハヲ削ルガ宜シイ頭マニ銷除廢罷トアルカラ入ランダロウ
(南部)
ソレハイケナイ斯ウヤルト外ノ處デモ此通リニ見テ仕舞ウ之ハ此適用丈ケヲ云フノデス
(松岡)
外ヘ持ツテ行キ樣ハナイ
(南部)
ドンナ性質ノモノデモ皆適用ガ出來ル樣ニナル
(大尾崎)
申立ザリシ他ノ原因トシテ訴ノト云フ字ヲ削ツテハドウデス
(栗塚)
矢張リ請求ノ原因ト云フコトガナケレバナラン
(元尾崎)
ナイ方ガ宜シイ
(松岡)
訴ノヲ削ロウ
本條ハ左ノ如ク決ス
第一項「訴ノ」ヲ「他ノ」ト改ム第二項「行爲ノ無效ニ於ケル」ヲ「行爲ヲ無效トスル」ト改ム第三項「又ハ無效」ノ四字ヲ削ル
第千四百二十條朗讀ス
第千四百二十條 既判力ハ判決ノ式文ニ附着スルノミナラス判決ノ理由カ主張シタル權利ノ原因又ハ其原因ノ欠缺ニ出ツルトキハ其理由ニモ亦附着ス
(栗塚)
式文ハ主文トナリマス之ハ報吿委員ノ處デハ主文ニ附着スル丈ケデ澤山ダロウト云フ說ガアリマシタ
(松岡)
主文コソ判決ヲ持タセテ宜シイ理由ニ判決ヲ持タシテハ甚ダ惡ルイ
(箕作)
理由ニ判決ノ效力ヲ持タセルト云フノハ大變惡ルイ此條ヲ丸ルデ削ツテハドウデス
(南部)
主文ニノミ附着ス丈ケヲ置キタイ
(今村信)
訴訟法ノ乙四百十三條ニアリマス判決ノ式文ニ附着スルモノト御座イマスカラ御削リヲ願ヒマス
(南部)
アツテモ云フテ置イテ差支ナイ
(栗塚)
判決ノ主文ノミニ存スト致シマシヨウ
(大尾崎)
質問スルカ
(松岡)
質問ニハ及バン
(村田)
十八條ノ看做サルハ看做ストシテハドウダロウ
(栗塚)
看做スデ宜シウ御座イマス
(箕作)
千四百十七條ノ第一ノ目的ノコトヲ十八條デ云ヒ十九條デ原因ヲ云ヒ二十一條デ資格ノコトヲ云フ所ニ元トノ千四百二十九條ハ理由ヲ削リマシタガ理由ヲ削ツテ主文バカリ存シテハ可笑シクハアリマセンカ
(南部)
外ニ入レル所ガアリマセン
(北畠)
千四百十四條ト十五條ノ間ニ入レレバ宜シイ
(箕作)
十五條ノ次ニ置イテ差支ナイ
(栗塚)
之ハ千四百十三條ト千四百十四條ノ間ヘ入レルガ宜シウ御座イマシヨウ
(箕作)
之ハ極大事ノコトダ
(南部)
十三條ハ推定ノ大體ヲ云フ既判力ハ眞正ト云フコトガナケレバナラン槪判力ガ眞正ト推定セラルルノハ大切ノコトダ
(箕作)
目的原因權利上ノ資格ト云フ所ヘ之ヲ入レルノハ可笑シクハナイカ
(北畠)
既判力ヲ濫用シテハナランカラ初メニ入レテ宜シイ
(大尾崎)
十三條ノ次ヘ入レテ宜シイ
(村田)
十四條ヘ入レルコトハ出來マイカ
(松岡)
獨立サセルガ宜シイ
(栗塚)
十三條ノ二トシテ置ケバ宜シウ御座イマシヨウ
本條ハ左ノ如ク修正ノ上第千四百十三條ノ次キヘ「第千四百十三條ノ二」トシテ挿入スルコトニ決ス
既判力ハ判決ノ主文ノミニ存ス
第千四百二十一條朗讀ス
第千四百二十一條 當事者カ或ハ自身ニテ同一ノ資格ヲ以テ既ニ舊訴訟ニ出テタルトキ或ハ舊訴訟ニ於テ其先主若クハ代理人ニ因リテ代表セラレタルトキ或ハ利害關係人ノ結合カ暗ニ相互代理ヲ包含スルトキハ當事者ノ權利上ノ資格ハ同一ナリトス
(箕作)
包含ト云フ字ハ分ラン
(栗塚)
利害關係人間相互代理者タルトキト云フコトデス
(箕作)
相互代理トスベキト云フコトダ
(南部)
暗ント云フ字ハ削ルコトハ出來ナイ
(栗塚)
或ハ利害關係人間暗ニ相互代理タルトキトシテハ如何デス
(箕作)
結合ガ暗ニ相互代理タルトキハデハイケマセンカ
(南部)
ソレデモ宜シイ
本條ハ「相互代理ヲ包含スルトキハ」ヲ「相互代理タルトキハ」ト改ム
第千四百二十二條朗讀ス
第千四百二十二條 刑事裁判所カ犯罪ノ所爲ノ爲メニ要求セシ民事上ノ賠償ニ付キ判決シタル場合ノ外、重罪、輕罪又ハ違警罪ノ判決ハ犯罪ニ附着スル民事上ノ利益ニ付キ既判力ヲ有ス但犯罪所爲ノ眞實、其犯罪ノ性質及ヒ被吿人ノ罪責ニ付テノ裁判ニ關スルモノニ限ル
(栗塚)
但以下ヲ削リマス
(箕作)
外ト云フノハ
(栗塚)
場合ハ勿論其外デモト云フコトデス
(箕作)
場合ノ外ト云フト場合ガ許サン樣ニナルダロウ
(北畠)
場合ハ勿論トスレバ宜シイ
(松岡)
場合ノ外尙ホトスルガ宜シイ
(南部)
尙ホガ宜シイ
(淸岡)
尙ホヨリ勿論ノ方ガ宜シイ
(箕作)
但書ハ削リマスカ
(南部)
入リマセン
(松岡)
附着スル民事上ノ利益ト云フノハ
(栗塚)
附帶スルト云フノハ私訴デス
(松岡)
上ノ方ガ民事ノ附帶ノ私訴カ
(村田)
上ノ方ハ私訴デハナイ損害賠償ダ
(松岡)
事實ナラ賠償ヲ合セテ判決シタトキダロウ其時ハ刑事ニ附帶シテ民事ノ附帶ノ裁判ヲシタトキハ既判力ノ付クハ無論ダロウ
(松岡)
違警罪ノ判決ハ既判力ヲ有スルニ付テ既判力ヲ有スルガナケレバ民事ノ訴ヲ起ストキニ限リテ來ルコトガ出來ル姦通ヲシタト云フコトガアルト姦通ダカラ本當ノ方法ニ違ウト云フ刑事ノ判決ガ民事上ニ持チ出シテ云ヘルト云フノダロウ
(栗塚)
左樣デス
(今村信)
但書ヲ削ラレテハ困リマス
(松岡)
但ガ必要ニナル
(箕作)
ドウ云フコトダロウ
(栗塚)
戶長ガ詐僞ヲ致シマシタト云フ判決ガ定ツテ居レバ其書類ヲ以テデス
(箕作)
被吿ノ罪責ト云フコトデ分リマスカ
(村田)
刑法ニ贓物ノ返還ハ被害者ノ請求ガナケレバ出來ン處ガ贓物ガ現ニ犯人ノ手ニアルトキハ被害者ニ還付スト云フコトガアル
(南部)
但ハ之ヲ削ルト云フノデハナイ元トノ但書ガアルソレヲ削ルト云フノデス
(栗塚)
左樣デス之ハ誤リデス恐入リマス
(元尾崎)
犯罪所爲ノ陳述ト云フノハ
(松岡)
竊盜シタト云フコトガ定マレバ持ツテ行ツタモノハ竊盜デアツタト云フコトガ定マルカラ元戻ストキ證明モ何モ入ラント云フノダ
本條場合ノ外ノ下「尙ホ」ノ二字ヲ加ウ
第千四百二十三條朗讀ス
第二款 私益ニ關スル完全ナル法律上ノ推定
第千四百二十三條 法律上ノ推定ハ法律カ或ル行爲ヲ其規定ニ觸ルヽモノト推定シ定マリタル資格ノ人ノ爲メ之ヲ取消ス場合ニ於テハ私益ニ關スル完全ノモノタリ
 此犯則ノ法律上ノ推定ハ法律ノ明示シテ定メタル場合及ヒ方法ニ從フニ非サレハ反對ノ證ヲ許サス
 然レトモ此推定ハ口頭自白ヲ以テ何時ニテモ之ヲ覆ヘスコトヲ得
(南部)
資格ノ人ト云フ例ガ此處ニ云フテアリマス
(松岡)
前ニ公益ニ關スル法律上ノ推定ハト云フダカラ之モ私益ニ關スル法律上ノ推定ハトヤラナケレバナラン
(南部)
ソレガ良カロウ
(箕作)
ソレデ又終リニ私益ニ關スルト云フノハ良クナイ
(松岡)
成程
(箕作)
私益ニ關スルト云フノハ定義ヲ云ツタノダ前ノ公益ニ關スルト云フノハ定義ガナイノダカラ前トハ違ツタコトガ書イテアル
(松岡)
「法律カ或ル行爲ヲ其規定ニ觸ルルモノト推定シ定マリタル人ノ爲メ之ヲ取消ス場合ニ於テハ」トスレバ宜シイ
(南部)
法律ガ或ル行爲ヲ規定ニ觸ルルモノトシテ何々ノ爲メノモノニハ取消スト云フノデス
(箕作)
醫者ニ遺言ヲシタトキハ無效ト云フ樣ナコトデス資格ノ人ト云フコトハ質問シナイデモ良カロウ
(南部)
資格ト云フコトハ註デモナケレバ分ラン
(村田)
後見人ニ讓渡シタ樣ナ場合ダ
(箕作)
規則ハト云フコトガアルカラソレニ違ヒナイ
(松岡)
此規則ト云フコトハ無クテモ良カロウ
(箕作)
此法律ノ推定デ宜シイ
(松岡)
口頭自白ハ自白バカリデ宜シイ
(南部)
此ハ口頭自白バカリダ
(栗塚)
夫婦ノ間ニ出來タ子ハ子デアルガ其夫ガ二年間他ヘ行ツテ居ルトキ出來タ子カ
(箕作)
ソウデハナイ此規則ト云フテ推定スルノダカラ其例デハ當ラン
(松岡)
法律ガ規定ニ觸ルルトシテ推定スルノダカラ之ハ規則ダ
(栗塚)
始メニ規定ニ觸ルルモノト推定シテハナイ法律ガ行爲ガ效アルベキモノヲ取消ス場合ダロウ
(南部)
ソウデハナイ
(松岡)
頭ノ法律上ノ推定ト云フノガ惡ルイ樣ダ
(南部)
質問中デス
(箕作)
資格ノ人ト云フノハ分ツテ居ルガ二項ガ分ラン
(渡)
ソレデハ留保ニシマスカ
本條第一項資格ノ人ノ爲メハ質問中ニ付未定
第千四百二十四條朗讀ス
第三款 單純ナル法律上ノ推定
第千四百二十四條 前記ノ法律上ノ推定ニ非サルモノハ單純ナル法律上ノ推定ナリ此推定ニ付テハ法律カ明示シテ反對ノ證ヲ留保セサルトキト雖モ總テ之ヲ許ス
 此他反對ノ證ハ前章ニ規定シタル如ク其各固有ナル法式及ヒ條件ヲ以テスルニ非サレハ之ヲ擧クルコトヲ得ス
 又單純ナル法律上ノ推定ハ次條ノ場合ニ於テハ事實ノ推定ヲ以テ之ヲ駁撃スルコトヲ得
(渡)
法律ガ明示シテト云フノハ
(南部)
法律ガ明示シテ留存セントキデモト云フノデス
(渡)
如何ナル場合ニ於テモト云フノダロウ
(南部)
ソウデス
(大尾崎)
如何ナル場合デ良カロウ
(槇村)
前ノ條ニ行爲ト云フコトガアリマスガ行爲デ宜シウ御座イマスカ
(栗塚)
宜シウ御座イマス
(南部)
前條ニ法律ノ明示シテ定メタル場合トアルカラ之ハ法律ガ明示シテ反對ノ證ヲ揭ゲザルトキト雖モトデモスレバ宜シイガ如何ナル場合ト云フノハ良クナイ
(栗塚)
明示シテ反對ノ證ヲ明許セザルトキト雖ドモト致シマシヨウ
(南部)
ソレデ宜シイ
(箕作)
前ノ條ハ佛蘭西ノハ良ク分ル全體第一項ガ違ツテ居マス法律ノ推定ニ基イテ法律ガ或ル所爲ヲ無效ニシタリ或ハ裁判上ノ訴權ガナイト云フトキハ云々但法律デ反對ノ證ヲ留存シタルトキハ別段ダ證文ヲ返シテ仕舞ヘバ義務ハ釋放シタモノト見ル併シナガラ反對ノ證據アルトキハ此限ニ在ラズトアルソレハ詐欺バカリデナイ或ハ地役ノ所ノ互有モ御座イマシヨウソウ云フコトニ廣クナルカラ宜シイガ「ボアソナード」ハ狹クシテ反對ノ證ヲ許サント云フノハ分ラン
(淸岡)
此ト云フノハ何レヲ指スカ
(南部)
反對ノ證ヲ明擧セントキハ許ス此外反野ノ證ヲ擧ゲルノハ前章ノ規定ヲ以テシナケレバナランゾヨト云フノデス
(淸岡)
許スト云フテ此ト云フノハ分ラン
(栗塚)
反對ノ證ニ付テノ規定デアルガ此外ノモ此規定ニ從ウト云フノデス
(箕作)
此他ヲ其他トシタラ良カロウ前ニ云フタコトガ未ダ云ヒ盡サンカラ其上ニ斯ウ云フコトガアルト云フ
(栗塚)
此他ヲ削リマシヨウ
(元尾崎)
皆削ルガ良カロウ
(箕作)
其反對ノ證トヤロウ
(南部)
右反對ノ證ハトスルカ
(松岡)
反對ノ證ヲ許ストスレバ普通ノ法デ許スノダロウ
(南部)
總テ許スケレドモソレヲ擧ゲルニハ前章ノ手續ヲ用ヒナケレバナラン
(松岡)
何處ヲ制限スルカ分ラン
(栗塚)
直接證據デ行クゾヨ推定デハナイゾヨト云フコトデス
(南部)
「規定シタル方式及ヒ條件ヲ以テスルニ非サレハ之ヲ擧クルコトヲ得ス」ト致シマシヨウ
(元尾崎)
ソレデ宜シイ
本條第一項中「明示シテ」ノ四字ヲ削リ「留存」ヲ「明許」ト改ム第二項左ノ如ク改ム
右反對ノ證ハ前章ニ規定シタル方式及ヒ條件ヲ以テスルニ非サレハ之ヲ擧クルコトヲ得ス
第千四百二十五條朗讀ス
第二節 事實ノ推定
第千四百二十五條 法律カ裁判所ニ其決定ノ元素ヲ訴訟ノ事情ニ就キ採取スルコトヲ許ス特別ナル場合ノ外尙ホ裁判所ハ人證ヲ許ス可キ場合ニ於テハ何等ノ直接ノ證ヲモ擧ケサルトキト雖モ事情ヨリ生スル心證ニ從ヒテ爭ヲ決スルコトヲ得
(栗塚)
採取ノ採ノ字ハ手偏ガナイノデ御座イマス採取ハ春野ニ出テ菜ヲ摘ムト云フ字デ御座イマスカラ當リマセント云フコトデ御座イマス
(村田)
手偏ノアル方ガ宜シイ
(松岡)
手偏ノアルノハ俗字ダロウ
(箕作)
元素ト云フ字ハ困ル
(村田)
特別ナル場合ノ例ハ
(栗塚)
存ジマセン聞イテ見マシヨウ
(本多)
訴訟法ニ付テ御決シヲ願ヒマス當事者ト云フ字ハ訴訟法デハ原吿被吿トアリマスガ當事者ト直シテ宜シウ御座イマスカ
(箕作)
贊成
(槇村)
兩方ヲ云フトキデスカ
(本多)
ソウデス
(栗塚)
一方ヲ云フトキハ
(本多)
當事者一方ト致シマス
本條「採取」ヲ「采取」ト改ム
第千四百二十六條朗讀ス
第二部 時效
第一章 時效ノ性質及ヒ適用
第千四百二十六條 時效ハ時ノ效力ト法律ニ定メタル其他ノ條件トヲ以テスル取得又ハ免責ノ法律上ノ推定ナリ但動產ノ瞬間時效ニ關シ第千四百八十一條以下ノ規定ヲ妨ケス
(箕作)
之ハボアソナードノ大持論ダ
本條ハ原按ニ決ス
第千四百二十七條朗讀ス
第千四百二十七條 正當ナル取得又ハ免責ノ推定ハ完全ニシテ公ノ秩序ニ關スルモノトス此推定ハ第千四百九十八條ノ如キ法律ノ定メタル場合及ヒ方法ニ從フニ非サレハ反對ノ證ヲ許サス
(箕作)
千四百九十八條ノ如キト云フノハ
(栗塚)
千四百九十八條ニ規定シタルト云フノデ規定シタル丈ケヲ除イタノデス
(南部)
規定シタル如クト致シマスカ
(委員長)
規定シタル如クト致シマシヨウ
本條「第千四百九十八條ノ如キ」トアルヲ「千四百九十八條ニ規定シタル如キ」ト改ム
第千四百二十八條朗讀ス
第千四百二十八條 取得時效ノ效力ハ占有ノ有益ニ始マリタル日ニ遡ル
 免責時效ノ效力ハ債權者カ其權利ヲ第千四百六十一條以下ニ記載シタル區別ニ從ヒテ行フコトヲ得ヘカリシ日ニ遡ル
(箕作)
區別ニ從ヒテ行フコトヲ得ベカリシト云フノハ
(栗塚)
權利ヲ行フコトヲ得ベカリシ日ニ遡ル其日ハ千四百六十一條以下ニ記載シタル區別ニ從ツテト云フコトデス
(松岡)
前ノハ行フコトヲ缺キタル日ニ遡ル
(箕作)
怠ツタ權利ヲ行フ意ダニト原文ニアリマス
(南部)
怠リト云フ字ヲ除イタノデス
(淸岡)
カラシテ行ハナカツタト云フコトガ見ヘマスカ
本條ハ原案ニ決ス
第千四百二十九條朗讀ス
第千四百二十九條 或ル訴權ノ行使ノ爲メ法律ニ定メタル期間ハ其訴權ノ性質ニ因リテ取得時效又ハ免責時效ノ一般ノ規則ニ從フ但法律カ明示又ハ默示ニテ例外ヲ設ケタル場合ハ此限ニ在ラス
(委員長)
法律ガ默示ニテ例外ヲ定メルト云フノハ可笑シイ
(元尾崎)
訴權ハ行使ノ爲メ定メタル期間カ
(南部)
取得時效ニ這入ルカ免責時效ニナルカ取得時效ノトキハ一般ノ取得時效ノ規則ニ從ヒ免責時效ノトキハ一般ノ免責時效ニ從フ
(箕作)
默示ニテ例外ヲ設ケタル場合ト云フノハドウ云フ例デス
(南部)
之ハ起按者ニ質問中デス
本條ハ原按ニ決ス
第千四百三十條朗讀ス
第千四百三十條 時效ハ總テノ人ヨリ之ヲ援用スルコトヲ得
 又時效ハ總テノ人ニ對シテ進行ス但法律ニ依リ時效停止ノ利益ヲ受ケル人ニ對シテハ此限ニ在ラス
本條ハ原按ニ決ス
第千四百三十一條朗讀ス
第千四百三十一條 總テ融通物ハ時效ニ罹ルコトヲ得但法律上之ニ異ナル規定ヲ設ケタルモノハ此限ニ在ラス
 不融通物ハ時效ニ罹ルコトヲ得ス公有ノ財產ハ動產ト雖モ亦同シ
(栗塚)
二項ノ公有財產ハ削除致シマシテモ宜シカロウト思ヒマス不融通物ノ中ニ公有ノ財產ガ這入ツテ居ルコトハ物ノ區別ノ中ニ公有財產ハ不融通物トスト云フコトガ御座イマスカラ
(箕作)
法律上之ニ異ナルト云フノハ
(栗塚)
特別法デ兵器彈藥ノコトヲ規定スルコトガアリマス其コトデアリマス
(村田)
特別法ニアルナレバ之ハ云ハンデモ宜シイ
(栗塚)
法律ヲ以テ此規定ヲ設ケタルトキハ此限ニ在ラズデ御座イマス
(松岡)
法律上デモ同ジコトダ此法律デナケレバ法律上ト云ハレンコトハナイ
(箕作)
民法ニハアリマセンカ
(栗塚)
御座イマセン佛蘭西デハ不融通物ノ處ニ云フテアリマス
(松岡)
此所ニ於テモ何モアルマイ
(委員長)
二十八條ハ占有權ハ不融通物タリト雖モトアルガ
(村田)
其前ノ條デス
(栗塚)
公有ノ財產ハ不融通物ナリト云フコトハ二十七條ノ終リニ御座イマス
本條第二項「公有ノ財產ハ動產ト雖トモ亦同シ」ヲ削除ス
第千四百三十二條朗讀ス
第千四百三十二條 自己ノ財產ニ付キ又ハ他人ニ對シ行フコトヲ得ル單純ナル權能ハ幾許ノ時期間之ヲ行ハサルモ爲メニ喪失セス但法律、合意又ハ遺言ニ於テ之ニ異ナル定ヲ設ケタル場合ハ此限ニ在ラス
(槇村)
權能ト云フ字ハ分ラン
(栗塚)
地役ノ隣リノ地面ニ穴ヲ開ケテ水ヲ取ツテモ宜シイト云フ處ニ權能ト云フ字ガ使ツテアリマス
(委員長)
他人ニ對シテ何ヲ行フカ分ラン
(栗塚)
行フコトノ出來ル權能デス
(槇村)
權能ハ行ツテモ良シ行ハンデモ良シト云フノカ
(栗塚)
ソウデスドノ位行ハズニ居ツテモ時效ニ係ラン
(淸岡)
併シ物ヲ人ニヤツテ居ツテ三十年經テバ時效ニ係ルダロウ
(南部)
ソレハ權利デ權能デハアリマセン權能ハ權利ヨリ弱ヒト見レバ宜シイ
(委員長)
何ガ得ルカ分ラン
(南部)
地役ノ所ニ他人ノ水口ノ水ヲ取ル權能ガアルトアリマス
(元尾崎)
一方ガ拒ンダラ仕方ガナイ
(委員長)
定メヲ設ケルト云フノハ宜シイカ
(栗塚)
原書ニハ規定トアリマシタガ法定内ノ合意デ規定ダノ遺言ダノト云ヘマセンカラ定メトヤリマシタ
本條ハ原按ニ決ス
第千四百三十三條朗讀ス
第千四百三十三條 判事ハ職權ヲ以テ時效ヨリ生スル訴又ハ抗辯ノ方法ヲ補足スルコトヲ得ス時效ハ其條件ノ成就シタルカ爲メ利益ヲ受クル者ヨリ之ヲ申立ツルコトヲ要ス
(栗塚)
資格ヨリ生ズル方法何ノ方法カナレバ訴ノ方法抗辯ノ方法デス
(南部)
訴若クハ抗辯ノ方法デモ宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第千四百三十四條朗讀ス
第千四百三十四條 時效ヲ援用スルニ利益ヲ有スル當事者ノ總テノ承繼人ハ或ハ原吿ト爲リ或ハ被吿ト爲リ其當事者ノ權ニ基キテ時效ヲ援用スルコトヲ得
 債權者ハ第三百五十九條ニ從ヒテ右ト同一ノ權利ヲ有ス
(元尾崎)
三百五十九條ハ何デス
(南部)
代位訴權デス
(淸岡)
之ハ當事者デハイケンカ
(箕作)
當事者ハ前ノ條ニアリマス
本條ハ原按ニ決ス
第千四百三十五條朗讀ス
第千四百三十五條 時效ハ訴訟中何時ニテモ之ヲ申立ツルコトヲ得又控訴ニ於テモ始メテ之ヲ申立ツルコトヲ得然レトモ上吿ニ於テハ之ヲ申立ツルコトヲ得ス
本條ハ原按ニ決ス
第千四百三十六條朗讀ス
第千四百三十六條 年又ハ月ニ依リテ成就ス可キ時效ハ暦ニ從ヒテ之ヲ算ス
 日ニ依リテ成就ス可キ時效ハ滿二十四時間ヲ一日ト爲シテ之之ヲ算ス
 時效ノ進行ノ始マリタル日又ハ其中斷若クハ停止ノ後再ヒ進行ノ始マリタル日ハ之ヲ算セス
 最後ノ日ハ全ク經過スルコトヲ要ス
(南部)
末項ハ面白イ
(栗塚)
一日ト云ヘバ一日ガ經ツテ仕舞ハナケレバイケンゾヨト云フノデス
(元尾崎)
日本デハ幾日目ト云フト其日ニ來ル
(淸岡)
二十四時間ト云ヘバ前後ノ日ハ全ク經過スルコトヲ要スト云フノハ入ランダロウ
本條ハ原按ニ決ス