民法證據篇再調査案第三十八回議事筆記
自第千三百六十條至第千三百八十五條
明治二十一年十二月十七日午前九時五十分開會
第千三百六十條朗讀ス
第二節 口頭自白
第千三百六十條 一方ノ當事者カ己レニ對シテ權利上ノ結果ヲ生スルコト有ル可キ事實ニ付キ爲セル口頭自白ハ或ハ裁判上ノモノ有リ裁判外ノモノ有リ
(栗塚)
「或ハ」ヲ御削リヲ願ヒマス
(松岡)
起案者ノ意味ハ之レデハ趣向ノ立テ方ガ違ウ樣ダ
(元尾崎)
己レニ對シテ權利上ノ結果ト云フノハ向ウカラ權利ヲ生ズルト云フノダロウガ之デハ自分デ權利ヲ生ズル樣ニナル相手方ニ對シ意義ノ結果ヲ生ズルト云ヘンカ
(箕作)
權利ト云フノダカラ權利義務ヲ生ズルト云フノデ何モ權利バカリデハナイ
(村田)
權利行爲ト同ジコトカ
(栗塚)
ソウデス
(本多)
ソウスルト權利上デハ充分意味ヲ盡シテナイ樣デス
(箕作)
尾崎君ハ權利行爲トスルト云ツテ大變八釜敷ク云ツタ
(今村信)
己レニ對シ權義上ノ結果ト云フノハ一寸分リマセン
(箕作)
口頭自白ハ事實ニ付キ爲セルモノト云フコトハ分ランデス
(松岡)
定義ハ區別ガ一所ニナツテ居ル追認ト自分ト云フモノハ追認ナクト云フノハ此處丈ケハ宜シイ樣ダガ千三百三十四條ノ私署證書ノ處デ又ハ追認ヲ記載シ卽チ自白トナル互ニ何方デ解クノダカ分ラン自白ハ追認ト云フテ追認ハ自白ト云フおはんハ女デ長右衞門ハ男ト云ツテ此度ハ又女ハおはんデ男ハ長右衞門ト云フ樣ナモノダ
(渡)
己レニ不利益ナル事實ト云フト分ルガ己レニ對シテト云フノハ分ラン
(南部)
皆ソウナツテ居ル
(箕作)
追認ニシテ裁判上ノモノ有リ裁判外ノモノ有リトシタラ良カロウ
(松岡)
前ニ追認ハ自白ナリト云フテ此度ハ自白ハ追認ナリト云フノハ惡ルイ
(村田)
自白ハ一方ノ當事者ガ己レニ對シテ不利益ナル事實ヲ認ムル裁判上ノモノ有リ裁判外ノモノ有リトスレバ宜シイ
(北畠)
ソレモ宜シイガ口頭ノ内ニ自白ト云フコトガ籠テ居ル口頭ヨリ自認トスルガ宜シイ此四字ハ同ジコトダ
(村田)
口頭自白ハ證書ノ自白ニ對シテ云フノダカラ前ノハ書面上ノ自白此處ハ口頭上ノ自白ダカラ違ウ自認ガ一番宜シイ
(松岡)
自認ガ宜シイ口デ言ツタコトノ認ムルト言フノダカラ
(南部)
併シ白狀ト云フヨリ自白ガ宜シイ
(元尾崎)
村田君ノ說ガ宜シイ
(南部)
始終己レニ對スルト言ツテアルカラ此處バカリ替ルノハ良クナイ
(村田)
口頭自白ハ一方ノ當事者ガ己レニ對シ不利益ナル事實ヲ自カラ求ムルモノニシテトシタラ良カロウ
(北畠)
ソレガ宜シイ
(栗塚)
五十歩百歩デ御座イマス
(箕作)
事實ノミデハ足ランダロウ權利義務ノ關係ノアル事實デナケレバナランダロウ
(元尾崎)
「法律上不利益ナル事實ヲ自カラ求ムルモノニシテ」ガ宜シイ
(渡)
「當事者カ己レニ不利益ナリ」トスルコトガ出來レバ宜シイガ其レガ出來ナケレバ其レデ宜シイ
(松岡)
自白卽チ追認ト云フノガ分ランノダ
(村田)
法律上ノ事實トハ出來マセンカ
(松岡)
「當事者カ己レニ不利ナル權利上ノ」ガ宜シイ
(栗塚)
其レガ宜シウ御座イマシヨウ
(南部)
「モノニシテ」トハ言ヘン
(松岡)
「モノトス」トスレバ宜シイ
(栗塚)
口頭自白ハ一方ノ當事者ガ己レニ不利ナル權利上ノ結果ヲ生ズルコトアル可キ事實ニ付キ爲スモノナリ其自白ハ裁判上ノモノ有リ裁判外ノモノ有リ
(村田)
千三百三十二條ニ裁判上ノ自白トアツテ之ガ口頭自白トアルノハ惡イ
(粟塚)
次ニ裁判上ノ自白トアリマス
(箕作)
之ハ千三百三十二條ノ方ヲ口頭自白ト直スガ宜シイ
(栗塚)
ソウ致シマシヨウ
本條ハ左ノ如ク決ス
口頭自白ハ一方ノ當事者カ己レニ不利ナル權利上ノ結果ヲ生スルコト有ル可キ事實ニ付キ爲スモノナリ其自白ハ裁判上ノモノモアリ裁判外ノモノモアリ
第千三百六十一條朗讀ス
第一款 裁判上ノ自白
第千三百六十一條 裁判上ノ自白ハ特發ノモノ有リ又ハ民事訴訟法ニ規定シタル本人訊問ニ因リテ爲スモノ有リ
(箕作)
特發ト云フト虎列拉病デモアリソウニナルガ自分ガ好ンデスルノダ
(栗塚)
拷問ノ意味ハ含ンデ居リマセン
(南部)
此處ハ任意ト云フノハ善クナイ
(元尾崎)
任意ガ良シイ
(栗塚)
人カラ言ハレズニ自分カラ言フタノダカラ任意ト云フ意味ハナイ草ガ庭ニ生ヘルノニ任意デ生ヘタノデハナイ
(元尾崎)
植物ニハ任意ハナイ
(栗塚)
ソウ云フ處ニ使フ字ガアレバ宜シイ
(箕作)
特發ト云フト傳染ノ裏ニナル
(元尾崎)
思ハズ知ラズヤツタノデ
(槇村)
任意ガ宜カロウ
(南部)
ソウスルト本人訊問ハ壓制ヲ受ケタ樣ニナル
(箕作)
自發トシテハ何ウダロウ
(元尾崎)
自發ガ宜カロウ
(栗塚)
偶發トモヤツテ見マシヨウ
(松岡)
偶發ヨリ自發ガ宜シイ
本條ハ特發ヲ自發ト改メ
第千三百六十二條朗讀ス
第千三百六十二條 自白ハ其自白ニ繋ル權利ヲ處分スルノ能力ヲ有スル者ニ非サレハ有效ニ之ヲ爲スコトヲ得ス但法律上自白ノ證據ヲ禁シタル事實ニ非サルトキニ限ル
代理人ノ爲シタル自白ハ其管理所爲ニ關スルノ外特別ノ委任ニ依リタルトキニ非サレハ有效ナラス但裁判上ノ代人ノ自白ト其陳述ノ不認ノ方式及ヒ條件ニ關スル民事訴訟法ノ規定ヲ妨ケス
(村田)
自白ノ證據ヲ禁ジタルト云フノハ
(栗塚)
親子デ作リマシタ子デ御座ル之ハ私ノ兄ト拵ヘマシタ子デ御座ルト云フコトハ出來ナイ
(松岡)
訴訟法デモ斯ウデス
(栗塚)
親ハ子ノ爲メニ隱シ子ハ父ノ爲メニ隱スト云フ原則ハ西洋デモ知ツテ居ルト見ヘル
(松岡)
訴訟法ノ三百六十一條ニアル
(箕作)
民事訴訟法ノ規定ヲ妨ゲズト云フノハ宜シウ御座イマスカ
(今村信)
宜シウ御座イマス
(箕作)
訴訟法デハ不認ト云ヒマスカ
(松岡)
不認トハ言ハン取消シト云フ七十一條ニアル
(南部)
條件ノ下ニ「ト」ノ字ガ落チテ居ル
(栗塚)
ソウデス
(箕作)
此不認ハ代人ノ云フタコトヲ本人カラ取消スノダロウ
(南部)
ソウデス
(今村信)
六十八條ニアリマス
(栗塚)
訴訟法モ直セマシヨウ
(本多)
呼戻ト云フ字ガ使ツテアル
(村田)
元トハ廢罷ト使ツテアル
(栗塚)
私生ノ子ナドヲ私ノ子デハ御座リマセント云フ樣ナ處ニ使ヒマス
(松岡)
取消トスレガ宜シイ
(栗塚)
ソレガ宜シウ御座イマス
本條「陳述ノ不認ノ」トアルヲ「陳述取消ノ」ト改メ「條件」ノ下ニ「ト」ノ字ヲ加フ
第千三百六十三條朗讀ス
第千三百六十三條 相手方カ前條ニ從ヒテ爲シタル自白ヲ受諾シ又ハ裁判所ヨリ其證書ヲ與ヘタルトキハ其自白ハ之ヲ爲シタル者ニ對シテ完全ノ證ヲ爲ス然レトモ其自白ハ事實ノ錯誤ノ爲メニ之ヲ言消スコトヲ得
(村田)
「前條ニ從ヒ爲シタル自白ヲ對手方カ受諾シ」ト言ハント對手方ガ前條ニ從フ樣ニナル
(箕作)
自白ヲ對手方ノ受諾シトシタラ良カロウ
(南部)
ソウスルト下ヲ其證書ヲ裁判所ヨリ與ヘタルト言ハナケレバナラン
(松岡)
自カラ錯誤デ言ヒ直スト云フコトハ訴訟法ニハナイ
(今村信)
アリマセン民法ニアルカラ訴訟法デ用ヒテ往キマシヨウ
(元尾崎)
英文デハ裁判所カラ受取ツタ樣ニナル
(南部)
裁判所カラ言ヘバ裁判所カラ與ヘタルデ宜シイ
(松岡)
裁判所ガ權利者ニヤルノダ
(箕作)
註ハ認メタルト譯シテアル自白ヲ裁判所ガ認メテ其證書ヲヤルノデス
(松岡)
之ハ證據保存ノ場合デス
(大尾崎)
證據保存ノ時ハ宜シイガ此ハ證據保存ノ場合デハナイ
(南部)
相手方ノナイトキト言フコトヲ御想像ナサランデハイケマセン
(箕作)
與ヘタルト云フノハ間違イデス認メルデス
(南部)
相手方ヲ下ヘ下ゲ樣
(栗塚)
「相手方ノ受諾シ又ハ其證書ヲ裁判所ヨリ與ヘタルトキハ」ト致シマシヨウ
本條第一項ハ左ノ如ク決ス
前條ニ從ヒテ爲シタル自白ヲ相手方ノ受諾シ又ハ其證書裁判所ヨリ與ヘタルトキハ其自白ハ之ヲ爲シタルモノニ對シテ完全ノ證ヲ爲ス
第千三百六十四條朗讀ス
第千三百六十四條 自白ハ法律ノ錯誤ノ爲メ之ヲ言消スコトヲ得ス
然レトモ相手方ノ權利ノ直接又ハ間接ノ追認ハ之ヲ爲シタル者ヲシテ其權利ノ原因及ヒ存續ヲ爭フノ權能ヲ失ハシメス
(村田)
一項ノ又ハ追認シタルト云フノハ刪リマシタカ
(南部)
修正デ刪リマシタ
(松岡)
卽チ追認シタルト云フ意味ダロウ
(箕作)
ソウデス
(元尾崎)
存續ト云フノハ何ウ云フコトダロウ
(箕作)
追認シタリト雖モ其追認ヲシタルモノハ矢張リ權能ヲ持ツテ居ルト云フコトダカラ現存トシタラ良カロウ
(松岡)
直接間接ヨリ單純ノ追認ガ宜シイ樣デス
(栗塚)
起案者ガ直シテ來タノデス
(村田)
直接間接ヲ刪ツテ居イタラ良カロウ
(箕作)
追認ノ權能ヲ失ハシメズナドト云フ處ハ日本文デ苦シイ處デス
(村田)
間接ト云フノハ分ラン
(栗塚)
縱令誰某ニ斯ウデ御座ルト云フトキ誰某ハ何處ニ居ツテ彼處ニ居レバ誰某ノ子ニ違イナイト云フノデス
(村田)
其レハ直接ダロウ
(栗塚)
其子供ヲ白狀セズニ他ノ事ヲ白狀スレバデス
(松岡)
單純ノ方ガ宜シイ
(栗塚)
ソレナラ單純モ何モ入リマセン相手方ノ權利ノ追認デ良シイノデス
(村田)
直接間接ハナイ方ガ宜シイ
(南部)
分ランデ刪ルノハ良クナイ
(箕作)
幾等モアリソウナコトデス
(栗塚)
暗ニ認メタルト云フコトデス暗ニ他ノ事ヲ認メテモ權利ハ失ハンゾト云フコトデス
(村田)
併シ此場合ヲ聞イテ下サイ
(栗塚)
尙ホ聞イテ見マシヨウ
(元尾崎)
金ヲ借リテ何日ニ返スト云フト間接ノ認メニナルダロウ
(村田)
ソレハ間接デハナイ
(栗塚)
利息ハ直接ダケレドモ元金ハ間接ニナル
本條ハ原案ニ決ス
第千三百六十五條朗讀ス
第千三百六十五條 複雜ナル自白ヲ援用セント欲スル者ハ陳述セラレタル數箇ノ事實ニ關シ其自白ヲ分ツコトヲ得ス卽チ自白ノ效力ヲ全ク毀滅スル事實ハ勿論其效力ヲ制限スル事實ヲモ斥クルコトヲ得ス但是等ノ事實カ主タル事實ノ以前又ハ以後ナルヲ問ハス之ト牽連スルコトヲ要ス
然レトモ主タル事實ヲ變更スル事實ノ主張ハ通常ノ證據方法ヲ以テ之ヲ駁撃スルコトヲ得
(松岡)
追認ハ可分ニナルト云フコトガ訴訟法ニアリマスガ
(今村信)
佛蘭西ノ原則ヲ此處ヘ置イタノデアリマシヨウガ訴訟法ニ原則ガアリマセン
(松岡)
訴訟法デハ分ツノデス佛蘭西ノ學者中ニモ論ガアリマス
(今村信)
訴訟法ニハ分ツトモ分タレントモ何トモ書テアリマセン
(松岡)
借リタト云フコトハ自白ニハ違イナイ返シタト云フコトハ自白デハナイ借リタコトハ認メタケレドモ其レヲ返シタト云フコトハ自白ニナラヌ其レガ是レデハ自白ヲ分ツ可カラズトアル
(南部)
金ヲ借リタケレドモ五十圓借リタト云フ樣ナノガアル其レヲ借リタコトハ眞ダケレドモ百圓貸シタト云フコトハ出來ン
(村田)
例ヘバ被吿ガ私ハ金ヲ借リマシタト云フトキ返シマシタト云フトキ借リタハ良イガ返シマシタト云フコトハ分ツコトガ出來ナイト云フノダ
(松岡)
ソウデスソレハ佛蘭西ノハ金ヲ借リタケレドモ返シタト云フコトハ分タレント云フコトダ處ガ返シタト云フコトハ不利益デハナイ利益ノダ其レヲ分タレント云フノハ何ウ云フコトカ
(南部)
註ニハ村田サンノ言フ樣ニアルガ私ハソウハ解サン
(松岡)
獨乙ハ借リタノハ自白ダガ返シタノハ自白デハ無イト云フノダ
(栗塚)
凡ソ自白ハ自白ヲ爲シタル人ニ對シテ之ヲ用ヒルニ當ツテハ云々ト云フコトガ註ニアリマス
(松岡)
佛蘭西デモ假令バ被吿ガ一ツノ日ニ於テ預リ物ヲシタケレドモソレヲ一ツノ日ニ於テ返シタト云フ、返シタト云フトキハ人間ガ其處ニ居ナイト云フ證據ガ出テ來ルトキハドウスルカ返シタト云フ方ハ己レニ不利ナル事實ヲ自認スルノデハナイ
(栗塚)
ソレデアリマスカラ複雜ナル自白ヲ出シタノデス
(松岡)
ソレハ複雜ト云フ字デハ見ヘナイ之ハ第一ノ問題トシテ證人ニ於テモ借リタト云フコトヲ認メレバ返シタト云フコトヲ認メラレント云フコトハ論理ニ適ハント云フコトハ諸君ガ御認メデ御座イマシヨウ
(淸岡)
千三百六十條デ己レニ對シテト云フコトヲ己レニ不利ナルト云フコトニ直シタガ不利ナルト云フコトハナイダロウ
(箕作)
ソレハ不利ナルコトデス
(大尾崎)
借リタコトハ借リマシタケレドモ返シマシタト自白シタトキハ定義カラ云フト自白ニナランケレドモ一體人ガ御前ニ借リタニ相違ナイケレドモ返シタト云フトキ借リタト云フコトヲ採ツテ返シタト云フコトヲ採ランデ裁判スルコトハ出來ナイ
(淸岡)
ソウ云フ積リデ原按者ガ六十條ニ不利ナルト云フ字ヲ加ヘンノデハナイカ
(南部)
ソレハ一向差支ナイ六十條ハ不利ナルト書イテモ此處ハ複雜デ宜シイ
(元尾崎)
借リタト云フコトハ自白シタ返シタト云フトキ本人ガ居ラントキガアルダロウ其時ハ借リタト云フ丈ケヲ採ルダロウ
(松岡)
其所ニ居ラント云フコトハ云ハレンコトニシナケレバナラン
(大尾崎)
ソレハ返シタト云フコトノ證據ガ擧ラナケレバ借リタト云フコトニ裁判シナケレバナラン
(元尾崎)
ソレダカラ分ツトシナケレバナラン
(箕作)
此自白ヲ不利ノコトトバカリ見テ仕舞ヘバ宜シイ不利ナル自白ナレバ幾ツアツテモ分ツコトハナラント解シテ置ケバ宜シイ
(南部)
ソウデス
(箕作)
佛蘭西ノハ借リタモノハ返シタト云フマデ一所ニ見ルノダガソレハ良クナイ
(南部)
併シ此文ハ一向害ニナラナイ
(栗塚)
起案者ハ松岡サンノ仰シヤル通リニ借リタケレドモ返シタト云フコトハナラン
(箕作)
之ハソウデハアリマセン
(南部)
制限スル事實ヲモ斥ケルコトハナラン
(松岡)
私ハソレハ大變惡ルイト思フ借リタハ自白ダ、返シタハ自白デナイ「ボアソナード」ノ借リタト云フコトヲ返シタト云フノハ全ク毀滅ニナル
(箕作)
毀滅スル事實ハ原文デハ毀滅スル陳述トアル自白ハ不利ナルモノト原則ヲ定メテ置イテ「複雜ナル自白ヲ援用セント欲スルモノハ陳述セラレタル事實ニ關シ其自白ヲ分ツコトヲ得ス」トシテ置イタラ良カロウ
(南部)
但書ハアツテモ宜シイ
(栗塚)
卽チノ說明ヲヤメマシヨウ
(箕作)
卽チガアルカラ主タルモノガ出ルガ削レバ「是等ノ事實カ互ヒニ相牽連スルコトヲ要ス」デ良カロウト思ヒマス
(栗塚)
ソレデ宜シウ御座イマシヨウ
本條第一項左ノ如ク改ム
複雜ナル自白ヲ援用セント欲スルモノハ陳述セラレタル數箇ノ事實ニ關シ其自白ヲ分ツコトヲ得ス但是等ノ事實カ相牽連スルコトヲ要ス
第千三百六十六條朗讀ス
第千三百六十六條 裁判上ノ自白ノ效力ハ裁判所ノ管轄違カ公ノ秩序ニ關セサルモノタルトキハ其管轄違ニ因リテ無效ト爲ラス
反對ノ場合ニ於テハ自白ハ裁判外ノモノトシテノミ有效ナリ
(松岡)
此管轄ハ何ノ管轄ダロウ
(南部)
裁判所ノ管轄デス
(松岡)
公ノ秩序ハ
(南部)
行政裁判ヲ司法裁判デヤツタ樣ナ場合ダロウ
(元尾崎)
公ノ秩序ト云フノハソウ云フコトバカリト云フノハ可笑シイ
(松岡)
二項ノ反對ノ場合ニ於テハト云フノハアルカネ
(南部)
必要デス
(松岡)
府内デハ原被合意デ始審裁判所デ裁判シテ貰ウノヲ區裁判所デヤツテ貰ウコトガ出來マスカ
(栗塚)
出來マス
(箕作)
不動產ノ所在地ノ裁判所ヘ持ツテ行クノダ他ノ裁判所ヘ持ツテ行クノハ公ノ秩序デナイト云フコトガ註ニ書イテアリマス
本條ハ原案ニ決ス
第千三百六十七條朗讀ス
第千三百六十七條 一方ノ當事者カ訴訟事件ノ或ル事實ノ成立ニ付キ陳述ス可キノ求メヲ受ケテ其事實ヲ爭ハサルニ因リテ之ヲ追認シタリト看做ス場合ハ民事訴訟法ニ於テ之ヲ規定ス
(今村信)
構成法ノ百十一條ニアリマス
(松岡)
訴訟法ノ三百六十條ノ方ガ良ク當ル
本條ハ原案ニ決ス
第千三百六十七條朗讀ス
第千三百六十七條第二 一方ノ當事者カ廢疾其他ノ原因ニ由リ語ルコトヲ得スト雖モ書面又ハ容態ヲ以テ裁判所ニ答フルコトヲ得ルニ於テハ裁判上ノ自白ノ規則ヲ之ニ適用ス
(村田)
廢疾ハ語ルコトノ出來ナイ樣ナモノデハナイ
(箕作)
之ハ廢疾ト云フコトデハナイ病氣ト云フコトダロウ
(栗塚)
今迄廢疾ト云フテ來マシタ
(村田)
「カタハ」ト云フコトダ
(元尾崎)
疾病ガ宜シイ
(村田)
刑法ニハ廢篤疾トアル
(槇村)
疾病ガ宜シイ
(栗塚)
之ハ唖ノコトヲ云フノデス
(元尾崎)
唖人其他ノ原因デ宜シイ
(渡)
廢疾ガ宜シイ
(栗塚)
生ナガラノ盲目ハ篤疾デスカ
(村田)
篤疾デス
(南部)
ソレハ刑法ノコトヲ云フノダ
(淸岡)
廢疾ガ宜シイ
本條ハ原按ニ決ス
第千三百六十八條朗讀ス
第二款 裁判外ノ自白
第千三百六十八條 裁判外ノ自白ハ相手方又ハ其代人ノ面前ニ於テ口頭ニテ又ハ是等ノ者ニ送致シ若クハ交付シタル信書若クハ書類ニテ之ヲ爲シタルニ非サレハ其效ヲ有セス
此末ノ場合ノ外口頭ノ自白ヲ受ケ及ヒ證スルノ資格ヲ有スル官廳ニ於テ其自白ヲ爲サヽリシトキハ人證ヲ許ス場合ニ非サレハ證人ヲ以テ之ヲ證スルコトヲ得ス
(元尾崎)
獨語ヲ云ツタ分ニハイカンカ
(渡)
資格ヲ有スル官廰ニ於テト云フノハ
(南部)
行政裁判所デス領事廰ナドモアリマス
(栗塚)
稅關ナドデ此内ニナニガアルト云フ樣ナコトモアル
(槇村)
登記役所ヤ公證人ノ所デ云フタノモアル
(栗塚)
戶長役場區役所
(箕作)
公證人ナドガ這入ルト云フト官廰ト云フ字ハ變ダ
(南部)
身分取扱人ナドモアル今デハ區役所デス
本條ハ原案ニ決ス
第千三百六十九條朗讀ス
第千三百六十九條 裁判上ノ自白ノ有效ナル爲メ要スル能力、其證據力、其言消及ヒ其不可分ニ關スル前數條ノ規定ハ裁判外ノ自白ニ之ヲ適用ス
然レトモ判事ハ十分確實ニシテ明白ナル自白ニ非サレハ之ヲ斟酌スルコトヲ得ス
(栗塚)
十分確實ト云フノハ重言ニナルト云フ說ガアリマシタガ意味ガ違ウト云フコトデ置キマシタ
(南部)
十分ト云フノハ削ツテ良カロウ
(松岡)
ソンナラ明確ナルトシテ仕舞ツテハドウダロウ
(淸岡)
斟酌ト云フノハ可笑シイ
(栗塚)
酌量トスルガ宜シイ
(大尾崎)
採用ガ宜シイ
(栗塚)
採用ガ宜シウ御座イマス
(南部)
千三百五十八條ニ斟酌トアル之ハ採用トシテハ惡ルイ
(元尾崎)
此所モ斟酌トシテ置コウデハナイカ
(箕作)
斟酌ハ確カナモノデアルノヲ輕クスル樣ナ意味ニナルガソウデハナイ勘定ノ内ニ入レント云フノダ
(淸岡)
之ヲ酌入スルコトヲ得ズカ
(松岡)
採用ト云フノハ強スギル
(淸岡)
ソンナラ用ヒルトシタラ良カロウ
(箕作)
算入スルコトヲ得ズカ
(大尾崎)
採用ガ宜シイ
(渡)
原案デ宜シイ
(村田)
採用ガ宜シイ
(大尾崎)
採用ガ多數ダ
本條第二項「十分」ノ二字ヲ削リ「斟酌」ヲ「採用」ト改ム
第千三百七十條朗讀ス
第千三百七十條 前記ノ規定ハ義務ノ全部又ハ一分ノ履行ヲ法律上ニテ其默示ノ自白ト看做ス可キ場合ヲ妨ケス
本條ハ原按ニ決ス
第千三百七十一條朗讀ス
第千三百七十一條 裁判外ノ自白ハ有效ニ之ヲ言消シタリト雖モ相手方ノ利益ニ於テ時效ノ停止ヲ生ス然レトモ時效ハ言消ノ日ヨリ再ヒ進行ス
(村田)
停止ハ中斷ノ樣ダ
(栗塚)
質問中ノ樣デ御座イマス
(箕作)
停止ハ幼者トカ何ントカ無能力ノトキバカリデシヨウ斯ウ云フ自白ヲシタトキ中止ト云フノハ何時カラ何時マデト云フノハ違ヒハセンカ
(栗塚)
中斷ストヤルト具合ガ惡ルイ
(箕作)
註ニモ本當ノ中斷デハナイケレドモ中斷ノ名ヲ書イテ宜シイト書イテアル停止ト云フト具合ガ惡ルイダロウ
(村田)
中止ガ宜シイ
(栗塚)
中斷ト致シマスカ
本條「停止」ノ二字ハ起案者ヘ質問中ニ付キ假リニ「中斷」ト改ム
于時正午休憩
午後一時開會
(栗塚)
第三節ノ裁判外ノ誓ハ皆削ル積リデ御座イマスガ朗讀致シマシヨウ
第三節 裁判外ノ誓
第千三百七十二條朗讀ス
第千三百七十二條 判事ハ如何ナル場合ニ於テモ原吿タルト被吿タルト又主タル者ナルト參加人ナルトヲ問ハス當事者ノ一方ニ對シ其請求又ハ抗辯ニ付テモ又爭ニ係ル利益ノ額ニ付テモ誓ヲ爲サシムルコトヲ得ス
當事者双方モ亦右ノ諸件ニ付キ裁判上ニテ互ニ誓ヲ爲サシムルコトヲ得ス
誓ヲ爲サシムルコトハ裁判外ノモノニシテ下ニ定メタル條件ニ從フ
第千三百七十三條 當事者双方ハ未タ其一方ノ利益ニ於テ何等ノ證據ノ端緖モ成立セサルトキト雖モ爭ヲ豫防シ又ハ之ヲ止マシムル爲メ互ニ裁判外ノ誓ヲ爲サシムルヲ合意スルコトヲ得
此合意ハ和解ノ性質ヲ有シ下ノ變更ヲ以テ第七百五十七條乃至第七百六十二條ノ規定ニ從フ
第千三百七十四條 當事者双方ハ其爭論ノ全部又ハ一分ヲ一方ノ誓ニ因リテ決ス可キコトヲ合意スルニ當リ左ノ諸件ヲ定ムルコトヲ要ス
第一 孰レノ一方ニ對シテ誓ヲ爲サシム可キヤノコト
第二 有的又ハ無的ノ如何ナル事實ニ付キ誓ヲ爲サシム可キヤノコト
第三 如何ナル場所、時期及ヒ何人ノ面前ニ於テ誓ヲ爲ス可キヤノコト
第四 當事者ハ其宗敎ノ神ヲ誠實ナルコトノ證人トシテ誓フ可キヤ將タ單ニ「其名譽又ハ良心ニ依リテ」確言ス可キヤノコト
第千三百七十五條 前記ノ合意ハ爭ノ性質及ヒ輕重カ下ノ第八節ニ從ヒテ人證ヲ許ス可キ場合ニ非サレハ證人ヲ以テ之ヲ證スルコトヲ得ス
誓ヲ爲シタルコト又ハ嚴正ナル確言ヲ爲シタルコト及ヒ其誓又ハ確言ノ合意ニ適合スルコトハ其誓又ハ確言ニ立會フ爲メ當事者ノ召喚シタル各人ノ證ヲ以テ之ヲ證スルコトヲ得
第千三百七十六條 誓ノ求メヲ受ケタル一方ハ同一ノ方式ト同一ノ條件トヲ以テ他ノ一方ニ誓ヲ反求スルコトヲ得
第千三百七十七條 誓ハ相手方ノ一身上ノ事實ニ關シ又ハ相手方ニ關係ナキ事實ヲ相手方ノ自ラ知得スルコトニ關シ且此孰レノ場合ニ於テモ其事實カ爭ノ決定ニ影響ヲ及ホス可キ性質ノモノタルニ非サレハ之ヲ求メ又ハ之ヲ反求スルコトヲ得ス
第千三百七十八條 和解ノ體裁ニテ裁判外ノ誓ヲ提出シ又ハ此ノ和解ヲ承諾シテ誓ヲ反求シタル一方ノ者ハ誓ヲ求メ又ハ之ヲ反求シタル有的又ハ無的ノ事實ヲ追認セサルモノト看做ス但其事實ヲ合式ニテ確言スルコトヲ要ス
其提供ノ承諾アリタルトキ及ヒ誓ノ爲メニ許與シタル期間カ滿了セサル間ハ右一方ノ者ハ其提出ヲ取消スコトヲ得ス
此ニ反シ其提出ヲ承諾シテ誓ヲ爲スコト及ヒ其相手方ニ誓ヲ反求スルコトヲ拒絕スル者ハ右事實ノ眞實ナルコトヲ暗ニ追認シタルモノト看做ス
第千三百七十九條 其提出ノ言消ナキトキハ定マリタル期間ノ滿了後ト雖モ相手方自身ニテ出席シ又ハ特別ノ代人ヲシテ出席セシムルニ於テハ仍ホ誓ヲ爲スコトヲ得
然レトモ相手方ノ不在ハ定マリタル時期ト場所トニ於テ爲シタル誓ノ有效ナルコトヲ妨ケス
第千三百八十條 誓ヲ和解ニ從テ一旦爲シタル上ハ之ヲ求メ又ハ之ヲ反求シタル者ヨリ民事上其虛僞ヲ陳辯スルコトヲ得ス
第千三百八十一條 保證、連帶及ヒ合意上ノ不可分ノ場合ニ在テ種々ノ利害關係人ノ間ニ於ケル裁判外ノ誓ノ效力ハ第千二十八條、第千五十九條、第千六十條、第千六十三條及ヒ第千九十二條ニ於テ之ヲ規定ス
(栗塚)
要スルニ誓ト云フコトガ日本ノ慣習ニアルカト云フト先ハアリマセン弓矢八幡トカ熊野權現トカニ誓ウコトハ今日ハアリマセン元ト神樣ガ怖ロシイトカ云フノデ誓ノ效能ガアルガソレヲ度外ニシテ居ル世ノ中デ御座イマス是レカラ耶蘇教デモ廣マツテ來レバ誓ヒガ入リ用ニナルカ知リマセンガ差モナケレバヤルモノモアリマセンヤツタトキニ此樣ナ效果ヲ與ヘルノハドウ云フモノカ詰リ死文ニナツテ仕舞ウト思ヒマス
(南部)
今一ツノ理由ハ裁判内ノ誓ヲ廢シテ裁判外ノ誓ノミヲ置クト云フ理由ガ少シモアリマセン
(大尾崎)
未ダ裁判外デコンナコトヲスルモノハアリマセン
(淸岡)
裁判上ノ誓ハアリマセンカ
(南部)
起案者ガ削リマシタ
(淸岡)
ドウ云フモノダロウ
(南部)
信用ガナイモノダト云フノデス
(栗塚)
文字ノナイ世ノ中ナレバ入リ用ナノデ文字ノアル世ノ中ニハ入ラント云フノデス
(松岡)
之ハ全回一致デ削ル
第三節裁判外ノ誓ハ悉皆削除スルコトニ決ス
第千三百八十二條朗讀ス
第四節 公正證書
第千三百八十二條 公正證書ハ公吏カ當事者ヨリ證スルコトヲ託セラレタル事實ニ付テノ證言タリ
又官廳ノ代人トシテ事ヲ行フ官吏ノ錄製シタル證書ハ公正ナリ
證書ハ之ヲ受ケタル公吏カ場所、證書ノ性質及ヒ其證書ニ關係スル人トニ付キ管轄ヲ有シ且一時無能力ノ形狀ニ在ラスシテ法律ニ定メタル方式ニ從ヒテ之ヲ作リタルニ非サレハ公正ナラス
公證人及ヒ當事者ノ囑託ニ應ス可キ其他ノ公吏ノ管轄及ヒ其證書ノ方式ハ特別法及ヒ規則ヲ以テ之ヲ定ム
(栗塚)
千三百三十二條ノ宣誓ト云フノモ是レデ削リマス
(松岡)
證書タリト云フノハ可笑シイ
(村田)
「人ト」ト云フ「ト」ノ字ハ入ラナイ
(南部)
「ト」ノ字ハ誤リデ御座イマス
(栗塚)
證言タリハ證言ナリノ誤リデ御座イマス
(村田)
二項ハ「錄製シタルモノハ又公正證書ナリ」トシタラ良カロウ
(松岡)
之ハドウ云フ譯ダロウ
(南部)
官廰ノ代人デ作ツタ知事ノ代人デ作タ樣ナ證書ハ公正證書ト同ジダ
(箕作)
府縣ヲ代表シテ居ル人カ郡長トカ云フ其代表ヲシテ居ルモノヲ代人ト云フノダロウ
(栗塚)
ソウデス知事ノ書イタモノモ公正證書トナルノデス
(元尾崎)
其内ノ屬官ガ縣廰ニ代ツテ書イタノデモ良カロウ
(栗塚)
ソウデス
(淸岡)
コウ云フモノハ公正證書カ
(南部)
私ノ證書デハアリマスマイ
(淸岡)
公正證書ハソンナモノデハナイ
(松岡)
一項ハ公正證書ノ定義ヲ書イタノダロウ官吏ノ職務ニ從ツテ作ツタノハ公正ナリト云フノハ書記ガ作ルトカ警察官ノ作ツタノナレバ宜シイガ官廰ノ代人ト云フノハ餘リ漠然ダロウ
(栗塚)
官廰ヲ代表シテ事ヲ行フ官吏トシテハ如何デス
(村田)
「官吏其職務ヲ以テ錄製シタル證書ハ公正證書ナリ」トシタラ良カロウ
(淸岡)
末項ハ公證人ノ囑託ニ應ズベキトナル
(箕作)
ソウデハナイ公證人ノ管轄ト云フノデス
(南部)
公證人其他當事者ノ囑託ニ應ズベキ管轄トスレバ宜シイ
(栗塚)
ソレデ宜シウ御座イマシヨウ
(松岡)
規期ト云フ字ハ入ランダロウ
(南部)
公證人規則ガアルカラ規則トシタノダロウ
(松岡)
實ハ矢張リ法律ダ
(南部)
特別ノ法律規則トヤツタラ良カロウ
(村田)
特別法丈ケデ宜シイ
(箕作)
二項ノ官廰ノ代人ハドウデス
(南部)
官廰ヲ代表シテ事ヲ行フトスルカ
(淸岡)
ソレデ分ル
(松岡)
佛蘭西ノハ公正證書トハ公ケノ役員ガ作リタルモノヲ云フトアル
(箕作)
佛蘭西ノハ並ミノ官員サンヲ云フノデハナイ
(松岡)
權利アル公ノ役員ガ作ツタト云フノガ良ク意味ヲ盡シテ居ル
(淸岡)
ソレハ官廰ヲ代表スルデ盡シテ居ル
(栗塚)
官吏其職務上錄製シタル證書ハ公正ナリデ御座イマス
(箕作)
起案者ハソウ云フ積リデシヨウ
(栗塚)
知事ヤ郡長ノ作ツタノデ御座イマス
(松岡)
官廰ヲ代表スルト云フノハ不適當ダ
(箕作)
内務大臣ノ錄製シタル證書ハ自分デ作ランケレバ書記官ニヤラセルカ
(栗塚)
ソレデモ内務大臣ノ判ガ押シテナケレバナリマセン假令バ地券ノ如キハ公正證書デス
(松岡)
政府ヨリ別段其爲メニ官吏ヲ置キ其官吏ノ作リタル證書ヲ
(箕作)
原按者ニ聞イテ見タラ良カロウ
(松岡)
知事ト人民ト爭ヒノ起ツタトキ知事ノ作ツタノハ公正證書トナル
(淸岡)
代表スル上ニ作ツタノハ公正證書ニナルダロウ
(松岡)
ソレハイカン縣廰ガ貸シタトカ借リタト云フトキ人ニ向ツテ公正證書トハイカン
(箕作)
餘リ廣ク書キ過ギタノハ良クナイ
(栗塚)
起按者ニ問合セマシヨウ
(箕作)
ソレガ宜シイ
(南部)
佛蘭西ノ千三百十七條ニハ公證人又ハ宮吏ト云フコトハアリマセン布逹布吿ハ公正證書ト云フ
(箕作)
布逹布吿ヲ公正證書ト云フノハ變ダ
(栗塚)
聞イテ見ルコトニ致シマシヨウ
(元尾崎)
一項ニ公吏ガトアリマスガ公證人ガ這入ツテ居ルダロウ終リノ公證人ト別ニナツテ居ルカラ公證人ト公吏ト別ニシテ置ケバ宜シイ
(南部)
末項デ區別スルノダカラ良カロウ
(元尾崎)
前ニ入レヨウ
(栗塚)
入レンデモ分ル併シ入レンカラ公證人ガ這入ンカト云フトソンナモノハナイ
(淸岡)
無論公吏ノ内ニ公證人ガ這入ルカラ宜シイ
(槇村)
證書ハ之ヲ受ケタルト云フノハ
(箕作)
證書ヲ作ルコトデス
(南部)
公吏ガ聞イテ作ルト云フノデス
(栗塚)
證書ハ之ヲ作ル公吏ガト致シマスカ
(淸岡)
證書ハ之ヲ受ケタルト云フト分リマセン
(渡)
作ルトシヨウ
(栗塚)
公正證書ヲ書イテ呉レト云ハレタ人ト云フノデス
(元尾崎)
人民ガ作ルノヲ受ケテ登記シテヤルノデハナイカ
(南部)
ソウデハナイ
(松岡)
終リノ方ニ之ヲ作リタルトアル
(村田)
之ヲ受ケタルト云フノハ無クテモ良カロウ
(淸岡)
削ロウ
(村田)
無能力ノ形狀ト云フノハ
(栗塚)
公證人デモ女房ノ爲メニハ出來ナイト云フノデス
(村田)
一時ト云フノハ
(栗塚)
離縁シテ仕舞ヘバ良イカラ一時デス
(松岡)
一時ト云フト長イ無能力ガ拔ケル樣ニナル
(栗塚)
長イ無能力ハ公證人ニナレマセン
(箕作)
臨時無能力ト云フノダ
本條ハ左ノ如ク決ス
第一項「證言タリ」ヲ「證言ナリ」ト改ム第二項起按者ニ質問スルコトニ決ス第三項「之ヲ受ケタル」ノ六字及ヒ「人トニ付キ」ノ「ト」ノ字ヲ削ル第四項左ノ如ク改ム公證人其他當事者ノ囑託ニ應ス可キ公吏ノ管轄及ヒ其證書ノ方式ハ特別法ヲ以テ之ヲ定ム
第千三百八十三條朗讀ス
第千三百八十三條 前條ニ從ヒテ作リタル證書ハ僞造ノ訴アルマテハ公吏自身ニテ又ハ其面前ニテ爲シタル事實及ヒ申述ニ付キ其吏員ノ總テノ陳述ノ證ヲ爲ス
此證書ハ之ニ記載シタル日附ニ付キ右同一ノ證ヲ爲ス
公吏ノ名ニテ作リ且其署名及ヒ印章ヲ具ヘタル證書ハ僞造ノ訴アルマテハ其吏員ヨリ出テタルモノト推定ス
僞造ノ訴ノ手續ハ民事訴訟法ニ於テ之ヲ規定ス
(箕作)
公吏自身ニテ爲シタル事實カ
(南部)
ソウデス
(栗塚)
自分ガ見タト書イタノト又何時幾日ニ金ハ辨濟シマシタト云フテ來タノトノ區別デス
(箕作)
其吏員ト云フノハ公吏ノコトデスカ
(栗塚)
公吏ノコトデス
(松岡)
自分デ陳述シタノト同ジ證ダト云フノデハ變ダ
(村田)
公吏ガ自ラ陳述シタノト同ジコトダト云フノダ
(淸岡)
總テノ陳述ノ證ヲ爲スト云フノハ分ラン
(今村信)
此條ト次ノ條邊デ僞造ノ訴ト云フ字ヲ偽造ノ主張ト御改正ヲ願ヒマス
(松岡)
中間判決トスルト云ヒマシタガ僞造ノ訴ト云フノハ出來マスカ
(今村信)
出來ル積リデス
(栗塚)
僞造ノ訴ト云フノハ中間判決トハ出來マセンカ
(今村信)
出來マセン訴訟法ノ三百四十八條ヲ御覽ヲ願ヒマス
(元尾崎)
確定ノ日附ヲ削レバ此二項モ削ラナケレバナラン
(栗塚)
ソレデハ僞造申立トスルガ宜シイ
(松岡)
僞造ノ訴ト此儘ニシテ仰モ僞造ノ訴ト云フ佛蘭西ノ民法ノ精神ガ殆ンド訴訟手續ニ因テ出シテ置キナガラ僞造ナドト云フテソウデナカツタトキ罰金ヲ受ケルマデノ手續ガアルカラ中間判決デ僞造トハ認ント云フ丈ケデ置クコトハ出來ナイ只認メナイトキハ認定ガ事ガ濟ムケレドモ今相手方カラ證書ヲ出シテ相手方カラ此方ガ認メナイトキハ證人ノ申立ナリ或ハ驗眞ノ手續ト云フコトハ中間判決デ宜シイケレドモ
(今村信)
其補ハ三百五十二條デ付イテ居リマス此所ヲ主張ト直シテ下サラバ宜シウ御座イマスガソウデナケレバ一節設ケナケレバナリマセン
(南部)
申立トスルガ良カロウ
(村田)
僞造ノ爭位ニシテ置イタラ良カロウ
(箕作)
申立ガ宜シイ
(今村信)
申立トシマシヨウ
(箕作)
面前ニテ爲シタル事實ト云フノハ妙デスガ爲シタル行爲トシタラドウデス
(栗塚)
差支アリマセン
(松岡)
總テノト云フノハ可笑シイ
(箕作)
可笑シイケレドモ直スコトハ出來ナイ
(村田)
總テノヲ削ロウ
(箕作)
公吏ノ殘ラズノ陳述ト云フ丈ケノコトダ
(栗塚)
直チニト云フコトデス
(松岡)
總テヲ削ルガ宜シイ
本條ハ左ノ如ク決ス第一項「僞造ノ訴」トアルヲ「僞造ノ申立」ト改メ「事實」ヲ「行爲」ト改メ「總テノ」ノ三字ヲ削ル第二項ノ確定日附ノ議決マテ未定第三項第四項「訴」ヲ「申立」ト改ム
第千三百八十四條朗讀ス
第千三百八十四條 追認アリタル私署證書ノ證據力ヲ僞造ノ訴ニ因リテ中止スルコトニ關スル第千三百四十八條ノ規定ハ公正證書ニ之ヲ適用ス
主要ノ文言ト直接又ハ間接ノ關係アル各箇ノ說明ニ關スル第千三百四十七條モ亦同シ
(箕作)
「說明」ハイケナイノデハナイカ
(松岡)
文言トスルノダ
(南部)
主要ノ文言ハ主文トナリマス
(松岡)
四十八條ノ規定ト云フノハドウ云フコトカ
(南部)
刑事ニ當レバ中止スルト云フコトデス
(松岡)
ソンナラ入ルマイ中間判決ナラ本題ノ止マツテ居ルノハ當リ前ダカラ
(今村信)
アツテモ牴觸ハ致シマセン
(箕作)
僞造ノ申立ノ中間判決ノアルマデハ停止スルト云フノデス
(南部)
證據力ヲ停止スルト云フコトハ訴訟法ニナイカラ宜シイ
(村田)
各箇ノ文言ト云フ各箇ト云フ字ハ入ランダロウ
(南部)
削ツテモ宜シイ
(箕作)
千三百四十八條ハ刑事裁判所ニ被吿ノ送致アルニ因リ停止セラルルト云フノヲ引イタノデシヨウガ附帶ノ訴訟ハシナクモ申立ノアルトキハ刑事裁判所ヘ持ツテ行カンデモ良カロウ
(栗塚)
罪人ガ出タトキハ民事裁判ヲ停止スルト云フノデス
(村田)
寧ロ條ヲ引カン方ガ宜シイ少シ違ウ樣ダ
(栗塚)
同ジコトデス
(松岡)
僞造申立ノ手續ハ訴訟法ニ因ルトアレバ之ハ無クテモ宜シイ
(南部)
證據力ガ停止スルコトヲ云フダカラ此處モ證據力ヲ停止スルト云フコトハドウシテモ云ハナケレバナラン
(箕作)
「公正證書ノ證據力ハ其僞造ノ申立ニ因リ停止ス」ト云ツテ置ケバ宜シイ
(松岡)
ソレデ宜シイ
(箕作)
ソウスルト二項ハ文言ニ關シテハ第千三百四十七條ヲ適用スト書ケバ宜シイ
(南部)
一項ハ之ヲ停止スガ宜シイ
(栗塚)
二項ハ「文言ニ關シテハ第千三百四十七條ノ規定ヲ適用ス」トナリマス
本條ハ左ノ如ク改ム
公正證書ノ證據力ハ僞造ノ申立ニ因リ之ヲ停止ス主文ト直接又ハ間接ノ關係アル文言ニ關シテハ第千三百四十七條ノ規定ヲ適用ス
第千三百八十五條朗讀ス
第千三百八十五條 證書ニ公正證書トシテ有效ナル爲メ上ニ定メタル條件ノ一ヲ缺クコトアルモ各當事者カ現實ニ之ニ署名シ又ハ捺印シタルトキハ其證書ハ第千三百四十一條及ヒ第千三百四十三條ニ定メタル條件ヲ履行セスト雖モ私署證書トシテ有效ナリ
(渡)
公正證書トシテ有效ナリハ公正證書ニ有效ナリトシタラ良カロウ
(南部)
條件ヲ何ガ書イテ居ルカ
(淸岡)
證書ニ書イテアル
(栗塚)
公正證書ニ其證書トシテ有效ナリト書カナケレバナリマセン
(松岡)
ソンナコトハ云ハンデモ宜シイ
(栗塚)
暇令バ顔ニハ目鼻ガナケレバナラント云フニ顔トシテ必要ノモノハ顔ニ揭ゲテ居ルト云ヘバ分ル
(松岡)
立派ナ顔ト云フノニ目ガ一ツ缺ケテ居ツタナラ粗末ナ顔トナツテ宜シイト云フノダ
(栗塚)
「公正證書ニ其有效ナル爲メ上ニ定メタイ」トスレバ宜シイ
(箕作)
ソレハ可笑シイ原按デ宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
于時午後二時二十分閉會