旧民法・法例(明治23年)

法律取調委員会 民法草案再調査案議事筆記 第37回

参考原資料

備考

  • 未校正のテキストデータです.
民法證據篇再調査按第三十七回議事筆記
自第千三百三十四條至第千三百五十九條
第千三百三十四條朗讀ス
第一款 私署證書
第千三百三十四條 私書證書ハ之ヲ以テ對抗セラルヽ者ニ不利ナル事實ノ陳述又ハ追認ヲ記載シ且其署名及ヒ印章又ハ其一アルハ署名捺印者ノ裁判外ノ自白卽チ證言ヲ成スモノトス
 右同一ノ條件ヲ有スル書狀ハ私署證書ト同一ノ證據力ヲ有ス
(栗塚)
對抗ヲ受ラルモノトアルハ前條デ「私署證書ヲ以テ對抗セラルル」トナリマシタカラ之ヲ直シマス
(松岡)
私署ノ署ノ字ハ印ヲ署名スルノカ名ヲ署名スルノカ
(村田)
兩方這入ル自分デ名ヲ書イテ自分デ判ヲ捺シタコトニナル
(松岡)
處ガ表題ノ處デハ名モ印モアルト見ヘルガ署名及ビ捺印ト云フト署ノ字ノ内ニ印ガ無イ樣ニナル裁判外ノ證書ハ證ト云フ字丈ケデハイケマセンカ
(栗塚)
之ハ未ダ決マリマセン
(松岡)
獨乙文デハ私署證書ハ權利行爲ノ記載シタル完全ナル證據ヲ爲ストアル
(箕作)
之ハ歐文ガ間違ツテハ居マセンカ村田委員) 裁判上ノ自白卽チ證言デハナイカ
(松岡)
土臺文章ニ書イタモノヲ自白證言ト云フノハ理論スギテ分ランノダ
(本多)
自白ハ訴訴法ノ自認ト云フ字ト同ジデ御座イマシヨウ
(栗塚)
自白卽チ自認デス
(元尾崎)
署名捺印シタル私署證書ニ記載シタル事實ノ陳述又ハ追認ハ之ヲ以テ對抗セラルルモノニ對スル卽チ裁判外ノ證言ヲ爲スモノトシタラ良カロウ
(松岡)
自白ト云ヘバ己レニ對スルコトハ出來ン
(栗塚)
己レニ對スルハ入リマセン
(元尾崎)
署名捺印シタル私署證書ニ記載シタル事實又ハ追認ハ之ヲ以テ對抗セラルル自認卽チ裁判外ノ證言ヲ爲スモノトス
(南部)
事實ノ陳述ト追認ヲ以テ
(栗塚)
ソウデハアリマセン證書ヲ以テト云フノデ御座イマシヨウ
(南部)
私署證書ハ署名捺印者ノ自白ト爲ルドレ丈ケコトガ具ハテ居ルカト云ヘバ對抗セラルル方ニ不利ナルコトガ書イテナケレバナラント云フコトハ陳述又ハ追認ハト云フノハ惡ルイ
(箕作)
私署證書ヲ以テトアツテ又私署證書ト云フノハ大變惡ルイ私署證書ハ之ヲ以テ對抗セラルルモノニ不利ナル事實ノ陳述又ハ追認ヲ記載シ且其署名捺印者ノ自白又ハ其一アルトキハ署名捺印者ノ自白卽チ裁判外ノ證言ヲ成スモノトス
(大尾崎)
自白ガ宜シイ
(栗塚)
千三百六十條ニ云ツタトキハ自白ガ宜シイ「捺印者ノ裁判外ノ證言ヲ成スモノトス」デモ宜シイ
(南部)
三十二條ニ人ノ證言ト云フテ來タカラ證言ト云フ字ガ無ケレバナラン自白卽チヲ削レバ宜シイ
(箕作)
自白ト云フコトガ入用ナノデスソレヲ削ルノハ良クナイ
(南部)
裁判外ノ自白トスレバ宜シイ
(栗塚)
ソレデ宜シイ
(南部)
自白ハ自白デ置キマスカ自認トシマスカ
(元尾崎)
自白デ宜シイ
(村田)
自認ガ宜シイ
(松岡)
自白卽チ追認トアル
(淸岡)
裁判外ノ自白ト云フハ良クナイ
(栗塚)
千三百六十八條ニ裁判外ノ自白トアリマスガ宜シウ御座イマスカ
(松岡)
自白ト云フノハ裁判外トアル
第千三百三十五條朗讀ス
第千三百三十五條 自己ノ利益ニ於テ私署證書ヲ有スル者ハ爭ノ生スル前ト雖モ其署名者ナリト主張シ又ハ思考スル者ニ對シテ手跡ヘ署名及ヒ印章ノ追認ヲ請求スルコトヲ得
 署名者ナリト主張セラレタル者ハ或ハ合併シテ或ハ各別ニ其手跡署名又ハ印章ノ眞正ナルコトヲ明確ニ追認シ又ハ否認スルコトヲ得ルノミ
 裁判所ヨリ本條ノ規定ノ口諭ヲ受ケタル者否認ヲ爲サヽルトキハ裁判所ハ其否認セサルモノニ付テハ之ヲ追認シタリト認定スルコトヲ得
(淸岡)
否認ト云フノハ本人ガ否認スルノデ裁判所ガ否認スルノデハナイ
(大尾崎)
否認シ又ハ否認スルコトヲ得ト云フノダ
(村田)
私ハ何トモ言ヒマセント云フノダロウ其時ニハ否認シタモノト見ルト云フノダガ認定スルコトヲ得ルト云フノハ宣言スルト云フノダ
(箕作)
御尤デス宣言スルノデス
(栗塚)
態ト認定トヤツタノデ御座イマスガ裁判所デ斯ウ云フコトコソ認定スルト云フ論デアリマシタ
(南部)
前デモ此字ヲ認定ト致シマシタ
(村田)
宣言ノ方ガ良イ樣ダ認定バカリデハ言渡サンカ知レン
(槇村)
否認ヲ肯ンゼザルト云フノハ可笑シイ
(大尾崎)
默ツテ居ルモノハ行カント云フノダ答ヘナイモノハ追認シタモノト云フノダガ肯ンゼザルト云フノハ分ラン
(箕作)
一項ハドウデス
(元尾崎)
一項ハ分ツテ居ル
(箕作)
思考スルモノト云フノハ分ラン
(栗塚)
署名者ダト思ツタモノデス
(箕作)
其ト云フノハ私署證書ヲ有スルモノガト云フノヲ受ケタノデシヨウ歐文デハ私署證書ヲ有スルモノハ其有スル人ハ所有者ナリト主張シタルト云フコトダ
(栗塚)
其相手方ニシテ證書ニ署名シタルモノデ御座イマス
(松岡)
思考スルモノト云フノハ思考者ダロウ
(南部)
署名者ナリト思考スルデス
(箕作)
其ト云フノハ皆サンガ之ハ私署證書ト仰シヤルデシヨウ
(栗塚)
ソレデモ宜シイ
(元尾崎)
此證文ノ署名者ト考ヘル奴ニ貴樣ノ手跡ダト云フノダカラ六ケ敷イコトハナイ
(松岡)
追認ト云フ字ハ既ニ證書ノ出來タノヲ跡カラ云フノガ追認ダロウ
(栗塚)
認メテ呉レト云フノデ御座イマス
(南部)
四條デ追認デ私署證書ヲ變ヘタソレガ分ランカラ跡カラ追認ヲ求メタ
(松岡)
手跡ト云フノハ
(栗塚)
文字デス
(松岡)
名ヤ印章ハ疑ヒナクモ本文ハ御前ガ書イタノカ書カンカト云フノカ
(南部)
又ハデスカラ署名捺印ガ外ノ人デモ手跡ガ其人ナレバソレニ因テ證據ニナル
(松岡)
署名ト印章ガ確カナレバ手跡ハ入ラン話シダ
(栗塚)
證據ノ端緒ニハナリマス
(淸岡)
末項ガ分ラン
(栗塚)
口諭ヲ受ケタル者ト云フノハ報吿委員デ發明致シマシタ
(箕作)
口諭デモ宜シイ之ヲ心得ルト云フノダカラ
(淸岡)
否認ヲ爲サザルトキトシヨウデハナイカ
(南部)
口諭ヲ受ケルトアルカラ肯ンゼズトシタノデアリマス
(箕作)
全體否認バカリデハナイ否認モ追認モシナイノダカラ爲サザルトスレバ否認モ追認モ爲サザルトキトスレバ宜シイ
(元尾崎)
否認ヲ爲サザルデ宜シイ
(栗塚)
元トハ否認ヲ拒ムトキトアツタノデ御座イマス
(淸岡)
裁判所デ否認ヲ勸メヤセン勸メンノヲ肯ンゼザルト云フノハ惡ルイ
(箕作)
爲サザルトシマシヨウ
(村田)
尙ホ否認ヲ爲サザルトキハトスルガ宜シイ
(南部)
尙ホガ宜シイ
(淸岡)
云フテモ尙ホ否認ヲ爲サザルトナルカラ右ノガ宜シイ
(元尾崎)
右ノデ宜シイ
(松岡)
右ノヲ云ハンデ宜シイ受ケタル者否認ヲ爲サザルトキハ裁判所ハドウスルガ宜シイ
(元尾崎)
其追認セザル部分ニ付テト云フノダ
(南部)
ソウデス
(箕作)
明確ニト云フノヲ削ツテハ何ウダ
(栗塚)
元トハ全部又ハ一分ニ付テハトアツタノヲ削ツタノデ御座イマス
(南部)
否認セザル部分ニ付テハデモ宜シイ
(淸岡)
全部一分ヲ削ルノハ良クナイ部分ニ付キトカナントカ云ハント意ヲ盡サン
(栗塚)
明確ニヲ削ツタ丈ケデ宜シウ御座イマシヨウ
(村田)
「右ノ」ヲ削リマスカ
(箕作)
削ツテモ良カロウ
(松岡)
爲ス旨ハイランダロウ
(箕作)
ソレハ削ツテ良シイ
本條第三項ハ左ノ如ク改ム
裁判所ヨリ本條ノ規定日ノ口諭ヲ受ケタル者否認ヲ爲ササルトキハ裁判所ハ其否認セサルモノニ付テハ之ヲ追認シタリト認定スルコトヲ得
第千三百三十六條朗讀ス
第千三百三十六條 印章ニ關シテハ其印章ヲ提示セラレタル者ハ其印章ノ自己ノ印章ニ相違ナキコトヲ追認スルモ押捺ハ自身又ハ自己ノ許諾ニテ之ヲ爲シタルコトヲ否認スルヲ得但總テノ方法ヲ以テ其證據ヲ供スルコトヲ要ス
 其追認證書ヲ與フル前ニ右ノ異議ヲ留メサリシトキハ其後ニ至リ右ノ抗辯ヲ利唱スルコトヲ得ス
 又其署名又ハ印章ヲ追認シタルトキハ其署名又ハ印章ノ得ラレン手段タル強暴錯誤又ハ詐欺ヲ最早主張スルコトヲ得ス但強暴カ既ニ止ミ又ハ錯誤若クハ詐欺ヲ既ニ發見シ且此事ニ付キ何等ノ異議ヲモ留メサリシトキニ限ル
 異議ヲ留メタルトキハ追認證書ニ之ヲ記ス可シ
(元尾崎)
印章ノ得ラレシハ印章ヲ得ラレシガ良カロウ
(松岡)
元トハ印章ヲトアル後チニ至リ最早ト云フト重言ニナル
(村田)
其後ニ至リテ削リマシヨウ
(栗塚)
其後ニ至ルヲ削ルカ最早ヲ削ルカ
(箕作)
最早ヲ削リマシヨウ
(元尾崎)
印章ヲヘトシヨウデハナイカ
(淸岡)
印章ノデ宜シイ
(南部)
強暴ガ既ニ止ミ詐欺既ニ發見セラルルト云ハンデモ宜シイカ
(栗塚)
宜シウ御座イマシヨウ
本條第二項「最早」ノ二字ヲ削ル
第千三百三十七條朗讀ス
第千三百三十七條 署名者ナリト主張セラレタル者ノ相續人ヘ承繼人又ハ代人ニ對シテ追認ノ請求アリタルトキハ被吿ハ或ハ自己ノ代表スル者ノ署名若クハ印章ヲ知ラサル旨或ハ其使用ノ不確實ナル旨ヲ陳述スルニ止マルコトヲ得
 右ノ相續人承繼人又ハ代人ハ印章ノ不正當ナル押捺又ハ承諾ノ瑕疵ヨリ生スル無效ノ方法ヲ利唱スルノ權利ヲ失ハス但此事ニ關シ異議ヲ留ムルコトヲ怠リタルトキト雖モ又同シ
(南部)
請求ガト云フノハ間違イデ御座イマス
(箕作)
代表ノト云フノハナンデス
(栗塚)
代人デ御座イマス
(村田)
何時デモ代人トナツテ居リマス
(箕作)
「代人」トシヨウ
(村田)
自己ノ代表ハ代理デ良カロウ
(箕作)
之ハ本人カラ代表デナケレバナラン「印章ノ相違ナキヤ」ト云フノハ報吿委員デ入レタノカ
(栗塚)
又ハ現實ニ之ヲ用ヰシヤハ註カラ入レタノデ御座イマス此印ハ私ノ親父ノ印形カ何ツカト云フコトカ又ハ慥ニ用ヰタカ何ツカト云フコトガ註ニアリマス
(箕作)
印章ノ相違ナキヤト云フノハ
(南部)
親父ノ印形ハ私ハ知リマセント云フ署名捺印ノ相違ナキヤ否ヤト云フノハ相違ガアルカナイカ認メガ付カント云フ意味デ御座イマシヨウ
(箕作)
親父ノ印形ハ存ジテ居リマスケレドモ此處ニ書イテアルノハ違ウカ知レマセント言フカラ矢張リ知ラント云フコトダ
(南部)
親父ノ印形ハ何ウ云フ印形カ一向存ジマセント云フノト成程親父ノ印形ハ之デアルカ何ツカト云フコトハ私ニ命ゼラレテモ知リマセント言フノトハ違ガウ
(松岡)
獨乙ノ訴訴法デハ知ラズト云フ陳述ハ通常ノ人間ガ□主カラ出シタコトニ付テ陳述ヲシナケレバナランケレドモ知ラント云フコトハ自分ニ實見シタコトナレバ言ヘル
(箕作)
相違ナキヤト云フコトハアリマスカ
(松岡)
アリマス
(箕作)
報吿委員デ入レタノト別ニ違イハ無イ
(南部)
註ニ云ヘバ良カロウ
(栗塚)
「或ハ其使用ノ不確實ナル旨」ヲデモ宜シイ
(松岡)
ソレハ良カロウ
(箕作)
使用ノ不確實ナルデ良カロウ
(淸岡)
署名ハアルガ使用計リデ宜シイカ
(箕作)
二項ノ右ノ相續人ヘ承繼人ハ此事ニ關シト云フ「此事」ハ下ノ方ヲ承ケルノデスカ
(栗塚)
左樣デス「但此事ニ關シ異議ヲ留ムルコトヲ怠リタルトキト雖トモ亦同シ」デ御座イマス之ハ私ノ誤デ御座イマス
(箕作)
上ノ此字ト言ツテ後チニ利唱スルト云フノヲ承ケルト云フコトハ何ウシテモ讀メン
(松岡)
訴訴法ノ百十一條此事ガ出來テ居ル
(栗塚)
ソレノ適用ト御覽ニナレバ宜シウ御座イマシヨウ
本條ハ左ノ如ク改ム
署名者ナリト主張セラレタル者ノ相續人承繼人又ハ代人ニ對シテ追認ノ請求アリタルトキハ被吿ハ或ハ自己ノ代表スル者ノ署名若クハ印章ヲ知ラサル旨或ハ其使用ノ不確實ナルコトヲ陳述スルニ止マルコトヲ得右ノ相續人承繼人又ハ代表人ハ印章不正當ナル押捺又ハ承諾ノ瑕疵ヨリ生スル無效ノ方法ヲ利唱スルノ權利ヲ失ハス但此事ニ關シ異議ヲ留ムルコトヲ怠リタルトキト雖モ亦同シ
第千三百三十八條朗讀ス
第千三百三十八條 被吿ハ異議ヲ留メスシテ署名又ハ印章ヲ追認シタト雖モ後ニ捺印白紙ノ濫用又ハ署名若クハ印章ノ僞造アリタルコトヲ證スルノ權利ヲ失ハス
 然レトモ捺印白紙ノ濫用ニ付キ異議ヲ留メスシテ追認アリタルトキハ之ヲ知リ其證書ニ依リ善意ニテ約定シタル第三者ニ證書無效ノ方法トシテ此濫用ヲ以テ對抗スルコトヲ得ス
(南部)
「此」「ノ」ハイラン
(淸岡)
捺印白紙デ分リマスカ
(元尾崎)
分ル
(淸岡)
異議ヲ留メズシテト云フノハ其事ヲ云フテ宜カント云フノカ
(南部)
ソウデス
(淸岡)
權ヲ失ハント云ツテ異議ヲ留メント云フトキハ
(松岡)
第三者ニ向ツタトキト云フ丈ケダ
(槇村)
之ヲ知ルト云フノハ
(箕作)
第三者ガ知ツタ時デス
本條第二項ノ「此」「ノ」ノ字ヲ削ル
第千三百三十九條朗讀ス
第千三百三十九條 一人又ハ數人ノ證人カ私署證書ニ加署シ又ハ加印シタルトキ其證人ヲ手跡驗眞ニ召喚スルヲ得ルニ於テハ之ヲ召喚ス可シ
(松岡)
之モ民法ノ證據ノ原則トシテ置カナケレバナランカ
(栗塚)
此條ハ置キタイ積リデアリマス
(箕作)
手跡驗眞ト云フ手續ガ訴訴法ニアリマスカ
(南部)
訴訴法ニ少シ入レマシタ
(委員長)
訴訴法ノ何條デスカ
(今村信)
驗眞ハ三百四十九條、三百五十條デ後座イマス
(松岡)
若シ必要ナラ訴訴法ニ入レタラ良カロウ未ダ民法證據ノ效力ニ關スル原則デ手續ハ訴訴法ニヤリマス
(栗塚)
四十條ニ民事訴訴法ニ定ムトアリマス
(松岡)
併シ手跡驗眞ニ召喚スルヲ得ルニ於テハト云フコトガアルカラ
(栗塚)
併シ之ガ無イト次ギノ條ガ出マセン
(箕作)
訴訟法ニ定メレバ民法ニ重復シテ書カンデモ宜シウ御座イマシヨウ
(松岡)
證據ノ原則トシテ民法ニ載セナケレバナランガ手續ナラバ訴訟法ニ揭ゲナケレバナラン
(栗塚)
佛蘭西ノ千三百二十四條ヲ御覽ヲ願ヒマス當事者自分ノ手跡又ハ調書捺印ヲ虛ト云フトキ又ハ其相續人ガ知リマセント云フトキハ手跡驗眞ノ證據ヲ爲ス其手續ハ訴訟法ニ據ルトアリマス此意味ガ宜シイ
(南部)
之ハ只證人ガ肯ンジタ時分ニ其證人ヲ手跡驗眞ニ呼ブベキ場合ナラ呼ベト云フノダガ違ウ
(箕作)
千三百四十條ノ二項ガアリマス
(南部)
訴訟法ニアルト定マレバ此所ニナリテモ宜シイ
(栗塚)
訴訟法ニ入レルハ大變困リマス
(元尾崎)
民法訴訟法ト矛盾サヘシナケレバ宜シイ
本條原按ニ決ス
第千三百四十條朗讀ス
第千三百四十條 手跡印章又ハ署名ノ驗眞ノ請求ニ關スル方式並ニ期間及ヒ被吿又ハ其代人ノ出席セサルニ因リ是等ノ者ニ於テ印章又ハ署名ヲ追認シタリト爲スコトヲ得ヘキ場合ハ民事訴訟法ニ於テ之ヲ定ム
 署名者ナリト主張セラレタル者ノ明確ニ否認シ又ハ其相續人若クハ承繼人ノ追認ヲ爲サヽル場合ニ於ケル手跡驗眞手續ノ規則ニ付テモ亦同シ
(淸岡)
否認セザル場合デスカ否認シタル場合デスカ
(南部)
否認シル場合デス
(栗塚)
シタル場合デス
(今村信)
期間ト云フ字ヲ御削リナルコトハ出來マスマイカ何ウモ必要デアルマイト思ヒマス訴訟法ニ期間ガ定メテ御座イマセン
(栗塚)
然シ何時ノ間ニ出席シナイト云フトキハ何ウシマス
(南部)
默示ノ證人ト看做シタル場合ニ關シトアル
(栗塚)
訴訟法デハ何ウシテ期間ガ定メテアリマセン
(松岡)
皆ナ裁判期日ダ期日ハアル期日ニ出ナケレバ缺席裁判ニナル
(栗塚)
何日間ニ出テ來イヨウ云フコトハアリマセン
(松岡)
一日ヲ極メテアル
(栗塚)
期日トシテハ如何デス
(松岡)
ソレハ裁判官ガ極メルノダ
(箕作)
期間ヲ削レバ宜シイ
(今村信)
三百五十條ニ此ノ手續ガ御座イマス
(松岡)
追認シタリトスベキ場合ト云フノハ宜シイカ
(南部)
訴訟法ヲ少シ直サナケレバナラン
(委員長)
訴訟法ヘ入レタラ宜シカロウ
(箕作)
全體佛蘭西ノ訴訟法ノ手跡驗眞ノ所ヲ對照シナケレバイケナイ
(今村信)
三百七十三條デ怠ツタモノハ此ノ結果ニナリマス
(栗塚)
若シ削除ニナルナレバ御研究ニナラナケレバナリマセンガ削除ニナランケレバ後チニ研究シテハ如何デスカ
(松岡)
何時デモソレデ困ルカラ定メナケレバナラン訴訟法ノ旨意ニスルト眞否ノ證ハ□ テノ擧證方法及ビ手跡對照ニ因テ爲ストナツテ居ル
(南部)
三百四十八條ハ假定ニナツテ居ル
(松岡)
ドウセ佛蘭西通リニスルカラ見合ナケレバナラン又定ランケレバ訴訟法ヲ左サナケレバナラン「驗眞ヲ請求スル手續ハ民事訴訟法ニ之ヲ規定ス」ト書ケバ宜シイ
(南部)
訴訟法ガ出來テ期間モ何モ這入ルト云フコトガ定ツテ明カニ見タ上デナケレバ削ルコトハ出來ナイ暗々裡ニ牴觸シテ居ツテモ困ル
(委員長)
訴訟法ノ方デ□ □ 書キ樣ガアリソウナモノダ
(松岡)
訴訟法デハ驗眞ハ□ サイ手續デアルカラ別段ニシナイ樣ニ
(淸岡)
之ハ訴訟法デ出來ルカ出來ンカ御詮議ヲ願ツテ此處ハ此儘デ置キマシヨウ
(松岡)
確定サレテハ困ル
(今村信)
此處ヲ今少シ漠然トシテ戴キタイ
(委員長)
此旨意丈ケ除ケテ置クガ宜シイ
(今村信)
假リニ御議定ヲ願ヒマス
(南部)
ソレガ宜シイ
本條ハ訴訟法ノ議定スルマテ未定ニ決ス
第千三百四十一條朗讀ス
第千三百四十一條 雙務契約ヲ證記スル私署證書ハ反對ノ利益ヲ有スル主タル當事者ノ員數ニ應スル正本ヲ作リ且之ニ署名又ハ捺印スルコトヲ要ス
 又各正本ニハ其作リタル正本ノ數ヲ附記スルコトヲ要ス
 然レトモ當事者ハ一通ノミノ證書ヲ作ルコトヲ得但其證書中指定シタル第三者ノ方ニ之ヲ寄託スルコトヲ合意シタルトキニ限ル
 右ノ場合ニ於テ第三者ハ各當事者ノ求メニ應シテ其證書ヲ示サヽル可カラス但總當事者ノ承諾ナクシテ之ヲ交付スルコトヲ得ス
(松岡)
雙務契約ニナルト一本ヲ作ルコトヲ得ルガソレハ第三者ニ預ケルトキニ限ルト云フト平生二本作ラント結果ガ成ラン勿論五十圓以上ダロウ
(南部)
契約ガ成ラン
(松岡)
二通ナイトキハ
(南部)
若シ許スト證書ヲ持ツテ居ルモノノ勝手ノトキニ出ス樣ニナル一方ニ持タセテ一方ニ持タセンデ喧嘩ヲサセルト同ジコトダ
(松岡)
自由ニ任カセタラ公□ ヲ害スカ
(元尾崎)
處ガ今日本ノ普通ノ有樣ハ此樣ナコトハシナイ
(北畠)
之ハ取爲替證書ト云ツテ昔カラアル
(松岡)
我々ハ廣ク知ランガ他ノ開ケタ國々ニ之ガ多イカ
(箕作)
□ ニ伊太利ノ法典阿蘭陀法典ハシナイ白早□ ニモナイ甚ダ嘆息スベキデアルトアル
(松岡)
保護ノ□ カラ可成持タセヨウト云フナラ宜シイカ
(南部)
今ノ訴訟法手續トハ違ウト云フコトヲ知ラナケレバナリマセン今デハ制限ト云フモノハナイ五十圓以上ノ取引ニハ證書ガナケレバナラント云フコトハナイガ此通リ五十圓以上ハ證書ガナケレバナラント云フト一方ハ證文ヲ一持ツテ出ルコトヲ許シテ置クト一方ノモノ丈ケノ權利ガ出來テ利益ノトキバカリ證文ヲ出ス樣ニナツテ公平ヲ得ナイソレヲ雙方防□ スルニハ二通作ラナケレバナラン
(本田)
之ガ定マレバ訴訟法ニ影響ヲ及ボシマス三百三十二條ニハ相手方ノ手中ニ存スルモノヲ主張スルトキハ云々トアリマスカラ
(南部)
ソレハ別ノ話デス之ガ無クナツテモ□ □ ノ場合ニハ矢張リアル牴觸ハシナイ
(村田)
賣買交換抔ハアリソウナモノダ
(栗塚)
アルノガ惡ルイノデハナイ好マシイコトデアル併シ法律ガ二通アルコトヲ要スト云ハナケレバナランガ
(南部)
ソウスレバ五十圓以下ハ證書ガ無クモ宜シイト云フコトヲ定メルニハ及バン樣ニナル
(村田)
双務契約ト云フト兩方無ケレバナラン
(松岡)
獨乙ハ
(本多)
獨乙デハソンナコトハ構ヒマセン
(委員長)
獨乙ノ新民法ハドウナツテ居ルカ
(栗塚)
獨乙ハ契約ノ性質ニ因テ證書ヲ作ルゴトキモノハドウコトトアツテ悉シクアリマセン
(大尾崎)
之ハ至極尤モデハナイカ
(松岡)
河モ云ハンデ置ケバ確ニシヨウト云フ人ハ銘々證書ヲ持ツ
(箕作)
白耳義ニモ元トハアツタガ此度ノ新民法デ毀ハシタ
(松岡)
人間ノ契約シテ居ルコトハ九分九厘双務ノコトガ多イソシテ人間ノ數丈ケ正本ヲ作ラナケレバナラント云フコトハナイ
(村田)
二通作ルノガ面倒ナラ一通作ツテ第三者ニ預ケテ置ケバ宜シイ
(北畠)
貴君ノ持ツテ居ル證書ハ私ガ持タン爲メニ貴君ガ立タン筈ハナイ
(栗塚)
其代バリ貴君ノ證據ガ立タン
(松岡)
何處ニ斯ウ云フ田ガアルカ
(南部)
双務ノ契約ヲスレバ兩方カラ證書ヲ入レナケレバナランカラ二通作ツテ兩方ガ持ツテ居ルト云フノハ動カス可カラザルコトダ
(松岡)
五人アレバ五通作ラナケレバナラン
(南部)
主タル當事者ダカラ一人々々デハナイ
(村田)
貴君ノ方ガ五人デ此方ガ一方ナラ二通デ宜シイ
(松岡)
三人ナラ三通ダロウ
(栗塚)
ソウデハアリマセン反對ガ一ツデ御座イマスカラニ通デ宜シイ佛蘭西デハ當事者ノ數丈ケ作ルガソレニハ及バン反對ノ利益ヲ有スルモノ丈ケデ宜シイ
(委員長)
要スト云ツテモ無效ニナリハセンカ
(栗塚)
ソレハ無效ニハナリマセン
(南部)
五十圓ニ超過シタルモノハ必ラズ證書ヲ要スルト書イタト同ジコトデ御座イマス
(委員長)
可シト書イテモ要スト書イテモ同ジコトダ
(南部)
ソウデス一方ノモノガ權利ト義務ト二ツ持ツテ居ルカラ兩方一通宛持ツテ居ルノハ動カン道理ダ
(渡)
佛蘭西ハ無形ノ合意ヲ包含シタル私ノ證書ハ別ノ二個ハ同一ノ利害ヲ有スル
(栗塚)
佛蘭西デモソレヲ止メタト註ニアリマス
(村田)
只銘々ニヤラン丈ケガ宜シイ
(委員長)
一歩退イテ英吉利ノ樣ニスルト妙ニナル止メレバ何モナシニシナケレバナラン英吉利ノハ可成二通作ルノガ宜シイ若シ一通ナレバ行ツテ見ルガ宜シイト云フノダカラ良クナイ
(松岡)
云ハズニ置イテ自然ニ任カセルガ宜シイ
(栗塚)
ソウスレバ民法ヲ廢サナケレバナリマセン
(淸岡)
原案デ宜シイ
(大尾崎)
原案デ宜シイ
(箕作)
原案ガ多數ダ
(委員長)
原按者ガ多ケレバ原案ニシヨウガ「要ス」ハ「可シ」トシテモ宜シイ
(栗塚)
同ジコトデ御座イマス
(委員長)
ソレデハ原案ニ決シマス
本條ハ原案ニ決ス
第千三百四十二條朗讀ス
第千三百四十二條 正本數通ノ證書ノ錄製及ヒ其數ノ附記又ハ此ニ代ハル證書ノ寄託ハ當事者カ合意ノ組成ヲ繋ラシメタル條件ト看做ス
 然レトモ前條ニ從ヒテ證書ノ錄製アラサリシ契約ノ全部又ハ一分ヲ履行シタル當事者ハ最早條件ノ不履行ヲ利唱スルコトヲ得ス
(栗塚)
事柄ハ宜シイガ文字ガ穩カデナイ組成ヲ繋ラシメタルト云フノハ惡ルイト云フ論ガ出マシタ
(元尾崎)
繋ラシメタルト云フノハ何ウ云フコトカ
(栗塚)
之デ合意ガ成立ト云フノデ御座イマス合意組成ノ條件ト看做ス
(元尾崎)
初メニ約束スレバ自カラ其内ニ籠ツテ居ルト云フノデスカ
(栗塚)
ソウデス
(村田)
「此ニ代ハル」ハ無クテモ良カロウ
(栗塚)
前條ニ云フテアリマスカラ無クテモ宜シウ御座イマス
(槇村)
「此ニ代ハル」ハ入ラン
(元尾崎)
「寄託ハ當事者カ合意ノ條件ト看做ス」トハ出來マセンカ
(栗塚)
合意組成ノ條件ト看做ス
(南部)
此證書ノ錄製ニ係ラシムルコトヲ得ト云フコトガ前ニアツタノデス
本條第一項「此ニ代ハル」ノ五字ヲ削ル
第千三百四十三條朗讀ス
第千三百四十三條 片務契約ヲ明定スル私署證書ニ金錢其他ノ定量物ヲ與ヘ辨濟シ又ハ返還スルノ諾約ヲ包有スル場合ニ於テ債務者又ハ其代人カ證書ノ本文ヲ錄製セサルトキハ債務者ハ其署名若クハ捺印ノ外ニ自筆ニテ金額若クハ數量ヲ記載シ又ハ金額若クハ數量ノ文字ニ捺印スルコトヲ要ス
 然レトモ二名ノ證人ノ加署又ハ加印ヲ以テ右ノ認濟又ハ認諾ニ代フルコトヲ得
 若シ連帶ナルト否トヲ問ハス數人ノ債務者アルトキハ其中ノ一人右ノ方式ニ從フヲ以テ足レリトス
 若シ外國文字ニテ證書ヲ錄製スルトキハ金額又ハ數量ヲ全キ文字ヲ以テ證書ニ記載ス可ク數字ヲ以テ之ヲ記載ス可カラス
(栗塚)
實ハ修正シマシタ文章ヲ一項ニ變ヘテ仕舞ツタノデ原文ニハ斯ウ云フコトハアリマセン二項四項ヲ削ルニ付イテハ一項ヲ斯ウ云フニ修正シタイノデス
(大尾崎)
之ハ入ラン
(南部)
之ハ削ラントイケマセン
(淸岡)
本文ヲ錄製セント云フノカ
(栗塚)
自分ガ書カントキハト云フノデ御座イマス
(淸岡)
本文ヲ錄製セント云フコトデ自分ガ作ラントキト云フコトガ分ルカ知ラン證書ヲ拵ヘントキトホカ見ヘナイ
(元尾崎)
本文ヲ自書セザルトキトスルカ
(村田)
本文ヲ錄製デ分ル
(栗塚)
修正ヲ御定メヲ願ヒマス
(箕作)
削ルガ宜シイカ商法ノモ之レニシタイ日本デ一二三ハ文字デナイカト云フニ文字デス
(栗塚)
日本デモ公正證書ノ一二三四ハ壹貳參肆伍陸漆捌玖拾ト云フ字ヲ書ケト云フコトガアリマス
(南部)
ソウ云フコトハ一切民法ヘ書カンデモ宜シイ
(箕作)
外國文字デ書イタトキハ本當ノ字デ書カナケレバナラント云フノダカラ末項ハアツテモ良カロウ
(淸岡)
外國人ト取引ヲスルトキハコンナコトヲ削ツテハ惡ルイ
(元尾崎)
内國デハ「センサンビヤクヱン」ト假名デ書クノダカラ彼レハ極ク宜シイ
(松岡)
商法ノ方ノ全キ文字ト直スガ宜シイ
(渡)
商法ハ七百十五條ニアル
(南部)
商法ノ手形ノ處ハ最モ必要デアルガ之ハ入ラナイ話ダ
(元尾崎)
之ハ削ツテ宜シイ
(淸岡)
皆削ランデ宜シイ
(南部)
二項ハ無論削ラナケレバナラン
(槇村)
四項ハ置クカ
(箕作)
置クガ宜シイ
(槇村)
日本字デ書クコトガアリマスカ
(南部)
アリマセン
(松岡)
只爲替ノ處デ文字デ書ケト云フバカリダナ
(南部)
ソレハ商法ダ
(元尾崎)
錄製ハ手書トスルガ宜シイ
(松岡)
自書トスルガ宜シイ
(箕作)
代人ガ自分デ證書ノ本文ヲ書カナイトキハト云フノダ
(松岡)
ソレダカラ自書ガ宜シイ
(委員長)
二項ハ削ルカ
(元尾崎)
削ツテ宜シイ末項モ削ロウ
(北畠)
削ルガ宜シイ入レルナレバ日本ノハドウスルト云ハナケレバナラン
(栗塚)
民法ガ出來タ後ニ證文ヘ斯ウ云フ字ヲ書カナケレバナラント云フノハ具合ガ惡イ漆捌ト云フ樣ナ字ヲ書クト困リマス
(元尾崎)
全キ文字ト云フノハ
(箕作)
弗ノ字ヲ書イテ「ドル」ナリトヤツテハイカント云フノダロウ
(栗塚)
ソレモアリマシヨウガ數字デハイカント云フノデス
(元尾崎)
削ルガ宜シイ
(委員長)
多數ダカラ削ルコトニシマシヨウ
本條第二項第四項ハ削除ニ決ス
第千三百四十四條朗讀ス
第千三百四十四條 若シ證書ノ本文ト認濟又ハ認諾トノ間ニ金額又ハ數量ノ差違アルトキハ其證書ノ本文及ヒ認濟又ハ認諾カ共ニ債務者ノ手ニ成レルトキト雖モ義務ハ其內ノ小ナル金額又ハ數量ノ爲メニ非サレハ證明セラレス但其錯誤ノ孰レノ方ニ在ルヤ書面又ハ其他ノ方法ニテ證明セラル場合ハ此限ニ在ラス
(栗塚)
之ハ入リマセンカラ削リマス認定認諾ノ手續ガ止ミマシタカラ入リマセン
(委員長)
削ツテ宜シイカ
(松岡)
削リマス
本條ハ削除ニ決ス
第千三百四十五條朗讀ス
第千三百四十五條 債務者ノ署名又ハ捺印アルノミニテ前條ノ方式ニ從ハサル證書ハ其證書ニ記載シタル金額又ハ數量ニ滿ツルマテ人證ヲ許ス爲メ書面ニ因ル證據端緖トシテ有效タリ
 全キ文字ニテ記載スルノ條件カ必要ナル場合ニ於テ金額ヲ全キ文字ニテ記載セサル證書ニ付テモ亦同シ
 右ノ證書ニ記載シタル義務ヲ全部又ハ一分履行シタル債務者ハ其履行シタル限度ニ於テ最早共義務ヲ爭フコトヲ得ス
(栗塚)
此二項モ削リマス
(松岡)
之ハ全條削ランタイ畢竟裁判官ノ自由ニ任カセテ宜シイ
(渡)
前條ノ方式ニ從ヒト云フノハ
(栗塚)
恰度四十三條ニナリマス
(箕作)
削ツタ積リデ修正シタノカ
(栗塚)
左樣デス
(松岡)
感心ダ
(元尾崎)
脇ニ書キ印ガ拔ケテ居ルト何トカ云フカ
(栗塚)
四十三條ニ人ガ書イタトキハ其處ヘ判ヲ押サナケレバナリマセン自身デ書ケバ押サンデモ宜シイ
(松岡)
裁判官ノ判斷ニ任カセテ貰イタイ
(栗塚)
結末丈ケヲ附ケテ置カナケレバナリマセン
(松岡)
效力ノ厚薄ハ裁判官ニ任カセテ置クカ
(栗塚)
何ノ位ノ效能ガアルカ此手續ニ背イタ證書ノ效力ハ證據端緒ノ效力ガアルノデ御座イマスソレデ御座イマスカラ證人ヲ出スコトガ出來ル
(元尾崎)
金額ノ横ヘ認印ヲ押スノヲ忘レテ其證文バカリデハナラン外ノ證文ヲ出サナケレバナラント云フノハ酷イ
(栗塚)
名ガ書イテアツテモ若シヤ金高ニ間違ヒガアルカ知レンカラ判ヲ押シテ云フノデ御座イマス
(元尾崎)
立派ナ印ヲ押シテアルニ金額ノ處ニ判ヲ押スノヲ忘レテ證據ニナラン別ノモノヲ持ツテ來ナケレバナラント云フコトハナイ
(栗塚)
今日ノ慣習デハ自分デ書イテモ「實正也」ト云フ處ヘ印ヲ押サナケレバナラン
(松岡)
其時ハ押シテナクテモ有ツテモナイト云フ時分ニハ何レカラ證據ヲ擧ゲナケレバナランカト云フト正シイモノデアレバ金額ノ處ニ印ガナイモ適當ノモノトシテアルソレヲ別ニ證明シナケレバナラント云フノハ大變具合ガ惡ルイ
(栗塚)
此證文ヲ私ガ自分デ書イテ自分デ判ヲ押スノト人ガ書イテ自分ガ判ヲ押シタノト同ジト云フコトハナイト思ヒマス
(松岡)
ソウスレバ確カデ間違ハナイカ
(南部)
ソレデハ書面證據ノ處マデ待ツテ御削リヲ願ヒマス
(箕作)
先ヅ削ツテ置クガ宜シイソレデ先キヘ行ツテ感服スルコトガアレバ活カス
(北畠)
削ルガ宜シイ
(村田)
ソレデハ四十三條モ無駄ダ
(栗塚)
四十三條モ不用デス
(委員長)
ソレデハ假削リシマシテ先キヘ行ツテ要用ガアレバ活カスコトニシマシヨウ
本條ハ削除ニ決ス
第千三百四十六條朗讀ス
第千三百四十六條 數通ノ正本及ヒ認濟又ハ認諾ノ方式ハ商人ニ付テハ特ニ商法ニ定メタル場合ニ非サレハ之ヲ要セス
(栗塚)
之ハ寫字ニ間違ガ御座イマス「數通ノ正本及ヒ第千三百四十三條ノ方式ハ商人ニ付イテハ」トナルノデ御座イマス
(箕作)
商法ニハ定メテナイ
(栗塚)
ソレデハ入リマセン
(委員長)
商法ニ定メテナケレバ二通取ランデ宜シイ樣ニナル
(南部)
商人ニ付イテハ之ヲ適用セズデ宜シイ
(箕作)
ソレデモ宜シイ
(松岡)
商事ニトスルガ宜シイ
(委員長)
商事ト云フト廣クナリハセンカ
(南部)
商業デ御座イマス
(栗塚)
商人ノスルコトガデ御座イマス
(松岡)
商法デ支配ヲ受ケルノハ身分ノ如何ニ拘ハラナイ
(元尾崎)
商法ニ付テハデ宜シイ
(委員長)
物ノ賣買抔ハ皆商事ニナル
(南部)
商業ガ宜シイ
(委員長)
一方ガ商人ナラ直グ商事ニナル
(栗塚)
馬喰カラ馬ヲ飼ヘバ商事ニナル
(渡)
商法ニハ商ヒ取引トアル
(南部)
植木屋カラ植木ヲ買ツタノハ商事ニナルガ商業ニハナラン
(栗塚)
商業ニ付テハデ宜シイ
(大尾崎)
商業ガ宜シイ
(松岡)
ソンナラ商人ガ宜シイ
(南部)
商人ガ宜シイ商人ト取引ヲシテ向ウガ商業デ此方ガ商人デナイトキハ
(委員長)
ソレヲ商事ト云フ一人ガ商人デ一人ガ非商人ノトキハ二通作ルガ商人同士ナラ適用セン
(松岡)
商人同士デナケレバ此取除ケニナラント云フ處ガ主ニナリマス商ヲスレバ商法ノ支配ヲ受ケナケレバナラン
(委員長)
商人タルノ取扱ハ受ケハセン
(松岡)
只ノ人デモ一ツノ事デ商取引ヲシテ其拂ガ出來ントキハ破產法ヲ當テラレズト云フノハ事柄ガ商デ御座イマスカラ若シ一人ガ商ヲ共同トシテ一人ガ商ヲ共同シナイデ事柄ガ商ノトキ一方ハ二通作ル一方ハ一通デ宜シイト云フコトニナリマシヨウ
(委員長)
ソウ云フコトハナイ
(南部)
商人ニ付テハトアリマス元トノ通リデ宜シウ御座イマス
(松岡)
商人ノ方カラ二通寄超サンデ此方カラ二通ニシナケレバナラント云フノハ可笑シイ
(南部)
商人ノ方ハ無クテモ差支ナイ
(淸岡)
商人ニ付テハデ宜シイ
(箕作)
註ニ非商人ガ商事ヲヤルコトガアツテモ忙シイコトハナイカラヤルガ宜シイト云フコトガアル
(栗塚)
之ヲ要セズデ宜シウ御座イマシヨウ
本條ハ左ノ如ク改ム
數通ノ正本及ヒ第千三百四十三條ノ方式ハ商人ニ付テハ之ヲ要セス
第千三百四十七條朗讀ス
第千三百四十七條 數前條ノ方式ニ從ヒ錄製シタル私署證書ニシテ其對抗ヲ受クル者ノ追認シ又ハ裁判上ニテ其者カ追認シタリト爲シタルモノハ其主要ノ文言及ヒ之ト直接ノ關係ヲ有シ又ハ之ヲ補足スル文言ニ付テハ其者ニ對シテ完全ナル證トス
 此他ノ文言ハ書面ニ因ル證據端緖ノミニ之ヲ用ユルコトヲ得
 第千三百六十五條ニ記載シタル自白不可分ナル原則ハ同條ノ區別ヲ以テ證書ノ各部分ニ之ヲ適用ス
(栗塚)
對抗ヲ受クル者ノ追認シバ前ノ例デハ之ヲ以テ對抗セラルル者ノ追認シトナリマス
(南部)
對抗ヲ受クル者デ宜シイ
(松岡)
主要ト云フト金何圓ト云フノカ
(栗塚)
金何圓借用候處實正ナリ返濟ノ義ハ何時幾日ナリト云フコトデ病氣ノ爲メニ借リタ抔ト云フノハ補足スル文言デス
(箕作)
判決文ハ證據ニナリマシヨウ
(栗塚)
訴訟法デハ式文ト云フテ居ルソウデ御座イマス
(南部)
補足スル文言ハ說明ノ方ガ良カロウト思ヒマス主要ノ文言ハ主文ノ方ガ宜シイト思フ
(槇村)
主文ノ方ガ宜シイ
(南部)
判決式文ノ處モ判決主文トスルガ宜シイ
(松岡)
主文ガ宜シイガ補足スル文言ハ「文言」デ宜シイ
(箕作)
文言ト云フ字ハ差支ガアリハセンカ
(栗塚)
差支アリマセン
(箕作)
ソウスレバ一方ハ文言一方ハ主文トスルガ宜シイ
(委員長)
錄製ハ自書ニナリマスカ
(南部)
之ハ錄製デ宜シウ御座イマス
(委員長)
錄製ハ構成法デハ作ルコトト書クコトト兩方ニナツテ居ル
(南部)
錄製ハ必ラズ自分デ書イタト云フ譯デハ御座イマセンカラ
(委員長)
構成法ノ錄製ト此處ノ錄製ト違ウ樣ニナル
(栗塚)
構成法ノハ「レダクシヨン」ト云フ字デ御座イマス又「ドレツツ」ト云フ動詞ノトキモ錄製トヤリマシタ第一調書ヲ作ルノモ錄製トヤリマシタ
(南部)
登記法ニ錄製トアリマス
(委員長)
跡デ調ベテ下サイ
本條ハ「主要ノ文言」ヲ「主文」ト改ム
第千三百四十八條朗讀ス
第千三百四十八條 證書カ第千三百三十八條ニ規定シタル如ク捺印白紙ノ濫用又ハ僞造ノ攻撃ヲ受ケタルトキハ其證據力ハ刑事裁判所ニ被吿ノ送致アルニ因リテ停止セラレ其裁判所ノ判決ノ確定ト爲ルマテ民事ノ判決ヲ中止ス
 嫌疑アル人ノ死亡其他ノ原因ニ因リテ刑事審問ノ開カレサリシトキハ民事裁判所ハ主張セラレタル犯罪ヨリ生スル不受理ノ理由ニ付キ裁判アルマテ本案ノ判決ヲ中止ス
 又刑事審問中ナルトキハ民事裁判所ハ當事者ノ要求ニ因リ又ハ職權ヲ以テ其判決ヲ中止スルコトヲ得
(渡)
訴訟法ニアル樣ナコトダ
(今村信)
コウ云フコトガアル積リデ御座イマスカラ一條入レテアリマス三百四十八條ニアリマス
(松岡)
停止スルコトハナイ
(栗塚)
之モ訴訟法ニ云ツテ下サイ
(村田)
外ニモアルカラ置クガ宜シイ
(松岡)
ソレナラ入レナイ
本條ハ原案ニ決ス
第千三百四十九條朗讀ス
第千三百四十九條 私署證書ハ其證書ヨリ後ニ當事者間ニ於ケルト同一ノ證ヲ爲スモノトス然レトモ其日附ハ確定ナルトキニ非サレハ之ヲ援用スルコトヲ得ス
(栗塚)
確定日附ノコトハ次ノ條デ修正スル、意見ガ御座イマス
(松岡)
其レデハ次ノ條ヲ讀ムガ宜シイ
本條ハ次ノ條ト共ニ決ス
第千三百五十條朗讀ス
第千三百五十條 私署證書ハ左ノ諸件ニ因リテ確定ノ日附ヲ取得ス
 第一 租稅ノ爲メノ記錄
 第二 財產ノ封印若クハ目錄ノ調書其他ノ公正證書又ハ確定ノ日附ヲ有スル他ノ私署證書ニ於ケル記載
 第三 手署シタル當事者中一人又ハ加署若クハ加印シタル證人ノ死亡又ハ是等ノ者ノ失踪ニ關スル裁判上ノ宣吿
 右ノ場合ニ於テ證書ハ登錄記載死亡又ハ最後ノ音信ノ日ヨリ確定ノ日附ヲ有スルモノトス
(栗塚)
第一租稅ノ爲メノ記錄ヲ確定日附ノ「記錄」ト願ヒマス之ハ譯モ間違ツテ居リマシヨウ佛蘭西ノハ裁判所ヘ持ツテ出ヨウト思フモノハ皆登記致シマス日本デハ確定日附ノ「煩シイト云フモノ丈ケ手續ノ出來ルコトニシテ置ケバ良カロウト思ヒマスカラ確定日附ノ記錄トスルガ良カロウト思ヒマス
(箕作)
ドウ云フコトデ御座イマス
(栗塚)
記錄ニシテ宜シウ御座イマスガ確定ノ日附ヲ得ント欲スルモノハ記錄簿ニ記錄シテ貰ウノデ御座イマス
(箕作)
登記簿ヘ登記モシタノカ
(南部)
登記ハ公正證書ダカラ私署證書ノ内ニ這入ル筈ハナイ
(栗塚)
私署證書ヲ持ツテ行ツテ登記役所デ書イテ貰ヘバ卽チ公正證書ノ内ニ這入ツタモノニナル
(箕作)
私署證書ヲ公正證書ノ中ニ記載シタト云フコトハ云ヘマイ「ボアソナード」ハ第一ニ這入ル積リデ居ル
(松岡)
證書ノ日附ガ確定ノ日附ト云フコトハドウ云フ必要ガアリマス
(栗塚)
強イテヤレト云ハンガ貴君モ私ガナニシヨウト云フトキハ公證人ノ處ヘ行ケバ宜シイガ錢ガ掛ルカラ前後ヲ爭ウトキノ爲メニ登記シテ貰フ日附ノ前後ヲ爭フト云フコトハ澤山アリマシヨウ
(松岡)
アルケレドモ確定ノ日附ト云フコトハドウ云フコトカラ起ツタノダロウ
(栗塚)
確定ノ日附ト稅ヲ取ル記錄トハ別テ御座イマス日本ノ法律デハ確定ノ日附ヲ與ヘルカ與ヘンカト云フト與ヘテヤル
(松岡)
與ヘルノハドウ云フ必要ガアリマシヨウ
(箕作)
民法ノ内ニ日附ノ正確ナルモノハ云々ト云フコトガアリマシヨウ
(栗塚)
澤山アリマス日附ヲ爭フトキハ私ノ方ガ確カト思フトキハ確定シテ置ク
(松岡)
相對ノ日附ハナクモ同ジニナル
(栗塚)
第三者ニ對シテ效ガアリマセン
(淸岡)
確定日附ヲ得ナイ奴ハ役ニ立タナイ樣ニナル
(元尾崎)
之ハ日附モ何モナイトキニ確定シテ貰フノダロウ
(南部)
ソウデハナイ
(元尾崎)
何月何日ト書イテ置ケバソレガ確定ノ日附ダロウ
(南部)
ソウデハナイ之ヲ今日人ニ賣ツテ又明日他人ニ賣ツタトキ日附ハ何時デモ書ケルカラ確定ノ日附ヲ要スル樣ニシテ置ケバ後ニ前後ガ判然分ルソレデナケレバ前後ガ分ラン
(淸岡)
確定ノ日附ヲシナイ奴ハ十日前ニ買ツテモ役ニ立タン
(栗塚)
第三者ニ對シテハデス
(松岡)
訴訟ノ證據ノ上カラ云フトソンナコトハナイ此歴史ハ其處ガ元トデナク收稅ガ元トデ無カロウカト思フ
(淸岡)
其時租稅ヲ取ルカラ租稅ノ爲メノ記錄トヤツタノダロウ
(栗塚)
租稅ノ爲メノ記錄ト云フノハ譯ガ惡ルイト思ヒマス
(元尾崎)
佛蘭西抔ハ租稅ノ爲メニ登記ヲシテヤルノダ
(箕作)
原按者ノ精神ハ第一ニ日本ノ登記法ヲ擔ギ込ンダ積リダ
(松岡)
日本デハ日附ヲ確定シナケレバナラント云フ必要ガ何處ニアルカ知ラン同ジ日附ノモノガ落合ツタトキハ方式ハ同ジモノト見テ仕舞ウ確定ノモノガアレバ一番強イモノト云フ效力ヲ與ヘテコソ要用ガ起ルノダロウ何デモ疑ノ起ランモノハ卽チ書イタ日ガ出來タコト見レバ宜シイ
(箕作)
日附ノ確定ナルト云フコトハ民法ニ幾ラモアリマシヨウ
(栗塚)
用益權ノ處ニモ賃貸借ニモアリマス
(箕作)
ソレナラ之ヲ定メテ置カナケレバナラン
(淸岡)
何デモ證書ガ登記シナケレバナラン樣ニナル
(松岡)
他國ハドウナツテ居ルカ
(栗塚)
英吉利佛蘭西伊太利ニモアリマス
(淸岡)
大變困ル
(栗塚)
第三者ガ出ナケレバ日附ヲ取ツテ置カンデモ宜シイ第三者ニ對シテ此日附ハ確カデ御座ルト云フニハ確定シテ置ケト云フノデ御座イマス
(松岡)
畢竟之ハ理窟ヲ付ケテ出シテ來タノダ
(淸岡)
之ハ錢取主義ダ
(委員長)
私ガ内務省ニ居ルトキ日下ニ調ヲサセタコトガアリマスガ眞ニ最初カラ租稅ヲ取ル爲メニヤツタノデアリマセン佛蘭西モ英吉利モ同ジ樣ニナツテ居ルガ元ト斯ウ云フ法律ガアツテ租稅ヲ課スルニハ斯ウ云フモノニ課スルト云フノデ課シタノデス
(松岡)
同ジ樣ナ種類ノモノガ出テ來レバ確定シテ無ケレバ日ガ古クモ後ヘ廻ハサルルト云フタノダロウソレガ可笑シイ抑モ人間ノ一體ノ上カラ云フテ何時デモ人間ノ相對ノ日附ハ詐欺ナリト云フ樣ニナル
(栗塚)
ソレナラ抵當ニ取ツタモノニ效力ヲ持タセズカ
(松岡)
公示スレバ宜シイガ公示シナイ
(元尾崎)
詰リ私ノ證文ヲ書イテモ何ニモナラント云フコトニナル
(南部)
公正證書ノ日附バカリニ關スルコトト見レバ宜シイ
(淸岡)
彼ノ手續ヲスレバ宜シイガ之ハ登記ヲシタカラ何ヤラ分リマセン
(委員長)
獨乙デモ動產ト不動產ト登記スルコトニナツテ居マシヨウ
(本多)
動產ハ登記致シマセン
(委員長)
日附バカリ證據ニナリハスマイ全體ノ金ヲ借リタト云フコトガ確カナレバ其レマデ無效ニナルト云フコトハアルマイ
(松岡)
私ガ一人ニ物ヲヤツテソレヲ又一方ノ人ニヤリマシタ一人ノ人ガ日附ヲ確カメレバ一方ノ人ハ無效ニナツテ仕舞ヒマス
(南部)
ソレハ登記モ同ジコトダ
(元尾崎)
一人ガ破產シテ財產ヲ分配シタトキ私モ貸シテ居ルト云フトキハソレガ確定ノ日附デナケレバ破產手續ガ始ツテカラ拵ヘタノト云フノダロウ
(栗塚)
甲乙ト云フ債權者ガアツテ甲ハ疾クニ金ヲ貸シテアル乙ハ其後ニ貸シタト云ツテモ確定ノ日附ト云フト私ノハ確定ノ日附ダカラ取レルガ御前サンノ認メマセント云フ
(元尾崎)
ソウスルト一々證文ヲ確定シテ置カナケレバナラン樣ニナル
(栗塚)
甲ハ其實元トカラ持ツテ居ツテ乙ハ一月前ニ日附ヲ書イタトキハ
(南部)
之ヲ止メルト身代限リノ弊ヲ防グコトガ出來マセン
(箕作)
質權ヤ用益權ヤ債權讓渡ノ處デ日附ノ正確ト云フコトガ濟ンデ仕舞ツタガドウ云フモノデス
(松岡)
斯ウ云フ處ヲ參觀シテ居ツタノデスソレハ通知デシサイスレバ宜シイ
(栗塚)
吿知スル如キハ大變宜シウ御座イマス
(淸岡)
前ニ出シタ樣ニハ削除スルト云フコトガ書イテアリマス
(栗塚)
ソレハ取消ヲ願ヒマス
(箕作)
之ハ隨分民法ノ彼方此方ニ確定日附ト云フコトガアツテ實ハ報吿委員ノ辯論モアリ我々モ考ヘ中デアリマス錢取主義ト云フト大變酷イ說デ御座イマスガ「ボアソナード」ノ主義ハ錢取主義カドウダ
(粟塚)
ソレハ確カメマシタ「ボアソナード」ハ稅ヲ取ルト云フコトハ毛頭ナイ只日附ノ確定ヲ希望シテ來タトキソレヲ嫌忌ト云フコトガ政府デ云ヘルカ云フテ來レバ與ヘテヤルガ當リ前デアルガト云フコトデ御座イマス
(箕作)
其理由ヲモツト委シク書イテ貰オウデハナイカ之ヲ削ツテモ宜シイガ判然分ラン削ツテモ良クナイ
(栗塚)
ソレデハ削除ハ措キマシテ起案者ノ返答ノ上デ御議シヲ願ヒマス
(松岡)
ソレガ宜シイ
(栗塚)
五十一條五十二條ハ牽連シテ居リマスカラ留保シテ置キマシテ第二款ニ移リマシヨウ
本條確定日附ノコトハ起案者ニ質問ノ上議スルコトトモ未定第千三百五十一條第千三百五十二條ハ確定日附ノコトニ牽連スルヲ以テ未定
第千三百五十三條朗讀ス
第二款 署名捺印セサル證書
第千三百五十三條 商人ノ帳簿ハ總テノ人ノ爲メ其商人ニ對シテ證ヲ爲ス然レトモ其帳簿ヲ援用スル者ハ此ヨリ生スル自由ヲ分ツコトヲ得ス
 商人ノ帳簿ハ商人ノ爲メ商人ニ非サル者ニ對シ證ヲ爲サス
 此他右帳簿ノ證據力ハ商法ニ於テ之ヲ規定ス
(箕作)
是レコソ商法デ云フベキモノダロウ
(松岡)
商法ニモ此通リアル
(箕作)
商法ノ三十九條ニアル
(栗塚)
ソレデ恰度之ニ合ウト思ヒマス
(南部)
之ノ足ラン處ハ尙ホ商法デ規定スルト見レバ宜シイ
(松岡)
商法ハ相手方ガ援唱シタトキハ利益ノ證ニモナルダロウ
(渡)
少シモ差支ナイ
(箕作)
商人ノ帳簿ノコトナラ商法ニ讓ツテ仕舞ウガ宜シイ非商人ノ帳簿ノコトサヘ云ツテ置ケバ宜シイデハナイカ第千三百五十四條ヲ修正シテ前條ニ合スルノ建議
(淸岡)
商人ノ帳簿ハ非商人ニ對シテ證ヲ爲サズト云フコトハ商法デハナイ筈ダ
(箕作)
意味ハ良ク合ツテ居マス
(淸岡)
ソンナコトヲ云フト素人ニ賣ツタモノハ帳簿デ證據ニナランカ
(栗塚)
槇屋ガ栗塚ニ槇ヲ賣ツタト云フコトガ帳簿ニ書イテアルト云フテ錢ヲ取リテ來ラレテハ困ル
(箕作)
若シ體裁ガ惡ルケレバ商人ノ帳簿ノ證據力ハ商法ニ於テ之ヲ規定スデ宜シイ
(松岡)
ソレデ宜シイ
(南部)
商人ノ帳簿モ總テ人ノ爲メ其證人ニ對シ效ヲ爲スト云フコトガ何處ノ商法ニアリマス二項ハ削ツテモ宜シイ二項ハ商法ニ充分ノ效ヲ爲スコトヲ得ズトアルカラ削ツテモ宜シイ
(元尾崎)
一項ハ置イテ二項ヲ削ロウ
(淸岡)
二項ヲ削ロウ
(渡)
二項ヲ「充分ノ效ヲ爲サス」ト直スコトハ出來マセンカ
(南部)
商人ノ爲メニドウナルカト云フコトハ商法デ云フテ宜シイ
(栗塚)
二項ヲ削リマス
本條第二項削除ニ決ス
第千三百五十五條朗讀ス
第千三百五十五條 商人ニ非サル者ノ帳簿、覺書及ヒ家內ノ書類ハ其者ノ爲メ證ヲ爲サス
 右ノ帳簿、覺書及ヒ家內ノ書類ハ其者ニ對シ下ノ區別ニ從ヒテ證ヲ爲ス
(栗塚)
家内ノ書類ハ女房ノ文トデモ讀ミソウデス
(淸岡)
五十四條ハドウシマシタ
(栗塚)
五十三條ノ末項ニ這入ツテ居リマス
(委員長)
第一項ノ「決シテ」ヲ削ロウデハナイカ
(栗塚)
「決シテ」ヲ削リマシヨウ
本條第一項「決シテ」ノ三字ヲ削ル
第千三百五十六條朗讀ス
第千三百五十六條 債權者ノ書面ハ左ノ場合ニ於テハ其債權者ニ對シテ證ヲ爲ス
 第一 債務者ノ辨濟其他ノ免責ヲ明カニ揭クルトキ但債權者ニ於テ債務者ニ交付スル爲メニ準備セル受取證書タルコトヲ證スルトキハ此限ニ在ラス
 第二 債務者ノ證書又ハ從來ノ受取證書ニ免責ヲ書込ミ且其書類カ債務者ノ手ニ存スルトキ
本條ハ原案ニ決ス
第千三百五十七條朗讀ス
第千三百五十七條 債務者ノ書面ニ其義務ヲ揭ケ且之ヲ以テ債權者ノ證書ノ用ニ供スルモノタルコトヲ記載スルトキハ其書面ハ債務者ニ對シテ證ヲ爲ス
本條ハ原案ニ決ス
第千三百五十八條朗讀ス
第千三百五十八條 前二條ノ場合ニ於テ抹殺シタル書面ハ之ヲ斟酌セス但其抹殺カ詐害又ハ錯誤ニ出タルノ證アルトキハ此限ニ在ラス
(箕作)
錯誤ニ出デタルデ宜シイ
(栗塚)
之人間違デ御座イマス
本條「因リテ」ノ三字ヲ削ル
第千三百五十九條朗讀ス
第千三百五十九條 商人ニ非サル者ハ裁判上ニテ其家內ノ帳簿及ヒ書類ヲ差出スノ義務ナシ然レトモ任意ニテ之ヲ差出シタルトキハ爭ニ關スルモノヲ抄錄シタル後ニ非サレハ之ヲ取戾スコトヲ得ス
(箕作)
拔抄シタルト云フノハ
(槇村)
拔書シタルト云フノダ
(松岡)
訴訟法ニ然レドモカラズガアルダロウ
(南部)
彼レハ削リマス
(委員長)
五十七條ハ自分ガ自分ニ對シテ證ヲ爲スト云フコトカ
(南部)
債權者ノ書□ ガデ御座イマス自分デハ御座イマセン
(渡)
債權者ノ刀ガ債權者ヲ殺ストキトナル
(委員長)
拔抄ハ抄錄トカ何トカ書カナケレバナランダロウ
(栗塚)
抄錄トヤリマシヨウ
本條「拔抄」ヲ「抄錄」ト改ム