旧民法・法例(明治23年)

法律取調委員会 民法草案再調査案議事筆記 第36回

参考原資料

備考

  • 未校正のテキストデータです.
民法證據篇再調査按第三十六回議事筆記
千百二十四條再議千二百五十一條再議千百三十二條再議千二百八十四條再議千三百三十二條千三百三十三條
(栗塚)
昨日ノ續キ留保ノ分ヲ願ヒマス第千百二十四條ヨリ議シマス第千百二十四條除第三項左ノ如ク改ム不動產質ハ之ハ設定シタル證書又ハ遺言書ハ第三百六十八條第一號及ヒ第三號ニ從ヒテ登記シタル後ニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
(南部)
判決書ハ遺言書トナリマス「證明」ヲ「設定」ト致シマス
(栗塚)
之ハ起按者ガ直シマシタ隨テ千百二十五條ノ又ハ判決書ヲ削リマス遺言書モ證書ヲ内ニ這入ツテ仕舞ヒマスカラ
(南部)
ソレハ遺言書ノアル方ガ宜シイ
本條ハ修正按ニ決ス
(栗塚)
次ハ千百三十二條ヲ起按者ガ修正致シマシタ第千百三十二條第一項冒頭質取質權者ノ上ニ「建物宅地ノ」ノ五字ヲ加フ第二項田畑山林ノ質取債權者ハ其抵當權ヲ併セ失フニアラサレハ收益權ヲ抛棄スルコトヲ得ス
(南部)
千百三十二條ハ最初ノ「質取債權者」ノ上ニ「建物宅地」ノ四字ヲ入レソレカラ二項ニ「田畑山林ノ質取債權者ハ其抵當權ヲ併セ失フニ非ラセレハ收益權ヲ抛棄スルコトヲ得ス」ト入レマス
(松岡)
之ハ奇妙奇的列ダ
(村田)
貴君ノ云フ樣ニスルト前條カラ變ナケレバナリマセン前條ヲ置ケバ勢ヒ之ヲ入レナケレバナリマセン
(松岡)
併セテ抛棄スレバ何モ無クナル
(淸岡)
馬鹿氣切ツタコトダ
(松岡)
最初ノ質ハ收益ト利足ト差引勘定スルモノダト立テアル收益ノ利足ニ足ラヌトキハ質權ヲ棄テ唯ノ抵當ニシテ見レバ利子デ取レル然ルニ日本デハ左樣ニハ行カヌソレナラ田舎ノ建物宅地ハ左樣ニシ樣ト云テ直シテ來タ直シテ見ルト利子ト收益ト差引シテ居ラヌカラ抵當品モ無クナツテ皆戻シテ仕舞ハナケレバ保護スルコトハ出來ナイトナリマス
(淸岡)
約束ノ利足ヲ取ルト云フノハ無理ナ話シダ
(栗塚)
ソレダカラ「田畑山林ハ抛棄スルコトヲ得ス」トシタラ宜シウ御座リマシヨウ
(淸岡)
之ハ嫌厭ダカラ約束ノ一割ノ利ヲヨコセト云フノハ無理ナ話シダ
(南部)
前條デ建物宅地ノ質ハ其果實ヲ利足ニ充テ勘定シテ差引キスルコトニナツテ居リマスソレカラ來タ前項デ御座リマス
(栗塚)
實際ハ二項デ弊ヲ除イタ積リデス初メハ實際今日ヤツテ居ルモ何モ構ハザル樣ダカラ夫レデハ惡イト云フノデ二項ヲ加テ參ツタノデ御座リマスカラ此方ノ云フ通リニナツタノデ御座イマス
(松岡)
三百三十一條ノ前項ヲ立レバ之ハ仕方ガナイ
(槇村)
前項ハ抵當權ヲ取ツテ役ニ立ツカ
(松岡)
期限ガ來テソレヲ賣テ先キヘ取ル
(大尾崎)
三十一條デハ建物宅地ヲ質ニ取レバ質ニ取リタル折ニ金ノ利子ガ定メテアツテ夫レニ借賃ガ相當スレバ相殺シタコトニナル增價額ガアレバ元本ニ充當スルト云フト質デハナイ樣ダ
(松岡)
前ノ項ハ保持費用管理ノ費用栽培ノ費用ヲ皆引イテ收益ト利子トヲ差引勘定ヲシテ過額ニナルカ不足ニナルカヲ見出ス
(南部)
百三十一條ハ此間決定シテ二條丈ケガ留保ニナツテ居リマスカラ三十一條ヲ刪ルナレバ別段ニシナイト果ガアリマセン
(栗塚)
三十二條ヲ起按者ニ云フテ末項ヲ入レテ來タノヲ又惡ルイト云フノハ困リマス
(南部)
起按者ハ利足ト勘定サセル旨意デアリマシタ夫レデハ不都合デアルト云フノデ日本ノ習慣ニ反スルカラ田畑丈ケニシテ來マシタ
(栗塚)
不動產ト云フ名ニ拘泥シテ家モ不動產デハナイカト云フノデ置キタル條デス宅地建物ヲ質ニ取テソレカラ收益ヲ得樣ト云フ人ガ日本ニ在ダロウカ日本ノ法律デハ田畑山林ヲ旨意トシテ書イテアル
(淸岡)
田畑山林ニシテモ質ニ取ル馬鹿ガアルモノカト云フト質ハ丸ルデ止メテ仕舞テモ宜シイ
(箕作)
三十一條ヲ決シタラ之ハ仕方ガナイデアリマシヨウ
(渡)
一體三十一條ガ可笑イノダ
(松岡)
適用ノ無イモノダカラ箇樣ニ書クト云フナラ孰レニ書イテモ宜シイ又此トキニ丸ルデ相殺バカリサセテ仕舞ヘバ利足ノ制限ガ立タヌデハナイカト云フ論ガ出テ來テ佛蘭西ノ高利貸ヲ征伐シタ判決例ナドモ云ハレタ
(大尾崎)
三十一條ヲ田畑山林計リシテ宅地建物ヲ除イタラ宜カロウ
(南部)
三十一條ヲ刪ルナラ別ニシテ貰ヒタイ今日ハ三十二條ヲ議定スル積リデ留保ヲ出シタノデアリマスカラ
(淸岡)
隨分前條ニ遡ラヌト云フコトハナイ關連シテ居ル條ダカラ
(南部)
元ガ定マツテ居ルカラ間然シテハ居リマセン
(淸岡)
田畑山林計リニスレバ宜イカ知レヌ
(松岡)
田畑モ何モ何モ入ラヌ不動產デ宜シイ
(大尾崎)
其方ガ宜シイ
(栗塚)
若シ左樣ナレバ不動產ノ御話シヲシ度イト思ヒマス
(松岡)
ソレハ他ノ國ノ歴史ダロウ
(栗塚)
金ノ擔保デアルカ或ハ收益ノ方法ノ一デアルカト云フニ收益ヲ得ルノ方法デハナイ擔保デアリマス
(淸岡)
擔保ハ固ヨリ擔保ダケレドモ質ノ利足ハ箇樣ニスルト云フ其方法ダ
(箕作)
元トハ質ト云フヨリ外ニ賣買ト云フモノハナカツタ
(松岡)
二項ヲ一項ト同ジ樣ニスレバ其理窟ガ通ルデアリマシヨウ
(栗塚)
日本ノ習慣ニ違ウカラ直サセタノデ御座リマスカラ
(松岡)
收得方法ノ擔保ノ方法ノト云ハズトモ質ト云フモノハ利子ニ當テ居ルソレハ建物ニ栽培ノ費用ヲ保證スルト云フ
(粟塚)
ソレハ栽培ト云フ字ガ惡ルイノデ御座イマス元來質ヲ收得スル方法トシテ論ズルカ擔保トシテ論ズルカト云フノデ御座イマス元來二項ヲ加ヘタノモ可笑イシ相殺ト云フコトハ擔保ト云フコトヲ土臺ニシタカラ論ニナラヌト云フノガ當然ノ論デ御座イマス夫レハ日本ノ寶際デナイ日本ノ質入書入法ヲ改メルコトハ出來ヌト云フノデ箇樣ニナツタノデ御座リマス
(大尾崎)
同ジ質ニシテモ一ハ併セテシテモ一ハ抵當ヲ受ケルト云フノハ可笑イデナイカ
(南部)
性質ニ依テ併セマス田畑山林ト宅地建物トハ性質ガ別デ御座イマスカラ差支ナイ
(栗塚)
同ジ不動產ト云フテモ家ト田畑トハ違ヒマス
(淸岡)
日本ノ習慣ニ從フコトハナラヌト云フ確カナル議論デモアレバ宜シイカ
(南部)
建物宅地ノ習慣ヲ御尋ネナサイ質ハ必ラズ收益ヲ得ルモノト云フコトハ出來マセン
(大尾崎)
建物ハ質ニ入レンデモ質ノ性質ハ夫レヨリ生ズル果實ヲ目的トスルトキニ別段利子ニ定メガナイト云フノハ日本ノ習慣ヲ動產不動產ト名ヲ付ケタルレドモ素ヨリ違フ
(西)
ドウモ箇樣ニナランデハ仕方ガナイ樣ダ田畑ハ習慣デ取除ケテ行クノダカラ宜カロウ
(元尾崎)
之ヲ刪除シタラ宜カロウ
(渡)
入ラザルコトダ
(南部)
是レ迄規則ガナイカラ今度規定ヲ立ルニハ箇樣ニ立ルノガ相當ダト云フノダ
(箕作)
二項ガ這入ツタノデ迷惑ガ減ジタノデス
(淸岡)
不動產ハ總テ質ニスレバ收益ト利足ト相殺シタモノトシテ仕舞ヘバ宜シイ抛棄スルニ一方ガ抛棄スルト云フコトハ入ラヌ日本ノ慣習ノ通リニスレバ宜シイ
(栗塚)
建物宅地ノ慣習ハ何處ニ在リマス
(淸岡)
慣習ガナケレバ三十一條ノ一項ハ何ゼ入レタ
(南部)
ドウ云フ慣習ガアリマスカ
(松岡)
貴君方ノハ事柄ガナイト云フノデスカ
(栗塚)
私ハナイト申シマス
(松岡)
事柄ノナイモノニ何ノ爲メニ之ヲ設ケマスカ
(栗塚)
萬一アレバ之デヤリマス貴君方ノ樣ナ收益臭イノデハイケヌト云フノデ御座イマス今日現在ノ田畑山林ノ外今日ノ習慣ニ依ルト云フノデ御座イマス全國ノ登記役所ノ表ヲ見テモ建物ノ質入ハアリマセン
(元尾崎)
田舎ノ家屋ハ登記シナイノガ澤山アリマス
(委員長)
登記ノトキ以前ノ戶長役場デ家屋ノ質入書入ハ奧書ガアリマス夫レヲ十四年ニ調ベタ處ガ皆書入デス質入ハアリマセン
(松岡)
無イト云ヘバ可笑ナ法律ヲ拵ヘルト云ハナケレバナリマセン
(委員長)
元來家ヲ動產ト見テ居ル不動產ト見ルノハ近頃ダ今度不動產ト定マレバ質權ガ付カナケレバナリマセン質權ガ付クト質權ノ處分ハ如何スルト云フ定マリヲ付ケテ置カナケレバナリマセン
(松岡)
抵當ノ方ハ無論出來モ致シマスガ質物ト云フノハ二樣ニ分ケテ置カナケレバ差支ガアルカト云フト質物ト云フモノハ無イ位ノモノナレバ不動產ト云フ大部分ノ規則ガアツテ外國人モ破レヌカラ此處ヲ一緒ニシテ不動產ニシテ置ケバ宜シイ
(委員長)
起按者ノ考ハ理論モ通サナケレバナラヌ實際ニモ合ウ樣ニシナケレバナラヌ之ナレバ理論ニモ合ヒ實際ニモ合ウ樣ニシタノデアリマスカラソレヲ考ヘナケレバナリマセン理論ト實際ニ合ウ樣ナ修正デモ出レバ格別
(松岡)
理論ト云フモノハドウ云フモノデスカ
(栗塚)
之ヲ取得編ノ中ニモ置カズ物件ノ中ニモ置カヌノハ擔保ノ爲メデス
(松岡)
收益ト差引スルト云フノガ抵當ト質ト違ウ所以ダ
(栗塚)
使用收益ヲサセルト云フコトヲ論ズレバ一ノ取得方法ニナルダロウ質權ノ擔保ニ取テ置ク自分デ利息モ拂ハヌトイケヌカラ利息ヲ取ル併シ餘ツタモノハ返ヘスト云フノハ質ノ性質デアル
(松岡)
何篇ニ置イタカラ箇樣ニシナケレバナラヌト云フトキハ時效ナドハ如何シテ證據篇ニ這入ルダロウ
(栗塚)
併シ牲質ニ從テ分ケマシタ收益ノ範圍デハナイト云フ性質カラ此處ヘ入レマシタ若シ貴君ノ樣ニ收益ノ賣買ナレバ取得篇ノ中ニ入レナケレバナリマセン
(箕作)
佛國デモ伊太利デモ「アンチクレーズ」ハ利息ニ充當スルノガ當リ前デ誓約ニ依テハ差引ガ出來ルトナツテ居マスネ
(委員長)
畢竟之ハ一項デ足ラヌカラ二項ヲ注文シテ入レタノデスネ
(村田)
三十一條ヲ置ケバドウシテモ之ガナケレバナリマセン
(委員長)
皆サンハ一項丈ケナレバ宜シイト云フノデスカ
(栗塚)
詰リ三十一條ヲ悉皆變ジテ仕舞フノデス
(委員長)
ソウスルト「ボアソナード」ニ頼ンダトキノ論ト今日ノ論トハ違ツテ來タノカ
(淸岡)
日本ノ慣習ニ違フト云フノデ之ヲ入レタノガ之デハ未ダ足ラヌト云フデス田畑宅地モ何モ不動產トスレバ宜シイ
(松岡)
二項ヲ不動產トシテ理論ニ當テタラ如何ト云フニ差支ナイ日本ノ習慣ニモ差支ナイ實際宅地建物ハ今迄見モセズ又後チモアルマイト云ヘバ刪テ宜イデ差支ナイ理論デモ事實デモ不動產ノ質入ハ箇樣ト云フテ置ケバ差支アリマセン
(村田)
三十一條カラ變ヘルナラ宜イ
(淸岡)
素ヨリ三十二條丈ケデハイケナイカラ三十刪條ヲ變ヘナケレバナラヌ
(元尾崎)
三十一條ヲ置イテ三十二條ヲ刪レバ宜シイ
(松岡)
ソレハ惡ルイ
(村田)
三十一條ヲ置ケバ三十二條ノ二項ヲ置カナケレバ精神ガ貫キマセン
(栗塚)
寧ロ不動產質ヲ除イテ他日不動產質ヲ其精神デ御置キニナツタトキ入レテハ如何デス
(元尾崎)
昔ハ質ト云フモノデ差引ヲサセナイ處ガ弊ガアツテ法律デ抵當ニ向ケテ行ク樣ニナツテ居リマシタ幾ンド質ハ抵當ト同ジニナツテ仕舞フ
(村田)
精神ハドコ迄モ「アンチクレーズ」デス
(栗塚)
實際ノナイ樣ニ改メタモノヲ何ヲ苦ンデ御修正ニナリマスカ是レ丈ケノ區別ヲ付ケテ實際差支ナクソレデ此間議決ニナツテ居レバ宜シイノデハアリマセンカ
(淸岡)
田畑デモ宅地デモ此通リニスルト云フナレバ尙宜シイ併シ實際ソレガ日本デハ出來マセンカラ箇樣ニナツテ來タ
(南部)
ソレデ之ガ程良ク出來テ居ル
(淸岡)
自分ノ說ヲ是レ丈ケ遺スノハ惡ルイ
(南部)
第一ノ會議デ之ニ決シ第二ノ調査モ之ニ決シタノダカラ
(淸岡)
松岡君モ尾崎君モ主張シタガ小數デアツタカラ再考スベキコトデアルト云フコトガ書付ケテアル
(南部)
多數デ決シタノハ是レ丈ケノ理窟ガアツテ決シタノデス
(委員長)
之ハ唯質入書入規則ノ跡方ヲ存スルカ存セヌカト云フニ彼ヲ打破テ仕舞テ宜シイト云フナレバ元トノ起按デ宜シイガ夫レヲ存セ樣ト思ヘバ之ヨリ外ニ書キ樣ハアリマセン
(松岡)
二十一條デモ收益權ト抵當權ト二ツ持ツト云フ二十三條デモ收益權ヲ自ラ有スルコトヲ要ス夫レカラ三十條デモ修繕ヤ租稅モ持ツトナツテ居リマス處ガ現今ノ質物ト符合致シマス又他所ノ國ノ法律ニモ合ヒマス三十一條ヲ不動產ノ質ハ果實ト利子ト計算ヲ爲サセ相殺スルト云フト三十一條ニ入レテ仕舞ツテ前後差支ナイト思ヒマス
(委員長)
松岡サンノ論ト淸岡サンノ論トハ違ウ淸岡サンノ論ハ一項ノ方ヲ存スルト云フノダ
(槇村)
左樣デハアリマセン三十一條ノ二項ノ樣ニシ樣ト云フノデス
(松岡)
之デハ收益ト滿期ノトキハ抵當權ヲ行フト二樣ニ書イテアルノデ日本ノ質ト同ジコトデス
(淸岡)
慣習ガ破レテ大變ニナリマス
(委員長)
貴君ノ云フ樣ニシテモ家ノ慣習ガ破レマス
(南部)
田畑山林ニハ習慣ガアルガ家ニハ習慣ガナイ
(箕作)
田畑山林ハ現行ノ通行ノ通リ建物宅地ハ新規ニ出來タト思ヘバ宜シイ
(栗塚)
左樣デス
(大尾崎)
多數デ御決シナサイ
(委員長)
三十二條ニ論ガ三十一條ニ波及シタノダカラ二條ノ方ヲ決シマシヨウ
(大尾崎)
三十一條ヲ此儘デ置ケバ三十二條モ仕方ガアリマセン
(委員長)
三十一條ノ方ヲ決シテ行クト云フ論ガアレバ格別左モナケレバニ條ヲ決シナケレバナリマセン今三十一條ノ存廢ノ決ヲ採ルニハ及バヌダロウ
(淸岡)
一條ノ結果デ二條ガ箇樣ニナルカラ一條ハ前ニモ議論ガアツタガ其トキハ尙ホ考ヘルコトニシテアル此論ガ果シテ尤モデアルト云フ樣ニナツテ三十一條ヲ改正シナケレバナラヌト云フ論ガ議場ニ行ハルレバ三十一條ニ戻テ存廢ヲ決シナケレバナリマセン
(村田)
戻ルノガ宜シイ
(渡)
今迄三十一條ノコトヲ云フテ居タガ一條ニ遡テ論ズルト云フ論ハナカツタ
(松岡)
今迄御聽キノ通リデアリマスカラ三十一條ヲ議スルコトヲ冀望シマス
(委員長)
ソレニ贊成者ガ多ケレバ三十一條ヲ議シマスガソンナラ如何スルト云フ見込ヲ云フテ貰ヒ度イ
(松岡)
三十一條ノ二項ヲ重モニ立テ田畑山林ト云ハズシテ不動產質トシ度イ
(委員長)
一項ハ如何シマス
(松岡)
一項ハ元本ニ充當スルト云フコトヲ刪テ仕舞ヒマス田畑デアロウガ宅地デアロウガ不動產ノ質ニナレバ收益シタ果實ト利息トハ自カラ相殺シテ仕舞フモノデ利息トノ差引勘定ハシナイコトニシ度イ
(委員長)
三項ハ
(松岡)
三項ハ刪リマス
(委員長)
之ヲ刪除スルト扣除スルコトハセヌ樣ニナル
(松岡)
暗ニ相殺ニナツテ年貢ガ幾ラ保持修繕ガ幾ラ肥料ガ幾ラト云フテ利子ト差引勘定スルコトハ止メテ仕舞ヒマス
(元尾崎)
詰リ田畑モ家屋ノ通リシ樣ト云フカ
(松岡)
左樣デス
(元尾崎)
左樣スルト普請モシナケレバナラヌドンナ稅デモ出サナケレバナラヌ
(箕作)
左樣スルト射倖契約ニナル質デハナイ
(南部)
射倖契約ハ成ル可ク少クシナケレバナリマセン
(委員長)
其旨意デアツテ皆サンノ贊成ガ多クテ一條ニ遡ルカ遡ラヌカ
(松岡)
今申シタ通リノ旨意デ一項ト末項ノ扣除スルト云フコトヲ刪テ不動產ト一本鎗デ通リ度イ何卒多數ノ贊成ヲ得テ立戻ルコトヲ冀望致シマス
(淸岡)
贊成
(元尾崎)
我輩ハ贊成セヌ
(渡)
贊成スル
(栗塚)
贊成シマセン
(北畠)
修正按通リデ宜シイ
(箕作)
贊成シナイ
(村田)
贊成
(委員長)
三十一條ニ遡ル說ハ四人デ少數ダカラ遡リマセン
(松岡)
ソンナラ二條ハ此通リデ宜シイ
(元尾崎)
三十二條ヲ修正シタノハ「如何ナル反動ノ合意アルニ拘ハラス」ト云フノヲ刪ルノト二項ノ文ガ不充分ノ樣ニ見ヘル「抵當權ヲ併セテ失フニ非サレハ收益權ヲ抛棄スルコトヲ得ス」ト云フノハ良クナイカラ「抵當權ヲ失フニ非サレハ質權ヲ抛棄スルコトヲ得ス」トシ度イ
(村田)
ソレガ宜カロウ
(松岡)
之ハ驚イタコトデ已ニ箇樣ニ立テ來タ以上ハ如何ナル反對ガアツテモト云フノハ質ヲ置ク人間ガ質取主ノ自由ニサレル傾キガアル契約デ固メザルコトニナルト利息ノ制限法ヲ破ルコトニナル一條ガ動カサレヌトスレバドウ云フ旨意カト云フト是非トモ差引勘定サセテ收益ト利息トヲ相當ニ併セナケレバナラヌソレノ算盤ガ合ハナクナツテ來タナレバ棄テ算盤ヲサセル又二項ノ處ニ質權ト云フテハ尙更ラ怖ロシク質ト云フノハ收益ト抵當權ヲ併セタノガ質權ダ質ハ收益計リノコトデハナイカラ不贊成ダ
(元尾崎)
收益權ヲ抛棄スルヲ得ズト云フノハ負擔ヲ抛棄スルノガ宜カロウ收益ヲ抛棄シ度クハナイノダ
(箕作)
負擔ガ重過ギルト見レバ收益權ヲ抛棄スルト云フノデ前ト同ジコトデ御座イマス
(槇村)
贊成ハ出來ナイ如何ナル反對ノ合意アルニ拘ハラズト云フノヲ刪ル旨意カ
(元尾崎)
萬一負擔ガ全クナツテ引合ハヌト云フコトガアツテモ私ノ方ニハ受取リマセント云フコトヲ合意シテ置ケバ宜シイト思フ
(淸岡)
其樣ナコトヲスレバ質ヲ置イタ者ガ迷惑スル
(南部)
質權ヲ失フト云フト其下タノコトハ入ラヌ
(栗塚)
馬ニ乘テ居ル人ト馬ト共ニ殺シテ置イテ馬丈ケヲ生カスコトヲ得ルコトハ出來ナイ
(委員長)
之デ宜カロウ
本案ハ起按者ノ改正按ヲ容レ他ハ原按ニ決ス
(栗塚)
次ニ千二百五十一條ヲ起按者ガ修正シテ來マシタ
第千二百五十一條抹殺若クハ減少ヲ後日ノ判決又ハ債務者トノ合意ニテ銷除若クハ解除シタルトキハ其判決又ハ合意ヲ更ニ記入シ又ハ前記入ノ縁邊ニ附記ス此場合ニ於テハ前記入ハ前債務者ノ爲メ其效力ヲ回復ス然レトモ抹殺若クハ減少ノ後ニ於テ不動產ニ付キ權利ヲ取得シ抵當ノ復舊ノ公示前ニ其權利ヲ記入シタル第三者ニハ此記入ヲ以テ對抗スルコトヲ得ス
(栗塚)
只合意ヲ入レテ參リマシタ丈ケノコトデ御座リマス
本條ハ修正按ニ決ス
(栗塚)
次ハ千二百八十四條デ御座リマス第二項相續人ノ上「ノ連合債務者又ハ」ノ八字ヲ挿入ス
(栗塚)
千二百八十四條二項ノ相續人ノ上ニ至タル債務者ノ連合債務者又ハ相續人トナリマス八十六條ニモ同ジコトガアリマス留保ノ分ハ先ヅ之丈ケデ御座イマスガ未ダ千百三十三條ハ質問中デ御座イマスソレカラ千二百四十四條ノ二ニモアリマス
本條ハ修正按ニ決ス
(委員長)
ソレデハ是レカラ本會議ヲヤリマシヨウ
第千三百三十二條朗讀ス
第二章 直接證據
第千三百三十二條 左ノ諸件ニ於テハ人ノ證言ヨリ生スル直接ノ證據アリトス
 第一 私書
 第二 裁判上ノ自白
 第三 宣誓
 第四 公正證書
 第五 證人ノ陳述
(渡)
削除建議ガ御座リマス
(栗塚)
宣誓ノコトデ御座リマス
(南部)
此コトハ宣誓ノ處デ願ヒマス
(元尾崎)
之ハ削ルガ宜シイ
(栗塚)
裁判内ノ宣誓ハ起按者ガ削ツテ來マシタ裁判外モ止メル積リデ御座イマス
(松岡)
證言ト云フノハ直接デキル樣ダ訴訟法デハ證據ノ擧ゲ方ハ人ノ證書類ノ證ト別ケテアルノヲ今度ハ人ノ證ノ處ヘ書類ガ一所ニナル樣ニナル
(箕作)
人ノ證言ヲ一寸見ルト證人ノ陳述ノ樣ニ見ヘル
(南部)
人ヨリ證スルトハ言ヘンカ
(箕作)
推定ハ人證言ノナキ場合ニ於テ知レタル事實ヨリ知レザル事實ニ推定スル結果ナリトアリマス
(松岡)
畢竟直接證據ノ說明シダ
(箕作)
左ノ諸件ニ於テハ直接ノ證據アリトスデ宜シイノダケレドモ分リ惡ルイカラ說明ヲ入レタノデス
(栗塚)
右借用候處實證ナリ何時幾日ニ返濟スル依テ如件ト云フノガ證言ノコトデス
(箕作)
文字ガアルカラ口デ云フ代ハリニ書イタト云フノダ
(松岡)
人ト云フ字ヲ削ツタラ良カロウ
(北畠)
十八條ノ樣ニ直接證擦ハ左ノ諸件ヨリ生ズトハ云ヘンカ
(栗塚)
此處デ證言ト云フ字ヲ使ツテ置クト大變都合ガ宜シイ
(淸岡)
人ノ證言ヨリ證スルト云フコトハ他人ガ證言シテ呉レル樣ニ見ヘル
(委員長)
ソレハ宜シイガ證言ト云フ字ハ困ルケレドモ迷ヒハナイ
(松岡)
人ノ言語ヨリ證スルトシテハドウダロウ
(委員長)
尙ホ銘々ノ考デ良イ字ガアレバ換ヘヨウ
本條「證言」ノ二字及ヒ第三ノ字ハ未定
第千三百三十三條朗讀ス
第一節 私書
第千三百三十三條 私書ノ證據力ニハ其私書ノ對抗ヲ受クル當事者ノ之レニ署名シ又ハ捺印シタルト否トニ從ヒテ輕重アリ
(渡)
證書カ又ハ捺印カト云フノデスカ
(淸岡)
私書ヲ以テ對抗セラルルトシヨウデハナイカ
(栗塚)
證據力デハ「ニ」ノ字ハ消ヘテ居リマス
(箕作)
私書ヲ以テ對抗セラルルトスレバ宜シイ
(北畠)
私書ノ對抗ヲ受クルデモ分ル
(大尾崎)
私書ヲ以テ對抗セラルルデ宜シイ
(北畠)
元ノ通リデ宜シイ
(村田)
元ノ儘デ宜シイ
(元尾崎)
之デ宜シイ
本條ハ左ノ如ク改ム
私書ノ證據力ハ其私書ヲ以テ對抗セラルル當事者ノ之ニ署名シ以下原按ノ通リ