民法財產擔保編再調査案第三十四回議事筆記
自第千三百五條至第千三百十一條財產編第百五十二條同編第百五十三條同編第百五十四條第百五十七條末項ノ再議第百八十條ノ再議第二百七十七條ノ再議第三百四十七條ノ再議第三百八十八條再議第五百三十一條ノ再議第六百六十七條ノ再議第七百八十七條ノ再議第千百十九條再議
明治二十一年十二月十一日午前第九時三十五分開會
第千三百五條朗讀ス
第七節 抵當ノ消滅
第千三百五條 抵當ハ左ノ諸件ニ因リ消滅ス
第一 主タル義務全部ノ確定ノ消滅但更改ノ場合ニ付キ第五百二十五條ニ記載シタルモノヲ妨ケス
第二 債權者ノ抵當ノ抛棄
第三 時效
第四 滌除但債權者提供ヲ受諾シ且第千二百八十條ニ從ヒ提供金額ノ辨濟又ハ供託アリタルトキ
第五 競落但第千二百七十二條及ヒ第千二百九十八條ニ從ヒ競落代價ノ辨濟又ハ供託アリタルトキ
第六 抵當不動產ノ全部ノ滅失但第千二百七條ニ從ヒ債權者ノ權利カ其滅失ヨリ生ス可キ賠償ニ移轉スルコトヲ妨ケス
第七 公用徵收但抵當債權者ニ其償金ヲ辨濟スルコトヲ妨ケス
(村田委員)
債權ヲ抛棄シテモ無論消ヘル譯ダネ
(栗塚委員)
主タル義務全部ノ確定ノ消滅ノ内ニ這入リマス
(村田委員)
第二ハ無クテモ分ル
(元尾崎委員)
此時效ハドウ云フモノダロウ
(栗塚委員)
先キニアリマス第千三百九條十條十一條ニアリマス
(元尾崎委員)
抵當ノ時效ニ係ルト云フノハ困ル
(栗塚委員)
此所ハ目錄ヲ云フノデ御座イマス
(村田委員)
五百二十五條ト云フノハ但書ヲ云フノデスカ
(栗塚委員)
ソウデス
(南部委員)
贈遺ハ遺贈トナル
(粟塚委員)
遺贈デ御座イマス
(箕作委員)
贈遺デハイケマセンカ
(栗塚委員)
初メカラ遺贈トシテ來タソウデス
(松岡委員)
遺贈ト云フト遺シ置クト云フノデ贈遺ト云フト贈リ遺スト云フコトニナル
(栗塚委員)
ソウデス
本條ハ原案ニ決ス
第千三百六條朗讀ス
第千三百六條 義務ノ消滅カ裁判上ニテ認メラレタル原因ニ由リテ取消サレタルトキハ記入ヲ抹殺シタリト雖モ抵當ハ其原順位ニ復ス
然レトモ其抵當ハ抹殺ノ後新記入ヲ爲ス前又ハ記入ヲ復シタル判決ヲ原記入ノ緣邊ニ附記スル前ニ記入ヲ爲シタル債權者ヲ害スルコトヲ得ス
(村田委員)
義務ノ消滅ハ法律上及ビ裁判上ト云フ法律上ト云フ字ハアリマセンカ
(栗塚委員)
法律上ト云フ字ハ削リマシタ
(箕作委員)
裁判上デ認メタ法律上ノ原因デス
(元尾崎委員)
原順位ニ復スルト云フノハ元トノ通リニナルト云フノデ間ニヤツタ奴ニハ矢張リ負ケルガソンナラ原順位ニ復スルト云フコトハ入ランダロウ
(栗塚委員)
其前ニ權利ヲ害スル復ト云フコトハ出來ンカ
(元尾崎委員)
ソレデハ矛盾スル原順位復スルト云フト假令バ明治十五年ニ抵當ノ記入ガシテアツテ其レガ消滅シタ抹殺シタソウシタ處ガ二十年ニ來ツテ取消サレテ原順位ニ復スルト云フト十五年ニ復スル
(南部委員)
十五年ノ一月ニ抵當ニナツテ二月ニ二番円抵當ニナツタ處ガ原順位ニ復スルカラ二月ノハ矢張リ二番ニナル併シ消タ後ハイケナイ
(元尾崎委員)
順位ト云フモノハ日附ヨリ外ハナイ
(村田委員)
人デヤツテ見レバ分ル
(南部委員)
十六年ニ抵當ニ行ツタモノハ十五年ノ一月ニ抵當ニ行ツタモノハ消ヘテ居ル場合デス消ヘテ居ラン時分ニ這入ツタノダカラ一番抵當ノアルト云フコトハ知レナイカラソレヲ害スト云フコトハ出來マセン
(元尾崎委員)
原順位ニ復スルト云フト十五年ニ復スレバ其後ニ幾ラ新タニ記入スルモノガアツテモ新タニナラナケレバナラン
(淸岡委員)
入レタ間ニ人ノ這入ントキノ話ダ
(元尾崎委員)
人ガ這入ツテ居ラナケレバ原順位ニ復スルト云フ猶豫ガナイ貴君ノ說ハ十五年ノ一月ニ抵當ニ取ツテ其六月ニ二番抵當ヲ取ツタ處ガ十六年ノ初メニ消滅シタ十七年ノ抹殺後ニ記入シタ處ガ二番目ノ奴ガ活キテ居ルトキハ之ハ一番ニナル
(南部委員)
第三番目ノ物ハ其時分ハドウ云フ場合カト云フト矢張リ二番ノ位ヲ持ツテ居ル
(箕作委員)
千二百五十一條ト同ジ條ダガ千二百五十一條ハ留保シテアルノデス
(栗塚委員)
尾崎サンニ其御柊ガアル樣デ御座イマスガ然レドモカラ先キヲナシニシテ讀ンデ御覽ナサイソレカラ二項ハ其變別ヲ說イタノダト御覽ニナレバ少シモ惡ルイコトハ御座イマセンソレヲ初メト次ギト一所ニスルカラデス
(元尾崎委員)
無理ニ攻撃スルノデハアリマセン假令バ取消サン内ニ甲乙ト二人アル甲ガ抹殺サレタ處ガ乙ガ一番ニナル抹殺ノ後ニ記入シタ奴ガ出テ來タ此度ハ甲ガ元トニ戻ツテ活キタトキハ乙ニ對シテ一番ニナリ丙ニ對シテ二番ニナル
(栗塚委員)
貴君ノハ乙ハ今迄ハ一人ホカ頭ラニナカツタカ二人アル樣ニナツタト云フノデ御座イマシヨウ
(村田委員)
甲ガ詰リ損ヲスルコトニナル
(元尾崎委員)
ケレドモ乙ヨリ先立ツト云フ順位ニ復スルト云フノハ分ラン貴君ノハ乙ニ對シテ順位ニ復スルガ丙ニ對シテハ後ニナラナケレバナラント云フノデシヨウ
(南部委員)
乙ト云フ奴ハ初メカラ二番ニ居ルカラ元トノ通リニ金高ヲ定メレバ宜シイ
(元尾崎委員)
假令バ千圓ノ抵當ガアル其時甲ガ五百圓乙ガ五百圓此場合ニ於テ甲ガ戻ツテ來タトキハ五百圓取ル樣ニナルダロウソウスルト丙ガ取ルモノガナイ
(南部委員)
五百圓ガ三ツデアルニ千圓ホカナイトキハ乙ハ元トカラ二番抵當デ五百圓取リマス
(栗塚委員)
甲乙トアツテ甲ガ無クナツタ跡ヘ丙ガ這入リ丙ガ二番目ト思ツテ居ル處ガ甲ガ活キテ來タトキニハ丙甲ニナル乙ト丙ト論ズレバ乙丙トナル甲乙ト論ズレバ甲乙トナル
(村田委員)
甲乙丙ノ三人ヘ三百圓貸シテ二百五十圓ホカナイトキハ丙ハ百圓乙ハ百圓甲ハ五十圓ホカ取レナイ
(栗塚委員)
原位ニ復スルト云フノハ甲乙丈ケノ間ノ話デ丙ガ出タラ別ダト云フノデ御座イマス
(村田委員)
金ガ多ケレバ宜シイガ金ガ少ナイトキハ具合ガ惡イ
(南部委員)
詰リ甲ガ損ニナル
(元尾崎委員)
抵當物ハ二百圓ホカ無カツタトキハ甲ハ少シモ取レンカ
(南部委員)
取レン
(栗塚委員)
二百圓ノ抵當物デ丙ガ出テ來ナケレバ甲ハ百圓取レルガ丙ガ出テ來タ爲メニ甲ハ何モ取レナクナル
(元尾崎委員)
ソウスルト原位ニ復スルト云フコトハナイ
(栗塚委員)
ソレガ然レドモデス
(松岡委員)
甲ガニ百圓ニ貸シテ乙ガ百圓ニ貸シテ丙ガ百圓ニ貸シタトシテ抵當ノ金ガ二百圓ノトキハドウナリマスカ
(南部委員)
二百圓ノ物ニ第一ニ二百圓貸シテ其後ニ二番抵當ニ百圓貸スト云フコトハナイ
(松岡委員)
二百五十圓アツタトキハドウシマスソレデ丙ガ出來テ甲ガ消ヘタ跡デ來レバ乙ハ五十圓丙ハ百五十圓トナル
(南部委員)
ドウモソウ云フ例ハアル筈ハナイ
本條ハ原案ニ決ス
第千三百七條朗讀ス
第千三百七條 抵當ノ抛棄ハ場合ニ從ヒ有償又ハ無償ノ名義ニテ債權ヲ處分スルノ能力ヲ有スル債權者ニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
債權者其抵當順位ノミノ抛棄ヲ爲ストキモ亦同シ
抵當又ハ順位ノ抛棄ハ默示タルコトヲ得
債權者カ讓渡人ト共ニ抵當不動產ノ讓渡ニ參加シタルトキハ其參加カ法律上或ル特別ノ名義ニテ要セラレサル場合ニ限リ追及權ノミニ關シテ其抵當ヲ抛棄シタリト看做サル
(栗塚委員)
此留保トアルハ消シマス
(村田委員)
場合ニ從ヒト云フノハ入ラン樣デス
(栗塚委員)
無クテモ差支アリマセン
(南部委員)
場合ニ從ヒガナイト有償名義ニテ債權ヲ處分スル能力ガ無償名義デ債權ヲ處分スル能力ガ何レカ一ツアツタナレバ抛棄ガ出來ルト思ヒヤセンカ
(元尾崎委員)
ソンナコトハナラン
(箕作委員)
場合ニ從ヒハアツテモ宜シイ
(元尾崎委員)
アルト分リ惡ルイ
(箕作委員)
アレバ變ナコトガアルト考ヘサセル種ガアルダロウ
(栗塚委員)
有償名義ノトキハ有償名義デヤラナケレバ無償名義ノトキハ無償名義デヤルト云フノデ御座イマス
(松岡委員)
無償名義ノモノデモ場合ニ因テハ有償デ出來ル場合ガアルト見ルカ知レン
(元尾崎委員)
場合ニ因テハ出來場合ニ因テハ出來ナイト見ヘル
(淸岡委員)
有償又ハ無償名義ノ各場ニ於テトスレバ宜シイ
(栗塚委員)
ソレヨリ有償ノ場合ニハ其名義ニテ又ハ無償名義ノ場合ニハ其名義ニテトスルガ良カロウ
(箕作委員)
ソレヨリ原案ガ宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第千三百八條朗讀ス
第千三百八條 抵當ノ時效ハ不動產カ債務者ノ資產中ニ存スル場合ニ於テハ債權ノ時效ト同時ニ非サレハ成就セス
右ノ場合ニ於テ債權ニ關シ時效ノ進行ヲ中斷スル行爲及ヒ之ヲ停止スル原因ハ抵當ニ關シテ同一ノ效力ヲ生ス
(松岡委員)
千二百三十四條トドウ云フ區別ニナリマスカ
(栗塚委員)
債權ニ關スル時效ト抵當ニ關スル時效ト同ジト云フ意味デハアリマセンカ
(松岡委員)
時效ハ中止シテモ彼方ハイケナイノデスカ
(元尾崎委員)
之ハ矛盾スル
(南部委員)
「抵當ノ時效ハ」卽チ三百八條ニ規定シタ通リ債權者ノ時效ガ停止スレバ抵當ニモ及ブ併シナガラ記入ト云フモノハソウハイカン記入ガ消ヘレバ
(元尾崎委員)
記入ガ消ヘテ抵當ガ損シテ居ルト云フノハ可笑モノ
(松岡委員)
ボアソナードハ撞着シタコトヲ書キハセンガ文字ヲ書入レナイ意味ガアルト思フ記入ガナクナレバ效ガナクナルノハ無論デアル
(淸岡委員)
記入ノ效力ハ無クテモ宜シイト云フノデハナイカ記入ノアルトキノ話ダ
(松岡委員)
時效ノ中斷ガアレバ續イテ行ク
(淸岡委員)
抵當ハ記入ガ消レバ消ヘテ仕舞ウ
(南部委員)
記入ト抵當トハ違ウ記入ハ久シクナルト分ランカラ記入ノ時效ヲ云フ話デ抵當ノ效力ニハ關係ナイト云フノダ
(箕作委員)
二百三十四條ニ一々書イテアツテ記入ノ時效ト抵當ノ時效トハ違フ
(元尾崎委員)
記入ガ無クナツタトキ抵當ヲ取ツタトキハドウナルカ
(南部委員)
ソレハ仕方ガナイ抵當ハ消ヘンケレドモ記入ハ消ヘル
(松岡委員)
記入ガ消ヘレバ第三者ヘ向イテ對抗ハ出來ナイダロウ
(箕作委員)
順位ガ惡ルクナル
(南部委員)
千二百九十九條ニアル
(松岡委員)
本條ノ抵當ハ第三者ニハ内所ノ抵當ニナルカ
(南部委員)
ソウダロウ抵當ハ第三者ニ對抗スルト云フ定義ハナイ登記スルハ第三者ニ對抗スルコトガ出來ル登記ヲシナケレバ對抗ハ出來ナイ
(栗塚委員)
記入ノ效力ト抵當ノ效力トノ違ヒガアリマス
(箕作委員)
順位ヲ失フコトノ樣デス記入ガ消滅スレバ抵當權丈ケ殘ツテ居ルガ元トノ順位ヲ失ツテ居ル後ニ記入スレバ記入シタ順位ニ依ル
(南部委員)
抵當ガ消ヘナケレバ記入ガ出來ル
(箕作委員)
出來ルケレドモ後ニ記入シタトキカラ順位ヲ定メン
(南部委員)
ソウデス
(松岡委員)
ドウモ文字上觸レルデハアルマイカト思フ貴君ラガ論究ノ上見出シタノデハナイカ
(栗塚委員)
論究ノ上デ見出シタノデ御座イマス
(箕作委員)
記入ト云フノハ何ノ爲メカト云フト第三者ニ示シタノダケレドモ記入シテ居ル第三者ニ對シテ己レノ方ガ效ガアルト云フ無特權債權者ニ對シテハ效ガアルノデ御座イマシヨウ
(栗塚委員)
ソレハ出來マス
(松岡委員)
ソレハイケンデシヨウ三十年ヲ過ギレバ假令債權ヲ停止シテアロウトモ記入デ第三者ニ向ヒ效力ヲ失フ
(南部委員)
若シ抵當ガ消ヘレバ記入モ出來ナイ
(栗塚委員)
記入丈ケガ消滅スレバ記入ガ出來抵當ガ消滅スレバ記入ハ出來ナイ
(村田委員)
前ハ記入丈ケノコトヲ云フノダ
(松岡委員)
第三者ニ向ツテハ無イト云フコトハ此條デハ見出スコトガ出來ナイ抵當ノ效ガアルト云フコトハ出來ン
(栗塚委員)
債權ガアル以上ハ消ヘナイ
(松岡委員)
併シナガラ債權ガ中斷ト停止デ三十年ヲ經過スレバ抵當ハ記入スル權利ガ殘リ居ルト見ルノハ無理ダ
(南部委員)
記入ノ權ガ殘ツテ居ルノデハナイ抵當ガ殘ツテ居ルノデス
(松岡委員)
優先權ハ第三者ニ對スルカラ云フノダ抵當ガ效ヲ生ズルノハ公示シナケレバ優先權ガナイ
(栗塚委員)
記入ノ效力ヲ失フ但抵當權ハ消滅セズト云フヲ置ケバ宜シイノデス
(松岡委員)
其旨意ナレバ此條ハ入ラン筈ダ前ノ條ニ中斷シテ更新スレバ續クト云フテアルカラ之ハ入ラン
(南部委員)
彼レハ滿了後デス
(松岡委員)
滿了後ニ出來ヨウ筈ハ御座イマセン
(栗塚委員)
三十四條ハ何デ書イタカト云フト記入ハ長引カンデハイカン證據書類抔ガ湮滅スルカラ三十年ホカ效ガナイトスルハヨケレドモ記入ハ效ガアルゾヨト云フノハ更新ゾヨ併シ抵當ガ債權ト共ニ存スルト云フノハ理窟デ御座イマシヨウ何ゼト云フニ返ランカモ知レンカラ擔保ヲ取ツテ居ルノダカラ債權ガ消ヘンケレバ擔保ガ損シテ居ルノハ當リ前デ御座イマシヨウ處ガ證書ガ無クナルト記入ガ面倒ダカラ三十年デ止メルゾヨ證據ノ力ハ三十年デアルガ其原ノ力ハ何時マデモアルゾヨ
(松岡委員)
抵當ノ權ガ現在シテ何ス證據ノ力ガアルダロウ
(南部委員)
ソウスルト記入ガナケレバ抵當デハナイト云フ論ダ
(松岡委員)
抵當ハドウスルカト云フト他ノ人ニ先立ツ
(栗塚委員)
三十年經テ其間ニ中斷停止ガアツテ債權モ抵當モ殘ツテモ記入ノ效力ヲ失ウ譯ニハ行キマセン甲乙ノ間デハ抵當ガアルニモセヨ乙ニ向ツテハ負ケルニ相違ナイ
(松岡委員)
三百八條ハ弊ヲ見ナイトキダ相對間ノ擔保ガ尙ホ存スルト云フナレバ優先權ハ尙ヲ效力ガアルカト云フトソレハナイト云フト虛ニナル
(南部委員)
抵當物ノ賣却ハ記入ガナクツテモ今デモ賣ツテ貰ウコトガ出來ル
(松岡委員)
ソンナラ債權者ト債務者ノ間ニ效アリト書ケバ宜シイ
(栗塚委員)
私ガ貴君ニ三口ノ貸金ガアルトキ一ト口ノ抵當ヲ持ツテ居レバ第二第三デモ大變デ御座イマシヨウ他ノ債務ト云ヘバ必ラズ第三者ヲ擔ギ出スコトハアリマスマイ第三者ガ抵當ノ條件ノナツタトキハ變ナモノデ御座イマス幾ツモノ債務ノ内ニ抵當ガアツタラバト云フコトデス
(松岡委員)
第三者ハ這入ツテ居ランカ
(栗塚委員)
這入ツテ居リマスガ第三者ガ這入ツテ居ルノ必用不必用ハ抵當ノ處デ論スベキデハアリマセン
(南部委員)
松岡君ノ說デハ抵當ト云ヘバ必ズ記入ガシテアルト見ナケレバナランガソンナコトハナイ
(栗塚委員)
證據ノ力ハナクテモ抵當ガ活キテ居ルト云フコトヲ書クガ三百八條ハ記入丈ケダゾヨト云フコトヲ示ス說ナレバ宜シウ御座イマス
(南部委員)
抵當ハ存シテ居ル併シ第三者ニ對抗スルニハ記入ヲシナケレバナラント云フノダカラ分ツテ居ル
(松岡委員)
相對間デハソレ丈ケノ效ヲ持ツト云フヨリ外ニ仕方ガナイソレヲ云ハズシテ抵當ノ切リ分ケノ出來ヨウガナイ
(南部委員)
相對間デハナイ衆人ニ對抗ガ出來ル
(栗塚委員)
併シ記入ガ無クナツタ爲メニ對抗ガ出來ンゾヨ
(淸岡委員)
先キヘ行キマシヨウ
(栗塚委員)
但第千二百三十四條ノ規定ヲ妨ゲズトヤツタラ宜シウ御座イマシヨウ
(南部委員)
妨ゲルモノデハナイ
(箕作委員)
ソンナコトハ入ラン條デス
(委員長)
柊ノ起ツタノハ抵當ト記入ヲ一所ニスレバ矛盾スル樣ダケレドモ財產ノ登記ニ效力ノアルコトト抵當ト同ジ樣ニ考ヘレバ良ク分ル
(栗塚委員)
三十年デ抵當モ消ヘルト云ヘバ記入ハ出來マスマイ其差ガアリマス
(箕作委員)
先刻ノ他ノ債權ト云フ辯明ハ窮シタ答辯ダ
(栗塚委員)
第三者ヲ扣キ出ス必用ハナイ
(村田委員)
財產中ニ存スルト云フト財產ノ中ニ存スル樣ニ見ヘルガ繼續スル中ハト書イテアル
(箕作委員)
資產中ニ存スルトシヨウ
(栗塚委員)
資產ガ宜シウ御座イマシヨウ
本條「財產」ヲ「資產」ト改ム
第千三百九條朗讀ス
第千三百九條 抵當不動產ノ所有者タル債務者カ其不動產ヲ讓渡シテ取得者又ハ其承繼人ガ之ヲ占有スルトキハ記入シタル抵當ハ抵當上ノ訴訟ヨリ生スル妨碍ナキニ於テハ取得者カ其證書ヲ登記シタル日ヨリ起算シ三十个年ノ時效ニ因リテノミ消滅ス但債權カ免責時效ニ因リテ其前ニ消滅スヘキ場合ヲ妨ケス
(元尾崎委員)
抵當物ヲ賣ツタトキモウ三十年行カンケレバナラン抵當ノ記入ヲシテカラ五十年目ニナルノダ處デ抵當ノ記入ハ三十四條デ十年デ消ヘテ仕舞ウ記入ハ消ルガ抵當ハ五十年活キ居ルカ
(栗塚委員)
ソウデス
(元尾崎委員)
記入シタル抵當ハ二十年目ニ外ニ賣ツタ其レガ記入ヲスルトモウ三十年經タント前ノ抵當ガ消滅センソウスルト假令バ四十年目ニ抵當債權者ガ金ヲ返サントキハ抵當ヲ取ツテ公賣シテ取ルト云フトキドウスルカ取得者ノ權利ガアルカネ
(栗塚委員)
仕方ガナイカラナケレバナリマセン
(元尾崎委員)
記入ハ消ヘテモヤラナケレバナランカ
(栗塚委員)
知ツテ居ルカラヤラナケレバナリマセン滿天下ノ人ガ知ツテ居レバ記入スルニハ及バン知ラナイカラ記入スルノデ御座イマスカラ知ツテ居レバイケマスマイ
本條原案ニ決ス
第千三百十條朗讀ス
第千三百十條 眞ノ所有者ニ非サル者カ不動產ヲ讓渡シタルトキハ占有者ハ其善意ナルト惡意ナルトニ從ヒ所有者ニ對シテ時效ヲ得ル爲メニ必要ナル時間ノ經過ニ因リ記入シタル抵當債權者ニ對シテ時效ヲ取得ス
無名義ニテ不動產ヲ占有スル者ニ付テモ亦同シ
(栗塚委員)
之ハ一人ハ三十年一人ハ十年ト云フ樣ナ區別デス
(箕作委員)
眞ノ所有者ニ對シテ時效ヲ得ルト同時ニ抵當ノ消滅ヲ得ルノデスカ
(栗塚委員)
ソウデス
(箕作委員)
惡意ハ三十年デ善意ハ十年デスカ
(元尾崎委員)
眞ノ所有者ニアラザルモノガ讓渡ト云フコトガアリマスカ
(栗塚委員)
貴君ガ西洋ヘ行ツテ居テ貴君ノ御舎弟サンガ貴君ノ相續部分ヲ賣ツタノデ御座イマシヨウ
(元尾崎委員)
假令バ我輩ノ地面ガ少シ都合ガアルカラ村田君、君ノ名前ニシテ呉レト云フソレヲ村田君ガ自分ノ物ト思ツテ賣ツタト云フモノガアルカ知ラン
(栗塚委員)
ソウ云フ場合モアルダロウ
本條ハ原案ニ決ス
第千三百十一條朗讀ス
第千三百十一條 第三所持者ノ爲メノ抵當消滅ノ時效ハ記入ノ更新ニ因リテ中斷セラレス然レトモ其時效ハ占有者ノ任意ノ追認及ヒ第千二百七十四條ニ規定シタル如ク其占有者ニ爲シタル催吿其他總テ抵當權ニ效力ヲ與フル行爲ニ因リテノミ中斷セラル
右ノ時效ハ債權ニ附着スル期限又ハ條件ニ因リテ停止セラレス
(箕作委員)
千三百十二條ヲ削除シ修正ノ上前條ノ末項ト爲スト云フノハ
(栗塚委員)
此條ノ第二項ノ右ノ時效ガト云フノガソレデス
(村田委員)
占有者ハ所持者トシタラ良カロウ
(元尾崎委員)
此第三所持者ハ讓受人カ
(栗塚委員)
ソウデス
(元尾崎委員)
千三百九條ト違ウ
(南部委員)
三十年ノ内ニ記入ノ更新ヲシタ處ガ矢張リ中斷セラレズシテ無クナツテ仕舞ウ
(元尾崎委員)
記入ハアルケレドモ抵當ハ損シテ居ルト云フト第三所持者ガ登記シテモ登記シテカラ三十年經タナケレバ前ノ抵當ガ消滅シナイ
(南部委員)
三十年間ニ更新シテモ三十年ヲ過ギレバ消ヘテ仕舞ウ
(元尾崎委員)
二十年目ニ登記スレバ二十年經タナケレバ時效ニ係ランカ
(箕作委員)
任意ノ追認ガアレバ格別ダ
(元尾崎委員)
極點ハ六十年迄行ケル樣ニナル
(箕作委員)
記入ノ更新ハ第三所持者ハ知ランコトダカラ中斷シテハ困ル
(村田委員)
占有者ハ所持者トシテハドウデス
(栗塚委員)
所持者デ分リマシヨウ
(村田委員)
催吿ノ上ニ委棄スルカ辨濟スルカノ催吿トアル
(栗塚委員)
千二百七十四條ガアルカラ分ルト思ヒマシテ削リマシタ
(委員長)
右ノ時效ト云フノハ
(南部委員)
債權ニ期限ガアツタリ又ハ條件付デモソレガ爲メニ時效ノ停止ハ致シマセン
(委員長)
時效ノ停止ハアリ樣ガナイ債權ガ消滅スル以上ハ抵當モ無クナル筈デ御座イマシヨウ
(南部委員)
債權ガ活キテ居テモ抵當ガ消ヘル
(委員長)
此文章デハ債權ニ期限ガアツテ債權ハ死シテモ抵當ハ活キテ居ル樣ニ見ヘル
(松岡委員)
債權ガ活キテ居テモ抵當ガ中斷セラルルト云フノデ御座イマス
(栗塚委員)
次ノ條ヲ削リマシタソレハ前ニ申シマシタ通リ千二百條ノ處デ附錄ヲ止メマシテソレト同時ニ彼處ヘ送リマシタカラ彼レデ御覽ニナレバ分リマス
本條ハ原案ニ決ス
(栗塚委員)
次ニ前ノ留保ノ分ヲ御議シヲ願ヒマス百五十二條百五十三條百五十四條ヲ議シマス之ハ一旦議場デ決シタノヲ改メタイト云フ論ガ出マシテ前後ニ□ □ ガ出來レバ百十三條ヲ活カシマス活カセバ號外民法修正按ト云フノニナリマス
于時正午休憩
午後一時開會
財產篇第百五十二條第百五十三條第百五十四條ノ再議
第百五十二條 一箇ノ建物ニ數人ノ賃借ノ人アルトキハ其賃借人ハ所有者ニ對シ全部ニテ火災ノ責ニ任ス但各賃借人又ハ其幾人ニ過失ナキノ證據アルトキハ此限ニ在ラス
第百五十三條 前條ノ場合ニ於テ賠償ヲ辨濟セシ者ノ求償ニ付イテハ裁判所ハ各借用場所ノ廣狹ト賃借人ノ營業及ヒ常習ヨリ生スヘキ危害ノ輕重トヲ酌斟シテ各賃借人ニ償金ヲ分擔セシム
第百五十四條 所有者カ燒失セシ建物ノ一部分ニ住居シタルトキハ火災カ其部分ヨリ起ラサリシコトヲ證スルニ非サレハ賃借人對シ賠償ヲ要求スルコトヲ得ス此場合ニ於テモ賃借人ノ全部責任ハ其借用セル場所ノ價格ヲ以テ限リトス
(栗塚委員)
百五十三條ヲ議場デ削除ニナリマシタ
(寺島委員)
全部義務ヲ止メテ五十四條ハ元トノ儘ニナツテ賃借人ガ求償ノ責ヲ持ツテ居リマスカラ此間ニ不公平ハナイカト思ツテ起按者ニ質問致シマシタ賃借人ハ各自ノ借リテ居ル部分丈ケノ責任ホカナイコトニナリマシテ別レ別レデ義務ヲ負ウコトニナリマシタ一人賃借人ノミ五十四條デ義務ヲ負ツテ居ルノハ不公平デハナイカト云フ掛念カラ起按者ニ質問致シマシテ起按者ノ意見ガ皆サンノ上ゲテアル通リニナリマシタボアソナード氏意見書火災ノ場合ニ於ケル共同賃借人ノ責任人槪ネ云フ火災ノ場合ニ於テハ共同賃借人ニ對シ二箇ノ嚴例アリ第一過失ノ推定第二連合ノ責任(連帶タルト單ニ全部ナルト賃借價額ニ比例スルトヲ問ハス)是レナリト然レトモ其實普通法ノ變則タルモノハ單リ第二ノ法例ノミ第一ノ法例ニ至テハ之ヲ以テ普通法ノ變則トスルハ誤謬ノ見タリ抑々火災ハ未タ必スシモ意外ノ變災又ハ不抗力ニ出ツルモノアラス而シテ佛國法及ヒ日本法共ニ意外ノ變災又ハ不抗力ヲ主張スル者ハ其證據ヲ提擧スヘシト云ヘリ故ニ火災アリタル旨ヲ證スルハ意外ノ變災又ハ不抗力ヲ證明スルニアラサルナリ(且火災ノアリタルコトハ人ノ能ク知ル所ナリ)唯其火災ノ原因意外ニ出テ又ハ抗拒シ難キモノナルコトヲ證明スルコトヲ要ス而シテ若シ之ヲ證明セサルトキハ過失アリト推定セラルヘシ是レ普通法ニシテ余カ考フル所ニ依レハ凡ソ法律又ハ約束ニ因リ他人ノ物件ヲ監護保存スルノ義務アル一切ノ握有者ニ對シテモ亦同樣ニ處斷スヘキモノトス此過失ノ推定タル能ク事實ニ適合スルモノナリ何セトナレハ單ニ(起因ニ於テ〕意外ナル原因ニ係ル火災ト懈怠ニ出ツル火災トヲ計算スルトキハ懈怠ニ出ツモノ甚タ多キヤ明カナレハナリ此點タル敢テ非難ヲ容レサルカ故ニ第二點ニ移テ之ヲ論セン二名又ハ三名ノ賃借人同一ノ家屋又ハ同一ノ構内ヲ借用シ火災ノ意外ノ原因又ハ其一人ノ特別ノ過失ヲ證スルコト能ハサルトキハ其責任ノ部分ヲ規定スルヲ要ス此點ニ付テハ數多ノ法則〔少クモ四箇)ノ取ルヘキモノアリ第一責任ヲ分頭ニスルコト卽チ賃借人ノ二名、三名、四名ナルニ從ヒ其責任ヲ二分一三分一又ハ四分一トスルコト然レトモ此法タル謬妄ナルモノナリ過失ハ二分一、三分一、四分一ヲ行フモノニアラス余ノ見聞スル所ニ依レハ何レノ法律モ斯クノ如キ法則ヲ定メタルコトナク又孰レノ論者モ之ヲ主張シタルコトアラサルナリ第二、責任ヲ各自ノ賃借價額ニ比例セシムルコト此法則タル伊太利法典及現行佛國法典ノ認定スル所ニシテ富裕ナル賃借人アルトキ資產ノ富マサル賃借人ノ負擔ヲシテ甚タ重カラシメサラントノ趣旨ニ出テタルモノナリ然レトモ是レ亦第一ノ法則ト同シク法理ニ適フモノニアラス加之却テ一層奇怪ナルモノナリ若シ賃借人全員ニテ一千圓ヲ拂ヒ其一人九百圓ヲ拂フヘキトキハ第一者ハ過失十分ノ九アリテ第二者ハ十分一アリト謂フヲ得ヘキヤ是レ過失ヲ平等ニ分割スルノ說ニ比シ更ラニ妄誕ナル說ナリトス第三、責任ヲ連帶ニスルコト此法則タル久シク佛國法典ノ取用シタル所ニシテ其他諸國ノ過半ニ於テ用ヒタルモノナリ而シテ之ヲ廢シタルハ其漫ニ事實ニ反シ賃借人間ニ絕ヘス關係アリト假定スルモノナルカ故ナリ今此法ヲ取ルトキハ一人ニ對スル訴訟ハ自餘ニ對シ等シク時效ヲ中斷シ延滯利子ヲ負擔セシムル等ノ結果ヲ生スヘキナリ此結果タル原則ヲ誤ルヨリ自然ニ生スルモノニシテ遂ニ之カ爲メニ連帶ヲ廢スルニ至リシナリ其廢止ハ妥當ト云フヘシ第四、然ルニ連帶ナキ全部ノ責任、不完全ナル連帶タル「イン、ソリドム」義務ニハ未タ曾テ着意セシ者アラス日本草案ノ起草者モ第千七百四條ニ關シ終ニ之ヲ考出シタルヲ以テ速ニ第百五十二條ヲ此意義ニ改メリ今ヤ益々其眞理ニ合從スルヲ確信ス其結果毫モ非難ヲ容レサルナリ第一、事物ノ自然ノ理ニ從ヒ過失ハ不可分タリ第二、加害スルノ共謀ナキヲ以テ過失ヲ賠補スルノ相互ノ代理ナシ(數人放火罪ノ場合ト同シカラス)故ニ一人ニ對スル訴訟ハ自餘ニ對シ其效ナシ
(栗塚委員)
過失ノ二分ノ一三分一ト云フコトガドウシテ云ヘルカ過失ノ分量ヲ立テルコトハ出來ナイト云フノガ六百五十三條ヲ置キマシタ所以ダソウデ御座イマスソレカラ後ニソレヲ互ニ計算スルトキハ當リ前過失ヲ當テル
(寺島委員)
一體誰レガ過失ヲ作ツタカ分ラン場合デス百五十二條デ御修正ニナツタ時分ニハ各自ガ借リタ分丈ケノ處ヘ火事ヲ作ツタモノト推定シテ償ヲサセルト云フコトデアリマスレバ五十三條ニ至ツテモ分ラン場合デ御座イマスカラ銘々住ンデ居ツタ丈ケノ過失ヲシタモノト見テ一所ニ過失ヲシタモノト推定シテ各自別々ニ火事ヲ作ツタモノト推定シナケレバナラン樣ニ我々ハ考ヘマスソウスレバ一人所有者ニ自分ノ過失ガ無イト云フ證據ヲ擧ゲナケレバナラン其證據ガ擧ラン限リニハ賃借人カラ賠償ニ受ケルコトハ出來ント云フノハ賃借人卽チ所有者ニ責メルノハ苛酷デハナイカト云フノデ御座イマス五十二條ノ通リナレバ銘々借リタ分丈ケ過失ヲシタモノト見マスカラ五十四條ニ至ツテモ賃貸人ガ證據ヲ擧ゲマセンデモ賃借シテ居ル部分丈ケニ對シテ要償ヲスルコトガ出來テ權衡ガ良クナカロウト思ヒマスソレヲ單リ五十三條ヲ御削リニナツテ五十二條ノ全部義務ヲ各自ノ義務ニ御修正ニナツテ五十四條ノミ賃貸人ニ重大ナル結果ヲ抱ハセルハ甚ダ不公平ト云フコトデハナイカ五十二條ガ各自ノ義務ニナレバ五十四條モ其權衡ニ修正シテハドウカト云フ說ガ報吿委員デ起リマシタ其末起按者ニ尋ネルコトニナリマシタノデ御座イマスカラ五十四條ト五十二條ト賃借人ト賃借人ノ權衡ヲ御講究ニナリマス樣ニ希望致シマス
(箕作委員)
五十二條ニ修正シテモ五十三條ヲ活カサンデモ五十四條丈ケ都合良ク修正スレバ權衡ガ取レルデアロウ
(寺島委員)
ソレヲシタイ處カラ起按者ニ質問シマシタ處ガ答ガ來マシタ
(箕作委員)
起按者ハ原按ノ通リシタイト云フノダガソレデナクモ良カロウ
(寺島委員)
報吿委員デハ起按者ニ尋ネマシタ處ガ今ノ通リノ答ガ參リマシタ過失ヲ二分一三分一ト別ケルノハ不都合千萬ダト書イイテ御座イマスカラ報吿委員ハソレニ同意致シマシタドウカ回復ガ出來ルナレバ回復ヲ願ヒマス併シ起按者ニ質問スル原因ハ只今申シマシタ處デ御座イマス二條ト四條ガ不公平デアル額ニ應ズルト云ヘバ賃借人ガアレバ三人トモ別々ニ過失ヲ作ツタ樣ナ推定ニナツテ仕舞ウドウシテモ全部義務ニナラナケレバナラン
(松岡委員)
其論ヲ詰メレバ五十三條ノ起按ガ惡ルイト云ハナケレバナラン求償權ニナツタ時分ニハ場所ノ廣狹ト云フ處ニ氣ガ付ケラルルガ過失ガ擧ゲラレント云ヘバ求償權モ擧ゲラレント云ハナケレバナラン矛盾ノ法ト云ハナケレバナラン既ニ求償權ノ時分ニ廣狹ニ因テ申分ガナイト云ヘバ初メノ賠償ノトキモ過失ノ大小ニ依ラナケレバナラン
(栗塚委員)
處ガ何デ金ヲ拂フカト云フト過失ガ原デソレダカラ金ヲ拂ハナケレバナラン
(松岡委員)
御前サンハ過失ハ別タレント云フテ全都御拂ヒニナツテ求償權デ私ノ家ガ廣ヒカラ澤山金ヲ出サナケレバナラント云フノハドウ云フ譯カ
(寺島委員)
其時分モ頭割ニスレバ宜シイト云フノデ御座イマス
(松岡委員)
初メ此過失ガ分カラント云フ
(寺島委員)
損害ヲ受ケタ人ニハ分ケルコトハ出來マスマイ
(松岡委員)
過失ヲ分ケルト御大層ニ云フカラソウダケレドモ誰レガシタカ分ラン過失ト云ヘバ持ツテ居ルモノカラ取ルト云ヘバ當然ダ
(寺島委員)
三人デ過失ヲシタト云フコトニナレバ其過失ニ因テ損害ヲ來タシタトキハ三人ガ償ウガ割前デナク全部ヲ償ウ卽チ現行刑法モ其通リデス
(松岡委員)
畢竟合意上デナイモノヲ法律デ此位ニ定メナケレバナラント云フ考ヘニホカナラン
(寺島委員)
連帶デモ不可分デモ少シノ違ヒデ性質上過分ノモノトモ申セマセン不可分ト云フコトニ付イテハ異議ハ御座イマスマイ起案者ガ云フテ居リマス
(栗塚委員)
私ト寺島君ト此家ヲ燒イタトキ栗塚ガ三分ノ一ヲ燒イタ寺島君ガ二分ノ一ヲ燒イタト云フコトハ出來マスマイ
(南部委員)
最初之ヲ連帶ト云フコトニナツテ連帶ハ酷イト云フコトデ削除シタ時分ハコウ云ウ考デアツタカ知ラン連帶ハ家主ニ對シテ連帶スルノダカラ連帶シテ償却シテ仕舞ウ三人デ借リテ居レバ一人ガ二人分ヲ負擔スルノハ酷イカラ別々ニ自分ノ額丈ケ持タナケレバナラント云フコトデコウナツタノデ御座イマスガ連帶ナルモノハ貸主ヘ對シテ云フコトバカリデ御互ノ間ハ求償權ガアルト云フコトガ云ヘルガソレハ之ヲ削除シタ時分ニハ分ラナカツタト思ヒマス之ヲ元トニ復シテ差支ナイノミナラズ連帶シタ借人ガ一人デ二人分ヲ拂ウケレドモ後ニ求償權ガアルト云フ塡メ合ハセガ付クカラ全部義務トシテモ差支ナイ
(大尾崎委員)
後ニ塡合ハセノ場合ハ今迄決議ニナツテ居ル場合ニナルダロウト思ヒマスカラ決議ノ通リデ宜シイ
(栗塚委員)
決議ノ通リデ置ケバ四條ニ病ガアル
(元尾崎委員)
之ガ宜シイ
(松岡委員)
現行法律カラ云ツテモ失火ハ丸ルデ責任ヲ持タセン位ナモノデアル
(寺島委員)
丸ルデ持タセンケレバ持タセンデモ宜シイガ持タセルコトニスレバ一人貸主バカリ迷惑スルノハ宜シクアリマセン若シ證據ガナケレバ法律ハ貸主ガ火事ヲ作ツタモノト推求シナケレバナラン
(大尾崎委員)
ソレハ不公平ノ樣ダケレドモ自分ノ所有物ダカラ借人ヨリ貸主ハ餘程注意シテ居ラナケレバナラン今迄ノ慣習ハ丸ルデ所有主ノ損ニナツテ居ルカラ之レ位ニ所有者ノ責任ヲ重クシテモ差支ナイ
(寺島委員)
百五十七條ハ用益者ト同一ノ負擔ヲスル管理ニ注意シ用益者ト同一ニシナケレバナランソレヲ貸主ガ人ニ貸シテアル所マデ別段ン注意ヲシナケレバナランコトハナイ
(松岡委員)
自分ノ方カラ起ラナイト云フコトヲ證サナケレバ外ヘ向ケルコトハデキナイ
(寺島委員)
ソレ故ニ貸主ガ自分デ作ツタモノト推定スル五十二條デハ皆ガシタノダロウト云フ推定ヲ受ケテ其中ヘ貸主ガ這入レバ家主バカリ責ヲ負ウト云フノハ權衡ガ惡ルイ
(松岡委員)
此レ位ノコトハ權衡ガ惡ルイト云フコトハナイ
(大尾崎委員)
一遍全部ノ責ニ任ジテ誰レデモ一人賃貸人ニ拂ハナケレバナランソレカラ求償シ依ツテ他ノ賃借人ガ拂ウト云フノハ貸家ノ廣狹抔ヲ裁判所デ斟酌シテ求償權ガ得ラルト云フノハ甚面倒ダ
(栗塚委員)
五十四條デ若シ所有者ガ居ツタレバト云フノハ惡ルイ
(寺島委員)
五十四條デハ火事ヲ作ツタコトガ分ランケレバ貸シタ人ガ一人デ火事ヲ作ツタモノト推定スルト云フノハ酷デハアリマセンカ
(大尾崎委員)
天災ト見レバ宜シイ
(寺島委員)
ソレナラ五十二條モ天災ト見ル樣ニナリマス
(栗塚委員)
五十三條ヲ活カスモ止メルニモセヨ修正シタ旨意ヲ貫ク樣ニシヨウデハアリマセンカ
(淸岡委員)
五十四條ヲ五十二條ト權衡ノ付ク樣ニシヨウト云フノデ御座イマスカソレヲ五十三條ヲ活カスト云フカラ惡ルイ
(寺島委員)
ソウデス
(淸岡委員)
五十四條デモ分ラントキハ貸人モ賃借人モ割合ツテスルト云フノデスカ
(栗塚委員)
ソウデス
(箕作委員)
ソウ云フ按ナラバ贊成スルガ三條ヲ元ヘ戻スト云フカラ惡ルイ
(栗塚委員)
五十三條ヲ活カスコトガ出來ナケレバ五十二條ノ終リヘ二項トシテ「所有者カ燒失セシ建物ノ一部分ニ住居シタルトキモ亦同シ」トスレバ宜シイ五十四條ガアルノハ三條ガアルカラノコトデ御座イマスカラ三條ガ無クナレバ四條モ此儘置クノハ惡ルイ
(箕作委員)
ソレガ良カロウ
(南部委員)
ソレガ宜シイ
(渡委員)
ソレデ權衡ガ合ウ
(委員長)
五十二條ニ別項ヲ入レマスカ
(栗塚委員)
二條ノ別項ニ「所有者カ燒失セシ建物ノ一部分ニ住居シタトキモ亦同シ」ト致シマス第百五十二條ヘ左ノ一項ヲ加ウ所有者カ燒失セシ建物ノ一部分ニ住居シタルトキモ亦同シ
第百五十三條削除
第百五十四條削除
第百五十七條末項ノ再議
(栗塚委員)
第百五十七條ノ末項ノ法律ニ定メタル原因ハ何ノ爲メカト云フ御尋ネガ御座イマシタ註ニモ御座イマセンカラ起按者ニ尋ネマシタ處ガ「無能力又ハ承諾瑕疾ノ爲メ銷除又ハ債權者ヲ詐害スル爲メノ解除並ニ明示ノ解除等ヲ云フ」ト云フ答デアリマシタ
本條ハ原案ニ決ス
第百八十條ノ再議
(栗塚委員)
百八十條ノ借賃ヲ延滯セザルモ無資力トナリタルトキハ如何之ヲ處分スベキヤ問ウテヤリマシタ借賃ガ滯ルカ滯ル前カ借賃ガ延滯スレバ銷除ガ出來ルト云フ御答ヲ致シマシタガ起案者ガ千五十七條千五十八條デ定メナケレバナランソレハ擔保デ一昨日御議定ニナリマシタカラ御記憶ガアリマシヨウ
(松岡委員)
前年本年翌年マデノ分ニ非ザレバ先取特權ヲ有セズトアル
(栗塚委員)
來年分マデモ取レレバヨシ取レナケレバ仕方ガナイ此處デ見テ居ルノハ今日マデ滯リニナツタモノト看做シテ居ルト云フノデ御座イマス拂入レノ不足ハ借賃滯高ト修正シテモ宜シウ御座イマス
(松岡委員)
多少ニ拘ハラズト云フ修正案ガ出テ居ルニ拘ハラズデ違ウダロウト云フ說ガ出タ
(栗塚委員)
滯リガ何處マデモアツタト見ルト云フ答デアリマシタ
(松岡委員)
拂入レト云フト先キノ分マデモ云フ樣ニナルカラ
(南部委員)
辨濟ノ如何ナル不足ニ付イテモデモ宜シイ
(箕作委員)
借賃滯リガ無クツテ無資力ニナツタトキハ
(栗塚委員)
五十七條五十八條デ先取特權デ取レマス若シ取レバ來年マデ貸シテ置カナケレバナラン
(松岡委員)
既往デハ少シモ滯リガナクシテ無資力ニナルカラ翌年ノ分ガ取レントキハ矢張リ之ダカラ既往ノ分バカリト云ツテハ惡ルイ
(栗塚委員)
借賃滯リ高ノ多少ニ拘ハラズ來年迄ノ分ガ這入ルトシタラ宜シウ御座イマシヨウ
(元尾崎委員)
百八十條ヲ滯リ高ト云ヘバ今迄ノモノト先取特權ヲ滯リ高ト云フコトハ出來ナイ
(松岡委員)
既往ノ分ナレバ一向滯ツテ居ラン當年分デモ夏無資力ニナツテ秋米ガ取レルト云ヘバ滯リハアルトハ云ヘナイ
(箕作委員)
滯リ高ハ無理ナ言葉ダロウ
(松岡委員)
借賃ノ拂入レデ前ノ方デハ既往バカリ見テ居ルソレヲ是ハ先キマデ見テ居ルカラ拂入レノ不足ト云フ樣ナ妙ナ字ガ使ツテアル翌年マデ取レルト前條ノ拂入レト云フ字デハ狹クナル
(村田委員)
淸算ノ時分ニハ三年分取レルト云フノダロウ
(南部委員)
元トノ通リ辨濟ノ如何ナル不足ニ拘ハラズトシヨウ
(淸岡委員)
ソレガ宜シイ
(箕作委員)
其ノ方ガ宜シイ
(元尾崎委員)
辨濟デモ既往ノコトニナル
(委員長)
永借ダカラ辨濟ト云フタラ良カロウ
(村田委員)
永貸人ハ辨濟如何ナル不足ニ拘ハラズト云フコトハナクテモ宜シイ
(南部委員)
ソンナコトハ出來ナイ辨濟シテモ解除ガ出來ン樣ニナル
(元尾崎委員)
借賃滯リ高ノ如何ナル不足ニ拘ハラズガ宜シイ
(南部委員)
前項ノ貸賃ノ拂入レヲ辨濟トシナケレバナランデシヨウ
(箕作委員)
之ハ既往ノコトダカラ宜シイ
(淸岡委員)
下ノ延滯ナリ拂入レハ辨濟ガ良カロウ
本條「拂入レノ不足ノ多少ニ拘ハラス」トアルヲ「辨濟ノ如何ナル不足ニ拘ハラス」ト改ム
第二百七十七條ノ再議
(栗塚委員)
ソレカラ二百七十七條ノ二デ御座イマス間ニ少ナクトモ一尺ノ距離ト云フノヲ分界線トノ間ニハ其地方ノ慣習ニテ定マリタル尺度ノ距離ヲ存スルコトヲ要スト致シマス
(箕作委員)
尺度ト云フ字ハ入リマスマイ
(南部委員)
第三項ニモ慣習ノ尺度ト入レル積リデス
(栗塚委員)
三項ノ「一尺外ニ」トアル「其尺度外ニ」ト致シマス
本條第一項「間ニ少ナクトモ一尺ノ距離」トアルヲ「間ニス其地方ノ習慣ニテ定マリタル尺度ノ距離」ト改ム
第三項「一尺」トアルヲ「慣習ノ尺度」ト改ム「一尺外ニ」トアルヲ「其尺度外ニ」ト改ム
第三百四十七條ノ再議
(栗塚委員)
次ヘ三百四十七條ノ但書ヲ再調査デ削リマシタガ之ヲ活カス樣ニ願ヒマス「但其原因ニ付キ爭フコトヲ妨ケス」ト致シマス
(元尾崎委員)
アツテモ無クテモ同ジコトダ
本條ヘ左ノ但書ヲ加フ
但其原因ニ付キ爭フコトヲ妨ケス
第三百八十八條再議
(栗塚委員)
三百八十八條デ御座イマス之ハ起案者ガ直シテ參リマシタ三百八十八條ハ修正文ノ通リニナツテ居レバ宜シイノデス
(委員長)
直ツテハ居ラン
(栗塚委員)
ソレデハ此通改メヲ願ヒマス
(淸岡委員)
ソレハ前ニ削ツタノダ
(南部委員)
三百八十四條ニ訴ヲ受ケタト云フコトガアリマス
(栗塚委員)
第二第四ハ少シヅツ修正シテアリマス
(松岡委員)
八十四條ニ這入ツテ居ラン
(栗塚委員)
八十四條ノ總テ其ヲ削ツテ下ヘ訴ヘヲ受ケタル日ニ於テ現ニ得タル物ノ取消ヲ受ケト起按者ガ入レテ來マシタ
(箕作委員)
己レノ利益ニナツタト云フコトダ
(松岡委員)
ソレナラ現存スルトスレバ宜シイ
(村田委員)
現ニ利スルモノノガ宜シイ
(松岡委員)
利スルト云フト消費シタルモノデモ利シテ居ル
(箕作委員)
現存スルモノノ取戻ヲ受クルガ宜シイ
(松岡委員)
物品ガ分ツテモ宜シイカ
(箕作委員)
分ソテモ現存ト云ヘソウナモノダ
(松岡委員)
己レヲ利シタモノノ取戻ヲ受クダ
(元尾崎委員)
現ニ己レヲ利シタモノノトスレバ宜シイ
(委員長)
現ニ己レヲ利シタルトスルカ八十八條ハ不當ニ己レヲ利シタモノトスルカ
(栗塚委員)
其不當ニセシヲ利シタル物デ宜シウ御座イマシヨウ
(箕作委員)
今ノ處ト同ニシマシタラ良カロウ
(松岡委員)
現ニト云フ字ハ良クナイ起按者ハ其日ニ持ツテ居ル時計ガナケレバイケント云フコトデ御座イマスソラ第二第三ハ毀損ヲ滅少ト致シマス價額ヲ滅少シタト云フノデ消費シタト云フ意味モ籠ルト云フコトデ御座イマス
本條ハ第一項領受シタルモノハ以下左ノ如ク改ム
領受シタルモノハ訴ヲ受ケタル日ニ於テ其不當ニ己レヲ利シタル物ノ外ニ尙ホ左ノ物ヲ返還ス可シ
第二ノ冒頭ニ「又ハ消費シタル」ノ七字ヲ加ウ第三ノ「毀損」ヲ「滅少」ト改メ「物ノ」ノ下「價額ノ」三字ヲ加ウ
第三百八十四條「經テ其取戻ヲ受ク」トアルヲ「訴ヲ受ケタル日ニ於テ現ニ己レヲ利シタル物ノ取戻ヲ受ク」ト改ム
第五百三十一條ノ再議
第五百三十一條第二項性質ニ因ル不可ノ分ノミノ免除ニ付イテハ債權者ハ債務者各自ニ對シ全部ノ要求ヲ爲スノ權利ヲ失ハス但免除ヲ受ケタル債務者ノ負擔スヘキ價額ヲ扣除スルコトヲ要ス第三項債務者ハ免除ヲ受ケタル債務者ニ對シ全部ノ要求ヲ爲スコトヲ得但他ノ債務者ノ負擔スヘキ價額ヲ扣除スルコトヲ要ス
(栗塚委員)
五百三十一條ハ起按者ガ修正致シマシタ
(元尾崎委員)
唯一人ノ人デアルニ全部抔ト大層ラシク書イタノハ惡ルイ
(箕作委員)
三人連帶デ百圓ノ金ヲ借リテ居ル一人免除シタトキハ六十六圓何錢ハ扣除スルコトヲ要ストナルカラ可笑シイ
(栗塚委員)
ソコガ連帶ニ固ル不可分デス
本條ハ修正按ニ決ス
第六百六十七條ノ再議
(栗塚委員)
次ハ六百六十七條デ御座イマス之ハ此處ニ書イテアル通リデ別ニ說明スル程デハアリマセン
(松岡委員)
商法ノ三百四十一條ヲ之レヘ入レレバ宜シイ此樣ナコトヲ云フテ一方カラ手附ヲヤルモノデナイ賣主モヤレバ買主モヤル又金デハナイ物品ヲヤルト云フコトヲ云フガソンナコトハ不要用ダカラ商法ノ金丈ヲ之レヘ入レレバ宜シイ
(箕作委員)
賣主カラ手附ヲヤルト云フコトガアリマスカ
(北畠委員)
相場會社抔ハ兩方カラ證據金ヲ出スソレヨリ外ニハナイ
(大尾崎委員)
手附ハ必ズ買ウゾヨト云フ手附ダソレヨリ外ニナイ
(栗塚委員)
詰リ此處ノ議論ハ但以下ノ御論デ御座イマス
(箕作委員)
詰リ商法ノ精神ハ但書ノ意味ガ委シクナツテ居ルノデス
(松岡委員)
商法ハ明示又ハ慣習ノトキバカリ破約金ト看做サレルト云フノダ商法ノハ手附ヲ兩方カラヤルコトモ物品ヲ手附ニヤルコトモナイ
(栗塚委員)
ソレガ惡ルイト云フノデハアリマスマイカラ解約ノ性質ヲ明示スルカ又ハ其他ノ慣習アルトキニ限ルトシテハ如何デス
(南部委員)
習慣アルトキノ外之ニ解約ノ性質ヲ明示スルコトヲ要ストスルカ
(元尾崎委員)
商法ヲ削ツタノガ惡ルイ
(松岡委員)
商法ハ民法ニ讓ツタノダ與ヘタルモノノ利金ノ爲メニモ解約ノ方法ト爲ルト云フト倍戻テ解約トナルト云フコトハ見ヘン樣ダ
(松岡委員)
六十六條ハ豫約デアツテモ賣買デハナイ慣習ノアルトキハ手附金ハ倍返シト云フコトヲ入レレバ宜シイ
(栗塚委員)
ソレヲ入レマシヨウ
(元尾崎委員)
慣習ヲ入レレバ倍返シハ入ラン
(栗塚委員)
但手附ガ金錢ナルトキハ其地ノ慣習ニテ之ニ解約ノ性質ヲ附スル場合ノ外合意ニテ此性質ヲ明示スルコトヲ要スト致シマス
(大尾崎委員)
之レデ宜シイ
(南部委員)
宜シイ
本條但以下左ノ如ク改ム
但買主ノ與ヘタル手附カ金錢ナルトキハ其地ノ慣習ニ依リ之ニ解約ノ性質ヲ附スル場合ノ外合意ニテ此性質ヲ明示スルコトヲ要ス
第七百八十七條ノ再議
(栗塚委員)
第七百八十七條ノ二項ハ仲裁ノ法律上ノ方式又ハ仲裁契約ヲ以テ授ケラレタル條件トナリマス
本條第二項仲裁人カノ下「仲裁ノ法律上ノ方式ハ仲裁契約ヲ以テ授ケラレタル條件ヲ」ト改ム
(栗塚委員)
七百九十條ハ第三者ト云フ字ハ加ヘナイコトニ致シマス次ニ八百八十八條ハ法律上ノ利息ニ從フト致シマス
(村田委員)
「其割合ハ法律上ノ利息ニ從フ」ト云ヘバ宜シイ
(箕作委員)
ソレデ宜シイ
第八百八十一條第一項ノ終リヲ「其割合ハ法律上ノ利息ニ從フ」ト改ム
(南部委員)
次ニハ八百八十二條ノ一項ハ「合意上ノ利息ハ法律ノ制限ヲ超ユルコトヲ得ス但法律ヲ以テ特ニ制禁セラル場合ハ此限ニ在ラス」ト改メマシタ
第八百八十二條第一項左ノ如ク改ム
合意ノ利息ハ法律上ノ利息ヲ超ユルコトヲ得ス但法律ヲ以テ特ニ制禁セサル場合ハ此限ニ在ラス
(栗塚委員)
次ニ九百三十四條デ御座イマス之ハ報吿委員デドウシテモ削除スベキモノデナイ此儘デナケレバ具合ガ惡ルイト云フコトニ決シマシタ
(松岡委員)
元トハ報吿委員カラ削除說ヲ出シタノダ
(栗塚委員)
報吿委員中デモ大變議論ガ分チマシタカラ申シマス乙ガ甲ノ指圖ヲ受ケテ物ヲ買ヘト云フトキハ其買ヘト云フモノヲ自分デハ買ハナイト云フ原則ガアリマスカラ物ヲ頼マレレバ己レノ爲メニシタト云フコトハ云ヘナイ人カラ家ヲ買ツテ呉レト頼マレタナラバ其家ヲ自分ニ買ウコトハ出來ナイト云フノハ當リ前ノコトダ之ガ第二ノ原則處デ人カラ千圓デ物ヲ買ツテ呉レト云フトキ千百圓デ買ツタトキハ權限ヲ超ヘテ居ル併シ彼ノ人ハ千圓ヨリ出サンゾヨ千圓ヲ超ヘレバ己レガ頼ンダコトデハナイト云フマデノコトガアレバ格別處ガ彼ノ家ヲ千圓デ買ツテ呉レト云フトキ千圓デ彼ノ人ガ欲シイ樣ダカラ彼ノ人ノ爲メニ買オウト云フテ甲ノ爲メニ乙ガ買ツタトキニ甲ハ何ト云フカ御前ニ頼ンダノハ千圓ダカラ千圓デ買ウコトガ出來ナイガ千百圓持ツテ行ケバ其家ヲ呉レロト云ヘソウナモノダ又乙モ御前ハ千圓デ欲シイト云フタガ千百圓デアツタケレドモ御前ガ欲シイト云フカラ千圓デヤレバ文句ハアルマイソレ故ニ買ツタ人カラ頼ンダ人ニ向ツテ頼ンダ丈ケノ代價デ家ヲヤルコトガ出來又買ハセタ人ハ買ツタ人ノ拂ツタ丈ケノ物ヲ以テ家ヲ取ルコトガ出來ル何カソレデ不都合ガアルカ唯氣ノ毒ト云フ一點ニ止マル如何樣千百圓デ買ツタ人ニ向ツテ千圓デ呉レト云フコトハ云ヘンカラ私ガ尾崎サンノ使デアツテ貴君ガ千圓デ買ヘト云フノヲ私ガ千五十圓デ買ツタトキ私ガ五十圓損シテ千圓デ御買ヒナサイト云フトキハ嫌忌トハ云ヘン
(元尾崎委員)
此儘デ宜シイ
(淸岡委員)
商法デハ云ヘンカ知レンガ民法デハ宜シイ
(栗塚委員)
損ヲ掛ケルノガ嫌忌ダト思ヘバ買ハンバカリデ御座イマス
(委員長)
良ケレバ原案デ置キマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
(栗塚委員)
千十七條ハ商法ニ牴觸致シマセント云フノデ御座イマス次ニ千二十八條ハ又ハ認知ヲ削リマス之ハ自白ト認知ト同ジデ御座イマスカラ削リマス千四十二條モ認知ヲ削リマスソレカラ千五十二條ニ但書ヲ入レマシタ分擔ト云フ字ハ分リマセンカラ「但債權者ニ對シテハ訴追ヲ受ケタル債務者ノミ其責ニ任ス」ト致シマス分擔ト云フト債權者ニ向ツテ皆ガ分擔スル樣ニナリマスガソウデハ御座イマセン債權者ニ向ツテハ一人デ擔任シテ後ニ他間内デ分擔スルト云フノデ御座イマス
(南部委員)
之ハ註ニアル處ヲ起案者ガ削ルト云フノデ御座イマス
(栗塚委員)
ソウスルト尾崎サンノ御論ガ宜シウ御座イマシヨウ馬車ヲ驅ケサセタトキ驅ケサセタモノハ二人アルニ呼出スノハ當リ前デハナイカト云フ御論デアリマシタ
(松岡委員)
矢張リ良クナイ二項ニ相互ハ代理ト云フ效力ト云フモノヲ持タシ同ジ馬車デ怪我ヲサセタルトキ連帶デ受ケレバ相互ノ代理ニナルケレドモ
(南部委員)
代理ノ性質ハナイケレドモ訴訟參加ガ出來ル參加ト云フコトハ出來ント云フコトガ註ニアツタカラ惡ルイノダガ削レバ宜シイ
千五十六條ノ第二項ハ左ノ但書ヲ加フ
但債權者ニ對シテハ訴追ヲ受ケタル債務者ノミ其責ニ任ス
(栗塚委員)
千七十八條ニ「訴追者又ハ」ヲ加ヘル
(南部委員)
千百十九條ノ回答ガアリマシタ
(栗塚委員)
之ニ私反對ノ意見ヲ持ツテ居リマス一體三人カ四人バカリノ名高イ學者ノ說ヲ見マスルト元來質ト云フモノヲ債務者ガ時效デ、義務ヲ免カルルノハ何カナレバ拂ツタロウト云フ權側デ自分ガ質ニ入レテ居ル間ハ每日自分ガ迷惑シテ居ルト云フコトヲ認メナケレバナリマセン認メテ居ル以上ハ時效ノ登スル期限ハソレヲ取戻シデハナケレバ發セシ質物ヲ債權者ノ手ニヤツテ置ク債務者ハ時效ノ生ジ樣ガナイト云フ說ガアリマス
(元尾崎委員)
ソレハ當リ前ノ論ダ
(南部委員)
證文ガ貸主ノ手ニアレバ債務ハ消滅スルコトガナイト云ハナケレバナランソレマデ云フト時效ヲ立テルコトガ出來ナイ時敷ハ一般ノ債務ヲ打チ切ルカラ質ト云フモノガアレバ何處マデモ債務ガ消ヘルト云フコトハ出來ナイ
(淸岡委員)
モツト各國ノ法律ヲ調ベテ呉レレバ宜シイ
(松岡委員)
之ハ英吉利西法ヤ獨乙ノ法律抔ヲ多ク調ベルガ宜シイ英國デハコウイウモノハ時效ガナラント云フテアル
(南部委員)
時效ノ性質ハ條理ニ反シタモノデアル何トナレバ百年經ツテモ債務ハ消滅シナイモノデアル併シ三十年經テバ時效ニナル經濟上カラ考ヘテ打チ切ルコトニナツテ居マス
(大尾崎委員)
調ベルガ宜シイ
(委員長)
之ハ閑ナトキヤルコトニシマシヨウ
千百十九條ハ未定
于時午後四時半閉會