民法擔保篇再調査案第三十三回議事筆記
自第千二百八十二條至第千三百四條
明治二十一年十二月十日午前第九時五十分開會
第千二百八十二條朗讀ス
第三款 財產檢索ノ抗辯
第千二百八十二條 自身ニテ且主トシテ抵當債務ノ責ニ任セサル第三所持者ハ訴追債權者ニ對シ同一債務ノ爲メニ抵當ト爲リタル他ノ不動產ヲ豫メ檢索シテ之ヲ賣却セシメント求ムルコトヲ得但之カ爲メニハ左ノ諸件ヲ具備スルコトヲ要ス
第一 其不動產カ辨濟ノ有ル可キ場所ノ控訴院ノ管轄內ニ在ルコト
第二 其不動產カ猶ホ主タル債務者ニ屬スルコト
第三 其不動產カ爭ニ係ラサルコト
第四 其不動產カ債權者ノ記入ノ順位ト其價額トヲ斟酌シテ之ニ全部ノ辨濟ヲ得セシムルニ不十分ナルノ明白ナラサルコト
右ノ抗辯ハ訴追ノ當初ニ之ヲ提出スルコトヲ要ス
(元尾崎委員)
第四ノ處ハ言葉ヲ換ヘテ言フト辨濟ヲ得セシムルニ充分ナル明白ナ事ト云フノカ
(南部委員)
左樣デス
(村田委員)
充分ナル明白ナコトデス
(栗塚委員)
意味ガ足リナイト云フコトガ明カナコトデナイト往カント云フノデス
(箕作委員)
其レデ「ネガチーブ」テ書イタ方ガ宜シイ不充分ガ明白デハ往カント云フノデアリマス財產檢索ト云フ字ガアリマシタカ
(栗塚委員)
アリマシタ
(槇村委員)
財產檢索ノ抗辯ト云フノハドウ云フコトカ
(栗塚委員)
債務者ノ財產ヲ調ベテ來テ下サイト云フノデス
(箕作委員)
其方ヘ係ルヨリモ先ヅ不動產ヲ調ベナサイト云ツテ抗辯スルノデアリマス
(元尾崎委員)
檢索ノ抗辯ト云フコトガ此前出マシタカ
(栗塚委員)
保證人ノ處ニ有リマシタ
(村田委員)
保證人ト財產ト兩方アルデヤルノデス
(元尾崎委員)
宜カロウ
本條ハ原案ニ決ス
第千二百八十三條朗讀ス
第千二百八十三條 第三所持者ハ第千二十條乃至第千二十三條ニ從ヒ保證人ノ分限ヲ以テ己レニ屬スル檢索ノ利益ヲ抛棄シタルトキト雖モ抵當檢索ノ抗辯ノ利益ヲ失ハス
(元尾崎委員)
己レニ屬スル檢索ノ利益ト云フノハ如何
(南部委員)
保證人デ兩方ヤツテ居ルモノデアリマス
(栗塚委員)
抵當財產檢索トヤリマシヨウカ
(南部委員)
ソレハ宜シイ
(元尾崎委員)
前ノ檢索ノ利益ト云フハ如何
(栗塚委員)
保證人一己ノ檢索ノ利益ヲ持テ居リマスカラデス
(南部委員)
保證人デ兩方持ツテ居リマスカラ保證人ノ兼テ抛棄シテモ第三所持者ノ廉テアルノデアリマス
(箕作委員)
保證人ニ對スルノダカラ抵當財產ダロウ
本條ハ「抵當檢索」トアルヲ「抵當財產檢索」ト改メ其他原案ニ決ス
第千二百八十四條朗讀ス
第千二百八十四條 他人ノ債務ノ爲メ自己ノ不動產ヲ抵當ト爲シタル者及ヒ其相續人ハ檢索ノ抗辯ヲ以テ對抗スルコトヲ得
主タル債務者ノ相續人中ニテ訴追前ニ債務ニ於ケル自己ノ部分ヲ辨濟シタル者ニ付テモ亦同シ
(南部委員)
之ハ留保デアリマスカラ後デ御議シヲ願ヒマス
(元尾崎委員)
之ハ前ノ條ト同ジコトダガ何ゼ同ジコトヲ出スカ
(栗塚委員)
第三者ガ抵當ニ入レタト云フ所ヲ見セタノデアリマス
(元尾崎委員)
ケレドモ他人ノ爲メハ第三所持者デシヨウ
(南部委員)
第三所持者ハ買タモノデアリマスカラ所持者ト同ジヨウダケレドモ別デス
(栗塚委員)
訴追サレタトキデナケレバ言ハヌノデアリマス
(村田委員)
前ニハ自分ガ物ヲ持テ居ル此方ノハ買タノダカラ違フ
(栗塚委員)
他ニ抵當ニナツテ居ルカラ彼ノ抵當ヲ調ベテ來テ下サイト云フノデス
(大尾崎委員)
自己ノ部分ヲ辨濟シタル外ニト云フ譯ケダネ
(淸岡委員)
併シナガラ外デ足リナイト又來ルハ來ル
(元尾崎委員)
相續人ノ一人ガ自分ノ部分丈ケ拂ヘバ外ノ相續人ニ係テ來テ己レハ己レノ分丈ケ拂フト云フコトダネ
(栗塚委員)
左樣デス
(南部委員)
拂タカラ檢索シテ呉レト云フノデス
(元尾崎委員)
若シ債務者一人ナラソウハ往カンノダネ、相續人ガ幾人モアルカラ連帶ニナルノダネ
(南部委員)
連帶ニハナツテ居ルガ抵當財產ハ別ニナルカラ
(淸岡委員)
先ヅ拂ハヌ奴カラ探檢シテ呉レト云フノダ
(栗塚委員)
左樣デス
(大尾崎委員)
之ハ後ニシテ良シイ
本條ハ留保ニ付未定
第千二百八十五條朗讀ス
第四款 委棄
第千二百八十五條 第三所持者ハ所有權徵收ノ手續中何時ニテモ訴追ノ目的タル不動產ヲ委棄スルコトヲ得
第三所持者ハ委棄ニ因リ訴追債權者ニ所持ノミヲ委棄シテ不動產ノ所有權ト其法定ノ占有トヲ保存シテ其危險ヲ擔任ス
(村田委員)
所持ト云フ字ガアルト思フ
(南部委員)
所持者ガ惡クナクシテ委棄ト云フ字ガ御分リガナイノデシヨウ
(栗塚委員)
委棄ト云フト棄テ仕舞ヨウニ見ヘルガ所持丈ケ棄テルト云フモドウカ
(南部委員)
第三所持者ト云フガ惡イ
(元尾崎委員)
二項ハ些トモ分ラン
(槇村委員)
委棄ト云フハ棄テルコトダロウ
(南部委員)
ドウデモ勝手ニナサイト言フノデス
(元尾崎委員)
所有ニテ居ルト云フハドウ云フコトカ
(村田委員)
天然ノ占有丈ケハ移ルト云フノデ法定ノ占有ハ持テ居ル天然ノ占有丈ケ向フヘ移ルト云フノデアリマスカラ所持ト云フノハ入ランノデス
(箕作委員)
所有權ト法定ノ占有丈ケハ取テ居ル只天然所持ト云フ丈ケハ向ウヘ移ルト云フノデ假令バ法定ノ占有ヲ以テナラ本統ノ所有者カラ買タモノデナイト云フト三十年位デハ時效ガ得ラルルソレカラ所有權ヲ賣テモ良シイ
(槇村委員)
スルト前ノ當リ前持テ居ル丈ケ棄テルノデスカ
(箕作委員)
左樣デス
(村田委員)
默ツテ持テ居ル椅子ヲ貴君ガ自分ノモノニ仕樣トシテモ往カンカラ丁度借リタモノヲ持ツテ居ル又モ同ジデアリマス
(元尾崎委員)
容假ノ占有カ
(南部委員)
容假デハナイ自然ノ占有デス
(元尾崎委員)
土地デ云フトドウスルノカ訴追デアレバ私ノ抵當ニ這入ツタモノト云フト其レヲ委棄スルト云フカ
(村田委員)
地面ヲ持ツテ御出ナサイト云フ丈ケデス
(元尾崎委員)
其處ニ往ツテ使ツテモ良イノカ
(村田委員)
良イケレドモ自分ノモノニスルコトハ出來ンノデアリマス
(元尾崎委員)
スルト暫ク拔カナケレバナラン所有權ハ遣ラン八ケ間敷云フナラ持テ往ケト云フノカ
(村田委員)
併シ自分ノ自然ノ占有スルコトノ意思ナクシテ所持スル原則デ丁度役所ノ物ヲ持ツテ居ルト同ジコトデス
(淸岡委員)
第三所持者ハ良イガ所持ト云フハ所有ト云フニ凡テ成ツテ居リマス
(箕作委員)
所有ヲ委棄スルト云フノデアリマス
(元尾崎委員)
ソウシテドウナルカ裁判ヲ持ツノデスカ
(栗塚委員)
左樣デス
(箕作委員)
二項ハ委棄ノ效力ヲ言ツタノデアリマス
(槇村委員)
斯ウ云フコトモ出來ヌ斯フ云フコトモ出來ルト云フ樣ニ聞ヘル
(栗塚委員)
其委棄ニ依リデモ宜シイ
(槇村委員)
ソレデ宜シイ
(村田委員)
其委棄ノミト云フト下ヘ第三者ト言ハナケレバナラン
(箕作委員)
ソウ見ルハ斯ウ云フコトモ出來ルト隨分見ヘマス
(栗塚委員)
「コトヲ得但其委棄ニ因リ訴追債權ノ所持ノミヲ」デ云フトシテモ宜シイ
(槇村委員)
ソレデ宜シイ
(南部委員)
其委棄ニ因リ第三所持者ト云フコトガナケレバナリマセン
(箕作委員)
其レガ宜シイ
(栗塚委員)
第三所持者ハ入ラン樣デス
(箕作委員)
一項ニ但ヲナシニシテ其委棄ニ因リ第三所持者トシテハドウカ
(南部委員)
ソレデモ宜シイ
(元尾崎委員)
「其」デスカ「此」ダロウ
(南部委員)
之ハ「其」ガ宜シイ
(箕作委員)
私ハ委付ガ宜イト思ヒマス
(栗塚委員)
委付ガ良イ
(村田委員)
委付デ良カリソウナモノデス
(箕作委員)
ソレカラ不動產ヲ保存シデス
(元尾崎委員)
宜シイ
本條ハ第二項「第三者ハ」ヲ削リ第一項ニ續ケ「コトヲ得其委棄ニ因リ第三所持者ハ訴追債權者ニ所持ノミヲ委付シ云々」ト改メ其他原案ニ決ス
第千二百八十六條朗讀ス
第千二百八十六條 主タル債務者又ハ保證人トシテ自身ニ債務ヲ負擔シタルモノニ非サル第三所持者ノミ委棄ヲ爲スコトヲ得債務者ノ相續人中ニテ訴追ノ間ト雖トモ債務ニ於ケル自己ノ部分ヲ辨濟シタル者及ヒ供物保證人ハ委棄ヲ爲スコトヲ得
(栗塚委員)
供物保證人ト云フノハ千二百八十四條ノ他人ノ債務ノ爲メ自己ノ云々トアレデ御座イマス
(村田委員)
二項ハ「訴追ノ間ト雖モ」ト云フ字ハ後トニ這入ルノデハナイカト思イマス英文デアルトソウデス
(箕作委員)
訴追ノ間何時デモ委棄ヲ爲スコトヲ得ト云フノデシヨウ
(村田委員)
ソウデス
(箕作委員)
之ハ村田サンノ言フ處ガ本當デシヨウ
(栗塚委員)
訴追間ト云ヘドモ委棄ヲ爲スコトヲ得ト云ヘバ宜シイ
(箕作委員)
第二項ハ債務者ノ相續人中ニテ債務ニ於ケル自己ノ云云供物保證人ハ訴追中ト雖モ委棄ヲ爲スコトヲ得デ宜シイ
本條第二項「債務者ノ相續人ニテ債務ニ於ケル自己ノ部分ヲ辨濟シタル者及ヒ供物保證人ハ訴追中ト雖モ委棄ヲ爲スコトヲ得」ト改メ其他原案ニ決ス
第千二百八十七條朗讀ス
第千二百八十七條 有效ニ委棄ヲ爲スニハ自身ナルト代人ノ資格ナルトヲ問ハス所有權徵收ノ訴追ニ被吿トシテ出頭スルノ能力ヲ有スルヲ以テ足レリトス
本條ハ原案ニ決ス
第千二百八十八條朗讀ス
第千二百八十八條 委棄ハ委棄者又ハ其部理代理人ノ署名シ且訴追債權者ニ吿知シタル陳述ヲ以テ抵當財產所在地ノ裁判所ノ書記局ニ於テ之ヲ爲スモノトス
裁判所ハ訴追債權者又ハ第三所持者其他ノ利害關係人ノ求ニ因リ委棄ニ付テノ管財人ヲ選任ス但所有權徵收ノ訴追ハ此管財人ニ對シ繼續ス
(元尾崎委員)
委棄者又ハ其部理代理人ノ署名ト云フノハドウカ
(箕作委員)
署名シタラ陳述書デモ無イ署名ノコトニ陳述ト云フハオカシイ
(栗塚委員)
書クノハ書記局デ書イテ呉レル其處ヘ署名スルノデアリマス斯ウ言ヘバ宜シイノデ「委棄者又ハ其部理代理人カ抵當財產所在地ノ栽判所書記局ニ於テ陳述ヲ爲シ書記之ヲ書キ取リ委任者部理代理人署名シ其後書記局カラ債權者ニ通知スル」ト云ヘバ宜シイノデス
(大尾崎委員)
分ラン
(村田委員)
吿知スルノハ委棄スルト云フコトヲ吿知スルノカ
(栗塚委員)
左樣デス
(箕作委員)
日本デ言フハ先ヅ委棄スルニハ書記局ヘ御屆ヲシテ其屆書ニ署名シテ其レヲ訴追債權者ニ知ラルル遣ルト云フコトデス
(栗塚委員)
左樣デス一體陳述ト云フ字ハ屆ケガ一番宜シイ
(南部委員)
之ハ文ガ少シ惡イ
(栗塚委員)
其レデハ斯ウシマシヨウ「委棄ハ委棄者又ハ其部理代理人抵當財產所在地ノ裁判所ノ書記局ニ於テ之ヲ陳述シ其陳述書ニハ委棄者又ハ部理代理人ノ署名アルヲ要ス但訴追債權者ニ吿知スルコトヲ要ス」トシマシヨウカ
(村田委員)
ソレハ往カン
(槇村委員)
委棄者又ハ其部理代理人抵當財產所在地ノ裁判所ノ書記局ニ於テ陳述書ニ署名シ訴追債權者ニ吿知スルモノトスカ
(元尾崎委員)
書記局ニ陳述シ其陳述書ニ署名シ但之ヲ訴追債權者ニ吿知スルコトヲ要ストヤツテ宜シイ
(栗塚委員)
宜シイ
(箕作委員)
「陳述」ハ「御屆」トハナランカ
(南部委員)
屆ト云フト向フガ裁判所ヘ屆ケル樣ニ聞ヘル
(元尾崎委員)
書記局ニ屆ケルトシテ宜シイ
(渡委員)
矢張リ陳述ガ宜シイ
(栗塚委員)
委棄ハ委棄者又ハ此部理代理人抵當財產所在ノ裁判所ノ書記局ニ於テ之ヲ陳述シ其陳述書ニ署名シ訴追債權者ニ吿知スルコトヲ要スト致シマシヨウ
(槇村委員)
下ノ之ヲハ入ラン
(村田委員)
文例デハ之ヲト入レルノダロウ
(南部委員)
之ヲト入レルト委棄ニナツテ仕舞フカラ入ラン
(渡委員)
下ノ之ヲハ入ラン
(淸岡委員)
送逹ト云フ字ニ換ヘテハドウカ
(栗塚委員)
之ヲ送逹セシムルコトヲ要ストシテ宜シイ
(村田委員)
二項ハ管財人ニ對シテ繼續スルト云フ場合ノ樣ダガ之デハ分ラント思フ裁判所ハ所有權徵收ノ訴追ヲ受ク可キ委棄財產ニ付テト云フコトデス
(元尾崎委員)
之デ宜シイ
(南部委員)
註カラ取ツテ加ヘタノデアリマス
(村田委員)
委棄ニ付テハ委棄ノ財產ト遣ル委棄ノ訴追デ分ロウカ
(南部委員)
委棄ト云フ事柄ニ關シテト云フコトデス
本條ハ第一項左ノ如ク改メ其他原案ニ決ス
委棄ハ委棄者又ハ其部理代理人抵當財產所在地ノ裁判所ノ書記局ニ於テ之ヲ陳述シ其陳述書ニ署名シテ訴追債權者ニ吿知スルコトヲ要ス
第千二百八十九條朗讀ス
第千二百八十九條 第三所持者又ハ其代人ハ競落アルマテハ訴追債權者ニ對スル總債務ト其時マテノ費用トヲ一ケ月內ニ辨濟シ又ハ供託スルニ於テハ何時ニテモ委棄ヲ爲シタルト同一ノ方式ヲ以テ之ヲ言消スコトヲ得但他ノ債權者ノ訴追ノ權利ヲ妨ケス又滌除ノ期間カ經過セサルニ於テハ其債權者ニ對スル滌除ノ權利ヲモ妨ケス
(渡委員)
委棄ヲ爲シタル方式ト云フノハドウ云フ譯カ
(南部委員)
矢張リ陳述デアリマス
(元尾崎委員)
「之ヲ」ト云フノハ「委棄ヲ言消スコトヲ得」ト遣ルカ
(栗塚委員)
ソウシテモ宜シイ
(槇村委員)
訴追ヲ委棄スルノカ
(箕作委員)
一遍遣ツタ委棄ヲ止メルノデアリマス
(栗塚委員)
ソレデハ委棄ヲ言消スト遣リマシヨウ委棄ヲ爲シタル同一ノ方式ト言ツタラ分リソウナモノデス
(元尾崎委員)
方式ト云フハ委棄ト外ノコトヲ同一ノ方式デト見ヘル
(栗塚委員)
何時ニテモ委棄ハ之ヲ爲シタルト同一ノ方式ヲ以テ言消スコトヲ得ト遣ルカ
(元尾崎委員)
之ヲト云フ字ヲ委棄ト云フ字ニ直シテ宜シイ
(大尾崎委員)
方式ヲ以テ委棄ヲ言消スコトヲ得デ宜シイ
(元尾崎委員)
之ヲト云フ外ノコトデナケレバ此處デハ文章ニナラン
(箕作委員)
原案デ宜シイ
(淸岡委員)
一ケ月内ト云フコトハドウ云フ時カラ數ヘマスカ
(槇村委員)
委棄ヲ言消シタ時カラデアリマス
(元尾崎委員)
一ケ月ト云フノハ言ハンデモ宜シイ
(栗塚委員)
異議ヲ爲シタルヨリ一ケ月内ニデアリマス
(槇村委員)
異議ヲ出シテカラ一ケ月デアリマス
(箕作委員)
言消シテカラ一ケ月デアロウ
(南部委員)
ソウデ御座イマス
(栗塚委員)
費用等異議ヲ爲シタル同一ノ方式ヲ以テ言消スコトヲ得但シ一ケ月内ニ返濟スルコトヲ要スデアリマス
(淸岡委員)
言消ヲシテ二、三ケ月モ經テ居テハイカント云フノデアリマス
(箕作委員)
ソウ云フコトデアリマス
(栗塚委員)
第三所持者又ハ其代人ハ其競落アルマデハ何時ニテモ委棄ヲ爲シタルト同一ノ方式ヲ以テ其委棄ヲ言消スコトヲ得但シ訴追債權者ニ對スル總債務ト其時迄ノ費用トヲ一ケ月内ニ辨濟スルコトヲ要ストスレバ宜シイノデアリマス
(箕作委員)
競落アルマデ何時ニテモ言消シテ宜シイ、言消シタラ辨濟ヲシナケレバナラント云フノデアリマス
(南部委員)
ソレデ宜シイ言消スコトヲ得カラ別項ニ致シマシヨウ
(箕作委員)
但ハ付ケテ置イテ宜シイ其言消ヲ爲シタルトキハ一ケ月内ニ云々トシテ宜シイ
(元尾崎委員)
其レデ宜シイ
(栗塚委員)
競落アルマデ何時マデモ宜シイ其レカラ此場合ニ於テハ訴追債權者ニ對スル云々ト致シ「之ヲ」ハ「其委棄」ト致シマスカ
(淸岡委員)
其委棄ヲ言消スコトヲ得デ宜シイ
(元尾崎委員)
宜シイ
本條ハ左ノ如ク改ム
第三所持者又ハ其代人ハ競落アルマテハ何時ニテモ委棄ヲ爲シタルト同一ノ方式ヲ以テ其委棄ヲ言消スコトヲ得此場合ニ於テハ訴追債權者ニ對スル總債務ト其時マテノ費用トヲ一ケ月内ニ辨濟シ又ハ供託スルコトヲ要ス但他ノ債務者ノ訴追ノ權利ヲ妨ケス又滌除ノ期間カ經過セサルニ於テ其債權者ニ對スル滌除ノ權利ヲモ妨ケス
第千二百九十條朗讀ス
第五款 競賣及ヒ所有權徵收
第千二百九十條 第三所持者カ辨濟ヲ爲サス委棄ヲ爲サス又滌除ヲ提出セサルトキ又ハ滌除ノ目的ニテ爲シタル提供ノ受諾ヲ得サルニ因リテ增價競賣ノ求メアリタルトキハ民事訴訟法ニ規定シタル方式ト公示トヲ以テ不動產ヲ競賣ニ付ス
(大尾崎委員)
之ハ宜シイ
(箕作委員)
辨濟モ委棄モ滌除モナイト云フノデアリマシヨウ
(淸岡委員)
此文章ハオカシイ受諾ヲ得ザルニ因リテ競賣ノ求メアルト云フコトハ如何
(村田委員)
競賣ノ求メアリタルトキハデス
(淸岡委員)
得ザルニ因リト云フノハ第三者ガ言ヘンノデ
(村田委員)
ソレダカラ競賣シテ呉レト云フノデス
(淸岡委員)
求メアルト云フノハオカシイ第三所持者カラ言葉ヲ立テテ居ルノデ其レデ得ザルニ因リテ競賣ノ求メアルト云フノハ自分ノ方カラ求メル樣デス
(栗塚委員)
提供ガ受諾ヲ得ザルニ因リデス
(淸岡委員)
提供ノ受諾ヲ得ナイニ因ツテ自分ガ第三所持者カラ得ナイカラ增加ノ競賣ノ求メタルト、得ザルニ因リテ求メアルノデハオカシイ受諾セラレズシテ求メアルナラ宜シイ
(箕作委員)
求メト云フノハ惡イ
(南部委員)
增價競賣アリタルトキデハ往カンカ
(箕作委員)
アリタルデハナイナサントスルトキハデアリマス
(栗塚委員)
提供ガ受諾セラレザルトシテハ如何
(村田委員)
又ハ增價競賣ノアリタルカ
(箕作委員)
第三所持者ガ競賣スル樣ニナルカラ困ル
(淸岡委員)
受諾ヲ得ズシテ增加競賣ヲ求メタルトキトシテハ如何
(元尾崎委員)
增價競賣ノアリタルトキデ宜シイ
(村田委員)
アル可キ時ハデス
(元尾崎委員)
原案デ宜シイ
(大尾崎委員)
原案デ宜シイ
(渡委員)
受諾ヲ得ズニテトヤツテハ如何
(村田委員)
增價競賣ノアリタルトキハト云ツテモ宜シイ
(箕作委員)
求メタルナラ宜シイ
(栗塚委員)
提供ガ受諾セラレザルニ因リ增價競賣ノ求メアリタルトキハト云フハ第三者ト云フコトハ係ランカラ爲シタルト云フノハ第三者ガ爲スノデアリマス
(淸岡委員)
因リト云フノハ何ウシテモ下ハ第三者ガ働カナケレバナリマセンセザルニ因テコウナルトナル
(南部委員)
コウスルト云フナラ惡イ併シコウアルト云フノダカラ差閊ヘナイ
(淸岡委員)
其レ程原案ガ維持シタケレバ置イテモ宜シイ
(栗塚委員)
因リテ增價競賣ガ賠償ヲ持ツト云フノデ
(箕作委員)
佛文ニハ賠償ト云フ字ハアリマセン
(村田委員)
求メト云ツテモ第三者アル樣ニ見ヘル
(南部委員)
文字論ダカラ先キヘ往キマシヨウ
(淸岡委員)
因リテト云フ字ヲ得ズシテト遣ロウ
(南部委員)
得ズシテモ良クハナイ
(淸岡委員)
提供ヲ受諾セズシテ增價競賣ヲ求メルト云フノデダカラ因リテト云ヘンデ提供受諾セズシテ競賣ヲ求メタトキハトヤツテ良シイ
(南部委員)
ソウ問違ツテハ往カン第三者ガ受諾セント思ツテ御座ルカラ往カンノデアリマス
(箕作委員)
先キヘ往キマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第千二百九十條ノ二朗讀ス
第千二百九十條ノ二 前讓渡人又ハ分割者カ第千二百七十八條ノ二ノ明文ニ從ヒ其先取特權又ハ法律上ノ抵當權ヲ擱テ其解除訴權ヲ行ハント欲スル旨ヲ陳述シタルトキハ競賣前ニ其訴ノ判決ヲ求ムルコトヲ要ス但第三所持者ノ要求ニ因リ裁判所カ此事ニ付キ定メタル期間ヲ過クルコトヲ得ス
(元尾崎委員)
「擱テ」ト云フ字ハ妙デス
(南部委員)
之ハ極ク宜シイ
(箕作委員)
訴ヘノ判決ヲ求メルトハ訴ヲ爲スコトヲ要スデモ詰リ同ジデシヨウ
(元尾崎委員)
何ンノコトカ
(箕作委員)
解除訴權デ之ヲ行フトシタラ競賣スル前ニ訴ヘナケレバナラント云フノデアリマス
(栗塚委員)
左樣
(淸岡委員)
前讓渡人ト云フノハオカシイ
(箕作委員)
七十八條ノ二ニハ讓渡人トアル之ハ前ノ字ハ刪ルガ宜シイ淸岡ノ說ハ名論ダ
(槇村委員)
贊成
(村田委員)
但第三所持者ノ要求ニ因リ云々ト云フト要求マデ係ル樣ニナリハセンカ要求ニ因リ且ト云フ字ヲ入レテハ何ウカ
(栗塚委員)
一體原文ハ訴權ヲ執行スル意味デアリマスカラ其訴ヲ爲スデ宜シイ
(箕作委員)
其レデ宜シイ
(村田委員)
期間計リデハナイ
(南部委員)
期間計リデアリマス
(村田委員)
第三所持者要求ニ因リ且ト入レテ宜シイ
(淸岡委員)
之ハ解除訴權ヲ行フ競賣ダカニシナイスレバ宜シイノデス
(南部委員)
併シナガラ第三所持者ノ申立シタラ裁判所ガ此事ニ付テ期間ヲ定メル其期間ハ過グルコトガ出來ント云フノデアリマス
(元尾崎委員)
解除スルナラ何時何日マデニ申立テロト云フノデアリマス
(箕作委員)
其レガナイト片付カナイカラデアリマス
(元尾崎委員)
無論競賣前ニスル其上裁判所ガ期間ヲ定メレバ其レデシナケレバナラント云フノデス
(村田委員)
因リ且トシテ良イダロウ
(栗塚委員)
且ハ入リマセン
(南部委員)
求メガナケレバ競落マデヤル求メガアレバ裁判所デヤルト云フノデス
(村田委員)
ソウデスカ
(栗塚委員)
ソウデス
本條ハ第一項冒頭「前」ノ一字ヲ刪リ「其訴ノ判決ヲ求ムルコトヲ要ス」トアルヲ「其訴ヲ爲スコトヲ要ス」ト改メ其他原案ニ決ス
第千二百九十一條朗讀ス
第千二百九十一條 總テノ場合ニ於テ解除ノ請求ナク又ハ其認許ナキトキハ第三所持者ハ競賣ノ際競賣人ト爲ルコトヲ得
若シ第三所持者ノ利益ニ於テ競落ヲ宣吿シタルトキハ其判決ハ原證書確認ノ證書トシテ其原證書ノ登記ノ緣邊ニ之ヲ附記スルノミ
(箕作委員)
競賣人ハ競落人デハ無イカ
(元尾崎委員)
競賣人デシヨウ、認許トハ何ニカ
(箕作委員)
訴ヘテモ敗ケタノデス
(元尾崎委員)
認許ハオカシイ
(栗塚委員)
請求ヲ認メラルルトキヲカ
(元尾崎委員)
請求ヲ許可セラルルトキハデス
(栗塚委員)
請求ノ認許ナキトキデス
(槇村委員)
何ウ云フコトカ
(栗塚委員)
請求ハ前ニ請求シテモ裁判所デ求メナカツタラデス
(箕作委員)
訴タヘテモ願ヒノ通リ、シテ呉レナカツタトキデス
(槇村委員)
其時第三所持者ハ何ウシマスカ
(箕作委員)
返シテ仕舞ノデス
(淸岡委員)
認許ト云フノハオカシイ
(南部委員)
訴訟法ニハ是認トアルガ、彼レデハナイカ
(栗塚委員)
請求ノ通リナラナカツタト云フノデス
(淸岡委員)
請求ヲ頭デ認許センコトモ亦裁判所ニ於テ相立タト謂フコトモ籠ルト見ナケレバナラン
(栗塚委員)
左樣デス、解除請求ナク又ハ許サレザルトキト云フノデス
(元尾崎委員)
認許ト云フハ分ランカラ請求ガ成立ザル位ヒデハドウカ
(栗塚委員)
認許デハ分リソウナモノデス、解除請求ナキトキ又ハ其認許ナキトキダカラ分リソウナモノダ
(淸岡委員)
裁判所デ認許スルコトハナイ
(栗塚委員)
又ハ採用ナキトキトヤリマシヨウカ
(北畠委員)
認許ノ方ガ宜シイ
(槇村委員)
採用ハ上ゲント云フ計リデハナイ訴ニ敗ケタ方モ包含スルノデスカ
(栗塚委員)
左樣デス
(淸岡委員)
裁判官ハ法律通リニスルモノダカラ認可スル樣ト云フ權ハアルモノデナイ
(栗塚委員)
訴件ヲ採リ上ゲナカツタノデアリマス
(槇村委員)
又ハ其認許ノ方デ宜シイ
(大尾崎委員)
矢張原案デ宜シイ
本條ハ第二項冒頭「若シ」ノ二字ヲ削リ其他原案ニ決ス
第千二百九十二條朗讀ス
第千二百九十二條 第三所持者ニ非サル者ノ利益ニ於テ競落ヲ宣吿シタルトキハ其判決ハ所有權移轉ノ證書トシテ特ニ之ヲ登記シ且前登記ノ緣邊ニ之ヲ附記ス
本條ハ原案ニ決ス
第千二百九十三條朗讀ス
第千二百九十三條 前條ノ場合ニ於テハ競落ノ不動產ト第三所持者ニ屬スル他ノ不動產トノ間ニ成立セシ地役權ハ一旦混同シタルモ働方及ヒ受方ニテ再生シ其混同ハ解除セラル
第三所持者ニ其取得前ヨリ屬セシ用益權、賃借權其他ノ所有權ノ支分ニ付テモ亦同シ
本條ハ原案ニ決ス
第千二百九十四條朗讀ス
第千二百九十四條 右競落ノ孰レノ場合ニ於テモ第三所持者カ競落ノ不動產ニ付キ記入シタル抵當ヲ有セシトキハ其順位ニテ配當ニ加入ス
(箕作委員)
右競落ト云フノハオカシイ
(栗塚委員)
意味ノナイ「右」デス
(箕作委員)
右ト云フ字丈削レバ宜シイ
(槇村委員)
宜シイ
(南部委員)
宜シイ
(大尾崎委員)
宜シイ
本條ハ冒頭「右」ノ一字ヲ削リ其他原案ニ決ス
于時正午十二時休憩
于時午後一時十分開會
(槇村委員)
遣リマシヨウ
第千二百九十五條朗讀ス
第千二百九十五條 各債權者ニ其記入ノ順序ニ從ヒ競落代價ヲ辨濟シ尙ホ剩餘アルトキハ其剩餘ハ競落人タルト否トヲ問ハス第三所持者ニ屬ス
若シ競落前ニ第三所持者ノ債權者カ右ノ不動產ニ付キ抵當ノ記入ヲ爲シタルトキハ其債權者ハ前所有者ニ對シテ記入シタル債權者ニ次キ配當ニ加入ス
(元尾崎委員)
前所有者ニ對シテト云フハ誰レノ事カ
(箕作委員)
第三所持者ニ賣ツタモノデアリマシヨウ
(元尾崎委員)
第三所持者ヨリモ先キヘ取ルノデアリマスカ
(南部委員)
ソウデス
(村田委員)
競落人ト否トヲ問ハズハ刪ツタ方ガ良クハ御座イマセンカ
(南部委員)
取ラン方ガ宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第千二百九十六條朗讀ス
第千二百九十六條 第三所持者カ抵當不動產ノ占有中其所爲ニ因リ之ヲ毁損シ又ハ之ニ必要若クハ有益ノ出費ヲ爲シタルトキハ第三所持者ト抵當債權者トノ間ニ於テ其計算ヲ爲ス
(元尾崎委員)
於テ其計算ヲ爲スト云フノハ何事カ
(南部委員)
有益ノ分ハ所持者ガ取リ毀損セラレタモノハ抵當債權者ガ取ツテ仕舞フノデアリマス
(槇村委員)
債權者ガ必要有益ニ出費シタ時ハ債權者ガ出スト云フコトガアリマスカ
(栗塚委員)
第三所持者ガ金ヲ出シテ良クシタラ債權者ガ拂ハナケレバナリマセン若シ惡クシタラ償ヲ遣ラナケレバナリマセン
(淸岡委員)
抵當物ハ凡テ備ツテ居ルガ良クシタラ債權者ガ拂フナドト云フコトガ御座イマシヨウカ
(村田委員)
保存費用ダカラデアリマス
(淸岡委員)
自分ノモノニシテ居ルカラ毀損スレバ自分ノ損保存スレバ自分ノ利益ノ爲メダカラ債權者ガ關係シナクツテモ良ササウデス
(元尾崎委員)
競賣シタ時ダカラデス之ハ宜シイ
(槇村委員)
毀損シタラ第三所持者ニ償ハナケレバナリマセン
(箕作委員)
之ハ仕方ガアリマスマイ
本條ハ原案ニ決ス
第千二百九十七條朗讀ス
第千二百九十七條 第三所持者ハ委棄スルヤ辨濟スルヤノ催吿ヲ受ケタル後ニ非サレハ債權者ニ對シテ果實ノ計算ヲ爲スコトヲ要セス
(箕作委員)
委棄スルカ返濟スルカ何方ニスルカト云フノダ
(栗塚委員)
左樣
(箕作委員)
又ハ入ラン
(栗塚委員)
續ケテ云フトキハ再調査ノ例デ除キマシタガ委棄スルカ又ハト云フトキハ斯ウ云フ風ニシマシタ
(元尾崎委員)
宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第千二百九十八條朗讀ス
第千二百九十八條 如何ナル場合ニ於テモ代價ノ辨濟又ハ其供託ノ後ハ記入シタル惣抵當ハ之ヲ抹殺シ不動產ハ滌除ヲ受ク縱令其元資ノ不足シタルモノモ亦同シ
(渡委員)
上ニ留保トアルノハ如何
(栗塚委員)
之ハ間違イデ御座イマスカラ御消シ下サイ
(淸岡委員)
縱令モノモハオカシイ
(箕作委員)
「縱令」ヲ刪ツテ元資ノ不足シタル抵當モ亦同ジニデハドウカ
(南部委員)
宜シイ
(栗塚委員)
其レデハ縱令ハ刪リマス
(南部委員)
抵當ニ付テモ抹殺スルト云フノデス
(元尾崎委員)
縱令元資ノ不足シタルモノモ亦同ジデ良サウナモノダ
(箕作委員)
一體「其」カラ後トハ入ランノデスカ之ハ何ンノ爲メデスカ
(元尾崎委員)
代價ト云フノハ競落ノ代價デシヨウカ
(南部委員)
左樣デス
(元尾崎委員)
競落ノ代價ト書イテ置イテハ何ウカ
(南部委員)
競落ノ代價ト一槪ニハ言ヘン
(村田委員)
元資ト云フノハ金計リデハ無イ
(栗塚委員)
金デ御座イマス
(箕作委員)
滌除ト云フノハ何ウカ前ノ滌除トハ違イマス
(村田委員)
抵當ノ抹殺ガ出來ント云フノガ眼目デアリマス
(南部委員)
不動產ハ綺麗ニナルト云フノデアリマス
(栗塚委員)
不動產ヲ滌除セラルルト遣リマシヨウカ
(箕作委員)
滌除ト云フ字ガアレバ同ジコトデス
(村田委員)
代價辨濟ト供託ノ場合ハ抹殺ガ出來ント云フノデス
(元尾崎委員)
不動產ハ滌除セラルルト遣ルカ
(南部委員)
良カロウ
(箕作委員)
滌除手續デスルノトハ違フ
(元尾崎委員)
滌除セラルガ良カロウ
(箕作委員)
滌除セラルルデ堪忍シテ置カウ
(元尾崎委員)
何レノ代價カ分ランカラ競落代價トシテ宜シイ
(北畠委員)
競落代價トシテ宜シイ
(栗塚委員)
宜シイ、滌除ヲ受クハ如何デスカ
(箕作委員)
刪ルガ宜シイ
本條ハ「代價」ノ上「競落」ノ二字ヲ加ヘ「滌除ヲ受ク縱令其元資ノ不足シタルモノモ亦同シ」トアルヲ「滌除セラル其元資ノ不足シタル抵當モ亦同シ」ト改ム
第千二百九十九條朗讀ス
第千二百九十九條 競落ノ後、第三所持者ハ左ノ如ク讓渡人ニ對シテ擔保ノ求償權ヲ有ス
第三所持者カ競落人ト爲リタルトキハ第千二百八十一條ニ記載シタル滌除ヲ目的トスル提供カ受諾アリタル場合ノ如ク賠償ヲ受ク
若シ外人ノ利益ニ於テ競落ノ宣吿アリタルトキハ第三所持者ハ普通法ニ依リテ追奪擔保ニ付テノ權利ヲ有ス但有償又ハ無償ノ契約ハ左ノ區別ニ從フ
第一 賣買其他ノ有償名義ノ取得ノ場合ニ於テ競落代價カ取得ノ原代價又ハ對價物ヲ超過シタルトキハ此差額ハ第三所持者カ權利ヲ有スル損害賠償中ニ增價トシテ之ヲ加フ
第二 贈與又ハ贈遺ノ場合ニ於テハ第三所持者ハ競落カ贈與者若クハ遺言者又ハ其相續人ヲシテ抵當債務ヲ免カレシメタル限度ニ非サレハ贈與者若クハ遺言者又ハ其相續人ヨリ賠償ヲ受ケス
手續ノ費用ハ競落人ヨリ之ヲ第三所持者ニ辨償ス
(箕作委員)
若シハ刪ルカ
(栗塚委員)
成程刪リマシヨウ
(北畠委員)
之ハ有テモ良イデシヨウ
(箕作委員)
若シハ入ランデハナイカ原文ニハ千二百八十一條ニ記載シタル如クトアリマス之ニ千二百八十一條ニ記載シタル滌除ト云フハ少シ變デス
(栗塚委員)
記載シタル場合ト云フ積リデ其場合ハ滌除ヲ目的トシタル場合ト云フ積リデアリマス
(箕作委員)
千二百八十一條ニ記載シタ滌除ト云フ樣ニ見ヘル之ハ千二百八十一條ヲ見レバ分ルカラ提供ガ受諾云々ハ入ランデハナイカ
(槇村委員)
千二百八十一條ニ記載シテアル其如クト云フデアリマス
(箕作委員)
記載シタル如ク賠償ヲ受ケト遣リマシヨウ
(村田委員)
ソレデ宜シイ
(渡委員)
ソレデ宜シイ
(元尾崎委員)
滌除ヲ目的トアツテモ差支ハナイ
(槇村委員)
記載シタル如クニシヨウ
(淸岡委員)
但以下ハドウカ
(南部委員)
其區別ニ從フト其區別ハ有償無償ト云フノデアリマス
(栗塚委員)
有償無償左ノ區別ハ入ランノデス、但左ノ區別ニ從フトシテ宜シイ
(村田委員)
其レナラ宜シイ
(淸岡委員)
宜シイ
(大尾崎委員)
宜シイ
本條ハ第一項「滌除ヲ目的トスル提供カ受諾アリタル場合」ノ數字ヲ刪リ「記載シタル如ク賠償ヲ受ク」ト改メ第二項「但」ノ下「有償又ハ無償ノ契約ノ」ノ數字ヲ刪リ其他原案ニ決ス
第千三百條朗讀ス
第六節 登記官吏ノ責任
第千三百條 第千二百二十九條ニ定メタル受取簿ニ付キ記載シタルモノヽ外登記幷ニ記入ノ帳簿ノ數、性質、記載ノ方法及ヒ登記官吏ノ義務ニ違ヒタル場合ニ於テ言渡サル可キ罰金ハ特別規則ヲ以テ之ヲ定ム
(村田委員)
干二百二十九條ニトアルハ千二百二十六條デハナイカ
(栗塚委員)
九條ニ直ツタノデアリマス
(淸岡委員)
切離シトカ解離シトカ云フノデアリマスカ
(栗塚委員)
アレハ受取證ヲ附與シト云フノデアリマス受取書ニ付キト云フノデ「簿」ハ「證」ノ字ニナリマス
(南部委員)
官吏ノ「義務」トアルハ官吏ノ職務トシテハ何ウカ
(渡委員)
良カロウ
(箕作委員)
良カロウ
本條ハ「受取簿」ヲ「受取證」ト「官吏ノ義務」ヲ「官吏ノ職務」ト改メ其他原案ニ決ス
第千三百一條朗讀ス
第千三百一條 登記官吏ノ民事上ノ責任ニ關スル第三百七十五條ハ抵當記入ノ脫漏ハ訛誤ニ之ヲ適用ス
本條ハ原案ニ決ス
第千三百二條朗讀ス
第千三百二條 登記官吏カ第三所持者ノ證書登記ノ後之ニ交付シタル認證書中一箇又ハ數箇ノ記入ヲ脫漏シ此脫漏ニ因リ記入シタル債權者カ滌除ノ提供又ハ競落ノ手續ニ加ハラサリシトキト雖モ猶ホ不動產ノ抵當ハ滌除ヲ受ク
(栗塚委員)
滌除セラルト爲リマス
(元尾崎委員)
脫漏ニ因リ記入シタル債權者トハ誰カ
(南部委員)
詰リ記入債權者デアリマス
(村田委員)
記入債權者ガトシテ宜シイ
(栗塚委員)
左樣致シマシヨウ
(渡委員)
脫漏シ記入シタル債權者ガ其脫漏ニ因リト遣ツテ宜シイ
(栗塚委員)
脫漏ニ記入シタル債權者ト遣リマシヨウ
(箕作委員)
左樣致シマシヨウ
(元尾崎委員)
記入ノ爲メガ宜シイ
(南部委員)
爲メハオカシイ
本條ハ「此脫漏ニ因リ記入シタル債權者カ」トアルヲ「脫漏ニ因リ記入債權者カ」云々ト改メ終リノ「ヲ受ク」ヲ「セラルル」ト改メ其他原案ニ決ス
第千三百三條朗讀ス
第千三百三條 滌除ノ提供ニ對スル增價競賣ノ爲メ第千二百七十八條ニ定メタル時期ノ滿了セサル間ハ脫漏セラレタル債權者ハ其脫漏ヲ第三所持者ニ吿知シ之ニ提供ノ通知ヲ求メ增價競賣ヲ要求シ又ハ所有權徵收ノ手續カ終了セサルトキハ之ニ加ハルコトヲ得然レトモ之カ爲メ其手續ヲ遲延スルコトヲ得ス
如何ナル場合ニ於テモ右ノ債權者ハ熟議上又ハ裁判上ニテ發開シタル順序配當手續ノ閉鎖セサル間ハ之ニ加ハルコトヲ得
右ハ前記ノ債權者カ脫漏ニ因リ損害ヲ受ケタルコトヲ疏明スルニ於テハ登記官吏ニ對スル求償權ヲ妨ケス
登記官吏ハ主タル債務者又ハ其保證人ノ免責ノ爲メ右ノ求償ニ因リ辨濟シタルモノニ付テハ之ニ對シテ求償權ヲ有ス
(槇村委員)
脫漏セラレタル債權ト云フノハ何ウ云フモノカ
(栗塚委員)
脫漏ノ迷惑ヲ蒙ツタ債權者ダ
(淸岡委員)
「右ハ」ハドウカ
(元尾崎委員)
右ハ前記ノオカシイ
(箕作委員)
前ノ增加競賣ヲ要求シ又ハデナイカ
(南部委員)
又ハト書イタ處モアリマス
(栗塚委員)
要求スルコトヲ得ズ斯ウ云フトキハト云フノデアリマス
(淸岡委員)
「又ハ」ハ「ハ」ハ入ラン
(箕作委員)
其方ガ宜シイ
本條ハ要求シ又ハトアル「ハ」ノ一字ヲ刪リ其他原案ニ決ス
第千三百四條朗讀ス
第千三百四條 登記官吏ハ、登記記入ハ緣邊附記ノ要求ヲ拒ムコトヲ得ス但其要求カ方式ニ適セサルトキ又ハ法律ノ要スル疏明書類ニ錄製費用其他登記官吏ノ收受ス可キ費用ヲ添ヘテ差出サヽルトキハ此限ニ在ラス
拒絕ノ場合ニ於テ登記官吏ハ要求ヲ受ケタルコトヲ認ムル書面及ヒ之ヲ拒絕シタル理由ノ陳述書ヲ交付ス可シ
右書類ノ交付アリタル上ハ利害關係人ハ其地ノ裁判所ニ訴フルコトヲ得但其裁判所ハ短キ期間ニ於テ拒絕ノ當否及ヒ登記官吏ノ責任ニ付キ裁決スルコトヲ要ス
(栗塚委員)
之モ上ノ留保トアルノハ間違イデアリマスカラ御消シ下サイ
(南部委員)
合法ナラザルトキトシテハ何ウカト云フ說ガアリマス
(元尾崎委員)
方式ニ適セザルガ宜シイ
(淸岡委員)
合法ナラザルトキトシテ宜シイ
(箕作委員)
宜シイ
(南部委員)
裁判所ニ抗吿スルコトヲ要スト遣ツテ宜シイ
(栗塚委員)
ソレデハ但以下ハ刪リマシヨウ其地ノ裁判所ニ抗吿スルコトヲ得ト致シマス
(箕作委員)
ソレデ宜シイ
(淸岡委員)
登記官吏ガ拒絕シタトキハ理由ノ陳述書ヲ交付ス可シトシテ後トハ入ラン
(大尾崎委員)
裁判所ノ勝手デ要求ハシタケレドモ拒絕スルノデアリマス
(淸岡委員)
願ヒバ見認メタガ許可ナド見認メルナドハ入ラン
(元尾崎委員)
願ヒヲ持テ來タノヲ認メルト云フノデアリマス
(南部委員)
裁判官ガ許可スルトハ違ヒマス向カラ出シタ書面ヲ慥ニ受取ツタ併シナガラ斯ウ云フ理由デ今記入ガ出來ンカラ御返シ申スト云フノデアリマス
(淸岡委員)
要求ノ無イニ拒絕ノ陳述ヲスルナドト云フコトハ無イ實ニ私ハ詰ラント思フ
(栗塚委員)
何時何日ニ持ツテ來タコトガ知レント徃ケナイ受取ツタカ否ト云フノデアリマス受取ツタニハ相違ナイガ斯ウ云フ譯ケデト云フノデ差出シタト云フコトガ慥ト云フノデアリマス官吏ガ要求者カラ出シタコトハ慥カダガ受理スルコトガ往カント云ツテ返スノデアリマス
(淸岡委員)
ソレヲ卽チ拒絕ノ理由書デアリマシヨウ
(槇村委員)
要求ヲ受ケタルコトヲ認メ及ビ之ヲ拒絕シト書イテハ何ウカ
(南部委員)
ソレデ宜シイ
(栗塚委員)
要求ヲ受タルコトヲ認メ及ビ之ヲ拒絕シタル理由ノ書面トシテハドウカ
(南部委員)
陳述書ト名ヲ付ケタ以上ハ陳述書ノ要求ヲ受ケタト云フコトヲ認メタトハ書ケマセン
(栗塚委員)
認メ及ビ之ヲ拒絕シタ理由ヲ陳述ノ書面ヲ交付ス可シトシテハドウカ
(槇村委員)
ソレデモ宜シイ
(箕作委員)
認メタル理由ノ書面ト讀メル
(南部委員)
ソレデハ元トノ通リニシマシヨウ
(元尾崎委員)
元トノ譯ニテ宜シイ
(村田委員)
認メタル書面ニ拒絕ノ理由ヲ書イテ遣ルト云フノデアリマシヨウ
(南部委員)
ソレナラバ記載シテ宜シイ
(大尾崎委員)
宜シイ
(栗塚委員)
認ムル書面ニ之ヲ拒絕シタル理由ヲ記載シテ交付ス可シトシテ宜シイ
本條ハ第一項「方式ニ適セサルトキ」トアルヲ「合法ナラサルトキ」ト改メ第二項「認ムル書面及ヒ之ヲ拒絕シタル理由ノ陳述書ヲ交付ス可シ」トアルヲ「認ムル書面ニ之ヲ拒絕シタル理由ヲ記載シテ交付ス可シ」ト改メ第三項「右書類ノ交付アリタル上ハ利害關係人ハ其地ノ裁判所ニ抗吿スルコトヲ得」ト改メ但以下刪除其他原案ニ決ス
于時午後二時三十分閉會