旧民法・法例(明治23年)

法律取調委員会 民法草案再調査案議事筆記 第32回

参考原資料

備考

  • 未校正のテキストデータです.
民法債權擔保篇再調査案第三十二回議事筆記
自第千二百四十一條至第千二百八十一條
第千二百四十一條朗讀ス
第千二百四十一條 婦ノ法律上ノ抵當カ其債權ノ擔保ニ必要ナルヨリ多クノ不動產ニ付キ記入アリ又ハ其債權ノ正當ナル評價ヨリ更ニ多キ金額ノ爲メニ記入アリタルトキハ夫上ニテ此記入ノ減少ヲ請求スルコトヲ得但抵當カアル不動產ニ付キ制限ナキトキ又ハ婚姻契約若クハ配偶者間ノ特別合意ニ因リ債權額ノ評價ナキ時ニ限ル
(栗塚委員)
之レカラハ再調査ヲ兼ネテ御議定ヲ願ヒマス之レカラ先キハ再調査ハ致シマセン積リデ御座イマス
第千二百四十二條朗讀ス
第千二百四十二條 右ニ同シク後見人又ハ其承繼人ハ未成年者又ハ禁治產者ノ擔保ニ必要ナルモノヽ外ニ爲シタル記入ノ減少ヲ請求スルコトヲ得但親屬會議ノ決議ニ因リ或ル不動產ニ付キ抵當ノ制限ナク又ハ債權額ノ評價ナキトキニ限ル
(箕作委員)
決議ニ因リト云フノハ可笑シクハナイカ
(栗塚委員)
決議ニ因ル評價ナキトキニ限ルデ御座イマス
(箕作委員)
決議デ幾ラ幾ラト制限シナカツタカ又ハト云フノデ御座イマスカラ
(南部委員)
決議ニ因テ或ル不動產ニ制限ガナイト云フノデス
(栗塚委員)
四十一條ハ「但抵當ヲ或ル不動產ニ制限セス又ハ婚姻契約若クハ配偶者間ノ特別合意ニ因リ債權額ヲ評價セサルトキニ限ル」ト致シマシヨウ
(箕作委員)
四十二條ハ「或ル不動產ニ抵當ヲ制限セス又ハ債權額ヲ評價セサルトキニ限ル」トスルカ
(南部委員)
ソレデ宜シイ
第千二百四十一條但書ヲ左ノ如ク改ム
但抵當ヲ或ル不動產ニ制限セス又ハ婚姻契約若クハ配偶者間ノ特別合意ニ因リ債權額ヲ評價セサルトキニ限ル第千二百四十二條「或ル」以下左ノ如ク改ム或ル不動產ニ抵當ヲ制限セス又ハ債權額ヲ評價セサルトキニ限ル
第千二百四十三條朗讀ス
第千二百四十三條 合意上ノ抵當ハ債務者ノ現在ノ總財產ニ關シ第千二百十三條ニ記載シタル如ク過度ナルトキニ非サレハ債務者其減少ヲ請求スルコトヲ得ス
債務者ハ常ニ債權者ノ記入シタル債權ノ評價ノ減少ヲ請求スルコトヲ得但設定證書又ハ別證書ヲ以テ評價ヲ爲サヽルトキニ限ル
本條ハ原案ニ決ス
第千二百四十四條朗讀ス
第千二百四十四條 遺言上ノ抵當ハ相續ノ不動產ニ付キ遺限者制限ヲ爲サス又ハ債權ニ付キ評價ヲ爲サスシテ之ヲ設定シタルトキハ相續人其減少ヲ請求スルコトヲ得
(栗塚委員)
之モ債權ヲ評價セズシテトナリマス「遺言者其制限ヲ爲サス」ト致シマス
本條ハ遺言者ノ下ニ「其」ノ一字ヲ加ヘ「債權ニ付キ評價ヲ爲サスシテ」ヲ「債權ヲ評價セスシテ」ト改ム
第千二百四十四條第二朗讀ス
第千二百四十四條ノ二 債務カ半額以上消滅シタルトキハ猶ホ三種ノ抵當ニ付金額ノミノ記入ヲ減少スルコトヲ得
債務者ハ一分ノ辨濟ヲ爲シタルトキハ常ニ自費ニテ記入ノ緣邊ニ之ヲ附記スルコトヲ得
(大尾崎委員)
抵當ヲ減ズルコトハ出來ナイカ
(栗塚委員)
物ヲ減ズルコトハ出來マセン殘ラズ拂ツテ仕舞ハナケレバ
(箕作委員)
金額ノミヲ減少シテハ何ニモナラン
(南部委員)
ケレドモ跡ノ抵當ヲ他ヘ二種ニ入レルコトガ出來マシヨウ
(大尾崎委員)
減少ガ出來ソウナモノダ
(南部委員)
一番抵當ヲ許スト云フノデス減ズルコトハ出來マスマイ何ゼト云フニ最初ノ合意デヤツテ居リマス
(大尾崎委員)
債權ガ減ジテ居ルカラ抵當ヲ減ジテモ良カロウ
(南部委員)
幾ラニ減ジテ宜シイハ分ラン
(大尾崎委員)
評價シテ減ズレバ宜シイ
(南部委員)
通常金ヲ借リテ抵當ヲヤツテ金ヲ半分返シタラ田地ヲ半分返シテ呉レト云フコトハ云ヘナイ
(淸岡委員)
二項ト同ジコトデハナイカ
(栗塚委員)
二項ハ記入ヲ減少スレバソレヲ登記スルコトガ出來ルト云フノデス前ハ減ズルコトガ出來ル減ズレバ記入スルコトガ出來ルト云フノデス
(淸岡委員)
五百圓丈ケ返スト云フコトヲ書クノモ前々借リタノヲ二百圓返シタト云フノヲ登記スルノモ同ジコトダ
(村田委員)
之ヲヤラナケレバ幾ラ減ジタカ分ラナイ
(南部委員)
二項ハ記入ノ手續ヲ言タモノデシヨウ
(箕作委員)
一分ノ辨濟ヲ爲スト云フノハ千圓ノ内十圓拂ツテモ宜シイノダロウ
(南部委員)
ソウデス
(淸岡委員)
半分返シタトキモ登記デ分ルノダロウ
(栗塚委員)
併シ記入ヲ減少スルノハ半分返シタトキデナケレバナリマセン
(南部委員)
登記、記入、表記ノ三ツノ手續ガアリマス
(栗塚委員)
貴君ニ千圓ノ抵當ヲ入レテ私ガ五百圓以上返セバ千圓ガ五百圓ニナツタト云フトキハ消シテ下サイト云フコトガ出來ル若シ十圓拂ヒ百圓拂ツタトキハ記入ヲ減少シテ呉レト云フコトハ出來ナイ併シソレ丈ケノコトヲ書イテ置ケト云フノデス
(箕作委員)
效能ハドレ丈ケ違ヒマスカ
(栗塚委員)
同ジコトデ御座イマシヨウ
(淸岡委員)
半分減ジタト云フコトヲ記入スレバ人ハ半分減ツタト思フ
(栗塚委員)
記入ヲ減少スレバ四百九十圓ニナツタト云フコトガ分ル併シ一分ノ辨濟ヲシタトキ借ハ千圓ト書イテアルガ幾ラ拂ツタト云フコトガ書イテアル
(槇村委員)
千圓ノモノヲ百圓返セバ卽チ九百圓ノ抵當ニナル五百圓返セバ五百圓ノ抵當ニサレル
(栗塚委員)
一部ノトキハ動カサレン五百圓以上ナレバ動カサレルト云フノデス
(槇村委員)
千圓ノ抵當ニ這入テ居ルカラ百圓戻シテモ此抵當ハ矢張千圓ニナル五百圓戻シタトキハ五百圓ノ抵當ニナルカラ殘ル五百圓ハ今一度抵當ニ入レラレル
(栗塚委員)
其差ガアルノデ御座イマス
(大尾崎委員)
一向分ラン註ヲ見テモ一部ノ辨濟ヲシタトキハ自分ガ世間ニ信用ガアルソレデハ二番抵當ニ入レラレルコトニナラナケレバ信用ヲ保ツコトガ出來ナイ
(南部委員)
半額以上ヲ減ジタトキハ裁判所ヘ請求ヲ減ジテ貰フコトガ出來ル半額以下ナレバソレヲ附記シテ置ク丈ケノコトデ減ズルコトハ出來ナイ
(大尾崎委員)
ソンナラ何ノ效能ガアリマスカ
(淸岡委員)
二重抵當ガ出來ルケレドモソレハ後ノ債權者ガソレ丈ケノ價値ガアルト思フカラダ
(南部委員)
半分返セバ五百圓ニナルカラ又抵當ニ出來ル一項ハ其旨意ダソレガナクナルト大變ナ話ニナル
(大尾崎委員)
無用ノコトダ
(南部委員)
無用ノコトダト云フト記入ヲ減少スルコトガ出來ナクナル
(大尾崎委員)
半分以上モ消滅スレバ抵當ヲ外スノハ當リ前ナ話ダソウシテ若シ負債ガ增セバ抵當ヲ餘計ニ入レル
(南部委員)
減少ハ減少デコウ云フ場合ニハ減少ガ出來ルト云フノダカラ一ツ削ルト減少ガ出來ナイコトニナル
(大尾崎委員)
減少ハ出來ナイデ宜シイ
(南部委員)
債務者ガ千圓ノ抵當ニ入レテ居ルニ五百圓ヲ減少スルト云フコトヲ記入スレバ跡ノ五百圓ヲ又他ノ債權者ガ抵當ニ取ルカ知レン
(箕作委員)
半額以上ト云フノハドウ云フ理窟デス
(栗塚委員)
三分一トシテ宜シイトカ四分ノ二ニスルガ宜シイトカ云フコトハ御議論ガアリマシヨウガ記入ヲ減少シヨウト云フコトハ必要ト思ヒマス
(淸岡委員)
佛蘭西ノ方デハ一體ニ質物ヲ塗抹スルトアル
(栗塚委員)
ソレハ全部デ御座イマス次ギノ條デス
(大尾崎委員)
之ハ何ウ云フ處カラ出タモノカネ
(箕作委員)
記入ヲ減少スルノト縁邊ニ附記スルノトドレ丈ケ違フカ區別ガ分ラン
(村田委員)
併シ記入ヲスレバ抵當ニ入レラレマスガ二項ハ減少ガ出來ナイ
(箕作委員)
ソウスレバ縁邊ニ付記スルノハ千圓ノモノヲ百圓拂ツタト云フコトヲ附記シテ何ノ役ニモ立タナイ
(村田委員)
世間ニ信用ガアル
(大尾崎委員)
附記シテ何ノ爲メニナルカ
(西委員)
前カラ減少ノ事ヲ言テ來タカラダ
(箕作委員)
半額ハ宜シウ御座イマスガ縁邊ニ附記スルノト區別ガ付イテ居ル理由ガアリマスカ
(栗塚委員)
二項ノ方ハ世間ニ對シテ信用ヲ增ス爲メデス法律デ半分以上デナケレバナラント云フモノノ拂ツテ居ルト云フコトデ書イテ置カナケレバナラン併シ入費ハ自分デ出サナケレバナリマセン
(箕作委員)
前ノ記入ヲ減少スルト云フノハ誰レノ入費ダカ
(村田委員)
自分デ減少スルカラ債務者ガ自分デ出スダロウ
(淸岡委員)
ソレヨリ外ニ仕方ガナイ
(栗塚委員)
一項ガ惡イカ二項ガ惡イカト云フノデスカ
(箕作委員)
ソウデス
(栗塚委員)
半額以下デハ出來ンカト云フト記入ノ減少ハ出來ン併シ半額以下デモ拂ツタコトヲ縁邊ニ附記シテ置クノガ良イゾヨト云フノデ御座イマス
(大尾崎委員)
半額以下デモ減ジテ宜カロウ
(南部委員)
之ハ自費デアルト云フ區別デハナイ
(箕作委員)
前項モ債務者ガ自費デヤル
(栗塚委員)
半額以上記入ヲ減少スルコトガ出來ル併シ半額以上デナケレバ記入ヲ仕換ヘルコトガ出來ナイカト云フト一部デモ拂ツタコトヲ欄外ヘ記入シテ置ケト云フノデ御座イマス
(箕作委員)
半分以上拂ツテモ欄外ヘ記入シテ良カロウ
(槇村委員)
五百圓ノ抵當ニナルダ
(栗塚委員)
半額以上モ止メ記入ノ減少モ止メ只ダ拂ツタレバ縁邊ニ附記シテ置ケバ宜シイト云フト幾ラノ抵當ニ這入ツテ居ルト云フノデ苦シウ御座イマス
(箕作委員)
併シ欄外ヘ記入シテ置ケバ減ジタト云フコトガ直グ分ル
(槇村委員)
一項ハ誰レガ入費ヲ出シマスカ
(箕作委員)
前ノモ債務者ガ出スニ違ヒナイ
(村田委員)
自分カラ減ジテ呉レト云ツテ出タモノニ外カラ入費ヲ拂ツテヤルコトハナイ
(南部委員)
自費ノ場合ハ裁判所ヘ出ス公正證書ヲ要セント云フ區別ガアル此處デ自費ト云フコトガナケレバ誰レガ出シテモ宜シイコトニナル承諾モ何モ入ラント云フコトダロウト思フ
(槇村委員)
前ノモ自費カ
(淸岡委員)
減少ノ記入ヲシタト云フコトヲ縁邊ニ附記シタトキト減少ノトキハ外ノ債務者ガ記入ヲ請フ、一部分ノトキハ債權者ガ抵當ニ取ルトキ取扱ガ違ヒハセンカ
(南部委員)
モウ少シ先キマデ讀ンデ決シテ下サイ
(栗塚委員)
債務者ハ債務ノ半額以上辨濟アリタルトキトスレバ宜シイ消滅ト云フカラ耳ニ障ル
(箕作委員)
辨濟ナクシテ消滅スルコトガアルダロウ辨濟デナク他ノ方法デ千圓ノ内百圓消滅シタカラドウスルダロウ
(栗塚委員)
矢張リ記入ノ縁邊ニ附記スルコトガ出來ルデアリマシヨウ
(大尾崎委員)
消滅ト云フコトハドウ云フ譯ダ
(村田委員)
相殺ハ辨濟ノ中ニ這入ル
(南部委員)
四百七十一條ニアリマス此二項ノ一部ノ辨濟ハ消滅ニシテモ差支ナイ
(栗塚委員)
二項ハ返シ崩シヲ見タノデ御座イマス
(淸岡委員)
之ハ殘シテ置イテ先キヘ行キマシヨウモウ少シ御明解ヲ願ヒマス
(栗塚委員)
ソレヨリモ之ヲ別項ニセズニ繼ヅケテ書イタラ疑ヒガナイカ知レン半額以下ナレバ記入ヲ減少スルコトヲ得ズト云フコトヲ縁邊ニ附記スルコトヲト書ケバ宜シイ
(南部委員)
ソレナラ宜シイ
(栗塚委員)
但半額以下ノ消滅ニ於テ之ヲ記入ノ縁邊ニ附記スルコトヲ得トシテハ如何デス
(淸岡委員)
ソンナコトハイケナイ
(大尾崎委員)
之ハ留保シテ先キヘ行キマシヨウ
本條ハ尙ホ追テ議スルコトトシ未定
第千二百四十五條朗讀ス
第千二百四十五條 債務者ノ請求ヲ正當トスル判決ニハ抵當ヲ免カレタル不動產又ハ評價ヲ改メタル金額ヲ指示ス
右第一ノ場合ニ於テハ抵當ノ記入ヲ抹殺シ第二ノ場合ニ於テハ之ヲ減少ス
(栗塚委員)
抵當ヲ免ガレタル不動產ヲ換ヘタトキハ卽チ記入ヲ抹殺スル
(槇村委員)
於テト云フ字ガ二ツアル
(栗塚委員)
之ハ間違ヒデ御座イマス
本條ハ原案ニ決ス
第千二百四十六條朗讀ス
第千二百四十六條 前數條ニ從ヒ記入ヲ或ル不動產ニ減少シタル場合ニ於テ其不動產カ債權者ノ擔保ニ不十分ト爲リタルトキハ意外ノ事又ハ不可抗力ニ因ルト雖モ債權者ハ抵當ノ補充ヲ請求スルコトヲ得
本條ハ原案ニ決ス
第千二百四十七條朗讀ス
第千二百四十七條 記入ノ抹殺及ヒ減少ハ確定判決ニ依ルニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス又公正證書ヲ以テスルニ非サレハ債權者之ヲ承諾スルコトヲ得ス
(村田委員)
抹殺及ビデハナイ抹殺又ハデスネ
(栗塚委員)
又ハニシマシヨウ
(村田委員)
公正證書ハ此間抵當ノトキ消ヘタカラ
(栗塚委員)
之ハ公正ノ二字ヲ刪リマス
(箕作委員)
確定判決ト云フコトハ起案者ガ入レタノデスカ確定判決ヨリ外ニ仕方ガナイダロウ之ハ控訴モ出來ズ大審院ニ破毀ヲ求メルヨリ外ニ道ハナイカラ
(村田委員)
元トノ文章ノ方ガ良クハナイカ
(箕作委員)
ソレガ宜シイ
本條ハ「及ヒ」ヲ「又ハ」ト改メ「公正」ノ二字ヲ削ル
第千二百四十八條朗讀ス
第千二百四十八條 任意ノ抹殺又ハ減少カ債務ノ消滅ニ基クトキハ其抹殺又ハ減少ヲ承諾スルニハ債權者其債務ノ辨濟ヲ受取リ又ハ之ヲ追認スルノ能力ヲ有スルヲ以テ足レリトス
若シ抹殺カ右ノ外第千二百三十九條ニ記載シタル原因ノ一ニ基クトキハ債權者和解スルノ能力ヲ有スルコトヲ要ス
又抹殺又ハ減少カ抵當ヲ無償ニテ抛棄スルノ性質ヲ有スルトキハ債權者無償ニテ債權ヲ處分スルノ能力ヲ有スルコトヲ要ス
(箕作委員)
右ノ外ト云フノハ
(南部委員)
債務ノ消滅デ第千二百三十九條ノ第一ニ御座イマス
(栗塚委員)
二項ノ「若シ」ハ入リマセン
(南部委員)
「若シ」ハ削リマシヨウ
(淸岡委員)
右ノ外抹殺ガトスレバ宜シイ
(南部委員)
右ノ外トハ申シマセン
本條第二項「若シ」ノ二字ヲ削ル
第千二百四十九條朗讀ス
第千二百四十九條 記入ノ抹殺又ハ減少ヲ承諾スル爲メ委任ハ公正證書ヲ以テ之ヲ與フルコトヲ要ス
然レトモ抹殺又ハ減少カ債務ノ消滅ニ基クトキハ債務者ノ免責ヲ承諾スルノ權限ヲ有シタル代理人ニ於テ其抹殺又ハ減少ヲ承諾スルコトヲ得
和解又ハ無償ノ抛棄ニ付テハ委任ハ明示タルコトヲ要ス
(栗塚委員)
一項ハ入ラン樣デス
(南部委員)
之ハナケレバナラン
(箕作委員)
此前ニモコウ云フ條ガアリマシタ
(南部委員)
四十九條モソウデス
(村田委員)
之ハ公正證書ガ入リマセン
(栗塚委員)
之モ入リマセン
(村田委員)
末項ハ又ハ無償ノ抛棄ニ付テハ委任ハト云フト「ハ」ガ重ナルカラ「委任ニ之ヲ明示ス」トシタラ良カロウ
(箕作委員)
ソレデハ違ウダロウ委任ハ默示デハイケナイ明示ノ委任デナケレバナラント云フコトダカラ
(村田委員)
同ジコトダロウ
本條ハ「公正」ノ二字ヲ削ル
第千二百五十條朗讀ス
第千二百五十條 抹殺又ハ減少ヲ爲スニハ其合意又ハ判決ヲ記入ノ緣邊ニ附記スルコトヲ要ス
登記官吏ハ公證人ノ證書又ハ判決書ノ公正ナル謄本ヲ受取リタル上ニ非サレハ右ノ附記ヲ爲スコトヲ得ス但判決書ノ謄本ヲ差出ス場合ニ於テハ其判決ノ確定トナリタル旨ヲ裁判所書記ノ登記シタルコトヲ要ス
第千二百二十五條末項及ヒ第千三百四條ハ登記官吏ノ拒絕及ヒ其責任ニ之ヲ適用ス
(箕作委員)
減少ヲスルニハ記入ノ縁邊ニ附記スルト云フノカ
(南部委員)
合意ト判決ノ旨意ヲ縁邊ニ書カナケレバナラン
(村田委員)
合意トカ判決トカ云フコトヲ書クノダロウ
(大尾崎委員)
前ノ公正ヲ刪ルト公正證書又ハ私證書トデモ云ハナケレバナラン
(栗塚委員)
登記官吏ハ判決書ノ公正ナル謄本又ハ證書ヲ受クルト致シマス
(南部委員)
證書ノ正本トヤリマスカ
(淸岡委員)
公證人丈ケヲ刪ツテ元トノ通リニスレバ宜シイ
(栗塚委員)
ソウスルト判決ノ公正ナル謄本證書ノ公正ナル謄本トナリマスカライケマセン證書ノ正本又ハ判決書ノ公正ナル謄本ヲトヤツテモ宜シウ御座イマス
(箕作委員)
ソウシナイト分ラン
(南部委員)
千二百二十五條ノ三項ノ公正證書ニ謄本トアルヲ證書ノ正本トシタイ
(大尾崎委員)
成程ソレデ宜シウ御座イマス
(箕作委員)
前ノ未定ノ處ハ金額ノ記入ノミヲ減少スルト云フトキハ矢張リ附記スルノデ二項ト同ジコトデス
(南部委員)
ソウデス
(淸岡委員)
右ノ附記ヲ爲スコト要スト云フノモ可笑シイ
(南部委員)
合意判決ヲ書イテ置クト云フノデス
(槇村委員)
登記官吏ノスルノガ附記カ
(淸岡委員)
抹殺減少ダ
(栗塚委員)
抹殺減少ヲ附記スルノデ御座イマス
本條第二項公證人ノ證書又ハトアルヲ證書ノ正本又ハト改ム
(栗塚委員)
千二百五十一條ハ今日ノ留保ノ一ツニナツテ居リマスカラ此儘ニ願ヒマス
第千二百五十二條朗讀ス
第千二百五十二條 記入、更新、抹殺又ハ減少ニ訛誤又ハ脫漏アルモ之カ爲メ銷除ヲ爲スニ足ラサルトキハ當事者ノ協議又ハ判決ヲ以テ之ヲ正誤ス
本條ハ原案ニ決ス
第千二百五十三條朗讀ス
第四節 債權者間ノ抵當ノ效力及ヒ順位
第千二百五十三條 凡ソ不動產ニ付キ記入シタル抵當債權者ハ其不動產ノ代價ノ配當ニ有益ニ加入スルコトヲ得ルニ因リ無特權債權者ニ先ツモノトス
法律上、合意上又ハ遺言上ノ抵當ヲ有スル數人ノ債權者間ニ於テハ其配當加入ノ順位ハ數箇ノ記入ヲ同日ニ爲シタルトキト雖モ其記入ノ前後ニ因リテ之ヲ定ム但登記官吏ノ第千二百二十九條ノ規定ヲ遵守セサル場合ニ於テハ之ニ對スル責任ノ訴權ヲ妨ケス
(箕作委員)
コウ云ウ講釋ヲ付ケテハ困ル「抵當債權者カ無特權債權者ニ先チ其不動產ノ代價ノ配當ニ有益ニ加入スルコトヲ得」トシテハ如何デス
(槇村委員)
ソレガ宜シイ
本條ハ左ノ如ク改ム
凡ソ不動產ニ付キ記入シタル抵當債權者ハ無特權債權者ニ先チ其不動產ノ代價ノ配當ニ有益ニ加入スルコトヲ得
第千二百五十四條朗讀ス
第千二百五十四條 記入ハ揭載シタル利息及ヒ定期ノ附從物ニ其經過シタル最後ノ二个年分ニ限リ主タル債權ト同一ノ順位ヲ得セシム但二ケ年以外ノ利息及ヒ附從物ノ爲メ債權者ノ日後記入ヲ爲スノ權利ヲ妨ケス然レトモ此記入ハ其日附ニ於テノミ效ヲ生スルモノトス
(箕作委員)
之ハ少シ違ウ樣ダ揭載ハシテアルケレドモ最後ノ二年間分丈ケト云フコトダガ
(栗塚委員)
原文ヲ直シテ來マシタ揭載シタアル利息ハ附從物ト云フコトデス
(箕作委員)
ソレガ違ツタノダ
(栗塚委員)
附從物ニ順位ヲ得セシムルト云フカラ分ランノダ
(大尾崎委員)
日後ノ記入ハ最初ニ記入ヲシテソレカラ後ト云フコトデシヨウ
(南部委員)
ソウデス初メハ記入ハ入リマセン
(村田委員)
揭載シタルハ附記シタルトシテハドウデス
(南部委員)
附記シテハナイ
(箕作委員)
記入カ記入スルト云フコトダ
(栗塚委員)
記入ト云フノガ元トデス記入ニ揭ゲタルトスルカ
(大尾崎委員)
二年以外ノ分ハ記入シテ置カナケレバ取レンソレハ何時ノ場合ヲ云フカ
(南部委員)
無資力ニナレバ記入ヲスルコトハ出來ント云フコトガアリマス
(箕作委員)
二年デモ三年デモ其後ニ揭ゲルコトガアツテモ主タル順位ヲ一所ニ取レバ其後ニ渉ツタトキハ別ニ記入シナケレバ其後ニ分ケ取ヲスルトキ取レルト云フコトハ出來ナイ
(村田委員)
記入ノ效力トシテカト云フ字ヲ入レテハドウダ
(栗塚委員)
入レマシヨウ
本條ハ第一項「效ヲ」トアルヲ「效力ヲ」ト改ム
第千二百五十五條朗讀ス
第千二百五十五條 抵當ノ順位ハ債權カ條件付ナルトキ又ハ信用ヲ開キテ爲ス貸付ノ如ク漸次ノ支拂ヨリ生スルトキト雖モ亦記入ニ因リテ之ヲ定ム
(栗塚委員)
商法デハ信用トナツタソウデス
本條ハ原案ニ決ス
第千二百五十六條朗讀ス
第千二百五十六條 債權者カ數箇ノ不動產ニ付キ抵當ヲ有シ其各箇ノ代價カ同時ニ淸算アリシトキハ其債權ハ總不動產ノ價額ノ割合ニ應シテ之ヲ分配ス可シ漸次ノ淸算ノ場合ニ於テ右ノ債權者カ不動產中一箇ノ代價ニ因リテ全ク辨濟ヲ受ケ此一箇ノ不動產ニ付キ其債權者ノ次ニ抵當ヲ有スル一人又ハ數人ノ債權者ノ爲メニ損失ノ生スルトキハ其一人又ハ數人ノ債權者ハ他ノ各不動產ニ付テハ其己レニ先チタル債權ニ於ケル其各不動產ノ分擔部分ニ限リ自己ノ債權ノ爲メ其相互ノ順位ヲ以テ右辨濟ヲ受ケシ債權者ノ抵當ニ當然代位ス
(大尾崎委員)
之ハ中々講釋ガ六ツカシイ
(箕作委員)
於ケル分擔部分ト云フ處ガ一寸分ラン
(栗塚委員)
相互ノ順位ヲ以テハ分ラン樣デス
本條ハ原案ニ決ス
第千二百五十七條朗讀ス
第千二百五十七條 前條ノ代位ハ原債權者ニ次テ右各不動產ニ付キ記入ヲ爲シタル債權者ニ對シテ其效ヲ生ス
右ノ代位者カ記入ノ緣邊ニ其代位ヲ附記シタルトキハ其代位者ヲ順序配當手續中ニ加ハラシムルコトヲ要シ且其承諾アルニ非サレハ何等ノ抹殺又ハ減少ヲモ爲スコトヲ得ス
若シ右ノ不動產ニ付キ抵當ノ記入アラサリシトキハ代位者其記入ヲ爲シ且右ト同一ノ目的ニテ其緣邊附記ヲ爲スコトヲ得
(村田委員)
之ハ質問中ダ
(南部委員)
決定ニナツタ
(箕作委員)
原債權者ト云フノハ辨償ヲ受ケタモノヲ云フノカ
(箕作委員)
云ハナクテモ分ツテ居ル記入ノナイト云フノハ元トカラ債權者ガ記入シナイト云フノデハアリマセンカ
(栗塚委員)
原債權者ガシタノダソレダカラ縁邊ニ附記シマス
(南部委員)
ソウデハナイ元ト記入ガナイカラ第三者ガ記入ヲシテ其上ニ縁邊ニ附記ヲスルト云フコトデス
(大尾崎委員)
初メニ抵當ヲ記入シナイデ效力ガアリマスカ
(南部委員)
記入スレバ效力アル其前ニハ外カラ先キヘ取ランデモ仕方ガナイ
(栗塚委員)
三項ハ原債權者ノ抵當ノ記入アラザルトキハト云フノデス「原」字ヲ入レテハドウデス
(大尾崎委員)
入レタ方ガ分ル
(栗塚委員)
「原債權者ノ抵當ノ記入ナキトキハ」ト致シマシヨウ
(淸岡委員)
前ノ文ニハ他ノ不動產ニ付キトアル
(南部委員)
「他ノ」ト云フノハ「右各ト」トアツタ前ノ條デ受ケテ居リマスカラ分リマシヨウ
(淸岡委員)
原債權者デ分リマス
(栗塚委員)
原債權者ガ抵當ノ記入ヲ爲サザリシトキデアリマス
(箕作委員)
原債權者ガ爲サザリシト云フト弊ガアルダロウ
本條第三項「若シ右ノ不動產ニ付キ原債權者ノ抵當ノ記入ナキトキハ」(以下原案ノ通リ)
第千二百五十八條朗讀ス
第千二百五十八條 凡ソ債權ヲ處分スルノ能力アル抵當債權者ハ同一債務者ノ他ノ債權者ノ利益ニ於テ自己ノ抵當又ハ其順位ノミヲ抛棄スルコトヲ得但第五百二十二條及ヒ第五百二十五條ニ於テ更改ニ關シ規定シタルモノヲ妨ケス
若シ抵當債權ヲ數次ニ數人ニ對シ讓渡、抛棄又ハ代位ノ目的トナセシトキハ優先權ハ承權人中記入ノ緣邊ニ自己ノ權利ノ設定證書ヲ附記シ又ハ記入ノ有ラサリシトキハ之ヲ爲シテ其取得ヲ第一ニ公示シタル者ニ屬ス
本條ハ原案ニ決ス
第千二百五十九條朗讀ス
第千二百五十九條 右ノ外第千百九十一條ノ規定ハ前二條ノ場合ニ適用ス
本條ハ原案ニ決ス
第千二百六十條朗讀ス
第千二百六十條 抵當債權者又ハ無特權債權者ハ記入ナキ抵當ヲ知リテ之ヲ自認シタリト雖モ記入ノ欠缺ヲ申立ツルノ權利ヲ失ハス
(箕作委員)
詰リ記入ナラ何ンデモシナケレバナランモノト云フノダ申立ツルト云フノハ元トハ利唱トアツタ
(栗塚委員)
利唱ノ方ガ宜シウ御座イマス今度ハ援唱トヤリマシタ
(元尾崎委員)
彼レハ抵當ニ取ツテ居ルガ記入ガナイト云フコトヲ知ツテ居ルトキ彼レハ權利ガ御座イマセント云ヘルト云フノカ
(淸岡委員)
援唱利唱ト云フ字ハ實ニ良イ字ダ之レデハ自分ガ欠缺ヲ申立ツル樣ニナル
(栗塚委員)
他人ノ記入ノ欠缺ヲ自分ノ利益ニ申立ツルト云フノデ御座イマスカラ
(元尾崎委員)
之レデハ欠缺ダカラ記入シテ呉レト云フ樣ニ見ヘル
本條ハ「申立ツル」「利唱スル」ト改ム
第千二百六十一條朗讀ス
第千二百六十一條 不動產賣拂代價ヲ以テ全部ノ辨濟ヲ受ケサル抵當債權者ハ其殘額ニ付テハ無特權債權者タリ
若シ不動產ノ賣拂ニ先チテ動產有價物ノ配當ヲ爲ストキハ抵當債權者ハ其債權全額ノ爲メ無特權債權者トシテ假リニ其配當ニ加入ス
其後ニ至リ抵當不動產ノ代價ノ配當アルトキハ抵當債權者ハ動產有價物ニ付キ何等ノ辨濟ヲモ受ケサリシカ如ク其配當ニ加入ス然レトモ此配當ニ於テ全ク辨濟ヲ受クヘキ者ハ動產ノ配當ニテ受取リタル金額ヲ減除スルニ非サレハ其抵當ノ配當額ヲ受クルコトヲ得ス其減除シタル金額ハ動產財團中ニ之ヲ返還ス
不動產ノ代價ノ配當ニ於テ一分ノミノ辨濟ヲ受クルコトヲ得ヘキ者ニ付テハ配當ニ加ハルコトヲ得サリシ殘額ニ從ヒ其動產財團ニ對スル權利ヲ定ム但此割合外ニ受取リタルモノハ其抵當ノ配當額中ヨリ扣除シ之ヲ動產財團中ニ返還ス
右ノ返還金額ハ純粹ノ無特權債權者ト有益ニ配當ニ加入スルヲ得サルカ又ハ債權ノ一分ノミニ付キ之ニ加入シタル抵當債權者トノ間ニ於テ更ニ之ヲ配當ス
(箕作委員)
三項ノ「受クヘキ者ハ」ノ云フノハドウ云フコトデス
(栗塚委員)
「受クル者ハ」デ御座イマス
(南部委員)
受クベキ者ハ受クルコトヲ得ト云フノデス
(村田委員)
三項ノ受クルコトヲ得ルハ受取ルコトヲ得デ良カロウ
(栗塚委員)
受取デ御座イマス
(元尾崎委員)
未決ハ
(栗塚委員)
抵當債權者ノ間ニ配當シ其抵當債權者ハ配當ニ加入スルコトガ出來ナカツタ債權者又ハ一部ノミ加入シタ債權者ト云フノデ御座イマス
(村田委員)
四項ノ「得可キ」ハ「得ヘキ」ダロウ
(栗塚委員)
「ヘキ」デ御座イマス
(箕作委員)
純粋ノ無特權債權者全ク配當ニ加入セズ一部ノミノ加入ニ加ハツタ奴トノ間ト云ノダロウ
(栗塚委員)
加入セズト致シマスカ
(箕作委員)
加入スルコトヲ得ズトシテモ宜シイ
本條ハ第三項「受クルコトヲ得ス」ヲ「受取ルコトヲ得ス」ト改ム第四項「得可キ」ヲ「得ヘキ」ト改ム
第千二百六十二條朗讀ス
第五節 第三所持者ニ對スル抵當ノ效力
總則
第千二百六十二條 抵當不動產カ讓渡サレ又ハ用益權其他ノ物權ヲ負擔シタルトキハ其設定證書ノ登記前ニ記入ヲ爲シタル抵當債權者ハ第三取得者ニ對シ債務ノ辨濟ヲ請求スルノ權利ヲ保有シ又此不動產ノ賣拂代價ヲ以テ辨濟ヲ受クル爲メ其不動產ノ徵收ヲ訴追スルノ權利ヲ附從ニテ保有ス
然レトモ第百二十六條及ヒ第百二十七條ニ規定シタル期間ヲ以テ爲シ又ハ更新シタル賃貸借ハ抵當債權者之ヲ遵守スルコトヲ要ス
(栗塚委員)
其設定證書ハ讓渡ハ這入ラン樣デス
(南部委員)
ソレハ這入ル
(栗塚委員)
其證書トシテ設定ノ二字ヲ削ツテモ宜シウ御座イマス
(大尾崎委員)
其方ガ宜シイ
本條ハ設定證書トアル「設定」ノ二字ヲ削ル
第千二百六十三條朗讀ス
第千二百六十三條 抵當カ所有權ノ支分ニ存シ債務者其權利ヲ抛棄シタルトキハ其抛棄ノ登記前ニ記入ヲ爲シタル債權者ハ其抛棄ニ拘ハラス追及權ヲ保有ス
本條ハ原案ニ決ス
第千二百六十四條朗讀ス
第千二百六十四條 抵當ハ其不動產ヲ差押ヘ之ヲ賣却セシメタル無特權債權者ニハ競落ノ登記前ニ其記入ヲ爲シタルトキニ非サレハ之ヲ以テ對抗スルコトヲ得ス但第千二百二十條ニ揭ケタル二箇ノ場合ニ於テ爲セル記入ノ無效タルコトヲ妨ケス
(元尾崎委員)
無特權債權者ガ差押ヘテ居ツテモ抵當ガ出來ルノダ競落ノ言渡アルマデハ出來ルト云フノカ
(栗塚委員)
ソウデス
(元尾崎委員)
差押ヘタカラ登記ハ出來ソウモナイ
(栗塚委員)
過半デナケレバ宜シイ千二百二十條ニアリマス抵當ノ原因ガ差押後ニ起ツテハイケマスマイ若シ債務者ヲ害スル所爲デ抵當ニヤツタナレバ無論取消スコトガ出來マス
(元尾崎委員)
先月抵當ニ取ツテ怠ツタト云ヘバ許キ樣ガナイ是ハ差押前トヤツタラドウダロウ
(南部委員)
公正證書ガナケレバイケナイ
(元尾崎委員)
現ニ私抔ハ登記ヲセズニ證文丈ケヤツテ居ルノガアル
(箕作委員)
差押バカリデハ債務ノ手ガ離レン競落シタノデ債務者ノ手ヲ離レル
(南部委員)
ドウシテモ公正證書デナケレバイケナイ
(村田委員)
公正證書ヲ生カサナケレバナラン
(元尾崎委員)
動產差押ト云フタラ少シ差押ヘルト云フコトハナイ全部差押ヘタルトキデナケレバ差押ヘン
(淸岡委員)
實際ハソウカ知レンガ法律上デコウ云フコトヲシテ置クハ良クナイ
(元尾崎委員)
廢罷訴權ヲヤランデ叶ハンモノハ公證人ノ前デヤルカラ宜シイ
(南部委員)
ソレハ間違ヒダ
(淸岡委員)
差押後ニ係ル登記ハ公正證書デナケレバナラントシタラ良カロウ私證書ハ差押後ニハイケナイト云フコトヲ入レナケレバナラン
(栗塚委員)
ソウスルト首尾ガ合ハンデス
(淸岡委員)
差押後ハ私證書ハイケナイト云フコトニナル
(元尾崎委員)
「公正證書ヲ以テ設定シタル抵當ハ登記前ニ其記入ヲ爲シタルトキハ之ヲ以テ對抗スルコトヲ得」トスレバ宜シイ
(西委員)
ソレガ宜シイ
(南部委員)
公正證書ヲ以テ設定シタル抵當ハトスレバ宜シイ
(箕作委員)
尾崎サンノ旨意デ宜シイ
(元尾崎委員)
ソレデ但書ガ猶ホ都台ガ宜シイ
(村田委員)
公正證書ヲ生スガ宜シイ
本條ハ左ノ如ク改ム
公正證書ヲ以テ設定シタル抵當ハ其不動產ヲ差押ヘ之ヲ賣却セシメタル無特權債權者ニハ競落ノ登記前ニ其記入ヲ爲シタルトキハ之ヲ以テ對抗スルコトヲ得「但以下原案ノ通リ」
第千二百六十五條朗讀ス
第千二百六十五條 第三所持者ノ破產無資力又ハ死亡ハ其取得證書ノ登記アルマテハ抵當記入ノ妨碍ト爲ラス
(栗塚委員)
死ンダカラトテ第三所持者ノ登記アルマデハ記入ガ出來ル借リタ人ト貸シタ人ト其財產ヲ分ツタ人トアツテ其買ツタ人ガ死ンデモ記入ガ出來ル併シ換ヘテ仕舞ツテハ出來ンゾヨ
本條ハ原案ニ決ス
第千二百六十六條朗讀ス
第千二百六十六條 第三所持者ハ場合ニ從ヒ左ノ方法ヲ用ユルコトヲ得
第一 抵當債務ヲ辨濟スルコト
第二 條除スルコト
第三 財產權索ノ抗辯ヲ以テ對抗スルコト
第四 不動產ヲ委棄スルコト
其他第三所持者ハ所有權徵收ヲ受クルコト有リ
(淸岡委員)
ドウ云フモノデ其ト云フノガ這入リマシタ
(栗塚委員)
公賣ニ附スルト云フノデス
(大尾崎委員)
債務ヲ拂ハナカツタトキハ徵賣サレル
(村田委員)
其他ト云フノハ前ニハ第五トナツテ居ル
(南部委員)
受クル方法ヲ用ユルト云フコトハ出來マセンカラ「其他」トシテ前項ニシマシタ
(栗塚委員)
第三所持者ハ場合ニ從ヒ何トカスル爲メニ左ノ方法ヲ用ユルト云フコトハ必要デハアリマスマイカ原文ハ「第三所持者ハ場合ニ從ヒ第一第二第三第四何々スルコトアリ」トアリマス
(大尾崎委員)
「其他」トアルハ第五デ良カロウ
(委員長)
ソウシテ徵收ヲ受クルコトハ方法ダロウ
(栗塚委員)
方法ヲ用ユルト云ヘマスマイ
(箕作委員)
選ムト云フ字ダト宜シイノデス
(元尾崎委員)
其方法ニ依ルコトヲ得トシタラ良カロウ
(栗塚委員)
ソウシテ第五ヲ徵收ヲ受クルコトト致シマシヨウ
(委員長)
委棄ハ訴訟法ニ聞クコトニナツテ居タガドウシタ
(箕作委員)
商法ノ保險ノ所モ委棄デ濟ンデ仕舞ヒマシタ
(栗塚委員)
委棄ト致シマシヨウ
(村田委員)
商法ハ元ト遺棄トアツタ
(南部委員)
二十五條ヲ遺棄トスルガ宜シイ
(栗塚委員)
此處ハ放遺ニナツテハ如何デス
(箕作委員)
之ハ委棄デ宜シイ
(栗塚委員)
權利ヲ棄テシコトヲ抛棄ト云ヒ財產ヲ棄テルコトヲ委棄ト云フ
本條第一項「方法ヲ用フルコトヲ得」トアルヲ「方法ニ依ルコトヲ得」ト改ム
第二項ヲ第五トシテ左ノ如ク改ム
第五所有權徵收ヲ受クルコト
第千二百六十七條朗讀ス
第一款 抵當債務者ノ辨濟
第千二百六十七條 第三所持者ハ抵當債務者ノ滿期ト爲ルニ從ヒ之ヲ辨濟スルニ於テハ所有權徵收又ハ防害ヲ受クルコト無シ
(箕作委員)
妨碍ヲ受クルト云フノハ
(栗塚委員)
迷惑ハ何モ蒙ラント云フノデス
(元尾崎委員)
一切御迷惑ハ相掛ケ申間數ト云フノダ
本條ハ原案ニ決ス
第千二百六十八條朗讀ス
第千二百六十八條 第三所持者ハ債務ノ全部又ハ一分ヲ辨濟シタルトキハ第五百四條第一號第五百五條第三號及ヒ第四號ニ從ヒ其辨濟ヲ得タル債權者ニ屬スル他ノ抵當、擔保及ヒ利益ニ代位ス
又第三所持者ハ其辨濟ヲ得サリシ債權者ヨリ所有權徵收ノ訴追ヲ受クルコトアル可キ場合ノ爲メ自己ノ所持スル不動產ノ負擔スル抵當ニ付キ辨濟ヲ得タル債權者ニ未定ニテ代位ス
(箕作委員)
他ノ抵當ト云フノハ他ノデハナイ第三所持者ニ屬スル抵當デハナイカ
(南部委員)
此抵當デハナイ外ノ抵當擔保デス
(栗塚委員)
自分ガ拂ツテヤレバ其抵當ヲ悉皆貰ウコトハ出來マセン併シ外ノ抵當ガアレバ貰ヘル
(委員長)
債權ニ對シテ外ノ抵當ト云フノカ
(南部委員)
左樣デス
(栗塚委員)
現在自分ガ拂ツテヤレバ債權者ガ抵當權ヲ持ツテ居レバ代理ガ出來ル筈デス
(箕作委員)
其抵當自ラニ代位ガ出來ソウナモノダ
(元尾崎委員)
三ツ抵當ガアル其中一ツヲ買ツタ併シ債務ガ一ツノトキソレヲ返濟シテ他ノ不動產ニ代位スルト云フコトダ
(栗塚委員)
南部サンハ甲ト乙トノ地所ヲ村田サンニ抵當ニ入レテ金ヲ借リテ居ラレタトキ私ガ甲ト云フ地所ヲ買ツタ其金ヲ村田サンニ拂ツテ南部サンガ義務ヲ免レル其時甲乙ノ地所ガ這入ツテ居ツテ甲ノ分ヲ拂ヘバ矢張抵當ニ這入ツテ居ル乙ノ抵當ヲ取ル
(元尾崎委員)
乙ノ分モ一所ニ拂ツタトキダロウ債務ガ一ツデ抵當ガ二ツデ兩方ニ跨ツタトキ乙ニ對シテ抵當權ヲ有スルト云フノダロウ
(栗塚委員)
ソウデス五百三條三號及ビ四號ハ四號及ビ五號トナリマス
本條第三號及ヒ四號トアルハ四號及ヒ五號ト改ム
第千二百六十九條朗讀ス
第二款 條除
第千二百六十九條 第三所持者ハ記入シタル總テノ抵當債務ヲ辨濟セサルモ債權者ニ其記入ノ順序ニ從ヒ不動產ノ取得代價其評價若クハ之ニ超ユル金額ヲ辨濟シ又ハ債權者ノ爲メニ之ヲ供託シテ不動產ノ負擔ヲ免カレシムルコトヲ得但下ニ規定セル如キ提供及ヒ條除手續ヲ爲シタル後債權者ノ明示又ハ默示ノ承諾アリタルコトヲ要ス
(箕作委員)
超ユル金額ハ提供シテ債權者ガ嫌忌ト云フトキハ八ケ間敷クナツテ來ルダロウ
(委員長)
但シ以下ガ分ラン
(箕作委員)
承諾ガナケレバ滌除ガ出來マセン
(委員長)
其前ニ承諾ガアツタノダロウ
(箕作委員)
提供ニシテ債權者ガ宜シイト云ヘバ滌除ガ出來ル一萬圓デドウダロウト云フトキ債權者ガ宜シイト云ヘバ滌除ニナルソレヲ嫌忌ダト云フト滌除ニナラント云フノデ御座イマシヨウ
(栗塚委員)
ソウデス
本條ハ原案ニ決ス
第千二百七十條朗讀ス
第千二百七十條 停止條件附ニテ不動產ヲ取得シタル者ハ條件ノ成就ニ因リ其權利ノ定マラサル間ハ條除スルヲ得ス
解除條件附ニテ取得シタル者ハ條件ノ到來セサルニ因リ其權利ノ定マル前ト雖モ條除スルコトヲ得
此場合ニ於テ第三所持者ノ提供カ承諾ヲ得タルモ其金額ハ抵當債務ヲ全ク辨濟スルニ足ラスシテ其抵當ヲ抹殺シタル後第三所持者ノ取得カ條件ノ到來ニヨリテ解除スルニ於テハ辨濟ヲ得スシテ抹殺ヲ受ケタル抵當債權者ノ記入ハ第千二百五十一條ニ從ヒ之ヲ回復ス
又右ノ場合ニ於テ提供カ承諾ヲ得スシテ下ニ規定セル如ク不動產ヲ競賣ニ付シタルトキハ競落ハ第三所持者ノ爲メ宣吿アリタルト其他ノモノヽ爲メ宣吿アリタルトヲ問ハス以後解除條件ヲ免カルヽモノトス
(元尾崎委員)
何時解除サレルカ知レンケレドモ滌除シテ置クノカ
(南部委員)
ソウデス
(箕作委員)
只貰ツタト云ツテ解除シナケレバナランカ
(南部委員)
ソウデス
(元尾崎委員)
條件ノ成就ニ依リ
(南部委員)
成就スレバ定マル
(箕作委員)
只貰ツタト云ツテ解除シナケレバナランカ
(南部委員)
ソウデス
(箕作委員)
因テ定マルマデト云フノダ
(栗塚委員)
成就セザルニ因リ定マラザルトシタラ分ルデ御座イマシヨウ
(元尾崎委員)
成就スレバ定マル譯ダ船ガ横濱ヘ付イタナラバ此船ヤルト云フ處ガ横濱ニ船ガ付イタカラ定マラント云フコトハナイ
(栗塚委員)
條件ノ成就シテト云ヘバ宜シイカ知レマセン
(北畠委員)
全體保證書ニテト云ハナケレバナラナイ
(南部委員)
條件ノ未ダ成就セザルニ因リトスレバ宜シイ
(北畠委員)
セザルニ因リト書ク方ガ良ク分ル
(栗塚委員)
次ギノコトニ見合セガ出來ント困リマス
(箕作委員)
條件ノ成就ニ因テ其權利ノ定マラザルトキハデハドウダロウ
(南部委員)
ソレデ宜カロウ
(渡委員)
ソレガ宜シイ
(淸岡委員)
之レデ分ツテ居ル
(北畠委員)
セザルニ因リトスルガ宜シイ
(南部委員)
セザルト云フト權利ノ定マラザルト云フコトガ云ヘナクナル
(西委員)
條件ノ到來セザル間ハトスルカ
(箕作委員)
元トノ儘ガ宜シイ末項ノ提供ガ不動產ヲ競賣ニ附シタルト云フノハ穩カナラン
(栗塚委員)
承諾セラレトヤリマスカ
(村田委員)
ソレデモ同ジコトダ
(箕作委員)
終リノ解除條件ヲ免ルルト云フノハ變ダ
(元尾崎委員)
解除條件ヲ無茶苦茶ニシテ仕舞ウノダ
本條ハ原案ニ決ス
第千二百七十一條朗讀ス
第千二百七十一條 抵當ヲ滌除スルノ權利ハ第三所持者ニシテ主タル債務者トナリ又ハ保證人ト爲リテ自身ニテ抵當債務ノ責ニ任スル者ニ屬ス
右ノ權利ハ債務者ノ相續人ニシテ其債務ノ自己ノ部分ノミヲ辨濟シタル者ニ屬セス
又右ノ權利ハ他人ノ債務ノ爲メ自己ノ財產ヲ抵當ト爲シタル者又ハ其相續人ニ屬セス
(村田委員)
一項ハ保證人ト爲リ自身ニデ宜シイ
(元尾崎委員)
滌除ト云ハンデモ金サヘ返セバ宜シイカ
(南部委員)
ソレハ辨濟デス
(元尾崎委員)
結果ハ同ジコトダロウ
(南部委員)
然シ滌除シテ置カナケレバ其品物ハ何程ダト云フトキ抵當物ト負債ト高下ノアツタトキ何レガ取ルト云フコトガ起リマシヨウ
(元尾崎委員)
同ジコトダ滌除ト云ツテモ其不動產ノ背負ツテ居ル借金ヲ悉皆拂ツテ仕舞ヘバ宜シイノダロウ
(南部委員)
ソレハ辨濟デ宜シイ
(栗塚委員)
不動產ノ代價丈ケ拂ヘバ宜シイソレガ辨濟ト違ウノデス
(元尾崎委員)
仕舞ノ場合ハ困リハセンカ他人ノ爲メニ自分ノ財產ヲ抵當ニシタトキハ此財產デ全部ヲ辨濟スルニ足ラントキハ自分ガ引受ケナケレバナランガ委棄シタラ良カロウ
本條ハ原案ニ決ス
第千二百七十二條朗讀ス
第千二百七十二條 抵當債權者ヲ參加セシメタル總テノ競落ニ付テハ滌除ヲ爲スノ限ニ在ラス
公用徵收ニ付テモ亦同シ
右ハ抵當債權者ノ其順位ヲ以テ競落代價又ハ徵收償金ノ配當ニ加入スルノ權利ヲ妨ケス
(委員長)
抵當債權者ガ參加シタトキハ抵當債權者ガ競落シタトキハ宜シイガ總テニ競落シタノハ
(栗塚委員)
抵當訴追ノ競落トカ種々ノ競落ガ御座イマシヨウガ其競落ニ參加スレバ滌除ハ入ラント云フノデス
(南部委員)
公賣法ノ代價ハ慥カデ御座イマスカラ滌除ハ入リマセン
(委員長)
ソレ丈ケノ手續ハ入ラント云フノカ
(箕作委員)
實價ノモノト見ル債權者ガ承諾シタモノト見ル
(淸岡委員)
滌除ノ說キ明シガアリマセンネ
(南部委員)
千二百六十九條ニアリマス
(委員長)
總テノ競落ト云フノハ分ラン
(栗塚委員)
總テノ公競落デ御座イマスソレヲ競落トシタノデ御座イマスカラ公競落トシテ御宜シウ御座イマス
(北畠委員)
公賣ノ方ガ分ル
(村田委員)
公賣ト直シテ來タノダロウ
(南部委員)
ソレハ別デス
(栗塚委員)
七十二條丈ケハ公賣トシテハドウデス
(委員長)
公賣トスルカ
本條第一項「競落」ヲ「公賣」ト改ム
第千二百七十三條朗讀ス
第千二百七十三條 使用權、住居權及ヒ地役權ハ滌除ニ係ラサルモノトス若シ抵當不動產ニ是等ノ權利ノ負擔アルトキハ抵當債權者ハ其權利ヲ斟酌セスシテ債務者ニ對シ不動產ノ賣却ヲ訴追スルコトヲ得債務者ノ第千二百六十二條ニ記載シタル制限ヲ超ヘテ爲シタル賃貸借ニ付テモ亦同シ
(元尾崎委員)
第二項ノ千二百六十二條ト云フノハ良クナイ千二百六十二條ト云ハント良クナイ千二百六十二條ニハ重モナルコトノ關係ハ少ナイ
(栗塚委員)
ソウスルト文章ヲ大變換ヘナケレバナラン千二百六十二條ニ同ジト云フノデスカラ
(元尾崎委員)
矢張百二十六條ヲ云フノダ百二十六條百二十七條ニ記載シタル制限ヲトシヨウ
(槇村委員)
其方ガ良カロウ
(箕作委員)
格別要用ハナサソウデス
(南部委員)
千二百六十二條第二項ニトシテモ宜シイ
(元尾崎委員)
ソンナラ入レヨウ
本條第二項千二百六十二條ノ下ヘ第二項ノ三字ヲ加フ
第千二百七十四條朗讀ス
第千二百七十四條 第三所持者ハ債權者ヨリ訴追ヲ受ケサル間ハ何時ニテモ滌除スルコトヲ得又辨濟スルヤ不動產ヲ委棄スルヤノ催吿ヲ受ケタル後一个月內ニ滌除スルコトヲ得但此ニ違フトキハ其權ヲ失フ
然レトモ右ノ失權ハ當然生セス裁判所ニ之ヲ請求スルコトヲ要ス但裁判所ハ第三所持者カ正當ノ障碍アリシコトヲ疏明シ且債權者ノ其遲延ノ爲メニ現實ノ損害ヲ受ケサル可キニ於テハ失權ヲ宣吿セサルコトヲ得
又債權者ヨリ第千二百七十八條第二號ニ規定シタル一个月ノ期間ニ失權ヲ請求セサルニ於テハ失權ヲ宣吿スルコトヲ得ス
(委員長)
又辨濟スルヤ不動產ヲ委棄スルカト云フカラ上ノ辨濟スルヤハ不動產デハナイ樣ダ
(栗塚委員)
ソウデハアリマセン金ヲ拂フカ物ヲ棄テルカ何レカニスルト云フノデス
(委員長)
當然生ゼズト云フノハ
(栗塚委員)
裁判所ヘ宣吿シナケレバイケント云フノデス
(委員長)
當然生ゼズト云フノガ突然デハナイカ
(元尾崎委員)
當然無效ナリト云フコトハ澤山アリマス
(渡委員)
當然生ズル物ニアラザレバ裁判所ニ之ヲ請求スルコトヲ要スト云ヘバ宜シイ
(委員長)
疑ヒガナケレバ宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第千二百七十五條朗讀ス
第千二百七十五條 第三所持者ハ滌除ノ準備トシテ自己ノ權利ヲ公示シ且第千百八十四條及ヒ第千百八十五條ニ從ヒ讓渡人ノ先取特權ヲ公示スル爲メ自己ノ證書ヲ登記スルコトヲ要ス
右ノ後第三所持者ハ其不動產ノ負擔セル先取特權又ハ抵當ノ目錄ヲ登記官吏ニ要求ス
(淸岡委員)
讓渡人ハ債務者デハアリマセンカ
(元尾崎委員)
買受ケタ人ダ
(栗塚委員)
賣主ト云フノモ同ジコトデス不動產ニ係ル特別ノ先取特權ト云フ處ニアリマス
(大尾崎委員)
只證書ヲ登記スルト云フ論ガ必要ダ
(栗塚委員)
讓渡人ト云フ字ガ惡ルイ
(南部委員)
交換モアル
(元尾崎委員)
賣主ノ先取特權ト云フト三人居ルト見ナケレバナラン私ガ渡サンニ賣ツテ渡サンガ貴君ニ賣ツタ場合ダ其先取特權ノアルコトヲ書イテ置カナケレバナラント云フノデ御座イマス
(南部委員)
ソウデス
(元尾崎委員)
抵當ト見ルト具合ガ惡ルイ物ヲ買ツタト見レバ宜シイ讓渡人ト云フト具合ガ惡ルイ賣主ト云ツタラ良カロウ
(村田委員)
交換者モアル
(元尾崎委員)
賣主又ハ交換者ト云ヘバ宜シイ
(委員長)
槇村サンガ滌除スル人ト爲ツテ尾崎サンガ淸岡サンニ向ツテ殘金ヲ取立ツルソレヲ第三者ガ滌除スル場合デアリマスカ
(南部委員)
ソウデス
(箕作委員)
自己ノ獲得證書ヲ登記シテ置ケバ己レノ買ツタ權利モ間ノ先取特權モアル第三者ハ自己ノ獲得證書ヲ登記スルコトヲ要スデス
(委員長)
分ルコトハ分ル
(箕作委員)
「自己ノ取得證書ヲ」トシタラ良カロウ次ギノ條ニモ取得證書トアル
(栗塚委員)
ソレデ宜シウ御座イマシヨウ本條第一項「自己ノ」ノ下ヘ「取消」ノ二字ヲ加フ
(栗塚委員)
之レ追加再調査デ御座イマス
第千二百七十六條朗讀ス
第千二百七十六條 上ニ記載シタル一个月ノ期間ニ第三所持者ハ記入シタル各債權者ト第千百二十四條、第千百八十四條及ヒ第千百八十五條ニ從ヒ登記カ記入ニ同シキ效力ヲ有スル債權者トニ左ノ諸件ヲ吿知スルコトヲ要ス
第一 取得證書ノ旨趣、其日附及ヒ登記ノ日附、讓渡人及ヒ取得者ノ氏名、職業、住所讓受ケタル不動產ノ性質其所在地、讓渡ノ代價及ヒ其負擔ヲ指示スル要領書但交換贈與若クハ遺贈ニ因リテ權利ヲ取得シタルトキハ其評價ヲ指示ス可シ
第二 各記入ノ日附、其帳簿ノ葉數、其債權者ノ氏名假住所及ヒ主タル債權トシテ記入シタル金額ヲ明示スル記入表
第三 不動產所在地ノ裁判所ノ管轄內ニ於ケル第三所持者ノ假住所ノ選定
第四 第三所持者ハ右ノ債權者カ法律ニ從ヒ且一ケ月ノ期間ニ增價競賣ヲ求メサルニ於テハ滿期、末滿期又ハ條件附ノ債權ヲ區別セスシテ各債權者ノ記入ノ順序ニ從ヒ之ニ不動產ノ代價、其評價若クハ之ニ超ユル金額ノ辨濟又ハ其債權者ノ爲メニ金額ノ供託ヲ爲サントスル旨ノ陳述但一个月ノ期間ハ距離ニ應シテ之ヲ增加スルモノトス
(栗塚委員)
遺贈ハ贈遺デ御座イマス第二號ノ儘住所ヲ削リマス
(南部委員)
第三ハ丸ルデ削リマス
(栗塚委員)
第四ガ第三トナリマス
(箕作委員)
假住所ノ匿定ガナクナツタ以上ハ第三モ削ラナケレバナラン
(南部委員)
之ガナクテモ假住所ヲ選定シナケレバナリマセン
(栗塚委員)
左ノ書類ヲ送達スルコトヲ要ストシテハ如何デス
(箕作委員)
ソウスルト第三ヲ陳述書ト書カナケレバナラン
(淸岡委員)
第三ハ殘シテ置キタイ
(南部委員)
之ハ前ニハ關係ナイ
(村田委員)
何處カニ假住所ヲ定メルト云フコトヲ云ハナケレバ此處ヘ突然出シテハイケナイ
(南部委員)
第一ノ住所ノ中ニ含ンダモノト見レバ宜シウ御座イマシヨウ
(淸岡委員)
此住所ハ違フ
(栗塚委員)
左ノ條件ト云フノハ惡ルイカラ左ノ物ヲ送逹スルヲ要ストヤリマシヨウカ
(箕作委員)
吿知ト云フ字ガ惡ルイ書ヲ吿知スルト云フコトガ云ヘマスガ一ケ月期間ガ增加スルト云フト一ケ月丈ケハ增加スルコトガ出來ル樣ニ見ヘル
(南部委員)
但此期間ハデモ宜シイ
(大尾崎委員)
增價競賣ト云フノハ第三者ガ買ツテ居ルヨリモ高クト云フノカ
(箕作委員)
終リハ債權者ノ名ニ於テトアルガ名ニ於テト云フコトハ入リマセンカ債權者ノ名ヲ以テノ方ガ良クハナイカ
(南部委員)
名ヲ以テガ良カロウ
(委員長)
但書ハ跡カラ入レマシタカ
(南部委員)
起按者ガ修正致シマシタ
本條第一「遺贈」ヲ「贈遺」ト改ム第二假住所ヲ削ル第三削除ニ決ス第四ヲ第三ト改ム舊第四其債權者ノ爲メニトアルヲ其債權者ノ名ヲ以テト改ム第三ノ「但一ケ月ノ期間ハ距離ニ應シテ之ヲ增加スルモノトス」トアル人第千二百七十八條ヲ議スルニ當リ削除スルコトニ決ス
第千二百七十六條ノ二朗讀ス
第千二百七十六條ノ二 記入シタル債權者ノ中ニ先取特權ヲ有スル讓渡人又ハ分割者アルトキハ前條第四號ニ定メタル陳述ニハ此債權者ヲシテ同一ノ期間ニ其解除訴權ヲ行ハント欲スル旨ヲ述ヘシムル爲メノ催吿ヲ添フルコトヲ要ス但第千百八十七條及ヒ第千百八十八條ノ明文ニ因リ法律上ノ抵當ニ變性シタル先取特權ヲ有スル者ニ付テモ亦同シ
(箕作委員)
分割者デモ解除訴權ト云ヘマスカ
(栗塚委員)
結果ハ同ジコトニナリマシヨウ
(箕作委員)
法律上ノ抵當ニ變性シタ先取特權ハ千百八十七條千百八十八條バカリデ御座イマスカ
(栗塚委員)
二條バカリデ御座イマス
本條原按ニ決ス
第千二百七十七條朗讀ス
第千二百七十七條 讓渡證書中ニ抵當ト爲シ又ハ爲サヽル財產アルトキハ取得者ハ抵當財產ノ爲メニ非サレハ提供ヲ爲スコトヲ得ス又增價競賣ノ要求ハ其提供ノ後ニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
(箕作委員)
又ハ爲サザルト云フノハ
(元尾崎委員)
抵當ト爲シタノト爲サンノト二ツアツタコトデスカ
(栗塚委員)
ソウデス甲乙ノ地面ヲ賣ツタトキ甲ノ地面ハ抵當ニナツテ居ルガ乙ノ地面ハ抵當ニナツテ居ラン
(箕作委員)
爲シ又爲サザルデ分ルカ知ラン
(元尾崎委員)
之ハ動產ガ籠ツテ居ルカ
(村田委員)
抵當ハ不動產バカリダ
(元尾崎委員)
一家ヲ買ツテ家ハ不動產デアルガ其中ノ疊建具ヲ買ツタソレハ用方ニ因ル不動產デナイモノガ一所ニ混ジテ居ツタトキ不動產ハ滌除ガ出來ルガ其外ハ出來ナイト云フノダロウ
(箕作委員)
動產ハ勿論不動產モアル
(淸岡委員)
又ハ爲サザルト廣ク係ツテ來ルカラ證書中ニ爲サザル財產モアツタト云フト可笑シイ之ハ爲シタモノト爲サンモノト混ジテアルノダカラ
(箕作委員)
提供ト云フ所ヘ對シテ十分一ヲ增價競賣シヨウト云フノダロウ前項ノコトヲ云フノデハアルマイ
(元尾崎委員)
之ハ一體增價競賣ト云フコトハ詰リ提供シタモノニ付イテノミアルト云フコトヲ云フガ爲メダ
(箕作委員)
千圓ヲ元トニ立ツテ千圓ニシヨウト云フコトデ後トカ前トカ云フコトヲ云フノデハナイ
(栗塚委員)
千三百六十九條ノ蓋シ下ニ規定セル如キ提供及ビ提供ヲ爲シタル後ト云フノカラ取ツテ來タノデ御座イマシヨウ
(元尾崎委員)
提供ニ關シタモノデナケレバ增價競賣ハ出來ント云フノダ
(淸岡委員)
提供ノ上ニ於テスルニアラザレバト云フノダ
(箕作委員)
今ノ通知スルト云フ處ヘ提供ト云フ字ヲ入レルコトハ出來マセンカ肝腎ノ處ニ提供ト云フ字ガナイ
(淸岡委員)
突然提供ト云フ字ガ出テ居ルカラ分ラン
(栗塚委員)
提供ノ陳述デモ宜シイ
(元尾崎委員)
取得者ハ其抵當財產ノ爲メニ提供ヲ爲スコトヲ得トシテハドウダ
(栗塚委員)
五十六條ノ陳述ヲ止メテ提供シテハ如何デス
(箕作委員)
ソレガ良カロウ
(村田委員)
七十六條ノ二モ陳述ヲ提供トシナケレバナラン
(南部委員)
第三バカリ提供ト云フノハ可笑シイ
(箕作委員)
第一第二ハ提供デ宜シイ
(南部委員)
提供ト云フト狹クナル
(箕作委員)
七十七條ハ抵當財產ノ爲メニノミ提供ヲ爲スコトヲ得
(栗塚委員)
又增價競賣ノ要求ハ其提供ニ付イテノミ
(元尾崎委員)
又其提供ニ付キ增價競賣ヲ要求セラルルコトアリ
(箕作委員)
取得者ノ方カラヤルノダカラ要求セラルルハ良クナイ私ノ提供ガ嫌忌ナラ增價競賣ヲナサイト云フノダカラ
(元尾崎委員)
要求ハ向ウカラスルノト思ツテ居タ
(南部委員)
次ギノ條ヲ見ルト良ク分リマス
(槇村委員)
取得者ガ債權者ニ向ツテ要求スルノデアロウ
(箕作委員)
七條ノ方ニハ要求ト云フノハナイノデス
(栗塚委員)
報吿委員デ入レタノデス增價競賣ヲ爲スコトハト云フ意味デス其提供ニ基イテ爲スノゾヨト云フコトデス
(箕作委員)
提供ノ金額ヲ元トニシテ增價競賣ヲスルノダカラ
(渡委員)
此提供ニ基クニ非ザレバ增價競賣ヲ爲スコトヲ得ズ
(箕作委員)
又增價競賣ハ此提供ニ基イテノミ之ヲ爲スモノトス
(栗塚委員)
「又增價競賣ハ此提供ニ基キ之ヲ爲スコトヲ要ス」ト致シマシヨウ
(箕作委員)
ソウシテ「抵當財產ノ爲メニノミ提供ヲ爲スコトヲ要ス」ト致シマシヨウ
本條ハ左ノ如ク改ム
讓渡證書中ニ抵當ト爲シ又ハ爲ササル財產アルトキハ取得者ハ抵當債務ノ爲メニ提供ヲ爲スコトヲ得又增價競賣ハ此抵當ニ基キ之ヲ爲スコトヲ要ス
第千二百七十八條朗讀ス
第千二百七十八條 凡ソ記入シタル債權者ニシテ上ニ定メタル提供ヲ承諾セサル者ハ左ノ方式期間及ヒ條件ヲ以テ抵當財產ノ競賣ヲ要求スルコトヲ要ス
第一 其要求ニハ提供金額ノ上少クモ十分一ノ增價ニテ買受クルコトト其增額シタル代價ノ全部及ヒ費用ノ爲メ十分ナル保證人又ハ擔保ヲ供スル旨ノ陳述トヲ添フルコトヲ要ス若シ之ニ違フトキハ其要求ハ無效タリ但此場合ニ於テハ總テノ正本ニ要求者又ハ其特別代理人ノ署名アルコトヲ要ス
第二 右ノ要求ハ提供通知ヨリ一个月內ニ第三所持者ニ其撰定シタル住所ニ於テ之ヲ通知スルコトヲ要ス若シ之ニ違フトキハ其要求ハ亦無效タリ但此期間ハ債權者ノ選定シタル住所ト其日本ニ在ル本住所トノ間ニ於テ書類往復ノ爲メ八里每ニ一日ヲ增加ス
第三 右ノ期間ニ於テ債務者タルト否トヲ問ハス前所有者ニ右ニ同シキ通知ヲ爲スコトヲ要ス
第四 主タル債務者ニ非サル者カ抵當ヲ設定シタルトキモ亦同一ノ期間ニ於テ其債務者ニ通知ヲ爲スコトヲ要ス
右ノ期間ニ長短アルトキハ最長キ期間ニ從フ
(栗塚委員)
選定シタル住所ハドウシテモ入用ニナリマス七十六條ノ第三ヲ活カサナケレバナランデシヨウ
(箕作委員)
要求ト云フモノハ裁判所ヘ要求ヲスルノデスカ
(栗塚委員)
左樣デス請求トシテモ宜シウ御座イマシヨウ訴訟デナイモノハ總テ要求トスルコトニナリマシタカラ
(北畠委員)
請求ガ宜シイ
(南部委員)
登記抔モ皆要求トアル
(元尾崎委員)
金額ノ上少ナクモト云フト買人ガナケレバ十分一デ買ヒマシヨウト云フコトヲ云フノダ
(栗塚委員)
ソウデスソレデハ自分ノ分丈ケハ私ガ保證人ヲ立テマシヨウト云フノデス
(元尾崎委員)
增額シタル代價ノ全部ト云フノハ一割デシヨウ
(栗塚委員)
ソウデス
(元尾崎委員)
增額ノ全部デ良カロウ千圓ノモノガ千百圓ニ增額シタル樣ニ見ヘヤセンカ
(南部委員)
ソレハ皆デナケレバナラン
(元尾崎委員)
百圓丈ケ保證ヲ立レバ宜シイノダロウ
(南部委員)
千圓ハドウシマス
(元尾崎委員)
千圓ハ本人ガ出ソウト云フ
(南部委員)
千圓ノ價値ガアレバ其レ丈ケヤラナケレバナラン
(淸岡委員)
百圓ノ保證デハ役ニ立タン
(箕作委員)
南部サンノ說ノ通リダ
(栗塚委員)
增額シタル全部ノ代價ト云フノデス
(箕作委員)
增加セラレタル悉皆ノ代價ト云フノダ
(元尾崎委員)
ソンナラ之デ宜シイ
(箕作委員)
要求スレバ提供者ノ義務ガ免カレルダロウ
(元尾崎委員)
日本ニ在ルト云フノハドウ云フ譯ダ
(栗塚委員)
本邦トヤラナケレバナランデシヨウ
(元尾崎委員)
地所ガ隔ツテ居ルニ付イテ法律上ノ期間ヲ與ヘルノハ八里每トナリシテ只法律上ノ期間トアリハセンカ
(栗塚委員)
若要求スル債權者ガ日本外ニ住居シテ居レバ待ツニ及バンカラ日本ハト云テ置カナケレバナラント云フテアリマス
(箕作委員)
何トモ書イテナケレバ日本ニアル本住所トナルダロウ
(栗塚委員)
報吿委員デ之ヲ削ツテ議場デ問ハレタトキドウスルカ朝鮮或ハ上海或ハ香港邊ニ行ツタトキドウスルカト云フ論デアリマシタ
(元尾崎委員)
日本人ガ朝鮮ヤ香港ニ本住所ヲ持ツコトハナカロウ
(箕作委員)
外國人ハ外國ニ本住所ヲ有シテ日本ニ假住所ヲ置クノガアルダロウ
(元尾崎委員)
外國人モコレデヤルカ
(栗塚委員)
若シ不動產ヲ持テバ是レデ支配スル
(西委員)
「日本ニ在ル」ト云フノハ置クガ宜シイ
(箕作委員)
選定シタルト云フノハ前ヲ削ツタカラ治リガ付カン前ノ第三ヲ置キマシヨウ
(栗塚委員)
抵當ノトキハ止メルガ滌除ノトキハ假住所ヲ置クト致シマシヨウ
(箕作委員)
七百六十三條ヲ活カシテ第二ハドウスルカ
(南部委員)
第二モ假住所ヲ置キマシヨウ
(箕作委員)
第二ハ入リマセン
(南部委員)
ソウスルト債權者ノ選定シタル住所モ入ラン
(渡委員)
同ジコトダロウ
(南部委員)
若シ假住所ガナケレバ書カンカラ宜シイ
(栗塚委員)
此所ニ債權者ノ選定シタル住所ハ抵當債權者ノ選定シタル假住所ダカラ元トカラ活カサナケレバナラン
(元尾崎委員)
選定シテハナラント云フノデハナイ選定スレバ之デヤルカラ宜シイ
(栗塚委員)
假住所ト云ハント本住所ガアツテ距離ノ多イトキハドウデスカ
(南部委員)
債權者ハ何處ヘ選定シテモ宜シイ第三所持者ガ假住所ヲ選定スルト云フコトハナイ
(淸岡委員)
前ヲ活カソウ
(栗塚委員)
千二百二十八條ト千二百三十八條ヲ活カシマスカ
(元尾崎委員)
假住處ヲ置クノハ良クナイ京橋區ノ地所ヲ日本橋區ノ者ガ抵當ニ取ツタトキ京橋ニ假住所ヲ定メテ置クト云フノハ困ル
(栗塚委員)
東京ニハ登記所ガ澤山アリマスカラ例ニナリマセン田舎ヘ行ツタトキデス
(箕作委員)
尾崎サンノ論ガ明論ダ
(栗塚委員)
此所ハドウシマス
(箕作委員)
削ツテ仕舞ウガ宜シイ
(栗塚委員)
必ズ何カ置クダロウト思ヒマス
(元尾崎委員)
置キタイト思ヘバ置クガ宜シイ置カナケレバ抵當ニナラント云フノハ大變ナ話ダ
(北畠委員)
尾崎君ニ贊成ダ
(南部委員)
訴訟人ガ訴訟裁判所ノ管轄内ニ假住所ヲ置クト同ジコトダ
(大尾崎委員)
滌除ノ所丈ケ假住所ヲ設ケル樣ニ何ンデモ良カロウ
(北畠委員)
ソンナラ宜シイ
(大尾崎委員)
滌除ノ通知ヲ受ケレバ假住所ヲ選定スルトスレバ宜シイ
(南部委員)
千二百七十六條ノ一ノ第三ハ活カシテ宜シイ
(委員長)
假住所ト云フカラ可笑シイガ引受人位ニシテ置クガ宜シイ
(箕作委員)
七十六條ノ第二ハドウシマス
(南部委員)
七十八條ノ第一第二第三ノ内ニ假住所ト云フモノガ加ワラナケレバナラン
(栗塚委員)
第二ニ新規ノモノヲ拵ヘレバ宜シイ
(箕作委員)
但此期間ハ債權者ノ滌除ノコトニ付キ債權者ノ特ニ選定シタル
(栗塚委員)
但シ此期間ハ債權者ノ滌除ニ付キ特ニ選定シタルトスルカ
(箕作委員)
報吿委員デヤツテ貰オウ
(栗塚委員)
ソレデハ明日マデニヤリマシヨウ
(箕作委員)
假住所抔ト云フコトハ止メテ只吿知スルコトヲ要ストサヘヤツテ置ケバ宜シイノダ
(元尾崎委員)
ソレガ宜シイ
(委員長)
假住所ヲ削ツテ仕舞ツテ別ニ定メルガ宜シイ
(箕作委員)
債權者ガ選定シテ第三所持人ガ選定ストヤツテ外ノモノガ選定セント云フト可笑シイ
(委員長)
削ルガ宜シイ
(栗塚委員)
一ケ月内ニ第三所持者ニ之ヲ通知スルコトヲ要ス若シ之ニト致シマス假住所ガアルカラ一ケ月ト云フノガ出タノデス大變隔ツテ居ルトソウハ行キマセン
(委員長)
ソレハ八里ニ付イテ一日ヲ加ウト云フ其割デヤレバ宜シイ
(栗塚委員)
但カラ下ハ削リマス
(村田委員)
ソウスルト前ノ七十六條ノ三モ削レル
(委員長)
ソウシテ之ヲ訴訟法ニ定メルガ宜シイ
(栗塚委員)
訴訟法ノ書類送逹ノ處ニ定メル
(箕作委員)
千二百七十六條(一)ノ第三ノ但書モ削レル
(淸岡委員)
彼レハ有ツテモ宜シイ
(元尾崎委員)
七十八條ニ距離ニ應ジト云フコトハ入リマセンカ
(南部委員)
類推スレバ宜シイ
本條第二ヲ左ノ如ク改ム右ノ要求ハ提供通知ヨリ一ケ月内ニ第三所持者ニ之ヲ通知スルコトヲ要ス若シ之ニ違フトキハ其要求ハ亦無效タリ(但以下削除ス)末項「右ノ期間ニ」云々ハ次條ヲ議スル際刪除ニ決ス
第千二百七十八條ノ二朗讀ス
第千二百七十八條ノ二 讓渡人又ハ分割者ニシテ其解除訴權ノ行使ヲ留保セスシテ前條ニ規定シタル如ク增價競賣ヲ爲シタル者ハ其訴權ヲ抛棄シタルモノト看做ス
若シ讓渡人又ハ分割者カ右ノ訴權ヲ保存セント欲スルトキハ增價競賣ノ爲メ許與セラレタル期間ト同一ノ期間ニ第三所持者ニ其旨ヲ吿知スルコトヲ要ス若シ之レニ違フトキハ無效タリ但主タル債務者トシテ前所有者ニ對シテ此ニ同シキ吿知ヲ爲スコトヲ妨ケス
(箕作委員)
前ノ條ニ右ノ期間ニ長短アルトキハト云フノハ入リマスカ
(栗塚委員)
大勢ノ債務者ガアツテ一人ノ債權者ニ何日ヲ待チ一人ニハ何日ヲ待ツト云フノデ御座イマス
(箕作委員)
ソレナラ入ラン
(南部委員)
增ンデ行クト長イノト短イノト入リマス
(箕作委員)
削ルガ宜シイ增スト云フコトガアツテ長イ期間ニ從フト云フノダカラ之ハ入ラン
(委員長)
之モ訴訟法カ何カデ云ハナケレバナラン
(箕作委員)
七十六條ノ第三ノ但書ヲ削ルガ宜シイ此條ハ讓渡人ガアツタノダカラ競賣デナクテハ可笑シイ
(栗塚委員)
競賣シタルトキハデ御座イマス
(箕作委員)
前條ニ規定シタルト云フノハ
(栗塚委員)
競賣ヲ要求シタ人ハデ御座イマス解除スルコトハ出來ナイ
(箕作委員)
讓渡人ガ競賣ヲ要求シタト云フノハドウ云フ譯デス
(栗塚委員)
ドウ云フ競賣ヲシテ呉レロト云フノデ
(箕作委員)
ソレデハ「增價競賣ヲ要求シタル者ハ」トシヨウ
(栗塚委員)
要求スレバ解除訴權ガアルトハ云ヘンゾヨト云フノデ御座イマス「競賣ヲ爲サシメタル者ハ」デモ宜シウ御座イマス
(槇村委員)
要求ガ良カロウ
(元尾崎委員)
前所有者ハ
(箕作委員)
主タル所有者ガ卽チ前所有者ダロウ
(栗塚委員)
ソウデス主タル債務者ナル前所有者デモ宜シウ御座イマス
(箕作委員)
ソレデ宜シイ
本條第一項「增價競賣ヲ爲シタル」ヲ「增價競賣ヲ要求シタル」ト改ム第二項「債務者トシテ」ヲ「債務者ナル」ト改ム
第千二百七十九條朗讀ス
第千二百七十九條 定リタル法式及ヒ期間ヲ以テ增價競賣ノ通知アリタルトキハ其競賣ノ要求者ハ他ノ記入シタル債權者ノ承諾ナクシテ之ヲ言消スコトヲ得ス其債權者ハ此增價競賣ノ實行ヲ要求スルコトヲ得
若シ競賣ノ實行アリタルトキハ下ノ第千二百九十條以下ヲ適用ス
(槇村委員)
言消シト云フト胡麻化ス樣ダ
(栗塚委員)
中込ヲ言消スデス
(槇村委員)
取消シト云フコトダロウ
(南部委員)
商法デモ言消シト云フ
(栗塚委員)
之ヲ止メルコトヲ得ズト云フノデス
(元尾崎委員)
其債權者ト云フノハ誰レノコトカ
(箕作委員)
記入シタ他ノ債權者デス
(北畠委員)
食言スルコトハ出來ナイト云フノダ
(栗塚委員)
ソウデス取消ト云フト裁判所ヘ行カナケレバナリマセン
(箕作委員)
之ヲト云フノハ何カ
(栗塚委員)
競賣ヲト云フコトデスカラ競賣ヲ言消スコトヲ得ズトシマシヨウ
(箕作委員)
ソンナラ宜シイ
本條ハ「之ヲ」ヲ「競賣ヲ」ト改ム
第千二百八十條朗讀ス
第千二百八十條 債權者ノ何人ヨリモ有效ニ競賣ヲ求メサリシトキハ不動產ノ滌除ハ債權者ノ間ニ發開シタル熟議上若クハ裁判上ノ順序ヲ以テスル辨濟ニ因リ又ハ豫メ實物提供ヲ爲サスシテ債權者ノ名ヲ以テスル供託ニ因リテ成ル
此場合ニ於テ總テノ抵當ハ之ヲ抹殺ス其元資ノ不足シタルモノト雖モ亦同シ
(箕作委員)
實物提供ヲ爲サズシテト云フノハ入用カ知ラン當リ前ハ實物提供デナケレバナラン之ハ實物提供デナイモ宜シイト云フノダカ前ニ名ヲ以テト云フ處ガアツテ彼ノ釣合ダカラ之モ債權者ノ名ヲ以テデ宜シイ
(南部委員)
分リ易イカラアツテモ宜シイ
(箕作委員)
之ニナラナケレバ滌除ノ甲斐ハナイダ
(委員長)
不動產ノ滌除ト云フテ宜シイカ債務ノ滌除デハナイカ
(栗塚委員)
不動產ニ付イテ居ル債務ヲ滌除スルノデ御座イマス
(元尾崎委員)
發開シタルト云フノハ何カ
(委員長)
豫メ實物提供ヲ爲サズシテヲ削ルカ
(南部委員)
實物提供ヲスルノハ常ノ順序デ御座イマス此處デハ其順序ハ入ラント云フノデ御座イマスカラアル方ガ宜シウ御座イマシヨウ
(箕作委員)
ソレガアルト爲サズシテ債權者ノ名ヲ以テト云フノハ可笑シイカラ「但此供託ニ付イテハ豫メ實物提供ヲ爲スコトヲ要セス」ト云ヘバ分ル
(栗塚委員)
ソレデ宜シウ御座イマシヨウ
(南部委員)
ソレデ宜シイ
(委員長)
末項ハ
(栗塚委員)
滌除ニナレバ抵當ガナクナツテ仕舞フトカ金ガ足ランデモ構ハン
(元尾崎委員)
一項ハ「不動產ノ滌除ハ熟議上若クハ裁判上定マリタル順序ヲ以テ各債權者ニ辨濟スルニ因リ」トスレバ宜シイ熟議上ト云フコトハ債權者バカリデハアルマイ第三者モ這入ツテ居ルダロウ
(箕作委員)
之ハ債權者丈ケノ間デス
(槇村委員)
原按デ宜シイ
(箕作委員)
「債權者間ノ熟議上」デモ宜シイ
(委員長)
ソレデ宜シイ
本條第一項左ノ如ク改ム
債權者ノ何人ヨリモ有效ニ競賣ヲ求メサリシトキハ不動產ノ滌除ハ債權者間ノ熟議上若クハ裁判上ノ順序ヲ以テスル辨濟ニ因リ又ハ債權者ノ名ヲ以テスル提供ニ因リテ成ル但此供託ニ付イテハ豫メ實物提供ヲ爲スコトヲ要セス
第千二百八十一條朗讀ス
第千二百八十一條 右ノ如ク滌除ヲ實行シタル後第三所持者ハ左ノ區別ニ從ヒ其讓渡人ニ對シ擔保ノ求償權ヲ有ス
第一 賣買ノ場合ニ於テハ其取買代價外ニ提供シ及ヒ辨濟シタルモノヽ爲メ
第二 交換其他ノ有償契約ノ場合ニ於テハ讓渡人ニ對スル自己ノ義務外ニ辨濟シタルモノヽ爲メ但自己ノ供給シタル對價物ノ返還ヲ受ケサルトキニ限ル
第三 贈與又ハ贈遺ノ場合ニ於テハ贈與者又ハ遺言者ノ免責ニ付キ辨濟シタルモノヽ爲メ
第四 總テノ場合ニ於テ自己ノ負擔シタル滌除手續ノ費用ノ爲メ
(栗塚委員)
免責ノ爲メ辨濟シタルモノノ爲メデモ宜シイ
(南部委員)
爲メト云フノガ二ツアツテハ良クナイ
(淸岡委員)
取得代價ハ良クナイ取ツタ代金ト云フト物ヲ取ツタ代金ノ樣ニ見ヘヤセンカ
(南部委員)
賣買代價デス
(栗塚委員)
賣買代價ト致シマシヨウ
本條第一「取得代價」ヲ「賣買代價」ト改ム