民法擔保篇再調査案第三十一回議事筆記
自第千二百十一條至第千二百四十條
明治二十一年十二月五日午前九時四十五分開會
(委員長)
始メマシヨウ
第千二百十一條朗讀ス
第二款 合意上ノ抵當
第千二百十一條 合意上ノ抵當ハ公正證書ノ方式ニ從ヒ公證人ノ面前ニテ爲シタル合意ヲ以テスルニ非サレハ之ヲ設クルコトヲ得ス之ヲ違フトキハ全ク無効ナリ
代理人ヲ以テ抵當ヲ設定スルノ委任ハ特別ニシテ右ニ同シク公證人ノ面前ニテ之ヲ與フルコトヲ要ス又委任ノ要旨ヲ抵當ノ合意中ニ揭クルコトヲ要ス
(元尾崎委員)
公證人ノ面前ニテトヤツタノハ困リマス
(南部委員)
此間ノモ回復ヲ願ヒ度イ
(松岡委員)
我々ハ公正ノコトハ止メテ矢張リ證書ヲ以テスルニ非ザレハ設ケルコトヲ得ズトシテ置キタイ
(栗塚委員)
利害ヲ御考イ下サラント第一ニ不動產質品物ヲ取ルカラト云フコトヲ後トノ動產質トノ比較ニナランカ知ランガ之ハ登記シテ貰フノハ便利デアリマス公正證書ダト雙方往カズトモ一人往ツテ登記シテ貰ヒ又公正證書ハ申スマデモ無ク執行力ヲ以テ居ル抵當ニシテ置イタモノヲ競賣スル云々ト裁判所ヘ往クニモ及バズ直チニ執行スルコトガ出來ルト云フ如キ便利ガアツテ結句裁判所ノ少ナイ國デ公正證書ト云フモノヲ置クト人民ノ便利デアリマス併シ公證人ノ置キ方ハ何ンナモノカドノ位ノ配置ニナルカハ別トシテ澤山公證人ガアルトシテ話セバ便利デアリマス又澤山ナケレバナランモノト思フ却テ便利ト思ヒマス
(松岡委員)
公證人ノ手ニ係ツタモノハ執行力アルノ又證據ノ上ニ非常ノ力ヲ持ツノハ元ヨリ面前デ作ツタ時ハ其効顯ハ著シイニ違イナイ併シナガラ公證人ヲ作ル上ニ利益デ公證規則ノ上カラ斯ウ云フコトヲスレバ斯フ云フ効能ガアルゾ故ニ如何ナル契約モ面前デ作レバ利害ガアルト示セバ其レデ滿足スル譯ケ此方ガ仰シヤル樣ナソウ云フ利益ヲ受ケ樣ト思ヘバ公證人ノ面前デ作ルマデデスソレヲシナケレバ全ク無効ナリト云フコトニナルト酷イ何分時勢ニ不適當デアルカラ理窟責メニスルノハ窮屈ダカラ矢張前議ノ如ク證書ヲ以テサイスレバ良イコトニシテ公證スルト云フノハ其人ノ好ミニ任セルガ道理上法律上又實際上適當ト思フノデアリマス
(南部委員)
處ガ此間申シタヨウナ譯ケデ有式無式契約ガアツタ時ハ有式契約ハ遺言ナゾト云フコトモアリマスガ卽チ不動產質ノ公正證書ヲ以テ成リ立ツノト抵當公正證書ヲ以テ成リ立ツモ有式契約ノ一ツデアリマスソウシテ不動產ノ上ノ負擔ヲ重クスル譯ケデアリマスカラ成リ丈ケ堅固ノ契約ニシテ證據ヲ定メテ置カント云フト確カト云フ理由カラ有式契約ト云フモノヲ立ツタ譯ケデ又實際不便ノコトガアルカト云フニ報吿委員カラ陳述シタ通リナ譯ケデ公正證書ハ公證人ノ置キ方ノ不充分ガ別トシテ公證人ガ充分ニ出來タ時ハ近邊ノ公證人ニ書イテ貰ツテ其レヲ持テ債權者ガ一人裁判所ヘ往ツテ何ウカシテ貰フコトガ出來便利デアリマス實際差閊ヘナイ以上ハ公證書ヲ用スル契約ニスルト云フヲ御置キニナツテ尙ホ此理由ヲ會得ニナツテ千二百二十四條モ再議ニナツテスル樣ニ願ヒタイ
(元尾崎委員)
始終貴君方ノ說ヲ聞クニ便利ダカラ其本ヲ確定シテ人民ガ如何ニモ便利ト思ヘバ宜シイケレドモ法律ヲ以テソウシナケレバナラント云フノハ甚ダ宜シクナイ之ハ如何ニモ便利ナラ法律ヲ以テ人民ヲ追ヒ廻サナイデモ自然ニ往クノデアリマス追ヒ廻スノハ甚ダ宜シクナイ
(村田委員)
既ニ三百二十一條ニモアリマスガ契約ニ有式無式ノモノアリト云フ其レカラ爭ヒノ種ヲ斷ツ方ガ宜シイ「アンチクレーズ」不動產ノ賃貸ニモ三十年先ノコトヲ遣ルノダカラ成リ丈ケ公正證書ニ因テ置クガ宜シイ後チニ爭ヒガアル爲メニ權利ガ迷惑ヲスルコトモアルカラ其レニハ公正證書デ作レバ爭ヒガナイカラ人民ノ爲メヲ計ツテ設ケタモノト思ヒマス
(元尾崎委員)
人民ノ便利ナラ追ヒ廻サナクテモ自カラ往クノデ既ニ今日登記法ガアル以上ハ何ニモ憂ヒガナイ其上ニ公正證書ニスレバ益ガアルト思ツテスレバ往ク樣ニシテヤルガ宜シイ
(松岡委員)
有式無式ガアルト言ツタラ之ヲ斯ウシナケレバナラント云フコトハナイ畢竟人民ノ便利ヲ計ル考ヘナラ自由ニ任シタ方ガ便利デアリマス既ニ今日公證人ニ係ラズシテ登記サヘシテ遣ケバ有効ニ成立テ居ル之レスラモ便益ヲ感ゼン中ニ不便ヲ先キニ感ジテ居ルニ尙ホ又公證人ノ手ヲ經テソウシテ尙ホ登記ニ往カナケレバナラント云フノハ如何ニモ難義ニハ違イナカロウ
(南部委員)
只便利ト云フノミナラズ不動產ノ抵當或ハ質ト云フモノハ不動產ニ負擔ヲ係ルシ年數モ長クナリマスカラ成丈ケ確カニシ人民ヲ保護スル點カラ出タノデ少々ハ窮屈デモ仕方ガナイ少シハ無理デモ矢張保護シタ方ガ爲メデ只我勝手ニヤラレテモ往カンカラ保護上便利ナモノハ何處迄モ貫徹シタ方ガ良シイ
(松岡委員)
尤モダガ併シ公證人ハ便ダカラ一法デ立ツト云フナラ未ダシモソレ丈ケノ道理モアルガ到抵其外ニ登記ト云フモノガアルカラ登記ト云フモノハ公衆ニ對シテ公吿シテ確カナルモノ登記ハ動カス可カラザル明確ニ記載ガ出來ルモノ、而シテ見レバ私ノ證書ヲ以テスルモ公證書ヲ以テスルモ登記ニ載レバ年數ガ經テモ不明瞭ナルコトハ決シテナイ、登記ヲ用ヒナイノナレバダガ公證人ハ昔シノ五人組庄屋ガ裏判ヲスルヨウナモノダガ先ヅ今日ノ處ハ證書デサヘアレバ良イト云フコトニシテ居イテ適當ト思フ
(村田委員)
公正證書ニシテ置クト裁判官ノ便利ガ良イ先キニモ千二百二十五條ノ如キモ保證人ト云フト登記シナイコトモ出來ルノデス其レヲ見ルノモ公證人ハ作ツテ來レバ直グト登記モ容易ニ出來ルノデアリマス
(松岡委員)
明瞭デアツタラ何ウカ
(村田委員)
明瞭ニスルナラ公證人ガ作クレバ明瞭デアリマス左モナイト登記官吏ニ責メガアリマス
(松岡委員)
スルト私ノ證書ハ皆ナ明瞭デアリマス
(村田委員)
ソレハ往カン登記官吏ニ責メガアルカラ嘘カ眞實カ吟味シナケレバナラン公正證書ニ作レバ明瞭ダト云フ便利ガアリマス斯ク云フ風ニ民法ノ主義ガ出來テ居リマスカラ仕方ガナイ
(松岡委員)
併シ之ハ經驗シテナイ之カラ斯ウシテ見樣ト云フノデアリマス
(村田委員)
併シナガラ斯ウ云フコトハ動カンダロウ斯ウシテ見樣ト云フノデアリマスナラ何ウシテモ換ヘルコトハ出來マセン登記官吏ニモ責モナイト云フカソウハ往クマイ
(南部委員)
登記ト公正證書トハ種類ガ違イマスカラ熟慮ヲ願ヒマス
(村田委員)
合意上ノ記入ナラ例ヘ記入センデモ先取特權ヲ得マスガソウハ往カンノデアリマシヨウ
(淸岡委員)
私證書ヲ登記所ヘ持ツテ登記ヲ請フヲ見レバ同樣ニナルト云フカ
(元尾崎委員)
今日ノ通リニスルト云フノデ私ノ證書ヲ以テ遣ルノデアリマス
(南部委員)
ソレデハ債務者債權者二人往カナケレバナラン不便ガアリマス
(元尾崎委員)
今日モ公證人ガナクツテ便利ト云ツテ居ルノデス
(淸岡委員)
今日ヲ以テ論ズルコトハ出來ン勝手次第ニ登記スル上ハ公正證書モ私證書モ同一ニ効ガアルト云フノカ
(松岡委員)
ソレハ違イマス第三者ニ對シテ登記シテアル上ハ同ジコトダ公證人ノ前デ作ツタ證書ハ登記ノ有無ニ拘ハラズ力ヲ持ツハ何ノ證書ニモアルコトダ
(元尾崎委員)
公證人ノ前デ作ツタ約束ハ履行ヲ裁判所ヘ訴ヘズニ自分ガ取ルコトガ出來ルダロウ其丈ケハ私證書デハ出來ンガソレハ人民ノ相互ノ便ニ任シテ良イト思フ
(南部委員)
少シク御考ヘヲ願ヒタイ債權者債務者ガ遠方デモ往カナケレバナリマセン公證人ガ澤山居レバ良イノデス
(松岡委員)
澤山アツテカラハ宜シイ
(元尾崎委員)
公證式ニヤルコトハナラント云フノデハナイヤレバ宜シイ若シモ登記所ガ遠方ニアツテ公證人ガヤツテ便利ト思ヘバ其レデモヤレルシ又登記役所ガ近クダカラソレデヤツテ仕舞ヘバヤレルトシタ方ガ人民ノ便利ニナルカラト云フノデアリマス
(南部委員)
此間ハソウデナカツタ裁判所ヘ出テ來タ時ハ裁判所デ公正證書ナラ一人デ持テ來テモ登記シテヤルカ否ヤト云ツタノデアリマス
(松岡委員)
私ノ證書デ出來ルトシテ公正證書ヲ用ヒラレナイト禁ジテハナイ
(南部委員)
用ヒラレナイト禁ジテハナイガ公正證書ヲ持ツテ來タラ債權者ノミデ登記ガ出來ルヤ否ヤ民法中ニ規定スベキダカラ此間論ハナカツタガ其レヲソウスル積リカト云フノデアリマス
(元尾崎委員)
ソレハ便ヲ與ヘテ置イテ宜シイ
(松岡委員)
全體公證デ登記スル上ニ私ノ證書ヲ登記スルノト公證書ヲ登記スルモ一體登記ノ上ニ定メラルルノデアリマス
(元尾崎委員)
私モソウ思フ
(南部委員)
此間議定シテ債權者ガ持ツテ往ツテ登記スルトナツテ居リマス
(元尾崎委員)
其レハ公正證書ナラ一方デシテヤツテ宜シイ
(栗塚委員)
源トガ違フノデ不動產質抵當ト云フモノハ債務者ニ弱イノガアルダロウ金ニ困ツタ爲メニ抵當モスルダロウ不動產質モ置クダロウガ結果ガ重大ダカラ氣ヲ付ケサセルガ宜シイソレハ何ニカ公正證書デ抵當ニスルト其結果タル金ヲ返サレント不動產ガナクナルゾヨト注意サセルガ良イト云フ起リデアリマス
(元尾崎委員)
注意サセンデモ抵當ヲ置ク奴ハ知ツテ居ル
(栗塚委員)
其處ガ論デアリマス
(元尾崎委員)
公正證書デヤレバ之レ丈ケノ益ガアルト示シテヤラセルハ宜シイガ之ヘ追込ムハ宜シクナイ
(松岡委員)
私モ成リ丈ケ之ニヤラセタイ併シナガラ人民ノ勝手ニサセタイ永貸借デモ契約ヲ以テ出來テ居ルノダロウ
(南部委員)
永貸借ハ違ヒマス
(栗塚委員)
之ハ卽チ債務者ノ利益デアリマス
(松岡委員)
ソレハ何方ニシテモ不動產ハ貴重ノ財產ダカラデアリマシヨウ
(栗塚委員)
不動產ハ貴重デアルガ債務者ガ不動產ヲ質ニ置クト云フコトハ隨分田舎ニモアリマスガ隨分今日スルノハ不都合ガアリマス
(松岡委員)
趣意ハ分ツテ居リマスガ借リ人ガ錢ヲ取ランデ抵當ニ入レルモノガ代價物ヲ取ランデ恩恵デヤルノデハナイ畢竟永貸借ト抵當ト云フモノト左程區別ハナイ抵當モ金ヲ取ルカラ物ヲ渡シテ置クノデハナイカ
(村田委員)
擔保デ恩恵ニスルモノモアリマス
(松岡委員)
恩恵デアルノハ危險ダカラ保護スルト云フノカ
(村田委員)
其レハ別デス
(松岡委員)
私ノ證書デ出來ルデハナイカ此抵當ヲスルノハ無能力ダカラ法律ガ立入ツテ追廻スト云フノカ
(村田委員)
ソウデハナイ永貸借ハ特權デアルカラデスダカラ彼レトハ違イマス
(松岡委員)
ソレ程結構ナラ制限シナケレバ良イ五十年ヲ超ヘルヲ得ズトカ言ハンガ宜シイ私ハ益々自由ニシテ置キタイ決シテ公證人ノ手ヲ經サセント云フノデハナイ抵當ハ證書ヲ以テスルニ非ザレバ出來ントサヘシテ置ケバ人民ハ公證人ノ便ヲ知リ又場所モ追追設ケラレ實益ガアレバ合セズシテ其方ヘ趣クノデソレヲ私ノ證書デハ無効ナリトスルハ餘リ入リ過ギタ話シデアリマス
(渡委員)
私ハ質取ノ會議ノ時ハ缺勤シマシタカラ何ウ云フ議論カ聞キマセンカラ前ノ議論ニハ口出ハ出來マセンガ私ハ之ハ原案ノ通リニ公正證書ノ方式ニ從ツテ公證人ノ前デシナケレバナランコトト思ヒマス併シナガラ前ニ之ハ既ニ定マツタト云ヘバ強ヒテ主張ハ出來マセン甚ダ弱ヒ意見ダケレドモ不幸ニシテ前ニ出ナカツタガ成程私モ之ハ人民ノ便益ニナリ贊成シタイ主意デアリマスガ全體不動產ト云フモノヲ質入シ或ハ抵當ニ入レルト云フコトハ隨分事柄ハ重イコトデ成程日本デハ從來ノ慣習ニ公證人ト云フモノガナカツタラ相互ノ證書ヲ以テ確實ノモノト認メタケレドモ萬々ノコトガ連屬シテ成立テ道具ガ揃ツテ見ルト不動產質入抵當ニハ必ラズ斯ウ云フ公正ノ證書ノ既ニ方式ヲ定メタ以上ハ方式ニ依ル公證人ノ手數ヲ經テ有式ノモノト云フコトニシタイ希望デアリマス成程從來ノ仕來リニ因ルト斯ウ云フコトヲサセルノハ面倒ナリ不便デアリマシヨウ仕タイモノハスルカラ必ラズシナケレバナラント定メンガ良イト云フガ其レハ成程慣行上ニハ利益モアロウガケレドモガ法律デ作ツテ見ルト是レ丈ケノミ解キ放シテ置クノハ不都合デ動產ノ如キハ朝暮出入スルカラ其レハソウハ往カンガ不動產質入抵當スルトキハ此手數ガアツテ正當ニ確實ノモノニシナケレバナリマセン
(委員長)
公證人ノ公正證書ニ因テヤツテモ私ノ證書デヤツテモト云フ趣意ト私證書ト云フ說カ
(松岡委員)
私ノハ公證書ニスレバ尙ホ更ラ良イノデケレドモ相對ノ契約上ハ立派ニ出來テモ登記ガ出來ルト約束シテモ無効ニナルシ公證人ノ面前デシタノデナケレバ益ヲシナイト云フカラデス
(元尾崎委員)
之デ登記ノ上ニ尙ホ一遍公證人ノ面前デシナケレバナラント云フ手數ガ殖ヘルノデス
(南部委員)
登記ノ上ニハ隨分時ニ因テ間違ガ往々アリマス後トデ印形ヲシタ覺ハナイト云フ論ガ始終起ル戶長役場デヤツタ時分モ色々間違モアツタ併シナガラ登記ニナツテカラハ間違ハ少イガ未ダ全ク免カレワセンノデスルト公證人ノ面前デスルト餘程確カニナルカラ登記官モ安心シテ出來雙方官民共ニ便益ヲ得テ結構ナ法ト思ヒマス
(松岡委員)
公證人ガ結構ダカラ決シテスルトハ言ハンセラレナイトモ止メナイノデアリマス相對デハ何ンナニシテモ全ク無効ト云フノハ酷イデハアリマセンカ
(南部委員)
無効トシナケレバ間違ヲ妨グニ足ランノデアリマス之ヲ感ズルト尙ホ公正證書デナケレバナラント思ヒマス此間質拂ノ處デモ言ヒマシタガ尙ホ勘考スルト益々公正證書デナケレバナラン必要ヲ感ジマス實際ニ徵シテ見ルト間違ガアツタ時分ニ困ル且ツ登記ハ段々甲乙丙丁ト轉々スルカラ前ニ間違フト云フト第三第四マデ迷惑ヲ掛ケルカラ其レヲ考ヘルト少々六ケ敷ツテモ初メ公證書トシテ置カナケレバ間違ノ起ル譯ケダカラ心配ニ堪ヘン譯ケデアリマス
(元尾崎委員)
田舎ニ五畝三畝ノ田地ヲ入レテ五圓貸シテ貰フト云フニ一々公證人ノ面前デ證書ヲシテ登記役所ヘ往クト云フノハ今日ノ登記サヘモ面倒ダト云ツテ苦情ガアルニ其處ヘ以テ斯ウ云フモノヲ作ルノハ不便デアリマス
(南部委員)
役場ヘデモ恐ナガラ願ヒ奉リマスト云フ樣ニスルトソウ云フ考モアリマシヨウガ決シテソウ云フノデハナイ公證人ニ書イテ貰フノハ極ク容易イノデアリマス
(元尾崎委員)
ソウダロウカ隣リノ人ニ印形ヲ頼ムノモ面倒デアリマス
(南部委員)
面倒ニハ違イナイガ後トノ間違ヲ防グニハ斯ウシナケレバナリマセン
(渡委員)
法律ヲ立テル以上ハ何ウモ法三章ノ時代ナラ其レデ宜シイガソウハ往カン
(松岡委員)
利益ト必要ノ大部ノ方ヲ占メナケレバナリマセンガ其レヲ茲ニ抵當ノ有効ニ無効ハ六ケ敷ガ第三者タル間ガ明ナラ爭ヒハ格別デナイダロウ
(栗塚委員)
公正證書ハソウデアリマセン相對ノ話シデアリマス
(松岡委員)
抵當ノ場合ニハ何處ヲ主ニスルカ當事者間ノミナラバ地面計リソウシナケレバナランノハ何ウ云フモノカ金錢ハ大切デナイカ
(栗塚委員)
大切デアリマス
(松岡委員)
然レバ當事者ノミノコトヲ云フナラ現ニ有能力者トナツタラバ何ニヲスルノモ自由デアリマス
(渡委員)
金錢ト不動產ト何方ガト云フト物ノ輕重ガアルカラ一ツ斯ウスルナラ皆ナ斯ウシナケレバナラントハ云ヘン何ニガ輕重カナレバ金銀ハ世上ノ流通物デアリマス
(松岡委員)
世ニ習慣ト云フモノガアルカラ不動產ノ貴重ニスル矢張リ不動產ト認メルカラ貴重トスルモ宜シイ併シナガラナゼ能力ノアル人ガ私ノ證書デ契約ガ出來ンカ
(元尾崎委員)
公證人ノ前ヘ出タラ之ハ貴樣ガ借リ方ハ餘リ酷イ借リ方ダカラ斯ウシヨト立入ラセ樣ト云フノカ
(栗塚委員)
先ヅソウデス
(元尾崎委員)
益々酷イ子供ノ如クト看做タカ
(栗塚委員)
併シナガラ法律ハ何處ノ國デモ多數ノ人民ガ知リマセン故ニ御前ハ斯ウ云フコトヲスルガ此結果ハ斯ウ云フモノゾヨト云フノデアリマス
(松岡委員)
私ハ公證人ハ利益ガナイトハ言ハン之ハ宜シイガケレドモ相對デシタラバ無効ゾト云ツテ止メナケレバナラン理窟ガ分ラン又其レニ相應ノ理窟ガアルト見テモ實際ノ上カラ見ルト誠ニ難義ナ話デ又現今ヤツテ居ル戶長ノ奧書割印ノ方ヲ改メ獨乙法ヲ採用シテ登記法ニシテモ先ヅ今日ノ處デハ間違イガナイ併シ數數ノ中ニハ十中ニ一二間違イガ出ルトシテモ其レハ例ヘ公證人ヲ立ツテモ完全トハ言ハン一々法律ガ能力ノコトニ氣遣ハシク思フテ遣ルト一々法律ガ立入ラナケレバナラン話シニナル
(元尾崎委員)
伊太利モ自由ニシテ居ル
(南部委員)
佛蘭西ハソウデナイ
(元尾崎委員)
佛蘭西當リノ樣ニ昔シカラ公證人ヲ置イテ來タ國ナラバ良カロウ
(栗塚委員)
公證人ノコトハ何ンナ結構サノモノカ味ヲ甞ナイ我々ダカラ何ヤラ手數ニモナリハセンカト懸念ガアツテノ上ダロウト思ヒマス
(松岡委員)
公證人ヲ置クノハ極ク同意ノ論デアリマス公證人ハ旨カロウト想像シテ居リマス處ガ十日ニ一遍カ二十日ニ一遍シカ來ナイ樣デハ困ルカラ旨イモノナラ日々ハ來ナイト云フノデアリマス
(箕作委員)
最早論旨ハ分ツテ居リマス
(松岡委員)
ソレデハ置キマシヨウ
(渡委員)
之ヲ決スル前ニ申シマスガ此場取計リト云フノカ前ノ千百二十四條ニ遡ツテ彼レヲモ存廢マデ及ブノカ
(栗塚委員)
千百二十四條ニ及バナケレバナリマセン
(渡委員)
ソンナラ決スルト云フテ宜シフ
(大尾崎委員)
此間ノデ宜シイ
(松岡委員)
此間ノデ宜シイ
(南部委員)
抵當ノ方ハ違ヒマス
(大尾崎委員)
理由ハ同ジデアリマス
(北畠委員)
前議ノ通リデアリマス
(松岡委員)
此處ハ合意上ノ抵當ハ證書ヲ以テスルニ非ザレバ設ケルコトヲ得ズトシテ宜イノダ
(委員長)
伊太利法ハ兩方書イテアルガ其方ガ良クハナイカ
(松岡委員)
其方ガ宜シカロウ
(委員長)
合意上ノ抵當ハ公正證書又ハ私證書ヲ以テスルニ非ザレバ設クルコトヲ得レバトシテハ何ウカ
(大尾崎委員)
ソレガ宜シイ
(松岡委員)
宜シイ
(箕作委員)
以テスルニ非ザレバ之ヲ設クルコトヲ得ズト伊太利ニアリマス
(南部委員)
私書證書トシナケレバナリマセン
(箕作委員)
設クルコトヲ得ズト云ヘバ之ニ違フトキハ無効ト云フノハ入リマセン
(南部委員)
無効ト云フトキハ皆ナ書イテアリマスカラ千二百十三條ニモナリマスカラ無効ノトキハ無効ト書イテ置ク方ガ便利デ宜シイ
(元尾崎委員)
之ニ違フトキハ云々ハ入ラン
(大尾崎委員)
入ラン
(淸岡委員)
公正證書ヲ存スル上面前ト云フコトハ入ラン
(村田委員)
二項ハ何ウナルカ
(松岡委員)
之ハ別論デス
(委員長)
之ニ違フトキハ刪ルカ
(箕作委員)
刪リマシヨウ
(大尾崎委員)
二項ハ「設定スルトキハ委任ノ要旨ヲ抵當ノ合意上ニ記載スルコトヲ要ス」トシテ宜シイ
(南部委員)
貴君方ノ樣ニ正シイ方計リナラ間違ヒハアリマセンガ既ニ代理人ノ間違ガ多イカラデス登記上ノ事デ見ルト實ニ酷イモノデス
(元尾崎委員)
公證人ノ面前デ與フルコトヲ要スト云フノハ何處カラ來タカナラバ一項カラ來タノデ一項ヲ刪タ以上ハ之ヲ維持スルハ違フ
(南部委員)
特別ニシテトアルカラ全ク意味ガ違イマス
(大尾崎委員)
代理デ合意シタト云フノハ委任ノ要旨ヲ抵當合意中ニ揭グルコトヲ要スデ良カリソウナモノデス
(松岡委員)
良カロウ
(村田委員)
良シイ
(渡委員)
良シイ
(村田委員)
其レカラ千百二十四條ハ如何
(渡委員)
千百二十四條ハ公正證書ノ下ヘ又ハ私證書ヲ以テト入レレバ宜シイ
(箕作委員)
ソレデ良シイ
(松岡委員)
良シイ
(村田委員)
良シイ
(委員長)
良シケレバ先キヘ往キマシヨウ本條ハ左ノ如ク改ム第千二百十一篠合意上ノ抵當ハ公正證書又ハ私證書ヲ以テスルニ非サレハ之ヲ設クルコトヲ得ス代理人ヲ以テ抵當ヲ設定スルトキハ委任ノ要旨ヲ抵當ノ合意中ニ揭クルコトヲ要ス
(第千百二十四條ニ遡リ公正證書又ハ私證書ト同條ヘ加フ)
第千二百十二條朗讀ス
第千二百十二條 日本ニ存在スル財產ニ付キ外國ニ於テ爲シタル抵當ノ合意ハ此種類ノ行爲ノ爲メ外國ニ於テ用ユル方式ニ從ヒ之ヲ爲シタルトキハ其効ヲ生スルコトヲ得然レトモ第千二百十九條及ヒ第千二百二十四條以下ニ規定シタル條件ニ從フニ非サレハ此合意ニ依リ日本ニ於テ記入ヲ爲スコトヲ得ス
(北畠委員)
日本ト云フノハ本邦トシテ宜シイ
(栗塚委員)
其論モアリマシタ
(南部委員)
訴訟法ハ帝國トヤリマシタ
(松岡委員)
帝國ト云フハ實ハオカシイ千二百二十四條ト云フノハ何ウカ
(村田委員)
代理人カラ求メルコトヲ得ル條デアリマシヨウ
(松岡委員)
アレハ二十五條ト直シタト思フガ今度二十四條トナツタノデアリマスカ
(栗塚委員)
成程是ハ松岡サンノ言ノ通リ千二百二十五條ト直ツテ居リマス
(箕作委員)
日本ハ何ウ致シマスカ
(元尾崎委員)
日本デ宜シイ外國ト云カラ日本ト云フノガアルノデアリマス
(北畠委員)
ソレダカラ本邦ト云ツテハ何ウカト云フノデアリマス
(元尾崎委員)
ソレナラ内國トヤルカ
(栗塚委員)
帝國ガ穩カデシヨウ
(松岡委員)
日本帝國ト云フナラ分ルガ只帝國デハ分ラン
(大尾崎委員)
本國ガ良イダロウネ
(南部委員)
本國ト云フト向フノコトニナリマス
(渡委員)
使ヒ來リハ本邦ガ多イ
(松岡委員)
本邦デ宜シイ
(箕作委員)
本邦ガ宜カロウ
本條ハ「日本」ヲ「本邦」ト改メ第千二百二十四條トアルヲ第千二百二十五條ト改メ其他原案ニ決ス
第千二百十三條朗讀ス
第千二百十三條 抵當設定ノ證書ニハ義務ノ擔保ニ充テタル不動產ヲ其性質及ヒ所在ヲ以テ特ニ指示スルコトヲ要ス
若シ抵當ノ設定カ債務者ノ現在ノ各不動產ヲ特ニ指示セスシテ其全部又ハ一分ヲ包含スルトキハ債務者ノ請求ニ因リ債權ノ擔保ニ必要ナルモノニ其抵當ヲ減少スルコトヲ得
債務者ノ將來ノ財產ニ付テノ一般又ハ特別ノ抵當ノ設定ハ無効タリ
(箕作委員)
包含ト云フノハ分リマセン
(栗塚委員)
一分ニ係ルトシマスカ
(淸岡委員)
包含デ分ル
(南部委員)
指示セズトアルカラ包含デ分ル
(北畠委員)
スルト一分中ニト云ハナケレバナリマセン
(栗塚委員)
設定中ニデアリマス
(槇村委員)
特別ノ抵當ト云フハ何ウデスカ何方モ將來カ
(箕作委員)
一般ト云フノハ漠然トシテ居ルガ將來デアリマス
(淸岡委員)
良イヨウデス
(委員長)
所在ヲ以テト云フ以テト云フハドウ云フノカ
(栗塚委員)
所在ニテデスネ
(松岡委員)
指シ示スモ同ジタ
(元尾崎委員)
所在ヲ指示スト云テ良シイ
(南部委員)
不動產ノトハ云ヘンカラ
(元尾崎委員)
不動產ノ性質及ビ所在ヲ指示スルコトヲ要スデ良シイ
(槇村委員)
ソレデ宜シイ
(南部委員)
ソレデハ少シ意味ガ違ヒマス
(淸岡委員)
不動產ヲダネ良カロウ
(松岡委員)
良カロウ
(栗塚委員)
外ニ書ヨウハナイト申シテ良シイデシヨウ
(箕作委員)
包含スルハイラント思フ
(委員長)
「必要ナル」モ入ラン
(栗塚委員)
擔保ニ必要ナル抵當ノ其抵當ヲ減少スルコトヲ得デアリマス
(委員長)
限リマデト云フノデスカ
(松岡委員)
商法ナラ限度ニシト云フノダロウ
(大尾崎委員)
一分ヲ包含スト云フノハオカシイ
(松岡委員)
一部丈ケ引クルメ全部ヲ引ツクルメルト云フコトデス
(北畠委員)
一部ナラ包含ハ入ランノデアリマス
(栗塚委員)
風呂數ノ中ニ殘ラズノ額ヲ包ンダカ又ハ一分ヲ包ンダカト云フノデアリマス
(箕作委員)
往キマシヨウ
(元尾崎委員)
往キマシヨウ
(委員長)
必要ナル限度マデデハ往カンカ
(栗塚委員)
物ノ限度デナケレバナリマセン必要ナル限度デハ分リマセン
(渡委員)
必要ナル限度マデトシマシヨウ
(箕作委員)
限度ニテモ宜シイ
(南部委員)
限度ニト云フト限リヲ付ケル樣ニナリマス
(栗塚委員)
擔保ニ必要ナル不動產ニデアリマス
(大尾崎委員)
之デ宜カロウ
(委員長)
良ケレバ先キヘ往キマシヨウ
本條ハ原按ニ決ス
第千二百十四條朗讀ス
第千二百十四條 抵當ノ設定證書ニハ右ノ外義務ノ原因、體樣及ヒ其主從ノ目的ヲ明カニ指示スルコトヲ要ス
義務ノ目的カ金錢タラサルトキハ之ヲ評價ス可シ然レトモ其評價ハ第千二百二十六條ニ記載スル如ク記入ノ場合ニ於テモ尙ホ之ヲ爲スコトヲ得
(箕作委員)
然レドモ何條ニ記載スル如クト云フノカ
(栗塚委員)
記入ノ當時ニ於テガ宜イカモ知レマセン
(松岡委員)
登記ノ時ニ遣ツテモ良イト云フノデスカ
(栗塚委員)
左樣デス
(松岡委員)
記載スル如クデハナイ
(栗塚委員)
記載シタル如シト云フノデアリマス
(淸岡委員)
記入ノ際ニ於テダ
(栗塚委員)
左樣記入ノ際尙ホ之ヲ爲スコトヲ得デアリマス
(渡委員)
其方ガ宜シイ
(元尾崎委員)
際ニ於テモガ宜シイ
(委員長)
場合デモ際デモ同ジコトダ
(箕作委員)
原書ノ意味ハ場合デハナイ記入ト云フモノハ評價額ヲ書込ンデ於テモ良イト云フノデアリマス
(栗塚委員)
左樣デス
(委員長)
記入ノ際ニ於テモト云フコトヲ刪ツテ仕舞フコトデハ何ウカ
(栗塚委員)
ソレデハ分リマセン
(元尾崎委員)
際デモ良イダロウ
(栗塚委員)
記入ノ文中ニモ尙ホ之ヲ爲スコトヲ得カ
(松岡委員)
實ハ記入スルコトヲ得ト云フノデス
(箕作委員)
宜カロウ
(大尾崎委員)
記入ニ於テモ尙ホ之ヲ爲スコトヲ得トシテ宜シイ
(元尾崎委員)
ソウシテ先キヘ遣リマシヨウ
本條末項「場合」ノ二字ヲ刪リ其他原案ニ決ス
第千二百十五條朗讀ス
第千二百十五條 抵當ハ抵當ニ充テント欲スル物ノ所有權又ハ收益權ヲ有シ且有償又ハ無償ニテ其物ヲ處分スルノ能力ヲ有スル者ニ非サレハ之ヲ承諾スルコトヲ得ス但第三者ノ抵當設定ニ關スル第千二百十七條ノ規定ヲ妨ケス
若シ有期ノ權利ヲ抵當ト爲シタルトキハ其抵當ハ右ノ權利ヲ時期外ニ效力ヲ生スルコトヲ得ス然レトモ抵當ト爲リタル權利カ此時期ノ滿了前或ル出來事ニ因リ物ノ價額ヲ代表スル償金ニ移リタルトキハ債權者此償金ニ付キ其權利ヲ行フ
(南部委員)
出來事ト云フ字ハ前ニ事變ト云ツテ居ルガ出來事ト云フハ耳立カラ御決シヲ願ヒマス元トハ事變トアツタノデス再調査モ古イノハ事變トナツテ居リマス此處デハ出來事トナツテ居リマスガ愈々事變トスルカ何ウカ我輩ハ事變トスルガ宜シイト思ヒマス
(村田委員)
出來事ト云フ方ガ宜シイ
(箕作委員)
矢張リ事變デアリマス
(村田委員)
例ヘバ公用土地規則デ地面ヲ買上ゲタハ出來事デアリマス妨害ガ公用徵收ヨリ生ズト云フノモアリマスカラ出來事ト云フハ意味ハ宜カロウガ何ウモ餘リ直譯過ギテ往カン
(元尾崎委員)
出來事ト云フノハ面白イ日本人ニハ良ク分リマセヌ
(松岡委員)
東西デ意味ガ反對スル月ノコトデ出來事トハ奧州ノ方ヘ往クト出來ルト云フハ來ルト云フ事此方デハ出來ルト云フコトハ出ルト云フコトダ
(北畠委員)
月ハ出來タガ團子ハ出ナイト云フコトガアリマス出來事モ用ヒ處ニヨリマス
(淸岡委員)
月ガ出來タツテモ新タニ生ズルノダカラ變ツタコトハナイ
(松岡委員)
名文トシテ先キヘ往キマシヨウ
本文ハ原案ニ決ス
第千二百十六條朗讀ス
第千二百十六條 未成年者、禁治產者、及ヒ失踪者ノ財產ハ法律ニ定メタル原因及ヒ方式ニ依ルニ非サレハ其代人ニ於テ之ヲ抵當ト爲スコトヲ得ス
本條ハ原案ニ決ス
第千二百十七條朗讀ス
第千二百十七條 約束上ノ抵當ハ第千百二條及ヒ第千百二十二條ニ於テ動產質及ヒ不動產質ニ付キ記載シタル如ク第三者ノ債務ヲ擔保スル爲メニ之ヲ與フルコトヲ得
右ノ抵當ハ常ニ債務者ニ對シテハ恩惠ナリトス
又抵當ハ債權カ無償ナルトキ又ハ有償ナルモ諾約ナクシテ主タル合意以後ニ之ヲ設定シタルトキハ債權者ニ對シテモ恩惠ナリトス
(松岡委員)
恩惠ナリトスト云フハ分ラン前承ツタニ能力ノ事丈ケト云フノデシヨウ
(元尾崎委員)
恩惠ノ抵當ト當リ前ノ抵當ト結果ガ違マスカ
(南部委員)
違マス
(松岡委員)
結果ハ違ハン能力ガ違フト云フノデ恩惠デ受ケタノデナケレバ出來ント云フコトデス
(元尾崎委員)
以前ハ一體抵當ハ初メ十五條ノ如キ所有權ヲ且有償無償ニテ處分スル能力アルモノデナケレバ出來ントアルソウスレバ同ジコトデハナイカ
(松岡委員)
其處ハ自己ノコトデ云フノデ此處ハ第三者カラ遣ルノデアリマス
(元尾崎委員)
同ジコトデアロウ
(南部委員)
但第三者ノ抵當設定ニ關スルトアリマスカラ其處ガ違ヒマス
(元尾崎委員)
無償名義ト云フノト同ジコトデハナイカ
(箕作委員)
第三者ガト云フ字ガアリマスガ彼處ニ言ツテ居ル第三者ト此處トハ反對デス
(栗塚委員)
彼處モアリマシタアレハ第三者ヲ債務者ト遣ロウカト云ヒマシタ
(元尾崎委員)
此處第三者債務者ニナルノデアリマス
(箕作委員)
同ジニスルコトガ出來ルノデアリマス
(元尾崎委員)
別ニナツテ居ル方ガ面白イ既ニ當事者二人アツテ此方カラ出テ往ク場合ダカラ向フノ抵當ヲ置クモノト取ル奴ハ主ニナルノデ其處デ債權者ガ第三者ニナルノデス
(淸岡委員)
之ハ名文デス
(栗塚委員)
如ク第三者ヨリ債務者ノ債務ヲ擔保スルコトヲ得トシテモ宜シイ
(元尾崎委員)
債務者ハ御客樣デ別デス
(委員長)
第三者ノ債務ヲ擔保スル爲メト云フト二十二條モダロウ
(栗塚委員)
事柄ハ同ジデ第三者ト云フモ此處ハ債務者ヲ云フノデ彼方ハ第三者カラ遣ルト云フ抵當出シ主ヲ第三者ニシテ居ルノデアリマス
(松岡委員)
言ヒ直シタラ質物主抵當物主ト云フノデアリマス
(委員長)
債務者ト書イテ良カリソウナモノデス
(元尾崎委員)
之デ宜シイ
(栗塚委員)
彼處ハ容易ニ直セン文章デアリマス不動產質ハ第三者ノ債務ヲ擔保スル爲メ之ヲ設定スルコトヲ得ト書ケバ良イノデアリマス
(委員長)
二十二條ヲ第三者ノ爲メト書クヨリカモ只債務者ノト書ノハ宜シイ
(松岡委員)
ソウデス
(栗塚委員)
第三者ヨリ債務者ノトヤレバ宜シイ
(箕作委員)
宜シイ
(松岡委員)
債務者ノ債務ヲ擔保スル爲メ第三者ヨリトスルガ宜シイ
(南部委員)
ソレガ宜シイ
(栗塚委員)
記載シタル如ク債務者ノ債務ヲ擔保スル爲メ第三者ヨリ之ヲ與フルコトヲ得トシテ宜シイ
(村田委員)
宜シイ
(松岡委員)
書カナケレバナラン要用ハ如何
(栗塚委員)
前ノ十五條ニ言ツテ居ルカラ卽チ無償ニテ處分スル能力ヲ有スルモノニ非ザレバト云ツテ居ルカラ無資力ヲ見セヌノハ妙味デアリマス
(箕作委員)
恩惠ダト法律ガ定メテ居レバ卽チ贈遺ヲ減ズルトカ財產ノ抵保ヲ斯ウシタ時ハ減ズルトカ云フノデ元トニ仕樣ト云フノデソンナコトハナイノダ
(栗塚委員)
左樣
(松岡委員)
名文トシテ先キヘ往キマシヨウ
本條ハ第一項「記載シタル如ク第三者ノ債務ヲ云々」トアルヲ「記載シタル如ク債務者ノ債務ヲ擔保スル爲メ第三者ヨリ之ヲ與フルコトヲ得」ト改メ其他原案ニ決ス
第千二百十八條朗讀ス
第三款 遺言上ノ抵當
第千二百十八條 抵當ハ遺贈ノ全部若クハ幾分ノ擔保又ハ第三者ノ債務ノ擔保ノ爲メニ非サレハ遺言ヲ以テ之ヲ與フルコトヲ得ス
有效ニ遺言上ノ抵當ヲ設定スルニハ設定者ト債務者又ハ債權者トノ間遺言ニ因テ互ニ授受スルノ能力アルコトヲ要ス
(村田委員)
贈遺デスカ
(栗塚委員)
贈遺デアリマス
(村田委員)
債務者間ニト入レテハ何ウカ
(栗塚委員)
ニノ字ガ重サナリマス
(村田委員)
間云々トアルカラニノ字ガ重サナツテモ良カロウ
(箕作委員)
ニノ字ガアツテモ宜シイ
(栗塚委員)
入レマシヨウ
(村田委員)
此處ハ一分デ良シイ
(栗塚委員)
遺贈殘ラズカ又ハ或ル遺贈ト云フノデ今マデノ一分トハ違イマス
(委員長)
一分トシマシヨウ
(南部委員)
之ハ調ベテ見マシヨウ
(箕作委員)
非ザレバ與フルコトヲ得ズト制限シナケレバナラン譯ケダロウカ與フルコトヲ得ト云ツテハ往カンカ註ヲ見テモ一向制限ハナイ樣デアリマス
(栗塚委員)
之ハ白耳義ノヲ盜ンデ來タノト思ヒマス
(松岡委員)
白耳義ハ裁判上ノ抵當ヲ止メテ遺囑上ノ抵當ヲ始メタノハ恐ラク白耳義ヲ始メトス日本デモ之ヲ採用トアルガ裁判上ノ抵當ヲ止メル論カラヤツテ今度ハ遺言ノ時分兼テ抵當ヲ取ラズニ貸シテ居ツタニ死ヌ時分此方カラ抵當ヲ遣ル樣ニシテハ他ノ債權者ヲ害スト云フ考ヘダカソウシテ見ルト第三者債務抵當スルモ惡カリソウナモノデス起案者ハ自分ノ債務ノ爲メ抵當ヲ入レテナカツタノヲ死ヌ時分ニ入レルノハ往カント止メタノデアリマスソウシテ見ルト第三者ノ爲メ抵當ヲヤルノモオカシクハナイカ
(栗塚委員)
恩惠デス
(松岡委員)
恩惠ハ構ハンガ理窟ガ合ハン
(南部委員)
確メヲヤルノハ恩惠デシヨウ
(松岡委員)
恩惠デモ之ハ第三者ノデナケレバ往カンノデアリマシヨウ
(栗塚委員)
自分ハ義務負ハン人ニナツテ仕舞フノデアリマス
(松岡委員)
自分ガ義務ヲ負フテ居ルニ死ヌ時分ニ死ヌカラト云ツテ抵當ヲ遣ルノハナラント云ツテ止メタノデアリマシヨウソレガ出來ルノハ何ンカナレバ別ノ人ニ入レテ宜シイ己レノハサセント云フノハオカシイ
(元尾崎委員)
オカシイ
(松岡委員)
ナゼカナレバ裁判上ノ抵當ヲ止メルノハ何所トカ云フト今マデナカツタモノヲ遣ルト外ノ債權者ヲ害スト云フノダロウ遺言上ノ抵當ハ格別働キガナイカラ止メテハ何ウカ我ガ財產ニモセラレナイト云フノダカラ第三者ノ爲メニナラント云フノハ本末ガ分ラン
(元尾崎委員)
之ハ論ガ立タンカラ刪ツテモ宜シイ
(村田委員)
遺言ト云フモノハ遺囑カラ出ルガ抵當ガ出來ント云フノハオカシイ
(松岡委員)
之デハサセンノデス
(村田委員)
第三者ニハ出來ルノデス
(松岡委員)
自己ノハ出來ノデアリマス
(村田委員)
第三者ニハ恩惠ダカラ其理窟ガアルデハナイカ
(箕作委員)
白耳義ノハ自分ノシタ贈遺ノ擔保ノ爲メニ遺言狀ニ指定シテアル又自己ノ不動產ノ上ニ贈遺者ヨリ設ケタト云フノガアルソレナラ差支ハナイノデ之ニ非ザレバ得ズト云フノハオカシイ遺言ダカラ贈遺スル贈遺ヲ擔保スル爲メ設ケルト云フナラ分ツテ居ル
(松岡委員)
ソウデス只百圓遣ロウデハ受取ツタ奴ニ言ツテ仕舞フカ知レンガ第三者ニハ前條ノ同ジ能力ガアレバ自己ノ債務ノ抵當デサセント云フノハオカシイ
(委員長)
恩惠ダカラト思ツテ遺ツタノダロウ
(箕作委員)
抵當ハ贈遺ノ全部若クハ一分ノ擔保ノ爲メ遺言ヲ以テ之ヲ與フルコトヲ得トシテハ何ウカ
(松岡委員)
ソウスレバ贈遺モナイ
(栗塚委員)
私ハ矢張リ遺言上ノ抵當ハ贈遺全部若クハ一分ノ擔保スルニ非ザレバ設定スルコトヲ得ズトシテハ何ウカ
(箕作委員)
ソレデモ宜シイ
(栗塚委員)
斯フ云フ場合デナケレバト云フ御話カ知レマセンガ兎モ角モ贈遺ハ全部一分ノ爲メニ非ザレハ設クルコトヲ得ズトシテ置テハ如何デス
(松岡委員)
同ジデス
(箕作委員)
得ズト起案者ガヤツタガ自分ノ貸務ニハヤラント云フノデアリマス夫ヲ刪ルト非ザレバ得ズト云フノガ效能ガアリマセン
(村田委員)
削ツテモ第三者ニハ出來ル
(松岡委員)
詰リ同ジデス
(栗塚委員)
又ハカラ擔保迄ヲ削ルノデアリマス
(松岡委員)
能力ハ削ツテ宜シイ之ガアツテハ、オカシイ
(村田委員)
夫ガ婦ニヤルカモ知レマセン
(松岡委員)
ヤル、ヤランノ能力ヲ云フノデハナイ擔保ヲヤレン者ガ擔保ノ出來ル筈ガナイ
(元尾崎委員)
削ルガ宜シイ
(南部委員)
債務者丈削ルノデアリマス
(箕作委員)
債權者ト云フノハ何ニカ貰ウ人デアリマシヨウ
(栗塚委員)
且ツ贈與者ト贈遺者トノ間ニ遺言ノ授受スルノ能力アルコトヲ要ストシマスカ
(箕作委員)
イリマセン
(渡委員)
削ルガ宜シイ
(松岡委員)
二項モ削ルガ宜シイ
(委員長)
ソレデハ削リマシヨウ
本條削除ニ決ス
第千二百十九條朗讀ス
第三節 抵當ノ公示
第一款 記入ノ條件、方式及ヒ期間
第千二百十九條 凡ソ法律上、合意上又ハ遺言上ノ抵當ハ下ニ定メタル條件及ヒ方式ニ從ヒ其不動產所在地ノ登記所ニ於テ記入シタルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
數箇ノ登記所ノ管轄ニ跨ル不動產ノ全部ヲ抵當ト爲シタルトキハ其主タル部分ノ所在地テ管轄スル登記所ニ於テ記入ヲ爲シ他ノ登記所ニ於テハ其記入及ヒ日附ノ記載ノミヲ爲ス
本條ハ原按ニ決ス
第千二百二十條朗讀ス
第千二百二十條 抵當ハ左ノ二箇ノ場合ニ於テハ有效ニ之ヲ記入スルコトヲ得ス
第一 抵當設定ノ後ニ於テ債務者ノ無資力カ適正ニ宣吿セラレ又ハ其財產ノ全部若クハ過半ノ差押ニ因リ顯然ト爲リタルトキ但破產ノ場合ニ於ケル記入ノ權利ニ付テノ商法ノ制限ヲ妨ケス
第二 債務者カ死亡シテ法律ニ因リ相續ヲ受ク可キ總テノ相續人カ單純ニ其相續ヲ受諾セサルトキ
抵當財產ノ讓渡アリタルトキ其讓受人ニ對シ債權者ノ記入スル權利ノ制限ハ第五節ニ於テ之ヲ規定ス
(松岡委員)
有效ニ之ヲ記入スルコトヲ得ズハ贅文ダカ之ヲ記入スルモ無效ナリト云ツテハ違フカ
(箕作委員)
違イマセン
(松岡委員)
得ズト云フノハ誰レヲ云フノカ取ル方ノ權利者ヲ云フノカ
(箕作委員)
ソウデシヨウ
(松岡委員)
登記官吏ノ方ハ責ハナイ方デシヨウ
(栗塚委員)
責ハ御座イマセン
(松岡委員)
設定ノ後宣吿セラルルト云フト長短ハ何ウカ十日前カ一週間前カノ當リハ何處デ見マスカ
(元尾崎委員)
法律上澤山ノ相續人ガアルト云フ樣ナ工合デシヨウ
(栗塚委員)
左樣
(松岡委員)
單純ノト云フト一向何モ受ケントキカ
(栗塚委員)
左樣デス
(村田委員)
皆ナ否ヤ上言ツテ斷ルノデアリマスガソレハマダ日本ニハアリマセン
(元尾崎委員)
相續人ガ身代限ヲシナケレバナリマセン之モ隨分酷イ
(委員長)
ソウ云フ時ニ斷リガ出來ル場合ヲ言フタノデシヨウ
(渡委員)
一項ノ差押ニ因リ顯然ト爲リタルハ何ウ云フノカ
(村田委員)
無資力ガ顯然ト爲リタルデス
(箕作委員)
外ノ者ニ係リ樣ハナイノデアリマス
(松岡委員)
之ハ畢竟同ジニナルケレドモ有效ニ之ヲ記入スルコトヲ得ズト云フノヲ刪ツテ之ヲ記入スルモ無效ナリトシタ方ガ良クハナイカト思ヒマス
(栗塚委員)
成程其レモ宜シイガ有益ナル時期ト云フ彼ノ文例デアリマスカラ
(松岡委員)
宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第千二百二十一條朗讀ス
第千二百二十一條 債權者カ財產ノ管理權ヲ有セサルトキハ抵當ノ記入ハ法律上又ハ裁判上ノ代人之ヲ爲ス
抵當ノ記入ハ總理代人及ヒ法律上又ハ合意上ノ抵當ノ附着シタル行爲ヲ爲スノ委任ヲ受ケタル部理代人ノ權利及ヒ義務ニ屬ス
又記入ハ債權者ノ委任ナクシテ事務管理人之ヲ爲スコトヲ得
(栗塚委員)
兄弟親族ノ間ニ人別ニ委任ト言ハズシテ始終事務管理トシテ居ルノデアリマス
(松岡委員)
記入ト云フノハ取ル方カラ言フデシヨウカ
(栗塚委員)
記入ト云フノハ帳簿ニ書キ込ムコトデハアリマス
(村田委員)
多クハ債權者デアリマス
(松岡委員)
債務者ガスルコトハアリマスマイ
(元尾崎委員)
債權者抵當ヲ取ルダロウ其財產ヲ自分ガ管理シテ居ルコトガアリマスカ
(箕作委員)
債權者ノ有能力者デアツテ其事ヲ言フノデアリマス
(元尾崎委員)
財產ト云フノハ抵當ニ入レヌ財產デハナイ廣イノデアリマシヨウカ
(箕作委員)
左樣デス
(元尾崎委員)
有能力者ト云フノハ無能力者ナルトキハト云フモ同ジダ
(大尾崎委員)
ソウデス
(松岡委員)
今日ハ無能力ト書イテモ宜イ既奪公權有夫ノ婦ガ商賣ヲスル時分ニ外ノ事ハ出來ルガ不動產ノ事ハ出來ントアル其レ故婦ノ無能力者ト云フモノガアルノデ全部デハナイ一分無能力者ノ場合ヲ見タカラ斯ウ書イタノデシヨウ
(栗塚委員)
ソウデシヨウ
(松岡委員)
今日ハ無能力者ト書イテモ良イデシヨウ
(栗塚委員)
事務管理人ハ之ヲ爲スコトヲ得デ管理人ヲ有シテ居ルモノハ出來ルト見セルニハ良イデシヨウ
(松岡委員)
良カロウ
本條ハ原案ニ決ス
第千二百二十二條朗讀ス
第千二百二十二條 婦ノ法律上ノ抵當ハ夫カ婦ニ對シ契約其他ノ方法ニテ條件附ナルト否トヲ問ハス債務者ト爲リタルトキヨリ夫又ハ裁判所ノ許可ヲ要セス婦ノ請求ニ因リ之ヲ記入スルコトヲ得又其記入ハ婦ノ適當ト思考スル不動產ノ全部又ハ一分ニ付キ之ヲ爲スコトヲ得但第千二百四十一條ニ記載スル如ク夫ノ有スル抵當減少ノ權利ヲ妨ケス婦カ記入ヲ爲サヽルトキハ夫ハ婦ノ擔保ノ爲メ十分ナル不動產ニ付キ其記入ヲ爲スコトヲ要ス
婦又ハ夫カ記入ヲ爲サヽルトキハ從令委任ナキモ婦ノ親屬又ハ姻屬ニテ之ヲ爲スコトヲ得但婦ノ故障又ハ抛棄ナキコトヲ要ス
(村田委員)
債務者カラモ遣レルノダ
(松岡委員)
之ハ別デ外ニナイカラ殊更ラニ變例ヲ書イタノデアリマス
(元尾崎委員)
婦ガ記入ヲ爲スコトヲ要スト是非シナケレバナランガ若シセント罰デモ當テマスカ
(南部委員)
ソレハアリマセン
(箕作委員)
債務者ト爲リタルト云フハ夫ガ婦ノ債務者ト爲リタルニ因リダ
(栗塚委員)
左樣デス
(淸岡委員)
適當ト思考スル不動產ノ全部一部ハオカシイ
(南部委員)
適當トスルトアルカラ良イデシヨウ
(淸岡委員)
女房ニ金ヲ借リテ抵當ヲシテ置ケバ良イノダ
(松岡委員)
左樣デス
(委員長)
二項ノ終リニ在ル夫ハ婦ノ擔保ノ爲メト云フノハ女房ガ承知シテ居ツテモ是非シナケレバナランカ
(栗塚委員)
左樣デス抛棄シタラ格別デ御座イマス先ヅ貴君宜シウ御座イマスト云ヘバ其レマデデアリマス
(元尾崎委員)
抛棄サセレバ宜シイ
(淸岡委員)
抛棄セヨト云フカ
本條ハ原案ニ決ス
第千二百二十三條朗讀ス
第千二百二十三條 未成年者ノ法律上ノ抵當ハ夫カ婦ノ法律上ノ抵當ヲ記入スルト同一ノ場合ニ於テ同一ノ條件ニ從ヒ後見人之ヲ記入スルコトヲ要ス
後見人記入ヲ爲サヽルトキハ後見監督人又ハ親屬會議員ハ其記入ヲ爲スコトヲ要ス若シ之ヲ爲サヽルトキハ未成年者ニ對シ連帶シテ損害賠償ヲ負擔ス
未成年者モ亦後見ヲ脫シタル後ハ其記入ヲ求ムルコトヲ得
(元尾崎委員)
後見監督人ト云フモノガアルノカ
(松岡委員)
拵ヘルノデアリマス
(南部委員)
法律デ拵ヘナケレバナリマセン
(槇村委員)
宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第千二百二十四條朗讀ス
第千二百二十四條 前條第一項及ヒ第二項ノ規定ハ禁治產者ノ法律上ノ抵當ニ之ヲ適用ス
處刑言渡ニ因レル禁治產ノ場合ニ於テハ禁治產者ノ特別ノ代理人ニテモ記入ヲ求ムルコトヲ得
(村田委員)
特別ノ代理人ハ後見人デシヨウ
(栗塚委員)
左樣之ハ後見人ニナルデシヨウ
(元尾崎委員)
處刑ノ言渡ニ因テ禁治產ヲ受ケテ後見人ト云フカ
(栗塚委員)
後見人ト名付ケン爲メニ他日何ウ名付ケルカ今ハ代理人ト遣ツタノデアリマス
(元尾崎委員)
宜カロウ
本條ハ原案ニ決ス
第千二百二十五條朗讀ス
第千二百二十五條 抵當ノ記入ヲ求ムル者ハ下ニ記スル如ク己レノ利益ノ爲メ又ハ己レノ代表スル債權者ノ利益ノ爲メ抵當ノ成立ヲ登記官吏ニ證明スルコトヲ要ス
婦、未成年者又ハ禁治產者ノ法律上ノ抵當ニ關スルトキハ抵當ノ原因タル婚姻又ハ後見ノ證據ニ依リ其證明ヲ爲スコトヲ要ス
合意上ノ抵當ニ關スルトキハ抵當ヲ設定シタル公正證書ノ謄本ニ依リ其證明ヲ爲スコトヲ要ス
遺言上ノ抵當ニ關スルトキハ遺言書ノ正本又ハ其公正ナル寫書ニ依リ其證明ヲ爲スコトヲ要ス
總テノ場合ニ於テ登記官吏カ抵當ノ成立ノ證據ヲ爭フトキ又ハ債務者ト帳簿ニ記載アル不動產所有者ト同人ナルコト十分ナル證明ナキトキハ登記官吏ハ自己ノ責任ニテ記入ヲ拒絕スルコトヲ得但第千三百四條ニ記載スル如ク裁決ヲ受ケル爲メ同條ノ規定ニ從フコトヲ要ス
(栗塚委員)
第三ハ合意上ノ抵當ニ關スルトキハ抵當ヲ設定シタル證書ニ依リト遣リマシヨウ
(南部委員)
佛蘭西ハ公正證書ト其レカラ自筆ノ證書ト今一ツ何ニカ遺言ノ書キ方ガアリマシタ
(箕作委員)
四項ハ謄本デス
(栗塚委員)
記シテモ良イノデス
(元尾崎委員)
英國ハ二人ノ證據人ガアレバ良イノデス
(北畠委員)
公證人ニサセルモノデシヨウ
(元尾崎委員)
次ノ項ハ入リマセン登記官吏ガ抵當成立ノ證據ヲ爭フト云フノハ登記官吏ガ爭フノカ
(栗塚委員)
左樣デハ御座イマセン
(松岡委員)
爭フト云フ字ハオカシイ其疏明デ滿足シテ承知シナイトキハダロウ
(栗塚委員)
登記官吏ガ此證據ハ疑ヒマスト云フノデアリマス
(元尾崎委員)
登記官吏ガ疑グルトキハト云フノカ
(栗塚委員)
左樣デス證據ニ異議ヲ述ベルト云フノデ例ヘバ公正證書ニシテアル可キデシテナカツタカ又私署證書デモ帳面ニ判ガアルトカ無イトカ云フノデアリマス
(元尾崎委員)
證據ニ付キ意見アルトキカ
(松岡委員)
爭ヒト云フ字ハ惡イ
(栗塚委員)
證據ニ異議アルトキカ
(松岡委員)
疏明デ不充分トスルトキ又ハトスルカ
(箕作委員)
註ニハ若シ請求者ガ必要ナル疏明ヲ完全ニ爲ザルトキハトアル
(南部委員)
ソレハ下ノ方デアリマシヨウ
(栗塚委員)
書面ノ方ノ側ダロウト思ヒマス
(大尾崎委員)
證據不充分トスルトキデ宜シイ
(元尾崎委員)
證據ヲ不充分トスルトキハデハ何ウカ
(松岡委員)
良カロウ
(南部委員)
不充分ナルト云ハナケレバナリマセン
(委員長)
證據不充分ト認ムルトキトヤルカ
(栗塚委員)
良シウ御座イマシヨウガ百三十四條ヲ見ルト不規則ノ請求ヲ受ケタカ又ハ疏明シタ書類ガ恐レノナイトキハアリマスカラ不充分デ良カリサウデ御座イマス
(松岡委員)
不充分ナリトスルトキデ何ウカ
(栗塚委員)
「抵當成立ノ證據ヲ不充分トスルトキハ」デ宜シイ
(箕作委員)
宜シイ
(松岡委員)
宜シイ
(南部委員)
末項ハ裁判ヲ受ケル爲メトヤツテ宜シイ
(栗塚委員)
ソウ致シマシヨウ
本條ハ第三項「合意上ノ抵當ニ關スルトキハ抵當ヲ設定シタル證書ニ依リ其疏明ヲ爲スコトヲ要ス」ト改メ第四項「寫書」ヲ「謄本」ト改メ第五項「抵當ノ成立ノ證據ヲ爭フトキ」トアルコト「抵當成立ノ證據不充分トスルトキ」ト改メ末項「裁決」ヲ「裁判」ト改メ其他原案ニ決ス
于時正午十二時休憩
于時午後一時十分開會
(委員長)
遣リマシヨウ
第千二百二十六條朗讀ス
第千二百二十六條 記入ノ要求者ハ右ノ外左ノ諸件ヲ精確ニ指示スル明細書ノ正本二通ヲ差出スモノトス
第一 債權者ノ氏名、職業及ヒ住所若クハ居所
第二 債務者ノ氏名及ヒ成ル可ク職業住所若クハ居所
第三 抵當ノ原因及ヒ法律上ノ抵當外ノ抵當ニ關スルトキハ設定證書ノ性質及ヒ日附
第四 債權ノ性質、其證書ノ日附、之ニ記載シタル全額又ハ其價額ノ不確定ナルトキハ現ニ評價シタル金額及ヒ債務ノ要求期限
第五 抵當ト爲シタル不動產ノ性質及ヒ其所在地
從來ノ記入ノ緣邊ニ附記スヘキ讓渡又ハ代位ノ場合ニ於テハ明細書ニ新債權者及ヒ其證書ノ指示ヲ記載スルヲ以テ足レリトス
(南部委員)
末項其證書ノ指示ト云フノハ原ノ字ガ這入リマシタ
(松岡委員)
原ノ字ハ這入ツタ方ガ宜シイ
(槇村委員)
原ノ字ヲ入レルガ宜シイ
(箕作委員)
其證書ト云フノハ新債權者ノ證書ト云フ積リデシヨウ
(栗塚委員)
左樣デシヨウ
(槇村委員)
末項ハ起案者ニ質問トアルガ何ウカ
(栗塚委員)
其ハ斯ウ云フコトデ聞キマシタノデ始メニ記入シタモノニ係ルト云フ返答ガ來タノデアリマス
(南部委員)
ソレデ原證書トナツタノデアリマス
(松岡委員)
原證書ト云フガ宜シイ
(箕作委員)
新債權者ノ彼レノ證書ト云フノデアリマス
(大尾崎委員)
ソウ云フト原證書デハナイ
(箕作委員)
卽チ原證書デアリマス
(南部委員)
終リノ記載ハオカシイ
(淸岡委員)
原證書ヲ指示スルト云フノデシヨウ
(栗塚委員)
之ハ新債權者其讓渡シタト云フ證書ヲ元トカラ出來テ居ル明細書ニ記入セヨト云フノデアリマス卽チ千二百二十六條ノ明細書デアリマス
(松岡委員)
最初記入ニハ一二三トアルガ縁邊記入ハ先キニ出來テ居ル卽チ代位ノ場合ハ縁邊デ來ルカラ差押ハ何ウ云フモノガ要用カ新債權者ト一二三ニアルモノト其ガ要用ト云フノデ新規ニスル時分ハ之レ丈ケノモノガ入ルト云フノデアリマス
(南部委員)
元トノ證書ガ出來ルハ登記簿ニ照シテ見レバ間違ヒガナイカラデス
(松岡委員)
明細書ガ管略ニ出來レバ分ケドコガ違フ新規記入ハ一二三トアルガ縁邊記入ハ新債權者ト以前ノ指示サヘ書イテ持テ來レバ良イト云フノデ元ノ字ヲ入レレバ宜シイ
(委員長)
栗塚ハ原證書デハナイト云フノカ
(栗塚委員)
原證書デハナイト思ヒマス
(箕作委員)
栗塚サンノ云フ通リ註ニハ讓リ受ケタカ或ハ代位シタコトヲ書キ分ケトアル
(松岡委員)
ソレデハ指示トハ言ヘン
(箕作委員)
一々書クニハ及バン新債權者ハ自分ガ債權ヲ得タル事故ガアツタラ其事故ト讓受或ハ代位ト云フコトデアリマス
(元尾崎委員)
前ノ登記ノコトデアリマシヨウ
(南部委員)
成程註ニハ名義トシテアリマス
(箕作委員)
新債權者ハ何ウ云フ譯ケデ讓リ受ケタカ或ハ代位シタカ名義ヲ指示スルノデアリマス
(栗塚委員)
左樣デス
(箕作委員)
「チートル」ガナイ時分ニハ證書デハ無イ法律上代位ヲ惹起ス所爲トアル
(栗塚委員)
ソレダカラ證書トハ申セマセン何ウシテ債權ヲ得タカト云フ名義デアリマス
(南部委員)
ソレデ宜シカロウ
(元尾崎委員)
前ノ登記ノコトモ書イテ置ケト云フノデアリマス
(村田委員)
縁邊ニ於テ〓ト云フノデハナイ卽チ名義ヲ〓ハヨイト云フノデ原證書デハナイ
(元尾崎委員)
矢張リ其證書ダ
(村田委員)
證書ト云フハ惡イ明細書ニ新債權者及ビ其名義ヲ記載スルヲ以テ足レリト云フノデス
(箕作委員)
其名義トヤラナケレバナリマセン
(村田委員)
設定名義ト云ヘバ宜シイ
(箕作委員)
新債權者ノコトダカラ設定名義デハナイ
(松岡委員)
ソウラシイ
(栗塚委員)
之ハ誤リデアリマシタ
(元尾崎委員)
指示ト云フノハ入ランダロウ
(松岡委員)
指示ノアル方ガ宜シイ
(委員長)
先キヘ往キマシヨウ
本條ハ末項「證書」ヲ「名義」ト改メ其他原文ニ決ス
第千二百二十七條朗讀ス
第千二百二十七條 婦未成年者又ハ禁治產者ノ法律上ノ抵當ニ因リ擔保セラレタル債權カ不當ノ利得又ハ不正ノ損害等ノ事實ヨリ生セシトキハ要求者ノ申立タル事實ノ要旨及ヒ其主張シタル債權ノ評價ヲ明細書ニ指示スヘシ
(南部委員)
終リノ「スヘシ」ハ「可シ」デアリマス
(元尾崎委員)
之ハ何ウ云フコトカ
(南部委員)
夫ガ婦ニ對シテ不當ノ利得ヲ得タト云フノデアリマス
(元尾崎委員)
女房ガ得タ方デハナイカ
(南部委員)
得タ方デス債權ヲ得タノデ卽チ不當ノ利得カラ債權ヲ得タノデアリマス
(元尾崎委員)
着物デモ只質ニデモ置イタト云フノデアリマシヨウカ
(南部委員)
左樣デス
(村田委員)
卽チ義務ガ生ジタノデアリマス
(委員長)
往キマシヨウ
本條ハ終リノ「スヘシ」ヲ「ス可シ」ト改メ其他原案ニ決ス
第千二百二十八條朗讀ス
第千二百二十八條 債權者カ記入ヲ爲ス登記所ノ管轄地內ニ住所ヲ有セサルトキハ其抵當ニ關シテ自己ノ受ク可キ通知ノ爲メ假住所ヲ選定シ之ヲ記入セシムルコトヲ要ス
其假住所ハ右ノ條件ニ從ヒ何時ニテモ之ヲ變更スルコトヲ得
(栗塚委員)
記入スルコトヲ要スデス
(南部委員)
之ハセシムルコトヲ要ストシタイ
(槇村委員)
之ハ起案者ニ質問ノ上刪ルトアリマス
(松岡委員)
必要ガアルト云フノデソンナラ聞クガ良イト云ツタノデアリマス
(元尾崎委員)
之ハ刪ルノガ多數ノ論デアリマシタ
(松岡委員)
念ノ爲メニ聞クト云フノデ受ケ置イタノデアリマス
(元尾崎委員)
ソレヲ點シテ置イテハ困リマス
(南部委員)
千二百三十八條モ御競ベナステ、之レ丈ケノ關係デアリマス惡イト云ヘバ別段ダガ意味ハ之レ丈ケカラ出テ居ルノデアリマス
(箕作委員)
全體假住所選定スルコトガアリマスカ
(松岡委員)
此處ニ書イテアリマス
(栗塚委員)
アリマス
(村田委員)
假住所ヲ選ムコトハ治罪法ニモアリマス
(箕作委員)
日本ニアリマシヨウカ
(松岡委員)
抵當ノコトデシヨウカソレハアリマセン
(栗塚委員)
假住所ヲ選ムコトハ必要デアリマシヨウ
(松岡委員)
必要デハアリマセン之ハ刪リマシヨウ
(委員長)
裁判所ノ面倒ガアリマスネ
(渡委員)
之ハ刪リマスカ
(大尾崎委員)
刪除シマスカ
(南部委員)
一寸登記シテ貰ヒタイト云ツテ來ル其時ニ出來ンデ呼出ストキハ假住所ガナイト云フコトニスル
(元尾崎委員)
再ビスル議論デ止メマシヨウ
(淸岡委員)
刪ルト云フノハ頗ル仰山ラシイカラ刪ルト云フガ仰山ナ事ハナイ
(元尾崎委員)
ケレドモコンナコトヲ云フト例ヘバ私ガ麻布ニ居ツテ麹町ノ地面ヲ抵當ニ入レルトソウスルト麹町區ニ假住所ヲ定メナケレバナラン
(栗塚委員)
假住所ト云フモノハ何ンナモノカ御考ヘガナケレバナリマセン
(元尾崎委員)
ドンナモノニモセヨデス
(北畠委員)
假住所ト云フカラ重クナルノデ契約デモシテ置ケバ良イ
(元尾崎委員)
記入スルコトヲ要スダカラ登記シテ貰フ爲メニ一寸宿屋ニ居ルノデハナイ記入シテ貰フノデ溜ラン話シデス
(大尾崎委員)
ソンナコトヲセズニ明日出テ來イト云フ時分ニ何處其處ニ泊マツテ居ルト云フ位イデ宜シイ假住所ヲ撰定シテ記入スルナゾト云ハナクツテモ宜シイ
(淸岡委員)
通知ヲ便利ニスル爲メニ遣ルト云フノデアリマス
(大尾崎委員)
云ツテ置カンデモ良イノデ今日差支ルト云フナレバ私ハ何某ノ宅ニ泊マツテ居ルト屆ケルハ當リ前ノ話シデアリマス
(南部委員)
訴訟人ガ假住所ヲ屆ケルト同ジコトデス
(北畠委員)
多數ノ說デ刪ツタノデ治安廳ニ如何ヲ聞クト云ツタノデ受置キデアツタガ其如何ヲ聞カズニボンヤリ出スノハ案外ノコトデス
(元尾崎委員)
怪カランコトデス
(南部委員)
ソレデハ治安裁判所ヘ問ヒマシヨウ
(北畠委員)
今迄考ヘテ與ヘタノデアリマスカラ際限ハアリマセン
(栗塚委員)
刪ル理由ハ不便ダカラト云フノデアリマスカ
(松岡委員)
不用ダカラ刪ル
(淸岡委員)
我輩ハ刪ツテ置イテ言ツテ居ルノダ
(槇村委員)
先キヘ遣リマシヨウ
本條ハ刪除ニ決ス
第千二百二十九條朗讀ス
第千二百二十九條 登記官吏ハ上ニ指定シタル書類ヲ受取リタル時要求書ノ面前ニテ受取簿ヨリ切離シタル受取證ヲ之ニ付與ス但受取證ニハ第千二百五十三條ノ適用ヲ保スル爲メ受取ノ日附ト共ニ其日ノ受取番號ヲ記載ス可シ
(松岡委員)
之モ一遍私ニ百ハシテ下サイ元來手續デ登記手續ノ方ニ果シテ書クガ良イカ何ウモ民法デハナイ何ウシテモ登記細則手續ノコトデ又斯ウ云フモノハ書キ拔イテ確カニシテ置イテ登記官吏ノ細則ヲ定メルトキニ前後ノ釣リ合モアリマスカラ之ハ一切民法中ニ置カン樣ニ希望致シマス
(栗塚委員)
害ハナイデシヨウ
(松岡委員)
害ハナイガ登記手續デアリマス
(元尾崎委員)
入リマセン
(栗塚委員)
切離ス帳簿ハ何ウカ知レマセンガ受取ヲ遣ツテ受取ノ日附ト番號ヲ書イテ置クノハ必要デアリマス
(元尾崎委員)
入リマセン民法ニ揭ゲルト云フコトハナイ登記手續ノ細則デス之ハ之レ丈ケニスルト云フナラバ刪ルトハ言ハン
(南部委員)
此處計リ刪ルト云フノハ甚ダ怪シミマスナゼナラバ千二百二十六條ニ依テ請求書ヲ出セト示シテアリマスソウスレバ受取ツテ斯ウシヨウト云ハント權衡ガ合ハン思ヒ付キ衣第ニ刪ルト云ツテハ權衡ヲ得マセン
(淸岡委員)
ソンナラ第三節ハ皆ナ刪ルト云フ樣ニナル
(松岡委員)
登記規則ハ今ノ儘デ置カン樣トハ思ハン無論改正シナケレバナリマセンソウスルト斯ウ云フコトガ撞着ヲ致シマス
(栗塚委員)
今ノ登記法ハ民法ガ出來レバ彼ノ儘ニハ出來マセント思ヒマス
(松岡委員)
左スレバ抵當ノコト計リデナイ登記ヲ請フ者ニハ何ウ云フ證據ヲ遣ル記入シタラ記入ノ證據ヲ遣ルト向フデ定メタラ總テ適用ガ出來ルダロウ
(栗塚委員)
民法ヲ立ツタ國デアリナガラ民法ヲ立テル丈ケノ理由ガアツテ立ツテ置キ民法ニ於テ斯ウ云フコトヲ規定セズ手續ノ方ニ委ネルコトガ出來ルヤ否ヤ民法ノ出來タ以上ハ權利ヲ確メル手段ハ書カナケレバナリマセン後トデ何日間目ニ證書ヲ出セトカ云フ樣ナコトハ手數デシヨウ
(松岡委員)
登記スルト云フハアルニモセヨ帳簿カラ切離シタ受取證ヲ遣ルト云フ如キ手續ヲ民法ニ書ク國ハ恐ラクアリマスマイ
(栗塚委員)
切離シタトカ何ントカ云フノハ付ケ句デシヨウガ何ウデモ要求者ノ面前デ以テ受取ヲ遣ラナケレバナリマセン其レニ日附ト番號ヲ書イテ置ケト云フコトハ無論アツテ然ル可キデシヨウ
(大尾崎委員)
刪ルト云フト先キニモ刪ラナケレバナランコトモアリマス
(松岡委員)
私ハ數箇條刪ツテ登記細則ニ讓ツテ宜シイト思ヒマス
(南部委員)
明細書ヲ渡ス以上ハ格別斯ウスルト定メテ置カナケレバナリマセン
(松岡委員)
登記ノ手續ト云フモノニ手ヲ付ケンデ濟ムモノナラバ丁度補フテ良イト安ンズルガ到底登記細則ヲ直サナケレバナリマセン受取帳簿ヲ切離シ受取證ヲ遣ル遣ラント云フコトハ民法デ言フ可キデハナイ
(栗塚委員)
受取ヲ遣ル如キヲ云フノハ當然デアリマシヨウ
(松岡委員)
其事ハ私ノ考ヘルニハ若シヤ上ノ方デ記入スレバ受取ヲ遣ル是非遣ラナケレバナランモノハ一口ニ言ツテモ宜カロウガケレドモ此處ニ日附ガ何ウダノ切離シタ受取ダノ又三十二條當リヘ往ツテ二ツノモノヲ一ツ渡シ一ツハ保存シテ云々ト云フガ斯ウ云フコトハ登記法ノ定メ次第デアツテ此處デ定ム可キ性質ノモノデハナイト思ヒマス
(南部委員)
受取ツタ手續カラ見ルト三十二條ニ至ツテモ割印スル樣ナコトハ此處ヘ書イテ置イタ方ガ便利デハナイカ
(元尾崎委員)
刪ロウデハナイカ
(村田委員)
併シ決シテ手續計リデハナイ權利上ニ關係シテ居ル順序ヲ定メテ居ルノデ之ハ肝要ナ條デアリマス
(淸岡委員)
置クガ宜シイ
(村田委員)
刪ルコトハ出來マセン
(南部委員)
害ガアレバ刪ルケレドモナケレバ刪ラン
(松岡委員)
害ガアリマス
(栗塚委員)
受取證ヲ與フルト云ヘバ宜シイ報吿委員デモ松岡サンノ仰シヤル樣ナ論モ出マシタガ去リトテドノ點マデ手續ドノ點マデハ權利ヲ確メルモノカガ懸念デアリマス故ニ此儘置イテ害ガアルカ決シテ害ハ御座イマセン
(松岡委員)
登記手續ヲ改正シナイノナラバ最モダケレドモ是非改正シナケレバナリマセン其故ニ抵當記入ニハ限ランドウ云フ書キ樣ヲスルカラ卽チ登記手續ノ細則ダカラ獨リ抵當ノコト計貴重ノ主タル法律ノ中ニ書カズシテ細則デ置キタイト云フノデアリマス
(栗塚委員)
手續ノ方デナイノモアリマス
(松岡委員)
受取證ヲ向フヘ遣ルハ權利ノ定マルコトニ關係ハアリマスマイ受取ヲ遣ルカ番號ガ出來ルノデハナイ記入ハ番號ヲ以テスルト云フコトガ主デアリマシヨウ
(南部委員)
ソウデナイ貰ツタモノガ受取書ガアル番號ガ二番トナルニ記入ヲ見ルト三番トナツテ居ルト直グニ其レデ公吿モ出來ルカラ番號ガ大切デナイト云フコトハ云ヘンノデアリマス
(松岡委員)
卽チ其レガ細則デ云フノデアリマス
(元尾崎委員)
細則ニ任シテ良イデハナイカ
(大尾崎委員)
面前ニ於テ受取書ヲ切離スト云フ丈ケヲ刪ツテ受取書ヲ之ニ附與ス可シトヤツテハ何ウカ
(南部委員)
中ノ修正ハ兎モ角モ全條ヲ刪除ハ往カン
(箕作委員)
之ニ受取書ヲ附與ス可シトヤツテ置キマスカ
(栗塚委員)
要求者ニ受取證ヲ附與ストシテ宜シイ
(松岡委員)
言ヒ詰メルト同ジデアリマス
本條ハ「要求者ノ面前ニテ受取簿ヨリ切離シタル」トアルヲ「要求者ニ受取證ヲ附與ス」云々ト改メ其他原案ニ決ス
第千二百三十一條朗讀ス
第千二百三十一條 債務者カ死亡シタルトキハ記入ハ債權者ノ選擇ニ因リ其債務者ニ對シ又ハ其總テノ相續人ニ對シ之ヲ爲スコトヲ得
抵當ノ負擔アル不動產カ相續ノ分割ニ因リ一人ノ相續人ニ歸シタル場合ニ於テハ其一人ノミニ對シ記入ヲ爲スコトヲ得
第三者ノ設定シタル抵當ニ關シテハ設定者ニ對シ記入ヲ爲スモノトス
(松岡委員)
法律上抵當記入ガ死ンダ人ニ持テ往クノカ
(南部委員)
記入丈ケガ殘ツテ居ルノデアリマス
本條ハ原案ニ決ス
第千二百三十二條朗讀ス
第千二百三十二條 登記官吏カ記入簿ニ明細書ノ箇條ヲ記載シタルトキハ其各明細書ニ記入簿ノ冊數及ヒ葉數ト受取簿ノ順序番號トヲ指示シ且記入ノ所爲、場所及ヒ日附ヲ證記シタル上、二通ノ明細書ノ各葉ニ同一ノ割印ヲ押捺ス
明細書ノ一通ハ抵當ノ證明書ト共ニ之ヲ要求者ニ還付シ他ノ一通ハ登記官吏自己ノ擔保ノ爲メ之ヲ保存ス
右保存シタル明細書ヲ每年併合シテ記入ノ正本ト成スコト及ヒ其記入ノ見出簿ヲ作ルコトハ規則ヲ以テ之ヲ定ム
(箕作委員)
抵當ノ疏明ト云フノハ何ウカ
(南部委員)
千二百二十五條其デシヨウ
(栗塚委員)
合意上抵當ニ關スル云々ト彼處ノ疏明デアリマス
(松岡委員)
手續カラ云フト二ツ出サセルモノナラ一通ニハ番號日附ヲ書イテソウシテ戻ストナルト矢張リ一ツノ手續デアリマス
(栗塚委員)
起案者ノ明細書ヲ合セテ何ウスルカ規則ノコトハ行政規則デ宜シイ又見出帳簿ヲ作ル行政デ良イ後トハ法律デ定メルト云フ趣意デアリマス
(松岡委員)
何々ハ規則ニ讓ルトアルガ皆ナ讓ツタラ良カロウト思フ此處デ色々定メテ置クト登記手續細則ヲ定メル時分此處ヲ動カスノハ否ヤデス其レ故此項ハ記入ノ方式ヤ手續ハ細則ニ讓ルトデモシテ置イタラ宜シイデシヨウ手續ハ書式ニ關係シテ此方デ定メルト向フガ大層窮窟ニナル綿密ニスルト撞着ガ起ルダロウ
(栗塚委員)
私ハ撞着ハ起リマスマイト思ヒマス三十二條ノ如キハ民事局ノ木下ニ聞キマシタガ之レニナツテ居ルト云フコトデス
(委員長)
今ノ登記法ハ「ボアソナード」ノ書イタノヲ主トシテヤツタノデスカラ大槪此趣意ダロウト思ヒマス
(箕作委員)
併シ元老院デ隨分イジリマシタ
(委員長)
イヂツタガ大體ハ變リマセン
(松岡委員)
帳簿記入ノ方式及ビ何々ハト云フ樣ニシテ詰ランコトハ規則ノ方ニ讓ルコトニシテ置ケバ害モナク又是非設ケテスルノデアリマスカラソウシナイト外ノモノモ皆ナ一樣ニシナイケレバナリマセン之レ計リ別ノ手續ニ置ナケレバナランノモ無益ナコトデス
(委員長)
別々ニモナリマスマイト思ヒマスケレドモ此處ヘ書クノハ民法ノ方ハ大キナ幅ノモノヲ書クト云フノハ一槪ダガ細カ過ギルコトモ有リマシヨウガ害ノアル氣遣イハナイ此手續ヨリ外ノ手續ノ仕方ガアツテ牴觸スル樣ナコトハアリマスマイト思イマス
(松岡委員)
今明細書ガアリマスカ
(南部委員)
御座イマセン記載シタルトキハ二通ノ明細書ノ各葉ニ同一ノ割印ヲ押捺ス其一通ハ抵當ノ疏明書ト共ニ之ヲ要求者ニ還付ス他ノ一通ハ云々其他ノ規則ハ別段ニ之ヲ定ムトシテ置キマスカ
(松岡委員)
ソウスレバ宜シイ
(箕作委員)
之ハ報吿委員デヤツテ貰フデハナイカ
(松岡委員)
ソレデモ良イ
(渡委員)
ソレデ良カロウ
(栗塚委員)
登記官吏ガ記入ノ明細書ハ箇條ヲ記載シタルトキハ其二通ノ明細書ニ各葉ニ同一ノ割印ヲ押捺シ其一通ハ抵當ノ疏明ト共ニ之ヲ要求者ニ還付シ他ノ一通ハ登記官吏自己ノ擔保ノ爲メ之ヲ保存ストシテハ如何
(箕作委員)
宜シイ
(槇村委員)
宜シイ
(元尾崎委員)
三項ハ刪ツテ宜シイ
(南部委員)
三項ハ刪ツテ其他ノ細則ハ別ニ之ヲ定ムトシテ宜シイ
本條ハ左ノ如ク改ム
第千二百三十二條登記官吏カ記入簿ニ明細書ノ箇條ヲ記載シタルトキハ其各明細書ニ明細書ノ各葉ニ同一ノ割印ヲ押捺ス其一通ハ抵當疏明書ト共ニ之ヲ要求者ニ還付シ他ノ一通ハ登記官吏自己ノ擔保ノ爲メ之ヲ保存ス其他ノ細則ハ別ニ之ヲ定ム
第千二百三十三條朗讀ス
第千二百三十三條 明細書ノ箇條ノ脫漏不足又ハ訛誤ニ依リ不完全ナル記入ノ爲メ第三者カ抵當ノ或ル要點ヲ知リ得サリシヨリ生シタル損害ヲ疏明スル時ハ其請求ニ依リ記入ノ無效ヲ宣吿スルコトヲ得
本條ハ原按ニ決ス
第千二百三十四條朗讀ス
第千二百三十四條 法律上、合意上又ハ遺言ノ抵當ノ記入ハ三十年間其效力ヲ有ス三十年後ハ債權ノ時效カ中斷又ハ停止ニ係リタルトキト雖モ其記入ノ效力ヲ失フ
右抵當ノ時效ハ無能力者ニ對シテ停止セス
但其代人ニ對スル求償ヲ妨ケス
然レトモ三十年ノ期間滿了前ニ記入ヲ更新シ舊記入ノ日附ヲ精確ニ記載シタルトキハ抵當ノ順位ハ舊記入ト同一ノ日附ニテ存ス
記入ノ效力ヲ失ヒシ後ノ更新ハ新記入ニ同シク其更新ノ日附ニ於テノミ效力ヲ生ス
(松岡委員)
之ハ工合ガ惡イ債權ノ時效ガ中斷セラレテ居ルニ其モノノ主タルモノハ生キテ居ルノデシヨウ從タルモノハ必ズ死ヌルト云フノハ何フ云フモノダロウカ
(南部委員)
之ハ貴君ガ記入ノ權利ガ半分アルト商法モ定メテアルカラ宜シイ
(元尾崎委員)
債權ハ中斷シテ記入ノ效力ガナクナルト云フノデ抵當ガナクナルノダ
(松岡委員)
中斷ナクツテ時效ガ通ツテ仕舞ヘバ構ハンガ質物デサイヤルト言ツタ位デス
(栗塚委員)
佛蘭西デモ伊太利デモ十年每ニ記入ヲ仕替ヘナケレバナラン
(松岡委員)
私抔ノ考デハ蒼蠅クナイ今ノハ五十年立ツテモ百年立ツテモ明確ナモノデアリマス債權ノ時效ガ中斷セラレ停止ニ係ツテモ記入ガ效力ヲ失フト云フノハオカシイ
(栗塚委員)
蒼蠅イカラト云フノデシヨウ
(村田委員)
少シオカシイ
(松岡委員)
佛蘭西伊太利ノ登記帳簿ノ體裁ハ知ランガ長クナルト錯亂シテ見分ケ難イカラ依テ十年每ニ改メルト處ガ今日地券帳簿ト同ジニナツテ登記ノ法律ガ背クカラ一目瞭然ナレバ五十年百年立ツテモ錯亂紛失モシナイ立テ方デアル其處デ伊太利佛蘭西ノ樣ニシナケレバナラン例ガアリマスガ債權ノ主タルモノガ時效ヲ中斷シテ貸借ト云フガ明瞭ナルニ其儘無效ニナルト云フノハ何ウモ工合ガ惡ルカロウ
(村田委員)
此條ハ大分分ラン處ガアリマス賃借ノ處ニ一體賃借ハ期限ガ來テ收益シテ延期シナケレバ其時消ヘルト云ツテ居ル此所デハソウデナイ抵當ハ更新シテモ生キテ往ク日附ヲスレバ舊ノ日カラ存スルトアリマス
(松岡委員)
其方ハ別ニ更新シナケレバナラン此方ニスレバ債權ノ時效ヲ中斷サシテ居ルノハ記入ガナクツテモ出來ルノデ其時效ヲ中斷シテ生キテ居ルノナラ更新ト言ンデモ良カリソウナモノダ
(元尾崎委員)
一項ハオカシイ
(南部委員)
斯ウ云フ理窟ガアリマス記入ト云フモノハ記入ヲ定メルニ三十年ガ過ギタソウシテ記入ハ初メノ記入ノ日カラ三十年トナレバ誰レヘモ權利ガ轉輾シテ往ク間ニモ三十年ニナツタラ抵當ハ消ヘンデ居ルト承知シテ出來ル三十年ト定メルト轉輾シテ往ク上ニ第三者ヲ害スルコトガ少ナイ後チニ延ビルト中斷ノコトガ登記シテナイカラ分ラン卽チ他人ヲ害スルト往カンカラデアリマス
(箕作委員)
良イ樣デス
(村田委員)
主タルモノガ消ヘレバ從タルモノモ消ヘルト云フノガ本體デアルガ之ハ其レノ反對ニナルト云フ丈ケノ話シデス
(松岡委員)
之ハ變則トシテ置キマシヨウ
(槇村委員)
宜シイ
本條ハ原按ニ決ス
第千二百三十五條朗讀ス
第千二百三十五條 三十年ノ期間內ニ於ケル記入ノ更新ハ舊記入後ニ起リタル債務者ノ破產無資力又ハ死亡ニ拘ハラス之ヲ爲スコトヲ得
本條ハ原案ニ決ス
第千二百三十六條朗讀ス
第千二百三十六條 登記官吏ハ更新ノ要求書ノ正本二通ヲ受取リタル上ニテ記入ノ更新ヲ爲シ其一通ニ小割印ヲ押シ其更新ノ陳述及ヒ日附ヲ記シテ之ヲ要求者ニ還付ス
本條ハ原案ニ決ス
第千二百三十七條朗讀ス
第千二百三十七條 記入ノ費用ハ債權ヲ有償名義ニテ取得シタルトキハ債務者及ヒ債權者各其半額ヲ負擔ス
更新ノ費用ハ債權者ノミ之ヲ負擔ス
(栗塚委員)
更新ハ債權者ノ利益ダカラト云フノデアリマス
(元尾崎委員)
無償名義ナラ債務者ガ負擔スルカ
(村田委員)
唯貰フノダカラ其レハソウデス
(南部委員)
前ノ條ノ日附ヲ記シテ之ヲ要求者ヘ還付スハ刪ラナケレバナリマセンデシヨウ
(栗塚委員)
置イテモ良イデシヨウ
(南部委員)
入ランデハナイカ
(栗塚委員)
ソウ致シマシヨウスルト三十六條モ矢張リ「其更新ノ陳述及ヒ日附ヲ記シテ」ヲ刪リマス
本條ハ原案ニ決ス
前條「其更新ノ陳述及ヒ日附ヲ記シテ」ヲ刪ル
第千二百三十八條朗讀ス
第千二百三十八條 記入ニ關スル爭ハ抵當財產所在地ノ裁判所ニ之ヲ訴ヘ又債權者ニ對スル召喚又ハ吿知ハ記入ニ付キ選擇シタル假住所ニ之ヲ爲ス
(松岡委員)
之ハ又以下ヲ刪ツタラ宜シイ
(栗塚委員)
左樣デス
(村田委員)
裁判所ニ訴フ可シデ宜シイ
本條ハ「裁判所ニ之ヲ訴フ可シ」ト改メ以下刪除
第千二百三十九條朗讀ス
第二款 記入ノ抹殺、減少及ヒ正誤
第千二百三十九條 記入ノ抹殺、左ノ場合ニ於テ之ヲ爲ス
第一 記入ノ關係スル債權カ無效タリ若クハ銷除ス可キモノタルトキ又ハ其全部ノ消滅シタルトキ
第二 記入ヲ爲シタル抵當カ有效ニ設定セラレス卽チ法律ニ從テ成立セサルトキ
第三 記入カ第千二百三十三條ニ依リ銷除スヘキモノナルトキ
右ハ第千二百四十五條ニ記載シタル如ク或ル不動產ニ付テノ記入ヲ抹殺スルコトヲ妨ケス
(箕作委員)
實ハ之ハ入ランノデス
(南部委員)
抵當ヲ免カレヌ丈ケノ不動產ノアツタトキデス
(元尾崎委員)
第一ノ其全部ノト云フハ抵當物ノ全部ノ滅失シタトキデスカ
(栗塚委員)
左樣デス
(松岡委員)
頭カラ債權ガ向ツタリト云フカ
(元尾崎委員)
第二ノ樣ニ記入ヲ爲シタル記入ノ債權ガト言ツテハ何ウカ
(南部委員)
其レガ宜カロウ
(元尾崎委員)
記入ノ關係ハ面白クナイ
(栗塚委員)
記入ヲ爲シタル抵當ト云フハ現ニ記入ヲシタノデアリマス前ハ「記入ノ關係スル」ハ入ランガ第二ハ置イテハ何ウカ
(南部委員)
第一モ置ク方ガ宜シイ之ヲ刪ツタラ何レ、債權ガ分リマセン
(渡委員)
「記入ノ關係スル」ハ刪ツテ宜シイ
(松岡委員)
宜シイ
(箕作委員)
第二ハ何ウカ
(村田委員)
記入ガ有效ニ設定セラルルデ宜シイ
(箕作委員)
宜シイ
(南部委員)
債權ト云フハ突出ダカラ分ラン記入ノ抹殺ハ無效ノトカ何レノ債權ダカ分ラン記入ト云ハ債權ノ記入ナラ宜シイガ債權ガト言ツテハ突出ト思ヒマス
(箕作委員)
多數デ刪ツタカラ宜シイデシヨウ
本條ハ「第一記入ノ關係スル」ヲ刪リ「第二記入ヲ爲シタル抵當カ」刪リ其他原案ニ決ス
第千二百四十條朗讀ス
第千二百四十條 記入ノ抹殺ハ債務者又ハ其承繼人ノ請求ニ因リ之ヲ宣吿スルコトヲ要ス
但下ニ規定シタル方式ニ於テ債權者ヨリ之ヲ許シタルトキハ此限ニ在ラス
本條ハ原案ニ決ス第千二百四十條記入ノ抹殺ハ債務者又ハ其承繼人ノ請求ニ因リ之ヲ宣吿スルコトヲ要ス但下ニ規定シタル方式ニ於テ債權者ヨリ之ヲ許シタルトキハ此限ニ在ラス本條ハ原案ニ決ス
于時午後三時十五分閉會