旧民法・法例(明治23年)

法律取調委員会 民法草案再調査案議事筆記 第26回

参考原資料

備考

  • 未校正のテキストデータです.
民法擔保編再調査案第二十六回議事筆記
自第千三十一條至第千七十條
(委員長)
ヤリマシヨウ
第千三十一條朗讀ス
第千三十一條 連帶又ハ不可分ニテ責ニ任スル數人ノ債務者ヨリ保證人ニ委任ヲ爲シタル場合ニ於テハ其債務者ハ第九百四十五條ニ從ヒ保證人ニ對シ連帶ノ擔保人タリ
(松岡)
擔保人ト云フ字ハ理窟ヲ言詰メルト入ランダロウ
(栗塚)
保證人ハ債權者ヘ對シテ、債務者ハ保證人ニ對シテ擔保人ト云フ理窟デ御座イマス
(松岡)
哲學語デスネ
(委員長)
良カロウ
本條ハ原案ニ決ス
第千三十二條朗讀ス
第千三十二條 債務者ヲ訴訟ニ參加セシムル事ヲ怠リタル保證人ハ其債務者カ債權者ニ對抗ス可キ排訴抗辯ヲ有シタル事ヲ證明スルトキハ第千三十條ニ定メタル求債權ヲ有セス
若シ債務者カ債權者ニ對抗ス可キ延期抗辯ノミヲ有シタルトキハ懈怠ノ保證人ノ求償ニ對シ之ヲ以テ對抗スル事ヲ得
(栗塚)
「證明」ハ「疏明」ニナリマス
(松岡)
求償權ヲ得ルニ關係スルノダカラ「證明」デスネ
(村田)
原文ニハ「證」ト云フ字ガアリマスネ
(淸岡)
「證明」デ分リソウデス
(南部)
此所バカリデハナイ「疏明」ト云フ字ニシタノガ違テ居リハセンカ
(栗塚)
辯明スルト云フ字ニ直テ居リマス
(松岡)
求償權ヲ失フ失ハザルニ關係ヲ持ツノダカラ證明デス
(栗塚)
排斥抗辯ヲ有シテ居ルト言立スルトキニハデアリマス
(箕作)
「證明」デ置イテハ如何
(栗塚)
證明ト云フコトハ今日迄「證スル」ト使ヒ來リマシタ
(箕作)
證スル、デモ良シイ
(松岡)
ドツチカニシテ貰ハント困ル訴訟法デハ證明ト疏明ト二ツアルカラ
(栗塚)
證スルト云フノモアリマス
(村田)
證スルト云フノモアリマス併シ今迄定メテ來タツテ居ルカラ一樣ニシテ置ク方ガ間違ガナイ
(栗塚)
間違ハ御座イマセン
(松岡)
訴訟法ノ例ニ依ルト往ケマセン
(栗塚)
訴訟法ノ貴君方ノ被仰處デ說キ明シガ付クナラバ宜シイ
(松岡)
訴訟法デハ片口デ言フコトヲ疏明ト云フノデアリマス
(栗塚)
私ニ是丈ケノ權利ガアリマスト言ヒ開キヲスルノデシヨウ相手方ハ何ト言ハウモノダ
(南部)
證據物ヲ持テ居レバソコデ疏明スルコトガ出來ト云フノガアリマス
(栗塚)
申開キト云フ字デアリマスカラ
(北畠)
排訴抗辯ノ字ハ訴訟法ノ通リ合セテハアル
(松岡)
證據物ヲ出ス出サンハ云フニ及バン相手方ト戰フコトニナレバダ
(栗塚)
戰フトキハ佛蘭西デハ證據ト云フ一遍申シ開キヲスルト、何トカカントカ云フト今度證據ヲ出セト言テ證スノデス
(松岡)
疏明ハ相手方トハ戰カハンノデス
(栗塚)
左樣デス此所デハ申開キヲスルトキハデ御座イマス
(松岡)
一方ハ權利ガ確定スルモノデアルト云テ相手方ト闘ハズ往クノハオカシイ
(栗塚)
申開キガ出來ヌトキハト云フノデアリマスカラ訴訟法ノ疏明ト云フノト合フト思ヒマス
(松岡)
合ヒマスマイ排訴抗辯ハドウカ排斥トヤツタ處モアリマス
(箕作)
疏明ノ事ハ論ガ出ルガ之ハ相手方ガ愚圖々々言タ時分本統ノ證據ヲ擧ゲナケレバナランノダカラ「プルベー」ト書イテ置イテモ差支ナイカラ證明トシテ良イダロウ
(栗塚)
左樣デス
(箕作)
本統ノ證據ヲ立テンデ宜イカナラバ後デ擧ゲナケレバナランカラ
(栗塚)
一旦疏明シテ相手方ガ爭フトソコデ證スルトナルノデアリマス
(箕作)
ソウ、直シテ差支ナイト思フ
(栗塚)
差支ハ御座イマセン
(南部)
疏明デ分ルナラ、疏明ニシテ置キタイ
(松岡)
分ルマイ
(南部)
訴訟法ノ疏明ト云フノモ向フガモノヲ出シタラ此方カラ證據立ツルト云フノデハナイカ
(松岡)
ソウデナイ疏明ハソコ丈ケデス
(栗塚)
之ハ私ハ正當デ御座ルト云フ事ヲ見セルト云フノデアリマス
(松岡)
訴訟法デ云フト丁度訴訟ヲ取消サルルトカ云フヨウナ場合デナケレバコト云フ相手方ノ權利ヲ失フ抔ニ疏明デ取ル事ハドウモナイヨウデアリマス之ハ是切リデ求償權ヲ有セズトナツテ仕舞ノデアリマス
(栗塚)
左樣デス
(松岡)
訴訟法デ疏明ト云フノハ相手方ガ戰フコトガナイノデアリマス
(栗塚)
併シ私ガ某ノ相續シマシタノデ某ノ息子デ御座ルソレハ此通リ證據物ガ御座イマスト云フ二人ガ爭ハントキ證據物ニ添ヘテ疏明スルトキ裁判官ハ誰某ノ息子ダカラ相續權ガアルト云ヘバ良シ若シ貴樣ソウハ言フガ貴樣ハ誰ノ息子ト思フガト言フト、ソレデハ證人ヲ呼ンデ臭レ產婆ヲ呼ンデ呉レト云フトキハ證據ニナルノデス
(松岡)
裁判官ガ一人デ言フノデハナイ
(栗塚)
彼ノ男ニ權利ハナイト云フト證人吟味ヲ願フノデアリマス
(淸岡)
訴訟人ハ證據ヲ以テ行クノデハナイ只誰某ノ息子デ御座ルト云フノガ疏明ダ
(栗塚)
持ツ持タンハ構ハン何番地ノ者デ御座ルト云テ相手ガソウデハナイト云フト一ツ爭フテ出ルノハ證據デ御座イマス爭ハントキハ私ニ權利ガ御座イマスト云フ說キ明シスルノガ疏明ト云テ居リマス
(村田)
訴訟法ノ四百十四條ニモアリマスネ
(松岡)
相手方ト權利義務ノ爭ヒヲスルノデハナイ
(村田)
防訴抗辯デ行クノダロウカラ矢張權利ニ係ル
(松岡)
ソコ等ガ違フ
(栗塚)
此間カラ伺テ居ルノデスガドウモ同ジコトデアロウトシカ思ハン、相手方ガ爭ハズ其儘通セバ立派ニ證據立タト同ジニナル
(松岡)
ソコハ立方ガ違テ居ル樣ニ思フ、獨逸ノ訴訟法ニアルノハ相手方ガ承知スレバソレデ宜シイ、承知シナケレバ疏明デナクシテ疏明ト云フノハ一ト通リ裁判所ヘ持テ來テ相手方ニ關係セズシテ私ガ此怠タノハ斯樣ナコトデ御座イマスト一ト通リ云ヘバ良シイノデソレヲ相手方ト權利義務ノ區別ガアレバ證明トナケレバナラン疏明ト云フノハ相手方ト出合タトキデハナイラシイ
(栗塚)
疏明ハ廣ク證明ハ狹イト云テ宜シイ、今村ハ現在疏明ト云フノハ止メテ仕舞タソレデモ通レル位ヒデアリマス
(松岡)
訴訟法デ疏明ト證明ト書分ケタトキトハ違フデシヨウ
(箕作)
私ハ證明デモ一向差支ナイト思ヒマス
(松岡)
訴訟法ノ上デ相手方ノ權利ヲ失フノハ只疏明トハ使テナイヨウデ御座イマス
(淸岡)
證明ニシテ置キマシヨウ
(栗塚)
此所ハ只證スルトキハデ良シイ
(大尾崎)
證スル、カ
(元尾崎)
疏明デ良シイ
(南部)
其區別ハ皆揃ハンデハ往カン
(栗塚)
一體訴訟法デ疏明ト云フノガ入用デ御座イマスカ
(南部)
入用ニハ違ヒナイ
(箕作)
民法ニハ訴訟法ノコトハ姑ク置キ疏明證明ノ區別ハ云ヘン何時デモ相手方ガ愚圖々々言ヘバ證スルノデシヨウ
(栗塚)
登記ノトキ登記官吏ニ向テ自分ノ權利アルコトヲ言フノハ證スルヨリハ疏明スルデアリマス
(箕作)
ソウ云フ場合ハ姑ク置キ外ハ證スルデ良シイダロウ
(松岡)
今ノ場合ハソレデ良シイ向ウノ權利ヲ失フニハソレデハ往カン
(大尾崎)
疏明ト云フノハ全體言分ケヲスルト云フノデドウモ取分ケガシ憎イ
(北畠)
ソレハ口デ言フコトダ
(槇村)
證スト云フハ、否斯ウ云フコトガアリマスト云フノデス
(箕作)
「證明」ヲ刪テ「抗辯ヲ有シタルトキ」トシテモ良シイ
(村田)
ソレナラ良シイ
(南部)
證スル、トシテ置キマシヨウ
(松岡)
良カロウ
(村田)
排訴抗辯ト云フノハナイゼ
(松岡)
一定ニシテ良シイ
(南部)
調ベテ下サイ
(栗塚)
ハイ、抗辯ハ皆抗辯デアリマス
(松岡)
民法ノ排訴抗辯ト云フノハ主タル自分ガ本訴スルノデナクシテ被苦人ノ置位ニ立テ戰フトキト云フ廣フナツテ居ル訴訟法ノ防訴抗辯ハ種類ガ定テ置テ本案ノ前ニ是丈ケノモノト云フノデス
(栗塚)
延期抗辯排訴抗辯モ皆抗辯ハ防訴抗辯デアリマス
(松岡)
排訴抗辯ト云フノハ訴訟法ニハアリマセン
(箕作)
ソレハ元トガ違フカラ斯ウナルノデアリマス
(松岡)
之ハドウシテモ訴訟法ト折合ハナケレバナラン
(槇村)
前ニ訴訟法ニ照會スルトアル
(栗塚)
今度ノ訴訟法ニモ排訴抗辯ト延期抗辯トガアルト云フコトデス
(南部)
排訴抗辯ト云フ字ハナイ
(栗塚)
本案ヲ打毀ハシテ係ルヲ抗辯ト云ヒソレカラアレハ幼年者ダカラ訴訟ヲ受ケル譯ケハナイト云フノト何レ二十一歳ニナツタラ御答申シマシヨウト云フコトガ言ヘルト云フノデス
(松岡)
斯ウ云フ場合ニ排訴抗辯ト云フノガ訴訟法デ何處ニ當ルカ安心出來マセン何レ突合セモノダ
(村田)
延期抗辯モナイネ
(箕作)
事柄ハ訴訟法ニナケレバナラン
(栗塚)
ナケレバナラン
(南部)
後デ調ベテ貰ハウ
(松岡)
訴訟法デハ權利ニ關係スルカラ兩方揃ヘナケレバナラン之ハ訴訟法ノ方ヘ民法ノ方カラ送リ込ンダコトガアルガ送リ込ンダ丈ケデハ治リガ付カン
(栗塚)
民法デ斯ウ云フコトガアルト云ヘバ向ウデヤツテ貰ハナケレバナラン一日二日出會テモ纏マルモノデハナイカラ民法ヲ實施スル考ヘデヤツテ貰ハンデハ話ガ付カン矢張リ民法ヲ行フ考ヘデ訴訟法ヲ作テ呉ン以上ハ困リマス
(委員長)
協議ノ仕方モ今一應話スガドウモ纏リ兼ルネ民法ノ方モ矢張纏マラン鐵鉋玉デ言放デ向ウデモ何トモ言ハンカラ困ルネ
(栗塚)
例ヘバ證明ヲ疏明トアツタガ何方カ一定シヨウト云フ協議デアリマス
(委員長)
定マル迄ハ何方ニナロウトモ民法訴訟法ト何方カラ言テモ定メナイト民法カラ向ヘ言放シテ向ウデモ權ハント定マラン
(栗塚)
御尤モデ御座イマスガ排訴抗辯ト云フ字ガ往ケントキハ向ウデ大槪言テ呉レナケレバナラン大槪皆着々民法ヲ實施スルノデ置イテ呉レルト思テ居タ處ガ近頃變ハツテ來タガ民法ヲ實施スルヨウナ訴訟法デナイト云フコトデ寔ニ困テ居ルノデス併シナガラ此所デ以テ訴訟法ヲドウトカシテモ氣ノ毒デアリマス民法ノ初メカラ怠ラズヤツテ居テモ知ラン人モアル又知リヨウモ御座イマセン向ウモ鬪ケシイヲ知テ居ルカラ、強イテ訴訟法ニ問ヒ合ルノデハナイ氣ノ毒ダガ去リトテ協議シテ民法中排訴抗辯延期抗辯或ハ滌除方法仲裁ト云フモノガアルソレハ一ツ作ルニドウシテ斯ウシテトマデハ迚モ手ヲ出シ切レナイ
(委員長)
作り方ハ向ウデヤルガ大變大キナ場合ハ報吿委員同士ニモ往クマイガ文字ノ如キハ協議ノ出來ンコトモアリマスマイ
(栗塚)
排訴抗辯延期抗辯ト云フ字ハドウナツテ居リマスカ問ヒマシヨウ
(村田)
ドウモナイヨウデス
(南部)
協議シテ見ナイト實ハ分ランノデス
(村田)
民法デ斯ウ云フ訴訟法デ斯ウ云フト云フハ困ルネ
(淸岡)
ソンナコトヲ言テモ仕方ガナイ先ヘヤリマシヨウ
(委員長)
排訴抗辯防訴抗辯トカ云フコトハ打合ハセルコトニシヨウ
(槇村)
先ヘヤリマシヨウ
(箕作)
「解怠ノ」ハ「懈怠ナル」デシヨウ
(栗塚)
左樣デス
本條ハ「證明スル」ヲ「證スル」ト改メ「解怠ノ」ハ「解怠ナル」ト改メ其他原案ニ決シ「排訴抗辯」ハ訴訟法ト協議ノ上一致スルコトニス
第千三十三條朗讀ス
第千三十三條 保證人ハ有効ニ辨濟シタルモ債務者ニ有益ニ其旨ヲ通知スルコトヲ怠リ爲メニ債務者カ善意ニテ再ヒ辨濟シ其他有償名義ニテ自己ノ免責ヲ得タルトキモ亦其求償權ヲ失フ右ニ反シテ債務者カ自ラ債務ヲ消滅セシメタルコトヲ保證人ニ通知スルコトヲ怠リタルトキハ債務者ハ場合ニ從ヒ其債務ノ消滅後保證人ノ爲シタル辨濟ニ付キ責任アリトノ宣吿ヲ受クルコト有リ
孰レノ場合ニ於テモ利害ノ關係アル當事者ハ受取ルコトヲ得サルモノヲ受取リタル債權者ニ對シテ求償權ヲ有ス
(松岡)
善意デアツタラ、善ナラント、云フ譯ニハナランカ
(南部)
絕對デハナイ
(松岡)
善意ナラ無論ダロウ
(南部)
併シ義務者ハ保證人ガ來レバ辨濟セラルルコトハ代位ニナルカラト云フノデ義務者ガ主ダネ
(松岡)
責任アリテハ是々ノ場合ニ從ヒト上ニアレバ、責任アリト云フハ、ト宣吿ヲ受クルコト有リ、ト云フハ些ト丁寧過ギル
(渡)
責任アリト云フ意味ダロウ
(元尾崎)
之ハ良シイデハナイカ場合ニ從テ責任アルガ有ルト云ハンデモ良シイ、アルコトモアリ無イコトモアルト云フノダカラ良シイ
(渡)
場合ニ從テト云フハアリデ良シイ
(村田)
良イヨウデス
(箕作)
註解ヲ見ルト宣吿ト云フ字ハ裁判所ノ宣言デ事實ニ依テ責任ノ有ル無イヲ權利ニ任カセルト云フノデアリマスネ
(大尾崎)
良シイ
(村田)
免責ヲ得タルトキモ云々ハ元ト保證人ハ又求償權ヲ失フ、トアリマス
(栗塚)
元トハ保證人ガトアツタカラダガドウモ格別文章ガ長クナイカラ良イト云フノデス
(南部)
場合ニ從ヒ何々スルコトヲ得ト云フ文例ガアリマス
(北畠)
丁寧過ギルト云フ迄ダネ
(松岡)
元トハ宣吿セラルルコトヲ得ト云フノデス
(村田)
同ジコトダ
本條ハ原案ニ決ス
第千三十四條朗讀ス
第千三十四條 委任ヲ受ケテ義務ヲ負擔シタル保證人ハ辨濟ヲ爲ス前又訴追ヲ受クル前ニテモ債務者ヨリ豫メ賠償ヲ受クル爲メ又ハ未定ノ損失ヲ擔保セシムル爲メ左ノ三箇ノ場合ニ於テ之ニ對シ訴ヲ爲スコトヲ得
第一 債務者カ破產シ又ハ無資力ト爲リ且債權者カ淸算ノ配當ニ加入セサルトキ
第二 債務ノ滿期ノ到リタルトキ
第三 滿期ノ不定ナル債務カ其日附ヨリ十ケ年ヲ過キタルトキ
(松岡)
無資力ト云フハ民事上破產ト云フコトデスネ
(栗塚)
左樣デス
(松岡)
之ハ特ニ仕方ヲ書クノカ民法ニハ書カンノダロウ
(栗塚)
民法ニハ御座イマセン
(松岡)
ドコヘ定メルカ
(栗塚)
何レ破產法ト云フモノガ出來ルデシヨウ
(松岡)
之ハ委員長ドウ云フ御考ヘカ無資力ト云フト商事ノ破產民事者ノ無資力ト同ジ意味デ御座イマス後ノ方モ精算ト云フモノヲ立テ所謂財團ヲ拵イテ分配スルノデアリマスガ無資力ト云フモノハ民法デハ民事上無資力商事上破產ノ如キヲ拵ユルニナルト訴訟法ノ中ニ書込ハ別段民事上無資力ノ手續ト云フモノヲ拵イナケレバナラン
(委員長)
ソレハ何ゾナケレバナラン
(栗塚)
破產ハ商人丈ケト云フニハ定マランノデス
(松岡)
商法ニ書イテアリマス
(箕作)
尤モ商人ト云フノデス
(栗塚)
起案者ノ意ヲ聞イタコトモアリマスガ破產ト云フ字ヲ書イテモ日本デハ破產ハ商人丈ケニナルト云フナラ商人デナイ者ハ無資力ト云ハナケレバナラン
(松岡)
商事ニ關係セズ純粋ノ民事デスルト無資力ト云フノデシヨウ
(栗塚)
無資力ト云フハ殊ニ依ルト破產法ト云フカモ知レン
(委員長)
破產法ハ當テ嵌マランサニ無資力ト云ハナケレバナラン差押ヘテ自分ノ財產ヲ自分デ動カスコトハナラン其手續ヲ訴訟法ニ書クハ必要デアリマシヨウ
(松岡)
破產ハ商事ニ止マル民事ハ皆無資力ト云フナラ通ロウガ無資力ト云フノハ並ベテ書クト破產ト云フモノ商事上ノコト無資力ト云フノハ民事上ノコトト分ケナケレバナラン分ケルト、無資力ト云フコトニスルカ債權者精算云々、ト精算スルハ配當スルカ精算配當抔見ルト分散上ノ手續ト見ヘル、スルト同ジヨウナモノヲ名ヲ替ヘテ民事上ノ無資力、商事上破產ト名付ケテ同ジ手續ヲ用ユルノカ
(栗塚)
違ヒマス、破產トナレバ既往ニ遡テ効ヲ生ジ破產宣吿ヲ受ケタモノハ公權ノ効能ヲ失フトカ云フ結果ガアル民法ニハソレガナイノデ御座イマス
(松岡)
精算配當ハドウ云フ精神デ居ルノカ矢張破產ノヨウニ公吿シテ權利アルモノハ申立ルカ
(栗塚)
左樣デス只原因結果ガ違フノデ手續ハ同ジデアリマス
(松岡)
スルト押ヘラレヌ人間カラ云フト直グ無資力ノ處分シナケレバナランカ
(栗塚)
左樣デス
(松岡)
暇令バ今私ガ財產ヲ民事上デ貴君ガ債權者デ差押ヘナスツタ其トキハ御尤モデ御座イマス去リナガラ幾千モ借リガアルカラ無資力ノ處分ヲ受ケ度御座イマスト云フ時分ニハ裁判所モ其コトヲ言立テハ聽カザルヲ得ンノカ
(栗塚)
ソレハドンナモノカ誰カラ無資力ト申立ルカバ法律デ定メラレン恰モ破產ハ誰カラ言出スコトガ出來ルカ檢察官其他債權者ト云フノデ誰カラー甲立ルコトガ出來ルカバ定方ニ從テ、民法ハ債權者ガ差押ヘテ金ノナイトキハ精算ノ配當ニナル精算スルゾヨト見テ居ルノデアリマス
(松岡)
差押テ無資力トナツタラ公吿シナケレバナランカ
(栗塚)
詰リ破產ト云フモノハ、法律ガ商人ニモ非商人ニモ當嵌マルナラ無資力ト云フコトヲ毀ハシテ仕舞、破產ハ商人ノミト云フカラ無資力ト云フモノヲ置イタノデアリマス
(松岡)
併シナガラ當嵌メナイト云テ無資力ヲ當テ嵌メヨウトスルト無資力ハ殆ンド破產ノ仕方ト同ジデ名ガ違テ同ジモノヲ適用スル丈ケデス
(栗塚)
原因結果ガ違フノデス
(松岡)
皆サン、無資力ト云フモノハ凡ソ破產ト見合タモノガ出來ルトスルソレハ良シイカ
(元尾崎)
民法ニハ無資力ニナル手續ハナイノカ
(松岡)
ナイ
(箕作)
佛蘭西ノヨウニ差支ガアル丈ケデ差押ヲシタラ屹度無資力ト定マツタモノデハナイソレカラ裁判所デソウト思ヘバ宣吿シテ商法ノ破產法見タイニ債權者ニ通知スルト云フノデスネ
(栗塚)
左樣デス
(松岡)
スルト無資力ト云フノハ起案者ノ一旦ノコトデアリマスガ精算ニ加ハルノ配當ニ加ハルノト謂テ見ルト公吿シ幾ンド財產ノ分散手續ヲ用イナケレバナランヨウニナル
(箕作)
佛デモソウデシヨウ
(松岡)
ソウスルト執行上ニ關係ヲ持テ差押タ時分ニ當人カラ無資力ノ言立ガ出來ルモノカ、當人カラハ言ヘナイ外ノ者ガ言ハナケレバナラント云フ定メ方デ訴訟法ノ強制執行ハ直シカケテモ當ニナラン
(箕作)
無資力ノ定メ方ハ何所カニナケレバナラン
(元尾崎)
千一條ノ所デ定メル積リデアロウ
(栗塚)
左樣デス
(松岡)
ソレハ曖昧ノ話デ佛蘭西法デ云フト動產ノ差押ニハ公吿セズ聞イテ出テ來タ者ハ分配スルトナツタスルト精算配當ハ何所カラ起ルカ、此無資カト云フモノハ民法上ニ用ユルト凡ソ此名稱ヲ早ク定メナイト訴訟法ハドノヨウニ急イデモ治マリガ付カン
(大尾崎)
配當ハ債務者ノ財產ヲ債權者ノ抵當物トナツテト云フ手續ダネ其手續ハ別ニ拵ヘナケレバナラン
(南部)
廢業スルト言タラ卽チ無資力デアリマス
(松岡)
財產ヲ假令バ動產不動產ヲ幾分カ押ヘラルル其時分無資力ノ言立ガ出來ルカ
(南部)
ソレハ出來ン
(村田)
分散スルヨウニナレバ無資力ダロウ
(南部)
併シ殘タ財產ガアレバ無資力デハナイ
(元尾崎)
千一條ノ二項デ文字ハ訴訟法デ定ムルトナツテ居ルカラ卽チ民法ニ依ルトナツテ居ルカラアレデ定マランカ
(松岡)
ソレハ往カン無資力精算配當スレバドウ云フコトニナルカ
(元尾崎)
強制執行デ定メルヨリ外ハアリマスマイ
(松岡)
民法ノ主義ガ定マランデハ往カン
(元尾崎)
主義ハ千一條ノ通リデス
(粟塚)
起案者ノ旨意ハ破產無資力トナツタ場合トソレカラ家資分散ノ場合ト區別ガアル、破產無資力トナツタ場合ハドウカナレバ則チ無資力トナツタ義務者ノ分散ノ高ガ明カニ財產ノ高ヲ超過シテ居ル場合無資力ノ場合ト云フ其ニハ財產ノ特別差押ヲ止メテ宜シイ權利者ガ別々ニ訴訟スルヲ止メテ裁判上總計算ヲ用ユル積リト併シナガラ家資分散ハ自カラ辨濟ヲ止メタ場合、起案者ハ手續ハ破產ト同ジコトニスル積リト云フノデ御座イマス
(松岡)
例ヘバ私シガ不動產ガアル不動產丈ケ差押ヲ一人カラ受ケタトキ私ハ借リ方ガ幾等不動產ガ幾等カ對照シテ借リ方ガ多イト御前サンハ差押ヘテモ御前サンノ命ニハ從ハンカラ無資力ノ處分ニ從フヨリ仕方ガ無イト云フヨリ外ハ無イ
(栗塚)
貸方ハ借リ方ヲ越ヘテ居ルト併シナガラ千圓ノ處ヘ百圓差押ヘルコトモ出來マス
(松岡)
スルト貸方借方ヲ併セテ借リ方ノ多イ時分ニハ押ヘタコトガ無効ニ成ラズシテ無資力ノ處分ヲ受ケマスカ
(栗塚)
左樣デス
(箕作)
訴訟法ニ規定ガ無ケレバ分リマセン民法ハ之デ宜シイガ民法ノ主義ニ因テ訴訟法ニ規定ガ無イト往ケマセン
(栗塚)
其レハ差押ヘノ方ニ拵ヘルト宜イ
(箕作)
今ノ佛蘭西ノ樣ナ意味デハ如何ダロウ
(栗塚)
共分配當順序配當サヘアレバ出來ルノデアリマス其ハ之ヲ作ツタ人ガ之デ往クト云ツテ居ル第二第三ノ場合ニハ第二ノ場合ハ無資力第三ノ場合ハ破產其場合ハ義務者ガ管理スルヲ止メラレタ場合ダカラ差押ヲ要セズ
(南部)
差押ノ外ニハ無イト思ヒマス
(村田)
分配手續ト云フノガ訴訟法ノ六百六條ニアリマス
(松岡)
訴訟法ノ分配手續ハマルデ違ツテ居リマス
(村田)
動產計リデアリマス卽チ分ツニ足リン場合ニヤルノデシヨウ
(南部)
平等ニスルコトハアリマセン
(松岡)
言ヒ詰ルト此流義デ往クト民事上今日ノ身代限ハ矢張リ繼續シナケレバナラン姿ニナル借リ方ガ多イカラ身代限ノ處分ヲ受ケルト云フノモ無資力ノ處分ヲ受ケルト云フノモ同ジコトニナルト云フノデアリマス
(栗塚)
今日ノ身代限ト云フノト日本デ出來ル差押法トドノ位ノ差ガアリマスカ存ジマセンガ差押法如何ニ在ルノデアリマス
(松岡)
此ノ無資力ト云フモノノ意ヲ推量シテ見ルト今訴訟ニ差シ掛ツテ居ル差押ハ益ニ立タン
(栗塚)
今日ノ身代限ト同ジカハ知レマセンガ差押カラ特權ガ出ルノト出ンノトハ大變ナ違イデアリマセン今日ノ身代限ト云フモノト之カラ差押ヲ作ツテ出タ無資力ト云フノハ有樣ハ同ジ乎否ヤハ存ジマセンガ其ハ差押法ガ出來テ居リマセンカラデアリマス
(松岡)
民事ノ無資力ト商事ノ破產ト同ジナレバ商事ノ破產ヲ持ツテ來タラ支拂留メナレバ當人モ債權者モ言ヘル民事上ヘ持ツテ來レバ或ハ負債ガ多イカラ御前サンガ押ヘテモ外ノ人ヘモト云フノデ公吿ヲ致シマスルカ
(南部)
私ガ考フルニハ卽チ差押タモノガ五人アル五人ノ分デ財產ガ盡キテ仕舞フトナルト三人ナリ五人ナリノ間ニ分配ヲシテ仕舞フ、スルト無資力ニナツテ仕舞フ其ヲ指シテ無資力ト云ツタモノト見解ヲ下シテ居ル詰リ私ノ見解ニ依レバ差押ノ結果無資力ト卽チ財產ヲ盡シタガ無資力デアリマス
(松岡)
後チノ債權者ニナルノカ一遍受ケテ取ラレテ仕舞ツタ後チカ
(村田)
優先權ノアルノハ別デアリマス優先權ノ無イ場合ニソウ云フ風ニ分ツト云フノデアリマス
(松岡)
之ハ大問題デアリマス訴訟法ニ定メルニモ凡ソ之ニ定メハセンケレバナリマセン
(栗塚)
先取特權ヲ差押ガ生ゼシメンハ恰モ無資力ヲ置クト云フノデ丁度其道理デアリマス一方デ先取特權ヲ置クト云ヘバ無資力ヲ置クト云フノデアリマス
(松岡)
無資力ノ仕方ニ凡ソ大則ヲ定メネバ訴訟法ニ手ノ付ケ樣ガ無イ其事ハ訴訟法ノ委員ノ方デモ恐ラクハ此通リニシテ彼ノ分散法ニ仕樣ト云フコトハ分ツテ居リマセント思ヒマス
(栗塚)
其ハ分ラ無ケレバナラント思ヒマスノハ無資力ノ場合ハドウ云フ場合カト云フト金ガ足リン、債主一人押ヘテモ往ケン二三人押ヘ誰ガ押ヘルカ詰リ差押タ人ガ直チニ財團ニ掛ツテヤルゾ特權ガアツタラ順序デト云フコトハアレノ裏デアリマス名付ケテ無資力ト云フノデアリマス
(松岡)
理窟ハ大勢集ツテ云フモ詰リドウ云フモノ乎、私ノ財產ヲ貴君ガ裁判ニ勝ツテ押ヘタノデアリマシヨウ
(栗塚)
トコロガ貴君ガ金ガ澤山アレバ私一人デ濟ム他人ハ安心シテ居ルノデス
(松岡)
然ルニ外ノ人ガ弗々出テ來タトキハ如何
(栗塚)
參加シテ見ルト二人三人ト來レバ二三人ニ分ツテ仕舞ヒマス
(松岡)
五人ニ財產ヲ押ヘラレタトキ勿論足リ無イ押ヘタ人ハ百兩ト思ツテ仕タノデ自分ノモノ計リデ人ノモノハ知ラ無イ、スルトドウカ
(南部)
其時ニ足ラ無ケレバ無資力デアリマス
(栗塚)
大勢デ足リ無イトキハ卽チ無資力ニナルンデアリマス
(松岡)
千圓ノ負債ニ一萬圓ノ財產ガアルトキハ
(栗塚)
ソレハ無資力デハ無イ
(委員長)
貴君ノ財產ガアレバ默シテ配分シテ仕舞フノデス
(松岡)
ソウスルト公吿ハシマセンカ
(南部)
公吿ハ致シマセン
(松岡)
分散法ナラバ公吿ヲスルノデ御座イマス
(元尾崎)
商人ノ破產トハ違フ
(栗塚)
一萬園ノ處ハ千圓ノ幾人債權者ガアツテモ差押人ガ幾人アツテモ一萬圓ノ處ヘ千圓ノ金ハ拂ヘ無イカラ無資力ニナルノデ
(委員長)
商事ノ分散トハ其手續ノ全ク同ジデハ無イ無資力トナツタトキハ精算勘定ハスルケレドモ分散處分ヲスルノデ無イカラ其處ハ今方松岡サンノ話シデハ分散處分ト同ジヨウト思ツタ樣ニ聞ヘルガ
(南部)
債權者ヲ呼ビ集メルコトハアリマセン
(委員長)
此所ハ井上報吿委員ニ聞ケバ氣ガ付イテ居ロウ此所デ論ズル程デハ無イカモ知レンドウシテ宜カロウカト言ツテ置イタガ差押ノ時特權ガアツテ佛蘭西流義ニシテ無資力ニナツタ場合ニ規定スル積リト思ツタ
(村田)
分配ト云フコトハドウシテモ出テ來ナイ
(委員長)
此ハ井上ニモ今一遍注意サセマシヨウ
(箕作)
今日ノ議論ノコトヲ委員長カラ仰セラレタラ宜シイデシヨウ
(委員長)
ソレデハ松岡サン、此ハ井上ヘ注意致シマシヨウ
(松岡)
ソウ願ヒマス
本條ハ原案ニ決シ猶ホ「破產、無資力」ハ訴訟法トノ關係ニ依リ井上報吿委員ニ注意スルコト
第千三十五條朗讀ス
第千三十五條 債權者カ完全ノ辨濟ヲ受ケサル間ハ前條及ヒ第千三十條ニ依リ債務者ヨリ豫メ保證人ニ供ス可キ賠償ハ債務者其債權者ニ對スル自己ノ免責ヲ保スル爲メ債權者ノ名ヲ以テ之ヲ供託シ又ハ其他ノ方法ニテ之ヲ留畜スルコトヲ得
(松岡)
「留畜」ハイツモノ留保トハ違マシヨウ
(箕作)
留メ置クコトヲ得デアリマス
(松岡)
留保デハ往カンノデスカ
(南部)
「留存」デハ如何
(箕作)
「留存」ノ方ガ宜イデシヨウ
(栗塚)
「留存」ト致シマシヨウ
(渡)
「留存」デ宜イ
(委員長)
「留存」ト致シマスカ
(元尾崎)
宜シイ
(北畠)
存置スルコトヲ得デハ如何
(栗塚)
存置デモ宜イ
(村田)
保證人ニ遣ル金ヲ債權者ノ名前デ預ケテ置クト云フノデアリマスカ
(栗塚)
左樣
(南部)
留存デ宜シイ先ヘ往キマシヨウ
本條ハ「留畜」ヲ「留存」トシ其他原案ニ決ス
第千三十六條朗讀ス
第千三十六條 主タル債務ヲ辨濟シタル總テノ保證人ハ第千三十二條及ヒ第千三十三條ニ定メタル制限ニ從フニ於テハ己レノ權利ニ基キ有スル訴權ノ外債務者又ハ第三者ニ對シテ債權者ノ有シタル總テノ權利ニ付キ第五百四條第一號ニ從ヒテ代位ス
若シ債權者カ債務者ノ不動產ニ付キ先取特權又ハ抵當權ヲ有シ其記入ヲ爲シタルトキハ保證人ハ代位ヲ目的トシテ自己ノ條件付ノ債權ヲ右記入ノ緣邊ニ附記セシムルコトヲ得又讓渡ノ場合ニ於テハ其不動產ヲ所持スル第三者ハ滌除ノ爲メ債權者ノ外保證人ニ對シテモ亦提供ヲ爲スコトヲ要ス
債權者カ有益ナル時期ニ於テ右ノ記入ヲ爲サヽリシトキハ保證人ハ第五百三十四條及ヒ第千四十五條ニ從ヒ債權者ニ對シテ自己免責ヲ請求スルコトヲ得
(松岡)
「附記セシムル」ト云フノハ債權者ニ對スルノカ
(栗塚)
登記官一吏ヲシテダ
(松岡)
ソンナラ「附記スルコトヲ得」ト改メマシヨウ
(箕作)
ソレデ宜シイ
(松岡)
「自己ノ條件付」ト云フノハ如何
(南部)
債權ガクツツイテ居ルノデアリマス
(箕作)
拂ハントキハ自分ガ取ルト云フノデシヨウ
(南部)
若シ代位スルナラバト云フノデソレデ條件付ト云フノデ未定ノ代位デアリマス
(松岡)
條件付ト云フ字ノ解釋ハ六ケ敷
(元尾崎)
附記スト云フノハ縁邊ニデアリマスカ
(南部)
左樣デス
(松岡)
代位辨濟ヲシタルト云フ、シタ分ヲ云フノデ辨濟シタル保證人ガスルト云フト之ノ通リ書クトドウシテモ豫メ別ノ事ヲ云ハナケレバナラン樣ニナル
(南部)
元トハ自己ノ得ベキ代位ニトアリマス
(松岡)
辨濟スル時デナクシテ契約スルトキ初メニダネ、スルト代位ノ辨濟シタ保證人ガ自己ノ訴權ノ外ニ何々ガ出來ルト云フモドウ云フモノカ
(南部)
附記シテ無ケレバ代位スルト云フコトハ兼テ承知シテ居リマス
(村田)
債務者ガ拂ヘバ宜シイガ拂ハントキハ自己ガ拂フノダカラ實ハ分ツテ居ランノダロウ屹度代位スルト分ツテハ居ランノデアリマシヨウ
(松岡)
辨濟シタル保證人ト云フガ此條ノ起リデ保證契約スル時分自己ノ權利ヲ保護スル爲メ斯ウ云フコトガ出來ルト云フノデ無クシテ書キ所ガ惡イノデ註ガ無イト分ラン此三十六條ハ債務ヲ辨濟シタル總テノ保證人ト云フハ辨濟シタルハ陰デシタ人ガ訴訟ヲ得ラルルト云ツテ若シ債權者ガ云々附記スルコトヲ得ト云フノハ契約ヲスル保證人ガ保證人ヲドウト云フ初メニ他日ヲ慮ツテスルコトガ出來ルノデシヨウ
(箕作)
左樣デス
(松岡)
之ハ餘程分リ惡イ既ニ辨濟シタ人ハ訴權ヲ得ラルルト云フ之デ見ルト保證人ト爲ルモノ契約ノ時分斯ウ云フコトモ出來ルト示スナラ宜シイガ辨濟シタル保證人ガドウト訴權ノ有ル爲シヲ書イテ見ルト分リ惡イ
(元尾崎)
別條ニシテ宜シイ
(箕作)
代位ノコトヲ一トツニ入レタノデアリマス
(南部)
代位ヲ目的トシテ條件付ト云ツテ居リマス
(元尾崎)
ナゼ二ケ條ニシナイカ違ツタモノヲ一所ニシテ居テハ實ニ分ラン
(栗塚)
二ケ條ニスルハ宜シイ此事ハ松岡サンノ云フ處ガ明瞭カハ知ランガ私等ハ分ツテ居ル樣デ御座イマス
(南部)
目的ト云フノガアルカラ分リマス
(箕作)
起案者ハ自己ノ條件付ト目的ト云フ字ガアルノデ前項ト五項ト合セル積リデシヨウ
(松岡)
私ナゾハドウモ本文ノ文章ハ頭カラ書イテ來レバ順ニ來ルガ普通デ、辨濟シタ保證人ハ斯ウ云フ訴權ガアル辨濟スルトキ斯ウ云フコトヲシテ置ケルト云フノガ順デアル何々契約ヲ結ブ場合ヲ書クノダカラ本文計リ讀ンデハ分リ惡イ、場合モ惡ルシ書キ樣ガ惡ルクハ無イカ
(栗塚)
之ハ五百五、六條マデ彼ノ訴權デ代位スル彼レノ說キ明シニ入レタノデ代位スルト云フノハ縁邊附記シナケレバナラント云フコトデ彼レカラ來タノデ御座イマス
(箕作)
之ハ二項ガアリマシタガ刪リマシタカ
(栗塚)
刪リマシタ總テノ保證人トシテ見ルト入ランノデアリマス
(村田)
二項ニシテ良クハ御座イマセンカ
(松岡)
ドウモ疑グリハ出來マス
(委員長)
代位ノコトヲ約メテ書イタト思ヘバ分ランコトハ無イ
(南部)
自己ノ得ベキ丈ケハ分ランケレバ入ンデモ宜シイ
(栗塚)
自己ガ呼バレタ代位ハドウト云フノデ御座イマス
(箕作)
ソレニマデ彼レガ呼バレテアルトアルノデアリマス
(栗塚)
拂ツタラ代位スルダロウ其代位ヲ着服シテダ
(村田)
自己ノ得ベキ時分代位ヲ得ラレタラバト云フノデシヨウ
(松岡)
辨濟シタ人ハ代位ガ出來ルト初メ云ツテ若シ云々ト上カラ承ケテ來テ辨濟シタ場合デ無イ契約スル場合ニスルト云フノハドウカ
(元尾崎)
之ハ二條ニスレバ宜シイノデアリマス
(松岡)
五百四、五條カラ代位ト云フガ左ノモノノ利益ニ於テ當然ナル第一先取特權又ハ抵當云々ト之ガアルニ五百四條ノ一ニ其事ノ說明ヲ此處ヘ持テ來タナラバ飛ビ過ルト思ヒマス
(栗塚)
アレガ爲メニ加ヘタノデアリマス
(松岡)
起案者ニ言ツテアノ邊ヘ配リ付ケルカ此處デ條デモ分ケテ貰フ樣ニシタイ
(南部)
向フニアツテモ矢張リ同ジデス
(箕作)
記入ナシタルトキ未ダ弊濟セザル債務ハトヤツテハドウカ
(村田)
目的トシテトアルカラ分リマス
(元尾崎)
辨濟シテナイモノハ分リ切ツテ居ル辨濟シタモノハコンナモノハナイ
(箕作)
ソウ分ツテ居ルナラバ宜シイ
(槇村)
之ハ皆ナ代位ノコトヲ云ツタノデアリマシヨウ
(箕作)
其通リデアリマス
(松岡)
代位セラルルト云ヒナガラ斯ウシテ置ケバ代位ヲ得ラルルト云ヘバ疑ヒハナイ辨濟シタ依テ保證人ハ何々若シ云々ト云フカラ隨分分リ惡イデハナイカ
(栗塚)
一體ノ事柄ガ六ケ敷ノデアリマス
(村田)
保證人ハ豫メトデモ入レルカ
(南部)
後トカラ目的トスルコトハアリマスマイ
(栗塚)
保證人ハ辨濟スル前代位ヲ目的トシテ自己ノ條件付トシテハ如何
(元尾崎)
書ヌ方ガ宜シイ
(松岡)
起案者二條ヲ別ニシテ分ル樣ニシテ貰ヒタイ
(村田)
條ヲ別ニシテ宜シイ
(松岡)
條件付ト云フ字ハナクテモ宜シイ位ノ御說モアリマシタガ註ノ意味ニハ條件付ト云フノカ
(栗塚)
保證人ハ代位ヲ目的トシテデアリマス
(委員長)
代位ノ前後ノ區別ヲ一條別ニシテモ均シク代位ノコトヲ明カニスル丈ケダカラ宜カロウデハナイカ
(淸岡)
宜カロウ分ランコトハナイ
(元尾崎)
條件付權利ヲ書入レヲ置クト云フノデアリマス
(松岡)
少數ナラ致シ方ガナイ
(委員長)
多少貴君ノ仰セラルル樣ナ處モアリマスガ分ランコトハナイカラ枉ゲテ置キナスツテ下サイ
(松岡)
宜シイ
本條ハ第二項「若シ」ヲ刪リ「右」ヲ「此」ト改メ「附記セシムルコトヲ得」ヲ「附記スルコトヲ得」ト改メ其他原案ニ決ス
第千三十七條朗讀ス
第千三十七條 連帶又ハ不可分ナル義務ノ數人ノ債務者アルトキハ保證人ハ其中或ル者ヲ保證シ他ノ者ヲ保證セサルトキト雖モ右ノ代位ニ依リ債務者ノ各自ニ對シ全部ニ付キ求償スルコトヲ得
(村田)
之ハ宜シイ
(元尾崎)
之ハ仕樣ガアリマスマイ之ハ賭博ダ例ヘバ二人ノ借リ主ガ居ツテ中一人保證シテ居ルト處ガ保證シナイ方ノ奴ガ金ヲ例ヘバ半分拂ツテ仕舞フ後トノ半分丈ケハ保證人ガ辨濟シタ場合ハアツテ半分ヲ保證シタ丈ケ二人ニ掛ツテ往ケマスカ
(南部)
往ケマス連帶シテ居ルカラ誰レノ分ハ半分ト云フ譯ニハ往キマセン當然ソウナリマス二人ニ掛ツテ千圓ノ負債ニ一方ガ五百圓拂ツテモ義務ハ免カレナイ
(箕作)
連帶不可分ノ性質デ仕方ガナイ
本條ハ原案ニ決ス
第千三十八條朗讀ス
第三款 共同保證人間ノ保證ノ効力
第千三十八條 一箇ノ債務ニ付キ數人ノ保證人アリテ其中ノ一人カ任意ナルト否トヲ問ハス債務ノ全部ヲ辨濟シタルトキハ其保證人ハ主タル債務者ニ對スル求償ニ關シ上ニ記載シタル條件、制限及ヒ區別ニ從ヒ或ハ事務管理ノ訴權ニ因リ或ハ債權者ノ訴權ニ因リ他ノ保證人ノ各自ニ對シ均一部分ニ付キ求償スルコトヲ得
右ノ保證人カ債務ノ全部ヲ辨濟セスシテ自己ノ部分ヨリ多ク辨濟シタルトキハ其超過額ノ爲メノ求償ハ他ノ共同保證人ノ間ニ均一ニ分クル
(元尾崎)
均一部分ニ付キト云フト平等ニ割ツタ後チ一人々々請求スルノデスネ
(栗塚)
左樣デス
(元尾崎)
之ハ連帶シテ請求ハ出來ンノダ
(村田)
左樣連帶デハ往カンノデアリマス
(栗塚)
均一ニ之ヲ分ツデモ宜シイ
(松岡)
ソウ云ツタ方ガ宜シイ
(元尾崎)
之ハ宜シイ
(槇村)
宜シイ
本條ハ「均一ニ分タル」ヲ「均一ニ之ヲ分ツ」ト改メ其他原案ニ決ス
第千三十九條朗讀ス
第千三十九條 共同保證人中ニ無資力者アルトキハ辨濟シタル者ハ其無資力者ノ引受人ニ對シテ求償權ヲ有ス若シ引受人アラサルトキハ無資力者ノ部分ハ債務ヲ辨濟シタル者ヲ加ヘ他ノ有資力ナル共同保證人ノ間ニ於テ之ヲ分配ス
(槇村)
之モ分ツテ居リマス
(南部)
「於テ之ヲ分配ス」ハ分ラン
(栗塚)
左樣
(松岡)
分ラン
(栗塚)
「於テ」ハ刪リマス
(委員長)
前ノ分ツモ、分配モ同ジダ
(元尾崎)
之モ分ツトシヨウ
(栗塚)
「之ヲ分ツ」ト致シマス
(松岡)
宜シイ
本條ハ「於テ之ヲ分配ス」ヲ「之ヲ分ツ」ト改メ其他原案ニ決ス
第千四十條朗讀ス
第千四十條 前條ニ依リ訴ヲ受ケタル共同保證人ハ未タ主タル債務者ノ財產ノ檢索アラサルトキハ第千二十條以下ニ定メタル規則及ヒ條件ニ從ヒ豫メ主タル債務者ノ財產ノ檢索ヲ請求スルコトヲ得
右同一ノ權利ハ保證人ノ引受人ニモ屬ス
(大尾崎)
之ハ宜シイ
(村田)
能ク分ツテ居ル
(松岡)
保證人同士ノ戰ヒニナツテ來ルノデスネ
(栗塚)
左樣デス
(渡)
宜シイ
(淸岡)
引受人ト云フコトハ昨日刪リマシタガ之ハ殘シテ置キマス
(箕作)
アレトハ違イマス
(栗塚)
引受人ハアルノデ御座イマス
(村田)
此處ハナケレバナリマセン
本條ハ原案ニ決ス
第千四十一條朗讀ス
第千四十一條 連帶又ハ不可分ナル債務ノ爲メ義務ヲ負擔シタル數人ノ保證人中全部履行ニ付キ訴ヲ受ケタル者ハ本訴ニ附帶シテ共同保證人ヲ擔保ノ爲メ召喚シ之ニ對シ同一ノ判決ヲ以テ前數條ニ許サレタル言渡ヲ受シムルコトヲ得
(栗塚)
言渡ヲ受ケトアリマス受ケノ字ハ拔ケタノデ御座イマス
(南部)
之ハ宜カロウ
(元尾崎)
宜カロウ
(槇村)
宜シイ
本條ハ「言渡ヲ受ケ」ノ「ケ」ノ一字ヲ誤脫ニ付キ追加其他原案ニ決ス
第千四十二條朗讀ス
第千四十二條 保證人ノ一人ニ對スル時効中斷又ハ付遲滯ノ行爲ハ他ノ保證人ニ對シテ其効ナシ但其義務カ連帶ナルトキハ此限ニ在ラス
債權者ト保證人ノ一人トノ間ニ主タル債務ニ關シ爲サレタル判決、自白、認知及ヒ裁判外ノ宣誓又ハ其拒絕ハ他ノ保證人ヲ利スルコトヲ得然レトモ之ヲ害スルコトヲ得ス
(栗塚)
之レ亦例ニ依ツテ二項ハ此儘ニ願イマス
(箕作)
之ハ前ニハ附帶ノ請求トアリマシタ
(松岡)
此方ガ分ルノデ御座イマス
(元尾崎)
證文ニハ連名シテ居ツテモ共同保證人ハ連帶デナイノデスネ
(村田)
左樣連帶ナラ連帶トノ明示シテヤラナケレバナリマセン
(元尾崎)
今日ノトハ違イマス、良カロウ之ハソウスルト二項ハ未定デスカ
(栗塚)
左樣デス後トデ文字ヲ改メマス
(箕作)
裁判外ノ宣誓丈ケデ後トハ良イノデシヨウ
(栗塚)
左樣デス
(松岡)
「爲サレタル」ハ「アリタル」トヤツタラ宜シイダロウ
(村田)
大槪爲サレタルトアリマス
(栗塚)
之ハ後トデ屹度アリタルニナルデアリマシヨウ
(南部)
序ニアリタルデ宜ケレバ定メテ置キマシヨウ
(粟塚)
アリタルデ宜シイ
(松岡)
其レナラアリタルニシテ置キマシヨウ
(栗塚)
後トデ孰レ書イテ參リマシヨウ
(元尾崎)
其レデハ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ第二項未定其他原案ニ決ス
第千四十三條朗讀ス
第千四十三條 保證人ノ一人又ハ數人カ無資力ト爲リタルトキハ相互ニ連帶シ又ハ債務者ト連帶シタル保證人ノ間ニ第千六十八條第千六十九條及ヒ第千七十條ヲ其各條ニ記載シタル區別ニ從ヒ適用ス
(元尾崎)
保證人ノ一人云々ト云フコトハ債務者ト連帶シタルト云フコトモ共ニ千六十八條ニ適用スルノ乎
(南部)
無資力トナツタトキハデス
(箕作)
全體初メノ書キ出シガ保證人ノ一人ト云フノガ初メカラ代位ノ保證人デハナイ相互二連帶スル保證人カ債務者ト連帶シタ保證人カ其一人ガト云フコトダ
(松岡)
元トノ主タル保證人ト云フコトヲ殘スガ宜シイカ
(元尾崎)
ソウセント分ラン唯ノ共同保證人デモ一人二人無資力ニナレバ連帶スル樣ニ見ヘル
(大尾崎)
ソウ見ヘマス
(松岡)
元トノガ宜シイ
(南部)
同ジコトデス
(淸岡)
間違ハナイ
(箕作)
相互ニ連帶シ又ハ債務者ト連帶シタル云々トスレバ宜シイ
(大尾崎)
ソレガ宜シイ
(元尾崎)
ソウ致シマシヨウ
(松岡)
上ノ一人又ハ數人ト云フコトヲ止メラレナイカ、保證人ガ無資力トナツタラ其連帶シタル保證人ト云フノダロウ
(栗塚)
保證人ノ無資力ニナツタ時デス
(箕作)
抑モ初メカラ連帶シテ居ル保證人カ又ハ債務者ト連帶シタ保證人カ其中一人無資力ニナツタラ大勢ノ保證人ニ何條ヲ適用スルト云フノデアリマス
(松岡)
ダカラ上ノ一人又ハ數人ト云フコトハ入リマセン
(箕作)
ソウデシヨウ
(村田)
直ス程ノコトハナイ
(栗塚)
保證人中無資力者アルトキハトシテ如何
(委員長)
無資力者ガアルトキデハナイ無資力者トナツタモノガアツタトキハト云フノダロウ
(栗塚)
相互ニ連帶シ又ハ債務者ト連帶シタル保證人中無資力トナリタルモノトアルトキハ各保證人ノ間ニ云々ト致シマシヨウ
本條ハ左ノ如ク修正ス
相互ニ連帶シ又ハ債務者ト連帶シタル保證人中無資力ト爲リタル者アルトキハ各保證人ノ間二第千六十八條、第千六十九條及ヒ第千七十條ヲ其各條ニ記載シタル區別ニ從ヒ適用ス
第千四十四條朗讀ス
第三節 保證ノ消滅
第千四十四條 保證ハ義務消滅ノ通常ノ原因ニ由リ直接ニ消滅ス
保證ノ更改、免除、相殺及ヒ混同ハ第五百二十四條、第五百三十三條、第五百四十三條及ヒ第五百六十條ニ於テ之ヲ規定ス
(栗塚)
千四十六條トノ見合セデ御座イマス
(元尾崎)
通常ノ原因ニ由リト云フハドウ云フコトデスカ
(松岡)
更改、混同、アレニ依ツテデス
本條ハ原案ニ決ス
第千四十五條朗讀ス
第千四十五條 債權者ガ故意又ハ懈怠ニテ保證人ノ其代位ニ因リテ取得スルコトヲ得ヘキ擔保ヲ減シ又ハ危クシタルトキハ保證人ハ債權者ニ對シ自己ノ免責ヲ請求スルコトヲ得
總テ保證人ハ區別ナク又保證人ノ引受人ハ保證人ノ權利ニ基キ右ノ權利ヲ援用スルコトヲ得
(松岡)
千三十六條ノ末項ハ此處ト同ジコトニナリハセンカ
(栗塚)
アレデ御座イマス
(南部)
少シ違イマス
(元尾崎)
宜シイ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第千四十六條朗讀ス
第千四十六條 保證ハ主タル義務消滅ノ總テノ原因ニ由リ間接ニ消滅ス
債權者ト主タル債務者トノ間ニ爲シタル代物辨濟、更改、免除、相殺及ヒ混同ノ保證人ニ對スル効力ハ第四百八十二條、第五百二十三條、第五百二十八條、第五百四十三條及ヒ第五百六十條ニ於テ之ヲ規定ス
(松岡)
宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第千四十七條朗讀ス
第四節 法律上及ヒ裁判上ノ保證ニ特別ナル規則
第千四十七條 法律ノ規定又ハ判決ニ從ヒ保證人ヲ立ツルノ責アル者ハ自ラ保證人ヲ立テント約束シタルトキト同一ニシテ第千十五條及ヒ第千十六條ニ定メタル如キ條件ヲ具フル保證人ヲ立ツルコトヲ要ス
法律上及ヒ裁判上ノ保證人ヲ承認スルノ手續ハ民事訴訟法ニ於テ之ヲ規定ス
(松岡)
訴訟法デハ訴訟後ニナツテ訴訟人トアリマスケレドモ訴訟前ニ保證人ノコトハ規定ハアリマセン
(元尾崎)
前ノ法律上規則立テル保證人ト二項ノ法律上裁判上ノ保證人ヲ承認スルト云フノト同ジデスカ
(栗塚)
前ト同ジデアリマス
(松岡)
立ツル義務トシテ宜イノデ
(元尾崎)
訴訟法ニ入レル積リデスカ
(箕作)
入レルデアリマシヨウ
(南部)
通知モシテアリマスガ調ベ中デアリマス
(栗塚)
外國人ガ原吿ニナツタトキ保證人ニナルカ
(松岡)
裁判費用ノコトガアリマス之ハ管財人ナゾノ時ダロウ
(栗塚)
左樣デス
(元尾崎)
今デハ保證人ヲヤツテ居ル樣デス
(委員長)
宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第千四十八條朗讀ス
第千四十八條 裁判所ハ法律カ裁判執行ノ爲メ保證人ヲ立テシムルノ權能ヲ付與シタル場合ニ非サレハ之カ爲メ保證人ヲ立ツ可キコトヲ命スルコトヲ得ス
(元尾崎)
裁判執行ノ爲メ保證人ヲ立テサセルノハ今ヤツテ居ル
(松岡)
ヤツテ居リマス
本條ハ原案ニ決ス
第千四十九條朗讀ス
第千四十九條 裁判上ノ保證人モ其引受人モ財產檢索ノ利益ヲ有スルコトヲ得ス
(元尾崎)
之モ云フマデハナイ宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第千五十條朗讀ス
第千五十條 法律上及ヒ裁判上ノ保證人ハ其債務者ニ對スル擔保ノ求償ニ關シテハ常ニ之ヲ債務者ノ代理人ト看做ス
(南部)
宜シイ
(箕作)
前ノ條ノ「モ」ガ二ツアルカラ裁判上ノ保證人及ビト仕樣デハナイカ
(南部)
宜シイ
(松岡)
宜シイ
(委員長)
宜ケレバ之デ食事ニ致シマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス及ビ前條「保證人」ノ下「モ」ヲ刪リ「及ヒ」ト改ム
(委員長)
遣リマシヨウ
第千五十一條朗讀ス
第二章 債務者間及ヒ債權者間ノ連帶
總則
第千五十一條 義務ノ目的單數ナルモ主タル當事者トシテ之ニ關係スル人複數ナルトキハ其義務ハ第四百五十八條ニ指示シ且下ノ二節ニ說明スル如ク受方又ハ働方ニテ連帶タルコト有リ
(村田)
「單數」ト云フノハ「單一」ノ方ガ良クハナイカ
(栗塚)
再調査デ單數ト違ツテ來タカラ其例ニ從ツタノデ御座イマス
(松岡)
複數ト云フノモ前ノ方ガ宜シイ其レカラ「說明スル如ク」ハドウカ
(村田)
記載スル如クデ宜シイ
(松岡)
其レナラバ宜シイ
(南部)
明示スル如クデ宜カロウ
(栗塚)
記載スル如クデ宜シユウ御座イマシヨウ
(槇村)
宜シイ
(渡)
先ヘ往キマシヨウ
本條ハ「說明」ヲ「記載」ト改メ其他原案ニ決ス
第千五十二條朗讀ス
第一節 債務者間ノ連帶
第一款 債務者間ノ連帶ノ性質及ヒ原因
第千五十二條 債務者間ノ連帶卽チ受方連帶ハ共同債務者ヲシテ其共通ノ利益ニ於テモ又債權者ノ利益ニ於テモ相互ニ代人タラシム
此連帶ハ合意、遺言又ハ法律ノ規定ヨリ生スルコトヲ得
連帶ハ之ヲ推定セス如何ナル場合ニ於テモ明示ニテ之ヲ定ムルコトヲ要ス但不可分ニ關シ第千八十九條ニ記載シタルモノハ此限ニ在ラス
(村田)
三項ノ千九十一條トアツタガ八十九條トシタノハ殊更ラニ直シタノデスカ
(栗塚)
原書ハ千九十一條デアリマス之ハ印刷ノ間違イデ御座イマス、千九十條ニシテ呉レト云ツテ起案者カラ頼ンデ來タ鹽梅デ有リマスカラ御直シヲ願ヒマス
(村田)
千九十條ニモアルコトハアリマス
(栗塚)
九十條デナケレバナリマセン
(松岡)
受ケ方債務ダカラ千九十條デナケレバナラン
(元尾崎)
宜シイ
本條ハ第三項「第千八十九條」トアルハ「第千九十條」ト改メ其他原案ニ決ス
第千五十三條朗讀ス
第千五十三條 數多ノ債務者ノ連帶義務ハ同一ノ行爲ヲ以テ又同時同所ニ於テ之ヲ契約スルコトヲ要セス但其義務ノ目的及ヒ原因ハ同一ナルコトヲ要ス
又連帶債務者ハ別異及ヒ不均一ノ體樣又ハ負擔ヲ以テ責ニ任スルコトヲ得
(元尾崎)
別異ト云フノハ如何
(栗塚)
一人ハ利息ガアリ一人ハ利息ガナシト云フノデ卽チ違ツテ居ルノデ御座イマス
(元尾崎)
異別ノ體樣デアロウ
(栗塚)
體樣ハ條件付ト條件附ナシト云フノデ御座イマス
(松岡)
一方ハ利息付トカ付カントカ條件付トカ付カントカ云フ元ト連帶デモ條件付一方ハソレガナカツタリスルコトダロウ
(南部)
一人ハ有期一人ハ條件付一人ハ利息ガナイ一人ハ利息ガアルト云フノデ御座イマス
(元尾崎)
債權者カラ求メラルルト兩方往クダロウ
(栗塚)
ケレドモ一人ハ往カンノデアリマス
(松岡)
其約束ガ出來ルト云フノダ
(元尾崎)
元利請求シテ來ルト區別ハ役ニ立タン
(松岡)
約定デ役ニ立テルノデス
(元尾崎)
條件付デアツタラ條件付ガ盡キナケレバ請求ハ出來ンノダロウ
(南部)
ソレハ合意ノナイ時ノ話デアリマス
(元尾崎)
内話ノ定メデハアリマセンカ
(栗塚)
只利息ト云フコトノ違イガアル丈ケノコトデアリマス
(元尾崎)
變的ノ約束ガアルノカ
(栗塚)
スルコトヲ得デアリマス
(松岡)
得ルダカラ學術上カラ考ヘルト隨分出來ルト云フノダ實際アルトハ言ツテ居リマセン
(栗塚)
條件ノコトハアリソウデ御座イマス
(松岡)
滅多ニハアリマスマイ
(大尾崎)
宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第千五十四條朗讀ス
第二款 債務者間ノ連帶ノ効力
第千五十四條 數人ノ連帶債務者ヲ有スル債權者ハ其訴追セント擇ミタル債務者ニ對シ唯一人ノ債務者ニ於ケル如且其債務者ヨリ檢索又ハ分別ノ利益ノ抗辯ヲ受クルコト無ク義務全部ノ履行ヲ要求スルコトヲ得
又債權者ハ皆濟ヲ受クルニ至ルマテ同時又ハ順次ニ總債務者ヲ訴追スルコトヲ得
(松岡)
利益ト云フ字ハ止メラレナイカ、利益ト云フハ向ウノ人ガ受ケルヒカラ云フノデス
(淸岡)
檢索抗辯ハオカシイ
(栗塚)
向ウガ持テ居ル、向ケラレヤセント云フノデス
(南部)
利益ヲ對抗セラルルト云フナラ良シイガ之ハ分ラン
(村田)
利益ト云フ字ハアル方ガ良シイ
(南部)
對抗トアルネ、抗辯ト云フ字ハアリマスマイ
(栗塚)
ソレガ抗辯ニナルノデス
(淸岡)
利益ノハアツタ方ガ良シイ
(槇村)
此通リデ良シイ
(大尾崎)
利益ハオカシイデハナイカ
(南部)
元ト檢索ノ利益ト云テ居ルネ
(大尾崎)
決シテ檢索スルコトハナイ、「利益」ノ字ハイラン
(淸岡)
ソウ云フト檢索ノ字モ入ラント思フ連帶債務者ダカラネ
(大尾崎)
檢索又ハ分別ノ抗辯ヲ受クルコト無クト云ヘバ宜シイ利益ト云フト檢索ガスル樣デアリマス
(栗塚)
檢索分別ハ欲シイ
(元尾崎)
アルト疑イガ起ル一人ノ債務者ニ於ケル如ク云々デ宜シイ
(南部)
檢索ノ利益ト前ニアリマス
(淸岡)
利益ト云フノヲ刪レバ檢索ノ分別ヲ取ラナケレバナラン
(元尾崎)
只一人ノ云々如ク義務至部ノ利益ヲ要求スルコトヲ得トシタイ
(南部)
ソレハ如何
(淸岡)
原案
(村田)
原案
(箕作)
原案
(槇村)
私モ原案
(北畠)
私モ原案
(委員長)
ソンナラ原案ニシテ先ヘ往キマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第千五十五條朗讀ス
第千五十五條 各債務者ハ訴ヲ受ケタルト否トヲ問ハス連帶債務全部ノ辨濟ヲ受取ルコトヲ債權者ニ強要スルコトヲ得
(元尾崎)
強要ト云フノハオカシイ
(栗塚)
強ユルコトガ言ヘルト云フノデアリマス
(元尾崎)
先ヅ宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第千五十六條朗讀ス
第千五十六條 連帶債務者ニシテ債務ニ於ケル全部又ハ自己ノ部分ヨリ多額ニ付キ訴ヘラレタル者ハ共同債務者ヲ訴訟ニ召喚スル爲メ必要ナル期間ヲ請求スルコトヲ得
且附帶ノ擔保方法ヲ以テ其債務者ヲシテ答辯又ハ辨濟ヲ分擔セシムル爲メ必要ナル期間ヲ請求スルコトヲ得
共同債務者ハ亦其利益保護ノ爲メ任意ニ自費ヲ以テ訴訟ニ參加スルコトヲ得
(南部)
二項ノ且ト云フ字ハ一項ト繼イテ居ルノデ之ハ別項ニシタノハ間違イデス
(元尾崎)
ソウデシヨウ
(村田)
ソウデナイ今度二ツニ分ケタノデアリマス
(栗塚)
繼イテ居ルノデアリマス之ハ召喚シトアツタノヲスルコトヲ得ト入レタノデアリマス
(村田)
ソンナラ前ノ通リニシテ置イテ宜シイ
(箕作)
請求シ且、デモ宜シイ
(村田)
召喚シ且、デ宜シイ
(元尾崎)
且、デハナイ又、デシヨウ
(栗塚)
此條デ答辯又ハ辨濟ヲ分擔セシムル爲メ、ト云フノハ報吿委員カラ聞キニヤツタ、ノデ分擔スルト云フト誰彼レガ幾ボトナルノカ或ハソウデナク之々デ以テ拂ハナケレバナラント云フ意味ヲ問ヒニヤツテ居ルガ之ハ返答モ來テ居ルガソレガ反譯ニナツテ廻リ次第議場ヘ出シマスカラ分擔ト云フ字ハ未定ニ願ヒマス
(南部)
來テカラデモ宜シイガドウシテモ分擔ハ其レニ違イナイ、之ハ期間ヲ請求シ且トシテ宜カロウ
(北畠)
召喚シ且トシテ後トハ刪ツテ宜シイ
(淸岡)
召喚シ且附帶ノトシテ元ノ通リガ宜カロウ
(大尾崎)
ソレガ宜シイ
(栗塚)
召喚スル爲メデハ惡イカ
(北畠)
爲メガ二ツニナリマス
(槇村)
爲メガ宜カロウ
(松岡)
召喚スル爲メハ分ラン
(大尾崎)
召喚シデ宜シイ
(松岡)
負擔セシムル爲メ召喚スルコトガ要用ニナツテ居ル
(南部)
此處ハ必要ナル期間ヲ請求スルト云フノガ主意デ召喚シテ分擔セシムル爲メデス
(松岡)
且ト云フト事ガ二ツニナツテオカシイ
(栗塚)
及ビデモ宜シイ
(松岡)
分辨ノ爲メ喚ビ出ス期間ヲデス
(南部)
喚ビ出シテ答辯ト辨濟ヲヤレルノデアリマス
(松岡)
訴ヘラレタラ共同債務者一處ニスルノト分擔サセル爲メ呼ビ出スコトガ出來ル其レニハ期間ヲ請求スルコトガ出來ト云フコトデアリマス
(渡)
元トノ通リ召喚シ且何々ノ爲メデ宜シイ
(北畠)
ソレデ宜シイ
(大尾崎)
ソウ致シマシヨウ
(箕作)
佛蘭西文モ惡イ註デ見ルト簡短デ宜シイ樣デス
(村田)
召喚スル爲メト云フ方ガ宜シイ
(元尾崎)
召喚スル爲メ且云々ノ爲メデ宜シイ
(松岡)
召喚ノ爲メト云フト何ニヲスルカ召喚ト云フ一トツノ事ニナツテ仕舞フソウデハナイ召喚ハ答辯ト分擔セシムル爲メノ召喚デアリマス
(委員長)
召喚シ且トシマスカ
(箕作)
召喚シ附帶ノ云々ト云フ方ガ宜シイ
(南部)
召喚シデ宜シイ「且」ハイラン
(北畠)
宜シイ
(渡)
宜シイ
(元尾崎)
且ハ刪ルガ宜シイ
(箕作)
參加スルコトヲモ得デアリマス
(南部)
之ハ自分等ガ出テ往クコトモ出來ルト云フノデ、ソレデ共同債務者モ亦デアリマシヨウ
(箕作)
一體文章ノ初メニハ「又」ノ方ガ宜イノデス
(元尾崎)
モ亦ハ剛リマシヨウ
(村田)
アル方ガ宜シイ
(箕作)
ソレデハ往キマシヨウ
本條ハ第二項ヲ第一項ト續ケ「召喚スル爲メ」云々トアルヲ「召喚シ附帶ノ擔保方法ヲ以テ其債務者ヲシテ」云々ト改ム
第千五十七條朗讀ス
第千五十七條 連帶債務ノ履行ノ爲メ訴ヲ受ケタル各債務者ハ自己ノ權利ニ基クト共同債務者ノ權利ニ基クトヲ問ハス義務ノ組成又ハ消滅ヨリ生スル答辯方法ヲ以テ債務ノ全部ニ付キ債權者ニ對抗スルコトヲ得
右ノ外更改、免除、相殺及ヒ混同ニ關シテハ第五百二十三條、第五百二十八條、第五百三十一條、第五百四十三條、及ヒ第五百五十七條ノ規定ニ從フ
(村田)
「權利」ハ英文デハ「利益」デス
(栗塚)
身柄ニ付テト云フノデアリマス權利ト云フ字デハアリマセン其レヲ始終斯ウ云フ風ニ譯シテ來タノデアリマス
(元尾崎)
宜シイ先ヘ往キマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第千五十八條朗讀ス
第千五十八條 債務者ノ一人ノ無能力又ハ承諾ノ瑕疵ニ基キタル答辯方法ハ其人自身ニ非サレハ之ヲ申立ルコトヲ得ス然レトモ右ノ答辯方法カ一旦許容アリタル上ハ債務ニ於ケル其者ノ部分ニ付キ他ノ債務者ヲ利ス但他ノ債務者カ契約ノ際義務履行ニ付キ其者ノ分擔ヲ豫期スルコト有リタルトキニ限ル
(村田)
「右ノ答辯」ト云フノハ先キノ例ニ依ルト「此答辯」デアリマス
(栗塚)
御最モデ御座イマス其レカラ豫期スルコトアリト云フノハ「有リ」ト云フ字デス
(元尾崎)
宜シイ
本條ハ「右ノ」ヲ「此」ト改メ「アリ」ハ「有リ」ト改メ其他原案ニ決ス
第千五十九條朗讀ス
第千五十九條 前二條ニ規定シタル種々ノ事項ニ付キ債權者ト債務者ノ一人トノ間ニ爲サレタル判決、自白及ヒ裁判外ノ宣誓又ハ其拒絕ハ他ノ債務者ノ利害ニ於テ前二條ニ等シキ限度及ヒ區別ヲ以テ其効力ヲ生ス
(栗塚)
之モ亦未定デ御座イマス
本條ハ未定
第千六十條朗讀ス
第千六十條 一人ノ債務者ノ他ノ債務者ニ於ケル連帶ノ成立ノミニ關シテ其一人ト債權者ノ間ニ爲サレタル判決、自白及ヒ裁判外ノ宣誓又ハ其拒絕ハ他ノ債務者ヲ害セス又之ヲ利セス
(箕作)
之モ未定カ
(栗塚)
宣誓ノ處ハ未定デ御座イマス
(松岡)
宣誓ノ處丈ケデアリマシヨウ
(村田)
連帶成立ハドウデアリマシヨウ
(元尾崎)
爲サレタルト云フ字ハ止メルノデシヨウ
(松岡)
多分アリタルトナルノデス
(箕作)
連帶デ宜シイ一人ノ債務者ト外ノ債務者ト連帶ガ出來テ居ルカ否ヤニ關シテト云フノダロウ
(村田)
連帶ト云フモノノ成立不成立ノミニ關シテト云フノダ
(南部)
債權者ト云フノ下ニ「ト」云フ字ガナケレバナラン
(栗塚)
左樣デス
(槇村)
一人ト云フノハ數人ト云フコトガナイトドウカ
(松岡)
上ニ以テ一人ノ他ノト云フノデナクシテ債務者間ノ連帶ノ成立ノミニ付テ債務者ノ一人ト債權者ノ間ニ爲サレタモノハ他ノ債權者ニト云フノデシヨウ
(栗塚)
左樣
(松岡)
元トハ、關シテ爲サレタルト云ツタノハ其下ニ一人ト債權者ト關シテト這入ツタガ這入ルト上ノ一人ノ他ノト云フノニクルメテ債務者間ニ連帶ノ成立ノミニ關シテト云ツタラ宜シイダロウ
(南部)
ソウスルト總テ連帶ノ間ニトナルカラ一人ノ債務者ト他ノ債務者トノ間ニト云フコトガアツテ宜シイ樣デス
(松岡)
連帶者ノ間ニ總體デアツテモ中一人ト債權者ト云々トアツタガ他ノ連帶債務者ニ影響ヲ及ボサントナルノデス
(南部)
處ガ其一人ハ他ノ一人ト連帶シテ居ルカ否ヤノ連帶ダ、甲ノモノ乙ノモノト連帶シテ居ルカ否ヤノ關係デアリマス
(松岡)
連帶債務者中ノ一人デシヨウ
(南部)
左樣デス
(松岡)
他ノ連帶債務者ニハ關係セント云フノダカラ上ノ一人ノ云々ハ入ランノデス
(淸岡)
一人ノ債務者ト他ノ債務者トノ間ニ於ケル連帶云々デ宜シイ
(粟塚)
債務者間ノ連帶ノ成立ノミニ關シテハ往ケマセンカ
(南部)
往ケマセン
(村田)
ソレデ宜シイ「トノ間」ト入レテ宜シイ
(栗塚)
宜シイ
(南部)
宜シイ
(委員長)
宜シケレバ先ヘ往キマシヨウ
本條ハ「一人ノ債務者ト他ノ債務者トノ間ニ於ケル連帶ノ成立ノミニ關シテ其一人ト債權者トノ間ニ爲サレタル判決、自白及ヒ裁判外ノ宣誓又ハ其拒絕ハ他ノ債務者ヲ害セス又之ヲ利セス」ト修正ス
第千六十一條朗讀ス
第千六十一條 連帶債務者ノ一人ニ對シ債權者ノ利益ニ於テ時効ヲ中斷シ又ハ付遲滯ヲ成ス原因ハ他ノ債務者ニ對シテ同一ノ効力ヲ有ス
債務者ノ一人ニ對シ債權者ノ利益ニ於テ存スル時効停止ノ原因ハ他ノ債務者ノ利益ニ於テ其部分ノ爲メ時効ノ經過ヲ妨ケス
(箕作)
他ノ債務者ノ部分丈ケデハ時効ノ經過スルヲ妨ゲスデアリマシヨウ
(栗塚)
左樣デス
(箕作)
利益ニ於テ經過ト云フノハオカシイ
(栗塚)
於テト付テト對シテハ往ケマセン外國文ノ樣ニ「プール」ノ字ガアレバ宜シイ
(箕作)
經過スルヲトシテハ如何
(栗塚)
始終於ケル經過ナラ宜シイ
(村田)
契約編デハ「經過」ヲ「進行スルコトヲ」トヤリマシタ三百十一條ニアリマス
(栗塚)
御最モデス進行スルコトヲ妨ゲズト致シマシヨウ
(委員長)
宜シイ
本條ハ「經過ヲ妨ケス」ヲ「進行スルコトヲ妨ケス」ト改メ其他原案ニ決ス
第千六十二條朗讀ス
第千六十二條 若シ連帶債務者ノ一人カ數名ノ相續人ヲ遺シテ死亡シタルトキハ他ノ債務者ノ一人ニ關スル訴追ノ行爲、判決、自白及ヒ宣誓又ハ其拒絕ハ其各相續人ニ對シ債務ノ全部ニ於ケル其相續部分ノ割合ニ非サレハ効力ヲ生セス
各相續人ハ亦其相續部分ノ割合ニ非サレハ訴追セラレス又前記ノ行爲ノ効力ヲ受ケス此場合ニ於テ前記ノ行爲ハ亦從來ノ債務者ノ各自ニ對シ同一ノ限度ヲ以テ其効力ヲ生ス
債權者ト右相續人ノ一人トノ間ニ爲サレタル右同一ノ所爲ハ他ノ相續人ニ對シテ効力ナシ
(栗塚)
右同一ノ行爲デアリマス
(箕作)
「若シ」ヲ刪リマスカ
(栗塚)
左樣デス
(箕作)
若シ連帶債務者ガ數名ヲ殘シテ死ンダ時ハ一人ニ關シテトアルガ重大デシヨウカ入ランデハナイカ
(南部)
一人ト云フコトハ入リマセン
(淸岡)
一人ト云フコトハ入ラン他ノ債務者デ澤山デス相續人ノ方ハ殘ツテ居ルカラ一人ト云フコトヲ云フノデアリマス
(元尾崎)
數人ノ相續人ヲ殘スコトガ日本ニアリマシヨウカ
(村田)
先ヅアルトシナケレバナリマセン其レヲ言ヒ出シテハ迚テモ往カン
(松岡)
之ガアツタラバト見テ居ルノデ
(栗塚)
債務者ノ相續計リデハ見ラレナイ
(松岡)
現今相續人ガ數人アルト云フコトデハ決シテアリマセン
(栗塚)
死ヌ時ニ遺言デ以テ田地何反ハ孫ニヤツテクレアノ林ハドウト云ツタトキハ遺囑ノ相續人デシヨウ
(元尾崎)
ソレハ分地デアリマス
(栗塚)
アレヲ指スノデアリマス
(松岡)
遺言デモ本家ノ負債ハ引受ケハシマセン
(大尾崎)
家督相續ノコトハ人事編デ指定スルノデアリマス
(松岡)
日本デハ親ガ死ネバ惣領ガ居レバ其レガ相續デス
(粟塚)
必ズ惣領トハ云ヘマセン
(元尾崎)
日本ニハ決シテ數人ノ相續ハアリマセン
(栗塚)
其レハ大問題デアリマス
(元尾崎)
他ノ民法上ノ關係ヲ定メルニ人事編ノコトヲ書イテ往クノハ宜クナイ
(南部)
先逹テ論ガアツテ論ジタノデ人事編ハ議シマセンガ相續人ハ數アルカナイカ頻リニ論ジテ先ヅ之デ善イトナツタノデ御座イマス
(箕作)
現今ノ有樣デ云ヘバ元尾崎サンノ云フ通リデアリマスケレドモ早晩相續人ヲ拵ヘルト云フノデアリマス
(松岡)
ソウデシヨウ今ハアリマセン
(槇村)
相續人ハ一人ヨリ外ハアリマセン
(箕作)
人事編ノ起草者ハ家督相續ハ一人財產相續ハ幾人ト云フ積リデアリマス
(大尾崎)
ソレダカラ數人ノ相續ト云フノデ今論ジテモ無駄デス
(松岡)
之ハ果シテ人事編ヲ議スル時分ニ修正ヲ加ヘテ數人ノ財產ヲ受ケルモノハ總テ相續人ト云フコトナラバ宜シイ
(大尾崎)
今之ヲ言ツテモ往ケマセンカラ先ヅ置イテ相續編ノ節ニ定メマシヨウ
(松岡)
アツタラバト云フノデ若シナイトキハ用ヒ樣ハナイ
(淸岡)
本法ニハ人事編ニナイモノガ出來ルカ
(松岡)
人事編ヲ議スルトキニ習慣ヲ成立スルカ將タ財產ヲ受ケルカラ義務ヲ持タセナケレバナランカ相續人ト云フ名ヲ作レバ斯ウナル一人ニ止スルト云ヘバ適用スル場合ガアリマセン
(渡)
人事編デ相續人ヲ一人ト定メタナラバ此處ニ數人ノ相續人ヲ殘シテト云フ法律ノ要用ガナクナルソウスレバ置イテモ使ハント云フマデデスカ
(松岡)
左樣デス
(渡)
ソレハオカシイ私等先日來云フハ一人數人ト云フノハ確定センソレハ何處デ確定スルカナラバ人事編デ確定シヨウト云フノデ先ヅ置キマシテ人事編デ一人ト定マツタラ幸ヒト云フノデソレデ少シ違フノハ主意ダカラ置クト論ゼヌニ置クト云ツタノデケレドモ人事編デ若シ慣習通リ一人ト定マツタ日ニハ最早數人ノ相續人ト云フハ要用ガナイノデアリマス
(村田)
家名相續財產相續ハ別ダロウ
(松岡)
村田サンバ別トシテ渡サンノ言フ意思トハ違ツテ居ルカハ知レマセン此ノ通リ言ツテ之ガ出來テ執行セン中人事編ガ出來テ果シテ一人ニ止マツテ數人デナケレバ宜シイ處ガ人事編ヘ往ツテ果シテ出來ルカ先ガ分ランカラ此方ハ先キヘ拵ヘテ出サナケレバナランモノダ人事編ヲ見テ中ドウナルカ拔クコトハ出來ンカラ之ハ出シテ仕舞フ後チハ人事編ガ出來タラ後トカラ定メンハ差閊ハナイ徒法ニナルカ實行ニナル一向構ハンデ出サナケレバナリマセン
(渡)
ソコハ論ズルトコロダ
(松岡)
人事編ノ定マルマデ受ケ置クト云フノハドウカ
(渡)
人事編ハ引續キ規定ニナルカ否ヤガ分リマセンソコデ一人數人ノ論ハ人事編ノ論デアリマス
(箕作)
解除未必條件ハ長子ノ未必條件ト違フノデアリマス
(松岡)
人事編ノ出ルノガ凡ソ時ガ定マツタラ仕安イガケレドモ之ハ進行シナケレバナリマセン停止ガ出來ンノデ之ガ仕舞ツテ後トデ人事編ガ定マルト見ナケレバナリマセン
(箕作)
長子ノ論カラ云フト今日數名ノ相續人ガアリマセン人事編ニ數名ガナケレバ宜シカツタラバ此條ニ入レヨウト云フノデアリマス
(元尾崎)
人事編ト一所ニ出ル都合ナラ出來ルケレドモ之レガ先ニ出ルト其後チ人事編ガ出ルト數人ノ相續人ト云フノハ何レト考ヘマスルカ報吿委員ノ言フニハ既ニ財產ヲ分ツテ數人ノ相續人ガアルト云フコトデ御座イマス
(松岡)
ソレハ問違イト言ハザルヲ得ン
(村田)
此方ヲ當嵌メナケレバナリマセン
(南部)
置クカ置カン論ジナケレバナラン樣ナ論ハ良シマシヨウ
(北畠)
身代ノ一萬圓ノモノヲシテ分派スルノハ今日モアル畢竟親ノ財產ヲ數人ニ分派シタラ其レニ向ツテ財產ヲ分派シテ義務ガ付クト云フノデアリマス、スレバ財產相續人ト云フコトダロウト思ヒマス故ニ財產相續人ト云フ二字ヲ入レテ此處ニ殘スコトハ出來ンカ唯相續人ト云フカラオカシイケレドモ財產相續人ト云ヘバ宜シイト思フ
(村田)
入レンデモソウ云フコトデ御座イマス
(北畠)
本條ヲ明カニスルナラバソウ云フコトダロウト思ヒマス
(松岡)
然シ其レハ入ラン財產ヲ分ケタラ財產相續人及ビ分派シタカラ財產相續人ニナルスルト法律ガ出來ナケレバ今ノ儘ニハ往カン
(箕作)
親ガ生キテ居ル時分ニ遺言デヤツタラ受遺者ダロウ
(松岡)
相續ト云フノハ死ンダ後チデナケレバナリマセン
(箕作)
ドウモソウデス遺囑ノナイ時分相續人ヲ二三人ヲ財產相續人ト云フ名義デ置クト云フ法律ニ仕樣カ否ヤハ相續編デ定マルノデアリマス
(松岡)
今ノ儘デハ決シテ出來マセン財產ヲ持ツタラ相續人ト云フノハ無理ナ話シデアリマス
(北畠)
ソンナラ此處デ刪ツテ仕舞ツタ方ガ宜シイ
(南部)
刪ツタラ大變デス
(松岡)
承拂人ト直シテハ何ウカ
(南部)
ソウシタ處ガ同ジコトデス數人ノ承拂人ヲ殘スト云フノハオカシイ
(村田)
承拂人トハ云ヘマセン承拂人ト云フト或ハ貰ツタモノモゴツチヤ雜ニナル之ハ相續人ダカラシテ連帶ガ卽チ可分ニナツテ往クト云フノデアリマス
(渡)
ドウシテモ現行法ニハ當テラレナイ
(村田)
之ヲ刪ツタラ大事ダ
(淸岡)
松岡サンノ云フ樣ナ若シ人事編ノ出來ントキハ徒法ナゾト云フソンナコトガアルモノカ
(委員長)
此論ハ度々御座イマスガ民法ヲ作ル以上ハ是非ナケレバナリマセンツイ今マデノ理窟ノ樣ニ家名相續トシテ一間ノ家ニ叔父叔母モ居ルデハ往カンカラ財產ハ凡ソ一人デ持タナケレバナランコトハ既ニ今日ハ往カン是非名々財產ヲ持ツコトニシナケレバナリマセン從ツテ斯ウ云フモノガ出ルノハ免マセンサニナル程財產相續ト云フカ何レト云フカ名ハ今度相續編ヲ議ストキニ相當ノ名ガアレバ代ヘルガ事柄ハアルコトダロウ今日ノ現在デモナイコトハナイ今日隱居ガ財產ヲ持ツテ居ルノヲ孫ヤ其他ヘヤツテ隱居ガソレ限リニ止メテ死ンデ仕舞フスルト財產ヲ分ツト其實ハ穩居ノ權利義務モ孫ガ繼ギ又後家ノ如キモアルカラナイコトジヤアナイカラ今カラ置ク丈ケハ置ク樣ニシテ見ナケレバナラン置イテソウシテ他日相續編ノ出來タトキニ相續編デ規定シタモノト若シ牴觸スルコトガアレバ此方ハ其時ニ刪ツテ相續編デ決シテ宜シイ今日ハ相續編ガ定マラン處ヲ以テ見レバ本文ノ儘規定シテ置キ相續編ノ定マツタトキニ牴觸ガアレバ此方ヲ改メテモ宜シイ
(元尾崎)
相續編ガ他日議スナラ宜シイガ姑ク次ニ出スノデシヨウ
(委員長)
相續編ハ間ニ合フカモ知レンガ民法ハ急グカラアレ丈ケヲ早クヤツタラ隨分關係ノ多イコトダカラ牴觸スルカ否ヤモ分ル牴觸スレバ刪ツテモ宜シイ又先キデモ民法ノ何條ヲ刪除スルト相續編ノ定マルトキニ規定シテモ宜シイ
(栗塚)
要スルニ數名ノ相續人ガ日本ニアルカ否ヤデアルウト思ヒマス
(松岡)
栗塚サンノ不都合ヲ招キテハナラン現今ニ在ルト云フノハ不同意デス
(委員長)
權利モ義務モ付イテ往クカラ家督相續トハ云ヘンガ財產相續トハ云ヘン
(元尾崎)
受遺者ハ遺言ヲ受ケテ貰フノデ御座イマス
(委員長)
受遺者ハ權利義務ハ付カン
(大尾崎)
負債ガアツテソウシテ財產ヲ貰ツタラ卽チ權利義務ガ移ル
(村田)
親ガ死ンダ後トデ財產ヲ分ケルコトヲシナケレバナラン惣領ガ幾等次男ガ幾等ト云フ法律ガナケレバナリマセン遺言ハ相續トハ違イマス
(委員長)
今日失踪者ノ財產ヲ處分スルコト又ハ絕家ノ財產ヲ處分スルコトアレバ矢張血縁ノ近ヒ物ガ分ケテ取タリ又ハ町村官吏ニ歸シタリスルコトガアル、ガ矢張相續デス
(元尾崎)
相續人ノアルニ分テ取ルコトハ出來マセン
(委員長)
ソレハ財產ガ殘テ居ル財產ノ權利義務ガアルカラシテ町村ガ代テスルノデス
(元尾崎)
ソレハ相續人トハ云ヘン
(委員長)
今ノハソウハ往カン、何トカ名ヲ付ケナケレバナラン、ソレヲ假リニ相續人ト付ケタノデ相續人ノ名ガ惡ケレバ名ハ付ケラルルカラ假リニ相續人トシテ他日適當ノ名ガアレバ其トキ替ヘテモ良シイ
(元尾崎)
未ダ疑ヒノ殘ルノハ相續人バカリアルガ遺言デ貰タ者ハ這入ランノデスカ
(村田)
這入ラン
(栗塚)
受產人ダネ
(大尾崎)
兎ニ角議定シテ濟ンデ居ルカラ人事編ガ定マツテ牴觸スレバ刪ルトシテ往キマシヨウ
(元尾崎)
相續人トバカリシタノハドウモ往カン遺言デ貰タモノハ何ト云フカ
(南部)
受遺者デス
(元尾崎)
スルト假リニ數人ノ相續人ガアルモノトシテモ受遺者ハ責ヲ免カルルカ
(委員長)
受遺者ノコトハ相續編ニ書イテアリマス
(元尾崎)
起案春ハ權利義務ノ移ル意味ニ書イタノカ
(村田)
ソンナコトデハナイ連帶カ可分ニナルト云フノデス
(松岡)
其區別ハ六ケ敷全ク他人ノ物デ遺言ニ因テ受遺者ナラ良シイ子供ガ三人在ル、死時分ニ一萬圓ヲ貴樣ニ、五千圓ヲ貴樣ニ三千圓ヲ誰ニト云フト之ヲ受遺者ト云タラ六ケ敷今ノヨウナ民法上カラ親ノ財產ヲ受クベキ者ハ、遺言ガ有ロウガ無カロウガ父ノ方カラ云フト三人ガ相續人ニハ違ヒナイ
(南部)
遺囑ト云フコトハ此内ニ這入ラント云フノダロウ
(委員長)
贈與ノ如キモノナラ、權利義務ヲ共ニ貰フモノハナイカラ受遺者デモコウ云フ場合ニハ相續人ト同樣ニ論ジナケレバナラン
(元尾崎)
「レカチープ」ト云フモノハ第一一人必ラズ生ズルノデ死ダ者ノ財產ヲ集メテ之ハ相續人ニ向ク、之ハ何ト定メル迄死ダ者ノ債務ヲ果シテ、ナケレバ、遣リハセン假令遺言シテ死デモ管理者ガ出來テ死ダ者ノ財產ヲ集メテ義務ヲ果シテ而シテ後デナケレバヤリマセン
(箕作)
佛蘭西デモ負債ガアレバ引カナケレバナラン、矢張、詰リソウナルノデ取ルモノハ取テ出スモノハ出サント云フノデハナイ
(村田)
此等ヲ刪テハ民法ノ眼玉ガ拔ケテ仕舞
(元尾崎)
遺言デヤルノハ後廻ハシニシテ先ヅ債務カラ先キニ拂フ債務ヲ拂テ仕舞テ遺言ニ付テ貰フ者ハ貰フノデアリマス
(大尾崎)
此論ヲ言立テハ際限ガナイ
(委員長)
相續編デ充分議シテ元尾崎サンノ論ハ相續ハ何ト云フカ名ガ氣ニクハント云フ論ニ歸着スルヨウダカラ總體相續論ハ相續編デヤツテ此所デハ相續ト云フ字ハ假リニ定メテ若シ惡ルケレバ人事編規定ニ於テ強イ違イモアリマスマイガ牴觸スレバ此方ヲ改メルトシテ往キマシヨウ
(松岡)
事實ガアルカラト云フノト又此儘往カウト云フノモアリ色々違イマスガ私シノ考ヘハ人事編デ相續人一人ト限ツタラ之ガ愚文ニナルト云フ考ヘデ惡ク云フト徒法デ御座イマス
(槇村)
之デ往キマシヨウ
(元尾崎)
之デ人事編ノ形チヲ定メタ樣ニナツテハ往カン
(委員長)
ソレハアリマセン
(松岡)
誰レモソウ思フモノハアリマセン
(淸岡)
我々ハ其目的デ運ンデ居ルト思フ
(委員長)
之ヲ質ニ取ツテ人事編ヲ斯ウシナケレバナラント云フコトハ出來マセン
(淸岡)
人事編ノ起案モ其通リニナツテ居リマス
(委員長)
此精神デヤツテハ居ルガケレドモ貴君方ガナラント云ヘバナリマセン
(淸岡)
現ニ牴觸スル見込ナラ通シハシナイ先ヅ斯ウスルヨリ外ハアリマスマイト云フノデシテ見ルト此方デナケレバナラント云フ趣意デアリマス
(委員長)
其レハ御分リデアリマス
(松岡)
併シ之ヲ書イタラ人事編デ質デモナケレバ口ガ出セルデモ困ル
(元尾崎)
ソウデモアロウガケレドモ幾分カ仕方ガナイト又ナツテ仕舞フ
(南部)
ソウデナイ
(槇村)
留保シテ往キマシヨウ
(栗塚)
數名ノ相續人ガアルノカナイノカサイ定メンバ宜シイ
(槇村)
追テアルカハ知レマセンガ今日ハナイ
(松岡)
今日ハナイ
(村田)
財產相續ト云フモノハ何ウシテモ出來ナケレバナリマセン
(淸岡)
財產ヲ相續スルモノニ對シテハト云フ樣ニシテハドウカ
(村田)
同ジコトデス
(元尾崎)
ソウ云フ理窟ニシタラ柔ギマス
(村田)
數名ト云フノガ必要ナノデアリマス
(淸岡)
日本ニモ斯ウ云フ相續人ガアリマス
(南部)
此處計リデナク未成年者ニ關シ又後見入ニ關係シ夫婦ニ關係シ人事編デ從前ノ通リト云フ報吿ガ出來ナケレバナリマセン
(松岡)
商法デハ夫ノアル女房ガ許シヲ受ケテ商賣ヲスルト不動產ノ抵當モ出來ルトアリマス
(淸岡)
日本デハ相續入ハ略ボ定マツテ居ルガ其各相綾人ナゾト云フトドウ云フ相續人カ於互ニ受クルノデアリマス
(南部)
於互ニ出來レバ宜シイ猶ホ有夫ノ婦ト云フモノガアルヲ今日ト同ジコトト見テ仕舞ツテ無能者トシテ仕舞ツテハ大變デアリマス
(箕作)
相續編ガ定マラナケレバ往ケマセン
(元尾崎)
未定トシテ置イテ下サレバ宜シイ
(村田)
刪ルヨリモ宜シイカラ往キマシヨウ
(大尾崎)
未定ニシテ往キマシヨウ
(松岡)
未定トシテ往クト之ヲ出スコトガ出來マセン
(大尾崎)
關係アル處ハ人事編ヲ議シテ宜カロウ
(南部)
ソレ計リハ往カン
(箕作)
内閣ヘ出スノハドウカ
(大尾崎)
ソレハ宜シイガ發布スルコトハドウカ
(南部)
内閣ヘ出ス以上ハ發布スルトシナケレバナリマセン
(大尾崎)
其中ニハ人事編モ出來マシヨウ
(栗塚)
此論ハ出マシタノハ三回デアリマスガ他日出來テ數名ノ相續人ト云フコトガ出ル度ニ内閣デモ何處デモ法律取調委員ハドウナツタカト云フト他日人事編ノ定マルマデハ帳リニ置イタト云フノデ不滿足デハアリマスガナントカ時間ヲ費サズシテ、規定スルコトガ出來レバ數名ノ相續人ヲ置クトカ置カントカ云フ樣ニ相續編モ斯ウ作ルト說キ明シガ出來ント始終先ヘ參ツテ他日他ヘ參ツテモ說キ明シニ閊ヘテ又此處計リデハアリマセン數名ノ相續人トアル爲メニ日本デ數名ノ相續人ガアルカト云フト之ハ苦情ノ種カト思フカラ充分ニ議決ニナツタ方ガ先キノ議決ガ捗取フト思ヒマス
(南部)
ソレヲ云フト人事編ヲ先キイ議サナケレバナラン
(栗塚)
私シハ人事編ヲ定メテカラト云フノデハナイ之ヲ置ク爲メニ論ガアルナラ數名ノ相續ト云フコトハ置カント云フコトニナスツテハ如何
(元尾崎)
ソレナラ宜シイ
(渡)
何處ヘ往ツテモ之ガ障リマス
(栗塚)
置イタ爲メニ民法ノ邪魔ニナルガ然シナガラ他日相續編ガ出足ツタラト云フノデアリマス
(元尾崎)
相續ヲ賣ルナゾハ以テノ外ト云ツタ數名ノ相續ナゾト云フト恟リトシテドウ云フ人事編ヲ作ルカト爲ルト此處デ議論ヲスル樣ナモノデハナイ大變ニナツテ何處ニモ此處ニモ議論ガ起ツテ民法發布全體ヲ妨害スルカラ考イ物デス
(渡)
說明ガ充分デナイト刪ラレル
(淸岡)
刪ルナラ此處デ刪ツテ宜シイ
(松岡)
北處デ規定スルコトハ出來マセン
(大尾崎)
人事編ノ定マラナイノニ之ヲ出スト云フノハドウ云フモノカ
(松岡)
其處ハ之ニ限リマセン
(北畠)
然シ此處(缺字)法ガナケレバナラン場合ガアルト云フノデシヨウ
(淸岡)
委員長ノ考ヘハ充分之デヤルト云フノデスカ
(大尾崎)
本當ニヤラナケレバナラン今マデハ實ハ假リニヤツテ居ツタノデアリマス
(箕作)
本當ニヤルノニハ人事編ヲ議スルヨリ外ニアリマセン
(栗塚)
ソンナラバ此レ丈ケハ取リ置イテモ宜シイデシヨウ此條ハ止メテ仕舞ツテ先キヘ往クガ宜イダロウ
(淸岡)
之ヲ刪ルカ或ハ人事編ハドウナツテモ關係ノナイ樣ニ書キ直スカト云フ丈ケデス
(栗塚)
關係ハアルニモセヨ數名ノ相續人ト云フコトガ言ヘンノナラバドウデモ宜シイ
(淸岡)
嫌疑ガアツテ入ノ目ニ立ツコトハ除ケテ行ク樣ニスレバ宜シイ之ハ此處デヤツテモ先キヘ往ツテ通リマセン
(栗塚)
先キイ往ツテ元老院ヘ往ツテモ閊ヘルト云フコトハ見ヘテ居リマス
(元尾崎)
私等之ヲ以テ民法ヲ打破ツテ仕舞フ
(松岡)
其レデハ受ケ置キニシテ置キマシヨウ
(箕作)
其レデハ人事編ヲ議スルヨリ外ニ仕樣ハナイ
(元尾崎)
之デ以テ發布スルコトハ決シテ出來キマセン
(南部)
ソレデハ人事編ヲ議スルヨリ仕方ガナイ未定トシテ往キマシヨウ
(大尾崎)
ソンナラ議サナケレバナラン
(南部)
之レ計リ議スルコトハ出來マセン
(栗塚)
相續ガ數名アルナイ丈ケヲ民法デマダ定マランカラ數名トモ一人ト云フコトモ云ヘマイト云ヘソウナモノデス
(南部)
ソレハ載セテ宜イカ惡イカハ人事編ヲ議サナケレバ分ラン
(栗塚)
數名ト云フコトガドウシテ載セラレマス
(南部)
ソレデハ人事編ヲ議サザルヲ得ン今日ノ規則ニ適用スル樣ト云フガ今日ノ規則ニ當テ嵌メルナラ當テ嵌メル樣書キ代ヘナケレバナランソレハ民法ヲ書キ分ケルコトハ出來マセン
(栗塚)
今日ハ數名ノ相續人ガナイカラ宜イデシヨウ
(松岡)
今日ニ當テ樣ハナイ
(南部)
此處計リデハナイ總テノ場合ニ於テ相續人ハ今日ノ戶主ト云フモノハドウ云フ主義ニ依ツテ當テ巌マルカドウ云フコトデ行ハルルカ
(栗塚)
大勢ヲルト思ツテ書イテ居ルニ一人シカ居ラント兄弟三人殘シテ死ンダト思ツタガ一人シカ殘サナイト見ナケレバナリマセン
(委員長)
皆ナサンノ論ガアルガ數人殘シテト云フコトガナイト云フガ其ナイト云フ證據ヲ擧ゲルコトハ出來ン、我輩ハアルコトハアルト思フナイト云フコトヲ斷言ハ決シテ出來ント思フソコサニ此丈ケニ置イテ人事編ヲヤルマデ地方ヘモ諮間シテアリマスカラ何々トカ言ツテクルカラ其レ迄ニ議シテ置イテ差閊ヘハナイ今日一二字ヲ替ヘテモ矢張リ此處ヘ以テ大變ニ關係ノアルコトナラバ格別數名ヲ一名ト替ヘテモ一向妙味ガナイカラ其レマデ本文ノ通リニシテ定メテ他日相續編ヲ議ストキニ之ト對照シテ見テ惡イナラ替ヘテモ宜シイ若シ希望ガ不安心ト云フナラ民法ガ終ツタラ直グ相續編ヲ議スト云フコトニシテヤリマシヨウカラ今決シテ數名ノ相續人ガナイト云フ現在相續人ガ財產ヲ讓リ受ケル人ガナイトハ言ヘン
(元尾崎)
讓リ受ケル人ハ澤山アリマスガ相續人トハ云ヘマセン
(委員長)
相續人ト云フ名ハナイガ何ントカ名ヲ付ケナケレバナラン今ノ相續人トハ違イマス財產ノ讓リ受ケ人ト云フコトデアリマス
(元尾崎)
ソウ云フ意味ニ書イテ欲シイ
(委員長)
名ガ書ケマセンカラ、相續編ト云ツテ萬事網羅シテ居ルノダカラ其レナラ相續人デ採ツテ下スツテ若シ相續ト云フノガ惡イト云フナラバ其時ニ替ヘテモ遲イコトハアリマスマイ
(大尾崎)
此法律ガ發布前ニ人事編ヲ議スト云フコトニ願ヒマス
(松岡)
其レハ希望デモ人事編ト云フ大層ナモノヲ來年ノ五月カ六月マデニ議スノハ覺束カナイ
(委員長)
皆ンナデハナイ相續人數人ヲ殘シテ死ンダ時丈ケデアリマス
(松岡)
其レハ往ケマスマイ人ガ生レテ夫婦ト爲リ夫婦カラ子ガ生レテ相續スルノデアリマス
(委員長)
ソウ細カク云ハンデモ財產ヲ讓リ受ケテ其レカラ生キテ居ル中贈與等ノ工夫サヘ付ケバ大槪分ルダロウ
(松岡)
大體人事編ハ一部ニモセヨ財產相續人ノ定マルマデ受ケ置キ致シ出サズニ置クト云フニナツタラ此法ノ主義ハドレ程ニスルカ
(委員長)
私シガ先刻云ツタ通リ他日ニ於テ相續編ガ定マツテ不適當ナラ刪ツテモ宜シイト云フノデケレドモ貴君方ノ希望ガ多クツテ多數ガ是非定メテ早クヤルト云フナラバ否ナトハ云ヒマセン
(南部)
ソレナラバソレデ宜シイ
(栗塚)
數名ト一名ト云フノガ分ラン爲メニ民法ノ殘ラズ議シタモノモ留保スルト賣買ノ如キモ賃貸借ノ如キモ出セジト云フト困リマス
(委員長)
強ク人事編ニ拘泥スルト未成年者トカ或ハ無能力者モ人事編ヲ見ナケレバ出セント云フ樣ニナル、ソウ拘泥セズトモ宜シイ此處ハ數人ノ卽チ財產ヲ讓リ受ケタモノガ澤山アツタラ其處分ハ斯ウスルト云フ丈ケデアリマス
(元尾崎)
ソウ云フコトナラソウ書イテ欲シイ遺言書誰レ其レニ此レ丈ケヤツタモノハ義務モ共ニ負擔スルトシテ宜シイ
(松岡)
此處ノ目的ハ他ノ贈與トハ違フ
(元尾崎)
私シノ考ヘハ死ンダ人ノ財產ヲ分ツトキハ先ヅ義務ヲ果シテ然ル後ニト云フノデアリマス
(松岡)
貴君ノハ英吉利風ニシヨウト云フノダロウ
(元尾崎)
左樣
(栗塚)
佛蘭西デ分派配當ハ左樣ナルノデアリマス
(南部)
兎ニ角人事編ヲ議サンデハ決定ハ出來マセン委員長ノ云ヘル通リニシテ總テ他日ニ於テ人事編ヲ議シテ不都合ナラ刪ルトシテ仕方ガナイ
(箕作)
詰リ刪ルト云フノト此儘ニ置クト云フノデアリマシヨウ
(大尾崎)
未定ニシテ置クト云フノデアリマス
(委員長)
ドコマデモ未定ニハ出來マセン
(大尾崎)
人事編ノ議ノ定マルマデ未定ニ致シマス
(委員長)
人事編ハ長イ間掛ルモノデアリマスカラ發布ノ期ガクルト刪ラナケレバナラナクナリマス
(大尾崎)
相續法計リ議シテ宜カロウ
(委員長)
貴君ノ希望ガ多數デナケレバヤレンカラ其レガ多ケレバ其レニ從テモ宜シイガ隨分困難ダカラ、之ハ相續ノ事ヲ議ス條デハナイ處分ノコトダカラ其考ヘデ議スト強イ關係ヲ以テ議スコトハアリマスマイト思ヒマス今日財產相續ナゾト書イテ置クカラデスガ相續人ガ財產ヲ處分スルト云フノハ今迄家督相續ノコトデハナイ未來ハ法律ヲ讀ム人ナラバ之マデ讀ンダラ分リソウナモノデス
(栗塚)
相續ノ上ヘ財產ト云フ字ヲ冠セテハドンナモノデアリマスカ
(松岡)
同ジコトデス
(箕作)
其レハ同ジデアリマス
(北畠)
今日ハ家督相續デアリマス
(南部)
財產ガナケレバ管理ハ出來マセン
(栗塚)
他ニ兄弟ガ幾人アロウトモ一萬圓ノ身代ト看做シ財產ヲ遺シテ民法デハ分ケルト云ヘバ大勢居ツタ時今日ハ子ガ幾人アロウトモ一人シカナイモノト見テ居リマス
(松岡)
現今數名ノ相續人ト云フコトハナイ財產相續人モ一人シカナイノデアリマス
(元尾崎)
分家デモ立テルト云フコトハ澤山アリマスガケレドモ相續人トハ云ヘマセン
(箕作)
此儘置キ人事編相續ヲ議ストキニ不都合ガアレバ今刪テモ再ビ入レルカ前後ノ違イト思ヒマス
(元尾崎)
私ハ學者ノ說ニ從ヒ今刪ツテ置イテ相續編ヲ議ストキニ入用ナラバ後トカラ足シテモ宜シイト思ヒマス
(箕作)
私ハ此方ガ宜イ思ヒマス
(村田)
何レニシロ七百三十一條當リニモ賣主數名相續人ニ對シ云々ト云フコトモアリマスカラ限リハアリマセン
(槇村)
之デ往キ後トデ往カントキハ刪ルトシテ宜シイ
(元尾崎)
此儘ニシテ未定ニスルカ
(渡)
未定ト云フノハ取調委員ニ於テ内閣ヘ上申スルマデ未定デ經過シテ往ケルガ其先キ未定ト云ヘン未定ト云フノハ之レノ完結スルマデデアリマス
(元尾崎)
内閣ヘ出スノモ未定デ宜シイ
(渡)
其レハ往カン
(元尾崎)
其レデハ未定ノ効能ガナイ
(淸岡)
我々ハ相續人ハ日本ノ慣習ヲ用ヒテ宜シイト云フ論者デアリマスケレドモ仕方ガナイ
(松岡)
相續人ヲ一人ニスルカ數人ニスルカ少數多數ハアリマセン
(村田)
ソンナラ七百三十一條ノ處ハ何ウカ前ニ論ガアツテ定マツタノデ御座イマス
(淸岡)
人事編デ合セルナゾト云フ考ヘハ甚ダ不都合デアリマス
(元尾崎)
異論ガアルナラバ此處充分ヤラナケレバナリマセン
(淸岡)
耳立タン樣ニナルカ或ハ刪ツテ置クカ良イ樣ニシタイト云フノデアリマス
(南部)
先ヅ置イテ相續編ヲ議ストキニ惡ルケレバ刪ツテモ宜シイ
(大尾崎)
之ハ置イテ相續編デ定メテ宜シイ之ガ經過シタカラト云ツテ議センコトハナイ
(元尾崎)
ナイケレドモ既ニヤツテ見レバ仕方ガナイ、相續編デ大イニ議スト云フモ元ト數人ノ相續人ト云フノガ不都合ダカラソコデ打チ破スヨリハ今日充分研究シナケレバナラント云フ論デス
(松岡)
ソレハ分ツテ居ルトコロデ七十何條通ツテ來タガ數人ノ相續人ヲ見認シテ居ルト云フコトハナイノデス
(渡)
之ヲ要スルニ拔イテ置クカ又ハ後トカラ加フルカトナルノダガ二ツヲ定メテ宜シイ
(委員長)
「ボアソナード」ノ案ノ通リニ貫カナケレバナリマセン
(松岡)
我々ハ數人ノ相續人ガ善イトモ惡イトモ言ハン名論ハアルガ出シマセン
(委員長)
各地方ノ慣習ヲ調ベ又其レ々々内務省司法省デモ別段ノ人ヲ置イテヤツタガ先ヅ私ノ積リハ完足シテ居ルガ人事編ヲ議ストキニ各地ノ慣習ト對シテ何處ニ歸着スルカ議サナケレバナラン然シ立案ノ趣意ハ他ノ法律ト貫カナケレバナランカラ人事編ヲ議ストキニ財產ヲ人ニ分ツテ遺ル場合ハドウスルカ其時ハ權利義務ガ付クト相續ト云ハナケレバナラント云フ私ノ趣意デ起案シテ居ル貴君方ハ相續ト云ハズ何ント名付ケルト云フコトガ宜シイカ良イ字ガアレバ良イガ事柄ハ漠然トシテ居テモ事實ガアリマスカラ研究シテ宜シイ之ハ相續ト定メテ置キ良イ考ヘガアツタラ替ヘテモ宜シイ又之デハ往カント定マツタラ刪ルモ出來ンコトハアリマスマイ
(元尾崎)
親ノ遺言デ分ツノハ良カロウト思ヒマス又現在シテ居ルコトダカラ差閊ヘモアルマイガ頭デ數人ノ相續人ト云フコトハドウモ往ケマセン
(委員長)
アツタラバ斯ウスルト云フノデアリマス
(元尾崎)
相續人ト云フカ或ハ外ノ名義ニスルカ問題デアリマス
(委員長)
若シ相續人ト云フノガ惡イナラ何ントカ替ヘルモノガアツテヅツト相續編人事編ヲ貫イテ云ヘル文字ガアレバ何ントデモ付ケマシヨウ一方ハ家督相續ト云フ古來ノ持チ來リヲ用ヒ一方ハ何レト云フカ財產相續ト云フカ二ツアルノデ御座イマス
(淸岡)
家名相續ト云フモノヲ讓ルノモアリマス
(委員長)
隱居ノ如キモアル
(元尾崎)
研究スルニハ相續編ヲ議サナケレバナリマセン
(松岡)
ソレハ限リガアリマセン
(淸岡)
財產ヲ相續スベキモノハ何ント云フカ
(松岡)
ソウスルト確定スルノカ受ケ置キナラバ此儘デモ同ジデス詰リ箕作サンノ云フ通リ刪ツテ仕舞ツテ人事編ノ出來ル時分ニ必要ナラ入レルカ又此儘ニシテ人事編ノ時ニ牴觸スルナラ之ヲ刪ルトカ云ツテ決テ取ルヨリ外ニ仕方ハナイ
(箕作)
ココデ相續編ノコトヲ云ツタラ限リハアリマセン
(大尾崎)
人事編ヲ議ストキニ牴觸シタラ刪ルト云フナラ此儘通ツテモ宜シイ
(元尾崎)
人事編ハ先キノ事之レハ來年出スト云フノデアリマスカラ
(渡)
此若シハ初メニ刪ツタガ又宜イト云ツテ置イタノデス
(栗塚)
左樣デス
(渡)
若シアツタナラバト云フノデシヨウ
(南部)
左樣デス
(松岡)
若シト云フ字ハ外ニモアリマス
(南部)
條ノ冒頭ニアル若シバ之レ計リデアリマス之レハ故アルノデ御座イマス
(委員長)
兎ニ角多少數デモ感服モシナイカラ貴君方二人ノ論トシテ先キヘ往キマシヨウ
(栗塚)
「若シ」ハドウカ
(渡)
條件付ノ「若シ」トシテ生カシテ置キマシヨウ
(槇村)
若シハ生カシテ置ク
本條ハ第一項三行目「ノ一人」ヲ刪リ其他未定
第千六十三條朗讀ス
第千六十三條 義務ノ目的物ノ滅失其他總テ義務履行ノ不能力連帶債務者ノ一人ノ過失ニ因リ又ハ其付遲滯後ニ生スルトキハ他ノ債務者ハ債權者ニ對シ連帶シテ損害賠償又ハ過怠約款ノ責ニ任ス但過失アリ又ハ遲滯ニ在リシ債務者ニ對スル他ノ債務者ノ求償權ヲ妨ケス
債務者ノ一人カ死亡シタルトキハ他ノ債務者及ヒ死者ノ相續人トノ相互ノ責任ハ前條ノ規定ニ從フ
(箕作)
二項ノ「トノ」ト云フ字ハ入ラン
(栗塚)
他ノ債務者ト死者ノ相續人トナラ良シイ「及ヒ」ヲ入レルト「トノ」ハイリマセン
(南部)
「トノ」字ハイリマセン
(松岡)
求償權ヲ妨ケズ、デ當リ前ナラ過失デヤツタラ全ルデ責メニ任ズルガ、ソウハ往カン但ト云フノデアリマス
(栗塚)
生ズルナラバ、デス
(南部)
雖モ、トハイカンカ
(松岡)
承ケガ惡イ
(南部)
能ク承ケテ居ル過失ニ因リト云フ付遲滯後ニ生ズルト云フノデス
(箕作)
債務者ハ尙ホト云フノデス
(松岡)
一人ノ過失ニ因レバ責メニ任ズルガ此場合ハ往カン併シ過失ガアツタラ求償權ガアルト云フノダカラ
(南部)
債權者ニ對シテ連帶シテトアル
(淸岡)
能ク分テ居ルデハナイカ
(元尾崎)
往キマシヨウ
(村田)
往キマシヨウ
(箕作)
「トキ」ハオカシイト思フ
(栗塚)
ソウスルト松岡サンハ、ドウ解スルノカ、履行ノ不能力過失又ハ付遲滯後ニ生ジ其付遲滯ガ一人ノ責メニ歸スルトキト雖モ、ト云フノデアリマス
(箕作)
ソウデス、一人ガシタラ、己レハ知ラント自餘ノ者ガ言ヘント云フノデス
(南部)
皆過失ノ責メニ任ズ、ダカラ連帶ノ責メニ任ズル、ト明言シナクツテモ良シイ
(箕作)
生ジナイトキハドウスルカ前ハ無論デアリマス
(松岡)
付遲滯ト云フノモ一人ト云フ字ヲ冠ブルノデシヨウ、ダカラ一人ノ過失デシタラ一人受ケルガ、一寸思フニソウ往カン矢張債權者ニ對シテハ矢張皆ナガ受ケナケレバナラン但過失ガアツタラ其遲滯シタ人間ヘ以テ請求ガ出來ルト云フノダカラ
(委員長)
格別意味ハ違ヒマセンデシヨウ
(栗塚)
直シタラ、連滯債務者ノ過失ニ因リ又ハ其付遲滯後ニ生レ、ソレガ一人ニ歸スルトキト雖モト云フ意味デス
(松岡)
ソウデス、ソレニ違ヒナイ
(元尾崎)
村田サンガ一人デシタトキト雖モ、ダ
(南部)
一人シテ、ト雖モト云フノデ、當リ前ナラ云フニ及バン
(槇村)
良シイヨウデス
(村田)
分ランコトハナイ
(南部)
分リ切テ居ル
(槇村)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ第二項「トノ」ノ二字ヲ刪リ其他原案ニ決ス
第千六十四條朗讀ス
第千六十四條 連帶債務者中ニテ債務ヲ辨濟シ其他自己ノ出損ヲ以テ共同ノ免責ヲ得セシメタル者ハ他ノ債務者ニ對シ辨濟又ハ免責ノ限度ニ於テ其各自ノ負擔部分ニ付キ自己ノ權利ニ基キ求償權ヲ有ス
右ノ求償中ニハ會社及ヒ代理ノ規則ニ從ヒ辨償金及ヒ必要ナル出捐ノ賠償ノ外辨償以後ノ法律上ノ利息及ヒ避クルコトヲ得サリシ費用ヲ包含ス
(元尾崎)
會社及ビ代理ノ規則ニ從ヒト云フハドウカ
(村田)
利息ノ付コトデス
(栗塚)
社員同士ノ規則ノコトデス
(元尾崎)
會社ノ規則ト云フノハ分ラン
(槇村)
宜シイ
(大尾崎)
會社ノ社員ガ其外會社ノ爲メ有益ノ爲メデ利息ヲ取レルト云フコトガ出來ルト云フノデス
(箕作)
連帶債務者ハ相互ニ會社ヲ結ビ合ツタモノト法律ガ同視スルカラ會社權ト代理規則ト一所ニシタノデアリマス
(元尾崎)
株式會社トハ云ヘン
(南部)
株式會社ハ別デアリマス
(栗塚)
七百八十二、三條ノ會仕ニ類シテ居ルカラ注意ヲシタノデス
(大尾崎)
宜カロウ
本條ハ原案ニ決ス
第千六十五條朗讀ス
第千六十五條 債務ヲ辨濟シタル債務者ハ債權者ノ實際受取リタルモノヽ限度ニ於テノミ第五百四條第一號ニ從ヒ法律上ノ代位ニ因リ其債權者ノ權利及ヒ訴權ヲ行フコトヲ得
然レトモ其債務者ハ前條ニ記載シタル如ク其共同債務者ノ各自ノ間ニ於テ自己ノ訴ヲ分ツコトヲ要ス
(槇村)
宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第千六十六條朗讀ス
第千六十六條 不注意ニテ辨濟シタル保證人ニ對シ第千三十二條及ヒ第千三十三條ニ規定シタル求償ノ失權ハ訴追又ハ辨濟ヲ共同債務者ニ吿知スルコトヲ怠リタル連帶債務者ニ對シ之ヲ適用ス
(元尾崎)
宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第千六十七條朗讀ス
第千六十七條 共同債務者ノ一人カ上ニ指示シタル方法ノ一ニ因リ求償ノ行ハレタル當時ニ於テ無資力ナルトキハ無資力者ノ部分ハ辨濟シタル者ヲモ加ヘテ他ノ資力アル者ノ間ニ割合ニ應シテ之ヲ分配ス但要求者ノ責ニ歸スヘキ懈怠アリシトキハ此限ニ在ラス
(箕作)
「求償ヲ爲シタル當時ニ於テ」デ宜シイダロウ
(栗塚)
求償ノアリタル當時ニ於テデモ宜シイ
(南部)
「之ヲ分配ス」ハ「之ヲ分ツ」ダロウ
(栗塚)
左樣デス
(元尾崎)
行ハレタルト云フハ行フト云フノカ
(栗塚)
求償ハ行フタト云フノデ自分ガ行フノデハナイ債權者ガ求償ヲ仕樣トシタ時分ニ無資力ト云フノデアリマス
(元尾崎)
行ハレタルト云フト行フコトノ出來タ時ト見ヘル
(栗塚)
ソレデハアリタル時トシテ宜シイ
(南部)
宜カロウ
(栗塚)
「求償ヲ行フタル當時ニ於テ」デ宜シイ
(元尾崎)
ソレガ宜シイ
(南部)
方法ニ因テ行フタルハオカシイ
(栗塚)
求償セラレタル當時、デハドウカ
(元尾崎)
其レデモ宜シイ
(村田)
宜シイ
(南部)
矢張リ行ハレタルデナケレバ往カン
(槇村)
求償セラレハ往カン
(大尾崎)
原案デ宜シイ
本條ハ「之ヲ分配ス」ヲ「之ヲ分ツ」ト改メ其他原案ニ決ス
第千六十八條朗讀ス
第千六十八條 何等ノ辨濟モ有ラサル前ニ連帶債務者ノ一人ノ無資力ト爲リタルトキハ債權者ハ其債權ノ全額ニ付キ淸算ニ加ハルコトヲ得
此場合ニ於テ辨濟ノ殘額ハ他ノ債務者之ヲ負擔ス但其債務者ノ自己ノ部分外ニ負擔シタルモノニ對スル求償ハ其淸算ニ加ハリタル他ノ債權者ヲ害スルコトヲ得ス
(南部)
宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第千六十九條朗讀ス
第千六十九條 債務者ノ一人ノ無資力ト爲リタル前ニ一分ノ辨濟アリタルトキハ債權者ハ辨濟殘額ノ爲メニ非サレハ其淸算ニ加ハルコトヲ得ス又一分ノ辨濟ヲ爲シタル他ノ債務者ハ第千六十四條ニ從ヒ自己ノ受取ル可キモノヲ辨償セシムル爲メ淸算ニ加ハルコトヲ得
(栗塚)
債務者中一人拂テ居ツタラ他處ヘ往ツテ取ルコトガ出來ルト云フノデ
(元尾崎)
宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第千七十條朗讀ス
第千七十條 何等ノ辨濟モ有ラサル前ニ總テノ連帶債務者又ハ其中ノ數人ノ無資力ト爲リタル場合ニ於テ債權者ハ其債權ノ全額ニ付キ各淸算ニ加ハルコトヲ得
然レトモ債權者カ淸算ノ一ニ於テ配當金ヲ受ケタルトキハ他ノ淸算ニ於テ其債權ノ全額ニ從ヒ債權者ニ充テタル新配當金ハ以前ノ配當ニ於テ未タ受取ラサルモノヽ割合ニ應スルニ非サレハ之ヲ債權者ニ拂渡スコトヲ得ス
右拂渡ノ殘額ハ各淸算ニ返償ス但各淸算ノ辨濟シタルモノヽ割合ニ從フ
本條ハ原案ニ決ス