法律取調委員会 民法草案再調査案議事筆記 第25回
参考原資料
- 法律取調委員会 民法草案財產取得編再調査案議事筆記 , 自 第二十二回 至 第二十五回 [国立国会図書館デジタルコレクション]
備考
- 未校正のテキストデータです.
民法債權擔保篇再調査案第二十五回議事筆記
自第千一條至第千三十條 蓄借ノ存廢
明治二十一年十一月二十七日午前九時二十五分開會
第千一條朗讀ス
第千一條 債務者ノ總財產ハ動產ト不動產ト現在ノモノト將來ノモノトヲ問ハス其債權者ノ共同ノ擔保ナリ但法律ノ規定又ハ人ノ處分ニテ差押ヲ禁シタル物ハ此限ニ在ラス
差押ヘタル財產カ債務者ノ總テノ義務ヲ辨濟スルニ足ラサル場合ニ於テハ其價額ハ債權ノ目的、原由、體樣ノ如何ト日附ノ前後トニ拘ハラス其債權額ノ割合ニ應シテ之ヲ各債權者ニ分與ス但其債權者ノ間ニ優先ノ正當ナル原因アルトキハ此限ニ在ラス
財產ノ差押、賣却及ヒ其代價ノ順序又ハ共分ノ配當方式ハ民事訴訟法ヲ以テ之ヲ規定ス
(栗塚)
「原由」ハ「原因」ノ誤リデ御座イマス「總テノ義務」ハ「總義務」ト致シマス
(松岡)
初メ「態」ノ字デアツタカ分ランカラ「體」ノ字ニシタノダ
(村田)
三百三十條ノ因由ハ「モタリテー」デハナイカト思フ
(箕作)
「モチーフ」デ御座イマス
(栗塚)
「モタリテー」ニ「體」ノ字ハ惡ルウ御座イマス
(槇村)
「總テノ義務」デ宜シイ
(栗塚)
再調査デハ總テノ財產ヲ總財產トシタカラ之モ總義務デナケレバナラント云フコトデ御座イマス
(松岡)
差押ヘタル財產ト云フノハ可笑シイ
(南部)
上デ財產ハ何々ト書イタカラ次ノ處ハ之レデ良カロウ
(松岡)
遽カニ差押ヘタルト云フノハ可笑シイ
(栗塚)
被押財產ノ不充分ナル場合デ何ニ不充分ナルカト云フニ債務者ノ總義務ヲ辨濟スルニ不充分ナル場合トアリマス
(松岡)
此「差押ヘタル」ノ五字ヲ削ツテ終ノ差押ヲ削レバ宜シイ
(栗塚)
「差押ヘタル財產カ」デハイケマセンカ
(大尾崎)
「總テノ義務」ガ宜シイ
(南部)
「總義務」ト云フト總テノ物ト云フトキ總物ト云ハナケレバナランカラ總義務ハ可笑シイ
(元尾崎)
差押ヘタルト云フト差押ヘナイノガアル樣ニナルカラ差押ヘタルヲ削ルガ宜シイ
(箕作)
佛蘭西ニハ差押ヘタルト云フコトハナイ
(元尾崎)
「其財產カ」デ宜シイ
(村田)
アツテモ宜シイ
(栗塚)
「債務者ノ財產カ總テノ義務ヲ辮濟スルニ足ラサルトキハ」ト致シマスカ
(大尾崎)
ソレガ宜シイ
(元尾崎)
體樣ト云フノハ今少シ良イ字ハアリマセンカ
(松岡)
ナイ
(箕作)
期限ガ付イテ居ルトカ居ラントカ條件ガ付イテ居ルトカ居ラントカ云フコトダカラ矢張リ樣ダ
(元尾崎)
方式デハイカンカ
(栗塚)
方式デハ公正證書デアルトカアラントカ云フ字ニナリマスカラ
(大尾崎)
方法トシタラ良カロウ
(元尾崎)
「有樣」トシタラ良カロウ
(村田)
代價ノ順序カ
(箕作)
代價ノ順序デ定メルト困ル
(栗塚)
「代價ノ順序配當又ハ共分配當ノ方式ハ」ト致シマシヨウ
(箕作)
ソレガ宜シイ
本條第二項「差押ヘタル財產カ債務者ノ總テノ」トアルヲ「債務者ノ財產カ」ト改メ「原由」ヲ「原因」ト改ム第三項「代價ノ順序又ハ共分ノ配當方式ハ」トアルヲ「代價ノ順序配當又ハ共分配當ノ方式ハ」ト改ム
第千二條朗讀ス
第千二條 義務履行ノ特別ノ擔保ハ對人ノモノ有リ物上ノモノ有リ
對人擔保ハ左ノ如シ
第一 保證
第二 債務者間又ハ債權者間ノ連帶
第三 任意ノ不可分
物上擔保ハ左ノ如シ
第一 留置權
第二 動產質權
第三 不動產質權
第四 先取特權
第五 抵當權
(松岡)
前條ノ二項デ優先ノ正當ナル原因アルトキハ此限ニ在ラズト書イテアルカラ千二條デハ優先ノコトヲ書キソウナモノダガ突然義務履行ノコトヲ云フタノハ良クナイ
(南部)
優先バカリデハナイ物上擔保ノ方ハ優先ダケレドモ對人擔保ハ優先デハナイ
(箕作)
擔保ト云フノヲ一ツモ固メタカラ優ト云フコトハ云ヘナクナツタ
(村田)
二條ノ處ニ物上擔保人トアリマシヨウ初メニ云フテアルカラ之モ彼處ニ云フテ置イテ宜シイノダ
(南部)
彼ノ處ヘ云フ筈ハナイ
本條ハ原案ニ決ス
第千三條朗讀ス
第一部 對人擔保
第一章 保證
第千三條 保證ハ任意ノモノ有リ法律上ノモノ有リ又裁判上ノモノ有リ
下ノ第一節乃至第三節ノ規定ハ右三種ノ保證ニ共通ナリ
(村田)
二項ハ前回ニ削リマシタ
(栗塚)
處ガ一節カラ三節迄ノモノハ之ニ共通ト云フコトヲ申シテ置キマセント先キニ裁判所ノ保證ニ特別ナル規則ト云フノガアリマス千四十七條ニ特別ナル規則ト云フモノガアリマスカラ一節カラ三節マデハト云フコトニシテ置キマス下ノ附錄ニ記載スト云フコトヲ止メマシタ附錄ト云フノハ此度第四節ト致シマシタカラ
(松岡)
元トモ削ツテアル
(栗塚)
初メニ書ケナカツタノハ附錄ヲ止メナカツタカラ三種ノ保證ニ共通ナルト云フコトハ云フマセン此章ノ外ニ附錄ヲ置キマスカラ差支ヘナイノヲ附錄ト云フモノヲ節ニシタイ條ハコウ云フコトニ書イテアリマスト恰度削ルニ及バンコトニナリマスカラ
(松岡)
一節二節ト云フト一章ハ保證ノ目的性質ダロウ
(栗塚)
效力消滅之ハ皆ナ何レニデモ當テ嵌マル
本條ハ原案ニ決ス
第千四條朗讀ス
第一節 保證ノ目的及ヒ性質
第千四條 保證ハ或ル人カ第三者ノ其義務ヲ履行セサルニ於テハ之ヲ履行スルコトヲ諾約スル契約ナリ此義務ハ債務者ノ過失ニ歸ス可キ不履行ノ場合ニ於テハ債權者ニ賠償スルノ義務ヲ暗ニ包含ス
(村田)
諾約ハ諾スルノ契約デ良カロウ
(栗塚)
再調査デハ約束スルトアツタノデ御座イマス
(南部)
五條ノ二項三項ニモ諾約トアル
(箕作)
此義務ハト云フノハ諾約シタ義務ハト云フノカ
(栗塚)
左樣デス
(箕作)
何ンダカ分リ惡クイ佛蘭西ニハ其諾約ハトアル
(委員長)
前ノハ此諾約ハトアル
(南部)
「此約務ハ」デモ宜シウ御座イマス
(栗塚)
約務ト云フ字ヲ皆止メテ義務トシタノデ御座イマス
(元尾崎)
義務ハデ良カロウ
(栗塚)
第三者ノ其義務ヲト云フノヲ此義務ハト云フ樣ニ聞ヘルカラ惡ルイ
(松岡)
或ル人ガ第三者ノト云フノハ彼方此方ニナルノデハナイカ保證ハ第三者カ或ル人ノト云フノガ本當ダロウ
(栗塚)
第三者ハ債務者ト云ツテモ宜シイ
(渡)
之ハ普通ノ第三者トハ違ウ
(松岡)
不履行ハ元ト履行不能トアツタガ此處ハ履行不能ガ良クハナイカ
(栗塚)
原文デハ履行セザル場合ト書イテアル
(南部)
之ハ不履行デ宜シイ
(箕作)
爲スベキ義務ダカラ否ト云ツテモ是非サセルコトハ出來ン併シ保證人ガ私ハ嫌忌ダト云ツテモイカント云フ其トキ保證人カラ損害賠償ヲサセルト云フコトノダロウ
(栗塚)
義務ト云フ字ハ如何致シマシヨウ
(箕作)
此約務ハデ良カロウ終ノ義務モ約務デ宜シイ
(淸岡)
終リノ方ヲ約務ト云フノハ可笑シイ
(栗塚)
上丈ケ約務ト致シマシヨウ
(松岡)
同ジ字デアルノニ一ツハ約務トシ一ツハ義務トシテ宜シウ御座イマスカ
(南部)
ソレデハ皆約務ト致シマシヨウ
(元尾崎)
第三者ハ宜シイカ
(栗塚)
債務者トシテモ宜シウ御座イマス
(北畠)
債務者ノ方ガ宜シイ
(松岡)
不履行ハ不履行トアツタノヲ不能ト直シタ
(南部)
ソレハ此會議デ直シタ
(箕作)
之ハ不能デナクテモ宜シイノダロウ履行ヲシナカツタトキハ債權者ノ意ニ背イテモ保證人ガ履行スルコトハ出來ンカラ保證人カラ債務者ニ賠償スルノ約務ヲ包含スルダカラ
(栗塚)
左樣デス
(淸岡)
不能ト云フノハ惡ルイ
本條ハ「第三者」ヲ「債務者」ト改メ「義務」ヲ「約務」ト改ム
第千五條朗讀ス
第千五條 保證ハ主タル義務ノ目的ト幾ナルモノヲ目的ト爲ストキハ保證トシテハ無效ナリ
然レトモ保證人ハ主タル債務者ノ諾約シタル物又ハ所爲ノ對價トシテ不履行ヲ豫見シタル過怠金額ヲ有效ニ諾約スルコトヲ得
(元尾崎)
一項ハドウ云フ譯ダロウ
(村田)
金ヲ馬デ返ヘソウト云フノダ
(栗塚)
更改ニナルダ
(村田)
對價トシテ過怠金額ヲ有效ニ諾約スルデ宜シイノダ
(栗塚)
註ニ不履行ヲ豫見シタル過怠金額デナケレバイケナイト云フテアリマス
(委員長)
不履行ヲ豫見シタルトキハト云フノハ出來ナイトキハ此金ヲヤルト云ノデスカ
(箕作)
二項ハ大層原文ト違ヒマス
(栗塚)
不履行ヲ豫見シタル丈ケガ違ツテ居ルノデ御座イマス過怠約款ト看做シタル金額ヲ過怠金額ト致シマシタ
(委員長)
註ノ意味ヲ現ハシタ丈ケダ
(栗塚)
左樣デス初メニハ現ハレテ居タノヲ報吿委員デ削ツタ爲メニ變ニナリマシタカラ入レマシタ
(委員長)
這入ツタ方ガ宜シイ
(松岡)
所爲ノ對價ト云フト所爲ハ渡スベキモノトカ或ハ其人ノ爲スベキ作爲ノコトカ
(栗塚)
物ハ馬所爲ハ繪ヲ書カセマシヨウト云フノデ御座イマス
(松岡)
對價ト云フト向ウカラ馬ヲ寄越シテ此方カラヤル樣ナ處ニ使ツテアリセヌカ
(栗塚)
ソレニ均シイ物ヲヤルト云フノデス
(松岡)
商法ト民法ト向ウカラ來タモノノ代ハリニナル處ヲ對價ト使ツテアル樣ニ思フ
(箕作)
向ウカラ物ヲ呉レレバ此方カラ所爲ヲ以テ酬ユルト云フ處ニ多ク使ツテアリマス
(村田)
矢張リ對價ダ
(箕作)
一體代價デモ宜シイノデス
本條ハ原案ニ決ス
第千六條朗讀ス
第千六條 保證人ノ義務ハ主タル義務ヨリ一層大ナルコトヲ得ス又一層重キ體樣ニ服スルコトヲ得ス若シ保證人ノ義務カ一層大ナル又ハ一層重キトキハ主タル義務ノ限度及ヒ體樣ニ之ヲ減ス
(栗塚)
元トハ「一層大ナルトキ又ハ一層重キトキ」トアツタノデス
(淸岡)
「トキ」ト云フ字ヲ入レ樣デハナイカ
(委員長)
「トキ」ヲ入レマシヨウ
(松岡)
保證人ノ義務ハ主タル義務ヨリ重クモ六ケ敷クモスルコトハ出來ヌト云フノデ濟シテ居ルノダ
本條「一層大ナル」ノ下ヘ「トキ」ノ字ヲ加フ
第千七條朗讀ス
第千七條 前條禁止ノ規定ハ債務者ヨリ其主タル義務ノ爲メ物上擔保ヲ供セサルトキ保證人ヨリ其從タル義務ノ物上擔保ヲ供スルコトヲ妨ケス又保證人カ主タル債務者ヨリ一層嚴ナル執行方法ニ服スルコトヲモ妨ケス
保證人ハ亦第三者ヲ引受人トシテ己レヲ保證セシムルコトヲ得此引受人ニ對シテハ保證人ハ主タル債務者ノ資格ヲ有ス
(松岡)
資格ヲ有スト云フト權利ヲ持テ威張ル樣ニナルガ一向威張ラレナイ
(箕作)
芝居ノ義經ノ役ヲスルトカ辨慶ノ役ヲスルカ云フ字ダ
(栗塚)
主タル債務者ノ役目ヲ務ムルト云フノデス「位置ヲ有ス」デモ宜シイ
(元尾崎)
位置ガ宜シイ
(村田)
「位置」ヨリ「資格」ガ宜シイ
(栗塚)
義經ノ位置ヲ有スナラ宜シイガ兵卒ノ位置ヲ有スデハ面白クナイ
(南部)
位置ヨリ資格ガ宜シイ
(北畠)
債務者ノ地位ヲ有ス
(箕作)
議員ノ資格ガアルトカ何トカ云フ字デスカラ「地位」ト云フ字ガ良カロウト思フ
(元尾崎)
「地位ニ在リ」カ
(松岡)
其レガ宜シイ
(村田)
「地位ヲ有ス」デ宜シイ
(委員長)
「地位ヲ有ス」トスルカ
本條末項「資格」ヲ「地位」ト改ム
第千八條朗讀ス
第千八條 金額又ハ定マリタル物ニ制限シタル保證ハ其利息ニモ果實ニモ其他ノ附從物ニモ及フコト無シ
然レトモ主タル義務ノ無限ノ保證ハ要約シタル利息遲延ノ利息其他右債務ノ天然上法律上又ハ合意上ノ附從物ニ及ヒ又主タル債務者ニ對シテ爲シタル最初ノ訴ノ費用及ヒ其訴ヲ保證人ニ吿知シタル以後ノ費用ニモ及フ
(元尾崎)
假令バ千圓ノ保證ニ立テ利息ガ百圓モ二百園モ積ツテモ知ラヌト云フノデスカ
(箕作)
初メカラ書イテ置カナケレバイカヌ
(元尾崎)
唯引受ケト云フト利息モ這入ルカ
(槇村)
ソウダ
(元尾崎)
元金ダケハ引受ケルト證文ニ書クモノハナカロウ
本條ハ原案ニ決ス
第千九條朗讀ス
第千九條 總テ有效ナル義務ハ之ヲ保證スルコトヲ得
無能力者ノ取消スコトヲ得ヘキ義務ト雖モ亦有效ニ之ヲ保證スルコトヲ得其義務カ裁判上ニテ取消サレタル後ト雖モ保證ハ其效力ヲ存ス但保證人カ其保證ノ際債務者ノ無能力ヲ知リタルトキニ限ル
其他第三者ノ自然義務ノ法定保證ノ場合ハ第五百八十八條以下ニ於テ之ヲ規定ス
(村田)
末項ハ自然義務ガ定マランデハ分ラヌ
(栗塚)
末項ハ自然義務迄待チマシヨウ
(委員長)
自然義務ガ全クナクナレバ兎モ角モ有レバ之ガ害ハナイ
本條末項ハ自然義務ノ議決迄未定
第千十條朗讀ス
第千十條 何人ニテモ將來ノ債務ヲ保證スルコトヲ得又債權者又ハ債務者ノ方ニ於テ隨意ノ條件ニ繋ル債務ヲモ保證スルコトヲ得但保證人ニ於テ其債務ノ性質及ヒ廣狹ヲ査定スルコトヲ得ルトキニ限ル
(箕作)
「トテスタチーフ」ヲ「隨意」トヤリマシタカ
(栗塚)
左樣デス
(委員長)
之ハ起案者ニ質問中デアツタガ將來ノ債務ヲ保證スルト云フコトハ何カト云フ問ダロウ
(南部)
其レハ註ニ在リマス
(松岡)
前回デ將來ノモノヲ目的トスル債務ヲ保證スルトナツテ居ル
(村田)
之ハ三百四十二條ヲ見ナイデハ分ラヌカラ入レタ方ガ宜シイ
(渡)
入レ樣デハナイカ
(箕作)
保證人ガアレバ貴樣ニ貸シテヤルガ其レデナケレバ否ダト云フ
(委員長)
來年ノ米ヲ約束スルノカト思ツタ
(村田)
其レモアリマシヨウ
(委員長)
但書デ範圍ガ狹クナツテ居ルカラ容易ノコトハ出來ヌガヤレルコトハ五年先キノコトモ出來ルダロウ
(南部)
其レハ出來マシヨウ
(松岡)
「將來ノモノヲ目的トスル」ト入レヨウ
(南部)
將來ノモノヲ以テト云フト分リ易イ樣ダガ却テ狹クナリヤセヌカ
(箕作)
將來ノ債務デモ分ル
本條ハ原按ニ決ス
第千十一條朗讀ス
第千十一條 何人ニテモ債務者ノ委任ヲ受ケ又ハ其不知ニ於テ又其意ニ反シテモ其保證人ト爲ルコトヲ得
辨濟シタル保證人ノ其債務者ニ對スル求償ノ場合ハ第二節第二款ニ於テ之ヲ規定ス
(渡)
其意ニ反シテト云フノハ前ニ論ガアツタ
(松岡)
佛蘭西ニハ委任ヲ受ケ又ハ不知ニ於テ出來ルトアル
(淸岡)
金ヲ借リタトキ家ノ馬丁ガ保證人ニナル否デモ是非ナルト云フノハ否ダ
(箕作)
戶主ガ威張ツテモ彼ガ破產スル樣デハ一家ノ名譽ニ關スルト云フトキガアル
(大尾崎)
保證スル者ガ氣ニ食ハヌカラ貴樣ノ保證ハ受ケヌト云フテモ保證スルカ
(松岡)
折角好ンデ書イタノダカラ置イテモ良カロウ誰レモスル奴ハナイ
(栗塚)
保證ノ終リノ求償權ノ所デ此コトガ入用ニナルノデ御座イマス
本條ハ原按ニ決ス
第千十二條朗讀ス
第千十二條 有效ニ保證人ト爲ルニハ無償名義ニテ義務ヲ負擔スルノ能力ヲ有スルコトヲ要ス
然レトモ主タル契約カ有償名義ナルトキハ保證人ノ債務者ニ對スル無能力ハ債權者カ之ヲ知リタルトキニ非サレハ保證人ヨリ債權者ニ其無能力ヲ以テ對抗スルコトヲ得ス
(元尾崎)
利息付ノ金貸ハ有償名義カ
(栗塚)
有償名義デ御座イマス
本條ハ原案ニ決ス
第千十三條朗讀ス
第千十三條 債務ヲ保證スルノ意思ハ之ヲ明示セサルトキハ明ニ事情ヨリ生スルコトヲ要ス然レトモ其意思ハ契約者ノ一方ヲ他ノ一方ニ勸メ又ハ其一方ノ現在若クハ將來ノ有資力ヲ確言シタル事實ノミヨリ之ヲ推測スルコトヲ得ス
若シ證書ノ署名者中ノ一人カ共同債務者ナリヤ又ハ保證人ナリヤニ付キ疑アルトキハ之ヲ保證人ト看做ス
(栗塚)
「推測」ハ「推定」ト改メマス
(箕作)
原文ハ「クレサンプシヨン」デハアリマセンゼ
(栗塚)
違ヒマスカラ之デ置キマシヨウ
(箕作)
二項ノ場合ハ日本ニ澤山アリマシヨウ
(南部)
今ノ處デハ分リ切ツテ居リマス何モナケレバ債務者トシテ仕舞ヒマス其連帶ハ妙ナ場合デス皆揃ハナケレバ訴ヘガ出來ナイ
(元尾崎)
三人ノ中一人出ナイト出來ナイカ
(南部)
揃ハナケレバイケナイ
(松岡)
訴訟手續ガ違ウ丈ケダ
(元尾崎)
縱令バ證書ニ連名者ノ中ニ故障アツテ一人ニ相成リ候共履行スルト書イテ置ケバ良カロウ
(南部)
ソレナラ宜シイ
(箕作)
今ハ唯證人ト書イテアルガ保證人ト云フ積リダロウ
(北畠)
近頃ハ皆一所ニナツテ仕舞ツタ
(箕作)
何月幾日ニ金ヲ受取ツタト云フコトヲ見屆ケタト云フノト本人ガ滯ツタトキハ保證人ガ返スト云フノトハ
(淸岡)
「ナリヤ」ハ「ナルヤ」ニシタイ
(南部)
ナリヤガ宜シイナリノ下ヘヤノ字ヲ付ケタ丈ケダ
(松岡)
ナルヤガ宜シイ
(委員長)
ナルヤニシマシヨウ
本條第二項「ナリヤ」ヲ「ナルヤ」ト改ム
第千十四條朗讀ス
第千十四條 保證人ノ義務ハ其相續人ノ負擔ニ歸シ又債權者ノ相續人ノ利益ニ歸ス但反對ノ要約アルトキハ此限ニ在ラス
(松岡)
此義務ハ約務ダロウ
(箕作)
先刻ノ約務ト云フ字ト同ジ字ガ書イテアル
本條ハ原案ニ決ス
第千十五條朗讀ス
第千十五條 債務者カ保證人ヲ立ツ可キ合意ヲ以テ義務ヲ負ヒタルトキハ其債務者ハ債務ノ本性及ヒ重要ニ關シ有資力ノ人ニ非サレハ保證人トシ又ハ保證人ノ引受人トシテ之ヲ立ツルコトヲ得ス
若シ右ノ保證人又ハ其引受人カ無資力ト爲リタルトキハ債務者ハ前項ト同一ノ條件ヲ具フル他ノ者ヲ立ツルコトヲ要ス
其他保證人ハ辨濟ノ有ル可キ控訴院ノ管轄地內ニ於テ住所ヲ有シ又ハ之ヲ選定スルコトヲ要ス
債權者ヨリ人ヲ指定シテ保證人ヲ要約シタルトキハ前記ノ條件ヲ要セス
(栗塚)
債務ノ本性ハ性質デ御座イマス第四項ノ「前記」トアルハ「本條」ト致シマス
(元尾崎)
三項モ辨濟ノアルベキトキ扣訴院ノト云フト扣訴院ガ辨濟スル樣ニナル
(南部)
辨濟セラルベキト云フノデス
(箕作)
扣訴院ノ管轄ヲ廣クスルハ宜シイ
(元尾崎)
東京デ金ヲ借リテ新潟ノ者ヲ保證人ニシテモ宜シイカ
(箕作)
住所ヲ有シテナケレバ選定スレバ宜シイ
(大尾崎)
之ハ遠方デハナラント云フ意味デシヨウ
(委員長)
之ハ扣訴院ノ管轄ト云フノハ六ケ敷イ
(元尾崎)
日本デハ地方裁判所ノ管轄デ宜シイ
(淸岡)
保證人ガ住所ヲ有シ保證人ガ選定スルトナル
(委員長)
日本ノ樣ナ海ノ多イ國デハ不便ダロウ函館ノ者ガ東京ノ者ニ保證シテ貰ハナケレバナランノガ多イダロウカラ
(淸岡)
債權者ガ何ンデモ宜シイト云フタラ構ハンダロウ
(南部)
ソレハ構ハン
(栗塚)
報吿委員デハ始審裁判所ノ管内デスルガ宜シイト云フ論ガアリマシタ扣訴院ハ全國ニ七ケ所外ナイカラ
(松岡)
此法律ハ四五十年ノ間必要ハアルマイ
(箕作)
保證人ヲ立ツベキ合意デ義務ヲ負フタニ保證人ノ引受人トシテ出ルコトガ餘計デハナイカ
(栗塚)
又保證人ガ其引受人ヲ立ツベキ合意ヲ以テ義務ヲ負ヒタルトキハ有資力ノモノデナケレバ之ヲ立ツルコトヲ得ズト云フテ二段ニ書クベキデアリマシヨウ
(箕作)
此文デハ餘計ナコトノ樣ニナル
(栗塚)
報吿委員モ其注意ガアリマシタガ二ツニ書キ分ケル必要ガアルカナイカ
(箕作)
有資力ノ人ニ非ザレバ保證人トシテ之ヲ立ツルコトヲ得ズトスレバ良カロウ
(松岡)
ソレデ宜シイ
(南部)
引受人丈ケハナクテモ良カロウ
(栗塚)
「保證人カ引受人ヲ立ツルコトモ亦同シ」トシテモ同ジデス
(委員長)
千七條ニアルカラ保證人ノ引受人トシテ削ロウ
(栗塚)
ソウスルト次ノ項モ又ハ其引受人ヲ削リマシヨウ
(委員長)
重要ニ關シハ
(村田)
限度ト云フコトダ
(箕作)
重要ニ關シハ重要ニ應ジデ良カロウ
(松岡)
重要ト云フノハ分ラン
(栗塚)
重サト云フノデス
(松岡)
「サ」ト云フノハ見ヘナイ
(栗塚)
輕重ニ關シト云フコトデス
(委員長)
輕重ニ應ジトスルカ
(淸岡)
重要ニ關シデモ宜シイ
(委員長)
重要ヨリ廣狹トカ大小トカノ方ガ良クハナイカ
(南部)
大小ガ良カロウ
(箕作)
大小ニ應ジトシマシヨウ
本條第一項左ノ如ク改ム債務者カ保證人ヲ立ツヘキ同意ヲ以テ義務ヲ負ヒタルトキハ其債務者ハ債務ノ性質及ヒ大小ニ應シ有資力ノ人ニ非サレハ保證人トシテ之ヲ立ツルコトヲ得ス第二項「又ハ其引受人」ノ六字ヲ削ル第四項「前記」ヲ「本條」ト改ム
第千十六條朗讀ス
第千十六條 債務者カ前條ノ條件ヲ具フル保證人又ハ引受人ヲ立ツルコト能ハサルトキハ裁判所ノ認可ヲ得テ物上擔保ヲ與フルコトヲ得
(箕作)
「又ハ引受人」ヲ削リマシヨウ裁判所ノ認可ヲ得テト云フノハ何ゼダロウ
(南部)
協議ガ調ハントキハ裁判所ノ認可ヲ得ルト云フ意味デスカラ宜シウ御座イマシヨウ
(松岡)
裁判所ノ認可ヲ得テ物上擔保ヲ與フルト云フト人ノ約束ナレバ相對承諾ガアツテモ裁判所ノ認可デナケレバ人ヲ物ニ變ヘルコトハ出來ナイト云フ論ガアツタ
(栗塚)
ソンナコトガアロウ筈ガナイ
(村田)
裁判所ノ認可ヲ得テト云フ字ヲ削ロウデハナイカ
(渡)
削ルガ宜シイ
(松岡)
佛蘭西ニモナイ
(淸岡)
裁判所ノ認可ノナイトキハ直グニ持ツテ行ツテ突キ付ケルカ知レン
(松岡)
突キ付ケテモ宜シイ
(南部)
前回デモ削ランガ宜シイ
(槇村)
削ルガ宜シイ
(栗塚)
有資力ノ人ヲ出シマセント云フ落チ度ハ誰レニアリマス
(淸岡)
落チ度ハ債務者ニアル
(栗塚)
金ノ借ルトキハ有資力ノ者ヲ出ソウト云フカラ貸シタノデス物上擔保ヲ突キ付ケラレテ默ツテ居ラナケレバナラント云フノハドウ云フモノデシヨウ
(松岡)
見出シ得ントキニ充分ノ物ヲ出ソウト云ツテ是非人間ヲ出セト云フコトガアリマスカ
(栗塚)
保證人ヲ立テルノハ誰レノ利益デアロウカ物上擔保ト云フモノハ抵當デアル或ハ動產質デアル、不動產質デアルソンナモノハ嫌忌ダ
(松岡)
裁判官ハ何ヲ許スカ物ガ充分ナレバ擔保ニナルダロウト見テ許スカ人ト物ト換ヘルノヲ見テ之ハ認可スルカセンカト云フノハ何ヲ云フノダ
(栗塚)
註デハ許可トアリマス裁判官ノ許可ヲ以テニアラザレバ隨意ニ置キ換ヘルコトハ出來ン人ヲ出シマシヨウト云フテ居テ後ニ人ヲ出サンデ物ニ換ヘヨウト云フト旨意ガ違ヒマス
(村田)
初メ其位ノモノナレバ誰ナラ貸ソウトカ保證人ヲ知ラズニ貸スト云フコトハナイ
(栗塚)
保證人ヲ知ツテ又栗塚ガ保證人ヲ立テマシヨウト云フ合意デ貴君ニ金ヲ借リタソウシテ松岡サンヲ保證人ニ立テタ處ガ松岡サンガ嫌忌ト云フカラ人力車夫ヲ保證人ニ立テルト云フコトハ出來マスマイ其時ニ私ガ抵當ヲ持ツテ行ツテ金ヲ貸セト云フコトヲ強要スルコトガ出來マスカソレハ出來マセン
(淸岡)
金時計デモ持ツテ來レバ宜シイガ詰マラナイ物ヲ持ツテ來レバ裁判所ハソンナ無理ナコトハシテハナラント云ハナケレバナリマセン
(渡)
佛蘭西デハ法ガ許シテアル
(栗塚)
千十五條ヲ御覽ニナレバ保證人ヲ立ツベキノ義務ヲ負フテ居ナガラ保證人ヲ立テズニ外ノ物ヲ持ツテ行クノハ面倒ニシテ置クノハ當然デ御座イマシヨウ
(渡)
擔保ガアレバ充分ダ
(村田)
保證人ヲ見ナイデ金ヲ貸シタノダカラ惡ルイ
(松岡)
確カナモノガ來ルニ嫌忌ト云フコトハナイ
(槇村)
炭、眞木ヲ擔保ニ入レマシヨウト云フトキハ裁判官ハドウスルカ
(淸岡)
其時ハ許サン
(南部)
佛蘭西ノ通リニスレバ充分ナルト云フ字ヲ加ヘタラ宜シウ御座イマシヨウ
(委員長)
「充分ナル」ヲ入レテモ宜シイ
本條ハ左ノ如ク改ム
債務者カ前條ノ條件ヲ具フル保證人ヲ立ツルコト能ハサルトキハ十分ナル物上擔保ヲ與フルコトヲ得
第千十七條朗讀ス
第千十七條 商證券ノ保證ノ特例及ヒ仲買人カ委託者ニ對シテ諾約シタル擔保ハ商法ニ於テ之ヲ規定ス
(村田)
特例ト云フノハ擔保ニ關スル特例トナツテ居ル
(栗塚)
ソウデハアリマセン
(松岡)
商法ノ通吿委員ニ仲買ノ處ヲ引合ハサセルコトニナツテ居ル
(栗塚)
商法ノ方ヘ送リマシタ
(村田)
特例ハ下ヘ入レヨウ
(栗塚)
「擔保ノ特例ハ」デモ宜シイ
本條ハ「保證ノ」ノ下「特例」ノ二字ヲ削ル「擔保」ノ下「ノ特例」ノ三字ヲ加フ
第千十八條朗讀ス
第二節 保證ノ效力
第一款 保證人及ヒ債權者間ノ保證ノ效力
第千十八條 債權者ハ債務者ニ義務履行ノ催吿ヲ爲シタルモ其效果アラサリシコトノ證據ヲ保證人ニ示サスシテ之ヲ訴追スルコトヲ得ス
然レトモ債務者カ行方知レス又ハ破產ノ宣吿ヲ受ケ若クハ顯然タル無資力ノ形狀ニ在ルトキハ右ノ催吿ヲ必要トセス
本條ハ原案ニ決ス
第千十九條朗讀ス
第千十九條 保證人ハ右ノ外下ノ制限及ヒ條件ニ從ヒ債權者カ豫メ債務者ノ財產ヲ檢索シテ之ヲ賣ラシムルコトヲ債權者ニ要求スルコトヲ得
本條ハ原案ニ決ス
第千二十條朗讀ス
第千二十條 保證人ハ明示又ハ默示ニテ財產檢索ノ利益ヲ抛棄シ又ハ主タル債務者ト連帶シテ義務ヲ負擔シタルトキハ檢索ノ利益ヲ享ケス
總テノ場合ニ於テ保證人ハ主タル債務ノ基本ヲ爭フノ前ニ檢索ノ利益ヲ以テ債權者ニ對抗セサリシトキハ其利益ヲ失フ
(箕作)
保證人ガ主タル債務者ト遵帶スルト云フノカ
(委員長)
名ハ保證人デ實ハ債務者カ
(箕作)
保證人ト云ヒナガラ連帶義務者ニナツテ仕舞フノデス
(栗塚)
初メ保證人デ後ニ連帶義務者ニナツタトキハト云フノデス
(箕作)
途中カラナツタノデハナイ
(南部)
註ニ連帶トナツテモ保證人タル資格ヲ失ハントアル
(箕作)
保證人デアルケレドモ主タル債務者ト連帶ヲ約スルノハ檢索ノ利益ヲ失フ爲メニ斯ウ云フコトヲ證文ニ書クト云フ樣ニ見ヘマス
(大尾崎)
債務ノ基本ガ定マラナケレバ檢索ヲスル筈ガナイ
(委員長)
證人デモ自ラ連帶デ拂ヒマシヨウト云フ場合ナラアルカモ知レン
(箕作)
兩方ノ資格ヲ具ヘタコトニナル
本條ハ原案ニ決ス
第千二十一條朗讀ス
第千二十一條 檢索ヲ要求スル保證人ハ債務者ノ不動產ニシテ辨濟ノ有ル可キ控訴院ノ管轄地內ニ在ルモノヲ債權者ニ指示スルコトヲ要ス
保證人ハ爭ニ係ル不動產ヲモ又他ノ債權者ニ優先ニテ抵當ト爲リタル不動產ヲモ又訴追シタル債權者ニ抵當ト爲リタル不動產ニシテ第三所持者ノ手ニ存スルモノヲモ指示スルコトヲ得ス
債務者ニ屬スル動產ニ付テハ債務者之ヲ物上擔保トシテ旣ニ債權者ニ供シタルトキニ非サレハ保證人其檢索ヲ要求スルコトヲ得ス
(松岡)
動產ガ出來ナイデドウシテ不動產ガ出來ルダロウ
(栗塚)
動產ハ轉輾シテ仕舞ウ
(淸岡)
動產ナラ檢索デ良カロウ
(南部)
動產ハ不確カナモノ、不動產ハ確カナモノト見タノデス
(松岡)
佛蘭西ニハ動產不動產ノ別ハナイダロウ
(箕作)
佛蘭西ハ不動產バカリデシヨウ
(委員長)
訴追シタル債權者ト云フノハ他ノ債權者ダロウカ此事柄ニ關係ヲ持ツテ居ル債權者カ
(栗塚)
此事柄ニ關係ヲ持ツテ居ルノデス併シ抵當トナツテモ第三所持者ニナリマスカラ
(箕作)
佛蘭西ハ動產モ出來マス
(栗塚)
註デハ佛蘭西ヨリ一層嚴シク制限ヲシタ何ゼナレバ財產ガアルダロウト思フコトガアツテモ藏匿スルコトガアルダロウカラ保證人ニ云ハセバ大變動產ヲ持ツテ居リマスト云フダロウガ債權者ガ欺カレテ訴追シテモ隱サレテ徒ラニ手數ヲ掛ケル
(淸岡)
容易ニアリモシナイモノヲ費用ヲ懸ケテ檢索スル筈ハナイ
(元尾崎)
佛蘭西ニハ檢索スルニハ先ヅ以テ費用ヲ出シテヤルトアルガ之レニハナイ
(淸岡)
動產ニモ係ケルガ宜シイ
(箕作)
「ボアソナード」ハソレハ良クナイソレ丈ケハ佛蘭西ヨリ寛大ニシタトアル
(松岡)
財產ト云ヘバ動產モ不動產モ這入ル都下ニ居ルモノデ不動產ヲ持ツテ居ルモノハ少ナイト見ナケレバナラン
(箕作)
佛蘭西デハ動產ヲ許シテアルケレドモ保證人ガ指示スニ意見違ヒヲスルコトモアルシ債務者ガ隱クシテ仕舞ウカラ動產ハ入レナイト云フ
(委員長)
動產デモ著シキ物ハ檢索シタ方ガ宜シイカ知レン
(大尾崎)
公債證書抔モアルカラ
(委員長)
伊太利ハドウナツテ居ルカ
(松岡)
伊太利ハ佛蘭西ト同ジデス
(委員長)
動產不動產ノ區別ハナイカ
(松岡)
ソウデス
(栗塚)
保證人トナツタ以上ハ都府デハ檢索ノ利益ハナイ
(委員長)
今ノ日本ノ有樣カラ突然之ニ移ルノハ酷イカラ係レンナラ一切係レン係レレバ一切係レル樣ニシナケレバナリマセン記名公債抔ハ隱スコトハ出來ナイ
(栗塚)
記名公債抔ハ檢索サセルコトニシテモ宜シウ御座イマシヨウガ只ノ動產ヲ檢索スルノハ煩雜デ御座イマシヨウ
(南部)
動產ヲ檢索スルノハ煩雜ダ
(栗塚)
動產デモ明カナモノニスレバ宜シウ御座イマシヨウ
(大尾崎)
ソレガ良カロウ
(箕作)
明カナノト云フノハ
(松岡)
明不明ニハ構ハラン差押ヘタル丈ケノ費用ヲ出シテ差押ヘサヘ出來レバ宜シイカラ明カナモノト云フコトヲ書キ分ケルコトハ出來ナイ
(元尾崎)
ソレ位デ良カロウ費用ヲ具ヘルト云フコトハ動產ヲ入レルガ宜シイ
(箕作)
ソレナラ佛蘭西ノ通リニスレバ宜シイソウシテ扣訴院ノ管轄地外ニアルモノハ指示スルコトヲ得ズト云フテ二項ニ送レバ宜シイソウシテ一項ヲ財產トスルカ動產不動產ト直スガ宜シイ
(松岡)
佛蘭西伊太利ヲ手本ニ取ツテ報吿委員デ直シテ貰オウ
本條第一項ハ佛蘭西伊太利ノ如ク報吿委員ニ於テ修正スルコトニ決ス
于時午後零時二十分休憩
午後一時二十分開會
第千二十二條朗讀ス
第千二十二條 債權者檢索ノ有效ナル對抗ヲ受ケ其檢索ヲ爲スコトヲ怠リテ債務者其後無資力ト爲リタルトキハ保證人ハ債權者ノ檢索ニ因リ得タルコト有ル可キ金額ニ滿ツルマテ其義務ヲ免カル
本條ハ原案ニ決ス
第千二十三條朗讀ス
第千二十三條 一人ノ債務者ノ爲メ數人ノ保證人アルトキハ債務ハ均一ニテ當然其間ニ分タル但不均一ニテ分別スルコトヲ定メ又ハ其保證人カ或ハ債務者ト共ニ或ハ各自ノ間ニ連帶シテ義務ヲ負擔シ若クハ其他ノ方法ニテ分別ヲ抛棄シタルトキハ此限ニ在ラス
保證ノ義務カ各別ノ證書ヨリ生スルトキト雖モ分別ノ利益ハ存在ス
(栗塚)
分割ヲ分別ト致シマシタ
(箕作)
之ハ「ジビジヨン」デスカ
(栗塚)
左樣デス
(委員長)
末項ハ債權者ト債務者ト一ツデナケレバイケマセンカ
(箕作)
左樣デス
本條ハ原案ニ決ス
第千二十四條朗讀ス
第千二十四條 保證人ハ檢索ノ利益ヲ用ヰタルト否ト分別ノ利益ヲ享クルト否トヲ問ハス訴追ヲ受ケタルトキハ第千二十九條ニ明示シタル目的ヲ以テ債務者ヲ訴訟ニ參加セシムル爲メ基本ニ付テノ答辯前ニ民事訴訟法ニ定メタル方式及ヒ條件ニ從ヒ延期抗辯ヲ以テ債權者ニ對抗スルコトヲ得
(元尾崎)
基本ニ付イテノ答辯ト云フノハ
(南部)
本按ノ答辯デス
本條ハ原案ニ決ス
第千二十五條朗讀ス
第千二十五條 保證人カ基本ニ付テ答辯スルトキハ主タル債務ノ組成又ハ其消滅ヨリ生スル抗辯又ハ不受理ノ理由ヲ以テ債權者ニ對抗スルコトヲ得
保證人ハ債務ヲ保證スルニ當リ債務者ノ無力又ハ其承諾ノ瑕疵ヲ知ラサリシトキハ是等ノ事項ヨリ生スル無效ノ理由ヲ以テモ對抗スルコトヲ得
(箕作)
抗辯ト不受理ノ理由ト違ヒマシヨウカ
(栗塚)
同ジコトデス抗辯ヲ以テデ宜シイノデ御座イマス
(元尾崎)
抗辯ヲ持ツテデ良カロウ
本條第一項「又ハ不受理ノ理由」ノ八字ヲ削ル
第千二十六條朗讀ス
第千二十六條 右ノ抗辯ニ付キ債權者ト保證人トノ間ニ有リタル判決ハ債務者ヲ害スルコトヲ得ス然レトモ之ヲ利スルコトヲ得但其判決ノ牽連シタル箇條ハ債務者ニ利ナルモノト不利ナルモノトヲ分ツコトヲ得ス
本條原案ニ決ス
第千二十七條朗讀ス
第千二十七條 債務者ニ對シテ時效ヲ中斷シ又ハ債務者ヲ遲滯ニ付スル行爲ハ保證人ニ對シ同一ノ效力ヲ生ス
保證人ニ對シタル右同一ノ行爲ハ保證人カ債務者ノ委任ヲ受ケ又ハ債務者ト連帶シ義務ヲ負擔シタルトキニ非サレハ債務者ニ對シテ效力ヲ生セス
本條ハ原按ニ決ス
第千二十八條 主タル債務者ノ爲シタル債務ノ自白又ハ認知及ヒ債務者ト債權者トノ間ニ爲シタル裁判外ノ宣誓又ハ其拒絕ハ保證人ヲ利シ又ハ之ヲ害ス
保證人ト債權者トノ間ニ爲シタル右同一ノ行爲ハ債務者ヲ利ス然レトモ委任又ハ連帶アル場合ニ非サレハ之ヲ害セス
(栗塚)
此條ハ未定ニナツテ居リマスガソレハ裁判外ノ宣誓ノコトデ御座イマス之ハ今日モ定マリマセンカラ此儘置キマス「所爲」ハ「行爲」トナリマス
本條「所爲」ヲ「行爲」ト改ム
第千二十九條朗讀ス
第二款 保證人及ヒ債務者間ノ保證ノ效力
第千二十九條 債權者ヨリ訴追ヲ受ケタル保證人ハ第四百十九條及ヒ第千二十四條ニ揭ケタル如ク主タル請求ニ對シ債務者ノ答辯ヲ爲サシムル爲メ擔保ノ附帶ノ請求ヲ以テ債務者ヲ訴訟ニ召喚スルコトヲ得
又保證人ハ其敗訴ノ言渡ニ附隨シテ債務者ニ對シ次條ニ定メタル賠償ノ言渡ヲ求ムルコトヲ得
右擔保ノ附帶ノ請求ハ債務者ノ委任ヲ受ケテ義務ヲ負擔シタル保證人ノミニ屬ス
(村田)
之ハ前ノ方ガ分リ良イ樣フダ
(栗塚)
初メノ按ハ意味ガ違ヒマス訴訟ニ召喚スルト云フノハ二ツデハナイ原文ヲ御覽ニナレバ御疑ガ分リマスガ訴訟ニ召喚スルコトヲ得ト云フノガ一ツノ箇條トソレカラ敗訴シタトキハ賠償ヲ求ムルコトヲ得ト云フノガ一ツト二ツデスソレガ初メニハ債務者ヲ召喚セシムルト云フコト丈ケニナリマシタガソレハ違ヒマス
(松岡)
前ノデモ召喚スルト云フノハ何レヘデモ係ルダロウ
(栗塚)
賠償ノ言渡ヲ求ムルコトヲ得ト云フノデス
(松岡)
賠償ノ言渡ヲ受ケル場合ト云フノハ受ケタ後デハナカロウ言渡ノ前デハナイ前ノデハ訴追ヲ受ケタル保證人ハ訴訟ニ參加サセル樣デ判決ノ濟マナイ中ヲ云フノデハナイカ前ノ譯ニスルト答辯サセヨウト云フトキハ答辯ガ云ヘル敗訴ノトキハ附帶ノ請求デ呼ビ出サセル
(大尾崎)
之ハ修正ガ惡ルイ
(松岡)
之ハ前ノ方ガ意味ガ間違ハンノダロウ答辯ヲサセル爲メニ呼ビ出スノヲ附帶ノ請求ト云フコトハアルマイ
(村田)
訴訟ニ參加セシムルガ眼目ダカラ前ノ樣ニ書イタ方ガ宜シイ
(松岡)
只ダ答辯ノ爲メニ呼ビ出スノハ附帶ノ請求ニハナラン
(南部)
元トノハ「爲メ附帶ノ請求ヲ以テ」ト掛ツテ居ルカラ惡ルイ次條ニ定メタル賠償ノ言渡ヲ受クルコトヲ得トアル次ノ條ハ何ノ事ヲ云フカト云フト自ラ辨濟シタル後ニアラザレバ債務者ニ對シテ訴ヘヲ起スコトヲ得ザルナリトアル
(松岡)
敗訴シテ拂ウトキハ
(南部)
又カラ下ハ擔保ノ附帶ノ請求デハナイ拂ツテカラデナケレバ起ラン話ダ
(栗塚)
敗訴シタトキハ
(南部)
註ヲ見ルト次條ノ賠償ノ言渡ヲ受クトアル其言渡ハ卽チ附隨トシテ受ケシムルトアル
(栗塚)
負ケタトキハコウ云フコトガ出來ルト云フ意味デス敗訴シタトキハ附隨デ賠償ノ言渡ヲ求ムルコトガ出來ルト云フ意味デス
(南部)
敗訴ノ言渡ヲ受ケタ後ト云フノデハナイ
(松岡)
一ツノ敗訴ニ於テ同時ニヤル
(栗塚)
其處デ附隨シテト云フ
(松岡)
債務者ガ敗訴ノ言渡ヲ受クル場合ニ於テハ附帶ノ請求ヲ以テ次條ニ定メタル賠償ノ言渡ヲ得ル爲メ債務者ヲ訴訟ニ召喚スルトナツタラ良カロウ
(箕作)
コウ云フコトトコウ云フコトトノ爲メニ附帶ノ請求ヲスルト云フ方ガ良ク分ル樣デス
(松岡)
答辯セシムル爲メニ附帶ノ請求デ呼ビ出スト云フノハ可笑シクナリハシマセンカ
(箕作)
主タル請求ト云フト拂ウモノハ拂ツテ別ニ起ス樣ニナルガ之ハソウデナイ相手ニサレテ居ルニ參加人ノ樣ニナルノダカラ
(松岡)
請求ト云フノハ己レノモノヲ取ルト云フコト答辯スルト云フノハ己レガ賠償ヲ得ルト定マランノダカラ請求ニ持チ出サンデ附帶ノ請求バカリスル
(箕作)
答辯ヲ爲サシムル爲メニ擔保人トシテ呼ビ出スノハ卽チ附帶ノ請求デス
(松岡)
參加セシムル丈ケハ何時デモ附帶ノ請求ト云フコトハナイ
(栗塚)
附帶ノ請求ト云フノハ一ツ訴訟ガアツタ處ヘト云フノデス
(松岡)
只參加セシムル處ヲ請求ト云フノハ可笑シイ
(箕作)
訴訟ニ呼ビ出スノハ何ト云ツテ呼ビ出スカ支訴ト云ツテ呼ビ出ス
(淸岡)
元トノ通リ直ソウ
(栗塚)
債務者ノ答辯ヲ爲サシムル爲メ又債務者ノ敗訴ノ場合ハ之ニ附隨シテ
(松岡)
答辯セシムル爲メト云フノハ賠償ニハ關係ヲ持タン
(南部)
前ニ附帶ノ訴トシテアル
(松岡)
其附帶ハ求償權ノ樣ナモノヲ云フノダロウ
(淸岡)
要スベキ場合ト云フノハ入ラン
(栗塚)
「債務者ノ答辯ヲ爲サシムル爲メ又債務者カ敗訴ノ場合ニ於テ次條ニ定メタル」デモ宜シイ
(南部)
元トノ通リニシヨウ
(栗塚)
元トノ通リニスルト附隨ト云フ字ガナクナツテ仕舞ウ
(箕作)
「場合ニ於テハ其言渡ニ附隨シテ債務者ニ對シ次條」ニトシタラ良カロウ
(淸岡)
右擔保ノト云フ擔保ノト云フ擔保ノ字ハ取リマスカ
(栗塚)
附帶ノ請求デ宜シウ御座イマス元トノハ右擔保ノ附帶ノ請求トアツタノデス
(南部)
ソレナラ入レヨウ
(松岡)
右附帶ノ擔保ノ請求ハトシタ方ガ宜シイ
(淸岡)
ソレハイケナイ
(栗塚)
擔保ノヲ入レマシヨウ
本條第一項ハ左ノ如ク改ム
債權者ヨリ訴追ヲ受ケタル保證人ハ第四百十九條及第千二十四條ニ揭ケタル如ク主タル請求ニ對シ債務者ノ答辯スヘキ場合ニ於テハ其答辯ヲ爲サシムル爲メ又債務者カ敗訴ノ言渡ヲ受クル場合ニ於テハ次條ニ定メタル賠償ノ言渡ヲ得ル爲メ擔保ノ附帶ノ請求ヲ以テ債務者ヲ訴訟ニ召喚スルコトヲ得
第千三十條朗讀ス
第千三十條 主タル債務ヲ辨濟シ其他自己ノ出損ヲ以テ債務者ニ義務ヲ免除ヲ得セシメタル保證人ハ債務者ヨリ賠償ヲ受クル爲メ之ニ對シテ擔保訴權ヲ有ス但左ノ區別ニ從フ
第一 保證人カ債務者ノ委任ヲ受ケテ義務ヲ負擔シタルトキハ其債務者ニ義務免除ヲ得セシメ又ハ債務者ノ名ニテ辨濟シタル元利、其擔當シタル費用立替ヲ爲シタル時ヨリ其利息其他損害アルトキハ其賠償ノ金額ヲ債務者ヨリ償還セシムルコトヲ得又此委任ノ場合ニ於テ保證人ハ其分限ヲ以テ言渡ヲ受ケタル時ハ直チニ其賠償ヲ受ケル爲メ訴ヲ爲スコトヲモ得
第二 保證人カ債務者ノ不知ニテ義務ヲ負擔シタルトキハ債務者ノ義務免除ノ日ニ於テ之ニ得セシメタル有益ノ限度ニ從ヒ右ノ賠償ヲ受ク
若シ保證人カ債務者ノ意ニ反シテ義務ヲ負擔シタルトキハ保證人ノ求償ノ日ニ於テ債務者ノ爲メ存在スル有益ノ限度ニ非サレハ右ノ賠償ヲ受クルコトヲ得ス
(箕作)
自己ノ出損ヲ以テト云フノハ自腹ヲ切ツテト云フコトデスネ
(栗塚)
義務免除ハ義務ノ免責ヲ得セシメタルデ御座イマス
(松岡)
義務ノ免責ハ可笑シイ
(栗塚)
ソレデハ義務ヲ免レシメタルトキハト致シマシヨウカ
(南部)
ソレガ宜シイ
(栗塚)
二項モ義務ヲ免レシメトナリマス
(槇村)
三項ニモアル
(淸岡)
委任ハ平生ノ委任ト云フ字デスカ
(箕作)
ソウデス頼ミト云フコトデス
(松岡)
委任ト云ツテモ御願ト云フトキモアルカラ
(淸岡)
囑託トカ依託トカスレバ宜シイ
(南部)
囑託トハ違ウ
(箕作)
第二ハ事務管理ト云フコトガアツタ方ガ宜シイ
(栗塚)
第二ヲ不知ニテ事務管理ニテトスルト二項モ意ニ反シテ事務管理ニ對シテ義務ヲ負擔シタルトシナケレバナリマセン
本條第一項及第一號ニ「義務免除ヲ得セシメ」トアルヲ「義務ヲ免レシム」ト改ム
第二號「義務免除ノ」トアルヲ「義務「免除ヲ得セシメタル」ト改ム
(栗塚)
之レマデニシテ畜借ノコトヲ願ヒマス、農商務省ヘ參ツテ宮島ト云フ局長ニ面會シテ九百九十二條ノ旨意ヲ話シマシタ處ガ私ノ方デモ昨年此事ニ付イテ調ベニヤツタモノガアルカラ其屬官ヲ呼ブカラ聞イテ呉レト云フコトデ御座イマシタ鈴木ト云フ屬官ガ山陰道ノ方ヲ廻ハリ今一人ハ福島岩手ノ方ヲ廻ハリマシタ其人等ニ畜類ノ貸借ハ馬ヤ牛ヤ羊抔ヲ細民ハ飼ウコトガ出來ナイカラ大キナ金持チガ買ツテ貧乏人ガ世話ヲシテ此處ハ取レトカ此處ハドウスルトカ種ハドウスルトカ云フ規定ガアロウカ一體獸畜ヲ貸借スルコトガアルカト聞キマシタ處ガ福島抔ニハアルソウデスソレハ馬デ御座イマス丹波丹後但馬ニモ澤山アルソウデ御座イマス之ハ牛デ御座イマス入馬屋ト云フソウデス馬喰ガ二三百頭モ持ツテ居テ自分デ育テルコトガ出來ナイデ入馬ニ入レルソレハ何年貸スト云フコトヲ云ハンデ何頭貸スト云フ假令バ五頭借リテ居レバ一頭ハ何時デモ賣ツテ外ノ馬ヲ置キ換ヘルコトガ出來ル馬喰ガ賣ロウト云フトキハ誰レノ馬ヲ取リ上ゲルト云ツテ其代ハリ跡カラ其馬ヲ塡メテ行ク併シ牝ハソウ云フ自在ノ事ガ出來マセンカラ三年四年五年位ヲ定メル又其子モ何レデ取ルト云フ定マリガアルソウデ御座イマス子ガ生レレバ弱イノガ生レルカモ知レンカラ一頭ニ付イテ幾ラト云フ金ニシテ仕舞ウノガアルソウデ御座イマス又子デ分ツノモアル何年間養ツテ呉レタカラ子ガ生レタラ幾匹ヤルト云フノモアリマス平生馬ヲ使ウノハ用方ニ依テ使ウ、牽挽ノモノハ牽挽ニ使ヒ耕作ノモノハ耕作ニバカリ使ウ其代ハリ養ウソレハ古イ時カラアルノデ歐羅巴流義カラ起ツタノデナイ其起リハ肥前ダソウデ御座イマス支那カラデモ來タモノト見ヘルカ或ハ西洋ノ馬ヤ半ノ育テ方ハ長崎邊デ聞タノデハナイカ肥前ニハ澤山アルソウデ御座イマス丹波但馬邊ノモ肥前ニ持ツテ行ツテ居ルソウデ御座イマス今日ノ處デハ牛ト馬ノ二ツ外御座イマセン羊ハ農商務省デ二三ケ所ヘ關渉シテ貸シテアルソウデ御座イマス岩手縣ニ七百頭貸シテアルソウデ御座イマス之ハ日本ノ季候ニ合ウカ合ハンカト云フコトヲ試驗中デアルカラ出來ルトナレバ民法ノ樣ニナルダロウガ今ノ處デハ子ガ出來レバ借リテ居ルモノガ取ルコトニナツテ居ル之カラ先キ定マリガ付ダロウト云フコトデ御座イマスソレ等ハ御參考ニナルダロウト思ヒマス併シナガラ家畜ノ處ニ云フ樣ニ羊ノ群ヲ貸シテ毛ヲ取ツテドウスルト云フコトハアリマセン牛デモ馬デモ小前ノモノガ山カラ薪ヲ出ストキニ使ウトカ又ハ肥料ヲ踏マセルノガ一番多イソウデ御座イマス家々デ持ツテ居ル馬ハ重モニソウデ御座イマス日光ノ近所デハ一軒デ三四頭モ持ツテ居ル、肥料ガ出來ンカラ木ノ葉ヲ取ツテ來テ踏マセル肥料製造人トシテアルソウデ御座イマス
(南部)
前ノ會議ニモ削除說ヲ主張致シマシタガ報吿委員ノ報吿ニ依レバ日本ニ習慣モアル譯デアルカラ之ヲ置イテ他日益々羊ノ養殖シタ時分ニハ之ヲ以テ適用スル双方合意シテ行クノハ防グ處デナイト云フ明文ガ御座イマスカラ置ク方ガ宜シイト思ヒマス
(村田)
之ヲ置カズトモ尋常ノ賃貸借デ
(南部)
之ヲ置カナイデモ毛ヲ取ルトカ子ヲ取ルトカ云フ契約ガアツタラドウシマス
(村田)
會社ヲ組ムト云フコトガアレバ別ニシテモ宜シイケレドモ通常今日ノ有樣デハ只ノ賃貸借デ充分出來ル毛ヲ取ルノモ收入ダカラ
(栗塚)
農商務省ノ人ガ法律取調ノ人ハ萬能ナ人ダト云ツテ感心シテ居マシタ
(松岡)
阿呆ナ奴ダ
(村田)
賃借ハ物權ダカラ物權ノ方ニ置ケバ宜シイ
(南部)
之ヲ削除シタノハ一匹モ牛ヤ馬ヲ貸スコトハナイト云フ旨意カラ削除スルコトニナツタソレガ農商務省ニ問合セタ處ガ實際アルト云フコトダカラ置カナケレバナラン
(村田)
併シ全群ヲ貸スコトハナイ一頭二頭貸スコトハアルソレハ賃借デ宜シイ
(淸岡)
羊抔ハ全群デ貸スノガ出來ヨウ既ニ小笠原島ヘ田中鶴吉ガ持ツテ行ツタカラ
(松岡)
法ト云フモノハ要用ノモノニ向ツテ保護ヲ與ヘ良クシテヤルノハ宜シイガ今一匹ヤ二匹貸シテ居ルモノガアツタトキハ日本ノ習慣ノアルモノハ習慣ニ依ルカ又ハ特別ノ合意ガナイトキハ此法ヲ當テルコトニスルカ
(南部)
全群バカリデハナイ
(松岡)
一匹二匹ノコトデハナイ元トノ精神ハ多クノ物ヲ一所ニスルノガ精神ダ
(淸岡)
ケ條ニ就イテ不都合ガアレバ制限シテ宜シイガ大體ハ存シテ置カナケレバナラン民法ニ畜借ガアルカラ可笑シイト云フコトハナイ
(栗塚)
農商務省ニ行ツテ聞イタノデ妙ナ感覺ガ日本ニ一向ナケレバ宜シウ御座イマスガ日本ニアルモノヲ之デ支配スルト云フノハ危險デ御座イマス寧ロナケレバコウ云フモノガ出來テモ之デ支配スルノハ宜シウ御座イマスガ日本ニアルト云ヘバ之ニ合ウカ合ハンカヲ調ベナケレバナリマセン
(淸岡)
ソウ云フト日本ニナイモノデナケレバ法律ハ作ラレン樣ニナル
(栗塚)
假令バ用收權ノ如キモノデス
(元尾崎)
實際ヲ知ラナケレバ分ラン
(南部)
調ベルニハ委員ガ巡廻シテモ宜シイ
(元尾崎)
此一章ハ農商務省ヘヤツテ調ベテ貰ウガ宜シイ彌々必用ナラ是レ丈ケ特別ニシテ出シテモ差支ナイ
(松岡)
若シアレバ特別法ニ讓ツテ宜シイ各々極點ヲ云ヘバ習慣ダノ實際ダノヲ云フニ及バン
(淸岡)
立派ニ分ツテ居レバ習慣ニモ依ラナケレバナランカ
(大尾崎)
併シ之ヲ置イテモ今迄一頭位置クモノニ之ヲ適用スルコトハ出來ナイ
(栗塚)
ソレハ適用シナケレバナリマセン
(大尾崎)
何處ヲ適用スル
(栗塚)
殘ラズ適用シマス
(南部)
合意ガアレバ格別ナケレバ之ヲ適用シナケレバナリマセン
(大尾崎)
今ノ慣習デ一頭二頭ヲ貸借スル處ヘ之ヲ當テ嵌メルコトハ出來マスマイ
(淸岡)
兎モ角モ置イテ逐條ニ就テ議論ガアレバ論ジテ行クガ宜シイ
(槇村)
ソレガ良カロウ
(渡)
今少シ猶豫シテ特別法デ拵ヘルガ宜シイ
(淸岡)
研究シテモ栗塚サンガ聞イタ位ホカ分ルマイ
(大尾崎)
置クコトハ置クトシテ逐條デ議シテ行キマシヨウ
(元尾崎)
置クナラ此レナリ置クガ宜シイ我々ニハ得失ヲ云フコトハ出來ナイ
(箕作)
何ノ爲メニ三ツニ分ケルカ分ランデス
(委員長)
之ハ前ニ置ク置カンヲ論ジテ農商務省ヘ問合ハセルコトニナツタノカ
(栗塚)
前ニ廢按ニナリ掛ツタノヲ日本ノ習慣ヲ調ベルコトニナツタノデ御座イマス
(委員長)
之ヲナシニスルハ尋常ノ貸借ニ依テ裁判スルヨリ外ニ仕方ガナイ
(松岡)
習慣ガ御座イマス
(村田)
賃借デ何故ニ差支マスカ
(委員長)
子ヲ取ルト云フコトハ賃借ニハナイ
(村田)
賃借ニ收益ト云フコトガ御座イマス
(委員長)
子ヲ幾ラ取ルトカ肥料ヲ取ルトカ云フコトハナイ賃借ハ收益セシムル丈ケノ義務ガアルシ借リタモノハ權利ガアル其代ハリ賃ヲ拂ウノダ併シ之ハ賃ヲ拂ハズシテ子ヲ取ルカラ違ウ其コトヲ契約シタトキハドウスルカ
(大尾崎)
合意ト慣習トガアルカラ實際差支ナイ
(南部)
習慣法ニ任カスト云フナラ格別成文法デ支配スルトナツタ以上デ何々ハ習慣ニ任カセルト云フナラ成文法ハ立テン方ガ宜シイ
(松岡)
既ニ佛蘭西ニナリカケタカラ習慣ヲ見ナイト云フノハ怖イ話ダ
(南部)
習慣ガアツテモ成分ハ立テナケレバナラヌ
(淸岡)
内地雜居ニナルト牧畜ノ業ヲ始メルカ知レン其時ニナツテ此法律ガナケレバ困ル
(村田)
何處ノ國デモ外國ニハ皆此法律ガアルト云フコトハナイ
(淸岡)
牛ヤ馬ヲ飼ハン國ガアルダロウ
(村田)
牛馬ヲ飼ハン國ハナイ
(松岡)
日本ノ樣ニ牛馬ヲ少ナク飼ウ國人恐ラク少イダロウ
(南部)
之ガナイト或ハ村田君ノ樣ニ賃借デ支配スル人モアロウシ或ハ習慣ニ依ル人モアツテ困ルダロウ
(松岡)
習慣ニ從ヘバ宜シイ
(南部)
習慣ガアレバ習慣ニ從フト云フコトヲ書クガ宜シイ
(委員長)
牛ヲ喰ウコトモ段々多クナルシ羊モ多クナルダロウ羅紗製造所モ出來ルカラ他日牛ヤ羊ヲ飼ウコトガ殖ヘルニ違ヒナイソレヲ農商務省トカ地方トカデ勝手ニ法律ヲ作ツテ支配スルガ良イカ一定スルガ良イカト云フト民法上デ他ノ法律ト權衡ヲ取ツタモノヲ置クガ宜シイ
(松岡)
各地デ法律ヲ作ルコトハ出來マスマイ
(委員長)
法律ハ政府デナケレバ作レンガ草按ヲ作ル今日デモ農商務大臣ハ二十五圓以下ノ罰金ヲ當テルコトガ出來ルカラ草按ヲ作ツテ省令ニ出スト云フコトハ出來ンコトハアルマイ
(松岡)
ソレハ出來マスマイ
(淸岡)
困マツテ後法律ヲ作ルノハ良クナイ
(大尾崎)
法律ハ必要ガアツテ出來ルノデス
(南部)
處ガ之ハ皆出來ナイモノダ其主義デ出來テ居ルノダカラ仕方ガナイ
(松岡)
羊ヲ飼ウモノガナイガ羊ヲ飼ウモノガアツタラコウスルト云ツテモ何モ役ニ立タン
(委員長)
外ニ何モナシニシテ賃貸借バカリデ民法ガ定マルト賃貸借ニナイ丈ケノ分ヲ各省大臣ガヤルコトガ出來ルカラ農商務大臣ハ此範圍内デヤルト云フコトガ云ヘルデスソレハ省令ニシテヤラレルカ法律ニスルカハ分ランガ賃借ト云フ一ツヲ以テ萬事ヲ定メタモノト見ナケレバナランソウスルト農商務ノ人ガ是レ丈ケデハ困ル一般ニ家ヲ貸シタモノト同ジニ論ジラレテハ困ルダロウト云フ論ガアリマス
(松岡)
必要トナレバ國會ガ開ケテ法律トナリマシヨウ
(委員長)
賃貸借ノ範圍ヲ超ヘシ以上ハ農商務省デ出來ンコトハナイ
(元尾崎)
從來民間ノ權利義務ノアルコトヲ省令デ支配スルコトハ出來マスマイ
(委員長)
現ニ栗塚ノ云フ樣ニ丹波丹後ノ樣ナモノガアツタラ法律ガナケレバ困ルダロウ
(元尾崎)
ソレハ慣習ニ依ル
(委員長)
慣習ト云フコトガ法律ニナケレバ慣習ニ依ルコトハ出來ナイ若シ之ヲ削ルナレバ畜類ノ貸借ハ慣習ニ依ルト云フ明文デモナケレバ尋常ノ賃貸借デヤルコトハ出來ナイ
(南部)
慣習ニ違ウト云フノミデアルカラ慣習ニアルモノハ適用シナイト云フ意味ヲ加ヘレバ宜シイ
(元尾崎)
佛蘭西ニアルカラ日本デヤルト云フコトニナル
(淸岡)
白耳義トカ伊太利トカニナイト云ツテ削ツタノダ
(委員長)
白耳義ニアツタノヲ取ツタ
(松岡)
佛蘭西デモ一向實際ハナイト云フ
(委員長)
賃貸借ハ萬般ノコトヲ含ンデ居ルト云フ處ガ畜類ノコトダケハ慣習ニ依テヤルト云フコトハ出來マイ
(松岡)
肥料ヲ取ツテ下草ヲ踏マセテ一二年經ツテ取ルト云フモノガ出テ參リマス處ガソレハ賃貸借ニアリマセンソレハ土地ノ習慣ニ依ラナケレバナランソレモナケレバ條理デヤリマス
(委員長)
利息ノ代ハリニ肥料ヲ取ル位ナコトハ出來マシヨウガ獸類ノ賃借ハ一般ノ賃借ニ依ラント云フコトハナイ
(南部)
村田サンノ樣ニ賃貸借ニ依ルト云フテハ困ル
(村田)
慣習ノアルモノハ慣習ニ依ル
(大尾崎)
裁判上ニハ差支ナイ
(委員長)
之ヲ削レバ何カ換ヘル言葉ガナイトイカン
(松岡)
貸シタ馬ヲ取リ返スニハ何デ貸シタト云フコトヲ云ハナケレバナラン賃ハ取ルカト云フト賃ヲ取ルノデハナイ向ウガ喰ハセテ呉レレバ大キクナルノヲ目的トシテヤツテアリマスト云フト賃貸借ニソウ云フ貸借ハアリマセン
(委員長)
物ヲ喰ハセル代ハリニ但馬ノ慣習ハコウデアルカラ損失ガアツテモ互ニ辨償ハ出來ナイト云フ家ノ方デ云フト修繕ヲ怠レバ出ルト云ハレテモ仕方ガナイ裁判官ガ適用ニ困ルダロウ馬ヤ牛ハ此ノ賃貸借ノ外ノモノト云フト習慣ヲ探ス樣ニナル
(松岡)
家ハ只貸シテ修繕丈ケハ向ウニサセルト云フコトハ賃貸借ノ何處ニモアリマセン
(委員長)
其時ニ家モ馬モ一所ニ見ルカ見ナイカ馬ハ別ダト云フ考ヘガ出ヨウガ或ハ家ヲ貸スノト同ジニ見ルカト云フト裁判官ハ土地ヤ家ノ賃貸借ニ依ル樣ニナルダロウカラ畜類ノ賃貸借ハ慣習ニ依ルト云フコトヲ云ハント困ル
(松岡)
ヤツテモ差支アリマセン物ヲ使ヘバ賃ヲ出スノガ定義デ御座イマス馬ヲ預ケテ使ハセテ養ウノハ賃ノ代ハリダト云フト同ジニナリマス之デ見ルト使用サセルト云フコトモ分ラン何モ分ランデ出來テ居ル時分ニハドウスルカト云フ樣ニナリマス
(委員長)
子ガ出來テモ其子ハ賃借人ガ皆取ツテ仕舞ウト云フ樣ニナル
(松岡)
ソレハ當リ前ノ馬ヲ一匹使ウ爲メナレバ借馬ヲ借リテ子ヲ生メバ親ノ方ヘ付カセテヤルデ御座イマシヨウ
(委員長)
其牝馬ヲ借リテ使ウ中ニ歐洲邊ノ如ク使ツタ跡ハ放シテ置クト云フトキハ何處ノ牝馬ト孳尾ウカ知レン其時ハ其子ハ親ニ付クトハ云ヘン
(松岡)
元トヲ持ツテ居ルモノニ付イテ來ルノガ當リ前デス御心配ニハ及ビマセン
(箕作)
裁判官ガ間違ヘテ使用賃借ニスルカ知レン畜類ノ賃借ハ習慣ニ從フト云フコトヲ賃貸借ノ終リヘ入レテ置イテモ良カロウ
(松岡)
ソレガ宜シイ
(村田)
ソレガ宜シイ
(南部)
削除スルナラ習慣ニ依ルト云フコトハナイ方ガ宜シイ
(淸岡)
慣習ニ依ルト云フコトヲ加ヘテ之ヲ削ルノハ甚ダ不同意ダ
(松岡)
ソレハ第二ノ問題ダ
(渡)
私ハ之レヘ揭ゲンデ他日特別法ニ揭ゲル
(北畠)
私モ削ツテ特別法ヲ以テ必要ノトキニ拵ヘル
(大尾崎)
私ハ置ク
(箕作)
削除ガ宜シイ
(元尾崎)
削ル
(委員長)
ソレデハ削除ガ多數デスカ
(箕作)
慣習ニ從フト云フコトヲ入レルカ入レンカ
(南部)
ソレハ不同意デス
(栗塚)
ソンナコトヲ云フト皆慣習ノアルモノハ慣習ニ依ルト書カナケレバナリマセン
(委員長)
二三年ノ後ニハ必ラズ設ケナケレバナラント云フコトガ來ルニ相違ナイ
畜借ノ章ハ削除スルコトニ決ス
于時午後四時閉會