法律取調委員会 民法草案再調査案議事筆記 第24回
参考原資料
- 法律取調委員会 民法草案財產取得編再調査案議事筆記 , 自 第二十二回 至 第二十五回 [国立国会図書館デジタルコレクション]
備考
- 未校正のテキストデータです.
民法草案第二編財產篇再調査案第二十四回議事筆記
(賃貸借ノ部)
明治二十一年十一月二十六日午前九時十五分開會
(箕作)
ヤリマシヨウ
第條〔新〕朗讀ス
第 條〔新〕 土地ノ賃貸借ニシテ期間ヲ定メサルモノ又ハ期間ヲ定メタルモ默示ノ更新アリタルモノハ耕地ニ付テハ主タル收獲季節ヨリ不耕地ニ付テハ返却セシム可キ時期ヨリ一个年前ニ解約申入ヲ爲スニ因リテ終了ス
賃貸セシ建物ニ具ヘタル動產又ハ用方ニ因ル不動產ト看做ス可キ動產ノ賃貸借ハ其建物ノ賃貸借ノ終了スルニ非サレハ終了セス
(村田)
成程之ハ前カラ云フト入レヌト惡イ樣デス
(槇村)
之ハ宜シイ樣デス
(南部)
詰リ六十二條ヲ二ツニシタノデス
(元尾崎)
土地ヘ建物ヲ建ツタトキハ何フナリマスカ
(南部)
ソレハ地上權ニナリマス
(村田)
地面ヲ借リテハ地上權デス
(元尾崎)
東京抔デ地所ヲ借リテ家ヲ建ツル者ハ皆地上權デスカ
(南部)
地上權デス
(元尾崎)
耕地ノ方ハナイ樣ナモノデスネ
(村田)
馬デモ飼フトカ云フ牧場ノ樣ナモノハアリマシヨウ
(元尾崎)
牧場ハアリマス
(淸岡)
返却セシム可キト云フノハ如何ナル時期ガ返却セシム可キニナリマスカ
(村田)
前ニ云テ居ルガ六十一條ト同ジコトデ地面ヲ渡ス時ノ時期ト地面ヲ返ス時、返却セシム可キ時期ヨリ一ケ年前カラ、來年返スカラ此ノ一月スルノデ、一年前ニ解約申シ込マナケレバナラン
(南部)
收獲ノ季節ト同ジ樣ニナルノデス丁度山ヲ借リタトシテ下草ノ苅リ時ト云フ樣ニ見テ居リマス
(松岡)
季節ハ、極マツタ收獲ス可キガアレバ其時ヨリ一年前、又何時デモ返セラルルモノモ矢張一年前デス
(槇村)
來年十二月返サウト思ヘバ此十二月申込ヲスルノデスネ
(元尾崎)
詰リ一ケ年前デス
(松岡)
收獲ノ極マツタ物ガアレバ凡ソ間ヲ一年置ケバ宜シイノデス
(元尾崎)
之ハ宜サウデスガ返却セシメント欲スル時ヨリデスネ
(大尾崎)
云ヒ分ハアリマセン
(箕作)
二項ハ動產又ハ用方云々ハ建物ニ具ヘタル不動產ト看做スガ被ルノデシヨウ
(松岡)
左樣デス
(元尾崎)
疊建具モ具ヘタル動產デシヨウ
(栗塚)
賃貸セシ建物ニ具ヘタル動產ノ賃貸借ハトソレカラ用方ニ因ル不動產ト看做ス可キ賃貸借ノ云々デアリマス
(村田)
動產ノ賃貸借ト云フニ係ルノデシヨウ
(南部)
用方ニ因ル不動產ハ建物ニ付タ物ヲ云フノデス
(村田)
疊建具モ付クノデス
(大尾崎)
往キマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第百六十三條朗讀ス
第百六十三條 解約申込及ヒ返却ノ時期ニ關スル前數條ノ規定ハ其時期ニ付キ確實ナル地方ノ慣習ナキトキニ非サレハ之ヲ適用セス
(栗塚)
「確實ナル」ト云フ字ハ削除シタイ、地方ノ慣習云々デ澤山デ御座リマシヨウ
(松岡)
宜カロウ
(北畠)
尤モデス
(箕作)
宜カロウ
(元尾崎)
確實デナカツタラ何ウシマスカ
(南部)
ソレハ慣習トハ云ヘヌカラ
(箕作)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ「確實ナル」ノ四字ヲ削リ他ハ原案ニ決ス
第百六十四條朗讀ス
第百六十四條 如何ナル場合ニ於テモ賃借人ノ權利ノ存スル一切ノ收獲物ヲ收去スル前ニ賃借ノ終了シタルトキハ賃貸人又ハ新賃借人ハ前賃借人ノ之ヲ收去スルニ委ヌルコトヲ要ス
又賃借人ハ土地ノ收獲物ヲ收去シタル部分ニ於テ賃貸借ノ終了前ニ急要ノ作業ヲ爲スコトヲ賃貸人又ハ新賃借人ニ許スコトヲ要ス但賃借人此カ爲メ確實ノ妨害ヲ受ク可キトキハ此限ニ在ラス
(栗塚)
此所モ「確實ノ」ノハ削テ「爲メ妨害ヲ受ケ云云」デ宜ササウナモノデス
(村田)
此所ハ「確實」ハ入用デシヨウ
(栗塚)
眞面目ナ妨害ト云フ字デスカラ
(村田)
總テ「確實」ト云フハ除レバ宜シイガ前ニ殘テ居ル所モアリマスカラネ例ヘバ占有ノ所ニモ確實ノ云々ト云フノガ多クアリマスカラ置ク方ガ宜シイ
(松岡)
必ラズナケレバナラント云フコトモナイ又アツテモ害ハナイト云フ位ヒナモノデアルカラ置カナケレバナラント維持スル要用モアリマセン
(箕作)
削テモ宜シイ
(南部)
確實デナイ妨害ガアツタライカヌト云フコトガアリマシヨウカ
(箕作)
妨害ハ「マジメナ」妨害ニハ違イアリマスマイ
(松岡)
作業ト云フ字ハ矢張物ヲ作ルニモ作物ヲ仕付ケルモ籠ルノデスカ
(栗塚)
左樣デス
(松岡)
麥ヲ作タ跡綿ヲ作ルトキ替ル人ハ麥ノアル中ニ綿ヲ作ラナケレバナラン
(箕作)
其中ト云フノデスネ、「確實ノ」ハ不必要デス
(元尾崎)
「確實ノ」ハ除リマシヨウ
(北畠)
之ハ日本デ云フト「ケヤケキ」ト云フ最モ著シキト云フ樣ナ意味デスネ
(栗塚)
左樣デス尤モト云フ妨害ヲ加ヘルト云フノデス
(北畠)
「確實ノ」ハ除テ宜シイ
(渡)
除テ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ末項「確實ノ」ノ三字ヲ削リ他ハ原案ニ決ス
第百六十五條朗讀ス
第百六十五條 賃貸人カ賃貸物ヲ讓渡サントシ又ハ自己ノ爲メ若クハ他ノ特別ナル原因ノ爲メ之ヲ取戾サントスルトキハ期間ノ滿了前ト雖モ賃貸ヲ解除スルコトヲ得ルノ權能ヲ留存シタル場合又賃借人カ賃貸借ノ無用ト爲ル可キ未定事故ヲ慮カリテ同一ノ權能ヲ留存シタル場合ニ於テハ各自ニ前數條ニ定メタル時期ニ於テ豫メ解約申入ヲ爲スコトヲ要ス
(栗塚)
此條ハ「回收」トアルハ「取戻」ト直シマシタソレカラ「留存」ハ「留保」ト直シタ丈ケデ御座イマス
(松岡)
「解除」ハ「銷除」デハアリマセンカ
(栗塚)
仰セノ通リデアリマス
(元尾崎)
何時ニテモ取戻スト云フ約束ガアツテモ一年前ニ云ハナケレバナランガ之ハ困リマスネ
(淸岡)
場合ト雖モト云フノデスカネ一年ノ時期前ニヤルナラオカシイデハナイカ矢張場合デモ前數條ノ云々トシテハ如何
(南部)
期限ノ滿了前ト雖モト前ニアルカラデス、箇樣ナ場合ニハ各自兩方トモ前數條ニ定メタ期間ニ依テ豫メ申込ト云フノデ意味ハ雖モトナルノデスガ斯フシテ置イテモ分リマス
(元尾崎)
於テモ尙ホトシテハ如何
(淸岡)
賃貸賃ヲ拂フト云フコトハ外ニアリマスカネ滿了、了終後ト雖モ其引渡迄ハ拂ハナケレバナランコトガアリマスネ
(南部)
ソレハ默示ノ更新デ行クカラデス
(淸岡)
終了ト云フコトニナツテ居リマスネ解約申入レニ依テ賃貸借ハ終了スルデシヨウ終了シテ仕舞テ終了後一年アリマスカ
(松岡)
否、申入タ時終ルノデハナイ一年ノ期間内ハ往クノデス
(淸岡)
解約申込ニ因テ終了ストアリマスゼ、終了スト云フト消ヘテ仕舞樣ニ見ヘル
(南部)
因テトアルカラ、但書ガ原案ニアツタガ再調査デ削タノデスカラ申テ置キマス
(箕作)
イラヌコトデス
(松岡)
イラヌ、デス
(元尾崎)
書イテ置カヌデモ左樣ナリマス
(村田)
百五十七條第五ハ吿知トアルケレドモ彼所ハ申入トシテ宜シイ
(栗塚)
解約申入ヲ送達シタ後チト云フノデス
(村田)
ソレダカラ申入デ宜シイノデス
(南部)
行フデハナイカ
(大尾崎)
行キマシヨウ
本條ハ「回收」ヲ「取戻」「解除」ハ「銷除」「留存」ハ「留保」トシ他ハ原案ニ決ス
第百六十六條朗讀ス
第二節 永借權及ヒ地上權
第一款 永借權
第百六十六條 永貸借トハ期間二十个年ヲ超ユル不動產ノ賃貸借ヲ謂フ
永貸借ハ五十个年ヲ超ユルコトヲ得ス此期間ヲ超ユル貸借ハ之ヲ五十个年ニ短縮ス
永貸借ハ常ニ之ヲ更新スルコトヲ得然レトモ其更新ノ時ヨリ五十个年ヲ超ユルコトヲ得ス
當事者カ永貸借契約ナルコトヲ明示シ其期間ヲ定メサルトキハ其貸借ハ四十ケ年ニシテ終了ス
本法頒布以前ニ期間ヲ定メテ爲シタル不動產ノ賃貸借ハ五十个年ヲ超ユルモノト雖モ其全期間有效ナリ
本法頒布以前ニ期間ヲ定メスシテ爲シタル荒蕪地又ハ未耕地ノ賃貸借及ヒ永小作ト稱スル賃貸借ノ終了ノ時期及ヒ條件ハ日後特別法ヲ以テ之ヲ規定ス
(栗塚)
本條ハ二十ケ年トアルハ三十ケ年ト直リマス
(村田)
四十ケ年ニシテ終了スト云フハ如何ナル理由デアリマスカ詰リ永貸借ハ五十年迄行クカラ五十年ニシテモ宜ササウナモノデスカ修正ノ理由ヲ聞度イ
(松岡)
中數ヲ取タノデス中間デ先ヅ無期ノモノナラ中間デ宜カロウト云フノデシヨウ短イ極點ト長イ極點ヲ折衷シタノデシヨウ
(箕作)
末項ハ本法頒布前云々トアルノハ「賃貸借ノ終了ノ時期」トアル彼レニ係ルノデシヨウソレナラ「永小作ト稱スル」ハ前ノ「本法頒布前ニ爲シタル」アレニ係ルノデスカ
(南部)
左樣デス
(箕作)
永小作ハ此法頒布前ニシタハ永小作ハ特別法デ極メ頒布後ハ永小作ノ名ハナクナルカラ永借權デヤル積リデスカ
(栗塚)
左樣デス
(箕作)
當リ前法律上何ント云フトモ是カラハ永借ト云フノデスカ
(栗塚)
左樣デス而シテ五十ケ年デ行クノデス
(大尾崎)
四十年ト今度入レタノデスネ
(栗塚)
左樣デス
(元尾崎)
之ハ五十年ニシテモ宜ササウナモノデス永貸借ト云ヘバ永代デ子々孫々マデ行クノダカラネ
(村田)
ソレナラ此項ハナクツテモ宜シイノデ四十年トシテ見レバイルノデス
(南部)
期間ヲ定メテナイノダカラ中ヲ取タノデ宜シカロウ
(北畠)
三十年カラ五十年ダカラソレヲシテナケレバ極所ノ長期ニ行クモ穩當ナラヌカラ之ガ宜カロウ
(元尾崎)
私ハ五十年ガ宜カロウト思フ
(大尾崎)
中間ヲ取タノデ宜カロウト
(箕作)
宜ウ御座イマシヨウ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ「二十ケ年」トアルヲ「三十ケ年」トシ他ハ原案ニ決ス
第百六十七條朗讀ス
第百六十七條 永貸借ハ永貸借契約ヲ以テスルニ非サレハ之ヲ設定スルコトヲ得ス其遺贈又ハ豫約ニ付テハ第百二十四條ノ規定ニ從フ
(元尾崎)
遺贈デ永貸借スルハ何フカ知ラヌ
(松岡)
ソレハ、アタマ、デ癇癪ニ障ル、賣買デモ賃貸借デモ遺言デスル抔ハ餘計ナコトデス
(渡)
之ハ宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第百六十八條朗讀ス
第百六十八條 當事者相互ノ權利及ヒ義務ハ永貸借ノ設定契約ヲ以テ之ヲ定ム
特別ノ約束ナキトキハ下ノ規定ニ從フノ外通常賃貸借ノ規則ニ從フ
(栗塚)
契約トアルハ名義デスルガ此ニ名義トスルハ如何ナモノデスカ
(松岡)
名義トハ云ヘヌ
(栗塚)
「設定契約」デ宜シウ御座イマシヨウ、何ゼナレバ跡デヤルカラ契約デハナイカト云フ論モアリマシタガ
(箕作)
契約デ宜カロウ
(栗塚)
矢張契約ニシテ置キマシヨウ
(大尾崎)
宜ウ御座イマシヨウ
本條設定「名義」トシタルヲ「契約」トシ他ハ原案ニ決ス
第百六十九條朗讀ス
第百六十九條 永借人ハ永借地ノ形質ヲ變スルコトヲ得但永久ノ毀損ヲ生セシメサルコトヲ要ス
永借人ハ常ニ沼澤ヲ乾涸スルコトヲ得又永借地ノ作業ニ益ス可キトキハ其土地ヲ通過スル水流ヲ變轉スルコトヲ得
(村田)
「益ス可キトキ」ト云フハ何フ云フモノデシヨウカ
(元尾崎)
法律ノ出ル前ニ三十年ノ約束シテ借リマシタハ矢張永借ト看做シマスカ
(大尾崎)
永借デス
(元尾崎)
法律ガ遡ル譯デスガ宜シイカネ
(大尾崎)
元トノ形狀ニシテ戻スカラ害ハナイ
(村田)
田ヲ畑ニ山ヲ畑ニスルモ性質ヲ變ヘルデシヨウ
(松岡)
性質ト云フヨリモ形質ト云フノガ當ル穴ヲ掘タリ何カスルノハ形質ヲ變ズルト云フ方ガ宜シイ
(渡)
形質デ宜シイ
(南部)
形質ト云ヘルカ否實ハ形質トハ云フタ
(村田)
性質デスネ
(栗塚)
「永借地ノ趣キヲ變スルコトヲ得」デ宜シイ
(北畠)
形狀ト云フノデスネ
(淸岡)
三角ノ地面ヲ四角ニシテモ宜シイノダカラ形質デ宜シイ
(村田)
益ス可キトキト云フノハ元トノ樣ニシテハ如何
(松岡)
益ス可キデ支イナイ
(元尾崎)
宜シイ
(渡)
宜シイ
(大尾崎)
宜シイ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第百七十條朗讀ス
第百七十條 永借人ハ原野ヲ開墾スルコトヲ得然レトモ所有者ノ承諾アルニ非サレハ輪伐ニ供シタル小木林ヲ取除クコトヲ得ス輪伐ニ供ヘサル樹木ト雖モ既ニ二十个年ヲ過キ且其成長ノ年期カ貸借ノ期間ヲ超ユ可キモノハ亦同シ
(栗塚)
「原野」ト云フ字ハ「叢棘」トシタイ
(松岡)
原野ノ方ガ宜シイ
(栗塚)
棘ノアル土地ヲ主トスルノデスガ原野ト云フト數十里ニ渉タ樣ナ地ヲ云フ樣デスカラ
(松岡)
ソレハ「ネボケーシヨーン」ト云フモノデス原野デ宜シイ
(栗塚)
原野ト云フト那須原ト云フ樣ニナツテ仕舞マス
(箕作)
那須原モ這入テ宜シイノデシヨウ
(栗塚)
宜シイ
(南部)
山林原野ノ外ハナイカラ宜カロウ
(元尾崎)
小木林ト云フノハドウデスカ
(村田)
小樹林デスネ
(栗塚)
小木ノ林デ御座リマス薪ヤラ何ヤラ隨分アリマシヨウ
(元尾崎)
竹籔ハドウデスカ
(松岡)
皆ナ這入ノデス
(元尾崎)
無理デスネ
(松岡)
民法ハ皆ナ類ヲ以テ押サナケレバナラン
(淸岡)
小樹林デ宜シイ
(南部)
小樹林ハ宜シイ
(北畠)
林叢トハ云ヘンカ
(栗塚)
輪伐ニ供ヘタルハ何フデシヨウカ
(箕作)
宜イデシヨウ
(南部)
宜シイ
(淸岡)
輪伐ト云フノハ順番ニ伐テ行クノデスカ是ハ左樣デハナイデシヨウ
(栗塚)
適宜ニ採伐スルノデス
(淸岡)
順番ニ伐ルハ澤山、山ヲ持テ居テ一方ヲ伐リ又一方ヲ伐リグル々廻ハツテスルノデアルガ是ハ左樣云フ場合デハナイ
(南部)
輪ハ左樣デナイ輪講抔ト云フグル々廻ハルノデ又輪回抔ト云テ一ツヲ云フノデ必ラズ此林ヲ伐タラ向ウノ林モ伐ル云フニハ及バヌ
(松岡)
小樹林ニ輪伐ハイラヌノデスネ原譯ニ依ルト小樹林ノ樹木ハ勿論ト云テモ宜シイソレカラ輪伐ニハ相違ナイガ樹木ニシテト大キナ方ヲ云フデス
(淸岡)
定期ニ伐ルト云フノダロウ
(渡)
定期伐採ト云フ方ガ宜シイネ三月伐ルノト八月伐ルノト極マツテ居ルカラ
(箕作)
時ヲ極メテ伐ルヲ輪伐ト云タノデス
(松岡)
上ノ輪伐ヲ除レバ宜シイノデ、原ノ譯モ小樹林ノ輪伐ハナイ
(村田)
輪伐ニ供ヘナイ樹木モアリマシヨウ
(松岡)
小樹林ヲ輪伐ニ供ヘルコトハナイデシヨウ、佛蘭西ニモ矮樹林デ輪伐ニ供フルモノハアリマスマイ
(箕作)
小樹林ト云フノハ時ヲ極メテ根カラ伐テ仕舞フ卽チ未ダ大キクナラヌニ伐テ仕舞フヲ云フノデス
(北畠)
定期採伐ノモノデスネ
(大尾崎)
定期採伐ニ供シタル小木林トシタラ宜シイダロウ
(南部)
六十三條ニハ大樹木トアルシスルカラ、上ノ「輪伐ニ供ヘタル」ハ削リマシヨウソレカラ次ニ伐採ニ供ヘタル樹木ト雖モトヤリマシヨウ
(松岡)
上ノ「輪伐ニ供ヘタル」ハ再調査デ入レタノデシヨウ
(栗塚)
輪伐ト云フ字デ伐採ヲ現ハスノデス
(南部)
下ニモアリマスカラ何方カ變ヘナケレバナラン六十二條ニハ定期採伐トアリマス
(淸岡)
定期採伐ニ供ヘタル小樹林トヤリマシヨウ
(渡)
ソレハイラヌノデス
(松岡)
小樹林ト云フノハ、テンデ、承諾ヲ得ナケレバヤンナイノデス
(淸岡)
小樹林ト云フモノハ伐ルコトハ宜シイガ拔クコトハ出來ヌト云フノデ、拔取ルコトヲ得ズデス
(南部)
定期採伐ニ供ヘタルト云フト、供ヘザルハドウデスカ
(淸岡)
ソレハ宜シイ
(南部)
左樣デハナイノデス
(大尾崎)
取リ除クコトハ出來ナイノデス
(元尾崎)
輪伐ニ供ヘタモノデナケレバ伐ルコトモ出來ヌノデスネ
(箕作)
小樹林ト云フモノハ定期ニ伐ルハ伐ルベキ筈デ伐ルハ宜シイガ拔クコトハ出來ヌノデス
(南部)
定期採伐ガ供ヘタルハ除クコトヲ得ズト云フト供ヘヌモノハ宜イカトナルカラ
(淸岡)
芽ヲ出シテ伐ルハ宜シイガ樹木ナラ拔クコトハ出來ヌト云フノデス
(南部)
六十一條ヲ御覽ナサイ、用益者大小樹木及ビ云々トアリマスガ矢張定期ノ採伐ヲ爲スノデ小樹林ハ定期ノ採伐ノ方ニ供ヘタカ供ヘナイカヲ見ル如キデハアリマセン
(村田)
用收權ハ地上權トハ違ヒ性質ヲ變スルコトモ出來ルカラ違ヒマス
(南部)
小樹林ニ供ヘタル供ヘナイノデ區別ハ御座リマセン
(村田)
定期採伐ニ供ヘタラ取レヌガ供ヘザレバ取テモ宜シイ二十年以上成長期間中ハ取レヌガ其他ハ取テモ宜シイノデス
(南部)
定期採伐ニ供ヘタルト云フ字ハ元トナイノデス
(村田)
今度入レテ來タノデシヨウ
(南部)
供ヘタルト云フト供ヘヌモノガアル樣ニ聞ヘル
(村田)
供ヘタルト供ヘナイノトアルノデス
(松岡)
左樣デハナイ矮木ダカラ櫻ヲ拔クコトハ出來ヌガ伐ルハ構ハヌト云フノデス
(淸岡)
定期伐採ト云フコトハ云ハナケレバナラン、總テ小樹林ハ取リ除クコトハ出來ヌカ
(南部)
出來マセヌ
(松岡)
小樹林ハ伐ルノガ主義デス伐レバ又出テ來ルノデ矮木ハ如何ナル禁制ガアルカト云フニ悉ク根ヲ出スコトハ出來ヌソレデハ芽ガ出レバ伐テモ宜シイカ伐ルハ宜シイケレドモ、ヒツクリ反シテ耕地ニスルコトハ出來ヌト云フノデスカラ輪伐ニ供ヘタル小樹林ト云フガ惡イノデス
(淸岡)
ナクツテモ其割ニナルノデス
(松岡)
輪伐ト云フ字ヲ除ケレバ宜シイ
(箕作)
小樹林ハ佛蘭西ノ樣ニ伐ルコトヲ得ルト見レバ宜シイ
(松岡)
小樹林ハ拔去ルコトヲ得ズ尤モ伐ルノハ宜シイ
(槇村)
小樹林ト云フモノハ年季デ伐ルモノガアレバ宜シイガアリマス、年季デ伐ラヌモノデモ取除クコトガ出來マスカ
(南部)
年期デ伐ラヌモノガアリマシヨウカ
(松岡)
伐木ニナルノデ小樹林ト云フノハアリマセン
(槇村)
ソレガアレバ宜シイガネ
(南部)
輪伐ニ供ヘタルト云フト輪伐ニ供ヘナイ樹林ガアリマスカ
(淸岡)
アリマス
(南部)
如何ナルモノデスカ
(淸岡)
幾ラモアリマス
(南部)
決シテアリマセン皆ナ定期ニ伐テ居ルノデス
(淸岡)
小樹林ハ伐ル許リノモノト云フコトハ決シテアリマセン樹ガ小サイトキハ小樹林大キクナルト大樹林ト云フ位ヒナモノデス
(渡)
大小樹林ト云フ字ガアルノデスカ
(箕作)
左樣デス伐ル可キ樹ト云フ字ニ直セバ宜シイ原語ノ直譯デ云フト、伐採林ト云フノデス
(松岡)
小樹林ト云フノハ事實ニハ當ラヌガ一ノ論トシテソレデモ輪伐ニ供ヘト云フノガ何所ニアルカ、ナイカハ一ノ問題デス
(箕作)
私ハ小樹林ト云フハアルト思フソレダカラ淸岡サンノ論モアルノデシヨウ
(松岡)
六十一條デ小樹林竹林ハ勿論云々トアル彼所デ分ツタハ誤解シテ分ツタト云ハナケレバナラン
(箕作)
小樹林ト單ニアリマスガ伐採ス可キト云フ積リデスガ左樣モ云ヘヌカラデス
(松岡)
小木林ト云フハ何ゾ別ニ字ガ出來レバ格別此所デモ上デモ小樹林ニ輪伐ニ供ヘル供ヘナイノ區別ハナイト云ハナケレバナラン
(箕作)
其所ハ御尤モデス
(渡)
小樹林ハアリマスネ
(箕作)
小木林ト云テ極マツテ伐ルトハ日本語デハ云ヘマセヌ
(松岡)
私ハ二ツノ問題ニシテ輪伐ニ供ヘタル小樹林ハナイカラ之ハ無論削ルトシテ、次ハ小木林ト云フ字デ柳ノ樹ヲ伐ル樣ニ見ヘヌカラ文字ヲ擇バナケレバナラント云フ二ツノ問題ニシマシヨウ
(大尾崎)
字ヲ擇ブハ六ケ敷イ
(箕作)
原文ニ「ボア」「タイ」トアリ「伐ル」「森」トアルノデス
(南部)
小樹林ト云フ字ハ同ジデアリマスガ百七十條ニハ伐採ス可キトアリ六十一條ニ伐採ス可キトナイト違ヒマス
(箕作)
六十一條ハ小林許リデハナイ土地ノ用益者ガアリ土地ノ内デ大小樹林ト云フモノガアルノデス
(槇村)
小林ハ樹林ノ儘デ借リテソレヲ用益スル人デス此所ハ土地ヲ借リテ土地ニ付テ收益シナケレバナラントスル土地ニ樹木ガアル、樹木ハ何セ斯フセト云フ樹林ト前ニアツタカラ此所デ樹林ト云タカラ定期デ伐ルモノト極マルト惡イ
(南部)
此所ヲ直セバ前モ直サント此所許リ輪伐ニ供ヘタルト云フハ入レ惡イト云フノデス
(大尾崎)
同ジニシテモ宜シイデシヨウ
(南部)
輪伐ニ供ヘル小樹林ト供ヘナイモノト二ツアリマスカ
(大尾崎)
小樹林ト云タラ必ラズ輪伐ニ供ヘタモノトハ云ヘマセヌガ併シ適當ナ字ガナケレバ輪伐ニ供ヘタルト云ハナケレバナラン
(南部)
スルト六十一條ト支イガアリマス
(渡)
採伐樹林トカ伐木樹林トカ云フ字ヲ拵イテハ如何デスカ
(栗塚)
年々伐テ新芽ヲ生ヤセル山ハ日本デハ何ト云フカ
(元尾崎)
薪山デス
(北畠)
焚木山デス
(渡)
伐ルコトニ極マツタ山ト見レバ宜シイ
(箕作)
輪伐ニ供ヘタルト云フト供ヘナイモノガアリマスカ日本ニハアリマスマイ
(槇村)
アリマシヨウ
(箕作)
アリマスマイ、アレバ何ソナモノデスカ
(南部)
アリマセン
(村田)
植木抔ハアリマス、柴ナドハ小樹林デアレバ伐ラレテハ溜ラヌ
(箕作)
採伐林ニシテ置キマスカ
(渡)
宜シカロウ
(北畠)
採伐林ト云ヘバ論ハナイ
(松岡)
新規ニ字ヲ拵ヒルト日本デハ伐採林ハドウナルカ採伐林ト云フハオカシイダロウ
(北畠)
焚木林ト云テハドウカ
(箕作)
小樹林ヨリモ採伐林ノ方ガ宜シイ
(元尾崎)
定期採伐ニ供ヘタル樹林ヲ取リ除クコトヲ得ズトシテ宜シイト思フ
(松岡)
左樣スルト、供ヘザルハ取リ除ケテモ宜シイカ
(村田)
定期伐採ニ供ヘタル樹木デ宜シイ
(南部)
樹木トナツテハ大變デアリマス
(栗塚)
林ノ字ハ止メテ、根カラ伐ル樹ト云フ字ハアリマセンカ
(元尾崎)
定期伐採トシテ宜シイ
(渡)
定期伐採デハアリマセン自由ニ伐ルノデス
(栗塚)
註ニモ立派ニ云テアリマスガ、炭薪ヲ造ルコトニ云テアリマス
(北畠)
焚木山デスネ
(南部)
此所許リデハ宜シイガ用益權ノ所デ困リマス
(松岡)
定期伐採ニ供ヘザルモハ決シテアリマセン性質上伐ル可キ筈ダカラ文字ヲ作ルニ及バヌ
(渡)
伐木林トシテ置キマシヨウ
(松岡)
六十一條デ小樹林ト唯ダノト分ケタカラ此所ハ輪伐ニ供ヘタルト云フ字ヲ除テ小樹林ヲ拔クコトヲ得ズト云テ置ケバ宜シイ
(栗塚)
幹ヲ大キクスル樹ト伐テ仕舞樹トノ區別デス
(元尾崎)
輪伐ニ供ヘタトカ定期伐採トアルカラ取リ除クコトヲ得ズガ分ルガ唯ダ小林ト云フト伐ルコトモ出來ヌ樣ニナリマス
(松岡)
ソンナコトハアリマセン
(元尾崎)
採伐林トヤリマシヨウ
(南部)
六十一條モ左樣ヤリマスカ
(北畠)
定期採伐ト云フコトヲ先ヅ入レルカ否ヲ起立ニ問フテハ如何
(元尾崎)
假リニ採伐林トシテ置キマシヨウ
(南部)
小木林ハ定期採伐ト云フニ及バヌト云フノデアリマスカラ、ソレハ別ノ話デアリマス
(元尾崎)
末文ニ論ガアルガ伐テ構ハヌト云フト根カラ取ルモ構ハヌカトナル、所ガ左樣デナイ大キナ樹ハ伐ルコトモ出來ヌノデ引拔クコトハ出來ヌト云フト伐テモ宜シイトナルノデ、所ガ左樣デハナイ、ダカラ精神ハ亦同ジデハイカヌ
(村田)
取除クトアルカラ之デ宜シイ、元トハ拔キ取ルトアツタノデス
(元尾崎)
意味ハ根ヲ取ルコトハナラヌト云フノデス、亦同ジト云フト伐ルコトモナラヌト云フハ無理ナ話デス
(箕作)
前ニハ定期ニ伐ル樹木ニアツテ而シテ斯フスルモノハ拔キ取ルコトハ出來ヌトアツタノデス
(松岡)
大キクナラセルノデス、大キクナラヌ樹ハ二十年後デモ宜シイ併シナガラ樹ハ何時デ終リカハ六ケ敷イ問題デス
(南部)
伐採木トナツテハ何フモ惡イソレヨリモ寧ロ伐採ニ供ヘタル木林ト云ヘバ格別デシヨウ、採伐林ト云フト林デ伐ラヌ樹ハナイトナルカラ、定期ト云フ字ガアツテ始メテ採伐ノ用ヲ爲スノデ、採伐セヌ林ハナイカラ
(元尾崎)
定期採伐ニ供ヘタル樹林ヲ取除クコトヲ得ズシテ宜シイ
(南部)
寧ロ其方ガ宜シイ
(栗塚)
大樹木デナイヲ見セルノデスカラ小樹林ト云ハナケレバナラン
(淸岡)
採伐ニ供ヘタル小樹林デ宜シイ
(栗塚)
小木林ヲ小樹林トナスツテハ如何
(南部)
六十一條ハ大小木林トアル小樹林ト云フハ小サイ林ニナリマス
(元尾崎)
小木林デ宜カロウ、ソレカラ亦同ジデハイカヌ
(南部)
亦同ジデ宜シイ
(元尾崎)
採伐スルコトヲ得ズト何ゼ書ケマセンカ
(淸岡)
二十年位ヒデ成長ノトナツテ仕舞樹ハアリマセン
(村田)
アルモノト見レバ伐テモ宜シイノデス
(松岡)
アレバト云フ位ヒナコトデシヨウ
(淸岡)
庭樹デモ二十年位ヒデ成長ガ止マル譯ケハアリマセン
(槇村)
アリマスマイ
(村田)
ナケレバ此ンナコトヲ云ハヌガ宜シイ
(南部)
二十年デ成長ガ止マルコトハアリマスマイ
(元尾崎)
採伐スルコトヲ得ズトヤツテハドウデスカ
(南部)
亦同ジデ宜シイ
(槇村)
採伐スルコトヲ得ズデ宜シイ
(大尾崎)
採伐スルコトヲモ得ズトシテ宜シイ
(栗塚)
定期採伐ニ供ヘタ小樹林、又定期採伐ニ供ヘザル樹木ニシテ云々超ユ可キモノハ之ハ取リ除クコトヲ得ズトシテハ如何
(箕作)
同ジコトデス
(南部)
原案デ宜シイ
(渡)
原案デ宜シイ
(槇村)
原案デ宜シイ
(南部)
定期採伐ニ供ヘナイノデ拔取ルコトガ出來ヌト云フノデシヨウ
(栗塚)
二十年過ギヌモノハ伐テモ宜シイノデス、小樹林ハ拔クコトハ出來ヌシ況ンヤ山ヲ開墾シヤウト云フトキ小樹林ガアツテ焚木デモ出ル必要ガアレバ拔テハイカヌノデ林ヲ保存シナケレバナラン其脇ニ二十年經タヌ杉ノ樹ガアルトソレハ伐テモ宜シイノデ二十年以上ハ伐ルコトハ出來ヌノデアリマス
(淸岡)
十年ノ慣習デヤツタモノガ三十年ナラ伐テモ宜イ抔ト云フハ困リマス
(北畠)
ソレハ別段ノ話デス
(栗塚)
之ハ用收權ト見合セテヤツテ來タノデアリマス
(大尾崎)
十九年モ經タモノヲドシ々伐ラレテハ溜リマセン
(淸岡)
百七十條ハ除テ仕舞テハドウデスカ
(南部)
樹木ニシテ三十年經ヌモノハ伐テ宜シイカ惡イカデス
(松岡)
伐テモ宜シイ
(栗塚)
拔ノデ宜シケレバ無論伐デモ宜シイデシヨウ、定期採伐ニ供ヘザル樹木デ、詰リ開墾シヤウト思タトキニハ引拔クコトガ出來ルノト出來ヌノトアルト云フノデス
(南部)
亦同ジダカラ引拔コトヲ得ズダロウ
(栗塚)
二十年超ヘタラ出來ヌト云タラ伐ルコトハ無論出來ヌト云フノデス
(淸岡)
二十年以内ナラ伐テ宜シイト云フ樣ナ暴ナコトヲ法律ガ教ヘルニハ及バヌ
(栗塚)
如何ナル樹ハ伐テ宜シイト云フノデス
(淸岡)
餘リ干渉過グルノデス
(栗塚)
引拔クコトノ出來ルト出來ヌハ斯フト云フノデス
(大尾崎)
十九年ノ樹ハ拔カレルノデスカ
(栗塚)
左樣デス
(大尾崎)
ソレハ溜ラヌカラ、箇樣ナコトハ法律ニ揭ゲナイガ宜シイ
(南部)
法三章デ役ヲシタ樣ナ譯ケトハ違ヒマス
(淸岡)
テーブル論デハ駄目デス
(槇村)
伐採スルコトヲ得ズトシテ往キマシヨウ
(南部)
ソレデハ上ハ小木林ヲ拔取ルコトヲ得ズ定期採伐ニ供ヘザル云々トシマシヨウ
(松岡)
宜シイ
(元尾崎)
二十年ヲ除ロウデハアリマセンカ、「樹木ニシテ成長ノ年期カ貸借ノ期間ヲ超ユ可キモノハ伐採スルコトヲ得ス」トシテ宜シイ
(北畠)
ソレデ宜シイ
本條ハ「輪伐ニ供シタル」ノ七字ヲ削リ「小木林ヲ拔取ルコトヲ得ス定期採伐ニ供ヘサル云々期間ヲ超ユ可キモノハ伐採スルコトヲ得ス」ト修正シ他ハ原案ニ決ス
第百七十一條朗讀ス
第百七十一條 永借人ハ如何ナル場合ニ於テモ所有者ノ承諾アルニ非サレハ主タル建物ヲ取除クコトヲ得ス從タル建物ト雖モ其存立ノ時期カ貸借ノ期間ヲ超ユ可キモノハ亦同シ
(元尾崎)
之ハ宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第百七十二條朗讀ス
第百七十二條 前二條ニ從ヒ永借人カ建物又ハ樹木ヲ取除キタルトキハ其物料及ヒ材木ハ所有者ニ屬ス
(元尾崎)
前二條デ取除クコトハ出來ヌノデハアリマセンカ
(南部)
其方ノモノデス
(北畠)
之ハ無論宜シイ
(元尾崎)
伐テモ所有者ニ屬シマスカ
(村田)
之ハ永借ノ然ラシムル所デス
(松岡)
小樹林ト云フ方ハ借リ人ニ屬シ大キ方丈ケ所有者ニ屬スノデシヨウ
(南部)
左樣デス
本條ハ原案ニ決ス
第百七十三條朗讀ス
第百七十三條 永借人ハ其分限ヲ以テ地底ニ在ル鑛物ノ採掘ヲ繼續スルコトヲ得ス
永借人ハ採掘ノ特許ヲ得タル者ヨリ所有者ニ拂ヘル償金ニ付キ何等ノ權利ヲモ有セス然レトモ右特許ヲ得タル者ノ地表ニ加ヘタル損害ノ爲メ賠償ヲ受クルノ權利ヲ有ス
(南部)
宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第百七十四條朗讀ス
第百七十四條 永借地ニ旣ニ採掘ヲ始メ且特別法ニ從フヲ要セサル石類石灰類其他ノ物ノ石坑アルトキハ永借人ハ其收益ヲ繼續ス
其石坑ヲ未タ採掘セス又ハ其採掘ヲ廢止シタルトキハ永借人ハ永借地ノ改良ノ爲メ石其他ノ物料ヲ採取スルコトヲ得
(栗塚)
本條ハ「且特別法ニ從フ」云々ノ數字ヲ削テ「永借地ニ既ニ採掘ヲ始メタル石、石灰砂利等ノ石坑アルトキハ」云々ト修正シタイ、之ハ御承知ノ通リ去年一月何日カノ會讓ニ申マシタガ農商務省カラ閣令カ何カアツテアレデ石ハ何デモ宜ウナリマシタカラ
(南部)
代理石抔ハ殘テ居リマス
(栗塚)
永借ニ云フ石ノ類ハ皆ナ許シテ仕舞マシタイ
(大尾崎)
原案デ宜シイ
(松岡)
原案デ宜シイ
(村田)
併シ特別法ニ從ハナケレバナランコトハナイ
(淸岡)
水晶抔ハドウカ
(元尾崎)
アレハ特別法デス
(箕作)
宜シイデシヨウ
(元尾崎)
灰ヲ地カラ採ルコトガアリマスカ
(栗塚)
アリマス
(元尾崎)
石灰ハ採掘スルモノデハアリマセン
(槇村)
石ヲ採掘シテ燒ノデス
(栗塚)
ソレカラ末項改良ノ爲メト云フハ改良ノミノ爲メトシタイ
(南部)
イルマイ
(村田)
改良ノ爲メデ宜シイ
(元尾崎)
改良ノミノ爲メト入レヤウ
(箕作)
改良ノミノ爲メデハナイ、唯ダ是丈ケノコトガ出來ルト云フノデアロウト思ヒマス
(栗塚)
註ニハ左樣云テハ居リマセン
(松岡)
言ヒ詰メレバ外ノコトハ出來ヌト云フハ自カラ分リマス
(南部)
定期產出物ノミト云フ條ガアルカラ宜シイ併シ前ノ文例ガアルカラ此所許リ入レヌト云フコトガ出來ヌカラ彼方等デ入レマシヨウ
(元尾崎)
行マシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第百七十五條朗讀ス
第百七十五條 永貸人ハ永貸借契約ノ當時ノ現狀ニテ永貸物ヲ引渡スモノトス
永貸人ハ貸借ノ期間大小修繕ヲ負擔セス
(渡)
宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第百七十六條朗讀ス
第百七十六條 意外ノ事又ハ不可抗ノ力ニ因リテ貸借ノ期間ニ起リタル毀損ハ借賃ヲ減スルノ理由ト爲ラス但第百八十一條ニ定メタル解除ノ權利ヲ妨ケス
(渡)
解除ハ銷除デシヨウ
(栗塚)
銷除デ御座イマス
(元尾崎)
七十五條デスネ當事ノ現狀ニテト云フハ何フ云フノデス
(栗塚)
約束シタ時ノ儘ト云フノデス
(淸岡)
之ハ前ニ大變議論ガアツテ若シ永借人ガ構ハズ置クト損害ヲ蒙ル虞アルトキハ永借人ヲシテ負擔セシムルト云フ但書ヲ加ヘ樣ト云フコトガアリマシタ
(南部)
定期借賃ヲ拂フカラト云フノデシタ
(淸岡)
借賃ヲ拂テモ家ハ雨漏ルニ其儘ニシテ置ケバ朽ルシ又石崖、川缺ケニナツテ來タトキ修繕シナイト田地モ流ガサルル所ガ今二三年ダカラ構ハズト云フ了見デ修繕シナイトキハ所有者ガスルケレドモ借人ノ爲ス可キ義務ヲシナイノダカラ其時ノ費用ヲ取ルノデス
(松岡)
永借人ハ負擔セズト云タラ分ル賃貸借デハ大修繕ハ貸人ガスル此所デハ永借人期間内大修繕ヲ負擔スト云テハドウデスカ
(元尾崎)
ソレハ宜シイ
(渡)
借リタ人ノ方ニ持タセルガ宜シイ
(村田)
賃借人ナラ求メラルルケレドモ永借人ハ出來ヌト云フガ宜シイ
(元尾崎)
賃借人ハ是非シナケレバナラント云フノデ、スルト淸岡サンノ云フ樣ニ打遣テ置クコトハ出來ヌカラ宜シイ
(槇村)
土地サイ變換スルモノダカラ原案デ宜シイ
(栗塚)
原案デ宜シイデシヨウ
(南部)
票案デ宜シイ
(淸岡)
土地ヲ害サナケレバ變ズルコトモ出來ルガ害スルコトニシテハ出來マセン
(村田)
害シテ出來ルノデス永借人ハ唯ダ永久ノ損害ハイカヌノデスガ期限ガナイカラ何ンナコトヲシテモ構ハナイノデス
(松岡)
擔保セヌ方ノ性質ヲ云フト用益者モ同ジ樣ニナル、永貸借ニナルト擔保セヌノデス、ダカラ用益者モ虛有者ハ擔保セヌノデアリマシヨウ
(栗塚)
併シ永貸借ト通常ノ貸借ニ之ヲ云フノダカラ見セタ方ガ宜シイ通常ニハ負擔スルガ併シ此所デハ負擔セヌト云フカラ斯ク言葉ヲ立ルガ宜シイデシヨウ
(南部)
宜シイ
(淸岡)
負擔スト云テ置ケバ責メル道具ガアルカラネ左樣シナケレバナラン
(槇村)
原案デ宜シイ
(元尾崎)
原案デ宜シイ
(淸岡)
川缺ケ抔ガアレバ何フシマスカ
(元尾崎)
說明ノ限リニ非ラズ
(村田)
放テ置ケバ自分ノ損ダカラ是非爲マスシナケレバ損デス
本條ハ原案ニ決ス
第百七十七條朗讀ス
第百七十七條 永借物ニ賦セラルル通常又ハ非常ノ租稅其他ノ公課ハ永借人之ヲ負擔ス租稅法ニ依リテ永借人ヨリ徵收スルトキハ永借人ハ之ヲ償還スルコトヲ要ス
(箕作)
之ハ前ト反對ニ書イテアリマスネ
(村田)
前ト反對デ宜シイノデスネ
(箕作)
百四十九條ハ若シト云フ字ヲ入レテ徵收スルコトアルトキハトヤリマシタ
(南部)
此所モ左樣ヤリマシヨウ
(元尾崎)
之ハ宜シイ彼レハ借家人カラ租稅ヲ取立ツルコトハナイ、萬一便宜ニ因テ取立ルニシテモ詰リ家主モ假ニ拂ハセルトアルガ徵收デナイカラ之ハ永貸人ガ出ス可キ筈デス
(南部)
永貸人ガ租稅ヲ出スコトハアリマセン
(元尾崎)
永貸人カラ徵收スルガ當リ前デ、ソレダカラ永借人ガ負擔スト書クノデス設ヒ永貸人カラ出サセテモ償ヒ戻サナケレバナラント云フノデス
(村田)
永借人ガ出サナケレバナラン
(箕作)
永貸人ガ拂テ置キ永借人ガ負擔スル方ガ多ヒデシヨウ
(淸岡)
永借人負擔スト云フノハ現行法ニ違テ居リマス
(南部)
此所ニ負擔スト云フノハ實際負擔スルノデアリマス
(淸岡)
永借人ハ賃貸人ニ對シテ償還ス可シ所有者之ヲ擔任スルト雖モ永借人ハ云々トアリマス
(南部)
同ジコトデス
(松岡)
現行ノ租稅法カラ云フト表向ノ擔任ハ貸人ガスル、併シナガラ償還サレヌデハ協ハヌカラ修正シタノデシヨウ
(槇村)
之ハ宜シイ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス後チ百八十條ヲ議スルニ方テ「永借物ニ賦セラルル通常又ハ非常ノ租稅其他ノ公課ハ永貸人ヨリ徵收ト雖トモ永借人之ヲ償還スルコトヲ要ス」ト修正ス
第百七十八條朗讀ス
第百七十八條 數人カ一箇ノ契約ヲ以テ一箇ノ不動產ヲ永借シタルトキハ借賃ヲ拂フノ義務ハ各永借人又ハ其相續人ニ在テハ連帶ニシテ且不可分ナリ
(箕作)
上書ニシテアル「百四十六條ノ次ニ移スノ建議」ト云フノハ何フ云フ譯ケデスカ
(松岡)
建議ハ宜シイ
(栗塚)
斯樣ナ理窟ハ採用出來ヌノデアリマス何フ云フモノデ今村ガ期樣ナコトヲ云フノハ分リマセン
(松岡)
唯ダノ賃貸借デ一箇ノモノデ隨分永久ノモノガアルカラソレハ連帶不可分ゾヨト云フテモ差支ナイ
(栗塚)
連帶デナイ完全ナル不可分デアリマス
(村田)
賃借ニハ押付ケラレナイ、動產ガアルカラ困ル使フ共有物ナラ宜シイガ、默テヤツタトキハ困ルデハアリマセンカ
(松岡)
一ノ動產モ不動產モ同ジデス
(箕作)
數人デ不動產ヲ借リタ時分、ソレデハ連帶義務ニシテハ酷ト云フノデスネ
(栗塚)
ソレ丈ケデアリマス
(松岡)
法理カラ云フト構ハヌ、不動產ハ出來テ動產ハ出來ヌト云フコトハナイ
(村田)
動產デ或ル物ヲ今日私ガ持テ明日貴君ガ持カ分ラヌカラ不可分ナラ宜シイガ
(松岡)
一ノ物ヲ數人ガ持トカ連帶ト云ヘバ何所モ同ジデス
(村田)
此所ハ法律デ押付ケルノデアリマスカラ
(元尾崎)
再調査ノ意見ヲ採用シヨウト云フノデスカ
(松岡)
左樣
(淸岡)
何フ云フ理窟デ賃貸借ニ許サヌト云フノカ
(村田)
賃貸借ニハ動產モアルカラデス此ハ動產ハナイ永貸借ハ不動產ニ極マツタモノデス
(松岡)
不動產ハ是丈ケ出來ル動產ハ出來ヌト云フコトハナイ
(南部)
唯ダノ賃貸借ト永貸借ハ區別ガアリマス
(松岡)
ソレハ違フガ連帶サセルトサセヌハ區別ハナイ
(南部)
物權ニシテモ性質ニ因テ違ヒマス
(元尾崎)
前ヘヤル方ガ宜シイ
(村田)
前ヘヤツテハイカヌ動產ニモ這入テ仕舞フ
(元尾崎)
宜シイ、反對ノ合意ガアレバ宜シイ漫然ト二人三人デ借リタラ斯フナルトシテ宜シイ
(栗塚)
期限ノ長イ時分ハドウデスカ
(箕作)
長イカラト云フガ長イ短ヒニハ關セヌネ
(松岡)
道理カラ云フト一箇ノ物ヲ數人ニ貸スノダカラ連帶サセルガ適當デス
(栗塚)
重モニ土地永貸借ハ地面デアルガソレデ相續人ノ永貸借ト云フモノヲ皆入レテハ大變大勢ノ者ノ義務者ガ出來ルデシヨウソレモ皆訴ヘルノハ隨分面倒デモアルシ又缺ケタ者ガアツテモ困ルト云フ理窟デス
(箕作)
平常ノ賃貸ニモ義務者ハ二人ナリ三人ナリ極マツテ居ルノデシヨウ
(松岡)
使フ後チハ皆デ不可分ト云フノデハナイ一箇ノモノヲシテ數人借人ガアレバ分ツタコトハナイト云フ理窟ト法律ヲ立ツル上カラ云フト區別ノ立テ樣ハナイ
(南部)
起案者ガ學力ヲ以テ書イタノダカラ宜シイト云フノデス、好イ加減ニ直スヨリモ原案ニ從フタラ宜シイ
(松岡)
ソレヨリ外ナイノデシヨウ
(南部)
併シ理由ハアリマス、永貸借ト云フモノハ不動產デ然シテ卽チ土地デス、不動產ノ永貸借人ハ果シテ不可分ニシテ置カント相續人抔ノ間ニ葛藤ヲ生ズルト云フノデス
(箕作)
相續人ハ初メカラ分テ居ルカラソレガ違フト云フハ何フ云フ其所ニ學理ガアルノデスカ
(南部)
此所ハ御承知デシヨウガ不可分ナリト云フノガ旨意デスガ、連帶ハ不可分カト思フカラデス
(箕作)
ソンナラ連帶シテ且不可分ト云フカ
(元尾崎)
建議採用
(栗塚)
之ハ永貸借デ長イ間ノ條件ガアルカラデスガ尋常ノ貸借モ連帶ニスルト云フノハ不條理デス
(松岡)
何レモ一ニスルナラ宜シイ卽チ双方トモ連帶ニシテ宜シイ
(南部)
ソレハ能ク講究シナケレバナラン
(栗塚)
此所デ連帶ニシテアルカラ通常賃貸借モ連帶ト云フハ不都合デス
(南部)
之ハ今一應調ベテ貰フガ宜シイ
(元尾崎)
分ツテ居リマス
(南部)
地役抔モ對照シテ見ナケレバナラン
(松岡)
建議抔用シテ上ヘ以テ繰込テモ宜シイ
(淸岡)
永貸借ト普通貸借トハ變ハル方ガ宜シイ
(村田)
原案デ宜シイ
(栗塚)
註ニモ云テ居リマスガ多數ノ人ガ貸借スレバ卽チ會社ノ如キニ看做ス、會社員ダカラト云テ居リマスソレダカラ連帶義務ニスル理窟モ出來ルガ尋常ノ貸借デハ左樣ハ往キマセン
(槇村)
建議採用
(箕作)
ソレデハ多數ダカラ建議採用トシマシヨウ
(栗塚)
ソレデハ左樣致シマシヨウ
本條ハ百四十六條ノ次ニ移スノ建議ヲ採用シ「永借」トアルハ「賃借」ト改メ其他原案ニ決ス
于時正午十二時休憩
午後一時十分開會
(箕作)
ヤリマシヨウ
(第百七十九條ハ起案者自ラ削除)
第百八十條朗讀ス
第百八十條 永貸人ハ三个年間引續キ貸賃ノ拂入ヲ受ケサルトキハ永貸借ノ解除ヲ請求スルコトヲ得
又永借人カ他ノ債權者ノ追訴ニ因リテ破產者又ハ無資力者ト宣言セラレタルトキハ永貸人ハ拂入ノ不足ノ多少ニ拘ハラス解除ヲ請求スルコトヲ得但其債權者カ借賃ヲ規約ニ依リテ拂入ルルコトヲ擔保スルトキハ此限ニ在ラス
(栗塚)
第二項ヲ改メタイノデスガ、「破產者又ハ無資力ト宣言セラレタル云々」トアルヲ、「破產又ハ無資力ノ宣言ヲ受ケタルトキハ」トシテソレカラ「拂入ノ不足云々」トアルヲ、「借賃滯高ノ」トシテ「借賃ヲ延滯ナク拂入レルトキハ此限ニ在ラズ」トシテ宜シイト思ヒマス
(大尾崎)
宜シイ
(松岡)
其トキマデ滯リナシニ當リ前收獲ノトキ拂テ居ルトソレカラ今青田ニナツテ稻ヲ作テアルトキ生レタラ拂フトキハ來ナイノデスガ其時分ハ何フナリマスカ
(村田)
拂入ノ不足ノト云フハ宜クナイガ、一項ノ方カラ云フト永貸ハ貸人ガ三ケ年拂ハヌトキ解除スル併シナガラ箇樣ナ場合ニハ前ノコトニ拘ハラズ解除ガ出來ルノデアリマス
(松岡)
未ダ期限モ來ナイニ不足トモ言ヘナイデシヨウ
(箕作)
殘ラズ拂ハセテモ銷滅ガ出來ルノデシヨウ
(元尾崎)
幾ラカ滯テ居ルノデシヨウ
(大尾崎)
拂入レニ不足ハナクツテモダロウ
(元尾崎)
左樣デナイ
(淸岡)
有無ニ拘ハラズデシヨウ
(村田)
少シ許リ不足ガアツテモデス
(松岡)
約言スレバ皆拂テアツテモダナ
(元尾崎)
英文ニハ少シデモ怠テ居タラ破產ノ場合ニハ取消ガ出來ルト云フノデス
(松岡)
拂入レノ不足ト云フノハ滯リナクシテ居テモ無資力破產ガ一條件ニナツテ銷除サルルトナルノデシヨウ左モナケレバ收獲シナケレバ拂ハヌハ當然ノコトデス
(村田)
ソレハイカヌ拂ハヌ中ハ銷除ハ出來ヌノデ少シモ不足シテカラ出來ルノデス
(元尾崎)
左樣云フ意味デス
(村田)
地上權ダカラ賃借人カラ一分不足シテモ出來ルガ永借ノ方ハ三ケ年間不足シナケレバナラント云フノダカラ鄭重ニシテ居ルノデ此方ガ宜シイ
(栗塚)
報吿委員デハ矢張滯リガアツタラト云フノデ滯リガナケレバ往カヌト云フ旨意デ御座イマス
(松岡)
拂入ノ不足ノ多少ニ拘ハラズト云フノハ何フ云フ譯ケデスカ
(栗塚)
一期ニ滯タカ二期ニ滯タカ知ラヌガ滯リガアツタラ銷除ノ請求ガ出來ルト云フノデス
(松岡)
註ノ仕舞ニ、然レドモ他ノ債權者ノ爲メ破產シ云々賃貸人ノ己レノ權利ヲ保護スルヲ拒ム能ハヌ云々トアルガ
(栗塚)
己ノ權利ト云フハ永貸人ガ自己ノ權利ヲ保護スルノデス
(松岡)
拒ムコトハ能ハズハ誰デスカ
(箕作)
拒ムト云フハ保護ヲスル樣ニシナケレバナラント云フノデス
(松岡)
債權者ガ擔保シナケレバ皆取テ仕舞コトガ出來ルノデス
(箕作)
左樣云フ鹽梅ニ原書ニハ見ヘルガドウモ其債權ヲ訴追ニ因テハ是カラ御前サンノモノト看做シテ銷除ノ請求ガ出來ルト云フノデアロウ
(松岡)
併シナガラ他ノ人ガ納メルト云ヘバ宜シイノデ、スルト自分ノ不足ガ四文デモアツタラ出來ル四文モナケレバ出來ヌト云フコトハアリマスマイ
(箕作)
御說ノ樣ニ見ヘルガ文章ハ說ヒ一文ノ滯ハナクツテモ是カラ先滯リタラト云フ意味ダロウ
(元尾崎)
ソレハ惡イネ
(箕作)
多少ニ拘ハラズトハナイノデ少シデモ滯リト云フコトハ何フセ取レヌカラ解除請求ガ出來ルト云フノデス
(南部)
破產無資力ノ宣吿ヲ受ケル時分滯テ居ルモノハナイトハ見ラレナイ皆滯テ居ルダロウ無資力破產ニナルモノダロウ、ソレカラ言葉ヲ立テ居ルノデス
(栗塚)
起案者ハ左樣デ御座イマス
(箕作)
ソレニ滯リガナカツタラ何フスルノデスカ
(栗塚)
本條ノ意味ハ左樣ナルト云フノデス
(箕作)
精神ヲ約メルト一文モ滯リナクツトモ破產シタ者ハ他ノ債權者ノ訴追デ無資力ノ宣吿ヲ受ケタラ、モウ取レタカラ云フノデ銷除ヲ求メラルルト云フノデシヨウ
(元尾崎)
收獲物ヲ充テニ拂フノダカラ無資力ノ宣吿ヲ受ケタラト云テモ收獲ガナイ故拂フコトハナイカラ滯リガ現ニナイ以上ハ銷除サレテハ溜ラヌ
(大尾崎)
無資力破產者ナレバ田地ノ肥料モ出來タカラ拂ヘヌモノト云フノデシヨウ
(元尾崎)
水飮百姓ハ三文モ持タズ畑ヲ作テヤルノデス
(南部)
無資力ト云フノハ身代限トハナラヌト云フ場合ダカラ無資力ト云フハ一文モナイト云フトキデハアリマセン
(松岡)
之ハ起案者ニ一ツ聞クガ宜シイ
(南部)
聞ニ及バヌ
(元尾崎)
幾ラカ滯リガアルモノトスルカ
(松岡)
破產無資力ハ條件ニナツテソレカラ解除ガ出來ル併シナガラ保證ガアレバ契約ヲ繼續サセルト云フノデス
(大尾崎)
左樣デス
(元尾崎)
原案ノ通リナラ不足ノ多少ニ拘ハラズダカラ不足ガアツタラデシヨウ
(南部)
滯リガアルト見テ居ルノデ自然ニ法律ヲ解スルガ左樣解シテハ往カヌノデス
(松岡)
多少不足ガアルモノト見ルノデシヨウ
(大尾崎)
左樣デシヨウ
(栗塚)
滯リノ有無ニ拘ハラズナラマダ宜シイ
(大尾崎)
滯ラヌデモデシヨウ
(松岡)
有無ニ拘ハラズナラ宜シイ今一層言葉ヲ換ヘテ云フト延滯ノ有無ト云フモ同ジデ拂入不足ノ有無ニ拘ハラズナラ宜シイ多少ニ拘ハラズト云フト少シノ不足アルト見テ居ト云フガ、スルト去年ノ收益ニハ立派ニ納メ此春破產無資力ニナツタラ何フデスカ
(栗塚)
ソレモ這入ノデス
(淸岡)
破產無資力ノ宣吿ヲ受ケタラ銷除ヲ請求スルコトヲ得デ宜シイ
(槇村)
立派ニ拂テ居テモ取リ上ルト云フノデスカ
(淸岡)
ソレデモ後チニ拂ヘヌ樣ナルカラデスカ併シ擔保者ガアレバ宜シイ
(大尾崎)
三ケ年續キ拂入レヌトキハ取上ル併シナガラ最早無資力破產ニナツタラ取上ゲナイ併シ擔保ガアレバ宜シイ云フノデ宜シイ
(元尾崎)
左樣デナイ是非左樣スルト云フモ惡イ、變ヘルナラ起案者ニ相談シテ欲イ、去年ノ冬迄年貢ヲ拂テ居ルニ今年ノ夏皆破產デ取消スト云フハ惡イ
(松岡)
一石ノ上ニ五斗殘テ居ルカラト云テ取上ゲルハ何フカ知ラン
(元尾崎)
ソレハ甚ダ酷イ
(松岡)
不足ハ纔カノ不足ニナルカモ知レン
(箕作)
破產無資力ハ銷除ノ條件デス
(松岡)
左樣デス
(南部)
多少ニ拘ハラズ破產無資力ノ言渡ヲ受ケタ者ハ時分ニハ滯リガアツタロウト法律ガ見テ居ルノデス
(栗塚)
左樣デス
(元尾崎)
ソンナ旨意ガアルモノデスカ
(南部)
何ゼ變ヒタカ云フニ起案者ノ旨意ヲ尋ネテ文字ヲ修正スルノデシヨウ
(大尾崎)
無資力ノ者ガ滯ガアルモノト起案者ガ見ルノカ、オカシイ從令滯リガアルナイノ論デハナイ
(元尾崎)
原案ノ通リデ宜シイ
(南部)
意味ハ少シ違フガ私ハ原案デ宜シイト思フ
(栗塚)
意味ハ違ヒマス、無資力ニナツタ以上ニハデス
(箕作)
有無ト云テハ何フデスカ
(北畠)
有無ニ拘ハラズト云フハ同意ノ數ヲ採テ見テハドウデスカ
(箕作)
有無ニ拘ハラズトヤロウデハアリマセンカ
(栗塚)
多少ニ拘ハラズトカ有無ニ拘ハラズトカ云フハ止メテ「借賃ヲ拂ハヌト云フヲ理由トシテ」トヤツテハ何フデスカ
(松岡)
左樣スレバ同ジデス、破產無資力ハ條件ニナルノダカラ
(栗塚)
斯樣ナ場合ニハト云フノデス
(松岡)
後チモ拂ヘヌト推測スルノデス
(栗塚)
借賃ヲ拂ハヌト云フノデ云フノトスレバ宜シイ
(箕作)
借賃ヲ拂フコト能ハザルコトヲ原由トシテデス
(栗塚)
左樣デス、拂ヒノ總テ缺務ト云フノガアルノデス、ダカラ將來拂ヒ入レノ缺務ヲ理由トシテ銷除ノ請求スルコトヲモ出來ルト云フ意味デス
(松岡)
拂ヒ入レ不足ト云フノハ將來ニハ限ラヌ既往ノ拂ヒ入レ滯リ不足スルカラト云フニナルノデス
(元尾崎)
原案ヲ修正シテ有無ニ拘ハラズトスルナラ起案者ニ聞テシテ貰ヒ度イ
(南部)
兎ニ角原案ヲ解スルニ私等ノ所見ト反對者ノ所見トハ異ルカラ先ヅ原案ノ旨意ヲ起案者ニ問フテソレカラニシマシヨウ
(元尾崎)
ソレハ宜シカロウ
(栗塚)
問フ程ノコトハアリマスマイ
(村田)
聞テ貰ヒマシヨウ
(栗塚)
直譯スルト將來拂入レノ缺務ヲ原由トシテ、デス
(槇村)
將來ノコトヲ云フノデアリマセン
(北畠)
起案者ニ聞クトシマシヨウ
(松岡)
聞クガ宜シイ
(元尾崎)
缺務ノナイトキハ理由トシテ出來ヌカラ、左樣ナルト設令身代限リヲシテモ缺務ナクシテ居レバ銷除ハ出來ヌ、ソレデハ以來缺務アリト云フ考ヘヲ以テト云ヘバ宜カロウカ
(南部)
元尾崎サンノ云フ通リハ宜シイカモ知レヌ、三ケ年引續テ貸賃ノ拂ヒ入レヲ受ケタルトキハトアル、無資力ニナツタ場合ニハ三ケ年引續イテモト云フニナルソレダカラ、起案者ガ皆ナ總テ拂テ仕舞テハ出來カセヌト云フダロウ
(槇村)
之ハ問フトシテ先ヘヤリマシヨウ
(渡)
問フコトニシマシヨウ
(淸岡)
本條ハ小作人ガ未納シタトカ三ケ年待タズ貸人ガ處分スル箇條ヲ追加スルト云フコトヲスルト云フガ元トアリマシタ
(松岡)
貸賃ハ三ケ年ダガ負擔スルト云フコトハソレヲ償還トナリマス
(南部)
三ケ年ハ百四十七條ニ租稅法ニ依リ永貸人ヨリ云々トアリマス、永貸人カラ徵收スルト永借人ガ償還スルヲ要ストアリマス、永貸人カラ徵收シタノデスネ、永貸人カラ徵收シタ場合ニ永借人ハ償還セヌ三ケ年迄ナラ取上ゲテモ宜シイ
(栗塚)
尋常貸借ナラ一期滯テモ銷除ガ出來ルガ、此所ハ長イカラト云フノデス
(松岡)
負擔ノ程ガ違フ七十七條ハ一通常非常ノ租稅ハ租稅法ニ依テハ無論永貸人ガ徵收ヲ受ケルノデス
(栗塚)
其場合ヲ見テ居ルカラ論ガアルノデスガ此條ハ宜シイノデシヨウ
(松岡)
左樣此條ハ宜シイ
(淸岡)
三ケ年待タナケレバナラント云フハ大變デス
(栗塚)
此所デ處分シテハ何フデスカ
(箕作)
此方デヤリマシヨウ
(松岡)
スルト七十七條ハ前記ノ通リノ通常非常ノ租稅ハ永借人ガ負擔スト雖モ永貸人ガ負擔シ永借人ガ償還スルヲ要スト反對ニヤツテ七十七條ノ償還ヲ永借人ガシナイトキハ銷除ノ條件ニナレルトカ云フ樣ナコトニシタイ
(元尾崎)
此所ハ永貸人ヨリ徵收スル通常非常租稅又ハ公課ヲ永借人ヨリ償還セザルトキハ直チニ銷除ヲ請求スルコトヲ得トシテ置ケバ宜シイ
(松岡)
其意味ニ入レルト永借物ニ賦セラルル樣見ヘル、租稅法ニ依テ若シヤ永貸人ガ徵收セラルル場合ト云フハ主客ガ反對ニナツテ居ル七十七條ハ貸人ガ負擔スト雖モ借人ハ償還スルモノトシテ置キ此所デハ援テ償還シナカツタナラバト云テ宜シイ
(南部)
元來永借人ガ之ハ負擔スルガ當リ前デ、政府ニ對シテデハナイガ永借人ニ對シテ永借人ニ負擔スルハ當リ前ト云フ原則デ之ハ宜シイ
(元尾崎)
七十七條ハアレデ宜シイ、唯償還セザルトキハ云々トヤツテ宜シイ
(松岡)
百七十七條ノ場合ニ於テ永借人ガ償還ヲ爲サザルトキハ又トスルカ
(南部)
又同ジデハナイ直チニデスネ
(村田)
一年拂ハヌカラツテモ銷除條件ガ起ルノハ何フ云フモノデスカ
(栗塚)
宜シウ御座リマシヨウ百五十七條ノ賃借物ニ公用徵收ト云フノガアリマス、滯フツタラ公用徵收ニナルデシヨウ
(松岡)
貸人ガ拂テ居リマスネ所ガ償還セヨト云フコトハセヌノデス
(村田)
永借ト云フノハ皆ナ取ラルルノデス
(松岡)
自分ノ地面デ一年滯タラ何フシマスカ
(村田)
ソレハ別デス之ハ直接ニ來ナイノデス永借人ガ拂フ義務デ公租ニ關係ハナイ
(松岡)
借賃ハ何フ云フモノカ
(村田)
ソレハ分ツテ居ル政府ニ拂フハ永借人ガ拂フノデ直グ之ガ解除ガ出來ルト云タラバ、若シソンナラバ用收權ハ何フカ一體此ト同ジデ用益者ノ負擔デアリマスケレドモ用收者ハ特別ニシタカラ所有者ガ拂ハナケレバナランガ詰リ收益デ取ルヨリ外ハナイ、直ニ之デ解約サレテハ酷イ
(淸岡)
ソレハ構ヒハシマセン
(南部)
貸賃ヲ高クスルコトハ往カヌ
(淸岡)
用益權ノ設定ハナイト云テ宜シイ
(村田)
自分ガ地面ヘ金ヲ係ケタラ解除セラレタトキハ唯ダ取ラルルカラネ一度拂ハヌカラトテ、永貸人ニ拂ハヌカラトテ直ニ解除スルハ酷イソレ故三年間モ借賃ヲ拂ハヌトキデナケレバ解除ハ出來ヌト云フ位ヒダカラ直グハ往カヌト思フ
(栗塚)
永貸借ハ重モニ上納金ガ至テ安イノデソレカラ長イ間借リテ開墾スルニ由テ銷除ハ賃貸借トハ違ヒマス
(淸岡)
年貢ガ安イト云フコトハアリマセン
(栗塚)
餘程違ヒマス
(元尾崎)
稅ガ拂ヘヌトキハト云フノデス
(大尾崎)
所有者ガ拂ハヌトキハ直グ公賣セラルルデシヨウ
(村田)
地ノ所有者デスカラ稅ハ濟ンデ仕舞テ居ルノデス
(南部)
若シ濟ヌナラダカラ何フ見テモ直シイ
(大尾崎)
御年貢ダカラソレヲ滯レバ解除シテモ宜シイト云フノデス
(渡)
八十條ハ永貸人ガ百七十七條ノ償還ヲ受ケズ又ハ三ケ年間トシテハ何フデスカ
(南部)
ソレハ宜シイ
(箕作)
第二項ハ何フデスカ、借賃滯リ許リデナク租稅ノ滯リノ有無ニ拘ハラズデシヨウ
(元尾崎)
設令租稅ヲ怠ラヌデモ借賃ヲ少シデモ滯タラ銷除ノ請求ガ出來ルト云フノデス
(南部)
借賃滯リ位ヒデ宜シイデシヨウ
(箕作)
無資力ノトキハ租稅償還シナイデモ銷除請求スルヲ得デシヨウ
(南部)
無資力ノトキデアツテモナクツテモ行クノデス
(松岡)
負擔スト云テモ現今日本現行租稅法ハ當リ前其人カラ出ス樣ニナツタカラ他人ノ地面ヲ公買セラルルコトハナイト云フ問題デス
(渡)
永貸借ニ付テハ永借人ガ租稅ヲ負擔ス可キナリト云フガ、租稅ハ所有者ニ向テ云フノデハナクシテ、ダロウ
(南部)
百七十七條、永貸人ハ誰ニ向テカ卽チ永借人ニ向テ負擔ストアルノデス
(淸岡)
議場デ決議ニナツタモノヲ調査デ默テ御通シナサルガ惡イノデス
(南部)
文字ノ修正ニ止マルカラデス、一々言ハナケレバナランコトハナイ
(箕作)
前議ノ通リニシテハ如何
(松岡)
前議ノ通リデ宜シイ
(栗塚)
今村ガ文字ヲ改メタト聞テハ居リマシタガ七十七條ハ同ジデアリマス
(淸岡)
租稅法ハ永貸人ヨリ徵收セザルモノナシダカラネ、ソレヲ以テ次ニ若シ永貸ニ徵收スルトキハト書ク惡イ
(元尾崎)
永貸ハ借人ガ負擔スルモノトスルガ原則ダカラ宜カロウ併シナガラ永貸人カラ取タラ還サナケレバナラント云フノデス
(松岡)
ソレハ違フノデス
(南部)
用益權ノトキハ何フカ用益者ガ負擔ストアル卽チ此所モ永借人ガ負擔スト云ハンデハ權衡ガ合ヒマセン、カラソンナコトハアリマスマイ
(村田)
最初ノ論ハ用收權ト此所ト同ジデ用收權ハ用收者ガ拂ハヌトキハ仕方ガナイカラ用收權ヲ公賣スルト云フ論デアリマシタ、ソレガ八釜敷ナツテ遂々地面ヲバ卽チ所有者ノ地面ヲ賣ルト修正シタノデ、八十三條ハ殘リガアレバ用收者ガ收益スルトナリマシタ此所モ左樣シテ見ルト同ジコトデ永借者ガ拂ヌトキハ永借權ヲ賣ラナケレバナラン
(松岡)
ソレハ往カヌ、小作人ガ納メナイト云テ公賣サレテハ溜ラヌソレコソ日本國中ノ騒動デス
(村田)
此所ハ前議ノ通リデ宜シイ
(北畠)
左樣シナイト一郡ヲ所有シテ居ル者カラ取ラヌデ土百姓ノ方カラ取ルハオカシイ
(栗塚)
前議デハ彼ノ樣ニナツタニモセヨ、永借物ニ賦課セラル可キ通常非常ノ租稅ハ所有者ガ負擔スルト雖モト云フノデ、何ノコトカ理窟ハ分ラヌニモセヨ併シ果シテ「ボアソナード」ノ書イタハ、租稅法ニ依リテ永貸人ヨリ徵收スルトキハ永借人ガ之ヲ償還スルコトヲ要スノ意味ヲ書キ度爲メダロウカ、左樣デハナイ、歴史ガアツテノコトデス、日本ノ徵收法ハ名前人カラ取ルノデ、收益者ハ外ニ在テモ、牧益人カラ取ラズ物品ノ在ル名前人ヨリ取ルカラ所有者之ヲ擔任スト雖モトヤツタノデス
(松岡)
併シナガラ永小作ノ場合ニ借人カラ償還スルモノト云フノハ缺點デス
(栗塚)
今村ノ考ヘト斯樣ニシタノト些トモ違ハナイノデス
(南部)
違フト云フハ何所ガ違フカ分ラヌ
(淸岡)
ソンナラ永貸人ト永借人ト反對ニ書ケバ宜シイ
(松岡)
今村ハ文字上ノ理窟デアリマス併シナガラ事實上租稅法カラ云フト今永小作ハ所有者ガ負擔シナケレバナラン併シナガラ永小作ノ場合ニ借人カラ償還サセルト云フノダカラ文ハ惡クモ前ノ決議ナラ意義ニ於テ差支ハナイ
(元尾崎)
今日外ノ賃貸借ト同ジニナルノデス
(南部)
賃貸人ガ負擔スト入レルカ
(村田)
負擔ストハ云ヘヌノデス、元トノ樣ニスレバ宜シイ
(南部)
所有者ト云フノハ卽チ永貸人デアリマス
(村田)
賃借ト永借トノ違ヒガアルノデス
(元尾崎)
ソレハ宜シイ
(淸岡)
前議ノ通リデ宜シイ
(大尾崎)
前議ノ通リデ宜シイ
(元尾崎)
我輩ハ提出案ノ通リデ宜シイ
(北畠)
前議ノ通リ
(槇村)
前議ノ通リ
(栗塚)
百七十七條ハ「永借物ニ賦セラルル通常又ハ非常ノ租稅其他ノ公課ハ永貸人ヨリ徵收スト雖モ永借人之ヲ償還スルコトヲ要ス」トシテハ如何
(渡)
ソレハ宜シイ
(箕作)
八十條ハ
(栗塚)
八十條ハ「永貸人ハ前條ノ償還ヲ受ケス又ハ三ケ年間引續キ」云々トシテ跡ハ起案者ニ聞クト云フコトニシマシヨウ
(箕作)
宜ウ御座イマシヨウ左樣シテ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ百七十七條ヲ修正シ「永貸人ハ前條ノ償還ヲ受ケス又ハ三ケ年」云々トシ餘ハ起案者ニ質問スルコトニ決ス
第百八十一條朗讀ス
第百八十一條 永借人ハ意外ノ事又ハ不可抗ノ力ニ因リテ三个年間引續キ全ク不動產ノ收益ヲ得ル能ハス又ハ其一分ノ毀損ニ因リテ將來ノ收益カ借賃ノ年額ヲ超ユ可キ見込ナキトキハ永貸借ノ解除ヲ請求スルコトヲ得
(渡)
之ハ宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第百八十二條朗讀ス
第百八十二條 永借人カ永借地ニ加ヘタル改良及ヒ栽植シタル樹林ハ永貸借ノ終了又ハ其言渡サレタル取消ニ當リ賠償ナクシテ之ヲ殘置クモノトス
建物ニ付テハ通常賃貸借ニ關シ第百五十六條ニ記載シタル規定ヲ適用ス
(栗塚)
本條ハ「永借地ニ加ヘタル改良」トアルヲ「爲シタル改良及ヒ栽植ハ」トシタイ
(槇村)
其方ガ宜シイ
(淸岡)
栽植ト云フト麥稻モ這入ルガ稻ヤ麥ハ取ランデハナラン此所ハ多ク小作地ヲ云フノダカラネ
(大尾崎)
原案デ宜シイ
(栗塚)
ソレカラ「永貸借ノ滿期又ハ其銷除」トナリマス
(箕作)
滿期ト銷除ハ宜カロウ
(元尾崎)
百五十六條ノ規定ヲ適用ストアリマスガ之ハ百四十一條ノ適用ノ方ガ宜クハアリマセンカ
(村田)
終了デ宜クハナイカ
(松岡)
滿期デ宜シイ
(元尾崎)
之ハ宜シイ
本條ハ「樹林」ハ「樹木」トシ「終了」ヲ「滿期」トシ「又ハ其銷除」云々トシ其他原案ニ決ス
第百八十三條朗讀ス
第二款 地上權
第百八十三條 地上權トハ他人ノ所有ニ屬スル土地ノ上ニ於テ建物又ハ樹林ノ完全ノ所有權ヲ以テ所有スルノ權利ヲ謂フ
(栗塚)
土地ノ上デトシテ「於テ」ハイルマイト思ヒマスソレカラ「所有」トアルハ「占有スルノ權利ヲ謂フ」トシタイ
(元尾崎)
於テハアル方ガ宜シイ
(松岡)
所有ハ占有トシテ宜シイガ地上權ト云フハ何ゾ、宅地貸借トカ地借契約トカ云ヘンデシヨウ、ガ地ノ貸借ニハ違ヒマイガネ
(元尾崎)
宅地許リデハナイ樹林モアルノデス之ハ地上權デ宜シイ
(槇村)
宜シイ
本條ハ「樹林」ハ「樹木」トシ「所有」トアル「占有」トシ他ハ原案ニ決ス
第百八十四條朗讀ス
第百八十四條 地上權設定ノ時其土地ニ建物又ハ樹林ノ旣ニ存スルト否トヲ問ハス設定ノ基本、方式及ヒ公示ハ有償又ハ無償名義ノ不動產讓渡ノ通則ニ從フ
(栗塚)
本條ハ「有償又ハ無償名義ノ」ハイルマイト思ヒマス、ソレカラ「設定合意ノ基本」トシテ何フデスカ、設定契約ノ基本、設定契約ノ方式及ビ設定契約ノ公示ト云フ意味デアリマスカラ、設定合意ノ基本トシテハ如何
(大尾崎)
宜カロウ
(元尾崎)
地上權ハ公證ヲ經ナケレバナランカ
(栗塚)
左樣デス
(元尾崎)
宜シイ
本條ハ「樹林」ヲ「樹木」トシ「設定合意ノ基本云々」トシ「有償又ハ無償名義ノ」九字ヲ削リ他ハ原案ニ決ス
第百八十五條朗讀ス
第百八十五條 地上權者カ讓受ケタル建物又ハ樹林ノ存スル土地ノ面積ニ應シテ土地ノ所有者ニ定期ノ納額ヲ拂フ可キトキハ其權利及ヒ義務ハ其拂フ可キ納額ニ付テハ通常賃貸借ニ關スル規則ニ從ヒ其繼續スル期間ニ付テハ第百八十八條ノ規定ニ從フ
右納額ニ付テハ新ニ建物ヲ築造シ又ハ樹林ヲ栽植スル爲メ土地ヲ賃借シタルトキモ亦同シ
(栗塚)
本條ハ文字ヲ改メ、其權利及ビ義務ハ其拂フ可キ納額ニ付テハト云フハ分ラヌカラ、義務ハ此コトニ付キ通常賃貸借ニ關スル規則ニ從ヒ其繼續スル期間ハ第百八十八條云々トシテハ如何デスカ
(箕作)
ソレハ分ラヌデハ御座リマセン
(元尾崎)
原案デ宜シイ
(淸岡)
此前ニ一條アリマシタガ之ハ削リマシタカ
(栗塚)
アレハ削リマシタガ
(淸岡)
何フ云フモノデス
(栗塚)
一條ニ合セテ仕舞タノデス
(松岡)
默テ削テハイカヌ
(栗塚)
元トハ起案者ガ削テソレカラ元トノ百八十五條ヲ四條ニシテ出シテ來タノデス
(槇村)
之ハ宜シイ先ヘ往キマシヨウ
本條ハ「樹林」ヲ「樹木」トシ他ハ原案ニ決ス
第百八十六條朗讀ス
第百八十六條 旣ニ存セル建物又ハ樹林ニ於ケル地上權ノ設定ニ際シ從トシテ之ニ屬ス可キ周邊ノ地面ヲ明示セサルトキハ左ニ揭クル規定ニ從フ
建物ニ付テハ地上權者ハ其建坪ノ全面積ニ均シキ地面ヲ得ルノ權利ヲ有ス此配置ハ鑑定人ヲシテ土地及ヒ建物ノ周圍ノ形狀ト建物ノ各部ノ用方トヲ斟酌セシメテ之ヲ爲ス
樹林ニ付テハ地上權者ハ其最長大ナル外部ノ枝ノ蔭蔽ス可キ地面ヲ得ルノ權利ヲ有ス
(松岡)
之ハ迚モ出來ハセヌ
(村田)
害ニナラヌカラ宜シイ
(松岡)
十坪借リテ居テ、家ハ左樣ダガ五坪シカト云フコトハ云ヘマイ
(元尾崎)
往キマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第百八十七條朗讀ス
第百八十七條 地上權設定後ニ築造シタル建物又ハ栽植シタル樹林ニ付テハ地上權者ハ此種ノ物ノ爲メ法律ヲ以テ相隣者ノ爲メニ規定シタル距離及ヒ條件ヲ遵守ス可シ縱令其隣人カ地上權ノ設定者ナルモ亦同シ
又地上權者ハ働方又ハ承方ニテ其他ノ地役ノ規則ニ從フ
(栗塚)
本條ハ「此種ノ物」トアルハ「此種ノ作業」トシタイ
(松岡)
此種ノ物ハ「此種ノ作業」ガ宜シイ
(槇村)
宜シイ
本條ハ「此種ノ物」トアルヲ「此種ノ作業」トシ他ハ原案ニ決ス
第百八十八條朗讀ス
第百八十八條 旣ニ存セル建物又ハ地上權者ノ築造ス可キ建物ニ付キ設定名義ヲ以テ地上權ノ繼讀期間ヲ定メサルトキハ右建物ノ存立ニ均シキ時期間其權利ヲ設定シタルモノト推定ス但其大修繕ハ土地ノ所有者ノ承諾アルニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
旣ニ存セル樹林又ハ地上權者ノ栽植ス可キ樹林ニ付テハ其地上權ハ樹林ヲ採伐スル時期マテ又ハ其有用ナル最長大ニ至ル可キ時期マテ之ヲ設定シタリト推定ス
地上權者ハ一个年前ニ豫吿ヲ爲シ又ハ未タ拂期限ノ至ラサル納額ノ一了年分ヲ拂フトキハ常ニ解約申入ヲ爲スコトヲ得
其他地上權ハ通常賃貸權ト同一ノ原因ニ由リテ消滅ス但所有者ノ爲ス解約申入ハ此限ニ在ラス
(栗塚)
本條ハ末項ヲ前後ニシタイ、地上權ハ一ケ年前云云ノ項ヲ後ニシ、其他地上權云々ノ項ハ前ニシタイ何ゼナレバ議場デ箇樣ニナツテモナシ再調査デ偶然ニヤツタ樣デアリマスカラソレデ意味ヲ能ク御考ヘ下サラント其他ト云フハ解約申入ヲ爲スト云フノデハナイ、其他ハ既ニ存セル樹木ガ最大ニ到ル迄推定スト云フノデ之ハ終リヘ出ス可キデ寫書ノ誤リトモ申マセン
(元尾崎)
宜シイ
本條ハ三項四項ヲ前後ニシ其他原案ニ決ス
第百八十九條朗讀ス
第百八十九條 建物又ハ樹林ハ契約前ヨリ存スルト否トヲ問ハス土地ノ所有者カ鑑定人ノ評價ニ從ヒ其讓渡ヲ要求セサルニ非サレハ地上權者之ヲ收去スルコトヲ得ス
地上權者ハ土地ノ所有者ニ先買權ヲ行フヤ否ヲ述ヘ可キノ催吿ヲ一个月前ニ爲シタルニ非サレハ右建物又ハ樹林ヲ收去スルコトヲ得ス
右先買權ニ付テハ此他尙ホ第七十三條ノ規則ニ從フ
(村田)
本條ノ前ノ所ハ「建物又ハ樹木ノ契約前ヨリ存スルト否トヲ問ハス地上權者ハ云々」トヤラント此間改正シタ所ト反對ニナリマス
(南部)
之デ宜シイ
(村田)
ソレハ大變違ヒマス
(南部)
土地ノ所有者ガ鑑定人ノ評價ニ從テ要求セザレバ地上權者ハ收去ハ出來ヌ何ゼナレバ卽チ七十三條ノ規定ニ從ヒテ、七十三條ヲ見ルト賣ルトキデナケレバ先買ハ出來ヌトアリマス
(村田)
七十三條ハ用收權デス家ノ永借人モアルカ此間ノ所デ見ルト先買ヲ得ルトキモナケレバナラン賃借ノ所デモ或ハ永借ノ所デモ向ウデ賣ルトキナラ先買權ヲ行ハレル
(南部)
七十三條ハ入レタカラ宜シイデシヨウ
(村田)
一項ト矛盾スル、一項デ見ルト讓リ渡要求セシ中ハ收去ハ出來ヌト云フノダカラ大變違ヒ衝突シマス
(南部)
衝突ハシマセン
(元尾崎)
之ハ土地樹木ハ收去スルヲ得但賣ントスル場合ニ於テハ土地所有者ガ先買權ヲ有ストヤリサイスレバ宜シイ
(松岡)
中ハ除ク方ガ宜シイ併シナガラ問ハズ地上權者ハト云フト賣ントスルトキト聞ヘハセンカ
(村田)
建物又ハ樹木ノ契約前ヨリ存スルト否トヲ問ハズ地上權者ハ土地ノ所有者先買權ヲ行フヤ否一ケ月前ニ意見ヲ述ブ可シトシナケレバナラン
(南部)
村田サンノ御說ハ宜シイ
(淸岡)
賣渡コトヲ得ズトシテ宜カロウ
(南部)
ソンナラ收去スルトキハドウカ
(元尾崎)
ソレハ勝手次第デス
(南部)
之モ賣ントスルトキデナケレバ催吿ヲシナイ
(元尾崎)
收去スルコトヲ得ルトキトハ云ハヌデ宜シイ
(淸岡)
宜カロウ
(元尾崎)
賣ントスルトキハデ收去スルトキハ無論分ル
(槇村)
ソレデ宜シイ
(元尾崎)
問ハズ之ヲ賣ントスルトキハ土地ノ所有者ニ先買權ヲ行フヤ否ヲ述ブ可キ云々トシテ宜シイ
(箕作)
宜シイ
本條ハ「建物又ハ樹木ノ契約前ヨリ存スルト否トヲ問ハス地上權者之ヲ賣ントスルトキハ土地所有者ニ先買權ヲ行フヤ否ヲ述フ可キノ」云々ト修正シ他ハ原案ニ決ス
第百九十條朗讀ス
第百九十條 本法頒布ノ時ニ存スル地上權ハ左ノ規定ニ從フ
期限ヲ立テテ設定シタル地上權ハ其期限ニ至リ當然消滅ス
期限ヲ立テスシテ設定シタル地上權ハ第百八十八條ニ從ヒ建物ノ存立ト同シク繼續ス
右兩樣ノ地上權ハ共ニ第百八十九條ニ規定シタル先買權ニ服ス
(村田)
之ハ宜シイ
(元尾崎)
期限ニ至リ當然消滅スルハ困ルネ
(松岡)
期限ニ至タトキハ仕方ガナイ
(元尾崎)
東京ハ左樣デナイ賣テモ立タヌノデス
(大尾崎)
御入用次第ト云フノガアリマス
(栗塚)
「百八十九條ニ」トアリマスハ「前條ニ」ト直シマス
(大尾崎)
宜シイ本條ハ百八十九條ニ規定シタルトアルヲ前條ニ規定シタル云々トシ他ハ原案ニ決ス
(栗塚)
ソレカラ畜借ノコトノ報吿丈ケ申テ置キマスガ此間數度ノ會議モアツテ農商務省ヘ問合セナケレバナラント云フノデ參考ニモナロウト思ツテ聞キマシタラ宮島新吉ト云フ農商務局長ガ骨折テ彼ア云フコトヲ調ベサスルニ昨年中奧陸三丹肥前ノ方ヘ人ヲ遣タ鹽梅デスガ羊ト云フノハナイ日本デハ馬牛ノ貸借ト云フモノハ寔ニ多ヒモノデアリマスガ入馬屋ト稱シ中モ籠ルソウデ馬喰ト云フ者ハ持主デ孰レモ三百四百頭ノ牛馬ヲ持テ居テソレガ牝ヲ貸ストキハ期限ヲ定メズ貸シ、數ケ村ヘ貸付ケテ置キソレカラ某ニハ二疋某ニハ三疋ト記シテ置クト云フソレデ食ハセルノハ借人ガ食ハセナケレバナラン、ソコデ馬ヲ使フ方ノ者ハ耕セタリ肥料ヲ取ルハ借人ノ利益デアリマス、馬喰ハ市ガ立テ誰某ニ貸タ馬ハ何歳ニナツタガ彼レヲ取テト云フト遣スナケレバナラン其替リ借人ハ何時デモ取ラルル替リニ入馬屋ノ方カラ代テ取上ゲルト云フ樣ニナツテ居リマス牝ハ三ケ年四ケ年デ分娩ヲ目的デ子ヲ立ルコトガアル三丹方リハ牛ト馬トニ由テ違フガ子ノ數ヲ以テ孳尾サスルノモアレバ子ヲ金ニシテスルノモアル或ハ半分ヅツトカ或ハ三分ノ二トカ取ルノモアル又飼場ノ樂ノト左樣デナイノトデ違フ迚モ彼レハ子ヲ產ント云フ方ノ側ダト違フウデ牛ト馬デモ子ノ有無ニ因テ違フ子ヲ產マセルト云フノモ這入テ居ルト期限中ハ取代ルコトハ出來ヌ併シナガラ子ヲ產ヌ方ノ使用ヲ目的ニシテ借リテ居ル方ハ、使用ト肥料ヲ取ル方ダト、スツカリ貸主次第デ何ノ馬ヲ持テ來ラレテモ文句ハ云ハレナイソウデ三丹大島ハ牛ガ多ヒノデ矢張牛モ入馬屋ト稱シテ居ルソウデ御座イマス
(松岡)
土地ニ由テ條件ハ違フガ郡ヲ爲スノハナイノデス
(栗塚)
左樣デス彼レ等ハ肥料ヲ取テ使用スルト云フノデアリマス、ソレカラ何所カラ來タカト云フニ肥前ガ本デアリマス畜類ノ貸借ハ肥前ガ大本デアリマス三丹方リデヤツテモ肥前ヘ往テ肥前カラ出テ來ル鹽梅デアリマス何フ云フ譯デ彼アナツタカ調中デアリマスソウデ牛馬ノ貸借ニ付テハ肥前ハ契約ノ方法ガ幾通リモアルソウデ御座イマス、ソレカラ福島長野方リニモ大變アルソウデ併シ羊ヲ政府カラ貸付テ居ル樣デ三ケ所カ四ケ所貸付ケテ居ルソウデ農商務省カラ數百頭貸テ旨ク行タラ民法ガ出來レバ蓄借ニナルダロウト云フ併シ今日迄飼蓄保護ト云フハアリマセン併シ一人ノ所有者ガ馬ヲ多ク持テ村ノ者ヤ小作人ガ馬ヲ飼フコトガ出來ヌニ因テ一人數百頭ノ馬ヲ村方ヘ分テ與フルト云フコトハアルト云フコトデアリマス、ソレ丈ケノ報吿ヲ申上マス
(箕作)
郡ノガアリマスカ
(栗塚)
御座リマセン
(箕作)
獸類ハ只ダノ賃借デハナイカ
(村田)
只ダノ樣デスガ會社デヤルノハアリマセンデシヨウ
(栗塚)
御座リマセン
(村田)
此中ニハ會社ノガアルカラ六ケ敷イ
(松岡)
左樣云フノガアルカラ法律ヲ立テ樣ト云フナラ實際ヲ見テ法律ヲ立テナケレバナラン
(箕作)
害ニナルモノハ除キアツテ邪摩ニナラヌモノハ法律トシテモ宜カロウ、今日ハ是デ擱キマシヨウ
于時午後三時三十分閉會