旧民法・法例(明治23年)

法律取調委員会 民法草案再調査案議事筆記 第23回

参考原資料

備考

  • 未校正のテキストデータです.
民法草案第二編財產篇再調査案第二十三回議事筆記
(賃借權ノ部)
(元尾崎)
ヤリマセウ
第百二十一條朗讀ス
 第三章 賃借權、永借權及ヒ地上權
 第一節 賃借權
第百二十一條 動產ト不動產トヲ問ハス有體物ノ賃貸借ハ賃借人カ賃貸人ニ金錢其他ノ有價物ヲ定期ニ拂フコトヲ約シ賃貸人カ賃借人ニ或ル時間賃借物ノ使用及ヒ收益ヲ爲スノ權利ヲ與フ但後ノ第二款及ヒ第三款ニ定メタル如ク約束ニ因リ又ハ法律ノ效力ニ因リテ當事者ノ負擔スル相互ノ義務ヲ妨ケス
(栗塚)
之ハ僅カニ文字ヲ改メタ丈ケデ御座イマス、賃貸人カ」ト云フ字ヲ削テ、「拂フノ約ニテ賃貸人ニ或ル時聞云々權利ヲ與フ」トスルノデス、再調査案ノ通リデスト賃貸人ガ與フルニナリマスカラデス、與フ處ノ契約ナリトスレバ宜シイガソレハ申セマセヌ
(村田)
修正ノ方ガ宜シイ
(松岡)
「賃貸借トハ何々ノ契約ヲ云フ」ト云フ樣ニシテハ如何デス、人ガ何々シテ賃貸借ガ與フルノダト云フノモ隨分難儀ナ文章デス
(元尾崎)
原案通リデ宜シイデハアリマセンカ
(南部)
ハト云テ要求スト云フハ工合ガ惡イノデス
(渡)
報吿委員ヨリ提出ノ通リ修正シヨウデハアリマセンカ
(松岡)
賃貸借ハ永賃貸借ヲ止メタノデスカ
(南部)
權ノトキハ賃借權永借權ト書イテアリマス、權ノ字ノ付タトキハ貸借ト云フ事ハ云ハヌノデス
(村田)
「約束ニ因リ」ハ「合意ニ因リ」トスルノデシヨウ
(淸岡)
賃貸借ト云フコトヲ止メタノデスカ
(南部)
前既ニ權ト云フトキハ賃借權永借權ト極マツテ居リマス
(松岡)
如何ナル理由デ賃借權ト云ハナケレバ惡イノデスカ
(淸岡)
貸權借權ガアルカラ賃貸借權デシヨウ
(南部)
ドウ云テモ宜シイノデスガ、賃貸借權ト云フハ長クナリマスカラ賃借權デ宜カロウト云フノデ借ル方カラ語ヲ立タノデス賃貸借ト云フトキハ皆ナ賃借權デアリマス
(村田)
永借權ト云フテモ借ル方デス
本條ハ報吿委員ノ修正ノ通リニ決ス
第百二十二條朗讀ス
第百二十二條 工作又ハ工業及ヒ傭使ノ賃貸借ノ契約ハ第三編ニ於テ之ヲ規定ス
獸畜ノ賃貸借ニ特別ナル規則モ亦第三編ニ於テ之ヲ規定ス
(箕作)
之ハ削除スルノデスネ
(南部)
左樣デス
(箕作)
前條ノ有體物ト云フハ如何ナルモノデスカ、賃貸借ト云フノハ勞力ノ賃貸借ガアルノデスガ彼レヲ削テ雇傭ト云フ樣ナモノト云フト有體物賃貸借ハオカシイ、デス
(南部)
ソレハ仕方アリマセン無體物ハ賃借ハ出來マセン
(箕作)
無體物ヲ云ハヌト有體物賃貸借ト云フモ無用デシヨウ
(元尾崎)
有體物ト云フノハ、オカシイ
(箕作)
動產、不動產ノ賃貸借デ宜シイノデス
(松岡)
有體物ト云フハ削ルガ宜シイ
(北畠)
削ル可シ、動產及ビ不動產ノデ宜シイ
(箕作)
前ノ條ハ、「動產及ヒ不動產ノ賃貸借ハ」トシテ宜シイ
(元尾崎)
宜シイ
(松岡)
雇傭ト云フノハ賃貸借デナシニシタラ、イカヌト云フノデスカ
(南部)
左樣デス
(松岡)
二十二條ノ削除ハ宜シイ
前條ハ於是「動產及ヒ不動產ノ賃貸借ハ云々」ト修正シ百三十二條ハ削除ニ決ス
第百二十三條朗讀ス
第百二十三條 國、府縣、町村及ヒ公設所ニ屬スル財產ノ賃貸借ハ行政法ヲ以テ之ヲ規定ス
(栗塚)
「國、府縣、町村」トアルハ「市」ノ字ヲ脫シマシタノデス
(村田)
前ニハ國町村トハ云テアリマセヌ
(元尾崎)
郡モ這入カ否ヤ存廢ガ分ラヌカラ公ノ無形人トシテ置キマシヨウ
(南部)
云ハナケレバナラン所モ出來テ來マス
(栗塚)
「道」ハ如何デスカ
(元尾崎)
道ハ無形人デハアリマスマイ
(村田)
道ハ無形人デス北海道ノ如キハ府縣モ同ジコトデス
(元尾崎)
彼レハ行政官デス
(栗塚)
國ト云フハ卽チ武藏國ト云フモ同ジデ無形人デス
(松岡)
私ノ無形人ト云タラ會社モ這入デシヨウ
(栗塚)
公設所ハ病院、貧院、育児院モ這入リマスカラ、斯フシテ置キ下サイ
(村田)
此條ハ無クツトモ宜ササウモノデス
(南部)
賃貸借ハ卽チ之ヲ以テ適用スル樣ニナリマスカラソレハ、イカヌデス
(元尾崎)
法律ヲ出サヌト、之ニナルノデシヨウ、特別法ヲ以テ定ムトシテモ、之ガ出レバ宜シイガ出ナイトイラヌ區別デス
(栗塚)
行政法ヲ以テダカラ宜イデシヨウ
(南部)
之ガ出ナイトキハ現在ノ法律ニ依ルノデス
(松岡)
貸スト云フコトハ出來ルガ貸ス人ハ誰ガスルカハ行政法デ極マルノデ、設ヒ公ノ使用物デモ財產ヲ人民ニ貸借ガ出來ル以上ハ矢張此規則ノ適用ハ免カレヌ
(渡)
民法デスルコトデハナイ
(松岡)
民法デ一切適用セヌト云フノデハアリマセン
(元尾崎)
勝手次第ニヤルノデハアリマスマイ貸タ物ヲ何時デモ取リ上グルゾト云フノデス
(松岡)
管理スル人ノ能力ハ彼レガスルト云フノデス
(元尾崎)
左樣セントイカヌ一體人民トノ契約上カラ成立ハ民法ニ依ラナケレバナラン
(淸岡)
依ロウト思ヘバ依ルガ宜シイ勝手ニ出來ルノデス
(松岡)
何モ角モデハアリマセヌ管理丈ケハ向ウノ法律ガ出來ルト云フノデス
(淸岡)
左樣デハアリマセン
(松岡)
否、左樣デス
(尾崎)
之ハ置テ宜シイ
(南部)
之ヲ削ルハ以テノ外デス
(淸岡)
之ハ總則トデモナランデスカ、前置條例ハ總則トナツタガドウデスカ
(栗塚)
永借權ト地上權ヲ一節二節三節トシマシタカラ
本條ハ原案ニ決ス
第百二十四條朗讀ス
 第一款 賃借權ノ設定
第百二十四條 賃借權ハ賃貸借契約ヲ以テ之ヲ設定ス
賃借權ヲ贈遺シタル場合ニ於テハ相續人ハ遺言書ニ記載シタル項目及ヒ條件ニ從ヒテ受遺者ト賃貸借契約ヲ取結フコトヲ要ス
賃借權ヲ豫約シタル場合ニ於テモ諾約者ハ要約者ト賃貸借契約ヲ取結フコトヲ要ス
(栗塚)
「項目」ト云フ字ハ約款ト云フ字ニ致シタイカラ、記載シタル約款ニ從ヒト願ヒマス
(箕作)
約ノトキハ約款デモ宜シイガ遺言狀ノトキハ契約デモ合意デナイニ約ノ字ハドウカト思フ條款トカ云フノナラ宜シイガ、項目デ置イテハドウデスカ
(栗塚)
ソレデハ項目デ置キマシヨウ
(松岡)
元來二項ハ止メラレナイモノデシヨウカ貸借ト云フコト賃貸借ノコトヲ云フニ遺言シテ居ツタラ相續人ガソレヲ奉ジナケレバナランゾヨト迄云ハナケレバナランカ、御叮嚀過ギタ話デ何レモ契約ハ皆ナ左樣シナケレバナラン
(淸岡)
遺言ハ守ラナケレバナラン
(元尾崎)
此ハ之デ宜シイ
(淸岡)
贈遺ハ、遺贈トシマスカ
(南部)
遺贈トナリマス
(淸岡)
此所等方リハオカシイ
(元尾崎)
項目ト條件ト二ツ書イタハ如何ナル譯デスカ
(栗塚)
條件ト項目トハ少シ違フダロウト思ヒマス箇樣ナ事柄ヲ極メ箇樣ナ條件ガ付テ斯フト云フコトモアリマシヨウ
(箕作)
項目トシタハ整然ト分ツタモノソレカラソレニ付テハ箇樣ナ事柄ヲト云フノデシヨウ
(粟塚)
左樣デス
(松岡)
條件ガアレバ條件ヲ繼ゲト云フコトハ云ハナケレバナラン
(淸岡)
一節ト云タリ一款ト云タリスルト同ジコトデス
(元尾崎)
ソンナラ之デ宜シイ
(箕作)
修正スル字ハナイノデスカ
(栗塚)
ナイノデ御座イマス
(松岡)
何國ニモ箇樣ナ愚文ハアリマスマイ
(元尾崎)
歐羅巴ニハ八釜數イノデ、此通リ書テアルカナイカ知ラヌガ遺言デ誰某ニ己レノ家ヲ貸セト云フコトハ澤山アリマス、其通ニスルノデス併シ日本ニハ餘リナイコトデアリマス
(箕作)
後生大事ニ義務ヲ守ラナケレバナラント云フノデス
(松岡)
契約ハ皆ナ何レモ左樣デス
(元尾崎)
契約デハナイカラネ死ヌ時分ニ箇樣ニシロト云フノデスカラ之デ宜シイ先ヘ行キマセウ
本條ハ原案ニ可決ス
第百二十五條朗讀ス
第百二十五條 賃貸借契約ハ有償名義ナル雙務ノ契約ノ通則ニ從フ但後ニ揭ケタル變例ヲ妨ケス
(栗塚)
本條ハ「有償名義」トアルヲ「有償且雙務ノ契約」ノ方ガ宜クハナイカト思ヒマス
(松岡)
宜シカロウ
(箕作)
有償契約ト書イタ所ガアリマスカ
(栗塚)
アリマス
(南部)
名義ノトモアリマスガナイ所モアリマス
(村田)
有償名義ハ置キタイ
(箕作)
原案デ置キタイ
(栗塚)
雙務契約ニ有償名義デナイモノガアリマスカ
(村田)
有償名義卽チ雙務契約デス
(栗塚)
有償名義デナイモノガアル樣ニ見ヘマスカラデス
(南部)
有償其上雙務デス
(淸岡)
雙務契約デ有償名義ガクツ付テ居ルノデスカ
(栗塚)
有償名義ニシテ且雙務契約ト云フモノデス
(北畠)
有償名義ニシテ雙務ニナルト云フノデスネ
(栗塚)
左樣デス、スルト雙務契約中有償名義ナルト云フ樣ニナルカラ雙務契約ノ一ノ種類ニ見ヘマスカラデス
(松岡)
有償且雙務ニシテ置キマシヨウ
(尾崎)
ソレデ宜シイ
(箕作)
有償且雙務トシテ先ヘ行キマシヨウ
本條ハ「有償名義ナル」トアルヲ「有償且」ト修正ニ決ス
第百二十六條朗讀ス
第百二十六條 法律上又ハ裁判上ノ管理者ハ其管理スル物ヲ賃貸スルコトヲ得然レトモ管理者カ期間ニ付キ特別ノ委任ヲ受ケスシテ賃貸スルトキハ左ノ期間ヲ超ユルコトヲ得ス
第一 獸畜其他ノ動產ニ付テハ二个年
第二 居宅、店舗其他ノ建物ニ付テハ三个年
第三 耕地、牧場、樹林、池沼其他土地ノ部分ニ付テハ十五个年
(栗塚)
本條ハ十五个年トアリマスハ五个年ノ誤リデ御座イマス、ソレカラ然レドモ管理者ハ期間ニ付特別ニ委任ヲ受ケズシテ云々ハ要ラヌデシヨウ但其賃貸借ハ左ノ期間ヲ超ユルコトヲ得ズトシテ宜カロウト思ヒマス
(元尾崎)
宜カロウ
(箕作)
法律ガ制限シタ樣ニ見ヘハシマセンカ
(栗塚)
法律上裁判上ノ管理者デアリマスカラ當リ前之丈ケシカ出來ヌノガ原則デシヨウ
(箕作)
左樣デシヨウガ得ズト云テ見ルト法律ハ其上無效ニシテ仕舞フ樣ニ見ハシマセンカ
(村田)
左樣見マシヨウ
(箕作)
私ハ原案ガ宜シイト思ヒマス、百二十九條ノ代理人ハ合意上ノ代理デシヨウ
(村田)
彼レハ管理者デアリマス
(箕作)
合意上ノ管理者デ、法律上デナイカラ、ソレニ適用スト書キマシヨウ管理者ハ代理人ノ書面ヲ以テ伸縮シタルトキハ此限ニアラズ、ダガ法律上裁判上管理者ハ一、二、三、ノ期間ニアツテモ相成ラヌト云フ樣ニ見ハセンカ
(淸岡)
此儘デ宜シイ
(槇村)
原案デ宜シイ
(尾崎)
原案デ宜シカロウ
(栗塚)
併シナガラ此所デハ制限スルコトガ主デ御座イマス一體是ヨリ出來ヌトシテモ他人ノ物ヲ預テ居ルノデスカラネ
(箕作)
委任ヲ受ケタラ出來ルノダカラ宜シイデハアリマセンカ
(栗塚)
如何ナモノデスカ、特別ノ委任ヲ受ケマシタコトナラ法律上裁判上管理者ハナク、其特別ノ委任ヲ受ケタラ合意上ノモノニ變ジハシマセンカ
(箕作)
性質ハ如何ナル管理者ガ法律上ニデス其者ガ此所デ外ノコトヲ爲セト云ハレテモ管理者ノ資格ヲ一變シテ仕舞フコトハ特別ノ委任ヲ受ケタカラツテモソレハ出來ヌ
(栗塚)
後見人ノ場合ニ親族會議デ、今少シヤツテ呉レト云フトキデス
(箕作)
ソレデモ法律上ノ管理者デシヨウ合意デハヤリマスマイ、害ニナラヌノナラ置キマシヨウデハナイカ
(松岡)
置キマシヨウ
(元尾崎)
置キマシヨウカ獸畜ト云フハドウカ
(村田)
之ハ動物トスレバ宜シイ
(南部)
其他ノ動產トアルカラ宜ヂヤナイカ
(元尾崎)
家畜許リデハアリマスマイ鶯モ這入ノデシヨウ
(松岡)
賃借ニスレバ宜シイ
(箕作)
獸畜ト云フハ削テモ宜シイガマア置キマシヨウ
(元尾崎)
ソンナラ置キマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第百二十七條朗讀ス
第百二十七條 管理者ハ前條ニ記載シタル賃貸物ノ區別ニ從ヒ現期間ノ滿了ニ先タツ三ケ月、四ケ月又ハ六ケ月內ニ非サレハ同一ノ期間ヲ以テ賃貸借ヲ更新スルコトヲ得ス
然レトモ右ノ期間ニ先タチ爲シタル更新ハ管理者ノ委任ノ止ムヨリ前ニ旣ニ新期間ノ始マリシトキハ無效ナラス
(元尾崎)
獸畜其他ハ三ケ月居宅ハ四ケ月ハ詰リ餘リ早クハ約束ハ出來ヌト云フノデ宜シカロウ
(栗塚)
次ノ百二十八條ハ議場削除トシマシタハ甚ダ變ナ行達ヒデアリマシテ議場デ削除ニナツタ跡デ起案者ニ聞イテ見ロト云フノデ、斯ノ如ク書イタノデス、スルト議場ノ滿足通リニ本條ガ出來テ參タノデアリマス
(村田)
議場削除デハ分リマセン
(栗塚)
ソレデ生キテ居リマスカラ別ニ提出シテアリマス
本條ハ原案ニ決ス
第百二十八條朗讀ス
第百二十八條 管理者ハ金錢外ノ有價物ヲ貸賃ト爲シテ賃貸スルコトヲ得ス
然レトモ田畠ニ付テハ其產出物ヲ貸賃ト爲シテ賃貸スルコトヲ得
(栗塚)
本條修正ノ意見ハ意味ハ違ヒマセン、米其他穀物栽培地ト云フノヲ「田畑」トヤツタ丈ケデス
(元尾崎)
宜シイカ、山林ノ樣ナモノハイカヌデスカ
(松岡)
類ヲ擧ゲタノデアリマス
(村田)
產出物ハ宜イト云フノダナ
(箕作)
田畑ト耕地トハ違ヒマスカ
(栗塚)
同ジデス耕地ガ田畑ノ方ハナイト云フノデス
(箕作)
ソレデハ耕地ト云テハドウデスカ
(栗塚)
米其他穀物ノ栽培地ト云フヲ田畑トヤツタノデス
(箕作)
耕地デ宜シイデシヨウ
(村田)
耕地デ宜シイ
(栗塚)
耕地デ宜シイ
(淸岡)
耕地ハ畑トハ云ハレマセン
(松岡)
田畑コソ耕地デ宜シイ
(南部)
耕地デ宜シイ
(元尾崎)
宜シイ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ「田畑」トアルヲ「耕地」ト修正シ他ハ原案ニ決ス
第百二十九條朗讀ス
第百二十九條 前二條ノ規定ハ代理人ニ之ヲ適用ス但代理委任ノ書面ヲ以テ其權限ヲ伸縮シタルトキハ此限ニ在ラス
(栗塚)
本條ハ前二條トアルハ「前三條」ト直リマス此處ハ代理人ニ之ヲ適用スト云フヲ合意上總テノ管理者ニ之ヲ適用スト致シタイ左スルト總理タルト部理タルトヲ問ハズヲ削タカラ但シ委任トヤツテモ宜シイ
(松岡)
代理人ト云ヘバ總テ這入リマス
(南部)
法律上又ハ裁判上又ハ合意上ノ管理者ト云フノガアリマスカラソレト三十六條ト照應サシテ管理者トシタノデス
(村田)
合意上ノ管理者ニ適用スト云テ宜シイデシヨウ
(栗塚)
何ゼ管理者ト云フヲ入レタカ代人ニテモト云フト百二十六條ト照應セヌカラデス
(箕作)
管理者ト云フノハ唯ダ代理人ノ合意ト合意上ノ管理者ト云フノハ分リ惡イカラデ代理人ト云ヘバ契約上代ノ事ニナルカラデス
(村田)
此間モ合意上ノ管理者トヤツタカラネ
(箕作)
代理人デ分ツテ居ルカラ、オカシナコトハシナイデモ宜イデハアリマセンカ
(淸岡)
代理人管理者ト二ツ入レマスカ
(村田)
元トハ代理人卽チ管理者トアツタノデ、管理ノ所爲ニ法律上ト裁判上ト合意上ト三ツアルノデスカラ
(渡)
管理者ニ直スカ
(箕作)
原案デ宜シイ
(元尾崎)
原案贊成
(松岡)
原案贊成
(槇村)
原案贊成
(尾崎)
原案デ宜シイ
(村田)
困リマスヨ
(元尾崎)
ソンナ疑リハアリマセン
(村田)
九百二十條ニハ合意上裁判上ヲ問ハズトアルガ管理者デアリマス
(南部)
合意上ト云フノガアツテ管理者ト無ケレバ照應シマセン
(箕作)
アレハ監守人デス
(村田)
矢張管理者モ這入テ居ルノデス
(箕作)
善良ナル管理者ハ善キ親父ト云フノデ善キ家族ノ親父ト云フノデ監守人ハ別デアリマス
(栗塚)
唯ダ代理人ト云タラ法律上ノモ這入ハセンカ
(箕作)
法律上裁判上代理人ハ前ニアルカラ代人ト云ヘバ分リソウナモノデス
(元尾崎)
法律上裁判上委任ノ書面ハナイモノダカラ宜シイデハアリマセンカ
(村田)
合意上代理人ト云テ居ル所モアリマス
(箕作)
ソレハアリマシヨウ
(渡)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第百三十條朗讀ス
第百三十條 自己ノ財產ヲ管理スルコトヲ得ル婦及ヒ旣脫後見ノ未成年者モ亦前二條ノ規定ニ從フニ非サレハ其財產ヲ賃貸スルコトヲ得ス
(栗塚)
本條ハ前二條トモ前三條トモ申セマセヌカラ「管理者ト同一ノ條件ニ從フニ非サレハ」ト致シマシタ
(村田)
宜シカロウ
(松岡)
自己ノ財產ヲ管理スルヲ得ル婦ト云フト如何ナル者カ、商買人デシヨウカ
(栗塚)
商買人デシヨウ
(淸岡)
婦ハ夫ノアルモノデシヨウ
(栗塚)
人ノ妻タル者ニシテ自己ノ財產ヲ管理スルコトヲ得ヌノガ當リ前デスガ得ル者ハト云フノデス
(松岡)
民法上商法ノ如ク既脫後見ニスルコトガアリマシヨウカ
(委員長)
アリマスマイ
(松岡)
ナイト工合ガ惡イ削ラナケレバナラン恐クハ出來ヌデシヨウ
(箕作)
婚姻契約ハ出來ヌ中ハ外ニアリマセン
(元尾崎)
夫ガ許シテ管理サセテ居レバ出來ル、自己ノ財產ヲ管理スルハアリマス
(松岡)
ソレハ民事上デスカ商法上デスカ
(元尾崎)
民事上ニ澤山アリマス
(松岡)
ソレハ代理ニナルノデス
(元尾崎)
自分ノ妻ノ財產デアツテ自分ガ勝手ニスルヲ夫ガ許スノガアリマス
(栗塚)
公債證書ヲ取リニ行クモ婦ノ名デ行ク又株ヲ預ケルモ妻ノ名デスル其金ハ妻ガ使フコトガ出來ルノデアリマス
(元尾崎)
金ヲ積ムモ其通リデス
(委員長)
ソレハ夫ノ許可ヲ得テ居ルノデシヨウ許可ナシニハヤラヌデシヨウ
(栗塚)
左樣デス
(元尾崎)
私ハ此通リデ宜シイ
(淸岡)
娘モ這入テ居ルト見マスカ
(栗塚)
娘ハ別デアリマス
(淸岡)
既脫後見ノ中ニナリマスカ
(栗塚)
年ニ依ルノデス
(元尾崎)
丁年ナラ宜シイデシヨウ夫ニ嫁セバ夫ニ從ハナケレバナラン
(栗塚)
婦モ裁縫ノ教師トカ、「ハンケチーフ」ヲ繼フトカトシテ貯ヘタ金ハ自分デ管理スルデシヨウ
(元尾崎)
此處ハ夫ノアル妻ト見ルノデスカ
(栗塚)
左樣デス
(松岡)
如何ナルモノデスカ民法ト商法トカ二樣ニ出來ルガ
(箕作)
ソレヨリ仕方ハアリマスマイ
(委員長)
商法ノ方ハ取リ除ケデ、民法ガ原則デアリマス
(松岡)
制限シテヤラント保護ノ上ガ缺ケマスガ
(淸岡)
民法ニハ妻ヲ押ヒ付ケテ置クガ宜シイ
(元尾崎)
商法ハ特別デス
(北畠)
居茶屋抔ハ皆ナ婦ノ商買デス
(松岡)
商法ハ彼ノ如キコトガ出來ルガ民法ニハ制限ガ必要デス既ニ後見ヲ免レ財產ヲ管理サセル以上ハ制限スルハ何ノ爲メカ卽チ其人ハ第一智識モナクシテ不利益ヲ蒙ルカモ知レタカラ法律ガ保護シヨウト云フノデス
(栗塚)
人事ニ關係シタ問題デ松岡サンノ云フ所ハ嫁ニ行タ者ハ斯フ後見ヲ脫シタ者ハ斯フト云フカ極マラヌ以上ハ大早計ト云ハザルヲ得マセン
(南部)
スレバ既脫後見モ同ジデス
(元尾崎)
英國ニハ夫ノ有ル妻ハ檢束シタモノデ何モ出來マセヌ夫ガ連署シナケレバ訴ヘラレモシナイ
(栗塚)
被吿ハ此限ニアラズデシヨウ
(元尾崎)
民事上ハ一緒ニ訴ヘラレマス被吿ノ妻ガ契約シテモ其夫ハ一緒ニ呼出サレマス、カラ、却テ日本ノ婦ハ權利ガアルノデ西洋デハ婦ノ方ヲ大變抑ヒテ居リマス
(南部)
行フデハアリマセンカ
(松岡)
大問題ヲ出シテモ聞ク人モナイカラ宜シイ
(箕作)
契約篇ニ結婚シタ婦ノ所爲及ビ夫婦ノ權利義務ノ條ガアツテ其條ニ定メタ場合デナケレバ妻ヲ訴ヘテモ證明スルコトガ出來ヌト云フカラソレデ宜シイノデシヨウ
(栗塚)
大問題デ御座イマスカラ人事編ヲ講究スルガ宜シイ
(渡)
一朝ニシテ旨ク行クモノデハアリマセン
(委員長)
先ヘ行マシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第百三十一條朗讀ス
第百三十一條 前數條ニ反シタル賃貸借又ハ其更新ニシテ所有者其權利ヲ自在ニスルコトヲ得ルニ至リ追認シタルモノニ付テハ賃借人ハ其無效又ハ短縮ヲ請求スルコトヲ得ス
然レトモ賃借人ハ所有者ノ追認スルヤ否ノ意思ヲ第百二十六條ニ區別シタル賃借物ノ性質ニ從ヒ八日、十五日又ハ三十日ノ期間ニ述フルヲ常ニ要求スルコトヲ得
所有者カ其意思ヲ述フルコトヲ拒ムトキハ賃借人ハ起初又ハ更新ニ於テ定メタルカ如ク賃借期間ヲ存持セント述フルコトヲ得
(栗塚)
本條ハ、「前數條ニ反シタル賃貸借又ハ其更新ナルモ所有者云々認諾スルトキハ賃借人ハ其無效又ハ短縮ヲ請求スルコトヲ得ス」トシソレカラ第二項ハ「認諾スルヤ否ノ意思ヲ述フルコトヲ常ニ要求スルコトヲ得」トシ「但其意思ヲ述ブル期間ヲ第二十六條ノ區別ニ違ヒ」云々トシタイ、然レドモ以下旨意ハ「所有者カ認諾スル意見カアルカナイカ常ニ要求スルコトヲ得」ト云フノデ跡ノ何日間ニ述ブルカハ主タル文句デハアリマセン
(渡)
修正ガ宜シイ
(箕作)
元トノ通リデ宜カロウ
(元尾崎)
元トノ通リデ宜シイ
(委員長)
元ノ通リデ宜シイ
(栗塚)
解剖シテ御讀ナサルト分リマスガ初メテ讀ムトオカシイノデス
(箕作)
オカシイコトハアリマセン
(元尾崎)
認諾丈ケ直シテ跡ハ原案デ宜シイ
(箕作)
然レドモト云フハドウ云フモノデスカ
(栗塚)
然レドモト云フハ單ニ箇樣ナコトガ出來ルト云フノデス
(松岡)
然レドモハイラヌネ
(箕作)
唯ダ之ガ出來ルト云フ許リデスネ
(栗塚)
左樣デス
(元尾崎)
三項ハドウデスカ
(栗塚)
末項「存持セン」トアルハ「維持セント述フルコトヲ得」ト致シタイ「メントニール」ト云フ字デ御座イマスカラ維持セント述ブルコトヲ得デ宜シイ
(箕作)
然レドモハ何カ名藥ハアリマセンカ
(栗塚)
去リナガラ、然レドモ、併シナガラ、トアリマスガドウモ併レドモト書カナケレバナラン外國文ニハ五通リモアルノデスカラ
(箕作)
原書ノ通リナラ、唯ダ賃借人ハ何トカ要求スルコトヲ得ルノミデスネ
(南部)
然レドモデ分テ居リマス
(箕作)
イツモノ然レドモトハ違ヒマス
(栗塚)
左樣デス、唯ダト云フノデスネ
(箕作)
宜カロウ
(元尾崎)
一項デスカネ、意味ガ如何ニモオカシイ樣ニ思フ無效ヲ請求スルハ賃貸人ガ請求スル利益ガアル樣ニ思フガ賃借人カラ請求スルヲ得ズト云フノカ
(栗塚)
社會ノ秩序ニ關シタコトナラ誰カラモ行カヌノデス無效ト云フノハ幼年者トカ云フ其方デス
(元尾崎)
詰リ無效ニスル方ノ利益ハ賃貸ノ方ノ利益ノ爲メダロウソレダカラ年經テカラ其レヲ認諾シタラ無效ヲ云フコトハ出來ヌト云フガ當リ前ラシイ然ルニ賃借人ガ無效ヲ云立テモ出來ヌトアリマスネ
(栗塚)
無效ヲ述ブル權ノアル方ダカラ後見人ノ云タヲ私ガ後見人ノ云タ通リ認諾シタラ出來ヌゾヨト云フノデス
(元尾崎)
賃借人カラ云フ譯ハナイ
(栗塚)
賃借人モ家賃ガ高クナツテハ止メ度ト云フトキハ家賃ガ高イカラ止メタイ理窟デハ云ヘヌ後見人ガ取リ消サウト云フコトハ出來ヌ何ゼナレバ所有者ガ認諾シタト云フ理窟ラシイ
(淸岡)
其更新ト云フ其ト云フ字ハイラヌ
(粟塚)
賃貸借ノ更新デアリマス
(村田)
賃貸借ノ更新ダカラアル方ガ宜シイ
(松岡)
全體元尾崎サンノ云フ通リ工合ガ惡イ無效ノ云立ノ出來ルノハ無能力者ノ利益ノ爲メ立テ居ルノダカラネ
(箕作)
全體オカシイ計リデナイ外ノ者デモ無能力ト契約シタラ有能力者カラ取消ハ云ヘヌト云フノガ原則デス
(栗塚)
併シ社會ノ秩序ニ關係シタコトハ出來ヌト云フノデス
(箕作)
左樣デスカ無能力者カラ云ヘルト云フノガ原則デアリマシヨウ
(栗塚)
左樣デス
(元尾崎)
賃借ナゾハソンナコトハナイ
(栗塚)
賃借ト云フ事柄ヨリモ幼年者ヤ後見人ノヤツタ事柄デスカラ
(元尾崎)
其フ云フ者ニ對シテハ有能者カラ勝手ニ無能力者ト爲シテ置キ都合ノ惡イトキ取消スコトハ出來ヌデアリソウナモノデス、ダカラ認諾スルセヌニ拘ハラズダロウデアナイカ賃貸人ノ方カラ訴ヘ未成年ノ間ニ爲タコトハ貸タ方カラ無效ニスルコトガ出來ルノデ然ンドモ年ヲ經テ認諾シタラ出來ヌト云フカラ當リ前ノ理窟デスガ如何ニモ此所ハオカシイ
(松岡)
無效申立ノ訴權ト云フモノハ無能力者ニ非ザレバ有セズト八百四十一條ニアリマス
(村田)
併シ左樣サレテハ困ルデシヨウ前數條ニ反シタル賃貸借ダカラ多クハ期限ガ長イト見ナケレバナラン之ヲ十年ト見ルト幼年者ガ權利ヲ使用スルニナツタラ十年デ宜シイト云タノデ左樣認メタ上ハ賃貸人ニ向テ之ヲ取消テ無效ニシテト云タラ向ウガ不利デアリマシヨウ
(松岡)
唯ガ云ヒ立テラレルカ
(村田)
幼年者婦人ガデス
(松岡)
賃借人ト云フハ誰デスカ
(村田)
幼者ガ婦人デ認諾スルノデソレヲ賃借人ガ認メタモノヲ打消サレテハ不利デシヨウ
(元尾崎)
認諾セント賃借人ガ勝手ニ出來ル
(村田)
認諾セヌトキニ出來ル能力ガ付タラ極メタイト云タラ其通リシナケレバナラン
(栗塚)
認諾ノナイトキノ話デス元尾崎サンハ何デ賃借人カラ云フカト云フカラソレハ權ヲ與ヘテ置クノハ箇樣ナコトハ社會ノ秩序ニ背クカラ誰カラモ無效ヲ申立テラルルモノト云フノデス
(元尾崎)
ドウモ疑グリガアリマス何ノ爲メニ賃借人ノ方カラ言葉ヲ立タカネ之ハ賃借人カラデモ無效ヲ云ヒ立ツルコトガ出來ルカネ貴樣ハ未定年デアリナガラト云フコトヲ利益ヲ取テ置イテデスカ
(南部)
利益ヲ取テ置イテカラハ往ケマセン
(元尾崎)
其フ云ヘルノデ、云ヘルカラ認諾シタラ云ヘヌゾヨト云フノデ
(南部)
賃借人ノ方カラ云ヘルノデ認諾セヌウチハ云ヘルノデス
(元尾崎)
認諾シタラ、モウ往カヌト云フハ當リ前デス
(南部)
分テ居ルヂヤアリマセンカ
(箕作)
私ガ賃貸シタガ向ウハ法律ニ背イタ長イ契約デ、迷惑デアリマスカラ取リ消サウト云フノデスネ
(南部)
左樣デス
(元尾崎)
向ウノ男ノ爲メニ拵イタ法律デナイカラソレヲ利用スルハオカシイ、自分ノ利益ノ爲メニ立タ法律デアルケレドモ自分ガ年寄テ認諾シタラ利用ガ出來ヌト云フナラ分ルガネ
(村田)
法律上又ハ裁判上管理者ガ二、三、五年シカ出來ヌ所ヲ十年ヤツタトキハ矢張取リ消シガ出來ルノデ獨リ幼年者ノ場合計リデハアリマセン
(淸岡)
佛蘭西ハ財產禁ヲ受ケタ無能力ヲ以テ對抗スルコトヲ得ズトアリマスネ、無能力者ト云テ對抗スルコトガ出來ヌト追認前ニシタノトハ云ヘヌ
(元尾崎)
貸タ方ガ幼年者デアツタトキハ無效ニスルコトガ出來ルデシヨウ
(松岡)
ドウモ私ハ箇樣ナ意味ラシク思ヒマスガネ自在ニスルヲ得ルニ至リ追認シタモノニ付テハ管理人ハ否應ハ云ヘヌト云フ丈ケニシテ追認ヨリ前ナラ自カラ權利ヲ越ヘテ居ルトシタノダカラ取リ消スコトハ云ヘルカト云フニ云ヘナイノデアリマシヨウ
(元尾崎)
認諾シテモ、シナクツテモ此方カラハ云ヘヌト云フノデス
(松岡)
認諾シタラ尙ホ更云ヘヌノデス
(元尾崎)
何方ラ道チ云ヘヌノデスネ
(淸岡)
然レドモ要求シ得ル場合計リデス
(松岡)
認諾シタルトキハト云フトシナイ前ハ云ヘル樣ニ解釋スルカ註ノ意味ハ左樣デナイ樣デス
(南部)
元トノ案ガ宜シイ
(箕作)
元トデモ同ジデス
(松岡)
ドウモ意味ガ足リナイト思ヒマス
(南部)
然レドモ是丈ケノコトガ出來ルト云フノデス
(松岡)
一項ハ無效ヲ云フ爲メニ書クノデスガ認諾セヌ前ナラ無效ノ云立チガ出來ル樣ニ見ヘマス
(南部)
元トノ三十一條ノ案ノ通リスルト二項ガ分リ惡イ
(淸岡)
然レドモ唯ダ要求スルコトヲ得ルノミト云フ意味デスネ
(尾崎)
左樣デス追認スルカシマセヌカト云フ丈ケノコトヲ問ハルルト云フノデス
(松岡)
意味ヲ一ト口ニ縮メルト前數條ニ反シタ賃借人ハ無效ノ云立テハ出來ヌ但シ自在ニスルニ至テハ追認スルヤ否ノ意思ヲ聞クコトガ出來ルト云フノデス
(栗塚)
原文デハ條件ニナツテ居ル樣デス、若シモ所有者ガ大人ニナツテカラ認諾シタナラバトアリマス
(箕作)
ソレハ如何ナルモノデスカ其儘ニモ往キマセンガ
(南部)
ソレハイカヌ一般ノ原則ダカライカヌ
(栗塚)
先ヅ筆ノ順カラ云フト、前數條ニ反シタ賃貸借又ハ其更新ハ賃借人ヨリ無效又ハ短縮ヲ請求スルヲ得ズ若シモ所有者其權利ヲ自由ニスルニ至リ認諾スルナレバ、ト云フノデ後ノコトヲ云ハンガ爲メニ認諾ト云フコトヲ加ヘタカモ知レマセン
(箕作)
前數條ニ反シタ云々所有者ガ自由ニ至リタラ賃借人カラ所川有者ニ追認スルヤ否ノ意思ヲ述ベシムルデ宜シイ
(松岡)
ソレデ宜シイ
(元尾崎)
註ヲ見ルト豫メ原則ヲ現ハレタト云フ所ガ一項ハ其旨意トハ違テ居ルハ如何ナル譯カ
(箕作)
若シ斯フシタナラバ無效ヲ賃借人ガ請求スルコトヲ得ズト云テ居ルノデ、起案者ハ若シモ權利ヲ自在ニスルニナリテ所有者ガ認諾スルト述ブルナラバト起案者ガ足シタノデアリマス歴史ヲ云フト元ト斯ンナ論ガアツテ若シ斯フシタナラバトアツテ分ラヌト云テ元ト民法編纂局デ論ガ起テ「ボアソナード」ニ言タラ惡カツタト云テ削タノデスガ又入レテ來タノデス
(元尾崎)
ソレデハ一項ハ全ルデ除テ仕舞ヒ自在ニスルヲ得ルトキハ賃借人ハ云々ト云テ仕舞カ或ハ無能力者ニ向テ請求スルコトハ出來ヌトスルカデス
(村田)
管理者ト云タモノガ危險ヲ加ヘテヤツタラドウデスカ
(箕作)
同ジコトデス
(尾崎)
管理人モ幼者ノ爲メニスル管理者ダカラ
(箕作)
幼者ノ方カラ丁年ニナツテ認諾スルコトモアロウ認諾シナクツテモ宜シイ
(淸岡)
前項ヲ得ズトシテ、然レドモ所有者云々トシタラ宜イデシヨウ
(委員長)
ソレハ宜シイ
(南部)
得ズト云フコトハナケレバナラン
(箕作)
得ズト云テモ宜シイ
(南部)
アツテモ宜イデハナイ、ナケレバナランノデス
(元尾崎)
委任者ノ方カラハ取消スコトガ出來テモ無效ノ方ハ本人ガ自分ガ自分ノ爲タコトダカラ向フノ落度ヲ利益トシテ取ルコトハ出來ヌ物ノ賣買デモ左樣デス代人ガ本人ノ委任ヲ越ヘテヤツタラ其委任者ハ取消シハ出來ルガ之ニ向テ約束シタ者ハ貴樣委任ヲ越ヘタカラト云フコトハ云ハレマセヌ
(南部)
本人ト思テ居タガ代理人ダカラ代理人ニ係テ取消シハ云ヘルノデス
(渡)
之ハ報吿委員デ直シテ貰ヒ度イ
(箕作)
ソレガ宜シイ
(淸岡)
然レドモ所有者其權利ヲ自在ニスルニ至リ云々トシテ宜シイ
(栗塚)
之ハ報吿委員デモ論ガ起テ居ル樣子デ認諾セヌ以上ハ出來ヌト云ヒ、或ハ認諾セヌ以上ハ出來ルト云フ論モアリマス
(元尾崎)
出來ヌト云フハ附會デス
(栗塚)
法律デ二、三、五年ト限ツタモノデ常ナラソレヲ犯シタ人ガアツタラ法律ニ背タ契約ダカラ危險ト云フノデス
(村田)
之ハ今一應聞テヤリマシヨウ
(箕作)
賃借人ハ前數條ニ反シタル賃貸借又ハ其更新ノ無效又ハ短緒ヲ請求スルコトヲ得ス然レトモ所有者其權利ヲ自在ニスルヲ得ルニ至リタルトキハ賃借人ハ所有者ニ認諾スルヤ否ノ意思ヲ第百二十六條ノ區別ニ從ヒ云云トシタラ宜シイデシヨウ
(元尾崎)
ソレデ宜シイ
(栗塚)
斯ウシテ置キマシテ聞テ見マシヨウ
(松岡)
末項ノ「起初」トアルハオカシイ
(淸岡)
「起初」ニ定メタハ何カ、賃借デシヨウ
(栗塚)
起初ノ契約又ハ更新トシテハ如何デスカ
(淸岡)
起初ト云フ字ハ契約ト云フ字ガナケレバナラント云ヘバ尙ホオカシイ
(栗塚)
初メニ定メ又ハ更新ニ於テ定メタルデ御座イマス
(尾崎)
之ハ原案デ宜シイ
本條ハ「賃借人ハ前數條ニ反シタル賃貸借又ハ其更新ノ無效又ハ短縮ヲ請求スルコトヲ得ス」「然レトモ所有者其權利ヲ自在ニスルヲ得ルニ至リタルトキハ賃借人ハ所有者ニ認諾スルヤ否ノ意思ヲ云々」トシ末項「存持」トアルヲ「維持」ト修正ス
第百三十二條朗讀ス
第百三十二條 所有者ノ爲シタル不動產ノ賃貸借カ二十ケ年ヲ超エルトキハ其賃貸借ハ永貸借ト爲リ此種ノ賃貸借ノ爲メ後ノ第二節ニ定メタル規則ニ從フ
(栗塚)
本條ハ二十ケ年トアルヲ三十ケ年ト致シマシタ
(箕作)
原案ノ通リデスネ
(元尾崎)
宜カロウ
(村田)
永小作ガ二十年ダカラ此レハ三十年ハ宜カロウ
(南部)
物權ト定メタ以上ハ三十ケ年ガ宜シイ
(淸岡)
日本ノ慣例ハ二十ケ年デス
(栗塚)
時效デモ少シ長イノハ三十年デ御座イマスカラ此レ計リニ十年ハ變デシヨウ
(村田)
用益權ノ不使用デモ三十年デス
(尾崎)
二十年ト云フノハ慣習上カラ來タノデス
(松岡)
慣習ハ構ハヌト云フナラ何レデスガ左樣デナケレバ三十年デナケレバナラント云フコトハナイ
(栗塚)
民法中長イモノハ三十年ト云フノデ慣習ヲ敗ル程ノデハアリマスマイ
(淸岡)
三十年トスレバ卽チ慣習ヲ破ルノデス
(渡)
三十年デ宜カロウ
(槇村)
三十年ガ宜カロウ
(委員長)
二十年ト云フハ舊慣ガ二十年ト云フカラデスネ
(北畠)
ケレドモ以前ノ永貸借トハ違ヒマスカラ
(松岡)
違ヒマセン永貸借スルハ期限ハ二十年ト云フノデス
(村田)
永貸借ニナルノデス
(南部)
賃借ノ方ハ成丈ケ幅ヲ廣クスルノデス
(淸岡)
何方ガ爲メニナリマスカ
(栗塚)
長クスル方ガ爲メニナリマス
(南部)
二十一年ニナルト永貸借權ヲ用ヰナケレバナラン然ルニ三十年迄ハ構ハヌトナルノデス
(北畠)
地主ノ爲メニナルノデス
(箕作)
長イ方ハ地主ノ爲メデス
(淸岡)
小作人ハ打倒レテモ地主ノ爲メニナレバ宜シイト云フノデスカ
(南部)
ソレハ反對ニ云ヘバ地主ハ打倒レテモ宜イカト云フ同ジコトデス
(尾崎)
二十年トアルト誠ニ小作人ハ自分ノ土地ノ如ク心得充分土地ニ手入レヲスルト云フ位ヒデアリマス二十年ヲ過ギタラ永借スル慣例デアリマス、カラオビデ二十年過グルト小作人ノ爲メニナル樣シテ居ル、ダカラ三十年ト云フハ道理ハアリマセヌ
(北畠)
賃貸借ハ物權人權ニスル論モアツタ其時分城壁ヲ守タ心カラ考ルト卽チ凡例錄デ大善シテアリマス
(淸岡)
往時カラノ慣習ナリ又小作人モ尾崎サンノ云フ樣ナ理由モアルカラ二十年ハ隨分長イモノデ之ヲ三十年ニシナケレバナラント云フコトハアリマセン
(南部)
賃貸借ハ是丈ケ整頓シタモノハ初メテデアリマス
(尾崎)
往時カラ小作デモ何デモ賃貸借ニハ相違ナイ
(南部)
ケレドモ登記抔ノコトモナシ大分ニ違ヒマス
(尾崎)
ケレドモ貸借ノ性質ニハ變リハアリマセン
(南部)
大變違ヒマス
(槇村)
三十年ノ方ガ宜シイ
(栗塚)
總テノモノガ三十年トシテ此ノミ二十年トシテハ釣合ガ惡ク御座イマス
(淸岡)
之ハ貸借ガ永貸借トナル丈ケデ三十年期滿時效ニ係リ自分ノ物ニナルト云フ譯ケトハ違ヒマス
(南部)
賃貸借ハ永貸借ニナルカラ大變違ヒマス
(淸岡)
三十年ハ極端ノモノデシヨウ
(元尾崎)
何レ丈ケ違ヒマスカ
(箕作)
大變權利ガ違ヒマス
(元尾崎)
賃借人ノ方ガ權ガ強クナルノデスカ
(南部)
左樣デス
(元尾崎)
維新カラ最早二十年經タカラネ短ヒモノデス
(尾崎)
イヤ永イモノデス
(松岡)
古クカラ慣習ナラ何モ變ヘルコトハアリマセン
(淸岡)
人民ガ八釜敷ク云フト委員等ガ三十年ニシタト云ヒマスゼ、慣習ヲ敗ルニハ敗ル丈ケノ理由ガナケレバナラン
(栗塚)
永貸借ニナルト地主ハ何ノ位ヒ困ルモノカ知レヌ全ク所有權ヲ取ラルル樣ニナリマスソレ故ニ遲ク到着シタ方ガ宜イト云フノデス
(尾崎)
二十年相應ナルモノヲ借テ居ルト自分ノモノト思テヤツテ居リマスカラネ
(南部)
習慣ト云ハレマスガ二十年以上永小作ニハ名田小作ト云フモノガアツタノデスガ唯ダノ小作ハ二十年經テ永小作ニナル古イ例ハ決シテ御座イマセヌ
(尾崎)
凡例錄ノ一ヲ以テ云フノデシヨウ
(南部)
名田小作ハ卽チ名ノ如ク由所アル田地デ自分ガ金ヲ費シテ居ルトカ云フモノニ付テ理由ガアルノデス卽チ「チートル」ガアルノデス
(尾崎)
名田小作ト云フモノニナルト云フノデス名田小作ト云フハ仰シヤル通リ元ト入費ヲ係ケテ小作人ガ小作スルノガ名田小作デアリマス然レドモ二十年モ小作シ古クナツタラ名田小作ニナルノデアリマス
(槇村)
三十年デ宜シイ
(北畠)
三十年贊成
(元尾崎)
私ハ三十年ノ說ニ左袒致シマシヨウ
(淸岡)
充分理由ガアルナラ三十年ニスルモ宜ウ御座イマシヨウケレドモ之ヲ三十年ノ時效ニ係ル長期デアレバ往キマセヌ
(北畠)
百年作テモ名田小作ニ非ズソバ永期小作デアリマス然ルニ通常ノ小作デモ二十年經ツタラ永小作ニスルトナツテハ大變デス
(淸岡)
小作證書デ一期作トアレバ百年經テモ同ジデアリマス若シ分ラヌデ二十年經タラバ永小作ト認ムルヨリ仕方ガナイ小作證書ハ皆這入テ居ルガソレハ百年經テモ永小作ニハナリマセン
(南部)
更新ハ別デス
(淸岡)
更新ハ甚ダ厄介ダカラ一期宛ノ證書ヲ以テスルノガアリマス、證書ノアル以上ハ永借ニハナラン相替ラズシテ行クノデ永借ヤラ一期作ヤラ分ラヌカラ二十年デ永小作ニスルノデアリマス兎ニ角二十年過ギタラ永借ニシナケレバナラント云フコトハ決シテアリマセヌ
(委員長)
利害得失ガ分ラヌカラ多少數デ決シマシヨウ
(元尾崎)
二十年ニシタイ
(松岡)
素ヨリ二十年說ニ同意
(委員長)
ソレデハ少數ニ付三十年ニシマシヨウ之ハ慣例ヲ云フト二十年ガ宜イカモ知レヌガ三十年トスルモ害ハナイ樣デス依テ三十年トシテ先ヘヤリマシヨウ
本條「二十年」トアルヲ「三十年」ト修正ニ決ス
第百三十三條朗讀ス
第二款 賃借人ノ權利
第百三十三條 賃借人ハ賃借物ニ付キ用益者ト同一ノ利益ヲ收ムル權利ヲ有ス但其賃貸借設定ノ契約及ヒ法律ノ規定ヨリ生スル權利ノ增減ハ此限ニ在ラス
(栗塚)
「契約」ト云フ字ハ「合意」ト致シタイ
(槇村)
契約デ宜カリサウナモノデス
(村田)
契約デ宜シイガ賃借人ノ權利ヲ增減シタモノハ此限ニ在ラズトシテハ如何
(箕作)
之ハ契約デ宜シイ
(元尾崎)
宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第百三十四條朗讀ス
第百三十四條 賃借人ハ其收益ヲ始ムル爲メニ定メタル時期ニ於テ賃借物ノ占有ヲ賃貸人ニ要求スルコトヲ得然レトモ財產ノ目錄又ハ形狀書ヲ作リ及ヒ保證人ヲ立ルノ責ニ任セス但契約ニ因リテ其責ニ任スルトキハ此限ニ在ラス
(栗塚)
「但契約ニ因リテ其責ニ任ス」トアルヲ止メテ「要求スルコトヲ得但契約ニ因ルノ外」トシテハ如何
(元尾崎)
原案デ宜シイ
(栗塚)
然レドモ但ト云フ程ノコトモアリマスマイ
(村田)
用收權デハ作ラナケレバナランガ賃借ニハ作ルニ及バヌカラネ
(尾崎)
之デ宜イデハアリマセンカ
(委員長)
原案デ宜イデシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第百三十五條朗讀ス
第百三十五條 賃借人ハ物ノ引渡前ニ其用方ニ從ヒ一切ノ修繕ヲ完好ニスルヲ賃貸人ニ要求スルコトヲ得
其他賃貸人ハ賃貸借ノ期間大小修繕ヲ爲スノ責ニ任ス但下ノ二項ニ揭ケタル修繕及ヒ賃借人又ハ其僕婢ノ過失若クハ懈怠ニ因リテ必要ト爲リタル修繕ハ賃借人之ヲ負擔ス
賃貸人ハ賃貸借ノ期間疉、建具、塗採及ヒ壁紙ノ保持ヲ負擔セス
又井戶、用水溜、汚物溜又ハ水道管ノ疏浚及ヒ普通ニ賃借人ノ爲ス可キ修繕ヲ負擔セス
(栗塚)
「下ノ二項」トアルハ「左ノ二項」トシテハ如何
(元尾崎)
「左ノ二項」ガ宜シイ
(村田)
「又井戶」何々トアリマスガ之ニ賃貸人ト云フコトヲ入レテハドウデスカ
(栗塚)
「又」デ承ケテ居ル積リデス
(尾崎)
習慣アルトキハト云フノヲ書入レタイ前ニモ既ニ左樣ナツテ居リマス
(南部)
四月十六日ノ會ニ削テ居リマス
(元尾崎)
別ニ契約ガアレバ此限ニ在ラズデアリマスカラ之デ宜シイ
(村田)
之デ宜シイ
本條ハ二項ノ「下ノ二項」トアルヲ「左ノ二項」ト修正シ他ハ原案ニ決ス
第百三十六條朗讀ス
第百三十六條 建物ニ必要ト爲リタル大修繕ハ賃借人ヨリ之ヲ要求セス且此カ爲メ賃借人ニ多少ノ不便ヲ生セシム可シト雖モ賃貸人之ヲ爲スコトヲ得
然レトモ賃借人ハ右修繕ノ一ケ月ヨリ長ク繼續スルニ因リテ損害ヲ被リタルトキハ其賠償ヲ受クルコトヲ得又時間ノ如何ヲ問ハス右修繕ノ爲メ其賃借物中住居ス可キ全部又ハ商業若クハ工業ニ極メテ必要ナル部分ヲ失フ可キトキハ賃借人ハ賃貸借ノ解除ヲ請求スルコトヲ得
(栗塚)
賃借物ノ住居ス可キ全部ト改メ度イ
(村田)
之デ宜シイ
(渡)
元トノ通リデ宜シイ
(元尾崎)
原案デ宜シイ
(栗塚)
物ノ中ヘ住居スルト云フハ如何ナモノデスカ
(元尾崎)
建物ノ中ヘ住居スルト云フノデシヨウ
(村田)
初メノ所ハ賃貸人ハトアルヲ賃貸ガトシテハ如何デス
(栗塚)
「解除」トアルハ「銷除」ト改メマシタ
(村田)
スルト前モ皆ナ銷除トシマスカ
(箕作)
銷除ガ宜シイ
(委員長)
三十八條ニハ解除トアルゼ
(村田)
解除ガ宜シイ
(栗塚)
皆ナ銷除ニ致シマス
(村田)
ソレナラ宜シイ
(箕作)
取消ノ字ガ宜シイ
(栗塚)
「レレジオン」ト云フ字ハ改メテ卽チ解除ト云フ字ハ銷除ト改メ此賃貸借中ニハ皆ナ銷除ト改メヲ願ヒマス
(元尾崎)
損害賠償ハ酷イネ
(尾崎)
重モニ壁デモ塗リ替ヘル場合ニハ東京デハ圍テヤルノデスガ日々二百圓モ商ヒノアルニ圍フ樣ニナツテカラハ日々百圓シカ商ヒガナイカラ百圓丈ケノ損害ヲ償フテト云フテヤロウカラ、オビデ一ケ月モ長クナツテハ大槪銷除スルコトヲ得位ヒニシテハドンナモノデスカ、賠償ノコトハ除ケタイモノデス
(元尾崎)
賠償ノコトハ除ケタイ
(南部)
初メ約束スレバ宜シイデシヨウ
(尾崎)
賠償シナケレバナラント云フハ損害ヲ蒙ムルカラデシヨウ、銷除ヲ求ムルヲ得トシタラ宜シイデシヨウ
(南部)
ケレドモ賠償ヲ求ムル權利ガアレバ銷除モ求メラルルデシヨウ賠償ト云フハ證據立ニ六ケ敷イ丈ケデ眞ニ蒙リタラ仕方ガナイ
(淸岡)
蒙ルカラト云テモ行クコトハ出來ヌ一年契約シテアレバ家賃ヲ要求スルデセウ
(元尾崎)
先方ハ一月ヨリ餘計係ルノデ賠償モ求メラルルガ商業モ出來ル此方ハ一寸シタコトデモ一ケ月以上係ルト賠償ト云フハ如何ニモ酷ヒカラ賠償ト云フ字ハ止メテ欲イ
(槇村)
宜シイ
(北畠)
贊成
(渡)
賠償ト云フ字ハ除テ宜シイ
(村田)
併シナガラ損ヲ受ケタラ取テ宜シイ
(北畠)
家主ハ無駄ナコトヲスルモノデナイ
(南部)
家賃ヲ其儘取ルノハ酷ヒ
(淸岡)
解除スルト云タ方ガ宜シイ併シ素ヨリ貸人カラ解除ハ出來ヌ
(松岡)
逐立テヲ食ハセル手段ニナツテ仕舞
(南部)
家賃ノ減少位ヒハ求メマシヨウガ家賃ヲ其儘取ラレテハ困リマスカラネ
(尾崎)
修繕スル方モ考ヘナケレバナラン
(松岡)
賠償ト云フガ大キイカラデシヨウガ其所ハ同意スルガ佛蘭西ノ樣ニ損害ト云フモノヲ大槪制限シテ置ケバ宜シイ
(淸岡)
家賃ノ減少ト云フナラ宜シイ
(箕作)
ソレデ原案者ノ意ハ賠償ト云フ積リデシヨウ
(栗塚)
利足モ損害ノ中ニ這入テ居リマスカラ其意味デ御座イマス、良シ斯フ書イテアツタカラト云テモ裁判官ガ見積テ二百圓、三百圓ト云テモ左樣ニハ遣リハ致シマセヌ
(松岡)
アリマスマイカ借賃減少トシテ宜シイ
(栗塚)
「右修繕ノ一ケ月ヨリ長ク繼續スルトキハ借賃ノ減少ヲ請求スルコトヲ得」トシマシヨウカ
(尾崎)
ソレナラ宜シイ
(松岡)
宜シイ
(元尾崎)
割合ニ應ジテト入レテ置キタイ
(南部)
ソレハイラヌ
(渡)
割合ト云フコトハイラヌ
(村田)
百三十八條ニモアリマスガ減少ヲ「要求」トスルガ宜シイ
(箕作)
何方デモ宜シイ
(栗塚)
請求スルコトヲ得デ宜シイデシヨウ
(南部)
請求トハ云ヘヌ要求ト云フ字ハ三十八條ニモアリマスカラアレニ倣テ要求トシマシヨウ
(委員長)
ソレデハ要求スルコトヲ得トシテ是デ食事ニ致シマシヨウ
本條第二項二行目「ニ因リテ損害ヲ被リタル云々コトヲ得」ノ數字ヲ削リ「繼續スルトキハ借賃ノ減少ヲ要求スルコトヲ得」ト修正シ「解除」トアルハ「銷除」ト修正スルニ決ス
(槇村)
ヤリマシヨウ
第百三十七條朗讀ス
第百三十七條 賃借人カ第三者ノ所爲ニ因リテ收益ノ權利ニ妨害又ハ爭論ヲ受ケ其原因ヲ賃借人ノ責ニ歸ス可カラサルトキ賃借人ヨリ合式ニ吿知ヲ受ケタル賃借人ハ其訴訟ニ參加シテ賃借人ヲ擔保シ又ハ損害ヲ賠償スルコトヲ要ス
(栗塚)
本條ノ「其原因ヲ」トアルガ「ヲ」ノ字ハイラヌデシヨウ
(北畠)
「ヲ」ノ字ハイラヌ
(委員長)
「ヲ」ノ字ハ除リマシヨウ
本條ハ「其原因ヲ」トアル「ヲ」ノ一字ヲ削リ他ハ原案ニ決ス
第百三十八條朗讀ス
第百三十八條 妨害カ戰爭、旱魃、洪水、暴風、火災ノ如キ不可抗ノ力又ハ官ノ處分ヨリ生シ此カ爲メ每年ノ收益ノ三分一以上ノ損失ヲ致シタルトキハ賃借人ハ其割合ニ應シテ借賃ノ減少ヲ要求スルコトヲ得
又右ノ妨害カ引續キ三ケ年ニ及フトキハ賃借人ハ賃貸借ノ解除ヲ請求スルコトヲ得建物ノ燒失其他ノ毀滅ノ場合ニ於テ所有者カ一ケ年內ニ之ヲ再造セサルトキモ亦同シ
(元尾崎)
之ハ宜ウ御座イマス
本條ハ原案ニ決ス
第百三十九條朗讀ス
第百三十九條 土地又ハ建物ヲ以テ主タル目的物ト爲シタル賃貸借ニ於テ其現在ノ坪數カ契約ノ坪數ヨリ少ナク又ハ多キトキハ土地又ハ建物ノ賣買ニ於ケルト同一ノ條件ニ從ヒテ借賃ノ增減又ハ契約ノ銷除ヲ爲スコトヲ得
(村田)
「契約ノ銷除ヲ請求スルコトヲ得」デ宜ササウナモノデス
(松岡)
一々請求トモナイ所ガアリマス
(南部)
銷除許リデハナイ增減モアリマスカラ仕樣ガナイ
(松岡)
實際用ノナイ法條デスネ
本條ハ原案ニ決ス
第百四十一條朗讀ス
第百四十一條 賃借人ハ賃貸人ノ明許ヲ要セスシテ賃借地ニ適宜ニ建物ヲ築造シ又ハ樹林ヲ栽植スルコトヲ得但現在ノ建物又ハ樹林ニ何等ノ變更ヲモ加フルコトヲ得ス
賃借人ハ舊狀ニ復スルコトヲ得ヘキトキハ其築造シタル建物又ハ栽植シタル樹林ヲ賃貸借ノ終ニ收去スルコトヲ得但第百五十六條ヲ以テ賃貸人ニ與ヘタル權能ヲ妨ケス
(栗塚)
「樹林」ト云フ字ハ總テ「樹木」ト改メテハ如何デスカ
(松岡)
「樹木」ガ宜シイ
(栗塚)
「樹林ヲ栽植スル」ト云フハオカシイ
(箕作)
「樹木」ノ方ガ宜カロウ
(松岡)
二項ノ「權能ヲ妨ケス」ト云フハ今事新ラシク云フデモナイガ經濟上ノ點ヨリ地主家主ガ買ハウト思ヘバ買ヒ買フマイト思ヘバ買ハヌト云フハドウモ落着カヌト思ヒマス
(南部)
アレハ百五十六條ノ中デシヨウ
(栗塚)
ソレハ百五十六條ヲ議ストキニ願ヒマス
(松岡)
ソレデハ留保シテ置キマシヨウ
本條ハ「樹林」トアルヲ「樹木」ト修正シ他ハ原案ニ決ス
第百四十二條朗讀ス
第百四十二條 賃借人ハ賃貸借ノ期間ヲ超エサルニ於テハ其賃借權ヲ無償若クハ有償ノ名義ニテ讓渡シ又ハ其賃借物ヲ轉貸スルコトヲ得但反對ノ約束アルトキハ此限ニ在ラス
賃借人ハ讓渡ノ場合ニ於テハ贈與者又ハ賣主ノ權利ヲ有シ轉貸ノ場合ニ於テハ賃貸人ノ權利ヲ有ス
右孰レノ場合ニ於テモ貸借人ハ賃貸人ニ對シ其義務ヲ免カルコトヲ得ス但賃貸人カ轉借人ト更改ヲ爲シタルトキハ此限ニ在ラス
果實又ハ產出物ノ一分ヲ以テ借賃ト爲シ金錢ヲ以テ之ニ代フルコトヲ許ササルトキハ賃借權ノ讓渡又ハ轉貸ハ賃貸人ノ承諾アルニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
(栗塚)
之ハ此間十三日ニ議定ニナツタ通リデアリマスカラ之デ御置キヲ願イマス
(槇村)
第二項ノ右孰レノ場合ニテモノ下ハ貸借人デアリマスカ
(栗塚)
賃借人ノ間違イデアリマス
(元尾崎)
慣習ト云フコトハ實ハ分リマセヌネ
(南部)
慣習ガアルノデ慣習採用ト云フ論デアツタノデス
(元尾崎)
慣習ダカラ一體出來タト云フコトニシテ反對ノ合意アルトキハ此限ニ在ラズトシテ宜シイ
(栗塚)
此間其通リノ論デアツテ此ノ如クナツタノデアリマス之ガ爲メニ民法ノ方ニ損害ヲ來タシテ一體今日頃迄ニハ終タノデスガ一月許リ纔カノ問題デ妨ゲマシタノデス
本條ハ二項「貸借」トアルハ「賃借」ト正誤シ他ハ十三日決議ノ通リニ決ス
第百四十三條朗讀ス
第百四十三條 不動產ノ賃借人ハ其權利ヲ抵當ト爲スコトヲ得但讓渡又ハ轉貸ヲ禁セサルトキニ限ル
(栗塚)
讓リ渡又ハ轉貸ヲ爲スコトヲ得ベキトキハ卽チ慣習又ハ合意デ禁ジナイトキデアリマスカラ轉貸ヲ禁ゼザルト云フヨリモ讓リ渡又ハ轉貸ヲ爲ストキニ限ルトシテハ如何
(松岡)
上デ「何々スルコトヲ得」トアルニ此所デ「抵當ト爲スコトヲ得」ト云フハドウカ知ラン
(粟塚)
此トキデナケレバイカヌゾヨト云フノデ轉貸ヲ爲スコトヲ得ベキトキニ限ルト云フノデス
(元尾崎)
禁ジナケレバ出來ルカ
(栗塚)
轉貸ノ禁制ナキトキニ限ルト云ヘバ宜イガ禁ゼザルト云フト合意上ニ許リナリマシヨウ
(松岡)
之ハ削除デ宜シイ畢竟讓渡賣買モ出來ヌニ抵當ガ出來ルカラ必要デスガ讓渡スコトモ轉貸モ出來ルトナツタラソレヨリモ前ノ話ダカラ削テモ宜シイ
(南部)
擔保篇ニ照應シナケレバナランガ擔保ノ所ニ抵當ニ出來ヌモノガアリマス
(松岡)
賣買讓與ガ出來テ抵當ノ出來ヌモノガアリマスカ
(栗塚)
人ノ能力ニ關シ、幼年者ノ能力抔ニアリマスガ權利ヲ讓渡スコトハ出來マセヌガ抵當ニスルコトハ出來ルト云フコトガアリマス
(箕作)
賣買讓與ハ出來ルガ抵當ハ出來ヌト云フノガ何カアツタ樣ニ思ハレマス
(南部)
擔保ノ所ニアリマス樣デス
(栗塚)
此ハ御置キニナツテモ宜シイデシヨウ其替リ「轉貸ヲ爲スコトヲ得ヘキトキニ限ル」ト御改メヲ願ヒマス
(箕作)
「爲スコトヲ得ヘキ」ハ宜シイ樣デス
(西)
宜シイ樣デス
(委員長)
宜ケレバ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ「禁セサル」ノ四字ヲ削リ「爲スコトヲ得ヘキ」ト修正シ他ハ原案ニ決ス
第百四十四條朗讀ス
第百四十四條 賃借人ハ其權利ヲ保存スル爲メ第三者ニ對シテ用益權ニ關シ第七十條ニ記載シタル訴權ヲ行フコトヲ得
(栗塚)
本條ハ「賃貸入及ヒ第三者ニ對シテ」ト云フ字ガ這入マス之ハ起案者ガ入レテ來タノデスソレカラ、用益權ト云フ字ハ云フニモ及バヌト思ヒマス
(渡)
左樣用益權ノ字ハイラヌ
(村田)
イラヌネ
本條「賃貸及ヒ」ノ四字ハ起案者ノ挿入ニ決シ「用益權」ノ三字ヲ削除シ他ハ原案ニ決ス
第百四十五條朗讀ス
第三款 賃借人ノ義務
第百四十五條 賃貸人其權利ヲ保存スル爲メ賃貸物ノ目錄又ハ形狀書ヲ作ラント欲スルトキハ賃借人ハ何時ニテモ賃貸人カ己レト立會ヒテ之ヲ作ルヲ許諾スルコトヲ要ス但其書類ノ費用ヲ分擔セス
賃借人モ亦賃貸人ヲ召喚シ立會ノ上自費ニテ右目錄又ハ形狀書ヲ作ルコトヲ得
目錄又ハ形狀書ヲ作ラサリシトキハ賃借人ハ修繕完好ノ形狀ニテ賃借物ヲ受取リタリトノ推定ヲ受ク但反對ノ證據アルトキハ此限ニ在ラス
目錄ナキトキハ動產ノ實狀及ヒ形態ノ證明ハ賃貸人ノ責ニ歸シ通常ノ方法ニ從ヒテ之ヲ爲ス
(栗塚)
此所モ亦末項ノ目錄ナキトキハ動產ノ實狀及ビ形態ヨリモ、實狀及ビ形狀トシタ方ガ宜シイト思ヒマス
(村田)
前ノ形狀トハ違フアレハ不動產デ此所ハ動產許リデアリマスカラ
(栗塚)
此所ハ擧證トヤリ度ガ擧證ト云フハ御許シニナラント一尺幾ラ幅何ノ位ヒ一體金デ或ハ銀デト云フ形狀書デアリマス
(元尾崎)
形體ノ方ガ宜シイガ格別疑イハナイ
(村田)
形體ノ方ガ宜シイ
(尾崎)
形體ガ宜カリサウナモノデス
(箕作)
動產ノ目錄不動產ノ形狀書トアツタ樣デス
(栗塚)
再調査デ目錄ト云ヘバ動產不動產デハ形狀書トナツテ居ルト極メテカカツタ樣デアリマス
(村田)
用收權ノ七百四條ニ出テ居ルカラ分テ居ル
(元尾崎)
私ハ形狀書ニ改メタイ
(村田)
形體デ宜シイ
(栗塚)
證據ハトカ證明ハトカ云フハ私ハ擧證ハトシテ宜シイト思ヒマスガ擧證ノ字ハ採用ニナラヌ樣デスガ如何デスカ
(村田)
證據ノ方ガ宜シイ
(元尾崎)
證明ガ宜シイ
(村田)
擧證ハ止マツテ證據トナツタノデス
(渡)
擧證ニシタイ
(元尾崎)
此所丈ケナラ擧證ニシヨウ
(松岡)
證明デ宜シイデハナイカ此レコソ本統ノ證明デス
(槇村)
證明デ宜シイ、實狀ト形狀トハ違ヒマスカ
(栗塚)
實狀ト云フノハ金トカ銀トカ云フノデアリマス
(箕作)
實狀ト形狀ノ區別ハ分リマセヌネ
(栗塚)
形狀ト云フハ寸法ヲ云フノデス
(村田)
形狀許リデ宜シイネ四十五條二項ニモ修繕完好ノ形狀ニテトアルカラ形狀許リデ宜シイ
(栗塚)
固イトカ軟イトカ云フハ實狀ノ方デス
(村田)
形狀許リデ宜シイ
(箕作)
御尤モデス村田サンノ說ハ宜シイデシヨウ
(栗塚)
私ハ兩方云ヒタイ
(松岡)
元トハ實體トアリマシタネ動產許リデ不動產ハ云フタカ、目錄ト形狀ト云フモノハ動產ト不動產ノ分レタモノト極マツタカラデ、前ニハ動產又ハ不動產ノトアルアレモオカシイ土臺文ガ餘程オカシイ
(村田)
此所デハ動產許リデ、不動產ノ證據ノ擧ゲ方ハイラヌノデス
(元尾崎)
不動產ハ證據ヲ擧ゲナクツテモ宜イノダロウ不動產ハソンナニ變ルモノデナイカラネ
(栗塚)
動產ハ何ンナデアツタカ毀レ易クモアリ形チモ變ジ易ヒカラデス
(元尾崎)
家ノ雨漏抔ハ完全ト推定スルカライラヌト云フノデシヨウ
(松岡)
默テ受取レバ完好ノモノトスルノデス
(元尾崎)
動產ダカラ完好デアツテモ何ノ樣ニ完好デアルカ分ラヌト云フノデシヨウ
(西)
左樣デシヨウ
(村田)
別ニ推定ハ斯クトアルガ此所ハ證據ヲ擧ゲル方デスカラ詰リ目錄ノナイトキハ誰カ擧ゲナケレバナラン卽チ賃貸人ガシナケレバナラン左樣カト云テ證據ヲ擧ゲルニハ通常一般ノ證據法デナケレバナラント云フノデス
(元尾崎)
動產物ニ付テハ斯樣ナ實狀ト云フコトハ箇樣ナ形チデアツタトカ云フハ明言スルコトハ出來ヌコトデ幾ンド水掛ケ論デスネ、疑ガイガアルカラ除テ仕舞テモ宜シイ
(松岡)
實體ト云フハ金トカ銀トカ石トカ云フノデアルガ狀ト云フト形チニナル
(元尾崎)
金ノ時計ヲ借リテ銀ダト云フコトハアリマスマイ
(松岡)
鎭中デアツテ形チハ如何ナル風カト云フノハ形狀デス
(栗塚)
斯ンナニ凹ンデハ居ラヌトカ蟲ガ喰テハ居ラヌカツタト云フノハ實體デアリマス
(元尾崎)
ソンナラ性質ト云タラ宜シイ
(委員長)
何ゼ動產許リ云フカ
(栗塚)
動產ハ替リ易ク又形チモ變ジ易ヒカラ箇樣ナツタモノト思ヒマス
(箕作)
前ノデスネ、目錄又ハ形狀書ヲ作ラザルトアルガ、註ヲ見ルト形狀書ヲ作ラヌトキハ箇樣ナモノト云フハ不動產ノコトデハアリマセンカ
(委員長)
前ガ不動產デ後ハ動產ナラ宜シイカネ
(松岡)
註ニハ一緒ニナツテ居リマス
(箕作)
註計リデナク本文ニモドウモコトガ違フノデスネ
(栗塚)
左樣カト思フハ註ニハ、之ニ反シテ「アンワンテール」ナキトキハトアリマス
(箕作)
前ハ動產ノ積リデシヨウ目錄ノ方ヲ云タノデハアリマセンゼ
(栗塚)
動產ニハ形狀書トハ云ヒ惡イデス
(箕作)
本文ニハ「ニウブルインミユーブル」トアリ作ラレナイトキハトアルノデ「アンワンテール」トハアリマセヌカラ動產又ハ不動產ノ形狀書ダロウト思ヒマス
(南部)
左樣デシヨウ
(栗塚)
三項ハ不動產丈ケヲ云ヒ一項ハ動產ノミト云フノデスネ
(箕作)
「ミユーブル」ト云フ字ガアリマスカラドウセ左樣デシヨウ
(栗塚)
「ボアソナード」ニ削テ貰ヒマシヨウ
(松岡)
佛蘭西民法ノ千七百三十一條ニ場所形狀書ヲ作ラヌトキハ無效ナリ云々反證アルトキハ格別ナリトアルガ之ヲ拔イタノデスネ
(栗塚)
拂蘭西ヲ引テ居ルノハ場所ノ形狀書ヲ作ラザルトキハ修繕シタモノデ貰フト推定ヲ受クトアルカラ、「目錄又ハ」ヲ止メテソレカラ形狀書ヲ作ラザルトキハトナルト宜シイデシヨウ
(箕作)
「ボアソナード」形狀書ハ不動產目錄ハ動產ト用收權ニ極メテアリナガラ此所デ動產ノ形狀書トシタハオカシイ
(南部)
間違イデシヨウ
(箕作)
註ヲ見ルト動產デモ左樣シナケレバナラン
(松岡)
起案者ハ此所モ動產不動產ヲ兼タ積リデアリマスカ註ヲ見ルト之ヲ以テ動產ニ云々トアリマス
(栗塚)
「目錄又ハ」ハ削リマシヨウ
(村田)
ソレデ能ク分ル
(松岡)
佛蘭西法ノ通リデスネ
(南部)
末項ハ實體形狀トヤツテハ如何
(箕作)
其所ハドウデモ宜シイ
(槇村)
實體形狀ナラ宜シイ
(栗塚)
擧證ハドウデスカ
(松岡)
此所ハ證明デ宜シイ
(南部)
證明デ宜シイ
(淸岡)
證明デ宜シイ
(北畠)
擧證トシテモ差支ハナイ
(元尾崎)
證明デ宜シイ
(栗塚)
擧證ト願ヒタイ證據篇ノ本會議ニナルト一番大事ノ字デ御座イマス
(松岡)
擧證ト云フ字ハ棄ルコトハ出來ヌガ併シ此所ヘ持テ來ナイデモ宜シイダロウ
(栗塚)
苦シイノハ證明ト云フ字ヲ使テ疏明ト今日迄直シマシタカラ
(南部)
證據ダカラ證明トシテ置イテハドウカ
(栗塚)
詐欺ト云フ字ヲ欺詐トシタ樣ナ話デ誠ニ愚デアリマス
(箕作)
擧證デ宜シイ
(松岡)
證明デ宜シイ
(北畠)
擧證ガ宜シイ
(尾崎)
私モ擧證デ宜イ
(淸岡)
私ハ何方デモ宜シイ
(元尾崎)
ソレデハ擧證ニシテ置ウ
(北畠)
擧證ガ多數デス
本條ハ二項ノ「目錄又ハ」ノ四字ヲ削リ第四項「實狀」トアルヲ「實體」「形態」トアルヲ「形狀」「證明」トアルヲ「擧證」ト修正スルニ決ス
第百四十六條朗讀ス
第百四十六條 金錢ヲ以テ借賃ト爲シタルトキハ賃借人ハ約束ノ時期ニ之ヲ拂ヒ約束ナキトキハ每月末ニ之ヲ拂フコトヲ要ス但地方ノ慣習之ニ異ナルトキハ此限ニ在ラス
果實ヲ以テ借賃ト爲シタルトキハ收獲後ニ非サレハ之ヲ要求スルコトヲ得ス收獲後ニ於テハ其全部ヲ要求スルコトヲ得
(栗塚)
末項ノ「收獲後ニ於テハ其全部ヲ要求スルコトヲ得」ノ數字ヲ削除シソレカラ「約束」トアルハ「合意」ト直リマス、終リヲ削ル理由ハ初メハ置ク必要ガアツタノデ四十六條ノ本條ヲ御覽ナスツテモ「右ト同一ノ名義ニシテ拂フヘキ果實ノ部分ニ付テハ其部分ハ收獲ノ後ニアラサレハ」云々トアリマシタ、ソレ故「然レトモ」云々ト云フモ聞ヘマシタガ、然ルニ今日ハ無論全部デモ一分デモ收獲後デナケレバ要求ガ出來マセヌ、カラ削リマシタ
(尾崎)
尤モデアリマス
(元尾崎)
宜シイ
本條ハ約束トアルハ「合意」トシ末項「收獲後ニ於テハ其全部ヲ要求スルコトヲ得」ノ數字ヲ削ル報吿委員ノ修正ニ他ハ原案ニ決ス
第百四十七條朗讀ス
第百四十七條 賃借人カ右ノ拂入ヲ爲サス又ハ賃貸借ノ其他ノ特別ナル項目又ハ條件ヲ履行セサルトキハ賃貸人ハ訴訟ヲ以テ賃借人ニ對シ直接ニ其履行ヲ強要シ又ハ損害アルトキハ其賠償ヲ得テ賃貸借ノ解除ヲ請求スルコトヲ得
(栗塚)
本條ハ「賃借人借賃ヲ拂ハズ其他賃貸借ノ特別ナル項目又ハ條件ヲ履行セザルトキハ」云々ト修正致シマス
(元尾崎)
之ハ「右ノ拂ヒヲ爲サス」ガ宜イダロウ
(栗塚)
其他賃貸借ガ項目デ履行セザルト云フノデス
(南部)
又ハ賃貸借其他ト云フハ語ヲ爲サヌカラデス
(栗塚)
「訴訟ヲ以テ」ハ削リ度イ
(村田)
宜カロウ
(渡)
修正ガ宜シイ
(松岡)
「直接」ニハ必要デシヨウカ
(北畠)
間接直接ノ方デナイノダカラ、イラヌ
(松岡)
借人ニ對シテ其執行ヲ強要スルカ損害ガアレバ賠償カ、何レデモ澤ンデト云フノダカラ、直接ト云フノハ必要ハナイ
(村田)
直接ハイラヌ
(委員長)
直接ハイラヌ、ネ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ「賃借人カ借賃ヲ拂ハス其他賃貸借ノ特別ナル項目又ハ條件ヲ履行セサルトキハ賃貸人ハ賃借人ニ對シ其履行ヲ強要シ又ハ損害アルトキハ其賠償ヲ得テ賃貸借ノ解除ヲ請求スルコトヲ得」ト修正ニ決ス
第百四十九條朗讀ス〔第百四十八條ハ賃貸人先取特權ノ條ニ轉入〕
第百四十九條 賃借人ハ賃借物ニ直接ニ賦課セラルル通常及ヒ非常ノ租稅ヲ負擔セス租稅法ニ依リ賃借人ヨリ懲收スル租稅ハ其借賃ヨリ之ヲ扣除シ又ハ賃貸人ヨリ賃借人ニ之ヲ償還ス但反對ノ約束アルトキハ此限ニ在ラス
然レトモ賃借人ノ築造シタル建物ニ賦課セラレ又ハ賃借不動產ニ於テ賃借人ノ營厶商業若クハ工業ニ賦課セラルル租稅其他ノ公課ハ賃借人之ヲ負擔ス
(栗塚)
之ハ云フマデハナイコトデス
(村田)
併シ削ル程ノコトモナイ
(元尾崎)
一項ノ後ノ文ハ變デスネ賃借人ヨリ徵收スル租稅ハ賃借人ヨリ扣除シテ拂ヘト云フハオカシイ
(南部)
ソレダカラ末項ガアルノデス
(元尾崎)
末項ハ營ム商業若クト云フハ所得稅ハ營ム商業ノ樣デハナイゼ
(南部)
賃借人ノ身分ニ係ル賃借物ニ付テデス
(松岡)
負擔シナイトシテ置キ若シ歳計法デ借テ居ル人間カラ取立ルコトガアツタナラバト云フノデス
(元尾崎)
左樣デシヨウカ之デハ左樣ニハ見ヘナイ賃借人ガ取ル樣ニ見ヘル今日、日本法デ地面ニ課スルモノハ賃借人ニ掛ケルコトハ決シテアリマセン箇樣ニ書イテアルト初メハ賃借物ニ掛ケタモノヲ又其次ノモノガ賃借人ノ一身カラ取ル樣ニ見ヘル
(淸岡)
租稅法ニ依リ賃借人ヨリ徵收スルトキハトシテハ如何
(南部)
其方ガ宜シイ
(栗塚)
左樣スレバ元尾崎サンノ疑リノアリマスマイ
(元尾崎)
借人カラ取立ル方ガアリハシマセンカ
(箕作)
徵收ト云フ字ハ宜シウ御座リマシヨウガ租稅法デ其人カラ取ル丈ケノ話デ徵收ト云テモ宜シイガ納稅者ガ出ス樣ニナリハシマセンカ
(松岡)
元トハ賦課スルトアリマスガ、紛レヌ樣ニ云フト「若シ租稅法ニ依リ賃借人ヨリ負擔スルトキハ」ト云フノデス
(箕作)
原文ニモ若シアツタナラバト云フ意味ノ字ガアリマス
(松岡)
ソレハナケレバナラン、云ヒ詰メルトナクツテモ宜シイ
(元尾崎)
削テ仕舞ガ宜シイ
(箕作)
賃借人ノ手ヨリ收入スルコトガアツタナラバト云フノデス
(尾崎)
負擔セズニ止メテモ宜シイ
(淸岡)
兎ニ角其モノカラ取ル方ニスルノデ、租稅法ナレバ賃借物デ御座イマスカラ私ハ知ラヌトハ云ヘヌ徵收セラルルノデス併シナガラソレハ賃借人ヨリ本統ニ拂フノデハナイ扣除スルト云フノデシヨウ
(委員長)
「若シ租稅法ニ依リ賃借人ヨリ取立ツルコトアルトキハ」トシテ宜シクハナイカ
(松岡)
「若シ」ハ宜シイ
(箕作)
宜シイ若シト入レマシヨウ
(北畠)
賃借人ノ手ヨリシテトスルガ宜シイ
(元尾崎)
此等ノ租稅ヲ賃借人ヨリ徵收スルコトアルトキハデ宜シイ
(南部)
此租稅デ徵收スルコトアルトキハトシテ宜シイ
(栗塚)
「賃借人ヨリ此租稅ヲ徵收スルコトアルトキハ」トシナイト文章ガ分リマセヌ
(村田)
「此」ハ除リマシヨウ
(栗塚)
若シ租視法ニ依リ賃借人ヨリ之ヲ徵收スルコトアルトキハトシテハ如何
(元尾崎)
此租稅ヲ徵收シトヤリマシヨウ
(南部)
此租稅ハ宜シイ
(委員長)
入レルヤ否ヤ多少數デ極メマシヨウ
(松岡)
入レヌ方デス
(箕作)
入レヌ
(尾崎)
入レヌ
(淸岡)
私モ入レヌ方デス
(委員長)
入レル方ハ何方々デスカ
(北畠)(南部委員)(西委員)(元尾崎委員)
共ニ入レル方デス
(委員長)
ソレデハ入レヌ方ニシマシヨウ
本條ハ負擔セス」「若シ」租稅法ニ依リ云々ハコトアルトキハ其借賃ヨリ云々ト修正シ他ハ原案ニ決ス
第百五十條朗讀ス
第百五十條 賃借人ハ明示ト默示トヲ問ハス約束ヲ以テ定メタル用方ニ從フニ非サレハ賃借物ヲ使用スルコトヲ得ス其約束ナキトキハ契約ノ時ノ用方又ハ賃借物ノ性質ニ相應シテ毀損セサル用方ニ從フニ非サレハ之ヲ使用スルコトヲ得ス
(松岡)
之ハ宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第百五十一條朗讀ス
第百五十一條 賃借人ハ賃借物ノ看守及ヒ保存ニ付キ用益者ト同一ノ義務ヲ負擔ス
第三者カ賃借物ニ侵奪ヲ加ヘ又ハ營作ヲ爲ストキハ賃借人ハ第九十九條ニ記載シタル如ク用益者ト同一ノ事ニ任ス
(元尾崎)
本條ハ宜シイ本條ハ原案ニ決ス
第百五十二條朗讀ス
第百五十二條 一箇ノ建物ニ數人ノ賃借人アルトキハ各賃借人ハ所有者ニ對シ其賃借部分ノ價額ニ應シテ火災ノ責ニ任ス但各賃借人又ハ其幾人ニ過失ナキノ證據アルトキハ此限ニ在ラス
(村田)
此條ハ元ト一項ニ建物ノ土地ノ構内ト云フ字ガアリマシタガ之ヲ除リマシタネ
(南部)
構内ト云フノハ除ル方ガ宜シイト云フノデアリマス
(松岡)
此方ガ宜シイ
(栗塚)
此條ハ報吿委員中ニ於テハ次ノ條ヲ議場デ削除ニナツタハ甚ダ遺憾ニ思タ者モアツテ今日ハ五十二、三條ヲ併セテ御決議ヲ願ヒ度、ニ付テハ今日ハ止メルコトハ出來マスマイカト云フ請願ガ出テ居リマスガ責任ノ振合ガ變ハルノデ外ニ響キガ來ルト云フノデ論ガアツテ不充分ナル連帶デ全部義務デアツタカラト云フニ付テ五十三、三條ハ起案者カラ返答シテヤルカラ待テ呉レンカト云ヒマスシ之ハ極マツテハ居リマスガ尙ホ報吿委員中デ意見ヲ提出シマスカラソレヲ御覽ノ上議決ヲ願ヒマス
(元尾崎)
賃借デ、燒ケレバ責ニ任ジナケレバナランカ
(松岡)
伊太利亞法律ヲ引テ斯樣ニシタノデシヨウ
(栗塚)
五十三、三、四條ハ議サズ擱クコトハ出來マセンカ
(松岡)
意見ガアツテト云フナラ跡廻ハシニシテ差支ナイ
(箕作)
左樣ナラ是非ト云フコトハナイ、ソレデ別ノ疑リガアリマスガ七十八條二項動產ノ目錄ト云フコトガアリマスガ彼所ハドウナツテ居リマスカ實狀ハ實體トシナケレバナリマスマイ
(南部)
實狀ト實體トハ原文ハ同ジデスカ
(箕作)
原文ハ同ジデアリマス
(南部)
實狀トシテ置イテハドウデスカ
(栗塚)
七十八條モ實體トヤリマシヨウ
(箕作)
ソレデハ七十八條ハ實狀ハ實體トシマシヨウ
(委員長)
ソレデハ五十二、三、四條ノ三條ハ未定トシテ先ヘヤリマシヨウ
本條及ヒ百五十三條百五十四條ハ未定
第百五十五條朗讀ス
第百五十五條 賃貸借ノ終ニ賃借人カ賃借物ヲ返還セサルトキハ賃貸人ハ其選擇ヲ以テ對人訴權又ハ物上訴權ニテ之ヲ追訴スルコト得
(栗塚)
之ハ先達テ論ノアツタ所デアリマス
(松岡)
何フ考ヘテ見テモ之ハ削除スルガ宜シイト思フ元來經濟上ヲ云フト起案者ノ說デ二重ニ損ヲスルト持テ行ケバ入費ガ係ル又此方ノ人ガ拵ヘレバ入費ガ係ル社會ノ損ガ出來ルト云フガ經濟上許サヌノナラ是非買ハセルト云フナラ論モ立ツガ是非デハナイ買度イト思ヘバ無理ニモ買フ權利ガアル、買ハフト思ハヌナラ買ハナクツテモ宜イト云フノハ誠ニ論ガ協ハヌノデス
(南部)
宜イデハアリマセンカ買ハフト思タニ買フガ宜シイノミナラズ用收權ノ七十三條ト比較シタ文デ同條タル同樣ノ理由デ議定ニナツテ居ルカラ
(松岡)
議定ニナツタコトハ此所モ議定ニナツタノデアリマス
(渡)
此所ハ賃借權ノ決定ニ際シ併セテ確定スベシト私ノミ記シテアリマスゼ
(南部)
四月十六日會デ原案ニ決シタノデアリマス
(村田)
百八十九條ニモ其コトガアルノデス
(元尾崎)
皆賣ルト云フコトニシテ宜シイ、他所ヘ持テ行フト思テモ是非賣ナケレバナラン
(栗塚)
ソレ丈ケノ修正ハ出來ルノデ持テ行考ヘガアレバイカヌ、ガ其儘賣ト云フナラ先買權ヲ與ヘルト云フノデス
(元尾崎)
ソレナラバ宜シイ
(箕作)
原案ガ左樣ナノデ、外ヘ賣位ヒナラ己レガ買ハフト云フ先買權デアリマス
(栗塚)
左樣デス今村始メ是ヲ申タカ知レヌガ他所ヘ持テ行度ト云フトキハ先買權ハ止ムト云フナラ宜シイ
(松岡)
ソンナラ宜シイ之ハ左樣ハイカヌノデス
(箕作)
先買ト云フハ外ヘ賣ルナラ己ガ買フト云フノデアリマス
(村田)
押付テ買フト云フノデハナイ
(元尾崎)
此文デハ左樣ナル持テ行クコトハナラヌト云フノデス
(栗塚)
起案者ノ意ハ日本ノ家屋ハ毀シ家トシテ持テ行クト云フコトハナイト思テ居ルノデス所ガ日本ノ家ハ取リ毀シテ持テ行クコトモ出來ルノデスカラ賃借人ニ於テ他ニ移サント云フトキハ右先買權ハ止ムト云テ斷ツテ置ケバ宜シイ、其コトヲ書ク必要ガアルカ或ハ書カズトモ意味ガ見ヘルカヲ極メレバ宜シイノデス
(元尾崎)
他ニ賣却セントスルトキハ其代價ヲ以テ先買スル權ヲ有ストスレバ宜シイ
(松岡)
左樣デス、此儘デハイカヌ
(栗塚)
取リ崩シテ持テ行キ度ト云フニ先買權ガアツテハイカヌト云フ疑グリガアルナラ一項ヲ設ケテモ宜シイ
(渡)
入レテ置クガ宜シイ
(槇村)
私共ハ之デ分テ居ル他人ノ買フヨリ先ニ買フノダカラ先買權デシヨウ
(南部)
脇ニ買フ人ガナケレバ先買ト云フコトハナイ
(元尾崎)
己レニ讓リ渡シテ要求スルコトヲ得ズト否トハ云ヘヌノデシヨウ
(松岡)
云ヘヌガ七十三條デ經濟上一般ナル利益云々、利益トハ建築物ヲ破壞セズ云々、是非買ハフト云タラ否應ハ言ハサヌト云フガ主意デス、賣ハフト云フトキ先買ト云フナラ尤モデス
(南部)
買フコトノ話デ脇ノ者ガ買ハフト云フトキデス
(栗塚)
其トキニシテハ如何
(松岡)
ソンナラ宜シイ
(箕作)
其コトノ分ル樣ニ入レマシヨウ
(栗塚)
七十三條サイ改メレバ宜シイ、此所ハ「樹木ヲ賣ントスルトキハ鑑定人ノ評價シタル現時ノ價額ヲ以テ先買スルコトヲ得」トシテ宜シイ
(元尾崎)
鑑定人ノ評價ハイカヌ今現ニ買人ガアルニソレニ構ハズ安ク賣ラナケレバナランカ假令バ千圓デ賣フト云フニ鑑定人ハ三百圓トシタラ如何
(松岡)
三百圓ハ評價ニナラヌノデアリマス
(元尾崎)
買フト云フ人ノ代價ヲ以テト云テ置キマシヨウ千圓ニ買人ガアレバ千圓ニ買フト云フ先買權丈ケニシテ宜シイ
(村田)
用收者ハ建物ヲ收去スルコトヲ得トアリマスカラネ七十三條ニ收去スベキ云々トアルカラ收去スルトキ許リデス
(栗塚)
ソレダカラ困ルノデ松岡サン始メ論ガ出ルノデス
(松岡)
賣ルトキノミトハ見ヘマイ
(南部)
賣ルト極テカラノ話デス
(箕作)
買フ爲メニ先取權ヲ持テ居ルカラ
(栗塚)
樹木ヲ賣ントスルトキ、ト云フノヲ入レル必要ガアルヤ否ヤデス
(渡)
必要ガアリマス
(元尾崎)
鑑定人ノ評價ハイラヌ
(栗塚)
ソレハ第二問題デ七十三條ハ「前條ニ從ヒ收去スルコトヲ得ヘキ建物及ヒ樹木ヲ相續人カ賣ントスルトキハ」トシテ宜シイ
(渡)
宜シイ
(松岡)
スルト其儘此所ヘ寫ハルノデスカ
(南部)
スルト此所ハ「樹木ヲ先買スルコトヲ得」トシテ宜シイ
(村田)
「先買スルコトヲ得」ハイカヌ「收去」ト云フ字ヲ入レタイ
(淸岡)
七十三條ノ二項ハ收去ニ着手スルヲ得ズデハイカヌ、收去スルトキモ買フ權利ト云フノダカラ拒絕シテイラヌト云フ以上ハ取テ行クコトハ出來ヌトナルノデ
(元尾崎)
賣却ニ着手スルヲ得ズトセントイカヌデシヨウ
(箕作)
收却スルデ宜シイデシヨウ
(北畠)
前ヲ直シタ以上ハ淸岡サンノ云フ樣ニシナイトイカヌ
(淸岡)
無理ニ收去ヲ其儘置クト間違ヒマス
(南部)
如何ナル譯ケデスカ
(淸岡)
兎モ角モ賣テモ自分ガ持テ行テモ何ヲシテモ先買權ハ虛有者ニ占メラレテ居ル精神デアルカラ、賣ントスルトキト持テ行テ建ツルトキトハ別デシヨウ
(南部)
前條ニ從ヒ收去シ得ベキ建物及ビト云フノダカラ一項ヲ收去スルコトハ分テ居ルノデアリマスカラ差支ハナイ
(箕作)
賣テ其儘置クコトハ出來ヌノデス
(南部)
收去シ得ベキ建物トアルカラ分ルデシヨウ
(槇村)
宜シイ
(大尾崎)
七十三條ハ所有者拒絕シ又ハ其陳述ヲ爲サザレバトシテ元トノ通リデ宜シイ
(松岡)
本條ハ但七十三條ノ規定ヲ適用スト云フハ七十三條ノ二項ノ話デアルカラオカシイ他ハイラヌ
(委員長)
但ハイラヌデシヨウ
(栗塚)
此場合ニ於テハ第七十三條ノ規定ヲ適用スト致シマス
本條ハ「賃貸人ハ賃貸借ノ終ニ第百四十一條ニ依リテ賃借人ノ收去スルヲ得ヘキ建物及ヒ樹木ヲ先買スルコトヲ得此場合ニ於テハ第七十三條ノ規定ヲ適用ス」ト修正ス
第百五十七條朗讀ス
第四款 賃借權ノ消滅
第百五十七條 賃借權ハ左ノ諸件ニ因リテ當然消滅ス
第一 賃借物ノ全部ノ滅失
第二 賃借物ノ全部ノ公用徵收
第三 賃貸人ニ對スル追奪又ハ賃貸物ニ存スル賃貸人ノ權利ノ取消但其追奪及ヒ取消ハ賃貸借契約以前ノ原因ニ由リ裁判所ニ於テ之ヲ宣吿セシトキニ限ル
第四 明示若クハ默示ニテ定メタル期間ノ滿了又ハ約束シタル解除ノ未必條件ノ成就
第五 初ヨリ期間ヲ定メサルトキハ解約吿知ノ後法律上ノ期間ノ滿了
右ノ外賃貸借ハ法律ニ定メタル條件ノ不履行其他ノ原因ノ爲メ當事者ノ一方ノ請求ニ因リ裁判所ニテ宣吿シタル取消ニ因リテ終了ス
(栗塚)
本條「第四明示若クハ默止ニテ定メタル期間滿了又ハ要約シタル解除條件ノ成就」トシソレカラ解約通知トシタイ、ソレカラ右ノ外賃貸借ハ法律ニ定メタルト云フコトヲ後ヘ以テ右ノ外賃貸借ハ條件ノ不履行又ハ法律ノ定メタル其他ノ原因ノ爲メ云々ト致シタリ
(松岡)
之ハ矢張元トノ通リデ宜シイ
本條ハ第四ノ「約束」トアルヲ「要約」トシ「ノ未必」ノ三字ヲ削リ末項「法律ニ定メタル」ノ七字ヲ削リ不履行「又ハ法律ニ定メタル」ノ數字ヲ挿入シ他ハ原案ニ決ス
第百五十八條朗讀ス
第百五十八條 意外ノ事又ハ不可抗ノ力ニ因リテ賃借物ノ一分ノ滅失シタルトキハ賃借人ハ第百三十八條ニ記載シタル條件ニ從ヒテ賃貸借ノ解除ヲ請求シ又ハ賃貸借ヲ保持シテ借賃ノ減少ヲ請求スルコトヲ得
公用徵收ノ爲メ賃借物ノ一分カ徵收セラレタルトキハ賃借人ハ常ニ借賃ノ減少ヲ請求スルコトヲ得
(栗塚)
「保持」トアルハ「維持」トシ末項「公用徵收」ヲ止メテ「公用ノ爲メ賃借物ノ一分ノ徵收アリタルトキハ云々」ト致シマシタ
(村田)
公用徵收ト入レテ宜シイト思フ
(箕作)
公用ノ爲メデ宜シイ
(村田)
一年三分ノ一減ツタラ減少デスネ
(箕作)
記載シタル條件ニ從ヒハ三年ニ及ブノデスカ
(元尾崎)
一年ノ前保持セヌトキハ解除ガ出來ルノデシヨウ
(箕作)
例ヘバ出水デ家ガ流レタトキハ三十八條ニ從ヒマスカネ條件ハ三ケ年ニ及バナイガ
(元尾崎)
條件ハ三分ノ一ニナシタラ減少ナシデ貰フコトガ出來ル建物ノ一分デモ再造シナケレバ解除ト云フノデシヨウ
(村田)
解除ハ三ケ年デス
(南部)
三十八條ノ條件ニ從テ出來ルト云フノデス
(村田)
三ケ年ハ多ク見ナイノデシヨウ、三分ノ一トカ一ケ年ノ内ニ再造シナケレバ解除ガ出來ルト云フノデシヨウ
(松岡)
三ケ年ト云フノハ適用シナイト云フハオカシイ
(村田)
若シアツタラデス
(南部)
三ケ年續ケテハ銷除ハ出來マセヌ五十八條モ左樣デス
本條ハ一項「保持」ハ「維持」トシ末項「公用微收」トアル「徵收」ノ二字ヲ削リ「賃借物ノ一分ノ徵收アリタルトキハ云々」ト修正シ他ハ原案ニ決ス
第百五十九條朗讀ス
第百五十九條 期間ノ定メ有ル賃貸借ノ終リタル後賃借人仍ホ收益シ賃貸人之ヲ知リテ故障ヲ爲ササルトキハ新賃貸借暗ニ成立シ前賃貸借ト同一ノ負擔及ヒ條件ニ從フ
然レトモ前賃貸借ヲ擔保シタル抵當ハ消滅シ保證人ハ義務ヲ免カル
新賃貸借ハ下ノ數條ニ記載シタル如ク解約申入ニ因リテ終了ス
(南部)
之ハ分ツテ居リマス
(渡)
之ハ宜シイ
(元尾崎)
二項ハ不同意デス之ハ酷ヒデハアリマセンカ
(南部)
ソレハ仕方ガナイ
(元尾崎)
借家證文ハ一ケ月幾何ト云テ別ニ延スト云フコトハナイ
(南部)
ソレハ續テ擔保ニテハ溜ラヌ
(北畠)
延期スルトキハ本證文ヲ以テシテ呉レト云フ書添ヘガアリマス
(元尾崎)
保證人ハ初メニ保證スルト讀デ居リマス
(北畠)
證文デ約束シテ此證文ヲ以テ更新シテ行クト云フコトヲ書イテアツタライクマイ
(委員長)
前ノ條ノ一分ノ滅失シタコトハ矢張三十八條ト同ジ比例ニシテ行クハ一方ノ利益ノ出セヌ樣ナツタコト丈ケ缺ケテ仕舞テソレヲ同樣ニシテ矢張三年續カナケレバ銷除ヲ求メラレナイハ酷イト云フ論ガアリマスガネ
(箕作)
三年ニ適用セヌノデス
(大尾崎)
適用ナラヌトキ適用セヌノデ御座イマス
(栗塚)
起案者モ其意デ御座イマス
(委員長)
ドウシテカネ
(松岡)
一番先キニ疑リマシタガ之デ宜シイノデ何ゼナレバ三ケ年ト云フハ物ノ滅失デ御座イマスカラ彼所デ論ジテハ三ケ年ナシニ一年内ニ拵イテ呉ヌナラ行ク三ケ年ノ條件ニ從ヒバ宜フナルノデ物ノ滅失デ御座イマスカラ
(箕作)
一項ノ記載ニ從ヒト云ヘバ宜シイノデスネ
(村田)
一項許リデアリマセヌ
(南部)
滅失デナイカラ能ク分テ居リマス
(委員長)
三十八條ノ二項ノ末項ヲ適用ストカナントカシナイトイクマイ
(元尾崎)
末項許リデモ御座イマセヌ
(松岡)
適用ト云ヘバ用ヰラレナイ所ハ用ヰナイト云フノデ御座イマシヨウ
(委員長)
三年滅失シナイカラ銷除ハ出來ヌト云フカモ知レヌ
(松岡)
物ノ滅失デアリマスカラ三年續クコトハアリマセヌ
(南部)
況ンヤ燒ケレバ燒ケタ切リデアリマス
(委員長)
地面ガ三分ノ一流失シタト見ルネ其トキ三分一損失ダカラ未ダ銷除ハ出來ヌト云フタラドウカ
(南部)
ソレデ宜シイノデス收益ガ一錢モナクナツタモ一向變リマセヌ
(委員長)
全部ノ滅失ハ一項一分ノ滅失ハ何所ヘ行クカ矢張三十八條ノ一項ニ行クソレハ一分ノ滅失シタモノデ三年ハ續カヌノデス
(南部)
滅失デアリマスカラ無クナツタノデアリマスカラ三年續キ樣ハアリマセン
(委員長)
全部ナラ銷除モ出來ルガ少シ缺ケテモ銷除ハ出來ヌダロウ
(村田)
例ヘバ懸河ノ一分ガ崩レテモ滅失デ銷除ガ出來ルノデアリマス
(委員長)
事柄ハ條件マデ付テ居ルカラ滅失シタトキハイカヌ樣ニ見ヘル
(栗塚)
條件ト云フ字ヲ止メテシマイマスカ
(南部)
滅多ニハ變ヘラレナイ
(村田)
賃借物ノ三分ノ一ト云フコトデハナイ一分滅失シテモ收益ガ三分一損ガアツタトキハト云フノデアリマス
(松岡)
物ガ三分ノ一以上滅失シタトキハ解除ニナルカ減少ヲ求メラルルノデス
(箕作)
註ニハ左樣アル
(元尾崎)
賃借物ノ三分ノ一以上滅失シタルトキハ賃借人ハ云云トスルカ
(南部)
物ノ滅失三分ノ一以上ト云フ字ハ入レテ宜シイ
(淸岡)
三十八條カラ引テ來タノデスガ三分ノ一以上滅失シタラ利益ノ點ハ餘リ見ナイノデシヨウ
(南部)
ソレハ見ナイノデ收益丈ケノ話デ此方ハ物ノ滅失デス
(箕作)
三分ノ一以上滅失シタルトキハ賃借人ハ賃貸借ノ銷除云々トシテハ如何
(大尾崎)
三分ノ一以上デナケレバ銷除ガ出來ヌト云フハ宜シクナイ
(箕作)
能クナイカシラヌガ原案ニ左樣アリマス
(元尾崎)
三分ノ一位イデ宜シイ一寸シタ位ヒデ解除シテハ困リマス
(箕作)
不可抗力デアリマスカラネ
(淸岡)
三十八條モ不可抗力デアリマス、收益ノアロウト思フモノハ一分迄缺ケテモ收益上三分ノ一トナツテ來レバデス物ガ缺ケテモ矢張三十八條ノ條件ニ從ツテ行カナケレバナラント思フ
(槇村)
左樣解シマシタガ註ヲ見ルト左樣デナイ若シモ物ノ滅盡三分ノ一以下ナルトキハ云々トアリマス
(委員長)
三分一滅失シタラ銷除ガ出來ルト云フト三十八條トノ權衡ガ協ハヌ
(松岡)
矢張三分一以下ナラ堪忍シナケレバナラン
(元尾崎)
「賃借物ノ一分ノ滅失シタトキハ賃借人ハ賃貸借ノ銷除ヲ請求シ又ハ第百三十八條ニ記載シタル條件ニ從ヒ賃貸借ヲ維持シテ解除ヲ請求スルコトヲ得」トシテハドウカ
(箕作)
左樣見テハ違ヒマス
(栗塚)
三分ノ一ト云フハ家ノ如キハ何ウ見分ケマスカ
(松岡)
幾坪ト云フ所デ見分ケル
(栗塚)
目安ハ收益カラ立テナケレバナラン
(箕作)
百坪ノ家ナラ三十五坪ヨリ燒ケタラ法律上三十五坪ニ當ル損失ガアルカラ百三十八條ヲ引張リ出シテ銷除ガ出來ルノデス
(栗塚)
收益ノ方デ論ズルノデハアリマセンカ
(委員長)
ソンナラ此條ハイラヌ
(栗塚)
座數ト臺所トノ面積デ三分ノ一デハナイ此所ノ一分ト云テ居ルノハ何ノ位ヒカ百三十八條ヲ御讀ナサイト云フノデス
(渡)
其所デ註釋ニ左樣ナイノハ安心シナイ
(松岡)
箇樣ニ修正シテハ如何、「不可抗ノ原因ニヨリテ賃借物ノ二十分ノ一毀滅シ又ハ住居若クハ營業ニ必要ナル部分ヲ喪失シタルトキハ」何ゼカト云フニ不可抗ニ因リテ區別ハアツテモ借リテ居ル人ハ住居營業ノ方デハ云ヘヌト云フテハ借家ハ實際不適當ト考ヘタノデス
(尾崎)
ソレハ宜シイ必要ナ所ガ缺ケテ銷除ノ出來ヌト云フコトハナイ
(南部)
必要ナル部分ト云フハ何所デ區別シマスカ
(松岡)
家主ガ普講ヲスル彼所ニ從フノデス
(委員長)
此儘ニシテ置クト何フシテモ三分ノ一缺ケテモ銷除請求ハ出來ヌ
(淸岡)
三十八條ノ所デデス
(委員長)
スルト少シ缺ケテモ銷除ト云フ樣ニナル
(淸岡)
佛蘭西ノデ起案者ノ書イタノヲ見ルト一分ノ毀滅トカ云フハ取消ヲ求ムルヲ得ルト云テ居リマス卽チ其條ヲ引テ居ルノダカラ先生ノ積リデハ一分ガ滅失シタトキハ此銷除ヲ爲スコトヲ得ノ論デハアリマセンカ
(委員長)
貸金ノ減少ハ求メラルルダロウカ、一得一失デ店先ガ燒ケテハ困ルダロウガ又少シ許リ雪院ガ缺ケタカラト云テ是非銷除ト云テハ困ルカラネ
(淸岡)
畢竟迷惑ニナルカラ銷除ヲ求メルノデス
(委員長)
之ハ尙ホ報吿委員デ調ベテ貰フカ
(栗塚)
賃借物ノ必要ナル一分ノ滅失シタルトキハトシテハ如何
(淸岡)
ソレナラ分ル
(箕作)
起案者ノ云フ通リ三分ノ一消失シタルトキハ云々トシテ宜シイ
(南部)
ソレデ宜シイ
(渡)
之ハ原案者ニ直ニシテ貰イタイ
(栗塚)
賃借物ノ三分ノ一以上ノ滅失又ハ住居若クハ營業ニ必要ナル部分ヲ失フタルトキハ賃借人ハ賃貸借ノ銷除ヲ請求シ云々トシテハ如何
(尾崎)
ソレデ宜シイ
(委員長)
左樣シテ置キ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決シ前條ニ遡リ百五十八條ハ「賃借物ノ三分ノ一以上ノ滅失又ハ住居若クハ營業ニ必要ナル部分ヲ失フタルトキハ賃借人ハ賃貸借ノ解除云々」ト修正スルニ決ス
第百六十條朗讀ス
第百六十條 家具ノ附キタル家屋ノ全部若クハ一分又ハ離屋ノ賃貸借ニシテ其期間ヲ明示セス其借賃ヲ一年、一月又ハ一日ヲ以テ定メタルモノハ一年、一月又ハ一日ノ間之ヲ爲シタリト推定ス但前條ニ記載シタル默示ノ更新ヲ妨ケス
動產ノミヲ以テ目的ト爲シタル賃貸借ニ付テモ亦同シ
(栗塚)
本條ハ「又ハ離家」ハ削リ度イ
(元尾崎)
置ウデハナイカ
(南部)
元トナイノデ六十一條ト對照スルトオカシイカラ
(淸岡)
一分ト云フト座敷ガアリ離レ家ト云フト二間デモ三間デモデス
(村田)
家具ノ付キタル建物デ宜シイ
(箕作)
ソレデ宜シイ
(元尾崎)
家具又ハ造作ノ附キタルトスル
(箕作)
家具又ハト云フハオカシイ
(委員長)
宜カロウデハナイカ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ「家屋」トアルハ「建物」トシ「又ハ離家」ノ四字ヲ削リ他ハ原案ニ決ス
第百六十一條朗讀ス
第百六十一條 家具ノ附カサル建物ノ賃貸借ハ期間ヲ定メサルトキ又ハ之ヲ定メタルモ默示ノ更新アリタルトキハ年中何ノ時節ヲ問ハス當事者ノ一方ノ解約申入ニ因リテ終了ス
解約申入ヨリ返却マテノ時間ハ左ノ如シ
第一 全家ニ付テハ三ケ月
第二 建物ノ一分若クハ離屋又ハ尙ホ狹隘ナルモ賃借人ノ商業若クハ工業ヲ營メル住居ニ付テハ二ケ月
第三 總テ其他ノ家具ノ附カサル住居ニ付テハ一ケ月
(栗塚)
本條ハ「年中何ノ時節ヲ問ハス」ハ何時ニテモトシ「第一」ト云フ所ハ「建物ノ全部ニ付テハ三ケ月」トシ「第二」ハ「建物ノ一分ニ付テハ二ケ月」トシテ「第三」ハ削除致シマシタ
(南部)
訴訟ヲ繁多ニスル本ダカラト云フノデ削リマシタ佛蘭西ハ慣習ニ任シテアツタノダカラ此位ヒデ宜シイデシヨウ
(元尾崎)
宜シイ
(大尾崎)
宜シイ
本條ハ「年中何ノ時節ヲ問ハス」トアルヲ「何時ニテモ」トシ「第一建物ノ全部ニ付テハ三ケ月」トシ「第二建物ノ一分ニ付テハ二ケ月」トシ「第三」ハ削除シ他ハ原案ニ決ス
第百六十二條朗讀ス
第百六十二條 家具ノ附キタル家屋ノ賃貸借ニ付キ默示ノ更新アリタルトキハ解約申入ヨリ返却マテノ時間ハ左ノ如シ
第一 前賃貸借ノ間ヲ三ケ月又ハ其以上ニ定メタルトキハ一ケ月
第二 三ケ月未滿ノ賃貸借ニ付テハ原期間ノ三分一
第三 日日ノ賃貸借ニ付テハ二十四時
右規定ハ動產ノ賃貸借ニ付キ默示ノ更新アリタル後ニモ亦之ヲ適用ス
(栗塚)
終リノ「右規定ハ默示ノ更新後ノ動產ノ賃貸借ニ付テモ亦之ヲ適用ス」ト致シタイ
(委員長)
ソレデハ是デ置キマス
本條末項「右規定ハ默示ノ更新後ノ動產ノ賃貸借ニ付テモ亦之ヲ適用ス」トシ他ハ原案ニ決ス