旧民法・法例(明治23年)

法律取調委員会 民法草案再調査案議事筆記 第19回

参考原資料

備考

  • 未校正のテキストデータです.
民法取得篇再調査案第十九回議事筆記
自第七百八十三條至第八百二十四條
第七百八十三條朗讀ス
第七百八十三條 會社營業ノ爲メ社員ノ立替ヘタル金額ハ其使用ノ日ヨリ當然利息ヲ生ス
此ニ反シテ各社員ハ自己ノ營業ノ爲メ會社資本中ヨリ引出シタル金額ニ付テハ當然會社ニ對シテ其利息ヲ負擔ス但此場合ニ於テ一層大ナル損害ヲ生セシメタルトキハ尙ホ之ヲ賠償スルノ責ニ任ス
(村田)
之ハ宜シイ
(大尾崎)
之ハ宜シイ
(渡)
之ハ宜シイ、小サクテモ償ハナケレバナランカ
(栗塚)
然シ利息モ一ノ損害ノ中デス
(大尾崎)
商法ニハ猶ホ賠償スルノ責ニ任ズト有リマス
(箕作)
且如何ナル損害ヲモ賠償スルヲ責アリトアリマス
(元尾崎)
其レハ宜シイ
(西)
元トハ會社業務ノ爲メトアツタガ營業ノ爲メト直ツタノデスカ
(栗塚)
左樣デス
(大尾崎)
「一層大ナル」ハ刪ツテ宜カロウ
(渡)
刪リマショウ
(村田)
置ク方ガ宜シイ
(槇村)
「一層大ナル」ハ刪リマシヨウ
(北畠)
刪リマシヨウ
(栗塚)
且損害アルトキハ賠償ノ責ニ任ズトシテハ如何
(松岡)
宜カロウ
(南部)
之ハ往カン「之ニ反シテ」ダカラ但ガ附クノデアリマス
(松岡)
彼方ト此方ト反シテト云フノデ栗塚君ノ云ツタ方ガ宜シイ
(栗塚)
且損害アルトキハ賠償ノ責ニ任ズデアリマス
(南部)
尙ホ且損害アルトキハ賠償ノ責ニ任ズトスルカ
(元尾崎)
宜カロウ
(槇村)
宜カロウ
(松岡)
「利息ヲ負擔シ尙ホ損害アルトキハ」デ宜シイ
本條ハ但以下ヲ改メ「利息ヲ負擔シ尙ホ損害アルトキハ賠償ノ責ニ任ス」ト改ム
第七百八十四條朗讀ス
第七百八十四條 社員ハ會社ノ存立中ニ得タル利益ニ因リテ增加シ又ハ受ケタル損失ニ因リテ減少シテ會社解散ノ際ニ現在スル會社資本ニ付キ其相互ノ持分ヲ會社契約又ハ其後ノ行爲ヲ以テ隨意ニ定ムルコトヲ得但第七百八十六條ニ揭ケタル二箇ノ場合ハ此限ニ在ラス
(松岡)
會社解散ノ際現在スルト云フノハ長文ラシイ文デス
(箕作)
「會社資本ニ付」ト云フ字ハオカシイ
(栗塚)
「會社資本ニ於ケル」デアリマス
(箕作)
增減ト云フノハ分ラン
(松岡)
利益ニ因テ增加シ受ケタル損失ニ因リテ減少モオカシイ
(栗塚)
社員ガ會社解散ノ際ニ現在スル資本ニ付キデ宜イデス
(元尾崎)
其レデ宜シイ
(淸岡)
ソレデ宜シイ
(栗塚)
社員ハ會社解散ノ際現在スル資本ニ於ケル其相互ノ持チ分ヲ云々トシテ宜シイ
(松岡)
ソレデ宜シイ
(渡)
ソレデ宜シイ
(箕作)
宜シイ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ左ノ如ク改ム
第七百八十四條社員ハ會社解散ノ際現在スル資本ニ於ケル其相互ノ持分ヲ會社契約又ハ其後チノ行爲ヲ以テ隨意ニ定ムルコトヲ得但第七百八十六條ニ揭ケタル二箇ノ場合ハ此限ニ在ラス
○第七百八十五條朗讀ス
第七百八十五條 社員ハ其一人又ハ數人ノ持分カ利益及ヒ損失ニ於テ同一ナラサルヲ約束スルコトヲ得
然レトモ利益ノミヲ豫見シテ右ノ持分ヲ定メタルトキハ損失ニ付テモ同一ノ定方ヲ約束シタリトノ推定ヲ受ク
如何ナル場合ニ於テモ受ケタル損失ヲ扣除シ會社ノ貸方トシテ殘ル所ノモノニ非サレハ配當ス可キノ利益ト看做サス又右貸方ヲ拂盡シタル後借方トシテ殘ル所ノモノニ非サレハ損失ト看做サス
然レトモ會社ノ存立中ニ詭譎ナクシテ爲シタル利益又ハ損失ノ一分ノ配當ハ之ヲ變更セス
(栗塚)
「詭譎」ハ「詐害」トナリマス
(淸岡)
前項ノ部分ニ入レナケレバナランデシヨウ
(箕作)
全體「然レトモ」ハ入ランノデス
(淸岡)
前項ノコトヲ云フ樣ニ間違フ
(大尾崎)
「然レトモ」以下ハ差引シナケレバナランガ一遍濟ンダラ再ビ出スニ及バント云フ主意ラシイ
(栗塚)
左樣デス
(元尾崎)
之ハ皆ナ社員ダカラ第三者ニ對シテダ
(村田)
七百九十條方リデ持分デモ賣ルコトガ出來ルカラ斯ウ云フモノハ動カントシテ置カント置キ替ヘザルト往カント見ヘルト云フト往カンカラ只變更セヌガドウ云フモノカト思フノデス
(元尾崎)
至極宜シイ
(松岡)
「詐害」ト云フノハドウカ元トハ「詐欺」トアツタ
(箕作)
「詐欺」デ宜イダロウ
(松岡)
商法ハ「詐欺」デスカ
(箕作)
「詭譎」トアツタガ後トデ「詐欺」ニ直ス積リデアリマス
(村田)
「詐欺」デモ宜シイ
(栗塚)
宜シイ
(松岡)
「詐欺」トシテ置カウ利益ヲ引キ出サンデ宜イト云フカ損失ノ一分ト云フノハナササウダガドウカ
(栗塚)
同ジデシヨウ利益ヲ取ツテ居タノト損ダカラ金ヲ繼ギ足シタト云フノデアリマス
(松岡)
會社ハ外ノ義務ヲ盡スノデナケレバ配當ナゾハ出來ンモノデス
(箕作)
前ノ項ノ利益ト損失ノコトヲ云ツタモノデアリマスカラ極ク結局デ會社解散ノ時デナケレバ確言シナイト云ツタガ併シ途中デヤツタコトハ詐欺サヘナケレバ宜イト云フノデアリマス
(松岡)
商法デ云フト會社ト云フモノハ義務ヲ拂ヒ盡シタ後チデナケレバ社員ノ配當ハナラント云フ理窟ニ括ツテ居ルカラ宜シイ「貸方ヲ拂ヒ盡シタル後」ト云フハドウカ
(栗塚)
有金ヲ無クシテ仕舞ヘバト云フノデス
(松岡)
寧ロ前ノ「竭ス」ト云フ字ナラ宜シイガ「拂ヒ盡ス」ト云フノハオカシイ
(栗塚)
御尤モ拂ヒヲト云フ字ガ惡イ貸方ヲ竭シデス
(松岡)
借方ヲ拂ヒ竭シテ殘タモノナラ聞ヘル
(栗塚)
右貸方ヲ竭シタル後トシテ「拂ヒヲ」ノ字ヲ刪リマシヨウカ
(松岡)
拂ヒ、貸ヲ拂ヒハオカシイ
(栗塚)
元來此所ハ働キ方受方ト云ハナケレバナラン働キ方ヲ拂ヒ竭シデス
(箕作)
ソウデス
(南部)
竭シ、ノ方ガ宜シイ
(大尾崎)
貸方ヲ竭シタル後デ良シイ
(栗塚)
「竭シ」ト云フ字ニ致シマス
(松岡)
「ロエスレール」ノ書イタノハ、會社ハ損失ニ因テ配當金ヲ分配スルコトヲ得ズトアルソウスルト每期デナケレバ取レント云フコトガ分ル
(村田)
只竭シ、デ良カロウ
(松岡)
竭シデ良カロウ
(南部)
「盡」ノ字バカヲ盡スト云フトキニ使フノダカラ之ハ貸方ヲ盡スノデアリマスカラ力ヲ盡スコトデナイカラ「竭」ノ方ガ良シイ
(淸岡)
「盡」デハ往カン
本條ハ「約束」ハ「合意」ト改メ第三項「又右貸方ヲ拂盡シタル後」トアルヲ「又右貸方ヲ竭シタル後」ト改メ「詭譎」ヲ「詐欺」ト改メ其他原案ニ決ス
第七百八十六條朗讀ス
第七百八十六條 會社資本ノ全部又ハ會社ノ得タル利益ノ全部ヲ社員中ノ一人ニ歸ス可キ約款ハ無效ナリ
技術又ハ勞力ヲ出資ト爲シタル社員ニ非サル社員ニ全ク損失ノ負擔ヲ免レシム可キ約款モ亦同シ
會社契約ニ右ノ約款ヲ附記シタルトキハ其約款ハ契約ヲシテ全ク無效ナラシム又日後ニ右ノ約款ヲ追加シタルトキハ其約款ハ契約ノ存立ヲ妨ケスシテ會社ノ淸算ハ第七百八十九條ニ從ヒテ之ヲ爲ス
(元尾崎)
之ハ良シイ
(栗塚)
之ハ商法ニモアリマスガ良シ牴觸シテモ會社ニ適用スルカラ良シイト云フノデス
(南部)
但技術勞力ヲ主トシテハ此限ニ在ラズトスルトハツ切リ分ルカネ
(淸岡)
末項ノ所ハオカシイ考ヘルガ約款ヲ附記シタルトキハ約款ハ契約ヲシテ無效ナラシム、ト契約ハ會社契約ヲ無效ニスルト、オカシイネ約款丈ケ無效ニシナケレバナラン
(南部)
ソレデハ困ル
(栗塚)
コウ云フコトデ、會社ヲ結バウト言タノデアリマスカラ貴君ト私ト南部サント三人デ組ンデ利益ハ私一人デ占メルゾヨト云フト約款シタノデソレデハ會社ニナリマセン
(淸岡)
一體契約ト云フモノハ約款ニナリソウナモノデス
(栗塚)
利益ヲ一人デ占メヨウトシテ會社ヲ結ンダノデソレデハ會社ニナリマセン
(淸岡)
ソレデハ約款丈ケヲ無效ニシテハドウカ
(栗塚)
會社ノ目的ノ利益ヲ私ガ取ルト云フテモ後ハ承知シハセン
(淸岡)
スルト初項ノ一人ニ歸ス可キ約款ハ無效ナリトアル約款丈ケ無效ニシテ良シイ
(粟塚)
ダカラ會社契約モ無效ニナルゾヨト云フノデス
(淸岡)
約款ト去フモノハ成程出來ルトシタラ約款丈ケハ宜シイガ契約ノ無效ハオカシイ
(南部)
ソレハ無效ニシナケレバナラン
(元尾崎)
淸岡サンノ說ハ一種ノ說ダガ贊成者ガ無ケレバ先ヘ往キマシヨウ
(淸岡)
約款ヲ附記スルトアルカラ附記シタ約款ヲ無敷ニシテ良イダロウ
(粟塚)
附記シタ契約ガドウシテ有效ニナルカ
(淸岡)
利益ガ其中ノ一箇條デ、一箇條有效ニシテ後ハ無效デ良シイ
(北畠)
之ハ所謂刀ノ眼貫デスカラネ
(箕作)
四百三十條カラ出タノデ此所ガ無效ダト主タルモノガ附記ノ條件ニ係テ居レバ末項モ無效ニナルアノ原則カラ來タノデアリマス
(淸岡)
歸ス可キ約款ガアレバ約款丈ケ無效ト、アルソレヲ下デ契約ヲ無效ト云フハドウカオカシイ會社ト云フモノガ配當ノ仕方ガ惡イ一箇條ガ惡イカラ一體ノ會社ヲ解散スルト云フコトハアルマイ
(栗塚)
配當ノ仕方デハナイ
(淸岡)
一人ニ歸ストカ社員一般ニ歸ストカ云フハ利益ノ配當ヨリ外ハナイ
(村田)
會社ノ性質ハガナクナツテ仕舞フノダネ
(南部)
會社デハナイネ
(箕作)
佛蘭西法律ニ斯ウ云フコトガアルガ淸岡サンノ說ミタイニ會社契約ヲ存スルヨウニ見ヘルガ前ノ原則ヲ以テ會社契約モ無效ニナラシメタト謂テ居ル
(淸岡)
ソンナラ上ヲ契約トシテハドウカ
(栗塚)
スルト後ハ皆書キ更ヘナケレバナラン
(南部)
右ノト云フ字ハ總括シタ字デス、淸岡サンハ後バカリ見テ御座ランカ
(淸岡)
日後ノ約款ヲ通過シタラ約款丈ケ無效ニナルノデ契約ハ說ガアルノデ後附一記シタラダ、初メ附記シタラ往カン
(南部)
附記ハ前項モ二項モ受ケテ居ルノデアリマス
(淸岡)
上ノ約款ヲ無效トアル下ニ契約ガ無效トアルカラ
(村田)
約款モ契約モ同ジヤウナモノデス
(淸岡)
同ジト見レバ良シイ
(槇村)
契約ハ約款デ通テ居ルノデス
(村田)
ソウナルノデス
(渡)
往キマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第七百八十七條朗讀ス
第七百八十七條 社員ハ自己ノ選任シタル又ハ選任スヘキ社員又ハ外人タル一人若クハ數人ノ仲裁人ヲシテ會社解散ノ際各自ノ持分ヲ定メシムルコトヲ會社契約又ハ其後ノ行爲ヲ以テ約束スルコトヲ得
仲裁人ノ爲シタル定方ハ仲裁人カ仲裁契約ヲ以テ授ケラレタル方式若クハ條件ヲ履行セサルカ又ハ顯然公平ヲ失シタルトキニ非サレハ之ヲ攻撃スルコトヲ得ス
右定方ノ無效ノ請求ハ此ニ因リテ害ヲ受ケタリト主張スル社員ニ在テハ其社員カ定方ノ執行ニ加ハリタルトキ又ハ此ヲ知リタルヨリ三ケ月ヲ經過シタルトキハ之ヲ受理セス
(栗塚)
終リノ「此ヲ知リタル」ハ「其定メ方ヲ知リタル」トアルベキ爲字ノ誤リデ御座リマス
(村田)
其方ガ良シイ
(栗塚)
「顯然」ヲ「明カニ」ト改メタイ
(南部)
「明カニ」ガ宜シイ
(村田)
「約束」ハ「合意」デアリマシヨウ
(栗塚)
左樣
(松岡)
仲裁契約デ定メルナラ訴訟法ノ仲裁契約ト同一ニシナケレバナラン、訴訟法ニ讓ツテハ何ウカ、アレニ何ウ云フトキハ何ウ云フ結果トアルカラ仲裁人ヲ以テ廢罷スルコトヲ得トシテ宜キ自認スルコトハ何ウ裁判ヲ何ウ云フ力ラガアルト云フトカ皆訴訟法ニアル
(栗塚)
併シ之ガ定メ丈ケハ無イデシヨウ
(南部)
約束ヲ以テ合意スルコトヲ得デスネ
(栗塚)
左樣デス
(元尾崎)
契約ヲ以テ契約ヲ爲スコトヲ得ハオカシイ
(村田)
商法ノ千百十九條ニ仲裁契約トアル
(箕作)
彼レハ削ツテ訴訟法ニ讓ツテアリマス
(村田)
然シ此處ハ仲裁人ヲ命ジタリスル處デナイカラ約束ヲ以テ斯ウ云フトキニハ仲裁人ニ定メテ貰ハウト約束スル丈デアリマス
(松岡)
仲裁人ノ效力ハ何處デ見ルカ
(村田)
ソレハ、イラン此處ハ效力迄ノコトヲ云フノデハアリマセン
(栗塚)
攻撃スルコトヲ得ズデアリマス
(南部)
會社ノ契約デアルカラ詰リ取リ除ケデアリマス
(栗塚)
定メ方ヲ知リタル後三ケ月ヨリ云々ハ何ウカ云ツテ置カナケレバナランデシヨウ
(南部)
部分デアリマスカラ宜シカロウ
(大尾崎)
宜シカロウ
(松岡)
仲裁人ノ爲シタルハ、契約ヲ以テ授ケラレ方式條件ヲ履行センガ明カニ公平ヲ失シタトキデナケレバ攻撃スルヲ得ンノデアリマス
(渡)
ソレ丈ハ定マツタノデアリマス
(松岡)
仲裁法律ノ方デ其コトハ定マツテ居ルノデス
(渡)
三ケ月ヲ經過シタトキハ受理セズト云フノカ
(委員長)
行意ト云フノハ皆ナ契約トナリマシタカ
(栗塚)
皆ナデモ御座イマセンカ、所々ソウナリマシタ
(松岡)
定メ方ヲ取消ス、其定メ方ハ仲裁人ノ裁判デ卽チ裁判ノ取消ト同ジダロウ
(栗塚)
ソレハ違ウ、仲裁ノコトヲ云フトキハ始メテ何ウ斯ウト言ヘルガ此處ハ持分ノ定メ方ノ無效トカ謂フコトハ誰レガ持分ノ定メ方ヲスルノカ仲裁人ノ定メダカラ判決ニ違ヒハナイガ直接ニ云フノハ定メ方ノコトダカラ會社ハ書クノハ順デアリマシヨウ
(箕作)
訴訟法ニ元ヨリ仲裁裁判ノコトハ定メ之モ仲裁裁判ニ違ヒ無イケレドモ會社ニ付テハ一種ノモノデ一般ノ仲裁裁判トハ違ウカラ仍テ特別ニ此處デ或ハ訴訟法ト違ウカ一緒ニナルカモ知レナイ別ニ合意ノ仕方ヤ何ニカヲ入レタト云フ旨意ト思ヒマス
(栗塚)
御考ヘノ樣ニ思ヒマス、デアルカラ置キマシテ差支ヘハアリマセン又殘ス彼方ヘ送ツタナラバ三ケ月ト云フノハ案外一ケ月デ良イト云フコトモアリマシヨウ
(元尾崎)
仲裁人ノヤツタ通リニシナケレバナラント云フノデシヨウカ
(栗塚)
左樣
(松岡)
攻撃ト云フノハ訴訟デスカ
(箕作)
詰リ、ソウデス
(松岡)
之ハ置クト云ヘバ、置クモ宜シイガ到底滿備シタモノデハアリマセン
(栗塚)
左樣デス仲裁裁判ニ必要ノケ條ハ幾ラモアリマス
(松岡)
撞着ガナケレバ良シイ
(栗塚)
良シ撞着ガアツテモ會社ニ付テハ三ケ月ナラ三ケ月トシテ差支ハナイ
(箕作)
ソレカラ第二ハ若シ訴訟法ノ方デ仲裁裁判ハ方式條件不履行ト公平ヲ失シタト外ノ場合デ攻撃ガアルト云フナラソレハ會社ノ方デハ適用ガ出來ンノデソウ云フ結果ニナリマシヨウ
(松岡)
ソウ云フカ、又斯ウナリハセンカ明カニ公平ヲ失シタトカ一旦仲裁裁判ノ場合ガアレバ特別ニ出來又之ガナクトモ向ウニアルモノハ矢張ヤレルト云ハナケレバナラン
(箕作)
會社ノ方ハ特別法デ往クカ
(村田)
ソウデス
(栗塚)
併シ定メ方ノ、條件ノ定メ方ノ無效ニ付テ下ツタ裁判ヲ取消スハ此シカ出來ンダロウ
(村田)
ソウダロウ
(箕作)
ソウダロウ
(栗塚)
併シナガラ仲裁裁判人ハ三人アルベキヲ一人デヤツタソレハ矢張有效カ無效カ彼方ハ無效、此方ハ有效ト云フコトハ出來ンダロウ
(箕作)
仲裁人ガ賄賂ヲ取タトカ云フノハソウダロウ
(元尾崎)
此契約デ一人良イトスレバ善イダロウ
(松岡)
ナイモノニ、ブツカツタ時分之ハ特別ダカラ構ハント云フノト又之ハ無效ト云フ論ガ起ル此方ニ無ク向ウニアルト彼レハ用ヒラレ此レハ用ヒラレナイト云フ話ガ出來ル
(栗塚)
此ニ牴觸スレバ用ヒラレナイ
(松岡)
明言ハ安心出來兼ル
(箕作)
親類ダトカ云フノデ裁判官ノ忌避ハドウカ
(栗塚)
適用ガ出來ルデシヨウ
(松岡)
出來ル出來ンノ論ガ起ル
(元尾崎)
出來ン之ハ自カラ勝手ニ擇ンダモノダカラネ
(松岡)
自己ノ選任シタル又ハ云々ト往カンノデス
(村田)
自分デ選ンデモソレハ往カン
(松岡)
人間ヲ定メズ二人ト云フト何方カト云フト各一人ト云ヒタイ仲裁裁判ヲ受ケナケレバナラン
(栗塚)
選任ノ仕方ハドウモ書イテナイ是非訴訟法ニ依ルヨリ仕方ハナイ
(箕作)
ソレハ訴訟法ニ依ルノデスネ、ミスミス親父トカ夫トカ云フ者ガ擇バレテモ忌避ガ出來ン抔ト云フコトハ惡イ
(南部)
書イテナイモノハ向ウニ依ル書イテ有ルモノハ取リ除ケデス
(元尾崎)
矢張訴訟法ニナケレバナランデシヨウ
(栗塚)
ソレハソウデス
(元尾崎)
寧ロ訴訟法ニ依ルトシテ置キマシテハドウカ之ト牴觸シナイ分ハネ假令バ三ケ月トアルヲ向ウガ一ケ月トアレバ三ケ月トシテハ如何
(栗塚)
ソウデス向ウノハ妨ゲナイ積リデアリマス
(松岡)
彼レガ良イ此レハ惡イトモ言ヒ兼ル併シ實際嵌タモノト皆サンガ安心ナラ良シイ
(元尾崎)
起案者ノ考ヘハ之デ事足リテ居ル積リデアリマス
(栗塚)
之ハソウハ申セマセン仲裁人ト云フモノハドウ云フモノニナサルカ否此所デハ言ハン訴訟法デ定メナケレバナラント云テ居ル
(元尾崎)
ソレデハ此ニ足リシトキハ訴訟法ニ依ル積リダカラ良シイ
(松岡)
併シ「ボアソナード」ハ佛蘭西ノ仲裁人ノコトヲ書ク積リダカラ安心ダガ獨乙法デハ「ボアソナード」ハ知ルマイ之ハ之デ、ヤリ訴訟法ハ訴訟デヤルト云フノハ私ハ良イト惡イトモ言ヘマセン
(栗塚)
私ノ考ヘルノニハ何ウ云フ仲裁裁判ガ出來樣トモ仲裁裁判人ト云フモノガ出來レバ良イノデ其者ノ拵ヘ方ハ此處デハ言ハンゾヨト云フノデアリマス
(淸岡)
牴觸スルコトハアリマセンカ
(栗塚)
一ケ月ハ三ケ月ト云フノ違ヒガアリマス
(淸岡)
ソレハ困リマス、商事會社モ民事會社モアリマス
(栗塚)
商事會社ハ御座リマセン
(松岡)
商事會社ハ仲裁ナラ訴訟法デハ一ケ月デアルカ之デハ三ケ月トアル何故ニ左樣ニ違フカ
(栗塚)
現今ノ三ケ月ノ善シ惡ヲ御論ジナサランデハイカン
(南部)
商事契約ノ仲裁ニ任シテ善イ惡イヲモ論ジナケレバナリマセン
(元尾崎)
民事會社ハ廢ソウト云フモノサヘアルノデアリマスカラ商事會社ハ何ウカ民事ノモノハ民事ト見レバ之ハ商事ト見レバ一ツト君做スヨリ仕方ガナイ
(委員長)
兎ニ角訴訟法ト牴觸スレバ牴觸シ又牴觸ナシデ行ナハレルカ講究致シマシヨウ
(松岡)
ソウ願ヒマス
(委員長)
民事會社ハコウ商事會社ハコウト之ニ兩樣アツテモ施行上ニ差支ガ無イト云ヘバ兩方書イテモ宜シイ
(栗塚)
商法デ二ケ月ト云フノガ訴訟法デ一ケ月トアルカラ充テ嵌ルト云フノデスカ
(南部)
商事會社デ自己ノ選任デ出來ル出來ナイハ商法トハ別ノ話デ只訴訟法ト牴觸デアリマス
(栗塚)
訴訟法ニ一ケ月ト書イタガ何ニカラ一ケ月ト出タカ一體仲裁裁判ヲ無效トスル請求ハ一ケ月ト極メタハ何ウ云フ譯ケデシタカ又此處ハ何ウ云フ三ケ月トナツタカソレハ只期間ノ話デ仲裁裁判ト云フモノハ此處ヘ書イテ置ク置カンノ問題ハ別ニナツテ仕舞ウソレ丈ノ氣付キテ後デ期間ノ研究ヲシタラソレデ良イデシヨウ
(松岡)
ソレモ言ヒ出シテカラ一條件ヲ持タシタ譯ケデアリマス
(栗塚)
詰リ其處ニ歸着シヤシマセンカ
(松岡)
未ダ調ベタラ有ルカ知レンカラ良イト云ツテハ困ルノデアリマス
(栗塚)
御尤デ御座イマス今迄ノ論ハ次ギノ話ニナツテ仕舞イマシタ
(村田)
訴訟法ノ一ケ月ハ條件ガアツテ無暗ニ良イト云フノデハナイ之ハ不服カラユクノデ條件ガ無イノデ卽チ此處ハ公然デナイト云ヒサヘスレバ宜シイノデアリマス
(松岡)
ソレハ卽チ條件ト謂フモノデアリマス兎モ角モ彼ノ方ト比較シテ撞着ガナイカト云フ方ニ氣ヲ付ケテ仕樣ト云フナラ要スルニ默ツテ居ルト默ツテ通ツテ仕舞イマス
(箕作)
論ジ詰メタラ二、三項ハ訴訟法ト照ラシテ或ハ削ツテモ宜シイ只合意スルヲ得ト云ツテ後トハ訴訟法ニ任シテ良イトナルカモ知レマセン
(松岡)
ソウデシヨウ、大槪イ彼方ニ極メテアルノデ何等ノ仲裁モ併セテ、ユク樣ニアルノデアリマス
(元尾崎)
實ハソウ言ヒ出スト書イテ置カンデモ宜シイ樣ナモノデス
(村田)
併シ始メノ方ハ書イテ置カンデハイカン
(栗塚)
何時モ只杜撰ニナツテ分カラン樣ニナルト削ツテ仕舞ウトナルノデアリマス
(渡)
之ハ研究スルコトニ仕樣
(松岡)
今一ツ折合ツテ一ケ月三ケ月計リノ當否デナク仍ホ接續ガ出來ルカ撞着ガナイカト云フ邊迄モ併セテ、シテ貰ヒタイ
(栗塚)
畏リマシタ
(松岡)
ソレナラバ無事ニ通ツテユキマシヨウ
(淸岡)
一體會社ノ爲メニシタモノデ今日ノ我々ノ考ヘル民事會社ノミト之ヲ見セルト無益ノ譯デアリマス
(松岡)
始メハ利益ヲ目的ニスルノデス
(元尾崎)
利益ヲ分配スル抔ハ商事トハ變ラン
(松岡)
商法ノ會社ニ書イテナイコトデソウシテ此ノ法律ニ書イテアルコトダト商法ニ適用シナケレバナラン事ハ當然ダロウ
(元尾崎)
ソウダロウ
(松岡)
其時分ニ何ウカ知ラント思フ
(元尾崎)
商法ニアルガ、アレハ民法ニ據ラナケレバナランコトモ出來ヨウ
(松岡)
ソレハアロウ
(元尾崎)
會社モ矢張ソウダロウ
(松岡)
勿論商法ノ會社ノ方ニ無クツテ民法ニアルモノハ矢張リ商法ニ適用シナケレバナラン
(元尾崎)
ソウ云フト仲裁モ、ソコヘ持ツテユカレル
(松岡)
ソウデス
(南部)
ソレハ出來ン
(村田)
仲裁ハ始メカラ約款ヲ極メテ置クコトガ出來ルト云フノデス
(松岡)
ソレハ、イカニイ頭カラ會社ガ解散スル時分銘々ノ持分ノ定メノ分ラント云フノハ何ウコトダロウ、ソレ迄ノ損益ノ配分ハ何ウシテ居ルノカ矢張株券ノ高デヤルヨリ外ハアリマスマイ
(村田)
之ハ株券ハ無イノデ御座リマス
(元尾崎)
株券ハ無イガ持分ハアル
(松岡)
株式ニ係ツタモノハ無イダロウガ取リ前ハアルノダロウ、解散ノ時分ニ御前ハ幾ラ取ルノカ分ラント云フ場合ハ何ウ云フノカ
(元尾崎)
分ランコトハナイダロウ
(淸岡)
殘リ丈ハ割ルノダロウ
(村田)
分ランカラ仲裁人ヲ頼ムガ社員中カラ誰レカニ極メテ貰ハウト云フ約束ガ出來ルノデソレガ分ツテ居レバ始メカラ約款ニ書カンデモ宜シイ
(松岡)
上ノ損ヲ償フタノデナケレバ利益ニナラント云フノモ書イテアルノデ苟モ會社ガ、ソレゾレ金額ナリ物ナリ出シテソレヲ資本トスルト云フコトガアツテソウシテ會社ノ解散ノ時分ニ社員ノ持分ヲ人ニ定メサセルト云フノハ何ウ云フ順序デアリマシヨウカ
(元尾崎)
日本ニハ滅多ニハ御座リマセン
(松岡)
外國ニハアルノカ
(元尾崎)
アルダロウ
(箕作)
自身デ極メナケレバ法律ガ七百八十九條デ極メルノデアリマス出資額ノ割合デ極メルト、ソレモイカン自分デスル代ハリニ解散ノ時配當シテ居ルカ後トデ別ニ定メ方ヲスルト云フノハ何ウモアリソウモナイ樣ニ考ヘラレル
(松岡)
ソレハ當然ノ株券ハ兼テ計算シテ、ヤツテ居ルガ會社中紛紜ヲ生ジマイモノデモナイ其時ニ仲裁ヲ求メラレルト云フナレバ宜シイガ其場合ナラ方式ノ仲裁人トシテモ出來ルナ
(南部)
先ヅ調ベルト云フコトニ致シマシヨウ
(委員長)
ソウ致シマシヨウ、今ヤツテ見テモ對照シテ見ナケレバ徒勞ニ屬シマス之ハ報吿委員デ調ベヲスル樣ニ願ヒマス
(南部)
畏リマシタ
本條ハ第一項「約束」ヲ「合意」、「行爲」ヲ「契約」ト改メ第二項「顯然」ヲ「明カニ」ト改メ第三項「又ハ之ヲ知リタル」ヲ「又ハ其定メ方ヲ知リタル」ト改メ本條仲裁云々仍ホ報吿委員ニ於テ再調スルコトニ決シ未定
第七百八十八條朗讀ス
第七百八十八條 會社契約ヲ以テ持分ノ定方ヲ仲裁人ニ委任ス可キコトヲ定メタル場合ニ於テ少ナクトモ社員ノ過半數カ仲裁人ヲ選任スルコトニ一致セサルトキハ裁判所ニ於テ其選任ヲ爲ス
選任セラレタル仲裁人カ定方ヲ爲スコトヲ欲セス又ハ之ヲ爲スコト能ハサルニ當リ社員カ其改選ニ付キ一致セサルトキモ亦同シ
(松岡)
前同斷デアリマス
(委員長)
ソレデハ前條ト同ジク御預ケニ致シマシヨウ
本條ハ未定
第七百八十九條朗讀ス
第七百八十九條 社員自身ニテ若クハ仲裁人ヲ以テ持分ノ定方ヲ爲サス又ハ仲裁人ノ定方ノ無效ト爲リタルトキハ會社資本及ヒ利益又ハ損失ハ社員ノ出資額ノ割合ニ應シテ之ヲ其間ニ配當ス
社員ノ出資ト爲シタル技術又ハ勞力ノ評價ナキトキハ裁判所ハ各般ノ事情ヲ斟酌シテ其出資ノ價額ヲ定ム
技術又ハ勞力ト財產トヲ出資ト爲シタル社員ハ前項ニ定メタル價額ノ外尙ホ其財產ノ價額ニ從ヒテ計算シタル持分ノ配當ヲ受ク
(箕作)
商法ト同ジニ、シタノデスネー
(栗塚)
改メマシタノデアリマス
(村田)
商法ハ何條カ
(箕作)
商法ハ百五條デアリマス
(元尾崎)
之ハ宜シイ樣デス
(大尾崎)
宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第七百九十條朗讀ス
第七百九十條 各社員ハ自己ノ持分ニ第三者ヲ組合サシメ又其持分ヲ質入シ又ハ之ヲ讓渡スコトヲ得然レトモ是等ノ行爲ヲ以テ會社ニ對抗スルコトヲ得ス但會社契約ヲ以テ社員ニ此權利ヲ認許シ又ハ會社資本ヲ株式ニ分チタルトキハ此限ニ在ラス
右二箇ノ場合ニ於テ會社カ社員ノ讓渡サント欲スル持分又ハ株式ヲ消却スル爲メ先買權ヲ留保シタルトキハ自己ノ持分ヲ讓渡サントスル社員ハ會社カ其先買權ヲ行フカ又ハ抛棄スルカニ付キ之ヲ遲滯ニ付スルコトヲ要ス
(栗塚)
此條ハ修正ヲ致シマシタ株式ト云フコトハ削レマシタ、「是等ノ行爲ヲ以テ會社ニ對抗スルコトヲ得ス」ヲ「是等ノ行爲ハ」ト致シマセント工合ガ惡イ、ソレカラ「但會社契約ヲ以テ社員ノ認許シタルトキハ此限ニ在ラス」トシテ次ギハ「右二箇ノ場合」ト云フノハ申センカラ「右權利ノ讓渡ヲ以テ會社ニ對抗ヲ許シタル場合」ト云フノデアリマス
(南部)
右ノ場合デ分ル二箇ト云フノハ削ツテ宜シイ
(栗塚)
「右ノ場合」デ宜シイ「又ハ株式」ノ四字ハ削レマス
(松岡)
合名會社ナラ商法デ無論出來ンガ株式ハ出來ル時ガアル、凡ソ民事上デ合名デサレントカ何ントカ云フ會社ヲシテ居ルトカ一方ノ人ガ勝手ニ讓ルト云フノハ何ウカ責任サヘ持テバ宜シイト云フガ其實ハ何ウカ
(栗塚)
是等ノ行爲ヲ以テ會社ニ對抗スルコトヲ得ズデアリマス
(松岡)
讓ツテモ表テ向キ構ハントハ違フ
(村田)
會社ハ認メナイノデアリマス
(委員長)
合資會社トハ違ウノデシヨウ
(元尾崎)
讓ルコトガ出來ルトハ何ウカ
(栗塚)
讓ツテモ社員ニ損ハナイ
(元尾崎)
訴訟法ノ樣ニ書イテ置イテ良イノデス
(南部)
意味ガ同ジダカラ良イデハナイカ
(元尾崎)
資本ト讓ツタ其間丈ケノ事デス
(大尾崎)
會社ニ對シテ效ハナイノデアリマス
(委員長)
其人ガ代ハルコトハ構ハンカラ質ニ入レテモ構ハン
(松岡)
商法ニハナイ
(大尾崎)
アリマス
(元尾崎)
九十九條ニアルノデ商法ノ書キ方ガ宜シイ
(箕作)
商法ニハ會社及ビ第三者ト云フノガ這入ツタカラ分ルノデ此第三者ト云フノハ違ヒマス
(栗塚)
此處ハ他人ヲ寄合ヒイ云フノデアリマス
(松岡)
商法ハ移付スルモ第三者ニ對シテ效ガナイト云フノデ當然デアル、何ニ々々スルコトヲ得ト云ハンカラ役ニ立タント云フノデアリマス
(箕作)
甲乙契約者双方ニ效アルト云ハナケレバナリマセン
(元尾崎)
之モソウダロウ
(栗塚)
此處ハ明カニ謂ツテ居ルノデス
(松岡)
第三者ト云フノガ此處ニアリマセン
(大尾崎)
無イケレドモ、ユクノデス
(松岡)
會社ニ對抗スルコトヲ得ズダカラ會社外ノ人ニ效ガナイトハ云ハレナイ
(元尾崎)
民法デハ第三者ニ對抗ガ出來ル積リカ
(松岡)
ソウデス
(委員長)
會社ニ對抗出來ルモノハ第三者ニ出來ルト云フコトハアルマイ
(松岡)
一口ニ讓リ渡スコトヲ得ト云ヘバ效ガアルノデ乍然會社ハ對抗ガ出來ント云フ其外ハ一向差支ガナイト云ハレナケレバナリマセン
(南部)
會社ガ對抗シナケレバ外ニハアリマセン然ラズ會社ニ係ツテ來ル會社ヘ來ルト對抗ガ出來カラ宜シイ會社ノ利益損失ニ關係スレバ會社ニ對抗ガ出來ンカラ濟ンデ仕舞イマス
(元尾崎)
無限責任ダカラ會社ガ拂ヒ盡スト名ルヘ掛ルノデス
(南部)
其レハ云ハレン此處ハ會社ヘ掛ルコトヲ云フノデアリマス
(委員長)
第三者ニ對抗ガ出來ルト商法ト同ジ樣ニスレバ宜イノデス
(南部)
必要ハアリマセン社員ノ權利義務ヲ規定シタ條ダカラ會社ノ事丈ケ云ツタノデアリマスカラ之デ宜シイ
(大尾崎)
宜シイ
(箕作)
各社員ハ自己ノ持分ニテ他人ヲ組ミ入レ然レドモ行爲ヲ以テ會社及ビ第三者ニ對抗スルヲ得ズシテ商法ト同ジヨウニシテハドウカ
(南部)
其レハ入リマセン會社ト社員ノ關係サヘ規定スレバ宜シイ
(大尾崎)
ソレナラ宜シイ
(北畠)
明カデアリマス
(委員長)
栗塚ハドウカ
(栗塚)
是等ノ行爲ヲ以テシ第三者ヲ出スノハドウ云フモノカ
(箕作)
會社ニ對抗スルヲ得ズ第三者ハドウカト云フ疑イガ起ルト云フカラデス
(栗塚)
詰リ會社ヲ害スル行爲ガアツテハナラン害セン以上ハ斯ウ云フコトガ出來ルト云フノデアリマス
(箕作)
分ツテハ居ルガ今ノ樣ナ論ガ起ルカラデス
(大尾崎)
書カウデハナイカ
(南部)
私ハ分ルト思フ
(大尾崎)
分ラン
(渡)
書イタ方ガ宜シイ
(村田)
第三者ハナシト云ハウガ會社デハ知ラン顔シテ居ルノデアリマスカラ仕方ガナイデハナイカ
(栗塚)
第三者ニ對抗スルトキハドウシテ出來ルカ
(元尾崎)
斯ウ云フ場合ガアリマシヨウ會社ガ分散シテ仕舞イソウスルト債務者會社ハアル丈ケ拂フ又足リシトキハ無限責任ダカラ社員ニ係ル其時第三者ガ社員ニ係ツタ時ニハ私ハ讓ツテ仕舞ソタ知ラント云フコトガ出來ルノデアリマス
(南部)
社員デハアリマスマイ
(元尾崎)
會社ニ對シテハ云ヘンガ外ノ者ニ對シテハト云ヘルト云フカラデス
(南部)
ソレハ社員デナイ場合ダカラ別デス
(栗塚)
第三者トノ關係デ云フノデハナイ此處ハ會社トノ關係ヲ云フノデアリマス
(元尾崎)
讓ルコトガ出來ルト渡シテ權利義務ガ往クノデ然レドモ取リ除ケバ會社ニ對抗ハ出來ント會社丈ケニハ出來ントスレバ第三者ニハ出來ルト云フ裏ガ見ヘル
(村田)
第三者ハ會社デアリマス
(栗塚)
貴君ニ會社ノ金ヲ拂ツテ下サイトハ云ヘン會社カラハ云ヘンノデアリマス
(箕作)
商法ノ九十九條ハ惡イトナル
(南部)
一々商法ト併セル積リデスカ
(栗塚)
商法ハドウデスカ
(箕作)
商法ハ甲乙兩人ノ間ニ讓ル效ガアル併シ會社ニ對シテハ效ガナイノミナラズ總テ滿天下ノ人ニ對シテ效ガナイト云フ積リデアリマス
(粟塚)
會社ノ損ヲ蒙ラン樣ニト云フ主意ダロウ
(箕作)
會社ノミナラズ其他ノ人デモデス
(元尾崎)
會社デモ社員ト看做サント云フダロウガケレドモ會社丈ケ看做サント云フト其裏ガ出マス
(栗塚)
ドウ云フ處カラ出來ルカラ社員ト第三者ノ例ニ出來ルカ此處ハ松岡サント南部サント私ガ開墾會社ヲ起シタ、私ガ株ヲ讓ラウト思フガ貴君等ハ社員デ居ルシ私ガ村田サンニヤツタ村田サンガ質ニ取ツタカスルト村田サンバ會社ヘ威張ツテ來ルコトハ出來ゾヨト云フノデアリマス
(箕作)
矢張リ元トノ人ガ持ツテ居ルト云フニ見ルノデシヨウ
(栗塚)
會社ト第三者ト並ベラレマスマイ三人ノ者デアリマスカラ栗塚一人賣フトモ三人ニ對抗ハ出來ント云フノガ之デスソコデ會社ノモノ外ノ人ニ對抗ガ出來ント云フノハ會社ノ債權者ト看ナケレバナリマセン
(箕作)
其賣ツタモノノ債權者デ宜シイ
(栗塚)
私ノ債權者ト見ルト對抗ガ出來ルガ會社ガ債權者ト云フト之ハナイト云ハナケレバナリマセン會社ト云フ會社ニ對抗ハ出來ン又會社ニ金ヲ貸シタ人ニ對抗ハ出來ント想像シナケレバナリマセン
(元尾崎)
ソウ想像シテ見ルガ宜シイ
(栗塚)
會社ト同ジ權ヲ持ツタ人ト云ハナケレバナリマセン
(箕作)
會社ノ債權者ニモ往カント見テモ宜シイ
(栗塚)
會社ニ對抗ガ出來ント云フ主意ヲ以テ說キ明カサント滿天下ノ人ト云フト第三者ト云フハ薩張リ分リマセン社員カラ讓リ受ケタトテ會社ニ向テ對抗ハ出來ント云フノガ主意デ第三者ト云フノハ會社ノ側カラ來タノカ
(箕作)
會社ノ承權人デアリマス
(栗塚)
ソウ見レバ分リマス
(松岡)
私ガ村田ニ讓ツタ處ガ私ニハ一身ニ債權者ガアリマス其債權者ガ私ノ持分ヲ差押ニ係ルデシヨウ松岡ノ配分ハ己レニヨコセト云フ其時私ガ會社ニ向テ言ヒ樣ハアリマセン讓渡シタル社員ダロウ
(栗塚)
讓渡、得タ人ガ之ヲ以テ對抗スルコトハ出來ント云フノデアリマス
(松岡)
私ノ債主ガ私ノ取ル可キヲ差押ニ來タ其時ニ私ガ云フニ此持分ハ元尾崎サンニ讓ツタト云フトキ私ノ債權者ガ云フニ貴樣ガ讓タツテ貴君ト會社ノ何ニカ社員ナラ己レガ押ヘテ取ルト云フ時分ニ己レト元尾崎サントガ會社ニ向テ往クマイ
(栗塚)
併シ何ンノ利益ガアルカ其人ガ會社ト云フ者ヲ維持スルコソアレ會社ガ損ヲ破ツテハナラント云フナラ他處カラ對抗ガアツテハナラント云フガ貴君ノ債權者ガ云ヘルカ貴君ノ債權者ハ會社ノ人デナイカラ會社ニ就テ利益ヲ得ル人デナイ詰リ貴君ノ債權ヲ其債權者外ニ來ルカラデス總テノ權ハ讓レルカラ其三者ニ言ヘル筈デハナイ會社ガ害ヲ蒙ムルカラ言ヘルノデ其第三者ハ害ヲ被ムル人デアリマセン
(松岡)
合名ノ信用ヲ以テスルト特ニ讓ツテ居ルカラ對抗ガ出來ル樣ニナル
(元尾崎)
第三者ニ對抗ガ出來ント云フト、ナゼ差支ヘガアルカ
(栗塚)
會社ヲ害スル所爲ガアツテハナラント云フ主意カラ出タモノデハナイカト思フ
(元尾崎)
會社サヘ保護スレバ第三者ハ保護センデモ權ハント云フ論デスカ
(箕作)
會社ノ社員ハ暫ラクヨシテ會社員ノ債權者ト云ヘルノデ甲ノ社員カラ金ヲ貸シテ乙ニ讓ツタト云フト信用ガナクナルト云フコトガ出ルダロウ
(元尾崎)
無限責任デ社員ニ係ルト己レハ維レ其レ讓タカラ知ラント云ツテ仕舞ヘルノデス
(松岡)
ソレヲ第三者ニ對抗スルコトヲ得ズト云フト出來ンノデス
(南部)
社員ト會社トノ關係ヲ說イタノデアリマス
(栗塚)
是等ノ行爲ヲ以テ會社及ビ其他ノ社員ニ對抗スルコトハ出來ズトシテハ如何
(委員長)
社員デナイ、會社ノ債權者ガアルカラ皆含ムデシヨウ
(栗塚)
スレバ他ノ社員ヲ害スルコトヲ得ズトスレバ他ノ承權人モ害スルコトヲ得ズトナルデシヨウ會社ト云フ無形人、承權人ト云フ無形人デナイト云フモノデアリマスカラ人ノ方カラ係リタイ、松岡サント南部サントシテ會社ヲ組ンデ私ガ讓タトキハ南部サンニモ松岡サンニモ對抗ハ出來ント云ノデアリマス
(松岡)
ソレガ卽チ會社ニ對シテデス
(栗塚)
スレバ松岡サン及ビ南部サンノ債權者ニモ對抗ガ出來ント說キ明シガ付クノデシヨウ
(松岡)
此處デ社員相互ト社員會社ト其レカラ會社ガ社會ニ對ストアレバ宜シイ
(栗塚)
行爲ノ第三者ニ於ケル效力トアリマス
(松岡)
此處ハ甲乙ト合意シタラ何處ラデ法律ニ均シイカアルカ一物ニ關係ノナイ人ハ他カラ苦情ハ云ヘンカラ讓ラレタラ一言モアリマセン
(栗塚)
其レ故斷リヲシテ會社ニ對抗ガ出來ント云フノデアリマス
(松岡)
其レデハ他ノ人カラ對抗ガ出來ルト云ハナケレバナリマセン
(栗塚)
會社ニ向テ第三者ハ云ヘンゾヨト云フノデアリマス
(村田)
第三者ニモ對抗ガ出來ント云フト讓ルコトモ出來ント云ハナケレバナリマセン
(西)
會社ニ對抗スルコトガ出來ント云ヘバ無論第三者ニモ對抗ガ出來ント思ヒマス
(南部)
ソウデシヨウ
(村田)
賣ツタ何ウシマスカ例ヘバ自分ノ持分ヲ渡サンニ賣ル、スルト私ノ債權者ト見ルガ何ウカ
(栗塚)
商法ノ第三者ト云フノハ如何デアリマスカ
(箕作)
會社承權人ト云フ積リデアリマス
(栗塚)
ソレデハ此等ノ行爲ヲ以テ會社又ハ其承權人ニ對抗スルコトヲ得ズトシテハ如何デス
(南部)
會社承權人ト云フノハ六ケ敷カロウ會社デ宜カロウデハナイカ
(栗塚)
會社ニ關係ノアル人デナケレバ見樣ハアリマセン
(南部)
論ジ詰ルト元トノ通リデ宜シイ
(西)
宜ササウデアリマス
(松岡)
スルト商法ガ惡イト言ハナケレバナリマセン
(栗塚)
第三者ト云フノハ會社ニ關係ノアル人デアリマシヨウソウスレバ仰シヤル通リノ第三者トハ違ヒマシヨウ
(渡)
商法ト民法ト云フモノガ明文ノ上ニ於テ異ナツテ居ル、其處カラ七百九十條ノ精神デ會社ニト云ヘバ第三者モ籠ツテ居ルト云フナラ商法ノ方ハ何ウカ
(栗塚)
末項ガ商法ノ二百十七條ト牴觸ト思ヒマシタガ牴觸デハ御座リマセン併シ會社ニ對抗スルコトヲ得ズ丈ケハ今一應研究シタイ商法ノ第三者ト云フノハドレ丈ケノ幅カ又ハ箕作サン云フ處ノ幅デアルカ研究致シマシヨウ
(淸岡)
ソウ願ヒマシヨウ
(松岡)
會社ノ債權者ト見ルノハ早イデシヨウ
(栗塚)
會社ノ債權者ニ非ザル人モアロウカト思ツテ居リマス
(渡)
之ハ猶ホ再調査トシテ置キマシヨウ
(栗塚)
調ベテ見マシヨウ
(委員長)
ソレデハ之レハ報吿委員デ調ベルコトニシテ先キヘ參リマシヨウ
本條報吿委員ニ於テ猶ホ再調査スルコトニ決シ未定
第七百九十一條朗讀ス
第七百九十一條 支配人カ會社ノ名ヲ以テ又ハ會社ノ營業ノ爲メ有效ニ負擔シタル義務ハ會社カ無形人ヲ成セルトキハ各社員ノ一身上ノ債權者ニ先タチ會社資本ヲ以テ之ヲ擔保ス
會社資本ノ不十分ナル場合又ハ其資本カ訴追シタル債權者ニ示サレサル場合ニ於テハ總社員ハ連帶シテ會社ノ義務ヲ負擔ス會社カ無形人ヲ成ササルトキモ亦同シ
右ノ場合ニ於テ各社員間ノ決算ハ第七百八十四條乃至第七百八十九條ニ規定シタル貸方及ヒ借方ニ於ケル各自ノ持分ニ從ヒテ之ヲ爲ス
(栗塚)
本條ノ初項ヲ改メ「無形人ヲ爲セルトキハ」ヲ「無形人タルトキニ限ル」ト但書ニテ「業務擔當人カ會社ノ名ヲ以テ又ハ其螢業ノ爲メ有效ニ負擔シタル義務ハ各社員ノ一身上ノ償權者ニ先立チ會社資本ヲ以テ之ニ擔保ス但會社無形人ニ限ル」トシマス
(渡)
之デ宜シイデハナイカ
(箕作)
替ヘル丈ケノ要用ガアルカ
(栗塚)
終リト同ジ樣ニシタイカラデアリマス「無形人ヲ爲セル」ヲ「無形人タルトキ」トシタイノデス
(北畠)
但書ニシタ方ガハツキリ致シマス
(箕作)
直ホス丈ケノ必要ハナイ原案ノ儘デ宜シイ
(粟塚)
「會社ノ無形人タルトキ」ニシテハ何ウカ
(箕作)
二項ハ何ウスルノカ
(栗塚)
會社無形人タルトキモ亦同ジトスルノデス
(箕作)
ナゼデス
(栗塚)
民法報吿委員ノ耳ニ逆ラウノデアリマス
(村田)
修正ノ方ガ良イト思フ、纔カデ御座リマスカ但ニシタ方ガ、前ハ無形人モ兩方アルト見ナケレバナラン、ソレダカラ取除ケヲ云フノデ、ドウモ修正ノ方ガ宜シイ
(淸岡)
但ガ良イカ會社ヲ其トシテハ往カン
(村田)
ソレハソウデス
(栗塚)
私ト南部サント松岡サント會社ヲ組ンデ松岡サンガ業務擔當人デ悉皆任シテ置イテ處デ松岡サンガ我々三人ノ爲メヤラレタノデ其費ハ松岡サンハ無形人ト知ツテ居ツタ其レデサレタトキハ貴君ハ其名デ取引ヲシタスルト村田サンハ一身上ノ貸シガアツタトキハ我々ニ其時元尾崎サンガ返シ會社ノ債權者ダカラ先キニ取ツテ村田サンガ後トニナルノデアリマス
(松岡)
松岡ガ業務擔當人デ會社ニ負債ガ起ツタ松岡モ藝妓買ヒヲシテ澤山ニ負債ガ有ルト云フト松岡ノ身代ヲ果カルルトキ會社ノ負債部分ヲ先キイ取ラルルノカ
(栗塚)
左樣デス
(松岡)
少シク迷惑デアル
(南部)
仕方ガナイ
(栗塚)
松岡ヲ信ジタノデハナイ會社ヲ信ジタノデアリマス
(箕作)
直ホス必要ハアリマセン
(栗塚)
ソレデハ業務擔當人丈ケニシテ後トハ宜シユウ御座イマス退キマシヨウ
(元尾崎)
無形人ノ時計リニ限ルト云フノハ何ウカ
(栗塚)
三人デ會社ヲ組ンダト云ツテモ世間デハ知ランカラ無形人ニナツテ居ラント知レンノデアリマス
(淸岡)
合資會社ノ場合モ無形人ナラザルトキモ亦同ジト下ニアリマス合資會社ノ場合モ適用スルト云フノハ不都合デアル商法ト牴觸スルト云フガ私ノ元トノ案ニアリマス
(南部)
ソウデハナイ株式ト云フコトガアルカラ牴觸ト云フテ居ツタガアレヲ削ツタカラ牴觸ハナイ
(元尾崎)
此條ハ宜シイ
(松岡)
之ハ撞着ハアリマスマイ
(渡)
先キヘ往キマシヨウ
本條ハ冒頭「支配人」ヲ「業務擔當人」ト改メ其他原案ニ決ス
第三節 會社ノ終止
第七百九十二條朗讀ス
第七百九十二條 會社ハ左ノ諸件ニ因リテ當然終止ス
第一 會社契約ヲ以テ指定シタル時期ノ滿了又ハ解除條件ノ成就
第二 會社ノ目的タル事業ノ成功又ハ其成功ノ不可爲
第三 申込ミタル會社資本ノ全部又ハ半額ヲ超ユル損失
第四 社員ノ一人ノ技術、勞力又ハ收益ヲ以テスル繼續ノ出資ヲ爲スノ不可爲
第五 社員ノ一人ノ死亡、禁治產判認ノ破產又ハ顯然ノ無資力但第七百九十五條ノ規定ヲ妨ケス
(栗塚)
「判認」ヲ刪リ「終止」ヲ「終了」ト「不可爲」ヲ「不能」ト改メマシタ其レカラ「成效」ハ「成功」ト云フ字ニナツテ居リマス
(箕作)
成就ト云フノデアリマスガ時效ノ成就ト云フノデアリマス
(村田)
「申込」ハ少シ疑グリガアリマス
(箕作)
其レデハ「申込ミタル」ハ刪リマスカ
(栗塚)
刪リマシヨウ
本條ハ「終止」ヲ「終了」「成效」ヲ「成功」ト「不可爲」ヲ「不能」ト改メ「申込ミタル」ヲ刪リ及ヒ末項「判認」ヲ刪リ其他原案ニ決ス
第七百九十三條朗讀ス
第七百九十三條 會社ハ左ノ諸件ニ因リテ之ヲ解散スルコトヲ得
第一 如何ナル場合ヲ問ハス社員ノ一致ノ意思
第二 明示又ハ默示ノ一定ノ期間ナキ場合ニ於テ惡意ニ非ス又不都合ノ時期ニ非スシテ解散ノ請求ヲ爲ストキハ社員一人ノ意思
第三 社員ノ一人ノ義務不履行ニ基キタル解除ノ訴又ハ會社ニ一定ノ期間アルトキト雖トモ正當ノ理由ニ基キタル解散ノ請求
(栗塚)
此處モ先刻ノ樣ニ報吿委員ノ中デ改メタイト云フノガ多數デ第三又ハ正當ノ理由ニ基キタル請求但トヤリタイト云フガ格別ハ御座イマセン
(南部)
此處ハ大變違ウ斯ウシナケレバナリマセン
(栗塚)
第三會社ニ一定ノ期間アルトキト雖モ云々正當ノ理由ニ基キタル請求ト云フ意味デ義務不履行ニ基キタル會社ニモ係ルカラ斯ウシタイト云フノデアリマス起案者ノ本旨ハ然ルベキ期間ガアロウトモ云フノダカラ但位デアリマス會社ニ一定ノ期間アリト雖モ社員ニトシテ宜シイ
(淸岡)
期間ハ上ヘ來ナケレバナランデシヨウ
(槇村)
期間ガアツテモ斯ウナツタトキハ解散スルト云フノダネ
(栗塚)
左樣デス
(村田)
期間ノアルトキト雖モ社員ノトシテ良シイ
(南部)
前ヲ會社ノ期間アリト雖モ、トシテ良シイ
(淸岡)
ソレハ良シイ
(村田)
第二ノ所ハ何ノ期間カ分ランネ會社ノ卽チ繼續期間ト云フノダネ
(栗塚)
會社ノ一定ノ期間ニト第三ニアルカラ入レテモ良シイ
(南部)
良カロウ
(委員長)
良シイ
本條ハ第二「明示」ノ上ヘ「會社」ニ、ノ三字ヲ加ヘ第三「會社ニ一定ノ期間アルトキト雖モ社員ノ一人ノ義務不履行ニ基キタル解散ノ訴又ハ正當ノ理由ニ基キタル解散ノ請求」ト改メ其他原案ニ決ス
第七百九十四條朗讀ス
第七百九十四條 社員ハ會社ノ期間ノ滿了前ニ明示又ハ默示ニテ之ヲ伸長スルコトヲ得
默示ノ伸長ハ一定ノ期間ノ滿了後ニ於テ社員ノ一人タモ故障ヲ爲サスシテ會社營業ノ繼續シタル事實ヨリ生スルコトヲ得此場合ニ於テ會社ハ前條第二號ニ從ヒ社員ノ一人ノ意思ヲ以テ之ヲ解散スルコトヲ得
(南部)
「一人タモ」、ハ「人テモ」デシヨウ
(元尾崎)
「タモ」ハ大和言葉デ面白イ
(松岡)
日本言葉デ今日デハコ人モ」デシヨウ
(栗塚)
「一人モ」デアリマス
(渡)
「タ」ノ字ヲ刪リマシヨウ
(槇村)
「一人モ」デ宜シイ
(大尾崎)
「タモ」ハ甚ダ宜シイ
(箕作)
「タモ」ハ外ニモナイカラオカシイ
(南部)
「一人モ」、デ宜シイ
(松岡)
「タ」ハ刪リマシヨウ
(大尾崎)
刪ラヌ
(元尾崎)
刪ラヌ
(委員長)
北畠サンハ如何
(北畠)
「タモ」ハ俗語ニモ使ウカラ多數ニ從ウガ私ガ決スルナラバ原案デ宜シイ
(委員長)
其レデハ原案ニ決シテ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第七百九十五條朗讀ス
第七百九十五條 社員ハ第七百九十二條第五號ニ揭ケタル原因ニ由リテ會社ヲ解散セス且闕ケタル社員ノ持分ヲ定メ他ノ社員ニテ之ヲ繼續スルヲ約束スルコトヲ得
又社員ハ死亡シタル社員ノ相續人又ハ無能力ト爲リタル社員ト共ニ會社ヲ繼續スルヲ約束スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ相續人又ハ合式ノ代理アル無能力者ノ承諾ヲ要ス
(栗塚)
解散セズ且闕員ノ持分ヲ定メテ良クハナイカ「闕ケタル」ハオカシイ
(元尾崎)
闕ケタル社員デ宜シイデハナイカ
(栗塚)
持分ト云フノガ闕ケルト云フモ申セルガ朗ケタル社員ノ持分ヲト云フノハ闕員ノ持分ガ良クハナイカ
(村田)
其方ガ宜シイ
(栗塚)
他ノ社員ト共ニ繼續スルコトヲ得デハドウカ
(松岡)
宜シイ
(委員長)
最合テ持ツモノデハアリマスマイ社員デダロウ
(栗塚)
ソレカラ「合意スルコトヲ得」デス
(元尾崎)
闕員デ良イトシテ置カウ
(北畠)
闕員デ良カロウ
(元尾崎)
無能力者ト云フノハ何ウカ
(栗塚)
末項無能力者ノ新タナルト云フ字ヲ入レタイ
(村田)
前ハ分ラン
(栗塚)
無能力者ト爲リタル他人ト共ニ繼續デス
(村田)
無能力者トヤル樣ニ見ヘル
(栗塚)
無能力者ト爲ツタ者ト社員ト氣狂ヒニナツタラ氣狂ヒニナツタモノト繼續ガ出來ナイカラソレデハ其人ノ代理トヤルト云フコトデソレダニ依ツテ前項ノ場合ニテ合式ノ代理アルト云フ字マデ入レテアルコトデアリマス
(箕作)
社員ニテデ宜シイデシヨウ
(松岡)
末項ハ元トノ案ノ原案ガ宜シイ
(元尾崎)
矢張リ相續人ヲ先キヘ出サナケレバナリマセン
(箕作)
今日ノ原案デ分ランコトハナイ只分リ惡イノデアリマス
(元尾崎)
無能力者新タナルト云フト無能力者ガヤル樣ニ見ヘル
(南部)
其處デ合式ト云フノガアルノデス
(栗塚)
代理セラレテ居ルト實ハアルノデス
(淸岡)
無能力者ガ承諾スルコトハナイ
(栗塚)
無能力者ノ合式ノ代理人又ハ相續人ノ新タナル承諾ヲ要ストシテハ如何
(大尾崎)
宜シイ
(村田)
宜カロウ
(槇村)
宜カロウ
(南部)
宜シイカ
(栗塚)
ソレデハ社員ノ無能力者トナリタルモノ又ハ相續人ト共ニ會社ヲ繼續スル合意スルコトヲ得ト前項ヲシテハ如何
(淸岡)
宜シイ
(村田)
其方ガ宜シイ
(箕作)
無能力者ト爲リタル社員又ハ死亡シタルト云フト何ウモ往カン二項ハ之デ宜シイ
(淸岡)
三項丈ケ直ホセバ宜シイ
(槇村)
前項ニ於テハ粗續人又ハ無能力者ノ合式ノ代理ノ新タナル承諾デ宜シイ
(委員長)
ソレデハ之デ食事ニ致シマシヨウ
本條ハ第一項「闕ケタル」ノ「ケタル」ヲ刪リ「約束」ヲ「合意」ト改メ末項「前項ノ場合ニ於テハ相續人又ハ無能力者ノ合式ノ代理ノ新タナル承諾ヲ要ス」ト改メ其他原案ニ決ス
(槇村)
始メマシヨウ
第四節 會社ノ淸算及ヒ分割
第七百九十六條朗讀ス
第七百九十六條 會社ノ解散シタルトキハ社員ノ各員又ハ其承接人ヨリ淸算ヲ請求スルコトヲ得
淸算ハ分割前ニ之ヲ爲スコトヲ要ス但社員ノ多數カ全部又ハ一分ノ分割ヲ先ニスルコトヲ請求シタルトキハ此限ニ在ラス
又會社ノ各債權者ハ淸算前ニ分割ヲ爲スコトニ付キ故障ヲ申立ツルコトヲ得
(栗塚)
舊社員ト云フ「舊」ノ字ヲ入レマシタ、會社ガ解散シタ後ダカラト云フノデ書イテヤツタラ解散シテモ社員ト云フノカト言タラ「舊」ノ字ヲ入レテ參タノデス
(松岡)
之ハ理窟ヲ言ハズ社員カラ斯々ト云フノガ當リ前ダ「舊」ノ字ハイラナイ
(栗塚)
原文ニハ皆ナ入レテ參タ、ソレカラ「承接人」ハ「承權人」トナリマス
本條ハ「承接人」ヲ「承權人」ト改メ其他原案ニ決ス
第七百九十七條朗讀ス
第七百九十七條 淸算ノ事務ハ左ノ諸件ナリ
第一 着手シタル事件ノ成就
第二 會社ノ債務ノ辨濟及ヒ其第三者ニ對スル債權ノ取立
第三 各社員ト會社トノ間ノ特別ナル計算ノ定方
第四 分割ス可キ貸方又ハ負擔ス可キ借方ニ於ケル各社員又ハ其代人ノ持分ノ指定
(栗塚)
「淸算ハ左ノ諸件ヲ包含ス」トヤツテハ如何ソレカラ「第一着手シタル業務」トシテハ如何
(槇村)
良シイ
(元尾崎)
良シイ
本條ハ「淸算ハ左ノ諸件ヲ包含ス」ト改メ「第一着手シタル業務」ト改メ其他原案ニ決ス
第七百九十八條朗讀ス
第七百九十八條 會社契約中淸算人ノ選任及ヒ其權限ニ關スル約款ハ已ムヲ得サル故障ナキニ於テハ之ヲ履行スルコトヲ要ス
會社契約ニ淸算人ノ選任及ヒ其權限ニ關スル約款ナキトキハ淸算ハ或ハ總社員之ヲ爲シ或ハ社員ノ一致ヲ以テ委任シタル一人若クハ數人ノ社員之ヲ爲シ或ハ社員ノ一致ヲ以テ選任シタル第三者之ヲ爲ス
社員カ淸算人ノ選任ニ付キ一致セサルトキハ裁判所ニ於テ之ヲ選任ス
(栗塚)
「故障」ト云フ字ハ「妨害」ト云フ字ニ改メトウ御座リマス
(村田)
「妨害」ト云フト強ヨ過ギハセンカ「異議」ト云テハ如何
(栗塚)
原文ハ「妨害」トアルカラ言タノデス
(松岡)
之ハ第一項ノ約款云々ハ元ト刪テアルニ默テ出シテ來タハドウカ
(南部)
アツテモ害ハナイ
(松岡)
害ニハナランガオカシナ文ダ
(元尾崎)
刪ル方ナラ同意
(栗塚)
會社契約デ定メテ置クノダ、然ルニ定メテナカツタラバト云フノデス
(松岡)
約款ナキトキハデ良イノダ
(淸岡)
「妨害」、「故障」ハドウカ
(大尾崎)
元トノ通リデ良シイ
(槇村)
元トノ通リデ良シイ、一項ハイラン
(栗塚)
ソレデハ一項ハ刪リマスカ
(松岡)
權限ニ關スル約款ナキトキハトナルノダ
(北畠)
ソウシヨウ
(大尾崎)
一項ハ刪ルガ良シイ
(栗塚)
一項ハ皆刪ルノデス
(元尾崎)
良シイ
(渡)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ第一項ヲ刪除シ其他原案ニ決ス
第七百九十九條朗讀ス
第七百九十九條 淸算人ハ如何ナル場合ヲ問ハス速ニ欠減又ハ敗損ス可キ物ヲ讓渡スコトヲ要ス
滿期ト爲リタル債務ノ辨濟ノ爲メ必要ナルトキハ此他ノ動產ヲ讓渡スコトヲ得
不動產ニ付テハ淸算人ハ社員ノ特別ナル委任ヲ受クルニ非サレハ之ヲ抵當トシ又ハ讓渡スコトヲ得ス
前項ノ讓渡ハ協議上ニテ約束スルヲ許シタル場合ノ外ハ公賣競落ニ依ルニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス此等ノ處分ハ總テ社員ノ多數決ヲ以テスルコトヲ要ス
淸算人ハ社員ノ名ヲ以テ原吿又ハ被吿トシテ訴訟ヲ爲スコトヲ得
淸算人カ會社ノ債務又ハ債權ニ付キ承諾シタル和解及ヒ仲裁ハ第三者ト通謀シタル詭譎ノ爲メニ非サレハ之ヲ攻撃スルコトヲ得ス
(栗塚)
本條末項「多數決」ハ「過半數ヲ以テ之ヲ決スルコトヲ要ス」トシテ「詭譎」ハ「詐欺」トシマシタ
(村田)
「缺減」ハオカシイ「毀損」デ良シイ
(南部)
「毀損」デ良シイ
(松岡)
元トハ「毀損又ハ滅盡」トアル
(栗塚)
「毀損」ト始終ヤツタノデスカラ「缺減」ハ惡イ
(南部)
「毀損」又ハ「滅盡」デハドウカ
(松岡)
良カロウ
(槇村)
良カロウ
(松岡)
不動產デモ勝手ニ賣ラシテ良シイ無論ダ會社ノ財產トナツテ淸算人ニ任セル以上ハ同ジコトダ
(元尾崎)
之ガ卽チ違フ訟所デアリマス
(南部)
先ヘ進ミマシヨウ
本條ハ第一項「缺減又ハ敗損」ハ「毀損又ハ滅盡」ト改メ第四項「多數決」ハ「過半數ヲ以テ之ヲ決スルコトヲ要ス」ト改メ末項「詭譎」ハ「詐欺」ト改メ其他原案ニ決ス
第八百條朗讀ス
第八百條 淸算ノ總計算ハ社員ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
右ノ計算ヲ認可スルニハ社員ノ多數決ヲ以テ足レリトス
其議決ハ總計算ヲ合セテ之ヲ爲シ又ハ計算ノ或ル部分ニ付キ各別ニ之ヲ爲スコトヲ得
認可ヲ得ス且改正スルヲ得ヘキ計算ハ淸算人其費用ヲ以テ之ヲ爲ス若シ改正スルヲ得サルトキハ淸算人ハ代理ノ規則ニ從ヒ其過失ニ因リテ加ヘタル損害ノ責ニ任ス
淸算人ノ受任シタル權限ニ依リ又ハ前條ニ從ヒテ爲シタル行爲ハ常ニ善意ナル第三者ノ爲メニ之ヲ維持ス
(栗塚)
「改正スルヲ得」ハ「仕直ス」ト云フ字デ御座リマス
(元尾崎)
條約改正モ「仕直シ」デシヨウ
(南部)
事柄ハ少シ違ヒマス
(松岡)
同ジコトダ
(栗塚)
仕直ストヤリタイ
(南部)
仕直スト元トノ通リニスルガ宜シイ
(松岡)
替リハセン
(元尾崎)
改正デ宜シイ
(淸岡)
仕直スハオカシイ
(栗塚)
原字モ改正ト云フノハ今マデ弊害デモアツタモノヲ除ク意味ガアリマスガ之ハソウデナイノデ再ビスルト云フ字ニナルノデ御座リマス
(北畠)
「釐革」ト云フ字ダロウ
(淸岡)
徃ケナイカラ仕直スノダロウ
(栗塚)
二度算盤ヲ置クノハ仕直スノデシヨウ
(松岡)
ソレハ改算ト云フノデシヨウ
(栗塚)
正ノ字ガ惡イト云フノデアリマス
(槇村)
且改ムコトヲ得ベキガ宜シイ
(栗塚)
「改ム」ガ宜シイ
(村田)
今一遍勘定ヲ直スノデシヨウ
(箕作)
仕直スニシテハ何ウデスカ
(村田)
仕直シガ宜シイ
(箕作)
改正ト云フハ少シ違ヒマス
(南部)
仕直スガ宜シイ
(渡)
仕直ヨリモ改ムルコトヲ得ベキガ宜シイ
(淸岡)
且ト云フ字ヲ刪ツテ認可セラレズシテ仕直スト云フタ方ガ宜シイ
(村田)
仕直ストシテ置キマシヨウ
(北畠)
仕直ストシテ置キマシヨウ
(元尾崎)
「多數決」ハ「過半數」カ
(栗塚)
左樣デス
(元尾崎)
先キヘ往キマシヨウ
本條ハ第二項「多數決ヲ以テ足レリトス」ヲ「過半數ノ議決ヲ以テ足レリトス」ト改メ第四項「改正スルコトヲ得」ハ「仕直スコトヲ得」ト改メ其他ハ原案ニ決ス
第八百一條朗讀ス
第八百一條 株式ヲ以テ民事會社ヲ組織シタルトキハ商事ノ株式會社ノ規則ニ從ヒテ其淸算ヲ爲ス
(栗塚)
本條ハ言フマデモナイカラ刪除致シマシタ
(箕作)
宜シイ
(村田)
宜シイ
(元尾崎)
宜シイ
(大尾崎)
宜シイ
本條ハ刪除ニ決ス
第八百二條朗讀ス
第八百二條 會社ノ淸算後ハ不分ニテ存スル財產ノ分割ハ社員ノ各自又ハ其承接人ヨリ之ヲ請求スルコトヲ得但當事者カ第四十條ニ從ヒ不分ニテ存スルコトヲ會社ノ解散後ニ約束シタルトキハ此限ニ在ラス
(栗塚)
分割ト云フハ會社ノ配當ト云フト分ルガ會社ノ分割ト云フハ何ウカ
(村田)
此處ハ宜シイダロウ
(南部)
先キヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第八百三條朗讀ス
第八百三條 配當部分ノ組織又ハ各當事者ニ對スル配當ニ付キ當事者ノ一致セサルトキハ財產ノ相續其他ノ共通ノ分割ノ爲メ本法及ヒ民事訴訟法ニ定メタル規則ニ從フ
(栗塚)
「財產」ノヲ刪ツテ下ニ入レタイ「相續其他財產共通」トヤリタイ
(松岡)
前ニハソウアツタノデス
(栗塚)
「配當」ハ「配賦」トシタイ
(元尾崎)
配當デ宜シイ
(箕作)
配賦デモ宜シイガ同ジデシヨウ
(栗塚)
配當部分ヲ定メル事デス
(村田)
配賦デ宜シイ
(松岡)
「分割」ハ何ウカ
(南部)
分割部分デ宜シイ
(箕作)
何ウデシヨウカ
(大尾崎)
分割シテ配當ガ出來ルノデアリマス
(松岡)
分割部分デナケレバナラン
(栗塚)
「分割部分」デ如何デスナ
(南部)
ソレハ宜シイ
(村田)
分割部分デ往カウ
(元尾崎)
宜シイ
(松岡)
訴訟法ノ何處ニアリマスカ
(栗塚)
御座イマセン強制執行デヤルヨリ外ハナイ
(松岡)
強制執行ニハ縁ガ遠イ此儘デハ些ト困リマス
(南部)
彼方デ書ク積リデ記シテアリマス
(栗塚)
訴訟法デハ一切民法ヲ見ズニヤツテ居ルノデアリマス
(松岡)
ソレハ往カン
(南部)
此處計リデハナイ大變アリマスカラ彼方デヤルヨリ外仕方ガナイ
(箕作)
民事訴訟法ト云フノハ刪テ民法丈ケ定メ置ケバ良イノデスカ
(村田)
左樣
(松岡)
訴訟法ト民法ト混淆シテ居ルカラ規則ハ何ウスルモノト云ツテ置ケバ宜シイ
(箕作)
民法丈ケデ良イノデス
(松岡)
訴訟法ニ持ツテ往ツテモ入レ所ニ困ルノデアリマス
(村田)
民事訴訟法ト云フノヲ刪ロウデハナイカ左樣スレバ宜シイ
(南部)
佛蘭西ニモナイカラ刪ルガ宜シイ
(箕作)
此條ハ刪ツテハ何ウカ
(松岡)
丸刪リデ差支ナイ
(栗塚)
刪ツテ仕舞ヘバ却テ面倒ハナイ
(大尾崎)
刪ルガ宜カロウ
(槇村)
刪リマシヨウ
(箕作)
本法ニアツタラ矢張リ之ニナイデモ規定ニ從フダロウ
(槇村)
ソンナラ佛蘭西ノ訴訟法ニ從フ上言ツテハ何ウカ
(南部)
皆ナ刪ルノハ宜シクナイ
(粟塚)
佛蘭西ノ訴訟法千八百七十二條ニ會社ノ分割ハ相續ノ分派ニ規定スル規則ヲ適用ストアルカラ本法ニト云フハ相續ノヲ以テ適用スト云フノデアリマス
(村田)
刪リマシヨウ
(南部)
其レナラ訴訟法ニ於テ本法ヲ刪ルカラ宜シイガ則チ相續法ガ出來レバソレニ從フト云フノダカラ其レ迄置イテ宜イダロウ
(松岡)
初メ有體物デ分ケラレナケレバ公賣シテ敲キ分ル事ハナイ
(栗塚)
ソレガアリマス
(松岡)
ソレガアレバ差支ハナイ
(南部)
ダカラ本法ト云フノガアレバ良イ
(松岡)
刪ルヲ贊成
(大尾崎)
贊成
(村田)
贊成
(渡)
贊成
(南部)
民事訴訟法ニ從フト云フノヲ刪ツテ本法ト云フノヲ置クガ宜シイ左モナイト裁判官ガ困ル
(淸岡)
之ハ報吿委員デ猶ホ調ベテ貰ハウ
(南部)
暫ク之ハ槪イテ下サイ民事訴訟法ガ出來ルカモ知レン
(箕作)
相續法ガ出來レバ相續法ノ規定ヲ適用シ無ケレバ仕方ガナイ
(南部)
ソレダカラ置カナケレバナラン
(村田)
無クテモ宜シイ
(淸岡)
之ハ置イテ置クガ宜カロウ民事訴訟法ヲ作ヘルガ良カロウ
(南部)
民事訴訟法ト云フノハ幾等モアリマスカラ民事訴訟法ガ無イカラト云ツテ刪ル事ハ出來マセン
(栗塚)
佛蘭西ニハ無爭訟事件ノ中ニ相續分割ニ關スル手續ガ訴訟中ニアリマスカラデス
(箕作)
日本ノ訴訟法ガ佛蘭西見タ樣ニスレバ宜シイガ左モナイト六ケ敷イ
(淸岡)
之レハ報吿委員デヤツテ貰ウ方ガ宜シイ
(村田)
ソレデハ報吿委員デヤルトシテ御預ケニシマシヨウ
(西)
宜シウ御座イマシヨウ
(大尾崎)
御預ケトシテ往キマシヨウ
(松岡)
民事訴訟法ハ兎モ角モ入ラン筈デス
(渡)
御預ケトシテ往キマシヨウ
本條ハ報吿委員ニ於テ再調スル事ニ決シ未定
第八百四條朗讀ス
第八百四條 會社資本中ノ物ニシテ分割ニ因リ各社員ニ歸シタルモノニ關スル其社員ノ權利ハ會社解散ノ日ニ遡リテ効力ヲ有シ不分中ニ於テ他ノ社員ヨリ其物ニ付キ第三者ニ授與シタル權利ハ之ヲ解除ス
(槇村)
宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第八百五條朗讀ス
第八百五條 共同分割者ハ分割ニ因リテ取得シタル權利ノ上ニ受クル事有ル可キ妨碍及ヒ追奪ニ付キ其各自ノ部分ニ應ジテ相互ニ擔保ヲ爲ス
共同分割者ノ一人ガ無資力ナルトキハ其一人ノ負擔シタル賠償ノ部分ハ被擔保人ヲ併セテ他ノ各共同分割者ノ間ニ之ヲ分付ス
(栗塚)
此處デ共同分割ト云フ「共同」ノ字ハ刪リ度イ始終分割者ト云ヘバ共同社員ト云ツタ樣ナ譯ケデアリマス
(村田)
ソウダロウ
(渡)
宜シイ
(槇村)
宜シイ
(栗塚)
「取得シタル權利ノ上」ト云フヨリモ分割ニ因リテ諾約セラレタリトヤリタイ
(元尾崎)
取得ガ宜シイ
(栗塚)
取得シタリト云フト取ツテ仕舞ツタノデアリマス
(元尾崎)
權利ダカラ宜イダロウ
(栗塚)
議場デソウ改マツタノデ元トノ原本デハ諾約セラレタルトアツタノデアリマス
(松岡)
報吿委員デハ取得シタルト言ツテ居タノデアリマス
(栗塚)
ソレハ御採用下スツタガ何ウシテモ擔保ノ處デ合ハンカラデス
(村田)
分リ惡イゼ
(松岡)
末項ノ分附トアルノハ支那デハ言ヒ附ケルト云フノデアリマス
(栗塚)
之ヲ分ツトヤリマシヨウ
(大尾崎)
宜カロウ
(元尾崎)
先ヘヤリマシヨウ
本條中「共同」ノ二字ヲ刪リ第一項「取得シタル」ヲ「諾約セラレタル」ト改メ末項「分附ス」ヲ「分ツ」ト改メ其他原案ニ決ス
第八百六條朗讀ス
第八百六條 分割ハ成年者ノ間ニ之ヲ爲シ且動產物ヲ目的トシタルトキト雖モ其分割者ノ受ク可キ部分ノ四分一ヲ超ユル缺損アルトキハ其者ノ爲メニ分割ヲ銷除スル事ヲ得
缺損ニ因ル賣買ノ銷除ニ關シテ第七百三十四條以下ニ規定シタル條件ハ右ノ場合ニ之ヲ適用ス
(栗塚)
本條ハ刪除デアリマス併シナガラ此間申シタ理窟トハ違ヒマス
(松岡)
相續ノ時分ヲ見合シテ配當ノ處ヘ持テ來タノダ
(栗塚)
缺損ト云フノハ民法カラ取リ除ケラレタカラ置ク理窟ハアリマセン
(箕作)
相續ノ方ハ直ス積リカ
(栗塚)
左樣
(箕作)
刪ルガ宜イダロウ
(松岡)
尤モデス
(大尾崎)
之ハ宜シイ
本條ハ刪除ニ決ス
第八百七條朗讀ス
第十六章 懸空契約
總則
第八百七條 懸空契約トハ當事者ノ雙方若クハ一方ノ損益ニ付キ其効力ノ全部又ハ一方ヲ將來ノ不確實ナル事件ニ繋クルモノヲ謂フ
(大尾崎)
「懸空」ハ「射倖」トスルガ宜シイ
(元尾崎)
射倖ノ方ガ宜シイ
(村田)
懸空ヨリ射倖ノ方ガ宜シイ
(松岡)
射倖ハオカシイ
(栗塚)
「スベキレーシヨン」ダト射倖ガ宜シイノデ御座イマスネ
(元尾崎)
投機契約ダ
(南部)
投機トハ違ウ
(淸岡)
矢張リ射倖ノ方ガ宜シイ
(槇村)
射倖ガ宜シイ
(松岡)
懸空ガ宜シイ
(南部)
懸空ガ宜シイ
(大尾崎)
射倖ハ世間デモ言ツテ居リマス
(箕作)
射倖ガ宜シイ
(村田)
射倖ガ宜シイ
(西)
私ハ懸空デス
(箕作)
私ハ何ウデモ宜シイガ既ニ定マツタモノヲ亦ヤツテハ底止スル處ヲ知ラント思ヒマス
(南部)
時々其ウ替ル譯ケハナイ懸空ト直シ又射倖ト直シ其カラ又縣心空ト云フト際限ガアリマセン
(栗塚)
箕作サンハ此間御出ガナカツタカラ申シマスガ三島君ハ射倖ト云フノハ穩デナイト云フノデ寺島ト兩人デ何ントカ云フ良イ字ガト云フノデ懸空ト云フ字ガアルト云フノデ其レカラ射倖ト云フ熟字ガアルカト調ベタノデ處ガアリマセン其カラ先ヅ私ガ何ニガ良イカト云フノデ三島ガ愈々之レト云フノデ提出シタ處ガ殆ンド滿場之デ良イト云フ樣ニ見エマシタガ今日ノ結果ハソウデアリマセン
(南部)
滿場デハナイ多數ハ多數デアリマシタ
(栗塚)
先ヅ斯ウナツタノデアリマス
(渡)
空ニ懸ルト云フヨリモ此方ガ事實ニ當ルト云ツタノデアリマスガ何ウモ空ニ係ルハオカシイ
(南部)
議場ノ命令ヲ奉ズルニ何ウシテ良イカ分ラヌ既ニ懸空トナツタ以上ニハ仕方ガナイ
(渡)
一旦定マツタニモセヨ多數ガ更ニ望ムト云ヘバ改メテモ仕方ガナイダロウ
(松岡)
仕方ハナイガ射倖契約ナリト云テモ分ラン
(淸岡)
寧ロ虛空シデ良イ
(南部)
懸空ト云フノニ定マツテ居リマス
(栗塚)
懸空ト云フノ良イ惡イヲ云フノデハナイロハ懸空ト云フノニ君ツタカラ之ヲ又改メルト何ウシテ良イカ分リマセン
(淸岡)
ソンナ事ヲ云フト再調査ノ方デ定ツタモノヲ替ヘテ來ルデハナイカ
(栗塚)
再調査ト云フノハ前ノト比較シテデス
(渡)
事實ト文字上カラ再調査ニ一旦ソウ定ツテモアリマシヨウガ多數ガ良イト望メバ改メテモ宜シイ
(南部)
前ニ決シタモノヲ再ビ替ヘル時分ニハ易々トヤツテハ往ケマセン
(元尾崎)
ソレナレバ鄭重ニ替ヘマシヨウ
(北畠)
ソレデハ多數ニ依リマシヨウ
(淸岡)
射倖デ宜シイ
(北畠)
射倖ニシテ先キヘ往キマシヨウ
(槇村)
射倖デ往キマシヨウ
本條「懸空」ヲ「射倖」ト改メ其他原案ニ決ス
第八百八條朗讀ス
第八百八條 懸空契約ニハ其性質ニ因ルモノ有リ當事者ノ意思ニ因ルモノ有リ
博奕、賭事、終身年金權其他終身權利ノ設定、陸上、海上ノ保險及ヒ冒險貸借ハ性質ニ因ル懸空ノモノタリ
此他成立又ハ効力ヲ停止又ハ解除ノ未必條件ニ繋クル契約ハ當事者ノ意思ニ因ル懸空ノモノナリ
(箕作)
「繋クル」ト云フノハ此處ガ始メテデスカ
(村田)
未必條件ニ繋グルト云フノガアリマシタ
(箕作)
効力ヲ繋ラシムルトデモ言ハント何ウデシヨウカ
(栗塚)
契約ハ雙方ノ一方云々將來ノ不確實ニ繋ルモノヲ謂フトシテ「ヲ」ヲ「カ」ニ改メテ宜シイ
(元尾崎)
原案デ宜シイ
本條ハ「懸空」ヲ「射倖」ニ改メ其他原案ニ決ス
第八百九條朗讀ス
第八百九條 陸上、海上ノ保險及ヒ冒險貸借ハ商法ヲ以テ之ヲ規定ス
(渡)
宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第八百十條朗讀ス
第一節 博奕及ヒ賭事
第八百十條 博奕ハ博奕者ノ勇氣、力量、巧技ヲ發逹ス可キ性質ナル體躯運動ヲ目的トスルニ非サレハ其義務履行ノ爲メ訴權ヲ許サス
賭事ニ基ク訴權ハ右ノ如キ體躯運動ヲ爲ス人ノ爲メ又ハ賭者ノ直接ニ爲ス農工商ノ業事ノ成功ノ爲メニスルニ非サレハ亦之ヲ許サス
右ノ博奕又ハ賭事ニ於テ約束シタル金額又ハ有價物カ情況ニ照シテ過度ナリト見ユルトキハ裁判所ハ之ヲ減少スル事ヲ得スシテ全ク其請求ヲ棄却スル事ヲ要ス
(栗塚)
第二項「約束」ハ「諾約」トシテ「博奕ハ」ガ宜イタロウ
(淸岡)
博奕ト云フ字ハ何ニトカ仕樣ハナイカ之ハ大變惡イ字デアリマスガ斯ウ云フ車ハ博奕ト云フカ知ランガ日本デ云フ博奕トハ違イマシヨウ賭事ト言ヒタイ
(栗塚)
博奕賭事トヤツタガ賭事ト云フノハ他人ノシテ居ルノニ錢ヲ賭ケルノデ博奕ト云フノハ自カラヤルノデアリマス
(淸岡)
斯ウアルト博奕ガ許サレタト爲ツテ惡イト思ヒマス
(槇村)
皆ナ賭事ニシテ仕舞ツテハ何ウカ
(南部)
賭ノ字モ良クハナイ
(淸岡)
賭事ナラ怪マナイガ博奕トカ賭博ト云フト大變惡イ
(北畠)
「トランプ」ナゾハ今ハ何處デモ行ハレマス
(栗塚)
字ガ惡ルイト云フハ兎モ角モ圍碁ガ好キデ碁ヲ打ツテ居ルノハ皆ナ博奕デアリマス
(淸岡)
理窟ハ宜シイ間然スル事ハ御座イマセンケレドモ博奕ト云フ語ハ良クアリマセン
(粟塚)
良クナクツテモ御ヤリ爲サルカラ仕方ガナイ
(淸岡)
碁ヲ打ツテモ博奕ダガネ博奕ト云ハン賭ケ碁トハ云フ
(松岡)
賭事デ良シイ
(南部)
賭事デモ良クハナイ
(松岡)
博奕ト云フハ言葉ノ上ニ如何ニモ聞エガ惡イ
(栗塚)
併シ二ツノ區別ハ何ウカ他人ノ馬駈ケニドツチガ勝ツカト物ヲ賭ルノト自分デヤルノトデアリマス
(南部)
雙六碁將棋モ博奕デアリマス
(元尾崎)
博奕ト云フハ何ウ云フモノカ場ノ錢ヲ取ルカラト云フノダソウデス
(南部)
ソレハ違ヒマス
(元尾崎)
芝居ハ芝ノ上ニ居ツタカラ芝居ト云フタ樣ナモノデス
(村田)
博奕ハ惡イ賭事ハ善イト云フ事ハナイ何方モ惡イハ惡イ
(栗塚)
角力取ツテ勝チ負ケヲ爭フハ何ント云フカ
(大尾崎)
賭ケデス
(栗塚)
他人ノ馬駈ケニ何方ガ先キト云フノハ如何
(大尾崎)
他人ガヤツテモ自分ガヤツテモ皆ナ賭デス
(南部)
富ハドウカ
(淸岡)
富ハ別デス
(南部)
ソレダカラ博奕ト云フノハ賭ケトハ違ヒマス
(北畠)
官田コソ射倖デス
(淸岡)
アレハ富ト云フ名ガ付イテ居ルノデス
(栗塚)
博奕ト云フ名ガ付イテ居ルノデハ御座イマセン錢ヲ賭ケ花ヲ引クモ博奕デ御座イマス
(淸岡)
博奕ト云フカバ知レンガ甚ダ良シクナイ
(栗塚)
博奕ハ勇氣、力量ノ爲メデス
(淸岡)
併シナガラ勇氣力量ハ博奕デナイ
(栗塚)
大尾崎サント將棋ヲ指スノハ何ント云フカ
(淸岡)
勇氣、力量ハ博奕トハ申サレン併シ金ヲ取ツタラ博奕デス
(大尾崎)
碁ヲ打テ鰻飯ヲ賭ケルノハ賭ケデス
(南部)
ソレガ博奕デアリマス
(栗塚)
矢張リ博奕ニハ相違ナイ
(大尾崎)
博奕ト云フノハ骨子骨脾ヲ以テヤルノデス
(南部)
否十錢ヲ賭ケルカラ博奕デアリマス
(松岡)
詰リ博奕ト賭事ト二ツヲ揚ゲナケレバ都合ガ惡イカ賭事一ツデ置クカ兩方採ルカ否ヤデス
(南部)
賭ケトハ言ハン
(大尾崎)
賭ケデス
(南部)
ソレデハ博奕ト云ヒ樣ハアリマセン
(大尾崎)
骨子デヤルノハ博奕デス
(南部)
博奕ハ其レデモ勇氣、力量發逹ヲスルナラ良イト云フノデアリマスカラ其處ヲ御考ヘ下サイ
(淸岡)
博奕ハ許サン勇氣、力量發逹スベキ爲メニスル賭ケ事ハ此限リニ在ラズデ博奕ハ訴權ヲ許サン體躯力量巧技發逹スベキヲ目的トスル賭ケ事ハ此限ニ在ラズト云ツテ宜シイ
(南部)
射倖契約ノ中博奕ガ這入ツテ居リマス
(栗塚)
博奕ト書イテナイカラ良イデシヨウ
(大尾崎)
勇氣力量ノ爲メハ博奕トハ云ヘン
(松岡)
佛蘭西ニハ言葉ガ違テ居ツテ我ガスルノハ何ント云フ他人ノスルノハ何ント云フト言葉ガアツテ云フ方ニ本トヲ立ツテ宜シイガ日本デハ賭事モ賭博モ博奕モ同ジデ區別ガ出來マセン他人ノスル事ハ博奕ト云ヒ我ガスルノハ何ント云フ區別ガナイカラ自カラ佛蘭西デハソウ云フ區別ガアツテ出來タノダロウガ若シナケレバ一ツノ言葉デ通ラルルト思フ私ハ何處マデモ賭事デ通ラルルト思ヒマス
(栗塚)
佛蘭西デハ自分ノ樂シミニヤルノハ好キト云フ字ガアリマス
(南部)
博奕ノ奕ノ字ヲ詮議シテ見マシヨウ博奕ハ許スガ訴權ヲ生ゼント云フノガ本トデス
(淸岡)
併シナガラ勇氣力量ノ爲メダカラ許スノデス
(南部)
刑法デモ賭博ハ之レ丈ケノ刑ヲ生ズ併シナガラ飮食ヲ賭ケルハ論ズル限リニ在ラズト云フカラ同ジデアリマス
(箕作)
自賭他賭デ區別スルノダネ
(栗塚)
左樣デス
(松岡)
ソンナラ文字ハ報吿委員ニ任セマシヨウ
(南部)
宜シイ
(元尾崎)
博奕デ良イデハナイカ
(村田)
宜シイ
(西)
原案デ宜シイ
(大尾崎)
博奕ハ訴權ヲ許サズトシテ體躯運動ヲ目的トスル賭ケ事ハ此限ニ在ラズトシテハ何ウカ
(栗塚)
二ツアルノヲ二ツニシテ見テ御出ナサルノデアリマス原文ニハ博奕ト云フ字ハ慰ミト云フノデス
(北畠)
此方ハ戲レト云フ字ヲ使ツテ遊戲博戲デスネ
(松岡)
博戲位ハ宜シイ
(渡)
博奕ト云フノト戲レト云フノトハ大層感觸ガ違ヒマス
(栗塚)
博戲ハ何ウデシヨウカ
(箕作)
支那人ノ譯シタ譯ニハ賭博ト云ツテ「アバント」ト云フ字ガアリマス
(北畠)
博戲ハ古クカラアル事デス
(松岡)
博戲ガ宜シイ
(渡)
博奕トサヘナケレバ宜シイ
(淸岡)
博奕ハ許サン但勇氣力量ヲ養フノ博戲ハ此限ニ在ラズダ
(南部)
ソレハ往カン
(松岡)
博戲ハ許ス但何々ハ此限ニ在ラズ博戲デ良シイ博戲ハ訴權ヲ許サヌト言ツテ宜シイ
(栗塚)
博戲賭事ガ宜イデシヨウ
(渡)
宜シイ
(村田)
宜シイ
(元尾崎)
宜シイ
(淸岡)
此文デハ往カン、文章ヲ轉倒シヨウデハナイカ
(箕作)
同ジデス
(栗塚)
文章ハ此儘デ願ヒマス
(北畠)
之ヨリ仕樣ハナイ
本條ハ「博奕」ヲ「博戲」ト改メ其他原案ニ決ス
第八百十一條朗讀ス
第八百十一條 前條ノ場合ノ外博奕及ヒ賭事ハ何等ノ義務ヲモ生セス且其債務ノ認定、更改又ハ保證ハ總テ無效ナリ
然レトモ右博奕又ハ賭事ニ因ル有能力者ノ任意ノ辨濟ハ之ヲ取戾ス事ヲ許サス但勝者ニ於テ詭譎又ハ欺瞞アリタルトキハ此限ニ在ラス
(村田)
「詭譎又ハ欺瞞」ハ「詐欺欺瞞」デ良シイ
(大尾崎)
但以下ハ刪テハドウカ
(南部)
之ハ權ハン
(大尾崎)
既ニ博奕ヲ云タカラネ
(南部)
博奕ヲ打ツテ取タノデアリマスカラネ大變違ウ
(栗塚)
法律ガ分ル人ナラ置カナケレバナラン
(北畠)
之ハ置カン往カンダロウ
(元尾崎)
置キマシヨウ
(北畠)
此所デ「詐欺」ノ「欺」ハ「僞」ノ字ガ良シイ
(栗塚)
御尤モデス
(松岡)
良シイ
本條ハ「博奕」ヲ「博戲」ト改メ「詭譎」ヲ「詐僞」ト改メ其他原案ニ決ス
第八百十二條朗讀ス
第八百十二條 官許ヲ得サル富講ハ訴權ナキ博奕及ヒ賭事ニ關スル規定ニ從フ
商品又ハ公ノ證券ノ投機ノ定期賣買ニ付テモ初ヨリ當事者ガ約束シタル金額又ハ有價物ノ引渡及ヒ辨濟ヲ實行スルニ意ナク單ニ相場昻低ノ差額ヲ計算スルノミヲ目的トシタル事ヲ被吿ガ證明スルトキモ亦同シ
(栗塚)
規定ニ從ヒ抔ト謂ハズ「賭事ト同視ス」トヤリタイ
(松岡)
良シイ
本條ハ第一項「ニ關スル規定ニ從フ」ヲ刪リ「賭事ト同視ス」ト改メ「約束」ハ「諾約」ト改メ其他原案ニ決ス
第八百十三條朗讀ス
第八百十三條 前二條ノ場合ニ於テ被吿ヨリ無効ノ排斥理由ヲ申立テサルトキハ判事ハ職權ヲ以テ其無効ノ排斥理由ヲ補足スル事ヲ得但契約又ハ請求ニ於テ博奕、富講又ハ相場差額ノ賭事カ債務ノ原因タル事ヲ明言セシトキニ限ル
(栗塚)
「無効ノ排斥理由」ハ「銷除ノ抗辯」トナリマス
本條ハ「無効ノ排斥理由」ヲ「銷除ノ抗辯」ト改メ「博奕」ハ「博戲」ト改メ其他原案ニ決ス
第八百十四條朗讀ス
第二節 終身年金權
第一款 終身年金權ノ設定
第八百十四條 終身年金權ハ動產若クハ不動產ナル元本ノ讓渡ノ報酬トシ又ハ旣往若クハ將來ノ勤勞ノ報酬トシテ有償名義ニテ之ヲ設定スル事ヲ得
又終身年金權ハ有償又ハ無償ノ名義ニテ讓渡シタル元本ノ上ニ留存シテ之ヲ設定スル事ヲ得
又生贈又ハ遺贈ヲ以テ無償名義ニテ之ヲ設定スル事ヲ得
前項ノ場合ニ於テ終身年金權設定ノ方式授受ノ能力及ヒ處分シ得ベキ財產ノ部分ニ付テハ無償名義ニ關スル特別規則ニ從フ
(栗塚)
本條末項ハ刪除ノ建議致シマス之ヲ御採用願ヒマスソレカラ第三項「又生贈又ハ遺贈ヲ以テ」ハ「贈與又ハ遺贈ヲ以テ」ト改メマス
(村田)
「留存」ハ「留保」ダロウ
(南部)
「留保」デ宜シイ
(槇村)
末項ハ何ゼデスカ
(栗塚)
送リデアリマスカラ特別規則ニ從フ財產相續ノ事デス
(元尾崎)
二項ハ金デモ宜シイダロウ公債證書ニ限リハセンダロウ
(南部)
二項ハ無償名義モアリマシヨウネ前項ハ無償名義ハナイソコガ違ウ
(元尾崎)
有償モアリマス
(南部)
無償ガコウナツテ居ル
(元尾崎)
前項ニ無償ガアレバ宜シイ
(南部)
アレハ良イガアレデハナイ
(元尾崎)
金ヲ千圓遣ル其代リ年々百圓ヅツヨコセト云フノデス
(南部)
公債證書ヲ遣ルカラ其代リ其利息ヲヨコセト云フノデス
(元尾崎)
公債證書デナクトモ金デモ良シイダロウ
(南部)
金カラ來ルベキ利息ヲ云フノデス乃チ金カラ出ル利息ヲ此方ヘヨコセト云フノデス
(元尾崎)
一項二項ハ其ウ云フ意味デスカ
(栗塚)
左樣デス
(元尾崎)
一項ト二項ハ違ヒノナイヤウニ思フガ
(村田)
留保シテ居ルノデアリマスカラ違ウ
(南部)
品ハ留保シテ抵當權ハ留保シテソレカラ抵當權ヲ取ルト同ジニナルノデス
(元尾崎)
遣ラズニ取テ置クノカ
(村田)
左樣ソレダカラ留保デス
(元尾崎)
ソレデハ年金權デハナイ
(南部)
元トハ遣ルノデス
(槇村)
元トハ遣テ物ハ預テ居ルノデス
(村田)
ソレダカラ親族會カ何カデナケレバ滅多ニナイ他人ハ出ヨウハナイ貴君ノ娘ニ公債證書ヲ讓テ遣ルケレドモ使フト往カンカラ貴君ガ預テ居ルノデアリマス
(箕作)
「留存」デ良ロシイ
(栗塚)
「留存」デ良ロシイ
(南部)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ第三項「又生贈又ハ」ヲ「贈與又ハ」ト改メ末項ハ刪除シ其他原案ニ決ス
第八百十五條朗讀ス
第八百十五條 終身年金權ハ對價物ノ供與者ニ非サル人ノ利益ノ爲メ之ヲ設定スル事ヲ得
此場合ニ於テハ要約者ト諾約者トノ間ニ在リテハ有償名義ノ契約ノ規則ニ從ヒ要約者ト得益者トノ間ニ在リテハ生贈ノ規則ニ從フト雖モ生贈ノ方式ニ從フ事ヲ要セス
(元尾崎)
之ハ良シイ
本條ハ原案ニ決ス
第八百十六條朗讀ス
第八百十六條 終身年金權ハ債權者若クハ債務者ノ終身ヲ期シ又ハ第三者ノ終身ヲ期シテ之ヲ設定スル事ヲ得
此末ノ場合ニ於テ契約ガ有償ナルトキハ其成立ニ付キ第三者ノ承諾ヲ必要トス然レトモ此承諾前ニ辨濟シタル年金ハ之ヲ取戾ス事ヲ得ス
(槇村)
良シイ
(元尾崎)
良シイ
(村田)
質問ト云フ印ガシテアルカドウカ
(栗塚)
教師ニ聞テ出セト云ツタノデ聞テ出シタノデアリマス
(槇村)
此所ハ「設定」カ
(栗塚)
左樣デス
(淸岡)
矢張「設定」ガ良シイト思フネ
(槇村)
要約諾約ハ合セテ設定ニナツタノデアロウ
(南部)
原書ニ依テダロウ、要約諾約ハ原書ニ依ラント云フ論ガ出ルト六ケ敷イ
本條ハ「設定」ハ「要約」ト改メ「生贈」ハ「贈與」ト改メ其他原案ニ決ス
第八百十七條朗讀ス
第八百十七條 終身年金權ハ同時又ハ順次ニ數人ノ債權者ノ終身ヲ期シテ之ヲ設定スル事ヲ得
此場合ニ於テハ用益權ニ關スル第百三條ノ規定ヲ適用ス
(村田)
良シイ
本條ハ原案ニ決ス
第八百十八條朗讀ス
第八百十八條 有償名義ノ終身年金權ノ契約ハ其設定ノ爲メ終身ヲ期セラレタル人ガ契約ノ當時ニ於テ旣ニ死亡シタルトキハ當事者雙方其死亡ヲ知ラスト雖モ無効ナリ
右ノ人ガ契約ノ當時ニ於テ旣ニ罹レル疾病ノ爲メ六十日內ニ死亡シタルトキハ其契約ハ當然之ヲ解除ス
(村田)
之ハ「合意ノ當時」ダロウ
(栗塚)
左樣デス
(箕作)
直スカ
(北畠)
「契約」ト云フ方ガ分リ易イ
(松岡)
「契約」「合意」ヲ無暗ニヤルノハ困ル
(元尾崎)
良シイ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第八百十九條朗讀ス
第八百十九條 無償名義ノ終身年金權ハ設定者ニ於テ之ヲ不可讓且不可押ノモノト定ムル事ヲ得
右約款ハ設定證書ニ記入シタルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スル事ヲ得ス
養料トシテ無償ニテ設定シタル終身年金權ハ當然不可讓且不可押ノモノナリ
本條ノ規定ハ生贈ノ財產ニ付キ生贈者ノ利益ノ爲メ留存シタル終身年金權及ヒ支拂時期ノ至リタル年金ニ之ヲ適用セス
(栗塚)
末項「本條ノ規定ハ贈與者利益ノ爲メ贈與財產ノ上ニ留存シタル終身年金權及ヒ支拂時期ノ至リタル年金ニ適用セス」トシテ「不可讓」ハ「讓渡ス事ヲ得ス」トシ「不可押」ハ「差押フル事ヲ得サル」ト改マリマス
(槇村)
良シイ
(南部)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ「不可讓」ヲ「讓渡ス事ヲ得ス」トシ「不可押」ヲ「差押フル事ヲ得サル」ト改メ末項「本條ノ規定ハ贈與者ノ利益ノ爲メ贈與財產ノ上ニ留存シタル終身年金權及ヒ支拂時期ノ至リタル年金ニ之ヲ適用セス」ト改メ其他原案ニ決ス
第八百二十條朗讀ス
第八百二十條 終身年金權ノ不可讓及ヒ不可押ノ其一事ノミヲ要約シタルトキト雖モ二事共ニ存立ス
(元尾崎)
宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第八百二十一條朗讀ス
第二款 終身年金權ノ契約ノ効力
第八百二十一條 債務者ハ年金權ノ設定ノ爲メ終身ヲ期セラレタル人ノ生存中ハ其年金權ノ年金ヲ支拂フ事ヲ要シ且贖回ヲ爲ス事ヲ得ス但其贖回ニ付キ特別ノ契約アルトキハ此限ニ在ラス
(槇村)
良シイ
本條ハ原案ニ決ス
第八百二十二條朗讀ス
第八百二十二條 年金ハ每月又ハ此ヨリ長キ時期ニ於テ其支拂ヲ爲ス可キトキト雖モ債權者日割ヲ以テ之ヲ取消ス
然レトモ年金ヲ前拂ス可キトキハ債務者ハ旣ニ支拂時期ノ始マリタル全一期分ヲ負擔ス
本條ハ原案ニ決ス
第八百二十三條朗讀ス
第八百二十三條 債權者ハ解除ノ權利ヲ留保セサルトキハ年金支拂ノ欠缺ノ爲メ契約ノ解除ヲ請求スル事ヲ得ス只其債務者ノ財產中ニ於テ年金ヲ受クルニ足ル可キ部分ヲ差押ヘ之ヲ賣却セシメ其賣却代金ヨリ生スル利息ヲ以テ年金ノ支拂ニ充ツル事ヲ得但他ノ債權者ノ競取ヲ拒ム事ヲ得ス
終身年金權ヲ無償名義ニテ設定シ又ハ生贈若クハ遺贈ノ元本ノ上ニ留存シタルトキモ亦右ト同一ニ處理ス
(栗塚)
「競取」ハ先取特權ノトキニ「コンクール」ト云フ字ヲ「競合」トヤツタノデ、競ヒ合スルトヤツタガ抵當ノ所ハ「競合」デ通テ居リマス
(南部)
「參同」トシテハ何ウカ
(元尾崎)
「競取」ガ良イデハナイカ
(北畠)
「參同」ガ宜シイ
(槇村)
「參同」ガ宜シイ
(淸岡)
「競取」ノ方ガ使ヒ宜シイ
(渡)
「參同」ガ宜シイ
(南部)
「參同」ガ宜シイ
(村田)
「參同」ヲ拒ムト云フハオカシイ
(槇村)
「參同」ガ宜シイ
(淸岡)
「參取」トシテハ何ウカ
(南部)
ソレハ往カン
(元尾崎)
「競取」ガ宜シイデハナイカ
(箕作)
「參同」ガ宜シイ
(栗塚)
併シ此處ハ先取特權ノ處デ今一應議シテ下サイ
(村田)
「競取」デ置キマシヨウ
(栗塚)
「競參」ガ宜シイ
(南部)
「競參」ガ宜シイ
本條ハ「競取」ハ未定「生贈」ヲ「贈與」ト改メ其他原案ニ決ス
第八百二十四條朗讀ス
第八百二十四條 終身年金權ノ債務者ハ年金權ノ設定ノ爲メ終身ヲ期セラレタル人カ支拂ノ時期ニ生存セシ事ヲ債權者ヨリ證明セサルトキハ其年金ノ支拂ヲ拒ム事ヲ得
生存ノ保證書ハ其人ノ現住地ノ受持公證人又ハ身分取扱人之ヲ交付ス
(栗塚)
「生存ノ保證書ヲ以テ」ト起案者ガ入レマシタ保證書ト云フノハ何ウカ誰レ某レハ生キテ居リマシタト確メルノデアリマス
(村田)
矢張リ保證書デアリマシヨウ
(栗塚)
受合フノデハナイ確メルノデアルカラ「證記」トシテハ如何其レガ生存ノ證認書トシテハ何ウカ
(北畠)
起證文ノ起ト云フ字ガ宜シイ
(栗塚)
併シ戶長役場デ奧印ヲスルノデ右ノ通リニ相違ナイト彼ノ事ヲ云フノデアリマス
(箕作)
認證ガ宜シイ
(栗塚)
認證書ガ宜シイ
(村田)
認證ガ宜シイ
(栗塚)
ソレデハ末項ハ此認證書ト致シ生存ノ認證書ト願ヒマス
本條ハ第一項「債權者ヨリ」ノ下ヘ「生贈ノ保證書ヲ以テ」ト起案者ヨリ追加シ「保證書」ヲ「認證」ト改メ末項「生存ノ保證書」ヲ「此認證書」ト改メ其他原案ニ決ス