旧民法・法例(明治23年)

法律取調委員会 民法草案再調査案議事筆記 第13回

参考原資料

備考

  • 未校正のテキストデータです.
民法財產編再調査案第十三回議事筆記
自第五百五十六條至第五百八十四條及ヒ第四百七十一條ノ留保
(元尾崎)
始メマシヨウ
第五百五十六條朗讀ス
第五節 混同
第五百五十六條 一箇ノ義務ノ債權者タリ及ヒ債務者タルノ分限カ相續其他ノ名義ニテ一人ニ併合シタルトキハ義務ハ混同ニ因リテ消滅ス
右ノ混同カ從來ノ適法ノ原因ニ由リ解除、銷除又ハ廢罷ヲ受ケタルトキハ義務ハ之ヲ消滅セサリシモノト看做ス
(渡)
「適法」ト云フコトハ宜シイカ
(南部)
適法ノ「原因」ト云フコトハ惡イ
(大尾崎)
元ハ同位ノモノトアツタ
(淸岡)
「義務ハ之ヲ消滅」ト云フ之レナゾハイランデハナイカ
(栗塚)
御最モデス
(南部)
文例デハナイカ、文例デナケレバ刪テモ宜シイ
(渡)
ナイ方ガ宜シイ
(南部)
五十三條ヲ御覽ナサイ彼レモ文例デアルガ此處モ削ラナケレバナリマセン
(渡)
彼レハ相殺ガ主格トナツテ居リマス
(村田)
「ハ」ト云フト之ヲト云ハナケレバナリマセン
(三島)
何ニヲ何ニトスト云ハント何ハ何ニトスト云ヘンカラ文例デアリマスカラ「ヲ」「ス」ト云ハナケレバナリマセン
(松岡)
看做スノハ法律ガ看做スノデアリマス
(南部)
五十三條ノ「之ヲ」ヲ削ルナラバ之モ削テ宜シイガアレヲ置クナラ置クガ宜イアレモ削ツテ之モ削ツテハ如何
(渡)
其レハ宜シイ
(淸岡)
上ノ項ニモ義務ハ混同ニ因リテ消滅ストアリマス
(南部)
之ハ全ク別論デアリマス
(村田)
前ニ幾等モアリマス
(三島)
文例デアリマス
(渡)
義務ハ義務ヲ消滅スニナルカラオカシイコトハオカシイ
(淸岡)
先ヅ何ウデモ宜カロウ文例トアレバ止ムヲ得マセン
(南部)
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ原按ニ決ス
第五百五十七條朗讀ス
第五百五十七條 債權者カ連帶債務者ノ一人ニ相續シ又ハ連帶債務者ノ一人カ債權者ニ相續シタルトキハ連帶債務ハ其一人ノ部分ニ付テノミ消滅ス
混同カ連帶債權者ノ一人ト債務者トノ間ニ行ハレタルトキモ亦其混同ハ債務ノ一分ニ付テノミ成ル
(渡)
後トノ債務者ハ獨リノガ元ヨリ一人ノ債務者デ債權者デ連帶カ
(南部)
左樣デス債務者ガ先ヅ一人デ二項ハ連帶債權者ノ一人ガ債務者ノ相續シタト云フニナルノデス
(松岡)
一ト口ニ約メルト連帶債務者連帶債權者ノ間ニ混同ガアツテモ一人アツタラ一人分ト云フノデス
(村田)
一項ハ債權者ガ一人二項ハ債務者ガ一人ト云フ丈ケノ違イデス
(委員長)
二項ハ宜イノデスガ債務者ト云フノハ單稱デアルガ單稱ナラ一人デモ宜イガ債務者ガミンナカモ知レン
(栗塚)
混同ガ債權者ノ一人ト債務者トノ間ニ行ナハレデスカ又其混同ハ債務ノ一部分ニトアリマス
(委員長)
債務ノ方ガ一人デ債權者ノ數ノ時カ
(南部)
左樣デス
(委員長)
其混同ハ債務ノ一分ニ付テノミ行ハルルトアルノダカラ多人數ノ債權者ガアツテソウシテ債務者ガ一人ト云フ時債權者ノ一人丈ケ往ケルガ若シ債務者ガ澤山アツタ時ハ其混同ハ如何
(南部)
ソレハ言ツテ御座イマセン
(委員長)
債務者ハ單稱ヤラ復稱ヤラ分カラン
(南部)
前後ニ依テ分ルノデ連帶債務ガ一人ノ部分ニ付テ、トアリマスカラ債務ガ澤山アツテ債權者ガ一人デ御座イマスカラソウ見マセント分リマセン
(委員長)
前ハ債權者ガ一人ト見タラ宜シイカ
(松岡)
一人ノ相續ノ混同ハ大勢ノ債務者ノ内ノ一人ガ債權者ノ一人ノ部分ニ付テト云フノデアリマス
(南部)
詰リ一項二項ハ働キ方受ケ方ノ違ヒデアリマス
(渡)
日本デハ單復ハ分ケラレナイ
(松岡)
然シナガラ是等ハ單復ヲ分ケナイデモ宜シイ
(委員長)
債務者ノ多數ニシテモ一人ニシテモ連帶債務者ダカラ一人ヤツタラ總テ其債務ガ皆ナ濟ンデシマウト云フトキハ一分トハ云ヘン總體皆ナ果シテ仕舞ウコトガアルカモ知レン
(南部)
ソレハ前ノ條ト一所ニナツテ仕舞ヒマス
(委員長)
一人ト一人トノ如ク連帶債務者ダカラ總體ト見ルネ
(栗塚)
總體債務者ト書イテアリマセン
(松岡)
アツタナラバデアリマス
(委員長)
連帶モ前ノ條ヲ適用スルノカ
(南部)
左樣デス
(委員長)
宜シイ
本條ハ原按ニ決ス
第五百五十八條朗讀ス
第五百五十八條 義務カ性質ニ因ル不可分ナルトキハ債權者ノ一人ト債務者ノ一人トノ間ノ混同ハ他ノ者ニ關シ其義務ヲ全存セシム然レトモ其混同ヲ得タル者ハ第四百六十六條ニ從ヒ一分ノ替償ヲ供シ又ハ受クルニ非サレハ全部ニ付キ訴追シ又ハ訴追セラルヽコトヲ得ス
(栗塚)
「一分ノ替償ヲ供シ又ハ受クルニ非サレハ」ヲ「償金ヲ供シ又ハ受取ルニ非サレハ」トナリマス
(村田)
元トハ「他ノミ」ニ關シトアルガ如何
(栗塚)
混同ハ他ノモノニ關シトシマシタガ如何デス
(元尾崎)
之デ宜シイ
(淸岡)
利益又ハ不當ニテト云フハ分リ惡イ
(北畠)
之デ宜カロウ
(淸岡)
訴追セラレハ如何
(南部)
氣モ付キマシタガ二ツ併ンデ居ルカラ宜カロウ、「全部ニ付キ訴追スルコトヲ得ス又訴追セラルルコトナシ」デアリマス
(栗塚)
ソウデス
(元尾崎)
混同シテ書クナラ之デ宜イノデス
(南部)
所ガ前ニ直ツテ居リマス
(西)
「訴追スルコトヲ得ス又訴追セラルルコトナシ」デアリマス
(元尾崎)
訴追セラルンコトナシ、ト得ズダ
(村田)
前ノ五百三十七條ヘ以テ四百六十條及ビ五百二十八條ト云フ字ヲ入レタカラスルト入レナケレバナリマセン
(栗塚)
我々ガ入レタノデハナイ起案者ガ入レタノデアリマス
(村田)
起案者ガ入レルナラ此所ヘモ入レナケレバナリマセン
(淸岡)
此所ハ宜シイ
(委員長)
ソレデハ先キヘ往キマシヨウ
本條ハ「替償」ヲ「償金」トシ「ヲ供シ又ハ受取ルニ非サレハ全部ニ付訴追スルコトヲ得ス又ハ訴追セラルルコトナシ」ト改メ其他原案ニ決ス
第五百五十九條朗讀ス
第五百五十九條 一人カ二人ノ連帶債權者又ハ二人ノ連帶債權者ノ分限ヲ併合シタルトキハ權利又ハ義務ノ消滅ナシ其身ニ就キ併合ノ成リタルモノハ債權者ノ利益ニ從ヒ或ハ自己ノ名ヲ以テ或ハ己レカ相續シタル者ノ名及ヒ權利ヲ以テ全部ニ付キ訴追シ又ハ訴追セラルヽコトヲ得
働方又ハ受方ニテ不可分ナル義務ニ付テモ亦同シ
(栗塚)
此所ハ「一人カ」ヲ削ツテ「二人ノ連帶債權者又ハ二人ノ連帶債務者ノ分限カ一人ニ併合シタルトキ」トシマシタ
(渡)
其方ガ宜シイ
(栗塚)
其レカラ「債權者ノ利益ニ從ヒ或ハ自己ノ名ヲ以テ」トアル「債權者ノ利益ニ從ヒ」ヲ削リマシテ「或ハ自己ノ名或ハ自己ノ相續シタル名ニテトシマシタ、ヲ以テト及ビ權利ヲ以テト云フノヲ削リマシタ其レカラ訴追シ又ハ訴追セラルルコトアリ」ト致シマシタ
(南部)
訴追スルコトヲ得又ハ訴追セラルルコトアリデス
(元尾崎)
舊案ノ方ガ宜シイ
(委員長)
訴追シ訴追スルコトアリ、ハドウカ
(松岡)
上ハ「得ス」「ナシ」ガ宜シイ此所ハ訴追シ又ハ訴追ヲ受クルコトヲ得デス
(栗塚)
訴追スルコトヲ得ニナスツテハ如何
(槇村)
宜カロウ
(渡)
其レデ宜シイ
(南部)
債權者ノ利益ト云フノヲ削ルノハドウ云フモノカ何方モ債權者ノ利益デス
(栗塚)
然シ云フニ及バンコトデス
(南部)
削ル理由ハアリマセン
(栗塚)
アツテモナクツテモ同ジデス
(松岡)
自己ノ名ヲ以テ併合シタル人デス
(南部)
然シ債權者ノ利益ニ從ツテ自己ノ名ヲ以テスルガアリ又己レノ名ヲ以テスルノデアリマス
(栗塚)
裏表デ見セルノハ五月蠅カラ寧ロ削タ方ガ宜シイ
(元尾崎)
「債權者ノ利益ニ從ヒ」ハ削ル方ガ宜シイ
(渡)
削ルガ宜シイ
(松岡)
削ル方ガ宜シイ
(委員長)
削ル程ノ妙モナシ又削ランデオカシイコトモナイ
(元尾崎)
置イテ置クト迷イヲ生ジマス
(委員長)
何方デモ宜シイ
(淸岡)
有ル方ガ宜カロウト思ヒマス
(松岡)
私モアル方ガ宜カロウト思ヒマス
(村田)
ナクツテモ宜カロウ
(栗塚)
ソレデハ置キマスカ
(槇村)
削ル可シ
(大尾崎)
削ルガ宜シイ
(北畠)
削ルガ宜シイ
(西)
アツテモナクテモ問違ヒハナイ私ハ削ル方ニ致シマシヨウ
本條ハ第一項左ノ如ク修正ス
第二項ハ原案ニ決スニ人ノ連帶債權者又ハ二人ノ連帶債務者ノ分限カ一人ニ併合シタルトキハ權利又ハ義務ノ消滅ナシ其身ニ付併合ノ成リタルモノハ或ハ自己ノ名義ハ自己ノ相續シタルモノノ名ニテ全部ニ付訴追スルコトヲ得又ハ訴追セラルルコトアリ
第五百六十條朗讀ス
第五百六十條 保證人カ債權者ニ相續シ又ハ債權者カ保證人ニ相續シタルトキハ保證ハ其附從ノモノト共ニ消滅ス
債務者カ保證人ニ相續シ又ハ保證人カ債務者ニ相續シタルトキハ債權者ハ主タル債務者、共同保證人若クハ保證人ノ擔保人ニ對シ及ヒ保證ニ附着シタル動產質若クハ抵當ニ付キ其權利ニ變更ヲ受クルコト無シ
(栗塚)
「附隨ノ權利ト共ニ消滅ス」ハ「附從ノモノト共ニ消滅ス」ト改メマシタ
(委員長)
宜カロウ
本條ハ「附隨ノ權利ト共ニ消滅ス」ヲ「附從ノモノト共ニ消滅ス」ト改メ其他原案ニ決ス
第五百六十一條朗讀ス
第六節 履行ノ不能
第五百六十一條 義務カ特定物ノ引渡ヲ目的トシタル場合ニ於テ其目的物カ債務者ノ過失ナク且遲滯ニ在ル前ニ滅失シ紛失シ又ハ不融通物ト爲リタルトキハ其義務ハ履行ノ不能ニ因リテ消滅ス若シ義務カ數箇ノ特定物中ノ若干ヲ目的トシタル場合ニ於テ其一箇ノ引渡モ不能ト爲リタルトキハ亦同シ
作爲又ハ不作爲ノ義務ハ其履行カ右ト同シ條件ヲ以テ不能ト爲リタルトキハ消滅ス
(栗塚)
不融通物ト爲リタル時ハ其義務ハ消滅スデ宜シイ履行ノ不能ニ因リテト云フコトハ有リソウモ御座イマセン
(委員長)
アツテモ宜カロウ
(栗塚)
分ランノデス
(南部)
此所計リ入レルノハオカシイ
(村田)
之ハ原文ニモナイノデス
(南部)
入レルト二項ニモ入レナケレバナリマセン
(淸岡)
履行ノ不能ト入レタハ此條ニ一ツモナイカラデシヨウ
(松岡)
淸岡サンハ前ニ通役スルコトヲ得ザルモノトナリタルト云フ字ヲ不能ト書イタ詰リデアリマシヨウ
(淸岡)
ナンデ消滅スルカ分ラン只消滅ス丈ケデハ分リマセン履行ノ不能ニ因テ消滅スル場合ヲ云フノデアリマシヨウ
(南部)
二項モソウデアリマス
(淸岡)
二項ハ履行ノ不能ト云ツタラ下ハ略シタ意味デ宜シイ
(栗塚)
紛失シ又ハ不融通物トナリテ履行ノ不能トナリタルトキハト云フノデアリマス
(淸岡)
表題ノ履行ノ不能ト云フカラデアリマス其ヲ削ルト何ンデ消滅スルカ分リマセン
(栗塚)
左樣ナラ義務ガ特定物ノ引渡ヲ目的トシタル場合ニ於テ其債務者ノ過失ナリ又不融通物ト爲リタルトキハ義務ノ履行ハ不能トナリ不能ト爲リタルトキハ義務消滅ト云ハナケレバナリマセン
(淸岡)
ソウ書イテモ宜カロウ
(村田)
消滅ト云フ字ハ卽チ不能ト云フ字ヲ含ンデ居ルノデアリマス
(粟塚)
左樣デス
(南部)
消滅紛失シタラ卽チ義務ノ履行ノ不能ニ因テ消滅デアリマス履行ノ不能ト云フ字ガ何處カラ出ルカ出處ガアリマセン
(槇村)
アツテ宜シイ
(淸岡)
只消滅デハ往ケマセン
(三島)
題文ニ因テ入レタノデアリマス
(淸岡)
消滅ハ何ニカト云フニ不能ダカラト云フノデアリマシヨウ
(委員長)
不融通物トナリテ履行シ能ハザルトキ其義務ハナイト云フコトデアリマシヨウ
(栗塚)
左樣デス
(松岡)
ソレナラバ宜シイ履行スルコトヲ得ズダロウ
(村田)
不融通物トナリテ履行シ能フモノガアロウカト云フト理窟ガ出マス
(松岡)
履行ノ不能ト云フトドウ云フモノカト云フト燒ケタトカナクナツタトカデ履行ガ出來ン其處デ義務消滅スルト云フ卽チ履行ノ不能ト云フ字ヲドウカシナケレバナリマセン
(淸岡)
履行ノ不能ト云フ字ヲ削ルト只消滅デハイケマセン
(松岡)
註譯スルト矢張リ一ツハ一ツナリト云フコトデ不能ハ不能ナリト云フノト元々デアリマス
(村田)
之ハ消滅ノ内ニ不能ガ這入ツテ居ルノデアリマス
(三島)
ソレデハ履行シ能ハザルニ因リ消滅トシテモ宜シイ
(淸岡)
ソウスルト村田サンノ說見タヨウニナリマス
(村田)
少シ違イマス
(大尾崎)
之デ宜シイ
(元尾崎)
一箇ノ引渡モ不能トナリタルトキ又同ジト云フノハドウ云フモノカ
(村田)
書キ樣ガ惡イノデス
(渡)
之デ宜シイ
(松岡)
不融通物トナリテ履行シ能フモノガアロウカナゾハ空論デアリマス
(南部)
不融通物トナリテ履行シ能ハザリシトキハ其義務ハ消滅スデ宜シイ
(三島)
修正シタイハ其意デ御座イマスカ入レ樣ガ惡ルイカラ議論ガ起ツタカラ松岡サンノ言フ樣ニシテ不融通物トナリ履行シ能ハザルトキ其義務ハ消滅ストヤツテ宜シイ
(渡)
之デ宜シイ
(元尾崎)
原案デ宜シイ
(栗塚)
ソレカラ特定物ト云フ字ハナイカラ「特定物」ハ「定マリタル物ノ中ノ若干ヲ」トシテ置キマス
(元尾崎)
全部ノ引渡トシテハドウカ、土藏ノ中ノ米百俵ノ内五十俵ヤルト云フトコロガ燒ケテ一俵モナクナツタカラ義務ハ免カルルガ若シ五俵アツタラドウカ五俵渡サナケレバナランソレハ困ルノデス
(大尾崎)
全部ノ中一箇モ引渡セント云フノダロウ卽チ消滅ト云フノデアリマシヨウ
(粟塚)
左樣デス
(元尾崎)
一箇モ引渡スコトモ出來ン樣ニナツタラト云フト十俵殘ツテモ十俵ヤラナケレバナリマセン
(栗塚)
其レハヤラナケレバナリマセン
(元尾崎)
全部デ良イダロウ
(栗塚)
五十俵渡ソウガ燒ケテニ十五俵殘ツテ居ルト全部トシテハ五十俵渡セン然シ二十五俵ハ渡サナケレバナリマセン
(元尾崎)
若干ト云ツテモ皆ンナ無クナツタラ卽チ全部デアリマシヨウ
(栗塚)
全部引渡ハ不能ダガ一部引渡ハ能ダカラ其時ハ消滅シナイ
(村田)
詰リ同ジデ幾□ デモ爭ヒハシナイノデアリマス
(栗塚)
一部ノ引渡モ出來ント云フノトハ違ヒマス
(松岡)
百俵アル内十俵渡サナケレバナラント云フガ十俵ヤロウトシテモヤレンノデアリマス
(栗塚)
一箇ヲモ引渡スコト能ハザルトキトヤリマスカ
(大尾崎)
ソレナラ分ル
(村田)
ソレハ同ジデス
(松岡)
「ボアソナード」ノ註解ニハ例ヘバ米百俵ト書イタ藏ノ中ノ十俵渡ス約束デ此場合ニ全部燒ケタラ義務ハ免カレルケレドモ十俵アレバ之ハ渡サナケレバナラントアリマス
(渡)
歸着スルトコロハ同ジデアリマス
(元尾崎)
全部ガ宜シイ
(松岡)
元ノ約束ガ違フカラ全部ハイケマセン
(元尾崎)
一箇ノ引渡モ出來ト云フ一箇ハ出來ンガ二三俵ハ出來ルト云フニナリマス
(栗塚)
一箇ヲモト言ハナケレバナリマセン
(村田)
元トハ何レノ引渡ヲモトアルカラ元トノ儘ガ宜シイ
(栗塚)
其レハ宜シイ
(大尾崎)
其レハ宜シイ
(渡)
何レノ物ヲモ引渡ハ分リマセン
(淸岡)
數箇ノ内若干カ渡サウト云ツタラ數箇ノ内若干燒ケテモ數箇ダカラ殘ツテ居ル殘ツタモノヲ引渡サナケレバナラン然シナガラ其レモ一箇モ引渡センノダカラ此方ガ宜シイ
(委員長)
之デ宜カロウ
本條ハ「特定物中」ヲ「定マリタル物ノ中」ト改メ其他原案ニ決ス
第五百六十二條朗讀ス
第五百六十二條 債務者カ意外ノ事又ハ不可抗ノ力ニ因ル損失ヲ擔任シ若クハ第三百五十六條及ヒ第四百四條ニ從ヒテ遲滯ニ在ルトキハ其債務者ハ前條ノ原因アルモ其義務ハ消滅セス
犯罪ニ因リ他人ニ屬スル金錢其他ノ有價物ヲ返還スルノ責ニ任スルモノモ亦之ニ準ス
(栗塚)
末項ハ刪除デアリマス其レカラ「損失」ヲ「危害」ト改メマシタ
(松岡)
危險ガ宜シイダロウ
(栗塚)
危險トソウシテ暴行ノトコロデ皆ナサン災害ヲ使ヒマシタロウ、強暴ノトコロデ災害ト云フ字ト危險ト二ツアルカラ其レヲ損失ト云フ字ニシタノデアリマスガ之ヲ改メ危害トシテ宜シイダロウ
(松岡)
商法ニモ危險トアルカラドウカ
(栗塚)
只字ガ二ツアルカラ危險及ビ災害ト云フノハ長イカラ危害トシヨウト云フノデアリマス
(松岡)
損失ト云フハ危險ガ宜シイ
(委員長)
兩方含蓄スル字ヲ以テスレバ宜シイガソウデナケレバ二ツ書クガ宜イダロウ
(栗塚)
危險及ビ災害ト書ケバデアリマス
(委員長)
危險及ビ災害トシテ宜シイダロウ
(元尾崎)
危險及ビ損失トヤリマスカ
(松岡)
危害トスル位ナラ危險デ宜シイ
(淸岡)
危險ト災害トアルカラ併セテ危害ト云フノダカラ宜カロウ
(渡)
危害ハ宜ウ御座イマシヨウ
(栗塚)
危險及ビ災害トヤリマスカ末項ヲ本文ノ如ク修正シテ第四百四條第二項ニ加フルノ建議
(村田)
ソレハ宜シイ
(栗塚)
終リノ、「前條ノ原因アルモ其義務ハ消滅セス」ハ「前條ノ原因ニ由ルモ其義務ヲ免カレス」ガ宜シイト思ヒマス
(村田)
其方ガ宜シイ
(淸岡)
債務者ハ原因ガアツテモ其義務ハ消滅ス
(元尾崎)
前條ノ原因ガアツテモ
(栗塚)
ダカラシテ元トノ通リニシテ其債務者ハ其原由ニ依リ其義務ハ免カレズデアリマス
(委員長)
宜カロウ
本條ハ「債務カ意外ノ事又ハ不可抗ノ力ニ因ル危險及ヒ災害ヲ擔任シ若クハ第三百五十六條及ヒ第四百四條ニ從ヒテ遲滯ニ在ルトキハ其債務者ハ前條ノ原因ニ由ルモ其義務ヲ免カレス」トシ第二項ハ削除ニ決ス
第五百六十三條朗讀ス
第五百六十三條 債務者ハ自己ノ申立ツル意外ノ事又ハ不可抗ノ力ヲ證明スルノ責ニ任ス
債務者カ第三百五十五條第二項ニ依リ其義務ヲ免カル爲メ其物カ債權者ノ方ニ在リト雖モ亦滅失ス可キコトヲ申立ツルトキハ其證據ヲ擧クルコトヲ要ス
(渡)
前ノ案ニハ此二箇ノ主義ニ依リ修正スルト私ノニ記シテアリマス
(委員長)
起草者ニ聞イタラ三百五十五條ノ方ヲ代ヘ樣ト云フノデアリマス
(栗塚)
三百五十五條ノニ項ヲ修正シタノデアリマス
(淸岡)
債權者ノ方ニ在リト雖モト云フ字ハ斯ウ云フトコロニ使ツテ宜シイカ
(三島)
宜シイデシヨウアツテモト云フノデス
(元尾崎)
三百五十五條ヲ引ク要ハナイ樣デアリマス違フコトデアリマシヨウ
(松岡)
三百五十五條ノ二項ハ要約者ガ遲滯ニ附セラレタヲ認明シナケレバナラン今一ツハ引渡シタルニ於テハ私ノ方ヘ來テ居ツタカラ別シテ損ハナカツタト云フコトガ權利者ノ方ニアル受取ル方ノ人問ガ私ノ方ガ早ク往ケバ損シナカツタト云フ證據ヲ擧ゲナケレバナラン此處ハ其裏ニナルノデアリマシヨウ
(元尾崎)
此所ハ違ウ
(松岡)
遲滯ニ附セラレテ在ルナラ擧證ノ責ガ違ウト云フ論ヲシタヨウニ思フ
(委員長)
コウ云フコトガ書イテアリマス三百五十五條ノ二項ハ反對ナルニ付キ起草者ニ質問シタ所ガ三百五十五條ヲ改正ス可キ、ト申シタリ、トアル
(松岡)
三百五十五條ノ二項ハ修正ヲ爲ス、然レバ此項ハ不可ナリト私ノニアリマス
(委員長)
一方ガ擧證シナケレバナラン其場合ヲ云フノデス
(栗塚)
前ノデハ、然レドモ損失ガ諾約者ニ歸シ若シ引渡スコトノ遲滯ニ在ルナラバ損失又ハ毀損ハ諾約者ノ責ニ歸ス、トアル但同ジ毀損又ハ損失ガ撞着シタナラバ此限ニ在ラズデス
(元尾崎)
後デ直シテ貰ヒマシヨウ
(栗塚)
三百五十五條ノ二項ヲ改メテ參リマシヨウ
(松岡)
彼所ヲ直セバ此所ハ之デ良シイ
(渡)
之ハ良シイ
本條六原案ニ決ス
第五百六十四條朗讀ス
第五百六十四條 債務者カ履行ノ不能ニ因リテ義務ヲ免カレタルトキハ其債務者ハ己レノ受ク可キ對價ニ付テハ其履行ノ爲メ旣ニ出捐シタル限度ニ於テノミ權利ヲ有ス
(元尾崎)
宜シイ
(南部)
良シイ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第五百六十五條朗讀ス
第五百六十五條 物ノ全部又ハ一分ノ滅失ノ場合ニ於テ債務者カ其滅失ノ爲メ第三者ニ對シ或ル報復訴權ヲ有スルトキハ債權者ハ殘餘ノ物ヲ要求シ且右ノ訴權ヲ行フコトヲ得
(栗塚)
「其消失ノ爲メ」ハ「其滅失ヨリ」ト改メマス
(村田)
全部ノコトハナイ方ガ良シイ、佛蘭西ニハドウカ
(栗塚)
アリマス
(元尾崎)
全部滅失シタトキ殘リノモノヲ要求ト云フコトハ出來ンネ
(南部)
報復訴權ト云フノガアリマス
(栗塚)
右ノ訴權ハ一旦此訴權ヲ行フコトヲデアリマス報復訴權ト云フハ、損害ヲ取ルコトデスネ
(元尾崎)
求償訴權トヤツテハドウカ
(三島)
仇打ニ當ルト云フノデ報復トシタノデス
(南部)
報復訴權ト云フハ音ガ惡イネ
(大尾崎)
矢張損害賠償ダネ
(南部)
元トノ通リ「補償」ガ良シイ
(栗塚)
「レバレーシヨオン」ト云フ字デ毀ハレタ物ヲ修覆スルト云フ字デス
(南部)
「補償」トシテ良シイ
(淸岡)
「補償」デ良シイ
(松岡)
補償ト云フト主タルモノガアルヨウニ見ヘルネ
(南部)
補ヒ償フノデス
(栗塚)
三百三十三條三項ノ、然レドモ當事者ノ一方ヘ其報復ノ名義ニテ合意ノ取消ヲ求ムトアリマス
(委員長)
皆補償ニスルカ
(松岡)
補償ト云フト小サ過ギルネ
(栗塚)
名譽ヲ元トノ通リニシテト云フコトダ
(三島)
回復ガ當ルト言タガ、惡イト云フカラ斯ウナツタノデス
(南部)
報ズルト云フハ困ルネ
(栗塚)
報ズルハ困ルガ商法ニ補償ト使テアリマスカラ補償ガ宜シイデシヨウ
(淸岡)
宜カロウ
(栗塚)
三百三十三條ノ二項ハ補償ノ名義ト改メ此所ニ補償訴權トシテハ如何
(元尾崎)
宜シイ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ左ノ如ク改ム
第五百六十五條物ノ全部又ハ一分ノ滅失ノ場合ニ於テ其滅失ヨリ第三者ニ對シ或ル補償訴權ノ生スルトキハ債權者ハ殘餘ノ物ヲ要求シ且此訴權ヲ行フコトヲ得
第五百六十六條朗讀ス
第七節 銷除
第五百六十六條 能力ナキ人、錯誤ニ因リテ承諾ヲ與ヘタル人又ハ他ノ一方ノ強暴若クハ詭譎ニ因リテ承諾ヲ獲ラレタル人ノ約束シタル義務ハ五个年ノ間ハ或ハ其人又ハ其代人ノ請求ニ因リ或ハ履行ノ訴ニ對スル排斥ニ因リ裁判上之ヲ銷除スルコトヲ得
右ノ期間ハ欠損ニ付テノ銷除訴權ヲ行フ爲メ又ハ欠損ノ排斥ヲ申立ツル爲メ之ヲ成年者ニ許與ス但法律カ此訴權又ハ排斥ニ付キ特ニ其期間ヲ短縮シタル場合ハ此限ニ在ラス
(栗塚)
本條ハ修正シタガ「能力ナキ人錯誤ニ因ル承諾ヲ與ヘタル入云々」ヲ「無能力者又ハ錯誤強暴若クハ詭譎ニ因リテ承諾ヲ與ヘタル人」トヤリマシタ、ソレカラ「履行ノ訴ニ對スル排斥ニ因リ」ハ「履行ノ訴ニ對シ此等ノ者ヨリ申立タル無效ノ抗辯ニ因リ裁判上之ヲ銷除スルコトヲ得」ト致シマシタ
(委員長)
前ノ錯誤強暴ヲ一所ニスルト混淆シハセンカ
(栗塚)
強暴ハ向ウカラヤツテ、騙マサレテ承諾ヲ與ヘタノデ差支ナイ
(委員長)
錯誤ハ此方、強暴ハ向ウダカラ一所ニ書クト此方デ強暴シテ與ヘルヨウニ見ハセンカ
(元尾崎)
併シ分ルヨウデス
(栗塚)
錯誤ニ因テ承諾ヲ與ヘ又他ノ一方ノ強暴ニ因テ承諾ヲ與ヘタ人若クハ詭譎ニ因テ承諾ヲ騙取セラレタ人三ツヲ書キ分ケタノデアリマス
(南部)
因リト云フ字ガアルカラ間違ハナイダロウ
(委員長)
錯誤又ハ他ノ一方ノ強暴詭譎ニ因リトシテハドウカ
(松岡)
因リト云フハ何所カラカ
(淸岡)
自分ガ強暴者
(栗塚)
斯ウシテハドウカ「無能力又ハ錯誤ニ因リ若クハ他ノ一方ノ強暴詭譎ニ依リ承諾ヲ與ヘタル人」トヤツテハ如何
(委員長)
其レハ宜シイ
(大尾崎)
其レナレバ宜シイ
(淸岡)
無能力者又ハ錯誤ニ因リハオカシイ
(栗塚)
ソレデハ寧ロ無能力者ト云フノヲ後トヘ出シマスカ
(南部)
ソレハ善クナイ
(槇村)
無能力者又ハ錯誤ニ因リデ宜カロウ
(栗塚)
無能力者ニ約束シタル義務及ビカ
(南部)
元トハソウ譯シタガ長イカラソウ直シタノデアリマス
(淸岡)
修正通リデ宜シイ
(栗塚)
無能力者又ハ錯誤ニ因リ宜シイデシヨウ
(委員長)
宜シイ二項ノ排斥ハドウカ
(栗塚)
皆ナ抗辯トシタガ訴訟法ト相談スルマデ受ケ置キデ御座イマス
(村田)
訴訟法ハ皆ナ抗辯トナツテ居リマス
(元尾崎)
強暴ト云フノハ不可抗力ハ籠テ居リマセンカ
(南部)
籠テ居リマス
(元尾崎)
強暴ニ天災ガ這入ルト他ノ一方トハ言ヘン矢張リ報吿委員ノ修正シタ通リナラ兩方分ツテ宜シイ
(委員長)
天災ハ承諾ヲ與ヘ樣ハアリマセン
(元尾崎)
アリマセン
(松岡)
他ノ一方ハ除ケル方ガ宜シイ
(南部)
他ノ一方ト云フノハ宜クナイ
(委員長)
強暴丈ケハソウダロウガ詭譎ノ時ハ他ノ一方ニ違ヒナイ
(元尾崎)
他ノ一方ハ言ハン方ガ宜シイ
(委員長)
ソンナ文書ハ穩カデナイ
(三島)
天災ガアルカラ論モ起リマシタガ暴害ト云フ字ガ入レタガ
(松岡)
良イ之ハ練テ下サイ
(三島)
箕作サントモ相談致シマシヨウ
(淸岡)
ナロウコトナラ強暴デ置キタイ
(村田)
他ノ一方ハ刪ロウデハナイカ
(栗塚)
他ノ一方ト云フコトガナケレバ分ラント云フ方カラ云フト獲セラレトカ何ントカ分ラント云フノデアリマス
(委員長)
錯誤ニ因テ與ヘハ善イガ詭譎ニ因テ與ヘ樣ハナイ
(元尾崎)
錯誤強暴ニ因リ若クハ他ノ強暴ニ因ルトヤルカ
(委員長)
ソレナレバ宜シイ
(槇村)
「能力ナキ人」ヲ「無能力者」又ハトシテ後トハ紫字ノ通ニシテ置キマシテハ如何
(委員長)
無能力者又ハ錯誤ニ因リ若クハ強暴又ハ詭譎モオカシイ
(淸岡)
無能力者又ハ錯誤ニ因リ承諾ヲ與ヘラレタ人又ハ、ガ良シイ
(栗塚)
良シイ
(元尾崎)
元トノ通リデス
(大尾崎)
良カロウ
(村田)
他ノ一方、ト云フヲ刪リ跡ハ紫字ノ通リデス
(北畠)
良カロウ
(委員長)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ左ノ如ク修正ス第五百六十六條無能力者又ハ錯誤ニ因リテ承諾ヲ與ヘタル人又ハ強暴若クハ詭譎ニ因リテ承諾ヲ獲ラレタル人ノ約束シタル義務ハ五ケ年ノ間ハ或ハ其人又ハ其代人ノ請求ニ因リ或ハ履行ノ訴ニ對シ此等ノ者ヨリ申立タル無效ノ抗辯ニ因リ裁判上之ヲ銷除スルコトヲ得トシ第二項ハ原案ニ決シ「排斥」ノ二字ハ訴訟法組合ト協議スルコトニ決ス
第五百六十七條朗讀ス
第五百六十七條 右時效ノ期間ハ強暴ニ付テハ其強暴ノ止ムマテ錯誤ニ付テハ其錯誤ヲ覺知スルマテ詭譎ニ付テハ其詭譎ヲ發見スルマテ無能力ニ付テハ其無能力ノ止ムマテ之ヲ停止ス
然レトモ瘋癲者又ハ喪神ニ因ル禁治產者ノ契約ニ付テハ此時效ハ其者カ能力ヲ復シタル後其承諾シタル契約ノ要旨ノ通知ヲ受ケ又ハ其契約ヲ了知シタル時ヨリ經過ヲ始ム
法律上治產ヲ禁セラレタル處刑人ニ付テハ銷除ノ訴權及ヒ排斥ハ自他ノ爲メ其刑期滿了後ニ非サレハ時效ニ罹ラス
成年者ノ欠損ノ場合ニ於テハ時效ハ契約ノ時ヨリ經過ヲ始ム
此他免責時效ノ停止及ヒ中斷ノ通常ノ原因ニ關スル規定ハ此時ニ之ヲ適用ス
(三島)
「喪神」ハ「喪心」ノ方ガ良シイ
(南部)
其方ガ良シイ
(栗塚)
「喪神」デシヨウ
(渡)
「喪神」ノ方デシヨウ
(淸岡)
精神ノトキハ「神」ダガ此「心」デナケレバナラン
(栗塚)
心ヲ喪フト云フコトハドウカ
(元尾崎)
心ト此間直シタカラ良シイダラウ
本條ハ「喪神」ヲ「喪心」ト改メ其他原案ニ決ス
第五百六十八條朗讀ス
第五百六十八條 銷除訴權ヲ有セル人カ前條ノ期間ノ滿了前ニ死亡シタルトキハ訴權ハ其相續人ニ移轉ス
右ノ場合ニ於テ期間カ死亡者ニ對シ未タ經過ヲ始メサリシトキハ相續人ノ訴權ハ其相續權ノ發開ノ時ヨリ時效ニ罹リ旣ニ經過ヲ始メタルトキハ其殘期ヲ以テ時效ニ罹ル
(元尾崎)
良シイ
(委員長)
往キマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第五百六十九條朗讀ス
第五百六十九條 未成年者又ハ禁治產者ノ財產ニ關シ後見人ノ爲シタル契約及ヒ行爲ハ無能力者ノ利益ノ爲メ法律ノ定メタル方式及ヒ條件ヲ遵守セサリシトキハ之ヲ銷除スルコトヲ得
未成年者ノ行爲ニ付テハ之ニ要スル方式ナキトキ浪費者ノ行爲ニ付テハ裁判上ノ輔佐人ノ輔佐ナキトキ及ヒ禁治產者ノ行爲ニ付テハ何等ノ場合ヲ問ハス亦其行爲ヲ銷除スルコトヲ得
右規定ハ此他ノ原因ニ由リ有能力者ノ爲メニ許與セル銷除ノ訴權ヲ妨ケス
(栗塚)
「輔佐人」ト云フノハ翻譯局ヘ相談シテ居リマス
(委員長)
良シイ
本條ハ原案ニ決ス
第五百七十條朗讀ス
第五百七十條 未成年者一人ニテ特別ナル方式又ハ條件ノ必要ナキ契約又ハ行爲ヲ承諾シタルトキハ銷除訴權ハ其未成年者ノ爲メ金錢ヲ以テ見積ルコトヲ得ヘキ欠損アルトキニ非サレハ之ヲ受理セス
法律カ保管人ノ輔佐ノミヲ要シタルトキ其輔佐ナクシテ旣脫後見ノ未成年者ノ爲シタル右ト同一ナル性質ノ行爲ハ欠損ニ因ルニ非サレハ之ヲ攻撃スルコトヲ得ス
欠損ハ行爲ノ時ニ於テ之ヲ見積リ其偶然ノ事件ヨリ生スルモノハ之ヲ算入セス
(栗塚)
「金錢ヲ以テ見積ルコトヲ得ヘキ」ト云フ丈ケハ刪リマス
(松岡)
ナイ方ガ宜シイ
(栗塚)
ソレカラ二項ハ「行爲」ノ下「モ亦」ノ二字ガ這入リマス
本條ハ第一項「金錢ヲ以テ見積ルコトヲ得ヘキ」ヲ刪リ第二項「行爲」ノ下ヘ「モ亦」ノ二字ヲ加ヘ其他原案ニ決ス
第五百七十一條朗讀ス
第五百七十一條 未成年者カ成年ナリトノ陳述ノミニテハ其無能力又ハ欠損ニ因ル訴權ヲ妨ケス但其成年タルコトヲ信セシムル爲メ詐術ヲ用ヰタルトキハ此限ニ在ラス此他ノ無能力者ノ虛僞ノ陳述ニ付テモ亦同シ
(栗塚)
之ハ原書ト議決案ト較ブルト違テ居ルヨウダガ斯ウ云フコトダカラ、矢張リ未成年者ノ爲シタルト云フ字ヲ入レル、未成年者ガ、ヲ爲シタル成年タリトノ陳述ノミデハ、トヤル
(元尾崎)
陳述シタルニ於テハ、ダナ
(松岡)
成年ナリトノ陳述ノミデハ、トヤツテモ良シイ
(栗塚)
缺損ヲ原因トシテ返還ヲ求ムル訴權デアリマス
(松岡)
分ルニハ銷除訴權ヲ妨ケズ、ガ良シイ
(栗塚)
コレデモ良シイガ、返還ヲ求ムル訴權ヲ妨ケズ、デアリマス
(松岡)
物品ヲ元トヘ戻スハ違ヒハセンカ
(栗塚)
違ヒマセン、物品デアツタラ物品ガ戻ルシ契約デアレバ契約ガ元トヘ戻ルノデアリマス
(松岡)
返還トナルト事柄デナイ物品ニナルカ
(元尾崎)
原因トシテ回復ダネ
(栗塚)
所有權回復ト云フ字ガアリマスカラ
(元尾崎)
ヤツテモ良シイ
(栗塚)
缺損ニ因リ銷除訴權ヲ行フコトヲ妨ケズカ或ハ此儘デ置クカデアリマス
(元尾崎)
銷除訴權ヲ妨ゲズデ良シイダロウ
(委員長)
銷除訴權ヲ妨ゲズデ良シイダロウ
本條ハ「未成年者カ成年ナリト陳述シタルノミニテハ其無能力又ハ缺損ニ因ル銷除ノ訴權ヲ妨ケス但往々」ト改メ其他原案ニ決ス
第五百七十二條朗讀ス
第五百七十二條 商業又ハ工業ヲ營ムノ許可ヲ得タル旣脫後見ノ未成年者ハ其營業ニ關スル行爲ニ付テハ之ヲ成年者ト看做ス
(栗塚)
何ノ理由ナキ云々、ハ商法ノ十二條ト牴觸スルカラ刪ルト云フノデ、商法デハ構ハント云フノデス
(元尾崎)
良シイ
本條ハ原案ニ決ス
第五百七十三條朗讀ス
第五百七十三條 婦ノ行爲及ヒ義務ハ配偶者ノ相互ノ權利及ヒ本分ニ關シ本法ニ定メタル場合ニ非サレハ婦又ハ夫ノ請求ニ因リテ之ヲ銷除スルコトヲ得ス
(元尾崎)
意味ハ分ランネ「婦ノ行爲及ヒ義務」ハ分ラン
(南部)
別ニ定メテアルト云フノデス
(松岡)
婦ノ契約ヲ夫カラ刪ルノカ、定ムルト云フノダカラ良シイ婦ノ他人トシタコトヲ夫ガ取消スカ
(委員長)
良シイ
本條ハ原案ニ決ス
第五百七十四條朗讀ス
第五百七十四條 承諾ノ瑕疵又ハ欠損ニ因リ行爲ノ銷除ヲ得タル成年者ハ其行爲ニ因リテ旣ニ受取リタル總テノ物ヲ返還スルノ責ニ任ス
無能力者ハ銷除ヲ得タル行爲ニ因リテ仍ホ現ニ己レヲ利スル物ノミヲ返還スルノ責ニ任ス
右返還ヲ要求スル訴權ハ通常ノ時效ニ因ルニ非サレハ消滅セス
(委員長)
行爲又ハ約務、トアリマシタネ
(栗塚)
左樣「アリト」ノ中ヘ這入リマス
(松岡)
若クハ義務ヲ入レヨウ
(栗塚)
卽チ義務デスネ
(南部)
及ビダ
(委員長)
婦ノ行爲卽チ義務、カ
(松岡)
寧ロ前ノヲ刪テハドウカ
(栗塚)
前ノ「婦ノ行爲ハ」トシマシヨウ行爲ト云フ中ニ義務ノ這入ツタモノモアルシ這入ラン所モアリマスカラ
(村田)
前ノ「及ヒ義務」ハ刪テ良シイ
(南部)
七十三條義務丈ケハ置キマシヨウ
(栗塚)
未成年者ハ皆行爲デスネ
(委員長)
行爲ト義務ト區別シテ、時トシテ書キ時トシテ書カント云フト主意ガ立タンネ
(村田)
行爲ノ義務ト云フノハ些ト違ウ
(委員長)
婦ダカラ成年者デモ違ヒハナイ
(南部)
人事編ヲ見テドウスルカ未ダ議場ニ登リマセンカラ
(村田)
權利義務ハ精ハシク云フト言テ居ル
(松岡)
權利義務ト對シテハ間逹ウ
(村田)
夫婦ノ間ノ權利義務ヲ書タ處ニ精シクアルト云フノデス
(渡)
良カロウ
(委員長)
前條ハ「婦ノ行爲」トシテ此條ハ此儘ニシテ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス、前條「及ヒ義務」ヲ刪ル
(以下缺本ニ付騰寫不能)
吿ハ事實ノ判決カ確定セサル間ハ正當ト認メラレタル缺損ノ全部ノ替償ト裁判費用トヲ原吿ニ提供シテ其訴ノ效力ヲ止ムルコトヲ得
(栗塚)
此所デ「正當ニ認メラレタル」ハ訴訟法デハ證明ト云フ字ヲ使テ居ルノデ、之ハ裁判所ノ方カラ言葉ヲ立タノデス
(松岡)
正當ト云フノハ、渡ス人間ガ是丈ケデ之丈ケ損ヲシタト云フノダネ
(大尾崎)
裁判所ガ認メタノデハナイ自分ガ認メタノダロウ
(栗塚)
證明セラレ、ト元トアル
(南部)
證明セラレタ缺損ノダネ
(元尾崎)
訴ヘガ起タ、向ウノ要求通リ渡セバ訴ヘスルニハ及バント云フノダガ、コンナコトヲ謂フ要ガアロウカ、妙ナコトヲ書イタモノダネ
(松岡)
向ウガ損ヲシタラ取戻スト云フトカ其内百圓ノ物ヲ六十圓ニ賣タラ取戻ソウト云フトキ否地所ハ戻サン地所ハ己ノモノニスルト云フノデス
(南部)
證明セラレタル缺損ノ全部ダ
(村田)
證明セラレタルデ良カロウ
(元尾崎)
裁判上證明セラレタルニナルネ
(南部)
左樣
(大尾崎)
證明セラレタルデ良シイ
(委員長)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ「正當ト認メラレタル」ヲ「證明セラレタル」ト改メ其他原案ニ決ス
第五百七十七條朗讀ス
第五百七十七條 利害ノ關係アル當事者カ時效ノ開進ニ關シ第五百六十七條ニ定メタル時期ノ後銷除ノ原因アル契約ヲ明示又ハ默示ニテ認諾シタルトキハ其銷除ノ訴權ヲ行フコトヲ得ス
(栗塚)
之ハ左ノ如ク改メマス
第五百七十七條銷除訴權ハ第五百六十六條乃至第五百六十八條ニ定メタルトキ時效ニ因リ消滅スルノ外第五百六十七條ニ從ヒ時效ノ開始スルノ後利害關係アル當事者カ銷除スルコトヲ得ヘキ合意ヲ明示又ハ默示ニテ認諾シタルトキハ之ヲ行フコトヲ得ス
第五百七十八條朗讀ス
第五百七十八條 明示ノ認諾ハ契約ノ要旨及ヒ其銷除ノ原因ヲ記シ且銷除訴權ノ抛棄ヲ述ヘタル明白ナル證書ニ因リテ成ル
銷除ノ數箇ノ原因アルトキハ明示ノ認諾ハ時ニ證書ニ記シタル原因ノミヲ除去ス
成年者ノ利益ノ爲メ欠損ニ因ル銷除ニ服スル行爲ハ明示ヲ以テシ且原契約ノ後ニ於テスルニ非サレハ之ヲ認諾スルコトヲ得ス
(栗塚)
此所ハ「明示ノ認諾ハ合意ノ要旨」ソレカラ次ノ項デハ「明示ノ認諾ハ銷除スルコトヲ得ヘキ合意ノ要旨及ヒ其證書ノ原因」デアロウト思ヒマス
(渡)
ソレガ良シイ
(栗塚)
「銷除ノ數箇ノ原因アルトキハ明示ノ認諾ハ特ニ證書ニ記シタル原因ノミヲ除去ス」トアルハ「原因アルニ非ザレバ之ヲ除去セズ」トシテハ如何
(松岡)
二項ハ宜シイガ末項ハ「缺損ニ因リ銷除スルコトヲ得ヘキ行爲ノ」デアリマス「得ヘキ行爲ノ認諾ハ明示ヲ以テ且其行爲ノ後ニ於テスルニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス」ト致シマシタ
本條ハ第三項「明示ノ認諾ハ銷除スルコトヲ得ヘキ合意ノ要旨」云々ト改メ二項ハ原案ノ通リ第三項「成年者ノ利益ノ爲メ缺損ニ困ル銷除スルコトヲ得ヘキ行爲ノ認諾ハ明示ヲ以テシ且其行爲ノ後ニ於テスルニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス」ト改ム
第五百七十九條朗讀ス
第五百七十九條 默示ノ認諾ハ左ノ行爲ニ因リテ成ル
第一 契約ノ全部若クハ一分ノ任意ノ履行
第二 異議ヲ爲サス又ハ異議ヲ留メサル強制ノ執行
第三 更改
第四 物上又ハ對人ノ擔保ノ任意ノ供與
債權者ニ在リテハ默示ノ認諾ハ裁判上ノ履行請求及ヒ銷除ニ服スル契約ヲ以テ取得シタル物ノ全部又ハ一分ノ任意讓渡ニ因リテ成ル
此他ノ默示ノ認諾ハ之ヲ裁判所ノ審定ニ委ス
(栗塚)
「審判」ハ「審定」トシソレカラ此所ノ二項「債權者ニ在リテハ」ヲ刪リ「默示ノ認諾ハ債權者ニ在リテハ」ヲ刪リ「默示ノ認諾ハ債權者ニ在リテハ履行ノ請求及ヒ銷除スルコトヲ得ヘキ合意ヲ以テ」云々トシマシタ
(村田)
ソレデ良シイ
(大尾崎)
良シイ
本條ハ「債權者ニ在リテハ」ヲ刪リ「默示ノ認諾ハ債權者ニ在リテハ履行請求及ヒ銷除スルコトヲ得ヘキ合意ヲ以テ取得シタル物ノ全部又ハ一分ノ任意讓渡ニ因リテ成ル」トシ「審判」ハ「審定」ト改メ其他原案ニ決ス
第五百八十條朗讀ス
第五百八十條 認諾ハ銷除訴權ヲ有スル者ノ特定ノ承接人ノ權利ヲ害スルコトヲ得ス
(元尾崎)
特定ノ承接人ト云フハ
(栗塚)
一般ノ相續人ノ如キモノデハナイ
(元尾崎)
良シイ
本條ハ原案ニ決ス
第五百八十一條朗讀ス
第五百八十一條 根源ヨリ無效ナル行爲ハ之ヲ認諾スルコトヲ得ス但方式上無效ナル生贈又ハ遺言ノ相續人ノ認定ニ關シ下ノ附錄ニ揭ケタル規定ヲ妨ケス
(三島)
「生贈」ヲ「贈與」トシマス
(渡)
「留保」トハドウ云フモノカ
(南部)
天然義務ノ處ガ定マラント確定シナイ
(元尾崎)
根源ヨリ無效ト云フハドンナコトカ
(南部)
不法ノコトヲ云フノデス下ノ「ノ附錄」ト云フハ刪リマス
(松岡)
根源ヨリ無效ハ銷除取消スベキデハナイ本體ガ成立ヌノデスネ
(栗塚)
左樣デス
(元尾崎)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ「生贈」ヲ「贈與」トシ「ノ附錄」ヲ刪リ其他原案ニ決ス
第五百八十二條朗讀ス
第五百八十二條 算數、氏名、日附又ハ場所ノ錯誤ノ改正ヲ目的トスル訴權ハ時效ニ罹ルコト無シ但右ニ關係スル權利ノ時效ヲ妨ケス
(栗塚)
「右ニ關係スル權利」ト云フノハ「右訴權ニ附屬スル主タル權利ノ時效ヲ妨ケス」トシマシタ
(元尾崎)
ドウ云フ譯ケデスカ、主タルモノガ時效デ往カナクナツタラソレハ往カンガ算數ヲ間違タラソレ丈ケト云フハドウ云フノカ
(松岡)
之ハ知レタ話ダネ
(元尾崎)
日附ヤ場所ハ時效ニ罹ランガ主タル時效ハアルト云フ、ト
(栗塚)
但ヲ刪ルカ否ノ論ダ
(村田)
刪テモ良シイ
(栗塚)
只原則論デス
(委員長)
日附抔ハ誰デモ分ルモノダカラ時效ニ罹ラント云フノダネ
(大尾崎)
之ハ良シイヨウデス
(元尾崎)
要用ノナイコトヲ謂フノダネ
(村田)
但書以下ハイラン
(栗塚)
何時デモシテ貰フコトガ出來ル併シ穿テ論ズルト元トガ消ヘテ居タラドウカ矢張リシテ貰フ
(元尾崎)
留保ト云フハドウ云フ理由カ
(栗塚)
前ト釣合テ、前ヲ若シ刪レバ此所モ刪ル
(元尾崎)
天然義務ノ所ガアルカラネ
(松岡)
ソウデハナイ
本條ハ但以下左ノ如ク改メ其他原案ニ決ス
但右訴權ニ附屬スル主タル權利ノ時效ヲ妨ケス
第五百八十三條朗讀ス
第八節 廢罷及ヒ解除
第五百八十三條 債權者ノ詐害ニ因リテ約束シタル義務ノ廢罷及ヒ廢罷訴權ノ時效ハ第三百六十條乃至第三百六十四條ノ規定ニ從フ
生贈者及ヒ其相續人ノ利益ノ爲メ設ケタル特別ノ廢罷ハ生贈ノ章ニ揭ケタル規定ニ從フ
(栗塚)
「詐害ニ因リテ約束シタル」ハ「詐害ニ於テ約束シタル」デナイト分リマスマイ
(松岡)
詐害スル爲メニ、トヤルカ
(北畠)
詐害ニ於テト云フハオカシイネ
(栗塚)
詐害ニ因リテ、ハ事柄ガ違フカラ往カン
(松岡)
ソレハ惡イ
(村田)
債權者ヲ損害スルノ意ヲ以テトシテ良シイノダ
(栗塚)
元トノ案通リニシタイ
(元尾崎)
三百六十條乃至三百六十四條ニアルカラ之ハイランノデシヨウ
(南部)
此一節留保ト云フ字ハ今村ガ刪リマシタ
(元尾崎)
詐害ニ於テハ分ラン債權者ヲ詐害スル爲メダ、債權者ヲ詐害スル意ヲ以テ、ガ良シイ
(栗塚)
處ガ意ガ無カツタラドウカ
(南部)
三百六十條ニ謂タラモウ良シイノデス
(委員長)
「因リテ」ハドウカ詐害カラデシヨウ
(栗塚)
ソウデハナイ人ヲ害シテヤロウト思テ結ンダ契約デ御座イマス
(村田)
ヤハリ、意ヲ以テ良シイ
(栗塚)
三百六十條ニ債務者ガ債權者ヲ害スルコトヲ知リテトアリマスカラ之ヲ說明シテ詐害センデモ斯ウスレバ詐害スルニナルゾヨト云フノデアリマス
(南部)
詐害ナルコトヲ知リテ約束シタル、トヤロウ
(栗塚)
ソウスルト諾約トヤリマシヨウ
(南部)
詐害スルコトヲ知リテガ良シイ
(栗塚)
債權者ヲ詐害スルコトヲ知リテ約束シタル義務ノ廢罷トシテ良シイ
(南部)
債權者ノ詐害ニ於テトヤルヨリ仕樣ガナイ
(栗塚)
文字ノ上ハ穩カデハナイガ、事柄ハ「於テ」ガ良シイ
(淸岡)
債權者ノ詐害シタコトニ因テダナ、詐リ害スルダロウ、債權者ノデハ往カン
(栗塚)
三百六十條ヲ御覽下サイ
(淸岡)
詐害スルコトヲ知リテハオカシイ
(松岡)
害スルヲ知リテナラ宜シイ
(委員長)
債務者ガ債權者ヲ害スルコトヲ知リテ、ダロウネ
(栗塚)
左樣デス
(大尾崎)
ドウモ詐害ニ於テハ分リ惡イ
(栗塚)
債權者ヲ詐害スルコトヲ知リテ、トハ往カンカ
(松岡)
害スルコトヲ知リテ、デ良シイ
(栗塚)
詐害ノ字ヲ置カント困リマス
(淸岡)
詐害ヲ知ルハオカシイ債權者ニ詐害ヲ與ヘテカ
(元尾崎)
詐害スルノ意思ヲ以テカ
(北畠)
意ノナイコトモアルカモ知レン
(南部)
六十一條二項ハ意思ガナケレバナランカ、詐害スル意思ハ往ケマセン詐害シテハドウカ
(栗塚)
債權者ヲ詐害シテ、ハドウカ
(淸岡)
ソレハ良カロウ
(元尾崎)
良カロウ
(北畠)
良カロウ
本條ハ「債權者ノ詐害ニ因リテ」ヲ「債權者ヲ詐害シテ」ト改メ其他ハ原案ニ決ス尙ホ「生贈」ハ「贈與」ト改ム
第五百八十四條朗讀ス
第五百八十四條 義務ハ第四百二十九條、第四百四十一條及ヒ第四百四十二條ニ從ヒ契約上又ハ裁判上ノ解除ニ因リテ消滅ス
解除ノ訴權ハ通常ノ時效期間ニ從フ但法律ヲ以テ其期間ヲ短縮シタル場合ハ此限ニ在ラス
(栗塚)
「契約上又ハ裁判上ノ解除」ト云フノハ「明示ニテ要約シタル解除」ト元トアル「契約上」ト云フハ其方ガ良シイ「第四百四十二條ニ從ヒ明示シテ要約スル解除又ハ裁判上得タル解除ニ因リテ消滅ス」ソレカラ「裁判上請求スヘキ解除ノ訴權」ト云フノデス
(元尾崎)
ソレハオカシイ
(松岡)
オカシイ
(栗塚)
處ガ明示ニテ要約シテ置イタ解除トハ違ヒマス
(元尾崎)
解除訴權ト云ヘバ解除スベキト一々說クニハ及バン
(栗塚)
明示デ要約シタ解除ハ若シ行ハントキハ裁判上デモ行ハナケレバナラン請求シナケレバナランダニ因テ、裁判上デモ請求シナケレバナラン訴權ハデス
(元尾崎)
イランネ
(村田)
イルデシヨウ
(南部)
イリマストモ、解除ガ二ツアリマスカラネ
(渡)
裁判上請求スベキ解除訴權ハト入レヨウ
(淸岡)
長タラシイカラ今少シ書キヨウハナイカ
(村田)
裁判上得ベキデモ良シイ
(南部)
確除條件ノ合意デアリマスカラシテ以前ノ分ヲ解除スルノトハ違ヒマス
(村田)
未必條件ノ辯除ダ
(南部)
アレト廢罷ノ解除ト二ツアリマス
(元尾崎)
合意ガ出來レバ訴ヘルニモ及バン
(南部)
合意ニ因テ出來ルノト裁判上ニテ出來ルノト二ツアリマス
(淸岡)
裁判上ノ解除訴權トヤツタラドウカ
(栗塚)
矢張裁判上得タルトキ求ムルトカ請求スベキトカ云ハナケレバナラン
(大尾崎)
裁判上解除訴權ハ良カリソウナモノデス
(栗塚)
ソレハ往カンノデス裁判上請求スベキ解除訴權ハトシテハ
(大尾崎)
ソウ致シマシヨウ
(南部)
次ノ九節ハ起案者ガ刪除デス
本條ハ左ノ如ク改ム
第五百八十四條義務ハ第四百二十九條第四百四十一條及ヒ第四百四十二條ニ從ヒ明示ニテ要約シタル解除又ハ裁判上得タル解除ニ因リテ消滅ス裁判上請求スヘキ辯除ノ訴權ハ通常ノ時效期間ニ從フ但法律ヲ以テ其期間ヲ短縮シタル場合ハ此限ニ在ラス
(栗塚)
第四百七十一條ヲ御覺ナスツテ、此條ノ第三「合意上ノ免除」トナリマスソレカラ末項第五編二部云々ハ免責時效ト云フモノデ義務ガ消滅スルト書イテ貰イタイト言テヤツタラ直シテ來マシタ「其他義務ハ免責ト稱スル時效ノ條件カ第五編第二部ニ從ヒ具備スルトキハ消滅シタルモノト看做ス」ト改メマシタソレカラソレヲ報吿委員デ修正シテ「其他義務ハ免責時效ノ條件ノ具備スルトキハ之ヲ消滅シタルモノト看做ス」トシマシタ
(松岡)
免責ニナラント云ヒタイノダ
(栗塚)
先ニ云テ居ルノデ時效ノ處ヲ見ルト免責時效ト書イテアリマス
(松岡)
之ハ到底起案者ガ自家撞着デス
(栗塚)
ソレハ我々ガ救フテヤツタノデアリマス
(松岡)
免責時效ト云タラ後ハイランノダナ
(元尾崎)
斯ウ更ヘタガ良シイ
(渡)
遂々イランネ
(元尾崎)
ソウデナイ
(栗塚)
ソレカラ強暴ノ字ヲ御定メ下サイ
(三島)
「強暴」ハ箕作サントモ談ジタガ「暴威」トシテハドウカト談ジタ、スルト「威」ナレバ天威抔ト云フコトガアルカラ矢張雷ノ威抔ト云フカラ暴害ノコトモ這入ル又人ノ威力モ這入ルカラ良クハナイカト云フト箕作サンノ言フニ暴力ト云ヒタイ位ヒダカラ差支ナイ併シナガラ占有ト云フ方ニ支ルト言フガ「暴威」トシテ良イト云フコトデアリマス
(南部)
「暴威」デ良シイ
(松岡)
「暴威」ハ贊成
(栗塚)
強暴ノ中詐害ハ這入ランカ
(南部)
這入リマセン
(大尾崎)
強暴ノ中詐害ハ這入リマス
(南部)
張暴ナラ、ソシテ良シイ
(淸岡)
暴威ハ字義ハ良シイカ響キガ惡イ
(松岡)
音樂デハアルマイシ響キ抔ハ構フコトハナイ
(元尾崎)
「強暴」々々
(大尾崎)
「強暴」々々
(淸岡)
「強暴」々々
(南部)
「強暴」々々
(西)
「強暴」々々
(村田)
「強暴」々々
(渡)
「強暴」々々
(委員長)
外ノ處ハ宜イガ天災ガ這入リサヘスレバ良シイ
(松岡)
強暴ト云フ言葉ヲ使テ天災ガ強暴ニ這入ルト云フハ無理デス
(槇村)
強暴災害ナラ、強暴災害ト書カント分ラン
(委員長)
強暴トヤツテ、人證ノ處丈ケ強暴又ハ天災トヤツテハドウカ
(元尾崎)
詐害ハ這入ルト定義ヲシテモ良シイ
(委員長)
暴威ハ良イカモ知レン併シ占有ノ處丈ケ書換ヘサヘスレバ良シイカモ知レン
(南部)
暴威ハオカシイ、又良イ字ガ出レバ格別多數ニ依テ強暴トシテ定メテ置キマシヨウ
(村田)
「強暴」デ良シイ
(西)
此間ノ暴害モ強暴ニスルカ
(委員長)
能ク註解シテ置カント往カン、強暴ノ中ニ天災モアルト云フコトヲ書イテ置カント往カン
(南部)
字畫ニ、書イテ置キマシヨウ
(委員長)
ソレデハ之デ置キマス
第四百七十一條第三「合意上ノ免除」トシ同條末項「其他義務ハ免責時效ノ條件ノ具備スルトキハ之ヲ消滅シタルモノト看做ス」ト改ム
尙ホ「強暴」ハ「暴威」トスルノ說アリタルモ多數ニテ遂ニ「強暴」トスルニ決ス(強暴ノ中ニハ天災ヲモ含ムノ意義ナリ)