法律取調委員会 民法草案再調査案議事筆記 第12回
参考原資料
- 法律取調委員会 民法草案財產編再調査案議事筆記 , 自 第十一回 至 第十三回 [国立国会図書館デジタルコレクション]
備考
- 未校正のテキストデータです.
民法財產篇再調査案第十二回議事筆記
自第五百四十九條至第五百五十五條
明治二十一年十月十五日午前八時四十分開會
第五百四十九條朗讀ス
第五百四十九條 債權ノ讓受人カ其讓受ヲ債務者ニ吿知シタルノミニテハ債務者ハ讓渡人ニ對シテ從來有セル法律上ノ相殺ヲ以テ讓受人ニ對抗スルノ權利ヲ失ハス
債務者カ讓渡人ニ對シ旣ニ得タル法律上ノ相殺ノ權利ヲ留保セス讓渡ヲ承諾シタルトキハ債務者ハ讓受人ニ對シ其權利ヲ申立ツルコトヲ得ス
右二箇ノ場合ニ於テ債務者カ相殺ヲ申立ツルコトヲ得サリシ金額又ハ有價物ヲ讓渡人ヲシテ自己ニ償還セシムルノ權利ヲ妨ケス
(栗塚)
一項ノ新舊債務者ト云フ字ハ少シ誤リデ御座イマス矢張リ二人ノ債務者デ御座イマス又新舊ト云フコトハ申センノデ御座イマス總テ新舊ノ字ハ二人ノ債務者ト申ス方ガ寧當ノ樣デ御座イマス原文デモ新舊ト云フコトニ書ケナイノハ其譯ダロウト思ヒマス
(淸岡)
二人ノ債務者ハ矢張リ債務者ダロウ
(栗塚)
未ダ新舊ニナリマセン
(松岡)
明カニ舊債務者ヲ免除スルノ意ヲ表セザルトキハト元トモ舊ト云ツテ居ル矢張リ舊ノ人ト今度受ケル入ト連帶ダロウ
(栗塚)
上デ申シマシタ通リ舊債務藩ヲ免除シテ始メテ新債務者ガ出來ルノデ御座イマス
(元尾崎)
矢張リ新舊デ宜シイ何レ跡カラノガ一人アルカラ
(淸岡)
新舊ニ違ヒナイ
(元尾崎)
新舊二人ト書イテモ宜シイ
(村田)
英文デモ新舊トハ書カン
(松岡)
上ガ新舊ト云バレルナラ此處モ新舊ト云フ方ガ分リ良イ
(南部)
舊ガ止マツテ新ラシイ債務者ニナツタト云フコトハナイ假令バ元ト參事院ト云フ樣ナ字トハ違フ
(村田)
免除スル意思ヲ表スレバ新ノ字ガ出テ來ルガ承諾シナイノガアルカラ
(松岡)
ソレデモ舊ノ債務者ト新ノ債務者ダロウ
(南部)
處ガ新ノ字ハ書イテハナイ五百二十條デモ完全囑託及ビ除約ノ場合ニ於テモトアル
(元尾崎)
態々二人ト換ヘナケレバナラン程ノコトハナイ
(松岡)
二ツ並ンデ來レバ新舊ト云フテ差支ナイ
(南部)
新舊ト換ヘル必要ヲ見ナイ換ヘテ元トノ意味ヲ違ヘルヨリ前ノ儘ガ宜イ
(三島)
後ノ項ニモ第二ノ債務者トシテアル
(南部)
新舊債務者兩存スト云フノハ可笑シイ
(北畠)
宜シウ御座イマシヨウ
(委員長)
新舊デ宜シウ御座イマスカ
(栗塚)
次ノ項モ隨テ改メマシタガソレガ惡ルケレバ矢張リ新舊デ御座イマス免除ハ免ジタルトキト致シマス釋放ヲ免除ト致シマシタカラ免除ハ解脫ト成リマシタ
(松岡)
之レハ解脫トハ言ヘマセンカ
(栗塚)
免ズルトカ解クトカデ宜シイ
(委員長)
免ジタルトキデ宜シカロウ
(松岡)
前條ニ除約補約ト云フ字ガ出タガ除約ト云フ字ハ良シイカネ
(淸岡)
免除ト云フカラ免除ガ宜シイガ免ノ字バカリニシテ除約ト云フト可笑シフナル
(栗塚)
此處デ免除ト云フノハ釋放ト云フコトニ取ラレテハ困ルカラ免ズト致シマシタノデ御座イマス
(松岡)
除約ト云フコトハ宜シイカネ
(栗塚)
免約トヤリマスカ
(淸岡)
寧ロ免約ノ方ガ宜カロウ
(北畠)
免除ト云フト五人ノ内一人ヲ云ツタ樣ニナル
(南部)
宜イ字ガアレバ變ヘマシヨウ
(村田)
除約ニ因リデハアリマセンカ
(三島)
用方ニ因ル不動產ト云フ樣ナモノデス
(栗塚)
因レルトヤリマスカ
(淸岡)
因ルデ宜シイ
(委員長)
兩存スハ宜シイカ
(栗塚)
「補約成リテ債權者ハ債務者ノ全部ニ付キ第二ノ債務者ヲ得」トヤロウト思ヒマシタガ前ノ新舊債務者トナリマシタカラ止メマシタ全部ニ付テ二番目ノ債務者ヲ得ルゾヨト云フノデ御座イマス
(村田)
此處ハ單純デアリマセンカ
(委員長)
前ハ新舊債務者トアツテモ後チハ第二ノ債務者トシタラ宜カロウ
(村田)
第二ノ債務者バカリデ連帶デハナイ
(元尾崎)
連帶ダ
(松岡)
終リノ處ハ新ノ人バカリ指シテ宜シイ前ノ方ハ一人ダカラ元トノ譯ニハ然レドモ其債務者ハ連帶ノ義務ナシトアル
(栗塚)
此債務者ヲ二人ノ債務者ト見テモ宜シイ
(淸岡)
修正ガ宜シイ
(委員長)
之ニ反セル場合卽チ免ジナイトキハ單一補約成リテト云フノハ一方ノ者ハ單一ノ補約ガ成リ故ニ第二ノ債務者ガ得ラレル之ニ反スル場合ト云フノハ文章ガ之デ分ルカ知ラン
(渡)
斯ウ修正シテ原文ヨリ大イナル利益ガアルト云フコトハナイ何レデモ同ジコトナラ原案ノ方ガ原書ニ能ク合フ
(松岡)
然シ上ノ方デ見ルト二人ノ債務者ガ連帶ニテ訴追セラルルト云フ此處デ新債務者ガ連帶ノ義務ニ任ゼズト云フテ舊ノ人ヲ言ハント上ト對セン樣ニナル連帶ト云フト何レト何レトト言ハナケレバナラン
(栗塚)
更改ナラ新舊ガ出ルガ囑託デハ新舊ハナイ王政御維新ガアツテ舊幕ト云フコトガ言ヘル其處デ註ニハ新舊ト云フ字ガ見ヘン
(松岡)
主トカ從トカ言ヘバ宜シイ
(栗塚)
十九條ノ舊債務者ト云フノハ更改デアルデアロウト云フ處カラ舊ノ字ガ出タノデ御座イマス更改ガナイカラ舊ト云フコトガ云ヘル此處ハ囑託ノ處デス囑託ガ充分ナラバ及ビ更改ヲ爲サズ斯ウ云フ場合デナケレバト云フノデス
(松岡)
始メカラ第一ト書ケバ宜シイガ始メヲ舊ト書イテ後チヲ二人ト云フカラ可笑シイ
(淸岡)
新舊ノ字ヲ理窟ヲ付ケテ刪ル爲メニ上ノ舊ノ字ヲ刪ルト理窟詰メニナル
(村田)
後チヲ二人トスレバ始メノ舊ヲ第一トシナケレバナラン併シ原文ニハ舊トアル
(南部)
第一トスルガ宜カロウ
(元尾崎)
二人ト云フ字ガ入レタケレバ新舊二人ノ債務者トスルガ宜シイ
(淸岡)
假リニ新舊ト見ナケレバナラン
(栗塚)
更改ガアツテ始メテ新舊ガ言ヘル
(淸岡)
ソウスルト更改ガナイトキハ第一ノ債務者ト第二ノ債務山着トモ言ヘン
(栗塚)
囑託ガアリマスカラ言ヘマス
(淸岡)
第一、第二ト云ヘバ第一ハ舊デ第二ハ新ダ
(栗塚)
第一ノ債務者トシテ二人ノ債務トシテハ如何デス
(松岡)
ソウスルト且債權者ハ第一第二ノ債務者ヲトシナケレバナリマセン
(南部)
ソレハ兩債務者デ宜シイ
(村田)
第一ノ前ノハ囑託ノ場合ヲ云フノデ二項ハ隨意ノ干渉ダカラ違ウ
(南部)
不完全ノ囑託ダカラ更改ガ行ハレン
(元尾崎)
舊譯ニハ從前ノ債務者ヲトアルソレデモ宜シイ
(村田)
一項ノ處デ第一ト云フノハ可笑シイ
(松岡)
再調査ノ通リデ意味ニ間違ハ起ラン
(淸岡)
新舊者ガアツテモ更改ニナツタトキモアリナラントキモアル
(栗塚)
更改ガナケレバ新舊トハ云ヘマセン
(淸岡)
初メニ舊債務者ト云ヘバ後ニ新舊ト云フノハ當リ前ダ
(栗塚)
ソレハ初メニ舊債務者トアルノハ佛蘭西文ニ第一ノ債務者ト明カニ書イテアルノヲ譯シ違ヘタノデ御座イマス
(元尾崎)
二項ノ場合デハ新債務者ハ連帶ノ義務ニ任ゼズ前ノハ連帶デ訴追スルト云フ何ゼ違ヒマスカ
(栗塚)
一項ハ「舊債務者ヲ第一ノ債務者トシテ且債權者カ二人ノ債務者ヲ連帶禍ニテ」トシテ三項ハ「債權者ハ第一ノ債務者ヲ許シタルトキハ債務者ハ全部ニ付キ第二ノ債務者ヲ得」トシテモ宜シイ
(松岡)
且債務者ハ第一第二ノト云ハナケレバナラン二項ノ債權者ガ第一ノ債務者ハ舊債務者デ宜シイ
(栗塚)
舊債務者デモ宜シウ御座イマス
(淸岡)
矢張リ第一債務者トスルガ宜シイ未ダ行ハレン前ダカラ
(元尾崎)
報吿委員ノ說ガ宜シイ
本條第一項「舊債務者」ヲ「第一ノ債務者」ト改メ「免除スル」ヲ「免スル」ト改メ新舊債務者ヲ第一第二ノ債務者ト改ム第二項「免除シタル」ヲ「免スル」ト改メ「單一ノ」ノ下左ノ如ク改ム
單一ノ補約成リテ債權者ハ債務ノ全部ニ付キ第二ノ債務ヲ得然レトモ此債務者ハ連帶ノ義務ニ任セス
第五百二十條朗讀ス
第五百二十條 完全囑託及ヒ除約ノ場合ニ於テ新債務者カ債務ヲ辨濟スルコトヲ得サルトキハ債權者ハ囑託又ハ除約ノ當時ニ於テ新債務者ノ既ニ無資力タリシコトヲ知ラサルニ非サレハ舊債務者ニ對シテ擔保ノ求償權ヲ有セス但特別ノ契約ヲ以テ此擔保ヲ伸縮スルコトヲ得
(栗塚)
契約ハ合意ト改メマス
本條ハ「契約」ヲ「合意」ト改ム
第五百二十一條朗讀ス
第五百二十一條 債權者ノ交替ニ因ル更改ハ債務者ト新舊債務者トノ承諾アルニ非サレハ成ラス
(元尾崎)
證文ヲ勝手ニ賣ルコトハナランカ
(南部)
讓渡ハシテモ宜シイ
(淸岡)
之ハ第一第ニトシナイデモ宜シイカ
(栗塚)
之ハ更改シタノデ御座イマスカラ宜シウ御座イマス
本條ハ原按ニ決ス
第五百二十二條朗讀ス
第五百二十二條 債權者カ第五百二十五條ニ定メタル如ク其債權ノ抵保ヲ留保シ或ル人ニ囑託シテ自己ノ債務者ヨリ辨濟ヲ受ケシムルトキハ其受囑託人ハ債權ノ讓渡ニ關スル第三百六十七條ノ規定ニ從フニ非サレハ第三者ニ對シ其債權ヲ主張スルコトヲ得ス
(槇村)
之ハ擔保ニナリマシタカ
(栗塚)
抵保ハ擔保ニナリマシタ
(南部)
報吿委員ハ或ル人トアルノハ原由ガ何ノ爲メカ分ランカラ或ハ他人ヲ惠ム爲メ或ハ他人ニ對スル債務ヲ免ルル爲メ其他人ニ囑託ストヤリマシタ
(松岡)
此受囑託入ト云フノハ分ラン字ダ
(栗塚)
此條ノ上ニ留保ト書イテアリマスガ其債權ノ擔保ト云フノハ總テノ擔保ニ繋ルカドウカト云フテ起按者ニ間フテヤリマシタ處ガ物上擔保ト起按者ガ直シテ來マシタソレデ留保ト云フ字ハナクナリマシタ
(松岡)
兎モ角モ物上ノ字ヲ入レマシヨウ
(栗塚)
我々ノ考ヘデハ他人ヲ惠ム爲メ他人ニ對スル債務ヲ免カルル爲メトアルノヲ削ツテアルガ借テ簡略ニナツテ宜シイカト云フト少シ意味ガ足リナクナルト思ヒマス或ル人ニ囑託シテ云フト貴君金ヲ取テ來テ下サイト云フ樣ニ聞ヘマスソレデハイケマセン私ハ誰某ニ貸シガアルカラ御前サンノ借リヲ拂フ代ハリニ誰某カラ取ツテ下サイト云フノデ御座イマス又御前サンニ金ヲ上ゲタイガ誰某ニ貸ガアルカラ取ツテ下サイト云フ意味ガ原文ニハ二ツアツタノデ御座イマスソレデ或ハ他人ヲ惠ム爲メ或ハ他人ニ對スル債務ヲ免ルル爲メ其他人ニ囑託シテ自己ノ債務者ヨリト致シマシタ
(元尾崎)
其人ニ囑託シガ宜シイ
(栗塚)
其人デモ宜シウ御座イマス
本條ハ左ノ如ク改ム
債務者カ第五百二十五條ニ定メタル如ク其債權ノ物上擔保ヲ留保シ或ハ他人ヲ惠ム爲メ或ハ他人ニ對スル債務ヲ免カルル爲メ其人ニ囑託シテ(以下原文ノ通リ)
第五百二十三條朗讀ス
第五百二十三條 債權者ト連帶債務者ノ一人又ハ不可分債務者ノ一人トノ間ニ爲シタル更改ハ他ノ債務者及ヒ保證人ヲシテ其義務ヲ免カレシム
然レトモ債權者カ右共同債務者及ヒ保證人ノ同意ヲ更改ノ條件ト爲シタル場合ニ於テ共同債務者及ヒ保證人ノ之ヲ拒ムトキハ更改ハ成立セス
連帶債權者ノ一人ト爲シタル更改ハ其債權者ノ持分ニ付テノミ債務者ヲシテ義務ヲ免カレシム
性質ニ因ル不可分債務ノ債權者ノ一人ト更改ヲ爲シタルトキハ他ノ債權者ハ全部ニ付キ訴追ノ權利ヲ有ス但第四百六十六條ニ定メタル替償ノ負擔ニ任ス
(栗塚)
替償ヲ償金ト直シテ「償金ヲ負擔ス」トヤリマシタ
(松岡)
元トハ負擔スルコトヲ要ストアル
(委員長)
末項ニ性質ニ因ルト云フコトヲ入レタノカ
(栗塚)
起案者ガ入レマシタ三項ノ持分ニ付テト云フコトハ債權者ノ部分トヤリマシタカラ此處丈ケ持分トシテハ分ラント思ヒマス
(松岡)
皆持分デハナイカ
(栗塚)
商法デハ持分トアリマス民法ハ皆ナ部分トシタ方ガ良カロウト思ヒマス併シ會社ノ處ハ持分ト云フ字ガ出來マシタ
本條第三項「持分」ヲ「部分」ト改ム第四項「替償ノ負擔ニ任ス」ヲ「償金ヲ負擔ス」ト改ム
第五百二十四條朗讀ス
第五百二十四條 保證人ト爲シタル更改ハ反對ノ意思アル證據ナキトキハ保證ニ付テノミ之ヲ爲シタリトノ推定ヲ受ケ主タル債務者ニモ他ノ保證人ニモ義務ヲ免カレシメス
本條ハ原案ニ決ス
第五百二十五條朗讀ス
第五百二十五條 舊債權ノ物上抵保ハ新債權ニ移ラス但債權者之ヲ留保シタルトキハ此限ニ在ラス
此留保ハ共同債務者、保證人又ハ第三所持人ノ手ニ存スル抵保財產ニモ之ヲ行フコトヲ得
此留保ニ付テハ更改ノ相手方ノ承諾ノミヲ必要トス
右ノ場合ニ於テ財產ハ舊債務ノ限度ヲ超エテ抵保ヲ負擔セス
(粟塚)
抵保ハ擔保トヤツテ第三所持人ハ第三所持者トナリマス
(元尾崎)
更改ノ相手方ハ誰レデスカ
(南部)
債權者ト債權者ト更改スレバ第二ノ債權者デス
(栗塚)
債務者ト債務者トナレバ第二ノ債務者デ御座イマス
(松岡)
之ハ質ハ問スルト云フテアルガ何ヲ質問スルノダロウ
(南部)
己レニ對シテ云フコトヲ質問スルノダ
(栗塚)
起案者ガ負擔スル財產ト云フノヲ擔保ト直シマシタカラ宜シウ御座イマシヨウ
(元尾崎)
債權ヲ外ヘ移シタトキハ擔保ガナクナルト云フノハ可笑シイ
(南部)
更改デ御座イマスカラ讓渡ハ別デスソレダカラ登記ヲシナケレバナラン五百二十五條ノ通リニナルノデス
(委員長)
仕舞ヒバ擔保ヲ負擔セズシテカ
(栗塚)
超ヘテ負擔セズデ御座イマス舊債務者ノ限度内ニホカ行カン
(委員長)
擔保ヲ負擔セズデハ字ガ重ナル樣ニナル
(村田)
擔保セズデモ宜シイ
(栗塚)
擔保ハ舊債務ノ限度ヲ超ヘテ負擔セズデ御座イマス
(元尾崎)
擔保セズデ宜シイ
(松岡)
擔保財產ハトシタラ良カロウ
(村田)
擔保財產ト云フノハ可笑シイ
(栗塚)
負擔セズト云フノハ穴ガ開イテ居ラン其財產ハ擔保カラ喰付カレテ居ラント云フノデ御座イマス
(委員長)
此前ノ二項ノ擔保ヲ受ケテ居ルカラ負擔セズデモ宜シイ
(松岡)
擔保ニ任ゼズ
(槇村)
「舊債務ノ限度ヲ超ヘテ負擔セス」デ良カロウ
(淸岡)
此通リデ宜シイ
本條「抵保」ヲ「擔保」ト改ム
第二項「第三所持人」ヲ「第三所持者」ト改ム
第三節 契約上ノ免除
第五百二十六條朗讀ス
第五百二十六條 債務ノ全部又ハ一分ニ付テノ契約上ノ免除ハ有償名義又ハ無償名義ニテ之ヲ爲スコトヲ得
有償名義ノ免除ハ事情ニ從ヒ代物辨濟、更改、和解又ハ解除ヲ成シ無償名義ノ免除ハ生贈ヲ成ス但此第二ノ場合ニ於テハ公式ノ特別規則ニ從フコトヲ要セス
協階契約ヲ以テ破產シタル債務者ニ許與スル一分ノ免除ハ商法ヲ以テ之ヲ規定ス
(栗塚)
生贈ハ贈與トナリマス協階契約ハ穩カデアリマセンガ商法デ協階契約ト決シテ居リマスカラ改メルコトハ出來マセン
(淸岡)
協階契約ハ良クナイカラ外ニ何カ良イ字ガアレバ換ヘタイ
(栗塚)
外ニ何モアリマセン
(村田)
但此第二ノ場合ニ於テハト云フノハ無償名義ノ場合ニ於テハト云フタラ良カロウ
(松岡)
合意上ノ免除ハ四百七十一條ニ免除トナツテ居ルカラ之モ免除デ良カロウ
(栗塚)
四百七十一條ノトキ第三合意上ノ免除ト今村ガ入レテ來リマシタ後免責時效ト云フ處ヲ直ストキニ申ス積リデ御座イマシタ
(松岡)
ソレハ同ジコトダ相殺デモ法律上ノ相殺モ合意上ノ相殺モアルカラ
(渡)
アツテモ宜シイ
(大尾崎)
有償名義ナラ公式ニ依ラナケレバナラン無償ナラ依ランデ宜シイト云フノハドウ云フ譯ダロウ
(栗塚)
當リ前ナラバ贈與ニナルカラ公式ニ依ラナケレバナランガ免除ノトキナラ宜シイト云フ斷リ書キデス
(元尾崎)
免除ダカラシナイデ宜シイト云フノカ
(栗塚)
此處デ云フノハ無償名義ハ贈與ニナルカラ公證人ノ面前デヤルカト云フニ免除ダカラヤランデ宜シイ
(元尾崎)
ソレナラ但公式ノ特別ノ規則ニ從フコトヲ要セズデ宜シイ第二ノ場合ト云フト前ハシナケレバナラン後ニハシナイデモ宜シイト云フコトニナルカラ此第二ノ場合ニ於テヲ削ルガ宜シイ
(南部)
ソウスルト上ノ解除ヲ成スト云フ處デ切テ又ト云フ字ヲ入レナケレバナラン
(栗塚)
「免除ヲ成ス又無償名義ノ免除ハ贈與ヲ成ス然レトモ公式ノ特別規則ニ從フコトヲ要セス」
(元尾崎)
ソレデ宜シイ
本條第二項左ノ如ク改ム
有償名義ノ免除ハ事情ニ從ヒ代物ノ辨濟、更改、和解又ハ解除ヲ成ス又無償名義ノ免除ハ贈與ヲ成ス然レトモ公式ノ特別規則ニ從フコトヲ要セス
第五百二十七條朗讀ス
第五百二十七條 債務ノ免除ハ明示又ハ默示ヨリ成リ推定ヨリ成ラス但法律ニ特定シタル場合ハ此限ニ在ラス
本條ハ原善按ニ決ス
第五百二十八條朗讀ス
第五百二十八條 主タル債務者ノ債務ノ免除ハ保證人ヲシテ其義務ヲ免カレシム
連帶債務者ノ一人ノ債務ノ免除ハ他ノ債務者ヲシテ其債務ヲ免カレシム但債權者カ他ノ債務者ニ對シテ其權利ヲ留保シタル場合ハ此限ニ在ラス此場合ニ於テモ免除ヲ受ケタル債務者ノ部分ヲ控除スルコトヲ要ス
不可分債務者ノ一人ノ債務ノ免除ニ付テモ亦同シ然レトモ性質ニ因ル不可分債務ノ債權者カ他ノ債務者ニ對シ其權利ヲ留保シタルトキハ債權者ハ免除ヲ受ケタル債務者ノ部分ヲ扣除シ殘餘ノ部分ニ付キ其權利ヲ行フ
(栗塚)
「主タル債務者ニ爲シタル免除ハ其保證人ヲ免ス」ト致シマス
(元尾崎)
主タル債務者ノ債務ノ免除デ良カロウ主タル債務者ニ爲シタルト云フト何ヲスルノカ分ラン
(栗塚)
處ガ衣ギノ項カラ此修正ガ起ツタノデス其人ハ一人ガ免除ヲシ樣ニ聞ヘマス爲シタルト云ハント次ギノ項デ分ランソレデ一項ハ主タル債務者ニ爲シタル債務ノ免除ハ其保證人ヲ免ズト致シマス二項ハ連帶債務者ノ一人ニ爲シタル免除ハ他ノ債務者ヲ免ズトアリマス
(渡)
爲シタル丈ケデ宜シイ
(委員長)
爲シタル丈ケデ宜シイ
(栗塚)
ソレデハ一項二項三項共ニ爲シタルヲ入レマスソレカラ第三項ノ控除シヲ計算上トシタイノデ御座イマス
(松岡)
計算上ハ入ランコトダ
本條第一項「主タル債務者ノ」トアルヲ「主タル債務者ニ爲シタル」ト改ム第二項三項「一人ノ」トアルヲ「一人ニ爲シタル」ト改ム
第五百二十九條朗讀ス
第五百二十九條 保證人ノ一人ノ債務ノ免除ハ主タル債務者及ヒ他ノ保證人ヲシテ其債務ヲ免カレシム
(栗塚)
一人ニ爲シタル主タル債務ノ免除ト入レマシタ保證人ガ義務ヲ免カレタ丈ケデハナイカラ
(淸岡)
主タル債務者ヲ置イテ保證人ト云フノハ可笑シイ
(松岡)
二十九條ノ意味カラ來ルト保證人ノ爲シタル更改トガアル
(元尾崎)
保證人ハ本人ガ拂ハナイトキ拂ウノダカラ
(南部)
保證人ガ訴ヘルコトガ出來ル保證人ヲ先キヘ訴ヘルコトガ出來ル其場合ニ抗辯ガ出來ル債權者ガ其債務ヲ免ジテ仕舞ウト云フコトガナイトハ云ヘン
(元尾崎)
併セテ免ズルト云ヘバ宜シイガ保證人ノ保證バカリ免ズルト云フコトガ云ヘルカ知ラン
(南部)
保證人ヲ免ズルノデハナイ債務ヲ免ズルノダ
(委員長)
主タル從タルヲ云ハンデモ保證人ガ主タル債務ノ爲メニシテ居ルノダカラ其外ニハナイ
(栗塚)
保證人ヲシテ其義務ヲ免カレシメト云フコトヲ申シマシタカラ保證人ノ義務ヲ免カレシメト云フコトト區別スル爲メニ主タル債務ト入レマシタ此處デハ栗塚ガ南部サンノ保證人デアレバ南部サンノ金ハ宜シイト云ツテ免除スルノデ御座イマスカラ
(松岡)
ボアソナードノ說デハ人ガ怪シイト思フガ理窟ガアルト云フテ居ル
(栗塚)
義務免除ハ有償名義アリ無償名義アリト五百二十六條ニアリマス無償名義ナレバ文句ハ起ランガ有償名義ノトキハ免カレシメンノガ當リ前デス貴君ガ南部サンニ金ヲ貸シテ保證人ノ私カラ金ヲ拂ツテ免除シタソレデ私ガ訴權ガアルカト云フコトデス無償名義ノトキハ論ハナイガ有償名義デ貴君ニ私ガ金ヲ上ゲテ免除ヲ得タトキ私ガ係ツテ行ケルカト云フトソレハ行ケンゾヨ外ノ事ニナツテ仕舞フゾヨ
(松岡)
ボアソナードノ說ハ保證人ニ爲シタ債務者ノ免除ノ效力ハ云々トアル
(元尾崎)
之ハ間違ウ
(栗塚)
間違ヒマセン免除ト云フモノハ無償名義丈ケナレバ入ラン樣デ御座イマスガ保證人カラ金ヲ貸シタトカ金ヲ借リタトカ云フトキハ此ノ事ヲ云フタ方ガ宜シイ
(松岡)
例ヲ擧ゲテ御覽ナサイ
(栗塚)
千圓ノ賣買デ其千圓ノ物ノ代ハリニ私ガ松岡サンニ米ヲ五百俵上ゲマスガ南部サンノ金ヲ免除シテ下サイ私ガ保證スルノモ嫌忌ダカラ御免ジ下サイト云フソンナラ免ソウト云フトキハ代物辨濟デス其時ハ米百俵ヲ私ガ取ツタナレバソンデ免除ガアルト看做スゾヨ其時私ノ米ヲ百俵取ツタ爲メニ南部サンノ義務ヲ免カレ外ノモノモ義務ヲ免カレテ仕舞ウ
(淸岡)
ソレハ保證人デハナイ主タル債務者ヲ免除スルノダ
(松岡)
債務ヲ免カレシムルトハ云ヘン
(栗塚)
債權者ト債務者トノ關係ガ全ク斷ツテ仕舞ツタノデス
(松岡)
入ランコトダ
(村田)
アル方ガ宜シイ
(淸岡)
置イテモソレ程考究シテ云ヘバ何程カノ道理モ出來マシヨウガコンナコトヲシテ置クト問違ウ
(栗塚)
大審院デ是レカラ先キ研究スルニハ斯ウ云フコトノアル方ガ宜シイ
(元尾崎)
一條丈ケ丸ルデ削ルガ宜シイ
(村田)
置ク方ガ多數ダ
(栗塚)
主タル債務ノ免除トシテハ如何デス
(村田)
入レヨウ
本條ハ左ノ如ク改ム
保證人ノ一人ニ爲シタル主タル債務ノ免除ハ債務者及ヒ他ノ保證人ヲシテ他ノ債務ヲ免カレシム
第五百三十條朗讀ス
第五百三十條 債務ノ免除ヲ受ケタル債務者及ヒ保證人ハ債權者ヨリ共通ノ免除ヲ得ル爲メ實際供與シタル數額ニ付テノミ他ノ共同債務者及ヒ共同保證人ニ對シテ求償權ヲ有ス
本條ハ原按ニ決ス
第五百三十一條朗讀ス
第五百三十一條 連帶債務者ノ一人ニ對シ單ニ其連帶ヲ免除シタルトキハ其一人ヲシテ他ノ債務者ノ部分ヲ免カレシメ且他ノ債務者ヲシテ其一人ノ部分ヲ免カレシム
又契約上ノ不可分債務者ノ一人ニ對シ單ニ其不可分ヲ免除シタルトキモ亦同シ性質ニ因ル不可分債務ニ付テハ債權者ハ債務者ノ各自ニ對シ全部ノ要求ヲ爲スノ權利ヲ失ハス然レトモ免除ヲ受ケタル債務者ノ負擔ス可キ債額ヲ如除スルコトヲ要ス
(栗塚)
然レドモ以下ヲ起案者ガ改メテ參リマシタ然レドモヲ削ツテ「免除ヲ受ケタル債務者ニ鍬シテモ亦全部ヲ要求スルコトヲ得但他ノ債務者ノ負擔スヘキ債額ヲ扣除スルコトヲ要ス」ト直シテ參リマシタソレカラ第二項ノ亦以下ハ削ラナケレバナリマセン一項ニ矢張リ元トノ部分ヲ入レレバ宜シウ御座イマス合意上ノ不可分トアツタノヲ再調査デ不可分ヲ二ツ云ハント可笑シイト云フノデ入レマシタカラ贅文デ御座イマス「共同債務者ノ一人ニ對シ單ニ連帶又ハ合意上ノ不可分ノ免除アリタルトキハ其一人ハ他ノ債務者ノ部分ヲ免カレ且他ノ債務者ハ其一人ノ部分ヲ免カル」トアリマシタガ「レシム」ハ先刻修正ガ御採用ニナリマセンカラ其儘ニ致シマス二項ノ亦同ジト云フ處マデハ入ラナクナリマスカラ削リマシテ性質ニ因ル不可分債務ノ免除ニ付テハト致シマス
(元尾崎)
貴樣持ツテ來ルニ及バント云フテ持ツテ行クノカソンナラ何ノ爲メニ免除シタノカ
(栗塚)
義務ハ免除シテヤルカ品物ヲ取リニヤルカ矢張リ行ツテモ宜シイ其代バリ計算シナケレバナラン
(村田)
今度入レテ來タノハ惡ルイ
(松岡)
不可分債務ノ免除デハ良クナイ
(南部)
不可分ノミノダ
(栗塚)
不可分ノ免除ニ付テハデ宜シウ御座イマス
(松岡)
之ハ「ノミ」ト入レルガ宜シイ
(栗塚)
「ノミノ」デ宜シウ御座イマス
(元尾崎)
直シタノハ良クナイ
(栗塚)
何ゼ直シタカト云フト五百二十八條ノ終リノ然レドモカラ先キヲ御讀ミ下サイ此處ト同ジコトヲ書イテアツタノデ御座イマス
(元尾崎)
同ジコトダ
(南部)
前ノハ不可分債務ノ一分ノ免除此處ハ不可分ノミノ免除ダカラ違ウ
(元尾崎)
併シ結果ハ同ジコトダ
(栗塚)
結果ハ同ジコトダト云フテヤリマシタ處ガ義務ヲ免除シタ處ハ前デ宜シイ此處ハ不可分ヲ免カレシメタ處カラ全部ヲ要求スルコトヲ得ト書クト云フノデ御座イマスカラソレ丈ケノ違ヒデス
(渡)
元トノ通リニシヨウ
(栗塚)
併シ元トノ通リニアルト南部サント松岡サント淸岡サントガ私ニ馬ヲ一匹下サラナケレバナラントキニ若シ債務ヲ免カレザレバ南部サンノ債務ヲ免カレサセタトキハ私ハ二十八條デ南部サン係ツテ行ケル南部サンニ係ツタトキハ跡デ私ガ南部サンニ金ヲ返サナケレバナラン誰レノ部分ヲ返サナケレバナランカト云フト南部サンノ立替ヘタ三人ノ部分ヲ南部サンニ返サナケレバナランガ三十一條ハ南部サンニ返スニ及バン南部サンニ同ジ樣ニ係ツテ全部ノ要求ヲスルニ返スモノハ一ツモナイト云フ差ガアルノデ御座イマス一ツハ義務ヲ免カレ一ツハ義務ヲ免カレテ居ラント云フ差ガアリマスカラ其差ハ見セテ置カナケレバナリマセンガ此修正デ其意味ガ分ラント亦修正サセナケレバナリマセン
(元尾崎)
結果ハ同ジコトデス南部サンニ三分ノ一返シテヤレバ宜シイノダ
(栗塚)
二十八條ハソウデス
(元尾崎)
是レデモ返スノデス
(栗塚)
之ハ返スニハ及バン
(松岡)
不可分ヲ免カレタトキハ可分丈ケ擔當シナケレバナラント云フノダロウ
(栗塚)
其差ガアルノデス義務ヲ免カレテ居ルノト不可分丈ケヲ免カレタ丈ケノ差ガ無ケレバナリマセン
(松岡)
不可分デアルトキ十分ノ一分ヲ免除シタトキハ他ノ債務者ハ不可分デナクシテ全部デ行カレルゾヨ
(南部)
債務者ノ上ニ他ノ債務者ト云フ字ガナクナツタカラソレガ大變違ウ
(松岡)
之ハ悉皆書キ直サナケレバ分ラン
(栗塚)
但カラガ惡イノデス
(元尾崎)
英文デハ一人ヲ免除シタトキハ外ノ債務者ノ各自ニ對シテ要求ガ出來ル併シナガラ免除シタモノノ持分ヲ計算シテ返サナケレバナラント書イテアル
(栗塚)
ソレハ間違ヒデス不可分ノミノ免除ダカラ
(松岡)
御前ハ不可分ヲ許スト云フトキ其許シタ人間ニ全部ヲ拂ヘト云フコトハ出來ナイ
(栗塚)
併シ不可分ダカラ仕方ガナイ
(元尾崎)
二十八條ノ二項ト同ジコトダ
(栗塚)
本條ハ明日ノ議場マデ御預リヲ願ヒマス
(委員長)
穩カデナイ之ハ報吿委員デ調ベテ貰ウコトニ致シマシヨウ
本條ハ未定
第五百三十二條朗讀ス
第五百三十二條 債權者ハ左ノ場合ニ於テハ債務者ノ一人ニ對シ單ニ連帶又ハ契約上ノ不可分ヲ免除シタリトノ推定ヲ受ク
第一 債權者カ擔保ノ權利ヲ留保セスシテ債務者ノ一人ヨリ其債務ノ部分ナリト明言シタル金額又ハ有價物ヲ受取リタルトキ
第二 債權者カ擔保ノ權利ヲ留保セスシテ債務者ノ一人ニ對シ其債務ノ部分ナリト稱シテ裁判上ノ請求ヲ爲シタルニ其一人請求ニ承服シ又ハ辨濟ヲ爲ス可キ旨ノ言渡ヲ受ケタルトキ
第三 債權者カ異議ヲ留メスシテ債務者ノ一人ヨリ十ケ年間引續キ其負擔ス可キ利息又ハ年金ノ部分ヲ受ケタルトキ
(栗塚)
第三ノ受ケタルトキトハ受取リタルトキトナリマス
(元尾崎)
良カロウ
(栗塚)
十ケ年ヲ置キ場所ヲ違ヘマシテ債權者ガ異議ヲ留メズシテ十ケ年間引續キ債務者ノ一人ヨリ其負擔スベキト致シタイノデ御座イマスソレデナイト引續イテ受取タルトキトナラントイケマセンカラ
(元尾崎)
ソレガ良カロウ
(栗塚)
其負擔スベキハ入ラン言葉デ御座イマシヨウ
(南部)
債務者ノ利息デモ宜シイ
(栗塚)
債務ノ利息ト致シマシヨウ
(委員長)
負擔スベキハアツテモ宜シイ
本條第三ハ左ノ如ク改ム
債權者カ異議ヲ留メスシテ十ケ年間引續キ債務者ノ一人ヨリ其負擔スヘキ利息又ハ年金ノ部分ヲ受取リタルトキ
第五百三十三條朗讀ス
第五百三十三條 保證人ノ一人ノ保證ノミヲ免除シタルトキハ主タル債務者ハ其債務ヲ免カレス他ノ保證人ハ保證ノ免除ヲ受ケタル一人ノ部分ニ付キ其義務ヲ免カル然レトモ保證人ノ間ニ連帶ヲ爲セル場合ニ於テ債權者カ第五百二十八條第二項ニ準依シ他ノ保證人ニ對シテ自己ノ權利ヲ留保セサルトキハ他ノ保證人ヲシテ其義務ヲ免カレシム
(栗塚)
「保證人ノ一人ノ」ハ「保證人ノ一人ニ」トヤリマシタ
本條「保證人ノ一人ノ」ヲ「保證人ノ一人ニ」ト改ム
第五百三十四條朗讀ス
第五百三十四條 債權者ノ動產質又ハ抵當ノ抛棄ハ其債權ヲ減セス然レトモ連帶債務者又ハ保證人ハ其抛棄ニ因リ此等ノ擔保ニ於ケル代位ヲ妨ケラレタルカ爲メ第千四十五條及ヒ第千七十三條ニ依リ債權者ニ對シテ自己ノ義務免除ヲ請求スルコトヲ得
(三島)
之ハ重復デ削除スルト云フノデ御座イマス
(栗塚)
之ハ千四十五條千七十三條ニアルカラ置クニ及バント云フノデ御座イマスガ免除ノ續キニ御座イマスカラアル方ガ宜シウ御座イマス
(淸岡)
削ツテ良カロウ
(元尾崎)
債權ヲ減ゼズト云フノハ大事ナ事ダカラアツテモ宜シイ
本條ハ原按ニ決ス
第五百三十五條朗讀ス
第五百三十五條 共同債務者ノ一人カ連帶若クハ不可分ノミノ免除ヲ得ル爲メ又ハ保證人ノ一人カ保證ノ免除ヲ得ル爲メ債權者ニ出捐ヲ爲シタルモ其債務ヲ減セス且他ノ共同債務者又ハ共同保證人ニ對シテ求償權ヲ有セス
(元尾崎)
金ヲ返シテモ何ニモナランカ
(南部)
何ンニモナラン連帶ノ免除ヲ得ル爲メダカラ
(松岡)
保證人ノ手ヲ切ツテ呉レンカト云フテ百兩出スト保證人ハ免カレテ仕舞ウガ債務ハ千兩取ラレル
(元尾崎)
ソウスルト保證人ガ百兩取ツテ又債務者ガ千兩取レルカ
(北畠)
危イト云フコトガアルカラダ
(元尾崎)
之ハ佛蘭西ノ方ガ良カロウ
(栗塚)
ソレハ反對ニシナケレバナラン何ゼナレバ債務ヲ減ズルトシテ置イテドウカ云フト一人モ拂ウ人ハ無クナツテ仕舞ウ
(元尾崎)
兎ニ角金ガ取レレバ宜シイ
(淸岡)
甲乙連帶シテ百圓宛借リテ居ル百圓ヲ一身ガ返サナケレバナラント云フトキガアルカ知レン其時ハ一方ノ連帶者ノ身元ガ危クナツタトキ私ハ何某ト連帶シテ居ルカラ之ヲ分ケテ呉レンカ其ノ代バリ五十圓拂ウト云フトキ債權者ガ受取ル百圓ヲ甲ニ係ツテ取ルト百五十圓取レル
(栗塚)
其場合ニナレバ義務ノ更改ヲスルデ御座イマシヨウ
(南部)
百五十圓取ツテ宜シイ連帶ヲ許サレル代價ダカラ
(村田)
其代バリ五十圓ホカ取レナイカ知レン
(栗塚)
保債ト同ジモノダト云フテ居リマス之ヲ債務ヲ減ズルトシテ置ケバ無論保證人ガ連帶債務者デモ我レ丈ケヲ免除シテ只ダ免除シテ呉レンカト云フソンナラ宜シウ御座イマシヨウソコデ佛蘭西デハ減ズルト書イテ置ノデモ同ジ結果ヲ生ズル何ントナレバ債務者ガ金ヲ取ツテ免除シテヤル保證ノミデナク不可分ノミデナク一切證明スルコトガ出來ルカラ良シ禁ジテ置イテモ同ジコトデアル債務ヲ免ズルト書イテ置イテ之ハドウカト云フト債務ヲ減ズルト書イテアルガ爲メニ同ジ結果ニナツテ債權者ガ悉皆ノ免除ヲ得テ仕舞ウカラ結果ニ至テハ同ジデス
(淸岡)
ケレドモ佛蘭西ノハ取ツタノハ差引カナケレバナラン
(栗塚)
左樣デス
(松岡)
保證人ノ方ハ此方ガ良カロウト思フ
(淸岡)
斯ウ云フコトヲスルト射倖ノ風ヲ生ズル此方カラ五十圓受取ツテ一方カラ百圓取ルト百五十圓取レル
(栗塚)
私ガ五人デヤツテ居ルトキ他ノモノハ怪シイカラ我レノ部分丈ケヲ拂ハセテ呉レ其代ハリ金ヲヤルト云フコトデス
(淸岡)
後ニ差引ニシテ百圓取レバ宜シイソレ又他ノモノカラ百圓取ルノハ宜シクナイ
(松岡)
連帶デ百圓ト云フ處デモ其内部ヲ勘定スルト私ハ三十圓貴君ガ七十圓出ス處ガ連帶ナレバ一人デ百圓出サナケレバナランカ知レンソコデ債主ニ向ツテ私ハ三十圓デ一方ノ人ハ七十圓ダカラソコデ私ノ負擔ヲ三十圓ト定メテ呉レンカト云フテ四十圓ト定メテ貰ツテ先方カラ七十圓取ツテ呉レト云フタラ良カロウ
(栗塚)
其時ハ百圓取レル
(淸岡)
佛蘭西ノ千二百八十八條ガ宜シイ
(南部)
之ハ債務ノ内ヲ返シタト云フノデハナイ
(松岡)
債務ヲ百圓トシテ二人ノ連帶ヲ解イテ呉レ何ゼト云フト七十圓ト三十圓デ私ハ三十圓ダケレドモ貴樣ノ見込デ百圓貸シタソレハ苦シイ三十圓ハ私ノ連帶ダカラ御禮トシテ十圓出スカラ七十圓取ツテ來ルト云フノデハナイカ
(元尾崎)
ソレハ良クナイ
(南部)
十圓出シタ部分丈ケハイケナイト云フノダ
(松岡)
ソウデス三十圓ハ私ノモノデ十圓ハ御禮ダ向ウノ人ハ三十圓ノトキハ七十圓ホカ取レント云フノダ
(栗塚)
ソウデス
(渡)
二人デ五十圓宛借リテモ何レヘ係ツテモ百圓取レルソレヲ二十圓餘計ニ出シテモソレハ懷ニ入レテ仕舞ツテ宜シイト云フノダ
(南部)
ソウデス
(委員長)
之ハ前ノ會議ノトキニ物ハト云フ字ニ大變論ガアツタガ金ニハ限ランノカ
(栗塚)
働イテヤツテモ宜シイノデ御座イマス
(松岡)
連帶デハ危イカラ分擔ニシテ貰オウ分擔トスレバ各々消ヘル只分擔ニシヨウト云ツテモ出來ナイ多少保險料トシテ拂ツテモ保險料ハ保險料限リト云フノダ
(渡)
私ニハ連帶ガ解ケルガ松岡君ノハ連帶ガ解ケナイデハナイカ
(南部)
ソレハ解ケマス債務ヨリ上ニ取ルト云フコトハ出來ンカラ
本條ハ原按ニ決ス
于時午後零時十五分休憩
午後一時開會
第五百三十六條(議場削除)
(栗塚)
之ハ前回デ削除ニナリマシタ處ガ彼ノ頃ニ出マシタ論ト今日トハ進ンダ譯デハ御座イマセンガ今少シ分ル樣ニ書イテアレバ削除ニナラナカツタト思ヒマス御前ノ家ヲ買ツタガ何レ私ガ行ツテ住ムカラ引渡シテ呉レルニ及バン其レマデ御前ガ住ンデ居テ呉レト云フトキ御前サンガ引渡スニ及バント云フノハ當リ前デ御座イマス引渡スニ及バント云フテモ所有權ヲ失ハント云フコトヲ見セレバ宜シウ御座イマスカラ「特定物ノ引渡又ハ返還ノ義務ヲ免除スルモ所有者ハ回復ノ權利ヲ失ハス」トスレバ宜シイカト思ヒマス
(松岡)
ソンナコトヲ云フニ及バン
(淸岡)
義務ノ譯放ヲ受ケレバ回收訴權カ何カ起ラナケレバ渡スニ及バント思フカ知レン
(栗塚)
私ノ米ヲ貴君ガ百俵買ツテ貴君ガ之ヲ引渡スニ及バント仰ツシヤツタノダカラ人ニ賣買ヲスレバ人權ト物權ト二ツ生ジマス賣買ノ契約カラ物ヲ引渡ス義務ガ生ズル一ツノ賣買契約カラ所有權ガ移轉シタ所カラ物權ヲ得ルニ賣主ハ引渡ノ義務ヲ持ツテ居リ買主ハ人權ト物權トヲ持ツテ居ルト云フテ宜シイ人權ハ抛棄シテモ物權ハ存シテ居ルゾヨト云フノデ御座イマス
(淸岡)
ソレハ無理ナ話デ引渡ヲ免除シタラ何時デモ取リニ行ケル回牧訴權ヲ殘スニハ及バン入レテ置クト回收訴權ヲ行ハントキハ取レン樣ニナル
(栗塚)
ソレハ取ラレルデス渡ス義務ハナイ
(松岡)
此條ヲ生カサナケレバ差支ガアリマスカ
(栗塚)
前回ニハ斯ウ云フコトヲ云フト訴訟ヲ增ス弊ガアルト云フトデ御座イマシタガ今日物權ト人權ノ區別ガ付テ居ル物權ト人權トヲ買主ガ持ツテ居ル其一ツヲ抛棄シタトキハ取戻スト云フ物權ガ殘ツテ居ルソレダカラ人權ハ抛棄シテモ物權ハ尙ホ存スト云フ意味カラ修正シテ置イタ方ガ良カロウカト思ヒマス
(松岡)
ソウ云フ法ヲ設ケナケレバ不都合ガ起リマスカ
(栗塚)
ソレハアツタモノヲ削ツタト云フノハドウ云フモノカ理窟上義務ヲ免除スル合意上ノ免除デ合意上引渡ノ義務ヲ免除シタトキハ引渡ス義務ヲ免除シヨウトモ買主ニ尙ホ取戻ス權ガアルゾヨ人權ハ抛棄シテモ物權ハ存シテ居ルト云フノハ必要ダロウト思フ之ヲ削ツタノハ杜撰デハアルマイカ讓戻又ハ讓渡ヲ惹起セズシテト云フノガアツタノデ削ツタノデハアルマイカ總テ物權ト人灌ト生ズルガ人權バカリ乗テテモ物權ガアル處ガ貸借上カラ出タ權利ガ免除スレバソレ限リデアル特定物ハ取戻ス權ガアルト云フコトヲ書イテ置ケバ削除ニナランダロウ置イテモ害ニナラン元ト削ツタノハ文章ガ明カデナイ處カラ混雜ヲ起スト云フコトガアツタカ知レンガ今日ノ樣ニ修正スレバ置イタ方ガ良カロウト思ヒマス
(淸岡)
返還スルニ及バント云フトヤツタモノノ樣ニナル處ガ又所有者ガ回收ノ權利ヲ失フト云フト一旦ヤツタモノヲ取戻ス恐ガアル
(村田)
ソレガアルカラ元老院デ削ツタノダ
(栗塚)
裁判所ノ管轄ヲ論ズルニモ引渡ノ義務ヲ履行シテ呉レト云フト被吿人ノ所在地ニ行ク若シ物ヲ渡シテ呉レト云フトキ不動產ナレバ不動產所在地ニ行ク
(村田)
特定物ノ引渡ハ合意ノトキニ成ルノダ
(栗塚)
ソウデハアリマセン所有權ガ移ル丈ケデス
(村田)
引渡スニ及バント云フカラヤツタモ同ジコトダ
(栗塚)
ソレダカラ尙ホ書イテ置カナケレバナリマセン貴君ガ私ニ物ヲ賣ツテ代價ガ濟ンデ御渡ナサルニ及バント云フコトガ横濱ノ取引抔ニアルソウデス
(淸岡)
畢竟讓渡又ハ讓渡ヲ惹起セズシテト云フノガ必要ダロウ
(栗塚)
入レテモ宜シウ御座イマスガ分ランコトナレバ入レンデモ宜シウ御座イマス
(淸岡)
返還スルニ及バント云ツテ取戻ニ行クノハ間違ウト云フ論ガアツテ削ツタノダ
(元尾崎)
入ランコトダ
(北畠)
ソウ云フコトハ唐ノ横町ヘ行ツテモナイ
(元尾崎)
贊成者ガナイカラ先ヘ行キマシヨウ
(栗塚)
一人モ御贊成ガナイカラ削リマス
本條ハ削除ニ決ス
第五百三十七條朗讀ス
第五百三十七條 連帶債權者ノ一人ノ爲シタル債務又ハ連帶ノミノ免除ハ其一人ノ部分ニ付テノミ他ノ債權者ニ對シ之ヲ以テ對抗スルコトヲ得
債務カ性質ニ因ル不可分ナルトキハ債權者ノ一人ノ爲シタル免除ハ他ノ債權者ヲ害スルコトヲ得ス他ノ債權者ハ第四百六十六條及ヒ第五百二十八條ノ規定ニ從ヒ全債權ヲ行フ
(栗塚)
一項ニ連帶ノミト付テノミト「ノミ」ガ二ツアリマスカラ「又ハ連帶ノ免除ハ單ニ其一人ノ部分ニ付キ他ノ債權者ニ之ヲ以テ對抗スルコトヲ得」ト致シマス
(元尾崎)
全債權ヲ行フコトハ行フケレドモ許シタ債權丈ケハ扣除スルノダ
(南部)
ソウデス
(松岡)
先キヘ引イテ係ルト行フノト皆取ツテ戻シテヤルト云フノト違ツタトキハ六十六條ト二十八條トハ一所ニナラン
(元尾崎)
二項ノ五百二十八條ト云フコトハ無クテモ宜シイ
(南部)
二十八條ハ債權者ノ一人ニ爲シタルノダカラ入レテモ宜シイコトデハナイカ
(栗塚)
詰リ全債權ヲ行フト云フ處デス其規則ハ四十六條ニ從ヒ又二十八條ニモ從フ
(松岡)
六十六條ハ全債權ヲ行フノダ
(栗塚)
ソレハ全體デスソレカラ不可分ノ中デモ全債權ヲ行フガ其トキハ斟酌シテヤラナケレバナラン
(松岡)
一ツ言ヘバ二ツ云ハンデモ宜シイ
(南部)
六十六條ノ中ニ二十八條ハ這入ツテ居ラン
(松岡)
ソウスルト今度引クトキハ三十七條モ引カナケレバナラン樣ニナル
(淸岡)
原按者ガ入レテ來タノハ理窟ガアルダロウ
(元尾崎)
牴觸サヘシナケレバ宜シイ
本條第一項ハ左ノ如ク改ム
連帶債權者ノ一人ノ爲シタル債務又ハ連帶ノ免除ハ單ニ其一人ノ部分ニ付キ他ノ債權者ニ之ヲ以テ對抗スルコトヲ得
第五百三十八條朗讀ス
第五百三十八條 債權者カ債務者ノ義務ヲ記載シタル本證書ヲ任意ニテ債務者ニ交付シタルトキハ其證書ニ免除ノ旨ヲ附記セスト雖モ債權者ハ債務ノ免除ヲ爲シタリトノ推定ヲ受ク但債權者ノ反對ノ意思ヲ證明スル權利ヲ妨ケス
公正證書又ハ判決書ノ正本ノ任意ノ交付ハ其書類ニ執行式ヲ具備スルモ債務ノ免除ヲ推定セシムルニ足ラス但裁判所ハ事情ニ因リ其免除ヲ認定スルコトヲ妨ケス
債務者カ右ノ書類ヲ所持スルトキハ反對ノ證據アルマテハ債權者ヨリ任意ノ交付アリタリトノ推定ヲ受ク
(栗塚)
證明ハ證スルトナリマス認定ハ考定トナリマス前ニアツタ認定トハ違ヒマス
(松岡)
認定デ良カロウ
(栗塚)
困ツタコトニハ認定ト云フ字ヲ外ニ使ツテ仕舞ヒマシタ
(元尾崎)
認定デ宜シイ
(栗塚)
此先キデ使ツテアルソウデス
(松岡)
先キハ先キデヤロウ
(栗塚)
原語ハ演繹ト云フ字デ御座イマス
(松岡)
認定ガ宜シイ二項ハ訴訟法デハ執行吏ガ執行シテ錢デモ受取レバ執行文ニアル判決書ノ正本ヲ債務者ニヤラナケレバナラント書イテアル此處デハ一方カラ執行文ノ備ツテ居ル正本ヲ隨意ニ渡シテモ何ンニモナラント云フノカ
(南部)
ソレハ執行命令書ダ
(松岡)
執行式ヲ具ヘタルト云フト執行命令書ト同ジコトダロウ
(栗塚)
證文ヲ渡シタカラトテ執行式ガアツタニモセヨ
(松岡)
判決書ト執行命令書カ
(栗塚)
別ノモノデハアリマセン訴訟法デ云フ命令書トハ違ヒマス
(松岡)
訴訟法デ執行命令書ヲ別ニ拵ヘハシマイ
(栗塚)
之ニ因レ執行督促狀ヲ拵ヘナケレバナリマセン
(松岡)
訴訟法ト合セナイト良クナイ
(栗塚)
五百八十四條ニ認定ト云フ字ガアリマス
(南部)
承認トヤロウカト云フ論ガアリマシタ
(松岡)
之ハ認定ガ宜シイ執行文式ヲ交付シタモノハ執行吏ガ向ウヘ渡シテ證據ニシテ訴訟法ト撞着ガアルカナイカト云フコトヲ訴訟法ト突キ合セテ貰ヒマシヨウ
(栗塚)
此處ハ執行吏ノ出ルノ出ンノト云フ處デハナク之デ金ヲ返セト云フコトガアル立派ナ判決書ガアツテモ書付ケヲ向フヘ渡シタ丈ケデハ義務ヲ免カレサセタトハ云ヘソト云フノデ御座イマスカラ差支御座イマセン
(松岡)
佛蘭西ノ樣ニスルト訴訟法ニ合ウカト思フ判決ノ執行文ノ拵ヘ方ハ訴訟法ヲ民法ニ合セテスレバ宜シイカ知レンガ違ヒハセンカト思フ
(栗塚)
之ハ佛蘭西ノ反對ヲ出シテ呉レタノデ御座イマス
(松岡)
當リ前ナレバ證書ヲ渡シタトキハ免除ト見ルト云フノガ順ダ
(三島)
審定トシテハドウデス
(栗塚)
貴君ガ南部サンニ金ヲ借リテ居ルトキ公正證書ガアツテ南部サンニ渡シテ仕舞ツタノハ免除スル爲メデハナイカソレデハ足ラン裁判官ガ認定シテスルト云フノデ御座イマスカラ
(松岡)
彌々貴君方ガ訴訟法ト違ハント云フ受合ナレバ宜シイ
(栗塚)
違ハント思ヒマスガ尙ホ訴訟法ノ方ニ聞キマシヨウ
本條ハ原按ニ決ス
第五百三十九條朗讀ス
第五百三十九條 債權者カ證書ノ全文又ハ債務者ノ署名若クハ其他ノ緊要ナル部分ヲ有意ニテ毀滅シ扯破シ又ハ抹銷シタルトキハ前條ノ區別ニ從ヒテ任意ノ交付ニ準シ債務ノ免除アリタリト推定ス
右毀滅扯破又ハ抹銷ハ之ヲ爲シタル當時其證書カ債權者ノ占有ニ係リシトキハ反對ノ證據アルマテ債權者ノ所爲又ハ其承諾ニ出テタリトノ推定ヲ受ク
本條ハ原按ニ決ス
第五百四十條朗讀ス
第五百四十條 債務ノ免除ハ明示ト默示ト直接ノ證明ト法律上ノ推定トヲ問ハス反對ノ證據アルマテ有償名義ニテ之ヲ爲シタリトノ推定ヲ受ク
然レトモ互ニ授受スルノ能力ナキ者ノ間ニ於ケル免除ハ有償名義ニテ之ヲ爲シタリトノ直接ノ證據ヲ擧クルコトヲ要ス
(栗塚)
「證明」ハ「證スル」トアリマス一項ハ初メノ案ニハ「債務ノ免除ハ明示ナルト默示ナルト又直接ニ證スルト法律上推定スルトヲ問ハス」トアリマシタソウ修正シタイト思ヒマス
(元尾崎)
ソレデ宜シイ
本條第一項ハ左ノ如ク改ム
債務ノ免除ハ明示ナルト獣示ナルト直接ニ證スルト法律上推定スルトヲ問ハス(以下原案ノ通リ)
第四節 相殺
第五百四十一條朗讀ス
第五百四十一條 二人互ニ債權者タリ債務者タルトキハ下ノ條件及ヒ區別ニ從ヒ法律上、任意上又ハ裁判上ノ相殺カ成立ス
相殺ハ二箇ノ債務ヲシテ其最寡少ナル債務ノ數額ニ滿ツルマテ消滅セシム
(栗塚)
之ハ「トキハ相殺アリトス」トシテハ如何デス
(渡)
其ノ方ガ宜シイ
(委員長)
相殺ノトカ何ントカ仕樣ハナイカ
(栗塚)
相殺ガ場所ヲ持ツト云フコトデ御座イマス
(三島)
「カ」ノ字丈ケ削ツテハ如何デス
(淸岡)
削ルガ宜シイ
(元尾崎)
カハアツテモ宜シイ
(栗塚)
二項ノ相殺ハト云フノハ原文ニナイノデ御座イマス
(松岡)
ソレハ宜シイガ「最寡」ト云フコトニ今度「少」ノ字ヲ加ヘタガ「寡少ナル」デ良カロウ
(村田)
「少ナキ額ニ滿ツルマテ」デモ宜シイ
(栗塚)
右ノ場合ニ於テハ二個ノ債務ハ最寡ノ數額ニ滿ツルマデ消滅ストヤリタイノデ御座イマス
(元尾崎)
其少ナキデ宜シイ
(南部)
寡少ナルデ宜シイ
(北畠)
二ツアルトキデナケレバ寡ノ字ハ使ハナイ
(委員長)
寡少ナルトスルカ
本條最寡少トアル「最」ノ字ヲ削ル
第五百四十二條朗讀ス
第五百四十二條 二箇ノ債務カ主タルモノ明確ナルモノ互ニ代替スルヲ得ヘキモノ及ヒ要求スルヲ得ヘキモノニシテ且法律ノ規定又ハ當事者ノ明示若クハ默示ノ意思ヲ以テ其相殺ヲ禁セサルトキハ當事者ノ不知ノ間ニテモ法律上ノ相殺ハ當然行ハル
(栗塚)
「主タルモノ明確ナルモノ」ト云フノハ「互ニ代替スルヲ得ヘキモノ」ノ下ヘヤリタイト思ヒマス說明ノ順ト體裁ノ順ガ第一ニ主タルモノデナケレバナラン其次ギハ代替スベキモノデナケレバナラン明確ナルモノ要求スルモノ此四ツノ順ヲ立テテ先キノ順ガ出來テ居リマスカラ其方ガ良カロウト思ヒマス
(渡)
其方ガ宜シイ
本條左ノ如ク改ム
二個ノ債務カ主タルモノ互ニ代替スルヲ得ヘキモノ明確ナルモノ及ヒ要求スルヲ得ヘキモノニシテ且法律ノ規定又ハ當事者ノ明示若クハ默示ノ意思ヲ以テ其相殺ヲ禁セサルトキハ當事者ノ不知マテモ法律上ノ相殺ハ當然行ハル
第五百四十三條朗讀ス
第五百四十三條 主タル債務者ハ自己ノ債務ト債權者カ保證人ニ對シテ負擔スル債務トノ相殺ヲ以テ債權者ニ對抗スルコトヲ得ス然レトモ訴追ヲ受ケタル保證人ハ債權者カ主タル債務者又ハ自己ニ對シテ負擔スル債務ノ相殺ヲ以テ對抗スルコトヲ得
連帶債務者ハ債權者カ其連帶債務者ノ他ノ一人ニ對シ負擔スル債務ニ關シテハ其一人ノ債務ノ部分ニ付テノミ相殺ヲ以テ對抗スルコトヲ得然レトモ自己ノ權ニ俶キ相殺ヲ以テ對抗ス可キトキハ全部ニ付キ之ヲ申立ツルコトヲ得
數人ノ連帶債權者アルトキ債務者ハ債權者ノ一人カ自己ニ對シテ負擔スル債務ニ付テハ第千七十八條ニ依リ債權者ニ辨濟ノ領受ヲ強要スルコトヲ得ヘキ場合ニ在リテハ總債務ノ相殺ヲ以テ常ニ訴追者ニ對抗スルコトヲ得
債務カ債務者ノ間又ハ債權者ノ間ニ於テ意思ニ因ル不可分ナルトキハ相殺ハ受方又ハ働方ノ連帶ニ於ケルト同一ノ方法ニ從フ又性質ニ因ル不可分ノ債務ナルトキハ第四百六十六條ノ規定ニ從フ
(栗塚)
三項ノ字句ヲ轉倒シマシテ「債務ノ相殺ヲ以テ訴追者ニ對抗スルコトヲ得但第千七十八條ニ依リ債權者ニ辨濟ノ領受ヲ強要スルコトヲ得ヘキ場合ニ限ル」ト致シマス二項ハ「部分ニ付テニ非サレハ相殺ヲ以テ對抗スルコトヲ得」ト致シマス
(槇村)
ソウスルト總債務ガナイ樣ニナル
(栗塚)
左樣デス
(委員長)
付テニ非ザレバノミト何レガ宜シイカ
(松岡)
此儘デ宜シイ
(元尾崎)
付テニ非ザレバガ宜シイ
(淸岡)
部分ニ非ザレバデ良カロウ
(渡)
部分ニ付テナラデハト云フノダカラ付テニ非ザレバガ宜シイ
本條第二項「ニ付テノミ」ヲ「ニ付テニ非サレハ」ト改ム
第三項左ノ如ク改ム
數人ノ連帶債務者アルトキ債務者ハ債權者ノ一方カ自己ニ對シテ負擔スル債務ノ相殺ヲ以テ訴追者ニ對抗スルコトヲ得但第千七十八條ニ依リ債權者ニ辨濟ノ領受ヲ強要スルコトヲ得ヘキ場合ニ限ル
第五百四十四條朗讀ス
第五百四十四條 當事者ノ一方カ他ノ一方ニ對シ地方市場ノ相場書アル日用品ノ定期ノ供與ヲ負擔シタルトキハ其供與ハ他ノ一方ノ負擔スル金錢ト相殺スルコトヲ得
(栗塚)
相場書ノ「書」ノ字ヲ削ツテ「相場アル」トシタイノデ御座イマス
(松岡)
ソレガ宜シイ
本條「相場書」ノ「書」ノ字ヲ削ル
第五百四十五條朗讀ス
第五百四十五條 債務ノ成立其目的ノ性質及ヒ分量カ確實ナルトキハ其債務ハ善意ニテ爭ハルヽトキト雖モ之ヲ明確ナリトス
本條ハ原按ニ決ス
第五百四十六條朗讀ス
第五百四十六條 裁判所ノ許與シタル恩惠上ノ期間ハ相殺ノ妨ヲ爲サス債務者ノ請求ニ因リ無償ニテ債權者ノ許與シタル期間ニ付テモ亦同シ
二箇ノ債務ノ一カ解除條件ニ從フトキト雖モ相殺ハ行ハル但條ノ成就シタルトキハ相殺ヲ解除ス
(栗塚)
前例ニ從ツテ辯除條件付ナルトキト致シマス
(元尾崎)
宜シイ
本條「解除條件ニ從フトキ」ヲ「解除條件付ナルトキ」ト改ム
第五百四十七條朗讀ス
第五百四十七條 二箇ノ債務カ同一ノ場所ニ於テ又ハ同一ノ貨幣ヲ以テ辨濟ス可キモノニ非サルトキト雖モ尙ホ相殺ハ行ハル但第一ノ場合ニ於テハ運送費又ハ爲替料ヲ計算シ第二ノ場合ニ於テハ兩替賃ヲ算スルコトヲ要ス
(栗塚)
ココデ松岡サンノ御說モ良ク分ツテ來マシタ兩替賃ト云フ字ヲ使ヒマシタ
(南部)
兩方ヲ含ンデ居ルトキハ爲替ト云ヒ一ツノトキハ兩替ト云フカ
(栗塚)
左樣デス
本條ハ原案ニ決ス
第五百四十八條朗讀ス
第五百四十八條 左ノ場合ニ於テハ法律上ノ相殺ハ行ハレス
第一 債務ノ一カ不正ニ他人ノ財產ヲ押取シタルコトヲ以テ原因トナセルトキ
第二 變例ト稱スル寄託物ノ返還ニ關スルトキ
第三 債權ノ一カ不可押ナル有價物ヲ目的トスルトキ
第四 當事者ノ一方カ豫メ相殺ノ利益ヲ抛棄シタルトキ又ハ債權者ト爲ルニ當リ期望シタル目的カ相殺ノ爲メ達スルコトヲ得サルトキ
(栗塚)
第一ハ「債務ノ一ツカ他人ノ財產ノ横領ヲ原因ト爲セルトキ」トヤリマシタ
(松岡)
横領デハ強スギヤセンカ
(栗塚)
盜賊デ御座イマス
(渡)
横領ト云フ字ハドウ云フ字デスカ
(三島)
横取ト云フ字デス
(栗塚)
不正ニ他人ノ物ヲ取ツタト云フコトハ云ヒ樣ガ惡ルイト思ツテ直シマシタ
(槇村)
横ノ字ハ正シクナイ處ニ使ツテアル
(松岡)
「債務ノ一ノ原因カ不正ニ他人ノ財產ヲ押取シタルトキ」トスレバ宜シイ
(南部)
一ノ原因ト云フト一ノ原因バカリニ掛ルガソウデナイ
(淸岡)
原案デ宜シイ事ヲ以テ原因トスルデナケレバ文章ニナラン
(粟塚)
私ガ貴君ノ時計ヲ取ツタナラバ何ガ原因ニナルカ竊盜ガ原因ニナル
(三島)
「債務ノ一ガ不正ノ押取ヲ原因ト爲シタルトキ」デモ宜シイ
(淸岡)
ソレデモ宜シイ
(槇村)
ソレガ宜シイ
(委員長)
不正ノ取得ガ良カロウ
(元尾崎)
取得ガ宜シイ
(淸岡)
押取ガ宜シイ
(委員長)
押取ト云ヘバ不正ト云ハンデ宜シイ
(渡)
元トノ通リガ宜シイ
(南部)
シタルコトヲト云フノガ分ラン
(委員長)
元トノ通リガ宜シイ
(栗塚)
債務ノ一ガ他人ノ財產ノ不正ノ取得ヲ原由トスルトキ
(槇村)
原按デ宜シイ
(元尾崎)
元老院デ修正シタノハ債務中ノ一ガ他人ノ一方ノ財產ヲ不正ニ取得スルヲ原由ト爲ストキトアル
(淸岡)
原按デ宜シイ
(栗塚)
ソレデハ以テヲ削リマシヨウ
(南部)
「押取シタルヲ原由ト爲ストキ」ガ宜シイ
(委員長)
ソレデ良カロウ
(栗塚)
第二ハ變例ト稱スル寄託物ノト云フノハ惡ルイト思ヒマシタガ註ニハアリマシタガ本文ニハアリマセン使用ヲ許ス寄託物トアリマス變例ト云ツテハ先キヘ行ツテ困リマスカラ「使用ヲ許セル寄託物」トヤリマシタ第三ハ不可押ト云フノハ今日マデ使ヒマセンカラ差押フルコトヲ得ザルトヤリマシタ
(委員長)
第一ハモウ一遍報吿委員デ見テ貰ヒタイ
(松岡)
左樣デス其序デニ他ノ一方トヤツテ貰ヒタイ
本條第一ハ假リニ左ノ如ク改メ尙ホ報吿委員ニテ取調フルコトニ決ス
第一債務ノ一カ不正ニ他人ノ財產ヲ押取シタルヲ原由ト爲ストキ第二第三左ノ如ク改ム第二使用ヲ許セル寄託物ノ返還ニ關スルトキ第三債權ノ一カ差押フルコトヲ得サル有價物ヲ目的トスルトキ
第五百四十九條朗讀ス
第五百四十九條 債權ノ讓受人カ其讓受ヲ債務者ニ吿知シタルノミニテハ債務者ハ讓渡人ニ對シテ從來有セル法律上ノ相殺ヲ以テ讓受人ニ對抗スルノ權利ヲ失ハス
債務者カ讓渡人ニ對シ旣ニ得タル法律上ノ相殺ノ權利ヲ留保セス讓渡ヲ承諾シタルトキハ債務者ハ讓受人ニ對シ其權利ヲ申立ツルコトヲ得ス
右二箇ノ場合ニ於テ債務者カ相殺ヲ申立ツルコトヲ得サリシ金額又ハ有價物ヲ讓渡人ヲシテ自己ニ償還セシムルノ權利ヲ妨ケス
(栗塚)
「承諾」ハ「受諾」トナリマス之ハ三百六十七條ト重複シテ居ルト申シマスガ決シテ重複シテ居リマセン
本條「承諾」ヲ「受諾」ト改ム
第五百五十條朗讀ス
第五百五十條 拂方差止ヲ受ケタル債務者ハ差止人ノ債務者卽チ自己ノ債權者ニ對シテ差止後ニ取得シタル債權ノ相殺ヲ以テ差止人ニ對抗スルコトヲ得ス
又相殺ノ從來ノ原因ニ付テモ拂方差止ヲ受ケタル債務者ハ民事訴訟法ニ揭ケタル方式及ヒ期間ニ從ヒテ其原因ヲ述ヘタルニ非サレハ之ヲ以テ差止人ニ對抗スルコトヲ得ス
右孰レノ場合ニ於テモ拂方差止ヲ受ケタル債務者ハ差止ノ金額又ハ有價物ニ付キ自己ノ債權ノ辨濟ヲ得ル爲メ差止人ト共ニ入班スルノ權利ヲ有ス
(栗塚)
「拂方差止」ハ「拂渡差留」トナリマス其他「差止」ハ「差留」トナリマス末項ノ「入班スル」六「配當ニ加入スル」ト致シマス
(淸岡)
「差留」ハ「差止」ガ良カロウ
(南部)
登記法ニ「留」ノ字ガ書イテアリマス
(栗塚)
意味ハ止ノ字ニ違ヒアリマセン之ハ訴訟法ト相談ノ上止ノ字ニスルト云ヘバ改メマス
(松岡)
留ノ字デ差支ナイ我輩ノ友逹ニ子供ガ澤山出來テ困ルカラトメル云ツテ「トメ」ト付ケルト云ツテ「留」ノ字ヲ書イタ
本條第一項「拂方差止」ヲ「拂渡差留」ト改メ其他「差止」トアルハ悉ク「差留」ト改ム第三項「入班スル」ヲ「配當ニ加入スル」ト改ム
第五百五十一條朗讀ス
第五百五十一條 相殺ニ因リテ旣ニ消滅シタル債務ヲ辨濟シタル債務者ハ其錯誤ニ出テタルトキト雖モ不當利得ノ取戾訴權ノミヲ行フコトヲ得但次條ニ記載スル場合ハ此限ニ在ラス
(栗塚)
第一項ノ「辨濟シタル債務者ハ」ハ「辨濟シタル者ハ」デ良カロウト思ヒマス
(松岡)
者ガ良カロウ
本條「辨濟シタル債務者ハ」ヲ「辨濟シタル者ハ」ト改ム
第五百五十二條朗讀ス
第五百五十二條 前三條ニ揭ケタル場合ニ於テ相殺ニ因リ旣ニ消滅シタル債務ヲ讓受人若クハ差止人ノ利益ノ爲メ認定シ又ハ自己ノ債權者ニ辨濟シタル者ハ自己ノ舊債權ヲ擔保シタル保證、先取特權若クハ抵當ヲ申立ツルコトヲ得ス但旣ニ行ハレタル相殺ヲ知ラサル正當ノ原因アリシコトヲ證明スルトキハ此限ニ在ラス此場合ニ於テ原債權ハ其資格ヲ以テ抵保ト共ニ復舊ス
(栗塚)
「認定」ハ「追認」デ御座イマス既ニ行ハレタルト云フノヲ既ニ至ルト云フ方ガ良クハナイカト思ヒマス
(淸岡)
行バレルデハナイカ
(渡)
既ニ至ルハ可笑シイ
(栗塚)
ソレデハ行ハレタルトシテ置キマシヨウ「申立ル」ハ「援甲スル」デハナイカト思ヒマス
(委員長)
援唱ト利唱トハ違ツテ居ルダロウ
(栗塚)
援甲ト利唱ヲ止メテ申立ルト援甲ト二ツニ使ヒマシタカラ之ハ援甲デ御座イマス
本條「認定」ヲ「追認」ト改メ「申立」ヲ「援甲」ト改ム
第五百五十三條朗讀ス
第五百五十三條 任意上ノ相殺ハ法律カ法律上ノ相殺ヲ許サヽル爲メ利益ヲ受クル一方ノ當事者ヨリ之ヲ以テ對抗スルコトヲ得利害ノ關係アル各人ノ承諾ヨリ成ル相殺ハ之ヲ契約上ノモノトス
任意上ノ相殺ハ旣往ニ遡ルノ效ヲ有セス
(委員長)
契約上ハ合意上トシナイデモ宜シイカ
(栗塚)
合意上デ御座イマス二項ハ「利害ノ關係アル各人ノ承諾アリタルトキハ相殺ハ合意上ノモノタルコトヲ得」ト致シマス
(村田)
元トノ通リガ宜シイ
(松岡)
法律上ノ制裁ノ行ハレタ場合デモ合意スレバ合意上ノ相殺ト云ヘルソウスルト既往ニ遡リ效ヲ有スルカ
(南部)
合意上ハ認意上ニアル
(松岡)
法律上デ相殺ヲ許サンモノモ合意デ出來ルモノハ無論ダ
(栗塚)
其時ハ既往ニ遡ツテ效ヲ生ゼン
(村田)
合意上デハイケナイ一方カラデナケレバイケナイ
(栗塚)
何時デモ相談ヅクデアレバ合意上ノ相殺ト云フト既往ニ遡リ效ヲ有サン
(南部)
二項ニ分ケテ置クト既往ニ遡リ效ヲ有セン
(松岡)
任意上ノ相殺並ニ合意上ノ相殺ハト云ハナケレバナラン
(栗塚)
一ツニ書イテ置ケバ任意上ノ中ニ合意上ノ相殺ガ這入リマシヨウ
(南部)
一所ニスルガ宜シイ
(松岡)
合意ヲ以テ任意ノ相殺ヲ爲スコトヲ得ト書イテアルソウスルト下ヘ入レント文ガ足ラン樣ニナル
(槇村)
前ノ通リガ宜シイ
(南部)
總テノ場合ニ於テトスルガ宜シイ
(栗塚)
「總テノ場合ニ於テ利害ノ關係アル各人ノ承諾アルトキハ相殺ハ合意上ノモノタリ」ト致シマシヨウカ
(南部)
「モノトス」ガ宜シイ
本條第一項二項ヲ合セ左ノ如ク改ム
任意上ノ相殺ハ法律カ法律上ノ相殺ヲ許ササル爲メ利益ヲ受クル一方ノ當事者ヨリ之ヲ對抗スルコトヲ得總テノ場合ニ於テ利害ノ關係アル各人ノ承諾アルトキハ相殺ハ之ヲ合意上ノモノトス
第五百五十四條朗讀ス
第五百五十四條 裁判上ノ相殺ハ被吿カ原吿ニ對シ自己ノ利益ノ爲メ債權ヲ認定セシメ又ハ淸算セシムルヲ主旨トスル反訴ノ方法ニ依リテ之ヲ得
裁判所ハ場合ニ從ヒ或ハ主タル訴ヲ裁判シ或ハ相殺ヲ行ヒ二箇ノ訴ヲ併セテ裁判スルコトヲ得
裁判上ノ相殺ハ之ヲ以テ對抗シタル日ニ遡リテ效ヲ有ス
(栗塚)
「認定」ハ「追認」トナリマス二項ハ此場合ニ於テ「裁判所ハ或ハ先ツ主タル訴ヲ裁判シ或ハ二個ノ訴ヲ併セテ裁判スルコトヲ得」ト一致シマス
(委員長)
相殺ヲ行ヒハ削ルカ
(栗塚)
削リマスソレヲ入レルトモツト入レナケレバナリマセン
本條第一項「認定」ヲ「追認」ト改メ第二項左ノ如ク改ム
此場合ニ於テ裁判所ハ或ハ先ツ主タル訴ヲ裁判シ或ハニ個ノ訴ヲ併セテ裁判スルコトヲ得
第五百五十五條朗讀ス
第五百五十五條 當事者ノ一方カ他ノ一方ニ對シ法律上又ハ裁判上ノ相殺ニ服ス可キ數箇ノ債務ヲ有スルトキハ其債務ヲ相殺スルノ順序ハ第四百九十三條ニ揭ケタル辨濟ノ法律上ノ充當ノ規定ニ從フ
任意上又ハ契約上ノ相殺ノ充當ハ第四百九十一條及第四百九十二條ノ規定又ハ當事者ノ協議ニ從フ
(栗塚)
第一項ハ「相殺ニ服セル」トヤリマシタ
(淸岡)
服スベキガ宜シイ
(南部)
服スベキト云フト法律上ノ相殺ハ邪魔ニナリマス
(村田)
服スルガ宜シイ
(栗塚)
服スルト致シマス
本條「服ス可キ」ヲ「服スル」ト改ム
于時午後四時閉會