法律取調委員会 民法草案再調査案議事筆記 第10回
参考原資料
- 法律取調委員会 民法草案財產編再調査案議事筆記 , 自 第七回 至 第十回 [国立国会図書館デジタルコレクション]
備考
- 未校正のテキストデータです.
民法草案財產篇再調査第十回議事筆記
自第四百四十九條至第四百八十二條
明治二十一年十月八日午前第八時三十五分開會
第四百四十九條朗讀ス
第四百四十九條 選擇ヲ有スル當事者ノ孰レタルヲ問ハス二箇ノ物ノ一カ意外ノ事又ハ不可抗ノ力ニ因リテ滅失シタルトキハ義務ハ單一ト爲リテ其殘ル所ノ物ニ存ス
二箇ノ物カ共ニ全部滅失シタルトキハ義務ハ消滅ス
二箇ノ物ノ一カ意外ノ事又ハ不可抗ノ力ニ因リテ其價ノ半額ヨリ多キ部分ヲ喪失シタルトキハ其物ハ債務者ノ撰擇ノ目的タルコトヲ得ス
(栗塚委員)
之ハ何モ修正ハ御座イマセン
(元尾崎委員)
三分通リ損シタノハ選擇ノ效ガアルノカ
(南部委員)
ソウデス
(元尾崎委員)
半額デモダロウ
(南部委員)
半額ヨリ多クナケレバナラン
(元尾崎委員)
何レカラ云フノダ
(栗塚委員)
ソレハ次ギノ條カラ始マリマス
(渡委員)
先日ノ半分ト云フ比例ヲ取ツタノハ此處カラ出タノダ
(南部委員)
ソウデス
(元尾崎委員)
之ハヤル方ニモ貰ウ方ニモ二ツニ懸ツテ居ルノダロウ
(栗塚委員)
乍樣デス義務者ニモ權利者ニモデス
(元尾崎委員)
日本デハ何ウ云フ具合ニヤツテ居ルカ
(南部委員)
滅多ニヤルモノデハアリマセン
(栗塚委員)
五十六條マデ御覽ニナラント分リマセン債務者ニ權ノアツタトキ債權者ニ權ノアツタトキデス
(渡委員)
滅失ト云フ字ニ論ガアツテ覺書ガシテアルガ何ゾ趣意ガアツタノデハナイカ
(松岡委員)
滅失モ喪失モ同ジコトダロウ
(淸岡委員)
元トノ四百五十一條ヲ直シタノデス
(栗塚委員)
起案者ガ直シテ來タノデアリマス四十九條ハ元トノ五十三條デ御座イマス
(松岡委員)
債權者ガ選ウト云フ權ガ出來ルカ知ランガ債務者ガ選ウト云フコトハ滅多ニ出來マイ
(大尾崎委員)
實際成リ立ツマイ
(栗塚委員)
アリマシヨウ仙臺米カ肥後米カ米デサヘアレバ宜シイト云フト仙臺米ナラ幾ラ、肥後米ナラ幾ラト云フコトニナリマスカラ
(松岡委員)
之ハ確定物デナケレバイケヌ
(栗塚委員)
確定物ニシテモ下總ノ雜種カ鬼神戶カト云フノデ御座イマスカラ隨分アリマシヨウ又三益社ト云フ樣ナ家ヲ競賣スル處モアリマスカラ
(村田委員)
此處丈ケデハ容易ニハ分ラン
(栗塚委員)
五十六條マデ讀ンダ上デ全部ヲ御考ヘ下サラヌト分リマセン
本條ハ原案ニ決ス
第四百五十條朗讀ス
第四百五十條 選擇ヲ有スル當事者カ數人ノ相續人ヲ遺シテ死亡シタルトキハ其相續人ハ不可分義務ニ關シ規定シタル如ク唯一ノ選擇ヲ行フ爲メ協合スルコトヲ要ス
債務者カ實物ノ提供ヲ爲シ又ハ債權者カ合式ノ請求ヲ爲シテ一旦有效ニ行フタル選擇ハ他ノ當事者ノ承諾アルニ非サレハ之ヲ言消スコトヲ得ス
(松岡委員)
二項ハ一旦定メレバ勝手ニハ變ヘラレヌト云フノデ別ニ深イ意味ハアルマイ
本條ハ原案ニ決ス
第四百五十一條朗讀ス
第四百五十一條 選擇カ債務者ニ屬スル場合ニ於テ二箇ノ物ノ一カ其過失ニ因リテ滅失シタルトキハ義務ハ殘ル所ノ物ニ存シ債務者ハ滅失シタル物ノ價金ヲ與ヘテ其義務ヲ免カルコトヲ得ス
(松岡委員)
代價ニシタイ
(栗塚委員)
今迄「價額」トヤツテ居タノデス
(三島委員)
價額ヲ與ヘルト云フノハ可笑シイカラ「價金」トシタノデ御座イマス
(北畠委員)
代價ト云ヘバ金ト云ハズシテ分ツテ居ル
(村田委員)
用益權ノ處ニ價金ト云フコトガアル
(松岡委員)
前ニアツテモ文字ノ調査ヲスル譯ダカラ代價ガ良ケレバ「代價」ニスルガ宜シイ
(村田委員)
五十七條ニ「價金」トアル
(渡委員)
「價金」デ宜シイ
(元尾崎委員)
「價金」デ宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第四百五十二條朗讀ス
第四百五十二條 同上ノ場合ニ於テ二箇ノ物ノ一カ債權者ノ過失ニ因リテ滅失シタルトキハ債務者ハ義務ヲ免カル但債務者ハ自己ノ選擇ヲ以テ殘ル所ノ物ヲ與ヘ滅失シタル物ノ償金ヲ要求スルコトヲ得
二箇ノ物カ共ニ債權者ノ過失ニ因リテ滅失シタルトキハ債務者ハ自己ノ選擇ヲ以テ一個ノ物ノ償金ヲ要求スルコトヲ得
二個ノ物カ一ハ債權者ノ過失ニ因リ一ハ意外ノ事ニ因リテ同時ニ滅失シタルトキハ債務者ハ義務ヲ免カレ債權者ニ對シテ償金ヲ要求スルコトヲ得ス
(栗塚委員)
此ノ「償金」トアルノハ皆「價金」ノ間違ヒデ御座イマス
(淸岡委員)
自分ノ物ダカラ「償金」トシタノデハナイカ自分ノ物ヲ債權者ノ方デ破ツタノダカラ「償金」ト直シタノデハナイカ
(元尾崎委員)
末項ハ「償金」ダロウ
(栗塚委員)
「價金」デ御座イマス
(淸岡委員)
此ハ必ラズ間違ヒデナイ故アツテシタノダロウ其レデ惡ルイ云フナラ格別ダケレドモ寫字ノ間違ト云フコトハアリマスマイ
(南部委員)
ソレソウデ御座イマシヨウ
(栗塚委員)
一項ハ少シ意味ガ原案ト違ウダロウト思ヒマス但債務者ハ自己ノ選擇ヲ以テ殘ル處ノ物ヲ與ヘテ滅失シタル物ノ額ヲ償還セシムルコトヲ選ウトキハ此限ニ在ラズト致シマシタ
(松岡委員)
意味ニ違ヒハ無カロウ
(渡委員)
之ハ「償金」ノ方ガ良イノデハナイカ
(南部委員)
義務ヲ免カルト云ツテ但ニナルト云フノハ文章ガ變デハナイカ義務ハ免カルルケレドモ是レ丈ケノコトハ出來ルト云フト惡ルイ元トノ原案ノ通リニシテ債務者ハ義務ヲ免カル但債務者ハ殘ル處ノ物ヲ與ヘテ云々トスレバ宜シイ義務ト云フノハ彼方ニ選擇スル權ガアツテ此方ハソレヲ受ケナケレバナラン義務ダカラ元トノ譯ニシテモ但ハ宜シイカ知レンガ總體ノ意味ハ受ケガ惡ルイ
(村田委員)
但モ之デ宜シイデハナイカ
(南部委員)
義務ヲ免カルルケレドモガト云フト甚ダ惡ルイ、コウ云フ文ハ決シテ無イ
(村田委員)
義務バカリデナイ與ヘレバ取ルコトモアルカラ
(南部委員)
免カルト云ヘバ此限ニ在ラズト云ハナケレバ文章ノ響キガ惡ルイ
(淸岡委員)
併シ大體ノ處ハ再調査ノ方ガ良カロウト思フ
(松岡委員)
再調査ノ方ガ多數ノ樣ダガソウスルト「價金」トシマスカ「償金」トシマスカ
(栗塚委員)
「償金」トシナケレバナリマセン
(委員長)
修正案ノ通リニスレバ物ヲ與ヘ又ハトシナケレバ具合ガ惡ルイダロウ、少シ南部サンノ云フ樣ナ氣味ガアル
(栗塚委員)
物ノ償金ト云フコトガ云ヘルカ知ラヌ
(三島委員)
滅失カラ成ルノデス
(南部委員)
五十三條ニハ物ノ價金トアル
(村田委員)
末項ノ處ハ意外ノ事ガアツテ不可抗力ガナイ
(栗塚委員)
這入ツテ居ル積リデス
(松岡委員)
意外ノ事ト云ヘバ不可抗力モ這入ル
(三島委員)
破ニナツテ居リマス
(栗塚委員)
御入レニナツテハ如何デス
(委員長)
ソンナラ入レマシヨウ
(栗塚委員)
「意外ノ事又ハ不可抗力」ト入レマス
(村田委員)
「償金」ト直スト前カラ「償金」ト云ハヌト可笑シイ
(南部委員)
原文ノ償還セシムルト云フ處丈ケ「償金」ト直スノデ原文ニ「價金」ト云フノヲ「償金」ト直スハ良クナイ
(村田委員)
ソンナラ今ノモ「價金」トシナケレバナラン五十一條ノ「價金」モ同ジコトダ
(松岡委員)
ソンナラ五十二條モ「價金」トスルカ
(栗塚委員)
「價金」トシナケレバ行ケマスマイ
(槇村委員)
五十三條ニモ「價金」
(淸岡委員)
債務者ガ自分デ毀メタトキ「價金」トシテアル樣ダ債權者ガ毀メタトキハ「償金」トアルソレデナケレバ償還ト云フ字ガ出テ來ナイ其レデ再調査ノ方デ變ヘタノダロウ
(南部委員)
五十四條ニハ「償金」トアル
(元尾崎委員)
之ハ原案ノ方ガ宜シイ原案デハ「價金」ト云フコトモ「償金」ト云フコトモアルカラ宜シイガソレヲ「價金」ト直スハ良クナイ
(栗塚委員)
ソレガ宜シウ御座イマシヨウ
(元尾崎委員)
債權者ニ與フト云フトキハ「價金」トシテ債務者ノ返スト云フトキハ「償金」トスレバ宜シイ
(松岡委員)
「價金」ノ償還ヲ要求スルコトヲ得
(南部委員)
元トノ通リデ宜シイ
(栗塚委員)
「償金」ト云フ字ヲ出シタリ「價金」ト云フ字ヲ出シタリスルヨリ「價金」ト云フ字バカリニシタ方ガ宜シウ御座イマシヨウ
(松岡委員)
「價金ヲ要求スルコトヲ得」トシテ此方カラ價金ヲ與フトスレバ宜シイ
(槇村委員)
「償金」ト云フノハ筆者ノ誤リカ
(栗塚委員)
私ハ誤リト云フ位デス
(淸岡委員)
此ノ通リデ宜シイ
(渡委員)
ソレニモ場合ガアツテ「價金」ト云フ場合モアル
(栗塚委員)
事柄ニ違ヒハアリマセン
(大尾崎委員)
決シタカラ良カロウ
本條第三項「意外ノ事」ノ下ヘ「又ハ不可抗力」ノ六字ヲ加フルコトニ決ス
第四百五十三條朗讀ス
第四百五十三條 契約ヲ以テ債權者ニ選擇ヲ與ヘタル場合ニ於テ二箇ノ物ノ一カ債務者ノ過失ニ因リテ滅失シタルトキハ債權者ハ殘ル所ノ物ヲ要求シ又ハ滅失シタル物ノ價金ヲ要求スルコトヲ得
二箇ノ物カ共ニ債務者ノ過失ニ因リテ滅失シタルトキハ債權者ハ自己ノ選擇ヲ以テ一箇ノ物ノ價金ヲ要求スルコトヲ得二箇ノ物カ一ハ債務者ノ過失ニ因リ一ハ意外ノ事ニ因リテ同時ニ滅失シタルトキモ亦同シ
(三島委員)
之モ「不可抗力」ガ入リマスカ
(松岡委員)
二ツトモ消滅シテ仕舞ツタラ消滅ダロウ
(栗塚委員)
二箇ノ物ノ一箇ハ債務者ノ不調法デ、一箇ハ雷樣ガ落チテ毀ハレタトキハデス
(松岡委員)
二箇ノ物ガ共ニ不可抗力デ滅失シタトキハ
(栗塚委員)
ソレデモ同ジコトデシヨウ四百四十九條ノ二項ニアリマス
(松岡委員)
意外ノ事デ滅失シタ物ハ目的ガ外レテ義務ノ消滅ト云フ論理ニナリヤセヌカ
(栗塚委員)
ソウスルト何レカ貰ハナケレバナラヌ、過失ノ爲メニ選擇權ヲ失フ樣ニナル
(松岡委員)
意外ノ事ハ選擇權ヲ失フ一箇ノ物ガ無クナツタトキモ選擇權ガナイト云フノガ順デハナイカ、二箇トモ雷樣ガ毀ハシタトキハイケナイ
(大尾崎委員)
過失ノアルモノハ選擇セラレテハ叶ハヌ、二箇トモ不可抗力ナレバ仕方ガナイ義務モ消滅ダガ、一箇ハ過失一箇ハ不可抗力ノトキハ過失ノ方デ取ラレル
(栗塚委員)
五十四條ノ末項ト權衡ハ如何デス
(村田委員)
之モ同ジコトダ
(淸岡委員)
之ハ前ニ大變論ガアツテ、之ハ意外ノ事ノ方ハイケナイ、コウシナイト五十一條ノ末項ニ一箇ノミニ對スト云フコトガアル、其時ニ之ハ債權者ニ選擇ガ移ルトシテアル、其一箇ト云フコトヲ削ツテ今ノ意外ノ事ト云フコトモ其レト併セテ削ルト云フコトニ起案者ニ協議ヲシ樣ト云フコトニナツテ居ル
(南部委員)
ソウ云フコトハ書イテナイ
(栗塚委員)
松岡サンノ疑團ハ五十四條デアロウト思ヒマス
(南部委員)
ソレカラ二箇ガ一所ニ無クナツタ、一箇ハ天災ニ因テ無クナツタ場合ニ一箇ヲモ自分ノ過失デ直シタ丈ケノ責メガアルデス
(元尾崎委員)
過失ノ分ヲ取レバ宜シイ
(南部委員)
其レハ同時ニ無クナツタ
(村田委員)
二項ノ「二箇ノ物ハ」ト云フノハ別項ニナツテ居タガ之ハ別項ノ方ガ良カロウ
(南部委員)
成程元トハ別項ダ
(栗塚委員)
同ジコトデス
(南部委員)
「又同シ」トアルカラ宜シイ、五十四條ヲ讀マヌト分ラヌ
本條第二項「意外ノ事」ノ下ヘ「又ハ不可抗力」ノ六字ヲ加フルコトニ決ス
第四百五十四條朗讀ス
第四百五十四條 同上ノ場合ニ於テ二箇ノ物ノ一カ債權者ノ過失ニ因リテ滅失シタルトキハ債務者ハ義務ヲ免カル
二箇ノ物カ共ニ債權者ノ過失ニ因リテ同時ニ滅失シタルトキハ選擇ハ債務者ニ移轉シ之ヲシテ一箇ノ物ノ價金ヲ得セシム
二箇ノ物カ一ハ債權者ノ過失ニ因リ一ハ意外ノ事ニ因リテ滅失シタルトキハ債務者ハ義務ヲ免カレ債權者ニ對シテ償金ヲ要求スルコトヲ得ス
(栗塚委員)
之モ「又ハ不可抗力」ガ入リマス
(渡委員)
此「償金」ハ
(栗塚委員)
「價金」デ宜シイノデス
(松岡委員)
五十三條ノ末項ハ一箇ハ過失一箇ハ天災ナレバ選ベル
(栗塚委員)
貴君ノ御說ノ樣ニ債務者ノ過失デ無クナツタ物丈ケヲ取ルト云フコトニナレバ恰度債務者ノ方デハ債權者ノ方デ何トカ云ヘルト云フコトヲ與ヘナケレバナラヌデシヨウ
(松岡委員)
債權者ニ權ガ與ヘテアル
(栗塚委員)
五十一條ト五十三條ハ債務者ニ權ノアツタ場合デス、其レカラ五十一條ノ末項ト五十三條ノ二項ノ物ガト云フ所ト恰度同ジコトデス、其レヲ併セテ見ルト良ク分リマス、債務者ニ權ノアル五十一條ト債權者ニ權ノアル所ト對シテ論ジ餘程報吿委員デモ念ヲ入レテ調ベタノデス
(槇村委員)
事ガ分ツテ居ルカラ取違ヘナケレバ宜シイノダ
(栗塚委員)
權衡ハ良ク付イテ居ルノデス
(淸岡委員)
天災ノ分ガ滅失スルト云ヘバ之モ缺ケレバ宜シイ
(栗塚委員)
若シ其御論ニナルト四條ノ物ガ債權者ノ過失デ無クナツタ、一箇ハ天災デ無クナツタノデ結局債權者ノ不調法ダカラ償ヒヲ呉レロト云ハナケレバナラヌ、一箇ハ天災デ無クナツタノハ債務者ノ不調法ハナイ今一箇モ不調法ガナイト云フト、債權者ガ選擇ノ權ヲ云ヘヌノミナラズ何トカ云ヘナケレバナラヌ
(松岡委員)
二箇ノ物ヲ無クシタノハ誰レカ、債權者ノ過失ダ、自分ノ過失デシタコトガアレバ我ハ取ル積リデナイ消ヘタ物ヲ取ルト云フノダ
(栗塚委員)
其レダカラ義務ヲ免カレテ仕舞フ
(松岡委員)
損ニナル
(栗塚委員)
債權者ガ自分デ毀ハシタラ、御前サンソウ云フテモ若シ債權者ガ私ハ天災デ毀ハシタ物ヲ取ルト云フ積リダト云テト、其レデハ貴君、毀ハシタ物ヲ呉レト云フコトガ云ヘルカ其レハ宜シイ筈ハナイ、義務者ニ義務ヲ免カレサセタ丈ケデ濟ンデ居ル若シ債權者ガ物識リデ雷デ毀ハシタ物ガ欲シイト云ヘバ御前ノ毀ハシタ物ヲ呉レロト債務者ニ云ヘル
(松岡委員)
公平ニ云ヘバ二箇ノ内一箇ヲ選ブ權ノアル人ハ過失ニ依テ一箇ヲ滅失シタカラ選擇ガナクナツテ自分ノ過失ニ因テ消滅スルト云ヘバ能ク分ルノダ
(栗塚委員)
併シ物ノ無クナツタノハ孰レガ先キヤラ分ラヌ場合デス、若シ別々ニ滅失スレバ此問題ハ出ナイノデス
(淸岡委員)
其レガ分ラヌト云ヘバ天災モ過愆モ分ラヌ
(栗塚委員)
孰レガ御前ノ方ニ付イテ居タカ知レヌガ兎モ角自分ガ引渡サヌト云フ不調法デ死ンダカ、ドウダカ分ラヌ
(淸岡委員)
意外ノ事ニ依テ滅失シタト云フコトガ分ラナクナル
(栗塚委員)
其レハ無茶論デス
(南部委員)
四百五十六條ノ終リノ項ヲ御覽ナサイ、「其過失ノ孰レニ在シタルヤヲ知ルヲ得サル場合ニ於テハ」トアル
(淸岡委員)
其レハ得ザルトキダロウガ、之ハ得タルトキダ
(南部委員)
得ザルトキト云フノハ同時ニ滅失シタトキモ付イテ居リマスカラ
(松岡委員)
之ハ惡ルカツタ之ハドウシテ分ラヌト云フコトヲ始終持テ居ラナケレバナラズ
(栗塚委員)
再調査デ變更ニナツタ分丈ケヲ御議定ニナツテ始メニ議論ノナカツタ處ハ其儘御置キニナル樣ニ願ヒマス
(松岡委員)
ソウハ行カヌ
本條第三項「意外ノ事」ノ下ヘ「又ハ不可抗力」ノ六字ヲ加フルコトニ決ス
第四百五十五條朗讀ス
第四百五十五條 前數條ノ規定ニ從ヒ選擇ノ義務カ一箇ノ物ニ歸着シタルトキ又ハ當事者カ其選擇ヲ爲シタルトキハ其義務ノ效力ハ停止條件ノ義務ニ關シ第四百二十九條ニ規定シタル如ク旣徃ニ遡ホル
(栗塚委員)
「又ハ當事者カ」ト云フノヲ「其權利ヲ有スル當事者カ選擇ヲ爲シタルトキハ」ト致シマス
(元尾崎委員)
當事者ガ選擇スルノハ權利ガアル者デナケレバ出來ナイカラ、其ンナコトヲ云ハンデ宜シイ
(松岡委員)
無イ方ノ人ガシ樣ト云テモ出來樣ガナイカラ
(南部委員)
當事者ト云フノハ双方ヲ指シテ云フノダカラ
(元尾崎委員)
ソウ定マツタコトハナイ、場合ニ依テ双方ニナルコトモアリ、一方ニナルコトモアル
(渡委員)
入レマシヨウ
(村田委員)
入レルガ宜シイ
(栗塚委員)
ソレカラ「其義務ハ何レノ既往ニ遡リテ效ヲ生ス」トシ度イノデ御座イマス
(渡委員)
其方ガ宜シイ
(南部委員)
文例ハ「其效ヲ生ス」デハナイカ
(栗塚委員)
「其效ヲ生ス」ノ積リデス
(委員長)
「歸着」ト云フノハ「存スル」ト云テハ惡ルイデスカ、「歸着」ト云フト物ガ幾ツモアツテ到底コウナルト云フ樣ニナリハセヌカ
(松岡委員)
至ルト云フノハ歸着ニナルト云フコトデ御座イマスカラ宜シウ御座イマシヨウ
(委員長)
宜シウ御座イマシヨウ
(松岡委員)
佛蘭西邊デハ遡ル效ハナイ、選擇ヲシタトキカラ效ヲ生ズル、既往ニ遡ル家ト地面ナレバ選擇シテ定メラレルト契約ノ時迄遡テ取ラナケレバナラヌ
(村田委員)
未必條件カラ來テ居ル
本條ハ左ノ如ク決ス
前數條ノ規定ニ從ヒ選擇ノ義務カ一箇ノ物ニ歸着トシタルトキ又ハ其權利ヲ有スル當事者カ選擇ヲ爲シタルトキハ其義務ハ停止條件ノ義務ニ關シ第四百二十九條ニ規定シタル如ク既往ニ遡リテ效力ヲ生ス
第四百五十六條朗讀ス
第四百五十六條 債務者カ某ノ物ヲ主トシテ負擔スルモ他ノ物ヲ與ヘテ義務ヲ免カルノ權能ヲ有スルトキハ其義務ハ任意ナリ
右義務ハ任意ニテ負擔スル物ノ辨濟ヲ以テ條件トスル一種ノ解除條件ニ服スルモノナリ
主トシテ負擔スル物カ意外ノ事又ハ不可抗力ニ因リ滅失シタルトキ債務者ハ義務ヲ免カル
主トシテ負擔スル物カ債務者ノ過失ニ因リテ滅失シタルトキハ債務者ハ其價金ノ償還及ヒ損害ノ賠償ニ任ス然レトモ債務者ハ任意ニテ負擔スル物ヲ與ヘテ義務ヲ免カルノ權能ヲ有ス
二箇ノ物ノ一カ債權者ノ過失ニ因リテ滅失シタルトキハ債務者ハ其義務免除ヲ申立テ又ハ殘ル所ノ物ヲ與ヘテ滅失シタル物ノ價金ヲ要求スルコトヲ得
二箇ノ物カ共ニ債權者ノ過失ニ因リテ滅失シタルトキハ債務者ハ義務ヲ免カレ且自己ノ選擇ヲ以テ一箇ノ物ノ價金ヲ要求スルコトヲ得
二箇ノ物カ一ハ意外ノ事ニ因リ一ハ債權者ノ過失ニ因リテ同時ニ滅失シ其過失カ孰レノ物ノ上ニ存シタルヤヲ知リ得サルトキハ債務者ハ義務ヲ免カレ且任意ニテ負擔シタル物ノ價金ヲ要求スルコトヲ得
(栗塚委員)
一項ノ「某ノ物ヲ」ト云フノヲ「一定ノ物ヲ」トヤリマシタ
(松岡委員)
他ノ方ガ定マラヌノダナ
(栗塚委員)
ソウデス
(村田委員)
一定ノ物デモ宜シイ
(栗塚委員)
二項ハ「右義務ハ」ト云フノハ間違ヒデス「主トシテ負擔スル物ヲ與フルノ義務ハ」ト云フノデ御座イマス「任意ニテ負擔スル物ノ辨濟ヲ以テ解除スル條件ニ繋ルモノト看做ス」ト致シマス
(松岡委員)
再調査デモ分ル
(栗塚委員)
併シ右義務ト云フ義務ガ分リマセン
(元尾崎委員)
五項ハ些ト變ダ此條ハ任意ノ解除ノコトデ、之ヲヤラナケレバ金ヲ幾ラヤルト云フノダ、其レデ二箇ノ物ト云フノハ前ノ選擇ト同ジ樣ニナル
(栗塚委員)
此惡刺比亞馬ヲヤル、亞刺比亞馬ヲヤラヌトキハ米ヲ百俵ヤルト云フ、主トシテ負擔シタル物ト、任意ニテ負擔スル物トハ幾ラモ前ニ決シテ居リマス
(元尾崎委員)
任意ニテ負擔スル物ガ一ツナラ宜シイガ幾ツモアツタトキハドウスル
(栗塚委員)
幾ツアツテモデス
(元尾崎委員)
量定物デハ滅失トハ云ヘヌ
(栗塚委員)
量定物デハイケマセン、特定物ノ話シデス
(松岡委員)
「任意」ト云フ字ハ當ラヌ
(栗塚委員)
「權能」ト云フ字デス「其義務ハ權能的ナリ」デモ宜シイノデス
(松岡委員)
半任意ダ
(粟塚委員)
孰レカ一ツハヤラナケレバナラヌ、ヤランデ宜シイト云フコトハナイ
(元尾崎委員)
五項ハ四百五十二條ノ一項ト同ジコトダ
(南部委員)
五項ハ「償金ヲ要求スルコトヲ得」ト云ハナケレバナラズ、前ニ償還ト云フテアルカラ
(粟塚委員)
殘ラズ「價金」ニスレバ宜シイ、五十二條ヲ「價金」トシテ五十四條ノ終リノ償金ヲ價金トナサレバ宜シイノデス
(元尾崎委員)
此儘デ宜シイ
(槇村委員)
愈「價金」ト決スレバ報吿委員デ直シテ貰ウガ宜シイ
(松岡委員)
何レデモ宜イトシテ報皆委員ニ頼マウ
(栗塚委員)
間違ヒナイ樣ニヤリマス
本條ハ左ノ如ク決ス
第一項「某ノ」ヲ「一定ノ」ト改ム第二項左ノ如ク改ム主トシテ負擔スル物ヲ與フルノ義務ハ任意ニテ負擔スル物ノ辨濟ヲ以テ解除スル條件ニ繋ルモノト看做ス末項「意外ノ事」ノ下ヘ「又ハ不可抗力」ノ六字ヲ加フ
第四百五十七條朗讀ス
第三款 債權者及ヒ債務者ノ單數又ハ複數ノ義務
第四百五十七條 債權者及ヒ債務者カ各一人ナルトキハ其義務ハ單數ナリ
債權者又ハ債務者カ初メヨリ數人ナルトキ又ハ當事者カ數人ノ相續人ヲ遺シテ死亡シタルニ因リ債權者又ハ債務者カ數人ナルトキハ其義務ハ複數ナリ
複數ノ義務ニハ連合ノモノ有リ連帶ノモノ有リ不可分ノモノアリ
(栗塚委員)
此處ヘ起案者ガ入レテ呉レト云フテ參リマシタノハ「連帶ノモノアリ」ノ下ヘ「全部ノモノ有リ」ヲ入レマス、先キニ全部義務ト云フテアリマスカラ
(元尾崎委員)
平等トカ云フノダ
(委員長)
「複數」ハ宜シイガ「單數」ハ可笑シイ
(栗塚委員)
文法デ單稱複稱ト云ヒマスカラ
(渡委員)
單一複合ヨリモ宜シイ
(栗塚委員)
一番少ナイ數ハ何カト云フト「ゼロ」デス所謂大極ト無極デス
本條ハ起案者ニ於テ末項「連帶ノモノ有リ」ノ下ヘ「全部ノモノ有リ」ヲ加フ
第四百五十八條朗讀ス
第四百五十八條 連合ノ義務ニ於テハ次款ニ定ムル如ク各債權者又ハ各債務者ハ自己ノ部分外ニ履行ヲ要求シ又ハ訴追ヲ受クルコトヲ得ス
連帶ノ義務ニ於テハ各債權者又ハ各債務者ハ自己ノ名ヲ以テ自己ノ部分ノ爲メニスルト他人ノ名ヲ以テ他人ノ部分ノ爲メニスルトヲ問ハス全部ニ付キ履行ヲ求メ又ハ訴追ヲ受クルコトヲ得但第四編第一部第二章ニ規定シタル如ク各自カ其實地ノ部分ヲ踰ヱテ受取リ又ハ支拂ヒタルトキハ擔保訴權ニ因レル相互ノ求償權ヲ妨ケス
(栗塚委員)
末項ノ但以下ハ削ルヨリモ「但擔保訴權ニ因レル相互ノ求償權ヲ妨ケス」トスレバ良カロウト思ヒマス、第何篇ト云フコトハ止メテ抑モ連帶義務者ハ擔保訴權デ求償權ガアルゾヨト云ヘバ送リニナラズ良カロウト思ヒマス
(元尾崎委員)
ソンナラ原案通リデ宜シイ
(栗塚委員)
原文ヲ目ノ前ニ御置キニナルト分リマスガ但求償權ヲ妨ゲズト云フノガ主デ御座イマス、其レハ擔保ニ因レルトアツテ跡ハ筆順ニ云フテアルノデ御座イマスカラ之ハ削除建議ノ一部分ヲ御採用ニナルコトヲ望ミマス
(淸岡委員)
少シモ妨ゲニナラヌ
(村田委員)
求償權ヲ妨ゲズト云ヒサヘスレバ宜シイ
(松岡委員)
ソンナラ第何章ト入レ度イ
(南部委員)
第何項モ入レルカ
(元尾崎委員)
尙ホ宜シイ
(栗塚委員)
「但擔保訴權ニ因レル相互ノ求償權ヲ妨ケス」ト云フテ置ケバ宜シイ
(委員長)
ソレガ多數カ
(村田委員)
一項ニ「要求又ハ」トアルガ「履行ヲ求メ又ハ訴追ヲ受クルコトヲ得ス」トシタラ良カロウ
(南部委員)
「履行ヲ求ムルコトヲ得ス又訴追ヲ受クルコトナシ」トシタラ良カロウ
(栗塚委員)
其レガ宜シウ御座イマシヨウ、ソウスルト二項モ「履行ヲ求ムルコトヲ得又訴追ヲ受クルコトアリ」トシナケレバナリマセン
(元尾崎委員)
良カロウ
本條ハ左ノ如ク決ス
第一項「要求シ又ハ訴追ヲ受クルコトヲ得ス」トアルヲ「求ムルコトヲ得ス又訴追ヲ受クルコトナシ」ト改ム但以下削除建議第二項左ノ如ク改ム連帶ノ義務ニ於テハ各債權者又ハ各債務者ハ自己ノ名ヲ以テ自己ノ部分ノ爲メニスルト他人ノ名ヲ以テ他人ノ部分ノ爲メニスルトヲ間ハス全部ニ付キ履行ヲ求ムルコトヲ得又訴追ヲ受クルコトアリ擔保訴權ニ因レル相互ノ求償權ヲ妨ケス
第四百五十九條朗讀ス
第四款 性質又ハ履行ノ可分又ハ不可分ノ義務
第四百五十九條 第四百五十七條ニ揭ケタル單數ノ義務ハ債權者ト債務者トノ間ニ在テハ不可分タル如ク之ヲ履行スルコトヲ要ス但第四百二十六條ヲ以テ一分ノ辨濟ヲ許スコトニ付キ裁判所ニ與ヘタル權能ヲ妨ケス
(栗塚委員)
此表題ハ少シ困ツテ居ルノデス性質カラ可分デアル義務、履行上分ツ可キ義務、分ツ可カラザル義務ト云フノデ御座イマスカラ
(委員長)
「性質又ハ履行ニ於ケル」トスレバ宜シイ
(栗塚委員)
實ハ「可分又ハ不可分ノ義務」トヤリ度イノデ御座イマスガ、ソウスルト前ニ釣合ガ惡ルイ、ソンナラ「單數複數ノ義務」デ良カロウト云フ論ガ出マシタ
(松岡委員)
四百五十七條ニ揭ゲタルト云フト外モ皆之ヲ云フノカ
(栗塚委員)
連合ノ義務ハ何トモ云フテハアリマセン
(南部委員)
之ハ入ラヌ
(栗塚委員)
入ラヌデ御座イマシヨウ四百六十二條ハ複數ノ義務ハトアルカラ
(松岡委員)
削リマシヨウ
(渡委員)
削ロウ、之ハ松岡君ニシテ珍ラシイ名案ダ
(委員長)
削ルガ多數カ
本條ハ「第四百五十七條ニ揭ケタル」ノ文字ヲ削ルコトニ決ス
第四百六十條朗讀ス
第四百六十條 連合ノ義務ニ於テハ債權者ノ各自カ履行ヲ求メ又ハ債務者ノ各自カ訴追ヲ受ク可キ實地ノ部分ハ契約ニ從ヒ又ハ事情ニ從ヒテ之ヲ定ム
前項ノ規定ニ從フヲ得サルトキハ其實地ノ部分ハ平分ニテ之ヲ計算ス但債權ノ利益又ハ債務ノ負擔ニ於テ各自カ其實地ノ部分ニ復スル相互ノ求償權ヲ妨ケス
(栗塚委員)
之ハ「合意又ハ事情ニ從ヒ」デ良カロウト思フ、又二項ハ「實地ノ部分」ハ「各自ノ部分」トシテハ如何デス
(松岡委員)
「合意又ハ事情ニ從ヒ」デ良シイ
本條ハ左ノ如ク決ス第一項「契約ニ從ヒ」ヲ「合意又ハ事情ニ從ヒ」ト改ム第二項「實地」ヲ「各自」ト改ム
第四百六十一條朗讀ス
第四百六十一條 債權者又ハ債務者ノ死亡シタル場合ニ於テ單數又ハ連合ノ義務ハ各相續人カ死亡者ヲ代表スル部分ニ付キ働方又ハ受方ニテ其各自ノ間ニ可分ナリ
連帶ノ義務モ當事者ノ相續人ノ間ニ於テハ亦可分ナリ
(村田委員)
「連帶ノ義務モ亦」ト云フ方ガ良クハナイカ
(栗塚委員)
其方ガ宜シウ御座イマシヨウ「連帶ノ義務モ亦當事者ノ相續人ノ間ニ於テハ可分ナリ」
(槇村委員)
「於テ可分ナリ」トハ云ハレヌカ
(栗塚委員)
云ハレマセン
本條第二項ハ左ノ如ク改ム
連帶義務モ亦當事者ノ相續人ノ間ニ於テハ可分ナリ
第四百六十二條朗讀ス
第四百六十二條 複數ノ義務ハ左ノ場合ニ於テ債權者又ハ原債務者及ヒ其相續人ノ間ニ不可分ナリ
第一 負擔スル目的ノ性質ニ因リテ一分ノ履行カ形體上及權利上不能ナルトキ
第二 義務カ性質ニ因リテ可分ナルモ當事者ノ明示又ハ默示ニテ一分ノ履行ヲ許サヾルノ意思アルトキ
(栗塚委員)
此條ハ同案ト御比ベヲ願ヒマス再調査ハ第二ノ所ガ變ツテ居リマス一項ノ「原債權者」ト云フノハ「原」ノ字ハ不要デ御座イマス
(委員長)
改正案デ原ノ字ガ這入ツテ居ル
(栗塚委員)
其原ノ字ハ債權者一人デナイ、相續人ヲ出シタニ付イテ入レタト云フ、我々ノ方デハ削ツテ呉レ日本語デハ原ノ債權者ノ相續人ト云ハンデモ相續人ト云ヘバ分リマスカラ
(松岡委員)
入ラヌ
(栗塚委員)
第二ハ默示ニテト云フノデ再調査デハ廣イ意味ヲ含マセタ樣デ御座イマス或ハ其期望シタル目的又ハ其他ノ事實ノ狀況ヨリ生ズルト云フ丈ケノコトハ默示デハ足ラヌト思ヒマスカラ「明示ノ意思又ハ其期望シタル目途其他事情ヨリ現ハルル意思カ一分ノ履行ヲ許ササリシトキ」ト致シマス
(委員長)
前ニ目的物ト云フテ後チニ云ハンデ宜シイカ
(栗塚委員)
宜シウ御座イマシヨウ
本條ハ左ノ如ク決ス
第一項ハ「原」ノ字ヲ削ル第二項左ノ如ク改ム義務カ性質ニ因リテ可分ナルモ當事者ノ明示ノ意思又ハ其期望シタル目途其他事情ヨリ現ハルル意思カ一分ノ履行ヲ許ササルトキ
第四百六十三條朗讀ス
第四百六十三條 義務ハ其性質ニ因リテ可分ナルモ左ノ場合ニ於テハ尙當事者ノ意思ニ因リ受方ノミニテ不可分ナリ
第一 債務者ノ一人ノ處分權內ニ在ル特定物ノ引渡ニ關スルトキ
第二 債務者ノ一人カ債務ノ設定名義ニ因リ獨リ履行ニ任シタルトキ
右第一ノ場合ニ於テ數人ノ債權者アルトキハ其一人ノ債務者ハ此數債權者ニ對シテ同時ニ義務ヲ免カル爲メ其數債權者ノ訴訟參加ヲ要求スルコトヲ得
(渡委員)
「免カルル」デハナイカ
(栗塚委員)
「免カル」デ御座イマス
(北畠委員)
モウ一ツ「ル」ノ字ヲ入レ樣
(南部委員)
「免カルル」ダ
(栗塚委員)
「ル」ノ字ヲ入レマシヨウ
本條末項「免カル」ヲ「免カルル」ト改ム
第四百六十四條朗讀ス
第四百六十四條 不可分ハ第四編第一部第三章ニ規定シタル如ク性質ニ因リテ可分ナル債務ノ履行ノ抵保ノ爲メ連帶ニ併合シ又ハ合併セスシテ之ヲ要約スルコトヲ得
(栗塚委員)
「不可分ハ性質ニ因リテ可分ナル債務ノ履行ノ擔保ノ爲川メ」ト致シマス
(渡委員)
ソレデ宜カロウ
(委員長)
削ル方ガ多數カ
本條第一項ハ左ノ如ク改ム
不可分ハ性質ニ因リテ可分ナル債務ノ履行ノ擔保ノ爲メ連帶ニ併合シ又ハ併合セスシテ之ヲ要約スルコトヲ得
第四百六十五條朗讀ス
第四百六十五條 債權者ハ一人ニテ不可分債務ノ履行ヲ得タルトキハ他ノ債權者ノ權利ノ限度ニ應シテ之ニ其利益ヲ分與スルコトヲ要ス
又債務者ハ一人ニテ義務ヲ履行シタルトキハ義務ノ原因ニ從ヒ又ハ從來相互ノ關係ニ從ヒテ他ノ債務者ノ分擔ス可キ部分ニ付キ之ニ對シ擔保ノ求償權ヲ有ス
本條ハ原案ニ決ス
第四百六十六條朗讀ス
第四百六十六條 債權者ノ一人ハ要約シタル如ク辨濟ヲ受クルニ非サレハ他ノ債權者ノ權利ヲ減少シ又ハ消滅セシムルコトヲ得ス
債權者ノ一人カ總債務者若クハ其一人ノ義務解脫ヲ主旨トスル更改、免除其他ノ契約ヲ爲シタルカ又ハ其一人ノ債權者ニ對シ適法ナル相殺ノ原因ノ存スルモ他ノ債權者ハ尙ホ債務ノ全部ノ履行ヲ請求スルコトヲ得然レトモ他ノ債權者ハ右一人ノ債權者カ其權利ヲ失ハサリシナラハ第五百二十三條第四項、第五百三十七條第二項、第五百四十三條第三項第四項ノ規定ニ從ヒ其一人ノ債權者ニ分與ス可キ利益ニ付訴追ヲ受ケタル債務者ニ對シテ計算ヲ爲ス
(栗塚委員)
「爲シタルカ」ハ「爲シタルモ」ノ間違ヒダロウト思ヒマス
(元尾崎委員)
之ハ可分不可分ノ關係ハナイカ、五百二十三條ハドンナコトヲ云フカ
(栗塚委員)
更改免除其他ノ合意ト云フコトデ御座イマス
(松岡委員)
割戻シダ
(栗塚委員)
「解脫」ト云フ字ハ面白クアリマセンガ義務ヲ解イテヤルト云フ字デ御座イマスカラ宜シウ御座イマシヨウ
(元尾崎委員)
解脫ト讀メバ可笑シイコトハナイ
(委員長)
解脫ハ何ト云フ字ダ
(栗塚委員)
「リベレー」ト云フ字デ自由ニナルト云フ字デ御座イマス
本條第二項ハ「爲シタルカ」ヲ「爲シタルモ」ト改ム
第四百六十七條朗讀ス
第四百六十七條 債權者ノ一人ノ爲シタル付遲滯其他ノ保存ノ行爲ハ他ノ債權者ヲ利ス
又債權者ノ一人ノ利益ノ爲メニ時效ヲ停止スル適法ノ原因アルトキハ亦他ノ債權者ノ利益ノ爲メ之ヲ停止ス
(栗塚委員)
「又」ト云フ字ガニツアリマスカラ後チニ「原因アルトキハ又」ト云フ「又」ノ字ヲ削リマス
本條ハ「亦」ノ一字ヲ削ル
第四百六十八條朗讀ス
第四百六十八條 債務者ノ一人ハ他ノ債務者ノ負擔ヲ加重スルコトヲ得ス又債務者ノ一人ノ付遲滯ハ之ヲ以テ他ノ債務者ニ對抗スルコトヲ得ス
然レトモ債務ノ認定及ヒ其他債務者ノ一人ニ對抗スルコトヲ得ヘキ時效ノ中斷又ハ停止ノ原因ハ之ヲ以テ他ノ債務者ニ對抗スルコトヲ得
(栗塚委員)
「認定」ハ「追認」ノ間違ヒデ御座イマス
(松岡委員)
「之ヲ以テ」ハ「之ヲ」デハイケナイカ
(栗塚委員)
併シ之ハ起リハ現貝君カラデシヨウ
本條「認定」ヲ「追認」ト改ム
第四百六十九條朗讀ス
第四百六十九條 債務者ノ一人ノ過失ニ因リテ不可分ノ義務ヲ履行スルコトヲ得サルトキハ損害賠償又ハ過怠約款ハ過失者ノミ之ヲ負擔ス可分義務ノ全部ノ履行ヲ保スル爲メ過怠約款ヲ設ケタルトキト雖トモ亦同シ
(栗塚委員)
縱令可分義務バカリデモ不調法ノモノ一人デ義務ヲ負フゾヨ
(元尾崎委員)
自分ノスベキ部分丈ケ怠レバ其レデ良サソウナモノダ
(南部委員)
ソレダカラ過失者イミ之ヲ負擔スダ
本條ハ原案ニ決ス
第四百七十條朗讀ス
第四百七十條 第四百六十二條ノ場合ニ於テ不可分義務ノ履行ノ爲メ訴ヘラレタル債務者ハ若シ己レト共ニ言渡ヲ受ケシム可キトキハ之ヲ受ケシムルコトニ付キ他ノ債務者ヲ訴訟ニ參加セシムル爲メ及ヒ之ニ對スル自己ノ求償ヲ裁決セシムル爲メ期間ヲ請求スルコトヲ得
(栗塚委員)
「訴ヘラレタル」ハ「訴ヲ受ケタ」デ良カロウト思ヒマス
(南部委員)
前ニ「訴追ヲ受ケタル」ト云フ文例ニナツテ居リマス
(委員長)
「訴訟ニ參加スル」デ良イデスカ
(栗塚委員)
宜シイト思ヒマス
(松岡委員)
「吿知參加」ダ
(渡委員)
「シフジエール」ト云フ字ヲ削ツタノデスカ
(栗塚委員)
左樣デス
(元尾崎委員)
「四百六十二條ノ場合ニ於テ」ト云フノモ入ラナイノダ、之ハ間違ヒデ這入ツタノダロウ
(村田委員)
前ノハ鼻ノ先キニ在ツタケレドモ今度ハ離レテ居ルカラ置クガ宜シイ
(松岡委員)
無クテ宜シイ
(淸岡委員)
削ル々々
(栗塚委員)
御削リニナツテモ差支アリマセン
(委員長)
外ニハアルマイネ
(栗塚委員)
アリマセン
(委員長)
其レデハ削ロウ
本條「第四首六十二條ノ場合ニ於テ」ヲ削リ「訴ヘラレタル」ヲ「訴ヲ受ケタル」ト改ム
第四百七十一條朗讀ス
第三章 義務ノ消滅
第四百七十一條 義務ハ左ノ諸件ニ因リテ消滅ス
第一 辨濟
第二 更改
第三 免除
第四 相殺
第五 混同
第六 履行ノ不能
第七 銷除
第八 廢罷及ヒ解除
債務者カ免責ト稱スル時效ヲ申立ツルコトヲ得ルノ條件ハ第五編第二部ニ之ヲ規定ス
(栗塚委員)
末項ハ起案者ニ問フテヤツテ御座イマス初メニハ「第九免責時效」トアツタノデ御座イマスガ起案者ハ時效ト云フモノハ證據ダト云フデハナイカ然ラバ「免責ノ時效」ト云フコトハ出來マイト云フテヤリマシタ處ガ其方ガ理窟ガアリマス矢張リ之モ時效ヲ申立レバ義務ガ消滅スルカラ何トカ云フテ置カヌトイケナイカラ云フテ置クト云フノデ御座イマシタガ、此意味デハ送リニ過ギマセンカラ「第九時效ニ因ル免責ノ推定」ト改メテ呉レヌカソウシテ置カナケレバ箇樣ナ文デハ邊リトシテ別ラレテ仕舞フト云フテヤリマシタ
(松岡委員)
免責時效デ置ケレバ宜シイノダ
(元尾崎委員)
一體無クモ宜シイ
(南部委員)
兎ニ角質問中ダカラ
(松岡委員)
最初ヨリ生ジナイモノト推測スルノデハナイカ
(栗塚委員)
ソウデス
(松岡委員)
世間ガ盲目デ免責時效ト稱スルガ我ハソウハ云ハヌト云フノダ
本條末項ハ起案者質問中ニ付未定
第四百七十二條朗讀ス
民法第十九回改正 十月十一日配付
第四百七十一條末項左ノ如ク改ム
其他義務ハ免責ト稱スル時效ノ條件カ第五編第二部ニ從ヒ具備スルトキハ消滅シタルモノト看做ス
第一節 辨濟
第四百七十二條 辨濟ハ義務ノ本旨ニ從フノ履行ナリ
數箇ノ債務アリテ只一箇ノ辨濟ヲ爲ストキハ第二款ニ從ヒ債務ノ一箇又ハ數箇ニ付キ辨濟ノ充當ヲ爲ス
債務者カ辨濟ヲ受クルコト能ハス又ハ欲セサルトキハ債務者ハ第三款ニ記載シタル如ク實物提供及ヒ供託ノ方法ヲ以テ自ラ義務ヲ免カルコトヲ得
債務者カ債權者ニ對シテ自己ノ財產ヲ委棄スルコトヲ得ル場合ハ民事訴訟法ヲ以テ之ヲ規定ス
(栗塚委員)
之ニハ餘程說ガ御座イマス二項三項ノ削除建議ガアリマス一項デ大變削テアリマス「第一款及ヒ第四款ニ記シタル區別ニ從ヒ單純ナルコト又ハ代位ヲ以テスルコトヲ得」ト云フノヲ削リマシタ、次ギニ第二款第三款ト云フコトガアルカラ削ラナケレバナラヌ樣ニナツタロウト思ヒマスカラ元トノ儘ニシタ方ガ良カロウト思ヒマスソレカラ文字ノ穩カナラヌ所ガアルカラ直シマシタ「如ク」ト云フト送リノ樣ニ思フガ是レハ再調査ノ誤リト思ヒマス、之ハ定義デ「辨濟ハ單純ナルモアリ代位ヲ以テスルモアリ」ト云フコトヲ云ハナケレバナリマセン、其レヲ云ハズニ「辨濟卽チ義務ノ方式及ヒ實旨ニ從フ」デハ分ラヌト思ヒマス、第一項ヲ復舊スル「單純ナルアリ代位アリ」トスル其レヲ云フト二項モ三項モ云フテ宜シイノデ御座イマス、二項三項ハ順序デ一箇又ハ數箇ニ付テ辨濟ノ充當ヲスルニハニ款ニ云フテ居ルガ之ハ第二款ニ從フト云フコトハ無クテモ良カロウト思ヒマス、之ハ辨濟ノ總則トカ原則トカ云フモノヲ揭ゲルト同ジデ御座イマスカラ置ク方ガ宜シイト思ヒマス之ハ初メニ「辨濟卽チ義務ノ本旨ニ從フノ履行ハ下ノ第一款及ヒ第四款ニ記シタル區別ニ從ヒ單純ナルコトアリ又代位スルコトアリ」ト致シマス
(淸岡委員)
之ハ入レヌ方ガ宜シイ
(栗塚委員)
總テ契約デモ契約ニハ何々ノ種類アリ、アリトアリマスカラ
(淸岡委員)
單純代位ト云フコトハ下デ分ツテ居ルカラ此處デ集メテ講釋ヲスル樣ナコトヲ云ハズトモ宜シイ
(三島委員)
「本旨ニ從フ履行ナリ」トシテ「其辨濟ハ單純ナルアリ代位スルコトアリ」トスレバ宜シウ御座イマシヨウ
(淸岡委員)
ソウスレバ宜シイ
(栗塚委員)
一項ヲ「辨濟ハ義務ノ本旨ニ從フノ履行ナリ」トシテ別項ニ「辨濟ハ單純ナルアリ代位ナルアリ」トシテ「第二款ニ從ヒ」ヲ削ルカ削ラヌカデス
(南部委員)
其レハ削ルガ宜シイ
(栗塚委員)
「辨濟ノ充當ヲ爲スコトヲ得」デ御座イマス
(元尾崎委員)
之ハ第一款第二款ト書イタ理由ガ分ラヌ、此通リナラバ全ク削ルガ宜シイ
(元尾崎委員)
其レデハ「辨濟ハ下ノ第一款及ヒ第四款ニ記載シタル區別ニ從ヒ單純ナルアリ代位ナルアリ」ト致シマシヨウ
(渡委員)
其レガ良カロウ
(村田委員)
之ハ「委棄」カ
(栗塚委員)
之ハ財產デ御座イマスカラ委棄デ御座イマス
(元尾崎委員)
訴訟法デハ「委棄」ト云ハヌト云フテ居ル
(栗塚委員)
訴訟法ト違ツテ居リマス權利抛棄ハ「抛棄」ト致シマシタガ之ハ抛棄デハアリマセン財產委棄ト云フ訴訟手續キガ訴訟法ニナケレバナリマセン
(元尾崎委員)
訴訟法デハ其レヲ抛棄トスルト云フ
(松岡委員)
訴訟法デハ其レヲ知ラヌノダ
(栗塚委員)
此處ハ始マリダカラ申シマスガ三項ハ「債權者カ辨濟ヲ受クルコト能ハス」ト致シマス此受クルト云フノハ何時モ訴ヲ受クルトカ、損害ヲ受クルト云フノトハ違ヒマス、之ハ受取ルト云フコトデ御座イマスカラ「受取ル」ト云フト都合ガ宜シウ御座イマス、七十六條デ「受クル」ト云フ字ト「受取ル」ト云フ字ト二ツ使ハナケレバナリマセン、辨濟ナレバ受取ルト云ヒ損害ナレバ受ケルトスレバ宜シイ
(元尾崎委員)
良カロウ
(南部委員)
實物提供ハ四百九十五條ト云フコトニナリマスカ
(栗塚委員)
實地ト云フ字デ御座イマス、物ヲ持テ行カナケレバイカヌト云フ字デス
(南部委員)
二、三ハ實物提供カネ
(栗塚委員)
皆實物提供デス、只提供ト云テモ實物提供ト云ハナケレバナリマセン
(南部委員)
ソウスルト第一ニ實物提供ト書クノハ良クナイ
(栗塚委員)
第一ハ實物提供デス、第二第三モ皆ソウデス
(南部委員)
第一バカリニ云フノハ惡ルイノダ
(栗塚委員)
ソウデス
(松岡委員)
實物ヲ提供、供託スルト云フノダ
(南部委員)
實物ハ供託ト云フコトハナイ
本條ハ左ノ如ク決ス第一項ノ次キヘ左ノ一項ヲ設ク辨濟ハ下ノ第一款及ヒ第四款ニ記載シタル區別ニ從ヒ單純ナルアリ代位ナルアリ第三項「受クル」トアルヲ「受取ル」ト改ム
第四百七十三條朗讀ス
第一款 單一ノ辨濟
第四百七十三條 辨濟ハ債務者ノ外尙ホ保證人又ハ抵當財產ヲ所持スル第三者ノ如キ附隨ノ義務者ヨリ有效ニ之ヲ爲スコトヲ得
又辨濟ハ利害ノ關係ナキ第三者ヨリ或ハ債務者ノ名ヲ以テ或ハ自己ノ名ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
(栗塚委員)
「單一」ハ「單純」ト致シマス第一項ノ前ノハ拔カシテアリマス「共同債務者ノ一人ヨリ有效ニ之ヲ爲スノ外」ト云フ字ヲ入レ度イノデ御座イマス、債務者ガ一人ニモセヨ共同債務者モナケレバナリマセン
(松岡委員)
關係ノナイ債務者カラモ出來ルダロウ
(南部委員)
本當ノ債務者ガ共同債務者ト保證人ト保證人デナク抵當財產ヲ差出シテ居ル第三者カラ辨濟ヲスルコトガ出來ルト云フノダロウ
(栗塚委員)
主タル義務者ト附隨ノ義務者ト利害ノ關係ノナイ人ト三人アル、主タル義務者ノ中ニ一人ノ債務者デアツテ自分デ拂ヘバ申ス迄モナイ、併シ大勢ノ債務者ガアツテ其中ノ一人ガ拂ツタトキハ矢張リ單純ノ債務者ゾヨト云フノデ「辨濟ハ債務者又ハ共同債務者ノ一人ヨリ有效ニ」トアリマス
(淸岡委員)
「債務者ノ外」デ澤山ダロウト思フ
(松岡委員)
一人ガシ樣ガ、二人ガシ樣ガカ
(元尾崎委員)
同ジコトダ
(栗塚委員)
單獨ナル債務者又ハ共同債務者中一人ト爲シ其第一ニ拂フコトノ出來ル人ハ單獨ナル債務者若クハ共同債務者中ノ一人トアリマス
(松岡委員)
第一ハ債務者第二ハ保證人第三ハ關係ノナキ人ト云フノダカラ債務者ト云ヘバ單獨ナル共同者ハ這入ツテ居ル
(南部委員)
ソウスレバ債務者モ入ラヌコトダ債務者ガ返ヘスト云フコトハ無論分ツテ居ルカラ
(元尾崎委員)
詰リ誰レデモ出來ルト云フノダ
(南部委員)
ドウ云フ譯デ削ツタカ分ラヌ
(栗塚委員)
共同債務者ト云フト債務者ガ皆這入ラナケレバナラヌ樣ニナリマス債務者一人ノトキハ一人デ拂フ連帶ノトキハ三人デ拂ハナケレバナラヌ、不可分ノ相續人三人デ義務ヲ負フタトキハ三人デ拂フ債務者ガ五人居ルト其五人ガ拂ハナケレバ單純ノモノトハ云ヘヌ
(元尾崎委員)
ソウ云フ裏ハ出ナイ
(松岡委員)
強テナケレバナラヌト云フト「債務ノ連帶若クハ不可分ナルトキハ」ト云ハナケレバナラヌ
(栗塚委員)
連合ノトキハ
(南部委員)
連合ノトキハ上ノ債務者ニ這入ル
(淸岡委員)
佛蘭西ニハ「共同債務者」ト云フノハナイ
(南部委員)
前條ニ在リマス
(委員長)
三人デ一人ト看做シテアル者ハ一人デヤツテ宜シイト云フコトハ連帶義務デ相手ハアルガ一人デヤツテ三人前出來ルト云フコトガ此處ニアル以上ハ揭ゲタ方ガ宜シイ
(元尾崎委員)
有ツテモ良カロウ
(委員長)
一體ハ「債務者又ハ其他ノ者ヨリ」トシテモ宜シイノダ
(淸岡委員)
ソウスルト債務者ト云フト何時デモ「共同債務者」ト云ハナケレバナラヌ
(元尾崎委員)
入レテ宜シイトキハ入レテモ宜シイ
(栗塚委員)
「又ハ共同債務者ノ一人ヨリ有効ニ之ヲ爲スノ外」ト入レマス
第一款表題ノ「單一」ヲ「單純」ト改ム
第一項債務者ノ下ヘ「又ハ共同債務者ノ一人ヨリ之ヲ有效ニ爲ス」ノ數字ヲ加フ
午後零時十五分休憩
午後第一時開議
第四百七十四條朗讀ス
第四百七十四條 利害ノ關係ヲ有スルト否トヲ問ハス第三者ノ爲シタル辨濟ノ有效ナル爲メニハ債權者ノ承諾ヲ必要トセス但作爲ノ義務ニ關シ債權者カ特ニ債務者ノ一身ニ着眼シタルトキハ此限ニ在ラス
右同一ノ場合ニ於テハ債務者ノ承諾モ亦之ヲ必要トセス但利害ノ關係ヲ有セサル第三者ノ辨濟ニ付テハ債務者及ヒ債權者ノ承諾ナキトキハ其辨濟ハ成立セス
(栗塚委員)
「又ハ債權者」ノ「又ハ」ハ「及ヒ」ノ誤リデ御座イマス
(村田委員)
元トモ「又ハ」トアル
(南部委員)
「又ハ」デハ聞ヘヌ
(元尾崎委員)
初メニ第三者ノ爲シタル辨濟債權者ノ承諾ヲ必要トセヌト云フノダガ二項ハ辨濟ニ付テハ債務者又ハ債權者ノ承諾ナキトキハ其辨濟ハ成立セヌト云フノハ
(栗塚委員)
債務者モ嫌忌ダト云ヒ債權者モ嫌忌ダト云フ
(元尾崎委員)
初メニ承諾ハナクモ良イト云フ
(栗塚委員)
債權者丈ケナレバ承諾ハナクモ宜シイ兩方トモ知ラズニ書イタノハイカヌ
(北畠委員)
作爲ノ義務ニ關シト云フノハ
(栗塚委員)
繪ヲ書クトカ何トカ云フトキデス
(松岡委員)
元トノハ第三者ガ辨濟シ樣ト云テモ御頼申サヌ私ガ勝手ニ拂フト云ヘルト云フ、是非承諾シナケレバナラヌト云フ今度ハソウ云フコトハ少シモナイ樣ニナル
(元尾崎委員)
原案ノ方ガ宜シイ
(南部委員)
原案ノ方ガ宜シイ
(栗塚委員)
又債務者ノ承諾モ必要トセヌト云フノデス
(松岡委員)
原文デハ債務者ガ第三者ガ知ラヌコトヲ是非承諾シナケレバナラヌト云フ必要ハナシト云フノダ
(元尾崎委員)
右同一ノ場合ニ於テト云フノハ云ヒ過ギル
(栗塚委員)
「右同一ノ場合ニ於テ」ハ削ツテモ宜シイ、原文ハ利害ノ關係ヲ有セザル第三者ノ辨濟ニハ債務者ノ承諾ヲ尙ホ必要トセズト云フノデス
(元尾崎委員)
原案通リニシタ方ガ宜シイ
(淸岡委員)
「債務者ハ第三者ノ爲シタル辨濟ヲ承諾スルコトヲ必要トセス」ト云フノハ譯ガ惡ルイ
(栗塚委員)
利害ノ關係ナキ第三者ト云フノハ但ニモ本文ニモアリマスガ、之ニモ原案ニモナイ
(南部委員)
利害ノ關係ヲ有セザル第三者辨濟ニ付テハ債務者ノ承諾ヲ必要トセズ
(淸岡委員)
ソウスルト利害ノ關係アル者ハ承諾ヲ必要トスルカ
(栗塚委員)
ソレデ前ニ但利害ノ關係ナキトキト雖モ亦同ジト云フノダ
(松岡委員)
同一ノ場合ニ於テハト云フト利害ノ有スルト否トヲ問ハズト云フ兩方ヲ受ケタノダ
(南部委員)
「右同一」ハアツテモ宜シイ
(元尾崎委員)
「同一」ト云フコトニ妙ナコトガ籠ツテ居ル、時ニ債務者ノ一身ニ着目シタルト云フ樣ナコトモアルカラ
本條末項「又ハ」ヲ「及ヒ」ト改ム
第四百七十五條朗讀ス
第四百七十五條 代理ノ委任ヲ受ケスシテ辨濟ヲ爲シタルトキハ第三者ハ辨濟ノ爲メ債務者ニ得セシメタル利益ノ限度ニ應シ之ニ對シテ求償權ヲ有ス但法律又ハ契約ニ依リテ債權者ノ權利ニ代位スル場合ヲ妨ケス
(栗塚委員)
「辨濟ヲ爲シタルトキハ」トアル「トキハ」ハ入ラヌ樣デス
(三島委員)
元トハ辨濟ヲ爲シタル第三者トアリマスカラ間違ヒデ御座イマシヨウ
本條「爲シタルトキハ」ノ「トキハ」ヲ削ルコトニ決ス
第四百七十六條朗讀ス
第四百七十六條 義務カ定量物ノ所有權ノ移轉ヲ目的トスルトキハ其物ノ所有者ニシテ且之ヲ讓渡スノ能力アル者ニ非サレハ引渡其他ノ方法ヲ以テ辨濟ヲ爲スコトヲ得ス
他人ノ物ヲ引渡シタルトキハ當事者各自ニ其辨濟ノ無效ヲ主張スルコトヲ得
讓渡スノ能力ナキ所有者カ物ヲ引渡シタルトキハ其所有者ノミ辨濟ノ無效ヲ請求スルコトヲ得
右孰レノ場合ニ於テモ債務者ハ更ニ有效ナル辨濟ヲ爲スニ非サレハ引渡シタル物ヲ取戾スコトヲ得ス
債權者カ辨濟トシテ受ケタル動產物ヲ善意ニテ消耗シ又ハ讓渡シタルトキハ債務者ハ其取戾ヲ爲スコトヲ得ス
又債權者ハ他人ノ物ヲ以テセル辨濟ヲ認諾スルコトヲ得但眞ノ所有者ヨリ回復ヲ訴ヘタルトキハ債務者ニ對スル擔保ノ訴權ヲ妨ケス
(栗塚委員)
第五項ノ「受ケタル」ハ「受取タル」トナリマス
(淸岡委員)
一項ハ「引渡又ハ」ト云ハンデモ宜シイカ
(栗塚委員)
引渡モ一ツノ方法デス
本條第五項「受ケタル」ハ「受取タル」ト改ム
第四百七十七條朗讀ス
第四百七十七條 辨濟ハ債權者又ハ其代人ニ之ヲ爲スコトヲ要ス辨濟ヲ受クルノ分限ヲ有セサル者ニ爲シタル辨濟ト雖モ債權者カ之ヲ認諾シ又ハ之ニ因リテ利得シタルトキハ有效ナリ
(栗塚委員)
之モ「受取リ」トナリマス、後チノ「辨濟ヲ」ト云フコトハ入ラヌト思ヒマス「受取リノ分限ヲ有セサル者ニ爲シタル」デ良カロウト思ヒマス
(松岡委員)
子供ニ持タセテヤツテモ親父ガ其酒ヲ飮ンデ居ルト云フノデハイケナイ
(栗塚委員)
ソウデス
本條ハ「辨濟ヲ」ノ三字ヲ削リ「受クル」ヲ「受取リ」ト改ム
第四百七十八條朗讀ス
第四百七十八條 眞ノ債權者ニ非サルモ債權ヲ占有セル者ニ爲シタル辨濟ハ債務者ノ善意ニ出テタルトキハ有效ナリ
表見ナル相續人、表見ナル包括承接人、記名債權ノ表見ナル讓受人及ヒ無記名證劵ノ占有者ハ之ヲ債權ノ占有者ト看做ス
(栗塚委員)
コウ云フ人ニ拂ツタナラ宜シイ
(南部委員)
「表見ナル」ノ下ニ「其」ト云フ字ガ這入ルガ良カロウ
(栗塚委員)
「表見ナル相續人其他ノ包括承接人」トアルノデ御座イマス
(南部委員)
ソレデ宜シイ
(松岡委員)
前ニハ「表見」トアツタノガ「名義」トナツタノカ
(栗塚委員)
アレハ三百七十條ニ在リマス
(南部委員)
譯ハ同ジデスカ
(栗塚委員)
違ヒマス
(淸岡委員)
「其他」ト云フト上ノ表見ガ冠リマシヨウカ
(南部委員)
冠リマス
(栗塚委員)
其レハ籠レバ讓受人ノ表見ナルモ入ラヌ
(南部委員)
アレハ包括承接人デハアリマセンカ
(松岡委員)
云フ詰メルト占有スル者ニ辨濟スレバ宜シイ
(栗塚委員)
處ガ占有ト云フモノハ分ラヌカラ債權ノ占有者ト云フノハ如何ナルモノカト云フトコンナモノダト云フノデス
本條第二項「表見ナル包括承接人」ヲ「其他包括承接人」ト改ム
第四百七十九條朗讀ス
第四百七十九條 受クルノ能力ナキ債權者又ハ債權占有者ニ爲シタル辨濟ハ其債權者又ハ債權占有者ノ請求ニ因リテ之ヲ取消スコトヲ得但其利得シタル部分ニ付テハ此限ニ在ラス
(栗塚委員)
之モ「受取」トナリマス
(元尾崎委員)
其ト云フノハ
(栗塚委員)
債權者ト云フノデス
(元尾崎委員)
受取ツテモ役ニ立タヌカ
(松岡委員)
利得シテハイカヌ
(元尾崎委員)
使ツテ仕舞ヘバ二重取リガ出來ルカ
(粟塚委員)
使ヒ樣ニ因リマス、贅澤品デハイケナイ
(元尾崎委員)
占有者ハ
(栗塚委員)
占有者ハ債權者バカリデハイケナイ、占有者ト云フテ來タノデ實際ハ債權者バカリデ御座イマス、受取ノ能力ナキ債權者、又ハ受取ニ能力ナキ債權占有者ト云フノデス
本條ハ「受クル」ヲ「受取ル」ト改ム
第四百八十條朗讀ス
第四百八十條 民事訴訟法ニ從ヒ正シク爲シ及ヒ續行シタル拂渡差押ノ後債務者カ辨濟ヲ爲シタルトキハ差押債權者ハ其受ケタル損害ノ限度ニ於テ更ニ辨濟ス可キヲ債務者ニ強要スルコトヲ得但辨濟ヲ受ケタル債權者ニ對スル債務者ノ求償權ヲ妨ケス
(栗塚委員)
之モ「受取タル」トナリマス之ハ如何ニモ妙ナ文章デ御座イマスカラ「正當ニ爲シ」トシテ「及ヒ續行シタル」ヲ削リマシタ、三百五十條ノ「留メル」ト云フ字ト同ジデ御座イマスカラ「差留メノ後差留メヲ受ケタル債權者ハ」ト致シマス
(松岡委員)
事ガ二ツアツテ宜シイ
(栗塚委員)
私ガ南部サンニ貸金ガアル、其レデ南部サンカラ取ロウト思ツタ處ガ南部サンハ金ガナイ、然ルニ南部サンガ貴君ニ貸金ガアツテ貴君ガ御拂ヒ下サルト云フテ止メタソウスルト貴君ガ南部サンノ債務者デ南部サンハ私ノ債務者デ、貴君ガ辨濟ヲスレバ更ニ今一遍辨濟シテ下サイト請求ガ出來ル
(村田委員)
其代ハリ南部サンハ求償權ガアル
(元尾崎委員)
入レンデモ能ク分ル
(北畠委員)
入ラヌダロウ
(栗塚委員)
ソレデハ入レマセン
本條ハ「正シク」ヲ「正當ニ」ト改メ「及ヒ續行シタル」ノ數字ヲ削リ「差押」ヲ「差留」ト改メ「ス可キ」ヲ「ス可キコト」ト改メ「受ケタル」ヲ「受取タル」ト改ム
第四百八十一條朗讀ス
第四百八十一條 債權者ハ己レニ對シテ負擔シタル物ヨリ他ノ物ヲ辨濟ニ受クルノ責ニ任セス他ノ物ノ價格カ高キトキト雖モ亦同シ
債務者ハ其負擔シタル物ヨリ他ノ物ヲ與ルノ責ニ任セス請求ヲ受ケタル物ノ價格カ低キトキト雖モ亦同シ
代替物ヲ目的トセル債務ニ於テハ債務者ハ最良品ヲ與ヘ債權者ハ最惡品ヲ受クルノ責ニ任セス
(栗塚委員)
「己レニ對シテ債務者ノ負擔シタル物」ト云ハヌト分ルマイト思ヒマス
(松岡委員)
ソンナラ「己レニ對シテ」ヲ止メルカ
(栗塚委員)
「己レニ對シテ債務者ノ負擔シタル物」デ御座イマス
(村田委員)
ドウモ入ラヌ
(栗塚委員)
「他ノ物ヲ辨濟トシテ受取ル」トナリマス
(村田委員)
之モ直スニ及バヌ
(渡委員)
直スガ宜シイ
本條第一項「辨濟ニ受クル」ヲ「辨濟トシテ受取ル」ト改ム
第四百八十二條朗讀ス
第四百八十二條 雙方一致ニテ物ヲ金錢ニ、金錢ヲ物ニ又ハ或ル物ヲ他ノ物ニ代ヘテ辨濟ノ爲メ之ヲ與ヘ若クハ約束シタルトキハ原義論ヲ更改シタリト看做シ其行爲ハ場合ニ因リテ賣買又ハ交換ノ規則ニ從フ
(栗塚委員)
「代ヘテ」ノ「テ」ハ入ラヌト思ヒマス
本條「代ヘテ」ヲ「代ヘ」ト改ム
于時午後第二時閉會