法律取調委員会 民法草案再調査案議事筆記 第9回(2)
参考原資料
- 法律取調委員会 民法草案財產編再調査案議事筆記 , 自 第七回 至 第十回 [国立国会図書館デジタルコレクション]
備考
- 未校正のテキストデータです.
民法財產篇再調査案第九回ノ二議事筆記
明治二十一年十月五日午前第八時三十分開會
(栗塚委員)
六十一條ノ公ノ無形人ハ國府縣町村ト直ホルノヲ落シマシタ
(南部委員)
市町村ダロウ
(栗塚委員)
市町村デ御座リマス
(松岡委員)
二十三條ハ
(南部委員)
アレハ宜シイ
(元尾崎委員)
郡モアル
(栗塚委員)
郡制ガ發布ニナツタラ入レマシヨウ
(元尾崎委員)
公ノ法人デ宜シイデハナイカ
(村田委員)
二十四條ニモ公ノ無形人トアル
(松岡委員)
無形人デハ通ランカ
(元尾崎委員)
國府縣ト云フト北海道モ言ハナケレバナランカラ公ノ法人ガ宜カロウ
(南部委員)
ソレデハ此儘ニシテ置キマシヨウ
(栗塚委員)
五十八條ノ二項ヲ起案者ニ問フテヤリマシテ之モ七十一條ト同ジコトニナリマス又賃貸スルコトヲ得ベキ性質ノ用益權ニ付テハ用益者ハ自己ノ責任ヲ以テ之ヲ賃貸スルコトヲ得トアリマス此二項制限スル意デ書イテアルト註ニアリマスガ少シモ制限シナイカラ此通リナレバ七十一條ニアルカラ入ランデハナイカト言テヤリマシタ處ガ甚ダ良イ注意デアルソレデハ五十八條ノニ項ハ「用益物ニ在ラサレハ用益者ハ自己ノ責任ヲ以テ賃貸スルコトヲ得ス」ト直シテ來マシタソレカラ七十六條デ御座イマス之デハ本文モ但書モ同ジニナリマスカラ但ノ方ヲ「不代替物ノ評價ハ賣買ニ均シキ效力ヲ有スルコトヲ目錄ニ明記シアルニ非サレハ其效力ヲ有セス」ト致シマス
(松岡委員)
成程一言モナイ
第四百十五條朗讀ス
第三節 擔保
第四百十五條 權利ヲ讓渡シタル者ハ讓渡以前ノ原因又ハ自己ノ責ニ歸ス可キ原因ニ基キタル追奪又ハ妨碍ニ對シ其權利ノ完全ナル行使及ヒ自由ナル收益ヲ擔保スルノ責ニ任ス
擔保ニ二箇ノ目的アリ卽チ第三者ノ主張ニ對スル讓受人ノ妨禦及ヒ防止スル能ハサリシ妨碍若クハ追奪ノ替償是ナリ
(栗塚委員)
「替償」ヲ「償金」ト改メマシタ之ハ留保シテ御座イマスルノハ初メハ權利ヲ讓渡又ハ讓渡スコトヲ約束シタルモノハトアツタノデアリマス今村ハ讓渡ノ原因ト云フト讓渡ノアツタ上ノ樣ニ見ヘルガ、初項ト二項トガ分ラヌ所ガアル字ノ間違ヒダカラ讓渡シタルモノハ又ハ讓渡ト變ヘテ呉レト云フコトデ御座イマスダカラ其レナラ同ジコトダト云フノデ削リマシタ
(松岡委員)
讓渡シタ者ニ就イテノ擔保ダ
(栗塚委員)
ソウデス
(南部委員)
「物權ト人權トヲ問ハス」ト入レ度イ、之ハ人權篇ダカラ間違ガ出來ルト困ル留保
(淸岡委員)
置イタ方ガ宜シイ
(栗塚委員)
入レマシヨウ
本條第一項冒頭ニ「物權ト人權トヲ問ハス」ヲ加フ第二項「替償」ヲ「償金」ト改ム
第四百十六條朗讀ス
第四百十六條 擔保ハ有償名義ノ行爲ニ付テハ反對ノ要約ナキトキハ當然存立シ無償名義ノ行爲ニ付テハ之ヲ諾約シタルニ非サレハ存立セス
然レトモ如何ナル場合ニ於テモ又如何ナル要約ノ爲メニモ讓渡人ハ自ラ讓受人ニ妨碍ヲ加フルコトヲ得ス又第三者カ讓渡人ノ授與シタル權利ニ依リ讓受人ニ妨碍ヲ加ヘ又ハ追奪ヲ爲シタルトキハ讓渡人ハ無擔保ニテ讓渡ヲ爲シ且授與カ讓渡ノ以前ニ在リト雖モ亦其擔保ヲ爲スノ責ニ任ス
右擔保ノ義務ハ讓渡人ノ相續人ニ移轉ス
(栗塚委員)
二項ノ讓渡人ノ授與シタルト云フノハ少シ分リ惡クソウデ御座イマスカラ「讓渡人ヨリ得タル權利ニ依リ」トシタ方ガ良カロウト思ヒマス
(村田委員)
其方ガ宜シイ
(元尾崎委員)
且授與ガト云フノハ
(栗塚委員)
「取得カ」トシテモ宜シウ御座イマス
(松岡委員)
上ヲ所得シテモ下ヲ取得トスルガ宜シイ
(栗塚委員)
ソレデモ宜シイ
(元尾崎委員)
「第三者ニ所得カ」トシタラ良カロウ
(南部委員)
「讓渡人ヨリ授與シタル」トスルハ宜シイ
(村田委員)
其レガ宜シイ
(元尾崎委員)
擔保ナシニ貰ツタノダカラ
(南部委員)
自分ノ物ハ云フテヤツタ
(栗塚委員)
私ガ貴君ニ家ヲ賣テ之ハ擔保致シマセント云フテ南部サンニ賣ツテ南部サンガ貴君ノ所ヘ取戻シニ往ツタノハ詐欺シタノモ同ジコトダ
(淸岡委員)
授與ト書クト「セラレタル」トシナケレバナラヌ
(南部委員)
元トノ通リカ
(淸岡委員)
元トノ通リガ宜シイ
(松岡委員)
終リハ「擔保ノ責ニ任ス」デ良カロウ
(南部委員)
「擔保ノ責ニ任ス」デ宜シイ
本條第二項末段「其擔保ヲ爲スノ責ニ任ス」ヲ「其擔保ノ責ニ任ス」ト改ム
第四百十七條朗讀ス
第四百十七條 買主又ハ賃借人ノ爲メニスル賣主又ハ賃貸人ノ擔保及ヒ共同分割者ノ相互ノ擔保ニ特別ナル規則ハ其擔保ヲ生スル契約及ヒ行爲ノ各事項ニ於テ之ヲ規定ス
(栗塚委員)
之ハ其處デ云フカラト云フ積リデ送リダカラ刪ルト云フノデ御座イマシタガ、置キマシテモ差支ナイ積リデ御座イマス
(村田委員)
置イテ宜シイ
(松岡委員)
刪テ宜シイ
(元尾崎委員)
刪ル方ガ宜シイ削除建議
(西委員)
置テハドウデス
(元尾崎委員)
其レデハ置キマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第四百十八條朗讀ス
第四百十八條 他人ト共ニ又ハ他人ノ爲メニ義務ヲ負擔スル者ハ保證、連帶及ヒ不可分ノ事項ニ於テ規定シタル如ク他人ノ免責ノ爲メニ爲シタル辨濟ニ付キ擔保ノ求償權ヲ有ス
又債權者ノ一人カ連帶又ハ不可分ノ義務ノ皆濟ヲ受ケタルトキハ他ノ債權者ハ其一人ノ收メタル利益ノ分配ニ付キ之ニ對シテ特別ノ訴權ヲ有セサルトキハ擔保ノ訴權ヲ有ス
(栗塚委員)
此條ハ字モ改メマセン修正者ノ云フノハ千二十九條ニ保證ノ事ガ書イテアル百六十四條以下ニハ連帶ノ事ガ書イテアル、百八十四條九十四條四百六十五條ニハ不可分ノ事ガ書イテアルカラ云フニ及バヌト申シマシタガ他人ノ免責ノ爲メニ爲シタル辨濟ニ付キ擔保ノ求償權ヲ有スト云フノハ必要デ御座イマス詰リ他人ト共ニ又ハ他人ノ爲メニ義務ヲ負フテ居ル人ガ他人ノ爲メニ義務ヲ拂ツタトキハ求償權ヲ生ズト云フノハ置キタイノデス前ノ條トハ違ヒマス
(元尾崎委員)
特別ノ訴權ヲ有セザルトキト云フノハ元トノ義務者ヘ對シテ特別ノ訴權ガナカツタトキハト云フノデスカ
(栗塚委員)
私ト南部サンガ貴君カラ金ヲ拂ツテ貰ツテ私ガ一人デ取ツタ南部サンハ私ニ係ルニ特別ニ訴權ガアレバ特別ノ訴權ガ來ル特別ノ訴權ガナクトモ擔保デ係ツテ來ル
(元尾崎委員)
金ヲ排ツタ人ノ處ヘ行ク樣ダ
(大尾崎委員)
特別ノ訴權ヲ有セズト云フノカ
(南部委員)
代位ノ訴權トカ何トカ種々ノ訴權ガアルデス
(元尾崎委員)
同ジク係ツテ行クガ係リ方ガ違ウノダ
(南部委員)
訴權ニ依テ損失ガアル其レハ擔保ノ處ヘ行クト分リマス
(大尾崎委員)
物ガナイトキハ擔保デ行クカ
(元尾崎委員)
分ラン
本條ハ原按ニ決ス
第四百十九條朗讀ス
第四百十九條 擔保ヲ受クル權利ヲ有スル者ハ訴ヲ受ケタルトキ民事訴訟法ニ從ヒ擔保人ニ訴訟參加ヲ請求スルコトヲ得
(栗塚委員)
之ハ擔保ヲ受ケタル權利ヲ有スルモノガ訴ヲ受ケタルトキト云フト訴ヲ受ケタトキニハトナルカラ何時デモ出來ル樣デ御座イマスガ註ヲ調ベルト訴ヲ受ケタラ直グ樣其當時ニト云フ意味ガアリマス跡デ行クコトハ出來マセン突然訴訟ノ起ル前ニ私ハ擔保シテ貰ハナケレバナラント云フ訴權デ後ニ行クコトノ出來ナイ訴權ニ訴訟法ガナツテ居ルノデ御座イマス防訴ノ抗辯ト云フノデス「擔保ニ付キ權利ヲ有スルモノハ」トシタイト思ヒマス原案ノ意味ヲ現ハスニハ當時ト云フノガ必要デソレカラ擔保ヲ受ケル削除建議第千二十九條以下、第千六十四條以下、第千八十四、第千九十四條、及ヒ第四百六十五條參觀ガ宜シイカ擔保ニ付キガ宜シイカト云フト「ニ付キ」ノ方ガ宜シイト云フノデ「當時ニ」ハ是非御置キヲ願ヒマス
(松岡委員)
訴訟法デハ裁判ノ終リマデハ出來ル
(栗塚委員)
之ハ其時デナケレバナリマセン
(松岡委員)
ソウスルト訴訟參加デナイ方ガ行カナケレバナラン
(栗塚委員)
先逹ノ例デ私ガ尾崎サンニ家ヲ賣ツタ處ガ尾崎サンガ南部サンカラ訴ヘラレタ家ヲ賣ツテ安心シテ居ル處ガ第三者ガ來テ之ハ私ノモノダト云フトキ尾崎サンガ先ヅ待ツテ呉レ御前ニ答辯スル前ニ栗塚ヲ呼ビ出シテ呉レト云フノデ栗塚ヲ參加セシメネバナリマセン
(元尾崎委員)
ソレデハ當時ト書センデ宜シイ
(栗塚委員)
受ケタルトキハト云フト何時出シテモ宜シイ樣ニナリマス
(大尾崎委員)
審問ガ終結ニ至ルマデノ間ナレバ良カロウ
(栗塚委員)
ソレハイケマセン次ギノ條ニ「擔保人ヲ訴訟ニ參加セシメスシテ追奪ヲ受ケ又ハ他人ノ債務ヲ辨濟シタルモノハ主タル訴權ヲ以テ擔保ヲ要求スルコトヲ得但擔保人カ請求ヲ却下セシムルニ有效ナル方法ヲ有セシコトヲ證明スルトキハ此限ニ在ラス」トアリマスカラ栗塚ヲ呼ビ出サントソレハ貴君下手デ御座イマス私ヲ呼ビ出サンカラデ御座イマス私ハ擔保シマセント云ヘマス
(元尾崎委員)
擔保ノ權利ヲ有スルモノハデ良カロウト思ヒマス
(淸岡委員)
擔保ニ付テノ權利トハ擔保ヲ受クル權利ト云ハナケレバナラン
(松岡委員)
私ハ何時シテモ構ハンコトニシタイ
本條「擔保ヲ受クル」ヲ「擔保ニ付キ」ト改ム
第四百二十條朗讀ス
第四百二十條 擔保人ヲ訴訟ニ參加セシメスシテ追奪ヲ受ケ又ハ他人ノ債務ヲ辨濟シタル者ハ主タル訴權ヲ以テ擔保ヲ要求スルコトヲ得但擔保人カ請求ヲ却下セシムルニ有效ナル方法ヲ有セシコトヲ證明スルトキハ此限ニ在ラス
(栗塚委員)
證明ノ證ノ字ヲ削リマスソレカラ擔保人ガ請求ヲト云フ「擔保人カ」ノ下ヘ「前ノ」ノ二字ヲ入レタイト思ヒマス
(元尾崎委員)
ナイ方ガ宜シイ
(栗塚委員)
入レント尾崎サンニ家ヲ賣ツテ尾崎サンガ南部君カラ訴ヘラレタ其訴ヲ却下セシムルニ有效ナル方法ヲ栗塚ガ持ツテ居リマス早ク呼ンデ下サレバ宜シヒニ呼ンデ呉レンカラ訴訟ニナツタノデアリマスソレデ前ノ請求ト致シマシタ
(村田委員)
前ノ字ハ無クテモ宜シイ
(元尾崎委員)
同ジ人ガ二度ヤツタトキデナケレバ前後トハ云ヘン之レハ書カン方ガ良ク分ル
(西委員)
分ランコトハナイガ疑ヒガ起ルカ知レン
(元尾崎委員)
餘リ老婆心ダ修正ハ感服シナイ
(松岡委員)
擔保ヲ請求スルコトヲ得ト云フト擔保人ガ其請求ヲ逐ヒ下ゲルト云フ字ニ讀メル
(淸岡委員)
請求スルトキハアルガ斯フ云フ場合ガアルゾト云フノダカラ前ノト云フ字ハ入ラン要求スルコトハ出來ルケレドモ斯ウ云フ場合ハ出來ント云フノダカラ
(渡委員)
良カロウ
(槇村委員)
入レテ置コウ
本條但擔保人カノ下「前ノ」ノ二字ヲ加ヘ「證明スル」ヲ「證スル」ト改ム
第四百二十一條朗讀ス
第四節 義務ノ諸種ノ体樣
第四百二十一條 義務ハ左ノ場合ニ從ヒテ其體樣ヲ變ス
第一 義務ノ成立ノ單一有期又ハ有條件ナルトキ
第二 負擔ノ目的ノ單一選擇又ハ任意ナルトキ
第三 債權者又ハ債務者ノ單數又ハ複數ナルトキ
第四 義務ノ性質又ハ其履行ノ可分又ハ不可分ナルトキ
義務ハ其體樣ノ變スルニ從ヒテ其效力モ亦變ス
働方並ニ受方ノ連帶ノ效力及ヒ契約上ノ不可分ノ效力ハ債權ノ抵保トシテ第四編ニ之ヲ規定ス
(栗塚委員)
第一ノ單一ヲ單純ト改ム有條件ハ條件ト改メマス
(村田委員)
ソレハ宜シイ
(大尾崎委員)
第二モ單純トスルカ
(栗塚委員)
第二ハ單一デ御座イマス
(松岡委員)
單純ト單一ト分ケルガ宜シイ
(栗塚委員)
末項ハ「連帶ノ效力及ヒ合意上ノ不可分ノ效力ハ債權ノ擔保篇ニ之ヲ規定ス」ト致シマス
(松岡委員)
ソレナラ第四篇デ良カロウ
(栗塚委員)
四篇トハ云ヘン別々ニシテ出シマスカ
(渡委員)
削除ト云フノハ送リ丈ケ削ルト云フノデスカ
(栗塚委員)
左樣デス
(村田委員)
連帶及ビ合意上ノ不可分ノ效力トハ云ヘマセン
(栗塚委員)
ソレハ云ヘマセン
(淸岡委員)
體樣ト云フ字ハ前ニモ議論ガアツテ樣態トナリマシタ樣態ハ體樣ト違ウ樣ダガ此度ハ體樣トナツタノハドウ云フ譯ダロウ
(松岡委員)
何ンデモ分ラン
(淸岡委員)
樣ト云フ字ヲ除ケテ何態トカ云フ字ハアリマセンカ
(栗塚委員)
義務ノ諸種ノ方法デハ分リマセンカ
(南部委員)
方法デハナイ
(栗塚委員)
義務ノ結ビ方ノ方法デス
(淸岡委員)
何カ良イ字ハアリマセンカ
(松岡委員)
註デハ種類卽チ變態ヲ組成スルトアル
(栗塚委員)
英國デハ種類ト云フ處ト同ジニ譯シテアリマスカラ相談致シマシヨウ
(松岡委員)
ソレデハ御任セ申シマシヨウ
本條ハ左ノ如ク決ス
第一項「體樣」ノ二字ハ未定第一「單一」ヲ「單純」ト改メ「有條件」ヲ「條件付」ト改ム末項左ノ如改ム連帶ノ效力及ヒ合意上ノ不可分ノ效力ハ債權ノ擔保篇ニ之ヲ規末項削除建議定ス
第四百二十二條朗讀ス
第一款 成立ノ單一有期又ハ有條件ナル義務
第四百二十二條 義務ノ成立カ初ヨリ正確ニシテ且卽時ニ要求スルコトヲ得ヘキトキハ其義務ハ單一ナリ
(栗塚委員)
之モ單純有期又ハ條件付ナル義務トナリマス第一款ノ表題ヲ左ノ如ク改ム成立ノ單純有期又ハ條件附ナル義務
本條「單一」ヲ「單純」ト改ム
第四百二十三條朗讀ス
第四百二十三條 債權者カ或ル時期前又ハ時期ハ確定セサルモ必ス到來ス可キ或ハ事件ノ到來前ニ履行ヲ求ムルコトヲ得サルトキハ其義務ハ有期ナリ
當事者ノ定メタル期限又ハ法律ニ依リ許與シタル期限ハ之ヲ權利上ノ期限トス
債務者ノ爲シ得ヘキ時又ハ欲スル時ニ辨濟ス可シト約束シタルトキハ裁判所ハ債權者ノ請求ニ因リ事情ニ從ヒ及ヒ當事者ノ意思ヲ推定シテ其履行ノ期間ヲ定ム但當事者カ無期ノ年金權ヲ設定セント欲シタル場合ハ此限ニ在ラス
(栗塚委員)
末項ノ約束シタルトキト云フノハ「辨濟スヘシトノ語辭アルトキハ」ト致シマス約束シテ拂ヘルトキ御拂ヒナサイ欲スルトキ拂ヒマスト云フテソレヲ承知シマシタト債權者ガ云ヒマシタトキソレヲ擔ギ出スノハ契約ニ背クト註ニ說イテアリマス
(淸岡委員)
有ルトキ拂ヒノ催促ナシト云フノダ
本條第二項「辨濟スヘシト約束シタルトキハ」ヲ「辨濟スヘシトノ語亂アルトキ」ト改ム
第四百二十四條朗讀ス
第四百二十四條 債務者ハ期限ノ利益ヲ抛棄シテ滿期前ニ其義務ヲ履行スルコトヲ得但要約ニ因リ又ハ事情ニ因リ當事者雙方ノ利益又ハ債權者ノミノ利益ノ爲メ期限ヲ定メタル證據アルトキハ此限ニ在ラス
債權者ノミノ利益ノ爲メニ期限ヲ定メタル場合ニ於テハ債權者モ亦其期限ヲ抛棄スルコトヲ得
當事者カ錯誤ニ因リ滿期前ニ辨濟シタル場合ハ第三百八十六條ニ之ヲ規定ス
(栗塚委員)
之モ削ラン方ガ良カロウト思ヒマス
(槇村委員)
三百八十六條ノ規定ニ從フトシタラ良カロウ
(栗塚委員)
其方ガ宜シウ御座イマシヨウ「場合ニ於テハ第三百八十六條ノ規定ニ從フ」ト致シマス
本條末項「場合ハ第三百八十六條ニ之ヲ規定ス」トアルヲ「場合ニ於テハ第三百八十六條ノ規定ニ從フ」ト改ム
第四百二十五條朗讀ス
第四百二十五條 債務者ハ左ノ場合ニ於テハ權利上ノ期限ノ利益ヲ失フ
第一 債務者カ破產シ又ハ顯然無資力ト爲リタルトキ
第二 債務者カ財產ノ多分ヲ讓渡シ又ハ其多分カ他ノ債權者ノ差押ヲ受ケタルトキ
第三 債務者カ其供シタル特別ノ抵保ヲ毀滅シ若クハ減少シ又ハ其豫約シタル擔保ヲ供セサルトキ
第四 債務者カ塡補利息ヲ拂ハサルトキ
(栗塚委員)
抵保ハ皆擔保ト致シマス
(元尾崎委員)
塡補利息ト云フノハ
(栗塚委員)
利息ノ種類ガ二ツアリマス遲延ノ利息ト塡補ノ利息トアリマス
(南部委員)
遲延シテカラ法律上ノ利息ヲ帶ブルガ遲延利息デ塡補利息ハ豫テ約束シタノデス
(松岡委員)
利息ヲ上ゲルコトガアル上ゲルトキ何トカ云ハナケレバナラン
(元尾崎委員)
合意上ノ利息ト云ツタラ良カロウ
(南部委員)
合意上ノ利息ト云フト合意上ノ利息ト法律上ノ利息トナル
(元尾崎委員)
此處丈ケハ利息ヲ拂ハザルトキトシタラ良カロウ
(栗塚委員)
塡補利息ト云ハナケレバナラン處ガアリマス
(元尾崎委員)
其時ハ塡補ト云フガ宜シイ
(淸岡委員)
塡補ヲ拂ハザルトキハトスルガ宜シイ利息ト云フト品ガ惡ハイ
本條「抵保」ヲ「擔保」ト改ム
第四百二十六條朗讀ス
第四百二十六條 權利上ノ期限ノ有無ヲ問ハス又執行力ヲ有スル證書アル場合ト雖モ債務者カ不幸且善意ニシテ債權者カ猶豫ノ爲メ確實ノ損害ヲ受ケサル可キトキハ裁判所ハ債務者ニ相應ナル恩惠上ノ期間ヲ許與スルコトヲ得
又裁判所ハ右ト同一ナル條件ニ從ヒ債務ノ一分ツヽノ履行ヲ許スコトヲ得
右ニ反スル要約ハ總テ無效ナリ
(元尾崎委員)
年賦ニテ返セト云フコトダ
(松岡委員)
之ハ六ケ敷イモノダ伊太利ノ民法抔ハ之ハ採ラナイ
(元尾崎委員)
日本抔デハ訴ヘ出ルマデニハ充分云ヘル
(松岡委員)
舊幕時分ニハ割拂ヒト云フノガアル
(西委員)
アル方ガ宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第四百二十七條朗讀ス
第四百二十七條 恩惠上ノ期間ヲ得タル債務者ハ第四百二十五條ニ定メタル原因ニ由リテ之ヲ失フノ外尙ホ左ノ場合ニ於テモ之ヲ失フ
第一 債務者カ逃亡シ又ハ住所ヲ去リテ債權者ニ其居所ヲ隱秘スルトキ
第二 債務者カ一ケ年以上ノ禁錮ノ刑ヲ受ケタルトキ
第三 債務者カ言渡ヲ受ケタル條件ノ一ヲ行ハサルトキ
第四 債務者カ法律上ノ相殺ヲ爲シ得ヘキ場合ニ於テ自ラ其債權者ノ債權者ト爲リタルトキ
恩惠上ノ期間ハ裁判所ニ於テ更ニ之ヲ延フルコトヲ得ス
(村田委員)
第二ハ一年以上ノ禁錮ニ處セラレタルトキデ御座イマス
(南部委員)
受ケタルガ宜シイ
(松岡委員)
受ケタルト云フト過去ニナリハセンカ
(南部委員)
處セラレタルト云ツテモ同ジコトダ
(元尾崎委員)
言渡サレレバ過去ダ
(村田委員)
禁錮ニ處セラレタルデ宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第四百二十八條朗讀ス
第四百二十八條 當事者又ハ法律カ義務ノ發生又ハ消滅ヲ未來且不確定ノ事件ノ有無ニ繋ラシムルトキハ其義務ハ有條件ナリ此條件ハ第一ノ場合ニ於テハ停止ニシテ第二ノ場合ニ於テハ解除ナリ
又物權ハ主タルト從タルトヲ問ハス之ヲ停止又ハ解除ノ條件ニ繋ラシムルコトヲ得
(栗塚委員)
最初ノ譯ヲ變ジマシテ「當事者又ハ法律カ義務ノ發生又ハ消滅ヲ」ト致シマシタガ初メニハ解除トアリマシタ原文ニモ解除トアリマスカラ解除トスル方ガ良カロウト思ヒマス消除ト解除ハ結果ガ違ヒマス
(淸岡委員)
消滅ノ方ガ良クハナイカ
(栗塚委員)
消滅ト解除トハ違ヒマス
(三島委員)
義務ノ發生ヲ義務ノ停止トヤツテハドウデス
(元尾崎委員)
棄テルト云フ意味ダカラ義務ノ廢棄ヲトシタラ良カロウ
(南部委員)
裁判ノ廢棄ト云フ字ガアルカラ廢棄ハ惡ルイ
(三島委員)
取消デ御座イマシヨウ
(栗塚委員)
註ニモ「義務ノ形チ造ル又ハ解除ニ」トアリマス廢罷解除消滅ノ三ツハ取消ノ原由ニナリマス
(松岡委員)
解除ノコトヲ消滅ト云フテ居リマス
(栗塚委員)
既往ニ遡ツテ消滅スト云ハレマスマイ
(松岡委員)
五百八十四條ニ四百二十九條ヲ引イテアル合意ノ解除ニ因テ義務ハ消滅ストアル
(栗塚委員)
消ヘルト云フ事柄ヲ指スト云フノト同ジダカラ
(南部委員)
若シソウナウナレバ原語ヲ改メテカラニシタイ
(松岡委員)
之ハ消滅ガ宜シイ
(栗塚委員)
消滅デ御座イマス
(南部委員)
之ハ起案者ニ聞クガ宜シイ
(槇村委員)
原書ハドウ書イテアリマスカ
(栗塚委員)
原書ハ解除トアリマスガ原文ヲ消滅ト改メタカラ原文ヲ直シテ呉レト云フコトデ御座イマス二項ハ又ト云フ字ヲ削ツテ物權モ又ト致シマシタ
(元尾崎委員)
一項ハ物權ニ關係シマセンカ
(栗塚委員)
關係致シマセン人權デ譯イテアリマスカラ
(淸岡委員)
物權モ又ト云フト上ノ項モ主タルト從タルトヲ問ハズト云フコトハ同ジコトニナル
(南部委員)
ソウデス
(栗塚委員)
三條デ人權ノ主從ハ誠ニ僅カナモノデ御座イマスカラ
(三島委員)
主從ヲ問ハズデ宜シウ御座イマス
(松岡委員)
ソウ致シマシヨウ
(淸岡委員)
主タルト從タルトヲ問ハズデ置イテ貰ヒマシヨウ
(南部委員)
元トノ通リガ宜シイ
本條「消滅」ノ二字ハ起按者ニ質問スルコトニ決シ「有條件」ヲ「條件附」ト改ム第二項「又物權ハ」ヲ「物權モ亦」ト改ム
第四百二十九條朗讀ス
第四百二十九條 停止條件ノ成就スルトキハ契約ノ日ニ遡リテ其效ヲ生ス
解除條件ノ成就スルトキハ當事者ヲシテ契約前ノ各自ノ地位ニ復セシム
本條ハ原案ニ決ス
第四百三十條朗讀ス
第四百三十條 停止又ハ解除ノ條件カ成就セサル間ハ當事者ノ各自ハ條件ヲ帶ヒタル權利ヲ其儘ニ第三者ニ授與スルコトヲ得
然レトモ其條件ヲ第三百六十七條以下ニ定メタル方法ニ從ヒテ公示シタルニ非サレハ當事者ノ一方又ハ其承接人ハ之ヲ以テ他ノ一方ノ承接人ニ對抗スルコトヲ得ス
本條ハ原案ニ決ス
第四百三十一條朗讀ス
第四百三十一條 解除條件ヲ帶ヒタル權利ヲ有スル者ノ善意ニ出テ且法律ニ從ヒテ爲シタル管理ノ行爲ハ第三者ノ利益ノ爲メニ之ヲ保持ス
解除條件ヲ帶ヒタル權利ヲ有スル當事者ノ一方ト第三者トニ對シテ言渡サレタル判決ハ他ノ一方ノ當事者又ハ其承接人之ヲ援用スルコトヲ得
然レトモ右判決ハ他ノ一方ノ當事者又ハ其承接人ヲ異議申述ノ爲メニ訴訟ニ召喚セサリシトキハ之ヲ以テ其當事者又ハ承接人ニ對抗スルコトヲ得ス但其判決カ管理ノ行爲ノミニ關スルトキハ此限ニ在ラス
(南部委員)
何ゼ言渡サレタルト云フダロウ
(村田委員)
言渡シタルデ宜シイ
(淸岡委員)
言渡サレタルガ宜シイ
(北畠委員)
人民カラ見ルノダカラ言渡サレタルガ宜シイ
(南部委員)
ソウスルト第三者ガト云ハナケレバナラン
(三島委員)
言渡アリタルトシテモ宜シイ
(元尾崎委員)
第三者ノ利益ノ爲メニ之ヲ保持スト云フノハ何ウ云フコトカ
(槇村委員)
第三者ハ解除條件ヲ約シタ人ニナリハセンカ
本條ハ原案ニ決ス
第四百三十二條朗讀ス
第四百三十二條 條件ノ成就シタルトキハ物又ハ金錢ヲ引渡シ又ハ返還ス可キ當事者ハ其成就セサル間ニ收取シ又ハ滿期ト爲レル果實若クハ利息ヲ交付スルコトヲ要ス但當事者間ニ反對ノ意思アル證據カ事情ヨリ生スルトキハ此限ニ在ラス
本條ハ原案ニ決ス
第四百三十三條朗讀ス
第四百三十三條 契約ノ主タル目的ヲ不能又ハ不法ノ條件ニ繋ラシメタルトキハ其契約ハ無效ナリ
當事者ノ一方カ或ハ禁止ノ所爲ヲ行ヒ又ハ本文ノ責務ヲ盡サヽルニ因リテ自己ニ利ヲ得或ハ禁止ノ所爲ヲ行ハス又ハ本分ノ責務ヲ盡スニ因リテ自己ニ害ヲ受ク可キトキハ其條件ハ不法ナリ
不能又ハ不法ノ條件カ契約ノ從タル效力ノミニ關スルトキハ其約款ノミ成立セス
(三島委員)
本條ハ契約ヲ合意ト改メマス再調査デ段々變ツタコトガ御座イマス不能ト云フ字ハ熱海デ論ジマシタガ今村モ當ラント申シマシタ私ハ知リマセンガ後ノ方デハ不能ハ不可爲トナツテ居リマス不能ト云フト自分ガ出來ナイト云フノヲ不能ト云フノデス外カラ障リガアツテシヨウト思ツテモ出來ンノハ不能デハナリマセンシヨウト思ツテモ出來ナイト云フノハ不能デハナイソウスルト不可分ノ例デ不可爲トナリマス不可ト云フコトハ日本デハ禁止ノ言葉ニナツテ居リマスガ支那デハ禁止ノ文ニナツテ居リマセン
(南部委員)
報吿委員ハ皆不能デ宜シイト云フコトデ御座イマス
(村田委員)
不能ガ宜シイ
(元尾崎委員)
不能ノ說キ明シガナイ
(三島委員)
不可爲ハ爲テハナラント聞ヘル樣ニナリマスカラ不可分ト云フノハ分タレント云フノデ御座イマス
(大尾崎委員)
泰山ヲ狹ンデ北海ヲ渡ルト云フノガ不能ダ
(三島委員)
不得爲ト云フ說モアリマシタ
(元尾崎委員)
爲スコト能ハザルカウ不能ガ宜シイ
(三島委員)
不能デハ先キヘ行ツテ通ラナクナリマス
(大尾崎委員)
通ラナクナル處マデヤツテ見マシヨウ
本條ハ「契約」ヲ「合意」ト改ム
第四百三十四條朗讀ス
第四百三十四條 條件カ偶然ナルトキ又ハ其全部若クハ一分カ要約者ノ隨意ナルトキ諾約者カ其成就ヲ妨ケタルニ於テハ其條件ハ之ヲ成就シタルモノト看做ス
(松岡委員)
全部一分ハヤメラレン
(南部委員)
全部一分ガナイト一分妨ゲタノダカラドウスルカト云フ論ガ起ル
(元尾崎委員)
用益者ト云フト權利ノアル方デスカ
(南部委員)
ソウデス
本條ハ原案ニ決ス
第四百三十五條朗讀ス
第四百三十五條 條件カ全ク當事者ノ一方ノ隨意ナルトキハ他ノ一方ハ其成否ヲ決ス可キ或ル期間ヲ定メント裁判所ニ請求スルコトヲ得
(元尾崎委員)
定メンコトヲスルガ宜シイ
(三島委員)
「定メンコトヲ」トシテ下ノコトハ削ツタ方ガ宜シイ
(槇村委員)
ソレガ宜シイ
本條「定メント」ヲ「定メンコトヲ」ト改メ請求スルノ下「コト」ノ一字ヲ削ル
第四百三十六條朗讀ス
第四百三十六條 有爲條件ノ爲メ當事者又ハ裁判所カ或ル期間ヲ定メタル場合ニ於テ事件カ到來セスシテ此期間ヲ經過シタルトキハ其條件ハ之ヲ成就セサルモノト看做ス又條件ノ成否ノ爲メ期間ヲ定メタルト否トヲ問ハス事件ノ到來セサルコトノ確實ト爲リタルトキハ又同シ
無爲條件ノ爲メ或ル期間ヲ定メタル場合ニ於テ事件カ到來セスシテ此期間ヲ經過シタルトキハ其條件ハ之ヲ成就シタルモノト看做ス又其期間ヲ定メタルト否トヲ問ハス事件ノ到來セサルコトノ確實ト爲リタルトキハ又同シ
右孰レノ場合ニ於テモ裁判所ハ當事者ノ定メタル期間ヲ延フルコトヲ得ス
(南部委員)
之ハ報吿委員デハ有爲無爲ヲ有明無明トシタ方ガ宜シイ有爲無爲デハ爲ス有ル條件爲ス無キ條件トナリマスカラ
(北畠委員)
有明無明ガ宜シイ
(村田委員)
之ハ元老院デハ期有期無トシタガ其方ガ宜シイ
(南部委員)
之ハ有無ノコトヲ云フノダカラ期ノ字ハ穩カデナイ
(渡委員)
「ポンチーブ」ト「ネガチーブ」ダカラ
(淸岡委員)
有明無明ガ宜シイ
(元尾崎委員)
期有ガ宜シイ
(槇村委員)
有明無明ガ多數ダ
(南部委員)
ソレカラ確實トナリタルトキモト致シマス看做スノ下ノ又ハナイ方ガ宜シイ之ヲ削ラント是レ々々モ亦同ジトナリマスカラ
(三島委員)
削ルガ宜シイ
本條第一項「有爲」ヲ「有明」ト改メ看做スノ下「又」ヲ削リ「トキハ亦」ヲ「トキモ亦」ト改ム第二項「無爲」ヲ「無明」ト改メ看做スノ下「又」ヲ削リ「トキハ亦」ヲ「トキモ亦」ト改ム
第四百三十七條朗讀ス
第四百三十七條 當事者ノ一方又ハ雙方カ條件ノ成就又ハ不成就ノ前ニ死亡シタルトキハ契約ノ效力ハ其相續人ニ對シ働方又ハ受方ニテ存在ス但條件カ其性質ニ因リ又ハ當事者ノ意思ニ因リテ要約者又ハ諾約者ノ一身ノミニ附着シタルトキハ此限ニ在ラス
(元尾崎委員)
「働方受方」ハ削ルノデハナイカ
(三島委員)
場所ニ因テ削リマス
(南部委員)
之ハアル方ガ宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第四百三十八條朗讀ス
第四百三十八條 條件カ如何樣ニ成就ス可キヤ又如何ナル時ニ成就シ又ハ成就セスト看做サル可キヤヲ知ルノ問題ハ當事者ノ明示又ハ默示ノ意思ニ從ヒテ之ヲ決ス其條件ノ一分ノ成就ヨリ生ス可キ效力ニ付テモ亦同シ
(松岡委員)
問題ト云フ字ハ可笑シイカラ「知ルハ」トスルガ宜シイ
(淸岡委員)
「知ルハ」ガ宜シイ
(大尾崎委員)
問題ハ入ラン
(渡委員)
原文ニハアルガ削ツテモ不都合ハナイ
(淸岡委員)
前ニ分ルコトニ關スルコトハトアツタガソレヲ置イタラ良カロウ
(村田委員)
「知ルハ」ガ宜シイ
(南部委員)
「知ルコトハ」ガ良カロウ
本條「知ルノ問題ハ」ヲ「知ルコトハ」ト改ム
第四百三十九條朗讀ス
第四百三十九條 約束シ又ハ讓渡シタル物カ諾約者又ハ讓渡人ノ過失ナクシテ停止條件ノ成就前ニ其價格ノ全部ヲ喪失シ又ハ其過半ノ毀損ヲ受ケタルトキハ契約ハ之ヲ成立セスト看做シ且孰レノ方ヨリ何等ノ要求ヲモ爲スコトヲ得ス
之ニ反シ解除條件ヲ以テ約束シ又ハ讓渡シタルトキハ右同一ノ喪失又ハ毀損ハ要約者又ハ讓受人ノ權利ヲ確定シテ其負擔ニ歸シ且何等ノ返還ヲモ要求スルコトヲ得ス
前二項ノ場合ニ於テ喪失又ハ毀損カ價格ノ半ヲ超エサルトキハ條件ノ成就ハ契約ノ效力ヲ生ス
(南部委員)
約束ハ諾約トナリマス
(淸岡委員)
何レノ方ヨリモダ
(槇村委員)
何レノ方ヨリモ何等ノ請求ヲ爲スコトヲ得ズダ
(元尾崎委員)
只ヤルト云フ約束ガアツタトキハ
(南部委員)
ソレハ燒ケテ仕舞ヘバ仕方ガナイ
(元尾崎委員)
半分燒ケタトキハ
(南部委員)
半分燒ケタトキハ議論ガアル
(元尾崎委員)
七分通リ燒ケタラヤラント云フノハ理窟ガ立タン
(南部委員)
家ガ燒ケテ雪隱ガ殘ツタトキモ效力ヲ生ズデ賣買ヲヤラナケレバナランカラ何レニモ論ガアル仕方ナイ目ヲ眠ツテ半分ニ定メタノデ據ナイ
本條「約束」ヲ「諾約」ト改メ「契約」ヲ「合意」ト改ム
第四百四十條朗讀ス
第四百四十條 當事者ノ一方カ喪失又ハ毀損ノ責ニ任ス可キトキハ他ノ一方ハ自己ノ撰擇ヲ以テ或ハ損失ノ替償ト共ニ契約ノ履行ヲ請求シ或ハ損害ノ賠償ト共ニ其解除ヲ請求スルコトヲ得
(栗塚委員)
替償ハ償金トナリマス
(元尾崎委員)
二重取リニナリハセヌカ
(栗塚委員)
燒ケトキハ金デ取リ殘ツタモノデ取ルソレモ皆止メテ損害賠償ヲ取ル
(淸岡委員)
之ハ前ニ大變議論ガアツタ頗ル道理ニ違フト云フノデ之ハ現存物ニ付テ代價ヲ定メテ取引ヲ爲セルガ宜シイト云フ說ガアツテ尙ホ原案者ニ就テ能ク討議シヨウト云フコトガ書キ付ケテアルガ之ハ少シ酷イ
(大尾崎委員)
實際格別斯ウ云フコトハナイ我レノ子ガ生マレナケレバ貴樣ニ之ヲヤルト云フコトハナイ
本條ハ「替償」ヲ「償金」ト改メ「契約」ヲ「合意」ト改ム
第四百四十一條朗讀ス
第四百四十一條 凡ソ雙務契約ニハ當事者ノ一方カ義務ヲ完全ニ履行セサル場合ニ於テ義務ヲ履行シ又ハ履行ノ言込ヲ爲セル他ノ一方ノ利益ノ爲メ常ニ解除條件ヲ包含ス
此場合ニ於テ解除ハ當然ニ行ハレス損害ヲ受ケタル一方ヨリ之ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ要ス然レトモ裁判所ハ第四百二十六條ニ從ヒ他ノ一方ニ恩惠上ノ期間ヲ許與スルコトヲ得
(栗塚委員)
當然ニト云フニノ字ヲ削ツタ方ガ良カロウト思ヒマス
(槇村委員)
削ツタ方ガ宜シイ
本條「當然ニ」ノ「ニ」ノ字ヲ削ル
第四百四十二條朗讀ス
第四百四十二條 當事者ハ前條ノ解除ヲ行ハサル旨ヲ明約スルコトヲ得
又當事者ハ履行ノ遲滯ニ付セラレタル一方ニ對シ解除ノ當然ニ行ハル可キ旨ヲ明約スルコトヲ得然レトモ遲滯ニ付セラレタル一方ハ自己ニ對シテ他ノ一方カ其解除ヲ申立ツルニ非サレハ自己ヨリ之ヲ申立ツルコトヲ得ス
(元尾崎委員)
明約スルコトヲ得ト云フノハ云フテ置カンデモ良カロウ
(栗塚委員)
明カニ云フテ置カナケレバイケマセン
(淸岡委員)
之モ「當然ニ」ノ「ニ」ノ字ヲ削ルカ
(栗塚委員)
削リマス
本條「當然ニ」ノ「ニ」ノ字ヲ削ル
第四百四十三條朗讀ス
第四百四十三條 不履行ノ爲メニ損害ヲ受ケタル裁判上ニテ請求セス又ハ明示ノ解除ノ場合ニ於テ未タ之ヲ援用スル旨ヲ述ヘサル間ハ其解除ヲ抛棄スルコトヲ得
本條ハ原案ニ決ス
第四百四十四條朗讀ス
第四百四十四條 裁判上ニテ解除ヲ請求シ又ハ當然ニ行ハレタル解除ヲ援用スル當事者ハ其受ケタル損害ノ賠償ヲ要求スルコトヲ得
本條ハ「當然ニ」ノ「ニ」ノ字ヲ削ル
第四百四十五條朗讀ス
第四百四十五條 當事者ハ其權利カ停止條件ニ服シ又ハ其訴權カ權利上若クハ恩惠上ノ期限ノ爲メニ阻止ヲ受クルト雖モ其間ニ於テ本法及ヒ民事訴訟法ノ規定ニ從ヒ自己ノ權利ノ保存處分ヲ爲スコトヲ得
(栗塚委員)
「條件ニ服シ」ハ「條件ニ繋リ」ト致シマス
本條「條件ニ服シ」ヲ「條件ニ繋リ」ト改ム
第四百四十六條朗讀ス
第四百四十六條 賣買契約ニ於テ特ニ慣用スル隨意ノ停止又ハ解除ノ條件ハ第六百六十六條乃至第六百六十九條ニ於テ之ヲ規定ス
(松岡委員)
之ハ本當ノ送リダ
(栗塚委員)
之ヲ定ムヲ止メテ條件ハ何々ニ從フトヤリマスカソウスレバ送リデナイ樣ニナリマシヨウ
(南部委員)
ソウスルト條件ニ付テハトシナケレバナラン
(村田委員)
ソレガ宜シイ
本條「條件ハ」ヲ「條件ニ付テハ」ト改メ「ニ於テ之ヲ規定ス」ヲ「ノ規定ニ從フ」ト改ム
第二款 負擔ノ目的ノ單一、選擇又ハ任意ナル義務
第四百四十七條朗讀ス
第四百四十七條 義務ヲ特定物、定量物或ハ物ノ聚集又ハ財產ノ包括ヲ目的トスルトキハ其義務ハ單一ナリ
又義務カ同時又ハ順次ニ各別ナル數箇ノ供與ヲ爲スヲ目的トスル場合ト雖モ唯一又ハ連繋ノ契約ヲ以テ其供與ヲ負擔シタルトキハ尙ホ其義務ハ之ヲ單一ナリト看做ス
右孰レノ場合ニ於テモ債務者ハ負擔シタル總テノ物ヲ供與スルニ非サレハ其義務ヲ免カルコトヲ得ス
(栗塚委員)
「義務カ一個又ハ數個ノ特定物」ト致シマシタ前ヲ御覽ニナルト餘程簡略ニナツテ居リマス特定物ガ一ツト見ラレテハ困リマスカラ
(南部委員)
次ノ條ニ格別ナル數個ノ下トアリマス
(村田委員)
成程宜シイ
(栗塚委員)
第二項ハ數個ノ供與ヲ目的ト致シマス爲スヲ目的トスルデハアリマセン
(村田委員)
一個又ハ數個ノ特定物ト云フト其下ニ又ハガナケレバナラン
(栗塚委員)
又ハヲ入レテモ宜シウ御座イマス
(南部委員)
ソレデ聚集ノ下ノ「又ハ」ヲ削ツテ點ヲ打ツテ財產ノ包括ト致シマスソレカラ上ヲ一個若クハトスル
(栗塚委員)
ソレガ宜シウ御座イマス
本條第一項左ノ如ク改ム義務カ一個若クハ數個ノ特定物、又ハ定量物或ハ物ノ聚集、財產ノ包括ヲ目的トスルトキハ其義務ハ單一ナリ第二項「供與ヲ」ノ下「爲スヲ」ニ三字ヲ削リ「契約」ヲ「合意」ト改ム
第四百四十八條朗讀ス
第四百四十八條 義務カ各別ナル二箇又ハ數箇ノ目的ヲ有スルモ債務者カ其中ノ一箇又ハ數箇ノ供與ヲ爲スニ因リテ義務カ免カル可キトキハ其義務ハ選擇ナリ
供與ス可キ物ノ選擇ハ債務者ニ屬ス但其選擇ヲ債權者ニ許與シタルトキハ此限ニ在ラス
然レトモ債務者ハ選擇ニテ負擔シタル數箇ノ物ノ各ノ一分ヲ受クルコトヲ債權者ニ強ヒ又債權者ハ其各ノ一分ヲ與フルコトヲ債務者ニ強フルコトヲ得ス
本條ハ原案ニ決ス
于時正午閉會