旧民法・法例(明治23年)

法律取調委員会 民法草案再調査案議事筆記 第8回

参考原資料

備考

  • 未校正のテキストデータです.
民法財產編再調査案第八回議事筆記
自第三百六十五條至第四百十四條及第三百三十四條五條
(委員長)
始メマシヨウ
第三百六十五條朗讀ス
第二則 第三者ニ對スル契約ノ效力
第三百六十五條 契約ハ當事者間ニ於テシ及ヒ其承接人ニ對スルニ非サレハ效力ヲ有セス然レトモ法律ニ定メタル場合ニ於テシ且其條件ニ從フトキハ第三者ニ對シテ效力ヲ生ス
(栗塚委員)
此所ハ第三者ニ對スルデ御座イマス「合意ハ當事者及ヒ其承接人ノ間ニ非サレハ」トシマシタ第三百四十八條ノ所デ「當事者及ヒ承接人間ノ合意ノ效力」トヤリマシタカラデス、ソレカラ「然レトモ」ハ「ト雖モ」ト致シマシタ
(村田委員)
「於テシ且」ノ「且」ハ無クトモ良シイデシヨウ
(松岡委員)
「於テシ」ハオカシイ
(栗塚委員)
場合ニ於ケルトキ且其條件ニ從フトキト云フコトダカラデス
(松岡委員)
後ヲ云ヒタイ爲メニ之ヲ謂タノカ
(栗塚委員)
左樣デス
(松岡委員)
宜シイデシヨウ
(南部委員)
別ニ論ハナイ
(渡委員)
於テシ其他ノ條件ト云フノダカラ良シイ
本條ハ左ノ如ク改ム
「契約」ハ「合意」ト改メ「合意ハ當事者及ヒ其承接人ノ間ニ非サレハ效力ヲ有セスト雖モ」云々
第三百六十六條朗讀ス
第三百六十六條 所有者カ一箇ノ有體動產ヲ二箇ノ契約ヲ以テ各別ニ二人ニ與ヘタルトキハ其二人中現ニ占有スル者ハ證書ノ日附ハ後ナリトモ其所有者タリ但其者カ自己ノ契約ヲ爲ス當時ニ於テ前ノ讓渡ヲ知ラス且前ノ契約ヲ爲シタル者ノ財產ヲ管理スル責任ナキコトヲ要ス此規則ハ無記名證劵ニ之ヲ適用ス
(委員長)
之ハ良カロウ
本條ハ「契約」ヲ「合意」ト改メ原案ニ決ス
第三百六十七條朗讀ス
第三百六十七條 記名證劵ノ讓受人ハ債務者ニ其讓受ヲ合式ニ吿知シ又ハ債務者カ公正證書若クハ確定日附ノ證書ヲ以テ之ヲ承諾シタル後ニ非サレハ自己ノ權利ヲ以テ讓渡人ノ承接人及ヒ債務者ニ對抗スルコトヲ得ス
債務者ハ讓渡ヲ承諾シタルトキハ其原債權者ニ對スル排斥理由又ハ拒却理由ヲ以テ新債權者ニ對抗スルコトヲ得ス又讓渡ニ付テノ單一ナル吿知ハ債務者ヲシテ其吿知後ニ生スル排斥理由ノミヲ失ハシム
右ノ行爲ノ一ヲ爲スマテハ債務者ノ辨濟、義務免除ノ契約、讓渡人ノ債權者ヨリ爲シタル拂渡差止又ハ合式ニ吿知シ若クハ承諾ヲ得タル新讓渡ハ總テ善意ニテ之ヲ爲シタルモノト推定シ懈怠ナル讓受人ハ之ニ抗爭スルコトヲ得ス
當事者ノ惡意ハ書面上又ハ裁判上ニ爲シタル其自白ニ因ルニ非サレハ之ヲ證明スルコトヲ得ス然レトモ讓渡人ト通媒シタル詐害アリシトキハ其通謀ハ通常ノ擧證方法ヲ以テ之ヲ證明スルコトヲ得
裏書ヲ以テスル商證劵ノ讓渡ニ特別ナル規則ハ商法ヲ以テ之ヲ規定ス
(南部委員)
「排斥理由」ト云フノハ
(栗塚委員)
排斥理由又ハ拒却理由ト云フハ、排斥理由卽チ拒却理由デアリマス、ソレカラ抗辯ト云フ字ヲ排斥理由ト云フ訴訟法ノ方カラ申シテモ來ルシ又今日迄抗辯トヤツタ字ヲ排斥理由ト云フモ弊害モ等シイ、實ハ訴訟法ノコトデアリマス
(委員長)
訴訟法デハ何トシタカ
(南部委員)
此間抗辯トシタト云ヒマス
(栗塚委員)
「ヱキスブシヨン」ト云フ字ヲ使ハンデモ辯護方法ト廣クヤツテ置ケバ宜イ狹イナレバ抗辯ト使ハナケレバナラン辯護方法ノ中ニハ抗辯モ這入リマシヨウ又其他辯護モ這入ルカラ辯護方法ト改メマシヨウ
(淸岡委員)
拒却理由ト二ツカ
(栗塚委員)
二ツデ同ジデス文字ハ今村報吿委員モ出タトキ排斥理由トナツタガ訴訟法ノ方デモ抗辯ト云フ字ハ使ヒタイト云フノデアリマスカラト云フテ翻譯ノ方ト相談スルコトニシテ居ル併シ此所丈ケハ必ラズ抗辯ト云フ字ヲ使ハナケレバナランコトモナシ、辯護方法デ通テ往ケルカラ從テ三島今村ノ意ハ辯ノ字ガ惡イカラト云テ、代テ辯ズルト云テ苦情ヲ云フコトハ出來ヌカラト云フノデ相談シテ改ヘルコトニナリマシタ、之ニスルト排斥ト拒却ト實ハ似タヨウナコトデス
(松岡委員)
債權者ニスル拒却理由ト云テハ往カンカ
(村田委員)
防禦方法デモ宜シイヨウデス
(松岡委員)
防禦方法デ良イカ知ラン訴訟法デ云フノト此所デ云フノト本體ガ排斥スベキ取消ス可キノト云フコトモアルノダガソレガ防禦ト云ヘルカドウカ
(南部委員)
抗辯ト云ヘバ良シイ
(松岡委員)
言ヒ詰メルト向ウノ訴權デ排ケルト云フモノダ寧ロ原債權者ニ對スル拒却理由ヲ以テトシテ置イテハドウカ抗辯ダノ防禦ト云フ字ヲ出サズシテハ如何
(村田委員)
訴訟法ノ手續ハドウカ
(松岡委員)
一向ニ良シイ
(村田委員)
之ハ分リ易クナリマシタ
(松岡委員)
確定日附ヲ設ケルノカ
(南部委員)
設ケルデシヨウ、意味ハ差出シタ書面デモアツテ明瞭ニコトガ書イテアツテ日附ノ確カナコトデ處理スベキナラ矢張リ良シイノデスネ
(委員長)
「擧證方法」ハ「證據方法」トナルノカ
(渡委員)
訴訟法ニ引付ケラレナケレバナランデシヨウ
(南部委員)
辯護方法ト直スコトニナツテ居ルカラ辯護方法トシテ置キ彼方ノ防禦方法ト同ジカドウカ
(三島委員)
排斥理由ト拒却理由ヲヒツクルメテ辯護方法トシヨウト云フノデス
(村田委員)
防禦方法トシテ置テハ大丈夫ダ
(渡委員)
後ハ殘シテ置キソレ丈ケノ協議ガ成ルヤ否讓テ置キマシヨウ
(淸岡委員)
合イサイスレバ良シイ
(南部委員)
辯護方法トヤツテ置キマスカ
(松岡委員)
ソレナラ說ヲ一定シテハドウカ
(委員長)
訴訟法ニハ辯護方法トヤツテハ居ランカ
(村田委員)
ソウデス防禦方法トヤツテ居ル
(委員長)
排斥理由ノ方ハドウスルカ
(南部委員)
字ハ異テ居ルガ同ジデアリマス
(委員長)
仕方ガ違フノダネ
(南部委員)
讓渡排斥理由拒却理由ヲ以テ對抗ガ出來ヌトナル、吿知アルトキ債務者ヲシテ吿知後ニ生ズル排斥理由ヲ失ハシムト云フノデ吿知前ニハ失ハレンノデアリマスカラ排斥理由ハ拒却理由ガ籠テ居ルノデアリマスカラ二ツデハ御座イマセン
(委員長)
二ツ書クノハイランノカ
(南部委員)
ソレデ皆一ツニスルト云フ修正案デス
(淸岡委員)
「ノミ」ト云フガアルカラネ
(西委員)
「ノミ」ト云フノハ置キ換ヘルノデハナイカ
(南部委員)
元トハ失ハシムルノミ、トアツタノデス
(西委員)
失ハシムルノミ、ニアルナラ良シイガソウハ讀メンヨウデス排斥理由ノミヲ失ハシムルト云フナラ拒却理由ノ外ト讀ム
(南部委員)
ソレハ惡イ
(大尾崎委員)
排斥理由拒却理由ト二ツ書キマシテハ惡イヨウダ
(南部委員)
註ヲ見ルト一ツト云フコトガ能ク分リマス
(村田委員)
「ノミ」ト云フハ惡イナ「ノミ」ト云フト一ツ殘ルヨウダ
(松岡委員)
卽チナレバ宜シイ
(村田委員)
防禦方法ニシテ置イテハ如何
(西委員)
ソレデ良シイ
(渡委員)
ソレデ良シイガ一度打合セナケレバナランカラ假定ニシテ置イテハ如何
(南部委員)
ソレデハソウシテ置キマシヨウ
(委員長)
「又ハ」ト翻譯シタハオカシイヨウダネ
(松岡委員)
ドウカスルト卽チニナツタリ或ハ又ハデアツタリ誠ニ困ルノデス
(南部委員)
防禦方法トシテ後デ調ベテ貰ヒタイ
(委員長)
防禦方法トシテ置キ直ソウデハナイカ訴訟法ニ防禦方法トアレバ良シイ
(南部委員)
訴訟法ニ防禦方法トアリマス
(渡委員)
假定シテ置イテハ如何
(委員長)
防禦方法ト云フコトハアツタ
(南部委員)
防禦方法ハ總テノ防禦方法デ其中防禦抗辯モアリマシヨウ
(委員長)
防禦ト云フト總稱ダネ
(南部委員)
左樣デス
(委員長)
ソンナラ防禦方法トヤツテモ良シイカ或ハ定メズニ行クカ
(渡委員)
定メテ置イテ良シイ
(委員長)
防禦方法ト云フ字ハ幾種類アルカ聞イタラ分ルダロウ
(南部委員)
ソレハ分テ居ルガ能ク調ベルコトニシマシヨウ
(委員長)
排斥理由ハ抗辯ト云フ字ヲ排斥ニ直シタラ困ルト此間言タ
(南部委員)
ソレデスソレデ大槪抗辯ト定マツタガ
(委員長)
排斥拒却モ皆訴訟法ノ方ト相談スルコトニ致シマスカ
(南部委員)
左樣致シマシヨウ
(三島委員)
ソレカラ三項目ノ終リニ「推定シ懈怠ナル讓受人ハ之ニ抗爭スルコトヲ得ス」トアリマスガ報吿委員デ議シテ工合ガ惡イカラ直シタガ「トノ推定ヲ受ケ且之ヲ以テ懈怠ナル讓受人ニ對抗スルコトヲ得」ト直シマシタ
(委員長)
ナゼ、之デ往カンカネ
(南部委員)
推定スト云フト法律ノ推定デ御座イマスカラドウモ出來マセン
(委員長)
推定スルト云フノハ裁判所デスルガ懈怠ノ讓渡ノ之ニト云フ債務者トカ讓渡人トカ債權者トカ云フヨウナモノニ對シテ抗爭スルコトハ出來ント云フノダカラ良シイノデハナイカ
(南部委員)
分テハ居リマスガ、推定スト云フノハ何カ法律デ推定スト云テ之ハ懈怠人ノ讓渡人ト云フコトガアリマシヨウカ
(村田委員)
スルト債務者ガズート貫クト云フノダネ
(三島委員)
左樣デス
(村田委員)
此方ガ分リ易シ
(委員長)
「推定セラレ」トシテハドウカ
(三島委員)
「セラレ」ヲ直シタノデス
(松岡委員)
此方ガ良イト云フノハ原文ノ通リニスルト若シ讓受人ガ懈怠シテ居タトキハ箇樣々々ノコトヲシタ人ガ其懈怠シタ人ニ對抗スルヲ得ルト云テ外カラ向ケテ來ルヨウニナル、此度ノハ怠テ居タ善意ノ人ニ向テ貴樣ヤルコトハナラント云ハンノデ、ドウモ修正ノ方ガ分リ易ヒト思フ
(委員長)
債務者ガ推定スルノデハナイ裁判所ガ推定スルト云フノダ
(松岡委員)
ソレハソウデス、推定ヲ受クトヤツテモ誰レカラカ法律カラ推定シ、受ケルノハ受人ハ以テ來ルノデス
(南部委員)
前ニハ對抗スルコトヲ得ント云テズート來テ居ルノハ得ヌ方ノ旨意、此方ハ對抗スルコトヲ得トコウ云フコトニ順ニナツテ來ハセンカ
(松岡委員)
讓受人ガ何々シナケレバ對抗スルコトハ出來ヌト云フノダ、自分ガシナケレバ人ニ向テ對抗ハ出來ヌト云フノダ
(三島委員)
其人間ヲ出シテ來ルノデス、修正ハ善意デハ猶ホ債務者デ行ケルノデス
(大尾崎委員)
「之ヲ受ク」ハ債務者ニ係テ行クノダナ
(南部委員)
左樣デス
(村田委員)
分ルネ
(松岡委員)
何々スルコトヲ得ズ、デヤツテ來タノダカラネ
(南部委員)
讓受タ者ハ對抗ガ出來ヌト云フハ文ガ續カンカラ修正シタノデシヨウ
(三島委員)
ドチラデモ宜シイ
(松岡委員)
ナラバ此儘置キタイ
(渡委員)
此儘デ往キマシヨウ
(松岡委員)
讓受人ガ對抗スルコトヲ得ズ、ト云フト揃フ
(南部委員)
此所ハ債務者ノコトヲ云フノデス
(松岡委員)
終リガ得ズダカラ揃ヘタイノデス
(南部委員)
之ニト云フハ何ヲ指スカ
(松岡委員)
事柄皆ナデス
(南部委員)
事柄ニ抗爭スルノカ
(松岡委員)
事柄ヲシタラシタ人間ニ對シテダ
(南部委員)
抗爭ト云フハ詰リ對抗デシヨウ對抗スルニハ債務者トカ債權者トカ云フモノガ出來テ始メテ對抗ト云フ字ガ出來ルガ事柄ナクシテ對抗ト云フハ六ケ敷イ
(松岡委員)
善意デ爲シタ者ト見レバ債權者ニ對シテ御前ノ差押ハ往カント云フノデス
(南部委員)
讓受タ人カラ言葉ヲ立テ居ル
(松岡委員)
下ノ讓受人トハ違フ
(南部委員)
併シ讓受人ト云フ者デハナイ
(松岡委員)
人ハ云ハンデモ事柄ガアルカラデス
(南部委員)
事ヲ指シテ對抗ト云フノハ無理デハナイカ
(委員長)
修正ノ方ガ成程筋ハ立ツネ
(松岡委員)
事ヲ擧ゲテ、ソレハ皆善意デ人ガシタノデアリマス
(南部委員)
對抗ト云ヘヌカラ抗爭トヤツタノデアロウ卽チ前ニ對抗スルコトヲ得ズト云テ置イテ此所ニ抗爭ト云ヘルノデス
(大尾崎委員)
推定セラレ云々ト元トノガ良シイヨウデス
(委員長)
修正ノ方ガ宜シイ
(松岡委員)
且之ヲ以テハ何ノコトカ分ラン
(三島委員)
且ト云フノハ刪テモ宜シイ
(村田委員)
且ハイラン
(大尾崎委員)
且之ヲ以テハ入用デス
(淸岡委員)
推定以テハオカシイ
(栗塚委員)
讓渡ヲ以テデス
(委員長)
格別ノコトハアリマスマイ、推定セラルルガ否ダカラ之ヲ以テトヤツタノデシヨウ
(大尾崎委員)
コンナトキハ推定セラレ、デ宜シイデシヨウ
(栗塚委員)
之ヲ以テト云フコトハ對抗スルト云フ字ガ何ヲ以テデナケレバナラント云フノデシタノデ、何ヲ以テ對抗スルト云フノデス
(渡委員)
且之ヲ以テハ推定ヲ受クト聞ヘルカラ
(栗塚委員)
之ヲト云フノハ總テ善意ニ爲シタルハ何カ辨濟ノ義務免除合意デシヨウ、スレバ同ジデ御座イマシヨウ
(渡委員)
文章ヲズト讀ムト推定ヲ以テ之ヲハイカン
(委員長)
全文ヲ讀ムト格別ハナイゼ
(渡委員)
諸君ガ分レバ良シイ
(大尾崎委員)
往キマシヨウ
(西委員)
擧證方法ハ如何
(栗塚委員)
證據方法デス
(南部委員)
「拂渡差止」ト云フ字「拂渡差留」デハナイカ
(委員長)
「留」ト云フ字デアツタカモ知レンネ
(大尾崎委員)
「留」ノ字ガ當ルデシヨウ
(南部委員)
訴訟法ハ皆「留」ノ字デアリマス
(栗塚委員)
ソレデハ皆「留」ノ字ニシテ良シイ
(委員長)
ソレナラ「留」ノ字ニシテ置キマシヨウ
(淸岡委員)
「留」ノ字ヨリ「止」ノ方ガ宜シイ
(三島委員)
「止」ノ方ガ宜シイ
(栗塚委員)
デハ之モ彼方ト相談致シマシヨウ、ソレカラ第四項ハ「裁判上ニ」トアルハ「裁判上ニテ」ト致シマス
(委員長)
良カロウ修正通リニシテ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ第二項「排斥理由又ハ拒却理由」トアルハ訴訟法組合委員ト協議ノ上一定スルコトトシ「契約」ハ「合意」ト改メ第三項「善意ニテ之ヲ爲シタルモノトノ推定ヲ受ケ且之ヲ以テ懈怠ナル讓受人ニ對抗スルコトヲ得」トシ第四項「裁判上ニ」トアルハ「裁判上ニテ」トシ「擧證方法」ハ「證據方法」ト修正シ其他原案ニ決ス
第三百六十八條朗讀ス
第三百六十八條 左ニ揭クル書類ハ財產所在地ノ區裁判所ニ備ヘタル登記簿ニ之ヲ登記ス
第一 公正ト私署トヲ問ハス有償名義又ハ無償名義ヲ以テスル不動產所有權其他ノ不動產物權ノ讓渡ヲ記載シタル生存者間ノ證書
第二 右同一ノ權利ノ變更又ハ抛棄ヲ記載シタル證書
第三 前二號ノ行爲ノ一ヲ目的トスル口頭契約ノ成立ヲ認定シタル裁判書
第四 差押ヘタル不動產ノ競落ノ裁判書
第五 公用徵收ヲ宣言シタル裁判上又ハ行政上ノ證書
不動產ノ抵當及ヒ不動產ニ關スル先取特權ノ公示ハ第四編ノ規定ニ從フ
第三百六十八條(ノ二)〔議場削除〕
(栗塚委員)
此所デハ格別ハナイガ第一ノ「公正ト私署トヲ問ハス」トアルガ之ハ後ヘ持テ來テ宜シイト思フ此文章デハ有償無償ヲ問ハズ生存者間ニト云フ意味デアリマスカラ「公正ト私署トヲ問ハス」ヲ止メテ後ヘ「但公正ト私署トヲ問ハス」トシテハ如何デスカ
(渡委員)
ソレハ良シイ
(南部委員)
但云々問ハズ、ト云フハ珍ラシイ文ダネ
(栗塚委員)
但ハ止メテモ良シイ
(村田委員)
宜シイ
(栗塚委員)
裁判書ト云フノハ判決書トナツテ居ルソウデスソレデ「認定シタル判決書」ト致シソレカラ末項ハ刪除デアリマス
(大尾崎委員)
末項ハ置クガ宜シイ
(元尾崎委員)
末項ハ刪ル
(渡委員)
置クガ良シイ
(村田委員)
刪ル々々
(栗塚委員)
第三百六十八條ハ、不動產抵當ヲ先取特權ノ所デ皆サン御承知ニナツタ如クデ彼ノ事柄ヲ考ヘルト何ウシテモ三百六十八條ニ登記ノ所ヘ送ルト云フ議論ガ盛ンデ、先ヘ往コウデハナイカ抵當ノ所デ不動產ニ關スル先取特權ノ所デ云ハウデハナイカト云フ論デ刪レマシタ然ルニ不動產先取特權ノ所ハ入レル箇條デナイノデス矢張置クベキモノデアルカラ議場デ刪除ニナツタノヲモ今一應御考ヘヲ願度イト思テ按ヲ出シタノデス
(松岡委員)
必ラズ抵當ノ方ヘ入レヨウト云フノデ刪タノデハナイ全體事柄ガ二ツ出シテ一ハドウスル斯ウスルト云フコトハ民法ヘ出シテ細記セズ登記規則ノ中ヘ入レルガ適當トシタノデ事柄ガ登記規則ノ事柄ダカラ讓テ良イト云フノデス
(栗塚委員)
ソンナラ尙ホ此三百六十八條ノ一ニ申シタ如ク登記法ニハ之ヲ登記スト、登記スル以上ハ此丈ケアルゾヨト登記法ノ中ニ書イタ曉キ刪ルハ兎モ角モ之デ登記ノ全キヲ得ルトハ思ハヌ此條ガアルノデ良シイノデス
(松岡委員)
特別規則ハドウスルカ
(栗塚委員)
特別規則デ定メルヲ原則トハ出來ン原則ノ一ヲ謂タノデス
(南部委員)
推測ヲ云タノデシヨウ原則ヲ謂タノデハ御座イマセンカ前ハ全部ヲ記載スルト云フノハ原則デ向ウカラ證書二通出シテ濟マセルコトモ出來ルカラ變則ハ變則ダ
(栗塚委員)
第三百六十八條ノ輕重ヲ論ズルト違ヒハ御座イマセン登記ノコトハ謂ハンゾ登記ヲ經テト云フナラ三百六十八條モ入ラント謂ハナケレバナラン
(松岡委員)
六十八條ハ登記シナケレバナラン種類ヲ定メタノデス
(栗塚委員)
記載セズトモ斯ウシテモ良イト云フノデス
(元尾崎委員)
之ハアル方ガ良カロウ證書ヲ二ツ出セバ良イト云フノダカラネ
(淸岡委員)
イランイラン
(栗塚委員)
三百六十八條ノ一ハナンデ謂タカ斯ウ云フコトヲ登記セヨ、ト謂テ、偖此丈ケノ一二三四五、ヲスル替リニ斯ウシテモ宜シイト云フノデ、刪除シタノハ手續ニデモ關シテ居ルナレバ登記規則ニ書クコトモ出來ルガ手續デナイ斯ウ云フコトヲ登記スルカ若クハ之ヲスル替リニ此ヲスルカト云フノデアリマスカラ登記スル場合ノ手續ト云フノデハナイダカラ登記スル手續ナラ特別規則デヤリマシヨウガ、兎ニ角モ議場デ刪除ニナツテ居ルガ更ニ議題ニシテヤリタイト云フノデソレデ六十八條ト釣合ノ文章ニ改メマシタ
(委員長)
先ヅ朗讀シテ下サイ第三百六十八條登記ハ公示スヘキ證書ノ正本二通ヲ區裁判所ニ寄託スルヲ以テ之ニ代フルコトヲ得區裁判所ハ其正本二通ヲ校合シタル後各通每葉ノ縁邊ニ登記ノ割印ヲ押捺ス正本ノ一通ハ其要旨ヲ登記簿ニ記載シテ區裁判所ニ之ヲ保存シ他ノ一通ハ其寄託ノ場所ト日附トヲ縁邊ニ記載シテ當事者ニ還付ス登記ニ關スル此他ノ法式ハ特別ノ規則及ヒ民事訴訟法ヲ以テ之ヲ規定ス
(栗塚委員)
一項ガ必要デ御座イマス「之ニ代フルコトヲ得」ハ前條デハ「登記簿ニ之ヲ登記ス」トヤツタ其登記ノ斯ウ云フモノヲ以テ代ヘルコトガ出來ルゾヨト云フノデアリマス
(南部委員)
私ハ之ハ前回ニモ刪除ヲ主張シマシタガ此度モ報吿委員デモ論ヲ異ニシテ居ル、ト云フハ第一ノ理由ハ素ヨリ登記法デ斯ウ云フコトヲ規定シテ可ナルモノト云フノデ今一ツハ斯ウ云フ理窟ガアル當リ前ノ書面ニ全文ヲ記載スル而シテ本人ノ好ミニ依テハ自分ガ書面正本二通ヲ出シテ預ケ申シテ置クトナルトソレハ夫ニシテ置キ良ササウナモノト云フト二ツノ手續ガアルソレハ煩雜ニ堪ンノデソレハ一本ノ正本ニ委シク書キ又副本見タイナモノヲ綴込デ置ク六十八條ニ依テスルトドウモ書キヨウガ二ツニナルソレデ之ガ元ト「ボアソナード」ノ原案ニモナイ佛蘭西ニモアリマスマイ斯ウ云ウモノハ結局登記ノ細則デ定ムル可キ又一方カラ云フト登記隨分煩雜ニシテ整頓スルハ難シ正則變則ヲ拵イテドツチデモ往ケルト云フハ煩雜ヲ來シテ治リガ就カンカラ前回ニモ刪除說ヲ唱フタガ今日モ相替ハラズ矢張刪除ガ良イト思イマス
(村田委員)
簡便法ダナ
(松岡委員)
簡便ト云フ方ハ行ヘナイカラ刪除ヲ贊成抑モ現行法ハ稍公平デアラウガ以前ハ委任狀見タイナモノヲ以テモ登記ガ出來戶長ノ判デ出來タカラ公證上デ重罪犯ガ多ヒガ登記ガ初メ簡便ニ見過ギタカラデ、今南部君ノ云フ通リ登記帳簿ヲ一定スルト一方ニハ扣ヘテナケレバナラン一方ハ帳簿ニ記入シテ居ルトナルト登記簿ハ混雜シ又弊害モ必ラズ出來ル登記法ノ前戶長ノ奧書割印シタ時分ノ弊ガ起テ仕方ガナカツタ其通リ出來ルノデアリマスカラ、先ヅ之ハ前條ヨリ猶更ト云フガ前條ハ登記スル性質ヲ謂タモノデ箇樣ナモノハ裁判上特別帳簿ニ記入シナケレバ他ニ對スル效能ガナイト云フ爲メノ種類ノモノヲ擧ゲタノデ登記スル手續ニナツテ見レバ一二條デ出來ルモノデモナシ尤モ書式カラ手續ノ法律ヲ定メル中ニ要用デアリマス詰リ彼ノ方ヘ讓テ良カロウト思ヒマス
(村田委員)
最初ハナカツタガ後デ入レテ來タノデス
(南部委員)
ソレハソウデス
(栗塚委員)
此條ノ目方ハ前條ト同ジ目方デアル斯ウ云フ便宜ノ法ヲ置クコトノ良否ヲ考テノ上刪ルハ宜シイ
(村田委員)
簡便法デアルカラ別ノ規則デ設ケルナラ置ク方ガ宜シイ
(南部委員)
人民カラ是丈ケノコトヲ登記シテ呉レト云テ願テ來タトキハ前條ニ依テシナケレバナラン又宜シイト云ヘバ正本二通持テ來ナケレバナランソレヲモヤラナケレバナラン二ツノ手數ニナル登記法ハ實際ニ關係スレバ分ルガ事ヲ二樣ニヤツテ出來ルモノデハナイ之ヲ書クニモ手數ダシ事ガ二ツニナルト彼地是地ニナルノ間ニ間違ガ出來テ外國人ハドウカ知ランガ日本人ニハ迚モ往カン何所ニ斯ウ云フコトガアロウカ
(栗塚委員)
外國ニハ正本登記ヲ登記ト申ス併シナガラ日本デ今日ヤツテ居ルハ正本登記デハナイアレハ記入ト云フノデ書面ヲ作リ寫ス代リニ書上ゲルノガ、ウルサイカラ要旨丈ケノコトヲ書クト云フノモ良シイ
(元尾崎委員)
前ノ條ハ證書ノ全文ヲ登記簿ヘ寫スノカ
(栗塚委員)
左樣デス
(南部委員)
全文ト云フ字ハ刪タノデス
(松岡委員)
ドウシテモ別ニ手續ヲ示サナケレバナラン現今彼ノ通リニシテ正シクスレバ一目瞭然ト分ル之ヲ一々離シタ紙デヤルト忽チニ分リマセン
(元尾崎委員)
今ハ證文ハ取ランネ
(松岡委員)
取ランデモ宜シイノデ人間ハ正シイ人間デナケレバナランコトハ勿論先ニナルト尙ホ更抵當ニモ委任狀ハ公證人ノ前デ作ル、餘程嚴重ニシテ置カント一ツノ帳面デ何モ乎モ分ルヨウニ仕向ケナケレバナラン
(栗塚委員)
帳面ハ一ツデ全文ヲ殘ラズ書クト云フカ又ハ全文ヲ書カズ要點丈ケヲ書クカ、偖要點ヲ書クト正本ナラ一通ヲ取テ置クト云フ丈ケデアリマス
(松岡委員)
之ニナルト郵便デモ往ケルノデシヨウ
(栗塚委員)
ソレハ知レマセンソレ等ノコトコソ手續上デ、只寄託スルト云フノ旨意デアリマス
(元尾崎委員)
郵便デ往ケルト便利デ宜シイ
(栗塚委員)
郵便デ行ケル否ハ手續デ御座イマス
(松岡委員)
何ヲ目當ニ登記スルカ
(栗塚委員)
出テ來タ書面ヲ書クノデス
(松岡委員)
人間デナケレバ、郵便モ來ル丁稚ニ持タシテ來ルノモアロウト云ハナケレバナラン
(栗塚委員)
簡便ニナルノハ、前條ニ謂タノハ登記契約ノ全文ヲ書カナケレバナラン
(松岡委員)
全文ト云フノハ刪タ
(栗塚委員)
今日民法デ謂フ登記ニハ全文ノ登記、一部ノ登記要旨ヲ書ク記入ト云ヒ縁邊付記ト云フ
(松岡委員)
ソレハアル、今ヤツテ居ルノハ豫メ記入ダカラ、要旨ヲ書イテ置ケバ不要ナコトハ書カヌデモ良イ簡便法ト云フナラ郵便デ來ルモ免ガレン
(栗塚委員)
ソレハ來ルコナイノコトハ別デソレ等ノコトカラ云フト郵便デヤツテ登記スルカモ知レン書面デヤレバ全部登記スルノダカラ郵便デ良イカモ知レンケレドモソレデハナイ三百六十八條デ云タモノガ契約ノ事柄ヲ皆書カナケレバナランゾヨ併シナガラ此裁判書ヲ皆書クノハ、ウルサイカラ其代リニ要旨ヲ登記簿ヘ書イテ良シ書イタ場合ニハ全文一通自分ノ方ヘ留メテ置クノデス
(元尾崎委員)
我輩ハ刪ル方ニ同意致シマシヨウ
(松岡委員)
六十八條デ二ツ以テ往クト前ノ登記ニ這入テ居ルノデ之ハ今ノ手續丈ケノ必要ニシカナラン
(槇村委員)
刪ル方ガ宜シイ
(村田委員)
私ハ簡便法デアルカラ置キタイト思ヒマス
(渡委員)
前回ニ於テ刪除シタガ、今日贊成者ガ多ケレバ宜シイガ無ケレバドウモ贊成者ガ少ヒトキハ前議ノ通リスルヨリ外仕方ガナイ
(栗塚委員)
若シ之ヲ御止メニナルナラ議場デ前議ノ通リトアレバ三百六十八條ハアノ旨意ニシナケレバ出來ンモノデス
(渡委員)
ドウ云フ譯ケデス
(栗塚委員)
ナゼナレバ公正證書ガアレバ登記セヨト云フノデシヨウソレハドウモ、ヱライ裁判書ヲ皆書カナケレバナランヱライ
(元尾崎委員)
ソレハ方式デ定メルカラ宜シイデハナイカ特別手續デスルカラ良シイ
(松岡委員)
現行ニ定メタ登記法ニ合フヨウニ法律ヲ作レバ良シイソレユヘ全部ト云フ字ハ刪タノデアリマスカラドウゾ折角デアリマスガ持テ歸テ下サイ
(渡委員)
先ヅ次ヘ行キマスカ
(元尾崎委員)
宜カロウ
(委員長)
便宜法ハ便宜法デ宜シイ、必ラズ民法ニ書カナケレバナランコトモアリマスマイ、當分附則ニシテ出シテモ宜シイ方法ノ仕方ハ登記ノ上ニアルガ良否ハ、アル方ガ良シイ
(南部委員)
今ノ登記法ハ悉ク別モノニナツテ餘程變更ヲ生ジマスカラ
(委員長)
今デモ要旨ヲ書クカラ全文ハ書カン
(南部委員)
前ノ條ハ元ト全文ヲ書クトアツタ全文ヲ書クノハ煩ニ堪ヘンカラ二ツ出シテ要旨ヲ書クコトモ出來ル人民ノ望次第ダカラ全文書ケト云ヘバ書カナケレバナランスルト今ノ登記法トハ全ルデ違ヒマス
(委員長)
書ク丈ケノ手間デモ登記場所ヘ出ズトモ濟ムダロウ
(松岡委員)
今ハ全文ヲ書キマセン
(委員長)
要旨丈ケ書キマスルカラネ、ソレハ以テ向ウデ公正證書ナリ總テ必要ナ書面ヲ以テ此通リデ御座ルト云フノヲ公正證書ノ何月幾日ト卽チ一方ヘ留メテ書入レテ置ケバ要旨ヲ書イタモ同樣ニナルカラ
(松岡委員)
簡便ニナルノデ其六十八條デシナケレバナランコトヲ定メテ居ル登記スル時分ハ今日ノ如ク要點丈ヲ書入レルノデアリマス
(委員長)
全文ヲ書クト書カンノトアリマスカラネ、此奴ハ是非書カナケレバナランモノニナル、全文ヲ書クノハ悉皆止メレバ格別デス
(松岡委員)
全文ヲ書クノハ今ハ悉皆御座イマセン
(委員長)
二タ通リノ仕方ガアリマスカラネ
(松岡委員)
佛蘭西ニハ保存スルト云フガ起ルノデ抵當モ十年五年長クモ三十年シカ效ヲ持タント云フ何ゼナラ煩雜ガ出來ルカラデ現行ノ登記ナラ百年經テモ煩雜モ何モアリマセン十年ヤ二十年デハ煩雜ハナイ現ニ獨逸ノヲ見マシタガ二百年カラ前ノガ付テ居ルガ明瞭ナモノデス何ゼナレバ要領丈ケデアリマスカラ
(委員長)
要旨ヲ入レテ置クネ全文書クトソウハ往カン
(南部委員)
皆要旨デ第一ハ何カ賣買讓與ヲ云フ第二ハ所有ノ變換或ハ證書第三ハ矢張裁判書ニ依テ登記スル第四モ皆要旨ヲ書クコトニナツテ居ル、今ノ登記ノ方法ヲ丸デ新タニスルナラ格別デス
(委員長)
佛蘭西デハ今ノ通リ要旨ヲ書クノガ一ツソレカラ全文ヲ書クノガ一ツトアルカラ
(南部委員)
全文ヲ書ク、書カンハ六十八條ノ一二項デアリマス
(松岡委員)
抵當ニ入レルニ此旨意ニスルト公正證書デナケレバナラン、ト云フ公正證書ハ既ニ出來テ居ル其要ヲ書イテ公證人ニ係テスルト公證人ハ公正證書ヲ保存モアルカラ銘々正本ヲ持テ居ル又判決書デアレバ判決書ノ正本ハ權利者ガ持テ居ル、今ノ登記ノヤリ方デ行クト誠ニ簡明デ全文ヲ書カナケレバナラン要ハ御座イマセン、今ノハ誠ニ名法デアルト思テ居ル
(委員長)
名法ダロウ、今ノ名法ノ上ニ尙ホ人民ニ便利ヲ與ヘ人民ノ書イタモノヲ直グ綴込デ置カレテ別ニアリマス手續ヲ經ルト良イト思ヒマス
(松岡委員)
便利デハアリマセン却テ人民ガ書面ヲ持テ來ルト裁判所デハ又書カナケレバナランスルト却テ手續ガ殖ヘルノデアリマス
(栗塚委員)
其代リ登記スル時分書クコトガ省ケマス
(南部委員)
ソレニ反對スル全文書クト云フモノガ出來ナケレバナランソレハ餘程六ケ敷先ヅ、ボンヤリナサレテ置キ他日佛蘭西ガ良イト云フコトナラ其場合ニナサレテ良シイ
(委員長)
ソレナラソレガ多數ナラ仕方ガナイ
(元尾崎委員)
刪レタラ刪テ置キマシヨウ
(委員長)
人民モ二ツニスル理由ヲ記憶センケレバナランガ佛蘭西ハ二ツシナケレバナランヨウニナツテ居ルネ獨逸ニハ「コモンダホーフ」ト云フノト今一ツアルト書イテアルカラ一個人ノ權利ヲ確カメルモノガアリマシヨウカ
(松岡委員)
登記役所ニハ御座イマセン公證人ト云フ者ノ所ニアリマス
(委員長)
公證人ニヤラセルカ或ハ裁判所デヤルカ
(栗塚委員)
今カラ想像デ松岡サンニ申スガ屹度獨逸デモ要旨ヲ書イテアルナレバ契約書ハ裁判所ニ取テアルカ若シ裁判所ニ取テナケレバ要旨デナイ全文書イタモノガアルニ相違ナイト思フ、ト云フノハ裁判所ト登記所デ權利ガ定マル所有權ノ確カニナツタモノデ日本ノ地券ヲ止メテモ宜イ位ヒナモノナラ讓與或ハ賣買ガアツタラ全文帳簿ニアルカラ知レル、サレバ書面ニ殘テ居ルガ今日ハ地券ガアツテ地券ノ讓渡デヤル代リニ賣買證書ト云フモノノ全文ノ登記ガアル爲メニ寫ヲ持テ來レバ所有權ガ定マル登記ナラ付記ガアツテ見出シガ付クヨウ要略ヲ書イタモノデ所有權ノ轉輾シテ行クコトハ恐ラクハ出來マスマイ人ノ所有權ヲ定メルニ地券ノ無イ國ダカラ權利ノ動キ方ハ登記ニ全文ヲ登記シテ初メテ分ルソレハ隨分煩雜ナ譯ケデアルカラ證書ヲ持テ來タラ宜シイ二部持テ來テ一部ハ殘シテ置クトシテ見出シニ自分ノ書ク替リニ要旨丈ケヲ書ク要旨ヲ書ケバ人ノ權利ガ確カマルカラ全文ノ一通ヲ裁判所ヘ取テ置ケバ宜イ旨意ダカラ恐ラクハ獨逸流義ニシテモ人ノ權利ヲ認メルニ要略ヲ書イテ置ク譯デハアリマスマイ何カアルト思ヒマス
(松岡委員)
愈々何トモ能クハ知リマセンガネスルト現今ノ登記法ハ一切用ヒラレナイ
(栗塚委員)
六十八條ノアル所以ハ登記ノ手續ノヨウニ考ヘテハ困ル、ソレデ權利ガ定マルノデ、スレバ全文書カナケレバ往カンゾヨ併シ全文ハ、ヱライ、ダロウカラ全文充分書ク代リニ要略ヲ書テ置クトスルト要旨ヲ殘シテ置ケトスレバ良イト云フノデス
(松岡委員)
前ノ六十八條ノ全文ト云フノヲ生カサナケレバ貴君ノ說ハ通ラン話ダソレヲ全文ヲ刪テ見テ全文ヲ保存シナケレバ權利ガ不確カト云フト撞著シテ來ル
(栗塚委員)
全文ト云フ字ハ刪タガ之ヲ置ク以上ハ全文ヲ登記シナケレバナラン
(松岡委員)
スルト現行ノ法ヲ改メナケレバナラン結果ニナルカラソレデハ大變ダ今ノハ餘程良イト認メテ居ル
(大尾崎委員)
往コウデハナイカ
(栗塚委員)
只ソレ丈ケヲ申シテ置キマス
(委員長)
獨逸新民法ハドウナツテ居ルカ、孰レ獨逸ノヨリ佛蘭西ノ方ガ簡單デアルヨウ聞イテ居ルガ民法ニ載テ居ルカ否調ベテ下サイ
(栗塚委員)
ハイ
(淸岡委員)
先ヘヤリマシヨウ
第三百六十八條(ノ一)ハ第一「公正ト私署トヲ問ハス」ヲ刪リ「有償名義又ハ無償名義ヲ以テ云々生存者間ノ私署證書」トシ「裁判」トアルハ「判決」トシ其他原案ニ決シ第三百六十八條(ノ二)ハ刪除同修正案ハ採用セス只獨逸民法ヲ調ヘルコトニ決ス
第三百六十九條朗讀ス
第三百六十八條〔ノ二〕 登記ハ公示スヘキ證書ノ正本二通ヲ區裁判所ニ寄托スルヲ以テ之ニ代フルコトヲ得區裁判所ハ其正本二通ヲ校合シタル後各通每葉ノ綠邊ニ登記ノ割印ヲ押捺ス
正本ノ一通ハ其要旨ヲ登記簿ニ記載シテ區裁判所ニ之ヲ保存シ他ノ一通ハ其寄托ノ場所ト日附トヲ綠邊ニ記載シテ當事者ニ還付ス
登記ニ關スル此他ノ法式ハ特別ノ規則及ヒ民事訴訟法ヲ以テ之ヲ規定ス
第三百六十九條 登記ハ關係人ノ請願ニ因リ其合式ニ證明シタル後其費用ヲ以テ之ヲ爲ス
請願者ニハ證書ヲ登記シタル保證書ヲ交付ス
何人ニテモ某ノ不動產ニ關スル登記簿ノ抄本ヲ其費用ヲ以テ要求スルコトヲ得
登記ニ關スル方式ハ特別法及ヒ民事訴訟法ヲ以テ之ヲ規定ス
(南部委員)
「關係人」トアルヲ「當事者」ト改メタハ如何
(栗塚委員)
刑法ヲ見ルニ利害關係トアル當事者トアルカラ差支ナイ積リデアリマスソレカラ第三項「何人ニテモ其ノ」トアルガ「何人ニテモ不動產ニ關スル」トシテ「其ノ」ハイラント思ヒマス
(村田委員)
ソレデ良シイ
(淸岡委員)
「其ノ」ハイラン
(元尾崎委員)
「其ノ」ハイラン
(大尾崎委員)
「其ノ」ハイラン
(松岡委員)
イラン
(渡委員)
第一項ノ「其」モイラン
(栗塚委員)
「其」ハ刪リマシヨウ
(委員長)
良カロウ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ第一項「關係人」ハ「當事者」ト改メ「其」ヲ刪リ第三項「其ノ」ヲ刪リ其他原案ニ決ス
第三百七十條朗讀ス
第三百七十條 第三百六十八條ニ揭ケタル證書ノ效力ニ因リテ取得シ變更シ又ハ取回シタル物權ハ其登記ヲ爲スマテハ仍ホ名義上ノ所有者ト此物權ニ付キ約束シタル承接人又ハ此所有者ノ權ニ基キテ此物權ト相容レサル權利ヲ取得シタル承接人ニ對抗スルコトヲ得ス但其承接人ノ善意ニシテ且其行爲ノ登記ヲ要スルモノナルトキハ豫メ之ヲ爲シタルトキニ限ル
惡意及ヒ通謀ニ付テハ第三百六十七條ノ規定ニ從ヒ之ヲ證明スルコトヲ得
(栗塚委員)
「約束シタル者又ハ其所有者ヨリ此物權ト相容レサル權利ヲ取得シタル者ニ對抗スルコトヲ得ス」トシテ「但其者ノ善意ニテ且其行爲ノ登記又ハ記入ヲ要スルモノナルトキハ豫メ之ヲ爲シタルトキニ限ル」トシマシタ修正ノ理由ハ事柄カラ申スガ約束シタ人ハ賣タ人トカソレカラ其所有者此物權ト相容レザル權利ヲ取得シタルハ丁度抵當ニ取タ人買タ人限リト云フ承接人ト書イテアリマスガ前ニ承接人デナイ者ガナケレバナラン本人ガ約束シタル當事者所有者ト相容レザル權利取得シタル權利ヲ對抗スルヲ得ズト云タモ同ジデ三百六十八條ニ揭ゲタ證書ノ效力デ取得カ變更シタカ取回シタ物權ガ登記ヲ爲スマデハ名義上ノ所有者ト約束シタ人ノ外出來ン私ガ南部サンカラ地面ヲ買フタ然ルニ買テ未ダ登記シテ置カン中松岡サンニ南部サンガ賣タ卽チ約束シタ者ハ松岡サンデ、初メニ私ガ買フタニモセヨ登記スル迄ハ名義上ノ所有者ダカラ南部サンノ物權ニ付松岡サン又ハ其所有者ナル南部サンヨリ此所有權ト相容レザル權利ヲ得取シタ人卽チ三島サンガソレニ對シテ栗塚ガ登記スル迄ハ物權ヲ持テ居テモ對抗ガ出來ヌ但栗塚ガ善意デ以テ其行爲ノ登記又ハ記入ヲ要スルモノナルトキ豫メ之ヲ爲シタルトキデナケレバ往カント云フノデアリマス
(松岡委員)
私ガ未ダ登記シテナケレバ栗塚ニ殊ニ依ルト取ラルルノダロウ
(元尾崎委員)
登記セン以上ハ第三者ニ對シテ效力ガナイト云フ意味デスネ
(栗塚委員)
左樣デス
(元尾崎委員)
ソレハ幾ラモ揭ゲナクトモ良イダロウ登記シナケレバ第三者ニ對シテ效力ガナイト云フ丈ケデ良シイ
(栗塚委員)
トコロガ登記バカリデハナイ物權ト相容レザル權利卽チ抵當權トカ質入權トカ云フモノガアルカラデス
(大尾崎委員)
分リ惡イ
(元尾崎委員)
分テハ居ルガ持テ廻ハツタ文章ト思フ
(淸岡委員)
能ク分ル
(槇村委員)
取得シ變更シ又ハ取回ハ矢張取返シカ
(三島委員)
左樣デス
(栗塚委員)
末項ノ「證明スル」ハ「證スル」デアリマス
(委員長)
良シイ
本條ハ「第三百六十八條ニ揭ケタル云々此物權ニ付キ約束シタル者又ハ其所有者ヨリ此物權ト相容レサル權利ヲ取得シタル者ニ對抗スルコトヲ得ス但其者ノ善意ニシテ且其行爲ノ登記又ハ記入ヲ要スルモノナルトキハ豫メ之ヲ爲シタルトキニ限ル」トシ末項「證明スルコトヲ得」トアルハ「證スルコトヲ得」ト修正シ其他原案ニ決ス
第三百七十一條朗讀ス
第三百七十一條 法律裁判又ハ契約ニ因リテ前取得者ノ爲メ登記ヲ爲スノ義務アル者カ之ヲ爲サスシテ後ニ取得者ト爲リタルトキハ善意タリト雖トモ自己又ハ其相續人若クハ總般承接人ヨリ登記ナキコトヲ申立テヽ前取得者ニ對抗スルコトヲ得ス
(栗塚委員)
「總般」ヲ「一般」ト改マリマス
(松岡委員)
之ハ良シイ
本條ハ「契約」ヲ「合意」トシ「總般」ヲ「一般」ト改メ其他原案ニ決ス
第三百七十二條朗讀ス
第三百七十二條 登記ヲ經タル讓渡ノ解除、銷除又ハ廢罷ヲ爲サントスル訴カ善意ノ轉得者ニ對シテ行ハレサル場合ニ於テハ原吿ハ爾後自己ニ對抗シ得ヘキ登記ヲ防止スル爲メ其攻撃スル行爲ノ登記ノ緣邊ニ訴狀ヲ抄記セシム
右ノ訴權ヲ總テノ轉得者ニ對シテ行フコトヲ得ル場合ニ在テハ其攻撃スル行爲ノ登記ノ緣邊ニ訴狀ヲ抄記セサル間ハ裁判所ニ於テ其訴訟ヲ受理セス
行爲取消ノ判決書ハ假執行タリトモ其執行以前ニ訴狀ノ登記ノ末尾ニ之ヲ記載スルコトヲ要ス縱令執行ナキモ亦其判決ノ確定ト爲リタル時ヨリ一ケ月內ニ之ヲ記載スルコトヲ要ス此ニ違ヒタルトキハ其判決ヲ得タル者ヲ五圓以上五十圓以下ノ過料ニ處ス
裁判所ハ請求ヲ却下シ又ハ其手續ノ失效ヲ宣言シタルトキハ其判決ノ確定ニ至リテ請求ノ記載ヲ抹消セシムル爲メ職權ヲ以テ豫メ其抹消ヲ命ス
原吿カ取下ヲ爲シタルトキハ關係人ノ請願ニ因リテ請求ノ記載ヲ抹消ス
(栗塚委員)
「廢罷ヲ爲サントスル訴權カ」トシ「善意ノ轉得者ニ對シテ行ハレサル場合ニ在テハ原吿ハ爾後自己ニ對抗シ得ヘキ登記又ハ記入ヲ防止スル爲メ其攻撃スル行爲ノ證書ノ登記ノ縁邊ニ訴狀ヲ拔抄シテ附記セシム」トヤリマシタ、第三項ハ「訴狀附記ノ末尾ニ」トヤリマシタ之ハ「登記」ハ間違イデアリマス第四項ハ「裁判所ハ請求ヲ却下シ又ハ其手續ノ失效ヲ宣言シタルトキハ其判決ノ確定ニ至リテ請求ノ訴狀附記ヲ抹消セシムル爲メ職權ヲ以テ豫メ其抹消ヲ命ス」トシ末項ハ「請求ノ記載」ハ「訴狀附記」トナリマス
(松岡委員)
「五十圓以下」トヤツテハ何ウカ、最高點ヲ定メテ最下點ハ定メルニハ及バン「五圓以上」ノ字ヲ刪除シマシヨウ
(元尾崎委員)
ソレニ同意シマシヨウ
(栗塚委員)
三圓以上トデモシテハ如何
(元尾崎委員)
最下點ハナイ方ガ宜シイ
(村田委員)
「行爲取消判決書」ハ「證書取消」デハナイカ
(松岡委員)
「行爲」デナケレバナラン
(栗塚委員)
「五圓以上」ハ皆サン刪リマスカ
(北畠委員)
刪タ
本條ハ第三項「五圓以上」ヲ削リ其他修正ニ決ス
第三百七十三條朗讀ス
第三百七十三條 登記ヲ經タル行爲ノ協議上ノ解除、銷除又ハ廢罷ハ總テ之ヲ任意ノ讓戾ト看做シ第三百六十八條乃至第三百七十一條ノ規定ニ從ヒ登記ヲ爲スコトヲ要ス
右登記ハ登記官吏其職權ヲ以テ原行爲ノ登記ノ緣邊ニ之ヲ記入ス
(栗塚委員)
此所ハ第二項「右登記ノ登記官吏其職權ヲ以テ取消シト爲リタル行爲ノ證書ノ登記ノ縁邊ニ之ヲ附記ス」ト致シ第一項ハ異リマセン
(渡委員)
宜シイ次ヘ往キマシヨウ
本條ハ修正ニ決ス
第三百七十四條朗讀ス
第三百七十四條 登記及ヒ緣邊記入ハ總テ利害ノ關係ヲ有スル者ヨリ其抹消又ハ改正ヲ請求スルコトヲ得
右請求及ヒ其判決ハ第三百七十二條ニ規定シタル如ク其爭訟スル行爲ノ登記ノ緣邊ニ之ヲ記入スルコトヲ要ス此ニ違フ者ノ責罰モ亦同條ノ規定ニ從フ
能力ヲ有シ又ハ合式ニ代理セラレ若クハ輔佐セラレタル當事者ハ協議ニテ抹消又ハ改正ヲ承諾スルコトヲ得
裁判上ニテ合式ニ命シ又ハ協議ニテ承諾シタル抹消又ハ改正ハ正當ニ登記ヲ爲シタル權利者ヲ此事ニ付キ異議ヲ爲ス爲メニ召喚シ又ハ其承服ヲ得タルニ非サレハ之ニ對抗スルコトヲ得ス
(栗塚委員)
第一項ハ「登記又ハ縁邊記入云々」ト第二項ハ「附記スルコトヲ要ス」トシマシタ、此所デ「證書」ト云フ字ヲ入レナケレバナランカドウカ
(淸岡委員)
「行爲」ト云フヲ刪テ「證書」丈ケデ宜イト思フ
(栗塚委員)
攻撃スル行爲デナケレバナランカ行爲ノ登記ハドウカ
(元尾崎委員)
攻撃ト云フハ行爲ダロウ
(栗塚委員)
ソウデハナイ「行爲」ト云フノハ「アクト」デアリマスカラ
(元尾崎委員)
攻撃セラレタル行爲ダネ
(栗塚委員)
左樣デス攻撃セラレント欲スルデス「證書」ト一々入レナケレバナランカドウカデス
(西委員)
入レズトモ分リマシヨウ
(大尾崎委員)
「證書」ト入レテ宜シイ
(淸岡委員)
行爲ノ證書ト云フハ
(栗塚委員)
報吿委員デモ「其爭訟スル行爲ノ登記」ト云フハ分ラン「證書」デナケレバナラント言タノデス
(渡委員)
「證書」ト入レルガ良シイ
(西委員)
眞ニ行爲ノ登記デスカラネ
(南部委員)
多數ニ問ヒマシヨウ
(渡委員)
「證書」ヲ入レヨウ
(南部委員)
行爲ノ證書ト云テハ分ラン
(淸岡委員)
以前ニハ行爲ト云フ字ハナカツタガ皆證書丈ケダガソレガ行爲ト入レナケレバナランカドウカ
(栗塚委員)
行爲ト入レタノデハナイ
(三島委員)
今村ガ證書ノ代リニ行爲ト入レタノデアリマス
(南部委員)
證書ヲ攻撃スルト云フハ分ラン
(村田委員)
「證書」ヲ入レテ置ク
(栗塚委員)
行爲ノ登記證書ノ登記ト云フノデ攻撃スル行爲ガナケレバナラント云フノデ攻撃スルガ證書ニ書イテ卽チ場合ヲ攻撃スルノデス
(淸岡委員)
矢張證書ヲ攻撃スルコトニナルノデス
(元尾崎委員)
「アクシヨン」ト云フコトハ行爲カ
(栗塚委員)
「アクシヨン」ハ訴權デス
(元尾崎委員)
行爲ト云フヲ刪テ良シイ
(南部委員)
寧ロ其方ガ宜シイ
(松岡委員)
行爲ハ良イデハナイカ
(淸岡委員)
寧ロ良シイ
(村田委員)
證書ト云フ字ヲ入レテ置キマシヨウ
(南部委員)
「爭訟」ハ「爭ヒ」トヤツテハ如何
(栗塚委員)
左樣爭フ行爲ノ證書ノ縁邊デスネ
(渡委員)
「爭フ行爲ノ證書ノ登記」ハ良シイ
(松岡委員)
ソレハ良シイ
(西委員)
元トノ儘デ良シイ
(松岡委員)
良シイ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ左ノ如ク改ム
第三百七十四條登記及ヒ縁邊附記ハ總テ利害ノ關係ヲ有スル者ヨリ其抹消又ハ改正ヲ請求スルコトヲ得右請求及ヒ其判決ハ第三百七十二條ニ規定シタル如ク其爭訟スル行爲ノ證書ノ登記ノ縁邊ニ之ヲ附記スルコトヲ要ス此ニ違フ者ノ責罰モ亦同條ノ規定ニ從フ能力ヲ有シ又ハ合式ニ代理セラレ若クハ輔佐セラレタル當事者ハ協議ニテ抹消又ハ改正ヲ承諾スルコトヲ得裁判上ニテ合式ニ命シ又ハ協議ニテ承諾シタル抹消又ハ改正ハ正當ニ登記又ハ記入ヲ爲シタル權利者ヲ此事ニ付キ異議ヲ爲ス爲メニ召喚シ又ハ其承服ヲ得タルニ非サレハ之ニ對抗スルコトヲ得ス
第三百七十五條朗讀ス
第三百七十五條 登記官吏ハ前數條ニ揭ケタル登記、記入、抹消若クハ改正又ハ登記保證書ニ於ケル脫漏又ハ訛誤ニ付キ請願人又ハ關係人ニ對シテ其責ニ任ス
(栗塚委員)
「記入」ハ「記載」ト改メ「保證書」ハ殊ニ依ルト「證人書」ト云フコトニナルカモ知レンガソレ丈ケデアリマス
本條ハ「記入」ヲ「記載」ト改メ其他原案ニ決ス
第三百七十六條朗讀ス
第四款 契約ノ解繹
第三百七十六條 契約ノ解繹ニ付テハ裁判所ハ當事者ノ用ヒタル語辭ノ字義ニ拘ハランヨリ寧ロ當事者ノ共通ノ意思ヲ推尋スルコトヲ要ス
(元尾崎委員)
「解釋」ハ「解釋」ノ方ガ良シイ
(北畠委員)
「解釋」ノ方ガ良シイ
(村田委員)
「解釋」デ良シイ
(栗塚委員)
之ハ三島ノ提出デ御座イマス
(三島委員)
タヅネル、ト云フコトダト云フカラデス
(大尾崎委員)
「共通」モオカシイ
(南部委員)
「共通」ハ前ニモアリマス
(三島委員)
「共通」ハ前ニモアリマス
(栗塚委員)
皆今日解釋法ト云フガアレハ間違テ居ルノデシヨウカ
(南部委員)
解釋ノ方ガ分リ易ヒ
(村田委員)
分リ易ヒニシテ置カウ
(大尾崎委員)
「解釋」ガ良シイ
(槇村委員)
義ヲ繹ネル方デハナイカ
(南部委員)
矢張解ク方デス
(元尾崎委員)
法律ノ解釋ダ
(栗塚委員)
左樣デス
(南部委員)
解釋ノ方ニシテ置キマシヨウ
(大尾崎委員)
良カロウ
本條ハ「契約」ヲ「合意」トシ「解繹」ヲ「解釋」ト改メ其他原案ニ決ス
第三百七十七條朗讀ス
第三百七十七條 一箇ノ語辭カ各地ニ於テ意義ヲ異ニスルトキハ當事者雙方ノ住所ヲ有スル地ニ於テ慣用スル意義ニ從フ
一箇ノ語辭ニ本來二條ノ意義アルトキハ其契約ノ性質及ヒ目的ニ最モ適スル意義ニ從フ
(栗塚委員)
前ノヲ見ルト住所ガ違テ居タカドウカト云フコトガ分ラン其住所ガ同一ノ場所ニナケレバ契約シタ場所デ異議ヲ云フノカ箇樣ト云フノカ必要デアリマス、ソコデ斯ウシマシタ「當事者雙方ノ住所云々意義ニ從フ、若シ同一ノ住所ヲ有セサルトキハ合意ヲ爲シタル地ニ於テ慣用スル意義ニ從フ」トシマシタ
(元尾崎委員)
ソレハ良シイ
(大尾崎委員)
ソレハ良シイ
(淸岡委員)
契約ヲ爲シタル地ニ於テト云フハ六ケ敷事實上困ルネ
(北畠委員)
仕方ハアリマスマイ
(淸岡委員)
東京ノコトヲ知ラヌヤツデモ東京ノ意ニ從フハ酷イ
(元尾崎委員)
東京ニ居テ東京デ約束スルハ東京ノコトハ良イトシナケレバナラン
(南部委員)
之ハ良シイ
(大尾崎委員)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ「一箇ノ語辭カ云々住所ヲ有スル地ニ於テ慣用スル意義ニ從フ若シ同一ノ地ニ住所ヲ有セサルトキハ合意ヲ爲シタル地ニ於テ慣用スル意義ニ從フ」トシ「契約」ハ「合意」ト改ム
第三百七十八條朗讀ス
第三百七十八條 契約ノ各項目ハ契約ノ全體ト最モ善ク一致スル意義ニ從ヒテ相互ニ之ヲ解繹ス
一箇ノ項目ニ二樣ノ意義アリテ其一カ項目ニ有益ナル效力ヲ與フルトキハ其意義ニ從フ
(栗塚委員)
「解繹」ハ「解釋」ト改メ外ニ修正ガ御座リマセン
(大尾崎委員)
之ハ良シイ
本條ハ「解繹」ヲ「解釋」ト改メ其他原案ニ決ス
第三百七十九條朗讀ス
第三百七十九條 契約ノ語辭カ何樣ニ廣泛ナルモ其語辭ハ當事者ノ契約ヲ爲スニ付キ期望シタル目的ノミヲ包含セルモノト推定ス
當事者カ契約ノ自然若クハ法律上ノ效力ノ一ヲ明言シ又ハ特別ノ場合ニ於ケル其適用ヲ明言シタルモ慣習若クハ法律ニ因リテ生スル他ノ效力又ハ適當ニ受ク可キ他ノ適用ヲ阻却セント欲シタルモノト推定セス
(委員長)
前ノハ契約トアルカ
(北畠委員)
契約ハ皆合意トスルカ
(栗塚委員)
矢張合意デアリマス
(松岡委員)
民法合意編カ
(元尾崎委員)
此所等ハ契約トシタイ
(松岡委員)
理窟付カン
(元尾崎委員)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ「契約」ヲ「合意」トシ原案ニ決ス
第三百八十條朗讀ス
第三百八十條 總テノ場合ニ於テ當事者ノ意思ニ疑ヒ有ルトキハ其契約ノ解繹ハ諾約者ノ利ト爲ル可キ意義ニ從フ
雙務ノ契約ニ於テハ此規定ハ各項目ニ付キ各別ニ之ヲ適用ス
(元尾崎委員)
刪除建議トハ何ウカ
(三島委員)
偏頗ニナルトカ云フ樣ナ論カラ出マシタノデアリマス
(大尾崎委員)
往昔カラアルコトデ之ハアル方ガ宜シイ
(南部委員)
アル方ガ宜シイ
(元尾崎委員)
ドツチガ諾約者カ
(南部委員)
義務者デス
(元尾崎委員)
家引渡デ代價ヲ請取ロウト云フハ孰レガ義務者カ
(大尾崎委員)
家ヲ渡ス方ガ義務者デス
(元尾崎委員)
一方ガ渡スト云フニ向フガ受取ントキハ
(南部委員)
受取ン方ガ諾約者デス
(委員長)
訴ヘタトキ直キ分ル、金ヲ呉レト言タラ渡ス方ガ義務者家ヲ渡セト言ヘバ渡ス方ガ諾約者デス
(大尾崎委員)
義務者ト思ヘバ良シイ
(元尾崎委員)
否、ヤル方ノ利益ニナルノデスネ
(大尾崎委員)
之ハ尤モデス、權利アル人ハ充分意義ヲ確カメナケレバナランガソレヲ曖昧タルコトヲシテ置クハ權利者ノ損ヲスルハ當リ前デス
(元尾崎委員)
惡意ニスル氣遣ハナイ
(大尾崎委員)
ソレハ不注意デス
(元尾崎委員)
何方ガ不注意トモ云ヘンカラコンナコトハ刪タ方ガ良シイ
(渡委員)
刪除說ハ果シテソウ云フノカ
(三島委員)
ソウ云フ說デ御座イマス
(南部委員)
負債者ヲ保護シテ居ル
(松岡委員)
英吉利ハ却テ權利者ヲ佐ケル
(南部委員)
弱ヒ者ヲ佐ケルノハ當リ前デス
(西委員)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ「契約」ヲ「合意」トシ「解繹」ヲ「解釋」ト改メ其他原案ニ決ス
第三百八十一條朗讀ス
第二節 不當ノ利得
第三百八十一條 何人ニテモ有意ト無意ト又錯誤ト故意トヲ問ハス正當ノ原由ナクシテ他人ノ財產ニ付キ利ヲ得タル者ハ其不當ノ利得ノ取戾ヲ受ク
此規定ハ下ノ區別ニ從ヒ主トシテ左ノ諸件ニ之ヲ適用ス
第一 他人ノ事務ノ管理
第二 負擔セスシテ辨濟シタル物及ヒ虛妄若クハ不法ノ原由ノ爲メ又ハ成就セス若クハ消滅シタル原因ノ爲メニ供與シタル物ノ領受
第三 贈遺其他遺言ノ負擔ヲ付シタル相續ノ承諾
第四 第三編第一部第二章ニ規定シタル如ク所有物ニ他人ノ物ノ添附シ又ハ他人ノ勞力ヨリ生スル增加
第五 他人ノ物ノ占有者カ不法ニ收取シタル果實、產出物其他ノ利益及ヒ之ニ反シテ占有者カ其占有物ニ加ヘタル改良但第二百六條乃至第二百十條ニ規定シタル區別ニ從フ
(栗塚委員)
此所ハ格別ハアリマセン「第二負擔ナクシテ」ト改メマシタ
(松岡委員)
「負擔アラスシテ」ガ良シイ
(元尾崎委員)
義務ナキニ金ヲ返シタノカネ
(栗塚委員)
左樣デス
(委員長)
負擔スベキニ非ラズ、デハナイカ
(栗塚委員)
スベキニ非ラズデハナイ
(委員長)
負ハセラレタノデハナイノデ、負フベキデナイト云フノダカラネ
(栗塚委員)
同ジデシヨウ
(委員長)
負擔ノナイノハ負フベキカ負フ間敷如キ任ガナイト云フノデ
(栗塚委員)
任ナクシテ渡シタラ取戻スト云フノデス
(村田委員)
負擔アルコトナクシテダネ
(栗塚委員)
負擔サレズニデス
(元尾崎委員)
負擔ナクシテ、デ良シイデハナイカ
(北畠委員)
何ゼ返濟シタ間違テ拂タト云フノカ
(栗塚委員)
左樣デス
(三島委員)
「ナク」ノ方ガ良シイ
(西委員)
負擔ナクシテ、デ良シイ
(大尾崎委員)
第三ハ一向分リマセンネ
(委員長)
第二ノ成立スルコトヲ止メタルハ消滅ト同ジカ
(栗塚委員)
詰リ同ジデアリマス
(委員長)
事柄ハ止マンノデ物ハ消滅シナイノデシヨウ
(栗塚委員)
消滅シタノデ、原因ガ成立ンノデ、慥カ彼ノ人ガ買フト言タカラ賣ロウト思タガ物ガ違テ居タト云フノデ成立ザリシデアリマス
(委員長)
成立コトヲ止メタノデアリマス爲ベキコトガ先ヅ姑ク止メテ居ルト云フノデ
(栗塚委員)
生テ居ルコトヲ止メタノデス卽チ死ダノデス
(委員長)
ソコハ消滅ダロウカネ
(栗塚委員)
栗塚ガ生テ居ル事柄ヲ止メタノデ、ダカラ死ダトスレバ消ヘタト云フノデ歸スル處ハ矢張消滅デアリマス
(委員長)
消滅デナイ原因ガ止ムト思フ、事柄ヲ中止シテ居ルノデス
(元尾崎委員)
第三ハ分ラン
(委員長)
消滅シナイデ成立ヲ止メテ居ルノデソウ云フ場合ガアリワセンカ
(南部委員)
スルト消滅モシナケレバナランノデシヨウ
(栗塚委員)
原因ガナクナツタノデアリマス
(委員長)
消滅ト云フ字ガ原文ニアレバ良シイ
(南部委員)
貸借ガ中止ニナツタコトモアリマスマイ
(松岡委員)
貸金デアルト拂濟ヲ願フテ居ルト思テ拂タ、スルト消滅シテ居ル原因デアリマス
(委員長)
ソコハ良シイガ、佛蘭西語ニ以テ書ケバ良シイ
(栗塚委員)
成就セズ若クハ成立ヲ止メト云フハ日本語ニハドウデシヨウカ
(委員長)
日本人ノ考ヘハ綿密デナイカラネ歐羅巴ノヨウニ細カニ論ズルト同ジナクナツテモトアリハセンカ何所ノ法律ニモコウ云フ場合ニ消滅ト云フ字ガ使テアレバ良シイ
(元尾崎委員)
有ルコトガ止マツタト云フノデ矢張無クナツタノデアリマス
(南部委員)
消滅ニシテ宜シイ、序デニ聞テ見テ宜シイ
(委員長)
聞クモ良シイ、又他所ノ法律ニ使テアレバ之デモ良シイ私ノ考ヘデハ日本人ニ早分リダガ向フニハ細カイ意味モアルカラ大掴ミニスルト他日困ルカラネ
(南部委員)
ソレデ左樣デス
(村田委員)
卽チ准契約ト云フ字ガアリマシタガ之ニハ刪テアルガ入レテ良クハナイカ
(南部委員)
御尤モデス
(委員長)
消滅ト云フ字ハ聞クカ何ウカ調ベルヨウ
(栗塚委員)
ハイ
(南部委員)
村田ノ說贊成
(栗塚委員)
入レテモ良シイ
(西委員)
准契約ノ下ハ以テ不當ノ利得ト云フガ本統ラシイ
(渡委員)
左樣デス
(栗塚委員)
第四ノ所デ報吿委員ノ修正ハ「第三編第一部第二章ニ規定シタル如ク所有物」ヲ刪リ「第四他人ノ物ノ添附ヨリ又ハ他人ノ勞力ヨリ生スル所有物ノ增加」ト致シマシタ
(松岡委員)
良シイ
(大尾崎委員)
ソレデ良シイ
(村田委員)
寄洲ハドウカ
(栗塚委員)
アレハ他人ノモノデハアリマセンカラ
(元尾崎委員)
良シイ
(松岡委員)
第五デ良シイ
本條ハ第二「負擔セスシテ」ヲ「負擔ナクシテ」ト改メ第四「第三編第一部第二章ニ規定シタル如ク所有物ニ」ヲ刪リ「他人ノ物ノ添附ヨリ又ハ他人ノ勞力ヨリ生スル所有物ノ增加」ト改メ其他原案ニ決ス
于時零時五分食事休
于時一時開會
(委員長)
始メマシヨウ
第三百八十二條朗讀ス
第三百八十二條 不在者其他ノ人ノ物ニ患害アリト見ユルトキ契約上、法律上又ハ裁判上ノ委任ナク好意ヲ以テ其事務ヲ管理スル者ハ本主ノ物ヨリ收メタル利益ヲ返還シ且其管理ノ際自己ノ名ニテ取得シタル權利及ヒ訴權ヲ本主ニ移轉スルノ責アリ
右管理者ハ本主又ハ其相續人カ自ラ管理ヲ爲シ得ルニ至ルマテ其管理ヲ繼續スルノ責アリ
又右管理者ハ過愆又ハ懈怠ニ因リテ本主ニ加ヘタル損害ノ責ニ任ス但管理者カ其管理ニ任スルニ至レル事情ヲ酌量スルコトヲ要ス
(栗塚委員)
本條ハ第一項「物」ヲ「財產」ト改メ「契約」ヲ「合意」ト改メ第三項「過愆」ヲ「過失」ト改メマス本條ハ修正ニ決ス
第三百八十三條朗讀ス
第三百八十三條 本主ハ管理者カ管理ノ爲メニ出シタル必要又ハ有益ナル諸費用ヲ賠償シ及ヒ管理者カ其管理ノ爲メニ自身ニ負擔シタル義務ヲ免カシメ又ハ其擔保ヲ爲スコトヲ要ス
本條ハ原案ニ決ス
第三百八十四條朗讀ス
第三百八十四條 債權者ニ非スシテ辨濟ノ名義ヲ以テ供與ヲ受ケタル者ハ其善意ト惡意ト又辨濟者ノ錯誤ト故意トヲ問ハス總テ其取戾ヲ受ク
(栗塚委員)
本條ハ「辨濟ノ名義ヲ以テ供與ヲ受ケタル者ハ」トアルヲ「辨濟ヲ受ケタル者ヲ」ト改メマス本條ハ修正ニ決ス
第三百八十五條朗讀ス
第三百八十五條 辨濟ヲ受ケタル者カ債權者ナルモ債務者ニ非サル者ヨリ之ヲ受ケタルトキハ辨濟者カ錯誤ニテ辨濟ヲ爲シタルトキニ非サレハ其取戾ヲ許サス
債權者カ辨濟ヲ受ケタル爲メニ善意ニテ其債權證書ヲ毀滅セシトキモ亦同シ
右二箇ノ場合ニ於テ辨濟者カ事務管理ノ訴權ニ依リ又ハ辨濟ノ部ニ揭ケタル代位ノ規則ニ依リ眞ノ債務者ニ對シテ有スル求償權ヲ妨ケス
(栗塚委員)
本條ハ第二項「モ亦同シ」トアルヲ「モ亦其受戻シヲ許サス」ト改メ第三項「又ハ辨濟ノ部ニ揭ケタル云々」トアルヲ「又ハ辨濟ノ節ニ揭ケタル云々」ト改メマス本條ハ修正ニ決ス
第三百八十六條朗讀ス
第三百八十六條 眞ノ債務者ヨリ眞ノ債權者ニ辨濟ヲ爲シタル場合ニ於テハ債務者カ其負擔シタル物ニ異ナル性質ノ物又ハ自己ニ屬セサル物ヲ錯誤ニ因リ辨濟トシテ與ヘタルトキニ非サレハ其取戾ヲ許サス
或ハ期限ニ先タチテ辨濟ヲ爲シ或ハ辨濟ヲ實行ス可キ場所外ニ於テ辨濟ヲ爲シ或ハ約束シタル物ニ異ナル品質、品格若クハ價格ノ物ヲ以テ辨濟ヲ爲シタルトキモ亦其取戾ヲ許サス但當事者ノ一方ノ錯誤ニ出テタルトキハ其一方ハ爲メニ受ケタル損失ヲ他ノ一方ノ得タル利益ノ割合ニ応シテ賠償セシムルコトヲ妨ケス
(村田委員)
品質品格ハドウカ
(委員長)
眞鍮ノ處ヘ金ヲヤツテモ取回スコトハ出來ヌト云フノダロウ
(栗塚委員)
元トノデ讀ムト品質格ノ方デナク直打ト云フ意味ノ方デアリマスカラ
(元尾崎委員)
大キサト云フコトデ大キイト云フ意味デハナイ
(栗塚委員)
利害ヲ持ト云フ「インテレスト」ト云フ利益ト譯シタト同ジデアリマス
(委員長)
良カロウ
本條ハ原案ニ決ス
第三百八十七條朗讀ス
第三百八十七條 第三百八十一條第二號ニ揭ケタル供與ニシテ辨濟ノ性質ヲ有セサルモノニモ亦第三百八十四條ノ規定ヲ適用ス
然レトモ不法ノ原因ノ爲メ供與シタル物又ハ有價物ハ其原因カ之ヲ供與シタル者ノ方ニ於テ不法ナルトキハ其取戾ヲ許サス
(栗塚委員)
之モ修正ハ御座イマセン
本條ハ原案ニ決ス
第三百八十八條朗讀ス
第三百八十八條 第三百八十一條第二號ニ揭ケタル供與ヲ惡意ニテ領受シタル者ハ其不當ニ得タル物ノ外ニ尙ホ左ノ物ヲ返還ス可シ
第一 元本ヲ領受セシ時ヨリノ適法ノ利息
第二 特定物ノ果實及ヒ產出物但其收取ヲ怠リタルトキト雖モ亦同シ
第三 自己ノ過失又ハ懈怠ニ因ル物ノ滅失又ハ毀損ノ替償縱令其滅失又ハ毀損カ意外ノ事又ハ不可抗ノ力ニ因ルモ其物カ供與者ノ方ニ在ルニ於テハ此損害ヲ受ケサリシトキハ亦同シ
(栗塚委員)
「替償」ト云フ字ハ元トノ通リ「償金」ト改メタイ
(元尾崎委員)
賠償トハ往カンカ
(委員長)
償金ト云フハ同ジダロウ
(淸岡委員)
償金ト定メルト穩カデナイ
(南部委員)
物ガ滅失毀損シタラ金デナケレバ許サンカラ
(元尾崎委員)
損害賠償ハ大體金デス
(槇村委員)
償金デ良イカ
(委員長)
受クベカラザリシデナケレバ分ランガ良イカ
(栗塚委員)
在ルニ於テハ受ケザリシ、カ
(南部委員)
之デハ足ランネ
(栗塚委員)
アツタラ受ケナカツタノデシヨウ、在ルニ於テハ受ケザリシ、デ受ケザルベカリシト云ハナケレバナランノデ、受ケザル筈デアツタガ此方ヘ來テ受ケタト云フノデアリマスカラ受ケザルベカリシト云フノデス
(委員長)
受ケンデアツタロウ筈ニト云ハナケレバナラン
(栗塚委員)
少シ盡サンカモ知レン
(元尾崎委員)
受ケザル可カリシデ良シイ
(栗塚委員)
ソウヤリマシヨウ
(委員長)
「トキ亦同シ」トシテ良シイ
(南部委員)
「ハ」ノ字ハイラン
(委員長)
ソレデハ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ「替償」ヲ「償金」ト改メ「受ケサリシトキハ亦同シ」ヲ「受ケサルヘカリシトキ亦同シ」ト改メ其他原案ニ決ス
第三百八十九條朗讀ス
第三百八十九條 不當ニ領受シタル物カ不動產ニシテ且之ヲ第三者ニ讓渡シタルトキハ初ノ引渡人ハ其選擇ヲ以テ或ハ第三占有者ニ對シテ回復ヲ訴ヘ或ハ領受者ニ對シテ取戾ヲ訴フルコトヲ得
善意ナル領受者ニ對シテハ單ニ不動產ノ讓渡代金ヲ取戾シ又ハ其代金ニ關スル訴權ヲ要求シ惡意ナル領受者ニ對シテハ其評價額ノ替償ヲ取戾スコトヲ得
(栗塚委員)
本條ノ終リ「其評價額」ト云フノヲ「其代金ヲ評價ニテ取戻スコトヲモ得」ト致シマシタ
(北畠委員)
「モ」ノ字ハヲカシイ
(村田委員)
「モ」ノ字ハイラン
(南部委員)
先達テ大變論ガアツテ、評價ガ安カツタトキハドウカト云フ論ガアツタカラ「ヲモ」ト加ヘタノデアリマス
(松岡委員)
評價額デ往クコトモ出來ルト云フノダ
(栗塚委員)
左樣デス爾カモト云フ字ガアルノデス
本條ハ末項「其評價額」云々ヲ「其代金ヲ評價ニテ取戻スコトヲモ得」ト改メ其他原案ニ決ス
第三百九十條朗讀ス
第三節 不正ノ損害
第三百九十條 過失又ハ懈怠ニ因リテ他人ニ損害ヲ加ヘタル者ハ其賠償ヲ爲ス責ニ任ス
其損害ノ所爲カ有意ニ出テタルトキハ其所爲ハ民事ノ犯罪ヲ成シ無意ニ出テタルトキハ其所爲ハ民事ノ犯罪ヲ成シ無意ニ出テタルトキハ准犯罪ヲ成ス
犯罪及ヒ准犯罪ノ責任ノ輕重ハ契約ノ履行ニ於ケル詭譎、及ヒ過失ノ責任ノ輕重ニ關スル次章第二節ノ規定ニ從フ
(栗塚委員)
有意ニ出タルト無意ニ出タル、ハ初メノ通リ「有意ナルトキ」「無意ナルトキ」ガ良シイト思フ、蹈込過ギタヨウナ文字丈ケデアリマスガ願ハクハソウシタイ、ソレカラ末項デ詭譎及ビ過失ノ責任ノ輕重ニ關スル一ハ「責任ノ輕重過失ノ責任ニ歸スル」デ良シイノデス
(元尾崎委員)
有意ニ出デタルガ良シイ
(村田委員)
「准犯罪」ハ刪リマシヨウ
(南部委員)
題號ダカラ刪テモ良カロウ
(松岡委員)
良カロウ
(北畠委員)
卽チ以下ヲ刪ルノダネ
(粟塚委員)
左樣デス
(委員長)
先キヘヤリマシヨウ
本條ハ卽チ「犯罪及ヒ准犯罪」ヲ刪リ原案ニ決ス
第三百九十一條朗讀ス
第三百九十一條 何人ヲ問ハス自己ノ所爲又ハ懈怠ヨリ生スル損害ニ付キ其責ニ任スルノミナラス尙ホ自己ノ威權ノ下ニ在ルモノヽ所爲又ハ懈怠及ヒ自己ニ屬スル物ヨリ生スル損害ニ付キ下ノ區別ニ從ヒテ其責ニ任ス
(元尾崎委員)
之ハ良シイ
本條ハ原案ニ決ス
第三百九十二條朗讀ス
第三百九十二條 父權ヲ行フ尊屬親ハ己レト同居スル未成年ノ卑屬親ノ加ヘタル損害ニ付キ其責ニ任ス
後見人ハ己レト同居スル受後見人ノ加ヘタル損害ニ付キ其責ニ任ス
瘋癲者ノ看守人ハ瘋癲者ノ加ヘタル損害ニ付其責ニ任ス
敎師師長又ハ工場長ハ未成年ノ生徒、徒弟又ハ職工カ自己ノ監督ノ下ニ在ルノ間ニ加ヘタル損害ニ付キ其責ニ任ス
本條ニ指定シタル責任者ハ損害ノ所爲ヲ防止スル能ハサリシコトヲ證明スルトキハ其責ニ任セス
(栗塚委員)
「白痴」ト云フ字ヲ入レマシタ
(村田委員)
大槪瘋癲ハ白痴ダ
(淸岡委員)
白痴人ニ看守人ヲ付ケルハ餘リナイネ
(北畠委員)
ソレダカラ刪テアルノデ瘋癲者バカリデ宜シイ
(栗塚委員)
瘋癲ト云フト亂暴スル者ト見ルノデシヨウ
(村田委員)
瘋癲ハ危險ダカラネ
(元尾崎委員)
白痴者ハ危險デモナイネ
(西委員)
看守人トナツテ居ルハ保管者トナツテ居ルト思フガ、保管者ト似テ居ルヨウダ
(村田委員)
保管者ハ預リ人ダネ
(栗塚委員)
看守人トシタハ惡イカモシレン看守シテ居ル者ガデス
(北畠委員)
直接ニ瘋癲者ニ付テ居ル奴ダネ
(南部委員)
訴訟法ニ保管ト云フガアリマス
(栗塚委員)
馬鹿ガ居ルドンナコトヲスマイモノデモナイカラ番ヲシテ居ルノデス
(西委員)
治罪法ノ中ノ民事擔當人ノ内ニ保管者トアル
(栗塚委員)
白痴ヲ入レルヤ否
(槇村委員)
白痴ハ入レルガ宜シイ
(尾崎委員)
私ハ入レン方デス
(南部委員)
入レル方ガ良シイ
(栗塚委員)
惡意ガナクトモ畠ヲ荒シタリスル奴ガ在ルカモ知レン看守人ハ「保管スル者」カ
(西委員)
「保管人」ガ良シイ
(北畠委員)
白痴瘋癲ト云フコトハナイ
(村田委員)
皆瘋癲白痴ダ
(栗塚委員)
ソレカラ「師長」ハ「師匠」ト謂ヒタイノデアリマス
(委員長)
「師匠」ハ良イダロウ
(栗塚委員)
ソレカラ「徒弟」ハ「習業者」トシマシタ
(松岡委員)
商法デモ「習業者」トナツタ
(委員長)
師匠ハ良イガスルト習業者ハドウカ
(栗塚委員)
ソレデハ「徒弟」デモ良シイ
(元尾崎委員)
未成年ノ徒弟習業者トシテドウカ
(南部委員)
師匠ニ對スルノデアリマス
(松岡委員)
習業者デ宜シイ、徒弟ト云フト坊主ノ弟子見タ樣ダカラ商法デモ改メマシタ
(槇村委員)
習業者デ宜シイ
(松岡委員)
良カロウ
(粟塚委員)
末項ハ「本條ニ指定シタル責任者」トアリマスガ之ヲ「本條ノ責任アル者ハ」トシマス
(松岡委員)
良カロウ
(元尾崎委員)
「本條ノ責任アル者」ハヲカシイ矢張之ガ良シイ
(大尾崎委員)
元トノ通リガ良シイ
(委員長)
之デ良シイ
(松岡委員)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ第三項以下左ノ如ク改ム
瘋癲白痴者ヲ保管スル者ハ瘋癲白痴者ノ加ヘタル損害ニ付キ其責ニ任ス教師師匠又ハ工場長ハ未成年ノ生徒習業者又ハ職工カ自己ノ監督ノ下ニ在ルノ間ニ加ヘタル損害ニ付キ其責ニ任ス本條ニ指定シタル責任者ハ損害ノ所爲ヲ防止スル能ハサリシコトヲ證スルトキハ其責ニ任セス
第三百九十三條朗讀ス
第三百九十三條 主人、親方又ハ工事、運送等ノ營業人若クハ公私ノ事務所ハ其使用人、職工、又ハ屬員カ受任ノ職務ヲ行フ爲メ又ハ之ヲ行フニ際シテ加ヘタル損害ニ付キ其責ニ任ス
(栗塚委員)
主人及ビ親方「又ハ主人親方」ハ日本デハ主人ノ中ヘ這入ルト云フ
(元尾崎委員)
兩方アルネ
(村田委員)
主人親方ハ良イ
(委員長)
相撲取ノ梅ケ谷ノコトヲ親方ト云フカ此方デハ主人ト言ハン
(元尾崎委員)
大工ハ親方ダネ
(松岡委員)
アレハソウダ併シ材木屋ヘ鳶ノ者ヘ行テ材木ヲ揚ゲ下シスルガ親方デス、之ハ良シイ
本條ハ原案ニ決ス
第三百九十四條朗讀ス
第三百九十四條 動物ノ加ヘタル損害ノ責任ハ其所有者又ハ損害ノ時ニ於ケル其使用者ニ歸ス但其損害カ意外ノ事又ハ不可抗ノ力ニ出テタルトキハ此限ニ在ラス
(栗塚委員)
「不可抗ノ力」トアルハ「不可抗力」デアリマス
(村田委員)
元トノ儘ダネ
(元尾崎委員)
今蒸汽車ノ通ルハ不可抗力ト云ヘルカ
(村田委員)
不可抗力デアリマス
(元尾崎委員)
良シイ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ「不可抗ノ力」トアル「ノ」ノ一字ヲ刪リ原案ニ決ス
第三百九十五條朗讀ス
第三百九十五條 建物其他ノ工作物ノ所有者ハ此等ノ工作物ノ崩頽カ修繕ノ欠缺又ハ築造ノ瑕疵ノ結果ニ出テタルトキハ其崩頽ニ因リテ加ヘタル損害ノ責ニ任ス但此末ノ場合ニ於テハ築造營業人ニ對スル求償權ヲ妨ケス
堤防ノ破潰ニ因リ、投錨若クハ繋纜ノ粗忽ニ因リ又ハ樹木、柱竿、目隱、看板、屋瓦其他堅牢ヲ缺ケル建物ノ部分ノ崩頽墮落ニ因リテ加ヘタル損害ニ付テモ亦同シ
(栗塚委員)
「瑕疵ノ結果ニ出テタル」ハ「瑕疵ニ出テタル」トシタイ蓋シ崩頽ガ瑕疵ヨリ出デタル意味デアリマスカラ、出デタル結果デアリマス
(松岡委員)
左樣
(槇村委員)
之ハ分ル
本條ハ第一項「ノ結果」ノ三字ヲ刪リ其他原案ニ決ス
第三百九十六條朗讀ス
第三百九十六條 旣脫後見ナルト否トヲ問ハス未成年者ハ其有意又ハ粗忽ニテ加ヘタル不正ノ損害ニ付テハ刑事上責任ヲ免カル可キトキト雖モ民事上責任アリト宣言セラルヽコト有リ
又右未成年者ハ其使用人若クハ屬員又ハ自己ニ屬スル物ノ加ヘタル損害ニ付キ民事上其責ニ任セシメラルヽコト有リ但後見人ニ對スル求償權ヲ妨ケス
(元尾崎委員)
未成年者ガ現在惡イコトヲシタラ矢張責ニ任ズルノダネ
(栗塚委員)
左樣デス
(元尾崎委員)
後見人ニ對スル求償ハ誰ガ求ムルカ
(栗塚委員)
子供ガデス
(南部委員)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第三百九十七條朗讀ス
第三百九十七條 前數條ノ場合ニ於テ加害者ニ責任アリト認ムルトキハ裁判所ハ之ニ對シテ主タル裁判ヲ言渡シ且民事擔當人ノ從タル義務ノ廣狹ヲ定ム但民事擔當人ハ犯罪者ニ對シテ當然求償權ヲ有ス
民事擔當人ハ法律ニ特定シタル場合ニ非サレハ犯罪人ノ言渡サレタル罰金ノ責ニ任セス
(栗塚委員)
「義務ノ廣狹」ト云フ字ガアリマスガ、前ニ「輕重」トヤリマシタガ何方カ一ニシタ方ガ良シイ何方ヲ用ヒテモ良シイ
(松岡委員)
「輕重」ガ良シイ
(村田委員)
「犯罪者」ハ「加害者」ダネ
(松岡委員)
上ハ輕イガ良イ下ハ刑法上ノバカリダカラ犯罪者デ良シイ
(南部委員)
分ルトオカシイ
(元尾崎委員)
惡イ事ヲシタ者デ卽チ兇行者デス
(栗塚委員)
後ヲ犯罪者トヤリマシヨウ
(槇村委員)
良カロウ
(元尾崎委員)
良カロウ
本條ハ「犯罪人」トアルヲ「犯罪者」トシ其他原案ニ決ス
第三百九十八條朗讀ス
第三百九十八條 本節ニ定メタル總テノ場合ニ於テ數人カ同一ノ所爲ニ付キ責ニ任シ各自ノ過失又ハ懈怠ノ部分ヲ知ル能ハサルトキハ其義務ハ併同ナリ
(元尾崎委員)
「併同」ハドウカ
(栗塚委員)
斯ウヤリマシタ「懈怠ノ部分ヲ知ル能ハサルトキハ各自其全部ノ義務ヲ負擔ス」トシマシタ
(淸岡委員)
連帶ガ良シイ
(栗塚委員)
連帶デハナイ其所ハ注意シテ書イタノデス
(元尾崎委員)
各自其全部ヲ負擔ダカラ連帶ダ
(南部委員)
ソレデハ「併同」ガ良シイ
(淸岡委員)
「併同」ト云フハ餘リナイネ
(三島委員)
連帶デハ分ラント云フノデソレデ連帶ノ不十分ナ字ヲ拵イヨウト云フノデアリマス
(南部委員)
連帶ハ代理ガ出來ルカ之ハ代理ガ出來タノデス
(栗塚委員)
他ノ人ノ代理ヲシテ拂フノデ三人連帶デ借リタラ一人ニ促サレルカ處ガ此法律上不十分ナ併同ト云フモノハ全部ノ義務ト致シテ居ル、三人デ一軒ノ家ヲ借リテ出火シテ家ヲ燒タソレハ誰ガシタカ分ラントキ一人ガ責ヲ負ハナケレバナラン誰ガ負フカ、甲乙丙ナラ甲モ訴ヘラレ乙モ亦訴ヘラルルソレハ併シナガラ連帶義務デハナイ、ト云フノデアリマス
(元尾崎委員)
結果ハ同ジデアロウ
(南部委員)
別ダト書イテアリマス
(松岡委員)
連帶トハ違テ居ルノダ
(元尾崎委員)
三人ノ内誰ヘモ行カルルノダカラ連帶モ同ジダ
(南部委員)
獲得篇ニ分ケテアリマスカラ
(北畠委員)
「合同一致」ト云フ方ガ良シイ
(三島委員)
「合同」デモ「併同」デモ良シイ連帶トハ違タ字ヲ拵イテ置キ度ト云フノデコンナ字ヲ拵イタノデス
(南部委員)
連帶トハ大變違テ居ル
(松岡委員)
先ヘ行クト分ル
(南部委員)
此所デ論ズルト六ケ敷
(槇村委員)
良カロウ
(元尾崎委員)
義務一體ナリト云テハドウカ
(松岡委員)
全部ナリト云フハ「ボアソナード」ガ直シタカ
(粟塚委員)
千七十四條ニ全部辨濟ノ義務ト謂テ四款ガ出來テ居リマス乃デ此所ヲ引テ居ルノデアリマス
(大尾崎委員)
一體ナリ、デスネ
(元尾崎委員)
連帶デモソウデス
(栗塚委員)
今日迄ハ不完全ナル連帶ト譯シタノデアリマス
(北畠委員)
其義務ハ一體ナリトヤツテ置クカ
(栗塚委員)
法學上ノ研究カハ知レンガ充分ナル連帶ト不充分ナル連帶ト云フモノガアルノデス
(元尾崎委員)
根元ガ違フノデ、ダカラ違フヨウニ見ヘルガ結果ハ同ジダ
(栗塚委員)
「能ハサルトキ各自其全部ノ義務ヲ負擔ス」トヤリマス
(槇村委員)
ソレガ良シイ
(栗塚委員)
先キニ三百九十八條ノ何々ト云テアリマス
(西委員)
「全部ニ付」トヤツテハ如何
(槇村委員)
ソレガ良シイ
(元尾崎委員)
ソレガ良シイ
(村田委員)
義務ノ全部ダネ
(栗塚委員)
各自ガ全部ニ付義務ヲ負擔スルノデ各自ガ過失懈怠ノ部分ヲ知ルコトガ出來ヌカラ殘ラズノ部分ニ付各ニ義務ヲ負擔スルト書キ後デ事柄ヲ示シタノデアリマス
(南部委員)
全部ノ義務ト云フト其全部トハ違フデシヨウ
(栗塚委員)
事柄ハ同ジデシヨウ、過失懈怠カラ生ジタ全部デス
(南部委員)
過失懈怠ノ部分ヲ知ルコトガ出來ヌトキ幾ツモアル全部ニ付キ義務ヲ負擔スルノデ辨濟ノ全部ト云フ辨濟ノ義務ノ全部ニナルゼ少シ違フ
(栗塚委員)
義務ノ全部デナイ全部ヲ拂フ義務デ過失懈怠ノ全部ヲ拂フ義務デス
(南部委員)
過失ガアツテソレガ賠償ガ起テ來ル賠償ノ全部ト云フト所爲ノ全部ト言ヒ詰メレバ同ジカハ知レンガ少シ差ガアリハセンカ
(栗塚委員)
各自全部ニ付辨濟スル義務ダカラ、各自全部ニ付義務ヲ負擔スル、デ良カリソウナモノデス
(元尾崎委員)
「其」ト云フ字ヲ刪テ仕舞カ
(栗塚委員)
左樣
(元尾崎委員)
治リガ付ケバ良シイ
(槇村委員)
良シイ
(村田委員)
各自ガ全部ニ付出シ合タガ假令バ五人居レバ十圓ヅツナレバ皆全部出スヨウダガ、銘々全部ヲ出サナケレバナランヨウニ見ヘル
(栗塚委員)
各自全部ニ付連帶ナク其義務ヲ負擔ストヤルカ
(元尾崎委員)
ソレハ分ラン
(大尾崎委員)
之デ良カロウデハナイカ
(栗塚委員)
彼等ノ義務ハ連帶ニヤラズシテ全部ナリト此度直シタノデアリマス何ノコトカ分リマセン
(西委員)
ソレハ分リマセン
(栗塚委員)
各自全部ニ付義務ヲ負擔ス、デハ如何
(南部委員)
良シイ
(元尾崎委員)
良シイ
(委員長)
良シイ
本條ハ「其義務ハ併同ナリ」ヲ「各自全部ニ付義務ヲ負擔ス」ト改メ其他原案ニ決ス
第三百九十九條朗讀ス
第三百九十九條 民事ノ犯罪又ハ准犯罪カ刑事ノ犯罪ヲ成ストキハ犯罪人ニ付テモ民事擔當人ニ付テモ刑事訴訟法ヲ以テ定メタル民事訴訟ノ管轄及ヒ時效ニ關スル規則ヲ適用ス
(元尾崎委員)
刑事訴訟法ト云フノハ治罪法ノコトカ
(栗塚委員)
左樣デス
(元尾崎委員)
ナゼ治罪法ト云ハンカ
(栗塚委員)
構成法ニモ刑事訴訟法ト使タカラデス之ガ出マシタ曉キニハ從來ノ治罪法ヲ刑事訴訟法ト改メナケレバナラント思フ
(南部委員)
良シイ
(渡委員)
良シイ
(栗塚委員)
此所ハ犯罪人デ置キマスカ
(南部委員)
矢張犯罪者デス
本條ハ「犯罪人」ヲ「犯罪者」ト改メ其他原案ニ決ス
第四百條朗讀ス
第四節 法律ノ規定
第四百條 或ル義務ハ人ノ所爲ニ拘ハラス法律ニ依リテ之ヲ負擔セシム卽チ左ノ如シ
第一 或ル親屬間又ハ或ル姻屬間ノ養料ノ義務
第二 後見ノ義務但法律上免除ヲ得サル場合ニ限ル
第三 共有者間ノ義務
第四 相隣者間ノ義務但地役ヲ成サヽルトキニ限ル
此等ノ義務ニ特別ナル規則ハ其各事項ニ於テ之ヲ揭ク
(栗塚委員)
本條ハ修正ヲ今村カラ提シテアリマスガ我々ハ之デ良イト云フ四百條一項中現在ノ二字ヲ刪ルト云フ
(松岡委員)
之デ良イダロウ
(南部委員)
留保ノ理由ハ
(栗塚委員)
地役ノ所デシヨウ
(元尾崎委員)
「共有者間ノ義務」ト云フハドウ云フ譯ケカ
(栗塚委員)
一ツノ家ヲ大勢デ持テ居ルノデス
(槇村委員)
一二三ハ良シイ
(元尾崎委員)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第四百一條朗讀ス
第二章 義務ノ效力
總則
第四百一條 義務ノ主タル效力ハ下ノ第一節第二節及ヒ第三節ニ定メタル區別ニ從ヒ其義務ヲ直接ニ履行セシムル爲メ又不履行ノ場合ニ於テハ從トシテ損害ヲ賠償セシムル爲メノ訴權ヲ債權者ニ與フルニ在リ
右ノ外義務ノ效力ハ第四節ニ定メタル義務ノ諸種ノ體樣ニ從ヒテ其廣狹ヲ異ニス
(栗塚委員)
「廣狹」ハ「輕重」ト直シタイ「從」トシテハ「附隨」トシマス
(槇村委員)
「廣狹」ガ良シイ
(元尾崎委員)
「廣狹」ガ良シイ
(大尾崎委員)
「廣狹」ガ良シイ
(村田委員)
九十條ハ輕重ガ良シイ此所ハ「廣狹」デ良シイ
(南部委員)
矢張「廣狹」デ良シイ
(栗塚委員)
何方デモ良シイナラ一ケ所輕重一ケ所廣狹デ良シイデシヨウ
(北畠委員)
良シイ
(委員長)
「廣狹」トシテ往カンコトハナイダロウ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ「從トシテ」ヲ「附隨トシテ」ト改メ其他原案ニ決ス
第四百二條朗讀ス
第一節 直接履行ノ訴權
第四百二條 義務ノ本旨ニ從ヒテ直接ノ履行ヲ債權者ヨリ請求シ且債務者ノ身體ヲ拘束セスシテ履行セシムルコトヲ得ル場合ニ於テハ裁判所ハ其直接履行ヲ命スルコトヲ要ス
引渡ス可キ有體物ニシテ債務者ノ財產中ニ在ルモノニ付テハ裁判所ノ威權ヲ以テ差押ヘ之ヲ債權者ニ引渡ス
作爲ノ義務ニ付テハ裁判所ハ債務者ノ費用ヲ以テ第三者ニ之ヲ作爲セシムルコトヲ債權者ニ許スコトヲ要ス
不作爲ノ義務ニ付テハ其義務ニ背キテ作爲シタルモノヲ債務者ノ費用ヲ以テ毀壞セシメ及ヒ將來ノ爲メ適當ノ處分ヲ爲スヲ債權者ニ許スコトヲ要ス
此等ノ場合ニ於テ損害アリタルトキハ其賠償ヲ爲サシムルコトヲ妨ケス
債務者ニ對スル強制執行ノ方法ハ民事訴訟法ヲ以テ之ヲ規定ス
(元尾崎委員)
之ハ良シイ
(栗塚委員)
第三項ノ「作爲ノ義務ニ付テハ裁判所ハ債務者ノ費用ヲ以テ第三者ニ之ヲ行ハシムルコトヲ許ス」トシソレカラ「不作爲ノ義務ニ付テハ其義務ニ背キテ爲シタルモノヲ」トシマシタ
(委員長)
良シイ
(栗塚委員)
ソレカラ前ニ「爲サシムルコトヲ要ス」トソレカラ「義務ノ方式ニ從フテ」トアリマスガ義務ノ方式及ビ實際ニ從ヒハドウ云フ事柄ヲ指スカト云フニ能ク式ニ適タ正シイ事柄ト云フノデス
本條ハ第三項「作爲セシム」ヲ「爲サシム」トシ「コトヲ要ス」ヲ刪リ第四項「作爲シタル」ヲ「爲シタル」トシ其他原案ニ決ス
第四百三條朗讀ス
第二節 損害賠償ノ訴權
第四百三條 債務者カ義務履行ヲ拒絕シ又ハ義務履行ノ不能カ其責ニ歸ス可キ場合及ヒ義務履行ノ遲延シタルノミノ場合ニ於テモ債權者ハ強制執行ヲ得サルトキハ債務者ヲシテ損害賠償ヲ爲サシムルコトヲ得
法律ヲ以テ損害賠償ノ額ヲ定メタル場合ノ外當事者之ヲ定メサリシトキハ下ノ區別及ヒ條件ニ從ヒ裁判所之ヲ定ム
(南部委員)
之ハ良シイ
(渡委員)
良シイ
(元尾崎委員)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第四百四條朗讀ス
第四百四條 損害賠償ハ債務者カ第三百五十六條ニ從ヒ遲滯ニ付セラレタル後ニ非サレハ之ヲ負擔セス
然レトモ不作爲ノ義務ニ於テハ債務者ハ常ニ當然遲滯ニ在リ犯罪ニ因リ他人ニ屬スル金錢其他ノ有價物ヲ返還スルノ責ニ任スル者モ亦之ニ准ス
(委員長)
五百六十二條ノ末項ヲ此ニ移スノカ
(栗塚委員)
之ハ良クナイ第五百六十二條ノ末項ガ御手許ニアルカ知レンガ卽チ此項デスガ謂テ居ル事柄ガ違フノデ損害賠償ト云フモノヲ負擔スルノト犯罪ニ因テ人ノ物ヲ取タ金ヲ返スノデアリマスカラ
(松岡委員)
賠償スル人ガ違フノデアリマス
(南部委員)
五百六十二條ニハ兩方ノ場合ガ包含シテ居ル此度ハ半分丈ケ取テ後ハ殘ルヨウニナルノカ
(栗塚委員)
五百六十二條ノ末項ヲ此ヘ持テ來ルト損害賠償ヲ出スノハ催促ヲ受ケテカラ出スソレハ犯罪デ人ノ物ヲ取テカラ返スノハ催促ヲ受ケンデモ返サナケレバナラント云フコトニ讀ンデ居ルガ違フカラ彼所ニ置イテ良イト思ヒマス
(南部委員)
損害賠償ノ訴權ダカラネ
(栗塚委員)
盜人ガ金ヲ取タラ返サナケレバナランコトハ訴權ノ中ヘ入レルノハ工合ガ惡イ、犯罪ノ日ヨリ害ヲ蒙ラシテ賠償スルモノハト云フカラ良シイ取タ物ヲ返スノダカラ加ヘラレナイ方ガ良シイ
(元尾崎委員)
原文ニアルカ
(栗塚委員)
ナイノデス四百四條ハ五百六十二條ノ末項ヲ移ス議ハ起案者ト問答シテ同意ヲ得タト云フガ之ハ穩カデハ御座イマセン
(元尾崎委員)
ドウ云フモノデス
(南部委員)
遲滯ニ因リテトアルカラデス
(元尾崎委員)
當然遲滯ニアリトシテ後ハ刪ロウデハナイカ損害賠償ハ遲滯カラ生ズルノダカラネ
(淸岡委員)
五百六十二條ハ犯罪ノ爲メ他人ノ物ヲ返還シ當然遲滯ニ付ストアルノダカラネ
(委員長)
準ズト云フト今一ツ先キノコトダネ
(南部委員)
他人ノ物ヲ返スノト損害賠償スルノトアルノデ此ハ損害賠償ノ條ダカラ損害賠償ノコトバカリ謂タカト思フ物ヲ返スコトハナクナツテ仕舞併シナガラ物ヲ返スノハ付遲滯デアルト云フノ論デシヨウ他人ノ物ヲ盜メバ催促ヲ受ケンデモ當然初メカラ遲滯ノアルモノト云フ論ダロウソレナラ成程良シイ
(松岡委員)
不正デ取テ居ルカラ遲滯シタ迄取ラルル遲滯ノコトヲ云フカラ之ハ良シイダロウ
(委員長)
起案者ガ同意シタナラ良シイデハナイカ
(淸岡委員)
爲ス可カラザルコトガ常ニ遲滯ニ在ルト
(松岡委員)
此ハドウ云フモノガ遲滯ト云フコトヲ並ベタノダカラ之ハ良シイ
(栗塚委員)
當然遲滯ニ在リト云フヲ示スノダロウガケレドモ此デハ損害賠償ヲ云フ事柄ヲ以テ他人ノ物ヲ取テ返ス義務ハ遲滯ニ在ルト云フニハ及バント云フガ異議ヲ唱フル所以デアリマス
(淸岡委員)
之デ良カロウデハナイカ
(栗塚委員)
ソレデハ之デ置キマシヨウ
(南部委員)
盜人ノ罪デモ催促シナイト遲滯ニナルト云フノハオカシイカラネ
(委員長)
ソレナラ置クコトニシマシヨウ
(栗塚委員)
「任スル」ノ「任」ノ字ガ脫ケタカラ御入レナスツテ下サイ
本條ハ第二項「責ニ」ノ下「任」ノ一字ヲ脫スルニ付之ヲ加ヘ其他ハ原案ニ決ス
第四百五條朗讀ス
第四百五條 損害賠償ハ債權者ノ受ケタル損失ノ替償及ヒ其失ヒタル利得ノ塡補ヲ包含ス
然レトモ債務者ノ惡意ナク懈怠ノミニ出テタル不履行又ハ遲延ニ付テハ損害賠償ハ當事者カ契約ノ時ニ豫見シ又ハ豫見スルヲ得タル損失ノ替償及ヒ利得ノ塡補ノミヲ包含ス惡意ノ場合ニ於テ豫見スルヲ得サル損害カ不履行ノ避ク可カラサル結果タルトキハ債務者其賠償ヲ負擔ス
(栗塚委員)
「替償」ハ「償金」トソレカラ二項ハ「又ハ豫見スルコトヲ得タル損失及ヒ利得ノ喪失」トシマス
(松岡委員)
言詰メルト同ジダネ
(栗塚委員)
違ヒマス「不履行又ハ遲延□ 缺ナク卽チ惡意ナクシテ債務者ノ懈怠ノミスルトキ損害賠償ハ當事者ノ合意ノトキ豫見シ又ハ豫シ得ベカリシ」デス
(松岡委員)
分ラン
(栗塚委員)
何ヲ豫見シタカ塡補ヲ豫見シタカ替償ヲ豫見シタカデス
(松岡委員)
損失利得ヲ豫見ダ
(栗塚委員)
ソウ讀メンノデス
(南部委員)
損失ノ替償ト利得ノ塡補デ塡補ヲ豫見シタトナルデシヨウ
(元尾崎委員)
ソレハ孰レ契約ニ書イテ置クネ損失ハ幾ラト言ハズ賠償ハ幾ラト云フニ違ヒナイ
(南部委員)
金高迄豫見デモ良シイト云フノデス
(元尾崎委員)
金高ヲ云ハンデドウシテ豫見ニナルカ
(南部委員)
損スル迄豫見ニハ及バント云フノデ
(栗塚委員)
塡補ト替償ヲ止メタイ、豫見スル事柄ハ何カ喪失利得ノ損失ト云フノデス
(松岡委員)
未ダ修正ガ完イモノト思フ
(委員長)
豫見スルコトヲ得ルカ
(村田委員)
豫見スルコトヲ得ベカリシデス
(栗塚委員)
「惡意ノ場合ニ於テハ豫見スルヲ得サル損害ト雖モ」デス
(元尾崎委員)
良シイ
(委員長)
良シイ
本條ハ「替償」ヲ「償金」トシ第二項「豫見スルヲ得ヘカリシ損失及ヒ利得ノ喪失ノミヲ包含ス惡意ノ場合ニ於テハ豫見スルヲ得サル損害ト雖モ不履行ノ避ク可カラサル結果タルトキハ債務者其賠償ヲ負擔ス」
第四百六條朗讀ス
第四百六條 損害賠償カ主タル訴ノ目的タルトキハ裁判所ハ金錢ニテ其額ヲ定ム
損害賠償ノ請求カ直接履行ノ訴又ハ契約解除ノ訴ノ從タルトキハ裁判所ハ主タル請求ヲ決スルト同時ニ先ツ數額不定ノ損害賠償ヲ債務者ニ言渡シ其淸算ハ證明ヲ待チテ日後ニ之ヲ爲サシムルコトヲ得
又裁判所ハ債務者ニ直接履行ヲ命スルト同時ニ極度ノ期間ヲ定メ若シ此ヲ過クレハ確定ニ決ス可シトシテ其遲延スル日每ニ又ハ月每ニ若干ノ替償ヲ拂フ可キヲ言渡スコトヲ得此場合ニ於テハ債務者ハ常ニ卽時ノ淸算ヲ請求スルコトヲ得
(栗塚委員)
此所ハ「證明」デ良シイ第三項ノ「又裁判所ハ云々同時ニ極度ノ期間ヲ定メ」トアルニ「其」ノ一字ヲ加ヘマス
(淸岡委員)
「其」ハイランデハナイカ
本條ハ「同時」ノ下「其」ヲ加ヘ「替償」ヲ「償金」トシ其他原案ニ決ス
第四百七條朗讀ス
第四百七條 不履行又ハ遲延ニ關シ當事者雙方ニ非理アルトキハ裁判所ハ損害賠償ヲ定ムルニ付キ之ヲ斟酌ス
(委員長)
良シイ
本條ハ原案ニ決ス
第四百八條朗讀ス
第四百八條 當事者ハ豫メ過怠約款ヲ設ケ不履行又ハ遲延ニ付テノ損害賠償ヲ約束スルコトヲ得
(栗塚委員)
「約束スルコトヲ得」ハ「定ムルコトヲ得」ト元トノ通リニシマシタ
(委員長)
「單ニ」ガナイト遲延ニテガ云ヘン
(元尾崎委員)
「單ニ」ヲ入レテ良シイ
(渡委員)
「單ニ」ヲ入レルガ良シイ
(栗塚委員)
單ニ遲延ハオカシイ
(西委員)
單一ナル遲延ト云ハナケレバナラン
(南部委員)
不履行又ハ遲延ノミデ良シイ
(槇村委員)
ソウシテ置キマシヨウ
本條ハ「當事者ハ豫メ過怠約款ヲ設ケ不履行又ハ遲延ノミニ付テノ損害賠償ヲ定ムルコトヲ得」ト改ム
第四百九條朗讀ス
第四百九條 裁判所ハ過怠約款ノ數額ヲ增スコトヲ得ス又不履行若クハ遲延カ債務者ノ過失ノミニ出テサルトキ又ハ一分ニ履行アリタルトキニ非サレハ其數額ヲ減スルコトヲ得ス
本條ハ原案ニ決ス
第四百十條朗讀ス
第四百十條 雙務ノ契約ニ於テ不履行ニ付テノ過怠約款ヲ設ケタル債權者ハ其解除ノ權利ヲ失ハス但明白ニ其權利ヲ抛棄シタルトキハ此限ニ在ラス
債權者ハ遲延ニ付テノ過怠約款ヲ設ケタルトキニ非サレハ解除ト過怠トヲ併セテ要求スルコトヲ得ス
(南部委員)
之モ矢張遲延ノミニ付テダネ
(槇村委員)
ソウデス
(村田委員)
前ト同ジコトダ
本條第二項遲延ノ下「ノミ」ノ二字ヲ加ヘ原案ニ決ス
第四百十一條朗讀ス
第四百十一條 金錢ヲ目的トスル義務ノ遲延ノ損害賠償ニ付テハ裁判所ハ法律上ノ利息ノ割合ト異ナル額ニ之ヲ定ムルコトヲ得ス但法律ノ特例アル場合ハ此限ニ在ラス
當事者カ損害賠償ノ數額ヲ定ムルトキハ契約上ノ利息ノ最上限以下タルコトヲ要ス
(委員長)
「以下タルコトヲ要ス」カ
(元尾崎委員)
假令バ金ヲ貸テアルト一割ノ利息ヲ制限ノ通リトシテ貸テ居ルト十二月三十日ニ至テ返セ若シ怠タラ利息ノ外損害賠償トシテドレ丈ケ拂ヘト約束シテモ無效ダネ
(村田委員)
無效ニハナラン
(南部委員)
無效ニナル
(松岡委員)
之モ契約上ノ利息法律上ノ利息此度ハ合意上ノ利息ト直サナケレバナランネ
(南部委員)
左樣
(元尾崎委員)
合意上ノ利息ノ最上限ト云フハ「制限規則ノ最上限」トシテハ如何
(栗塚委員)
ソウハ云ヘヌ日本ニハ契約上ノ利息ト云フモノニハ二ト通リアリマス
(元尾崎委員)
利息ノ最上限ト云フハ制限ノ最上限デス契約上ニ最上限ハナイ
(栗塚委員)
アリマス、一割迄行ク法律上デ貸ス利息ハ六朱デス
(元尾崎委員)
法律上ト云フト默テ居テ自カラ生ズルハ六朱デ、アルガ民間ノ相對デハ一割二分迄ハ行ケルト云フノダカラ其最上限ト云フト一割二分ヨリ外ハ制限ハアリマスマイ
(栗塚委員)
ソレデ良シイ
(元尾崎委員)
契約上デ最上限ト云フト限リハアリマスマイ
(栗塚委員)
ソウデナイ制限法中ノデス
(南部委員)
制限法ノ中ニ二ツアル
(大尾崎委員)
ソレデ契約上ノ利息ト云テ居ルノデス
(西委員)
只合意上ノ利息ト改名シタ丈ケデアリマス
(渡委員)
合意上ノ利息ト云ハズ契約上ノ利息ト云テモ良シイ
(栗塚委員)
ソレハ良シイ
(槇村委員)
此所ハ契約上ノ利息ト云テ置キマシヨウ皆合意トシナケレバナランコトハナイ
(村田委員)
契約ノ利息デ良シイ
本條ハ原案ニ決ス
第四百十二條朗讀ス
第四百十二條 債權者ハ右ノ損害賠償ヲ請求スル爲メニ何等ノ損失ヲモ證明スルノ責ニ任セス又債務者ハ其請求ヲ拒ム爲メニ意外ノ事又ハ不可抗ノ力ヲ申立ツルコトヲ得ス
(栗塚委員)
「不可抗ノ」トアル「ノ」ノ一字ヲ刪ル
本條ハ「不可抗ノ」トアル「ノ」ノ一字ヲ刪リ原案ニ決ス
第四百十三條朗讀ス
第四百十三條 遲延利息ヲ生セシムル爲メ債務者ヲ遲滯ニ付スルニハ裁判所ニ其利息ヲ請求シ又ハ債務者ノ特別ノ追認ヲ得ルコトヲ要ス但法律カ當然此利息ヲ生セシメ及ヒ催吿其他ノ行爲ニ因リテ此利息ヲ生セシムルヲ許セル場合ハ此限ニ在ラス
(栗塚委員)
「生セシメ及ヒ催吿」ハ利息ヲ生セシメル場合トソレカラ免ザレル場合ハ二ツアルノデ之ヲ一ツニシタラ生ゼシメト云フハ往カン生セシムル場合ト及ヒ法律カ催吿其他ノト云フノデス
(委員長)
法律ガハイラン
(村田委員)
入レナケレバ分ラン
(南部委員)
元トガ矢張良シイ
(渡委員)
入レヨウ
(委員長)
良シイ
本條ハ「及ヒ」ヲ刪リ「生セシメル場合法律カ催吿ス」トシ其他原案ニ決ス
第四百十四條朗讀ス
第四百十四條 要求スルヲ得ヘキ元本ノ利息ハ塡補タルト遲延タルトヲ問ハス其一ケ年分ノ延滯セル每ニ特別ニ約束シ又ハ裁判所ニ請求シ且其時ヨリ後ニ非サレハ此ニ利息ヲ生セシムル爲メ元本ニ組入ルヽコトヲ得ス
然レトモ家屋又ハ土地ノ貸賃無期又ハ終身ノ年金權ノ年金返還ヲ受ク可キ果實又ハ產出物ノ如キ滿期ト爲リタル入額ハ一ケ年未滿ノ延滯タルトキト雖モ請求又ハ契約ノ時ヨリ其利息ヲ生スルコトヲ得債務者ノ免責ノ爲メ第三者ノ拂ヒタル利息ニ付テモ亦同シ
(栗塚委員)
之ハ餘程良ク出來マシタ
(村田委員)
分ルヨウニナリマシタ
(元尾崎委員)
末項ハ「第三者ニ拂ヒタル利息ニ付テモ亦同シ」ト第三者ニ代テ拂タ其利息ヲ債務者ノ求償權ヲ持テ居ルトキハ矢張利息ガ生ズル譯ケカ
(南部委員)
利息ノ生ズルコトハ一ケ年未滿デモ生ズルノダ
(栗塚委員)
之ハ元金ト云フ字ガ脫ケタノデ甚ダ恐縮デ「免責ノ爲メ第三者ニ排ヒタル元本ノ利息ニ付テモ亦同シ」デアリマス
(大尾崎委員)
良カロウ
(元尾崎委員)
年金權ニ限テ一ケ年未滿デ利息ノ生ズルト云フハ如何ナル譯ケカ外ノ利息ハ一ケ年經ナケレバナランガドウ云フモノカ
(栗塚委員)
利息ヲ生ズルト云フ方ノ話デ一ケ年經ンデハ元金ニ入レルコトガ出來ンノデス
(委員長)
第四行目ノ「此ニ利息ヲ生セシム」「之ニ」ガ入ルカ
(元尾崎委員)
「利息ノ利息ヲ生セシムル」デシヨウ本條ハ末項「利息」ノ下「元本ノ」ノ三字ヲ加ヘ原案ニ決ス
(栗塚委員)
ソレカラ「強暴」ト云フ字デ御座イマスガ三島サンガ箕作サンニモ相談シマシタ
(三島委員)
強暴ト云フ中ニハ危害モ這入テ居ルト云フノデ彼ノ儘ニナツテ居タガ箕作サント相談シテドウナツタカ今日相談シタラ箕作サンモ強暴モ成程極テ居ルカラ何カ考ヘテト云フノデ今村カラモ談シガアツテ不履行ナラ良イト言タト云フコトデアリマスカラソンナラ妨害トヤツテハドウカ妨行ト同樣デアルカラ不履行トヤツタラドウカ孰レモ滿足デナイカラト云フノデ鳥渡ト見ルト妨害トヤツタラドウカト云フノデソウスレバ妨行ヤ強迫ヤ危害ヲモ兼テ仕舞マス
(委員長)
ドノ方モ良シイカ
(松岡委員)
良シイデシヨウ
(栗塚委員)
三百三十四條五條ニモアリマスガ(強暴)ハ「暴害」トナリマスソレカラ末項ニモアリマス
(槇村委員)
「暴害」ガ良シイ
第三百三十四條五條(強暴)ハ「暴害」ト改ム