法律取調委員会 民法草案再調査案議事筆記 第7回乙
参考原資料
- 法律取調委員会 民法草案財產編再調査案議事筆記 , 自 第七回 至 第十回 [国立国会図書館デジタルコレクション]
備考
- 未校正のテキストデータです.
民法財產篇再調査案第七回之乙議事筆記
自第三百十四條至第三百六十四條
明治二十一年十月一日午前第八時三十分開會
(栗塚委員)
一體報吿書ヲ差上ル積リデ御座イマシタガ日ガ足リマセンデ出來マセンカラ議場デ申上ゲマス實ハ削除ニナル建議ハ今村ガ出勤致シマセン迄モ敢テ出シ度イト云フ事デ御座イマシタガ我々ガ削除セヌ理由モ一應意見ヲ申シマシヨウ
(淸岡委員)
之ハ今村ガ調査シタノデスネ
(栗塚委員)
今日ハ私ガ今村ノ代リニナツテ讀ム積リデ御座イマス、其レデ我々ノ意見ノアル所ハ申上ゲマス積リデス
第三百十四條朗讀
第二部 人權及ヒ義務
總則
第三百十四條 人權卽チ債權ハ常ニ義務ト對當ス
義務ハ一人又ハ數人ヲシテ他ノ定マリタル一人又ハ數人ニ對シ或ル物ヲ與ヘ又ハ或ル事ヲ爲シ若クハ爲サヽル事ニ服從セシムル人定法又ハ自然法ノ羈絆ナリ
義務ヲ負フ者ハ之ヲ債務者ト名ツケ義務ニ因リテ利益ヲ得ル者ハ之ヲ債權者ト名ツク
(栗塚委員)
此條デ留保ニナツテ居リマス事ハ自然法ト云フモノヲ民法デ認メルカ認メヌカ、先キニ天然義務ト云フモノヲ認メルカ、認メヌカデ留保ニナツテ居ルト思ヒマス、併シ今村ガ居リマセンカラ何トモ申セマセンガ、自然法ヲ此條ヘ置クカ置カヌカト云フ事デ御座イマス
(松岡委員)
之ハ今村ノ出ル迄待チマスカ
(栗塚委員)
左樣
(松岡委員)
至極宜シイ
(元尾崎委員)
「總般」ハ「一般」ニシ樣
(南部委員)
「一般」ヲ贊成
(栗塚委員)
先キニ一般デ分ラヌ場合ガ二ケ所程出來マス三百五十七條ナドニモアリマス
(西委員)
私モ贊成
(元尾崎委員)
訴訟法ナドハ「總般」ニハ同意セヌト云テ「一般」トシテアル
(栗塚委員)
總理代人ノ處ハ「總理代人」トシテ置ク積リデ御座イマス
(松岡委員)
「一般ノ義務」ト云フノモ可笑シイ
(南部委員)
訴訟法ニモ「一般ノ宥恕減輕」トアル
(三島委員)
通例通リニ御ヤリナサル積リナラ宜シウ御座イマス
(槇村委員)
「諸般」カ
(三島委員)
或ハ「總體」トヤリマシタガ
(淸岡委員)
「全般」カ
(元尾崎委員)
「ジエネラール」ハ「普通」トハ云ヘマセンカ
(栗塚委員)
申セマスマイ
(村田委員)
「一般」トシテ置コウ
(松岡委員)
「人權」ト云テ「義務」ト云フノハ可笑シイ
(栗塚委員)
此處ハ何トモ云ハズシテ一般ノ義務篇デ宜シイノデ御座イマス
(松岡委員)
下ニ「義務」ト云フ字ガ出ルト「人權」ト云フノハ權利一片デ義務ト對當シタ樣ニナル、本文ヘ來ルト債權者ト對當シテアル
(栗塚委員)
起案者モ義務ハ第一部ノ處デ云フタ如クニ物權人權トヲ出シテ彼カラ義務ト云フモノヲ云ヒ出スノハ人權ハ義務ノ裏ダト云フ
(南部委員)
「天然」ハ「自然」ト直シマシタカ
(三島委員)
大槪直シマシタ
(村田委員)
「人權及ヒ義務」トシテ置イテハドウダロウ
(松岡委員)
マダ其方ガ良イカ知レヌ
(元尾崎委員)
「イン、ジエネラール」ト云フノハ人權ト定ツテ居ル、英文ノ意味デハ「一般ノ人權及ヒ義務」ダ
(栗塚委員)
伊太利ニモ佛蘭西ニモ此通リ書イテアル
(槇村委員)
「一般」ヲ削ルカ
(栗塚委員)
削リマス
(村田委員)
初メヘ立返ヘルケレドモ三章ニ「人權卽チ債權」トアレバ分ル事ハ分ル
(松岡委員)
併シ義務ニ對シテ云フトキハ「債權々々」ト云ハヌト「人權」ト云フ語デハ分ラヌ、其レヲ理窟デ突然「債權」ト出シテハ困ルカラ所ニ依テ鹽梅ヲシナイト分ラヌ
(栗塚委員)
自然法ト云フ義務ハ自然義務ノ存廢如何ニ依テ消ヘルカモ知レマセン第二部ノ表題ハ左ノ如ク改ム人權及ヒ義務
本條ハ原案ニ決ス
第三百十五條朗讀
第三百十五條 人定法ノ義務ハ其履行ニ付キ法律ノ許セル諸般ノ方法ニ依リテ債務者ヲ強要スル事ヲ得ルモノナリ
自然ノ義務ニ對シテハ訴權ヲ生セス
法律ハ道德及ヒ宗敎ノ義務ニ干渉セス
(村田委員)
「如キ滅失方法」ト云フ事ガアツタガ彼ガアルト分リ易イ
(松岡委員)
入ラヌ、之ハ詰リ服從セシムルト云フ定義デ宜シイノダ、末項ハ置カナケレバナラヌカ
(栗塚委員)
自然ノ義務ト云フテ之モ縁ガアリマス
(元尾崎委員)
之ハ置イタ方ガ宜シイト思フ
本條ハ原案ニ決ス
第三百十六條朗讀
第一章 義務ノ原因
總則
第三百十六條 義務ハ左ノ諸件ヨリ生ス
第一 合意卽チ契約
第二 不當ノ利得
第三 有意又ハ粗忽ニテ加ヘタル不正ノ損害
第四 法律ノ規定
(松岡委員)
之ハ合意又ハ契約ダロウ
(栗塚委員)
其レデ「合意卽チ契約」トナリマス
本條第一ヲ「合意及ビ契約」ト改ム第三ヲ「不正ノ損害」ト次條ヲ議スル際ニ方リテ改ム
第三百十七條朗讀
第一節 合意及ヒ契約
第三百十七條 合意トハ物權ト人權トヲ問ハス或ル權利ヲ創設シ變更シ又ハ之ヲ消滅セシムルヲ目的トスル二人又ハ數人ノ意思ノ合致ヲ謂フ
合意カ人權又ハ義務ノ創設ヲ主タル目的トスルトキハ之ヲ契約ト名ツク
(栗塚委員)
之ニ付テハ餘程御注意下サラヌト良クナイノハ今村ノ考デハ今日迄「合意」ヲ「約束」ト改メマシタガ合意ト契約ノ二ツヲ無クシ樣ト云フ考ヘデ御座イマス、處ガ御承知ノ如ク之ハ困難ノ事ト考ヘマス、今村ノハ少シ英斷ニ失シテ居リハセヌカ、何處ノ國ノ法律デモ「アグリーメン」ト「コントラクト」トガアル、併シ幾何ノ差ガアルカト云フト義務ヲ生ズル合意ハ契約デ義務ヲ生セザル合意ガ幾ラモアリマス人ニ物ヲヤル契約ノ如キハ義務ヲ生ジハシマセン、其レカラ地役權ヲ上ゲ樣ト云フノモ是レ又契約デナク合意デ御座イマス、合意ト云フノハ大變廣イモノデ何デモ約束ヲ總テ合意ト云フ約束中デ一般ノ權利ヲ與ヘル卽チ人權ヲ生ズルモノヲ契約ト云フ是レハ英國ノ法律モ阿米利加ノ法律モ獨乙モ佛蘭西モ伊太利モ何處デモ云フテアリマスカラ日本ノ民法デ契約バカリニシテ仕舞ヒ合意ヲ皆契約トシテ意味ノ廣イ字ト狹イ字ヲ減ジテ仕舞フノハ穩デナイト思ヒマス、之ハ私ガ申ス迄モアリマセン今村モ說明シ樣ト思ヒマスガ、私ノ申ス事ヲ御採用ニナラナケレバ今村ノ出勤スルヲ待テデモ宜シウ御座イマスガ之ハ民法全體ニ影響シマス、本條ノ二項ヲ削ルト云フモ卽チ其旨意デ御座イマス實際如何ナル不都合ガアルカト云フト是レ迄他國ニ二ツアルニ日本デハ廣イノモ狹イノモナク一ツデ良イト云フノハ一槪ノ論ト思ヒマス
(元尾崎委員)
「合意」ノアル方ガ良カロウト思ヒマス、訴訟法デモ契約ト云フト義務ト云フテ「合意」トシテアル處ガアリマス、假令バ裁判所デ此審問ハ延シテ今度ニシテ貰ラウト云フ、一方デハソウシ樣ト云フノハ卽チ合意デ其レデ「コントラクト」トハ云ヘルガ「アグリーメン」トハ云ヘヌ
(栗塚委員)
何處迄モ「契約」ト云フ字デ日本ノ民法ヲ貫イテ仕舞フト云フノハ穩カデナイト思ヒマス
(渡委員)
削除ノ建議ハ今村カラ出テ居ルノデ御座イマスカ
(栗塚委員)
左樣デス私ノ云フヨリ外ニ意味ガアルカ知レマセンカラ、後ニ今村カラ一應說ヲ出サセル積リデ御座イマスガ
(三島委員)
其レ故ニ是レカラ後チ合意ハ悉ク契約トシテアリマス
(松岡委員)
此處デ云フノハ凡ソ行爲ガ合スルノハ何デモ合意カト云フト權利義務ニ關セヌモノハ契約トハ云ヘマセンガ後ニナルト合意ト云フ事ハ無クテ契約バカリニナルガ、此處デ分ルノハ合意ト云ヲウガ約束ト云ヲウガ、人權又ハ義務ニ關係スルノダ二項削除建議
(栗塚委員)
廣イ事ヲ云フトキハ何處デモ通リマス狹イ字ヲ云フト民法デハ狹イ字デ通ルゾヨ、民法デハ廣イ字ハ無イゾヨト云フカラ極リガ付キマセン、其レハ不穩當ト思ヒマス
(西委員)
ドウモ置キ度イ樣デス
(栗塚委員)
之ハ置クト云フ事ニナレバ約束ハ宜シイカ合意ガ宜シイカト云フコトニナリマス
(元尾崎委員)
「合意」ガ宜シイ
(大尾崎委員)
「合意」ガ宜シイ
(元尾崎委員)
ソウスルト前案ノ第一ノ契約モ合意トシナケレバナラヌダロウ
(粟塚委員)
アレハ契約デ宜シイ
(松岡委員)
此一節ハ「合意」トシナケレバナラヌ
(南部委員)
「契約」デ宜シイ十七條ハ初メ一項ハ合意ヲ說キ消滅ノ契約トハ云ヘヌカラ二項デ消滅ト云フ事ヲ省イテ居ル故ニ合意ト云フ契約ニナル
(松岡委員)
ソウスルト今村ノ說ニ近クナル
(南部委員)
合意ハ廣イカラ何デモ這入ル
(松岡委員)
今賣買ヲシ樣ト云フト之ハ契約ダ、止メ樣ト云フト合意ト云フノハ困ル
(南部委員)
金ヲ借リテ居ルノヲ返ヘシテ仕舞フノハ契約デナイ、消滅卽チ合意ダ
(松岡委員)
合意トハ云ヘヌ
(村田委員)
家ヲ賣渡スト云フハ合意ダ、金ヲ渡スト云フト契約ニナル
(松岡委員)
ソレハ語ヲ作リ過ギル
(南部委員)
其レガ無ケレバ「合意ト名ツク」ト云フタ甲斐ガナイ
(松岡委員)
此區別ハ新規ノ語ヲ定メ過ギル話シデ、賣買スルノハ契約デ賣買ヲ止メルノハ合意ト云フ、訴ヘルトキニ彼ハ合意デ御座イマスト云フテ契約トハ云ハレヌ
(松岡委員)
契約ハ初メルノモ止メルノモ双方ノ意思ノ合致ヲ云フトシテ仕舞フト實際ノ事ニ合ウガ、其レヲ初メルカ變更スルカ消滅スルカト云フノハ合意ト云ハナケレバナラヌ唯初メルト云フ事バカリカ、然カモ其レハ法律上ノ力ガアルト云フ事デ、契約ト云フト一ツノ物ニ付テ二ツノ名ヲ與ヘル困難ガ起ル
(栗塚委員)
併シ其字ヲ是非使ハナケレバナラヌト云フ事ハナイノデス
(松岡委員)
再調査ノ「契約トハ」ト云フノハ「合意」ト云ハナケレバナラヌ
(南部委員)
其レハ止メナケレバナラヌ
(松岡委員)
之ハ今村ノ出ル迄留保ニ願ヒ度イ
(元尾崎委員)
合意ト云フノハ合意デ物ヲ止メタノバカリ合意ト名ヅケラルル事ハナイ、止メルデモナシ止ズデモナシノ合意ガアル、裁判所ヘ出ルニ一方ハ明日ニシテ呉レヌカ云フ一方ガ良シト云ヘバ合意デ殊更ニ義務ガ生ズルト云フ譯デモナシ、ドウモニツアル樣ダ
(村田委員)
第一ノ所ハ「合意」ト云ハナケレバナラヌ
(渡委員)
大體分ツテ居ルガ折角出シタモノダカラ今村ノ出タ上デ決スルガ宜シイ缺席裁判ニナルト遣憾ト思フ
(南部委員)
日ヲ定メテ今村ヲ呼バナケレバナラヌ
(村田委員)
前條第三ノ處ハ三百九十條ガアルカラ准犯罪ト云テ置ケバ上モ合ヒマス、寧ロ「不正ノ損害」ト云ヘバ分ルカ知レヌ
(栗塚委員)
先キデ分リマス
(松岡委員)
「合意又ハ粗忽ニテ加ヘタル」ト云フト第二モ「正當ノ原由ナクシテ」ト云ハナケレバナラヌカラ第二ハ「不當ノ利得」第三ハ「不正ノ損害」デ良カロウ
(北畠委員)
其レガ宜シイ
(西委員)
元ノ儘デ宜シイ
(元尾崎委員)
唯不正ト云フト粗忽ト云フコトガ這入ラヌコトニナルカラ原案デ宜シイ
(村田委員)
三百九十條ニ出テ居マス
(大尾崎委員)
置クガ宜シイ
(槇村委員)
削ル
(淸岡委員)
削ルガ宜シイ
(松岡委員)
其レデハ削ルガ多數ダ
(栗塚委員)
今村カラ理由ヲ書イテ來マシタ「三百十四條十五條ハ自然義務ヲ規定スル迄留保スル、三百十七條ノ二項ハ第二項ニハ佛語ノ「コンハンシヨン」ト「コントラー」ノ二ツノ意義ノ同シカラサルヲ釋ケリ然レトモ此區別ハ語學上ニハ之ヲ唱フル事ヲ得ヘクシテ立法上之ヲ謂ヒ難シ故ニ起案者モ亦自ラ云フ一箇ノ約束ニシテ物權ト人權トヲ合セ生スルトキハ無差別ニ何レノ語ニテモ用フル事ヲ得ヘシト此民法案中總テ此二語ヲ區別ナク用ヒタリ此項ニ於テ此原則ヲ示シ而シテ實ハ之ニ從ハサルトキハ人ヲシテ解スルニ苦マシム且ツ日本ニ於テハ總テ契約ノ一語ニテ足ル故ニ民法中權利義務ヲ生スル約束ハ其物權ヲ生スルト人權ヲ生スルトヲ問ハス又此等ノ權利ヲ消滅セシムルトヲ問ハス總テ契約ト稱ス可シ」トアリマス
(松岡委員)
物權ヲ創設スルトキハ何レデモ構ハヌカ
(栗塚委員)
何レデモ構ヒマセン、物權人權ヲ生ズルトキハ何レデモ構ハヌ
(松岡委員)
唯契約シテ來ルト人權卽チ對人權バカリ生ズルノガ契約デ、其他ハ物權ノ事ニナレバ契約ト云フ名ハ付カヌ、又消滅ト云フ事ニナレバ其レモ契約ノ名ハ付カヌ、餘リ日本語ヲ狹ク括ル樣ニ思フ
(栗塚委員)
人權物權バカリ生ズルト貴君ニ家ヲ賣ルト云フ、其賣ツタト云フノデ貴君ニ引渡ス義務ガアル、貴君ハ金ヲ拂フ義務ガアル
(松岡委員)
其レハ人權ダ
(栗塚委員)
證書ニシタ事ハ合意デ義務ヲ生ズルカラ契約ニナル、貴君ニ物ヲ與ヘル、貴君ニ私ノ家ヲ貸シテ貴君ガ住ンデ居ル、貴君カラ何カ頂戴シタラ唯上ゲ樣ト云フ其トキハ義務ハ生ジナイ、其トキハ契約トハ云ヘナイ何トナレバ何モ義務ヲ生ゼヌカラ然ルニ若シ引渡シノ義務ガアレバ義務ヲ生ズルカラ契約ト云フ、其レダカラ義務ヲ生ゼヌモノハ契約ト云フ字ハ使ハヌ
(松岡委員)
其處ハ如何ニモ細カ過ギル樣ダ
(栗塚委員)
起案者ノ云フテ居ル例ハ或ル義務者ガ居ル、甲ガ乙カラ金ヲ借リテ居ル、甲ハ金ヲ返ヘスニ及バヌト云フノハ合意デアル、其レハ義務ヲ無クシタカラトアリマス、是レ丈ケハ何國ニモアリマスカラ決シテ之モ不都合ハナシ、先キヘ至テ之ハ合意カ之ハ契約カト問フニ及ビマセン、問フタ處デ義務ハ生ゼヌ者ハ契約ト云フテ置ケバ宜シイ事デ御座イマスカラ實際ニ至テハ今村ノ云フ通リデ御座イマス
(渡委員)
矢張リ合意ヲ存スルガ宜シイ
(村田委員)
三百十六條モ「合意又ハ契約」ト直サナケレバナラヌ
(栗塚委員)
「合意及ヒ契約」トシナケレバナラヌ
(元尾崎委員)
合意ハ皆合意デ其中契約ガアル
(西委員)
十六條ハ義務ハ左ノ諸件ヨリ生ズダカラ「契約」デ宜シイ
(元尾崎委員)
合意ト云フノデ全ク義務ガ生ゼヌトハ云ヘマスマイ
(栗塚委員)
生ジマストモ、義務ガ生ズルトキハ特別ノ契約ト名ヅクルト云フノデ御座イマスカラ
(村田委員)
第一ハ「合意及ヒ契約」トシテハドウダロウ
(渡委員)
云ハバ「合意卽チ契約」ト良クナイ「卽チ契約」ナラ何モ二ツ云フニ及バヌ
(村田委員)
原書ハ「及ヒ」トアリマスカ
(栗塚委員)
十六條ハ「又ハ」トアリマス
(南部委員)
十六條ハ「契約」デ宜シイ「契約」デアルノデスカラ「契約」デ宜シイ
(栗塚委員)
其レデ一節ノ處ハ「合意及ヒ契約」トスレバ宜シイ
(渡委員)
十六條ノ一項カラ出テ來ルノデ、其レヲ說クニ「合意及ヒ契約」ト云フノハ良クナイ
(南部委員)
ソウ云フ例ガ幾ラモアリマス、二部「人權及ヒ義務」ト云フ樣ナモノデ、其レガ人權篇物權篇トナツテ居ル
(渡委員)
表題ハ同ジ樣ニシ度イ
(南部委員)
第一節契約三百十七條合意トハ云ヘヌ
(松岡委員)
折衷シテ題號ハ「契約」トシテ十七條ノ本文ヲ「人權ト物權トヲ問ハス之ヲ創設又ハ消滅セシムル」トシタラ良カロウ
(栗塚委員)
「契約トハ人權ノ創設ヲ主タル目的トスル合意ヲ云フ合意トハ」ト云ヘバ宜シイ
(元尾崎委員)
二項ノ所ヲ「契約ト謂フ」トシタラ良カロウ
(委員長)
十六條ハ「合意卽チ契約」トシテ一節ヲ「合意」トスレバ宜シイ
(栗塚委員)
一節ハ「合意卽チ契約」トヤリマシヨウ
(西委員)
ソレデ宜シイ
(栗塚委員)
十七條ヲ「合意トハ」トシテ「約束ハ」ト云フノヲ「合意ハ」ト致シマス二項ハ「目的トスルトキハ之ヲ契約ト名付ク」ト致シマス
(南部委員)
「物權ト人權トヲ問ハス」ト云フノハアル方ガ宜シイ
(村田委員)
アル方ガ良カロウ
(淸岡委員)
「之ヲ」ト云フト合意ニ掛ル樣ニナル
(南部委員)
「或ル權利ヲ」トスルガ宜シイ
(元尾崎委員)
「或ル權利ヲ」デ宜シイ
(松岡委員)
「問ハス」ト云フト「或ル」ト云フノハ可笑シイ
(南部委員)
「一箇ノ權利」トシ樣
(栗塚委員)
「物權ト人權トヲ問ハス之ヲ」トハ申セマセン
(村田委員)
「一箇ノ權利」ガ宜シイ
(南部委員)
「或ル權利」ガ宜シイ
(大尾崎委員)
「或ル權利」ガ宜シイ
(委員長)
「或ル權利」トシ樣
(槇村委員)
二項ハ「人權又ハ義務ノ」トシタラ良カロウ
本條ハ左ノ如ク決ス
第一節合意及ヒ契約第三百十七條合意トハ物權ト人權トヲ問ハス或ル權利ヲ創設シ變更シ又ハ之ヲ消滅セシムル事ヲ目的トスル二人又ハ數人ノ意思ノ合致ヲ謂フ合意カ人權又ハ義務ノ創設ヲ主タル目的トスルトキハ之ヲ契約ト名ツク
第三百十八條朗讀
第一款 契約ノ種類
第三百十八條 契約ニハ雙務ノモノアリ片務ノモノアリ
當事者相互ニ義務ヲ負擔スルトキハ其契約ハ雙務ノモノナリ
一方ノ當事者ノミカ他ノ一方ノ當事者ニ對シテ義務ヲ負擔スルトキハ其契約ハ片務ノモノナリ
(松岡委員)
此表題ハ
(栗塚委員)
「合意卽チ契約ノ種類」ト申サナケレバナリマセン
(元尾崎委員)
之ハ「契約」デ宜シイ
(委員長)
「契約」デ良カロウ
本條ハ原案ニ決ス
第三百十九條朗讀
第三百十九條 契約ニハ有償名義ノモノ有リ無償名義ノモノ有リ
各當事者カ出捐ヲ爲シテ相互ニ利益ヲ得又ハ第三者ヲシテ之ヲ得セシムルトキハ其契約ハ有償名義ノモノナリ
一方ノ當事者ノミカ何等ノ利益ヲモ給セスシテ他ノ一方ノ當事者ヨリ利益ヲ受クルトキハ其契約ハ無償名義ノモノナリ
(元尾崎委員)
「出捐」ハドウ云フ字ダロウ
(三島委員)
「ツイエル」ト云フ意味デス
(栗塚委員)
「出捐」ト云フ文字ハ商法ニモ訴訟法ニモ使ヒマシタ民法デモ使ヒマス
(松岡委員)
ソウスルト二項デ「給セス」ト云フノハ「得セシメス」トハ云ヘヌカ
(村田委員)
「サクリハイス」ト云フ字ダ、直譯スルト犠牲ニスルト云フ字ダ
(松岡委員)
「利益ヲモ得セシメス」ト云ツタラ良カロウ
(渡委員)
「給セス」デ宜シイ
(栗塚委員)
「何等ノ利益ヲモ出サスシテ」デス
(委員長)
報吿委員ノ方デハ字ヲ變ゼヌ樣ニセヌト限リガ無クナルカラ
(栗塚委員)
身ヲ捨テ仁ヲ爲スト云フ意味デス
本條ハ原案ニ決ス
第三百二十條朗讀
第三百二十條 契約ニハ諾成ノモノ有リ要物ノモノ有リ
契約カ當事者ノ承諾ノミヲ以テ成立スルトキハ其契約ハ諾成ノモノナリ
契約カ當事者ノ承諾ノ外尙ホ目的物ノ引渡ヲ要スルトキハ其契約ハ要物ノモノナリ
(村田委員)
「要物」ト云フノハ珍ラシイ
(南部委員)
「給物」ヨリ宜シイ、給物ト云フト唯物ヲ給スル事ニナル、「諾成」ニ對スルト「要物」ガ宜シイ
(元尾崎委員)
「要物」ト云フト陰物ト代用スル樣ダ
本條ハ原案ニ決ス
第三百二十一條朗讀
第三百二十一條 契約ニハ要式ノモノ有リ不要式ノモノ有リ
公正證書ヲ以テ承諾ヲ與フ可キ契約ハ要式ノモノナリ
此他ノ場合ニ於ケル契約ハ不要式ノモノナリ
(元尾崎委員)
「有式無式」デ良カロウ
(南部委員)
原語ハ
(栗塚委員)
儀式ノ備ツテ居ルト云フ意味デス
(松岡委員)
有式ハ宜シイガ、無式ト云フノハ可笑シイ
本條ハ原案ニ決ス
第三百二十二條朗讀
第三百二十二條 契約ニハ正定ノモノ有リ射倖ノモノ有リ
契約ノ成立及ヒ效力カ契約ノ當初ヨリ確實ナルトキハ其契約ハ正定ノモノナリ
契約ノ成立又ハ其效力ノ全部若クハ一分カ偶然ノ事ニ繋カルトキハ其契約ハ射倖ノモノナリ
(栗塚委員)
「正定」ヲ「實定」ト致シ「射倖」ヲ「懸空」ト致シマス協議ヲ得ルト云フ事ハ一ツノ方ハ協議ヲ得ルカ知レマセンガ、一方ガ協議ヲ容レヌカ知レマセン、骨子ノ出ルノハ何レガ出ルカ知レヌ正定ト云フ字ニ對シタ語デ御座イマスカラ要式ノ裏ガ不要式、諾成ノ裏ガ要物デ有償名儀ト無償名儀双務ト片務デス
(松岡委員)
射倖ノモノト云フト法律ガ博奕ヲ許ス樣ニナル
(三島委員)
「射倖」ト云フ字ハ拵エ字デ御座イマス今度ハ「懸空」ト云フ字ガ出タノデ私ハ贊成致シマシタ
(委員長)
論ガナケレバ先キヘ行キマス
本條ハ「正定」ヲ「實定」ト改メ「射倖」ヲ「懸空」ト改ム
第三百二十三條朗讀
第三百二十三條 契約ニハ主タルモノ有リ從タルモノ有リ
契約ノ成立カ他ノ契約ノ成立ニ關係ナキトキハ其契約ハ主タルモノナリ
反對ノ場合ニ於テハ其契約ハ從タルモノナリ
主タル契約ノ無效ハ從タル契約ノ無效ヲ惹起ス但從タル契約カ主タル契約ノ無效ノ場合ニ於テ之ニ代フルヲ目的トスルモノナルトキハ此限ニ在ラス
從タル契約ノ無效ハ主タル契約ノ無效ヲ惹起セス但當事者カ其二箇ノ契約ヲ分離ス可カラサルノモノト看做シタルトキハ此限ニ在ラス
(委員長)
宜シイ
第三百二十四條朗讀
第三百二十四條 契約ニハ有名ノモノ有リ無名ノモノ有リ
有名ノ契約ハ固有ノ名稱アリテ本法又ハ商法ニ於テ格別ノ規則ヲ設クルノ目的タルモノナリ各別ノ規則ヲ設ケサル總テノ場合ニ於テハ其契約ハ本部ノ規則ニ從フ
無名ノ契約ハ本部ニ揭ケタル契約ノ通則ニ從フ又有名ノ契約ニ特別ナル規則ハ其契約ト最モ類似スル無名ノ契約ニ之ヲ適用スル事ヲ得
(栗塚委員)
二項ハ少シ旨意ヲ誤ツタ樣デ御座イマスカラ改メマシタ、「規則ヲ設クル」ト云フ六字ヲ削リマス、削レバ「各別ノ規則」ト云フ事ハ申セマセンカラ「商法ニ於ケル」ト致シマス、其次ギモ「各別ノ規則ヲ設ケサル」トアルカラ一項モ「特別」トスルガ宜シイ
(栗塚委員)
御尤モデス「特別」デ御座イマス
本條第二項中「商法ニ於テ各別ノ規則ヲ設ケサルノ目的」トアルヲ「商法ニ於ケル特別ノ規則ノ目的」ト改ム
第三百二十五條朗讀
第二款 契約ノ成立及ヒ有效ノ條件
第三百二十五條 凡ソ契約ノ成立スル爲メニハ左ノ三箇ノ條件ヲ具備スルヲ必要トス
第一 當事者又ハ其代理人ノ承諾
第二 確定ニシテ各人カ處分權ヲ有スル目的事物
第三 眞實且合法ノ原因
右ノ外尙ホ要式ノ契約ハ必要ノ方式ヲ遵守シ要物ノ契約ハ返還ス可キ物ノ引渡ヲ爲シタルニ非サレハ成立セス
(栗塚委員)
之ヲ今村カラ削除建議ガ提出シテアリマス第一ノ「當事者」ノ下「又ハ其代理人」ト云フ事ヲ削ツタノデ御座イマス
(松岡委員)
入ラヌ事ダ
(栗塚委員)
第二款ハ矢張リ「合意」ト改マリマスカラ御注意ヲ願ヒマス、其レカラ「目的物」トシテ「事」ノ字ヲ止メマス
(委員長)
事物ハ今村ガ良ク云フ事ハ物トノ區別ガアルノダロウ
(栗塚委員)
「オブゼー」ト云フ字ガアレバ事モ這入ルニ相違ナイ
(松岡委員)
要式ノ契約カ
(栗塚委員)
之モ契約デ御座イマス
本條第二「事」ノ字ヲ削除ス
第三百二十六條朗讀
第三百二十六條 契約ノ成立ニ必要ナル條件ノ外尙ホ其有效ナル爲メニハ左ニ揭クル二箇ノ條件ヲ具備スルヲ必要トス
第一 承諾ノ瑕疵ヲ成ス可キ錯誤又ハ強暴ノ無キ事
第二 當事者ノ能力アル事又ハ有效ニ代表セラレタル事
欠損ハ法律ヲ以テ定メタル場合ニ非サレハ契約ノ瑕疵ヲ成サス
(栗塚委員)
之ハ皆「合意」トナリマス
(松岡委員)
前ノ所モ「合意卽チ」ト書イテアルガ、ソウシテ下ノ所デ契約ト書クト書分ケテ置ク積リカ
(栗塚委員)
書分ケルノデハアリマセン、詰リ合意ト云ヘバ契約ハ網羅シテ居ルカラ何處デモ合意ト致シマス「二箇ノ條件ヲ具備スルヲ必要トス」ハ宜シウ御座イマスガ第一ノ「瑕疵ナキ事ヲ要スト」トアリマス「無キ事」ト云フ字ニ對シテ「具備スル」ト云ヘルカ云ヘナイカ
(三島委員)
「折損」ト云フト損ヲシタ事ニナリマス之ハ缺ケテ無イ事ヲ云フノダロウ、デ御座イマス今村モ其方ガ適當ダト申シマス
本條ハ原案ニ決ス
第三百二十七條朗讀
第三百二十七條 承諾トハ利害關係者トシテ契約ニ加ハル總當事者ノ意思ノ合致ヲ謂フ
當事者中ノ一人カ承諾セサルトキハ他ノ當事者カ承諾シタルモ契約ハ成立セス但此ニ異ナル意思ノ存セシ證據アルトキハ此限ニ在ラス
(栗塚委員)
「承諾トハ」ノ「ト」ノ字ヲ寫字ガ脫シマシタ
本條ハ原案ニ決ス
第三百二十八條朗讀
第三百二十八條 承諾ハ書面、口頭又ハ容態ヲ以テ之ヲ與フル事ヲ得但此末ノ場合ニ於テハ他ニ同意ヲ表スル所作ヲ得ス且其十分ニ承諾スル意思ノ確證アル事ヲ要ス
又承諾ハ事情ニ因リテ默示ヨリ成ル事ヲ得
(栗塚委員)
「所作ヲ得ス且其十分ニ」ト云フノハ分リマセンカラ「他ニ同意ヲ表スルノ手段ナキ事且承諾スル」ト致シマス
(委員長)
「其十分ニ」ハ削ルカ
(三島委員)
承諾ノ十分ノ樣ニ思ヒマス處ガソウデナイソウデ御座イマス
本條「所作ヲ得ス且其十分ニ」ヲ「手段ナキ事且承諾スル」ト改ム
第三百二十九條朗讀
第三百二十九條 遠隔ノ地ニ於テ取結フ契約ノ言込ハ其承諾ノ爲メ明示又ハ默示ノ期間ナキトキハ承諾ノ報ナキノ間ハ之ヲ言消ス事ヲ得但言消ノ報ノ達スルニ先タチ承諾ノ報ヲ發シタルトキハ其承諾ハ有效ニシテ其言消ハ無效ナリ
右ニ反シ明示又ハ默示ノ期間アルトキハ其期間ハ言込ヲ言消ス事ヲ得ス但言消ノ報カ言込又ハ期間指示ノ報ニ先タチ又ハ同時ニ先方ニ達シタルトキハ此限ニ在ラス
此指示期間ニ承諾ヲ爲サヽルトキハ言込ハ期間滿了ノミニテ消滅ス
承諾モ亦之ヲ言消ス事ヲ得但其報カ承諾ノ報ニ先タチ又ハ同時ニ言込人ニ達スル事ヲ要ス
言込人カ死亡シ又ハ契約スル能力ヲ失ヒタルモ先方カ未タ此事實ヲ知ラサル間ハ其承諾ハ有效ナリ
郵便、電信ノ錯誤ハ差出人ノ責ニ歸ス但郵便、電信ノ官署ニ對スル求償權アルトキハ之ヲ行フ事ヲ妨ケス
(栗塚委員)
此條ハ三度直シマシタ、實ハ起按者ガ商法ノ意ヲ加ヘテ直シマシタカラ此處デ御議定ニナツタヨリ一、二ノ事ガ委シクナリマシタ
(委員長)
商法ト同ジニナツタカ
(栗塚委員)
之デ商法ト違ハヌ樣デ御座イマス、ソレカラ「承諾」ヲ「受諾」トシ度イ處ガ受諾ト云フノハ承諾ト同ジ事ダト云フノデ「應諾」ト致シマシタガ本會ノ議決ニ伺セマス
(元尾崎委員)
受ケ諾スルカラ同ジ事ダ
(栗塚委員)
二十七條ニ「承諾トハ云云」トアリマス
(村田委員)
「應諾」ハ「受諾」トシ度イノデ御座イマスガ外ニ「受諾」ト云フ字ガアリマスカラ
(三島委員)
「承知」ト云フテモ宜シイノデ御座イマス
(松岡委員)
「承知」ト云フト之ヲ幾ラデ買ヒナサラヌカ、買ヲウト云フノデ定メルカラ同ジ事ダ、惡ルイ事ハナイ
(元尾崎委員)
「承諾」デ宜シイ
(南部委員)
「承諾」ト云フノハ重ク使テアル
(栗塚委員)
婚姻ヲスルニハ何ガ必要カト云フト佛蘭西流義デ云ヘバ二十五歳迄ニ婚姻セント欲スル者ハ親カ父ノ「コンサントマン」母ナキトキハ母方ノ祖父ノ「コンサントマン」ヲ「アリセツタシヨン」デナリマシヨウガ、「アリセツタシヨン」ハ此方カラ物ヲヤリマシヨウ「諾」ト云フノダカラ日本デハ「承諾」ト申シマシヨウ
(元尾崎委員)
ソウ云フトキハ許諾ダ
(松岡委員)
許諾トモ違ウ
(栗塚委員)
親父モ承知シテ呉レタト云フノデ品物ハ私ガ貰ヒマシタ、手ヲ出シテ貰フ意味ガアリマスカラ少シ差ガアリマス
(元尾崎委員)
「承諾」ト書イタカラ、ソウ聞ヘヌト云フ事ハナイ、文章上デ分ル
(三島委員)
今村ノハ原語ガ違ウケレドモ同ジダカラ字ヲ變ヘタ位デ分ラヌカラ其レデコウシタノデ御座イマス
(南部委員)
少シ變ヘテ置イテハドウデス
(栗塚委員)
言込ニ對シテハ承諾トハ云ハヌ、受諾デハ承諾ト同ジ事ダト云フ
(三島委員)
受諾ト云フト諾ヲ受ケル事ニナリマスドンナ事ヲシテモ出來マセン
(元尾崎委員)
末項ヲ變ヘンケレバ「コンセント」ノ方ヲ許諾トデモシタラ良カロウ
(委員長)
十一條ノ極リガ惡ルイカラ困ルネ
(村田委員)
少シ變ヘタ方ガ宜シイ
(松岡委員)
御前サン幾ラデ買ハヌカト云フ、買ヒマシヨウト云フノデ遠方ニ居テ買ヒマシヨウト云フノト同ジ事ダ
(栗塚委員)
茲デ云フ承諾ハ向ウカラ何カ受ケナケレバイケナイ、處ガ其レハ人ガ物ヲ與ヘルカラ生ズル、處ガ與ヘヌ場合ガアル、二十九條ハ人カラ物ヲヨコスト云フ事ガナケレバナラヌ、子供ノ婚姻ヲ親ガ承知スル
(松岡委員)
御前ノ品物ヲ賣ラヌカト云フノモ同ジ事ダ、又我ノ品物ヲ幾ラデ賣ルガ買ハヌカ、其レデ買ウト云フノモ同ジ事ダ
(松岡委員)
親父ニ向テ請求ガナケレバナラヌ
(栗塚委員)
物ヲ受諾ハ物ヲ受ケルト云フ意味ノ諾ト、其レカラ物ヲ受ケズトモ、事柄ヲ承知シテヤルモノトアル
(松岡委員)
無形ノ物モ承諾、有形ノ物モ承諾ダ
(栗塚委員)
賣ルトカ買ウトカ云フ事デ一方カラ提供ガナケレバナラヌ言込ミノ事デス
(松岡委員)
言込ミニシタ處ガ許可ガナケレバナラヌ
(元尾崎委員)
何レカラカ云フノダ、之ヲ賣ラヌカ「良シ」、之ヲ買ハヌカ「良シ」ト云フノデ詰リ同ジ事ダ
(松岡委員)
「受諾」ト云テモ「應諾」ト云テモ云ヒ詰メレバ「承諾」ニナル
(栗塚委員)
原素ガ幾ツモ集ツタモノト言込ト承諾トガアツテ其レヲ名ヅケテ承諾ト云フ
(南部委員)
應諾カ受諾ガアツテ承諾ニナルカラ少シ違ウ
(栗塚委員)
日本デハ受諾ト云フト承諾ト同ジ事ダト云フ
(松岡委員)
應諾ト云テモ同ジ事ダ
(栗塚委員)
商法ニハ「受諾」トナツテ居ルダロウ
(委員長)
「受諾」トセヌト歐文ニハ同ジニ書ケヌカラ十七條ニ定義ガアル
(村田委員)
受諾デ宜シイ
(委員長)
「受諾」トシマシヨウ
本條ハ「承諾」ヲ「受諾」ト改ム
第三百三十條朗讀
第三百三十條 當事者ノ錯誤ニテ契約ノ性質、目的又ハ原因ノ着眼ニ相違アリシトキハ其錯誤ハ承諾ヲ阻却ス
契約ノ緣由ノ錯誤ハ其錯誤ノミニテハ無效ノ原因ヲ成サス但當事者ノ一方ノ詭譎ニ關シテ定ムル規則ヲ妨ケス
當事者ノ身上ノ錯誤ハ其身上ニ付テノ着眼カ決意ノ原因タリシトキハ契約ノ不成立ヲ惹起ス
身上ノ着眼カ契約ノ附隨ノ原因タルニ過キサルトキハ其契約ハ身上ノ錯誤ノ爲メ單ニ取消ス事ヲ得ヘキモノナリ
(槇村委員)
之モ「受諾」カ
(栗塚委員)
之ハ「承諾」デ御座イマス、三十條中ニ今迄例ノ御座イマシタノヲ例ハ不用デアルト云フノデ今村ガ削除シテ來マシタ
(元尾崎委員)
單ニ取消スト云フノカ
(栗塚委員)
契約ノ不成立ト取消ノ違ヒデス、取消シタノダゾヨ契約ハ成立テ居ル、初メカラ成立タヌト違ウ
(松岡委員)
「單ニ」ハ無クテモ宜シイ
(栗塚委員)
併シ不成立モ矢張リ不成立ダカラト云フテ取消スノデ御座イマスカラ
(西委員)
當事者ノ身上ノ錯誤ト云フハ之モ契約デシヨウ
(栗塚委員)
皆合意デ御座イマス
(松岡委員)
ソウスルト百二十九條モ「合意」ト云ハナケレバナラヌダロウ
(栗塚委員)
併シ契約スル能力ハ「契約」デ御座イマス引例削除建議同上
(北畠委員)
遠隔ノ地ニ於テ結ブハ「契約」デナケレバイケヌ
(委員長)
「規則ヲ妨ケス」ト云フ規則ハ廣キニ過ギハセヌカ
(栗塚委員)
「定ムルモノヲ妨ケス」トアルノデ御座イマス
(元尾崎委員)
ケレドモコウ云フ規則ガアルノデシヨウ
(栗塚委員)
ソウデス規則ノ適用ヲ妨ゲズト云フ事デス
(松岡委員)
矢張リ元トノ通リ「此限ニ在ラス」デ宜シイノダ
(栗塚委員)
「定ムルモノハ此限ニ在ラス」ト云フノデ御座イマス
(委員長)
ソレナラ宜シイ
本條第二項「規則ヲ妨ケス」ヲ「モノハ此限ニ在ラス」ト改ム
第三百三十一條朗讀
第三百三十一條 物上ノ錯誤カ物ノ品質ニ存シ且其品質ニ付テノ着眼カ當事者ノ決意ヲ助成シタルトキハ其錯誤ハ承諾ノ瑕疵ヲ成ス
之ニ反シテ物ノ品格ニ存スル錯誤ハ承諾ノ瑕疵ヲ成サス但品格ニ着眼スルノ當事者ノ意思カ明示又ハ事情ニ因リテ明白ナルトキハ此限ニ在ラス時代出處又ハ用方ノ如キ物ノ思想上ノ品格ニ付テモ亦同シ
算數、名稱、日附又ハ場所ノ錯誤ニ付テハ第五百八十二條ノ規定ニ從フ
(栗塚委員)
二項ノ「此限ニ在ラス」ノ下ニ「出所又ハ用方ノ如キ」トアリマスガ、「物ノ思想上」ト云フノヲ初メニ持テ來テ「物」ノ下ヘ「時代出所又ハ用方ノ如キ」トナスツタ方ガ良カロウト思ヒマス
(委員長)
之ハ孰レデモ宜シイ上ヘ上ゲレバ大層良イト云フ事ハナイ、「如キ」トアレバ「物」ノ上ニアツテモ宜シイ
(南部委員)
別項ナラ宜シイガ此限ニ在ラズノ下ヘ「出所」トナリマスカラ
(淸岡委員)
「其思想上」ト云フ「其」ノ字ハ入ラヌデハナイカ
(栗塚委員)
物ヲ指シテ居リマス
(元尾崎委員)
無クテモ宜シイ
(委員長)
止ヲ得ザル建議ト云フノハ何ダ
(栗塚委員)
元ノ案ニハ品質ノ内ヲ之ニハ區別致シマシタ、註デモ申シテアリマスガ、詰リ一ツニナツテ仕舞フ、主タル品質デ當事者ヲ決意セシムルノ助成シタル者ノ一箇又ハ數箇ノ錯誤ガアツタトキハ承諾ニ瑕疵ヲ付ス、其レカラ又物ノ原質タル品質ガ出來マス、詰リ主タル品質ト同ジ樣ニ見ルゾヨ、其レニ反シテ物ノ原質タラザル品質ハ主タル品質ト看做サヌゾヨ此三ノ主タル品質ハ卽チ品質ト云ヘバ宜シイ原質タラザル品質ハ「品格」ト直シマシタ
(元尾崎委員)
之デ修正ガ出來テ居ルノダロウ
(栗塚委員)
出來テ居リマス、其レカラ「物」ノ字ヲ「時代」ノ上ニ入レマス
(元尾崎委員)
「物ノ」ト云フ處カラ別項ニシタラ良カロウ
(松岡委員)
其レニハ及バヌ何シロ分リ良クナツタ
(元尾崎委員)
「其」ト云フ字ハ削ルガ良シイ
(栗塚委員)
ソレデハ削リマス已ムヲ得サル修正建議
(委員長)
他ハ盡シテ居リマスカ
(栗塚委員)
盡シテ居リマス品質ト云フモノデ主タル品質ト、原質ト本質ヲ入レテ居リマス
(委員長)
其レ丈ケハ分テ居ル
(栗塚委員)
原質タラザルヲ品格ト直シマシタ
(委員長)
「物ノ品質ハ何レ」ト云フ二項ハ
(栗塚委員)
其レハ削レマシタ
(委員長)
反對ノ證ガアツテモイケナイカ
(栗塚委員)
併シ物ノ原質タル品質ト云フ說明シハ起案者ノ註ヲ見ルト品質ハ看做ス事ガ出來ル
(委員長)
原質デ瑕疵ヲ生ジタケレドモ反對ノ證據ガアツタトキハ功力ヲ持ツト云フ事ハナイ
(南部委員)
推定スト云フカラ法律上ノ推定ニハ反對ノ證ヲ擧ゲラルルモノト擧ゲラレヌモノトアルカラ分ケタノダロウト思ヒマス、承諾ニ瑕疵ヲ爲スト云フテ仕舞ヘバ「反對ノ」ト云フ事ハ云ハズトモ良カロウト思ヒマス
本條第二項「時代」ノ上ニ「物ノ」ノ二字ヲ挿入シ「如キ」ノ下「物ノ」ノ二字ヲ削除スル事ニ決ス
第三百三十二條朗讀
第三百三十二條 法律ノ錯誤カ或ハ契約ノ性質、原因ニ存シ或ハ契約ノ法律上ノ效力ニ存スルトキ或ハ物ノ法律上ノ資格又ハ人ノ法律上ノ分限ニ存シテ其資格若クハ分限カ決意ヲ爲サシメタルトキハ其錯誤ハ事實ノ錯誤ノ如ク承諾ヲ阻却シ又ハ其瑕疵ヲ成ス
然レトモ裁判所ハ深ク注意シ且宥恕ス可キ情狀アルニ非サレハ右錯誤ノ爲メ契約ノ無效ヲ認許スル事ヲ得ス
法律ノ錯誤ハ責罰ニ對シ時期ヨリ生スル法律上ノ失權ニ對シ又ハ證書ノ違式ヨリ生スル無效ニ對シテモ其他公ノ秩序ニ係ル法律ノ不知ニ關シテモ當事者ヲ救護スル爲メニ之ヲ認許セス
(栗塚委員)
此處ハ「性質、原因又ハ功力ニ存スルトキ或ハ物ノ資格又ハ人ノ分限」ト改メマシタ末項ノ「法律」ノ下ニ「規則」ノ二字ヲ加ヘマス
(松岡委員)
元トハ「規則」トアツタガ、「法律」ト云ヘバ規則ヲ兼ルト云フ旨意デ削ツタノダ
(栗塚委員)
之ハ法律デハナイ行政規則ト云フノガアリマスカラ「規則」ト入レマシタ
(村田委員)
「規則」ハアル方ガ宜シイ
(松岡委員)
法律ノ錯誤ト云ヘバ規則モ這入テ居ルダロウ
(栗塚委員)
日本語デ云ヘバ左樣デ御座イマスケレドモ佛語デハ這入リマセン
(元尾崎委員)
末項ハ分ラヌ、私ハ其法律ヲ誤解シテ居リマスト云フテ惡事ヲシテハ罰ヲ遁レヌト云フノカ
(大尾崎委員)
ソウダ
(委員長)
一項ハ之デ宜シイカ
(南部委員)
法律ノ錯誤ト云フ字ガアリマスカラ
(委員長)
法律ノ錯誤ハ性質原因又ハ效力ニ存スルトキト雖モ資格分限ニ存シテ
(栗塚委員)
存シテ決意ヲ爲サシメタトキハデス
(委員長)
性質原因效力ハ何トモ云フテナイ「其資格若クハ分限」ト云フ事ヲ削ツテアレバ宜シイ
(栗塚委員)
其レハ外ノ事デ御座イマシヨウ、法律ノ錯誤ハ合意ノ性質原因トカ效力ノトキハ制限ガ付テ居リマス、合意ノ方ハ決意セシムルセシメヌト云フ事ハナイ、物ノ資格、人ノ分限ト云フトキハ其レガ決意ヲ爲サシメタトキデナケレバイカヌ
(委員長)
法律上ノ云フ事ガ一ツアレバ宜シイガ
(栗塚委員)
「法律ノ錯誤カ」ト冒頭ニ出タノハ宜シイ樣デス
(北畠委員)
法律ノ錯誤ト云フ事ハ法律上ノト云フ意味カ
(栗塚委員)
左樣デス
本條ハ左ノ如ク決ス
第一項左ノ如ク改ム法律ノ錯誤カ或ハ合意ノ性質、原因又ハ效力ニ存スルトキ或ハ物ノ資格又ハ人ノ分限ニ存シテ其資格若クハ分限カ決意ヲ爲サシメタルトキハ其錯誤ハ事實ノ錯誤ナリ第二項法律ノ下ニ「規則」ノ二字ヲ加フ
第三百三十三條朗讀
第三百三十三條 詭譎ハ承諾ヲ阻却セス又其瑕疵ヲ成サス但詭譎カ錯誤ヲ惹起シ其錯誤ノミヲ以テ前三條ニ記載セル如ク承諾ヲ阻却シ又ハ其瑕疵ヲ成ストキハ此限ニ在ラス
此他ノ場合ニ於テハ詭譎ハ之ヲ行ヒタル者ニ對スル損害賠償ノ訴權ノミヲ生ス
然レトモ當事者ノ一方カ詭譎ヲ行ヒ其詭譎カ他ノ一方ヲシテ契約ヲ爲ス事ニ決意セシメタルトキハ其一方ハ報復ノ名義ニテ契約ノ取消ヲ求メ且損害アルトキハ其賠償ヲ要求スル事ヲ得但其契約ノ取消ハ善意ナル第三者ヲ害スル事ヲ得ス
(栗塚委員)
「合意ノ取消ヲ求メ且損害アルトキハ其賠償ヲ要求スル」ト御座イマスガ上ニ「求メ」トアルカラ下ノ「要求スル」ハ「求ムル」デ良カロウト思ヒマス
本條ハ「要求スル」ヲ「求ムル」ト改ム
第三百三十四條朗讀
第三百三十四條 當事者ノ一方カ抵抗スル事ヲ得サル暴行ヲ受ケタルニ因リ枉ケテ契約ニ同意ヲ表シタルトキハ其強暴ハ承諾ヲ阻却ス
當事者ノ一方カ不可抗ノ力ニ出テタル急迫ノ災害ヲ避クル爲メ熟慮スルノ暇ナクシテ過度ナル義務ヲ約束シ又ハ無思慮ナル讓渡ヲ爲シタルトキモ亦同シ
暴行又ハ脅迫抗ス可カラサルニ非サルモ當事者又ハ第三者ノ身體財產ノ爲メ切迫ニシテ一層重大ノ害ヲ避クル爲メ當事者ヲシテ契約ヲ爲ス事ニ決意セシメタルトキハ其承諾ニハ瑕疵アリトス
(栗塚委員)
二項ヲ三百三十六條ノ二項トスル建議ヲ今村ガ出シテ居リマス其理由ハ「第三百三十四條ニハ暴行ト災害ニ對スル恐怖トヲ併セ揭ケ而シテ下ノ條ニハ暴行トノミ云ヘリ佛語ノ「ウヰオランス」(暴行ノ義)ハ此二種ノ恐怖ヲ兼ネ云フモ深ク妨ケサルカ如シト雖モ日本語ノ暴行ハ災害ニ用ヒ難シ若シ下ノ諸條ニ暴行災害云々ト盡ク之ヲ繰返ヘサンカ甚タ厭フ可シ又第三百三十六條ニハ暴行カ當事者外ノ人ノ所爲ナルト否ヲ問ハス總テ尋常ノ暴行此項ヲ第三百三十六條ノ第二項トスルノ建議ト同樣ノ取扱ヲ爲ス事ヲ規定ス災害ニ對スル恐怖モ亦暴行ニ對スル恐怖ト同樣ニ取扱フヲ以テ第三百三十四條第二項ヲ此條中ニ移ストキハ穩當ヲ得ルナリ此二事ハ暴行ニ準スルノ規則ナレハ之ヲ暴行ニ關スル規則ノ最終卽チ第三百三十八條ノ次ニ移ス可シ」ト云フテアリマス詰リ今村ノ考デハ暴行デ餘義ナクサレタノト災害ガ來ルカラ恐ロシイト云フノデ事ヲシタノトハ事柄ガ日本デハ違ウ、其レダカラ分ツガ宜シイ、起按者ハ暴行カラ出タノデモ恐怖デモ同ジ事ダ共ニ強暴ト云フ事ダ、其デ我々ガ說明シニ參リマセン中ニ末項ノ「災害」ト云フ字ヲ除イタノデ分リマス、我レノ方デハ矢張リ此儘デ宜シイ何ゼト云フニ承諾ハシナカツタロウ承諾ハ無茶苦茶ニナツテ居ルト云フ事デ心カラ同意ヲ表シタノハ餘義ナク同意ヲ表シタト云フ事デ他人カラ威サレテヤルノモ亦危イカラト云テ止ヲ得ナイ所カラ來ルノデ仕方ガナイ、ヤロウト云フノモ詰リ仕方ガナクヤロウト云フノダカラ區別スルニハ及バヌ
(南部委員)
二項ヲ削ルト續キガ惡クナリマス
(栗塚委員)
其レデ、二十六條ニ加ヘタトキハ矢張リ「上ニ定メタル規則ニ從フ」ト云ハナケレバナリマセン、此時デモ三十四條ニ從フゾト云フ事ヲ云フノデ御座イマスカラ暴行脅迫デ餘義ナクシタノモ危難ヲ避ケ樣ト思テシタノモ餘義ナクシタト云フ事ガ付テ居ル、其レヲ名ヅケテ強暴ニ出デタル契約ト云フノダカラ強暴ノ原由デ取消スト云フトキハ暴行ノ原由トハ違ウ、暴行ヤラ災害デヤツタノハ卽チ強暴ダ
(松岡委員)
幾ラ講釋ヲシテモ強暴ト云フ事ハ大地震大火事ニ逢ツタノダト云フ事ハ出來ヌ
(南部委員)
ソウ云フ區別ハ入ラヌト思フ三百三十四條ハ強暴ヲヤツタ、強暴ハ一方ガ抵抗スル事ヲ得ザル事ヲ云フ、二項ハ不可抗力ニ出デタルトキモ同ジ事ゾト云フ、三項ハ暴行脅迫ヲ云フ、三十五條ハ素ヨリ前ノ例ヲ持テ來テ買テ往ケルト云フノダカラ強テ天災ノ事ヲ強暴ト云ツタト云フ程ニ見ナクモ良カロウト思フ
(栗塚委員)
原按ノ儘ニシテ尙ホ「暴行脅迫又ハ災害カ」トスレバ良カロウト思ヒマス
(松岡委員)
攻撃ヲ受ケル丈ケノ價値ハアル
(栗塚委員)
一項ハ「其強暴ハ」ト云フ事ヲ止メテ初メニ「強暴ハ」ト入レマシヨウ末項ハ「暴行脅迫又ハ災害カ」トシテ終リヲ「強暴ハ承諾ノ瑕疵ヲ成ス」ト致シマス、恰度之デ最初ノ議決按ト同ジニナリマス
(渡委員)
ソレデ良カロウ
(松岡委員)
「強暴ハ」ト云フト三ツノ事ニナル
(栗塚委員)
左樣デス
(松岡委員)
災害強暴ト云フノハ此處ハ宜シイガ、後モ皆云ハナケレバナラヌカ
(南部委員)
強暴ト云フ事ガ災害ト別ニナルト妙ナ事ニナル
(松岡委員)
二項ヲ末項ニシタラ良カロウ
(栗塚委員)
詰リ此儘デ置キマシテ之ヲ御採用ニナラズシテ
(松岡委員)
「暴行脅迫ヲ受ケタルニ因リ」トシタラ良カロウ
(栗塚委員)
其レガ宜シウ御座イマス
(松岡委員)
「合意ニ同意シタル」ハ可笑シイ
(栗塚委員)
「枉ケテ合意ヲ爲シタルトキハ」デ宜シイ
(南部委員)
二項ハ「不可抗ノ力」トアル「ノ」ノ字ヲ削リマス
(栗塚委員)
三項ハ「暴行脅迫又ハ災害カ抵抗ス可カラサルニ非サルモ當事者又ハ第三者ノ」トナリマス
(大尾崎委員)
「強暴」入レルガ宜シイ
(元尾崎委員)
入レルガ宜シイ
(北畠委員)
強暴デ災害ヲ入レルト云フノハ可笑シイ
(栗塚委員)
暴行ト脅迫ト災害ヲ集メタモノガ「強暴」トナリマス
(西委員)
二項ノ「約束」ハ「合意」トナリマスカ
(栗塚委員)
之ハ動詞ダカラ「約束」デ宜シウ御座イマス
(北畠委員)
百三十五條ニ在レバ宜シイガ、暴行ハ承諾ニ瑕疵ヲ成スト云フ所ニ災害ヲ含ンダト云フノハ具合ガ惡ルイ
(南部委員)
天災地變ハ強暴ト云フカ云ハヌカト云フノカ
(松岡委員)
其レハ云ハレヌ
(三島委員)
「強暴」ト云フ字ガ原語ト違ツテ居ルカ知レマセン
(栗塚委員)
烈シイ事ト云フ字デス暴烈ナル事ダ
(三島委員)
「暴烈」トシタラ宜シウ御座イマシヨウ
(栗塚委員)
思慮スル暇ガナイト云フ事デ御座イマス、餘リ劇ニ來テ人ガ打テ來タノヲ避ケルノデモ火事デ燒ケルノデモ考ヘル暇ハナイ、彼ノ狼ニ食ハレテハ適ハヌカラ獵師ニ撃テ呉レ、其代ハリ百圓ヤルト云フ
(元尾崎委員)
強暴ト云フ字ヲ其意味ニ見レバ宜シイ
(渡委員)
之ハ何ゾ良イ字ガアレバ考ヘテ下サイ
(委員長)
ソンナラ「強暴」ト云フ字ハ良イ字ガアツタラ出シテ貰ヲウ
本條ハ左ノ如ク改ム
強暴ハ當事者ノ一方カ抵抗スル事ヲ得サル暴行脅迫ヲ受ケタルニ因リ枉ケテ合意ヲ爲シタルトキハ承諾ヲ阻却ス第二項「不可抗ノ力」ヲ「不可抗力」ト改ム暴行脅迫又ハ災害カ抵抗ス可カラサルニ非サルモ當事者又ハ第三者ノ身體財產ノ爲メ切迫ニシテ一層重大ノ害ヲ避ル爲メ當事者ヲシテ合意ヲ爲ス事ニ決意セシメタルトキハ強暴ハ承諾ノ瑕疵ヲ爲ス
于時午後零時十五分休憩
午後第一時十五分開會
第三百三十五條朗讀
第三百三十五條 強暴ニ因リテ身體財產ニ危難ノ恐ヲ受ケタル第三者カ當事者ノ配偶者又ハ直系ノ親族若クハ姻族ナルトキハ其強暴ハ常ニ之ヲ當事者ニ加ヘタリト看做ス
此他ノ人ニ付テハ親族ナルト姻族ナルト又ハ外人ナルトヲ問ハス裁判所ハ此等ノ者ニ對シ加ヘタル強暴カ當事者ノ承諾ニ及ホセシ影響ヲ其事情ニ從ヒテ審判ス
(栗塚委員)
「審判ス」ヲ「審定ス」ト致シマス、初メニモソウアリマスケドモ「審判」ト云フ分ラヌ字ヲ用ヒテ翻譯ト相談ヤラ何ヤラ六ケ敷ウ御座イマスカラ「親族」ノ「族」ノ字ハ「屬」トナリマス「當事者其人ノ」ト云フ「其人ノ」ヲ削リマシタ
本條ハ「親族」ヲ「親屬」ト改メ「審判」ヲ「審定」ト改ム
第三百三十六條朗讀
第三百三十六條 強暴ハ當事者ノ一方ノ所爲ニ出テタルト第三者ノ所爲ニ出テタルト又第三者カ通謀セルト否トヲ問ハス上ノ區別ニ從ヒテ承諾ヲ阻却シ又ハ其瑕疵ヲ成ス
當事者ノ一方カ不可抗ノ災害ヲ避クル爲メ危難ニ臨ミ熟慮スルノ暇ナクシテ過度ナル義務ヲ約束シ又ハ無思慮ナル讓渡ヲ爲シタルトキハ總テ強暴ニ關シ上ニ定ムル規則ニ從フ
(栗塚委員)
第二項ハ前ノヲ持テ來タ丈ケデ御座イマスカラ彼ヲ持テ來レバ此處ヘ出スノダト云フテ出シタノデ御座イマス
(北畠委員)
之ダケ削ルカ
(栗塚委員)
ソレカラ三十六條デハ第三者ノ所爲ニ出デタルト、又カラ先キヲ「第三者カ其一方ニ通謀スルト否トヲ問ハス」ト「一方ニ」ヲ入レマス
(村田委員)
宜シイ
本條第一項「又其第三者カ通謀セル」トアルヲ「又第三者カ其一方ニ通謀セル」ト改メ第二項ハ削除ニ決ス
第三百三十七條朗讀
第三百三十七條 強暴ヲ受ケタル一方ハ契約ヲ無效ト爲ス事ヲ得ル場合ニ於テ強暴ヲ行ヒタル者ニ對シ損害賠償ノミヲ請求シテ其契約ヲ保持スル事ヲ得
強暴カ契約ノ決意ノ原因トナラスシテ不利條件ノ承諾ノ原因トナリタルトキハ其契約ハ無效ト爲ラス但賠償ノ請求ヲ妨ケス
(栗塚委員)
末項ノ「決意原因ト爲ラスシテ」ヲ「決意ヲ爲サシメタルニ非スシテ單ニ不利ナル條件ヲ承諾セシメタルトキハ其合意ハ」ト致シマス
(大尾崎委員)
元トノ通リニナルノダ
(村田委員)
強暴ヲ受ケタル一方ガ契約ト云フ處ハ元トモ契約トナツテ居マシタネ
(栗塚委員)
此方ガ分リ良イ樣デ御座イマス
本條第二項ハ左ノ如ク改ム
強暴カ合意ノ決意ヲ爲サシメタルニ非スシテ單ニ不利ナル條件ヲ承諾セシメタルトキハ其合意ハ無效ト爲ラス但賠償ノ請求ヲ妨ケス
第三百三十八條朗讀
第三百三十八條 強暴ノ場合ニ於テ裁判所ハ當事者ノ男女、年齡、強弱、智愚及ヒ相互ノ身分ヲ斟酌ス可シ
然レトモ卑屬親ノ尊屬親ニ對スル尊敬ノミニ出テタル畏懼ハ契約ヲ取消スノ理由ト爲ラス
(栗塚委員)
第二項削除ノ建議ガ御座イマスガ「嫁カ夫ニ對スル尊敬」ト云フノハ削レマシタ、元トハ「卑屬親ノ尊屬親ニ對シ及ヒ嫁カ夫ニ對スル」トアリマシタ、之ハ三百九十二條ヲ御讀ニナルト分リマスガ、三百九十二條嫁ガシタ不調法ハ夫ガナケレバナラヌ彼ノ利窟カラ來ルノデ御座イマス、詰リ女ト云フモノハ日本デハ子供ト同ジ事デアル白痴瘋癲モ同ジ事デアルト云フ處カラ子供此條ヲ第三百三十八條ノ次ニ移ス建議句削除建議ガ親ニ對スルト同ジ關係ニ見テ居ル、處ガ三百九十二條ニ女ノ不調法ヲ夫ガ拂フ事ハ此會デ削レマシタ、女ハ女デ一箇ノ見識ガアルカラト云フ議論ガ盛ンデ初メニアリマシタノヲ夫ガ其嫁ニ加ヘタル損害ノ責メニ任ゼズト云フノヲ削リマシタ此處モ其レト同ジ事デ嫁ノ夫ニ對スル事ヲ削リマシタ
(松岡委員)
此處ヲ「ボアソナード」ガ變ヘタノハ彼處ノ爲メデハナイダロウ
(南部委員)
爲メデハナイケレドモ自然同ジニナルダロウ
(三島委員)
男尊女卑ト云フノダ
(大尾崎委員)
此處ヲ入レルト先キモ入レナケレバナラヌ
(渡委員)
之ハ無イ方ガ宜シイ
(淸岡委員)
尊敬ハ取消ス理由ニナラヌト云フ丈ケダロウ
(栗塚委員)
夫ガ怖イト思テ妻ニヤツタト云フテモイケナイト云フノデス
(淸岡委員)
此處ヘ書イテ置カンデモ其レハイケナイ
(松岡委員)
削レバ脅迫ノ部類ニ入レラレルノダロウ之ハ何レカト云フト卑屬親ヲ保護スル例デハナイ、卑屬親ノ方ハ他ノ人カラ見レバ脅迫ト云ヘルガ
(南部委員)
子ガ親ニ對スルト妻ガ夫ニ對スルト同ジ事ダト云フ事ハ何處ニモナイ
(松岡委員)
餘リ弱イ者ダト云テ保護シ過ギルダロウ
(栗塚委員)
當リ前ノ人ト見レバ宜シイノデス夫婦ノ關係ヲ親タル者ガ夫ニ對シテ尊敬スル、子供ガ親ニ對スル尊敬ト同樣ナモノダト此處デ決セズトモ宜カロウ
(淸岡委員)
日本ノ婦人ハ卑屈ダカラト云フノデ起按者ガ入レタノダロウ
(南部委員)
其レハソウダ
(淸岡委員)
其レ程ノ心配ニハ及バヌ
(松岡委員)
コウ云フ時ハ女房モ大層強クナル
(栗塚委員)
紙ノ上デハ幾ラ強クテモ宜シイ實際弱ハケレバ差支ナイ
本條ハ原按ニ決ス
第三百三十九條朗讀
第三百三十九條 錯誤、強暴、詭譎、欠損及ヒ無能力ハ之ヲ推定セス其申立人ヨリ之ヲ證明スル事ヲ要ス
當事者雙方ニ屬スル無效ノ理由ハ相互ノ非理ニ基ツクトキト雖モ相殺セス但損害アルトキハ其賠償ノ相殺ヲ妨ケス
(栗塚委員)
第二項デハ「無效ノ理由」ト云フノハ鳥渡分ルマイト思ヒマス「無效訴權ノ方法ハ」トヤリマシタ
(大尾崎委員)
相殺シテ無效ニシテハイカヌ
(栗塚委員)
「互ニ毀滅セス」トヤリマシタ相殺ト云フト殘ル樣ニナリマスカラ
(南部委員)
此方ニ十分アツテ向ウニ五分アルト五分ハ殘ル樣ニナルカラ
(栗塚委員)
「相殺」ト云フ事ハ原文ニモアリマセン
本條第二項左ノ如ク改ム
當事者雙方ニ屬スル無效訴權ノ方法ハ相互ノ非理ニ基クトキト雖モ互ニ毀滅セス但損害アルトキハ其賠償ノ相殺ヲ妨ケス
第三百四十條朗讀
第三百四十條 前數條ノ場合ニ於ケル無效ノ訴權ハ無能力者又ハ瑕疵アル承諾ヲ與ヘタル者ノミニ屬ス
然レトモ處刑ノ言渡ヨリ生スル無能力ハ其言渡ヲ受ケタル者ト契約ヲ爲シタル者ヨリ之ヲ申立ツル事ヲ得
(村田委員)
元トハ「約定シタル者ヨリ」トアル
(栗塚委員)
「約束シタル」デモ宜シイ
本條ハ原按ニ決ス
第三百四十一條朗讀
第三百四十一條 若シ取消ス事ヲ得ヘキ契約ヲ第三章第七節ニ定メタル期間ニ攻撃セサルトキハ默示ニテ之ヲ認諾シタルモノト看做ス
此他默示認諾ノ場合及ヒ明示認諾ノ方式ハ右同節ノ規定ニ從フ
(栗塚委員)
「若シ」ハ誤寫デ御座イマス
本條ハ「若シ」ノ二字誤寫ニ付キ削リ他ハ原按ニ決ス
第三百四十二條朗讀
第三百四十二條 契約ハ未來ニ係リ且生成ノ不的確ナル物ヲ目的トスル事ヲ得此場合ニ於テ諾約者ハ其契約ノ實施ヲ妨碍シ若クハ減縮スル何等ノ事ヲモ爲サス又其實施ニ便ス可キ何等ノ事ヲモ放却シ若クハ懈怠セサル事ヲ要ス
然レトモ發開セサル相續ニ於ケル權利ヲ授受シ又ハ取捨スルノ契約ハ其相續ヲ遺留ス可キ人ノ承諾アリト雖モ之ヲ爲ス事ヲ得ス但法律ヲ以テ特例ヲ明示シタル場合ハ此限ニ在ラス
(栗塚委員)
二項ノ「授受シ又ハ取捨スル」ト云フノヲ「權利ヲ與奪スルノ合意ハ」トヤリマシタ前ニハ「違法ノ合意」トアリマシタ其レカラ一項デ且「生成ノ」ヲ「成立ノ」ト致シ「不的確」ハ射倖ノ處デ「不確實」トナリマシタカラ改メマス
(淸岡委員)
「放却シ」ノ「シ」ヲ削ツテハドウカ
(栗塚委員)
動詞ニシタ積リデ御座イマスカラ宜シウ御座イマシヨウ「遺留ス」ハ「遺ス」ト致シマス
(淸岡委員)
「便ス可キ」ト云ツタコトハナイ
(南部委員)
之ハ元トノ通リデス
(松岡委員)
「實施ヲ妨ケル何等ノコトヲモ」ト云テ「又ハ減縮」ヲ削レバ宜シイ、妨碍ト減縮ト同ジコトダ
(栗塚委員)
ソウデス
(松岡委員)
便利シ若クハ伴長スルト云ヒ度ナル
(栗塚委員)
「實施ニ便スル」トハ出來マセンカ
(大尾崎委員)
差支ヘハアルマイ
(槇村委員)
「便スル」デ宜シイ
(三島委員)
「便利ニス可キ何等ノ事」ト云ヘバ宜シイ
(松岡委員)
「妨ケ」ヲ「妨害」トシタカラダ
(淸岡委員)
「實施ヲ便ニス可キ」カ
(委員長)
其レガ宜シイカ知レヌ
(渡委員)
良イ修正モナイカラ之デ宜シイ
(南部委員)
減縮スルハ可笑シイ
(栗塚委員)
妨ゲ卽チ縮メルデス
(南部委員)
妨ゲデ宜シイ、松岡君ニ贊成
(栗塚委員)
其レデ宜シウ御座イマシヨウ
(三島委員)
妨グベキ何等ノ事ヲモ爲サズ
(委員長)
減縮ハドウスルカ
(栗塚委員)
縮メル缺ケル
(委員長)
歐羅巴文デ云フト違ウネ妨ゲハセヌケレドモ縮メルト云フノダカラ變ヘヌ樣ニシ樣
(栗塚委員)
併シ跡ニ「便スヘキ」トアリマスカラ
(委員長)
便スベキ名按ガナイト云テ變ヘルノハ良クナイ
(栗塚委員)
「便スヘキ且伴スヘキ何等ノコトヲモ」トナラナケレバナリマセン、詰リ妨ゲルモノト便スルノト二ツ外ナイト云フ松岡サンノ發言デ御座イマス
(委員長)
妨害ト減縮トハ範圍ガ違ウ樣ダ
(松岡委員)
其レデハ宜シウ御座イマシヨウ
本條ハ左ノ如ク決ス第一項「且生成ノ不的確ナル」ヲ「且成立ノ不確實ナル」ト改ム第二項「權利ヲ授受シ又ハ取捨スルノ契約ハ其相續ヲ遺留スヘキ」トアルヲ「權利ヲ與奪スルノ合意ハ其相續ヲ遺ス可キ」ト改ム
第三百四十三條朗讀
第三百四十三條 契約ハ不法又ハ不能ノ作爲又ハ不作爲ヲ目的トスルトキハ無效ナリ
契約ノ目的タル第三者ノ作爲又ハ不作爲カ合法又ハ可能ナリト雖モ若シ諾約者カ其第三者ニ對シテ威權ヲ有セサルトキハ其契約ハ之ヲ不能ノ作爲又ハ不作爲ヲ目的トセルモノト看做ス
然レトモ何人ニテモ第三者ノ作爲又ハ不作爲ニ付キ明示ニテ擔保人ト爲ルコトヲ得此場合ニ於テハ諾約者ハ保證人ノ義務ニ服ス
又何人ニテモ第三者ニ代リテ諾約ヲ爲シ若シ第三者カ之ヲ履行セサルニ於テハ過怠金ヲ辨濟ス可キノ責ニ服スルコトヲ得
何人ニテモ第三者ノ名ヲ以テ引受ヲ爲シ第三者ヲシテ之ヲ確認セシム可キコトノミヲ約束シタルトキハ其第三者ノ確認シタル時ヨリ義務ヲ免カル
(委員長)
「作爲」ト云フノハ發明シタ樣ダ
(栗塚委員)
「爲スノ義務」ヲ「作爲」ト直シマシタ末項ノ「引受」ヲ「合意」ト致シマス「約束」ヲ「諾約」トシマス元トノヲ御讀ニナルト能ク分リマス
(村田委員)
「不作爲」ト云フコトハ「アブスタンシヨン」ト云フコトデシヨウ
(栗塚委員)
ソウデス前ノ「封止」ト云フノデス
(松岡委員)
「封止」ト云フト狀袋ヲ見タ樣ダ
本條末項「引受」ヲ「合意」ト改メ「約束」ヲ「諾約」ト改ム
第三百四十四條朗讀
第三百四十四條 要約者カ契約ニ付キ正當ニシテ且金錢ニ見積ルコトヲ得ヘキ利益ヲ有セサルトキハ其契約ハ原因ナキ爲メ無效ナリ
第三者ノ利益ノ爲メニ要約ヲ爲シ且之ニ過怠約款ヲ加ヘサルトキハ其要約ハ之ヲ要約者ニ於テ金錢ニ見積ルコトヲ得ヘキ利害ヲ有セサルモノト看做ス
然レトモ第三者ノ利益ニ於ケル要約カ要約者カ自己ノ爲メ爲シタル要約ノ從タリ又ハ諾約者ニ爲シタル贈與ノ從タル條件ナルトキハ其要約ハ有效ナリ
右二箇ノ場合ニ於テ從タル條件ノ履行ヲ得サルトキハ要約者ハ爲ニ契約解除ノ訴權又ハ過怠約款履行ノ訴權ヲ行フコトヲ得
(栗塚委員)
第二項ノ「利害」ト御座イマスノヲ「利益」ト致シマス三項ハ「要約カ」トアルハ「要約ハ」ト致シマス「條件ナルトキハ有效ナリ」トシテ「其要約ハ」ヲ削リマス
(渡委員)
「金錢ニ見積ルコトヲ得ヘキ」ト云フノヲ商法ト合セテ再考スルト云フ事ニナツテ居タガ之ハドウナリマシタカ
(栗塚委員)
問フテ見マシヨウ
本條ハ左ノ如ク決ス
第二項「利害」ヲ「利益」ト改ム第三項「要約カ」ヲ「要約ハ」ト改ム「其要約ハ」ノ四字ヲ削ル
第三百四十五條朗讀
第三百四十五條 主タリ又ハ從タル要約ハ相續法カ一人ノ相續人ヲ利シテ他ノ相續人ヲ害スル事ヲ許セル限度及ヒ條件ニ從ヒ常ニ要約者ノ相續人ノ一人若クハ數人ノ利益ノ爲メ之ヲ爲ス事ヲ得
又主タリ又從タル諾約ハ諾約者ノ相續人ノ一人若クハ數人ノ負擔トシテ之ヲ爲ス事ヲ得
(栗塚委員)
今村ノ意見ハ「三百四十五條及ヒ第三百四十六條ハ明文ヲ要セサル事ナリ且此事ハ相續篇ニ先ンシテ此種ノ事ヲ布吿スルハ好シカラス故ニ削除ス可シ」トアツテ削除建議デ御座イマスカラ次ギノ條モ續ケマシヨウ
第三百四十六條朗讀
第三百四十六條 前二條ノ場合ニ於テ第三者ノ利益ノ爲メニ爲シタル要約ハ得益者ノ之ヲ承諾セサル間ハ要約者ハ自己ノ利益ノ爲メ之ヲ廢罷シ之ハ之ヲ他人ニ移轉スル事ヲ得
(栗塚委員)
報吿委員ノ考デハ之ヲ置キマシテモ契約ノ所ダカラ一向差支ナイ積リデ御座イマス
(村田委員)
人事篇ニ入レルト云フノデモナイ之ハ彼ヨリ先キヘ出ルカラト云フノダロウ
(松岡委員)
相續法デドレ丈ケノ制限ガ出來ルト制限ノナイモノハシテモ構ハヌノダ此處デモ許セル限度デ法律ノ限度條件ヲ設ケヌモノハ出來ルト云フノダカラ云ハズトモ宜シイ、向ウハ取除ケ法デモ此處ハ取除ケノ取除ケヲ云フノダカラ
(村田委員)
元老院デ調ベルトキモ削ル論デアツタ
(松岡委員)
削除ノ方ガ良イカ知レヌ
(栗塚委員)
報吿委員ノ所デモ委シイ論ハナカツタノデス、詰リ要約ト云フモノハ要約者ノ相續人ノ一人若クハ數人ノ爲メ出來ルト云フコトデス、又諾約者モ權利ノ方モ義務ノ方モト云フ事デスカラ
(渡委員)
云ハズトモ差支ナイ削除建議削除建議
(松岡委員)
相續法ガ一二ノ相續人ヲ特ニ利シタリ害シタリスルハ滅多ニ許サヌガ、コウ云フ場合ハ許スト云フコトガアツタラ利シタリ害シタリスルコトガ出來ルトアル
(委員長)
相續篇ニ要約者ト云フ者ノ相續人ノ利益ノ爲メニスルコトガ出來ル又諾約者ハ矢張リ其相續人ノ負擔トスルコトガ出來ルト云フコトハ本人デナイ相續人ガヤルト云フコトハ此處ナラバ云ヘルガ外デハ云ヘナイダロウ
(南部委員)
之ハ削レマセン第三者デハイケマイガ、相續人ノ利益ノ爲メニ設ケルト云フコトハナクナリマス
(栗塚委員)
主タル又ハ從タル要約者ハ自分ノ爲之ヲ爲スコトヲ得但云々トナツテ居ルノデス
(松岡委員)
併シ其レヲ除ケレバ第三者ト變ツタコトハナイ
(栗塚委員)
四百六十三條デヤルコトヲ見ナケレバナラヌ不可分ノ義務數人ノ債權者アルトキ
(村田委員)
四百六十二條ノ場合ダロウ
(栗塚委員)
「常ニ要約者ノ相續人ノ一人若クハ數人ノ利益ノ爲メ之ヲ爲スコトヲ得」ト云フノガ主デ御座イマスカラ有ツテモ宜シウ御座イマシヨウ
(南部委員)
成ル可ク但ニシタ方ガ宜シイ樣ダ
(村田委員)
但ノ方ガ解リ良イ
(松岡委員)
我輩ハ前カラ括弧ヲ入レテ居ル
(委員長)
但ニスルカ
(栗塚委員)
但トシテ「從フ」トサヘスレバ宜シウ御座イマス
(松岡委員)
四十六條ハ第三者ノ爲メカ又ハ相續人トシナケレバナラヌダロウ
(栗塚委員)
原文ハ「他人」トアリマス
(南部委員)
「他人」ト云フト可笑シイ、矢張リ「第三者及ビ相續人」ガ宜シイ
(栗塚委員)
原文デハ他ノ人トアリマスガ他ノ人デハ相續人ガ這入ラヌ樣ニナルカラ「第三者又ハ相續人ノ爲メニ」ト致シマスカ
(委員長)
良カロウ
本條第一項ハ左ノ如ク改ム
主タリ又ハ從タル要約ハ常ニ要約者ノ相續人ノ一人若クハ數人ノ利益爲メ之ヲ爲スコトヲ得但相續法カ一人ノ相續人ヲ利シテ他ノ相續人ヲ害セルコトヲ許セル限度及ヒ條件ニ從フ
第三百四十七條朗讀
第三百四十七條 契約ノ證書ニ原因ヲ明示シタルト否トヲ問ハス其原因ノ不成立、虛妄又ハ不法ナルコトノ證明ハ被吿ヨリ之ヲ爲ス可キモノトス但原因ノ明示ナキトキハ被吿ハ先ツ債權者ヲシテ其原因ヲ陳述セシムル爲メニ之ニ催吿スルコトヲ得
(南部委員)
數句刪除建議ガ落チテ居ル
(栗塚委員)
「但其原因ヲ爭フ可キトキハ之ヲ爭フコトヲ妨ケス」ト云フコトガ這入ツテ居タノデス其レヲ削リマシタ、催吿ヲシテ爭ヲウト思ヘバ爭ウコトガ出來ル
(松岡委員)
思ハナケレバ爭ハヌカ
(委員長)
宜シイ樣ダ
本條ハ原按ニ決ス
第三百四十八條朗讀
第三款 契約ノ效力
第一則 當事者及ヒ其承接人ニ對スル契約ノ效力
第三百四十八條 適法ニ取結ヒタル契約ハ當事者間ニ於テ法律ニ同シキ效力ヲ有ス
其契約ハ當事者ノ双方カ承諾スルニ非サレハ之ヲ廢罷スルコトヲ得ス但法律カ一方ノ意思ヲ以テ廢罷スルコトヲ許セル場合ハ此限ニ在ラス
(松岡委員)
前項ハ良クナツタ
(栗塚委員)
「當事者及ヒ其承接人ニ對スル」ハ甚ダ惡ルイ樣ニ御座イマス「當事者及ヒ其承接人間ノ合意ノ效力」デ御座イマス、恰度連帶ノ所モ「連帶ノ效力」トナツテ居リマスカラ
(松岡委員)
詰リ双方間ダ
(委員長)
先キヘ行キマシヨウ
第一則ノ表題ヲ左ノ如ク改メ本條ハ原按ニ決ス第一則當事者及ヒ其承接人間ノ合意ノ效力
第三百四十九條朗讀
第三百四十九條 當事者ハ特別ノ契約ヲ以テ普通法ノ規定ニ由ラス又ハ其效力ヲ增減スルコトヲ得但公ノ秩序及ヒ善良ノ風俗ニ觸ルヽコトヲ得ス
(栗塚委員)
「又ハ」ノ「ハ」ハ愆字デ御座イマス
(委員長)
之モ宜シ
本條「又ハ」ノ「ハ」ハ愆字ニ付削ル
第三百五十條朗讀
第三百五十條 契約ハ當事者ノ明示及ヒ默示シタル效力ノミナラス尙ホ公正ノ理若クハ慣習ノ例ヨリ生シ又ハ契約ノ性質ニ從ヒテ法律ノ規定ヨリ生スル效力ヲ有ス
(栗塚委員)
之ハ餘程議論モ御座イマシテ公正ノ理慣習ノ例ト云フノハ「條理、慣習」ト致シマス兎モ角モ今日法律ニ依レ、法律ナキモノハ慣習ニ依レ、慣習ニナキモノハ條理ニ依レト云フコトガ御座イマスカラ「當事者ノ明示及ヒ默示ノ效力ノミナラス」ト致シマス明示ハ宜シイガ默示シタコトハナイ
(松岡委員)
ソレダケレドモ默諾スルコトヲ得ト云フコトガアル
本條ハ左ノ如ク決ス
合意ハ當事者ノ明示及ヒ默示ノ效力ノミナラス尙ホ條理若クハ慣習ヨリ生シ又ハ合意ノ性質ニ從ヒテ法律ノ規定ヨリ生スル效力ヲ有ス
第三百五十條ノ二朗讀
第三百五十條〔二〕 契約ハ善意ヲ以テ之ヲ履行スルコトヲ要ス
(栗塚委員)
再調査ノ意見ハ第三百五十條ノ二項ハ二項デナイ別條トスルヲ寧當トストアリマス我々モ同意致シマス
(松岡委員)
法律ノ原則ダカラ同意シマシヨウ
(南部委員)
五十條ノ二項トシテ置コウ
本條ハ原按ニ決ス
第三百五十一條朗讀
第三百五十一條 特定物ヲ授與スルノ契約ハ引渡ヲ要セスシテ直チニ其所有權ヲ移轉ス但停止條件ニ關スル下ノ規定ヲ妨ケス
(栗塚委員)
之モ先逹テト同ジニ「關シ下ニ規定スルモノヲ妨ケ別條建議ス」トシテ但停止條件ト云フノハ始メテ出マシタカラ「約束ニ附帶スル」ト入レタラ良カロウト思ヒマス、元トハ「合意ニ附屬スルコトアルヘキ」トアリマスカラ「但合意ニ附帶スル停止條件ニ關シ下ニ規定スルモノヲ妨ケス」ト致シマス
本條但書ヲ左ノ如ク改ム
但合意ニ附帶スル停止條件ニ關シ下ニ規定スル者ヲ妨ケス
第三百五十二條朗讀
第三百五十二條 代替物ヲ又ハ定量物授與スルノ契約ハ諾約者ヲシテ其物ノ所有權ヲ契約上ノ性質、品質及ヒ分量ヲ以テ要約者ニ移轉スルノ義務ヲ負ハシム此場合ニ於テ所有權ハ物ノ引渡ニ因リ又ハ當事者立會ニテ爲シタル其指定ニ因リテ移轉ス
(栗塚委員)
「約束シタル品格性質」デ御座イマス
(松岡委員)
「品格」ト云ツタラ良カロウ
(栗塚委員)
此處ハ「性質」ト云テ置キマス、ソレカラ「代替物又ハ定量物」ト御座イマスガ「代替物」丈ケデ差支ナイト思ヒマス
(委員長)
量定物ハ代替物ニ籠ルカ
(南部委員)
先キニモ御座イマス
(栗塚委員)
次ノ條ノ末項ニ御座イマス、物ノ區別ノ所ニモ代替物サヘ云ヘバ宜シイ樣デ御座イマス
本條ハ左ノ如ク決ス「又ハ定量物」ノ五字ヲ削リ「契約上ノ性質品質」トアルヲ「約束シタル性質品格」ト改ム
第三百五十三條朗讀
第三百五十三條 前二條ノ場合ニ於テハ契約上ノ時日及ヒ場所ニ於テ諾約者ノ注意及ヒ費用ニテ物ノ引渡ヲ爲スコトヲ要ス
引取ノ費用ハ要約者之ヲ負擔ス
證書ノ費用ハ有償行爲ニ於テハ當事者双方之ヲ負擔シ無償行爲ニ於テハ得益者之ヲ負擔ス
不動產ノ引渡ハ證書ノ交付及ヒ場所ノ明渡ヲ以テ之ヲ爲ス但簡易ノ引渡及ヒ占有ノ改定ニ關スル第二百三條ノ規定ヲ妨ケス
債權ノ引渡ハ證書ノ交付ヲ以テ之ヲ爲ス
引渡ノ期限ヲ定メサリシトキハ卽時ニ引渡ヲ要求スルコトヲ得
引渡ノ場所ヲ定メサリシトキハ特定物ニ付テハ契約ノ當時其物ノ存在セシ場所代替物ニ付テ引渡前ニハ其物ノ指定ヲ爲シタル場所其他ノ場合ニ在テハ諾約者ノ住所ニ於テ引渡ヲ爲ス
(栗塚委員)
「約束上ノ」ハ前ト同ジニ「約束シタル」ト致シマス一項ハ「約束シタル事實及ヒ場所ニ於テ諾約者ノ世話及ヒ費用ニテ」ト致シマスソレカラ「合意ニ於テハ」ハ「付テハ」トナリ「無償合意ニ付テハ」トナリマス末項ノ「引渡前ニ」ト云フ字ヲ削リマス其モノノ指定シタ場所デ御座イマスカラ間違テ入ツタノデ御座イマシヨウ三項ハ「占有ノ改定ニ關シ第二百三條ニ規定シタルモノヲ妨ケス」トナリマス
本條ハ左ノ如ク決ス
前二條ノ場合ニ於テハ約束シタル時日及ヒ場所ニ於テ諾約者ノ注意及ヒ費用ニテ物ノ引渡ヲ爲スコトヲ要ス引渡ノ費用ハ要約者之ヲ負擔ス證書ノ費用ハ有償行爲ニ付テハ當事者双方之ヲ負擔シ無償行爲ニ付テハ得益者之ヲ負擔ス不動產ノ引渡ハ證書ノ交付及ヒ場所ノ明渡ヲ以テ之ヲ爲ス但簡易ノ引渡及ヒ占有ノ改定ニ關シ第二百三條ノ規定シタルモノヲ妨ケス第四項五項原按ニ決ス引渡ノ場所ノ定マラサルトキハ特定物ニ付テハ合意ノ當時其物ノ存在セシ場所代替物ニ付テハ其物ノ指定ヲ爲シタル場所其他ノ場合在テハ諾約者ノ住所ニ於テ引渡ヲ爲ス
第三百五十四條朗讀
第三百五十四條 諾約者ハ特定物ノ引渡ヲ爲スマテ善良ナル管理者タルノ注意ヲ以テ其物ヲ保存スルコトヲ要ス懈怠又ハ惡意アルトキハ損害賠償ノ責ニ任ス
無償ニテ讓渡シタル物ノ保存ニ付テハ諾約者ハ自己ノ物ニ加フルト同一ノ注意ヲ加フルノミノ責ニ任ス
此他諾約者カ右ト同一ノ注意ノミヲ負擔スル場合ハ其各事項ニ於テ之ヲ規定ス
(栗塚委員)
「注意ヲ以テ」ハ「世話ニテ」トナリマス
(大尾崎委員)
「世話ニテ」ハ可笑シイ
(松岡委員)
前ノ引渡ノ所ハ宜シイガ、管理者ノ所ハ「世話」ト云フノハ可笑シイ
(渡委員)
「管理者」ト云フタカラ「注意」ガ宜シイ
(栗塚委員)
注意ト云フ内ニ手數ト云フ意味ガ入レバ宜シイ
(村田委員)
注意ガ宜シイ
(松岡委員)
前丈ケ「世話」デ宜シイデ此處ハ「注意」トシテ置イタラ良カロウ
(南部委員)
前ハ「注意」デ宜シイ此處ハ「世話」ガ宜シイト云フ論デアツテ今日ハ其反對ダカラ見樣ニ因テ違ウ
(渡委員)
何レカト云ヘバ注意ガ宜シイ
(委員長)
「注意」ガ宜シイ樣ダ
(栗塚委員)
末項ノ刪除建議ガ出テ居リマス其理由ハ「贅文ナリ」トアリマスガ我々ノ見ル處デハ贅文デナイ何トナレバ是レ丈ケデ盡キテ居ルト思フテハイカヌゾヨ外ニ在ルゾヨト云フノデ御座イマスカラアル方ガ良イト思ヒマス
(松岡委員)
ソウシテ各事項ニ書イテアリマスカ
(栗塚委員)
書イテアリマス
(松岡委員)
ソレナラ矢張リ贅文ダ
(南部委員)
讀ムニ大ヘン都合ガ宜シイ此類ニ他ハモアルゾト云フノダカラ
(松岡委員)
云フテモ其處ノ條ヲ見ルニ是非出テ來ルカラ之ヲ見テ外ヘ氣ガ付クト云フコトハナイ
(南部委員)
之ヲ削ルト規則ヲ妨ゲズト云フコトモ削ラナケレニナラヌ樣ニナル
(栗塚委員)
「右ト同一ナル注意ノミヲ要ス」ト云フノハ無償デ引渡シタ保存ニ付テハ諾約者ガ自己ノ物ハ加フル丈ケデ宜シイト云フノガ當リ前ナルニ餘程注意ヲシナケレバナラヌガ自分ノ物ト同末項削除建議一デ宜シイト云フノハ場所々々デ云フゾヨ賣人モ給料ヲ貰テ居ルトキト給料ヲ貰フトキト書分ケテアル
(松岡委員)
皆書分ケテアル
(南部委員)
民事訴訟法ニ之ヲ規定スト云フ所トハ違ウ
(大尾崎委員)
於テモ良カロウ
(南部委員)
一般ニ關係シテ居ル、一般ノ義務デス悉ク適用スルカト云フト、別段ノ法ヲ立テタコトモアルト云フコトヲ知ラシメタノダ
(松岡委員)
特定ノ物ナラ注意シナケレバナラヌト云フノハ一般ノ事ニナルノダ只特定ノ物デモ無償デ渡シタトキハ尋常普通ノ注意デ宜シイ、ソウスレバ諾約者ニ二樣アルガ何デモ云フテナケレバ特定物ノトキハ注意シナケレバナラヌ諾約者デ輕イ注意ノハ各事項ニ書イテアル、輕イノハ輕イ注意デ宜シイト云フノハ取除ケダ
(栗塚委員)
五十三條ノ末項ニ起按者ガ加ヘテアルノハ「當事者カ明示若クハ默示ニテ引渡ノ場所ヲ定メルカ又ハ義務ノ性質ニ因リ其辨濟ノ場所カ一定セサルトキハ」ト入レルノデ御座イマスカ
(松岡委員)
良カロウ
(南部委員)
良カロウ
(栗塚委員)
義務ノ性質デ場所ガ定マツテ居ルカ又ハ當事者ガ定メテ置クカ此二ツガナイトキハ引渡ノ場所ハ何處デスルカ、コウ云フ所デスルト云フノデス
(委員長)
「辨濟ノ場所ヲ定メサルトキハ」トスルカ
(栗塚委員)
ソレデモ宜シイ
(南部委員)
ソウスルト當事者ガ定メヌコトニナル
(栗塚委員)
ソンナラ「引渡ノ場所ノ定マラサルトキハ」トスルカ
(渡委員)
加ヘズトモ宜シイ
(南部委員)
「定マラサリシトキハ」デモ宜シイ
(栗塚委員)
「定メナキトキハ」デモ宜シイ
(松岡委員)
其レガ宜シイ
(委員長)
「定マラサルトキ」ノ方ガ宜シイ、其レデ末項ハドウナツタ
(松岡委員)
之ハ入リマセン
(南部委員)
置クガ宜シイ
(西委員)
置イテ宜シイ
(大尾崎委員)
置イテ宜シイ
(北畠委員)
刪除
(淸岡委員)
置クガ宜シイ
(槇村委員)
置キマシヨウ
(委員長)
置ク方ガ多イ
本條ハ原按ニ決ス
第三百五十五條朗讀
第三百五十五條 授與スルノ契約カ特定物ヲ目的トスルトキハ意外ノ事又ハ不可抗ノ力ニ出テタル其物ノ滅失又ハ毀損ハ諾約者カ危險ヲ負擔シタル場合及ヒ停止條件ニ關スル規定ヲ除クノ外要約者ノ損ニ歸シ其物ノ增加ハ要約者ノ益ニ歸ス
然レトモ諾約者カ物ノ引渡ノ遲滯ニ付セラレ且若シ引渡ヲ爲シタルニ於テハ滅失又ハ毀損ヲ致サヽル可キトキハ其損失ハ諾約者ノ負擔ニ歸ス
(栗塚委員)
「不可抗ノ力」ハ「不可抗力」トナリマス
本條「不可抗ノ力」トアルヲ「不可抗力」ト改ム
第三百五十六條朗讀
第三百五十六條 左ノ場合ニ於テハ諾約者其他ノ債務者ハ遲滯ニ付セラレタルモノトス
第一 期限ノ到來後ニ裁判所ニ請求ヲ爲シ又ハ合式ニ催吿若クハ督促ヲ爲シタルトキ
第二 期限ノ到來ノミニ因リテ遲滯ニ付スルコトヲ法律又ハ契約ヲ以テ定メタル場合ニ於テ其期限ノ到來シタルトキ
第三 諾約者カ或ル時期ニ後レタル履行ハ要約者ニ無用ナルコトヲ知リテ其時期ヲ經過セシメタルトキ
(松岡委員)
合式ノ催吿合式ノ督促ト云フ區別ハ
(栗塚委員)
催吿ト云フノハ金ヲ返ヘシテ呉レト云フコト、督促ト云フハ裁判言渡ヲ受ケテ執行ヲ促シニ行クガ督促デス
(松岡委員)
要決書ト云フノモ裁判所ヘ行カヌ中ダロウ、催吿ト督促ハ同ジダ
(南部委員)
元トノ通リ「要決」ガ良カロウ
(松岡委員)
「要決」ト云フ字モ分ラヌガ「催吿」ニ直ス樣ダ
(村田委員)
「要決」ガ宜シイ
(栗塚委員)
要決ニ致シテ置キマシヨウカ、訴訟法ニ何トアリマス
(松岡委員)
訴訟法ニハナイ
(栗塚委員)
催吿シツツ催吿シテヤルノデ御座イマスカ、要決ハ執行ガアル證書ヲ以テ貴君ノ財產ヲ差押マスト云フトキ「コンマンドマン」ヲヤルノデス
(松岡委員)
訴訟法デハ知ラセズニ突然ニヤル其レデナイト物ヲ隱スカラ
(松岡委員)
又ハ合式ナルカ
(栗塚委員)
「合式ナル催吿書又ハ要決書ヲ送リタルトキ」デ御座イマス
(大尾崎委員)
「要決書ハ催吿書ヨリ力有ルモノニシテ直チニ執行ヲ爲ス力アルモノナリ」トアル
(栗塚委員)
ソウデス
(松岡委員)
ソウスルト要決ハ惡ルイ
(栗塚委員)
命令書デ御座イマス
(南部委員)
執行命令書ダ
(委員長)
之ハ訴訟法ト引合セテ見タラ良カロウ
(大尾崎委員)
負債主ガ延ベテ來テモ延ベルコトハ出來ナイト云フノハ不連滯ニナルトアル
(南部委員)
ソウデス
(松岡委員)
手紙ヲヤツテ向ウガ相濟マヌト云フト遲滯ニ付セラレル
(南部委員)
私ニ爲シタ書面デモ跡デ訴ヘニナツタトキ成程彼トキ第二項修正ノ未定私ガ吿知ヲ受ケマシタト云ヘバ宜シイノデス
(松岡委員)
口デ云フテモ良シ、手紙デ誠ニ相濟マヌト云フ
(栗塚委員)
公正ノ爲メノ方ノ式ガ入用ナノデ明カニ明示シテアル、私書ト雖モ債務者ガ明カニ認ムルトキハ公正證書デ認ムルヲ得
(松岡委員)
手紙ガ來テ居テモ其レハイカヌト云フ樣ニナルカラ官ノ手ヲ經テ分ツテ居ルカラ云ハズトモ公式ノ催吿ヨリ上ノ力ガアル位ノモノダ其レヲ行ヒ度イ
(南部委員)
佛蘭西ニハ要決書ト云フノハ一ツ外ナイ「催吿書其他同樣ノ效アル」ト云フテ置ケバ宜シイ
(委員長)
之ハ起按者ノ返事ヲ待テカラニシマシヨウ
(松岡委員)
若シ惡ルク解スルト縱令相對デハドウ云フ催吿ガアロウトモ役ニ立タヌ樣ナ弊ニ陷ルカラ其處ヲ明亮ニスルガ宜シイ
本條第一ハ訴訟法ト引合セルコトニ決ス
第三百五十七條朗讀
第三百五十七條 作爲又ハ不作爲ノ義務ヲ定ムル契約ノ效力ハ第四百二條ノ規定ニ從フ
本條ハ原按ニ決ス
第三百五十八條朗讀
第三百五十八條 契約ハ當事者ノ相續人及ヒ其承接人ヲ利シ又ハ之ヲ害ス但法律又ハ契約ニ於テ格別ノ定メヲ爲シタル場合ハ此限ニ在ラス
(栗塚委員)
「相續人及ヒ其一般ノ承接人」ト云フ字ガ入リマス、其レハ何ゼカト云フト承接人ニ二種アリマス一般ノ承接人ト特別ノ承接人トアリマス一般ノ承接人デナケレバコウ云フコトハナイノデス
(槇村委員)
「其他一般ノ」ガ宜シイ
(栗塚委員)
ソウスルト「及ヒ」ハイリマセン「但シ法律又ハ合意ニ於テ此事ニ付キ格別ニ定メタル場合ハ此限ニ在ラス」ト致シマスガ是レハドウデモ宜シイ
(委員長)
ソレハ良イデハナイカ
本條ハ「及ヒ其承接人」トアルヲ「其他一般ノ承接人」ト改ム
第三百五十九條朗讀
第三百五十九條 債權者ハ其債務者ニ屬スル權利ヲ申立テ及ヒ其訴權ヲ行フコトヲ得
債權者ハ此事ノ爲メ或ハ差押ヲ爲シ或ハ債務者カ原吿又ハ被吿タル訴ニ參加シ或ハ民事訴訟法ニ從ヒテ得タル裁判上ノ代位ヲ以テ第三者ニ對スル間接ノ訴ヲ行フ
然レトモ債權者ハ債務者ニ屬スル純然タル權能又ハ債務者ノ一身ニ專屬スル權利ヲ行フコトヲ得ス又法律又ハ契約ノ明文ヲ以テ差押ヲ禁シタル財產ヲ差押フルコトヲ得ス
(栗塚委員)
「純然タル權能」ハ「單純ナル」トシテハ如何デ御座イマシヨウ
(南部委員)
雜リノナイト云フコトダ
(松岡委員)
單純ナルト云ツテモ分ラヌ
(栗塚委員)
「單純タル」デモ宜シイ
(南部委員)
訴訟法ニ通シテアリマス
(栗塚委員)
通シテアリマス
本條ハ原按ニ決ス
第三百六十條朗讀
第三百六十條 右ニ反シ債權者ハ其債務者カ第三者ニ對シ承諾シタル義務、抛棄又ハ讓渡ニ付キ其損害ヲ受ク但債權者ノ權利ヲ詐害スルノ行爲ハ此限ニ在ラス
債務者カ其債權者ヲ害スルコトヲ知リテ自己ノ働方財產ヲ減シ又ハ自己ノ受方財產ヲ增シタルトキハ之ヲ詐害ノ行爲トス
(委員長)
「抛棄又ハ讓渡ニ付キ」ハ權利者カ義務者カ
(南部委員)
元トノ譯ニハ御座イマセン
(栗塚委員)
承諾シタル義務承諾シタル抛棄承諾シタル讓渡デ御座イマス
(委員長)
債務者ガ抛棄ト云フタカラ債務者ガ權利ノ抛棄ト云フ處ニ氣ガ付カンダロウト思フ
本條ハ原按ニ決ス
第三百六十一條朗讀
第三百六十一條 詐害ノ行爲ノ廢罷ハ債務者ト約束シタル者又ハ轉得シタル者ニ對シ次條ノ區別ニ從ヒ債權者ヨリ廢罷訴權ヲ以テ之ヲ請求ス
債務者カ詐害スルノ意思ヲ以テ故ラニ訴訟ニ失敗シ又ハ請求ノ却下ヲ受ケタルトキハ債權者ハ民事訴訟法ニ從ヒ第三者故障申立ノ方法ニ依リテ訴フルコトヲ得
右孰レノ場合ニ於テモ債務者ヲ訴訟ニ參加セシムルコトヲ要ス
債權者カ詐害ノ行爲ノ廢罷ヲ得ル能ハサルトキハ被吿ニ對シ損害賠償ヲ要求スルコトヲ得
(栗塚委員)
第一項「轉得シタル者」ト云フノハ「其轉得者」ト直シマシタ
(南部委員)
「其」ト云フ字ハナイ方ガ良カロウ
(栗塚委員)
「又ハ其約束シタル者ヨリ取得シタル者」ト云フナラ宜ウ御座イマスケレドモ
(松岡委員)
訴訟法デハ棄却ト却下ト取下ゲトアル
(南部委員)
二項ハ裁判ヲ受ケタコトヲ云フノダカラ裁判ヲ毀ワスニハ第三者故障デナケレバイケナイト云フノダカラ
(栗塚委員)
棄却ト云フコトハ棄却モ却下モ裁判所カラ云フコトデシヨウ佛蘭西デハ投ゲ出スト云フ字デ御座イマス
(松岡委員)
訴訟法ト關係ノモノダカラ調テ貰オウ
本條第一項轉得ノ下「シタル」ノ三字ヲ削ル
第三百六十二條朗讀
第三百六十二條 債權者ハ攻撃スル行爲ノ如何ヲ問ハス其債務者ノ詐害ヲ證明スルコトヲ要ス又有償名義ノ行爲ニ付テハ債務者ト約束シ又ハ之ト訴訟シタル者ノ通謀ヲ證明スルコトヲ要ス
讓渡ニ對スル廢罷訴權ハ有償名義又ハ無償名義ノ轉得者カ最初ノ讓受人ト約束スルニ當リ債權者ニ加ヘタル詐害ヲ知リタルトキニ非サレハ其轉得者ニ對シ之ヲ行フコトヲ得ス
(栗塚委員)
末項ノ「知リタル」ノ下ヘ「トキ」ノ字ガ這入タ方ガ宜シイ樣デ御座イマス一項ノ「又有償名義」ト云フノハ「其他有償名義」ノ方ガ分リマス
(三島委員)
「此他」デハアリマセンカ
(南部委員)
「此他」トシヨウ
(松岡委員)
有償ノ處デハ「詐害アリタル」ヲ「知リタル」ニシタガ到底通謀デナケレバイケナイ
(栗塚委員)
「證明スル」ハ「證スル」トナリマス
(松岡委員)
「證明」ノ方ガ強クハナイカ
(栗塚委員)
「證明」ト云フ字ハ戶長役場デ此人ハ徵兵ヲ免カレテ居ルト云フコトヲ證明シテヤルノデス
(松岡委員)
訴訟法デハ登記官吏ノ認證ト書イテアル
(南部委員)
之ハソウ云フコトデハナイ
(栗塚委員)
訴訟法デハ總テ「證ス」ト云フテアルカラ「證明」ト使ツテ呉レルカ
(南部委員)
ソンナラ訴訟法ヘソウ云フテ置コウ
(栗塚委員)
名詞ニナレバ證據、動詞ニナレバ「證スル」デス
(松岡委員)
訴訟法ハ民法ト商法ニ定マツタコトヲ使ウト云フテ居ル
(栗塚委員)
訴訟法デ斷ハルト云フテ來タノデ御座イマスカラ再調査デハ「證スル」ト云ツテ「證明スル」トハ云ハヌ積リデス
(南部委員)
認證ト別ナレバ宜シイ
(松岡委員)
之ハ三島サンノ方デ何レヲ「證明」トシ何レヲ「證スル」ト定メルガ宜シイ私シハコウ云フ處ハ「證明」トシテ公證ニ持ツテ行クノガ「證スル」トシタイ
(栗塚委員)
人カラ爭ハレタ時デナケレバ詐害ヲ證スルト云ヘナイ、證明ハ人カラ爭ハレンデモ裁判所ニ辯明スルノモアル今迄辯明ト譯シタ處モ御座イマス
(松岡委員)
ソレハ訴訟法ノ疏明デハナイガ
(委員長)
疏明ト云フノハ商法ニモアルガ證據ヲ列記シテ出スノヲ疏明ト云フガ宜シイトナツタカラ民法ニモアリハセンカ
(栗塚委員)
御座イマセン學校デ何々ノ學問ヲシテ居リマスソレデ、コウ云フ證據ガ御座イマスト云フノハ「ユヅチブイス」ト云フノデス
(南部委員)
ソンナラ疏明ダ
(栗塚委員)
人ガ爭ツテ來タ時ハ證明スル
(南部委員)
證明スベキモノノ用フル方ハ證據篇ニ云フテ行キマスカ
(栗塚委員)
行キマセン唯ダ己レニ權利アリト云フコトヲ人ノ爭ハントキ己レニ權利アルト云フトキ虛言申シマセンコノ通リ正當デ御座ルト云フ字デ御座イマス
(松岡委員)
訴訟法ニ疏明ト證明トアリマスカラ聞イテ下サイ
(委員長)
訴訟法中商法ト意味ヲ合セルガ宜シイ
(三島委員)
證明ト云フト證據ヲ出シテ明カニスル樣ニナリマス
(栗塚委員)
二項ハ「讓渡人」ヲ「取得者」ト致シマス
(松岡委員)
有償名義デ轉得者ヘ係ルトキハ最初ノ取得者ガ通謀デアツタト云フコトヲ證明シテ其通謀デ詐害ヲシタコトヲ通謀者モ亦知ツタト云フコトヲ證明シナケレバナランカ
(栗塚委員)
ソウデスソレダカラ轉得者ハ三人目デス
(松岡委員)
最初ノ轉得者ヘ行ク時分ハ無償名義ナレバ通謀ノコトモ何モ云ハズシテ讓ルカ
(南部委員)
ソウデス
(栗塚委員)
一項デ無償名義ノモノハ這入ラント云フ御說デスカ
(南部委員)
此他ノ下ヘ無償名義ハイラナイ無償名義ニハ通謀ヲ證スルニ及バン
(松岡委員)
手重クシテ容易ニ戻サヌ樣ニシタノカ
(栗塚委員)
無償名義ナレバ無論行クト云フコトデハナイカ
(委員長)
有償名義ナレバ容易ニ變據セラレヌト云フコトダロウ
(栗塚委員)
南部サンガ三島サンニ係ツテ訴權ヲ訴ヘルトキハ有償名義ノミヲ云フテ居ナガラ北畠サンニ南部サンガ係ルトキハ無償名義モ云フテ居ル
(南部委員)
ソレハ轉得ニナツテ居ルカラ直接ニ貴君ト約定シタ三島サンナレバ若シ無償名義ナレバ私シカラ三島サンニ係ル時分ニハ三島サンハ通謀サレテ居ルト云フコトヲ證據立テルニ及バヌ、栗塚君ガ詐害ノ意思ガアルト云フ瑕疵ヲ生ジサヘスレバ宜シイト云フノダ
(委員長)
轉得者ダカラ容易ニ係レヌ
(栗塚委員)
有償名義ノ時ノミ三島サンガ栗塚ト通謀シタト云フコトヲ貴君ガ證スルゾ、北畠サンノトキハ皆證サナケレバナラン
(南部委員)
貴君ガ其詐害ヲ行ヘバ此契約ハ取消サレル又三島サンガ一向知ラズニ北畠サンニ云フテ下サラヌトキハ北畠サンハ此詐害ヲ知ツタト云フコトヲ證據立テナケレバナラヌト云フコトニナリハセヌカ
(栗塚委員)
今ノ例デ南部サンガ債權者私ガ負債者デ三島サンニ只家ヲヤツタ三島サンハ通謀スルモセヌモナク突然南部サンガ係レル
(松岡委員)
有償ナラ三島サンガ通謀デナケレバナラン
(栗塚委員)
北畠サンハ三島サンニヤツタトキハ南部サンモ害スト云フコト北畠サンガ知ツタトキデナケレバイカヌゾヨト云フノデ御座イマスカラ宜シウ御座イマシヨウ
(松岡委員)
ソレデハ宜シイ
本條第一項「證明」ノ文字ハ商法訴訟法ト問合ノ上定ムルコトニ決ス第一項要スノ下「又」ヲ「此他」ト改ム第二項「讓受人」ヲ「取得者」ト改ム
第三百六十三條朗讀
第三百六十三條 詐害行爲ニ先タチ權利ヲ取得シタル債權者ニ非サレハ廢罷ヲ請求スルコトヲ得スト雖トモ廢罷ヲ得タルトキハ其廢罷ハ總債權者ヲ利ス但各債權者ノ間ニ於テ適法ノ優勝原因ノ存スルトキハ此限ニ在ラス
(栗塚委員)
之ハ「得スト雖トモ廢罷ヲ得タルトキハ其廢罷ハ」トアリマスノハ少シ原意ト違ウト思ヒマス詰リ此處デ云フノハ廢罷ハ詐害行爲ニ先立チ權利ヲ取得シタル債權者ニ非ザレバ之ヲ請求スルヲ得ズト云フノガ本體デ御座イマス併シ廢罷ヲ得タルトキハ前債權者ヲ利スト云フノデ御座イマスカラ「廢罷ハ詐害行爲ニ先立チ權利ヲ取得シタル債權者ニ非サレハ之ヲ請求スルコトヲ得ス然レトモ廢罷ヲ得タルトキハ總債權者ヲ利ス」デ宜シイト思ヒマス
(松岡委員)
ソレハ入ラヌ
(栗塚委員)
ソレカラ但書ガ入ラヌコトデ御座イマス質ニ取ツテ居タラ先取特權ハナイト云フコトデ御座イマスカラ但以下ハ刪除シタ方ガ良カロウ唯ダ此處デ云フノハ廢罷ハ誰レガ出來ルカコウ云フ債權者デナケレバナラン獨リ債權者ガ居レバ外ノ債權者モ向ケ居ルソレデ後ニ債權者ノ區別ガ入ルト云フノハ申スニ及バヌト思ヒマス
(松岡委員)
起按者ノ意ハ一旦廢罷ハ總債權者ヲ利スト云フト特權ガ消ヘルト思フト行ケヌカラ元ト々々持ツテ居ル特權ハアルゾヨト云フノダロウ
(栗塚委員)
ソウデス
(南部委員)
是レモ必ラズ利セヌトモ云ヘズ害ストモ云ヘン併シ先取ノコトハ別ノコトダカラ
(村田委員)
刪リマシヨウ
(大尾崎委員)
「然レトモ」ハ「若シ」デハアリマセンカ
(栗塚委員)
コウ云フ債權者デナケレバ出來ヌゾヨ併シ跡ノ債權者ハ出來ヌケレドモ利益ハ蒙ルゾヨト云フノデ御座イマス
(委員長)
行爲ノ後ニ權利ヲ得タモノハ權利ヲ請求スルコトヲ得ズ然レドモ廢罷ノ利益ヲ得タモノハ利者ヲ蒙ルコトガ出來ルト云ヘバ「然レトモ」ガ利ク
(南部委員)
同ジコトデス
(委員長)
但書ハ刪リマスカ
(大尾崎委員)
刪リマシヨウ
(栗塚委員)
置クコトニナルト優勝ノ論ガアリマス今迄ハ優先ト申シタ字デ御座イマス
(三島委員)
今村ハ先ンズルト云フコトハ無イト云フコトデ御座イマス
(栗塚委員)
此處ハ撰バセルト云フ字デ御座イマス「優拔」デハ如何デス
(南部委員)
優先ガ宜シイ
(渡委員)
元ノ譯ノ優先デハイケマセンカ
(大尾崎委員)
優先ガ宜シイ
(南部委員)
優先ガ良カロウ
(栗塚委員)
訴訟法デハ何ト云フテ居リマスカ
(南部委員)
優先ダロウ商法ナゾハ優先ト云フテ居ル
(三島委員)
「優入」ト云フ字ガ續ク字デス
(村田委員)
極ク元トノハ「優進」トアル
(栗塚委員)
ソレニハ「先取」ガ宜シイ
(南部委員)
ソレナラ「先取」ガ宜シイ
(松岡委員)
ソレガ良カロウ
本條ハ左ノ如ク改ム
廢罷ハ詐害行爲ニ先タチ權利ヲ取得シタル債權者ニ非サレハ之ヲ請求スルコトヲ得ス然レトモ廢罷ヲ得タルトキハ總債權者ヲ利ス各債權者ノ間ニ於テ適法ノ先取原因ノ存スルトキハ此限ニ在ラス
第三百六十四條朗讀
第三百六十四條 廢罷訴權ハ詐害所爲ノ有リタル時ヨリ三十个年ニシテ時效ニ罹リ消滅ス若シ債權者カ詐害ヲ覺知シタルトキハ其覺知ノ時ヨリ二个年ニシテ消滅ス
右ノ時效ハ第三者故障申立ノ訴權ニ之ヲ適用ス
(槇村委員)
外ハ行爲トナツタガ之ハ所爲デ宜シイカ
(栗塚委員)
行爲ハ「アクト」デ御座イマスガ之ハ「フエー」トアツテ所爲デ御座イマス本條ハ原按ニ決ス
(栗塚委員)
今村カラ正誤シテ參リマシタ三百二十五條第一「當事者又ハ其代人ノ承諾」トナリマス
(松岡委員)
訴訟法デハ代人ヲ皆代理人ト直シタ
(村田委員)
代理人ト云フト委任狀カ何カナケレバナラン
(委員長)
民法ト相談スルコトニナツテ居ル
(栗塚委員)
今村ハ代人ハ廣シ代理人ハ狹シト云フテ居リマス
(委員長)
訴訟法ト民法ト一定シナケレバナラン
(栗塚委員)
ソレデハ此處ハ「代人」トシテ置キマスソレカラ三百二十六條ノ二ハ「又ハ有效ニ代理セラレタルコト」ト入レマス
(委員長)
代理トシテ置イテ後デ直スコトニシマシヨウ
于時午後四時五十分閉會