旧民法・法例（明治23年）

法律取調委員会 民法草案議事筆記 第84回

参考原資料

備考

  • 未校正のテキストデータです．
民法草按擔保編第八十四回議事筆記
自第千二百五十八條至第千二百七十五條
明治二十一年九月二十五日午前八時二十分開會ス
[画像]
（大尾崎）
ヤリマシヨウ
第千二百五十八條朗讀ス
第千二百五十八條　總テ債權ヲ處分スルノ能力アリ又ハ合式ニ代理セラレ若クハ此カ爲メニ許可セラレタル抵當債權者ハ抵當ヲ有スルト無特權ナルトヲ問ハス同一債務者ノ他ノ債權者ノ利益ニ於テ自己ノ抵當又ハ單ニ其順位ヲ抛棄スルコトヲ得伹第五百二十二條及ヒ第五百二十五條ニ更改ニ關シテ記載シタルモノヲ妨ケス
若シ抵當債權カ順次ニ讓渡、抛棄又ハ代位ノ目的タリシトキハ優先權ハ旣ニ爲シタル記入ノ緣邊ニ自己ノ權利ノ設定證書ヲ附記シ又記入カ未タ爲サレサリシトキハ特ニ之ヲ爲シテ其得取ヲ第一ニ公示シタル承權人ニ屬ス〔千八百五十五年三月二十三日ノ佛法律第九條〕
（修正案）　第一項左ノ如ク改ム凡ソ債權ヲ處分スルノ能力アル抵當債權者ハ同一債務者ノ他ノ債權者ノ利益ニ於テ自己ノ抵當又ハ其順位ノミヲ抛棄スルコトヲ得但第五百二十二條及ヒ第五百二十五條ニ於テ更改ニ關シ規定シタルモノヲ妨ケス第二項「順次」ヲ「漸次」ト改メ「既ニ爲シタル」ノ六字ヲ刪リ「記入ノ」ノ上ニ「承權人中」ノ四字ヲ置キ「又記入カ未タ爲サレサリシトキハ」ヲ「又ハ記入ノアラサリシトキハ」ト改メ「特ニ」ノ二字ヲ刪リ「其得取」ヲ「其取得」ト改メ「承權人ニ屬ス」ヲ「者ニ屬ス」ト改ム
（松岡）
「合式ニ代理セラレ」ハ委任ノ代理デスカ
（栗塚）
左樣デス
（松岡）
許サレタハ法律上カ
（栗塚）
矢張、許サレタ、ハ本人カラ頼マレタト云フノデス
（村田）
之ハ謂ハナクトモ分タコトダ
（松岡）
之ガ爲メ許サレハ分ラン
（栗塚）
卽チノ意味デ御座イマス
（松岡）
代理スルト云フモノデシヨウ
（栗塚）
左樣
（村田）
漸次ニト云フハ二度ノコトデシヨウネ
（栗塚）
ソウデスソレダカラ、兎モ角モ縁邊ヘ記入シタ人ヘ往クト云フノデス
（村田）
漸次ト云フハ一遍ヤツタガ復タト云フ樣ニ見ヘルカ知レン
（松岡）
「數次」デモ良シイ
（村田）
數次ニ讓渡ナラ良シイ惡意デ得タ奴、後日得タ奴モアロウカラ前ニアツタノヲ知ラズニヤツタノモアルカラ
（栗塚）
此所ハ私ガ松岡君ニ賣ル松岡君ガ南部君ニ賣ル南部君ガ村田君ニ賣ルト云フノモアリマス
（村田）
ソレモアルガ一人デヤルノモアル、相續人ハ知ランノカ
（南部）
相續人ノ知ランノモアリマス
（松岡）
孰レ一人ノ人カラ一物ヲ二人ヲ得タ場合ノトキ動產デハ先ニ取タ者ガ勝ト云フ同ジ意味ニナリハセンカ
（槇村）
漸、ト云フノハ違フネ
（村田）
數次ト云フガ良シイ
（大尾崎）
次第ニ得ルト云フノダロウ、幾度ニモダ
（松岡）
幾度ニモト云フガ良シイ
（槇村）
私ガ貴君ニ物ヲ賣ル、書物ヲ一冊ヅツ賣ルト云フノダネ
（大尾崎）
先ヅソウデス
（槇村）
「漸次」デスネ
（村田）
切賣リデハナイ
（松岡）
抛棄シタリ廢罷シタリスルト云フノデ私ガ一方ヘ以テ讓リ又或ハ代理ノ爲メ渡シタコトモアル、スルト讓ラレタ人ヤ代位デ得タ人ハ何方デモ先ニ書入レタラ其人ガ得ルノダ、元來讓渡スト場所ニ依ルト一緒ニ含ムトキ
（栗塚）
卽チ含ムノデハナイ交換贈與モ皆這入テ居ル
（大尾崎）
順次ヲ抛棄シタトキハ何ウナルカ只ノ抵當無シノ人ニナルカ
（栗塚）
ソウデ御座イマス
（大尾崎）
抛棄スルト無特權者ニナルノダロウ
（松岡）
無特權者ト云フハ抵當ヲ抛棄スルノデアルニ順位ヲ抛棄スル丈ケダ
（大尾崎）
順位ヲ抛棄スルト云フハ無特權者ニナルヨウニ聞ヘル
（松岡）
無特權者ニハナラン
（西）
先ニ御取リナサイト云フ人ハ無イ
（南部）
併シアルダロウト思フ二番抵當デハ充分取レントキハ其人ノ頼ミニ依テ此者ニ金ヲ取ラスレバ其人ニ關係ガ有テ取レル望ミガアレバ隨分無イコトハナイ
（松岡）
二番デ、ドウシテモ取レルトサヘ見レバデスネ、待テ居ルコトノ出來ル人ナラバ隨分アリマシヨウ
（松岡）
ケレドモ之ハ賃ハナイノダネ、先ヅソレハ夫デ良シイガ第五百二十二條更改ニ關シ云々妨ゲズハ如何ナル意味ニナルノデスカ
（栗塚）
人ガ悉皆代テ仕舞ヘバ別ゾヨト云フノデ、詰リ義務者ガ代リ權利者ガ代ルコトモアルゾヨ、ソレハ別ダト云フノデアリマス
（松岡）
スルト二項目ノ漸次ノ處デスネ
（村田）
本統ヲ云フト、重ネテ讓渡又ハ抛棄ノ上ニ、ト云フノダ
（南部）
再ビ、ダネ
（松岡）
一人々々與ヘ或ハ停止シテ行クナラバソコデ爭ヒガアル筈、ソレガ無イカラ一人シカ讓ラレテ居ラン
（栗塚）
二人モアルノデス
（松岡）
受ケテ居ル人ハ何時モ一人シカ無イ
（南部）
先越シタ者ガ取ル
（松岡）
順次デ後カラ々々々行クナラ心配ハ要ラナイ
（栗塚）
若シ抵當ガ數次ニ讓渡、抛棄ノ目的タリシトキハトスルカ
（村田）
其方ガ良シイ
（淸岡）
數次ニト云フテモ同ジデ何遍ニモト云フノダカラ漸次モ漸々ダカラ同ジデス
（南部）
成程同ジヨウデスネ
（淸岡）
一ノ債權ヲ藪次ニト云フト刻ンデ持テ來イト云フニ聞ヘル
（松岡）
動產デ一ノ物ヲ二人三人ニ賣タトキハ先ニ取タ者ガ有、ト何所ニカアツタヨウデス
（栗塚）
ソウデ御座イマス
（松岡）
アレハ如何ニ書イテアツタカ
（栗塚）
同時、デハナカツタカ知ラン
（村田）
先取特權ノ處ダ
（栗塚）
一物ヲ數回ニカ
（大尾崎）
數回ハ良イネ漸次ト云フト一ノ物ヲ再々ニト云フ譯ケダナ、チビリチビリト切出シテ行クヨウダ
（南部）
註ニハ數次ト譯シテアルネ
（淸岡）
數次ト云テモ矢張リ、チビチビト聞ヘル
（槇村）
一體、ドウ云フモノカ
（大尾崎）
一ノ物ヲ二度賣ルコトダ、親ガ賣タモノヲ子ガ復タ知ラズニ賣タト云フ素ヨリ子ハ善意ダ賣タ、兎モ角モ其場合ニハ先ニ記入シタ者ニ歸スルト云フノデス
（槇村）
ソレナレバ今少シ精ハシク書カナケレバナラン
（松岡）
意味ヲ言フト一人抵當債權ヲ數人ニ讓渡、抛棄又ハ代位ノ目的トシタル優先權ハ、ト云フノデス
（槇村）
其フ書イテハ如何
（南部）
數人ト云フト此方ガ誰ニト云ハナケレバナランカラネ
（大尾崎）
一ノ物ヲ二度賣タト云フノハ入用ナ所ダ
（北畠）
轉賣シテアルト云フノダネ
（槇村）
轉賣カ
（村田）
轉賣ハ往カン
（西）
轉賣デハ往カン
（松岡）
本ガ一ツデナケレバナランカラ轉賣デハ往カン
（大尾崎）
「數次」ガ良カロウ
（松岡）
「數次」トヤツテ置キマスカ
（槇村）
私ガ貴君ニ物ヲ讓ルニ一ツ物ヲ、チビチビ賣タノデシヨウ
（大尾崎）
ソウデハナイ
（槇村）
「數次」ト云フト其フ見ヘル
（栗塚）
「若シ一箇ノ抵當債權カ數人ニ對シ讓渡抛棄又ハ代位ノ目的タリシ」トヤルカ
（村田）
數人ニ一ノ物ヲ初メカラ一ツヤルノダカラ
（栗塚）
一時デモ二三日置イテヤツテモ宜シイノデス
（槇村）
數人ニ對シ、ト云フト聯合シテ居ルヨウニ見ヘル
（村田）
漸次ニ數人ニ對シ、デ良シイ
（槇村）
漸次ニ數人ニ對シ、ハ良シイ
（大尾崎）
債權ヲ數次ニ數人ニ對シ讓渡抛棄又ハ云々ガ良シイ
（松岡）
スルト債權ヲ數人ダ
（栗塚）
「債權ヲ數次ニ數人ニ對シ讓渡抛棄又ハ」云々デ良シイ
（松岡）
其フ、ソレデ分ル
（淸岡）
「目的ト爲シタルトキハ」デ良シイダロウ
（大尾崎）
其レナレバ良シイ
（栗塚）
「爲セシトキハ」デアリマス
（淸岡）
上ニ讓渡抛棄ト云フコトガアリマス
（南部）
讓渡ノ目的、抛棄ノ目的、代位ノ目的、デアリマス
（淸岡）
目的ガ皆之ヘ係ルノカ
（村田）
左樣
（淸岡）
目的ニト云フノハ分ランネ、讓渡タルトキデハナイカ
（栗塚）
ソウ云フコトデス
（淸岡）
讓渡ノ目的トスルノデハナイ卽チ讓渡タトキ優先權ノダ
（松岡）
優先權ヲ讓渡タ目的物ニアルノダ尙ホ渡タカ抵當債權ヲ讓渡ノ目的トシ又ハ抛棄ヲ目的トシタモノダ
（栗塚）
左樣
（北畠）
宜シウ御座イマシヨウ
（大尾崎）
宜カロウ
本條ハ第二項「若シ抵當債權ヲ數次數人ニ對シ讓渡抛棄又ハ代位ノ目的ト爲セシトキハ優先權ハ」トシ其他ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
[画像]
第千二百五十九條朗讀ス
第千二百五十九條　右ノ外第千二百九十一條ノ條例ハ前二條ノ場合ニ之ヲ適用ス
（修正案）　「條例」ヲ「規定」ト改ム
（南部）
「第千二百九十一條」トアルハ「第千百九十一條」ノ誤リデアリマス
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決シ「第千二百九十一條」トアルハ「第千百九十一條」ト正誤ス
[画像]
第千二百六十條朗讀ス
第千二百六十條　抵當債權者又ハ無特權債權者カ記入セサル抵當ヲ知リテ之ヲ自認シタリト雖トモ其債權者ヲシテ記入ノ欠缺ヲ利唱スルノ權利ヲ失ハシメス
（修正案）　「無特權債權者カ」ヲ「無特權債權者ハ」ト改メ「記入セサル」ヲ「記入ナキ」ト改メ「其債權者ヲシテ」ノ七字ヲ刪リ「利唱スルノ權利ヲ失ハシメス」ヲ「申立ルノ權利ヲ失ハス」ト改ム
（松岡）
修正ハ「無特權カ」ヲ「ハ」ニナツテ「記入セサルカ」「記入ナキ」ト「其債權ヲシテ」ト云フ七字ヲ刪ル「利唱スルノ權利ヲ失ハシメス」ヲ「申立ルノ權利ヲ失ハス」トアルガ「自認」ト云フハオカシイ「自認」ト云フハ我ガ方ヲ云フノデス
（村田）
之ハ「自認」デ良シイノデス自分デ自白シタノデ記入ノ無イモノヲ、抵當ヲ設定シタト云フコトヲ自認シタノデ當リ前ナラ登記ガ無イカラ知テ居タラ自認スモ往カンノダガ抵當ノ方ハ自認シタ處ガ構ハヌ矢張先ノ人ノ記入ノ無イコトヲ申立ルコトガ出來ル、ノデス
（松岡）
知タト云フコトヲ自認シタノカ
（村田）
左樣抵當ガ記入ノ無イコトヲ知テ居タノデ貴君ニ記入ノ無イコトヲ知テ抵當ニ取タ、スルト當リ前貴君ニ這入タコトヲ知テ居タラ出來ヌケレドモ登記ナラ出來ヌガ抵當ナラ出來ルノデス
（南部）
抵當債權者又ハ無特權債權者ガ記入ノ無イ抵當ヲ知テ、成程貴君ノ方ニ記入ガ無イ抵當ヲ取テ居タネ、記入ノ無イコトヲ知テソレカラ私ガ自認シテ貴君ノ抵當記入シテ無イト知テ居ルカラ無特權債權者ハ貴君ガ抵當ニ取テ居ルケレドモ記入シテ無イ先取特權ハ無イソレヲ知テ私ガ認メテモ記入ノ缺ケテ居ルト云フコトヲ申立ルコトノ權ハ失ハヌノデス
（元尾崎）
前ニ記入ノ無イガ抵當ヲ取テ居ルコトハ認メテ居ルト云フテモガ後申立ル權アルト云フノダロウ
（工藤）
抵當ノ有ルヲ知タ以上ハ自分ガ記入ハ出來ルカ否ト云フ問題デハ併シナガラ登記所カラ云フト抵當ヲ知テ居レバ利唱スルト見ヘルガ法律上記入ガ無ケレバ効ガ無イカラ記入シテ無イト知テ居テ居リナガラ抵當ニ這入テ居ルト自認シテ居ルト自分ハ確カニ知テ居テモ後ニ利唱スルニハ差支ナイ、ト云フノデ松岡サン抵當ニ取テ居ルハ確カニ認メテ居ル其人ニ向テ云テモ認メテモ權利ヲ失フコトハ無イト云フノデス
（大尾崎）
妙ナコトヲ云フネ
（元尾崎）
無クトモ良シイノデ記入ノ無イモノハ第三者ニ對シテ効ハナイハ定マツテ居ル
（村田）
ソウデナイ
（松岡）
自認ト云フハイランネ
（工藤）
自認シタト云フコトハ必要デアリマス
（松岡）
人ニシタコトヲ自認ト云フコトハナイ
（工藤）
私ガ卽チ認メルノデス
（淸岡）
自認ト云フコトハ惡イゼ
（南部）
而シテ己レガ二番目ニ居ルモノト認メテモ往カント云フノデス
（元尾崎）
貴君ガ抵當ニ取テ居ルコトハ知テ後カラ金ヲ貸シテモ登記ガ無イ以上ハ往クノデシヨウ
（工藤）
只、人ノ權利ヲ認メテハ往カンダロウト云フ併シナガラ假令認メテ居リナガラモ、ト云フノダカラ必要デアリマス
（大尾崎）
善クナイコトヲ教ヘルネ
（南部）
第三百七十條ヲ御參照ニナルト分リマス、私ガ元尾崎サンニ賣テ復松岡サンニ賣タ松岡サンガ、私カラ讓タト知タ以上ハ登記シテモ往カン惡意ニナルカラ、ソコガ違フ
（大尾崎）
讓渡ナラ往カンガ抵當ナラ構ハヌトナルネ
（南部）
左樣デス
（大尾崎）
之ハ善クナイ法律ダ
（元尾崎）
先ヅ々々コンナモノデシヨウ
（松岡）
自認ト云フノハ註抔モソレニ依テ居ルヨウダガ自認ト云フノハ「承認」ト云フヨウニシタイ人ノ爲タコトヲ認メテ居ルト云フヨウニシタイ
（南部）
金ヲ借リマシタト云フコトヲ認メテ居ルコトトハ違フゼ
（元尾崎）
抵當ヲ認知シタトキト雖モトシテハ如何
（松岡）
其方カラ云フト向ウガ分ルカラ自認スルト云フノハ我ガ爲ダコトヲダカラ、此所デソンナコトハ用ガナイ
（工藤）
抵當ヲ知テ之ヲ認メタト云フノダカラ認知トナロウデハナイカ
（松岡）
モノガ起テ來テ我ガコトヲ認メルコトヲ云フノダカラ自認ダガ之ハソウデハナイ
（南部）
「自認」ト「承認」トノ區別ハ原書ヲ調テハ如何
（松岡）
若シ自認ガ自白ト云フ字ナラ、誠ニ餘計ナ文字デス
（元尾崎）
抵當ヲ認知シタリト雖モガ良イデハナイカ
（槇村）
一體ハオカシイコトデス
（元尾崎）
譯ケハ分テ居ルガ文ハドウセ此法律ハオカシイ
（北畠）
「抵當ト知リテ」ト云フヲ「抵當ヲ認知シタリト雖モ」トヤツテ「知リテ」ト云フヲ「認」ノ字ノ下ヘ持テ往タラ宜カロウ
（南部）
ソウスルト惡クナツテ仕舞、之ヲ認知シト云フ文字ヲ用イテ居ルカラ、ネ
（元尾崎）
「記入無キ抵當債權者アルコトヲ知リテ之ヲ認メタルトキト雖モ記入ノ缺ケシヲ申立ルノ權利ヲ失ハス」トシテアルノデス
（大尾崎）
同ジコトダ
（西）
私ハ知テ居マス、ト云フノハ必要ナノデ知テ居ルガ其人ハ記入シテ居ランカラト云フノハ自白ノ所ダロウ
（工藤）
抵當バカリナラ記入ノミデ効力アルガ只ノ人ガ取テ居ルト知リナガラモ記入ノ無イ以上ハ決シテ申立ル權利ヲ失ハヌト云フノデス
（渡）
知テ居テモ「無特權者」ヲ刪テハ抵當トシタラ人ノコトト自分ノコトト混雜スルノデス
（松岡）
ソレハ「ハ」デモ同ジテス
（南部）
「失ハシメス」ダカラネ
（松岡）
只「債權者」デ宜シイ
（村田）
之デ往キマシヨウ
（淸岡）
記入無キコトヲ認メルトキト雖モトヤロウ
（松岡）
頭ヲ「債權者」トシテ其フヤリマシヨウ
（元尾崎）
頭マハ債權者デモ宜シイ債權者ハ他ノ記入無キ抵當債權者アルコトヲ知リテ之ヲ認メタト雖モ記入ノ缺ヲ以テ申立ルノ權利ヲ失ハズ、トシテ宜シイ
（松岡）
其レハ妙デス
（南部）
何ゼ自認ト云フコトヲ嫌フカ
（元尾崎）
言葉ガ足ランカラ
（村田）
他ノ債權者アルヲ知テデナイ記入無イコトヲ知テダ
（元尾崎）
抵當アルコトヲ知テダ、抵當ガ主デス
（村田）
記入無イガ主デス
（元尾崎）
記入無キコトハ素ヨリ知レテ居ル、先ヅ我輩ノ修正說ハ斯ノ如クソレガ否ナラ勝手ニナサイ
（淸岡）
債權者ハト云フノダカラ債權者カラ云フト、他ノハ無論ダ
（元尾崎）
自分ノ債權者カラ云フト主客ニナツテ來ルノデス
（西）
此儘ニ置キ度イ
（渡）
良イ說ガ無ケレバ此儘デ置キタイ
（槇村）
善クハナイ
（松岡）
「他」ノ字ヲ除ケテモ宜シイ
（元尾崎）
ソレデモ宜シイ
（南部）
之ヲ認メルト云フト違フゼ
（西）
自認ト云フノガ必要デス
（松岡）
ソンナラ自認丈ケ許シテモ宜シイ
（淸岡）
記入ナキ抵當タルコトヲ知リダ
（南部）
アルコトダ
（元尾崎）
アルコト位ヒデ宜シイ
（北畠）
抵當タルデスネ
（大尾崎）
此儘デ良シイ
（松岡）
ソレデハ再調査ヲシテ貰ハナケレバナラン
（工藤）
記入ナキ抵當アルコトヲ知リテデスカ
（元尾崎）
左樣
（工藤）
ソレナラ害モ無イカラ宜シイ
（淸岡）
抵當アルコトヲ知リテ、ト云フコトハナイ
（松岡）
文章ヲ大勢デ喃々言テモ往ン終ニ愚文ニナツテ仕舞
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
[画像]
第千二百六十一條朗讀ス
第千二百六十一條　不動產賣拂代價ヲ以テ全部ノ辨濟ヲ受ケサル抵當債權者ハ其尙ホ受ク可キモノニ付テハ無特權債權者タリ
若シ不動產ノ賣拂ニ先チテ動產有價物ノ全部又ハ一分ノ配當ヲ爲ストキハ抵當債權者ハ其債權全額ノ爲メ無特權債權者トシテ假リニ其配當ニ加ハル
其後ニ至リ抵當不動產ノ代價ヲ配當スルトキハ右ノ債權者ハ動產有價物ニ付キ何等ノモノヲモ受取ラサリシカ如ク其配當順序ニ加ハル然レトモ此ノ如クシテ全ク辨濟ヲ受ク可キ者ハ無特權債權者トシテ受取リタル金額ヲ減除スルニ非サレハ其抵當ノ配當額ヲ受クルコトヲ得スシテ其減除シタル金額ハ動產財團中ニ之ヲ返還ス
抵當ニ因テ一分ノミノ辨濟ヲ受クルコトヲ得可キ者ニ付テハ其動產財團ニ對スル權利ハ有益ニ順序ニ加ハラサル所ノ金額ニ從ヒ確定ニ定メラレ其者ノ右ノ割合外ニ受取リタルモノハ其抵當ノ配當額中ヨリ扣除シ之ヲ動產財團中ニ返還ス
右ノ如ク返還セラレタル金額ハ純粹ノ無特權債權者ト配當順序ニ加ハルヲ得ス又ハ債權ノ一分ノミニ付キ之ニ加ハリタル抵當債權者トノ間ニ於ケル新配當ノ目的ヲ成ス〔佛商第五百五十二條乃至第五百五十六條〕
（修正案）　第一項「其尙ホ受ク可キモノニ付テハ」ヲ「其殘額ニ付テハ」ト改ム第二項「全部又ハ一分ノ」ノ七字ヲ刪リ「加ハル」ヲ「加入ス」ト改ム第三項「ヲ配當スルトキハ右ノ」ヲ「ノ配當アルトキハ抵當」ト改メ「其配當順序ニ加ハル」ヲ「其配當ニ加入ス」ト改メ「此ノ如クシテ」ヲ「此配當ニ於テ」ト改メ「無特權債權者トシテ」ヲ「動產ノ配當ニテ」ト改メ「得スシテ」ヲ「得ス」ト改ム第四項左ノ如ク改ム不動產ノ代價ノ配當ニ於テ一分ノミノ辨濟ヲ受クルコトヲ得ヘキ者ニ付テハ配當ニ加ハルコトヲ得サリシ殘額ニ從ヒ其動產財團中ニ對スル權利ヲ定ム但此割合外ニ受取リタルモノハ其抵當ノ配當額中ヨリ扣除シ之ヲ動產財團中ニ返還ス第五項左ノ如ク改ム右ノ返還金額ハ純粹ノ無特權者ト有益ニ配當ニ加入スルコトヲ得サルカ又ハ債權ノ名ノミニ付キ之ニ加入シタル抵當債權トノ間ニ於テ更ニ之ヲ配當ス
（元尾崎）
其殘額ニ付テハ抵當代リニ他ノ物ヲ取ルカ
（松岡）
有價物ハ動產ニ非ザルモノカ
（栗塚）
動產デアリマス金錢ハ皆動產デス
（松岡）
動產物不動產物ノ配當ヲ爲ストキハトアルカ動產有價物ト書イテモ有價物ナラ賣モスル金錢ナラ其儘往クノハ分テ居リマス、スルト不動產ノ賣拂ヒニ先立チテ動產ノ配當トナルトキハデ宜シイ
（栗塚）
動產デ品物デアツタトキハ賣拂代價ト云ヒダカラ
（松岡）
ソンナラ二項ニ何ゼ云ハンカ
（栗塚）
金デアツタラ賣拂フニ及バズ金デ無ケレバ賣拂代價ト云フモノデ、ソレデ有價物、トヤツタノデス動產ニハ無論賣拂代價デ動產ニハソウデ無イトキガアリマスカラデ實ハズート代價ト云フ位ヒデ宜シイノデ金錢ノトキ動產ノ代價ト云ヘルカ否、ソレデ無理ナガラモ置キマシタ
（松岡）
動產デアツタラ金錢ニ代ツテ初メテ有價物トナルト云フノカ
（栗塚）
左樣デス
（松岡）
無理ナ話ダネ
（栗塚）
其意味ニ違イナイガ少シ苦シウ御座イマス併シナガラ之ヲ代價ト云フモオカシイ
（松岡）
動產ノ代價ト云フハ悉ク有價物ダ
（栗塚）
辨濟ヲ受ケザリシ如クカ
（松岡）
未ダ其方ガ良シイ、上ニ全部ノ辨濟トアルカラ「何等ノ物ヲモ受取ラサリシバ」ハオカシイ
（南部）
末項「有益ニ」ト云フ字ハ起案者ガ入レタノデ御座イマス
（淸岡）
知ラン顔シテ受取抔ハ云フニハ及バンデハナイカ「何等ノモノモ受取ラサリシ」ハオカシイ
（松岡）
之ハ必要デス
（淸岡）
分リ切テ居ルカラ知ラン顔シテ受取ハ云ハンデモ配當ニ加入シテ受取レト併シナガラ餘リハ返セト云フノデス
（松岡）
配當帳簿ヲ作ル自分這込ヲシナケレバナラン其トキ全額ヲ持出スノデス
（栗塚）
「何等ノモノヲモ受取ラサリシ」ハオカシクバ「辨濟ヲ受サリシ」デ御座イマス
（松岡）
文字ハソレデ宜シイ「何等」ト云フハオカシイ
（淸岡）
動產有價物ニ付辨濟ヲ受ケザリシトキハトシテ宜シイ
（栗塚）
「何等ノモノヲモ受取ラサリシ」ガオカシクバ「辨濟ヲ受ケサリシトキ」トシテモ宜シイ
（北畠）
其方ガ良シイ
（元尾崎）
同ジコトダ
（淸岡）
妙ナコトヲ云フガ愚文極マル
（槇村）
之ハ良シイ、受取ラザリシ顔卽チ知ラン顔シテ居ナケレバナラン
（元尾崎）
之ハ妙味ノアル處デス
（村田）
「何等ノモノ」丈ケハオカシイ
（栗塚）
辨濟ヲ受ケザリシ、デハ如何
（松岡）
ソレガ宜シイ
（北畠）
宜シイ
（元尾崎）
之デ良シイ
（渡）
何等ノ効能モナイ
（元尾崎）
五項ハ分ランネ
（渡）
五項ハ能ク分ランネ、右ノ返還金額ハ云々ハ分ラン
（栗塚）
右ノ金額ト云フモノハ更ニ配當スルト、斯ウ云フノデ誰ノ間デ配當スルカナレバ純粹ノ無特權者ト配當ノ加入ハシタガ一文モ取レヌ人デス又一人シカ加入シナカツタモノデス
（元尾崎）
加入シ能ハヌハ、得ザルモノ及ビダネ
（渡）
得ザル債權者ト云フ積リダロウ
（栗塚）
先ヅ「得ス」ニシマシヨウ「得ス又ハ」トシテハ如何
（松岡）
ソレデモ宜シイ
（大尾崎）
其方ガ宜シイ
（元尾崎）
又ハデハナイ、及ビダネ
（栗塚）
ソウ云フ人ガアレバダネ、ダカラ「又ハ」デ良シイ
（元尾崎）
之ハ兩方トモアルノデス、及ビデナケレバナラン
（大尾崎）
得ザル、ガ宜シイ
（元尾崎）
得ズ、デナケレバナラン
（委員長）
「モノトシテ」丈ケハ分ルカネ
（元尾崎）
得ザルモノトシテ置キマスカ
（南部）
モノトス、ト云フト抵當債權者デ御座イマスカラ少シ當リマセン
（栗塚）
ソレデハ債權者ノ字ヲ入レヨウデハナイカ「加入スルコトヲ得サル債權」ト入レマシヨウ
（元尾崎）
ソウスレバ宜シイ
（委員長）
得ザルモノト入レテ宜シイ
（栗塚）
モノデ、ハイカン是非抵當債權者ト入レント往カン
（松岡）
得ズ、デ差支ナイ
（委員長）
無特權者ト抵當債權者ト云フモノカ
（栗塚）
左樣デス
（松岡）
抵當債權者ガ悉クハ這入ランデ一部這入タノトアルノデ
（元尾崎）
ソレカラ無特權者ト三ツニアルノデス
（槇村）
三ツニハナラン
（元尾崎）
三ツニナルト云フノダロウ
（南部）
アルカ此所ハ二ツデアリマス
（渡）
前ニ「及ヒ」ト云フ字ヲ入レテハ何ウカ
（松岡）
元トノ譯文ノ通リデ宜シイ
（栗塚）
「得ス」デ續カセルニハ「及ヒ」デ宜シイ「得ス」ト切リマスト無特權債權者ハ加入スルコトヲ得ズ、トナル說モアリマス
（渡）
矢張得ザルデハ往カン、得ザル抵當債權者ダ
（南部）
得ザル、又ハトハ續キ惡イカラ又ハト入レタノデス
（栗塚）
「及ヒ」ヲ入レテ「得ス」ニシテ置ケバ宜シイ
（槇村）
ソレナラバ其フシヨウ
（渡）
「ト」ノ字ハ皆刪ルガ良シイ
（栗塚）
ソウデス
（西）
此儘デ分ルネ
（大尾崎）
之ハ良シイ
（槇村）
「及ヒ」トシテ置カウ
（北畠）
「及ヒ」ヲ入レテモ「得ス」ト云フノハ響キガ惡イネ
（大尾崎）
元トノ通リガ良シイ
（栗塚）
「得ス」デ切リハナシテハ不都合ト思フ
（村田）
得ザルガ、良シイ
（栗塚）
「得サルカ」ナラバ無論良シイ「得サルカ」ハ止メラレタ場合ダカラ
（大尾崎）
止マンノデス
（槇村）
「得サルカ」ハ止マツテ居ル
（西）
未ダ止ミマセン
（淸岡）
原按々々
（北畠）
「得ス」ト云フノハキツチリハ往カン
（栗塚）
「得ス」トスルナレバ「及ヒ」ガナケレバナラン
（渡）
佛文通リニシテ良シイ
（大尾崎）
多數デ定メマシヨウ
（西）
修正通リデ良シイ
（北畠）
得ザルガ良シイ
（村田）
得ザルガ良シイ
（栗塚）
矢張リ「得サルカ」多數デ御座イマスネ
（淸岡）
得ザルガ抔ト書イテハ往ケマセンカラ少シ御注意ヲ願ヒマス
（渡）
私ハ何方デモ多數ナラ仕方ガナイ
（委員長）
ソレデハ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ第二項「何等ノモノヲモ」ヲ「何等ノ辨濟ヲモ」トシ其他ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
[画像]
第千二百六十二條朗讀ス
第五節　第三保有者ニ對スル抵當ノ効力
前置條例
第千二百六十二條　抵當不動產カ全部又ハ一分讓渡サレ又ハ用益權若クハ其他ノ物權ヲ負擔スルトキハ讓渡又ハ所有權支分ノ設定證書ヲ登記スル前ニ其不動產ニ對シ記入ヲ爲シタル抵當債權者ハ第三取得者ニ對シ尙ホ己レニ受ク可キモノヽ辨濟ヲ請求スルノ權利ヲ保存シ又右不動產カ讓渡サレス又ハ支分セラレサルトキノ如ク自己ノ抵當順位ヲ以テ其代價ニ因リ辨濟ヲ受クル爲メ右不動產ノ徵收ヲ訴追スルノ權利ヲ附隨ニテ保存ス〔第二千百六十六條及ヒ第二千百六十七條〕
然レトモ第百二十六條及ヒ第百二十七條ニ記載シタル繼續期ヲ以テ爲シ又ハ更新シタル賃借ハ旣ニ記入シタル債權者ニ於テ之ヲ遵守スルコトヲ要ス
（修正案）　第一項左ノ如ク改ム抵當不動產カ讓渡サレ又ハ用益權若クハ其他ノ物權ヲ負擔シタルトキハ其設定證書ノ登記前ニ記入ヲ爲シタル抵當債權者ハ第三取得者ニ對シ債務ノ辨濟ヲ請求スルノ權利ヲ保有シ又右不動產ノ賣拂代價ヲ以テ辨濟ヲ受クル爲メ其不動產ノ徵收ヲ訴追スルノ權利ヲ附隨ニテ保有ス第二項「記載」ヲ「規定」ト改メ「繼續期」ヲ「期間」ト改メ「既ニ記入シタル債權者ニ於テ」ヲ「抵當債權者」ト改ム
（松岡）
「所持者」ト直サンカ
（栗塚）
「保有者」ハ總テ「所持者」ト直リマスカラ一々ハ申マセン
（元尾崎）
「附隨」ニテト云フコトハ如何
（松岡）
「附隨ニテ保有ス」ト云フハ主トシテお前、先ヅ此方ヘシテソレガ往カントキハ此方トスルノダ
（栗塚）
左樣デス
（委員長）
如ク、ガ這入テ居ルカラボツボツスル「如ク」ヲ除テ仕舞ト「附隨」ノ足ガ長クナツテ仕舞フネ
（南部）
如ク辨濟スル權利アル其外附隨ニテ是丈ケノ徵收ノ訴權ヲ持テ居ルト云フノデス
（委員長）
自己ノ抵當順位ヲ以テ讓渡サレ又ハ支分セラレタ如クニ自己ノ抵當順位ヲ以テ係ルコトガ出來ルト云フノハ附隨ダカラ權利アル如ク往ケルト云フノダロウ
（松岡）
「セラレサル」デアリマスカラ、一向讓渡モシテ無ク自分モシテナイ元トノ順位デダカラ附隨ニハ關係ヲ持マセン
（委員長）
ソウカネ
（栗塚）
ソウ云フコトデアリマス
（委員長）
如クト云フノハ自分ノ持テ居タ、又其讓渡モセネバ又抵當ハ持テ居タ、自分ニ抵當ガ這入テ居タトキノ如ク矢張處分スルコトハ出來ルト云フノダロウ、ソコサニ其權利ト云フモノハ矢張人ノモノニナツテ居ルガ、自分ノ純然タル權利ノモノニシテヤラレルト云フノダカラ、ソレガ附隨サレ又支分セラレ、ト云フノハ、松岡ノ立派ナ權利デナイ人ニ一旦移タ設定證書ハ出來タガソレハ矢張記入ガナイカラ支分サレシ如ク往ケルト云フノダカラ少シ附隨ト云フノハ「如ク」カラ係タト思フ
（栗塚）
第一辨濟スル權利第二微收訴追スル權利デス
（大尾崎）
加入シナイモノハお還シナサイ、ト徵收ノ權利デス
（委員長）
右不動產ノ代價ヲ以テ、ト云フト直接ニ聞ヘルガソウデハナイ純然タル權利デハナイ一旦移テ居ルケレドモ先、自分ガ取テ居タ既ニ登記ガアルカラ、ソコデ自分ガ持テ居タ如ク請求スル權利ガアル、トスルト自分ガ抵當丈ケデ賣買シタカモ知レンソコデ向ウデ記入モセンデ居ルケレドモ自分ハ先ニ記入シテ居ルカラダ
（栗塚）
辨濟ヲ請求スル權利ハ主タル權利デス、徵收權ト辨濟請求權ト二ツアリマス主トシテ辨濟請求スル從トシテ保有シ不動產徵收權ト書イタモ同ジデス
（委員長）
ソウ云フコトカ知ラン
（栗塚）
附隨ハソウデス
（松岡）
先取特權ト同ジコトダ
（委員長）
一項ハ純然タル權利二項ハ自分ノモノノ、如クダ
（南部）
一項デモ宜、ハ自分ノ如クデス
（栗塚）
抵當債權者ハ債權ガ讓渡サレヌ又請求セラレザル如ク第三得取者ニ對シ辨濟請求スル權利ヲ保有スト云フノデス翻譯ガ惡イカラ委員長ノ如キ疑ヒヲ起スノデス
（委員長）
意味ハ分ルガ只味ヒガ無クナツテ仕舞
（南部）
自分ノ持テ居ルトキノ如クトハ謂ヘヌヨウデス
（栗塚）
イランカラ刪タノデアリマス
（松岡）
イルマイ
（元尾崎）
「附隨」ト云フ字ヲ刪テハ如何
（栗塚）
之ハ御置キナスツテ下サイ
（松岡）
向ウノ人ハ不動產ヲ取タガ己レハ抵當取主ダカラ公賣シテ後デナケレバ外ノ人ニ取レトハ云ハレンノデス
（元尾崎）
金ヲ返ソウト云フニ是非出セト云フコトハナイ
（松岡）
ケレドモ意地惡クサレテ居ルノデス
（元尾崎）
意地ガ惡クモ抵當ハ金ヲ返ス爲メダカラ返セバ宜シイ
（村田）
アル方ガ宜シイ、ソウセント從ノ方ヘ係カレルト困ル
（元尾崎）
ソンナコトハナイ
（栗塚）
「附隨」ハ「附從」トナスツテモ宜シイ
（槇村）
宜シイ
（南部）
第一項「用益權若クハ」トアル「若クハ」ハ例ニ依リ刪リマス
（元尾崎）
宜シイ
（委員長）
良クバ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ第一項「用益權」ノ下「若クハ」ノ三字ヲ刪リ末項「附隨」ヲ「附從」ト改メ其他報吿委員ノ修正ニ決ス
[画像]
第千二百六十三條朗讀ス
第千二百六十三條　若シ抵當カ所有權ノ支分ニ存シテ債務者其權利ヲ抛棄シタルトキハ其抛棄ノ登記前ニ記入シタル債權者ハ其抛棄ニ拘ハラス追及權ヲ保存ス
（修正案）　「テ」ノ一字ヲ刪リ「記入シタル」ヲ「記入ヲ爲シタル」ト改メ「保存ス」ヲ「保有ス」ト改ム
（元尾崎）
家ヲ借リテ居テソレヲ抵當ニシテ途中デ其人ガ借權ヲ棄テテ、モウ前ニ登記シテアレバ登記シタ奴ガ權利ヲ得ルノダネ
（栗塚）
左樣デス
（委員長）
登記セント矢張支分權ハ皆シナケレバナランカ
（栗塚）
皆シナケレバナリマセン
（元尾崎）
抛棄モ登記シナケレバナランカ
（栗塚）
何デモ權利ノ移リ替リハ皆シナケレバナラン
（元尾崎）
支分權ヲ登記スルハ、エライネ
（松岡）
抛棄ノトキ卽チ抹殺ダロウ
（村田）
三百六十八條ニアリマス
（栗塚）
抛棄スルト云フコトヲ抵當帳面ニ書イテ置クノデス
（松岡）
抛棄シテ抹殺スルニ違ヒナイ
（元尾崎）
宜シイ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
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第千二百六十四條朗讀ス
第千二百六十四條　抵當ハ其記入カ公賣競落ノ登記前ニ爲サレタルトキニ非サレハ抵當不動產ヲ差押ヘテ之ヲ賣却セシメタル無特權債權者ニ之ヲ以テ對抗スルコトヲ得ス伹第千二百二十條ニ揭ケタル二箇ノ場合ニ於テ爲シタル記入ノ無効タルヲ妨ケス〔千八百五十五年三月二十三日ノ佛法律第一條第四號、第三條及ヒ第六條〕
（修正案）　「但」ノ上ヲ左ノ如ク改ム抵當ハ其不動產ヲ差押ヘ之ヲ賣却セシメタル無特權債權者ニハ公賣競落ノ登記前ニ記入ヲ爲シタルトキニ非サレハ之ヲ以テ對抗スルコトヲ得ス「爲シタル」ヲ「爲セル」ト改メ「タルヲ」ヲ「タルコトヲ」ト改ム
（村田）
翻譯ガ惡カツタノダネ
（栗塚）
左樣デス
（南部）
之ハ訴訟法ト牴觸シテ居ル
（松岡）
其コトハ注意シテ置カント此所デ云フ將來ノ無特權ト云フ積リダ
（南部）
左樣
（松岡）
私ハ但ハ刪除シテ良イト思ヒマスガ如何
（元尾崎）
謂ハンデモ知レタコトダネ
（栗塚）
併シアツテモ害ハナイ
（松岡）
ソウ云フコトヲ言フト何遍モ同ジモノヲ云ハナケレバナラントナルヨ
（南部）
但ハ刪テハ往カン
（松岡）
何ウシテ、カ
（南部）
之ハ競落チト云フコトハ卽チ財產差押ト云フコトガ出來テ居ルカラハ、ソレデ破產トカ無資力ノ場合モアルカラ其場合ニナツテハ往カント云フ意味モアルカラ之ヲ刪テハ往カン
（元尾崎）
差押無資力ニナラン前カモ知レン
（南部）
ソレダカラ刪レヌ
（元尾崎）
云ハンデモ知レタコトダ、ガアツテモ良イトシテ置キマシヨウ
（村田）
千二百二十二條ヲスルヨウニ前ニモ云テアル
（元尾崎）
痒ヒ處ニ手ガ屆クトカ何トカ云フノカモ知レン
（松岡）
ソンナラ結構ナノダロウ
（委員長）
置ク說ガ多ウ御座イマシヨウ、先ヘヤリマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
[画像]
第千二百六十五條朗讀ス
第千二百六十五條　第三保有者ノ破產無資力又ハ死亡ハ其取得證書ノ登記アルマテハ抵當記入ノ妨碍ト爲ラス
（栗塚）
「保有」ハ「所持」デ御座イマス、之ハ修正モ何モアリマセン
（松岡）
破產無資力ト云フノハ何ウ云フ譯カ、只無資力トヤツテハ分ランカ
（南部）
破產デ御座イマス
（元尾崎）
「取得證書」ト云フハ第三ノ人ガ得タトキデスカ
（栗塚）
左樣デス
（村田）
ソウデナイ
（元尾崎）
ソレガアルマデ抵當ヲ記入、カ
（村田）
登記アルマデ抵當ヲ記入シテ宜イト云フノデス
（元尾崎）
第三者ガネ
（村田）
第三者所持者破產シタラ此方ニ取得證書ガアレバ登記シテ仕舞テナイカ登記ノアルマデハ抵當トシテ宜シイノデス
（栗塚）
所持者ガ抵當スル迄ハ抵當ニ取タ債權者ハ登記スルコトガ出來ルト云フノデス
（村田）
ダカラ、違フ
（松岡）
違ヒバセン
（村田）
第三所持者ハ登記ニ明記シマセン間ハ抵當ヲ有シテ居ル債權者ハ記入スルコトガ出來ルト云フノデアリマス
（南部）
ソウデス
（元尾崎）
債務者ガ出來ルノカ破產ノ場合ニハ第千二百二十二條ノ場合アス
（南部）
ソレハ出來マセン
（元尾崎）
第三ダト出來ルト云フノハ何ウ云フモノカ
（南部）
債務者デナイ品物ニバカリ關係シテ居ルカラ不動產サヘ出セバ、債務ハイランカラ
（元尾崎）
債務者デモ之デアリソウナモノダ
（南部）
不動產ガ足リナイカラ身カラ出サナケレバナラン
（栗塚）
私ガ債務者デアル、抵當ヲ、私ノ家ヲ元尾崎サンニ抵當ニシソレガ村田サンニ往タノデ村田サンガ第三者ニナツタスルト村田君ガ無資力ニナツタトキハ登記爲サル迄ハ無資力ニナロウトモ貴君ニ記入ナサルコトガ出來ル併私ガ無資力ニナツタラ貴君ハ記入スルコトハ出來マセン
（委員長）
無資力ニナツタノデハナイ登記ガ濟ムト濟ントダネ
（栗塚）
當リ前ナラ債務者無資力ニナレバ登記ハ出來ンネ
（元尾崎）
其場合ニ村田君ガ既ニ得テアツタトキハ如何
（栗塚）
ソウシテ私ガ無資力ニナツタトキカ
（委員長）
第三者ハ村田君カ
（栗塚）
別ノ問題デ、此前ノガ村田サンガ第三者デアリマス
（松岡）
ソレハ構ハント思フ其モノ丈ケ、ダカラ、其人ノ手ヲ離レズ置クト混シテ居ルノデナイスルト登記シテモ効ハナイ全體登記シテナクトモ讓リナクシテ村田君ガ賣タ證文ヲ取替ハシテアツタラ何ウカ
（南部）
登記シテ無ケレバ往カン
（松岡）
登記シテ無ケレバ往カン
（南部）
登記シタ上ハ栗塚ガ無資力ニナツテモ構ハヌ
（元尾崎）
登記セントキハ往カンカ
（栗塚）
往キマス
（元尾崎）
ソレデ分ル
（委員長）
往キマシヨウ
本條ハ「保有者」ヲ「所持者」トシ原案ニ決ス
[画像]
第千二百六十六條朗讀ス
第千二百六十六條　第三保有者ノ場合ニ從ヒ左ノ方法ヲ用フルコトヲ得
第一　總テノ抵當債務ヲ辨濟スルコト
第二　滌除スルコト
第三　討索ノ抗辯ヲ以テ對抗スルコト
第四　不動產ヲ委棄スルコト
第五　所有權徵收ヲ受クルコト
（修正案）　第三號左ノ如ク改ム檢財ノ排斥答辯ヲ以テ對抗スルコト
（栗塚）
之モ「第三所持者」デ御座イマス、此所デハ第三ノ所ニ「討索ノ抗辯ヲ以テ對抗スルコト」トアルガ「討索」ト云フハ六ケ敷字デ、曩キニ保證人ノ所デ一遍貴君ガタ疑ヒナスツタ字デ御座イマスガ、何トカ後デ字ヲ栫ヘヨウトシタガ、今日ハ「檢財」ト云フ字ヲ拵イマシタ佛蘭西語デハ爭ヒト云フ字ダガ「源」ト註ニモ起案者ガ書イテアリマスガ「樹ヲ振フ」ト云フ字デ「幹ヲ以テ葉ヲ墜ス」ト云フ字義デ、ソレデ問題ニ出シテ之ヲ爭ヒト云フノモ種々ナ論ヲ振落シテ仕舞ト云フ字ダソウデスソレデ保證人丈ケデ使フ字デ、他ニハ使ハン、保證人ハ債務者ト共ニ義務ヲ負フテ居ルニ保證人ニ係タトキハ、保證人ノ曰ク兎ニ角本人ノ財產ヲ調ベテ下サイ本人ヲ振墜シテ下サイト云フコトニナル義務デアリマス、ソレデ本人ガ訴ヘラレタトキ保證人ハ先ヅ兎モ角モ本人ナル債務者ノ身體ヲ振イ下サイト云フ權利ヲ「排斥」「抗辯」ト調査デヤリマシタガソレヨリモ「檢財」ノ方ノ良シイ、「討索」ト云フト討手ニ往テ人ヲ索スヨウナ字ニ見ヘマス
（渡）
「檢財」ガ良シイ
（栗塚）
之ハ三島ガ工風サレテ「檢財」トカ「援座」トカスルヨリ外ハナイ「討索」デモ分ランシ又「檢財」デモ分ランガ未ダ目安ガ立タヌト云フノデ御座イマスガ尙ホ良イ御考ヘモアリマスナラ改ヘマス
（元尾崎）
「檢財ノ抗辯」ト云フノカ
（栗塚）
檢財ノ排斥答辯ヲ以テ對抗スルコトト修正致シマシタ
（北畠）
「抗辯」ガ良シイ
（南部）
何方カナレバ「抗鼎」ガ良シイ
（渡）
檢財ノ抗辯ガ宜シイ
（北畠）
「排斥」ト云フハ退ケルト云フ意味ダカラ
（渡）
抗辯ト云フ字ハ此間訴訟法デハ何ウシテモ同意セント云テ突張テ居ルノダガ、此方ハ別ニスル都合ガアルカラ抗辯ト云フコトニシタイ
（松岡）
「抗辯」ガ良シイ訴訟法ニハ防訴抗辯ノトキハ入レルコトガ良クハアリマスマイカ
（元尾崎）
「檢財ノ抗辯」トヤツテ置クカ
（北畠）
宜カロウ
（西）
分ル方ニ近クナツテ來マシタネ
（槇村）
財產ヲ默援スルト云フコトカ
（大尾崎）
財產ヲ檢査スルノデスネ
（栗塚）
第三所持者ハ、ト云フノデ、之ハ寫字ノ間違イデアリマス
（松岡）
之ハ「抗辯」デ置キマス、訴訟法ノ方ヘ通知シテ下サイ
（栗塚）
承知シマシタ
（渡）
「委棄」「抛棄」トハ何方等カ
（栗塚）
「抛棄」ノ方ガ良クハ御座イマセンカ
（松岡）
前ニ債權者其抛棄ニ拘ハラズ、トアルガ
（栗塚）
アレト同ジデ原語ハ權利ヲ棄テルト云フノデ、ソレカラ物ニ付テハ「アハンドン」デ振棄ツルト云フ實ハ無形ノ廢棄モ有形ノ廢棄モ日本デハ同ジデスト思フソレ故「抛棄」デ濟ムト思ヒマス併シ再調査ノ人ハ物ノ方ハ「委棄」ト謂ヒ權利ノ方ハ「抛棄」トヤツタ積リデアリマス
（渡）
民法ハソレデ良シイガ訴訟法ト民法デハ合ハヌカラ同ジ國典法デアリナガラ違テ居テハ都合ガ惡イカラ大同團結後藤主義ヲ希望シマス
（栗塚）
併シ彼方等デモ權利ノ方ハ「抛棄」物ダカラ「委棄」トシヨウト云ヒマス
（松岡）
其フシテ往ケバ隨分良カリソウニ思フ
（元尾崎）
此間訴訟法デヤツテ居タガ「抛棄」ト云フコトハ「委棄」ト云フコトニシナイト、如何
（南部）
有體物ハ「委棄」トシテ權利ノ方ハ「抛棄」トスルカ
（栗塚）
佛蘭西調子デハ其フデス
（松岡）
訴訟法モソレデ通シテ見テハ如何
（元尾崎）
不動產抛棄ト云テモ土地ヲ抛ケルノデハナイ權利ヲ抛棄ダ
（南部）
權ハ不動產ヲ棄テルト云フノデアリマス
（渡）
民法中ハ良シイガ訴訟法ヘ以テ別ニスルハ往カン
（南部）
訴訟法ニハ品物ヲ棄テルコトハ恐ラクアリマスマイ皆抛棄デ往クデシヨウ
（渡）
民法ハソレ丈ケ負ケテモ損ニモナリマスマイ
（栗塚）
併シ北畠サンノ云フ通リ物ダト抛ゲルコトガ出來ルガ權利デスト棄テル方デス
（渡）
必ラズシモ抛ンデモ物ヲ我身カラ放シ棄テルニ相違ハナイ
（淸岡）
放ゲルノデハナイ、抛ツト云フ字デス
（栗塚）
財ヲ抛ツ、デス
（南部）
是迄權利ノ抛棄ト云テ居ル
（元尾崎）
有體物ハ抛ゲルデ良カリソウナモノデス
（北畠）
字義ヲ云フトソウナル
（渡）
朝鮮人ノ石ナゲ、ダネ
（栗塚）
アレハ放ツ、デアリマス
（委員長）
茲デ評議スルヨリ訴訟法ノ方ト相談シテ權利ト財產トノ區別ガ付ナラ付クルヨウニ付ケラレナケレバソレデ宜シイ其所マデ講究シテ宜カロウ
（栗塚）
左樣テス
（元尾崎）
之ハ任カシテ置キマシヨウ、金ヲ返サンデ滌除ト云フカ
（栗塚）
其場合ハ先ニアリマス
（村田）
總テト云フ字ハ刪テ良シイ
（栗塚）
宜シウ御座イマス總テヲ刪リマス
（元尾崎）
總テノ字ハ刪テモ宜シイ、先ヘヤリマシヨウ
本條「第三保有者ノ」ヲ「第三所持者ハ」トシ第一「總テノ」ヲ刪リ第三「檢財ノ抗辯」トシ其他原案ニ決ス
[画像]
第千二百六十七條朗讀ス
第一款　抵當債務ノ辨濟
第千二百六十七條　第三保有者カ抵當債務ノ滿期ト爲ルニ從ヒ之ヲ辨濟スルニ於テハ其第三保有者ハ所有權徵收又ハ妨碍ヲ受クルコト無シ〔第二千百六十七條〕
（修正按）　「者カ」ヲ「者ハ」ト改メ「滿期ト爲ルニ從ヒ」ヲ「滿期ニ從ヒ」ト改メ「ニ於テハ」ヲ「トキハ」ト改メ「其第三保有者ハ」ノ七字ヲ刪ル
（栗塚）
拂フテ仕舞タラ、ウルサイコトハ受ケント云フノデス
（松岡）
孰レ權利上カラ起ルノデス
（大尾崎）
「徵收」ト云フハ穩カデナイネ
（村田）
公用ダカラ徵收ダ
（松岡）
三島サン修正ハアリマセンカ
（栗塚）
所有權ヲ取ラルルト云意味ニナルト云フノデス、實ハ所有權剥奪デ御座イマス
（淸岡）
奪フト云フハ善クナイ
（渡）
徵收、デ往ウデハナイカ
（栗塚）
私丈ケデ三島君ニ相談シテ見マシヨウ徵收ト云ヘバ上カラ召ス方デアロウト思ヒマス
（大尾崎）
「徵收」ハ外ニ良イ字ガアツタラ更ヘルトシテ先ヘヤリマシヨウ
（栗塚）
第千二百六十二條モアリマスカラ尙ホ良イ字ガアレバ更ヘマス
（元尾崎）
私等ハ徵收デ宜シイト思フ
（委員長）
「辨濟スルトキ」デハナイ「シタルトキ」ダロウ
（南部）
左樣デス
（栗塚）
辨濟スレバ、ト云フコトデス
（元尾崎）
シタルトキ、ハガ宜シイ
（委員長）
シタルトキデナケレバ徵收サレタリ妨害サレル譯ケハナイトハ云ヘンダロウ
（南部）
スルニ於テハカ
（委員長）
スルニ於テハナラ良シイ
（栗塚）
スルニ於テハ、ガ良シウ御座イマス
（元尾崎）
初メニ所持者ハトアルカラ、「ハ」ガ重ナル
（松岡）
「カ」ニシテハ惡イ
（栗塚）
シタルトキハニシマシヨウ
（渡）
シタルトキ、ハシナイト往カン
（南部）
スルニ於テハ、ガ良シイ
（大尾崎）
スルニ於テハ、ガ良シイ
（槇村）
ソレガ良シイ
（村田）
ソレガ良シイ
（北畠）
現譯ノ儘デ良シイ
本條ハ「保有者カ」ヲ「所持者ハ」トシ「其第三保有者ハ」ヲ刪リ其他原按ニ決ス
[画像]
第千二百六十八條朗讀ス
第千二百六十八條　第三保有者カ債務ノ全部又ハ一分ヲ辨濟シタルトキハ其第三保有者ハ第五百四條第一號及ヒ第五百五條第三號及ヒ第四號ニ從ヒ自己ノ辨濟シタル債權者ノ其他ノ抵當抵保及ヒ利益ニ代位ス
又第三保有者ハ其辨濟セサリシ債權者ヨリ所有權徵收ノ訴追ヲ受クルコトアル可キ場合ノ爲メ自己ノ保有スル不動產ノ負擔スル抵當ニ付キ未定ノ代位ヲモ取得ス〔第千二百五十一條第二號〕
（修正按）　第一項「者カ」ヲ「者ハ」ト改メ「其第三保有者ハ」ノ七字ト第一號ノ下「及ヒ」ノ二字ヲ刪リ「自己ノ」ヲ「其」ト改メ「辨濟シ」ヲ「辨濟ヲ得」ト改メ「債權者ノ其」ヲ「債權者ニ屬スル」ト改ム第二項「辨濟セサリシ」ヲ「辨濟ヲ得サリシ」ト改メ「付キ」ノ下ヲ「辨濟ヲ得タル債權者ニ未定ニテ代位ス」ト改ム
（村田）
全部一分ハ、置キマスカ
（栗塚）
置クガ良シイ「及ヒ第四號ニ從ヒ其辨濟ヲ得タル債權者ニ屬スル」トシマシタ金ヲ拂タナレバ其拂ヒヲ受ケタ債權者ニ代ルト云フコトデ御座イマス
（元尾崎）
未定ニテ代位ス、スルト辨濟ヲ得ザリシバ向ウノ奴ダネ
（南部）
左樣得ザリシ債權者ガアルノデスネ
（元尾崎）
第三所持者ハ辨濟スル方ノ側ハカ
（南部）
一人債權者ガ辨濟シテ一人辨濟シナイノデ辨濟シテヤツタ債權者ノ代リニシテヤラン方ノ爲メニ代位スルノデ辨濟シテヤツタカラ其部分ヲ代位スルト云フノデ、併シ訴ヘヲ受ケナケレバ差支ナイ
（元尾崎）
「未定」ト云フノハ
（南部）
未定デシヨウ
（栗塚）
受ケルカ、何ウカ未ダ分ラン、カラ未定デス
（元尾崎）
第三所持者ガ辨濟ヲ受ケベキトシタラ良カロウ
（栗塚）
其辨濟ヲ受ケナカツタ債權者デス
（元尾崎）
辨濟ヲ未ダシナイ債權者ダ
（栗塚）
債權者、ソレガデス
（元尾崎）
債務者カラ言葉ヲ立テルト良シイ
（村田）
自分ノ財產ヲ奪ハレヨウト云場合ダ曩キニ金ヲ拂タ債權者ノ未定ノ、其人ノ代リニト云フノデス
（元尾崎）
訴ヘラルルカ知レンカラ未定カ、無理ダナ
（大尾崎）
何トカ云ヒ樣ガアリソウナモノデス
（南部）
訴ヘラレナイトキハ代位ハイランノデアリマス、ソレデ未定ハ必要デアリマス
（栗塚）
訴ヘヲ受ケルコトガアルダロウ、場合ヲ想像シテ、ダ其トキハ代位スルト云フノデス
（元尾崎）
未定ト云フコトハ云ハナクトモ良イコトダ
（栗塚）
其條件付ニテ、ト云フノデス代位シテ居ルニ訴ヘガアツタラ代位ノ効ガ生ズルノデ、未定ノ代位デ初メカラ代位シテ居ルノデ其効ヲ生ズルハ訴ヘガアツテノ場合デス
（元尾崎）
訴ヘガアツタトキハ代位ス、デ良ササウナモノデス「未定ニ」ト云フ字ハ分ラン
（栗塚）
併シ、分テ居タラアツテモ宜シイデシヨウ
（松岡）
事柄ハコウナルガ私ガ一ノ地面ヲ第三者ニナツテ取得シタ、處ガ二人抵當債權者ガアルト、私ハ抵當付ノ地面ヲ買フタソレニ二人ノ債權者ガアル内一人ノ方ハ濟マシテ一人ヅツ濟マセント其人ガ訴ヘルモ知レン訴ヘラレテ拂フカガ無イトスルト地面ハ卷上ゲラルル卷上ゲラレタカラ此間拂タ人ニ代テ地面ヲ持テ居レバ、己レガ抵當債權者デアルゾヨト云フ場合デスネ
（栗塚）
左樣デス
（南部）
シテアルカラ未定デス
（大尾崎）
未定ト云フノハ面白ヒ
（栗塚）
矢張アル方ガ良シイ、アル方ガ結句意味ハ明瞭デアリマス
（大尾崎）
ソウデ御座イマス、鳥渡分ランノデスネ
（栗塚）
ソコ迄御了解ガナイト邪魔デスガ分ルトアル方ガ成程良イトナルノデス
（大尾崎）
ドウモ、ソウデス
（南部）
面白ヒネ
（松岡）
未定ニテハ此條デハ必要デス、理窟ハ此通リダロウ
（元尾崎）
宜シイ
（渡）
往キマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
[画像]
第千二百六十九條朗讀ス
第二款　滌除
第千二百六十九條　第三保有者ハ記入シタル總テノ抵當債務ヲ辨濟セサルモ債權者ニ其記ノ順序ヲ以テ辨濟シ又ハ債權者ノ爲メニ自己ノ取得代價若クハ不動產ノ評價額若クハ之ニ超ユル金額ヲ供託シテ不動產ノ負擔ヲ免カレシムルコトヲ得伹右ニ付テハ下ニ規定セル如キ提供及ヒ滌除ト稱スル手續ヲ爲シタル後債權者ニ於テ明示又ハ默示ニテ承諾シタルコトヲ要ス
（修正案）　「自己」ヲ「不動產」ト改メ「不動產ノ評價額」ヲ「其評價額」ト改メ但ノ下「ト稱スル」ノ四字ヲ刪リ「滌除」ノ下「ノ」ノ一字ヲ挿入シ「ニ於テ」ヲ「ノ」ト改メ「ニテ」ヲ「ノ」ト改メ「シタルコト」ヲ「アリタルコト」ト改ム
（栗塚）
記入ノ字ハ寫字ノ誤リデ脫シタノデアリマス、此ハ修正ノ出テ居ルガ少シ文章ガ更リマシタカラ直ス前ニ口デ申トウ御座イマス、「第三所持者ハ記入シタル總テノ抵當債務ヲ辨濟セサルモ債權者ニ其記入ノ順序ニ從ヒ、不動產ノ取得代價ヲ其評價額若クハ之ニ超ユル金額ヲ辨濟シ又ハ債權者ノ爲メニ之ヲ供託シテ不動產ノ負擔ヲ免カレシムルコトヲ得」トシテ但以下ハ修正通リデ御座イマス「ト稱スル」ハ止メマシタ「明示又ハ默示ノ承諾アリタルコトヲ要ス」デス
（委員長）
分リマスカネ
（栗塚）
分ル積リデ御座イマス之ハ翻譯ノ誤リガアツタノデス且修正スル迄ハ翻譯ノ誤リヲ我々ガ氣ガ付カナカツタノデ御座イマス
（元尾崎）
不動產ノ取得代ガ之ハ安ク買テ居ルカモ知レンソコデ承知シナイト評價額ハ之ニ超ユル額ト云フハドウ云フノカ
（栗塚）
大變安ク買タカラ評價セズ之丈ケノ金ヲヤルカ抵當權ヲ行ハズニ呉レカト云フヨウナコトデス
（元尾崎）
向ウガ承知セントキハ仕方ガナイネ
（栗塚）
スレバ評價デアリマス
（南部）
協議ノ合ハヌトキハ評價デアリマス
（大尾崎）
評價モ、聽カントキハ
（南部）
ソレハ陀々ヲ捏ルノデソレハ往カン
（元尾崎）
之ハ滌除ノ相續ダネ
（南部）
左樣デス
（委員長）
債權者記入ノ順序ニ從ヒト云フノハ外ニモ財產保有者ト云フノガアルカラ其順序ニ從ヒカ
（栗塚）
左樣デス抵當債權者ノ順序デ御座イマス
（委員長）
先取ノアル人ヘ往クノカ
（南部）
二人アレバ一番抵當二番抵當ト其順序デアリマス
（委員長）
第三保有者ハ一番抵當ノ人ヘ行テカ
（栗塚）
一番ノ人二番ノ人ト順序デ拂フノデス
（委員長）
總テ債權者ニヤツテ往クトキハ一人ガモノヲヤツタノダネ
（栗塚）
左樣デス
（委員長）
取得代價ト云フハ
（栗塚）
買取負擔デアリマス
（委員長）
自分ノモノニシタノデハナイダロウ
（栗塚）
第三所持者デ御座イマス、實ニ買フテ居ルノデ、貴君ガ買テ居ルノデ、私ノ地面ヲ賣ル其上松岡サンガ抵當ヲ持テ居ル第二番ニ南部サンガ持テ居ルト貴君ハ、ウルサイカラドウカ相談ヲシタモノデス、スルト總テノ抵當、二ツアルカラ債權者ノ松岡サン南部サンニ其記入ノ順序ニ從テ、デス
（委員長）
我輩ガ取得ニ係リヨウハナイ
（栗塚）
私カラ買フタラ、幾ラカデ買ダロウ買タ代價ヲ兩人ノ債務者ニ拂フガ貴君ノ地面ヲデス、貴君ハ地面ヲ取得ナスツタ方デシヨウ
（委員長）
取得シタガ代價ハ拂タノデス
（栗塚）
拂テハ往カンノデス
（松岡）
拂フトニ樣デス貴君ガ買フノダカラ代價ハ抵當債權者ニ拂ハナケレバナラン
（委員長）
拂フベキ代價ダネ、取得代價デハナイネ
（栗塚）
取得代價デアリマス
（委員長）
第三所持者デ拂フベキ代價ト云ヘルカ、取得代價トハ云ヘヌ
（栗塚）
不動產ヲ取得シタノデアリマス
（委員長）
不動產ヲ取得シタニ付拂フベキ代價ト云ヘバ分ルカ
（栗塚）
左樣デス
（委員長）
取得代價ト云フト得タ金トシカ見ヘナイ
（栗塚）
他ハ取得代價トハ使ヒマセン不動產ノ取得代價デアリマス
（委員長）
ソウ見ヘルカ
（栗塚）
不動產ノ取得代價デ御座イマス
（委員長）
ソウカ夫カラ、辨濟シ又ハ債權者ノ爲メニトハ
（栗塚）
松岡サン南部サンノ爲メニハ受取ラント云ハレルカラ寄託所ヘ預ケテ貴君ガ買タ地面ヲ義務付ヲ義務ヲ無クシテ仕舞コトガ出來ルノデス
（委員長）
債權者ノ爲メハナイ
（栗塚）
債權者ノミデ御座イマスカラ滌除シヨウト云フノガ、若シ貴君ノ爲メ私ノ爲メヤツタニハ矢張債權者訴權ヲ行フカラ訴權ヲ免カレシムル譯ニ往キマセン金ヲ拂フガ受取シトキハ寄託所ヘ預ケテト云フ意味デス
（委員長）
松岡ガ金ヲ取ラントキハ寄託所ヘ行ク、ソウダガ債權者ノ爲メニト云フハ債權者ヲ御頼ミ申タヨウニ見ヘルカ
（南部）
債權者ノ名ヲ以テト云フト同ジデス
（委員長）
左樣云フ例デサヘアレバ宜シイ
（栗塚）
此等ハ原則デアリマス
本條「金額」ヲノ下「辨濟シ又ハ債權者ノ爲メニ之ヲ供託シテ」云々ト加ヘ報吿委員ノ修正ニ決ス
[画像]
第千二百七十條朗讀ス
第千二百七十條　停止條件附ノ取得者ハ其權利カ條件ノ成就ニ因テ固定セサル間ハ滌除スルコトヲ得ス
解除條件附ノ取得者ハ其權利カ條件ノ缺クルニ因テ固定セサル前ト雖トモ滌除スルコトヲ得
此場合ニ於テ若シ第三保有者ノ提供カ承諾セラレタルモ元資ノ不足スル抵當抹殺ノ後其第三保有者ノ取得カ解除セラルヽニ於テハ抹殺シタル記入ハ第千二百四十九條ニ從ヒ之ヲ回復ス
若シ右ノ場合ニ於テ提供カ承諾セラレスシテ下ニ規定セル如ク不動產ヲ競賣ニ付シタルトキハ競落ハ其第三保有者ノ利益ニ於テ宣吿セラレタルト其他ノ者ノ利益ニ於テ宣吿セラレタルトヲ問ハス以後解除ヲ免カルヽモノトス
（修正案）　第一二三項左ノ如ク修正ス第一項停止條件附ニテ不動產ヲ取得シタル者ハ其條件ノ成就セサルニ因リ其權利ノ定マラサル間ハ滌除スルコトヲ得ス第二項解除條件附ニテ取得シタル者ハ條件ノ到來セサルニ因リ其權利ノ定マル前ト雖モ滌除スルコトヲ得第三項此場合ニ於テ若シ第三所持者ノ提供カ承諾ヲ得タルモ其金額ハ抵當債務ヲ全ク辨濟スルニ足ラスシテ其抵當ヲ抹殺シタル後第三所持者ノ取得カ條件ノ到來ニ因リ解除スルニ於テハ辨濟ヲ得スシテ抹殺ヲ受ケタル抵當債權者ノ記入ハ第千二百五十一條ニ從ヒ之ヲ回復ス第四項「承諾セラレス」ヲ「承諾ヲ得ス」ト改メ「競賣」ヲ「公賣」ト改メ「第三」ノ上「其」ノ一字ヲ刪リ「利益」以下左ノ如ク改ム爲メ宣吿アリタルト其他ノ者ノ爲メ宣吿アリタルトヲ問ハス以後解除條件ヲ免カルルモノトス
（栗塚）
「解除ヲ免カル」ノ所ヘ起案者ガ「條件」ト云フ字ヲ付テ參タノデ御座イマスカラ「解除條件ヲ免カルルモノトス」トヤツテ跡ハ修正ニナリマス第一項ハ「停止條件付ニテ不動產ヲ取得シタル者ハ條件ノ成就セサルニ因リ其權利ノ定ラサリシ間ハ滌除スルコトヲ得ス」トシマシタ
（槇村）
其條件ダロウ
（栗塚）
其ハ御座イマセン
（委員長）
其ガアルノデシヨウ
（栗塚）
其ハ寫字ノ誤リデ御座イマス、第二項ハ「解除條件付ニテ取得シタル者ハ條件ノ到來セサルニ因リ其權利ノ定マル前ト雖トモ滌除スルコトヲ得、トシマシタ
（元尾崎）
「停止條件」ハ私ノ子ガ生レタラカ
（栗塚）
子ガ生レナカツタラバ其家ヲ賣ロウト云タノデ條件付デ權利ガ中途ニ振ラ下テ居ルカラ停止條件、解除條件ノトキハ、賣ロウト子ガ生レタラ返セト云フノデ、スルト決シテ子ガ生マレヌト云フコトガ定マレバ塊マルノデ定マラン先デモ解除スルコトガ出來ルノデ權利ヲ持テ居ルカラ
（元尾崎）
停止條件ハ家ガ停止セラレテ居ルノカ
（栗塚）
左樣、此方ハ條件ガ到來スレバ返サナケレバナラン、ソレカラ第三項「此場合ニ於テ第三所持者ノ提供カ承諾ヲ得タルモ其金額ハ抵當債務ヲ全ク辨濟スルニ足ラスシテ其抵當ヲ抹殺シタル後第三所持者ノ取得カ條件ノ到來ニ因リ解除スルニ於テハ辨濟ヲ得スシテ抹殺ヲ受ケタル抵當債權者ノ記入ハ第千二百五十一條ニ從ヒ之ヲ回復ス」デス
（元尾崎）
承諾シナイト言ヘルダロウ
（南部）
私ハ不動產ノ評價額ヲ以テ來ルノダカラ仕方ガナイ評價額ニ對シテシカ權利ガナイ
（栗塚）
此所デ假リニ千圓デ宜シイト承諾シタ其金額ハ抵當債務ノ全ク辨濟ニ足ランノデ松岡委員ガ九百圓ニ南部委員ガ五百圓ダト四百圓足ランデ其抵當ガ足ラズシテ栗塚ノ抵當ハ無クナツテ仕舞タ其トキ第三所持者ナル卽チ委員長ハ條件ガ到來シテ解除ニナツタノデス、栗塚ニ子ガ生レタ、生レタラ取戻ス約束ダカラ解除シタ其トキ辨濟ヲ得ズシテ抹殺ヲ受ケタハ南部委員ト見ルネ、辨濟ヲ得ズシテ抹殺ヲ受ケタ南部サンノ記入ガ生キ係ルゾヨト云フノデ私ノ手ヘ戻テ來タカラ第三者ノ手ニ在ル間ハ往カンガ第三者ノ取得ガ解除ニナツタラ私ノ地面ガ戻テ來タノデ其トキ初メ往カンデアツタ抹殺ヲ受ケタ債權者ガ生係ルト云フノデス
（松岡）
適當ナ道理デス
（元尾崎）
一項道理ガナイネ、南部ニモ抵當ニナツテ居ルガ第三者ニ移タラ權利ヲ殺サルルコトハナイ
（南部）
物ニ付テハナイガ債權者ガ代ルノデス
（松岡）
栗塚ノ手ニアツタガ委員長ニ剥ガレタ、此度不動產ト云フ無疵ガ這入ルト元ト權利ガアツタカラ生係テ來ル
（槇村）
面白イ
（元尾崎）
面白クナイネ、穿タ說ダ
（栗塚）
法律家トシテ御考ヘニナラント往ケマセン
（大尾崎）
第三者ガ解除條件ノ内ニ成就セラレタノダネ
（元尾崎）
南部君ノ債務者ガアツテ取ラレタノダネ
（槇村）
修正ガ分ルガ今ノ講釋ヲ聞イテ尙ホ能ク分リマス
（元尾崎）
承諾ヲ與フルモト云フト承諾セシト云フコトモアリソウダ
（松岡）
次ニアリマス承諾セント公賣セラルル公賣シタトキ委員長ニ落札スレバ縱令栗塚ニ子ガニ人出來ヨウトモ動カヌト云フノダ
（栗塚）
左樣デス末項「全ク辨濟スルニ足ラスシテ其抵當ヲ抹殺」ト云フハ如何
（栗塚）
貴君ガ出シタハ、千圓ト栗塚ノ地面ガ千圓デソレカラ千園出シタガ千圓デ南部サント松岡サンガ私ニ返シタノガ足リナイノデス
（委員長）
ソコデハ抹殺ガ出來ヌダロウ
（栗塚）
抵當丈ケ抹殺ガ出來ル
（委員長）
抵當ノ効力ガ無クナツテ仕舞カ
（栗塚）
左樣デス併シナガラ南部サンバ一分シカ拂ハンデ抹殺サレタノデス
（委員長）
君ガ全體抵當トシテ居ル物ヲ千圓デハ足ラン兩方デ二千圓借リテ居ルソレヲ千圓デ賣ルト云フコトカ
（栗塚）
ソレハ幾ラ高イモノヲ安ク賣ルト債權者ガ苦情ヲ言ヘル最ツト値段ガアルカラ安ク賣テハ困ルト言ヘルソレモ再ビヤツテ千五百圓シカナイ併シナガラ負債ガ二千圓アレバ抵當ハ抹殺セラルルノデス
（委員長）
ソレ丈ケノ値段シカナイ場合ヲ云フノダネ
（栗塚）
左樣デス
（槇村）
スルト第三者ガ損ニナルネ
（松岡）
損ニハナラン
（槇村）
解除セラルルト損デセウ
（栗塚）
左樣デス
（松岡）
金ヲ出シタモノ丈ケハ栗塚ガ持テ居ルカラ
（元尾崎）
ソレハ約束次第ダ或ハソウ云フ條件付ダカラ安ク賣ルカモ知レン
（南部）
安クモ持テ往カナケレバナラン
（松岡）
若シ安過ギテ追ヒ足シタラ矢張代位ニナルダロウ
（槇村）
ソウナル
（北畠）
コウ云フコトハ滅多ニナイコトダ
（栗塚）
實ハ入組ンダ世ノ中ダネ
（大尾崎）
末項ハ修正通リデ皆サン良ウ御座イマスカ
（松岡）
宜シイカ條件ニ付テ解除トデモ謂ハント解除條件ヲ免カルルト云フハオカシイ
（栗塚）
解除條件ガ到來シヨウトモスマイトモ構ハヌト云フノダ
（松岡）
解除條件ヲ免カルルト云フノハオカシイ
（栗塚）
併シ其意味迄含マシテ御座イマスカラ
（松岡）
右ノ場合ニ於テ何々ダカラ
（村田）
前ニモ解除ストヤツテ居ル
（栗塚）
折角入レテ參タノデ御座イマスカラ若シナンナラ解除條件ノ結果ヲ免カレデアリマス
（松岡）
尙ホオカシイ
（元尾崎）
解除條件ハ役立ンネ
（栗塚）
公賣シタラ役立ン
（委員長）
理窟ハ分ランヨウ思フ解除條件デヤツタノダカラ元トノ債權者ハ承諾センカラト云テソレヲ以テ解除條件ヲ混シテ仕舞ハ理窟ガ合ハヌ
（松岡）
ケレドモソンナラ金ヲ以テ拂ヘバ良シイ
（委員長）
出來ヌカラダロウ
（松岡）
債權者ハ抵當ガアリマスカラ期限ガ切レタラ取ニ往ツテ取ルヨリ仕方ハ御座イマセン
（委員長）
條件付ノ前ノ事柄ハ出來ンコトニシナケレバナラン出來テ居ルコトモアロウト云ヘバ分ルガソレガ條件ト云テ二人ハ否ト云フコトガ出來ヌカラ仕末ガ付カン
（南部）
初メカラ知テ居ルカラ宜シイ條件付ノ抵當トナツテ居ルト條件付デ買フガ箇樣ニナルト云フコトハ覺悟ノ前デス
（委員長）
公賣モ出來ン
（栗塚）
ソレハ枝振リガ惡イカラト云テ幹ヲ枯スヨウニナツテ仕舞ヒマス
（委員長）
「右ハ」惡イノダネ條件付ト云フ約束ニナルト云フカラ一ノ怪イモノガ到來スルノデ土產成ルカ成ランカ分ラン條件ダカラソレヲ不確カナモノヲ一方ノ人ガ相手ニシテソウシテ一方ニハ債權ガ追缺ケテ來ルト云フカラ拂ハナケレバナラン拂タトキ承諾スレバ宜シイ承諾セントキハ仕方ガナイ公賣シナケレバナラン公賣スルト自分ノモノニナラン提供ハセラレテカラ始メテ條件付デ來ルノダロウ
（南部）
提供ハ條件付ニテ自分デ承知シテ居ルノデ買マストキ抵當ハ幾ラアルカ金高ヲ以テ償フニ足ラント知テ買フタコトニナルノデス不動產ヲ買ヘバ抵當丈ケハ拂テ充分ト知ランデハ買フモノハナイ
（委員長）
アルモノヲアルト見ナケレバナラン
（南部）
解除條件ハ無クナツテモ其損ハ被ラナケレバナラン
（松岡）
誰ガ損カ
（委員長）
今ノ例デ云フト私ガ損ダ
（松岡）
貴君ノ損ハナイ公賣ノ時分取リマス
（委員長）
若シ條件ガ消エタラドウカ
（南部）
スルト公賣ガ惡イト云フノダネ
（委員長）
條件付ハ
（栗塚）
私ノ子ガ生レタラ取戻スト云フノデス
（委員長）
生レタラドウカ
（栗塚）
私ニ戻リマス
（委員長）
スルト解除條件ニモナランダロウ
（栗塚）
公賣ニナツタラ解除條件ハ無クナツテ仕舞ヒマス
（委員長）
公賣ノ爲メ何ゼナクナルカ解除條件ハ子ガ生レタラ返ソウト云フ約束ダカラ子ノ生ル迄ハ宜シイダロウ
（栗塚）
子ガ生レタラ私ニ戻ルノデス
（委員長）
子ガ生レルヤ否分ランノデ分ランニ最ウ公賣シナケレバナランカ
（南部）
ソレハ所有物デ仕方ガナイ
（委員長）
ソンナラ解除條件ト謂ハンガ良シイ
（南部）
生レルカ否分ランノデアリマスカラ
（栗塚）
解除條件付デ取得シタ者ノ權利ニ障ルマイト雖モト云フノデス
（松岡）
栗塚ノヲ押イテ居ルノデ押ヘラレタ者ハ條件付デ賣タノデソコデ元トノ儘ニ居テモ栗塚ガ此不動產ニ對シテ所有ガ出來ルガ所持人ニ拂ハントキハ賣ラシテ仕舞ノデ手ヲ放サナケレバナランソレガ再ビ貴君ノ手ニ這入テ貴君ノ手カラ先ニ取ラルルモ栗塚ノ手カラ取ラルルモ同ジデ栗塚ハ千圓拂ハナケレバナラン
（委員長）
ソレハ宜シイ貴君ガ栗塚ノ家ヲ公賣シテモ宜シイ條件付ト云フモノガ入レル以上バネ、入レンナラバ良シイ入レタ以上ハ成立迄ハソレガ成立カ否待テ而シテ公賣スルト云ヘバ宜シイソレヲセズシテヤルカラ遂ニ公賣ノ爲メ解除條件ガ消滅スル結果ヲ來スカラソレハ往カント云フノデス
（松岡）
抵當ヲヤルヨリ外ハナイ
（栗塚）
解除條件付デ得取シタモノハ所有者ガ否ヲ論ズルト貴君ハ所有者ト云ハナケレバナラン
（委員長）
純然タル所有者デハナイ條件付ノ所有者デ、ソウスレバ條件ガ果シテ其物ノ所有ニ歸スルカ否ヲ待テ而シテ後デス
（元尾崎）
初メ變ニ思タガ能ク考ヘルト物ヲ持テ居テモ金ヲ返サン以上ハ取ラルルノダカラソレヲ條件付デ他ニ得タ爲メ公賣ガ出來ルト云フト抵當ニ取タ債權者ハ何ニモナランカラ之デ良シイ
（委員長）
品物ヲ條件付デ賣ルコトガ出來ヌト第三所持者ガ迷惑ダネ
（栗塚）
貴君ハ一モ御迷惑ハ御座イマセン
（委員長）
條件付デ得テ居ル品物デ、未ダ眞ノ所有ニナルカ否ハ分ランノデ其モノガ買フタ値段ニ債權者ガ取テ臭レレバ宜シイ、ガ承諾センカラ取ラヌ、ダカラ公賣シテ、千圓ノ物ガ八百圓ニシカナラン、ダロウ
（松岡）
未ダ代金ハ拂ラナイノデス
（委員長）
公賣シタラ私ハ千圓デ栗塚ト約束シテ千圓拂フモノヲ貴君ガ掛合ト八百圓ダロウ、私ハ二百圓損ヲスル
（松岡）
栗塚ガ遣ランノデアリマスカラ、損デハナイ
（栗塚）
私ガ南部サント松岡サンニ遣ラン金デ貴君ガ買テ下スツテモ私ニ一文モ拂ハンノデス
（委員長）
賣ラント云フ場合ニ債務者ト第三所持者ト相談スル千圓遣ルト云フ場合ニ於テ其本トノ契約ハ消ヘテ仕舞テ二百圓ノ金ハ損ニナル
（南部）
「第三所有者ノ爲メ宣吿スルノト又其他ノ者ノ爲メ宣吿アリタルヲ問ハス條件ハ免カルル」トアリマス
（委員長）
栗塚ガ本ト所有デアツタトキ私ガ千圓デ買フテ公賣シタトキ八百圓、然レバ八百圓外ニハ貴君方ニ上ゲルモノハナイ、スルト二百圓ハ栗塚ニ私ガ遣ラナケレバナラヌ話デス
（南部）
不動產ノ代價丈ケデス
（委員長）
栗塚カラ私ハ千圓デ買フタノデス
（栗塚）
其千圓ヲ以テ南部サンニ往タトコロガ否ト云フ
（委員長）
ソレハ我等丈ケデ君ハ關係ガナイ
（南部）
若シ八百圓ニナツタラ兩人ガ損ニナルノデアリマス若シ金ヲ遺シタラ千圓取ルガ公賣ニ付シタ爲メニ二百圓損ニナルノデス
（委員長）
私ガ栗塚ニ對シテ千圓ト登記簿ニ載テ居ルカラ私ハ千圓出サナケレバナラント思フ
（栗塚）
ソレガ否ト言タノデアリマスカラ貴君ハ千圓遣ルニハ及バヌ
（委員長）
否トハ言ヘヌ譯ケデス
（南部）
左樣スレバ競賣ハ出來ヌ受取タ以上ハ千圓ト云フコトハ言ヘヌ
（委員長）
本トノ登記簿ニ載テ居ルノハ千圓私ガ義務ヲ負フテ居ルカラ栗塚ニ拂ハナケレバナランソレ迄消ヘルコトハナイ只解除條件ガ消ヘテ再ビ子ガ生レタラ戻スコトガ無イ丈ケデ金高ハ消ヘヌダロウ
（栗塚）
ソレハ兩人ノ云フニハ私ガ初メ千圓デ賣タ以上ハ千圓ヲ私ガ持テ往ケバ地面ヲ下サルガ解除ノトキハ、公賣ニナツタカラ解除ヲ願フ私ノ損デアリマス地所ハ餘所ノ人ヘ往テ仕舞
（委員長）
地所ハ我等ノ手ヘ來テ登記簿ノ上ハ我等ノ物デ我等ガ公賣スルノダロウ、移轉シテ居ルノデ公賣スル日ニナレバ以前ハ君ノ物デモ我等ガ千圓デ買テ居ソウスレバ千圓ガ八百圓ニナツテ居ルカラ二百圓ハ我等ノ損ニナルダロウ
（栗塚）
否、私ノ損デアリマス貴君ガ一文モ損ヲシナイノデス
（松岡）
所有權ハ移テモ栗塚ヘハ一文モ拂ハンノデス
（委員長）
登記ニ載テ居ルカラ私ガ公賣手續ヲシナケレバナランスレバ所有權ハ何ノ爲メニ移タカ賣買デモ登記證書デ成立タノデ貴君ガ受取ランカラツタツデモ元ト拂フベキ道理ガアルノデ、ソコデ所有權ガ移テ居ル以上ハ自分ガ公賣ニ付スルノデ、ト云フトキハ千圓ノ物ヲ八百圓ニナレバ二百圓ハ足シテヤラナケレバナラン
（栗塚）
初メニ取ラヌト云タ人ダカラ足シテ遣ルニハ及ビマセン
（松岡）
公賣シタラ八百圓ニナツタカラ足シテ呉レトハ言ハン
（南部）
又ソウ云フ損ガアレバ第三所持者ハ不動產ヲ委棄シテ仕舞ヘバ宜シイ
（栗塚）
委棄モ出來ルシ又損スルコトハアリマセン
（松岡）
栗塚ガ千圓ノ價アルト申シテ千圓入レテ抵當ヲ公賣シテ八百圓ニナレバ二百圓ノ損デス
（委員長）
解除條件付ト云フカラ面倒ガアルノデス
（栗塚）
面倒ハ御座イマセン
（委員長）
抵當ヲ入レタモノヲ解除條件デ讓ルコトガ出來ル故ニ遂ニ公賣ニ付シタ節ニハ解除條件ガ消ヘルトナル、本トノ私ノ一番最初ノ疑點ハ解除條件ガ成立積リデ成立カ否ニ依テ得失ガアルナラ、ソレニナラン先ニ公賣スルハオカシイト思フ
（松岡）
ソレヲ取ラルルト私ガ迷惑致シマス期限ガアツテ金ヲ貸シタニ解除付デ賣ラレテ居ルカラ解除ノ成就スル迄待テバ理窟ガナイ
（委員長）
解除條件ノ契約ガ出來ントスレバ
（松岡）
ソレハ抵當ガ高カツタラ承諾セントカ擇ブハ格別デス
（槇村）
公賣シテ若シ好ク賣レテ餘タトキハ得ラルルネ
（栗塚）
左樣デ御座イマス一體解除條件デ買フトキ安イノハ當リ前デス
（委員長）
餘リ巧ミ過ギルネ
（元尾崎）
ソレハソウデス
（栗塚）
寧ロ第三項ガ巧ミト申シテ宜シイ
本條ハ末項「解除」ノ下「條件」ノ二字起案者ニ於テ加フ其他報吿委員ノ修正ニ決ス
于時零時二十分休憩
午後一時五分
[画像]
（委員長）
始メマシヨウ
第千二百七十一條朗讀ス
第千二百七十一條　抵當ヲ滌除スルノ權利ハ主タル債務者ト爲リ又ハ保證人ト爲リテ一身上ニ抵當債務ノ責ニ任スル第三保有者ニ屬セス
右ノ權利ハ亦設定者ノ連合共同債務者ニ屬セス伹第一ノ抵當訴追前ニ債務ニ於ケル自己ノ部分ヲ辨濟シタルトキハ此限ニ在ラス
又如何ナル場合ニ於テモ右ノ權利ハ債務者ノ相續人ニシテ債務ニ於ケル自己ノ相續部分ノミヲ辨濟シタル者ニ屬セス
又右ノ權利ハ他人ノ債務ノ爲メ自己ノ財產ニ付キ抵當ヲ設定シタル者又ハ其者ノ相續人ニ屬セス
（修正案）　第一項左ノ如ク改ム抵當ヲ滌除スルノ權利ハ第三所持者ニシテ主タル債務者ト爲リ又ハ保證人ト爲リテ一身上ニ抵當債務者ノ責ニ任スル者ニ屬セス第二項「債務」ノ上ニ「其」ノ一字ヲ加ヘ「ニ於ケル」ヲ「ノ」ト改ム第三項「財產ニ付キ」ヲ「財產ヲ」ト改メ「抵當ヲ設定」ヲ「抵當ト爲」ト改メ「者ノ」ノ二字ヲ刪ル
（栗塚）
次ノ項ハ「右云々又如何ナル場合ニ於テモ」マデ刪レマス第二項ハ刪リ三項モ「又如何ナル場合ニ於テモ」迄刪リマス
（元尾崎）
第三所持者ニシテ云々ハ
（南部）
連帶ト見レバ宜シイ
（元尾崎）
ソウシテ自分ガ債務者トナツテ居ルカ
（南部）
他ノ一人ノ持テ居ル不動產ヲ買フト云フ場合ニ抵當ヲ滌除ハ出來マセン前カラ債務者ダカラ
（槇村）
一身上ノ責ニ任ズル者ハ滌除デナイト云フノダネ
（栗塚）
左樣デス
（村田）
二項ヲ刪タノハ一項ニ含蓄スル旨意カ
（栗塚）
左樣デス
（委員長）
之ハ連帶トハ違フネ
（南部）
連合デ御座イマス
（栗塚）
起案者ガ此所ヘ置クコトハナランカラト云フテ刪タ鹽梅デス
（南部）
我等ハ間違ヒト思フ連合デ金ヲ借リテ居タ、スルト持テ居ル者ガ一人ハ抵當ヲ得タ者負債ハ別々ニナルノダカラ第三者ハ滌除ガ出來ル
（委員長）
合ト云フニ別々ニナツテ居ルノハオカシイネ
（栗塚）
左樣連帶デハ御座イマセン
（村田）
イランネ債務者自カラガ矢張出來タノダロウ、ダカラ相續人ハ無論出來ルト云フノダロウ
（栗塚）
第三所持者ハ滌除權ガアルト云フガ連帶債務者デアリ又保證人デアツタトキニハ矢張債務者ノ幾分カ負フテ居ルカラ出來ヌ又相續人デモ出來ヌゾヨト云フノデス
（委員長）
辨濟シタナラバ出來ヌゾヨ、ダロウ
（栗塚）
辨濟シタルトキハ出來ヌゾヨデス
（委員長）
辨濟シナケレバ矢張連帶義務者ト同ジニナツテ仕舞ダロウ
（栗塚）
辨濟シナケレバ出來ン相續人辨濟シタリト雖モ出來ンノデス
（委員長）
シタリトモ出來ンカ
（栗塚）
左樣デス辨濟シタラ出來ルト思フカ知レンガ滌除スル權ハナイト云フノデス、私ガ債務ヲ持テ死デ相續人ノ子供ガ三人遺シテ死ト内一人辨濟シタソレデモ滌除スル權ハナイゾヨト云フノデス
（槇村）
自己ノ分ノミヲ辨濟シタノダネ
（栗塚）
殘ラズ拂ヘバ出來マス
（委員長）
自己ノ分丈ケ拂テモ出來ンガ併シナガラ拂ハヌカラツテモ出來ヌダロウ
（栗塚）
拂ハヌデハ無論出來ン詰リ相續人ハ債務者ノ相續人デ義務ヲ負フテ居ルカラ出來ヌト云フノデアリマス
（委員長）
相續人ハ連帶義務ニナル者モアルガナランコトモアルネ
（栗塚）
卽チ債務者自カラヲ代表シテ居リマスカラ
（委員長）
モノニ依レバ債務者自カラ代表スル場合ト場合デナイトキモアルカラ
（南部）
一ノ債務ガ分レテ自分ノ相續スル分ヲ返セバ出來ルヨウニ見エルガソレデモ出來ヌト云フノデス
（委員長）
私ハ出來ヨウト思フ元ト債務者連帶シタトキトハ違フ自分ノ權利ヲ貰タノデ、ソレデ貰フ物ヲ貰ハンデ居ルニ外ノ兄弟ノ負擔マデ拂ハナケレバナラント云フハ酷ヒ責メ方デハナイカ
（栗塚）
併シナガラ、ドウデシヨウカ債權者ノモノヲ取テ見テハ
（委員長）
債權者ハドンナニデモ相續人ノ本人ヨリ取レンカラソレサヘ拂タラ其モノノ債務ガ滌除セラルルコトガ出來ルトシナイト若シドンナ路人デモ連帶者ガ責任ヲ儘サザル如クシテモ出來マイ
（栗塚）
茲ニ代價千圓スル一町歩ノ田地ヲ殘シテ死ダ人ガアル抵當ニ入レテ其相續人ガ二人アルソレデ殘ラズ拂ヘバ滌除ニ出來ルガ縱令其品物ヲ取テモ一人拂タ爲メニ債權者ガ滌除セラルルコトハナイ
（委員長）
權利者ノ爲メニ言ガ、義務者ノ身ニナツテ見ルト自分ガ最初カラ承知デ連帶辨償スルハ別ダガ相續ダカラ自分ノ受ケマイヨリ盡サン
（栗塚）
抵當物ヲ分ツコトガ出來ヌカラデス
（南部）
半分相續人自己ノ抵當ニ係テ居ルト云フコトハ出來ヌ不可分デ御座イマス
（委員長）
ソウダロウガ抵當不可分ト云フカラシテ一方ハ始終付カ
（元尾崎）
今日ハ金ヲ返サナケレバ抵當滌除ト云フコトハナイ
（栗塚）
御座イマセン
（元尾崎）
登記役所デ許サレンノデス
（栗塚）
義務ハ免カレテモ抵當ハ殘テ居ル
（南部）
滌除ガ出來ルト人ノヲ滌除ヲヤルト云フコトガアリマスカラ
（元尾崎）
コウ云フモノガアルト見テ之デ良カロウ
（栗塚）
實ハ一身上デ債務ノ責ヲ負フテ居ル人ハ如何ナ場合モ滌除ガ出來ヌト云ヘバ此條ハ或ハ盡キルノデスソレヲ保證人トカ連帶人トカ相續人トカ云フカラ分ランノデアリマス
（元尾崎）
他人ノ債務ノ爲メニ、ダカラ自分ガ負フテ居ルノデハナイ
（南部）
ナイカラ良イノデス
（元尾崎）
ダカラ之デ良クハナイカ
（栗塚）
之デ間然スル處ハナイ
（委員長）
末項ハ往ケソウナモノデス
（栗塚）
併シドウデシヨウ餘程ノ疑問デ佛蘭西學者ハ殘ラズ此說デス
（委員長）
私ガ民法ヲ書ケバ出來ルネ
（栗塚）
併シナガラ貴君ガ私ニ抵當ヲ貸テ遣ル、金ヲ借リ度ト思テ困テ居ルナラ南部サンカラ金ヲ借リルナラ私ノ家ヲ抵當ニ入レテ遣ロウト仰シヤツタ、スルト私ハ借リ主デ南部サンカラ借リテモ貴君ハ私ノ爲メニ抵當ヲ下スツタ人デ、其貴君ガ滌除スルコトガ出來ルト申シテハ債主ニ對シテ抵當ヲ遣ルト云フ口上ガ立タンヨウニナツテ仕舞抵當ヲ遣ルト言テモ滌除スルト仰シヤルト取消シタヨウナモノデス
（委員長）
滌除スルニハ金ヲ出サセン金ヲ出シタラ債權者金ヲ受取タラ宜シイ
（栗塚）
ソレデハ愈々私ガ拂フコトガ出來ヌトキハ貴君ハ私ニ代テ代位ナサルト債權ノ讓渡ニナツテ仕舞ヒマス
（委員長）
拂ヒガ出來テモ出來ンデモ此者ノ爲メニ我等ガ財產ヲ出シタノダカラ滌除スル
（栗塚）
ソウスレバ期限ノ來タトキ假令バ債務ノ滿期ニナツテ受出サントキハ貴君ハ金ヲ出シテ私ノ債權者ニナルガ宜シイ
（委員長）
期限ガ來テモ來ンデモ宜シイダロウ
（栗塚）
勿論來ヌトキノ話デ抵當ヲ遣ツタガ直グ滌除スルト抵當ヲ遣ツタトハ謂ヘヌヨウニナリマス
（委員長）
抵當サヘ遣ルノダカラ金ヲ出シテ取返ソウトモ宜サソウナモノデス
（栗塚）
抵當ノ目的ヲ逹シテノ後ハ宜シイ
（委員長）
金ヲ借リルノガ目的デソレヲ抵當ヲ出シテ目的ヲ逹シタカラネ
（栗塚）
金ハ南部サンカラ千圓借リテ抵當ニハ五六百圓ノ家ヲ入レタイガアリマセンカラ貴君ノ公債證書トカ家トカヲ入レタ其借リハ最早六百圓カモ知レン、スルト貴君ノ家ハ私ガ南部サンニ借リタ千圓ノ抵當ニ六百圓ノ家屋ヲ抵當トシテ私ノ爲メニ下スツタ南部サンガ承知シテ其翌日滌除シテハ南部サンハ詮ガナイ、跡ノ四百圓ハ南部サンハ無抵當ニナルカラ抵當ノ義務ガ無クナツテ仕舞貴君ガ六百圓ノ家屋ニ千圓ノ義務ガ付タモノガ無クナルノデス
（南部）
返シテシマエバ宜シイ
（委員長）
返サナクバ往クマイ
（元尾崎）
ソコガ辨濟ト滌除ト違フ所以デス
（栗塚）
南部サンノ權利ヲ保護スルガ爲メニ貴君ガ抵當ヲ出シテ下スツタノデ貴君ハ滌除スルコトハ出來マセンノデス
（委員長）
屬スルト云タラ宜カロウ
（栗塚）
スルト抵當ヲ今日出シテ翌日滌除スルト遂イ出サヌト同ジニナリマス
（委員長）
南部君ガ折合ワヌカラ
（栗塚）
折合ハヌデモ宜シイデソレガ滌除デアリマス
（委員長）
ソレハ爲シ得ラレナイ譯ケト思フテ居ル
（栗塚）
ソレダカラ爲シ得ラレナイヨウニ屬セズトヤツタノデ隨分議論モ出來ヨウト思ヒマス
（元尾崎）
コンナコトハ日本ニハナイト見テ宜シイ
（北畠）
書イテ置カント出來ル
（栗塚）
書イテ置カント出來マス
（委員長）
ソンナコトガアルモノカ、金ハ其儘抵當丈ケ滌除スル抔ト云フコトハ爲シ能ウモノデハナイ、言フベクシテ行ハレナイ
（栗塚）
此度私ガ南部サンカラ金ヲ借リルト千圓借ルニ千五百圓ノ家ヲ抵當ニシタソレカラ其千五百圓ノ家ヲ南部サンニ千圓ニシタトキドウモ金ニ困タカラ尙ホ借リラレンコトハナイ仕舞ニ千六百圓ニ元尾崎サンガ買テヤルト云フカラ滌除スルガ利益ダカラ南部サンニ向テ千圓ヲ遣ルゾヨト云フカラ滌除スルノハ當リ前デス
（委員長）
千圓貰タラ南部サンハ損ハナイ
（栗塚）
ソレデハ今ノ反對ノ例ニシテ、千圓ノ金ヲ借リテ私ノ家ガ實ハ千圓デ買タガ今日ハ段々下落シテ八百圓ニナツタ八百圓デ元尾崎サンニ買タ其トキ南部サンハ故障ガ言ヘルノデ勿論若シ八百圓デ賣ン南部サンノ權利ヲ害スレバ別ダガ南部サンガ折合ハヌデ私ガ元尾崎サンニ八百圓デ賣タ、スルト元尾崎サンガ千圓ノ抵當ダソウダガ御前八百圓デ賣タケレドモ千圓ノ片ダソウダガ滌除シナケレバナラント併シナガラ八百圓デ買フタガ南部サンガ承知スルカト云フト南部サンバ八百圓デハ否ト云フ、併シ貴君ノ貸タノハ千圓カハ知ランガ評價シテモ八百圓ゾヨト云フト南部サンハ損ガアルト云フコトハナイ仕方ガナイソレデ矢張滌除ガ出來ルノデ南部サンノ手ニ在ツテ高クナル見込ガアレバ削タカ幾ラ評價シテモ彼ノ家ハ建タトキ千圓ダガ相場ハ八百圓ト云フト元尾崎ニ掛合滌除シヨウト思フト云フト承諾セントキハ公賣シテ仕舞八百圓或ハ八百圓ヨリ減テ七百圓ニシカナランガ知レンコトデ御座イマス
（委員長）
ソウ云フ方カラ便利モアルカ知レンガ抵當ニナツタモノヲ滌除スルニハ元金ヲ返サナケレバナラント思フ、我輩ガ君ニ貸タ代リニ金ヲ貸スト同ジニナツテ南部サンニ金ヲ返シテ君ニ金ヲ貸シタモ同樣ニスルモ亦出來ント云フ保證人迄係ルト云フノデシヨウ
（栗塚）
ソウデハ御座イマセン千圓ニ這入テ居マシヨウトモ私ニ貴君ガ貸シテ下スツタ抵當トシテ下スツタ、六百圓スルト六百圓ノモノヲ拂テ南部サンニ借リテ居ルハ千圓ニモセヨ貴君ノ家屋ヲ六百圓ナレバ六百圓拂テ抵當ヲ免カレシムルコトハ出來ヌト云フノデアリマス
（委員長）
總テ債務ヲ辨濟セザルモ、ダカラ、シテモ、ダロウ
（栗塚）
シマシテハ、滌除デハナイ債務ガ無クナリ抵當ノ主タルモノガ無クナリマスカラ滌除デハナイ、滌除ハ債務ガ生キテ居テ不動產ニ付テ居ル煤丈ケヲ洗テ仕舞ト云フノデス
（松岡）
債權ト云フモノハ滌除ニ依テ皆ナ消滅スルノデハナイネ千圓ノ片ニ幾ラカ抵當ヲ取テ居タ其抵當ヲ賣テ見タラ八百圓ニシカナラン二百圓ハ無抵當債權者ニナルデシヨウ
（栗塚）
左樣
（松岡）
ダカラ第三所持者ニ抵當ニ入レタ抵當ハ今日評價ハ七百圓ダカ七百圓デ抵當ヲ放スガ宜シイト云フトソレハ無抵當トシテ三百圓ニナルノカ
（栗塚）
左樣デス
（松岡）
スルト自己ノ財產ヲ抵當トシテ千圓ノ所ヘ七百圓シカナイ云フトキハ其人ガ承知スレバ宜クハナイカ
（栗塚）
ソレハ旨意ニ背クト云フノデ義務ヲ負フテ居ルカラ、勿論抵當丈ケノ義務デ御座イマスネ、起案者ニ言ハセルト身體デ義務ヲ負フタノデハナイ物ガ負フタノデ、物ヲ賣ツタニモセヨ擔保シテ居ルカラ其擔保ナクナツテ仕舞ハオカシイ
（松岡）
無クナリマセンネ
（元尾崎）
折合ヲ付テスルカラ構ハン
（栗塚）
註ニ依ルト理由ハ自分デ約束シタコトヲ遵守シロト云フノデ、ト云フノハ貴君ニ抵當ヲ貸テ上デ貴君ハ南部サンカラ借リテ居タトキ私カ松岡サンガ急度返ス、ソレモ疑ルナレバ私ガ返スガ不動產ヲ返シテ松岡君ノ爲メニ抵當ヲ遣ルト云タラ其ノ約束ヲ遵守シナケレバナラン義務ガアルソレヲ滌除シテ仕舞ハ私ガ南部サンニ對シテノ約束ニ背クト云フ旨意デアリマス
（委員長）
オカシイネ
（松岡）
抵當ヲ無クスノデハナイ
（南部）
併シナガラ承知シテ自分ガ抵當ヲ入レタモノヲ滌除スルコトハ土臺出來ヌ話デ、スレバ債務者ガ抵當ヲ入レタモ亦出來ルト云ハナケレバナラン、ト同ジニナル
（松岡）
滌除ト云フノハ金ガ無カツタラ、ソレハ良イ
（栗塚）
第三者カラ論ズルトソウナルノデ買ツタ人ハ元尾崎サンダトネ元ト義務モ知テ居ルノダカラネ
（松岡）
契約ハ何ガ目的カ貸タモノヲ取ルノガ目的ダ
（栗塚）
佛蘭西デモ學者ノ說ハ皆之ニナツテ居ルノデス
（松岡）
ソウ云フモノカネ
（委員長）
ドウ云フ理窟カ
（栗塚）
抵當ノ滌除ト云フハ先刻カラ申ス通リ債務ハ拂ハズトモ千圓ト云フ借ガアツテ五百圓ノ抵當ガ這入テ居タラ抵當丈ケノ價ヲ拂サヘスレバ不動產ヲ取テ來ラルルガ滌除デ得タルモノハ誰カト云フト債權者ニハナイト云フ又保證人ニモナイ相續人モナシト抵當ヲ貸シテ遣タ者モナシト云フ何ゼ貸タ者ニナイカト云フニ債務者ニナイト云フ理窟ト同ジデス何ゼナレバ人ニ抵當ヲ貸テヤツタノハ矢張約束ガアルノデシヨウ、成程抵當ニ入レタ地所丈ケ義務ヲ負フテ居ルカラ義務ヲ免カレシメテ滌除ト云フカラ債務者ガ抵當ヲ入レテ置イテ又貴君ガ抵當ヲ入レタガ家丈ケ入レタラ抵當ヲ取テ言ヘルカソレハ云ヘマセン獨リ言ヘルハ第三者ノミデス
（委員長）
抵當ヲ貸タ人間ガ六十九條ノ原則通リニシテ總テ債務ヲ辨濟センデモ幾分ヲ辨濟シテモ矢張賣タリ買ツタリシタ代價トカ或ハ評價額トカ云フモノヲ辨濟シ又債權者ノ爲メ供託シテ免カルルコトガ出來ル第三者ガソレガ出來ルナレバ元ト抵當ヲ貸タ人間ハ自分ガ借リタノデハナイ、約束ヲ自分デシタノデハナイ
（南部）
自分デシテ居ルノデス
（委員長）
債務者トシテ居ルカ
（南部）
否債權者ハデアリマス
（栗塚）
抵當丈ケハ債權者ニ對シテ栗塚ノ爲メ出シテヤルト言タノデアリマス
（委員長）
言タニシテモ自分ガ借リテ居ルノデナイ人ノ爲メニ抵當ヲ出シテ遣タノダカラ其モノガ假令バ債務者ニ土地ヲ賣タトカ或ハ債務者ニ何カ外ノ取引デ買フタトカ云フトキ債務者ノ爲メ金ヲ拂テヤルト云フコトニハ抵當ヲ自分ノ望ニ依テ引出スコトガ出來ル第三者同樣ニ抵當ノ價ヒガ義務ノ幾ラカアル丈ケシカ拂フマイ千圓ト云テモ八百圓シカナイモノヲ何所ヘ持テ行テモ八百圓ダカラ價ヒ丈ケハ第三者ト同ジク言ヘルト云ワレソウナモノダソレヲ債務者同樣ニスルカ
（栗塚）
債務者ハ何ゼ出來ヌカ
（委員長）
金ヲ借リテ居ルカラ出來ン
（南部）
抵當ガ復タ抵當スル金ノ爲メ抵當スルト約束シタモノダソレフ背イテ引張リ出スコトハ出來マセン
（委員長）
金ヲ返セト云フノハ債務者ガ云フノダカラ、彼ノ男ガ借リテ居ル間ト云フノダカラネ
（南部）
其間抵當ヲ取消スト云フ初メノ約束ニ違フ
（委員長）
抵當ノ價ヒ丈ケ出セバ
（南部）
ソウスレバ債務者ト同ジデアリマス
（委員長）
債務者ハ抵當ヲ第二デ借リタノデ金ヲ返サント抵當ハ脫ケン
（南部）
何ゼデス
（委員長）
金ヲ借リテ居ルカラ
（南部）
金ヲ借リテ居ルガ抵當ハ金ヲ保證スル爲メデスカラ抵當ヲ取テ賣テモ金丈ケハ取レル譯ケデ其場合ニ於テ抵當丈ケノ借リノ金ヲサヘ遣レバ承知シナケレバナランガソレハ出來ン、約束デナイカラ、ト云フノデス
（委員長）
物ガナイトカ違フ抵當ハ金ヲ借リルニ付テ入レタノデアリマスカラネ
（南部）
第三者ノ方モソウデ御座イマシヨウ金ノ辨濟ニナル迄ハ抵當丈ケ返スコトハ出來マセン
（栗塚）
仰セノ如キモ佛蘭西學者中ニモアリマスガ併シ何方ガ善イカト云フニ契約ノ原則ニ違フト云フノデ此所デ說ノアツタ通リデアリマス貴君ノヨウナ說ヲ主張スル者ガ一身上ノ責ニ任ジテコソ出來ヌ物ノ上ニ付テ責ヲ負フテ居ル、債務者ノ資格ノナイモノニハ滌除ガ出來ヌト云フコトハナイト云フ說モアリマスガソレデハ契約ノ原則ニ背クカラ自分ガ物ノ上ニ付テ負フト言タ人ニ其契約ヲ自カラ破テ係ルコトハ出來ヌ抵當ヲ出ス契約ハ何所迄モ出スガ良イト云フ論ガアルノデ此間モ報吿委員デモ既ニ說ガアリマシタガ佛蘭西學者ノ說三人バカリ之ヲ撃ツノデソレハ契約ノ原則ヲ重ジナケレバナラント云フノデアリマス
（委員長）
撃ト云フノモ充分研究ガナイノダネ
（松岡）
事實ヲ云フト些ト理窟ニ、カラマツテ居ルノデス
（委員長）
變的ナモノデス
（栗塚）
貴君ノ說ニスルト報吿委員デモ此條ノ末項ガアル爲メ折角抵當シテヤツテモ良イト思フガ滌除ヲ許サント云フカラ、ヤラント云フノデ結句抵當ヲ貸シテ遣ロウト思テモ末項ノ爲メニ出サンデ金ノ融通ヲ妨ゲルト云フ說モ貴君ノ說ヲ主張スルモノモアリマシタ
（元尾崎）
債權者ガソンナラ宜シイト言ヘバ良シイ
（南部）
否ト云フノ理由ガナイ
（栗塚）
反對ノ說ヲ出シタト云フ丈ケデソレヲ主張スル人モナイヨウデス
（渡）
此方ハ穩カデアリマス
（委員長）
宜シケレバ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
[画像]
第千二百七十二條朗讀ス
第千二百七十二條　抵當債權者ノ參加スル爲メニ招換セラレタル不動產差押ノ上ノ公競落、增競賣ノ上ノ公競落、抵當訴追ノ上ノ公競落又ハ其他ノ公競落ニ付テハ滌除ヲ爲スコトヲ得ス〔佛訴第六百九十二條、第七百八條、第七百十七條第七項、第九百六十五條、第九百七十三條第六項、第九百八十八條〕
公益ニ因由スル所有權、徵收ニ付テモ亦同シ〔千八百四十一年五月三日ノ佛法律第十七條〕
右ハ抵當債權者ノ其順位ヲ以テ競落代價又ハ所有權徵收ノ賠償金ニ付キ配當順序ノ定メヲ受クルノ權利ヲ妨ケス〔同上〕
（修正案）　第一項左ノ如ク修正ス抵當債權者ヲ參加セシメタル總テノ公賣ニ付テハ滌除ヲ爲スノ限ニ在ラス第二項「公益ニ因由スル所有權」ヲ「公用」ノ二字ニ換フ第三項「競落」ヲ「公賣」ト改メ「所有權」ノ三字ヲ刪リ「ノ賠償金ニ付キ」云々ヲ「償金ノ配當ニ加入スルノ權利ヲ妨ケス」ト改ム
（元尾崎）
競賣競落トアルガ、報吿委員デ公賣ト直シタガ意味ガ違ヒマスカ
（栗塚）
違ヒマセン、今迄公賣ト譯シタノデアリマスカラ再調査デモ公費ニシマシタ
（元尾崎）
競賣ト云フハ幾ラ々々ニ買フト云フノデ公賣ト云フハ入札デシヨウ
（栗塚）
公賣ノ手續ハ訴訟法デ定メル積リデアリマス
（元尾崎）
彼所ハ公賣ト云テ居ルガ、此節論モアル、訴訟法デハ幾ラ々々ト手ヲ擧ゲルノデス
（栗塚）
最モ高値ニ買フト云フノデアリマスカラ競賣ニハ違ヒ御座イマセン
（元尾崎）
日本ニハ不動產ヲ競賣ハ見ナイ皆入札デス
（大尾崎）
入札ノ競ト云フノダネ
（委員長）
公賣ト云ヘバ兩方這入ルネ
（渡）
公用ニ付テ、ト云フハ
（栗塚）
公用徵收ニ付テモ亦同ジトナリマス
（元尾崎）
此コトハ公賣シタモノニハ適用センノダネ
（栗塚）
左樣デス
（村田）
但ハオカシイ
（元尾崎）
滌除ヲ爲スベキモノニ在ラズ、カ
（大尾崎）
ドウ云フ場合ニ配當ニ加入スル權利ヲ妨ゲズ、ガ必要デスカ
（南部）
滌除サレテ何モ取レント云フト損デハナイカ
（栗塚）
滌除ガ出來ン、公賣シタ代價ハ配當加入ガ出來ルノデス
（大尾崎）
ソレハ知レタ話デス
（元尾崎）
イラン話シダネ地面ヲ抵當ニ取テ買上ゲ代價ノ配當加入ガ出來ルノハ無論ダ
（栗塚）
ドウデ、スルカ滌除ガアツテコウ加入シタ順序デ辨濟ヲ受ケルト書イテ居ルカ滌除配當ノアツタ以上ハ抵當ガ無クナツテ仕舞タト其金ノ配當ハドウスルカト云フ滌除デナイ、ケレドモ順序ニ配當シナケレバナラント云フノデス
（元尾崎）
當リ前ノ話デス
（栗塚）
抵當ガ無クナツタラ順序ハ入ラント云フ疑ヒアル懸念カラ起タノデアリマス
（大尾崎）
貸タモノハ配當ヲ受ケナケレバナラン
（栗塚）
併シ順位ト云フモノハ抵當ガアツテカラ出ル言葉デシヨウ
（元尾崎）
先ヅアツテモ宜シイ
（松岡）
「滌除ヲ爲スノ限ニ在ラス」トアルカ「爲スコトヲ得ス」ト同ジデスカドウ云フコトニナリマスカ
（栗塚）
滌除ガナイト云フノデス
（南部）
滌除ハナイ別ノ話ト云フノデス
（松岡）
何ンノ爲メニ云フ法律カ
（栗塚）
斯フ云フ、場合ニハ滌除規則ヲ適用セント云フノデス
（松岡）
滌除スルト云フ人ガ無レバ法律ハ要ラン
（栗塚）
第三所持者ガ出來ルコトデス
（南部）
滌除ニ係ルヨウニナツテハ大變デシヨウ
（松岡）
「落札ニナツタ人ハ公賣ニ付テハ」ト云フト何ウナルカ
（栗塚）
公賣ノアツタトキニ滌除ノ限リニ在ラズト云フノデス
（松岡）
分ラン話ダ、何ウモ餘程オカシイ
（元尾崎）
公賣スルカラネ
（南部）
假令バ、公賣シテハ格別ナリト云フノデ滌除規則ノ例外ト云フノデス
（栗塚）
此所ニ云フ滌除規則ヲ適用スルカナラシナイノデアリマス
（元尾崎）
松岡サン少シ考ヘテ御覽ナサイ少シ違ヒマス
（大尾崎）
之ハ滌除ト云フモノデハナイ
（松岡）
公賣スレバ滌除等ヲ致ス筈ハナイ
（栗塚）
ソレダカラ別事デス
（松岡）
別事ナラ云フニ及バンデハナイカ
（栗塚）
滌除ヲヤルハ別コトダト云フノデス
（南部）
分ランコトハナイ
（元尾崎）
要心ノ爲メニヤツタモノデス
（栗塚）
抵當消滅ハ公賣デモ徵收デモ滌除ニ似テ居ルケレドモ此所デ謂フ處ノ滌除デハナイト云フノデス
（松岡）
コウ云フコトナラバ前ニ滌除ト云フノハ自カラスルコトダネ
（南部）
公賣ハ滌除ニ類シタモノダカラデス
（松岡）
公賣スル人ガ滌除スルト云フノカ
（栗塚）
滌除ト公賣ト同ジ働キノヨウダガ去リトテ滌除トハ別モノダト云フノデ能ク分テ居ルヨウデス
（松岡）
私ハ云フニ及バント思フノデス
（栗塚）
抵當消滅ハ公賣人デモ滌除ニ似テ居ルケレドモ此處デ云フ處ノ滌除デハナイト云フノデス
（松岡）
コウ云フコトナラバ滌除ト云フノハ自カラスルノデスネ
（南部）
公賣モ債權者ガスルノデス
（松岡）
地面ヲ賣ルトキニハ滌除シヨウト云フ思ヒ付ハ誰ガスルカ起リガナイ
（南部）
公賣ハ滌除ト類シタモノダカラネ
（松岡）
公賣スル人ガ滌除スルト云フノデスカ
（栗塚）
滌除ト云フ働キト公賣ト云フ働キト同ジヨウダガ去リトテ滌除トハ別モノダト云フノデ能ク分テ居ルヨウデス
（松岡）
私ハ謂フニ及バント思フノデス
（栗塚）
共ニ抵當消滅スルカ公賣ヲ以テ滌除ト看做シテハナランゾヨ又ソレトハ別モノゾヨト云フノデス
（松岡）
抵當ノ消滅ハ皆ナ云フカ
（南部）
皆ナ云フノデハナイ
（松岡）
公賣デ受ケタ人ハ一切物上權ハ構ハヌモノゾヨト云フナラ未ダ聞ヘルガ滌除ヲ爲ス限ニ在ラズト云フハ分ラン土臺之ヲ云フハ意味ガ分ラン
（大尾崎）
公賣ニナツタラ滌除デハナイゾヨト云フノデス
（委員長）
滌除ニ類似シテ居ルノダネ
（槇村）
鶴亂ハ、虎拉刺デハナイゾヨト云フノダ
（松岡）
何ヲ爲ス限ニ在ラズ、ト云フハ、ソレデハナイゾヨト云フノトハ違フ公賣ガ滌除ニ在ラズト云フナラ其方ガコトハ分ル
（南部）
滌除ヲ爲ス限リニ在ラズ、トスルカ
（松岡）
ソレデハ分ラン、ソウ云フコトニナルト公賣シタナラバモウ滌除ヲ用ユルコトハイラント云フノダ
（南部）
公賣ニ付テハ此滌除ニ付テ爲スベキ限リニ在ラズト云フノデ能ク類似シテ居ルケレドモガダ、宜シイデハナイカ
（栗塚）
公賣デ取得シタ人ハ滌除ヲ爲スノ義務ガナイ人ダト云フノデス
（松岡）
公賣デ受ケタ人ハ滌除シナケレバナラント云フ考ヘガドンナ場合ニ起ルカ懸念スルガ、オカシイ能ク考ヘテ御覽ナサイ
（村田）
滌除ニテ賣ルガ滌除トハ違フト云フノダカラ謂ハナクテモ宜シイノダ
（松岡）
マヅ妙ナモノト思フ
（大尾崎）
アツテモ宜シイ
（栗塚）
取得代價ガ評價額トカ之ニ係ル金額ヲ返濟スルガ供託スル抔ハ滌除スルカラハ公賣ニ付テハソンナコトハナイト云フノデス
（松岡）
ソレハ別ニ公賣手續ガアルニ滌除法ハ違フゾヨト云フ丈ケ、能ウ見ヘナイ
（栗塚）
公賣シタ以上ハ滌除スルニ及バント致シマシヨウ
（松岡）
何ト云フコトヤラ、全ク無用ナ條文デス
（元尾崎）
ナクツトモ宜シイコトハ澤山アルカラ此所デ一ツ位刪タツテ滌除ニナリハセン
（委員長）
千二百六十二條ニ賃借トアルガ此處ハ賃貸借トアルガ前ノモ賃貸借デハナイカ
（栗塚）
アレモ賃貸借トナツテ居リマス、之ハ如何デスカ御說ハ松岡サン丈ケデシヨウ
（松岡）
否
（村田）
私ハ松岡サンノ說大贊成デス、之ハオカシイ
（元尾崎）
刪テモ良イコトハ、ヨイ
（松岡）
淺墓千萬ナコトヲ謂フノダ
（元尾崎）
ソレハ謂ハレテモ宜シイコトハ幾ラモアルカラネ
（渡）
互ニ說ガ分カレタカラ刪ルヤ否ヲ定メマシヨウ、良イ動議ガナケレバ此儘ニシテ置キマシヨウ
（栗塚）
此儘ニ願ヒマス
（槇村）
先ヘ往キマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
[画像]
第千二百七十三條朗讀ス
第千二百七十三條　使用權、住居權及ヒ地役權ニ付テハ滌除ヲ爲サヽルモノニシテ債務者ノ是等ノ權利ノ負擔セシメタル不動產ニ付キ抵當ヲ有スル債權者ハ右ノ如クニ付與シタル是等ノ權利ヲ斟酌セスシテ債務者ニ對シ其不動產ノ賣却ヲ訴追スルコトヲ得
債務者ノ第千二百六十二條ニ記シタル制限ヲ超ヘテ爲シタル賃貸ニ付テモ亦同シ
（修正案）　第一項左ノ如ク修正ス使用權、住居權及ヒ地役權ハ滌除ニ係ラサルモノトス若シ抵當不動產ニ是等ノ權利ノ負擔アルトキハ抵當債權者ハ其權利ヲ斟酌セスシテ債務者ニ對シ不動產ノ賣却ヲ訴追スルコトヲ得第二項「記シ」ヲ「記載シ」ト改メ「ニ付テ」ノ上ニ「借」ノ一字ヲ加フ
（元尾崎）
其權利ト云フハ賃借ノ權利デスネ、ソレヲ構ハズヤレト云フノデスカ
（村田）
左樣デス
（栗塚）
分ル樣ニ修正シタ積リデアリマス
（渡）
係ラズ、附スト云フノハ矢張限リニ在ラズト同ジデシヨウネ
（淸岡）
權利ニ負擔アルモ義務ニ負擔アルト云フモ同ジカ
（栗塚）
是等ノ權利ヲ負擔シテ居ルトキハデ御座イマス、抵當不動產ニト申シタカラ是等不動產ノアルトキハトヤツタノデアリマス
（淸岡）
權利ヲ負擔スルノデハナイ詰リ義務デスネ
（栗塚）
權利カラ係ケラレテ居タトキハデス、權利カラ疵ヲ付ケラレテ居タナラバデスネ
（南部）
抵當不動產ニ負擔アル負擔ハ是等ノ權利ヨリ生ズル負擔アルトキハトヤツタ
（淸岡）
權利ヲ擔フテ居ルト權利アル人ノヨウニ見ハセンカ
（栗塚）
抵當不動產デ御座イマスカラ
（松岡）
ソレ等ノ權利ト云フモノガアルソレヲヤツテ居タラ負擔ト云フモノニナルト云フノデス
（渡）
良カロウ
（大尾崎）
良カロウ
（元尾崎）
義務ヲ負擔スルト云フノガ當リ前デ、權利ヲ負擔ト云フノハオカシイ
（委員長）
是等ノ權利ヨリ生ズル負擔ト云ヘバ良シイ
（南部）
權利ヨリ生ズルト云フト權利ガ出來テ來ル是等ト云フハ間接ニナル
（槇村）
權利ニ對スルカ
（栗塚）
若シ抵當不動產ハ是等ノ負擔アルトキハトヤツテハ如何
（元尾崎）
義務トヤツテハ往カンカ
（栗塚）
往ケマセン
（槇村）
是等ノ負擔アルニシテハ如何
（元尾崎）
ソウハ往カン
（渡）
此儘ガ宜シイ
（淸岡）
此儘ガ宜シイ
（委員長）
是等ノ權利ニ對スル負擔アリトハ謂ヘヌカ
（栗塚）
謂ヘマス
（元尾崎）
ドウモ、之ハソウハ謂ヘマセンネ
（栗塚）
後デ權利ヲ斟酌セズシテ賣却訴追スルコトヲ得、トアリマスカラ、是デ良サソウナモノデス
（淸岡）
義務ヲ含ンデ見ルトシナケレバナランネ
（南部）
權利ノ内必ラズ義務ガアルノデス
（委員長）
始終アレバ良イガトキドキダカラネ
（元尾崎）
權利ノ負擔アルトキ、ニシテ置ウデハナイカ
（渡）
之デ良シイ
（栗塚）
其權利ヲ斟酌セズシテ、ト云フガアルカラ宜シイ
（村田）
千二百六十二條ニ記載シタル制限ト云フハ千二百六十七條ヲモ引タ方ガ良クハナイカ
（栗塚）
左樣
（槇村）
其方ガ宜シイ
（南部）
矢張六十二條ヲ引タ方ガ宜シイ
（村田）
二項ヲ引テ居ルノデ一項ハ引テ居ラン
（南部）
詰リアレヲ引クノデス
（村田）
制限トハ謂ヘヌ
（栗塚）
同ジコトデス、千二百六十二條ニ記載シタル如ク千二百六十條及ビ千二百六十七條ノ訴權ヲ超ヘテ爲シタル賃貸借ニ付テモ亦同ジト云フノデス
（村田）
ソウハ見ヘナイ
（栗塚）
見マス
（委員長）
之ハ私ハコウ思フ、是非一旦抵當ヲ取タ者ハ人カラ人ヘ賣タラ記入ガ先キデアツタトキハ訴追シテ往ケル、ト千二百六十二條ノ事柄ガコウ付テ來テ居ルカラデシヨウ
（栗塚）
御尤モデアリマス
（元尾崎）
良カロウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
[画像]
第千二百七十四條朗讀ス
第千二百七十四條　第三保有者ハ債權者ヨリ訴追ヲ受ケサル間ハ何時タリトモ滌除スルコトヲ得又遲クトモ辨濟スルヤ又ハ不動產ヲ委棄スルヤノ催吿ヲ受ケタル後一个月內ニ滌除スルコトヲ得伹之ニ違フトキハ失權ト爲ルモノトス〔第二千百八十三條第一項〕
然レトモ右ノ失權ハ當然生スルモノニ非スシテ裁判所ニ之ヲ請求スルコトヲ要ス伹裁判所ハ第三保有者カ正當ノ障碍アリシコトヲ證明シ且債權者ノ其遲延ノ爲メニ現實ノ損害ヲ受ケサルヘキニ於テハ失權ヲ宣吿セサルコトヲ得
又債權者提供ニ答フル爲メ第千二百七十八條ニ依リ付與セラレタル一个月ノ期間ニ失權ヲ請求セサルニ於テハ失權ヲ宣吿スルコトヲ得ス
（修正案）　第一項「債權者ヨリ」ヲ「債權者ノ」ト改メ「何時タリトモ」ヲ「何時ニテモ」ト改メ「遲クモ」ノ三字ト「又ハ」ノ二字ヲ刪リ「之ニ」ヲ「此ニ」ト改メ「失權ト」云々ヲ「其權ヲ失フ」ト改ム第二項「生スルモノニ非スシテ」ヲ「生セス」ト改メ「ヘキ」ヲ「可キ」ト改ム第三項「一ケ月」ノ上ヲ左ノ如ク改ム又債權者ヨリ第千二百七十八條第二號ニ規定シタル
（栗塚）
第三者所持者ハ債權者ノ訴追ヲ受ケザル問ハ滌除スルコトヲ得又辨濟スルヤ云々ト修正致シマシタ
（元尾崎）
「委棄」ハ「抛棄」カ
（栗塚）
一定ニシテ後デ直シマス
（元尾崎）
受ケタル後一ケ月以内ニスルコトヲ得カ
（槇村）
此權ヲ失フト云フハ第二所持者ノ滌除權ヲ失フダネ
（栗塚）
左樣デス
（槇村）
請求スル人ガ債權者カ
（栗塚）
左樣デ御座イマス
（淸岡）
債權者ガ宣吿スルヲ失フダカラ何時マデヤレルノカ
（大尾崎）
三十日過ギテモ損害ノナイトキハ權ヲ失ハヌコトニナルネ
（元尾崎）
失ハンコトヲ宣吿スルコトヲ得、ダカラ裁判所ニ於テダ
（松岡）
二項目ノ「アリシナラハ」ハ「アロウナラハ」ノ直譯ダ
（栗塚）
日本デハ嚴密ナコトハ謂ヘヌノデス、成程翻譯文デハ御座イマスガ日本文デハ奇麗ナ文章デベキニ於テトハ云フタ
（松岡）
ベキニ於テハ將來謂ハンデナランヨウナモノデ此所デハ是カラ後日ヲ延ベテ貰フモノデナイ既ニ一ケ年ニナルベキ期限ガ切レテ居ルニハ今出來ンノデ相手ガ損害ヲ受ケナカツタト云フトキナラ權ヲ失フタトセズシテ又出來ルト云フノデス
（栗塚）
受ケザルニ於テハ、デドウカ、詰リソウダガ受ケナカツタデアロウナラバデス
（村田）
ベカリシ、ト云フノダネ
（栗塚）
左樣デス
（元尾崎）
受ケザルニ於テハデモ宜シイデハナイカ
（槇村）
受ケザルニ於テハガ宜シイ
（栗塚）
良シイ、併シ殘念ナガラ假名デ書クト、弱ハルノデ、受ケザルベキニ於テトアルノデス
（松岡）
ベキニ、ト云フト何ウカネ
（槇村）
受ケザラント求ムルニ於テ、トシテハ如何
（栗塚）
受ケザルニ於テハニ、シテ置カウ
（委員長）
債權者ノ訴追ヲ受ケザルト云フノト債權者ヨリ、ト云フ字ト何方ガ宜シイカ
（栗塚）
債權者ノ方ガ良カロウト思ヒマス
（委員長）
私ハ「ヨリ」ノ方ガ分リ易ヒト思フ
（栗塚）
債權者ガ追ヒ負ケタト云フノデス
（南部）
債權者ヨリ訴追ヲ受ケザルト云フヨリモ文章ハ良シイ
（委員長）
惡イト思フ
（元尾崎）
私ハ「ノ」ノ方ガ宜シイト思ヒマス、働キ文ダト「ヨリ」デ聽ヘルカネ
（栗塚）
受ケザルト云フ以上ハ債權者ノ訴追ヲ受ケザル、デ良シイト云フ「ヨリ」ト云ヘバ訴追セラレザル間ハト云フノデス
（松岡）
宜シイ
（委員長）
「又ハ」ハドウカ
（栗塚）
又ハト云フト辨濟スルヤ委棄スルヤト云フ疑ヒノ言葉デ又ハイラナクナリマス、若シ「又ハ」ヲ入レルト辨濟スルノ催吿又ハ不動產ヲ委棄スルノ催吿ト書クト又ハガ生ルト云フノデス
（委員長）
宜シイ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
[画像]
第千二百七十五條朗讀ス
第千二百七十五條　第三保有者ハ滌除ノ豫式トシテ第三者ニ對シテ自己ノ權利ヲ固定シ且第千百八十四條及ヒ第千百八十五條ニ從ヒ讓渡人ノ先取特權ヲ公示スル爲メ自己ノ證書ヲ登記セシムルコトヲ要ス〔第二千百八十一條〕
右ノ後第三保有者ハ保管人ヲシテ自己ノ不動產ノ負擔セル先取特權又ハ抵當ノ目錄ヲ交付セシム
（修正案）　第一項「豫式」ヲ「準備」ト改メ「第三者ニ對シテ」ノ七字及ヒ「ヲ固定シ云々從ヒ」ヲ刪リ「權利」ノ下ニ「及ヒ」ヲ挿入ス第二項「保管人ヲシテ自己ノ」ノ九字ト「交付セシム」ノ五字ヲ刪リ「目錄」ノ下「登記官吏ニ請求ス」ノ八字ヲ加フ
（栗塚）
第何條々々ハ皆ナ刪リマシタ
（委員長）
之ハアツタ方ガ能クハナイカ、アル方ガ先取特權ノ所ヲ見出スニ工合ガ良シイ
（栗塚）
見出ニハアル方ガ便利デアリマス併シナガラ、書イテナケレバ索サナケレバナラン、索スコトノ出來ヌヨウナ人ガ民法ヲ見ル氣遣ヒガナイト云フ論ガアツタノデソレ故之ヲ書クト外ガ皆書カナケレバナラン外國文デハ但ト云フヨウニ書イテアルカラ意味ガ取レルガ日本文章デハ實ハ公示ノ仕方ガアルトカ云フ千百八十四、五條ガアルカラト云フ丈ケデ御座イマスカラ、公示スル爲メニ登記役所デシテ貰フノデス、カラ但ニシテ先取特權ノ公示ハ千百八十四、五條ニ從フト書イテモ宜シイ
（委員長）
尙ホオカシイ、ソレ程必要デハナイカネ
（栗塚）
自己ノ權利ト先取特權トヲ見セタカラ遂イ刪タノデ御座イマス
（元尾崎）
二項ノ登記官吏ニ請求スルト云フノハ何ヲ請求スルノカ
（栗塚）
抵當ノ目錄ヲデ御座イマス
（村田）
抵當ノ目錄ヲ貰テソレカラ滌除シヨウト云フノダ、貰ハナケレバ分ランカラネ
（元尾崎）
未ダ外ニ抵當ニ取タモノガアツタトキカ
（栗塚）
這入テ居ルカ居ラントキカ云フ丈ケデス
（元尾崎）
登記簿ノ寫ヲ貰フノデスカ
（南部）
左樣デス、目的ヲ貰テ行カナケレバ出來ンノデス
（栗塚）
「交付セシム」ト貰フ方カラ言葉ヲ立タノデス
（元尾崎）
「交付セシム」ハオカシイ
（松岡）
千百八十四條云々讓渡人トカ先取特權トカ云フハ何ゴトカ分ラン
（南部）
外ニ先取特權讓受人、公示スルト云フコトハ民法中何所ヲ尋ネテモ御座イマセン
（松岡）
愈々アリマセンカ
（南部）
屹度アリマセン
（委員長）
ナイカラ、トテモ、有テ宜シイ
（栗塚）
スルト文章ヲ皆書キ換ヘナケレバナラン
（委員長）
置ク必要モナイ況ンヤ文章モ下手ニ於テヲヤ、トナゼ書カン
（栗塚）
其氣味ガアルノデアリマス
（元尾崎）
有ル方ガ一體ハ良シイネ
（淸岡）
總テアル方ガ良シイト思フ
（委員長）
懈逅見ル人ニハ分ランカラネ
（松岡）
自己ノ權利ヲ公示シ讓渡人特權ヲ公示スルト云タラ宜シイ
（委員長）
權利及ビ何條ニ從ヒ、先取特權トシテモ宜シイ
（栗塚）
文章ハ拙ナイ
（南部）
自己ノ權利ヲ公示及ビト云ヘバ良シイ
（栗塚）
公示シ及ビ云々自己ノ權利ヲ公示スル爲メ、モ良シイ、且何々ニ從ヒ先取特權ヲ公示スル爲メ
（委員長）
爲メ迄書カンデモ良シイ
（槇村）
自己ノ權利ヲ公示スルトヤルカ
（委員長）
公示シ及ビ第何條ニ從ヒデ宜シイ
（槇村）
公示シ且デ宜シイ
（南部）
「及ヒ」ガ二ツ重ナルカラ「且」デ宜シイ
（松岡）
中ノ「及ヒ」ハイラン
（栗塚）
二ツ云フトキハ是非アルノデス
（南部）
公示シ且何々條ニ云々トシタラ良シイ
（村田）
ソレデハ之デ良シイ
本條ハ報吿委員ノ修正案中「權利」ノ下「及ヒ」ヲ刪リ其他同修正ニ決ス
于時午後三時五分閉會