法律取調委員会 民法草案議事筆記 第83回
参考原資料
- 法律取調委員会 民法草案債權擔保編議事筆記 , 自 第八十二回 至 第八十四回 [国立国会図書館デジタルコレクション]
備考
- 未校正のテキストデータです.
民法草案擔保編第八十三回議事筆記
自第千二百四十一條至第千二百五十七條
明治二十一年九月二十四日午前八時三十分開會
(委員長)缺席ス
(槇村)
ヤリマシヨウ
第千二百四十一條朗讀ス
第千二百四十一條 婚姻シタル婦ノ法律上ノ抵當カ或ル不動產ニ制限セラレサルトキ又ハ債權カ婚姻契約ニ因リ若クハ配偶者間ノ特別合意ニ因テ定マリタル金額ニ評價セラレスシテ婦ノ未定ノ擔保ニ必要ナルヨリ多クノ不動產ニ對シテ記入ヲ爲シ若クハ債權ノ正當ナル評價ヨリ更ニ大ナル金額ノ爲メニ記入ヲ爲シタルトキハ夫又ハ其承權人或ハ不動產ニ關シ或ハ評價シタル金額ニ關シ裁判上ニテ右記入ノ減少ヲ請求スルコトヲ得〔第二千百四十四條〕
(修正案) 左ノ如ク改ム婦ノ法律上ノ抵當カ其債權ノ擔保ニ必要ナルヨリ多クノ不動產ニ付キ記入アリ又ハ其債權ノ正當ナル評價ヨリ更ニ大キナ金額ノ爲メニ記入アリタルトキハ夫又ハ其承接人ハ不動產又ハ金額ニ關シ裁判上ニテ右記入ノ減少ヲ請求スルコトヲ得但抵當カ或ハ不動產ニ付制限ナキトキ又ハ婚姻契約若クハ配偶者間ノ特別ノ約束ニ因リ債權額ノ評價ナキトキニ限ル
(栗塚)
之ハ反譯ノ不都合ガアルヨウデモ御座イマス併シ意味モ初メノ「評價セラレスシテ」迄ノ文章ヲ後ヘ持テ參ル方ガ原意ニ能ク適ヒマス又日本文デモ能ク分ルカラ「婦ノ法律上ノ抵當ハ其債權ノ擔保ニ必要ナルヨリ多ク」云々ト致シマス
(松岡)
或ハ註ノガ足リナイノカ二ツノ原因ノ爲メニ減少セラルルト一ハ擔保ノ爲メニ必要ナラザル不動產ノ多ヒノ第二ハ至當ノ價ヒヨリ多ヒト之ハ多ヒ少ヒノコトカ
(栗塚)
擔保ニ必要ナルヨリモ餘計ナトアルノデ大層臭ヒト云フソンナニ澤山ノ不動產ニハ及バヌト云フノデス
(松岡)
元ノ譯ニハ或不動產ニ付制限セラレザルトキト云フト何ノ不動產ニハト云フヨリモカ
(栗塚)
此土藏ト定マツテ居ラン只某ノ持テ居ル不動產ト云フ土藏或ハ家トカ定テ居ラン定テ居タラ幾許多クトモ仕方ガナイ僅カ五十圓ノ抵當ニ千圓バカリ係ケタ藏ヲ入レテモ此藏トシテアレバ仕方ガナイノデアリマス
(松岡)
意味ヲ押詰メルトコウ云フヨウニナルカ
(栗塚)
ヨリ多クト云フハ餘計ナト云フノデス
(松岡)
元ノヲ能ク見ルトヨリ多クト云フ意味ハ見ヘナイ
(栗塚)
原文ニアル擔保ノ必要上ヨリモ大層ナトアルノデ大袈裟ナルトアルノデス
(松岡)
ヨリ多クノ必要ノト云フコトハ一二ノ區別ハ同ジニナリハセンカ
(栗塚)
一ツハ金デ御座イマスカラ
(南部)
金デハナイ評價シテ居ルノデス
(松岡)
必要ト云フモノハ定タ物ガナケレバナランヨリ多クハ金ダカラ多クテ見ルト同ジコトニ聞ヘハセンカ畢竟私ハ原文ノ意味ガ能ク分ランガ註モ能ク分ラン
(栗塚)
不動產ノ整然ト定マツタモノ定マラン物トソレカラ擔保ノ必要ト凡ソトノ位ヒガ百圓デモ澤山ナ不動產ガアルト云フノデ其不動產ヲ記入シ此度ハ擔保ノ必要デナイノデ債權ノ額ヨリモ多ヒ奴デス
(松岡)
額ト云フノハ債權ノ額ヨリ多クノ物ヲ入レテ居ルト云フト擔保ノ必要ナルヨリ多ヒト同ジコトデス
(南部)
制限ノ無イ場合ト多ヒ不動產ノ制限ノ無イ場合總テ不動產ノ抵當ニナツタ場合ソウ云フトキ不動產ガ多ヒカラ評價シテカラモ評價シテナクトモ不動產ノ分テ居ルトキニ登記ニナツテ居ルケレドモガ評價ガ姑ク無イ其場合ニハ正當ナル評價ヲシテ見テソレヨリ多ヒ金ニナツタトキ減少スルト云フノデ制限ノアル場合ト制限ノナイ場合ト二ツノ區別シタモノト思フ
(松岡)
ヤツテ見テ何レ程ニナルカ知レン擔保ニ必要ナルヨリ多クト云フノダ
(南部)
勘定シテ見ナケレバ分ラン
(松岡)
コウヤツテ書テ見ルト私ハ債權ノ正當ナル評價ヨリ更ニ多キ金額ノ爲メト云フノト債權ノ擔保ニ必要ナルヨリ多クト云フハ債權ノ金額ノ擔保ニ必要ヨリト云フト詰リ同ジコトニナリハセンカ
(村田)
物カラ出タノト金カラ出タノトノ違ヒダネ
(栗塚)
左樣デス
(村田)
抵當額ヲ減ズルノデナケレバオカシクハ御座イマセンカ元ト百圓ニ對シ二百圓ノ物ヲ當テタカラ百圓ニシテ呉レト云フナラバ宜シイガ債權ニ係タコトダロウ減ジテ呉レト云フノハ承權人ガ減ジテ呉レト云フノハ抵當ヲ減ジテ呉レト云フノデス
(栗塚)
配偶者間ニ定マツテ評價セラレテ居タラ往カンゾヨト云フノデス
(松岡)
成程分リマシタ
(栗塚)
婚姻契約デ定タコトハ跡デ改メルコトハ出來ヌト云フノデアリマス
(村田)
抵當ハ減ジテ貰テ良サソウナモノデス
(大尾崎)
初メノ約束ダカラ仕方ガナイ
(松岡)
金額ノ定マラン奴ハ困ル
(栗塚)
ソレハ裁判所ヘ往テ定メテ貰フ初メカラ定テ居タラソレハモウ往カヌゾヨト云フノデス
(村田)
成程其理窟ハアリマス
(松岡)
宜シイ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第千二百四十二條朗讀ス
第千二百四十二條 右ニ等シク後見人又ハ其承權人ハ其職務ニ就キタル當時又ハ其後ニ於テ後見會議ノ決議ニ因リ或ル不動產ニ抵當ヲ制限スルコト又ハ定マリタル金額ニ債權ヲ評價スルコトヲ爲サヽリシトキハ未成年者又ハ禁治產者ノ擔保ニ必要ナルモノヽ外ニ爲シタル記入ノ減少ヲ請求スルコトヲ得〔第二千百四十三條〕
(修正案) 左ノ如ク改ム右ニ同シク後見人又ハ其承接人ハ未成年者又ハ禁治產者ノ擔保ニ必要ナルモノノ外ニ爲シタル記入ノ減少ヲ請求スルコトヲ得但後見會議ノ決議ニ因リ或ル不動產ニ付キ抵當ノ制限ナク又ハ債權額ノ評價ナキトキニ限ル
(松岡)
後見人ハ不動產ノ抵當ニハ必ラズ會議ノ意見ヲ問ハナケレバナランカ
(栗塚)
ソウデ御座イマス然カモソレバカリデハ往カン裁判所ノ認可ヲ受ケナイト往カン
(松岡)
餘リ自由ノ極點カラ束縛ノ極點ヘ一足飛デハナイカ
(栗塚)
丁度法律上ノ抵當ノコトヲ二條デ現ハシテ居ルノデス
(元尾崎)
承接人ト云フハドウ云フモノカネ
(栗塚)
相續人ソレカラ承接人ト云フ廣イノデ之ハ反譯デ構ハズヤツテ居ルガ承權人ト云フト義務ヲ負フ人デ無イ方ニナル權利バカリニナルノデアリマス
(元尾崎)
斯ウ云フ字ハ佛文デハ
(栗塚)
「ヱイヤンゴース」デアリマス「ヱイヤンドロアー」實ハ相續人トヤツテモ宜シイカモ知レマセン
(元尾崎)
前條ニ相續人トシテハ斯ウトアルダロウ母親ノ抵當ニ這入テ居ル奴ヲ相續人ガ記入スル
(栗塚)
「夫又ハ承接人」デアリマス
(元尾崎)
夫ノ相續人ト云フト息子ダネ息子ガ母親ノ抵當記入ヲ減損スルト云フノハオカシイネ
(栗塚)
併シ財產ハ他人ト云フ法律デアリマスカラオカシクハアリマスマイ
(松岡)
先ヅ宜カロウ
(元尾崎)
宜シイトシテ置キマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第千二百四十三條朗讀ス
第千二百四十三條 抵當カ合意上ノモノタルトキハ債務者ハ其牴當カ現在ノ財產ニ係ル一般ノモノニシテ第千二百十三條ニ記シタル如ク過度ナルトキニ非サレハ裁判上ニテ其減少ヲ請求スルコトヲ得ス
總テノ場合ニ於テ債務者ハ設定證書又ハ別證書ヲ以テスル評價アラサルトキハ記入ニ於テ債權者ノ爲シタル債權ノ評價ノ減少ヲ請求スルコトヲ得〔第二千百六十條末文、第二千百六十三條、第二千百六十四條〕
(修正案) 左ノ如ク改ム約束上ノ抵當ハ債務者ノ現在ノ總財產ニ關シ第千二百十三條ニ記載シタル如ク過度ナルトキニ非サレハ債務者ノ請求ニ依リ之ヲ減少スルコトヲ得ス債務者ハ常ニ記入ニ於テ債權者ノ爲シタル債權ノ評價ノ減少ヲ請求スルコトヲ得但設定證書又ハ別證書ヲ以テ評價ヲ爲ササルトキニ限ル
(大尾崎)
此條ヨリ始メテ約束上ノ抵當ト云フノデスネ
(栗塚)
左樣デス
(松岡)
「請求スルニ依リ何々スルコトヲ得ス」ト云フハ向ウノ人ガ「得ス」ニ聞ヘハセンカ
(栗塚)
「債務者其減少ヲ請求スルコトヲ得ス」カ
(松岡)
ソウシナケレバナラン
(栗塚)
約束上抵當ハ之ヲ減少スルコトヲ得ズ債務者ノ請求デハト讀マセル積リデアリマス債務者其減少ヲ請求スルコトヲ得ズデ宜シイデシヨウ
(南部)
良カロウ
(村田)
ソレデ良シイ
(松岡)
其レハ良シイガ二項目債務者ハ記入ニ於テ云々ハ
(栗塚)
二項ハ「債務者ハ常ニ記入ニ於テ債權者ノ爲シタル債權ノ評價ノ減少ヲ請求スルコトヲ得但設定證書又ハ別證書ヲ以テ評價ヲ爲ササルトキニ限ル」トシテ前ノ千二百四十一二條ハ評價減少價額ノ減少ト一緒ニ書タガ此所デハ分ケテ書タノデアリマス
(元尾崎)
記入デハ負擔ガ分テアツテ證文ニ書テナイトキカ
(栗塚)
債務者一人勝手ニ書タノデス
(淸岡)
双方デナケレバ往カンノデ此所ハ債務者ガ常ニ債權者一人ノ記入爲タル債權ノ評價トカ何トカシテハ如何
(元尾崎)
今日ハコンナコトハ出テ來ナイネ
(松岡)
評價ガ協議上デ出來タノデナイカラ減ラセルノデアロウ
(南部)
評價ハ記入スル爲メニ出來テ居ルノデス
(松岡)
詰リ協議上デナイトキト云フノダ
(栗塚)
左樣デス
(南部)
評價ハ一人デシテモ記入ハ二人デシテモ往カン
(栗塚)
記入ニ於テヲ止メ記入ノトキカ
(松岡)
記入ニ於テハ再調査トナツテ見ルト往カンネ
(大尾崎)
證文ガアツテモ往ケルノデシヨウ
(松岡)
アルノガ當リ前無ケレバ抵當ニナツテ居ル譯ガナイ
(元尾崎)
證文モアルコトハアルガ評價ガ有テモ抵當トシテノ財產ガ不動產一切トカ何トカハツト書テ置タトキ減少ガ出來ルノダネ
(栗塚)
左樣デス
(元尾崎)
二項ノ場合ハ一方ノ承諾ヲ經ズシテ勝手ニ見込デ評價ヲ書テ置クコトハナイ
(南部)
此書方ハ債權者カラ勝手ニ書クコトガ出來ルノデス
(栗塚)
「記入ニ於テ」ハ無クトモ宜シイ「債務者ハ常ニ債權者ノ爲シタル評價ノ減少ヲ求メルコトヲ得トシマシヨウカ
(松岡)
其方ガ些トハ良シイ
(元尾崎)
金額ヲ定メズニ抵當ニ入レルヨウナコトハアリマスマイ
(大尾崎)
アリマスマイ斯ウ云フ理窟ノモノダロウ
(栗塚)
今日ノ千二百四十一條ヨリハ再調査ハナイノデアリマスカラ左樣
(南部)
債權者ノ評價ノ減少トシテモ宜シイ
(松岡)
ソレデモ宜シイ
(栗塚)
斯ウ云フ動議ガ出タガ「債權者ノ記入シタル債權ノ評價ノ減少ヲ請求スルコトヲ得」ト之ハ如何
(槇村)
之ハ良カロウ
(大尾崎)
ソレハ良カロウ
(松岡)
良カロウ
(元尾崎)
合意ト契約トハ何ウカ
(栗塚)
約束ト云ヘバ合意ト云フヲ約束ト替ヘレバソレデ契約ト云フ字ハ外ニ一ツアルガ孰レ議場ヘ登ルカ之ハ喧シイ議論ニナロウカ今村ノ說ハ起案者ガ別ヲ立タニモセヨ時々約束ト書タヲ契約ト直センコトハナイ民法中契約ト約束ト二ツアルハオカシイ元トカラ二ツアルヨウダガ一ツシカ無イカラシテ始終日本字デハ何所モ契約デ宜シイト云フ論ヲ出シテ已ニ議場ヘ再調査デ登ルデシヨウカ契約編デハソレヲ刪テ居ルカ喧シイト思フ
(元尾崎)
今日ハ止メテ此次ニシヨウ之モ合意デシヨウ之抔ハ約束トハ云ヘヌダカラ合意ト云フガ能ク當ルガ乃チ之ハ約束デ宜シイカ
(松岡)
ソレハ「合意」ト云テモ貴君一人ハ分ロウガ却テ外ノ人ハ約束ト思フ民間ノ人ハ合意トハ云ハヌ約束ト云フニ於テハ人ガ迷ハナイ
(栗塚)
併シ今申シタガ約束ト云フノデ契約デ網羅シテ居ルニ依テハ日本デハ契約ト云フハ用ヒナイデモ或ハ契約ノミニシテ約束ヲ止メヨウト云フ問題ガ起テ居ルガ詰リ合意ト云フモノト契約ト云フモノト別デアルト云フ乃チ合意ト云フハ約束ト改メタラ矢張契約ト云フ字ガ除ケテ居ルノデ併シ今ノ問題デハ御座イマセン
(南部)
人權ノ始メデ文字ヲ定メナケレバナラン
(栗塚)
彼所テハ約束ガ合意デナケレバデスカ合意ト云フハドウデシヨウカ
(元尾崎)
場合ニ依テダ丁度ソンナラバ左樣シヨウ明後日ニシヨウト云フノハ約束ト思ハルルナ
(栗塚)
契約ノ意味ヲ帶テ居ルカラデシヨウ
(松岡)
合意モ約束モ此間内ヤツテ來テ居ル
(元尾崎)
ケレドモ再調査トナツテ見レバデス
(栗塚)
前ニ人權ト云フノガアルカラ彼所ヲ能ク見ナケレバナラン
(松岡)
合意卽チ契約ト云フノモアルノダカラ先ヅ之ハ受ケ置キトシテ宜シイ
(栗塚)
合意ト云フ字ハ約束ト云フ字ニ直ルト云テ定メテ居ルノデアリマスカラ之ハ合意ガ良イトナレバ合意トナリマス
(元尾崎)
訴訟法デハ合意ト云フ字ハ殘シテ置クト云フニナツタネ
(渡)
之ハ其場合ニ行テニシヨウ
(槇村)
先ヘ往キマシヨウ
本條ハ第一項末文「非サレハ債務者其減少ヲ請求スルコトヲ得ス」トシ報吿委員修正中第二項「記入ニ於テ」ヲ刪リ其他之ニ決ス
第千二百四十四條朗讀ス
第千二百四十四條 遺囑上ノ抵當ハ相續ノ不動產ニ關シ遺囑者ヨリ制限ナク之ヲ設定シ又ハ債權ニ關シ評價ナクシテ之ヲ設定シタルトキハ亦相續人ノ請求ニ因リ之ヲ減少スルコトヲ得〔第二千百六十一條〕
(修正案) 「遺囑」ハ何レモ「遺言」ト改メ「ニ關シ」ハ何レモ「ニ付キ」ト改メ「ヨリ」ノ二字竝「亦」ノ一字ヲ刪リ「制限ナク之ヲ設定シ」ヲ「制限ヲ爲サス」ト「因リ」ヲ「依リ」ト改ム
(栗塚)
「遺嘱」ハ「遺言」トナリマシタ
(松岡)
之ハ寔ニ良シイ「遺囑」抔トエラソウニ云フケレドモ異タコトハナイ「遺言」ト云フハ支那ノ確カナ字ダロウ
(栗塚)
ソウデ御座イマス渡邊洪基君ガ大學デ調ベタガ遺文ト云フノガアル「遺文」ト云フノハ卽チ遺言デスソレデ遺言ヲ受ケタ人ハ「受遺者」トナツタガ之ハ些ト困ル
(松岡)
ソレハ其トキニ云フガ良シイ
(栗塚)
相續人其減少ヲ請求スルコトヲ得トシテ前ト同ジヨウニシタイ
(元尾崎)
遺言書ノ抵當ト云フノハ「ボアソナード」ノ思ヒ付デハナイカ佛蘭西ニハ無イノダロウ
(村田)
アルノデ佛蘭西ノ條ヲ引テ居ル
(元尾崎)
コンナコトガアルカネ
(栗塚)
之ハ何百年目ニ此條ガ適用セラルルカデス
(大尾崎)
當時入用ハナイネ
(栗塚)
左樣デス只大審院デハ入用デシヨウガ始審裁判所デハ最モ入用ハナイデシヨウ
(南部)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第千二百四十四條ノ二朗讀ス
第千二百四十四條ノ二 若シ債務カ半額以上消滅シタルトキハ記入セラレタル金額ノミニ關シ亦三種ノ抵當ノ記入ヲ減少ス
債務者ハ其爲シタル一分ノ辨濟ヲ何時ニテモ自費ニテ記入ノ緣邊ニ附記セシムルコトヲ得
(修正案) 第一項「記入セラレタル」ノ七字ヲ刪リ「關シ」ヲ「付キ」ト改メ「亦」ヲ「尙ホ」ニ換ヘ「減少ス」ヲ「減少スルコトヲ得」ト改ム第二項「其爲シタル」ノ五字ヲ刪リ「一分ノ辨濟ヲ」云々ヲ「ー分ノ辨濟ヲ爲シタルトキハ常ニ自費ニテ記入ノ縁邊ニ之ヲ附記スルコトヲ得」ト改ム
(栗塚)
債務ガ半額以上消滅シタルトキ金額ノミニ付尙ホ三種ノ抵當ノ記入ヲ減少スルコトヲ得ト致シマシタ「三種」ハ「遺囑」ト「法律上」ト「約束上」デアリマス
(松岡)
上ハ評價ニ付減少ダ此度ハ金額ニ付タデ「ノミ」ト云フハドウカ
(栗塚)
金額ノミデナイト往カン
(元尾崎)
消滅シタルハ半分ヤツタトキトカ云フトキダネ
(栗塚)
左樣
(松岡)
半額以上ニナルト不可分ガ可分ニ變ズル姿デスネ
(栗塚)
御尤モデ御座イマス
(松岡)
註ハ出過タ話ダガ然レドモ云々トアル
(栗塚)
債務者ガ一分ノ辨濟ヲ爲シタルトキハ常ニ自費ニテ記入ノ縁邊ニ之ヲ付記スルコトヲ得ト致シマシタ
(元尾崎)
金額ノミニ付ト云フノハ何ウ云フモノカ
(栗塚)
記入ニ二通リアル金額ノミハ不動產ニ付テノ記入減少スルコトガアル「不動產ニ付必要ナル」云々記入ノ減少ヲ求ムルコトガ出來ヌ評價額ヨリ多ヒ記入ノアツタトキト二ツアリマス
(元尾崎)
同ジコトノヨウデス
(大尾崎)
金額ノミヲ減少シテモ抵當ニ入レテ居ルモノハ別ト云フ譯デシヨウ
(栗塚)
左樣
(大尾崎)
同ジヨウナモノダネ
(松岡)
「ボアソナード」ノ註ハ下ランネ
(栗塚)
金ヲ借ルニ千圓ノ抵當ニ此丈ケ這入タト云フ千圓ノ内五百圓返シタカラ減ジテ置クト云フノデス
(大尾崎)
併シ不動產ハ滅少セントアル
(栗塚)
不動產ハ減少シマセン金額デアリマス千圓ノ内五百圓入レレバ五百圓ノ片々ト云フコトハアルノデ二番抵當ガ出來ルカラデアリマス
(元尾崎)
金額ノミト調ハンデモ半額以上返シタラダ
(栗塚)
不動產ニハ出來ヌカ金額ニハ出來ルト云フノデス
(南部)
不動產ハ三ケ所ヲ二ケ所ニスルコトハ出來ヌノデス
(大尾崎)
成程融通ノ爲メダネ妙ナコトヲ調タモノデス
(北畠)
細イコトヲ調タモノデス
(栗塚)
消滅シタルトキハ尙ホ三種ノ抵當ニ付金額ノミノ記入ヲ減少スルコトヲ得デス
(松岡)
之ハ宜シイ
(北畠)
金額ト云フノヲ冒頭ニ出スカ否デスネ
(栗塚)
左樣尙ホ三種ノ抵當ニ付金額ノミニ記入ヲ減少スルコトヲ得ト同ジデシヨウ
(村田)
ソレ丈ノ効ハナイ
(槇村)
此儘ニシテ置カウデハナイカ三種ノ抵當ノ記入ト云フハオカシクハナイカ
(槇村)
消滅シタルトキハ尙ホ三種ノ抵當ニ付金額ノミノ記入ヲ減少スルコトヲ得ト直サウ
(栗塚)
ソレデハソウ致シマシヨウ
(元尾崎)
尙ホト云フハオカシクハナイカ
(栗塚)
又ト云フノデス
(元尾崎)
尙ホト云フハ斯ウ云フコトモアルガ其上ニモト云フノダカラ
(栗塚)
其積リデス前ニ斯ウ云タガ記入ノ減少ヲ調タガ此所デモト云フノデス
(渡)
原文ニ依ルト前ニ斯ウ云フコトヲ調タガ又ト云フノデアリマスカラ此文デハ無クトモ宜シイ
(北畠)
「尙ホ」ヲ刪リマスカ
(元尾崎)
「尙ホ」ハ刪ルガ宜シイ
(松岡)
刪リマシヨウ
(北畠)
上カラ疊カケテ來タノダカラ有テモ宜イガ又デスネ其上ダ
(栗塚)
左樣デス
(北畠)
三種ノ抵當ト云フコトハオカシイ尙ホト云フノガ無イト三種ト云フノガオカシクハナイカ
(栗塚)
有テモ無クテモデシヨウ
(大尾崎)
有タ方ガ宜シイ三種ノ減少此場合デモ出來ルト云フノダカラ有ル方ガ宜シイ
(北畠)
アル方ガ宜シイヨウデス
(元尾崎)
ソンナラ殘シテ置イテモ宜シイ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ第一項「若シ債務者カ半額以上消滅シタルトキハ尙ホ三種ノ抵當ニ付金額ノミノ記入ヲ減少スルコトヲ得」トシ第二項ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第千二百四十五條朗讀ス
第千二百四十五條 全部又ハ一分ニ付キ債務者ノ請求ヲ認可スル判決ニハ若シ抵當ヲ免カレシムル不動產アラハ其不動產又ハ評價ヲ改メタル其金額ヲ指示ス
右第一ノ場合ニ於テハ負擔ヲ免カレタル不動產ニ對シテ爲シタル記入ヲ抹殺シ第二ノ場合ニ於テハ之ヲ減少ス〔第二千百四十五條第二項〕
(修正案) 第一項左ノ如ク改ム債務者ノ請求ヲ正當トスル判決ニハ抵當ヲ免カレタル不動產又ハ評價ヲ改メタル金額ヲ指示ス第二項「負擔ヨリ爲シタル」迄ヲ刪リ「記入」ノ上ニ「抵當ノ」ノ三字ヲ挿入ス
(栗塚)
「全部又ハ一分ニ付キ」ヲ刪リマシタ
(大尾崎)
能ク分リマシタ
(槇村)
宜シイ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第千二百四十六條朗讀ス
第千二百四十六條 前數條ニ從ヒ或ル不動產ニ記入ヲ減少シタル場合ニ於テ若シ右ノ不動產カ債權者ノ擔保ニ不十分ト爲リタルトキハ假令意外ノ原由又ハ不可抗力ニ出ツルトキト雖モ債權者ハ抵當ノ補足ヲ請求スルコトヲ得〔第千百三十一條〕
(修正案) 第一項「或ル」ノ上ニ「記入ヲ」ノ三字ヲ挿入シ「減少」ノ上「記入ヲ」ノ三字ヲ刪リ「若シ右ノ」ヲ「其」ト改メ「假令」ノ二字ヲ刪リ「原由」ヲ「事」ト「不可抗力ニ出ツルトキ」ヲ「不可抗ノカニ因ル」ト改ム第二項「愚」ヲ「依」ニ改メ「之ヲ實行スルコトヲ得ス」ヲ「之ヲ爲スコトヲ得ス」ト改ム
(槇村)
二項ガアリマスカ
(栗塚)
アリマス起案者カラ來タノデ詰リ私ガ申セバ宜シイカ「記入ノ抹殺及ヒ減少ハ確定判決ニ愚ルニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス」ト二項ニ這入リマス
(渡)
不可抗ノ力ニ因ルト雖モガオカシイ
(南部)
不可抗力ニ出ルデ良カロウ
(栗塚)
左樣デスカ
(元尾崎)
家ナリ抵當ニ取テソレガ燒ケルト又抵當ニ入レルノカ
(松岡)
前ノガ良シイ無制限ニシテ居タラ一般ニ減ジテ置ケバ增スコトハナイ
(元尾崎)
ソウ云フ場合ニ殖スヨウナ約束上デ假令バ此家ヲ抵當ニシテ金ヲ借リテ燒ケタトキ別ニ抵當ニ入レロト請求ガ出來ルカ
(松岡)
ソレハ出來ル
(元尾崎)
之デハ出來ヌ樣ダ不可抗力ノミニ減ジタトキニ限ルト減ジナイトキハ出來ヌヨウダ減少シタ場合ニハ其物ガ不可抗力ニ因テ不充分デアル請求ガ出來ルト云フト初メ記入ノトキ減少シナイトキハ出來ンカ
(栗塚)
ドウ云フ必要ガアルカ
(元尾崎)
家ヲ抵當ニ取テ燒ケタト云フト不充分ダロウ其トキハ別ニ抵當ヲ入レロト云ヘルノデシヨウ
(大尾崎)
ソレハ云ヘルトモネ
(元尾崎)
地震デ半分毀ハレタトキハ矢張補足シテ呉レト債權者ガ云ヘルノデシヨウ
(栗塚)
云ヘマス
(松岡)
千二百七條ニ意外ノコト又不可抗力云々トアリマス
(栗塚)
只燒ケタラバ債權者ノ損デアリマスソレカラ二項ハ丁度債務者ノ所爲ニ因リ保持ヲ爲サザルニ因リ損害ヲ受ケ云々債務者ガ責ニ任ズルト補足ヲ與ヘナケレバナラン
(元尾崎)
當リ前デハ眞ノ天災ハ仕樣ガ無イノダネ
(栗塚)
左樣デス
(南部)
現今トハ違フ今ハ補足シナケレバナラン
(元尾崎)
多クハ證文ニ書ネ萬一天災ノアツタトキハ補足スルト書キマス
(栗塚)
ソレヲ書クノハ金ヲ借リルニ困ルカラダガ天災ハ可哀相デス
(元尾崎)
減少スルニハ裁判ヲ經ナイト往カンノカ
(栗塚)
裁判デハ御座イマセン登記所デス
(南部)
此所ハ別ダガ債務者ガ記入スルトカ減少シヨウトカ云フトキダカラネ此所ハ別デス
(元尾崎)
六ケ敷イネ
(松岡)
尤モデス
(元尾崎)
先ヘ云テヤツテ減少シテ呉レト云ヒ折合タラ宜シイ
(村田)
次ノ公正證書デ往ケバ宜シイ
(松岡)
一人デハ公正證書ガ出來ヌノダ
(元尾崎)
宜カロウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決シ第二項右ノ如ク起案者ヨリ追加ス記入ノ抹殺及ヒ減少ハ確定判決ニ依ルニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
第千二百四十七條朗讀ス
第千二百四十七條 記入ノ抹殺及ヒ減少ハ公正ノ方式ニ於ケル證書ヲ以テスルニ非サレハ債權者ニ於テ之ヲ承諾スルコトヲ得ス
(修正案) 「ノ方式ニ於ケル」ノ七字及ヒ「ニ於テ」ノ三字ヲ刪ル
(栗塚)
「公正ノ方式ニ於ケル公正ノ證書ヲ以テスルニ非サレハ債權者ハ之ヲ承諾スルコトヲ得ス」トシマシタ
(松岡)
ドウ云フコトカ
(栗塚)
之ハ豫テ議論ノアツタ問題公正證書デヤラナケレバナランカト云フノヲ併テ問フテヤツテアリマスカラ其積リデ願ヒマス
(槇村)
承諾シヨウト思ヘバダナ
(栗塚)
左樣デス
(松岡)
之コソ再調査シナケレバナランナ
(渡)
前條ノ二項ハ此條ヘ一緒ニ入レテ都合ガ良クハナイカ
(元尾崎)
債權者ガモウト云フトカ
(栗塚)
抵當設定ハ公正證書デナケレバナラン其結果デアリマス
(松岡)
公正證書デナケレバ効ガナイト云フノデス
(元尾崎)
證書デ無ケレバ承諾ガ出來ヌト云フノダネ
(栗塚)
左樣
(松岡)
債權者ガ承諾シテモ外ヘ向テハ効ガ無イト云フノデ併シ文字ニハソウ云フ意味ハ見ヘナイ
(元尾崎)
六ケ敷イネ
(南部)
之ハ公正證書デヤルト云フナラ債權者ガ承知シナケレバナランソレデモ裁判ヲ望ムト云テハナラント註ニアリマス詰リ公正證書デモ宜シイト云フノデアリマス
(淸岡)
公正證書デナケレバナラント云フノダロウ
(南部)
裁判ヲ仰グ外ハソウデアリマス公正證書デヤルト云フノハ債權者ハ何ウシテモ承知シナケレバナラン
(栗塚)
裁判ガ公正證書デアリマス前條ノ末項ト之ヲ併セテ「記入ノ抹殺及ヒ減少ハ確定判決ニ依ルカ若クハ公正證書ヲ以テスルニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス」トシテハ如何
(大尾崎)
ソレハ良シイ
(松岡)
妙々ソレハ良シイ
(栗塚)
起案者モ何モ御座イマセンデシヨウ
(松岡)
ソウスレバ起案者モ悦ブデシヨウ
(栗塚)
前條ノ末項ヲ取テ此方ヘ入レテ良シイデシヨウ「記入ノ抹殺及ヒ減少ハ確定判決又ハ公正證書ヲ以テ「スルニ」カ「依ルニ」カ「非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス」
(元尾崎)
「以テ」カ「依ル」カ
(松岡)
「依ル」デス
(栗塚)
ソレデハ「依ルニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス」
(槇村)
スルト前ノ起案ノ入レタノハ刪ルカ
(栗塚)
左樣デス
(南部)
之ハ大變良クナツタ先ヘ往キマシヨウ
本條ハ前條第二項ヲ刪リ本條ヘ併セ左ノ如ク修正ス
記入ノ抹殺及ヒ減少ハ確定判決又ハ公正證書ニ依ルニ非サレハ債權者之ヲ爲スコトヲ得ス
第千二百四十八條朗讀ス
第千二百四十八條 任意ノ抹殺又ハ減少カ債務ノ全部又ハ一分ノ消滅ニ基クトキハ其抹殺又ハ減少ヲ承諾スルニハ債權者其債務ノ辨濟ヲ受取リ又ハ之ヲ認知スルノ能力ヲ有スルヲ以テ足レリトス
若シ又抹殺又ハ減少カ第千二百三十九條ニ記載シタル他ノ原由ノ一ニ基クトキハ債權者和解スルノ能力ヲ有スルコトヲ要ス
若シ右ノ抹殺又ハ減少カ抵當ノ無償ノ抛棄又ハ合意上ノ釋放ノ性質ヲ有スルトキハ債權者無償ニテ債權ヲ處分スルノ能力ヲ有スルコトヲ要ス〔第二千百五十七條〕
(修正案) 第一項「其抹殺又ハ減少」ヲ「之ヲ」ト改ム第二項「抹殺」ノ上「又」ノ一字ヲ刪リ「他」ノ上二「此」ノ一字ヲ挿入ス第三項「若シ右ノ」ヲ「又」ト改メ「抵當ノ無償ノ云々性質ヲ有スルトキハ」ヲ「抵當ヲ無償ニテ抛棄スルノ性質ヲ有スルトキハ」ト改ム
(栗塚)
「認知」ハ「追認」ト反譯デ改マリマシタソコデ皆サンハ如何デ御座リマシヨウカ「之ヲ」ト云フノデ任意ノ抹殺ヲ承ケルデシヨウカ
(村田)
承ケルトモ
(北畠)
繰返シタ方ガ良シイ
(渡)
繰返ス方ガ良シイ
(槇村)
繰返シテ良シイ
(栗塚)
左樣ナラ「全部又ハ一分」ヲ刪タ丈デス
(淸岡)
二項ノ此ト云フハ
(南部)
前項デス
(北畠)
此ト云フヨリモ他ノト云テハドウカ
(南部)
「右ノ外」ナラ良シイ
(栗塚)
「若シ抹殺又ハ減少カ右ノ外第千二百三十九條ニ記載シタル原由ニ基キタルトキ」ハトスルカ
(南部)
ソレナレバ良シイ
(松岡)
ソレデ宜シイ頭デ「右ノ外」トヤツタラ良シイ
(栗塚)
「此他ノ」デ御置キナスツテハ如何デスカ前記ノダネ
(槇村)
前項ハ減少ノ下ヘ入レテハ如何
(栗塚)
ソウスレバ「右ノ外」デ宜シイ
(南部)
記載シタル右ノ外トハ申サレン
(西)
ドウモ其ウデス
(元尾崎)
記載シタル原由ダロウ
(栗塚)
ソウダガ前項モ記載シタル原由ダカラ他ノ原由ト云フト記載シタル外ノトナルカラト三島ガ云フノデス
(槇村)
記載シタル此他ノ原由
(松岡)
右ノ外ト調テ分リソウナモノデス
(栗塚)
「右ノ外」トシマスカ
(南部)
良カロウ
(栗塚)
ソレデハ「右ノ外」ト致シマス
(南部)
ソウスルト債務ノ全部一分ト云フノガ必要ニナルゼ何ゼナレバ相手ガ全部消滅シタトキスルト右ノ外ト云フト全部一分ヲ除テ仕舞ト第千二百三十九條全部バカリ指シタコトト思ヒハセンカ
(松岡)
全部デモ受取ル能力ガアレバ取ルダロウ全部ノトキ尋常ノ能力デ濟ト云ヘバ一分ノトキハ無論デス
(南部)
千二百三十九條全部消滅トアル抹殺スルネ一分ノトキハ
(松岡)
一分ノトキハ記入ノ付記ダケダ
(南部)
所ガ此所ハ抹殺減少シタト云フ全部一分ハ無クテモ宜シイカ
(松岡)
良カロウ
(栗塚)
債務ニ付消滅ノトキハ一分ノトキダカラ「右ノ外」デ良シイ
(槇村)
全部一分ハドウカ
(松岡)
一分ハ三十九條ニ關係ガナイ減少ト云フノハ全部ト云ヘバ抹殺ニナルノデアリマス
(南部)
抹殺ガトヤルカ
(栗塚)
宜シウ御座イマス
(松岡)
重身ノアルト云フトキハ抹殺ノ方ガ重イ又次ハ無償デ遣ルト云フト能力ガ強イカラ刪ル理由ガ無イ
(槇村)
千二百三十九條ニ記載シタル原由ノ一ニ基キト云フカラ此所ハ抹殺ダ減少ノコトハナイ
(松岡)
左樣
(栗塚)
之ハ抹殺丈ダ
(松岡)
若シ抹殺ガ右ノ外デ宜シイ「原由」ハ「原因」デハナイカ
(栗塚)
「原由」デアリマス
(松岡)
中ノ項ハ減少ハテンデ無イノデス
(村田)
抹殺又ハ減少トシテ良カロウ
(松岡)
ソレハ大變デス
(栗塚)
全部消滅シタラ減少所デハナイ全テ無クナツテ仕舞
(北畠)
千二百三十九條ノ外ノ原由ト云フト元トノ原案ニアル
(栗塚)
消滅ノ外ト云フノデ記載シタル消滅ニ基ク他ノ原由ニ基クダ詰リ消滅ヨリ他ノ原由ニ基クノデス
(松岡)
記載シタル原由デナイ他ノ三十九條ニアルト云フノデス
(栗塚)
千二百三十九條ニ記載シタル消滅ヨリ他ノ原由ノ一ニ基キデアリマス消滅ニ基ク一ノ原由其消滅ヨリ外ノ原由ニ基キト云フ意味デ御座イマス
(南部)
左樣デス
(栗塚)
矢張リ「若シ此」ト云フノデ「消滅ヨリ他ノ原由ノ一ニ基クト云フヨリ外ハナイ
(南部)
消滅以外ノ原由ニ基キダ
(槇村)
「此」ト云フ字ヲ入レラレタガソレハドウ云フモノカ
(松岡)
ソレガ卽チ「右」ト云フ字ダ
(槇村)
千二百三十九條ニ記載シタル右ノ原由ダ
(松岡)
其ウナツテハ何ニモナラン外ニ抹殺ノ原由ハナイ三十九條ニ消滅ト抹殺トアル消滅ハ尋常普通ノ能力デ出來ルソレヲ除ケタモノハ無効トカ或ハ取消シトカ一二三ガアル斯ウ云テハドウカ意外ノ能力ヲ有スト云フノダカラ三十九條ヨリ外ニハナイ
(槇村)
三十九條ヨリ外ニハ無イカ
(栗塚)
御座イマセン
(槇村)
無ケレバ宜シイスレバ今直シタ通リデ良シイ
(栗塚)
消滅ハ原由ノ一ダガ其原由ノ外ノ原由ノ一ニ基キデアリマス
(槇村)
ソンナラ「右ノ外」ニシテ良シイ
(大尾崎)
「右ノ外」ガ良シイ
(栗塚)
ソレデハ「右ノ外」デ御置下サイ
(元尾崎)
三項ハドウカ
(南部)
只抛棄スルトカ云フコトダ
(大尾崎)
求メン性質ト云フト爲テナランモノガアルカ
(松岡)
ナラント云フ方デハナイ
(栗塚)
棄テルト云フ方デス
(松岡)
無償ニテ抛棄スル性質ト云フト棄テナケレバナラント見ヘルネ
(栗塚)
ソレハ持テ廻ハツタ說デス
(元尾崎)
棄テルヨウナモノニナルトキハト云フノダ物ヲ呉レルヨウナ能力ノ有ル奴デナケレバト云フノデス
(松岡)
抛棄スルモノナルトキハカ
(元尾崎)
故ナク抹殺減少スルノハ
(南部)
贈遺スル抔ハ故アルゼ
(松岡)
註ニハ單純ナル抛棄アルトキハト書テアリマススルト抵當ヲ無償ニテ抛棄スルトキハデ宜シイ
(南部)
減少ガ抛棄スルハ酷イ
(槇村)
註ニ又他ノ二箇ノ刪除トアリマスガ何デスカ
(松岡)
云ヒ詰メレバ無効取消デス
(栗塚)
ソウデス
(槇村)
三十九條ヲ引タカ
(栗塚)
左樣デス
(大尾崎)
單純ニ棄ル抛棄アルトキハダ
(元尾崎)
減少スルノダカラ抛棄トハ云ヘヌ
(栗塚)
左樣減少ト抹殺ハ抛棄デハナイ
(槇村)
抛棄シテモ宜シイモノハダロウ
(松岡)
抹殺減少スルノハ何ゼナレバ債權ヲ抛棄スルノデナイケレドモ抵當ヲ抛棄スルトキハドレ程能力アルカ本體債權ヲ無償デ處分スル力アル人デナケレバ出來ヌト云フノデ抵當ハドウカト云フニ無償抛棄スル抛棄ハト讀ムヨリ外ハナイ
(元尾崎)
無償ニテ抹殺又ハ減少スルトキハトスルカ
(大尾崎)
ソレナレバ良シイ
(南部)
抛棄トカ何トカ云フモノデナケレバナラン
(元尾崎)
我輩ハ之デ良イト思フガ
(栗塚)
抵當ノ抛棄ノ性質ハドウデスカ抛棄ト云フ字ガアルカラ性質ト云フ字ヲ使フノガ否ノデシヨウ
(槇村)
此通リデ宜シウ御座イマシヨウ
(大尾崎)
良クハナイガ從テ置キマシヨウ
(松岡)
性質ヲ有スルハオカシイネ
(北畠)
ドウ云フコトカ無償ニテ抛棄スル性質ト云フハ抵當ガ天然ニ無クナツタノカ
(栗塚)
ソウデハナイ抹殺カラ云フト今迄貴君ノ抵當ヲ取テ私ガ貸テ居タガモウ消シテモ宜シイト云フノハ丁度私ガ貴君カラ物ヲ貰ハズニ私ガ物ヲ上ゲルト云フノト同ジデアルトキハデ物ヲ棄テテ仕舞ノデアリマスカラ恰モ私ノ金ヲ貴君ニ遣ルヨウナモノデ其性質ガアルトキハ又ダカラ合意上釋放ガ御相談ノ上デ貴君ガ今迄借テ居タガモウ入マセント云フヨウナ性質デアツタラ恰ド抵當ヲ消スモウ抵當ハ入ラヌカラト云テ賃ヲ取ラズニ入ラヌト云タトキハ卽チ債權ヲ處分スル力ガナケレバナラント云フノデアリマス
(北畠)
合意上ノ釋放ノ性質ナラ良シイ之ハ性質ト云フガ合意ト云フ方カラ係ルカラ惡イヨウダガ貴君ガ處理スル權アル人ソレガ許シテ呉レタノデダカラ性質ハ入ラン抛棄スルトキハデ差支ナイ合意上トカ云フナラ良シイガ其性質ト云フノハ此デ見ルト無償ニテ抛棄スルト云フハ桑田變ジテ海トナツタトキノヨウニモ見ヘル
(栗塚)
抵當ニハ無償ノ抛棄ノ性質ヲ有スルトキデモ良シイデシヨウ
(元尾崎)
抛棄スルノ性質ト云フノダネソウ云フ性質デアツタトキナラバト云フノデ無償デ之ヲ棄テタト云フヨウナモノデ有タトキハト云フノデシヨウ
(栗塚)
左樣デス性質ナルトキデ良シイカ
(元尾崎)
ソレデモ宜シイ
(松岡)
抵當ハ無償デ棄タモノデアツタトキハト云フト外ノモノニナル單純ニ棄ルト云フヨリ外ノコトハナイ
(栗塚)
抵當ヲ棄ルノデアリマス
(松岡)
左樣抵當ヲ棄ルハ債權ヲ棄ルモノデナケレバナラント云フノデ性質抔ト持テ廻ハツテハ困ル
(栗塚)
性質ヲ有スルト云フノデ貴君ノ解シタ通リニナルノデス
(元尾崎)
佛文ハドウカ
(栗塚)
斯デス
(元尾崎)
面白イノダロウ只減少スルトカ抛棄スルトカ調ハズ欺イテ取ルヨウナコトガアツテハナランカラ抵當ヲ棄ルヨウナ一體性質デアツタナラバ假令ドウ云フ名義デモ權力アル者デナケレバ出來ヌト云フノダカラ妙ガアルノダ
(栗塚)
釋放ト云フ字ハ無償ト云フ意味ヲ含ンデ居ルカラ
(村田)
義務ノ釋放ハ必ラズ無償バカリカ
(元尾崎)
モノナルトキハデ良シイ
(大尾崎)
モノナルニシテ置キマシヨウ
(槇村)
性質ナルトキハガ良カロウ
(村田)
ソレハ良カロウ
(元尾崎)
ソンナラ其ウシテ置ウ
(槇村)
或ハ釋放ニ付タ字デハナイカ
(栗塚)
左樣デハ御座リマセン抵當ヲ無償デ抛棄ノ性質アツタ合意デス
(南部)
性質ト云フハ有スルト云ハナケレバナランネ
(松岡)
抵當ノ無償抛棄ニ基クトキハトシテ良シイ
(元尾崎)
ソンナニ諄々云ハズニ置イテ良シイ
(槇村)
無償ニソンナコトヲ云テモ分ラン之デ宜カロウ
(栗塚)
性質ト云フハ有ル方ガ分リ易ヒデシヨウ
(大尾崎)
性質ナルトキハデ置キマシヨウ
(南部)
ソウハ云ヘヌ
(淸岡)
元ノ通リデ良イデハナイカ
(元尾崎)
ソレハ良シイガ喧シク云フカラダ悉皆原案々々性質ヲ有スルトキハデ良シイ
(北畠)
合意上ノ釋放ノト云フコトハ消サズニ置キタイ
(松岡)
オカシイネ
(槇村)
性質ナルトキハガ良シイ
(南部)
ソレヨリモ之ガ良シイ
(栗塚)
ナルト云フト反對論ガ起ルノデス
(元尾崎)
性質ヲ有スルトキデ良イデハナイカ
(松岡)
愚文ナル可シト書イテ置ク
(元尾崎)
宜イデハナイカ
(松岡)
コンナモノヲ甘ンズルカラオカシクテ溜ラン
(元尾崎)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ第一項「認知」ハ「追認」ト反譯ニテ改ム第二項「若シ抹殺カ右ノ外千二百三十九條ニ記載シタル原由ノ一ニ」云々トシ其他報吿委員ノ修正ニ決ス
第千二百四十九條朗讀ス
第千二百四十九條 記入ノ抹殺又ハ減少ヲ承諾スル爲メノ委任ハ亦公正證書ヲ以テ之ヲ與フルコトヲ要ス
然レトモ若シ抹殺又ハ減少カ債務ノ全部又ハ一分ノ消滅ニ基クトキハ債務者ノ義務免除ニ參加スルノ權限ヲ有シタル總テノ代理人ニ於テ其抹殺又ハ減少ヲ承諾スルコトヲ得
若シ和解又ハ無償ノ抛棄アルトキハ委任ハ明示ノモノタルコトヲ要ス
(修正案) 第一項「亦」ノ一字ヲ刪ル第二項「若シ」ノ二字及ヒ「全部又ハ一分ノ」ノ七字ヲ刪リ「義務免除ニ參加スル」ヲ「義務免除ヲ承諾スル」ト改ム第三項「委任ハ云々要ス」ヲ「委任ニ之ヲ明示スルコトヲ要ス」ト改ム
(松岡)
總テト云フ字モ要ラン字ダナ
(栗塚)
左樣デスネ「總テノ」三字ヲ刪リマス
(松岡)
無償ノ抛棄アルトキト云フノヲ「又ハ無償ノ抛棄ヲ爲ストキニ於テハ」トシテハ如何
(栗塚)
左樣
(元尾崎)
之ハ之デ宜シイ
(松岡)
和解無償ノトキアルトキハト云フノハ和解シテ呉レト云フ委任アルトキモアロウ
(栗塚)
和解シテモ宜シイ債權者ノミ和解スルノ能力ヲ有スアレデ又抵當無償ニテ抛棄シテモ宜シイト云フノデ抹殺ノアツタトキダ
(松岡)
アルトキハト云フハ往カン
(栗塚)
抛棄ニ付テハダナ
(南部)
ソンナラ宜シイ
(栗塚)
スルト若シハ要ランネ若シヲ置ケバ和解又ハ無償ノ抛棄ニ於ケルトキダネ
(南部)
付テガ宜シイ
(栗塚)
付テニ致シマシヨウ「若シ」ハ要リマセン
(大尾崎)
付テガ宜シイ
(槇村)
ソレデ良カロウ
本條ハ「總テノ」三字ヲ刪リ末項「若シ」ヲ削リ「和解又ハ無償ノ抛棄ニ付テハ委任ニ之ヲ明示スルコトヲ要ス」トシ其他報吿委員ノ修正ニ決ス
第千二百五十條朗讀ス
第千二百五十條 抹殺及ヒ減少ハ其抹殺及ヒ減少ヲ許シタル合意又ハ之ヲ命シタル判決ヲ記入ノ緣邊ニ附記スルニ因リテ之ヲ爲ス
保管人ハ公證人ノ證書又ハ判決書ノ公正ナル謄本ヲ受取リタル上ニ非サレハ右ノ附記ヲ爲サス伹判決書ノ謄本ヲ差出ス場合ニ於テハ裁判所書記其謄本ニ判決ノ確定ト爲リタル旨ヲ證明スルコトヲ要ス〔第二千百五十八條〕
第千二百二十五條ノ末項ハ保管人ノ拒絕及ヒ其責任ニ之ヲ適用ス
(修正案) 第一項「許シタル」ノ上「抹殺又ハ減少ヲ爲スニハ之ヲ」ト改メ「附記スルニ因リテ之ヲ爲ス」ヲ「附記スルコトヲ要ス」ト改ム第二項「爲サス」ヲ「爲スコトヲ得ス」ト改メ「裁判所書記其謄本ニ」ヲ「其」ノ一字ニ換ヘ「證明スルコトヲ要ス」ヲ「裁判所書記ノ證明シタルコトヲ要ス」ト改ム
(松岡)
「之ヲ許シタル」ト「之ヲ命シタル」ハ要ラン字デハナイカ
(栗塚)
抹殺又ハ減少爲スノハダ
(松岡)
其判決ヲデ良カリソウナモノデス「之ヲ許シタル」「之ヲ命シタル」ハ要ランゼ
(栗塚)
御尤モ其論モアツタガ丁度對角モ出來ルシスルカラデス
(松岡)
併シ相手方カラ承諾シタリ約束デナケレバト云ヘバソレマデダガ
(北畠)
抹殺又ハ減少爲スニハ其約束又ハ判決ヲ記入ノ縁邊ニ付記スルコトヲ要ス登記係リ公證人書面又ハ判決書公正ナル謄本ヲ受取タ折デナケレバ右ノ付記ヲ爲スコトヲ得ズ但シ云々カ
(松岡)
前項ヲ記入ノ縁邊ニ付記スルコトヲ要スト止メルト上ノ抹殺又ハ減少ヲ爲スニハ抹殺又ハ減少ハデ良クハナイカ
(南部)
此所ハ爲スト云タ方ガ良クハナイカ手續ニナツテ居ルカラネ
(松岡)
手續デアルケレドモ訴訟法ニハ判決書ハ皆拔クノデハナイカ
(南部)
判決謄本トハ調ハヌカラ別デス
(栗塚)
謄本ト云フ字ハ謄本ニ二種アルノデ外國風ニ云フト執行ノ出來ル謄本執行ノ出來ヌ謄本トアリマス
(松岡)
執行ノコトハ別デス
(栗塚)
判決書ト云フモノハ貰フ譯ニハ往カンデ謄本ニハ執行力ヲ有スルノト有サヌノトアリマス
(松岡)
執行或ト云フノハ別デス
(栗塚)
此所ハ執行本デス
(松岡)
スルト訴訟法ノ執行何トカ云フノト只ノ謄本トハ往カン
(大尾崎)
宜シイ
(栗塚)
謄本ト云フコトヲ云フト何ウト云フヲ揭ゲナケレバナラン「公證人ノ判決又ハ判決書ヲ受取タル後ニ非サレハ」云々トシマシヨウカ
(南部)
宜カロウ
(村田)
ソレデ宜シイ
(南部)
執行力アルト云フノデハアリマスマイ謄本トアル公正ナルト云フノハ裁判所デ作タト云フ印シダカラ差出ス場合ニ於テ確定トナリタルトキハト云フガアルカラ良シイ只裁判所デ作タト云フ印シ丈ダロウ公正ナル證書ト云フノハソウデシヨウ
(栗塚)
公證人證書又ハ判決書ヲ受取タルニシテ置ウデハナイカ
(松岡)
之ハ訴訟法ト衝合ハセル爲メ御預ケニシテ置ウデハナイカ
(栗塚)
訴訟人ハ詰リ公正ナル證據サヘアレバ宜シイノダカラト云フテ居ル
(南部)
執行力ニ關係ハナイ
(栗塚)
本條ノ末項「第千二百二十五條ノ末項及ヒ第三百四條ハ擔保人ノ拒絕ニ之ヲ適用ス」ト願ヒマス
(元尾崎)
「及ヒ責任」ハ刪ルノデスカ
(南部)
起案者ガ刪タノデアリマス
(松岡)
拒絕ニ適用スト云フノモ元來オカシイ
(栗塚)
此場合ニ於テカ
(南部)
見レバ直グ分ルネ餘リ長ク書カン方ガ良シイ
(北畠)
頭ニ條數丈揭ゲルハオカシイ
(元尾崎)
入用ハナイノデシヨウ
(大尾崎)
宜カロウ
本條ハ末項「第千二百二十五條ノ末項及ヒ第千三百四條ハ保管人ノ拒絕ニ之ヲ適用ス」ト起案者ニ於テ改正ス其他報吿委員ノ修正ニ決シ「公正ナル謄本」ハ訴訟法ト照合スル爲メ受置キノコトニ決ス
第千二百五十一條朗讀ス
第千二百五十一條 若シ抹殺又ハ減少カ後日ノ判決ニ因テ取消サレ若クハ解除セラレタルトキハ其判決ヲ更ニ記入ノ緣邊ニ附記シテ其記入ハ前債權者ニ關シテ効力ヲ回復ス然レトモ二箇ノ判決ヲ間ニ於テ不動產ニ對シテ權利ヲ得取シ第二ノ判決ノ公示前ニ其權利ヲ記入シタル第三者ニ右ノ記入ヲ以テ對抗スルコトヲ得ス
(修正案) 左ノ如ク改ム抹殺又ハ減少ヲ日後ノ判決ニテ銷除若クハ解除シタルトキハ其判決ハ更ニ記入ノ縁邊ニ之ヲ附記ス此場合ニ於テハ其記入ハ前債權者ニ對シ其効力ヲ回復ス然レトモ前後ノ判決ノ間ニ於テ不動產ニ付キ權利ヲ取得シ後ノ判決ノ公示前ニ其權利ヲ記入シタル第三者ニ右ノ記入ヲ以テ對抗スルコトヲ得ス
(槇村)
「日後」デハナイカ
(栗塚)
否「後日」ガ良イト云フノデス
(松岡)
前日抹殺減少ガアツタソレハ判決デナイ公正證書デスルコトモアルソレハ後日ノ判決ト云フノデス
(南部)
合意上デヤツタコトヲ見ルノデハナイ
(松岡)
抹殺減少後日ノ判決デ證書ヲ解除シタトキ其ト云フハ過去デ自分ニ對シテ効力ガ回復スルト云フノダロウ
(南部)
抹殺減少ノ裁判ヲ受ケタガ其ダ
(村田)
効ガ回復シタノデス
(淸岡)
前債權者ト云フガ惡イネ元トノ通リニナツタト云フナラ良シイノデス
(松岡)
一旦抹殺サレテ居テ卽チ二度目ニハ以前ノ權利ガ戻シテ來ルト云フノダロウ
(栗塚)
ソレ丈デアリマス
(松岡)
前債權者ト云フノハ誰レカ
(栗塚)
中ノ人デス
(元尾崎)
中ノ人ハ抹殺減少ノ裁判ヲ取消サレテモ前ノ債權者ノ効力ガ回復スルカ間デ質ニ取タカ知ランガソレハ効力ガ及バヌト云フノデ分テ居ル
(淸岡)
前ト云フハ何ウカ
(元尾崎)
前ト云フノハ一旦抹殺サレタガ回復シタノデス
(村田)
分テ居ルヨウデス
(松岡)
終リニ書イタ第三者ト云フハ中間ノ權ヲ得タ人デスネ此第三者ハ前ノ第三者ト同ジデスカ
(元尾崎)
違フ
(松岡)
前ト云フノハ
(元尾崎)
一番始メダ
(松岡)
中間ニ在ル者ハ第三者ト云フノダ
(元尾崎)
左樣
(松岡)
其記入ガ回復スルト云フ話ダ前債權者ニ對シテ其効力ト云テ中間ニ甲乙丙トアル乙ト云フ旨意デハ意味ガ違フゼ
(村田)
ソレハ違タモノダ
(元尾崎)
前債權者ノ効力回復デ良カロウ
(南部)
後カラ這入タ第三者ニ向テ前後裁決ノ間ニ付キ得收シタ者ハ往カンガソレヨリ前ニ効力ガアルノデス
(元尾崎)
抹殺サレタ債權者前ト云フノカ
(南部)
我輩ト松岡君ト在ル二人債權者我輩ノ債權登記ヲ取消サレタスルト次ノ松岡ガ一番ニナツテ仕舞ネ其一番ノ人ノ爲メニ私ガ權力ヲ回復スル松岡ニ對シテ私ガ一番ニナルノデ併シナガラ村田君ガ先取ダカラ村田君ニ向ヘヌノデス
(元尾崎)
ソウデハナイニ人アルト初メニ想像スルハ宜シクナイ此所ハ一ツ先優權デ取テ居タ處ガ抹殺減少サレタ裁判デドウカソレヲ裁判ヲ取消シタノデネ初メテ貴君ハ又抵當ガ効力ヲ及ボセルヨウニナツタ處ガ其初メニ抹殺減少ノ裁判ヲ受ケタ人ハ後ニ効力ガ生ズルト云フノダ
(栗塚)
前債權者ハ第二番ノ人デス
(南部)
ソウデス
(元尾崎)
ソウデハナイスルト間ニ第三者ガ居タモノハ生ジヨウガナイ假令バ最初ノ先生ノ抵當ヲ取消シタト抹殺サレタト云フ裁判ガアツタスルト松岡ニ權利ガ往クヨウニ見ヘル處ガ後ニ其裁判ヲ取消シタ場合ニハ先生ヘ戻ルト云フノダロウ併シナガラ間ニ第三者ガ記入シテ居タラユカント云フコトダ
(南部)
移ルノデハナイ松岡君ガ一番ニナツタ私ガ回復スレバ松岡ガ二番ニナルガ村田ガ三番ニナルノデス
(元尾崎)
二番ノ權利ハ奪ハレルネ
(栗塚)
三番ノ人ニ奪ハルル
(元尾崎)
初メ一人甲ノ抵當ヲ取テ居ル甲ナル者ガ其抵當ヲ抹殺サレタ裁判デネ處ガ此度又別ノ裁判デ抹殺ヲ取消シタカラ甲ニ回復シテ來ルトソレカラ若シ其間ニ別ノ者ガ在テ抵當ニ這入テ居ルカラソレニ抵抗ハ出來ヌト云フノダロウ
(南部)
ソレハ分リ切タ單純ノ話デ今一ツ前債權者ト云フモノガナケレバナラン
(村田)
私ハ前ノ場合ニハ取レル權ガアルノハ記入スルトキ南部ガ居ナイノダカラソレダカラ訴權ガアルノデス
(栗塚)
第二番デハナイ原文ハ其記入ハ前債權者一二三モデスネ多數ノ債權者ニ對シテトアルソレダカラ總テノ前債權者ト第二番目ノ人バカリト申シタハ惡イノデ實ハ元尾崎ノ云フ一モ這入ルノデ其人ノ爲メニ出ル第二ニハ其人ニ對シテ出ルノデ何デモ元ト消シテアツタ其人ニ對シテ生テ來ル併シナガラ第三番目ノ人ハ知ラントキニヤツタノダカラ其人ニ對シテ第二番ノ人ハユカンゾヨト云フノデス
(元尾崎)
書テアル通リダ
(淸岡)
前ト云フノハ要ラヌゼ
(大尾崎)
甲乙ト云フ乙ガアルト見ナイデモ宜シイ
(栗塚)
前債權者ノ爲メト改メテハ如何
(元尾崎)
ソレデ良シイ
(淸岡)
我々ハ「前」ノ字ハ刪テ其債權者トシテ良カロウト思フ
(栗塚)
後デ今一ツアツタノデスカラネ
(淸岡)
後ハ然レドモ以下ダロウ
(村田)
今一ツ別ノ人ダ
(南部)
一ツ前債權者ガ在テ其債權者ノ記入ヲ今一ツ債權者ガ在テ取消シタコトガアルカラ前ト云フコトガアルデシヨウ
(松岡)
前ノ人ハ他ノ債權者ガ取消シト云フノカ
(淸岡)
アツテモ前ノ字ハイラン
(松岡)
抹殺減少ト云フガ再ビ生ルコトニナルノダ
(栗塚)
其記入ハ抹殺ヲ受ケタル債權者ノ爲メ効力ヲ回復スカ
(淸岡)
ソレデス
(元尾崎)
ソンナラ其ウヤルカ
(栗塚)
抹殺減少ノ爲メニ又本ニ復スト云フノデス
(松岡)
此所デハ「前」ハイラン
(淸岡)
前ト云フノハ抹殺セラレタカラ出來ルノデス
(栗塚)
後判決ニ際シテ出ルノデダカラ抹殺又ハ減少ヲ受ケタル債權者ト云フノデス
(松岡)
原債權者ダ
(栗塚)
ソウデス原債權者トヤツテモヨイ
(南部)
原債權者ト云フト債權ガ消ヘタヨウニ見ヘル
(松岡)
此所デ調フ若シ之ヲ甲ト云ヘバ第三者ト見ルヨリ外ニ見ヨウハナイ
(淸岡)
第二ノ外コウ云フ場合ハ矢張前債權者ダロウ
(松岡)
ソレハソウナル
(淸岡)
ソレデハオカシイ甲乙二人アツテ甲ガ止メタトキハ前ダカラネ
(元尾崎)
其債權者ノトヤツタラ何フカ
(村田)
其字ハユカヌ矢張前ノ字ガ良シイ
(渡)
前債權者ノ方ガ宜シイ
(元尾崎)
其債權者ノ爲メ効力ヲ回復トシテハ如何
(栗塚)
第三者ニハ以テ對抗スルコトヲ得ズデス
(槇村)
宜シイ
(松岡)
甲乙丙三人在ルト蛇擧ニナルノデスネ
(淸岡)
物ヲ取ルハ乙ガ先ニ取ルカ
(栗塚)
丙ガ先ニ取ル
(淸岡)
出來ナイ話ダネ
(栗塚)
乙ノガ消ヘテ居ルカラノ話デス丙ハ乙ニカナハヌ都合デ甲ガ一番後ニナルノデス
(南部)
左樣詰リ逆樣ニナツテ丙乙甲トコウナルノデアリマス
(大尾崎)
乙ハ動カナイネ
(西)
動キマセン
(元尾崎)
丙モ動カン
(南部)
ソウ甲ハ回復シタト雖モダ
(元尾崎)
甲ハ二千圓ノ質ニ取タ乙ハ五百圓ダソコニ乙ハ素ヨリ五百圓甲ハ千圓シカ取レンノダ
(南部)
ソウ裁判ニ依テ仕方ガナイ
(元尾崎)
先ヘヤリマシヨウ
(大尾崎)
宜カロウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第千二百五十二條朗讀ス
第千二百五十二條 若シ最初ノ記入、更新、抹殺又ハ減少ニ不精確又ハ遺脫ノ廉アルモ之カ爲メ取消ヲ爲サシムルニ足ラサルトキ當事者ノ協議セサルニ於テハ判決ヲ以テ其不精確又ハ遺脫ヲ改正ス
(修正案) 左ノ如ク改ム記入、更新、抹殺又ハ減少ニ不精確又ハ遺脫アルモ之カ爲メ銷除スルニ足ラサルトキハ當事者ノ協議又ハ判決ヲ以テ之ヲ正誤ス
(栗塚)
改正ハ「正誤」ノ誤リデアリマス「若シ最初ノ」ヲ刪テ「記入更新抹殺又ハ減少ニ不精確又ハ遺脫アルモ之カ爲メ銷除ヲ爲ササルニ足ラサルトキハ」云々ト修正シマシタ
(元尾崎)
銷除スルニ足ラザルトキトアルガ
(栗塚)
銷除ヲ爲サシムルニハガ良クハ御座イマセンカ之ガ爲メ銷除スルト云フト何ヲト云ハナケレバナラン
(大尾崎)
宜シカロウ
(松岡)
爲サシムルハ誰カラカ
(栗塚)
裁判所カラデス
(南部)
銷除ヲ爲スニ足ラザルトキカ
(栗塚)
ソレデモ宜シイ
(槇村)
銷除スルニ足ラザルカ
(栗塚)
スルト云フト何カ一ツ出サント困ル
(元尾崎)
之ガ爲メニダ
(栗塚)
銷除ヲ爲スニ足ラザルトキ當事者ノ協議又ハ判決ヲ以テ之ヲ請求スカ
(松岡)
取消ス程ノ大キナモノデハナイトキハト云フノカ
(栗塚)
左樣
(松岡)
之ハ元トノ契約編ニアルガ銷除ト云フノハ矢張取消シトシテ貰ヒタイ
(元尾崎)
訴訟法デ銷除ト云フコトハ採ランデ取消シトシマシタ
(松岡)
併シ之ハ契約編ノ處マデ預ケテ置キマシヨウ
(大尾崎)
之デ食事ニ致シマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正中「銷除スルニ」ヲ「銷除ヲ爲スニ」トシ其他同修正ニ決ス
于時正午十二時休憩
午後一時開會
(渡)
ヤリマシヨウ
第千二百五十三條朗讀ス
第四節 債權者間ニ於ケル抵當ノ効力及ヒ順位
第千二百五十三條 總テ不動產ニ付キ有効ニ記入シタル抵當債權者ハ其不動產ノ代價ニ付キ有益ニ配當順序ノ定メヲ受クルコトヲ得ルニ因リ無特權債權者ニ先ツモノトス
法律上、合意上又ハ遺囑上ノ抵當ヲ有スル債權者ノ間ニ於テハ配當順序ハ數名ノ債權者ニ關スルニ二箇又ハ數箇ノ記入ヲ同日ニ爲シタルトキト雖モ其記入ノ前後ニ因テ之ヲ定ム伹保管人ノ第千二百廿九條ニ從ヒ交付ノ番號ヲ遵守セサル場合ニ於テハ之ニ對スル責任ノ訴權ヲ妨ケス〔第二千百四十七條、伊民第二千八條、第二千九條〕
(修正案) 第四節「債權者間ニ於ケル」ヲ「債權者間ノ」ト改ム第一項「總テ」ヲ「凡ソ」ト改メ「代價ニ付キ有益ニ配當順序ノ定メヲ受クルコトヲ得」ヲ「代價ノ配當ニ有益ニ加入スルコトヲ得」ト改ム第二項「但」ノ上ヲ左ノ如ク改ム法律上約束上又ハ遺言上ノ抵當ヲ有スル數人ノ債權者間ニ於テハ其配當加入ノ順位ハ數箇ノ記入ヲ同日ニ爲シタルトキト雖モ其記入ノ前後ニ因リテ之ヲ定ム「ニ從ヒ交付ノ番號」ノ八字ヲ「ノ規定」ノ三字ニ換フ
(栗塚)
「總テノ不動產」ト云フヲ「凡ソ不動產ニ付キ有効ニ記入シタル抵當債權者ハ其不動產ノ代債ノ配當ニ有益加入スルコトヲ得」ト改メマシタ
(元尾崎)
二項ハ法律上約束上又ハ遺言上ノカ
(栗塚)
左樣デス
(元尾崎)
四項ハ記入ヲ同一ニ爲シタルトキト雖モカ
(栗塚)
但登記官吏ノ第千二百二十九條ノ規定ヲ遵守セザル場合ニ於テハ之ニ對スル責任ノ訴權ヲ妨ゲズデス
(松岡)
「有効ニ」ト云フハ要ランヨウニ思フ「凡ソ不動產ニ付記入シタル抵當債權者」ト云ヘバ良カロウ妙ナ反譯文デスヨ無効ノモノハ順序ニナランハ無論云フマデハナイ
(栗塚)
記入シテナイ抵當債權者ノアツタトキハ仕方ガナイカラ
(南部)
之ハ分テ居ル
(松岡)
配當ニ有益ニト云フモ要ラン字デハナイカ代價ノ配當ニ記入スルコトヲ得トシテハ如何
(南部)
有効ニハ要ランネ
(栗塚)
實ハ消ス可キヲ消サナカツタカラ註ニ有益ニト云フノ講釋ヲシテアリマスカラ置イタノデ幾ラ何デモ有益デナイノモアルトアリマス
(淸岡)
得ルニ因リハ之ハ得ル故ニト云フ意味デスカ
(栗塚)
得ルカラデアリマス
(淸岡)
「得ルニ因リ」ハ「得ルニハ」トシテハ如何
(南部)
順序ガ籠テ居ルノデスカラ其ウ書クト分リ惡イ
(栗塚)
得ルト云フ權利ガアルニ依テ無特權者ヨリモ先ニナルト云フノデス
(淸岡)
故ニト云フノダネ
(栗塚)
左樣得ルト云フ譯デス
(淸岡)
得ルニ因テ無特權者ニ先立カ
(松岡)
有効ニト云フノト有益ニト云フ字ハアル程ノ働キガ見ヘヌノデ無効ニシテ配當債權者ニナラント云フハ言フ迄ハナイ
(淸岡)
ソンナラ記入モイランデハナイカ調ンデモ分テ居ル
(松岡)
意味ガ分テ居ルカラト云フノデハナイ無駄ナコトデス
(栗塚)
前ノ「有効」ダケ刪タラ如何デス
(松岡)
不動產ノ抵當債權者ト云フモ動產ニハユカンノダカラネ
(栗塚)
不動產ニ付キ記入シタルト云フハドウカ
(松岡)
宜カロウ
(北畠)
宜カロウ有益ト云フコトモイランネ
(大尾崎)
前ノ「有効ニ」ノ三字ヲ刪ル
(松岡)
但登記官吏ニ對シノ字ハ除テ良シイ
(栗塚)
「カ」ヲ入レル代リニ入レタノデ登記官吏ガセザル場合デアリマスカラ「ノ」カ「カ」ノ二ツデアリマス
(大尾崎)
前ノ「有効ニ」ノ三字ヲ刪テ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ第一項「有効ニ」ノ三字ヲ刪リ其他報吿委員ノ修正ニ決ス
第千二百五十四條朗讀ス
第千二百五十四條 記入ハ債權ノ利息ニ其滿期トナリタル最後ノ二ケ年分ニ限リ主タル債權及ヒ之ニ添ヘル定期ノ從タル債權ト同一ノ順位ヲ得セシム伹債權者ノ一層舊キ利息ノ爲メ後ニ記入ヲ爲スノ權利ヲ妨ケスト雖トモ此記入ハ其日附ニ於テノミ効ヲ生スルモノトス〔第二千百五十一條〕
(修正案) 左ノ如ク改ム記入ハ揭載シタル利息及ヒ定期ノ附從物ニ其經過シタル最後ノ二ケ年分ニ限リ主タル債權ト同一ノ順位ヲ得セシム但二ケ年以外ノ利息及ヒ附從物ノ爲メ債權者ノ日後記入ヲ爲スノ權利ヲ妨ケス然レトモ此記入ハ其日附ニ於テノミ効ヲ生スルモノトス
(淸岡)
分リ惡イネ
(元尾崎)
二ケ年分ノ利息ハ主タル債權者ト同一ニ併セルトソレヨリ古イ利息ハユカント併シ其後記入スルト妨ゲズトスレバ其日附ノミニ於テ効力ナシト云フノダネ
(栗塚)
左樣
(村田)
其當時ノ分ハユカント云フノダネ
(元尾崎)
二ケ年モ利息ヲ取ラズニ居ルト云フコトハナイソレデ二ケ年以上利息ヲ取ランモノモ登記シテハ迷惑スルカラダネ千圓ノ元金デモ滅層五年十年モ立テ居ル此方ハ抵當ニシテ居ルト二番目ニ取ルカモ知レンカラト云フノダロウ
(淸岡)
定期ノ附從物ハ何ンナコトカ
(村田)
日用品抔ハアル
(栗塚)
利息デナイモノ大槪米ヤ麥ヲ出シテ利息ヲ拂ヘバ其積リデアリマス
(淸岡)
定期ハオカシイ
(栗塚)
定期米麥デス
(松岡)
第千百九十二條デ二ケ年分以内ニ非ザレバト入レタ二ケ年分以内ハ記入ガ出來ルト云フノデ分テ居ルガ實ハ二ケ年分ニ限ルト云フノハ惡イダロウ
(栗塚)
之ハ松岡サンノ云フ通リ以内ニ非ザレバト直シタイ
(西)
二ケ年以内デ良イト云テ分ノ字ヲ刪ル論モアリマシタ
(栗塚)
ソレハ跡デ直ストシテ之ハ此儘デ如何デスカ「但二ケ年以外ノ利息及ヒ附從物ノ爲メト債權者ノ日後ノ記入ヲ爲ス權利ヲ妨ゲズ」ト
(村田)
前ハ「後日」トアル
(南部)
兩方アリマス
(村田)
アレモ「日後」デ良イノダ
(元尾崎)
之ハ良イデハナイカ
(大尾崎)
二ケ年分ハ給與スルガ當年分ハ給與セズト註ニアリマスガオカシイ
(南部)
二ケ年ヤツテモ當年分ハ許サント云フノデス三年分許シタノヲ此方デハ二年分許シタト云フノデス
(松岡)
債權ノ二ケ年分ト云フノハ
(淸岡)
其年カラ遡テユクノデス
(元尾崎)
註ニハ妙ナコトガアルヨ當年分給セズ云々トアル
(松岡)
註ハ分ランノデス
(南部)
註ノ譯ハ惡イノデス
(村田)
最後ノ二ケ年ダカラ其年ト前ノ年ダネ
(松岡)
其年ハ這入ルモノカ
(南部)
最後ト云ヘバ一番終リノ年ダ卽チ當年ナラ當年ダ
(松岡)
一月ナラ一昨年ノ二月迄行クノデス
(南部)
收穫抔デ場合ニ依テハ前年カラ二ケ年ニナルカモ知レン
(元尾崎)
物ニ依ル假令バ今年ノ分ハ未ダ出來ナイ其トキハ入レヨウガナイ
(南部)
其トキハ昨年ト一昨年ダ
(元尾崎)
若シ利息ガアルト日割デユクノダ
(松岡)
民法上ノ果實デ日々取レルノデアリマス
(元尾崎)
今日カラ遡テ二ケ年デ宜シイノデス之ハ註ガ惡イノカ反譯ガ間違イデハナイカ
(栗塚)
間違イデハナイヨウデス
(大尾崎)
已ニ經過シタルトアルカラ當年分ハ這入ラヌネ
(栗塚)
成程金ダト記入カラ遡テ二ケ年ト云ヘマスガ收穫物ダト定期ノ物ニナツタラソウハユカン
(元尾崎)
秋ノ十月拂フト約束シテ十月ニナツテカラダ
(南部)
收穫物出來テ居ラヌトキハ前年カラ二ケ年ユクト云フ旨意デス
(元尾崎)
ソレデハ良シイ
(大尾崎)
配當ノ年ハイラン話ダ
(南部)
利息ハ入レルノデス
(淸岡)
利息ハ入レル收穫物ハイラント云フノカ
(元尾崎)
收穫物ハ時期ガ來ランノデス
(淸岡)
總テ前二年トナルゼ
(元尾崎)
良シイデハナイカ收穫物ハ定期ガ來ナイカラ取レナイ金ハ日々生ズルカラト云フノデス
(西)
數ヘラレナイカラダ
(栗塚)
左樣
(松岡)
天然ノ果實ト法律上ノ果實ト二種アルカラ二樣ニ計算シナケレバナラン良カロウ
(南部)
良シイ先ヘヤリマシヨウ
(淸岡)
之デハ分リマセンネ
(南部)
詰リ分ル終リノ二ケ年ト云フノデアリマスカラ若シ出來ヌモノハ仕方ガナイ
(元尾崎)
出來ヌノハ數ヘル處ニ至ランノデ卽チ最後ニ至ランノデス
(大尾崎)
良カロウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第千二百五十五條朗讀ス
第千二百五十五條 抵當ノ順位ハ債權カ條件付タルトキ又ハ信用ノ開始ニ於ケル如ク順次ノ拂込ヨリ生スルトキト雖モ亦記入ニ因テ之ヲ定ム〔伊民第二千七條〕
(修正案) 「ノ開始ニ於ケル如ク順次ノ拂込」ヲ「ヲ開キテ爲ス貸付ノ如ク漸次ノ支拂」ト改ム
(栗塚)
「信用ニ關スル如キ」ハ困タ字デ商法デ信用ト云フノヲ御採用ニナツタカラ信用ヲ開テ爲ス貸付ノ如キ漸次ノ支拂ヨリ生スルトキト雖モ亦記入ニ因テ之ヲ定ム」デス
(元尾崎)
信用ヲ開クカ
(栗塚)
「クレジツト」銀行ガ一ツ在テ某ノ爲メ財ヲ開ク信用ヲ開クト云フト其人ノスルコトハ何萬圓マデハ私ガ開クト云フ根抵當トカ云フモノヲ銀行ガ取テ公債證書何十圓預ケテ置ケバ其公債鐙書有ラン限リ金ヲ貸テ呉レルト云フノデス
(元尾崎)
分テハ居ル
(大尾崎)
信用ヲ開クカ
(栗塚)
信用貸トナツテモ往カンカラ開クト云フ字ヲ入レテ宜シイ
(大尾崎)
信用ト云テモ信用貸ヨリハ外ニナイ
(栗塚)
ソレダカラ又漸次ノ貸付ヨリ生ズルトキト雖ドモトヤツテ仕舞ハフト思タガ併シナガラ貸付トナルト一遍ニオ前ノ爲メ幾許デモ貸テ宜シイト云フ根抵當ヲ取テヤルコトニ見ヘンカラ
(元尾崎)
根抵當ヲ取ランデモ宜シイ信用デ宜シイ信用ヲ開クト云フヨリモ借ヲ更ニ開クカネ
(栗塚)
實ハ財ヲ開クト云フモ尙ホ分リマセン
(村田)
信用ヲ始メテカネ
(元尾崎)
三島ニモ尋ネテハ如何
(南部)
ナイト云フ
(元尾崎)
根抵當ヲ出サンデモ宜シイデシヨウ
(松岡)
押詰メタラ根抵當ノアルノモナイノモアルノデ此所デ順次ヲ定メルノハ漸次ニ拂込ダ金デモ約束ノトキヨリダ
(元尾崎)
根抵當ヲ以テ貸付ヲ爲スト云フヨウナ理窟ニヤツテハ何ウカ
(栗塚)
左樣
(松岡)
約束デ信用ガアツテオ前ノ方ヘ貸テヤロウト云フノデス
(元尾崎)
當坐貸ハト云フノデソレヲ預金ノ外又預ケテ無イモノモ振出シテ來ルト出スノダ
(松岡)
振込デ置キ引出ス方ノコトバカリデナイ
(栗塚)
拂込ガ間違テ拂込金ヲ借リテ居ル人ガヤルヨウダガ之ハソウデナイ貸付ケル方デス
(元尾崎)
根抵當ヲ以テ漸次貸付カ
(南部)
根抵當ト云フ字ヲ入レルカ
(栗塚)
債權ガ條件付デモ亦漸々拂込デ貸付テ往クノデモ抵當トナツテ居ル記入セン以上ハ往カン記入デ順位ヲ定メルノデス
(南部)
根抵當ト云フコトヲ入レルト抵當ガ主ニナツテ仕舞此所ハ債權ガ主ダカラ
(淸岡)
始ムルト云フ字ガ良シイダロウ信用ヲ開始シテカ
(栗塚)
開始シテ爲ス貸付トヤルカ
(淸岡)
開クト云フ字ガアルナレバ開始シトシテ置キマシヨウ
(栗塚)
銀行デ以テ此度何々ト云フ會社ヲ立テヨウト思フガ私ハ是丈ノ地面ヲ抵當ニモスルカラ公債證書モ是丈入レルカラト云フノデス
(松岡)
註ヲ見ルト根抵當デ宜シイヨウデス信用ハ只ノ信用根抵當デハ定マランガ此所ハ根抵當トアル信用貸ヨリハナイ
(南部)
併シ根抵當ト云ハレン債權ガ條件付ナルトキダ
(栗塚)
根抵當デ以テダ
(淸岡)
信用ヲ以テ爲ス貸附ノ如キトデモスルカ
(松岡)
根抵當デ漸次拂込モノデアルガ日付デ往ク根抵當デ漸次拂フモノデモ條件付デモ良シイ
(南部)
根抵當ガ支拂ノ方ヲ云フノデハナイ元ガ抵當ノコトヲ云フノデス
(松岡)
只ノ「クレジツト」ノ貸付デハナイ
(栗塚)
信用ヲ開クト云フヨウナコトハ商法デ「債」ト云フ字ガ御座イマスネアソコヘ往クト孰レ御困リナサルニ違ヒナイ
(松岡)
彼處ハ珍ダ々々ト云テ通テ居ルノデアリマス
(元尾崎)
約束ト云フ字ヲ入レテハ何ウカ信用約束ヲ開始シテ漸次ニ貸付トヤツタラ如何
(松岡)
ソンナラ信用約束ニ於ケルダ
(栗塚)
「如ク」ハオ前ニ何圓マデ貸セルト云フ如キデアリマス
(松岡)
ソンナラ止メテ良シイ如キデハナイ
(元尾崎)
信用ノ約束ト云フヲ加ヘルト何ウカ
(栗塚)
如クト云フハ丁度或ル銀行デ信用ヲ置キタ如キニ漸次ヤルモノカラ出ルトキデモト云フノデアリマス
(淸岡)
信用ヲ開始シテ爲ス貸付ノ如キトヤツテハ如何開クト云フ字モ開始モ借用モ良カロウ
(松岡)
如キハ條件付モ困ルネ
(栗塚)
條件付デモ亦漸次支拂フ如キデモデス
(松岡)
註ヲ見ルト信用貸ト云フヨリ外ハナイ
(元尾崎)
信用貸ノ約束ガ一番良シイネ
(松岡)
如クハ調ハズシテ宜シイ信用貸ノ約束ニ因リ漸次支拂ニ因リ生ズルトキト雖モダネ
(元尾崎)
ソレデ宜シイ約束ト入レルト宜シイ
(松岡)
事實ヲ見テモ如キハオカシイネ
(栗塚)
條件付卽チデス
(松岡)
ソウデハナイ
(淸岡)
又ハ卽チダロウ
(松岡)
條件付ト云フノニ力ヲ入レテハユカンノデ一ハ條件付ニナルトキ一ハ信用貸デ漸次支拂フトキト云フノデス
(南部)
條件付ハ包含センヨウデモ整頓スレバ斯ウナルト云フノデス
(松岡)
私ノ疑ヒバ信用ノトキニ以テ如クト云フ一ヲ入レテ例ノ如クト云フノデハナカロウト思フ信用貸信用貸ノ約束ニ因テ漸次支拂ヨリ生ズルト云フ方ダロウ
(栗塚)
未ダアルカモ知レント云フノハ如クト云フ字ガ原文ニアリマスノデス經ノ說キ明シヲ見テハナイ
(大尾崎)
信用ヲ開キト云フカネ
(松岡)
信用貸ノ約束ニ因リ漸次支拂ニ因リデアリマス
(南部)
如キヲ入レテ置イテモ害ガナイカラ宜シイデハナイカ
(栗塚)
信用ヲ開クハ信用貸ト云フノデハナイ信用貸ト云フト抵當ヲ取ラズニ貸スノデアリマス
(松岡)
ソンナラ信用約束デ良シイ
(栗塚)
信用ノ約束始メタル如クガ何ト云ヒマスカ皆サン銀行カ何カ某ニ金ヲ貸セト云フト根抵當ヲ取テ貸スト云フノハ家ガ十萬圓ト云フノデ五ケ年ニ漸次ヤツテ行ク其代リ抵當ヲ來コソカト云フソレハ今日カラ効ガ生ズルノデス
(大尾崎)
ソレガ根抵當デス
(渡)
信用貸ト云フノガ分テカラデハ何ウカ
(栗塚)
左樣商用デ議シテ貴君方デ定メナケレバナランデシヨウ
(淸岡)
「信用貸ノ如キ」デハ分ラン
(渡)
商法ト引合シテ見ルマデ置イテハ何ウカ畢竟アレカラ來タノタロウ
(南部)
兎ニ角信用貸ニ於ケルト云テ置キマシヨウ
(栗塚)
於ケル漸次ノ支拂トヤツテ置キマシヨウカ
(渡)
之ハ斯ウシテ置キ元ノ商法案ヲ定メテカラニシヨウ
(村田)
ソレガ宜シイ
(北畠)
支拂ト云フハ愈々分ラン
(栗塚)
銀行カラ貸付ルノハ何ト云フカ
(元尾崎)
支拂ト云フネ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ假定シ置キ商法ト照合スル迄未定
第千二百五十六條朗讀ス
第千二百五十六條 債權者カ各箇ノ代價ノ同時ニ淸算セラレタル數箇ノ不動產ニ付キ抵當ヲ有スルトキハ其債權ハ總テノ不動產ニ其重要ノ割合ニ應シテ之ヲ配當ス可シ
順次ノ淸算ノ場合ニ於テ若シ右ノ債權者カ不動產中一箇ノ代價ニ因テ全ク辨濟ヲ受ケ此一箇ノ不動產ニ付キ其債權者ノ次ニ抵當ヲ有スル一人又ハ數人ノ債權者ノ爲メニ損失ノ生スルトキハ其一人又ハ數人ノ債權者ハ他ノ各不動產ニ付テハ其己レニ先チタル債權ニ於ケル其各不動產ノ分擔部分ニ對シ自己ノ債權ノ爲メ其相互ノ順位ヲ以テ右辨濟ヲ受ケシ債權者ノ抵當ニ當然代位ス〔伊民第二千十一條〕
(修正案) 第一項左ノ如ク改ム債權者カ數箇ノ不動產ニ付キ抵當ヲ有シ其各箇ノ代價カ同時ニ淸算アリタルトキハ其債權ハ總不動產ノ重要ノ割合ニ應シ之ヲ分配ス可シ第二項「順次」ヲ「漸次」ト改メ「若シ」ノ二字ヲ刪リ「分擔部分ニ對シ」ヲ「分擔部分ニ限り」ト改ム
(松岡)
「重要」ト云フハ何ト云フカ
(栗塚)
「重要」ト云フハ大キイトカ小サイトカデス
(渡)
譯ガ分ラン
(元尾崎)
一項ノ例ヲ云テ見テ下サイ
(栗塚)
一項カラ申ス三箇ノ抵當ガ在ル此抵當ヲ有シテ居ル獨リ甲ト云フ債權者ガ居ル「重要」ト云フノハ○千圓、○二千圓、○三千圓、トアル甲ノ貸金ハ六百圓スルト千圓カラ百圓取リ二千圓カラ二百圓取リ三千圓カラハ三百圓取ルト云フノデソレカラ甲ハ面倒ダカラ千圓ノ内カラ六百圓取テ仕舞タ四百圓殘テ居ル甲ハ濟デ仕舞タネ漸次ノ場合ハ甲ガ不動產中カラ一箇ノ代價ニ付辨濟ヲ受ケテ仕舞次ノ債權ヲ有シタ一人又ハ數人アツタノデ乙丙ハ第二抵當ヲ取テ居テ迷惑スルデシヨウ四百圓殘テ居ルヤ否殘テ居ラント見ルノデスネ六百圓皆取テ仕舞タスルト迷惑シタ一人又ハ數人ノ債權者ガ他ノ各不動產デ二千圓三千圓ノモノニ對シ代位スルト云フノデアリマス
(元尾崎)
分タ々々
(栗塚)
「各不動產ノ分擔部分ニ限リ」ト云フノハ「己レニ先チテ於ル債權」ハ甲デ甲ニ於ケル各不動產ノ分擔部分ハ三百圓ト二百圓ト云フ分擔部分ニ限リ自己ノ債權ノ爲メ乙ト丙ガ代位スルト云フノデス
(淸岡)
簡單ナモノヲ之丈ニ書ノハ明文ダ
(大尾崎)
聞クト分ルガ讀デハ分ラン
(元尾崎)
重要ノ割合抔ト云フノハ分ラン代價ノ割合ニ於テトシテ良ササウナモノデス
(村田)
價額ノ割合ニ於テモ宜シイ
(渡)
ソレガ良シイ
(栗塚)
「價格」トシマスカ
(北畠)
「額」デ宜シイ
(元尾崎)
「價額」ノ方ガ良カロウ
(松岡)
「額」デ良シイ
本條ハ「重要」ヲ「價額」ト改メ其他報吿委員ノ修正ニ決ス
第千二百五十七條朗讀ス
第千二百五十七條 前條ノ代位ハ右ノ如ク其權利ノ移轉セラレタル債權者ニ次テ右不動產ニ付キ記入ヲ爲シタル債權者ニ對シテ其効ヲ生ス
若シ右ノ代位者カ其爲シタル記入ノ緣邊ニ其代位ヲ附記セシメタルトキハ其代位者ハ順序規定ノ手續中ニ指名シテ之ヲ加ハラシムルコトヲ要シ其承諾アルニ非サレハ何等ノ抹殺又ハ減少ヲモ爲スコトヲ得ス
若シ辨濟ヲ受ケシ債權者ノ抵當ニ供シタル他ノ不動產ニ付キ其抵當ヲ記入セサリシトキハ代位者其記入ヲ爲シ且右ト同一ノ目的ニテ其緣邊附記ヲ爲スコトヲ得〔同上〕
(修正案) 第一項「右ノ如ク其權利ノ移轉セラレタル」ノ十五字ヲ刪リ「ニ次テ」ノ上「債權者」ノ上ニ「原」ノ一字ヲ挿入ス第二項本項ハ起案者ニ質問中ニ付キ留保ス第三項「辨濟ヲ受ケシ債權者ノ抵當ニ供シタル」ノ十七字ヲ刪リ「他」ヲ「右」ト改メ「其抵當ヲ記入セサリシトキハ」ヲ「抵當ノ記入アラサリシトキハ」ト改ム
(栗塚)
之ハ反譯ガ間違テ居ルヨウデス尤モ二項ハ起案者ニ質問中デス語ガ足リンヨウデアリマスカラ起案者ニ聞テ入レヨウト思テ居リマス
(元尾崎)
二項ハ分ランネ
(栗塚)
言葉ノ立方ハ分リマセン原文ニハ「右ノ代位者カ記入縁邊ニ其代位シタルコトヲ付記シテナカツタトキハシテアツタ其代位者ガ手續中指名シテ加ヘルダロウシソウシテ其代位ノ承諾ガナケレバ抹殺減少ハ出來ントアルノデ其意味ハ此丈デハ盡ンシ又書替テモ盡ンカラ質問中デス
(南部)
代位シタ不動產ト見レバ宜シイ
(大尾崎)
元トカラ記入ハシテ無カツタノデス
(元尾崎)
後カラ記入スルノデスカ
(栗塚)
左樣デス
(元尾崎)
スレバ仕方ハナイ
(松岡)
末項ハ要ラン話デス何ゼナレバ初メノ人ガ記入ノ無カツタ不動產ナラバ新規ニ段々記入ガ起ル丈ケノ話デス
(南部)
起サナケレバナランカラ起ソウト云フノデス
(栗塚)
ソウシテ又縁邊付記モシテ置ケト併シ彼レニ對シテ初メニ書テ居ル人ニ對シテハ効ガナイゾヨト云フノデス
(松岡)
ダカラ何ニモナラン卽チ丁戊ニ對シテハ何ニモナラン
(元尾崎)
若シ抵當ガ無ケレバダ
(松岡)
無カツタラセンデモ宜シイ皆記入シテ居ラン場合ニ記入シタ者ニ効アルハ云フ迄ハナイ
(南部)
代位デヤツタナラバダ抵當記入ハ讓受ケタ代位者ガ詰リ出來ルノデス
(松岡)
辨濟ヲ受ケシ債權者カ
(南部)
受ケシ債權者ニ抵當ニナツテ居ル辨濟ヲ受ケタ他ノ不動產卽チ一箇ノ不動產デアリマス
(松岡)
抵當ヲ供シテアル他ノト云フニ辨濟ヲ受ケタ場合抵當ニナツテ居ルト云フノカ
(南部)
抵當ニハナツテ居ルガ記入シテ無イト云フノデアリマス
(松岡)
右ノト云フカ
(南部)
前ノ「右ノ」ト同ジデス
(元尾崎)
分テ居ル前ノ債權者ガシテ置ントキハデス
(南部)
ソレヲシテ代位スルト云フノダ
(元尾崎)
前ノ者ガ爲ヨウト思ヘバ出來ルガ爲ナカツタカラ代位者ニナツテスルノデス之ハ出來ル場合ヲ云フノデス
(栗塚)
記入シテ無カツタラ代位シタ人ガソレデソウシテ縁邊附記モスルノデス
(元尾崎)
已ニ抵當ニスルト云フ合意ハ成立テ居テ登記シテ無イ場合ヲ云フノダ
(松岡)
ソンナコトガ何所ニ見ヘルカ
(南部)
記入アラザリシトアル
(松岡)
辨濟ヲ受ケシ債權者抵當ニ供シタル他ノデスゼ
(南部)
記入ノ無イ抵當デス
(栗塚)
私ト松岡サンノ間ニハ抵當ダガ記入シテ無イト他所ノ人ニ對シテハ無イノデス
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決シ第二項ハ起案者ニ質問中ニ付留保ス
于時午後二時二十分閉會ス