旧民法・法例(明治23年)

法律取調委員会 民法草案議事筆記 第82回

参考原資料

備考

  • 未校正のテキストデータです.
民法草案擔保篇第八十二回議事筆記
自第千二百二十一條至第千二百四十條
(委員長)
ヤリマシヨウ
第千二百二十一條朗讀ス
第千二百二十一條 若シ債權者カ其財產ノ管理權ヲ有セサルトキハ其法律上又ハ裁判上ノ代人ニ於テ記入ヲ爲スモノトス
抵當ノ記入ハ亦一般代理人及ヒ法律上又ハ合意上ノ抵當ノ附着シタル所爲ヲ行フノ委任ヲ受ケタル特別代理人ノ權利及ヒ責任ニ屬スルモノトス
記入ハ亦債權者ノ爲メニ事ヲ行フ事務管理人ニ於テ其債權者ノ委任ナクシテ之ヲ爲スコトヲ得
(修正案) 左ノ如ク改ム第一項債權者カ財產ノ管理權ヲ有セサルトキハ抵當ノ記入ハ法律上又ハ裁判上ノ代人之ヲ爲ス第二項抵當ノ記入ハ一般ノ代理人及ヒ法律上又ハ約束上ノ抵當ノ附着シタル行爲ヲ爲スノ委任ヲ受ケタル特別ノ代理人ノ權利及ヒ義務ニ屬ス第三項又記入ハ其債權者ノ委任ナクシテ事務管理人之ヲ爲スコトヲ得
(松岡)
一般ノ代理人ト云フト普通ノ代理人ト云フヨウニ聞ヘルネ
(栗塚)
併シ特別ト云フノガ其内ニアリマスカラ
(松岡)
詰リ總理代理人位ヒデス
(栗塚)
代人ト代理人ノ區別ガ御座イマスカラ誠ニ困リマス
(淸岡)
抵當ノ附着シタル行爲ヲ爲スト云フコトハ何トカ云ヒヨウハナイカ矢張抵當ノ特別ノ代理人ニ任ジテ記入ヲサセルト云フ抵當記入ヲ爲ルト云フノデシヨウ
(栗塚)
左樣デス
(淸岡)
抵當ノ附着シタル行爲ヲ爲スト云フハ何ダカ
(栗塚)
何カ契約ヲサセルト行爲ハ契約ト讀ンデモ宜シイ契約スルノ契約ニハ抵當ガ付テ居ルノデス
(淸岡)
附着シタル行爲ハ分リ惡イ
(栗塚)
抵當ヲ生ゼシムルト云フカ
(松岡)
矢張「附着シタル」デ宜シイ抵當付ノト云フダネ
(元尾崎)
一般ト云フハ總理代人カ
(栗塚)
「セネラル」デス
(元尾崎)
ソレハオカシイ總理代人デ宜シクハナイカ
(松岡)
名稱ダカラ一所ニナラント往カン
(北畠)
特別ノ代理人ト云フノハ部理代理人カ
(栗塚)
左樣デス
(松岡)
特別ノ委任ヲ受ケタルト云フタラ惡イカネ
(南部)
之ハ抵當ノ付テ居ルコトニ付テ別段ニ委任シタカラ記入スルコトニ付テ委任スルハ別ダカラ今少シ廣イノデス
(栗塚)
總理部理ト致シマスカ
(西)
一般ノ代理人ト云フト重モニ總理トカ云フニハ聞ヘナイ一寸シタ代人ノヨウニ聞ヘル
(栗塚)
尋常一般ノデスネ
(槇村)
總理代人トヤリマシヨウ
(栗塚)
ソウ致シマシヨウスルト後ハ皆ソウ致シマス
(松岡)
代人ガ出來タカラ總理ト云フノガ大變勿代ナイ字ニナツタネ
(栗塚)
總代理人部代理人デハ如何
(元尾崎)
總理代人デ宜シイ
(委員長)
訴訟法デ民法ノ再調査ノトキ何トカ定マツタラソレデ總理トカ何トカ云ハナケレバナラン調テ置クト云フコトガアツタ
(南部)
其代理人トアツタラ總理代人トシマシタ
(委員長)
一般ニト云フノハ三島ガ「總般」トシナケレバナラントカ云フタデハナイカ總理代人ナラ良シイ
(栗塚)
宜シウ御座イマス
(委員長)
總理代人トシテ特別ハ部理代人トシヨウ
(松岡)
一項デハ法律上裁判上ノ代人ト云フモノ之ヲ爲ストソレカラ後ノ方デハ代人デハト云フハ
(栗塚)
其人ノ權内ニアルト云フコトデス
(松岡)
スルト上デハ何々コトヲ爲ストアルコウ云フコトハ權利ノミニ屬スト何ウ云フ譯ケカ私ハ却テ上ノ方ヨリ法律上裁判上ノ代人ナラ之ヲ爲スベキモノトデモスルヨウニシテ良イト思フ義務アルコトヲ示スハ良シイカ同ジ並ンデ置クニ書分ケルト上ガ輕ク後ノガ重モ過ギルヨウニ思フ
(栗塚)
輕重ハ御座イマセン
(松岡)
之ハ同一ニシタイ
(栗塚)
法律上裁判上代人ニ爲ナケレバナランコトハ申スマデモナク委任ヲ受ケタ人ダカラ何ウダロウカ
(松岡)
同ジコトダ
(南部)
記入ヲ受ケタ委任ハ別デス
(栗塚)
行爲ヲシテ呉レト云フノデス
(松岡)
モノトスト云フ文章ハ止メタイ
(栗塚)
アル所モアリマス
(南部)
惡ケレバ可シト云テモ宜シイモノトスハオカシイ
(松岡)
訴訟法ハ「可シ」デス
(南部)
訴訟法ノ「可シ」ト云フノハ訴訟手續ノ無効ニナラントカ云フノデス
(松岡)
何方カ一ニシナケレバナラン獨逸ト佛蘭西ト言葉ガ違テモ日本ニハ構ヒマセン
(栗塚)
可シト云フノハ要スト分ケル所デアリマス民法ニハ要スト可シノ區別ハアリマセン
(松岡)
ドウデシヨウカ事柄ハ苦情モナイニ文ガ斯ウアツテハ何ウカ
(栗塚)
文章ハ違フガ、抵當記入モシナケレバナランゾヨ又權アルゾヨト云フ所カラ來テ居ルノデ、一項ノ法律上裁判上ノ代理人ノ權利及ビ義務ニ屬ストデモ書ヨリ外ハナイ二項ハ直スコトハ出來マセン
(松岡)
全體ヲ云フト同ジヨウニシタイ
(栗塚)
併シナガラ同一ニ往クマイト思フノハ二項ハ斯ウ云フ仕事ヲシテ呉レト頼マレタノデス
(松岡)
ソレハ同ジデ上モ抵當ノ委任デハナイ仕事ノ方ノ委任デ卽チ本人ニ代テ管理スルノ代人ダカラ同ジコトノデソレデ酷イ區別ノアロウ筈ハナイ
(南部)
我輩ハ論ハナイガ文ヲ替ヘルコトハ屡々言テ同樣ナ譯デアリマスカラ卽チ法律上ノ人カ裁判上ノ代人ガ爲ベキモノダカラ示シタノデ其トキモ權利義務ヲ斯ウ云フ文ガアルカラ一樣ニシナケレバナラント云フハ六カ敷コトト思フ
(栗塚)
爲スコトヲ要スデアリマス
(松岡)
要スナレバ義務ト云フコトガ見ヘルカラ宜シイ
(村田)
要ス抔ト言ハヌガ宜シイ、後ニ權利義務ニ屬スト云フト、前ハハツト云タ方ガ宜シイ前ノハ、財產ノ管理權ヲ持テ居ラン者ハ代人ガヤル、代人ガ出ルト是非シナケレバナラン、ト云フノデス
(松岡)
ソウ見ルト一ノコトニナルゼ、代人ガ爲ルノダカラ斯ウト云フト一二項ハ同ジニナツテ仕舞
(村田)
一項ハ管理能力ノ無イ者ハ法律上ノ代人ガスル、スレバ權利義務ガアルト云フノデス
(松岡)
前ニ管理權ノ無イ人ガ後ニハ無クトモ爲セルノダカラ
(村田)
別ノコトデハナイ記入ノコトヲ云フノダガ記入ハ卽チ、抵當記入ハ總理代人ナラ無論部理デナイカラ是非シナケレバナラン、權利義務ガアルト云フノデス
(松岡)
一二項ハ同ジコトダ
(村田)
前ハ委任ガナケレバナラン後ハ委任ガ無クトモ記入ヲ爲スノデス
(松岡)
權利義務ト云フノト得ルト云フノト只爲スト云フノト違フ
(村田)
幼者ノ管理人トカ或ハ瘋癩人ノ管理人トカ裁判上ノ管理人トカ法律上ノ管理人トカ云フ、ハ管理上デヤルノダカラ委任ハナクトモ出來ルノデス
(松岡)
ソウ云フコトデハナイ
(村田)
事務管理ト云フノハ卽チソレデス
(松岡)
一項ハソウ云フコトデハナイ
(村田)
一項ハ事務管理人ハ委任ナクシテ出來ルト云フノデス
(淸岡)
三番目ハ私ハ少シ修正ハ分リ惡クハナイカト思ヒマス
(栗塚)
又記入ハ債權者ノ委任ナクシテ事務管理人之ヲ爲スコトヲ得デアリマス
(淸岡)
事務管理人ト云フノハ債權者ノ事務管理人ト云フノデ分ルダロウカ債權者ノ爲メニコトヲ行フト前ニアルカラ分テ居ルヨウダガ此所デハ債權者ノ委任ナクシテ事務管理人委任ナクシテ何ノ事務管理人トハ云テナイカラ分ランヨウダガ間違ヒハシマセンカ
(村田)
詰リ委任者ノ委任ナクシテト云フノデス
(淸岡)
少シ分リ惡イネ
(栗塚)
又事務管理人ハ債權者ノ委任ナクシテ爲スコトヲ得ト書キマシヨウカ
(元尾崎)
爲スコトダ
(大尾崎)
之ハ宜シイ
(南部)
先ヘ往キマシテハ如何
(槇村)
宜シウ御座イマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第千二百二十二條朗讀ス
第千二百二十二條 婦ノ法律上ノ抵當ハ夫カ條件附ナルモ契約又ハ其他ノ方法ニテ婦ノ債務者ト爲リタルトキヨリ夫又ハ裁判所ノ許可ヲ要セス婦ノ請求ニ因リ之ヲ記入スルコトヲ得又其記入ハ婦ノ適當ト思考スル如ク不動產ノ全部又ハ一分ニ付キ之ヲ爲スコトヲ得伹第千二百四十一條ニ記載スル如キ夫ノ減少ノ權利ヲ妨ケス
婦ノ記入ヲ爲サヽルトキハ夫ハ其債務者タル右ノ場合ニ於テ負擔ナク又ハ不十分ノ負擔アリテ婦ノ擔保ノ爲メ十分ナル不動產ニ對シ成ル可ク婦ノ爲メニ記入ヲ爲スコトヲ要ス
婦又ハ夫ノ記入ヲ爲サヽルトキハ假令委任ナキモ婦ノ血屬又ハ緣屬中ノ一人ニ於テ之ヲ爲スコトヲ得伹婦ノ故障又ハ抛棄アラサルコトヲ要ス〔第二千百三十五條乃至第二千百三十九條〕
(修正案) 第一項「條件附ナルモ」ノ六字ト契約ノ下「又ハ」ノ二字ヲ刪リ「婦ノ債務者」ヲ「婦ニ對シ條件附ナルモ其債務者」ト改メ思考スルノ下「如ク」ノ二字ヲ刪リ「如キ」ヲ「如ク」ト改メ「減少」ノ上「有スル抵當」ノ五字ヲ挿入ス第二項左ノ如ク改ム右ノ記入ナキトキハ夫ハ婦ノ擔保ニ十分ナル不動產ニ付キ婦ノ爲メ記入ヲ爲スコトヲ要ス第三項ハ「夫ノ」ヲ「夫カ」ト改メ「抛棄アラサル」ヲ「抛棄ナキ」ト改ム
(元尾崎)
「婦ニ對シ條件付」ト云フハ何ウ云フコトデスカ
(栗塚)
條件付デ債務者ト爲リタルトキデス
(元尾崎)
ドウ云フコトカ
(松岡)
條件付抔ト云フコトハイリソウモナイ只ノデハ出來ヌノカ
(栗塚)
條件付デアロウトモト云フノデ只ノハ無論デアリマス
(松岡)
條件付デモト云フノハ丁寧過ギタ話デス
(元尾崎)
初メ約束シナケレバ宜シイノデシヨウ
(栗塚)
約束其他方法デナルカモ知レン
(元尾崎)
其他ノ方法ト云フハドウ云フコトカ
(栗塚)
約束デナクツテモダ婦ト夫ノ間ニ約束ハ無カロウトモ女房ガ相續シタ母方ト父方ガ死デ財產ガ來タ其財產ノ管理ノ權ハ夫ガ持トカ婚姻契約デ定マツタトカ云フソレヲ管理スル權利ガアルソレニ付テ夫ノ財產ハ抵當ニ入レテ置カナケレバナラン
(大尾崎)
美ガ承知センデモ自分ノ見込丈ハ財產記入シテ置クカ
(栗塚)
其替リ後デ公證ヲ求メルコトガ出來ルノデス債務者トナルニ直其トキニナルカ又ハ條件付デナルカト云フノデ債務者ト爲ルソレハ條件付ニ爲ルト云フノデス
(元尾崎)
斯ウ云フコトガアツタナラバト云フノダネ
(栗塚)
左樣
(南部)
夫ガ條件付モ分タガ債務者ガ條件付デス
(松岡)
債務ガ條件付デ他日解キ放ストカ云フコトニナルカモ知レンソレデモ矢張登記シテ置ケダ卽チ條件付ノ債務デアロウトモダ之ハ只ノ人デハ條件付ガ出來ヌカラ畢竟其他ノ方法デ婦ニ對シ債務者ト爲リタルトキ女房カラ出來ルト云フノダカラ差支ハナイ尤モ婦ガ條件付トナルト工合ガ惡イ
(栗塚)
文字ガ書ヌカラト云テ意味ヲ現ハスコトノ出來ヌノハ殘念デス
(松岡)
條件付債務者ニ出來ヌノダロウ債務者ニナツタラバ直グニ抵當記入ガ出來ルゾヨ
(栗塚)
未ダ權利ハ生ジテ居ランニモセヨト云フノデス
(元尾崎)
ソレマデ云フニハ及バヌ
(松岡)
日本ノ人ハ女房ヲ虐待スルカラ無暗ニ書クノダロウ
(栗塚)
ソウデハナイ
(元尾崎)
條件付ヲ刪テハ如何
(西)
條件付ト云フコトハヒドイ必要デハナイ
(村田)
千二百十三條ニ「債權者將來ノ財產ニ付テ抵當ハ出來ヌトアリマスネ未必條件抔ハ往カヌヨウニ見ヘルガ條件付ハ構ハヌ積リデシヨウ一寸見ルト條件付ノヨウニ見ヘル
(南部)
將來ノ財產ト條件付トハ事柄ガ違ヒマスヨ
(松岡)
指所ガ違ヒマス此所ハ抵當ニスルモノノ條件付デハナイ爲ル契約ガダカラ違フ
(栗塚)
刪テモ恐レハアリマセン
(松岡)
婦ニ對シ條件付ト云フノハドウモオカシイ
(元尾崎)
削テ置イテハ如何
(渡)
差支ナケレバ削リマシヨウ
(松岡)
私ハ之ガアルト尋常普通ノ人ガ條件付ノトキハ抵當設定ガ出來ヌト思フ
(南部)
其恐レハナイ
(元尾崎)
私ハ削ル方ニ同意
(栗塚)
條件付ナリト云フ字丈ヲ御刪リナスツテ
(委員長)
條件付ノトキハ往カント云フ條件付ノアツタトキハ記入ガ出來ヌ夫婦ノ間ニ申分ガアルトキハ往カント見ハセンカソレガ爲メニ加調タノデハナイカ
(栗塚)
當リ前尋常一樣ノ債務者トナツタトキハ云フニ及バヌ若カモ條件付デ來タ權利ノ生ゼントキデモト云フノデス
(委員長)
明文ニ書ケンデモ權利上カラ見テ條件付ノアルトキ婦ハ全イ權利ヲ行フコトガ出來ヌト讀ハセンカ
(栗塚)
權利上カラ來レバ宜シイヒヨツト見タ人ガ條件付モトナイ爲メニ疑ヒガ起ルコトガアリマシヨウ理窟上デハ債務者トナレバ條件付モアルカラ疑ヒマセン
(淸岡)
元ノ通リニシテ良クハナイカ
(委員長)
起草者ガ注意シタノデシヨウ
(南部)
婦ノ法律上ノ抵當ハ條件付ナルモ契約又ハ其他方法ニテ夫ガ婦ノ債務者ト爲リタルトキハトシテハ如何
(元尾崎)
條件付ヲ置クナレバ修正デモ宜シイ夫ガ條件付ト云フハ何ダカ分ラン
(淸岡)
夫ハニシテハ如何
(西)
置クナレバ修正案ノ通リデ宜シイ
(元尾崎)
修正通リデ宜シイ
(淸岡)
婦ノ債務者ト云フコトハ分リ惡イ
(元尾崎)
條件付デナケレバ尙ホ更ラ條件付デモト云フコトダ
(淸岡)
債務者ト云フコトハ分ルガ婦ニ對シ條件付ダロウ
(南部)
其債務ダカラ
(大尾崎)
夫ガ女房ノ債務者トナツタトキダ
(栗塚)
夫ガ女房ニ對シテ義務者トナツタトキデスソレハ今迄無クトモ條件付デモト云フノデス
(松岡)
ドウモ工合ガ惡イ眼ヲ閉テ讀ムト假令契約ハ條件付デモト云フノデ確定ノ契約ハ無論ト云フノデス又契約ハ無クトモ法律上ノ原因カラ婦ノ債務者トナツタラ其トキカラト云フノダカラ入レテ見テモオカシイ
(南部)
假令ト云フ字ヲ入レテハ如何
(栗塚)
若カモ原文ニハ契約又ハ其他方法ニテト云フコトハイラヌ文章ニ書テ居ル婦ノ法律上ノ抵當ヲ夫ガ婦ニ對シテ條件付ナルモ債務者ト爲リタルトキヲ主ニシテ書キソレハ何ウシテナルカ契約其他方法ニテト斯ウアルノデアリマス
(槇村)
宜カロウデハナイカ
(委員長)
宜クバ二項ハ
(元尾崎)
女房ガ抛棄シテ仕舞ヘバ構ハンネ
(栗塚)
大槪抛棄サセルダロウト云フノデス
(松岡)
八釜敷云ヘバ敲キ出シテ仕舞フ先ヘ往キマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第千二百二十三條朗讀ス
第千二百二十三條 未成年者ノ法律上ノ抵當ハ夫ニ對スル婦ノ法律上ノ抵當ト同一ノ場合ニ於テ之ト同一ノ條件ニ從ヒ後見人ノ注意及ヒ請求ニ因リ之ヲ記入スルコトヲ要ス
後見人ノ注意ニテ記入ヲ爲サヽルトキハ後見人監督者又ハ親族會議各員ノ請求ニ因テ右抵當ノ記入ヲ爲スコトヲ要ス若シ之ヲ爲サヽルトキハ是等ノ者ハ未成年者ニ對シ連帶シテ損害賠償ヲ負擔ス〔仝上〕
未成年者旣ニ後見ヲ脫シタル後ハ未成年者自身ノ請求ニ因リ亦其抵當ノ記入ヲ爲スコトヲ得
(修正案) 第一項「注意及ヒ請求」ヲ「世話」ト改ム第二項未成年者ノ上ヲ左ノ如ク改ム後見人ノ世話ニテ記入ナキトキハ後見監督者又ハ親屬會員ハ其記入ヲ爲スコトヲ要ス若シ之ヲ爲ササルトキハ第三項ハ左ノ如ク改ム未成年者モ亦後見ヲ脫シタル後ハ其記入ヲ求ムルコトヲ得
(栗塚)
「後見人監督者」ヲ起案者ガ「副後見人」ト改メマシタ
(松岡)
卽チソレガ監督者ト云フノダネソレデ宜シイ
(淸岡)
「世話」ト云フハドウカ
(栗塚)
人ヲ世話シタトカ云フ徒弟契約ノ所ニアリマス
(元尾崎)
話ノ上ニハ世話シテヤツタトカ云フガ書テ見ルト何ウモ往カンネ
(大尾崎)
自分ノ財產ヲ記入シテ置ク場合デシヨウ世話ト云フノハオカシイ
(南部)
後見人ハ婦ノ爲ニスルノダカラ世話デス自分ノ資格デ入レルノデハナイ
(大尾崎)
後見人ハ自分デヤルノデシヨウ
(南部)
抵當ニスルニハ幼年者ニ抵當ニスルノデ幼年者ノ爲メニ書入レルノデ矢張世話ニハ違ヒナイ
(大尾崎)
世話トハ俗ニ云フガ當リマセン
(栗塚)
注意デモ宜シイ原語ノ意味ハ日本ノ世話ト云フニ當ルカラ譯シタノデス
(元尾崎)
注意デ良クハナイカ
(渡)
九百六十六條ニ世話ト云フノガアリマス
(栗塚)
ソレデ使ツタノデアリマス
(委員長)
記入ナキトキハト云フハオカシイネ
(栗塚)
世話ニテ記入ナキトキハデス
(元尾崎)
後見人自分ノ財產ヲ幼年者ノ爲メ入レテ置クノカ
(栗塚)
左樣デス
(元尾崎)
ソウハ見ヘヌネ
(栗塚)
見ヘル筈ハナイソレハ前ニアリマス千二百十條ニアリマス未成年及ビ禁治產者ハ後見人云々トアリマス
(元尾崎)
注意デハ何ウカ
(南部)
注意シテモ宜シ放テ置イテモ宜シトハナリハセンカ
(元尾崎)
ソンナコトハナイ
(南部)
訴訟法ニモ注意トシテアルアア云フ所ヲ注意トシテアルカラ違ヒハスル
(元尾崎)
私ハ世話デ良イト思フ
(栗塚)
自分デ世話及ビ注意ニテト云フノデ働キソウシテ怠ラズニト云フ意味デアリマス
(元尾崎)
後見人ノ注意ヲ以テ速カニ記入スルコトヲ要ストスレバ宜シイ
(栗塚)
左樣
(大尾崎)
ソレナレバ宜シイ
(淸岡)
末項ニ「記入ヲ求ムル」トアルガ「記入ヲ請求」デシヨウ
(栗塚)
左樣デス記入シテ貰フノデス「速カニ」ハ穩カナランガ怠ラズト云フ意味デス
(元尾崎)
注意ヲ以テ懈怠ナクト云タラ良シイヨウデス
(村田)
世話ハ良サソウナモノデス
(渡)
世話ニテ記入ハオカシイ
(委員長)
ナラザルトキハ往カンノデス
(元尾崎)
二項ハ原案デ良シイ
(渡)
二項ガ原案ナラ一項ハ「注意」デ宜シイ
(元尾崎)
注意トスル方ガ多數ラシイ
(松岡)
注意デト云フコトダ
(栗塚)
左樣デス
(槇村)
注意ヲ以テガ宜シイ
(委員長)
一項ハ注意ヲ以テカ
(栗塚)
左樣注意ダノ世話ダノハ要ラヌ
(北畠)
後見人ハ之ヲ記入スルコトヲ要スト云ヘバ宜シイ
(渡)
入レテモ宜シイダロウ
(北畠)
入レレバ蛇足デス注意ダノ世話ダノハ要ラヌ
(栗塚)
後見人之ヲ記入スルコトヲ要スデ宜シイ
(槇村)
ソレデ宜シイ
(松岡)
請求ヲ爲スト云フハイラヌ
(栗塚)
自分ノデナイ後見人ガセントキハデス
(元尾崎)
之ハ後見人ノ親屬會議デサセルノデシヨウ
(松岡)
夫ノ財產ハ自分デ何ウシテ請求スルカ要ランコトダ
(北畠)
修正通リデ宜シイ
(栗塚)
副後見人又ハ親族會員デス
(元尾崎)
會員デ宜シイ
(栗塚)
副後見人ハ刪テモ宜シイ
(淸岡)
刪テ宜シイ「是等ノ者ハ」モ無イノデアリマス
(元尾崎)
末項ハ原案ノ方ガ宜シイ
(栗塚)
未成年者ヲ二ツモ繰返シテ居ルノモ餘リ善イ文章トモ思ハヌ
(委員長)
自己ノ請求ト云フ文章ニ對シテ居ル併シナガラ此所バカリデナイ一項カラ斯ウナツタガアア云フ所ヲ刪テハ意味ハ害センカ艶ガ無クナル氣味ガアルネ二項ハ誰モ宜シイカ副後見人ト云フモノデ良シイカ日本デ副ト云フト後見人ノ代理スルヨウニ見ヘル
(栗塚)
起案者ガ直シテ來タノダ
(委員長)
日本デ副後見人ト云フト後見人ノ副官ヲ作テ置クヨウニ見ヘル
(栗塚)
恐ラクハ人事編デ見テ直シタヨウデス人事編デ副後見人トヤツタノデハアリマスマイカ
(西)
左樣デス
(村田)
後見人監督者ナラバ良シイ
(栗塚)
大槪佛蘭西丈デ云フト夫ガ死ト母親ガ後見人ニナル其トキハ子ノ父方ダカラ夫ノ兄トカ云フ者ガ監督スルソレガ副後見人デ御座イマス
(委員長)
夫ノ方カラ監督スルカラ良シイガ副ト云フト今一人ヤリソウダカラネ
(栗塚)
名ハ副後見人トアロウトモデス
(委員長)
他ノ副頭取トカ副監督トカ云フモノハドウカ
(栗塚)
起案者ガ改メマシタ日本人事編草案ヲ見テ監督者ト云フハ副ガ良イト云テ直シタノデス
(渡)
監督ト直スハ無理ナ話デス
(村田)
副後見人ハ當リマセン
(元尾崎)
監督トシテ置キマシヨウ
(北畠)
監督デ宜シイ
(南部)
監督デ宜シイ
(栗塚)
直譯ナレバ監督後見人デス
(松岡)
後見監督人ノ方ガ當ルネ
(元尾崎)
町村制ノ助役ト云フノガ監督人ニ見ヘルノダネ
(委員長)
親族ノ「族」ノ字ハ良シイカ
(南部)
人ヲ指ストキハ「族」ト云フ字ヲ書マス
(西)
關係丈ヲ云フトキハ「屬」ト云フ字ヲ書マス
(栗塚)
三島ニ話シテ「親族」ト書クト家ノ子郎黨迄這入ルソウデス屬ハ血筋ヲ調フノダソウデス
(村田)
親族例ノ如キハ「族」ヲ書クガ跡ハ皆「屬」デス
(委員長)
ソンナラ「族」ト云フ字ニシヨウ
(栗塚)
修正ノ方ハ「族」トヤツテアリマス
(委員長)
ソウデナイゼ
(栗塚)
ソレデハ寫字ノ間違ヒデス
(委員長)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ「後見監督者」ヲ起案者ニ於テ「副後見人」ト改メ而シテ委員會ニ於テ之ヲ刪リ左ノ如ク改ム
未成年者ノ法律上ノ抵當ハ夫ニ對スル婦ノ法律上ノ抵當ト同一ノ場合ニ於テ之ト同一ノ條件ニ從ヒ後見人之ヲ記入スルコトヲ要ス後見人記入ヲ爲ササルトキハ後見監督人又ハ親族會員ハ其記入ヲ爲スコトヲ要ス若シ之ヲ爲ササルトキハ未成年者ニ對シ連帶シテ損害賠償ヲ負擔ス未成年者モ亦後見ヲ脫シタル後其記入ヲ爲スコトヲ得
第千二百二十四條朗讀ス
第千二百二十四條 前條第一項及ヒ第二項ノ條例ハ亂心ノ爲メナルト處刑言渡ノ爲メナルトヲ問ハス治產禁ヲ受ケタル者ノ法律上ノ抵當ニ之ヲ適用ス
處刑言渡ニ因レル禁治產ノ場合ニ於テハ禁治產者ノ特別ノ代理人ヨリモ記入ヲ求ムルコトヲ得
(修正案) 第一項左ノ如ク改ム前條第一項及ヒ第二項ノ條例ハ禁治產者ノ法律上ノ抵當ニ之ヲ適用ス
(淸岡)
「特別」ハ矢張「部理」ダネ
(南部)
記入スルニ付別段代理ヲ立ラルルデアリマス
(栗塚)
禁治產者ハ刑法ノ方デハ後見人ヲ置クノデスガソレヲバ代人ト云フ
(淸岡)
處刑ノ言渡ニ後見人ヲ置ケト云フコトガアリマスカ
(栗塚)
アリマス無能力者ニナリマスカラ無能力者ニハ後見人ガアルノデス
(淸岡)
後見人ハ幼者ニデシヨウ
(元尾崎)
狂人ニモ後見人ガイルカラネ
(槇村)
宜シイデハナイカ
(元尾崎)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第千二百二十五條朗讀ス
第千二百二十五條 抵當ノ記入ヲ求ムル者ハ下ニ記スル如ク己レノ利益ノ爲メ又ハ己レノ代表スル債權者ノ利益ノ爲メ抵當ノ成立スルコトヲ抵當保管人ニ證明スルコトヲ要ス
婚姻シタル婦未成年者又ハ禁治產者ノ法律上ノ抵當ニ關スルトキハ法律ニ依リ抵當ノ生スル原因タル婚姻又ハ後見ノ證ニ因テ證明スルコトヲ要ス
合意上ノ抵當ニ關スルトキハ抵當ヲ設定シタル公正證書ノ謄本ニ因テ證明スルコトヲ要ス〔第二千百四十八條第一項〕
遺囑上ノ抵當ニ關スルトキハ遺囑書ノ正本又ハ其公正ナル寫書ニ因テ證明スルコトヲ要ス
總テノ場合ニ於テ若シ保管人カ抵當ノ成立ニ付キ供セラレタル證ヲ爭フトキ又ハ債務者ト帳簿ニ記載シタル如キ記入ノ求メラレタル不動產ノ所有者ト同人ナルコトカ十分保管人ニ證明セラレサルトキハ抵當保管人ハ自己ノ責任ニテ記入ヲ拒絕スルコトヲ得伹其保管人ハ職權ヲ以テ其拒絕ノ精確ナル原由ノ陳述書ヲ供スルノ義務アリ
(修正案) 第一項「抵當ノ成立スルコトヲ」ヲ「抵當ノ成立ヲ」ト改メ「抵當保管人」ヲ「登記官吏」ト改ム第二項「婚姻シタル」ノ五字ヲ刪リ「法律ニ依リ」ノ五字ト「生スル」ノ三字ヲ刪リ「後見ノ證ニ因テ證明スルコトヲ要ス」ヲ「後見ノ證ニ因リ其成立ヲ證明スルコトヲ要ス」ト改ム第三項「謄本ニ因テ證明スルコトヲ要ス」ヲ「謄本ニ因リ證明ヲ爲スコトヲ要ス」ト改ム第四項「寫書ニ因テ證明スルコトヲ要ス」ヲ「寫書ニ因リ證明ヲ爲スコトヲ要ス」ト改ム第五項左ノ如ク改ム總テノ場合ニ於テ登記官吏カ抵當ノ成立ノ證據ヲ爭フトキ又ハ債務者ト帳簿ニ記載シタル不動產所有者ト同人ナルコトカ十分ニ證明セラレサルトキハ登記官吏ハ自己ノ責任ニテ記入ヲ拒絕スルコトヲ得但其登記官吏ハ職權ヲ以テ其拒絕ノ精確ナル原由ノ陳述書ヲ交付スルノ義務アリ
(栗塚)
「抵當保管人」ハ「登記官吏」トヤリマシタ
(松岡)
「登記判事」トスルカ何方カニシナケレバナラン訴訟法デハ「登記判事」トヤリマシタ
(栗塚)
書記ニヤラセルコトガアリマスカラ「登記官吏」ガ宜シイデシヨウ
(元尾崎)
「婚姻シタル」ヲ刪ルトアルガ之ハ刪ランガ宜シイ
(栗塚)
日本デ婚姻センデ婦ト調ヘマスカ
(元尾崎)
婚姻シタ婦ニハ限ランダロウ
(村田)
法律上婦ト云ヘバ婚姻シタ者デス
(栗塚)
反譯者ガ惡イノデ婚姻シタル女ト書テアルカラ此所デ婚姻シタル女ト云フハ惡イノデソレデ日本デハ「婦」デ宜シイノデスソレカラ末項同人ナルコトガ十分證明セラレザルトキハ登記官吏ハ自己ノ責任ニテ拒絕スルコトヲ得但千三百四條ニ記載スル如ク裁決ヲ受ル爲メ同條ノ規定ニ從フベシカ要スカ何方カデス
(元尾崎)
從フベシデ宜シイ
(南部)
要スガ宜シイ
(北畠)
從フベシダネ
(委員長)
ベシトカ要ストカ衆議ヨリモ報吿委員デ定ヲ付テ云ハント時々論ガ違フ
(栗塚)
同ジコトデス
(委員長)
ソレデハ報吿委員デ何方デモシタラ宜シイ
(松岡)
ベシト要スハ訴訟法ニハ區別ガアリマスカラ一國ノ法律ダカラ同ジヨウニシナケレバナラン
(委員長)
内務省ノ何トカ云フ人ガ著述シタ辭ノ林ト云フ本ヲ見ルニベシバ命令詞デハナイネ
(松岡)
支那デモ必ラズ命令詞デハナイ
(元尾崎)
從フコトヲ要スニシテ置キマシヨウ
(栗塚)
ソレデハ要スニ願ヒマス
本條ハ末項「但第千三百四條ニ記載スル如ク裁決ヲ受クル爲メ同條ノ規定ニ從フコトヲ要ス」ト起案者ニ於テ改メ其他報吿委員ノ修正ニ決ス
第千二百二十六條朗讀ス
第千二百二十六條 請求者ハ其他左ノ諸件ヲ精確ニ指示スル二通ノ正本ニ於ケル明細書ヲ差出スモノトス
第一 債權者ノ氏名、職業、住所又ハ居所
第二 成ルヘキ丈債務者ノ氏名、職業住所又ハ居所
第三 抵當ノ原由及ヒ法律上ノ抵當以外ノ抵當ニ關スルトキハ設定證書ノ本質及ヒ日附
第四 債權ノ證書ノ本質、其日附、右ノ證書ニ記載シタル金額又ハ不確定ナル價額ノ債權ニ關スルトキハ現ニ金圓ニテ評價シタル金額及ヒ債務ノ要求期限
第五 抵當ト爲シタル不動產ノ本質及ヒ其所在地〔第二千百四十八條〕
前來ノ記入ノ緣邊ニ附記スヘキ讓渡又ハ合意上若クハ法律上ノ代位ノ場合ニ於テハ明細書ニ新債權者及ヒ其證書ノ指示ヲ記載スルヲ以テ足レリトス
(修正案) 第一項二通以下左ノ如ク改ム明細書ノ正本二通ヲ差出スモノトス第一「職業」ノ下ニ「及ヒ」ノ二字ヲ挿入シ「又」ヲ「若ク」ト改ム第二左ノ如ク改ム債務者ノ氏名及ヒ成ル可ク職業、住所若クハ居所第四「證書ノ」ノ三字ヲ刪リ「右ノ」ヲ「其債權」ト改メ「又ハ」ノ下「其價額ノ」ノ四字ヲ挿入シ「價額ノ債權ニ關スル」ノ九字ト「金圓ニテ」ノ四字ヲ刪ル末項修正ノ意見アリト雖モ原案者ニ質問中ニ付キ追テ報吿スヘキ
(元尾崎)
居所ト住所トハ違ヒマスカ
(栗塚)
違ヒマス
(村田)
終リノ質問中ト云フハ何ウ云フ譯ケカ
(栗塚)
私ガ村田サンニ借リテ居ル金ニ私ノ家ヲ抵當ニシテ置クスルト貴君ハ債權ヲ松岡サンニ讓タ、スルト貴君ト松岡サンノ相對デスルハ宜シイ債權者卽チ松岡サンノ名トソウシテ證書讓渡ノ證書ヲ書テ置ケバ宜シイト云フガ其讓渡ノ證ニ栗塚ノ家ガ抵當ニ這入テ居タトナケレバナラント云テヤツタソレガ返辭モ來テ居ルガ未ダハツキリシマセンカラ斯ウシテ置キマス後ニ報吿スベキコトガ澤山アリマスカラ後ニ致シマシタ
(大尾崎)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決シ末項ハ質問中ニ付未決
第千二百二十七條朗讀ス
第千二百二十七條 若シ婚姻シタル婦未成年者又ハ禁治產者ノ法律上ノ抵當ニ因テ擔保セラレタル債權カ一箇ノ權利名義ヨリ生セサルトキハ債權ノ原由トシテ請求者ノ申述シタル事實及ヒ其主張シタル權利ノ金圓ニ於ケル評價ノ要旨ヲ明細書ニ指示スヘシ
(修正案) 左ノ如ク改ム婦未成年者又ハ禁治產者ノ法律上ノ抵當ニ因リ擔保シタル債權カ不當ノ利得又ハ不正ノ損害ノ如キ事實ヨリ生セシトキハ其事實ノ要旨及ヒ權利ノ評價ヲ明細書ニ指示スヘシ
(村田)
前ノデハ些トモ分ラン
(淸岡)
不正ノ損害丈デ宜シイカ賠償ハイランカ
(栗塚)
卽チ賠償ヲ取ル債權デアリマス債權ハ斯ウ云フ事實カラ出タトキハデアリマス
(淸岡)
不正ノ損害ノ如キデハ足ランカト思フガ
(南部)
何所ガ足ランカ
(淸岡)
不正ノ損害ノ如キデハナイ不正ノ損害ヨリ賠償ノ如キ事實ダネ
(南部)
事實ハ不正ノ利得損害ノヨウナ事實ト云フノデス卽チ一方カラ云フト賠償ニナルノデス
(大尾崎)
不當ノ利益ト云フコトハ滅多ニハアリマスマイ
(委員長)
盜賊物ヲ貰タトカ云フノダネ
(南部)
不當ノ利益ト云フハ契約編ノ所ニアリマス
(大尾崎)
何ウ云フ所ニアリマスカ後見者ノ自分ノ財產ヲ少ク記入シタトキ損害ヲ掛ケルヨウナコトガアリマスカ
(松岡)
無茶苦茶ニ自分ガ作タラ不當ノ利得デス
(村田)
自分ニ權利モナイニ利スレバ不當ノ利得デス
(元尾崎)
不當ニ使テ仕舞テ幼年者ノ□ メニナル其抵當ダソレカラ其事實ヲ詳カニ書テ置ケト云フノダネ
(栗塚)
左樣デス不當ノ利得卽チ准契約トアル何人ヲ問ハズ正當ノ原由ナクシテ他人ノ財產ヲ得ル者ハデス
(松岡)
之ハ明修正ダ
(元尾崎)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第千二百二十八條朗讀ス
第千二百二十八條 若シ債權者ノ本住所カ記入ヲ爲ス役所ノ管轄地內ニ在ラサルトキハ記入シタル抵當ニ關シテ其債權者ニ爲スヘキ通知ノ爲メ記入ニ於テ其債權者ノ爲メ特別住所ノ選定ヲ爲スコトヲ要ス
其住所ハ右ニ同シキ場所ト公示トノ條件ヲ以テ何時ニテモ之ヲ變更スルコトヲ得〔第二千百四十八條第一號、第二千百五十二條〕
(修正案) 左ノ如ク改ム第一項債權者カ記入ヲ爲ス登記所ノ管轄地内ニ住所ヲ有セサルトキハ其抵當ニ關シテ自己ノ受ク可キ通知ノ爲メ假住所ヲ選定シ其記入ヲ求ムルコトヲ要ス第二項其假住所ハ右ノ條件ニ從ヒ何時ニテモ之ヲ變更スルコトヲ得
(松岡)
「自己ノ受ク可キ」ハドウ云フ必要ガアリマスカ
(栗塚)
自己ノハ要リマセンネ公賣スルトカ何トカ云フヨウナコトヲ通知シナケレバナランカラ假住所デス
(松岡)
現行モ質ニ取タ人ハ代人ガナケレバナランガ抵當ニハ無イ
(栗塚)
登記所カラ云フト便利デス
(松岡)
競賣ノ時分ヨリハ無イ
(村田)
千二百三十八條ノ場所ノ爲メニ云フノダネ
(元尾崎)
此間モ論ガアツタガ之ハ酷イネ
(松岡)
之ニナルト要用ハアリマスマイ
(元尾崎)
登記役所ガ管轄區内ト云フト麻布ノ區ニ居ルト麹町區ノモノハ質ニ取ルコトハ往カンネ
(松岡)
登記ノ管轄ガ狹クナルノダネ
(栗塚)
左樣デス
(元尾崎)
所在地ナラ宜シイカ、金貸ヲシテ居ル者ハ諸方ニ假住所ヲ置カナケレバナラン
(栗塚)
私ハ大阪ノ者デスガ東京デ抵當ニ取テ居ルガ麹町ノ某ヘ御知ラセ下サイト云フノデス
(元尾崎)
深川ノ者ガ麹町ニ抵當ヲ取ルソコニ假住所ヲ定メ又品川デ抵當ニ取ルト其所ニモ亦假住所ヲ定メルハ大變デス、本人ノ勝手ニ任カシテ宜シイ
(栗塚)
登記所カラノ都合デス、假住所ト云フト家デモ借リテ置カナケレバナラン乎、ソウデハナイト思フ
(松岡)
ドウ云フ必要用ガアリマスカ抵當ノコトニ付テ、ソウ登記所カラ郵便ヲ出ス用ガ大變アルモノデナイ
(北畠)
登記所ニ簡便ノ法デ人民ニハ不簡便ナ法ダ
(元尾崎)
ナンデソンナ持テ廻ハツタコトヲスルカ
(村田)
爭ヒガアルカラダネ
(栗塚)
優住所ヲ置クノハ不便ト云フノハ分リマセン双方ノ便利デシヨウ登記所カラ通知スベキ事柄ノアツタトキニデスネ
(松岡)
ドウ云フ事柄ガアルカ抵當ノ上ニ登記所カラ通知スルハ何ンナコトガアルカ
(栗塚)
公賣ニ掛ルトカ云フトキ假住所ハ其所ニ居ルモノト看做スノデスカラ
(松岡)
公賣ニナルトキハ無論充分猶與ガアリマス
(栗塚)
土地ヲ抵當ニ取タラ取主ハ土地ニ居ルモノト看做スハ便利デス
(松岡)
餘計ナコトダ
(北畠)
杞憂モ亦甚ダシイ
(南部)
私ハ其記入ノ終ルマデハ居テ貰ハンデハ困ル
(村田)
記入中ノコトデスネ今日往テ直グ出來レバダガ此仕組デハ三四日係リマスカラ其爲メダ
(元尾崎)
刪ル論ニ同意致シマス
(村田)
困リマス
(南部)
受付ハシタガ登記セント所ガ調ベタラ不都合ダカラ拒絕シナケレバナラント云フ場合ニ本人ヲ呼ブニ居ラント本人ノ所マデ郵便ヲ出サナケレバナランコトガ幾ラモアリマスカラ困リマス
(北畠)
居ラナカツタラドウスルカ
(栗塚)
居ランニハ向フノ損ニナルカラ卽チ債權者ノ損ニナルノデダカラシテ土地ニ假住所ヲ定メテ置ケト云フノデスソレヲヤラン人ハ管内ニ抵當ヲ取タ人ハ損ニナルト云フノデス
(南部)
ソレモ記入ノ終ルマデデス
(栗塚)
大阪ノ人ガ東京ヘ來テ栗塚ノ抵當ヲ取タラ大阪マデヤルト云フ論デスカ
(北畠)
左樣
(栗塚)
東京ニ假住所ヲ置カズト宜シイカ
(北畠)
左樣
(西)
假住所ヲ定メルハ六カ敷コトハナイ
(栗塚)
何所其所ヘ手紙ヲ出シテ下サレヨト云フノデス
(松岡)
假住所ノコトハナクトモ差支ナイ之ハ刪リマシヨウ
(元尾崎)
刪ル可シ
(南部)
登記所ノ爲メニハ便利デスネ
(元尾崎)
何便利ナモノデスカ
(栗塚)
假住所ト云フト假小屋デモ建ナケレバナランカト云フ御考ヘガアルカハ知レマセンガソレデハナイ只宿所ヲ屆ケル丈デアリマス
(淸岡)
假住所デ始末ガ出來ルト云フナラ宜シイガ矢張本人ノ所ヘ來ルノダカラネ其所デ出來ル法律ナラ宜シイガソウデナイカラ之ハ要ラヌ
(南部)
訴訟ノ假住所デス
(委員長)
通知ノ爲メト云フハ要用ダロウト思フ自分ガ要用ト思ハヌニハ構ハヌノダロウ
(松岡)
當人ガ否ト思テモサセルノデス
(委員長)
通知ノ必要ト思ハヌトキハ宜シイノデシヨウ
(元尾崎)
ソレナレバ書テ置クニハ及バヌ
(委員長)
孰レ土地カ家屋ガ在ルニ相違ナイ其所ニ人ガ居ラヌデハ必要ガナイカ支配人トカ何トカ云フ者ガ居ナクテハナランカラネ
(松岡)
權利者ガ取捨スルコトガ出來ルナラ宜シイガ向ウガ是非サセルト云フノデアリマスカラソレデ良ウナイノデ抵當ニ取タ人ガ今迄決メ必要ヲ聞タコトハアリマセン
(委員長)
裁判所ノ爲メニモ良シイ之ガアルト仕事モ速ク運ブガ若シ喚出シテモ出ント爲メニ待タナケレバナランカラネ
(大尾崎)
矢張本人ノ所ヘ通知シナケレバナランカラネ
(委員長)
場合ニ依レバ通知限リノモノモアルカラネ
(南部)
登記ヲ終ルマデトシテ宜シイ
(松岡)
終ルマデノコトハ調ハンデモ宜シイ
(委員長)
調ハンデモ終ルマデ居ルニハ相違ナイ
(南部)
ソウデアリマセン向ウカラ請求シテ來タトキモ時々ハ刎ルコトガアリマス其トキ居ラント困リマス
(委員長)
ソレハ書テ貰ハナケレバナランカラ居ルニハ相違ナイ登記シテ濟マスナラ置ク必要ハナイ
(元尾崎)
之ハ刪ル可シ
(松岡)
勿論
(淸岡)
必要ナケレバ刪テモ宜シイ
(委員長)
某マデ通知ト云フハ良シイ
(槇村)
假住所ヲシテ置クト假住所ヲ若シ呼出シタトキハ言テヤツテモ矢張本人ノ住所ヘ言テヤレバト云フノダネ處ガ假住所ノ方ナラ本住所ニ居ルカ又ハ外ノ處ニ居テカ分ルノデ宜ウ御座イマシヨウガ假住所デナイ眞住所ヘ言テヤツテモ居ラント云フコトガ御座イマシヨウ
(村田)
自分ノ管轄外ヘ及スト云フコトハナイコトデアリマスソレガ爲メニ之ガアルノデ無暗ニ刪ルコトハ出來マセン之ヲ刪テハ管轄ヲ設ケタ甲斐ガナイ
(淸岡)
假令バ東京デ假住所ヲオ前ニ頼ムト宜シイト言テ受合テ其者ガ抵當ヲ托スルト何ウスルカ
(松岡)
ソレハ又屆ケテクルダロウ
(栗塚)
通知カラ何日目ト云フコトガ生ズルノハ本住所ヘ言テヤランデモ假住所ヘ言テ何日ニドウ云フ權利義務ガ定マルト云フコトガ分ルノデ假住所ヘ言テヤツテ本住所ヘ行カナケレバナラント云フノデハ甲斐ガナイノデアリマス
(元尾崎)
多數デ定メテ貰ヒタイ
(大尾崎)
困タモノダネ
(委員長)
裁判所ノコトヲモ考ヘナイト人ヲ年中彼地是地ヘヤツテハ往カンカラネ
(松岡)
裁判所デハ無イ
(栗塚)
裁判所デアリマス管内ニ抵當ヲ取タラ卽チ管内ニ居ルト看做シテ係ルノデアリマス
(委員長)
便宜ニシテ置カント長崎ノ者ガ東京ノ者ノ質ヲ取ルコトモアル又東京ノ者ガ函館ノ者ノヲ取ルコトモアルカラネ
(栗塚)
此管内ニ居ルカ居ランカト云フトキ假住所デ處分スルガ宜シイ居ル人ト看做シテ係ルノデ私ハ何處其處ニ居リマスカラ御知ラセ下サイト云フノデス
(北畠)
登記所デ知テ居ルダロウ
(栗塚)
知テ居ラナケレバナランノデス
(委員長)
私ノ想像スルニハ全體治安裁判所デ總テ管内ノ人間モ物モ管理スルト云フガ本則デアルカラ物品ガ在レバ矢張權利義務ヲ持ツカラ其物品ノ爲メニ裁判所ハ直ニ通知シナケレバナランコトデハ治安裁判所ノ權限ト云フモノガ錯雜シテ來テ基礎ガ立タヌヨウニナルカラシテ管内ニ物ガ在レバ物ハ權利義務ヲ負フカラシテ權利義務ガ欲クバ支配スル人間ガ居ラナケレバナラント云フ原則カラ來ルト思フ若シ之ヲ幅ヲ廣ゲテ裁判所デ通知シテ貰ヒサヘスレバ良イト云ヘバ小サイ治安裁側所デ一二人ノ人間シカ居ランニ全國ニ通知シナケレバナランヨウナコトガアロウ
(松岡)
ソレハアリマセン假住所デモ一軒ニ居レト云フノデハアリマセン
(委員長)
ケレドモ他管ノ者ヲ喚出スコトガアロウ自分ノ管内ニ土地トカ物トカ云フ物ガ權利義務ガアレバソレニ他ノ者ヲ引張テ來テ物ヲ言ハセナケレバナランコトハナイ
(元尾崎)
土地ニ關係アル者ヲ呼出スノデアリマスカラ理窟ハ差支ナイ
(委員長)
土地ガ呼出スナラ格別ダガ裁判所ハ土地ヘ通知スレバ宜シイノデス
(松岡)
現今ノ抵當モ假住所ガ無クモ差支ナイ或ハ理窟ガアルカバ知レンガ法律ガ理窟ノ爲メニ無數ノ人ニ餘計ナ手數ヲ係ケル結果ガアロウ
(栗塚)
ソレハ却テ煩雜デナカロウト思ヒマス
(委員長)
民法ノ如キモノヲ作レバ利益バカリデハナイ一方ニハ必ラズ煩雜モアロウガ煩雜ナラ悉ク刪除スルト云テハ法律ハ立ラレナイ
(松岡)
利益アルノナレバ宜シイ之ハ不利益デアリマス
(委員長)
怪カラン決シテソウデハアリマセン
(松岡)
假住所ガ抵當ヲ取ル人ニ何ノ利益ガアリマスカ
(委員長)
假住所ヲ定メルカラ管轄内ニ喩入ルカラ其財產ハ保護セラルルダロウ
(松岡)
假住所ガアル爲メニ保護セラルル利ガアル筈ハアリマセン
(委員長)
土地ハ何ガ管轄シテ居ルカ登記所ガ管轄シテ居ル登記所ノ支配ヲ受ケルカラ假住所ガナケレバナラン權利義務ハ完全ノモノデアルヨウニシヨウト思ヘバ是非假住所ガナケレバナラン
(松岡)
何故管理カ
(委員長)
裁判所ハ他管ヲ管轄シテハ居ラン自分ノ管内ノ者デアルカラシテ財產モ自分デ物ヲ云ヘルヨウ支配シテ居ナケレバナラント云フカラ假住所ヲ屆ケテ置カナケレバナラント云フ譯ニナルノデソウセンニハ裁判ノ管轄ト云フモノハ少モ效ガナイ勝手次第ニナツテ仕舞財產ハ財產デ管理シ人ハ人デ管理シナケレバナラン
(松岡)
人民ノ利益ニハナリマセン
(委員長)
京橋區ニ家ヲ持テ之ヲ抵當ニスルト家ハソレ丈ケノ權利義務ヲ持テ居ルカラネ
(松岡)
家ハ家主債務者ガ義務ヲシテ居ルノデ質トハ遠フノデス
(委員長)
ソレハ知テ居ル債務者ガ抵當ハ義務ヲ負フテ居ルソコサニ義務ヲ負フタ者ヲ抵當ニサレテ債權者ガ取テ居ルカラ若シ之ガ抵當ト云フ物ノ權利ヲ執行スルニ至テハ向ウノ義務ヲ帶テ居ルモノノ取主ガ引受ケナケレバナラント云フコトニナル
(松岡)
ソレハ御座イマセン
(委員長)
抵當ガ流レルトカ何トカ云フト其權力ニ依テ義務ガ債權者ニ移テ來ル
(松岡)
債權者ニ移テハ來マセン
(委員長)
移テ來ル筈デス
(松岡)
公費シテ落札シタトキハ債權者ノ管理ハセン
(委員長)
ソレ丈ノ家ノ義務ガ若シ公賣處分ノ上デ的賣シタトカ抵當其爲メ要用ダロウ
(松岡)
抵當ハ金丈ノ抵當デスカラ
(委員長)
債權ヲ確カメル爲メノ抵當ダロウ卽チ權利ヲ確カメルノダロウ
(松岡)
權利ヲ確カメル爲メノ抵當ダカラ
(委員長)
引受ケレバ移ルモノデ全體其土地ニ在ル所ノモノヲ人カラ先取權マデ持テ押ヘヨウトスルハ何カ債權ガアルカラソレヲ確カメル爲メニ抵當ニ取テ居ル者デソレ丈ノ權利ヲ施行シヨウト思ヘバ登記所ノ管轄内ニ假住所ヲ定メ置イテ裁判所ノ命ヲ聽カセルヨウニシタイ何所ヘ行テ居ロウトモ治安裁判所カラ居ル所ニ通知スルト云テハ大變デス
(南部)
人民ノ不便ト云フ說モアルカラ起案者ニ言テヤツテハ何ウカ
(委員長)
私ハコンナ事ハ起案者モ困ルト思フ
(栗塚)
此等ハ便利デ登記所ノ便利ノミナラズデアリマス
(南部)
實際ノ便利ハ明カデアリマス
(元尾崎)
假住所ヲ置カナケレバナランコトハ不便デス
(栗塚)
大槪大キナ宿屋カ或ハ公證人カデシヨウ
(松岡)
必ラズ宿屋ヘ行テ人ニ依頼シナケレバナランコトハ困タモノデス
(元尾崎)
今日ノ書入レト云フノハ卽チ抵當デアリマス又遠方デモ其地面ヲ抵當ニ取テ居テモ決シテ差支ナイ
(委員長)
差支ナイ迄講究スレバ宜シイガ私ハドウモ之ガナイト不便ダロウト思フ
(松岡)
充分講究シテ居リマス
(委員長)
戶長役場ヘ行ク人モアルシ往カン人モアルノデ
(元尾崎)
今ノ抵當ト變リマセンカラネ
(栗塚)
恐ラクハ何所モコウナツテ居ルノデハナイカ
(村田)
何處モ斯ウデス
(西)
假住所ヲ其所ニ定メルハ六カ敷コトハナイ
(元尾崎)
是非シナケレバナラント拘束スルハ良シクナイ
(西)
人民ハ何レ程不便利ニ至ルカ決メ拘束デハナイ便利ハアルガ拘束ハ無イト思フソウシテ裁判所ノ方カラ見ルト餘程便利ノコトデアリマス
(栗塚)
私ガ北海道ノ地面ヲ抵當ニ取タ其トキ北海道ノ人ニ對テ云フニ某ノ所ニ御通知下サレバ私ノ所ヘ參リマスト云フスルト北海道ノ登記役所ノ人ハ何所ノ何番地ニ栗塚ガ居ルモノト看做スノデ詰リ栗塚ノ籍ハ東京ニアルカ越前ニアルカ知レンガ北海道ノ登記役所デハ北海道ニ居ルモノト看ルノデアリマス
(松岡)
假住所ガアツタラ栗塚ノ本人ハ何所ニ居ロウトモ若シ公賣スルヨウナ事ガアルカ間違ヒガアルト假住所ヘ往テ出來ルト云テ實際ハ何所ニ往テ居ルカラ出ラレナイ
(栗塚)
ソレハ出ナイトキハ斷リヲ出ストカ云フ私ガ佛蘭西ヘ往テ居タ時分日本ニハ何ウシテ置イタカ假住所ヲ定メテ居ル
(松岡)
假住所デハナイ代理人ガナケレバナラン
(栗塚)
ナケレバ私ハ權利ヲ失フカラ
(元尾崎)
置イテナイデモ構ハヌノデ財產ガ在テ必要トスルトキハ置カナケレバナラン
(北畠)
私ハ假住所ハ宿屋デシヨウト思テ居ル登記所カラ達スル栗塚ノ往先ハ分ランカラ其事ノ通知シニ來タ處ガ栗塚ヘ通知致マスカラ御猶與ヲ願ヒマストシテ通知スルネ、デ未ダ向ウカラ返辭ガ來ナイト權利ガ無クナルカ
(栗塚)
失フカモ知レマセン本住所ノアツタトキハ何ウカ相當ノ期間ヲ與フルノデス恰モ本住所ト同ジデス
(元尾崎)
若シ里數トカ何トカアツテ日間ガ係レバ里數デ極メテアルダロウ
(栗塚)
其所ニ居ラント假住所ニ居ランモ同ジ結果デアリマス
(元尾崎)
本住所ニ居ルベキニ居ランノダカラ前ノ期限ヲ外ス以上ハ仕方ガナイ
(栗塚)
本住所ニ居ルベキデスガ居所ガ多ヒカモ知レン
(南部)
註ニハ欄外記入ノコトニ關シテ記入ノ制限スルトカ云フ權利ニ關シテハ本住所ニ通知シ又只不動產ヲ賣ルトキトカ云フト通知丈ケニ依テ假住所ト云フコトガアリマス
(委員長)
私ハ假住所デ總テヤルト思フ
(元尾崎)
本合意デヤルカラ全ク財產ノ無イ人ナラ第三者ノ不幸デシヨウ
(委員長)
餘程實際ノ得失ニ關係スルカラ今多數デ決スルト刪除說ガ多ヒヨウダカラ必ラズ刪除ニナルカモ知レン實際ニ就テ便否ガ違フカラ又抵當ヲ取テ居ル人ト其他第三者置主ト云フ者ノ間ニ利害又裁判所ノ手數等モアリマスカラ之ハ治安裁判所一二ノ意見ヲ問テヤルトカ或ハ此連中ノ内カラ治安裁判所ヘ往テ調ベルトカシテハ如何
(栗塚)
治安裁判所管内ヲ定メルガ良シイカ否抵當ヲ登記スルモノノアツタトキ管内ニ假住所ヲ定メナケレバナランカ定メタラドウカ登記所ノ方ガ能ク分リマシヨウ
(松岡)
多數デハアルケレドモ區裁判所ノ意見ヲ聞イテ見ヨウ
(委員長)
松岡康毅一人ノ說ハ格別議會ノ說トハ見ナイ卽チ多數トハ見ナイ
(松岡)
ソレハ私ノ考ヘデアリマス
(渡)
之ハ受置ニシテ先ヘヤリマシヨウ
(委員長)
斯ウ云フコトヲ始終茲デ論ヲ立テ貰テハ困ル佛蘭西モコウナツテ居ル又今迄ノ登記ヲ調ベテ見テモ意味丈ハ一管内ニスルヨウナ仕掛ケダカラ私一己デハ之ハ良イト思フガ併シ起草者ノ意ニ反シテ刪ルト云フナレバ鄭重ニシテ刪タガ宜シイ
(元尾崎)
其位ヒニシテ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ治安裁判所ヘ問合ノ上再議ノコトニ決シ未定
第千二百二十九條朗讀ス
第千二百二十九條 保管人ハ上ニ指定シタル書類ヲ受取リタル時請求者ノ面前ニテ切取帳簿ヨリ切離シタル受取證ヲ其請求者ニ付與ス伹其受取證ニハ第千二百五十三條ノ適用ヲ保スル爲メ同日ノ受取番號ト共ニ其受取ノ日ヲ記載スヘキモノトス
(修正案) 「請求者ノ面前ニテ」ヲ「請求者ニ其面前ニテ」ト改メ「切取帳簿」ヲ「受取簿」ト改メ「其請求者ニ」ノ五字ヲ刪リ「記載スヘキモノトス」ヲ「記載ス可シ」ト改ム
(松岡)
之ハ登記ノ規則ノ方ヘ讀デ置キタイト思ヒマス如何ニモ効ノナイコトデ民法ニ規定スルヨウナモノデハナイソレカラ今ノ登記法モ亦多少動クコトモアロウシ詰リ如何ニモ細イコトデ登記ノ規則デ適當ノモノト思ヒマス
(村田)
ソウ見テハ惡イノダロウ手續バカリデハナイ
(元尾崎)
宜カロウ
(栗塚)
細カイヨウデ三箇ノ帳簿ノコトヲ云フノデス
(淸岡)
之ハ宜シイ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第千二百三十條朗讀ス
第千二百三十條 若シ請求者カ原債權者ノ相續人又ハ讓受人トシテ請求スルトキハ其原債權者ノミノ名ヲ以テ或ハ自己ト原債權者トノ連名ヲ以テ記入ヲ爲スコトヲ得
若シ債權者ノ代理人又ハ事務管理人ヨリ記入ヲ求ムルトキハ委任者ノ名及ヒ分限ト共ニ其代理人又ハ事務管理人ノ名及ヒ分限ヲ特別ニ記載スヘシ
(修正案) 第一項「若シ請求者カ」ノ六字ヲ刪リ「トシテ請求スルトキ」ノ八字ヲ刪リ「記入ヲ爲ス」ヲ「記入ヲ求ムル」ト改ム第二項左ノ如ク改ム若シ債權者ノ代理人又ハ事務管理人ヨリ記入ヲ求ムルトキハ其代理人又ハ事務管理人ノ名及ヒ分限ヲ本人ノ名及ヒ分限ト共ニ特別ニ記載スヘシ
(元尾崎)
原債權者丈デモ出來ルト云フノカ
(栗塚)
誰某ノ相續人デ御座ルト云テモ宜シイ
(元尾崎)
讓渡タ者ノ名丈デ記入ガ出來ルノデスネ
(栗塚)
左樣デス
(元尾崎)
分限ト云フノハ何ウ云フコトデスカ
(栗塚)
身分資格ト云フノデス債權者ト云フ分限カ或ハ相續人ト云フ分限カ或ハ代理人ト云フ分限カト云フノデアリマス
(元尾崎)
今迄云フ華族平民トカ云フ分限デハナイネ
(栗塚)
左樣デス
(松岡)
特別トハ何ウ云フコトカ
(村田)
登記ニ書テ置カナケレバナラント云フノダロウ
(栗塚)
左樣デス
(北畠)
特別ト云フ字ハ要ラヌ
(村田)
特ニト云フノデス
(北畠)
委ハシクト云フノデスネ
(栗塚)
左樣委ハシクト云フノデス明記ス可シデスネ之ハ記載スベシトシテハ如何
(槇村)
記載スベシデ論ハアルマイ
(元尾崎)
宜シイ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ末項「特別ニ」ヲ刪リ其他報吿委員ノ修正ニ決ス
第千二百三十一條朗讀ス
第千二百三十一條 若シ債務者カ死亡シタルトキハ記入ハ記入者ノ選擇ニ因リ其債務者ニ對シ又ハ相合シテ其總テノ相續人ニ對シ之ヲ爲スコトヲ得〔第二千百四十九條〕
負擔アル不動產カ相續ノ派分ニ因テ相續人中一人ノ配當部分ニ皈シタル場合ニ於テハ其相續人ノミニ對シ記入ヲ爲スコトヲ得
若シ第三者ノ債務ノ爲メニ抵當ヲ設定シタルトキハ設定者ニ對シテ記入ヲ爲スモノトス
(修正案) 第一項「若シ」ノ二字ヲ刪リ「記入者」ヲ「請求者」ト改ム第二項派分ニ因テ以下左ノ如ク改ム派分ニ因リ一人ノ相續人ニ歸シタル場合ニ於テハ其一人ノミニ對シ記入ヲ爲ス可シ第三項左ノ如ク改ム若シ第三者カ抵當ヲ供シタルトキハ其第三者ニ對シ記入ヲ爲スモノトス
(元尾崎)
「其債務者」ハ死亡人デスカ
(栗塚)
左樣デス
(南部)
債務者ノ死ダコトヲ知ラヌ場合モアロウ又負債者ノ相續人ノ名前モ知レヌコトモアリマシヨウソレハ種々アリマス相續人ノ名前モ知レヌトキハ仕方ガナイ
(松岡)
殘ラズ云ハヌデ居テモ死亡者ニ對シテ記入ガ出來ルダロウ
(南部)
ソウ云フ場合モアルカラ何方等デモ出來ルト云フノデス
(栗塚)
記入丈ノ帳簿ガアリマスノデス
(元尾崎)
三項ハ要ラヌ
(南部)
第三者ガ抵當ヲ出シタトキ第三者ニ對シテ記入スルゾヨト云フ意味デス
(元尾崎)
本人債務者ガ死亡シタトキダロウ
(南部)
ソレハ違フ
(栗塚)
三項ハ全ク別デス
(南部)
死ダ人ト別ノ人デス相續人ダカラネソコカラ來タノデアリマス
(松岡)
債務者ガ死ダトキハ何ウ云フ名デ記入ガ出來ルカ
(栗塚)
三項ハ縁ノ無イ人ヲ指シタノデ縁ノ無イ人カラ考ヘヲ立テ往クト分ルノデス
(元尾崎)
相續人ハ縁ガアルカラ相續スルノダロウ死亡シタトキモ却テ三番目ノ死亡ニ關係ノ無イ別ノコトヲ云フト分ランネ
(委員長)
死ダ者ト見ハセンカ
(栗塚)
ソレハ見ハセンデシヨウ
(元尾崎)
逆樣ニシタラ良シイ初メニ之ヲ出シテ後ヘ債務者ガ死亡シタトキハトヤルト良シイ
(南部)
若シト云フ字ヲ刪タラ良シイデシヨウ
(元尾崎)
第三者ガト冒頭ニ出セバ良シイ
(栗塚)
ソレデモ宜シイ
(槇村)
ソレデモ分ル
(南部)
第三者ガ抵當ヲ供シタトキ債務者ガ死ダト見ヘル
(元尾崎)
ソンナニ見惡ク見ナクテモ宜シイ
(委員長)
若シガアルカラ尙ホソウ思フノダネ
(栗塚)
若シハ刪リマシヨウ
(南部)
若シ丈ヲ刪リマシタガ如何
(元尾崎)
債權者ノ選擇ニ因リトシテモ宜シイ
(栗塚)
ソレデモ宜シイ記入ヲ求メル債權者トヤリマシヨウカ
(委員長)
債務者デ良シイダロウ
(栗塚)
死亡シタルトキハ債權者ニ從フニ因リ債權者トヤツテモ同ジデアリマス
(委員長)
債權者トヤルカ
(北畠)
其方ガ宜シイ
(委員長)
先キヘヤリマシヨウ
本條ハ第一項「記入ハ記入者ノ」ヲ「記入ハ債權者」トシ末項「若シ」ヲ刪リ其他報吿委員ノ修正ニ決ス
第千二百三十二條朗讀ス
第千二百三十二條 保管人カ記入帳簿ニ明細書ノ包有事項ヲ記載シタルトキハ其各明細書ニ記入ノ在ル帳簿ノ冊數及ヒ葉數ト請取帳簿ノ順序ノ番號トヲ指示シテ記入ノ所爲、場所及ヒ日附ヲ證明シタル上、二箇ノ明細書ノ各葉ニ同一ノ割印ヲ押捺ス
明細書ノ一通ハ抵當ノ證明書ト共ニ之ヲ請求者ニ之ヲ還付シ他ノ一通ハ保管人自己ノ擔保ノ爲メ之ヲ保存ス
此ノ如クニ檢書割印シ及ヒ每年併合シタル明細書ハ記入ノ正本ヲ成シ又一箇ノ帳簿ニ其記入ノ見出ノミヲ記スヘキコトハ規則ヲ以テ之ヲ定ムルコトヲ得
(修正案) 第一項「記入帳簿」ヲ「記入簿」ト改メ「包有事項」ヲ「箇條」ト改メ「帳簿ノ冊數」ヲ「簿冊」ト改メ「請取帳簿」ヲ「受取簿」ト改メ「二箇」ヲ「二通」ト改ム第二項「請求者ニ」ノ下「之ヲ」ノ二字ヲ刪ル第三項左ノ如ク改ム右保存シタル明細書ヲ每年併合シテ記入ノ正本ト成スコト及ヒ其記入ノ見出簿ヲ作ルコトハ規則ヲ以テ之ヲ定ム
(元尾崎)
自己ノ擔保ト云フハ如何
(栗塚)
自分デ間違ツタ斯ウ云フコトダト云フノデス登記係リガ保存トシテモ宜シイ
(元尾崎)
其方ガ良シイ
(大尾崎)
其レガ良シイ
(元尾崎)
登記記入ノ方法ハ別ノ規則ヲ以テ之ヲ定ムデ宜シイ
(栗塚)
併シ右保存爲シタル明細書ハ記入ノ正本ト爲スコト丈ハ云テ置キタイ
(元尾崎)
右保存シタル明細書ハ保存ノ方法ハ別ノ規則ヲ以テ之ヲ定ムカ
(渡)
ソレデモ宜シイ
(栗塚)
此所マデ我慢ナスツタノダカラ何ウカ御措キナスツテ
(北畠)
宜カロウ
(松岡)
登記規則ヲ以テ定メル抔ハ要ラヌネ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
(委員長)
ヤリマシヨウ
第千二百三十三條朗讀ス
第千二百三十三條 第三者ニ於テ記入ノ不完全ナルカ爲メ其知ルコトニ利益ヲ有セシ抵當ノ或ル要點ヲ知リ得サリシヨリ生シタル損害ヲ證明スルトキハ其第三者ノ請求ニ因リ明細書ニ於ケル前規定ノ記載ニ遺脫、不十分又ハ不精確ノ廉アルカ爲メ記入ノ無効ヲ宣吿スルコトヲ得
(修正案) 左ノ如ク改ム前ニ規定セル明細書ノ箇條ノ遣脫、不足又ハ不精確ニ因リ不完全ナル記入ノ爲メ第三者カ抵當ノ或ル要點ヲ知リ得サリシヨリ生シタル損害ヲ證明スルトキハ其請求ニ因リ記入ノ無効ヲ宣吿スルコトヲ得
(淸岡)
請求ニ因ル明細カ
(南部)
請求ニ因リ記入ノ無効ヲ宣吿スルコトヲ得デス
(北畠)
ハツキリシテ來マシタ
(淸岡)
之ハ宜シイ
(槇村)
之ハ宜シイ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第千二百三十四條朗讀ス
第千二百三十四條 法律上、合意上又ハ遺囑上ノ抵當ノ記入ハ三十年其効力ヲ保存スルノミニシテ此期間后ニ於テハ債權ノ時効カ中斷セラレ又ハ停止セラレタルトキト雖モ其記入ノ効力ヲ失フ
右ノ期間ハ無能力者ニ對シテ進行ス伹其代人ニ對スル求償ヲ妨ケス
然レトモ三十年ノ期間滿了前ニ記入ヲ更新シテ前記入ノ日附ヲ精確ニ記載シタルトキハ其記入ハ抵當ニ前記入ト同一ノ日附ヲ以テ其順位ヲ保存セシム
記入ノ効力ヲ失ヒシ後ノ更新ハ通常ノ記入ニ等シク其更新ノ日附ニ於テノミ効力ヲ生ス〔佛民第二千百五十四條、伊民第二千一條〕
(修正案) 第一項「三十年ヨリ於テハ」迄ヲ左ノ如ク改ム「三十年間其効力ヲ有ス三十年後ハ」第二項「右ノ期間」ヲ「右抵當ノ時効」ト改メ「對シテ進行ス」ヲ「對シ停止セス」ト改ム第三項更新以下ヲ左ノ如ク改ム更新シ舊記入ノ日附ヲ精確ニ記載シタルトキハ舊記入ト同一ノ日附ニ於ケル順位ヲ抵當ニ保存セシム第四項「通常ノ」ヲ「新」ト改ム
(渡)
滿了前ニ記入ヲ更新シカ
(栗塚)
左樣デス
(淸岡)
前記入ト同一ノ日付ニ於ケル順位ヲ抵當ニ保存セシムト云フハ如何
(栗塚)
先ニ書換ヘタニモセヨ昔シノ抵當ニナツタ記入シタ日付ノ順デ位ヒヲ定メルト云フノデス
(淸岡)
三十年トカ云フガ更新シテ五十年トナツテ居ルノハ
(栗塚)
ソレハ往カンノデス
(渡)
之ハ宜シイ
(槇村)
之ハ宜シイ
(委員長)
宜ケレバ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第千二百三十五條朗讀ス
第千二百三十五條 三十年ノ期間內ニ於ケル記入ノ更新ハ原記入后ニ起リタル債務者ノ破產、無資力又ハ死亡ニ拘ハラス之ヲ許ス然レトモ右ノ事故ハ第千二百廿條ニ記載シタル如ク旣ニ効力ヲ失ヒタル記入ノ更新ヲ妨ク
(修正案) 「原記入」ヲ「舊記入」ト改メ「許ス」ヲ「爲スコトヲ得」ト改メ然レトモ以下刪除ス
(渡)
然レドモ以下ハ刪除デスカ
(栗塚)
處ガ起案者ニ申タ處ガ千二百二十條ニ記載シタルコトハ刪テ異存ハナイガ然レドモ以下ハ置イテ呉ンカ何ゼナレバ事柄ガ違フカラト云フ話デスカ
(渡)
要リマスカネ
(栗塚)
已ニ効力ヲ失ツテ仕舞タモノダカラ仕方ガナイ
(委員長)
「ボアソナード」ガ云フノカ
(栗塚)
「ボアソナード」ハアレヲ云フノデ畢竟記入ノ更新ハ死亡ニ拘ハラズ出來ルト云フガ出來ヌモノガアル効力ヲ失ツテ居ルノダト記入ガ出來ヌト併シ此方カラ云フノハ効力ヲ失タ記入デハ生カシヨウガ無イデハナイカト云タ處ガ原文デハ然レドモ右ノ事故ハ更新ヲ妨ゲト云フト其効力ヲ失フトアリマスカラ未ダ宜シイガ日本デハ効力ヲ失フタリト先ヘ出シテ仕舞フ國言葉デハ工合ガ惡イノデス
(渡)
成程横文字デハ其氣味ガアリマス日本デハ逆樣ニ書イテハ實ニ分ラン
(南部)
刪除シテモ宜カロウ
(委員長)
然レドモ、以下ハ刪ルカ
(渡)
然レドモ、以下ハ殘シテ置カナケレバナラン要用ハ御座イマセン刪除シテ宜シイ
(委員長)
然レドモ以下刪除シマシヨウ、先ヘヤリマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第千二百三十六條朗讀ス
第千二百三十六條 保管人ハ前記入ニ關スル正本二通ノ請求書ヲ受取リタル上ニテ記入ノ更新ヲ爲シ其正本一通ニハ割印ヲ附シ及ヒ其更新ヲ爲シタル旨竝ニ其日附ヲ記シテ之ヲ請求者ニ還付ス
(修正案) 「其更新」迄ヲ左ノ如ク改ム登記官吏ハ舊記入更新ノ請求書ノ正本二通ヲ受取リタル上ニテ其更新ヲ爲シ其一通ニハ割印ヲ押シ及ヒ更新
(元尾崎)
「上ニテ其更新ヲ爲ス」カ
(栗塚)
「更新ヲ爲シ其一通ニハ割印ヲ押シ及ヒ」デアリマス割印ト云フノハ「タンブル」デアリマス
(渡)
「タンブル」ヲ割印ト譯シタノデスカ
(栗塚)
左樣デス
(渡)
宜シイ
(槇村)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第千二百三十七條朗讀ス
第千二百三十七條 記入ノ費用ハ債權ヲ有償名義ニテ得取シ且反對ノ合意アラサルトキハ債務者及ヒ債權者各其半額ヲ負擔ス
更新ノ費用ハ債權者獨リ之ヲ負擔ス〔第二千百五十五條〕
(修正案) 第一項左ノ如ク改ム記入ノ費用ハ債權ヲ有償名義ニテ取得シタルトキハ債務者及ヒ債權者各其半額ヲ負擔ス但反對ノ約束アルトキハ此限ニ在ラス第二項「獨リ」ヲ「ノミ」ト改ム
(委員長)
反對ノ約束ハ債權者ガ出スヨリハ解セン
(栗塚)
之ハ記入ノ費用ハ二人デ受持ゾヨ併シナガラ債權者丈持トカ債務者丈持トカ云フノデス
(委員長)
更新ノ費用ハ債權者一人負擔スルト云フコトガ定マツテ居ルトキ債權者ガヤルトキダネ其意味ガ見ヘヌネ
(栗塚)
其意味ハ何ウカ知ラン約束デドウカスルノデアリマスカラ半額負擔スルト云フカ又ハ四分一トスルカデス
(南部)
末項モソウデス
(委員長)
「ボアソナード」ノ元トノ案ニハ更新ノ費用ハ債權者ニ是非持タセルノダロウガ修正ハソウデハナカロウ
(栗塚)
二項モ同ジデアリマス反對ノ合意アラザルトキハト云フノデアリマス
(村田)
反對ノ場合丈刪テモ宜シイ之ヲ刪ラント反對ノ合意ハ出來ヌヨウニナル
(南部)
要ラヌノデスネ
(松岡)
合意カラ何デモ出來ルカラ之ハナイ方ガ良シイ
(尾崎)
今ハ大槪債務者カラ出スネ
(村田)
佛蘭西モソウダロウ
(栗塚)
半分ヅツトナツタノデアリマス
(村田)
半分ヅツ出スガ宜イカモ知レン
(南部)
更新ノ費用ハ債權者一人之ヲ負擔スト云フノハ要ラヌネ
(栗塚)
更新ニナルト債權者一人ノ利益ト云フノダカラ
(南部)
延期シテ貰ヘバ債務者ガ一人ノ利益デス
(栗塚)
報吿委員ニ於テハ更新ノ費用丈ハ債權者ニヤラシタイト云フノデス
(南部)
半分々々ハ公平ノ說デス併シ更新ハソウハ往カヌ
(元尾崎)
之モ半分ヅツガ宜シイ
(松岡)
原案通リデ宜シイ
(北畠)
原案通リデ宜シイ
(村田)
但丈ヲ刪リマシヨウ
(大尾崎)
互ニ半額トシテ宜シイ
(淸岡)
喧マシク云ヘバ更新ノ費用ハ知ランゾヨト云タラ宜シイ
(元尾崎)
合意ニ任カセルナラ調ハンガ宜シイ
(松岡)
此儘デ往カウ
(委員長)
但書ヲ刪テ宜シイ
(栗塚)
宜シイ
(西)
前ノ「反對」モ刪ルカ
(栗塚)
左樣デス
(松岡)
債權者ノミト直タカ
(栗塚)
左樣デス
(元尾崎)
註ニハ妙ナコトガアル更新ノ費用ハ孰レノ場合ヲ問ハズ債務者ノ負擔トアル
(栗塚)
債權者トアルベキ字ノ間違デアリマス
(元尾崎)
卽席料理デ困ルネ
(栗塚)
債權者デアリマス
(槇村)
往キマシヨウ
本條ハ但書以下刪除シ其他報吿委員ノ修正ニ決ス
第千二百三十八條朗讀ス
第千二百丗八條 記入ニ關スル爭ハ抵當財產所在地ノ裁判所ニ之ヲ訴ヘ又債權者ニ對スル召喚又ハ吿知ハ記入ニ於テ選擇シタル住所ニ之ヲ爲ス〔第二千百五十六條、第二千百五十九條〕
(修正案) 「於テ」ヲ「付キ」ト改メ住所ノ上ニ「假」ノ一字ヲ挿入ス
(委員長)
今ガタ論ジタ彼ノ所ト關連シテ居ルダネ
(栗塚)
左樣デス
(委員長)
アノ方ト一緒ニシヨウ
(松岡)
區裁判所カネ
(栗塚)
何カ知レマセン佛蘭西デハ始審裁判所デアリマス
(松岡)
構成法ニ明文ハ無イダロウ
(栗塚)
金額ニ依リマスヨリ外ハナイ
(松岡)
區裁判所デ宜サソウナモノデス
(栗塚)
登記帳簿ヲ審査スル訴訟デアリマスカラソウデ御座イマシヨウ
(槇村)
宜シイ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第千二百三十九條朗讀ス
第二款 記入ノ抹殺、減少及ヒ改正
第千二百丗九條 左ノ場合ニ於テハ記入ヲ抹殺ス
第一 記入ノ關係スル債權カ無効タリ若クハ取消スヘキモノタルトキ又ハ其債權カ全部消滅シタルトキ
第二 記入ヲ爲シタル抵當カ有効ニ設定セラレス及ヒ法律ニ從テ成立セサルトキ〔第二千百六十條〕
第三 記入其モノカ第千二百三十三條ニ依リ取消スヘキモノナルトキ
右ハ總テ第千二百四十五條ニ記載シタル如ク或ル不動產ニ對スル記入ノ抹殺ヲ妨ケス
(修正案) 第二款「改正」ヲ「正誤」ト改ム第一項左ノ如ク改ム記入ノ抹殺ハ左ノ場合ニ於テ之ヲ爲ス第一全部ノ上「債權カ」ノ三字ヲ刪リ「消滅」ノ上ニ「ノ」ノ「字ヲ挿入ス第三「其モノ」ノ三字ヲ刪ル末項「總テ」ノ二字ヲ刪リ「對スル」ヲ「付テノ」ト改ム
(栗塚)
之ハ「改正」トアルハ反譯ノ誤リデ「正誤」トシマシタ「記入ノ抹殺ハ左ノ場合ニ於テ之ヲ爲ス」トヤリマシタ
(渡)
之デ宜シイ
(松岡)
宜シイ
(元尾崎)
原案ガ宜シイ
(北畠)
修正ノ方ガ宜シイ
(槇村)
第二ノ修正ガ宜シイ「及ヒ」ト云フ字ハ「又ハ」トナルカ
(栗塚)
左樣デス之ハ「又ハ」反譯ノ間違イデ卽チ法律ニ從テ成立セザルトキハト云フガ宜シイノデス
(松岡)
左樣
(淸岡)
設定卽チ成立カ
(栗塚)
第二記入其モノハ無クナルノデ「不動產ニ付テノ」トナルノデアリマス
(槇村)
宜シイ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第千二百四十條朗讀ス
第千二百四十條 記入ノ抹殺ハ債務者又ハ其承權人ノ請求ニ因リ裁判上ニテ之ヲ宣吿スルコトヲ要ス伹下ニ規定シタル方式ニ於テ債權者ヨリ之ヲ許シタルトキハ此限ニ在ラス〔第二千百五十七條〕
(修正案) 「承權人」ヲ「承接人」ト改メ「裁判上ニテ」ノ五字ヲ刪ル
(栗塚)
「裁判上」ト云フ字ヲ刪タノト「承權人」ヲ「承接人」ト再調査デ直タノデアリマス之ハ三島君ノ云フニ「接」ノ字ガ良シイソウデス
(松岡)
實ハ承繼ト云フハ初メオカシカツタノデス
(槇村)
此間論ガ出タガ何ウ定マツタカ
(北畠)
又再調査デスルト云フコトニナツタ此間「接」ト云フノデ甘ンジテ居リハセンカ
(槇村)
先ヅ「接」デ置イタノデス
(元尾崎)
「承繼人」デ宜シイノダネ「承接」ハオカシイ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス