旧民法・法例（明治23年）

法律取調委員会 民法草案議事筆記 第78回

参考原資料

備考

  • 未校正のテキストデータです．
民法草按財產擔保篇第七十八回議事筆記
自第千百四十二條至第千百六十條
[画像]
（委員長）
ヤリマシヨウ
○第千百四十二條朗讀ス
第一節　動產及ヒ不動產ニ係ル一般先取特權
第一款　一般先取特權ノ原由
第千百四十二條　動產及ヒ不動產ニ係ル先取特權ノ附キタル債權ハ下ニ定メタル制限及ヒ條件ヲ帶ヒタル左ノ諸件トス
第一　訴訟費用
第二　葬式費用
第三　最後ノ疾病ノ費用
第四　雇人ノ給料
第五　飮食品ノ供給〔第二千百一條、第二千百四條〕
（修正案）　第一項「債權ハ」以下ヲ左ノ如ク改ム債權ハ左ノ如シ但下ニ定メタル制限及ヒ條件ニ從フ
（栗塚）
「一般ノ先取特權」ト致シマス「債權ハ左ノ如シ但下ニ定メタル制限及ヒ條件ニ從フ」ト致シマス
（委員長）
「附キタル」ト云フ字ハ何ト云フ字カ
（栗塚）
「プリビリジエー」ト云フ形容詞デ御座イマス
（村田）
先取特權ヲ以テ居ル債權者ト云フノダ
（松岡）
「附キタル」ト云フノハ前ニハ原由ノ附着シタルト云フタ
（栗塚）
「先取特權アル」ト云フノデ御座イマス
（元尾崎）
第五ハ英文ハ意味ガ深イ樣ニ見ヘル活キテ居ルニ必要ナル品物ト云フ樣ナ事ダ「飮食品」ト云フト葡萄酒デモ何デモ入ル樣ニナルガソンナモノハ入テ居ナイ、米トカ味噌醤油トカ何トカ云フモノデナケレバ贅澤物ハ入レラレナイ
（栗塚）
佛文ハ飮食品デ御座イマス
（村田）
英文デモ飮食品ダ
（元尾崎）
コウ書イテアルト活キテ居ルニ必要ナルト云フノダ
（村田）
飮食品デハ薪ハ入ラヌカ米ガアツテモ薪ガナケレバ食ヘナイ
（南部）
「日用品」トスルガ良イカ知レヌ
（委員長）
「ダンレー」ガ日用品ダカラ違ウ
（栗塚）
衣服ナドモ入ルカト云フト入ラヌ
（松岡）
薪炭ハ
（栗塚）
入リマセウ
（南部）
佛蘭西ノハ「ダンレー」カ
（栗塚）
ソウデス
（元尾崎）
「生活ニ必要ナル飮食品」ガ宜シイ
（槇村）
ソレガ良カロウ
（南部）
加ヘレバ千百四十七條ヘ加ヘルノデス
（元尾崎）
其處ヘ入レテモ宜シイ
（西）
「飮食品」トバカリデハ高ガ知レヌ、食物ナレバトシ丈ケアツテモ良イト云フ事ニナル
（栗塚）
日本ナラ米味噌醤油ト云フ所デス
（槇村）
ソウスルト矢張リ薪炭ハ入ラヌ
（元尾崎）
入ラヌカラ障子デモ戶デモ毀ハシテ炊クガ宜シイ
（村田）
薪炭ガアルト、寒中裸體デ居ル事ハ出來ナイカラ衣服ガ入ル樣ニナル
（松岡）
衣服ハ入ラヌニシテモ飮食品ガ無ケレバ活キテ居ラレヌトスルト生物デ食ハナケレバナラヌカラ理窟ガ合ハヌ
（栗塚）
大山ヘ往ツタ處ガ一人ノ髪ノ毛ノ長イ人ガ生米ヲカジツテ居リマシタ
（村田）
空氣ヲ吸テ活キテ居ル者ガアル
（松岡）
後ノ箇條ヘ往テ決シテハ如何デス
（村田）
「日用品」ガ良カロウ
（大尾崎）
生活ニ必要ナル飮食品ガ宜シイ
（南部）
先キヘ入レルガ宜シイ
（槇村）
先キヘ往キマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ說ニ決シ「飮食品」ノ三字未定
[画像]
○第千百四十三條朗讀ス
第一則　訴訟費用ノ先取特權
第千百四十三條　訴訟費用ト稱スル費用ノ先取特權ハ或ハ債務者ノ財產ヲ保存ヲ保スル爲メ或ハ其財產ヲ淸算シ之ヲ換價シ及ヒ有權者間ニ其代價ヲ配當スル爲メ金圓ノ立替ニ於テ正當ニ爲シタル裁判上若クハ裁判外ノ總テノ所爲ニ付キ給料若クハ謝金ヲ受ク可キ債權者ニ屬ス〔第二千百一條第一號〕
若シ或ハ費用ハ財產ノ爲メニノミ爲サレ又ハ總テノ債權者ニ有益ナラサリシトキハ先取特權ハ特別ノモノニシテ其利益ニ於テ費用ノ爲サレタル債權者ニ對スルニ非サレハ此レヲ對抗スル事ヲ得ス
（修正案）　左ノ如ク改ム訴訟費用ノ先取特權ハ或ハ債務者ノ財產ヲ保存スル爲メ或ハ其財產ヲ淸算シ、之ヲ換價シ及ヒ有權者間ニ其代價ヲ配當スル爲メ各債權者ノ共同利益ニ於テ正當ニ爲シタル裁判上若クハ裁判外ノ總テノ行爲ニ付キ金圓ノ立替ヲ爲シ又ハ給料若クハ謝金ヲ受ク可キ債權者ニ屬ス若シ或ル財產ノ爲メノミニ爲シ總テノ債權者ニ有益ナラサリシ費用ニ付テハ先取特權ハ特別ノモノニシテ其費用ヲ生セシメタル債權者ニ對スルニ非サレハ之ヲ對抗スル事ヲ得ス
（栗塚）
「訴訟費用ノ先取特權ハ或ハ債務者ノ財產ヲ保存スル爲メ其財產ヲ淸算シ之ヲ換價シ及ヒ有權者間ニ其代價ヲ配當スル爲メ各債權者ノ共同利益ニ於テ正當ニ爲シタル裁判上若シクハ裁判外ノ總テノ合意ニ付キ金圓ノ立替ヲ爲シ又ハ給料若クハ謝金ヲ受クヘキ債權者ニ屬ス」ト致シマス
（村田）
英文ニハ二タ事ニナツテ居ル
（松岡）
或ル財產ノ爲メノミニ爲シテモ其レガ總體ノ利益ニナレバ宜シイノダカラ財產ハ包括デモ一箇デモ構ハヌガ外ノ人ニ關係ヲ持タヌ
（元尾崎）
「ニシテ」ト入レルガ宜シイ
（村田）
其債權者ノ爲メニ利益ヲ生ジタルノデナケレバイケナイトアル
（栗塚）
恰度コウ云フ事ニナリマシヨウ、債權者ト云フノハ卽チ或ル財產ノ爲メニ働イタ人ヲ云フノデシヨウ
（元尾崎）
働カセラレタ方ダ
（松岡）
誰ガ働イタカ
（栗塚）
外ノ人ガ働イタ、兎モ角モ私ノ爲メニ入費ガ掛レバ私ニ係テ云ヘル
（松岡）
六ケ敷イ文章ダト思フ
（村田）
「生セシメタル」ト云フトドウ云フモノダロウ
（大尾崎）
頼ンダ人ダ
（村田）
其人ノ爲メニシタノデナケレバト云フノダ
（淸岡）
前項ノ金圓ノ立替ヲ下ノ方ニ云フテ分リマシヨウカ
（栗塚）
一體コウ云フノデス、配當スル爲メニ各債權者ノ共同利益ニ於テト云フノハ初メノ翻譯ガ間違ツテ居ル
（淸岡）
淸算或ハ換價配當ニ付テノ裁判ト聞ヘハセヌカ
（南部）
ソレデ宜シイ
（元尾崎）
修正ノ通リデ宜シイ
（淸岡）
淸算配當ハ總テ裁判ト裁判外トニ掛ルカ
（栗塚）
此二ツニ出デヌノデス
（大尾崎）
金圓ノ立替ハ云ハヌデモ良イ事ダ
（委員長）
利益ニナラヌトキハシナイノダ
（栗塚）
利益ニナルナラヌハナイ、其人ノ爲メデ御座イマス
（委員長）
「利益ニ於テ」ト云フ事ハ有ル方ガ良イ樣ニ思フ
（栗塚）
利害ノ關係アルト云フ事デ御座イマス
（委員長）
其人ノ爲メト思テヤツタ事デナケレバイケナイ、唯自分ノ思ハク丈ケデ自分ノ爲メニ計ツテヤルノデハイケナイ、其人ノ爲メニナルト思ツテヤツタ費用ハ債權者ニ對スル事ガ出來ルト云フノダカラ一方ノ人ニ利益ヲ與ヘテヤロウト思テヤツタ人デナケレバイケナイ
（栗塚）
幼年者ノ財產ヲ支配スル後見人ガ幼年者ノ支配ノ爲メニ費用ガ掛ツタ
（委員長）
幼年者ノ爲メト云ヘバ利益ニ於テト云フ事ニナルノダ
（南部）
ソウスルト費用ヲ生ゼシメタルト云フ事ハ出來マセン
（委員長）
自分バカリデナク他人モ御相伴ヲシナケレバナラヌト云フ事ガ出來スルト云フガ如キハイケナイ、其人ノ爲メニシタデナケレバイケナイト云フ意味ハ見ヘナイ樣ニナリハセヌカ
（南部）
誰ガ生ゼシメタカト云フト一方ノ一人ガアツテ費用ヲ生ゼシメタ
（栗塚）
代言人ガ代書人ノ資格デ、債權者ガ松岡サン村田サン南部サント三人アル、南部サンハ登記ガ濟ンデ居ラヌカラ私ガ登記役所ヘ詰テ登記ヲシテ貰ウ、南部サンニ對シテデナケレバイケナイ
（委員長）
南部サンガ自身デ自身ノ利益ニナツタノハ良イケレドモ自身ノ利益デハナイ、栗塚ガ死ンデモ自分ハ出來ル話シダ、其レヲ栗塚ノ自分ノ勝手デシテ來タノハ拂フ事ハ出來ナイ
（栗塚）
ソウスルト費用ヲ生ゼシメタル債權者デハナクナル
（委員長）
生ゼシメタル債權者ハ南部サンニ違ヒナイ、ガ南部サンノ爲メニ思テシタ事ト、一方ハ私ノ利益デナイト云フ樣ニナル
（栗塚）
代言人ハ曰ク私ハ何某ノ利益ノ爲メニ十五枚ニシテヤツタ何某ハ其レハ十枚デ濟ンダト云フ爭ガ澤山アリマス代言人ハ曰ク之ハ費用ヲ生ゼシメタ債權者ダ債權者ハ曰ク私ハ委任ヲシナカツタト云フ爭ガ始終生ジマスカラ「利益ニ於テ」ト云フ事ヲ書イテモ爭ガ出來マス
（委員長）
利益ニ於テ費用ヲ生ゼシメタト云フト南部サンガ自分ノ利益ニ於テ費用ヲ生ゼシメタノダカラ
（栗塚）
何レ指定ハシタノダ
（委員長）
入ラザル世話ヲシタ故ニ是レ丈ケ負擔シナケレバナラヌ南部サンノ利益ノ爲メデナイ入ラザル手數ヲシタ爲メニ拂ハナケレバナラヌト云フ事ニナリハセヌカ「利益ノ爲メ」ト云フ字ガアレバ私ノ利益ノ爲メト云ハナケレバ生ゼシメタトハ云ヘヌ
（南部）
ドウシテモソウハ書ケマセン、總テノ債權者ニ有益ナラザリシト云フ方ニ入ツテ仕舞ヒマス
（大尾崎）
入ラヌ世話ヲシタノダカラ誰ニ對シテモ取レヌ
（栗塚）
茲デ申シマス利益ハ特別ノモノニシテ或ル債權者ノ關係ニ於テ其費用ガ爲サレタル債權者ニ非ザレバト云フ位ノ利益デ其人ノ得ニナル損ニナルト云フ利益デハアリマセン
（委員長）
其人ノ爲メニ一方ノ人ガ拂フ故ニ債務者ノ爲メニ拂テ其中ノ一人ガ手落チガアルカラ是レ丈ケ注意シタト云フ、一方ノ人ハ私ノ爲メニシタノナレバ宜シイガ私ノ利益ニナラズシテ共同債務者ノ爲メニシタノダカラ私ハ拂ハヌト云フ事ハ云ヘナイ
（栗塚）
其レハ云ヘマス、先取特權ヲ持テ居ル人ハ其レハ御前バカリデナイ
（委員長）
私ガ翻譯スレバ「自己ノ利益ノ爲メニ費用ヲ生セシメタル債權者ノ爲メニ非サレハ」ト書ケバ原文ノ意ヲ悉スダロウト思フ
（淸岡）
利益ニ於テト云フ事モ分ラヌ事ハナイ
（南部）
其ト云フノハ下ヲ受ケナケレバナラヌカラ分ラヌ
（委員長）
害ノアルモノデハイケナイ、利害ノアルモノデナケレバイケヌト云フ意味ガアリハセヌカ
（南部）
其意味ハ分リマス
（栗塚）
平生ノ代理契約其レカラ事務管理デ參リマスカラ差支アリマセン
（委員長）
良ケレバ格別論ヲスル程ノ事ハナイ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
[画像]
○第千百四十四條朗讀ス
第二則　葬式費用ノ先取特權
第千百四十四條　債務者ノ身分ニ應シ其慣習ニ從ヒ其欽葬土葬又ハ火葬ノ爲メ爲シタル俗事上及ヒ宗敎上ノ費用ハ先取特權アリ〔第二千百一條第二號〕
先取特權ハ亦債務者ノ擔當タル其同居ノ家族ノ葬式ノ爲メ爲シタル費用ニ之ヲ適用ス
其先取特權ハ葬式ニ連續シタル出費ニ及ハス伹其出費カ慣習上ノモノタルトキモ亦同シ
（修正案）　第一項左ノ如ク改ム債務者ノ身分ニ應シ且慣習ニ從ヒ爲シタル葬式ノ費用ハ先取特權アル者トス第二項「亦」ノ一字ヲ刪リ費用ニノ下「モ亦」ノ二字ヲ挿入ス
（栗塚）
葬式ノ種類ナドノ分チガ御座イマスガ、「慣習ニ從ヒ爲シタル葬式ノ費用ハ先取特權アルモノトス」ト致シマス
（北畠）
「欽葬」ト云フノハ
（栗塚）
干シ固メルノデ御座イマス、二項ハ「亦」ヲ刪テ「費用ニモ亦之ヲ適用ス」ト致シマス
（村田）
三項ニ「其」ト云フ字ガアツテ二項ニナイ
（委員長）
原按デ宜シイ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
[画像]
○第千百四十五條朗讀ス
第三則　最後ノ疾病ノ費用ノ先取特權
第千百四十五條　最後ノ疾病ノ費用ノ先取特權ハ債務者又ハ前條ニ指定シアル家族ノ死亡前或ハ債務者ノ無資力前ノ疾病ニ關シ爲シタル內科又ハ外科ノ醫師藥商看病人及ヒ其他ノ費用ヲ包含ス〔第二千百一條第三號〕
長病ノ場合ニ於テハ右ノ名義ニ於テ爲シタル費用ノ先取特權ハ最後ノ年ノ費用ニ之ヲ制限ス
債務者又ハ其家族カ事變ノ爲メニ死亡シ又費用ノ爲サレタル疾病ノ外ナル原由ノ爲メ死亡シタルトキト雖モ先取特權ハ尙ホ存在ス
（修正案）　第一項死亡前ノ下左ノ如ク改ムノ疾病ニ關シ或ハ債務者ノ無資力前ノ債務者又ハ其家族ノ疾病ニ關シ爲シタル醫師、藥商、看病人及ヒ其他ノ費用ヲ包含ス第二項「名義ニ於テ爲シタル」ノ九字ヲ刪リ「最後ノ年」ヲ「最後ノ一ケ年」ト改ム第三項「ノ爲サレ」ヲ「ヲ生セシメ」ト改ム
（栗塚）
翻譯ノ誤リデ御座イマシテ「家族ノ死亡前ノ疾病ニ關シ或ハ債務者ノ無資力前ニ債務者又ハ其家族ノ疾病ニ關シ」ト云フ事ガ脫ケテ居リマスカラ入レマス
（村田）
前ノデモ入リソウナモノダ
（栗塚）
少シ違ヒマス、「内科外科」ハ止メマシタ
（委員長）
無資力前ノ債務者ト云フト債務者ノ債務者ト聞ヘハセヌカ
（南部）
債務者ノ無資力前ニ債務者ガ疾病シタカ、家族ガ疾病シタカデス
（元尾崎）
「無資力ノ債務者ノ疾病又ハ家族ノ疾病ニ關シ」ト云フテハドウダロウ
（南部）
「前」ノ字ガナイト大變デス、縱令今日無資力ニナロウガ昨年ノ十二月ニ疾病ニ罹テモ宜シイ
（元尾崎）
無資力ニナツタラ債務ノ疾病トハ云ヘヌ
（松岡）
「死亡前或ハ無資力前ノ疾病ニ關シ」ト云ヘバ良カロウ
（元尾崎）
無資力ニナツタ者ノ病氣ハ債務ノ病氣ト看做スカ
（南部）
ソウデス
（元尾崎）
死ヌ前デナケレバ債務ノ疾病トハ云ヘナイ
（松岡）
元トハ死ヌル前ト云フ字ダガ最後ノ疾病ト云フノハ死ヌルノモアルガ、無資力前ノ疾病モ之ニ入レタト見レバ宜シイ
（委員長）
或ハ債務者ノ無資力前ノ疾病ニ關シテ先キヘ送ツテハドウダ
（栗塚）
其方ガ宜シイカ知レマセン
（松岡）
「無資力前ノ疾病ニ關シ」ト云ヘバ差支ナイ
（南部）
無資力ト云フノハ家族ガ入ル樣ニナル
（委員長）
但書ニ「債務者ノ無資力前ノ債務者又ハ其家族ノ疾病ニ關シテモ亦同シ」トスレバ良イ
（栗塚）
「但債務者ノ無資力前ノ疾病及ヒ其家族ノ疾病ニ關シテモ亦同シ」トスレバ宜シイ
（元尾崎）
其レガ良イ
（栗塚）
其レカラ二項ハ「右ノ名義ニ於テ爲シタル」ヲ「右ノ費用ノ先取特權」ト致シマス
（委員長）
最後ノ一ケ年ト云フノハ
（村田）
最後ノ十二ケ月ト云フノト同ジ事ダ
（栗塚）
ソウデス、其レカラ「費用ノ爲サレタル」ハ「費用ヲ生セシメタル」ト致シマス
（委員長）
疾病ノ外費用ヲ生ゼシメタルト云フト義務デハナイカ
（栗塚）
費用ヲ生ゼシメタル疾病デス
（南部）
病氣ノ外ノ病氣デト云フノデ御座イマス
（栗塚）
今迄肺病デ居テ急ニ卒中デ死ンダトキハ肺病ノ日ヨリト云フノデ御座イマス
本條ハ左ノ如ク決ス第二項左ノ如ク改ム最後ノ疾病ノ費用ノ先取特權ハ債務者又ハ前條ニ指定シタル家族ノ死亡前或ハ債務者ノ無資力前ノ疾病ニ關シ爲シタル醫師、藥商、看病人及ヒ其他ノ費用ヲ包含ス但債務者ノ無資力前ノ疾病及ヒ其家族ノ疾病ニ關シテモ亦同シ第二項第三項報吿委員ノ修正ニ決ス
[画像]
○第千百四十六條朗讀ス
第四則　雇人給料ノ先取特權
第千百四十六條　雇人ノ先取特權ハ債務者ノ一身、債務者ノ擔當タル其同居ノ親族ノ一身ニ附從シ或ハ債務者ノ家又ハ都市若クハ田舎ノ所有物ニ附從シタル雇人ニ屬ス
右ノ先取特權ハ最後ノ年ノ賃銀又ハ給料ノミヲ擔保ス〔第二千百一條第四號〕
（修正案）　第一項「附從」ヲ「附着」ト改メ「所有物」ヲ「土地」ト改ム第二項「最後ノ年」ヲ「最後ノ一ケ年」ト改ム
（栗塚）
「附從」ヲ「附着」ト直シマス
（元尾崎）
「附從」ガ宜シイ
（槇村）
「附屬」ガ宜カロウ
（松岡）
「附屬」ガ宜シイ
（栗塚）
「又ハ都市若クハ田舎ノ所有物」ハ削リマス「債務者ノ家屋又ハ土地ニ附着」デモ宜シウ御座イマス
（槇村）
其レガ宜シイ
（村田）
之モ「附屬」ガ宜シイ
（松岡）
「附屬」デ宜シイ
（委員長）
船ヤ何カモ之ニ準ズルカ
（元尾崎）
アレハ別デシヨウ
（村田）
矢張リ此中ニ入レテ見ナケレバナラヌ
（栗塚）
門番ト園丁ナドヲ見セ樣ト思フノデ御座イマスカラ
（松岡）
家屋ト云ヘバ土地ト云ハナケレバナラヌ、其レヲ止メレバ「一身ニ附屬シ或ハ債務者ノ不動產ニテ」ト云ヘバ宜シイ
（委員長）
千百三十三條デ「田舎ノ財產」ト云フノヲ「田畑山林」トシタカラ此例デ行ケバ之デ宜シイガ、廣ク書イタノハ廣クヤツタ所モアルカラ
（槇村）
不動產デ宜カロウ
（栗塚）
不動產ノ門番ト云フノモ云ヒ惡クイ
（委員長）
不動產ト云ヘバ「或ハ債務者ニ附屬シタル」ト云ハナケレバナラヌ
（元尾崎）
修正ノ通リデ宜シイ
（栗塚）
終リハ「最後ノ一ケ年」トナリマス
（委員長）
コウ云フ所ハ註解ニ書ク事ヲ忘レヌ樣ニシナイト殊更ニ除イタノデハナイカラ、家屋ニハ船舶モ入ルダロウ
（栗塚）
船ハ入リマセン、網船ノ楫子ハ何處ヘ入ルカト云フノデス
（南部）
一身ニ附屬シタノダ
（槇村）
其レハ宜シイガ、船持ガアル其船頭ハ
（松岡）
其レハ商法ダ
（委員長）
商法デモ動產ニナラヌモノガアルダロウ
（南部）
船ガ商法ニ屬スルモノナラバ商法ニ入リマス
（元尾崎）
工場ナドノ雇人ハ特別法デ定メテアリハセヌカ
（松岡）
此處デ云フノハ極ク狹イモノデ商賣筋ニ關係セヌ
（委員長）
千百三十一條ニハ「田畑山林」ト云フヲ其中ニ池トカ沼トカヲ持テ居ルノガ含ムト云フ其レモ質權ガ沼ニ存シテ居ルト云フト其レモ類推シナケレバナラヌ
（南部）
此處モ其レト同ジデ土地ト云フノハ田畑山林モ同ジ事デシヨウ
（栗塚）
其仕事ニ依テ土地ニ屬シタルモノモアリマシヨウ、船ニ仕舞ツテ置クハ家屋ニ屬スル
（委員長）
船ハ家ト同ジク不動產ト看做ス樣ニナレバ家屋ノ中ニ含ンダモノト見ル
（南部）
船ハ動イテ行クモノデスカラ此門番ヤ家造リト同ジトスルノハ權衡ガ合ハヌ、其レハ千百六十條ニ入ルノデシヨウ
（松岡）
詰リ此條ハ商人工業者等ニハ適用シナイ、其レ等ハ日本商法ヘ特別ノ規定ヲスルダロウ、此處ハ臺所番、馬丁、馭者、門番、夜番人或ハ大キナ別莊ヲ持テ居レバ庭守リトカ云フノダ
（元尾崎）
普通ノ雇人ト見レバ宜シイ其旨意ヲ包含スル樣ニ改メヌト良クナイ
（栗塚）
此處ハ都市田舎ヲ除イタ丈ケデソツクリ出シタ積リデス
（委員長）
愈土地ト云フモノノ中ヘ今ノ樣ナモノガ入ルカ入ラヌカヲ決シテ置イテ貰イタイ
（栗塚）
實ハ船舶ノ事ハ報吿委員ハ氣付キマセン
（委員長）
此處デハ船舶ハ何ニスルト云フ事ヲ一定スレバ、其處ヲ以テ報吿委員ガ元トシテ他ノ所モ之ニ依テヤル樣ニセヌト良クナイカラ
（栗塚）
船舶ノ事ハ手落チデス
（委員長）
船舶ノ雇人ハ何ヘ入ルカ
（栗塚）
私ノ考ヘデハ債務者ノ一身ニ屬スルモノト家屋ニ屬スルモノト二ツアルト思ヒマス
（委員長）
警視廳ノ船ハ川ヘ泊ツテ居ラナケレバナラヌ、アノ船ハドウスル
（栗塚）
私ハ船ノ中ニ泊ツテ居ロウトモ警視廳ニ屬スルモノト思ヒマス、若シ警視總監ノ船デアレバ債務者ノ一身ニ屬シテ居ロウト思ヒマス
（委員長）
警視總監デモ警視廳デモ變リハナイ、年中寢泊リヲスルノトシナイノト違フ
（栗塚）
其レデ區別ハ出來マスマイガ、其人ノ雇ハレ方デ區別シナケレバナラン
（委員長）
月ニ幾ラノ給料ヲ以テ雇ハレテ居ル、其レヲ何ニ屬スカ定メテ貰ヒ度イ
（元尾崎）
矢張リ家ニ屬スカラ家屋ト云タラ分ルダロウ、私ノ家ノ雇人デ御座イマスト云フカラ
（松岡）
ソウ云ヘバ土地ト云フ事モ入ラヌ事ニナル
（元尾崎）
遊山船ヲ持テ居テ寢泊リヲサセテモ雇人トスルニ違ヒナイ
（南部）
門番ト同ジモノニ見ルニ違ヒナイ
（委員長）
家屋ト家トハ意味ガ違フ
（栗塚）
家屋デハ船舶ハ入ラヌ、家ナレバ船ガ入ルト云テモ困ル
（委員長）
其家ニスレバ家屋ヨリ家ガ宜シイ
（北畠）
土地モ削ツテ「所有物」トスル方ガ廣イ
（委員長）
ソウスレバ「債務者ノ家屋又ハ其他ノ所有物ニ附屬シ」トスレバ何モ箇モ入ル
（栗塚）
其他ノ所有物ノ中ニ船モ入ルト變ナモノデス
（南部）
「家屋其他ノ所有物」デ宜シウ御座イマス
（委員長）
最後ノ年ハ
（栗塚）
之レモ一ケ年デ御座イマス
本條ハ左ノ如ク決ス第一項左ノ如ク改ム雇人ノ先取特權ハ債務者ノ一身、債務者ノ擔當タル其同居ノ親族ノ一身ニ附屬シ或ハ債務者ノ家屋其他ノ所有物ニ附屬シタル雇人ニ屬ス第二項報吿委員ノ修正ニ決ス
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○第千百四十七條朗讀ス
第五則　飮食品供給ノ先取特權
第千百四十七條　飮食品供給ノ先取特權ハ債務者又ハ債務者ト同居スル家族及ヒ是等ノ者ノ雇人ニ供給シタル飮食品ニノミ之ヲ適用ス
右ノ先取特權ハ最後ノ六ケ月間ニ爲シタル右ノ供給ノミヲ包含ス〔第二千百一條第三號〕
（修正案）　第一項「又ハヨリ雇人」迄ヲ「又ハ其同居ノ家族及ヒ雇人」ト改ム第二項「ニ爲シタル右」ノ六字ヲ刪ル
（栗塚）
「又ハ其同居ノ家族及ヒ雇人ニ」ト致シマス
（元尾崎）
今日私ノ息子ガ雇人ヲシタト云テモ區役所ガ受付ケハセヌ
（松岡）
修正ノ通リデ宜シイ
（栗塚）
「六ケ月間ノ供給ノミヲ包含ス」ト致シマス
（委員長）
此處ヘ「生活ニ必要」ヲ入レルカ
（栗塚）
「生活ニ必要ナル」ト入レマス
（槇村）
「必要品」トシ度イ
（淸岡）
生活ハ面白クナイ「必要ノ飮食品」デ宜シイ
（栗塚）
貴所、私ガ「シヤンパン」ヲ賣ラナケレバ生活ガ出來マスマイト云フテ先取特權ヲ行フ者ハアリマスマイ
（元尾崎）
無イ事ハナイ、料理屋ニ澤山拂ガアツテ外ニ債務者ガ無イ樣ニナル
（大尾崎）
「生活ニ必要ナル」デ宜シイ
（村田）
矢張リ日用品ダ
（栗塚）
日用品ニ薪油ガ入ツテ何ゼ此處ヘ入ツテ居リマセン
（松岡）
其レハ無理ダ
（槇村）
薪ヤ炭ガナケレバ食ヘヌ
（南部）
成ル丈ケ制限スルガ宜シイ
（松岡）
米ハ取レル薪ハ取レヌト云フ理窟ハ立タヌ米バカリガ食ヘルト云フモノデハナイ
（南部）
ソウ云ヘバ衣服モ無ケレバナラヌ
（栗塚）
「生活ニ必要ナル飮食品」デ宜シウ御座イマシヨウ
（松岡）
飮食品デハ足ラヌ
（栗塚）
薪丈ケヲ入レマスカ、日用品ト云フト大變廣クナル
（松岡）
今迄ノ日用品ハ衣服ダノ車ナドハ入ツテ居ラヌ
（南部）
成ル可ク縮メルガ宜シイ
（淸岡）
先取特權ヲソンナニ惡ムニ及バヌ
（南部）
外ノ債權者ヲ害スルカラ制限シナケレバナラヌ
（松岡）
麺包ヲ食ツテ水ヲ飮ンデ生活ノ出來ル所ナレバ宜シイガ日本デハ米屋ト薪屋ハ離レヌ
（栗塚）
ソンナラ「飮食ニ必要ナル品」トナスツテハ如何デス
（北畠）
ソウスルト茶碗モ椀モ入ル
（西）
薪屋ト炭屋ノ御世話ヲスル樣ニナル
（栗塚）
日用品トナルト油屋モ蝋燭屋モ入ル樣ニナル
（委員長）
日用品ノ方ガ少ナイ
（北畠）
薪炭油ヲ註ニ入レテハドウダ
（栗塚）
炭ハ入ラヌデシヨウ
（松岡）
炭モナケレバナラヌ
（委員長）
少數ダナ
（元尾崎）
「生活ニ必要ナル」ト入レルカ
（松岡）
ソンナラ「生活ニ必要ナル」ハ入ラヌ
（栗塚）
「生活ニ必要ナル飮食品」デスカ
（大尾崎）
「生活ニ必要ナル」デ宜シイ
（委員長）
其レデ宜シイ
（元尾崎）
二項ハドウデス
（栗塚）
「六ケ月間ノ供給ヲ包含ス」
（委員長）
宜シウ御座イマシヨウ
本條ハ左ノ如ク決ス第一項左ノ如ク改ム飮食品供給ノ先取特權ハ債務者又ハ其同居ノ家族及ヒ雇人ニ供給シタル生活ニ必要ナル飮食品ニノミ之ヲ適用ス第二項報吿委員ノ修正ニ決ス
[画像]
○第千百四十八條朗讀ス
第二款　一般先取特權ノ効力及ヒ順位
第千百四十八條　一般先取特權ハ先取特權アル各債權者カ動產ニ付キ配當順序中ニ入リタル後尙ホ其受ク可キモノヽ爲メニ非サレハ不動產ニ付キ之ヲ行フ事ヲ得ス
然レトモ若シ動產ノ代價ノ配當ニ先タチテ不動產ノ代價ノ配當アルトキハ債權者ハ不動產ノ代價ニ付キ條件付ニテ自己ノ配當順序ヲ定メシムル事ヲ得伹右ノ配當順序ニ於テハ動產ニテ辨濟ヲ受ケサルモノヽミヲ受ク
動產ノ代價配當ニ付キ有益ノ時期ニ出席スル事ヲ怠リタル債權者ハ動產ニテ自己ノ受クヘカリシモノヽ限度ニ於テ不動產ニ付キ其優先權ヲ失フ
（修正案）　第一項二項左ノ如ク改ム一般先取特權ハ先取特權アル各債權者カ動產ニ付キ配當ヲ受ケ尙ホ不足アルニ非サレハ不動產ニ付キ之ヲ行フ事ヲ得ス然レトモ若シ動產ノ代價ノ配當ニ先タチ不動產ノ代價ノ配當アリタルトキハ債權者ハ條件附ニテ不動產ノ代價配當ニ加入スル事ヲ得但右ノ配當加入ニ於テハ日後動產代價ノ配當ニテ辨濟ヲ受ケサルモノノミヲ受ク第三項「自己ノ」ノ三字ヲ刪ル
（槇村）
跡デ受ケナカツタノヲ前デ取ルト云フノカ
（栗塚）
今此處デ金ヲ渡シタケレドモ、是レ丈ケ手ニ入ルカ入ラヌカ分ラヌ、跡デ動產ヲ配當シタトキ幾ラ不足ガアル、其不足丈ケ外不動產デハ取レヌゾヨ
（元尾崎）
配當ノ出來ナカツタ者ノミ之ヲ受クト云フノハ六ケ敷イ
（栗塚）
初メ取ツタト云フノハ確カニ取タニナラヌ條件付デ御座イマスカラ假令バ茲ニ千圓ノ貸金ガアツテ、初メノ不動產ノ賣却ガアツタトキハ六百圓取レタ、其レカラ動產ノトキ八百圓取レタ、ソウスレバ二百圓不足シマシヨウ其トキハ二百圓丈ケ外不動產カラ取レナイ
（槇村）
ソレガ之デ分リマスカ
（栗塚）
分ル積リデス、動產ガ先キナラ仔細ナイデス
（槇村）
初メニ配當ヲ受ケテ二百圓不足ガアル、後チノ配當ガ二百圓受ケルト云フノデシヨウ
（栗塚）
不動產ノ内カラ六百圓取レレバ（四百圓デ宜シイノダカラ）二百圓返ヘス、動產デ仕舞ヒ動產デ不足ガアレバ不動產デ取レルト云フノデ御座イマス
（槇村）
不動產ヲ先キニ配當シタトキハ
（栗塚）
不動產ヲ先キヘ配當シテモ取ル順ハ動產カラ先キニ取ラナケレバナラヌ
（委員長）
「右ノ配當ニ加入スルト雖モ日後動產代價ノ配當ニテ辨濟ヲ受クヘキモノハ返還スヘシ」ト書ケバ分ル、其レヲ反對ニ書イタカラ此樣ニナル
（槇村）
「日後動產代價ノ配當ニテ不足スルモノノミヲ受クル事ヲ得」ト云フノダロウ
（栗塚）
ソウデス
（村田）
動產デ足ラヌ物丈ケヲ不動產デ取レト云フノダ
（委員長）
宜シウ御座イマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
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○第千百四十九條朗讀ス
第千百四十九條　一般先取特權ノ全部又ハ一分カ互ニ抵觸スル場合ニ於テハ第千百四十三條乃至第千百四十七條ニ列記シタル相互ノ順序ニ從テ配當順序ヲ定ム〔第二千百一條〕
前記ノ數條ニ揭ケタル同一ナ名法律上ノ名稱中ニ在ル總テノ債權ハ同順位ニ於テ配當順序ヲ定メラル
若シ一般先取特權カ動產ニ係ル特別先取特權ト牴觸スルトキハ其動產ニ係ル特別先取特權ニ對スル一般先取特權ノ順位ハ下ノ第二節ニ之ヲ規定ス
一般先取特權ハ不動產ニ係ル特別先取特權ニ先タヽル又後ニ設定セラレタリト雖モ詐害ナキニ於テハ特別抵當ニ因テ先タヽル〔第二千百五條〕
然レトモ一般先取特權ハ其發生ノ一般抵當ハ勿論其前得取シタル一般抵當ニモ先タツ
一般抵當ノ負擔アル總テノ不動產ヲ同時ニ賣却シタル場合ニ於テハ一般先取特權ハ各不動產ノ賣却代價ノ割合ニ應シテ其總テノ不動產ニ付キ配當順序ヲ定メラル
若シ順次ニ右ノ不動產ヲ賣却スルトキハ一般先取特權ハ初メ賣却ニ付キ全部充當セラレ又次ノ賣却ニ付キ附隨ニテ充當セラル且各不動產間ノ配當ハ初ニ右ノ先取特權ノ負擔ヲ受ケタル債權者ノ利益ニ於テ求償ノ方法ヲ以テノミ之ヲ爲ス
（修正案）　左ノ如ク改ム一般ノ先取特權ハ互ニ相會スル場合ニ於テハ第千百四十三條乃至第千百四十七條ニ列記シタル相互ノ順序ニ從ヒ配當加入ヲ定ム右ノ數條ニ揭ケタル同名義ノ總テノ債權ハ同順位ニテ配當ニ加入ス若シ一般ノ先取特權カ動產ニ係ル特別ノ先取特權ト相會スルトキハ其順位ハ下ノ第二節ニ之ヲ規定ス不動產ニ係ル特別ノ先取特權ハ一般ノ先取特權ニ先タチ又特別ノ抵當ハ後ニ設定セラレタリト雖モ詐害ナキニ於テハ一般ノ先取特權ニ先タツ然レトモ一般ノ先取特權ハ其發生ノ前ニ取得シタル一般ノ抵當ニ先タツ一般ノ抵當ノ負擔アル總テノ不動產ヲ同時ニ賣却シタル場合ニ於テハ一般ノ先取特權ハ各不動產ノ賣却代價ノ割合ニ應シテ其總テノ不動產ニ付配當ニ加入ス若シ順次ニ右ノ不動產ヲ賣却スルトキハ一般ノ先取特權ハ初メ賣却ニ付全部之ヲ充當シ又次ノ賣却ニ付附隨ニテ之ヲ充當ス且各不動產間ノ配當ハ初ニ右ノ先取特權ノ負擔ヲ受ケタル債權者ノ利益ニ於テ求償ノ方法ヲ以テ之ヲ爲ス
（北畠）
「相會スル」ハ「到着スル」ガ良カロウ
（栗塚）
未ダ到着スルカセヌカ分ラヌカラ、二項モ修正ガ御座イマス
（南部）
先キヘ取ツタ人ガ段々ニ求償シテ行ク
（松岡）
十箇アルモノヲ三箇賣テ跡殘ツタトキハ
（栗塚）
三ツ外ナイ
（松岡）
其時デモ一般ノ物ハ先キヘ取ルカ
（南部）
詰リ塡メ合セヲスルト云フ事ダ
（栗塚）
順次ニ賣ルカラ初ツタ話デス、二ツト三ツトヤツタトキハ第一號第二號第三號ト三ツノ地所ヲ賣ラレタ、同時ニ賣レバ其レ丈ケデ損ヲスル者ハ損ヲシ、得ヲスル者ハ得ヲスル、皆拂ツテ貰ウベキハ拂ツテ貰ウガ、順次ニ拂ツタトキハ同時ニ賣ツタトキノ樣ナ結果ニシナケレバナラヌ、其結果ヲスルノガ求償權デスルゾヨト云フノデス、一二三ト云フ地所ヲ同時ニ賣テ等シク分テバ宜シイガ、順々ニ賣タトキハ同時ニ賣タト同ジ結果ヲ求メナケレバナラヌ、其結果デ求メルノハ求償ノ方法デ求メル
（松岡）
其レガ特別ト一般ノトキデスカ
（栗塚）
一般ノトキバカリデス
（村田）
二萬圓ノ負債ガアツテ、二萬五千圓丈ケ不動產デ取レタ二度目ノ不動產ノトキ五千圓取レバ宜シイ、跡ノ不動產ハ其レ丈ケノ餘分ガアル、初メ一萬五千圓、餘計取ラレタカラ初メノ不動產ト後ノ不動產トノ間ニ平均ヲシナケレバナラヌ
（松岡）
二萬圓拂ハナケレバナラヌニ、初メニ一萬五千圓拂ツテ後チニ五千圓拂ヘバ其レ切リダ
（南部）
順位ヲ云フノダ、一緒ナレバ順位デヤルケレドモ其レガ順ニヤレンデ順ガ違フ
（栗塚）
皆一般ノ先取特權ニ相違ナイ
（南部）
一ツハ訴訟費用一ツハ製作ノ費用一ツハ雇人ノ費用ト云フ事ガアルカラ
（元尾崎）
順次ニ不動產ヲ賣却スルト云フ順次ハ不動產ノ順次ダロウ、一號ヲ賣テ一般ニ充當シテ次ギノヲ又充當シタト云フノダロウ、一般ノ抵當ニ負擔スル總テノ不動產ヲ同時ニ賣却シタルトキハト云フノハ
（南部）
特別先取特權ト一般ノ先取特權ノ場合デス
（栗塚）
第一ノ地所ガ一萬圓ニ賣レタ、最初ハ五人居レバ二千圓ヅツデ、第二ヲ賣タトキハ又ソウスル、第三ヲ賣ツタトキモ復タソウスル
（元尾崎）
財產ヲ順次ニ先後ヲシテ賣ルナラ先キカラ取ルノガ宜シイガ、一緒ニ賣テ其内カラ一萬圓取ルナラ此方カラ千圓此方カラ千圓取ルト云フ事ノ入用ハナイ
（南部）
一般ニ抵當ガアルカラ順々ニシナイト順ガ狂ウ樣ニナル
（元尾崎）
一時ニ賣ツタトキハ
（南部）
一號ノ地所ヲ賣タカ、二號ノ地所ヲ賣タカ
（元尾崎）
總テ賣却シタ、其レヲ財產ノ割合ニ應ジテ取ルト云フ事ハ一向分ラヌ
（槇村）
特別ノ抵當ト云フノハ
（元尾崎）
登記ヲシタノダロウ
（松岡）
意味ハ違ヒハアルマイガ文ハ報吿委員デ書キ換ヘテ貰ヲウ
（栗塚）
一ヲ取テ二ヲ取テ之デ取ツテ居ル二ツノ地所ヲ抵當ニ取テ居ル者ガアルカ知レマセン其人ガ迷惑シマス、三ヲ賣ラズニ一、二ヲ賣テ仕舞フト、一、二ヲ抵當ニ取テ居ル人ガ迷惑スルカラ之ニ應ジテ先取特權ヲ引ヒテ貰イ度イト云フノデ御座イマス、一、二、三平均シテ一時ニ地面ヲ賣タト同ジニスルト云フノデ御座イマスガ、求償ノ方法ヲ以テ之ヲ爲スト云フノハ分リマセンカラ分ル樣ニ書キマシヨウ
（南部）
末項ヲ修正シタラ良カロウ
（委員長）
「不動產間ノ配當」ハドウシテモ分ラヌ、特別抵當ハ時ヲ經タモノトカ質入トカ云フノカ
（南部）
質入抵當デス
（元尾崎）
大工ガ家ヲ建テ代ガ殘テ居ルノハ特別デハナイカ
（栗塚）
一般デ御座イマス
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
末項ハ文章不明ニ付報吿委員ニ於テ調査ノ上提出スル事トス
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○第千百五十條朗讀ス
第千百五十條　不動產ガ債務者ニ屬スル間ハ一般先取特權ヲ他ノ債權者ニ對抗スル爲メニ其不動產ニ付テノ記入ヲ免除セラル〔第二千百七條〕
（修正案）　左ノ如ク改ム一般ノ先取特權ハ不動產カ債務者ニ屬スル間ハ他ノ債權者ニ對抗スル爲メ其不動產ニ付テノ記入ヲ要セス
（栗塚）
「一般ノ先取特權ハ不動產カ債務者ニ屬スル間ハ他ノ債權者ニ對抗スル爲メ其不動產ニ付テノ記入ヲ要セス」ト致シマス
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
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○第千百五十一條朗讀ス
第二節　動產ニ係ル特別先取特權
第一款　動產ニ係ル特別先取特權ノ原由及ヒ目的
第千百五十一條　上ノ第二章ニ於テ先取特權ヲ設定セラレタル動產質債權者ノ外左ノ各人ハ下ニ指定シタル債權ノ爲メ下ニ指定シタル動產物ニ付キ先取特權ヲ有ス
第一　不動產ノ賃貸人
第二　種子及ヒ肥料ノ供給者
第三　農業及ヒ工業ノ職工
第四　動產物ノ保存者
第五　動產物ノ賣主
第六　旅店主人
第七　舟車運送營業人
第八　保證ニ服シタル公役員ノ負擔ノ所爲ニ付キ其役員ニ對スル債權者
第九　右ノ保證ノ元資ヲ貸シタル者〔第二千百二號〕
（修正案）　第一項左ノ如ク改ム上ノ第二章ニ規定シタル先取特權ヲ有スル動產質取主ノ外下ニ指定シタル動產物ニ付先取特權ヲ有スル債權者左ノ如シ第三號「職工」ヲ「稼人」ト改ム第六號「旅店主人」ヲ「旅店ノ主人」ト改ム第八號「公役員」ヲ「公吏」ト改メ「其役員」ヲ「其吏員」ト改ム第九號右ノ下「ノ」ノ一字ヲ刪ル
（栗塚）
之モ修正致シマシタ
（村田）
旅店ノ主人モ商法ニアル
（栗塚）
舟車運送ハ後チニ取調ベマス
（委員長）
商法ノ方ニハ先取特權ガアルト云フ事ハナイ
（松岡）
御座イマス
（元尾崎）
保證ニ服シタル公吏ト云フノハ
（栗塚）
書記ニ身元金ヲ出セト云フ事ニナル
（村田）
英文ハ保證ヲ以テ擔保シタル官吏ノ不正所爲ノ擔保トアル
（委員長）
稼人ト云フノハ雇ハレ人トナルカ
（栗塚）
雇ハレ人、日傭ナドモ入リマス
（委員長）
稼人ト云フト本人ノ事ヲ云フ樣ニナリヤセヌカ
（栗塚）
農業ニ雇ハルル人、工業ニ雇ハルル人
（松岡）
話シ家ナドハ稼人ト云フ
（村田）
主人ノ事ヲ稼人ト云フ
（元尾崎）
「工業ノ勞力者」ト云テハドウカ
（南部）
先キデ分リマス
（淸岡）
稼人ハ可笑シイ
（委員長）
勞力者ト云フ字ナレバ宜シイガ、「稼人」ト云フト雇フ者モ雇ハレル者モ云フ
（栗塚）
先キノ第三則ノ事デ文字ヲ定メタラ宜シウ御座イマシヨウ
（元尾崎）
稼ギ人ハコウ云フモノト云フ說キ明シガ出來レバ宜シイ
（委員長）
ソンナラ先キヘ行キマシヨウ
本條第八ヲ左ノ如ク改メ他ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第八「負擔」ヲ「職務上」ト改ム第三「稼人」ノ文字未定
第六第七ハ再調ノ事
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○第千百五十二條朗讀ス
第一則　不動產賃貸人ノ先取特權
第千百五十二條　居宅、倉庫又ハ其他ノ建物ノ賃貸人ハ賃借人ノ使用、商業又ハ工業ノ爲メ右ノ建物內ニ備ヘタル動產物ニ付キ先取特權ヲ有ス〔第二千百二條第一號〕
右ノ物カ賃借人ニ屬セスト雖モ若シ賃貸人カ其事實ヲ知ラス且賃貸シタル場所內ニ物ヲ持込ム事ヲ知リタル當時ニ於テ右ノ事實ヲ豫見スルニ足ル可キ理由アラサリシトキハ先取特權ハ尙ホ存在ス〔第二千百二條第四號、第三項〕
賃貸人ノ先取特權ハ現金、賃借人又ハ其家族ノ一身ノ使用ニ供シタル珠寶寶石ニ付キ又所持人式ナルモ債權證書ニ付キ之ヲ行フ事ヲ得ス
（修正案）　第一項「其他ノ建物」ヲ「其他ノ建築物」ト改ム第二項左ノ如ク改ム右ノ動產物カ賃借人ニ屬セスト雖モ賃貸シタル場所ニ之ヲ持込ム事ヲ知リタル當時ニ於テ若シ賃貸人其物ノ賃借人ニ屬セサル事實ヲ知ラス且其事實ヲ豫見スルニ足ル可キ理由アラサリシトキハ先取特權ハ尙ホ存在ス第三項「現金」ノ下「ニ付キ又」ノ四字ヲ挿入シ「又ハ」ヲ「及ヒ」ト改メ「珠寶」ヲ「金玉」ト改ム
（栗塚）
一項ハ「建物」ヲ「建築物」トヤリマシタ跡ハ「右ノ建物内」トヤリマシタ字ガ違ヒマスカラ
（村田）
「倉庫」ハ英文デハ「店」ト云フ字ダ
（栗塚）
二項ハ餘程入レ變ヘマシタ
（元尾崎）
第三項ハ現金ニ付キ行フ事ハ出來マセンカ
（栗塚）
左樣デス先取特權ガアルト云ヘナイ
（松岡）
外ノ人ノ來タ時分ニ金ハソウハ行カヌ
（元尾崎）
所持人式ハ
（松岡）
無記名ダカラ
（槇村）
「所持人式ナルモ」ト云フハ
（栗塚）
所持人式デモト云フノデス
（元尾崎）
賃借人ノ爲メニ先取特權ガアルノダロウガ其レガ見ヘナイ
（南部）
先キニアリマス
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
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○第千百五十三條朗讀ス
第千百五十三條　賃貸人ハ賃借人カ其賃借シタル場所內ニ現期間ノ借賃及ヒ後ノ一期分ノ借賃ノ辨濟ヲ擔保スルニ足ル可キ動產ヲ備フル事ヲ要求スル事ヲ得賃借人之ヲ爲サス且右期間ノ借賃ノ前拂又ハ之ニ相當スル其他ノ抵保ヲ供セサルトキハ賃貸人ハ損害アレバ其賠償ヲ得テ賃貸ヲ消除スル事ヲ得
若シ賃貸シタル場所ニ備ヘタル動產ヲ賃貸人ノ許諾ナクシテ取去リタルモ別ニ詐害ナキトキハ賃貸人ハ其擔保カ不足ト爲リタルトキ尙ホ賃借人ニ屬スル權利ノ限度內ニ非サレハ右ノ取去ラレタル動產ヲ賃貸シタル場所ニ復セシムル事ヲ得ス
然レトモ賃貸人ノ權利ヲ詐害シテ爲サレタル所爲ノ場合ニ於テハ賃貸人ハ第三百六十一條以下ニ記載シタル條件及ヒ區別ニ從ヒ第三者ニ對シテ其所爲ヲ廢罷スル事ヲ得
右ハ總テ第千百三十八條ニ憑リ賃貸人ニ屬スル權利ヲ妨ケス〔第二千百二條第一號、第五項〕
（修正案）　第一項左ノ如ク改ム賃貸人ハ家賃ノ當期分及ヒ後ノ一期分ノ辨濟ヲ擔保スルニ足ル可キ動產ヲ賃貸ノ場所ニ備フル事ヲ賃借人ニ要求スル事ヲ得賃借人之ヲ爲サス且右家賃ノ前拂又ハ之ニ相當スル其他ノ抵保ヲ供セサルトキハ賃貸人ハ賃貸借ヲ銷除スル事ヲ得但損害アルトキハ其賠償ヲ得第二項若ノ下「賃貸シタル」ヲ「賃借シタル」ト改メ「尙ホ」ヲ「且」ト改メ「取去ラレタル」ノ六字ト「賃貸シタル」ノ五字ヲ刪リ「場所ニ復セシムル」ノ上ニ「其」ノ一字ヲ挿入ス第三項「爲サレ」ヲ「爲シ」ト改メ「所爲ノ」ノ三字ヲ刪リ「廢罷ス」ヲ「廢罷セシム」ト改ム
（委員長）
之ハ大變賃借人ヲ保護シタモノダ
（南部）
借人ガナイカラ誰レデモシマスマイ
（栗塚）
修正ガ御座イマス
（委員長）
「尙」ヲ「且」ト直スノハ可笑シイ
（松岡）
「且」ガ良イ樣デス
（栗塚）
「消」ノ字ハ金篇ニナリマスカラ御直シ下サイ
（委員長）
本人ガ云フノダロウ
（南部）
第三者ヲ止メサセナケレバ契約ガ止ミマセン
（委員長）
第二者ニ係テ取テ第三者ニ係レバ宜シイガ、二者ヲ勝手ニシテ三者ニ係ルノハ良クナイ
（南部）
第二者ハ自然ニ分テ居リマス
（委員長）
詐害ノナイトキハ賃借人ガ半分不足デモ元トニ復スル事ハ出來ナイ
（栗塚）
不足ノトキハ換ヘサセル事ガ出來ル
（委員長）
不足トナリ且賃借人ニ屬スル賃借人ノ權利ノ限度内ニ在ルトキニ非ザレバト書カナケレバナラヌ
（南部）
限度内デナケレバイケナイ、限度外ナレバ元トニ復セシムル事モ出來ナイ
（村田）
「タルトキ」ヲ削ツテ宜シイ
（栗塚）
「詐害ナキトキハ」ヲ「詐害ナキ場合ニ於テハ」トシテハドウデス
（委員長）
「限度内ニアルニ非サレハ」ト云ハナケレバ「限度内ニ非サレハ」ト云フト限度内ニナケレバト云フ事ニナル
（栗塚）
私ガ南部サンノ字ヲ借リテ條約ヲ以テ行キマスケレドモ貴君ノヲ借リタ條約ナレバ限内デアリマセンカラ
（委員長）
義務ノ限内ニアレバ元トニ復ベシト云フ事ガ出來ル、義務ノ限度内ニナケレバ戻シテ置ケト云フ事ハ出來ナイ
（栗塚）
「限度内ニ於ケルニ非サレハ」デス
（淸岡）
「アラサレハ」トスレバ宜シイ
（松岡）
之ハ「非」ノ字デナケレバイケナイ
（村田）
「權利ノ限度内ニ於テノミ」ダ
（栗塚）
其レガ宜シイカ知レマセン「於ケルニ非サレハ」デハ如何デス
（元尾崎）
「於ケルニ非サレハ」デモ宜シイ
（委員長）
「アルニ非サレハ」ガ一番宜シイ
（栗塚）
「アルニ非サレハ」ト云フト物ガナケレバナリマセン
（委員長）
擔保ガアル
（南部）
「於ケル」ガ宜シイ
（委員長）
「於ケルニ非サレハ」ト云フノハ何ガ於ケルカ
（栗塚）
「於ケル」ハ限度内ニノ說明デス
（松岡）
二ツノ條件ガアル、一ツハ擔保ガ不充分トナリタル事、二ツハ此モノニ付イテアル權利ガ尙ホ賃借人ニ屬スル事、權利ガ賃借人ヲ離シテ第三者ニ屬スレバ縱令擔保ガ不足デモ返還ヘス事ハ出來ナイ
（栗塚）
資格ガ不足トナリタルデ濟ンデ居リマス「且賃借人ノ權限内ニ於ケルニ非サレハ」ト云フノデス
（北畠）
「アルニ非サレハ」ト云テモ差支ハアルマイ「樂ミ其中ニ在リ」ト云テ「在」ノ字ヲ書イテ居ルカラ差支アルマイ
（栗塚）
併シ擔保ガ限度内ニ在ルト讀メマスカラ
（大尾崎）
「在ルニ非サレハ」トシテモ差支ナイ
（南部）
他ノ所ハ皆「限度内ニ非サレハ」トアツテ「限度内ニ在ルニ非サレハ」ト云フ例ハアリマセンカラ
（委員長）
限度内ニ非ザレバデハ何ガ於ケルノ限度内ニ非ザレバト云フト限度内デナケレバ取還ヘス事ガ出來ルト云フ事ニナル
（松岡）
「限度内ニ非サレハ」デ宜シウ御座イマシヨウ
（委員長）
「在」ノ字ナラ私ノ云フ意味ニナルガ「非」ノ字デハ非限度内デハ復スル事ガ出來ヌト云フ事ニナル
（村田）
「在」ノ字デハイケナイ
（委員長）
分レバ宜シイ
（南部）
ソレデハ「於ケル」ヲ削リマス
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
于時午後零時三十五分休憩
午後第一時十分開會
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○第千百五十四條朗讀ス
第千百五十四條　賃借ト永貸トヲ問ハス田舎ノ土地ノ賃貸人ハ居宅竝ニ土地利用ノ建物內ニ備ヘタル動產物ニ付キ及ヒ賃貸土地ノ利用ニ供シタル用具其他ノ器具又ハ機器ニ付キ右ト同一ノ限度ニ於テ先取特權ヲ有ス〔第二千百二條第一號、第一項〕
其他右ノ賃貸人ハ賃貸シタル土地ノ收獲物及ヒ其他ノ天然產物カ尙ホ土地ニ附看スルト土地ニ保存セラルヽトヲ問ハス其收獲物及ヒ產物ニ付キ先取特權ヲ有ス〔同上〕
鑛坑、炭坑又ハ石坑ニ關シテハ先取特權ハ鑛物、炭、石及ヒ其他ノ物料ノ旣ニ採掘セラレテ仍ホ賃貸シタル土地ニ存スルモノニ及フ
分果賃貸人ハ賃貸シタル土地ノ收獲物及ヒ其他ノ產物中ニテ自己ノ權利ヲ有スル部分カ尙ホ分果賃借人ノ手裏ニ存スル間ハ他ノ債權者ニ先タチ直接ニ之ヲ己レニ交付セシメテ其收獲物及ヒ其他ノ產物ニ付キ先取特權ヲ行フ
（修正案）　第一項「賃貸」ヲ「賃貸借」ト「永貸」ヲ「永貸借」ト改メ「田舎ノ土地」ヲ「田畑山林」ト改メ「用具」ヲ「動物、農具竝ニ」ト改メ「又ハ機器」ノ四字ヲ刪ル第二項「天然」ノ二字ヲ刪リ「產物」ヲ何レモ「產出物」ト改メ「保存セラルル」ヲ「保存スル」ト改ム第三項「鑛坑、」「鑛物」ノ五字ヲ刪ル第四項「手裏」ヲ「方」ト改ム
（栗塚）
「田舎ノ土地」ト云フノハ田舎ノ不動產ト云フ意味デス
（南部）
「土地ノ賃貸人」デ良クハナイカ
（栗塚）
ソレデ宜シイノデス
（村田）
田舎ト云フ字ガ書イテアル
（南部）
地面ヲ貸シテ向フデ家ヲ建テタトキ家ノ中ノ動產ハ先取特權ガアルカラ田畑山林トハ限ラヌ
（松岡）
突然「居宅」ト云フ字ガ出テ落チ着キ所ガナイ
（栗塚）
「土地ノ賃貸人ハ土地利用ノ建物内ニ備ヘタル動產物ニ付キ及ヒ」トシタラ良カロウ
（松岡）
利用ノ建物バカリデハイケナイ、利用ノ爲メ建物内ニ備ヘタル動產物ト云フ事ダカラ
（南部）
「土地ノ利用ノ爲メノ動產」ト云フト狹クナル
（栗塚）
「田舎ノ土地」ハ起按者ニ聞キマシタガ田舎ノ動產デハ前モ同一ノ事デアルカト聞イタ所ガ全ク田畑山林ノ賃貸人ヲ云フノデ動物農具モ這入ル、其レダカラ宅地ヲ云フ積リデハナイ、廣ク地所ヲ云フノデハナイ、田畑山林ヲ云フノダト云フ
（松岡）
「ボアソナード」ノ腦髓ニハ土地ヲ貸シテ家ヲ建テサセル事ガ浮バヌカラ此處ハ家ノ貸借ト田畑農具ノ貸借ニシテ仕舞ヘバ宜シイ土地利用ノ建物ハ納屋小屋トカ牛小屋トカ馬小屋トカ云フモノデス
（南部）
田畑山林デモ宜シイ
（村田）
此ノ建物ト前ノ建築物ト同ジデスカ
（松岡）
再調査デ皆「建造物」トナル
（栗塚）
「賃貸借ト永貸借トヲ問ハス田畑山林ノ賃貸人ハ居宅竝ニ土地利用ノ建物内ニ備ヘタル動產物ニ付キ及ヒ賃貸シタル土地ノ利用ニ供シタル動物農具竝ニ器具ニ付キ」ト致シマシヨウ
（松岡）
「賃貸シタル」ハ削ルガ宜シイ
（槇村）
削ツテ宜シイ
（委員長）
「農具其他ノ器具」デ宜シイ
（南部）
「竝ニ器具」デハナイカ、或ハ製造スル器具トカ云フ物ヲ重モニ指シテ居ル
（栗塚）
「農具其他ノ」デハ如何デス
（委員長）
「及ヒ土地ノ」トスルカ
（大尾崎）
居宅ハ
（松岡）
小作人ノ居ル家
（大尾崎）
家ハ借リタ土地ヘ建テルカ
（松岡）
ソウデハナイ
（淸岡）
土地ト云ヘバ居宅ノ敷地モ這入テ宜シイガ、田畑山林ト云フト居宅ノ敷地ハドウスルカト云フ事ニナル
（栗塚）
地上權ノ所ヘヤツテハドウデス
（委員長）
地上權ノ方ハ簡單ニナツテ居ル
（大尾崎）
「居宅」ヲ削ツタラ良カロウ
（栗塚）
田畑山林トアレバ其處ニ居宅ガアラレ樣筈ハナイト云フ想像ガ出來マシヨウカ
（南部）
田畑山林ハ不完全デハナイカ
（松岡）
宅地ハ地上權ノ方デ云ハナケレバナラヌ
（栗塚）
田舎ノ土地ト云フノハ日本デ云フ田畑山林ト云フ事デス
（南部）
居宅ト云フノハ自分ノ居宅ハ入ラヌ
（槇村）
貸地ヘ建テタル居宅ダ
（元尾崎）
其利用ニ供シタルモノナレバ居宅ニナツタノデモ
（松岡）
西洋ノ土地ノ樣ニ大キナ耕作場ヲ拵ヘテ其處ヘ住ウ事ハ日本ニハナイ「居宅」ハ削ルカ
（元尾崎）
削ルガ宜シイ
（委員長）
「田畑山林」トバカリシテ宅地ヲ除クト、田畑山林ハ此法律ニ依リ、宅地ハ別ノ法律ニ依テヤルト云フ樣ニナルカラ「ボアソナード」ニ今一應聞クガ宜シイ
（栗塚）
此處ノ單ニコウヤツテ居ルノハ耕スデモ何デモナイ、之ヲ何ト云フカ矢張リ都府ノ土地ト云ハナケレバナラヌ
（委員長）
地券ノ地目ニ宅地トアルノト、田畑トナツテ居ルノトハ違フ
（栗塚）
恰度日本デ云フ「農」ト云フ字デス
（松岡）
賃貸借ハ何ヲシテ居ルカト云フト賃貸借ノ部類ニ宅地ガアルカナイカ、原按者ノ書イタノハナイ
（栗塚）
其レハアリマセン、起按者ノ考ヘデハ家ノ建ツ土地ハ卽チ都府ダ、家ノナイ土地ハ農地ト云フノダ日本ノ田ト畑ト林トヤレバ合ウト云フ事デス日本デ云フ宅地ハ佛蘭西デ云フ田舎ノ土地ト云フ中ニ入ルカ入ラヌカ、家ヲ建ル土地ハ田舎ニアロウトモ矢張リ都ノ土地ト云フ字ニナルカナラヌカ尋ネテ見マシヨウ
（委員長）
「田舎」ト云フ字ハ翻譯ガ惡ルイニ違ヒナイガ田畑山林ト云フト宅地ガ除カレルカラ
（南部）
聞イタラ良カロウ
（委員長）
「賃貸人ハ土地利用ノ建物内ニ」トナリマスカ
（栗塚）
ハイ
（委員長）
二項ハ宜シウ御座イマスカ
（栗塚）
「天然產物」ヲ「產出物」ト致シマス
（委員長）
三項ノ鑛坑鑛物ヲ削ツタノカ
（栗塚）
日本坑法ニ御座イマスカラ削リマシタ
（委員長）
炭坑ハ
（栗塚）
炭坑ハ使用ガ出來マスカラ置キマス
（松岡）
現在三池ノ炭坑ハ拂ヒ下ゲニナツテ居ル
（委員長）
石炭坑ノ土地ヲ賣タノデナイ、取ル權ヲ賣タノダ
（松岡）
金銀坑ナラ借區ニナリマス
（委員長）
私モ良ク知ラヌガ三池炭坑ハ土地ヲ賣ツタノデハアルマイ
（大尾崎）
高島炭坑ナドハ賣リマシタ
（委員長）
自分ノ土地カラ出ルケレドモ自分デ取ル事ハ出來ナイ、是非借區ヲ願ハナケレバナラヌト云フ事ヲ聞イタ
（南部）
金銀鑛ハ自分ノ土地カラ出テモ取レマセン
（元尾崎）
尙ホ調ベテ見タラ良カロウ
（南部）
併シ借區ハ賣レナイ
（委員長）
借區スルモノダト云フ法律ガアル以上ハ政府ガ三池ノ炭坑ヲ賣ツタト云フノハ其レヲ屈鑿スル權利ヲ賣ツタノデ屈鑿スル權利ヲ賣ツタノハ借區權ヲ賣ツタノト同ジ事ダ
（南部）
借區權ヲ賣ル事ハ出來マスマイ
（委員長）
之ハ跡カラ調ベヨウ
（栗塚）
成程石炭ハイケマセン、政府ノ所有ノ内ニ入テ居リマス、農商務省ノ訓令第一號デハ採掘スル權ヲ政府ガ賣ル丈ケデ地面ハ賣ラナイ
（松岡）
ソウスルト炭坑ト炭ヲ削ラナケレバナラヌ
（元尾崎）
人ノ地面ニ之ガアツタトキハドウスルカ
（栗塚）
他人デハイケナイ
（元尾崎）
地ノ底ニ在ル物ハ政府ノ物デ掘テ上ゲタ物ハ其者ノ所有ニナル
（栗塚）
ソレダト平常賃借シタ人ハ假令バ私ガ或ル所デ銅ヲ掘テ居ル細イ金ニシテ私ノ道具トシテ持テ居ル、其トキ其レヲ押ヘル事ガ出來ル、其レヲ押ヘルノハ唯ノ動產物ト云フ話シデス
（松岡）
差押ヘル事ガ出來ル
（村田）
ソウスルト先取特權ハ石其他ノ物料ノトナルカ
（淸岡）
三池炭坑ナドハ拂ヒ下ゲタ者ガ他ヘ賣ル事ガ出來ルダロウ
（松岡）
賣ル事ハ出來ナイ
（元尾崎）
石坑バカリナラ此項ハ削ルガ宜シイ
（淸岡）
肥料土ハアリマセンカ
（委員長）
「鑛物ニ關シテハ」トシテハドウデス
（松岡）
重イ物ヲ削レバ前項ニ入レテ、備ヘタ物ハ押ヘラルルト云フ所ニ入レレバ宜シイ
（栗塚）
成程削ツテモ宜シウ御座イマス
本條ハ左ノ如ク決ス第一項左ノ如ク改ム賃貸借ト永貸借トヲ問ハス田畑山林ノ賃貸人ハ土地利用ノ建物内ニ備ヘタル動產物ニ付キ及ヒ土地ノ利用ニ供シタル動物農具其他ノ器具ニ付キ右ト同一ノ限度ニ於テ先取特權ヲ有ス第二項報吿委員ノ修正ニ決ス第三項刪除ニ決ス第四項ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
[画像]
○第千百五十五條朗讀ス
第千百五十五條　永借ト賃借ト分果賃借トヲ問ハス賃借人ハ賃貸人ノ擔保ノ爲メ賃借シタル土地ニ其年ノ收獲物及ヒ其他ノ產物ヲ保存スルノ責アリ伹其收獲物及ヒ產物カ保存スル事ヲ得ヘキモノニシテ且其場所カ保存ニ適スルトキニ限ル〔第千七百六十七條〕
賃借人ハ如何ナル場合ニ於テモ賃貸人ノ許諾ヲ受ケス又ハ其年ノ自己ノ義務ヲ履行スル前ニ其收獲物及ヒ產物ヲ搬移シ又ハ之ヲ處分スル事ヲ得ス
（修正按）　第一項　左ノ如ク改ム
永貸借ト賃貸借ト分果賃貸借トヲ問ハス賃借人ハ賃貸人ノ擔保ノ爲メ其年ノ收獲物及ヒ其他ノ產出物ヲ保存スルノ責アリ但其物カ保存スル事ヲ得ヘキモノナルトキニ限ル
第二項
「搬移シ又ハ之ヲ」ノ七字ヲ刪ル
第三項
「剽取」ヲ「隱竊」ト改メ「賃貸」ヲ「賃貸借」ト改メ「田舎ノ土地」以下ヲ「田畑山林又ハ總テ其他土地ノ利用ノ賃貸借ニ之ヲ適用ス」ト改ム
（松岡）
此條ハ止メタラ良カロウ、二項ノ如キハ小作ヲ拂ハヌ内ハ收獲物ヲ自分ノ家ヘ持テ來ル事ハ出來ナイ
（栗塚）
ソコデ削リマシタ
（松岡）
元來雨ガ降ルト云テ家ヘ驅ケ込ンデ來ルノガ日本ノ有樣ダカラ
（南部）
日本ノ昔シノ有樣ハ御年貢ト云テ政府ヘ拂ツテ、其次ギニ地主ニ拂ツタモノデス
（槇村）
之ハトテモイケル事デハナイ、其物ガ賣ル事ガ出來ヌニ地代ヲ呉レロト云テモ出來ナイ
（淸岡）
青イ内カラ食ウ位ダカラ
（南部）
先取特權ヲ置イタ旨意ガ立タヌ
（村田）
南瓜ガ千出來テモ千ガ千出來テカラ賣ルノデナイ、每日出來タ丈ケヅツ賣ルノダカラ
（南部）
保存スベキ事ヲ得ベキ時ニ限ルト云フノハ何ト御覽ニナツタカ
（村田）
地代ヲ拂ハヌ内ハ賣ル事ハナラヌト云フニ困ル
（南部）
借家人デモ先取特權ハ行ハレナイ
（槇村）
南瓜ヤ水瓜ナドハ義務ヲ終ラヌ内ハ動カサレヌト云フト困ル
（元尾崎）
之ヲ無理ニヤルト愛蘭ノ借地黨ノ樣ナモノガ出來ル
（北畠）
開墾地ヲ拵ヘテ飯米マデモ送ツタ、然ルニ其出來タ物ヲ持テ脫走サレテハ困ル
（松岡）
尋常普通ノ賃貸借ト云ヘバ今日ノ小作ノ樣ナモノダ
（北畠）
此法律ガアレバ賣テ仕舞ツテ拂フトキハ警察署ヘ往テ押ヘル事ガ出來ル
（松岡）
其レヲ盜賊ト云フテ押ヘル事ハ出來ナイ
（栗塚）
其レハ剽竊物デスカラ
（松岡）
處分スル事ヲ得ズダカラ食ウ事モ出來ナイ
（栗塚）
地代ヲ拂ハズシテ賣ル事ハ出來ナイ
（松岡）
食フ事モ處分ダ
（委員長）
地貸シ人ノ要求ガアルトキハ要求ノ分丈ケヲ存シテ置クト云フ事ニナレバ宜シイ
（栗塚）
其レカラ賃貸人ノ許諾ヲ受ケレバ宜シイ
（委員長）
一項ヲ以テ見ルト金ハ自分ガ持テ居テモ收獲物ハ擔保ノ爲メニ保存シナケレバナラヌ、私ノ考デハ貸方カラ要求ガアツタトキハ擔保ノ爲メニ收獲物ヲ保存スルト云フ事ヲ入レルノト、其レカラ先キノ「如何ナル場合ニ於テモ」ト云フノヲ削レバ宜シイ
（南部）
ソウスルト此條ハ入ラヌ事ニナリマス
（委員長）
賃貸人カラ御前ハ今年ハ借賃ヲ能ク拂ハヌカラ御前ガ本年得タ米ハ私ニ抵當ニシテ置カナケレバナラヌト云フ請求ガ出來ル、其レ丈ケハ出來ルカラ貸人モ保護スル事ガ出來ル、又借人ガ無闇ニ使ツテ仕舞フ事ハ出來ナイ、此儘デハ貸人ヲ保護シテ借人ヲ保護シナイ
（松岡）
其レナラ宜シウ御座イマシヨウ
（南部）
其レデハ其事ニ修正シタラ良カロウ
（淸岡）
「永貸借賃貸借人タルヲ問ハス賃借人ハ其年ノ義務ノ履行スル前ニ云々」トシタラ宜カロウ
（委員長）
其レデハ尙ホ酷ニナル
（栗塚）
委員長ノ御修正ガ良イト思フ「賃借人ハ賃貸人ノ請求アルニ於テハ其擔保ノ爲メ其年ノ收獲物及ヒ其他ノ產出物ヲ保存スルノ責アリ」トシテ但以下ヲ削リマス
（南部）
二項モ入ラナイ
（委員長）
削ルカ
（松岡）
三項ハ請求ニ背イタトキノ事トシテ置イタラ良カロウ
（淸岡）
三項ノ「又ハ總テ其他ノ」ト云フノハ
（松岡）
ナサソウダ、削ツテ良カロウ
（南部）
石坑ガアルデハナイカ
（松岡）
アレモ削ツタカラ此レモ入ラヌ
（栗塚）
成程削ツテ宜シウ御座イマシヨウ
（委員長）
修正ハ可笑シイ
（南部）
利用ニ供シタル物ノ賃貸借デ御座イマス
（委員長）
隱竊物ハドウダロウ
（南部）
前ニ隱竊物ト決シマシタ
（委員長）
隱竊物ハ考ヘテ貰ヲウ
本條ハ左ノ如ク決ス第一項左ノ如ク改ム永貸借ト賃貸借ト分果貸借トヲ問ハス賃借人ハ賃貸人ノ請求アルニ於テハ其擔保ノ爲メ其年ノ收獲物及ヒ其他ノ產出物ヲ保存スルノ責アリ第二項刪除第三項報吿委員ノ修正ニ決ス
[画像]
○第千百五十六條朗讀ス
第千百五十六條　賃借權ノ讓渡又ハ轉貸ノ場合ニ於テハ賃貸人其賃貸シタル場所ニ備ヘ有ル動產及ヒ其他ノ物カ讓受人又ハ轉借人ニ屬スル事ヲ知ルト雖トモ賃貸人ノ先取特權ハ是等ノ物ニ及フ
此場合ニ於テ先取特權ハ亦第千百三十八條ニ從ヒ讓渡又ハ轉貸ノ代價トシテ主タル賃借人ノ受ク可キ金額ニ及フ伹前拂ヲ以テ賃貸人ニ對抗スル事ヲ得ス〔佛訴第八百二十條〕
（修正案）　第一項「賃借權」ヲ「賃貸借權」ト改メ「及ヒ其他ノ物」ノ六字ヲ刪リ「賃貸人ノ」ヲ「其」ト改ム
（元尾崎）
先キヘ拂ツテアツテモイケナイト云フノカ
（松岡）
イケナイ、此方ヘ御拂ヒナサイ
（委員長）
前拂ヲ以テト云フト
（元尾崎）
先キヘ拂ツテ居ツテモ、我レハ某ヘ拂ツタト云ツテモイケナイ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
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○第千百五十七條朗讀ス
第千百五十七條　賃借人ノ財產ノ總淸算ノ場合ニ於テハ賃貸人ハ前年ト本年ト翌年トノ爲メニ非サレハ借家賃又ハ借地賃及ヒ其他每年ノ負擔ニ付テハ前數條ニ定メタル先取特權ヲ受ケス〔第二千百二條第一號、第一項、第二項〕
其他先取特權ハ賃貸ヨリ生スル他ノ合意上ノ義務、前年ト本年トノ間ノ賃借人ノ過愆又ハ懈怠ノ爲メ賃貸人ノ受ク可キ賠償及ヒ賃貸人カ將來ニ向テ宣吿セシムル事有ル可キ銷除ニ添フタル損害賠償ヲ擔保ス〔同上第三項〕
（修正案）　第一項「負擔ニ付テハ」ヲ「負擔ニ付キ」ト改メ「享ケス」ヲ「有セス」ト改ム第二項左ノ如ク改ム其他先取特權ハ賃貸借ヨリ生スル他ノ約束上ノ義務、前年及ヒ本年ニ於テノ賃借人ノ過失又ハ懈怠ノ爲メ賃貸人ノ受ク可キ賠償及ヒ賃貸人カ將來ニ向テ請求スル事有ル可キ銷除ニ添フタル損害賠償ヲ擔保ス
（元尾崎）
「翌年」ハ甚イ「前年本年」デ良カロウ
（松岡）
私モソウ思フ翌年ハ酷イ
（村田）
併シ五年モ十年モ約束シタノダカラ
（松岡）
未ダ使ハヌ金ノ利息ヲ取ルノト同ジダ
（南部）
擔保ニナルカラ
（松岡）
擔保デハナイ、先取特權デ取ツテ仕舞フノダカラ働カヌ内ニ先キヘ取ル樣ニナル
（淸岡）
來年ノ分ヲ八重取リニスルト云フノデハナイ來年ノ分ヲ出シテモ先取特權ガアルト云フノダロウ
（元尾崎）
其レハ何時デモアル
（淸岡）
取ルノデハアルマイ
（松岡）
先取特權ダカラ取ルノダ、前年ノモ取リ本年ノモ取リ翌年ノモ取ル
（委員長）
前年ノハ取ルマイ、其位ノ奴ダカラ前年ノハ取レナイダロウ
（南部）
擔保ヲ備ヘル事ガ出來マセンカラ
（栗塚）
詰リ淸算ノトキ前拂ヲサセルト見レバ宜シイノデス
（松岡）
地所ト家屋ト書キ分ケレバ宜シイガ出來モシナイ南瓜ヲヨコセト云フ事ハ分ラヌ
（委員長）
貸人ノ身ニナルト小作ヲ澤山シテ居ルノハ二三年前カラ拂ハヌノモアル、今年限リト云フトキ、今年丈ケハ先取特權ガアルガ來年ハナイ、淸算ノ場合ニ於テ賃借人ガ是レカラ借ル事ガ出來ルカ出來ヌカ、借賃ハ拂ハヌ場合ダカラ今年ノ分丈ケハ先取特權ガアルガ、來年ノ分ハ分ラヌ
（南部）
青田ノ成熟シタトキハ外ノ債主ニヤラヌゾト云フノダ
（松岡）
青田デハナイ、植ヘルカ植ヘヌ時デモ宜シイ
（大尾崎）
之ハ三ケ年分ヲ取テ仕舞フノダ
（委員長）
翌年ニ及ブカ及バヌカ物デ見レバ今年カラ肥ヲスル、今年限リデ打切ツテ仕舞フカ來年マデヤルカト云フニ止マル
（松岡）
先取特權ヲ受クルト云ヘバ其時配當ヲ受ケテ仕舞フト解釋シマス
（委員長）
「ボアソナード」ノ意見ハ土地トカ家トカ云フモノニナレバ來年ニ及ブモノモアルカラ一年ハ居付イテ仕事ヲスルモノト見テ一年丈ケハ先取特權ガアルトシテ貸主ヲ保護スル、貴君ノハ貸主ヲ保護セズトモ宜シイ、今年丈ケ先取特權ガアレバ來年ノ勘定ニスレバ宜シイト云フノデシヨウ
（松岡）
ソウデス、收益物カラ取ルノデス、收益物ガナイノニ取ルト云フ事ハナイ事デス
（委員長）
先キヘ取ルト云フノハ來年土地ヲ使ハセルト云フ約束ガアルカラ
（栗塚）
地代ト云フモノハ收獲ガ上ガラナケレバヤラヌト云フノデスカ
（松岡）
ソウデス
（委員長）
翌年ノヲ取ラセルト云フニハ充分ナル理由ガナケレバナラヌ、翌年ノヲ取ラセテ置ケバ地主モ安心スル
（松岡）
地所ト家屋ト別ニスレバ論ハナイ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
[画像]
○第千百五十八條朗讀ス
第千百五十八條　其他ノ債權者ハ初ヨリ如何ナル轉貸ノ禁止アルニ拘ハラス自己ノ利益ニ於テ賃借ノ銷除ヲ妨止シ其賃借權ヲ轉貸シ又ハ讓渡スル事ヲ得伹經過ス可キ賃借殘期ノ爲メ賃貸人ニ借家賃、借地賃又ハ其他納額ヲ擔保スル事ヲ要ス〔佛民同上佛商第五百五十條千八百七十二年二月十二日決議シ二十日ニ頒布シタル佛法律〕
（修正案）　冒頭「其」ノ一字ヲ刪リ「右淸算ノ場合ニ於テ」ノ九字ヲ挿入シ「妨止シ」ノ下「及ヒ」ノ二字ヲ挿入ス
（栗塚）
「右淸算ノ場合ニ於テ他ノ債務者」ト入レマスソレカラ「妨止シ及ヒ」トシマス「債務者ノ賃貸借ノ銷除ノ爲メ」トシテモ宜シウ御座イマスカ
（委員長）
其方ガ宜シイ
（松岡）
賃貸借ノ契約ノ銷除ト云フノダロウ
（淸岡）
債務者ノ銷除ト云フ事デハナイ
（栗塚）
其レデハ債務者ハナイ方ガ宜シイ
（北畠）
「讓渡スル」ト云フノハ可笑シイ「讓渡ス」デ宜シイ
（西）
是レ迄「讓渡スル」ト云フテ來テ居ル
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
[画像]
○第千百五十九條朗讀ス
第二則　種子及ヒ肥料ノ供給者ノ先取特權
第千百五十九條　所有者、用收者、賃借人又ハ占有者ニ土地ニ用ユル種子及ヒ肥料ヲ供給シタル者ハ右ノ供給物ヲ用ヰタル年ノ收獲ノ果實ニ付キ先取特權ヲ有ス〔第二千百二條第一號、第四項〕
其年ニ於テ蠶種及ヒ蠶ノ飼養ニ供スル桑葉ヲ供給シタル者ニ付テモ亦同シ
（修正案）　第一項「用收者」ヲ「用益者」ト改メ「土地ニ用ユル」ノ六字ヲ刪リ「右ノ供給物ヲ」ヲ「之ヲ」ト改ム第二項「其年ニ於テ」ノ五字ヲ刪ル
（栗塚）
「用收者」ハ「用益權」トナリマス「土地ニ用ユル」ハ刪リマス
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
[画像]
○第千百六十條朗讀ス
第三則　農業及ヒ工業ノ職工ノ先取特權
第千百六十條　雇人ニ非スシテ其年ノ產物ノ栽培及ヒ收入ニ使役セラレタル職工ハ其年ニ受ク可キ給料ノ爲メ右ノ產物ニ付キ先取特權ヲ有ス〔第二千百二條第四項〕
右同一ノ先取特權ハ森林、鑛坑、炭坑、石坑、養蠶場ニ於テ使役セラレタル職工ニ屬ス伹其年ノ給料中最後ノ三个月分ノミニ限ル
（修正案）　第三則「職工」ヲ「稼人」ト改ム第一項「職工」ノ上ヲ左ノ如ク改ム雇人ノ外其年ノ產出物ノ栽培及ヒ收獲ノ爲メニ勞働シタル稼人第二項「使役セラレタル職工」ヲ「勞働シタル稼人」ト改メ「三个月分ノミ」ヲ「三个月分ノ爲メノミ」ト改ム
（栗塚）
職工ハ稼人トシマス
（元尾崎）
鑛坑ハ削ルカ
（松岡）
之ハ使ハレル方ダカラ宜シイ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
于時午後第三時四十分閉會