旧民法・法例(明治23年)

法律取調委員会 民法草案再調査案議事筆記 第6回

参考原資料

備考

  • 未校正のテキストデータです.
民法財產編再調査按第六回議事筆記
自第二百二十七條至第二百七十二條
(南部委員)
始メマシヨウ
第二百二十七條朗讀ス
第五章 地役
總則
第二百二十七條 地役トハ或ル不動產ノ便益ノ爲メ他ノ所有者ニ屬スル不動產ノ上ニ設ケタル負擔ヲ謂フ
地役ハ法律又ハ人爲ヲ以テ之ヲ設定ス
(渡委員)
之ハ良シイ
本條ハ原案ニ決ス
第二百二十八條朗讀ス
第一節 法律ヲ以テ設定シタル地役
第一款 隣地ノ立入又ハ通行ノ權利
第二百二十八條 凡ソ所有者ハ土地ノ分界ニ於ケルカ又ハ自己ノ土地ニ工事ヲ爲シ得ルノ餘地ナキ距離ニ於テ牆壁若クハ建物ヲ築造シ又ハ修繕スル爲メ隣地ノ立入ヲ求ムルコトヲ得
(今村委員)
「コトヲ得」ト云フノガ脫ケテ居リマス
(村田委員)
土地ノ分界ト云フ字ハ、隨分八釜敷論デ二百五十七條ノ界限ト云フ字デスネ、彼所ト同ジヨウニスルト云フコトニナツテ居タ
(南部委員)
處ガ彼レハ字ガ改マルコトニナツテ分界ノ如キトキハ同ジニナルガ界限ヲ立ツル場合ハ違フソレデ彼レハ皆界限々々トヤツテ居ル
(村田委員)
アレヲ同ジ文ニスルト云フノデ直シタノデス
(南部委員)
之ニ關係ハナイ
(淸岡委員)
隣地ニ立入リデスカ
(今村委員)
隣地ニ立入テ往クト云フノデス
(委員長)
隣地ヘノトヤツタガ良ハナイカ
(村田委員)
隣地ヘノ立入リデスネ
(松岡委員)
隣地ノ立入リ隣地ニ付ト「ヘ」ノ字ハ含ンデ居ル
(今村委員)
隣地ニ立入ルコトヲ求ムルト云テ良シイデシヨウ
(淸岡委員)
ソレハソウヤツテ良シイ
(今村委員)
ソレハ斯ウ云フ譯例ダカラ申スガコトコトト二ツ重ナル、立入ルコトヲ求ムルコトヲ得ガ本當ダロウガ重ナルカラ上ヲ約シテ下ヲ存スルコトニシマシタ
(南部委員)
ソレハ良シイ
(委員長)
良シイデハナイカ
本條ハ「隣地ノ立入ヲ」トアルヲ「隣地ニ立入ル」トシ「コトヲ得」ヲ脫シタルニ付追加ス其他原案ニ決ス
第二百二十九條朗讀ス
第二百二十九條 右築造又ハ修繕ノ工事ハ急要又ハ極メテ必要ノ場合ヲ除クノ外收獲ヲ害ス可キ季節ニ於テモ隣地ノ所有者又ハ占有者ノ一時不在ノ場合ニ於テモ之ヲ爲サヽルコトヲ要ス
如何ナル場合ニ於テモ隣地ノ承諾アルニ非サレハ右工事ノ爲メ其住家ニ立入ルコトヲ得ス縱令其修繕ヲ要スル建物カ隣人ノ住家ニ連接スルモ亦同シ
(村田委員)
其修繕ヲ要スル建物ハ隣地ノトアルカネ、修繕バカリデハナイ「如何ナル場合ニモ隣人ノ承諾アルニ非サレハ云々右工事ノ爲メ」ト云フハ右ノ築造修繕ノ工事デスネ、ソウシテ見ルト、修繕ヲ要スル建物バカリデハナイ修繕ト築造ト二ツ要サナケレバナラン
(南部委員)
築造ヲ要スル場合ニハ勿論立入ルコトハ出來ンハ分テ居ルソレデ修繕ト云テ居ル
(尾崎委員)
築造ハ頭マデ出來ンノダカラ之デ良シイ
(槇村委員)
修繕ハ隣人ノ建物ニ增設スルモノデソレヲスルニハト云フノダ
(村田委員)
工事ト云フノハ修繕ト二ツアルノダカラネ
(今村委員)
二ツアルケレドモ此所ト修繕バカリヲ云フノデス
(尾崎委員)
村田君ノ說ハ贊成者ガナイカラ
(村田委員)
前ノハ修繕ト云フ字ハナイ
(南部委員)
ソレハ古イノデ譯ガ違テ居ル
(淸岡委員)
爲サザルコトヲ要ストハ聞カンコトダナ
(今村委員)
シテハ、往カント云フノデス
(松岡委員)
爲スベカラズ、デハ往カンノデスカ
(淸岡委員)
爲スベカラズ、ト云テ良ササウデス
(今村委員)
成ル丈ケ原語ニ合ハシテヤツタノデス
(尾崎委員)
之デ良シイ
(委員長)
良クバ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第二百三十條朗讀ス
第二百三十條 立入ヲ許諾セル隣人ハ工事ノ性質及ヒ時期ヲ啇量シテ其受ケタル妨害ニ應スル償金ヲ要求スルコトヲ得
(南部委員)
「妨害ニニ」ハ愆字デシヨウ
(三島委員)
誤リデス
(尾崎委員)
妨害ニ應ズルト云フノハ足ラソヨウデス日本デハ相當トカ何トカシナケレバナラン
(三島委員)
「相」ノ字ヲ加ヘテモ良シイ
(南部委員)
分テハ居ルガ、應ズルト云フノハ成程向ウカラ物ヲ言フニ應ヘタト云フヨウニ見ヘル
(北畠委員)
「相」ト云フ字ヲ入レマシヨウ
(委員長)
入レマシヨウ
本條「妨害ニニ」トアルハ愆字ニ付「妨害ニ相應」トシ其他原案ニ決ス
第二百三十一條朗讀ス
第二百三十一條 或ル土地カ他ノ土地ニ圍繞セラレテ袋地ト爲リ公路ニ通スル能ハサルトキハ圍繞地ハ公路ニ至ルノ通路ヲ其袋地ニ供スルコトヲ要ス但下ニ記載シタル如ク二樣ノ償金ヲ拂ハシムルコトヲ得
土地カ掘割若クハ河海ニ由ルニ非サレハ他ニ通スル能ハサルトキ又ハ崖岸アリテ公路ト著シキ高低ヲ爲ストキハ之ヲ袋地ト看做スコトヲ得縱令其掘割カ公有ニ屬スルモ亦同シ
(村田委員)
「縱令其掘割カ公用ニ屬スル」ト云フノハ眼ニ立テ來タガ如何デシヨウ川モ公用ニ屬スルヨウナ心持ガスル
(南部委員)
意味ハナイ
(今村委員)
ソウ云フ論ダト縱令以下ハ皆刪テモ良シイ
(村田委員)
刪タ方ガ良シイ
(松岡委員)
刪ルト元トノ通リニナツテ大層過ギルネ
(村田委員)
元トハ工事ノ掘割若クハトアル
(南部委員)
元トノ通リガ良シイ
(尾崎委員)
之ハ刪タ方ガ良シイ
(今村委員)
縱令其掘割ガ公用デモト云フノデス
(松岡委員)
元トノ通リデ良シイデシヨウ
(三島委員)
ソウスルト工事ノ掘割若シクハ河海ト云ハナケレバナラン
(南部委員)
原文ガ斯ウ云フ風デスカ
(今村委員)
左樣デス詰リ掘割ノ處ヘ以テ公用デモト云フノデス實ハ叮寧ナノデス
(松岡委員)
詰リ委シク云フ必要ハナイ
(今村委員)
コウ云フ譯ケガアルカラ掘割ハ川ト違フ、私ノモノナレバ人ノ領分ダカラ妄リニ通ル譯ニハ往カン公ナレバ道路ト同ジダカラ勝手ニ通レル、而見レバ袋地デナカロウト云フ論ヲ防グ爲メデアリマス
(松岡委員)
隣リニ續イテ居レバ川ハ一人ノ掘割トハ云ヘヌカラ此字ハナクトモ良シイ
(今村委員)
縱令以下ハ無クトモ差支ハナイ
(尾崎委員)
除キマシヨウ
(淸岡委員)
元トノ通リニシテ置キマシヨウ
(委員長)
公路ニ通ズルマデト云フノダカラ公有ノモノナラ川ガ公通ノ川ト云ツタラ其レガ公路ト同ジモノダカラト云フ論ガ起ル
(今村委員)
其爲メニ書イテアルノデス
(尾崎委員)
始メニ掘割若クハ河海ト有ルカラ之ハ廣ク掛ツテ居ルノデ差支ハアリマセン
(尾崎委員)
掘割ト見ルト云フ丈ケデアリマス
(尾崎委員)
其レ丈ケデアリマスカラ縱令以下ハ刪リマシヨウ
(淸岡委員)
議論ガ八釜敷カツテスルト何レ爭ヒノアル時デアリマス
(松岡委員)
爭ヒノ出樣ハアリマセン
(渡委員)
所有ノ何タルヲ問ハズ地形ノコトヲ云フノデ袋地ノ位置ヲ言フノダカラ縱令バ公通モ私通モ其レニハ全體拘ハランノデアリマス
(尾崎委員)
其デハ縱令以下ハ刪リマシヨウ
(委員長)
先ヘヤリマシヨウ
本條ノ「縱令」以下刪除シ其他原案ニ決ス
第二百三十二條朗讀ス
第二百三十二條 袋地ノ利用又ハ其住居人ノ需用ノ爲メ定期又ハ不斷ニ車輛ヲ用ユルコトヲ要スルトキハ通路ノ幅ハ其用ニ相應スルコトヲ要ス
通行ノ必要又ハ其方法及ヒ條件ニ付當事者ノ議協ハサルトキハ裁判所ハ成ル可ク袋地ノ需用及ヒ通行ノ便利ト承役地ノ損害トヲ斟酌調和スルコトヲ要ス
(松岡委員)
第一項ハナクテモ良イト思ヒマス
(尾崎委員)
之ハナクテハ往ケマセン
(松岡委員)
習慣モアルカラ裁判官ニ任シテ宜ロシイ
(尾崎委員)
裁判官デモ證據ガナケレバ如何カラ我輩ハ斯ウヤツテ置クガ宜イト思ヒマス
(村田委員)
前ニ利用ノ一項ニ言ツテ二項ニ袋地ノ需用ト言ツテアルガ同ジデアリマシヨウカ
(今村委員)
違イマス
(委員長)
格別デナケレバ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第二百三十三條朗讀ス
第二百三十三條 通路ノ開設及ヒ保持ノ工事ハ袋地ノ負擔ニ屬ス
承役地ノ建物又ハ樹林ヲ取除キ又ハ變更セシムルノ必要アルトキハ一回限ノ償金ヲ其所有者ニ辨償ス
其他承役地ノ使用又ハ耕作ヲ減シ及ヒ永ク其地ノ價格ヲ減スルニ付テノ償金ハ每年之ヲ辨償ス
(村田委員)
之ハ解シ易イ
(松岡委員)
樹木ヲ樹林トシテカ
(村田委員)
前カラ樹林トヤツテ居リマス
(松岡委員)
承役地ノ林ヲ爲シテ居ラン樹木ナラ構ハンノカ
(今村委員)
ソウ云フコトハアリマスマイ建物樹林ト計リアリマスガケレドモ此ニ類スルモノガアレバ矢張リ償金ヲ拂ハナケレバナリマセン
(松岡委員)
建物樹木ト云ツテ樹林ガアツテモ往ケンダロウ樹木ト云フト樹林ハドウカト云フ論ガアリマシヨウ
(今村委員)
前ノ反譯ガ間違ツテ居ルノデ御座イマス
(尾崎委員)
樹木デ宜カリソウナモノデス
(今村委員)
建物ト樹林ハイツモ併ンデ居ルノデソウスルト一本松ノ木ガ植テアツタガ建物ト對センノデケレドモ引付ケテ云ツテ仕舞フノデアリマス
(槇村委員)
樹木デ宜ロシイ
(村田委員)
前カラ樹林ト直ホシタカラ困リマス
(渡委員)
木ガ一二本併ンデ居ル時ハ違フカラ宜イデハナイカ
(南部委員)
樹木トシテモ盡ル譯ニハ往キマセン
(村田委員)
無論竹林モ這入ツテ居リマスノデアリマス
(委員長)
格別ハナイカラ往キマシヨウ
(松岡委員)
此處デ其他ノ價格ト直シタノハ何ウ云フ分ケカ
(今村委員)
名詞ニ使フノト形容詞ニ使フノト外ニアリマセン
(委員長)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第二百三十四條朗讀ス
第二百三十四條 袋地タルコトノ止ミタルトキハ通行ノ權利及ヒ償金ノ義務ハ隨テ消滅ス
要役地ノ所有者ハ未タ拂期限ノ至ラサル償金ノ六ケ月分ヲ拂ヒテ常ニ通行ノ權利ヲ抛棄シ及ヒ之ニ對スル義務ヲ免カルコトヲ得
(松岡委員)
始メノ憲法ノ割デ云フト袋地ノ止ミタルトキ通行及ビ償金ノ義務ハ各自ニ互ニ負擔スルヲ止ムト云フノデ袋地ガ止ムト一方通行シナケレバナラン義務モ消ヘ一方モ通行シナイカラ償金ノ負擔ヲモ止ムトアルガ今度ハ通行ノ權利ト償金ノ義務ト從テ消滅シテ要役地ノ人計リニ掛ツテ居ルハ如何ナルモノカ
(今村委員)
元ト原書ヲ反譯シテ斯ウアルノデ袋地タルガ止ムトキハ通行ト本人ノ償金トガ互ニ止ムトアルノデス
(松岡委員)
互ニト言フト通行ノ義務ノ方ニナリハ仕舞センカ
(今村委員)
通行ノ義務トハ言ヘンカラ通行ヲ受ケルノ義務ナレバ宜シイ通行ト云フト權利ト云ハナケレバナリマセン
(尾崎委員)
通行ノ義務ト云フノハ六ケ敷
(今村委員)
意味ハ變ラン積リデス卽チ權利ガナクナレバ義務モナクナリマス
(尾崎委員)
意味ハ分ツテ居ルガ例ヘバ畑トカ土地カラ言ツテ宜イガ家デモ建ツテ玄關ヲ眞向ニ作ツタガ處ガ裏ガ袋地ナクナツテ一方ガ通レントナツタラバ困ルダロウ
(今村委員)
困ルカモ知レン
(松岡委員)
袋地ニ手ヲ燒タ人ガ良ク分ルカラ妙ナモノデス
(南部委員)
斯ウ云フ類ハナイガ文字上償金ノ義務ガ淸滅スルト一回限ノ義務モ消滅スルト讀ミハセンカ
(今村委員)
一回限リノデアリマスカラソウ云フ關係ハアリマセンデシヨウ
(尾崎委員)
裏ガ開イタラ表ハ閉テナケレバナラント云フノハオカシイ
(今村委員)
法律ガモノヲ定メタラ必ズ人民ノ幸不幸ガアリマス
(淸岡委員)
大體相應スルモノヲ與ヘルトカ云フ法律ガ定メラレルデス相應スルニ定メナイト云フコトハオカシイ
(尾崎委員)
六月ハヤルニ及バン
(村田委員)
六月ハヤツテ宜イノデス
(淸岡委員)
人ノ地面ニ作テ宜ロシウ御座ルト云ツテハ酷イ
(尾崎委員)
其レ故元ノ通リニシテ返セト云フノデス
(南部委員)
滅多ニアルモノデハナイ
(尾崎委員)
先ヅ宜カロウ
(尾崎委員)
袋地ノ隣ニナツタラ自分ガ損ト思ツテ居レバ宜ロシイ先ヘ往キマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第二百三十五條朗讀ス
第二百三十五條 當事者ハ通行ヨリ生スル永久ノ損害ノ償金ヲ定ムルニ元本ヲ以テシ又ハ每年償金ヲ拂フノ義務ヲ贖回スルノ契約ヲ取結フコトヲ得
右孰レノ場合ニ於テモ袋地タルコトノ止ミタルトキハ元本ノ半額ヲ返還ス可シ但シ此ニ異ナル契約アルトキハ此限ニ在ラス
(村田委員)
元ノトハ變ツテ居リマスガ斯ウ直タノハ何時ノ事デスカ
(今村委員)
此項デアリマス
(松岡委員)
「ボアソナード」ガ直シタ丈ケデスカ
(今村委員)
「ボアソナード」ガ直シタノデアリマス
(松岡委員)
下ラン條デアツタガ起案者モ考ヘタト見ヘテ直シタノデシヨウ
(今村委員)
刪除ノ建議ノ理ヲ申シマスガ元ハ「ボアソナード」ガ自分デコンナコトヲ云フニ及バント云ツテ刪ツテソウシテ若シ斯ウ云フコトヲ先ニ元金ヲ拂ツタナラ義務ヲ免カルルコトガ出來ルト當事者ガ契約スルカ或ハ始メカラ契約スルカモ知レン無論法律ガ禁ズルコトハ出來ン、扨ソウシタトキハ何ウデスカト云ハナケレバナラント云フ其時ノ爲メニ規則ヲ嵌メルト云ツテ來タ、スルト二項ハ規則デ一項ハ二項ノ呼出ノ爲メデアリマス處ガ私ノ目デ見ルト例ヘバ年々五圓拂ハナケレバナランガ時々五圓ノ二十倍トカ貸借ノ相場ニ因テ百圓ヤツテ年々地代ヲ拂フコトハナイト約束シタ處ガ袋地ヲ知ツタルトキハ五十圓返サナケレバナラントアル之ハオカシイカラ二三度往復シテ質問シタガ、斯ウ云フノデ返スノハ地面ノ代價ナイト始メニ取ツタガ通行ノ義務ヲ身受シタル金デアルト地面ノ價ヘデナイト云フ其義務ガナクナツテ仕舞ヘバ理窟上一文モ貸スコトニハ及バンソウシテ地面ガ元ヘ返ツテ宜シイガ其レデハ實際迷惑スルカモ知レンカラ何ニ分カ返サナケレバナラント云フ論デ何ウモ不都合ダカラ之ヲ刪除シテ當事者ノ勝手ニ任シタ分ガ寧ロ宜ロシイ
(尾崎委員)
日本デハ買ハシテ仕舞ヒマス
(今村委員)
買ハセルノハ惡イノデス
(尾崎委員)
勝手ダカラ宜ロシイ二十倍モ出シテ地面モ買ハズニ通行權丈ケヲ得テ居ルナラバ滅多ニナイカラ先ヅ買ヒマス
(今村委員)
契約ニ任カセル積リデ刪ルガ宜ロシイ
(南部委員)
刪ルガ宜ロシイ
(淸岡委員)
刪ルハ贊成
(委員長)
此條ガアレバ元本ヲ拂ツテ年賦デ拂ハンデモ宜イト云フコトガ分ルガ之ガナイト年賦デ拂フ樣ニナルト見ハセンカ
(今村委員)
契約ノ自由デ禁ジナイ以上ハ勝手ニ出來ル
(委員長)
三十三條ノ三項ニ償金ハ每年之ヲ辨償スルトアルカラソウト見ハセンガ合意上デアレバ一時ニ拂ツテモ宜シイガ疑ヒハナイカ
(尾崎委員)
ソンナコトハアリマスマイ
(槇村委員)
差支ハアリマスマイ
(委員長)
每年分ヲ五年ナリ十年ヲ一年分ヲ十集メタノデナケレバ如何ト半分拂ツタラ出來ルト云フハ見ヘン樣ニナルカラ此處デ五年ブリ十年分丈ケハシヨウト云ヘバ宜イ勿論相談付クナラバ一ケ年百圓拂ヘバ十年千圓拂ハナケレバナラント云フハ議論ガ起ルニ違イナイ
(南部委員)
斯ウ云フコトハ滅多ニハアリマセン
(委員長)
之ヲ刪ルハ工合モ宜ロシイガ起草者ガ二十倍デ元金ヲ拂ツタモノト見テ後ハ拂ハンデハ宜イト云フ定度ガ立ツカ之ガナイト裁判官ガ其ヲ立テルコトガ出來ン舊案ノ二十倍ニ均シキ金額ヲ拂フカラ通行權ヲ保存シテ云々トアルニソウ云フコトガ裁判官ハ定メルコトハ出來ン當人等ノ承諾ニ因ルヨリ外ハナイ
(淸岡委員)
二十倍ト云フガ寧ロ宜シイト思ヒマス
(委員長)
二十倍トカ或ハ二ケ年トカ云フガ宜イト思フ裁判官ガ法律ヲ定木トシテヤルノデアリマスカラ
(南部委員)
一項ハ益々不用デアリマス
(淸岡委員)
二項ハ工合ガ惡ルイ
(今村委員)
惡イカラ刪除スルノデス
(村田委員)
ソウナラ刪ルガ宜シイ
(委員長)
此案ナラ刪ルガ宜シイ
(村田委員)
舊案ナラ置クガ宜イダロウ
(今村委員)
彼レハ「ボアソナード」ガ先キニ年金權ノ買戻ト云フノガアル其時二十倍ト云フノデ外ノ事ニハ地役ノ何ニヲ買戻スト云フコトハナイ其レモ買戻セバ都合ガ宜イト云フ彼レカラ出タノデアリマス年金權ハ定マツタモノ之ハ地面デアリマスカラ之ヲ法律デ必ズシモ二十倍ト定メラルルカト言ツテヤツタ彼方ノハ金デ成リ立ツテ居ルカラ或ハ定メラルルガ之ハ法律デアツテスルコトガ出來ント云ツテ惡ルイト云ツテ替リニ斯ウ云フ事ヲ來シタノデアリマス
(村田委員)
代補物ノ方ガ惡イ
(今村委員)
袋地デナクツテモ當事者ノ相談デ人ノ地面ヲ便利ノ爲メニヤルコトハ幾等モアリマス
(村田委員)
權利處デハナイ二十倍出シタラ大槪買ヘルカモ知レヌ
(松岡委員)
取リ年ニナルト贊レト云フニ賣ラント云フノハ尙ホ惡イ
(委員長)
刪リマスカ
(西委員)
刪テ宜シイ樣デス
本條ハ刪除ニ決ス
第二百三十六條朗讀ス
第二百三十六條 土地ノ一分ノ讓渡又ハ共有者間ノ分割ニ因リテ袋地ノ生シタルトキハ讓渡人又ハ分割者ハ償金ヲ受クル無クシテ通路ヲ供スルノ義務ヲ負擔ス此義務ハ公路ノ創設ニ因リテ袋地タルコトノ止ミタルトキハ消滅ス
(松岡委員)
之ハ異議ナシ
(南部委員)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第二百三十七條朗讀ス
第二款 水ノ疏通、使用及ヒ引入
第二百三十七條 低地ノ所有者ハ人工ニ因ラスシテ自然ニ高地ヨリ流下スル雨水及ヒ泉水ヲ承クルノ義務アリ
人工ヲ以テ水ノ疏通路ヲ創設シ又ハ變更セシト雖モ其工事カ三十个年前ニ在ルカ又ハ年月ヲ知ル可カラサルトキハ亦同シ
(村田委員)
年月ヲ知ル可カラズハ大變ニ骨ヲ折テ分カランデアリマシタガ之デ宜クナリマシタ
(槇村委員)
之ハ宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第二百三十八條朗讀ス
第二百三十八條 堤、塘其他水ヲ湛フル工作物ノ破潰ニ因リ又ハ水樋掘割ノ阻塞ニ因リ高地ノ水量ヲ增シテ衝激ヲ致シ又ハ方向ヲ變セントスルトキハ低地ノ所有者ハ第二百十四條ノ二及ヒ第二百二十二條ニ從ヒ急害ノ吿發ヲ爲シ及ヒ高地ノ所有者ノ費用ヲ以テ其修繕ヲ爲スコトヲ得
事變ニ因リ低地ニ於テ水流ノ阻塞シタルトキハ高地ノ所有者ハ平常ノ疏通ニ復スル爲メ自費ヲ以テ必要ノ工事ヲ爲スノ權利ヲ有ス然レトモ其義務ヲ負擔セス
(村田委員)
急害ノ吿發ト云フノデハナイ急害吿發ト云フノダロウ
(今村委員)
「ノ」ノ字ヲ刪ツテモ一向差支ハアリマセン
(南部委員)
之ハ大變ニ宜クナリマシタ
(槇村委員)
宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第二百三十九條朗讀ス
第二百三十九條 所有者ハ雨水ノ直チニ隣地ニ落ツル如キ屋根其他ノ工作物ヲ設クルコトヲ得ス
(今村委員)
「數」ノ字ガ脫シテ居リマス
(村田委員)
一項ハ刪除デスカ
(南部委員)
一項ハ起案者ガ刪除シタノデス
(尾崎委員)
之ハ宜シイ
(今村委員)
之モ此方カラ言ツテヤツテ成程重複ダカラト云フノデ刪リマシタ
(松岡委員)
之モ問ハントシマスカ
本條ハ原案ニ決ス
第二百四十條朗讀ス
第二百四十條 泉源ノ所有者ハ隨意ニ之ヲ使用シ且自然ニ隣地ニ流ル可キ餘水ヲ隣人ニ與ヘサルノ權利ヲ有ス但次條及ヒ第二百九十六條ノ規定其他鑛泉ノ利用、收益ニ關スル行政法ノ規定ヲ妨ケス
(今村委員)
「給ス」ハ「與ヘ」トナリマス給スルト云フ字ハ給金ノ樣ニ見ヘルカラ與ヘトシマシタノデ隣リノ人カラ水ヲ下サイト云ツテモ否ヤト云フ權利ヲ云フノデアリマス
(尾崎委員)
貴君ノ側ヲ越ス水ハ除ツテ居ルカラ流シテ下サイト云ヘルダロウ
(今村委員)
云ツテモ否ヤト云フノ權利ト云フノデアリマス日本デハ一種ノ地役ガアリマス井戶ヲ持テ居ル家ハ(井)ト登テ門ニ貼テアリマス
(南部委員)
彼レハ警察カラデシヨウ
(松岡委員)
之ハ宜ロシイ
本條ハ「給セサル」ハ「與ヘサル」ト改メ其他原案ニ決ス
第二百四十一條朗讀ス
第二百四十一條 泉源ノ水カ一町村又ハ一部落ノ住民ノ家用ニ必要ナルトキハ所有者ハ其水ノ不用ノ部分ヲ流過セシムルノ責ニ任ス
又町村ハ自費ヲ以テ水ノ聚合及ヒ引入ニ必要ナル工事ヲ泉源ノ土地ニ施スコトヲ得但其工事ノ爲メ償金ヲ拂ヒ且其土地ニ永久ノ損害ヲ生セシメサルコトヲ要ス
其他町村ハ水ノ使用ノ爲メ償金ヲ拂フコトヲ要ス但三十ケ年間無償ニテ使用ヲ爲シタルトキハ此限ニ在ラス
(渡委員)
此條ハ實ニ八釜敷カツタノデアリマス
(松岡委員)
「一部落」ト云フ事ヲ止メテハ如何部落ト云フノハ一村ヨリ内ノ小サイモノト云フモ宜ロシイ又次ノ項ニ町村ト云ツテ第一項ハ第二百五十三條末項ト重複ナルヲ以テ削除居ル人民ノ集合シテ居ルニ大イノハ町村トハ見ヘナイ一部落ト云フハ
(三島委員)
部落ハ大イモ小サイモナリマス
(今村委員)
此處デハ町村ノ積リデアリマス
(松岡委員)
部落ト云フハ大イカ小サイカ知レン
(今村委員)
一町村ト云フハ近來數町村ヲ合シテ一町村トナスコトガアリマス
(渡委員)
之ハ宜シイ
(槇村委員)
アル方ガ宜シイ
(尾崎委員)
幾ツモ集メテ部落ヲ成シテ居リマス
(今村委員)
又其一部落ト云フモ宜シイ
(村田委員)
村ノ内ノ一部落トハ見ヘナイ
(北畠委員)
落ノ字ヲ刪ツテモ宜シイ
(村田委員)
落ノ字ヲ刪ルト其トデモ加ヘナイト惡フ御座イマス
(尾崎委員)
原案デ置キマシヨウ
(委員長)
宜シクバ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第二百四十二條朗讀ス
第二百四十二條 私有泉源ノ餘水カ何人ノ利益ヲモ爲サスシテ外ニ流出スルトキハ其水ノ出口ニ最近ナル住人ハ前條ニ記載シタル如ク必要ノ工事ヲ爲シ容假ニテ己レノ方ニ其水ヲ導クノ權能ヲ求ムルコトヲ得
(村田委員)
「住人」ハ元ト隣人トアツタガ隣人デ宜ロシイ
(南部委員)
隣人デ宜ロシイ
(尾崎委員)
權能ト云フノハ
(今村委員)
本當ノ權能デアリマス
(松岡委員)
容假ト云フノダカラ其レ限リデス
(尾崎委員)
其ナラバ此條ハイランノデス何時デモナラント云ツタラ其レ限リナラバ法律ニ揭ゲンデ同ジアリマス
(松岡委員)
容假ト云フノハホンノ御情ケデアリマス
(今村委員)
然シ期限ヲ定メテ五年間定メテト云ヘバ出來ルノデ
(尾崎委員)
否ヤト云ヘバ如何
(今村委員)
其レ限リデス
(尾崎委員)
其レナラバ之ハ刪ラウデハアリマセンカ
(淸岡委員)
「求ムルコトヲ得」ト云フノハ求メラレテ否ヤ應ガ云ヘル其時丈ケ否ヤトハ云ヘンノデ其後否ヤト云ヘルノデス
(南部委員)
其時カラ否ヤト言ヘルノデス
(淸岡委員)
ソンナラ權能ヲ求ムルト云フノハオカシイ
(松岡委員)
容假デ云フ置イテ否ヤト云ツテモ云ヘルト云フナレバ任シテ置イテモ宜シイ
(南部委員)
之ハ片食ニ物ヲヤルト同ジコトダト註ニモアリマス
(松岡委員)
テーブルニ餘ツタバンヲヤルト同ジト言ツテ居ルノダ
(今村委員)
法律ガ是非遣レトハ云ヘヌノデス
(南部委員)
ソレハ云ヘヌ
(松岡委員)
今迄右ノ人ニ遣ルトシテ今度左ノ人ニ遣ルト云フコトモ出來ル
(尾崎委員)
權能抔ト云フハオカシイ、乞食ニ貰フ權能ガアルノカ
(今村委員)
權能ガアルノデス
(松岡委員)
伊太利民法ニ云々ト云フガ伊太利ニコンナコトハナイ
(今村委員)
要スルニ暑イヲ我慢シテ、ヤル程ノ條デハナイ
(松岡委員)
思切テ刪テハ何ウカ
(淸岡委員)
刪ルガ良シイ
(尾崎委員)
刪ルガ良シイ
(委員長)
刪ルカ、先ヘヤリマシヨウ
本條ハ刪除ニ決ス
第二百四十三條朗讀ス
第二百四十三條 水流、掘割又ハ池ノ沿岸者ニシテ其床地ヲ所有スル者ハ家用及ヒ農工業用ニ其水ヲ使用スルコトヲ得然レトモ其水路及ヒ幅員ヲ變スルコトヲ得ス
同上ノ流水ノ通過スル土地ノ所有者ハ右ト同一ノ需用ノ爲メ其地內ニ於テ水路ヲ變轉スルコトヲ得然レトモ其水ノ出口ニ於テハ之ヲ自然ノ水路ニ復スルコトヲ要ス
右孰レノ場合ニ於テモ沿岸者ハ地方ノ規則ニ從ヒ捕漁ノ權利ヲ有ス
沿岸者ハ對岸者ニ損害ヲ及ホス可キトキハ己レノ方ニ於テ堤防ヲ築クコトヲ得ス
(今村委員)
「捕漁」トアルハ「捕魚」ノ誤リデス
(委員長)
之ハ良ウナツタ
(村田委員)
池ト云フノハ、オカシクナツタヨウニ思フガ、流水池抔ハ如何水流デ良シイ
(尾崎委員)
其床地ヲ有スル者云々、ト床地ヲ有セヌ者ハ水ヲ使フコトハナランノカ
(今村委員)
行政法デ別ニ立テサセル積リデアリマス利根川トカ云フヨウナ水ノ使ヒ方ハ行政法デ定メル積リデアリマス
(尾崎委員)
掘割池ハ床地ト誰ニモ屬セヌモノガ幾ラモアロウ
(今村委員)
行政法デ定メルノデアリマス
(尾崎委員)
此所デハ床地ヲ有スル者丈ケト云フノダネ
(今村委員)
左樣デス
(槇村委員)
舊案トハ變リマシタネ
(今村委員)
一項ハ「ボアソナード」ガ改ヘタノデス
(村田委員)
「湖」ト云フ字ヲ入レテハ如何
(南部委員)
湖水ヲ自分ガ持テ居ルノハ、エライ、ネ
(松岡委員)
實際コウ云フ場合ハドウデモ宜シイ
(槇村委員)
前ノ方ガ能ク分ル
(松岡委員)
前モ同ジデス
(槇村委員)
前ノ一項ハ誰ニモ屬セヌト云フ
(松岡委員)
ソレハ水丈ケデ、土地ハ屬シテ居ルノデス
(槇村委員)
一個人ニモ屬セシ水ハ流水ニ連接シタ土地ノ所有者其土地ハ水ノ連接ト土地トアル、ダカラ變ズルコトガ出來ル
(南部委員)
私有ニモ公有ニモ屬セント云フ論モアツタガソウ云フコトガアルモノデナイト云フ論モアツタ
(槇村委員)
水ニ連接シタ土地ノ人ダロウ今度ノハ卽チ床地ト云フハ川床ヲ所有スルノダロウ
(南部委員)
沿岸者ニシテ、トアル
(槇村委員)
床地ハ水ノ床地ヲ所有シテ居ルノデ、二項ニナルト土地ノ所有者トナルト矢張リ同ジデス
(委員長)
川ガアツテ一方ノ側ハ自分ガ持テ居ル向ウハ他人ガ持テ居ル、央ヲ流レテ居ルノデ、スルト水流ヲ變換シタトスルコトハ出來ヌノデ、所有地内丈ケハ轉換シテモ宜イト云フノデス
(北畠委員)
川床ヲ所有ト云フコトガアリマスカ
(今村委員)
アリマス
(北畠委員)
貴君ノ土地カラ私ノ土地ヘ灌激水ヲ引クニ三島君ノ田地ヲ通テ貰フ位ヒナモノデス
(今村委員)
日本ニハ妙ナ慣習ガアツテ餘程大キナ川デ川床ガ所有地ニナツテ居ルノガアリマス
(尾崎委員)
アリマス
(委員長)
分テ、居ルネ
(尾崎委員)
沿岸者デナクシテ所有者ガアルカモ知レン住居ハシテ居ランガ地券ヲ持テ居ル抔ト云フノガアロウ
(南部委員)
ソウ云フコトヲ區別シタモノニハナイ
(委員長)
何程沿岸者デモ借家主ハイカン
(尾崎委員)
川床ヲ持テハ居ルガ自分ハ何所ニ居ルカ
(南部委員)
矢張沿岸者ダ
(今村委員)
沼岸者ト云フノハ川端ノ地面ノ所有者ト云フノデス
(尾崎委員)
ソウハ讀メマセン川端ニ住ト沼岸者デス
(委員長)
沿岸者ト云ヘバ權利ノ付タ人ダ
(松岡委員)
一項ハ實用ハ滅多ニナイト思テ居レバ良シイ
(尾崎委員)
遂ニ水ハ只使フタノダネ
(松岡委員)
ソレハ先ヘ行テ使ヘルコトガアルノデス
(北畠委員)
床地ト謂ハズ連接地ヲ所有スルト云テ良シイ、沿岸者ニシテト云フト或ハ二ツノ所有ニ見ヘル
(南部委員)
二ツアルノデ、沿岸者ニシテ床地ヲ所有シテ居ル人々ダ
(松岡委員)
ソウデナイ公用ニナツテ居レバ持テ居ル居ランハ謂ヘヌ
(西委員)
適用ハ少イカモ如レソガ、之デ良ササウナモノデス
(村田委員)
滅多ニハナカロウ
(松岡委員)
詰リ此法律ハ虛文ト云フニ過ギナイ
(尾崎委員)
往キマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第二百四十四條朗讀ス
第二百四十四條 前條ニ定メタル二個ノ場合ニ於テ其水ヲ有用トス可キ沿岸者又ハ低地ノ所有者ヨリ爭ヲ起シタルトキハ裁判所ハ地方ノ慣習ヲ斟酌シ且衞生ノ需用ト農工業ノ利益トヲ調和シテ之ヲ決ス
(今村委員)
「且衞生」ト云フ文字ガアリマスガ歐羅巴流義デハ私ノ衞生公ノ衞生ト二ツデアルガ「ボアソナード」ニ其區別シテアルカヲ聞クニ私ノ衞生ノ今一層狹バメタ家内ノ衞生ト云フ積リト云フノデス
(松岡委員)
公ノ衞生ニハ關係ハナイノダロウ、併シ一家ノ衞生ト云フノダロウ
(村田委員)
汚穢物ヲ流シタトカ云フコトモアロウ
(尾崎委員)
之ハ只衞生デ良シイ
(三島委員)
字句ノコトデスカ「其水ヲ有用トス可キ」ト云フハ「其水ヲ利用ス可」ト云フ方ガ良シイヨウデス
(渡委員)
其方ガ良シイ
(委員長)
利用ノ方ガ良シイ
(尾崎委員)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ「其水ヲ有用ス可キ」ヲ「其水ヲ利用ス可キ」ト改メ其他原案ニ決ス
第二百四十五條朗讀ス
第二百四十五條 右流水ニ關スル取締ハ地方官ニ屬ス府縣廳ハ其流水ノ疏通、保持及ヒ魚類ノ保育ニ付キ必要ノ處分ヲ令スルコトヲ得
(今村委員)
此條ハ今度「ボアソナード」ガ少シ修正シテ來タノデ、一體此條カラ下ノ四十六七八條ヲ刪タガ原案ニハ詰リ論ガアレバ費用ヲ取立ルガ良シイ抔トアツタガ、此コトハ知テ仰シヤルノカ日本デハ水ヲ以テ立テ居ラン國デ米ヲ作ラナケレバナラン爲メ水ヲ買ツタリスルノデ水害ヲ受ケルト官カラ金ヲ出シテ修繕ヲサセナケレバ人民ノ力デハ出來ヌ有樣デアル、ソレヲ民法ガ此修繕費ヲ人民ガ負擔セヨト云フテ定メルハ大變ナ話デ此コトニ付テ從來政府デモ苦シムノデ今一ツ民法デユウトハ出來ヌト思フガ行政法ニ讓テ民法ノ方ハ刪テ呉レマイカト言テヤツテ、處ガ刪リマセンデシタガ二三度往復スルウチ、ソンナ國ナラ仕方ガナイ、ト惡口ヲ言ヒナガラ刪タケレドモ四十五條丈ケハ置クト、ナゼナレハ此丈ケノコトハ民法ダガ行政法デ動カスコトハ出來ントシナケレバナラン、悉皆讓ルコトハ出來ヌカラ此條ハ置クガ文字ハ修正スルト言テ來タ其旨意ダカラ置キマシタガ之ハ私ノ考ヘデハ其次ノ二百四十九條ハ中ニアツタ條ヲ刪タカラ並ビタノデスガ彼ノ方ニ「全國又ハ一地方ノ公有ニ屬ス水ノ使用ハ行政法ヲ以テ規定ス」トスルト此方ハ全國一地方ノ公用ニ屬スケレドモ取締トカ水ニ何ヲ設ケルコトハナラントカ云フコトハ大變ニ困難物デアリマス、原書ニハ地方官ニ屬ストアリマスケレドモ、地方官ト云フト日本デハ縣知事或ハ郡長モ這入テ居ル斯ウ云フ水ノ取締權利マデ民法ガ定メルハ宜シクナイ、ソレデ矢張行政法デ宜シイダロウ、ソレデ條ヲ別ニスルニ及バン二項ヲ併セテ良シイ、行政法デ定メルト云フ丈ケニト云フ考ヘヲ以テ此所ニ刪除シテ四十九條ノ二項ニ置キ度イト云フ建議デアリマス
(栗塚委員)
此條ノコトハ實ハ昨日休日前デアリマシテ民法ノ報吿委員ハ忙シイカラ、調ベハシタガ實ハ昨日ノコトデ未ダ時モナシ又出ス前ニハ再調査委員ニ相談モスルガ未ダ其レモ御座イマセンノデ、ソレデ報吿委員一同ノ設ハ二百四十五條ハ此儘ニ欲シイ二百四十九條ノ二項トサレルコトナラ寧ロ二百四十九條ト異ナラ第二百四十五條ヲ削除シ第二百四十九條ニ新タニ一項ヲ加フルノ建議ン、ダロウケレドモ二百四十五條ニ置クガ必要カ、右流水ニ關スル取締ト云フハ二百四十三條ニアルノデ、勿論今日ニ取テ日本ノ行政法ハ甚ダ不完全デ舟筏ノ通ズル川通ゼヌ川トノ區別ハ充分ナラズ内務省ヘ問ヒ合セマシタニモソウ云フノデ、大變大キナ川デ川床ノ私有地ガアル又小サイ川デモ公有モアルヤラ外國風ノ區別ハナイ、流水ニ關スル取締ニ關スル取締ナレバ地方官デヤツテ然ル可ク今日ノ姿デ見レバ取締ドコロ、デハナイ未ダ酷ヒ權力ヲ地方官ガ持テ居ルカラ、併シ之ハ他日ハ今日得ル居ル權力ハ地方官ニハ持タヌダロウガ水ノ取締丈ケハ何所ノ法律モ地方官ガ持テ居ルヨウデアリマス、ソレデ此四十五條ヲ置イタ爲メニドウ云フモノガ生ズルカ、行政法ニ書クニ及バンノデ行政法ニ謂ハンデモ水ノ取締ハ地方官ガ持テ居ルノハ仕合デアリマス、之ヲ書ンデ置クト水ハ誰レガ取締ルカ取締ガ付カント云フヨリモ又行政法デ定メテモ良シイガ之ヲ四十九條ヘ繰込ムヨリ矢張四十五條ニ立テ置イテ良シイト云フ報吿委員一同ノ說デ御座イマス
(南部委員)
私ハ一說アリマスガ、私ハ四十五條ハ刪除ト云フノデス、ナゼナレバ此二百四十三條ノ水ニ關スルコトニ於テハ既ニ使用ノコトモ民法デ規定シ或ハ地方ノ規則ニ從ヒ捕漁ノ權利ヲ有スマデ四十三條デ規定シタ、而シテ見レバ取締ノコト丈ケノ話デアリマスカラ四十五條ヲ置クノ要用ハナイ
(今村委員)
報吿委員ノ說ハ聞カンガ報吿委員ノ方ハ私ノ說ト齟齬シテ居ルカラ今一應申スガ私ハ之ヲ大體ハ行政法ノ方ヘ送リ付ケナケレバナラント考ヘテハ居ルガ、府縣廳ニ存スルコトヲ得、トソレカラ地方官ニ屬スト云フノハ惡イ、何ゼナレバ保持ニ付テ制スルコトヲ得ト云フト水ノコトハドウシテヤツテ居ルカ實際ハ土功會或ハ府縣會ト云フモアルガ、縣令ハソウ權限ヲ持テ居ルヨウダガ實際ハ持チマセン、爲メニ水ニ付テ始終苦情ガアツテ縣令ノ專斷デ仕事ハ出來ズ必ラズ官カラ金ヲ與フルモノガ大キナ川バカリデハナイ小サイ川デモ町村ノ費用ニモ補フルコトガアル、之ニ付テモ既ニ内務省デモ幾回カ會議ヲシテモ金ヲ出セバ完イ規則モ出來ルガ元來金ヲ減少シヨウト云フタカラ規則ガ立マセン今日ノ有樣デス、仍テ水ノ疏通保持抔ハ之ヲ縣廳ガ致シマシタ、ソレヲ民法デ權限ノコトヲ一々定メルハ以テノ外ト思フ、ト言テ民法ヲ棄テ置クコトハ出來ヌカラ送リ丈ケ付ケテ置イテ良イト云フ考ヘデアリマス
(栗塚委員)
我々モ矢張酷ヒ人ノ權利ヲ忌ムノデハナイカト云フ自身ノ庭ノ内ヲ通ル川ハ床地ヲ所有スル者ハ工業用ニ使用スルモ水流ヲ變ジテモ宜シイ併シ出口ヲ保護シナケレバナラン小サイ川ダカラ府縣廳トアリマスガ今日ハ隨分郡役所方リデ出來ルノデ日本デ大切ト云フ程ノ川ノ取締ハ行政法デ良シイカ誠ニ小サイ川デソレモ一私人ニ屬シテ居ル川ト云フ丈ケハ斯ウ書イテ御了解ニナツタナラバ私ハ四十九條ノ權衡トハ土臺違タモノデ、二百四十九條ハ公有ニ屬スカラ行政法デ定メテ然ル可ク私有ニ屬スモノハ民法デ當然ト云フハ報吿委員デノ歸着シタ處デアリマス
(今村委員)
報吿委員ハ見解ヲ誤ツタト思フ、佛蘭西トハ違ヒ日本デハ床地ハ私有地デアルガ必ラズシモ小サイモノデハナイ大キナモノモアリマス、ソンナ物ガ定マツタ後ハ宜シイ
(松岡委員)
實ハ分ランネ大臣サンノ別莊ニ流レテ居ルハアレモ私有デハナイダロウ
(栗塚委員)
水ハ私有デハナイ、公有デアリマス
(松岡委員)
スルトアレドモ之ニハ這入ランノデ、實ハ四十三條デ水ハ公有デソウシテ又誰ガ權利ヲ持テ居ルノデモナイ、マデ取除ケ川床ヲ持テ居ル水ト云ヘバ四十三條ノ方ニ適用スル抔ハ恐ラクハアリマスマイト思ヒマスソコニ捕魚ダノ堤防建築ハ地方官ガ權フ抔ハ御大層ト思フ既ニ水ガ公有トカ云フナレバ大分大キクナルガ水ハ公有デナイ私有ノ川床ト云フノナラ溝ノ如キ小サイモノヨリ外ハアリマセン
(渡委員)
二百四十五條ハ刪テモ良カロウ
(尾崎委員)
要スルヨウデス、若シ地方官ニ構セルコトニナレバ行政法デ構セルデ宜シイ
(今村委員)
ソウデス此所デ權限ヲ定メルハ困テ仕舞フ
(栗塚委員)
之ヲ御容レナサラズ民法ノ出來ル時分行政法ガ出來レバ仕合ダガ左モナイト此所ニアツタ方ガ都合ガ良イト云フノデス
(尾崎委員)
行政法ガ出來ルモノト見テ言テ居ルノデス
(今村委員)
現ニ行政法ガアルノデ、アレヲ改正スルノデス
(委員長)
現今地方官ニ屬シテ居ルノデ決シテ法律デ内務省デシナケレバナランコトハナイ内務省ノ訓令カ何カデヤルニハ伺ヒガナケレバナラン
(松岡委員)
水ガ公有ニ屬シテ居ラン程ノ川ハドウシヨウカ
(委員長)
水ノ流ルルハ皆公有デアリマス
(南部委員)
公有ニ屬セバ四十九條デ行クノデス
(委員長)
水ノ私有ニ屬スト云フ譯ハナイ
(南部委員)
ソウナルノデス
(委員長)
流ルル水モ公用ダロウ
(南部委員)
公有デハ御座イマセン
(栗塚委員)
南部サンソレハ往カン四十九條ノ水ト四十三條ノ水ト同ジト云フコトハナイ
(松岡委員)
ソレハ違フ
(南部委員)
違フカラ之ハ這入ルト云フノデス
(淸岡委員)
ナイ方ガ良カリソウデス
(村田委員)
四十九條丈ケ刪テ置クガ良シイ
(今村委員)
併シ何カ謂テ置カント困リマス
(南部委員)
ドウシテ困ルカ四十三條ニ水ノ使用ノコトモ規定シテアルネ、ソウシテ捕魚ノコトモ規定シテ居ル堤防ノコトモ規定シテ居ル四十三條ハ水ノコトハ充分デ四十九條ハ公流ノ水ダカラ其水ノ使用ハ何デ定メルカ民法デハ定メラレナイカラ行政法ニスルノデス
(今村委員)
水ノ保持ト町村ノ規則ハ誰ガ栫エルカ
(南部委員)
ソレハ僅カナモノデス
(栗塚委員)
全國又一地方ノ水トハ云ヘヌ、全國又ハ一地方ノ公有ニ屬スル床地ノ水ノ使用及ビ取締ト云フノデス
(南部委員)
ソウデスカ
(栗塚委員)
ソウデス川床ハ私有デモ流ルル水丈ケハ公有ノコトガアリアス
(松岡委員)
ソレハアリマスマイ
(栗塚委員)
アリマス、ソレヂヤニ依テ水流ニ復スルコトヲ要スダ
(松岡委員)
皆ガ使フカラ公有ト云フノダ
(栗塚委員)
私有トハ云ヘヌ、私有ト云フト一私人ガ使フカモ知レン
(南部委員)
二十四條ハ公有デスカ
(栗塚委員)
水ハ公有デアリマス
(松岡委員)
ソレハオカシイ
(村田委員)
四十三條ノ水ハ私有ダ
(栗塚委員)
音羽ノ大臣サンノ庭ヲ流ルル水デ洗濯シテモ足ヲ洗テモ構フニ其水タルヤ公有カ私有カナレバ決シテ床地ヲ所有シテ居ルニモセヨ彼ノ水ハ私ニ使用ガ出來ルノデアリマス
(今村委員)
「ボアソナード」ノ原案ハ之ヲ再調査スルニ種々困ルコトガアルカラ聞キニ遣タ處ガ自分持テ居ルノガ一番確カト云フ返辭ヲ來マシタ、處ガ原案ヲ持テ見ルト此條ハ違テ居ル、第四十九條デハ全國又ハ一地方ノ公有ニ屬ス水ノ外縣又ハ町村ノ私有ニ屬ス水ト云フモノガ加ハツテ居ル、ソレカラ其取締ハ行政法ニ從テ中央政府府縣廳又ハ其他ノ地方官ガ定メルトアル、ノデス
(委員長)
水ノ私有ト云フハ良クアリマスマイト思フ
(松岡委員)
私有ニ非ラズバ悉ク公有カ、ソレナラ誰ガ使テモ構ハヌカ、ソレハソウハ往カン、此所ヲ流レテ居ル間ハ外ノ人間ニハ使ハセント云フハ公有ニ非ザレバ往カン假令バ田地ニ灌槪シテ置イテ餘リノ水ハ取レルガ掘割ヲ拵イテ居ル間ハ水丈ケハ取ルコトハ出來ン
(委員長)
ソウデシヨウ
(南部委員)
二十三條デ、道路堤防舟若クハ筏ノ通ズベキ川又ハ掘割及ビ床地トアリマスカラ、ソレデ舟筏ノ通ゼヌハ私有ト謂テ居リマス
(委員長)
流レル水ヲ云フノデハナイ
(松岡委員)
流動スル水ノ上カラ云フト誰ノ私有トハ云ヘヌガ畢竟水ニ付キ公有私有ノ區別ハ權原ヲ定メタ丈ケデアリマス、山カラ出ル水ガ在ル山ハ官有デモ何デモ天然ニ流レテソコヘ道ヲ付ケルネ、用水路ヲ付ケルト用水路ニ居ル間ハ水ガ其所ニ用水ヲ造タ人ガ占有スル權ガアツテ他人カラハ水ハ誰ノ彼レノト云フコトハナイカラ己レガ使フト云フコトハナイ、私有ノ水トハ云ハセント云テモ占有權ガアルカラ自カラ其所ニ居ル間ハ所有權ガアル姿デス
(委員長)
併シナガラ其水ハ自分ノモノデ人ニ使ハサント餘リヲ使ヘバ償ヒヲ出セトハ謂ハン
(松岡委員)
ソウデスガ、其所デハ使ヘマセント云フコトガ出來ル
(委員長)
用水ノ用ヲ足スハ自分デカ
(松岡委員)
ソレハ皆使テモ宜シイ
(南部委員)
註ニ無主物ハ之ヲ共用スルコトガ出來ルトアルノデ公有トハ違フ
(委員長)
公有ニ屬ス水抔ト云フ水ニ名ヲ付ケルノハ良クナイト思フ
(松岡委員)
併シ水ヲ除ケルト川ガ無クナルノデ、水ト云フモノハ其在場所ニ依テ使用ガ出來ルヤ否デ場所ハ舟筏ノ通ズルトキハ何ヲ自己ノ地面中或ハ共有ハ公有ノ反對シタモノデアリマス
(栗塚委員)
公有ト云フ字ヲ何ウ云フ風ニ御了解ニナツテ居ルカ知レンガ公有ト云フノハ公路ト謂タモ同ジデアリマス公共ト云フ意味デ卽チ私有ノ反對デアリマス
(渡委員)
「ボアソナード」ノハ何ト云フノデスカ
(今村委員)
簡單ナ翻譯デ「全國又ハ一地方ノ公有又ハ私有ニ屬スル水ノ使用及ヒ取締ハ行政法ニ從ヒ中央政府府縣廳其他ノ地方廳ニ於テ之ヲ規定ス」トアリマス
(委員長)
私有ニ屬スルハオカシイネ
(村田委員)
「行政法ヲ以テ之ヲ規定ス」デ宜シイ
(尾崎委員)
ソレデ良シイ
(渡委員)
兎ニ角四十五條ヲ刪ルヤ否ヲ定メマシヨウ
(今村委員)
四十五條ヲ決スル前ニ「ボアソナード」ガ入レテ來タモノガアリマス之ヲ入レテ置イテ下サイ
(渡委員)
刪ルトシヨウ
(今村委員)
スルト、四十九條ノ一項ヲ「全國又ハ一地方ノ公有又ハ私有ニ屬ス」トヤリマス
(委員長)
刪テモ宜カロウドウ云フ理由デ刪ルノカ
(南部委員)
先ヘ入レルト云フノデス
(委員長)
此所ヘ入レルトナゼ惡イカ先ヘ入レルトナゼ良イカ
(今村委員)
先刻カラ論ジマシタガ私ガ此刪除ト云フハ民法デ此原則ヲ定メルノハ良クナイト思フノデ、只行政法デ定メルト謂タラ良イト云フ考ヘデアリマス
(栗塚委員)
置クト云フ方ハ四十三條ハ水ハ特別ダト云フノデ四十九條ハ治クヲ云フノデ四十五條ハ單ニ取締ハ行政法デ定メテモ勝手ニハ往カン今日水ニ關スル規則ノ不完全ナ世ノ中ニ此一條ガアレバ効能ガアロウト云フノデアリマス四十三條ヲ置ク以上ハ從テ四十五條ヲ置クノハ當然ト云フ說デアリマス
(委員長)
府縣廳デヤル方法モアロウ又中央政府カラヤル方法モアロウシスルカラ現在ノ施行上ニ牴觸スル恐レガアロウト云フノカ又ハコンナコトヲ定メル可キデナイト云フノカ、置カナケレバナラント云フナレバ行政法デ定メルト云テハ効能ノ無イ話デ何方ニシテモ行政法デ定メナケレバナラン
(今村委員)
民法カラ許シヲ與ヘナケレバナラン
(委員長)
許ヲ與ヘナクツテモ、ヤレンコトハナイ府縣廳デヤツテ居ラン處ハ何所ニアルカネ、現在ノ儘ト思フ四十五條ハ謂ハンコトデ今ヤツテ居ルノガアルノデ府縣廳ニ任カセラレナイト云フコトナレバ別段ダガソウデナケレバ府縣廳デヤツテ居ル儘ダカラ敢テ害ガ無ケレバ置イテハ何ウカ
(今村委員)
水ガ漠然ノ水デアリマスカラ害ガアル
(栗塚委員)
假令バ四十三條ハ民法ノ水ソレカラ四十九條ハ行政法ノ水デ、水ニ二種アルノデ、行政法ニ任カセル水ハ行政法デ謂フガ可イ、民法デハ取締ハ誰ニ屬スト云フガ可イ、此所デハ四十五條ヲ置ケト云フノデ水タルヤ都テ民法ノ水行政法ノ水デモ行政法デ定メナケレバナラント云フ說ト四十三條ノ水ハ民法中ノ水ダカラ取締法ヲ定メテ置イテモ良イト云フ、之ガ議場ノ問題デアリマス
(尾崎委員)
良シ、地方官ニ任カセルニシテモ民法ニハ斯ノ如キコトヲ書ク可キデハナイ
(栗塚委員)
民法デ斯ウ云フ水ガ出來タカラ行政法デハ氣ガ付クマイ、何ゼナレバ民法デ作タモノデアリマスカラ筏ノ通ズル水ト一般ニ使用スル水、ソレハ行政法デ定メルガ當然ト云フノデアリマス
(尾崎委員)
四十九條ノ公有又ハ私有ニ屬スト加フレバ脫ケルト云フコトハナイ
(栗塚委員)
大キ方ノ川ハ行政法デ支配シ小サイ方ノ川ハ二百四十三條デ定マツタモノダカラ、ト云フノデス
(尾崎委員)
民法デ定メタト云フガ、元トカラアルノデ關係スル分ヲ書イタノダカラ、取締法ハ行政法ニ屬モ構ハヌ
(村田委員)
民法デ縣廳デヤレト云ハヌ方ガ良シイ
(栗塚委員)
四十三條ノ水ハ行政法デ定メル水カ
(村田委員)
行政法デ定メルト云フコトハナイ、只水ノ使用トカ云フコトハ卽チ府縣廳デ規則ヲ定メテ、宜シイ府縣廳ハ卽チ行政ノ一分デアリマス
(松岡委員)
私有ト誰カ定メルデハナイ
(栗塚委員)
其水タルヤ行政法ヲ以テ支配スル水カ或ハ民法ヲ以テ支配スル水カト云フノデス
(松岡委員)
使用ハ書イテアル通リデス
(栗塚委員)
卽チ民法デアリマシヨウ、ソレデ取締法ハ何デアリマスカ、貴君方ハ行政法ニ書クト云フノデシヨウガ、私ハソレハ民法中ニ揭ゲテ良イト云フノデス
(松岡委員)
行政法、ト只謂テ居レバ裁判官ガ知ルコトガアルト云フノカ
(栗塚委員)
裁判官ハ知ランコトハアリマセン
(松岡委員)
ソレナラ良イデハナイカ
(栗塚委員)
抑モ行政法デスルト云フコトハ注意セヨ、ト云フノデ行政法デ取締法ヲヤツテ、分ランモノガ若シアル以上ハ誰ガ取締ヲスルカ卽チ行政官ガスルト云テ當然ダロウ
(松岡委員)
小サイモノダカラ敢テ行政法ヲ待ント云フノカ
(栗塚委員)
左樣デス
(渡委員)
刪除說提出ト維持說ト兩說トモ理ノ存スルコトモアルガ到底何時マデモ際限ガナイカラ委員デ決スルヨリナイデシヨウ
(委員長)
委員方ニ申シタイノハ、四十五條ヲ刪テ四十九條ヘ入レルト四十五條ハイラント云フ、全テ不要ト云フナラ別デス、殊ニ府縣廳ト云フノニ名ヲ付ケテ四十九條ニ入レルナレバ順序ガ栗塚ノ言フ通リ民法上デ定メル水ノ取締リナリ又事柄モ府縣廳デ今日處分シテ居ル、ソレナラ府縣廳デ定メルトシテ起案者ノ旨意モ通リ私モ差支ナイト思フ、又差支アルナレバ證據ヲ擧ゲテスレバ兎モ角モ、成リ丈ケナラ元トノ通リガ良シイト思フ
(南部委員)
刪除セン以上ハ何方等デモ多數ニ從ヒマス
(村田委員)
私有ト云フ字ガ這入レバ二項ハイラン
(南部委員)
一地方ノ私有デアリマスカラ
(今村委員)
二百四十五條ハ必ラズ刪除デハナイ、行政法ニ代ヘルナラバ四十九條ニ行政法トアルカラ合シテ良シイト云フノデス
(委員長)
疏通ト保持ト取締ト云フコトハ縣廳ニ任カセンデハ出來ズ縣廳モ權限ヲ郡長ヘ任カセルモ良シイ
(栗塚委員)
小サイコトト云フノハ四十三條ヲ御覽ナサルト、如何ニモ筏ノ通ズベキ川ハ行政デ定メルハ必要デナイ
(今村委員)
四十五條ハ原案ノ儘デスト民法ガ行政廳ニ直チニ委ネルノデアリマス
(栗塚委員)
左樣直接ニ民法ガ委ネルノデアリマス又委ネテ良イト云フノデス
(尾崎委員)
外ニ府縣廳ヘ委ネルコトガアルカ
(栗塚委員)
アリマシヨウ、理窟カラ云フト當然デアリマス再調査委員モ、何所マデモ刪ラナケレバナラント云フノデナイカラ有テモ無クテモト云フノデアリマスカラ報吿委員四人ノ說ヲ御助ケナスツテ下サイ
(村田委員)
私ハ其方ノ說ニ從ヒマシヨウ元ト之デ通タノダカラネ
(渡委員)
我々ハ刪リ度イ
(槇村委員)
刪レマセン
(西委員)
アツテモ決シテ惡クハナイ
(委員長)
良ウ御座イマシヨウ、刪ル說ハ尾崎一人ダロウ
(南部委員)
「築堤」ハ刪リマシヨウ
(尾崎委員)
「築堤」ハ刪テ良シイ
(松岡委員)
置イテモ宜シイ
(南部委員)
「築堤」ヲ置クナレバ下ヘ置ク「流水築堤」ハオカシイ
(村田委員)
「疏通」サヘアレバ良シイ
(委員長)
保持ハ築堤ニ這入ランネ「築堤」ハ刪リマシヨウ
(村田委員)
「府縣廳」トアルハ「地方廳」トヤツテハ如何北海道ノ道廳ト云フノガアルカラネ
(北畠委員)
「地方廳」ガ良シイ
(委員長)
「地方廳」ガ良シイダロウ
(今村委員)
地方廳ト云フハ何ヲ云フカ意味ハ郡廳ハ地方廳カ
(村田委員)
郡長モ地方官ト云フ、カラ「地方廳」ト云フテ置キマシヨウ
(松岡委員)
「ボアソナード」ハ皆地方廳ト書イテ來テ居ル
(今村委員)
ソウ「ボアソナード」ノ考ヘハ小サイ所マデ及ボス考ヘデアリマス戶長役場マデ行クカモ知レン
(槇村委員)
上ハ地方官ダロウ
(今村委員)
地方廳デアリマス
(委員長)
良ケレバソレデ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ「其流水ノ築堤疏通」ト起案者ヨリ改メ而シテ委員會ニ於テ「築堤」ヲ刪リ「地方官」ヲ「地方廳」ト「府縣廳」ヲ「地方廳」ト改メ其他原案ニ決ス
第二百四十六條、第二百四十七條、第二百四十八條
(刪除)
第二百四十九條朗讀ス
第二百四十九條 全國又ハ一地方ノ公有ニ屬スル水ノ使用及ヒ取締ハ行政法ヲ以テ之ヲ規定ス
第二百四十三條ニ揭ケタル水ノ疏通、保持及ヒ其魚類ノ保育ニ付テモ亦同シ
(村田委員)
二項ハ無論刪ル
(尾崎委員)
「公有又ハ私有」ト云フハ這入ルノカ
(南部委員)
之ハナケレバナラン
(松岡委員)
良シイ
本條ハ「全國又ハ一地方ノ公有又ハ私有ニ屬スル水ノ使用及ヒ取締ハ行政法ヲ以テ之ヲ規定ス」トシ第二項ハ刪除ス
第二百五十條朗讀ス
第二百五十條 自己ノ土地外ニ在ル天然又ハ人エノ水ヲ用ユル權利ヲ有スル所有者ハ家用又ハ農工業用ノ爲メ償金ヲ拂ヒ中間ノ土地ニ於テ其水ノ通過ヲ要求スルコトヲ得
(松岡委員)
「天然」ヲ「自然」トシテ良シイ
(今村委員)
之ハ「天然」ノ方良シイ
(松岡委員)
人工ヲ用ユル水ト自然ノ水トアルカ
(今村委員)
人ガ流シテ遣ルハ自然デ良シイ
(三島委員)
天然ガ良シイデシヨウ
(尾崎委員)
天然モ自然モ異ナツタコトハナイ
(松岡委員)
人工ニ懸ラズシテト云フ、自然ト云フナレバ此所モ同ジダ「天然又ハ人工」ト人工ニ依ラズシテ落チル水ハ何ト云フ天然ト云フダロウ
(今村委員)
菓物ヲ得タガ耕作モ何モセズ天然デアリマス
(槇村委員)
天然デ良シイ
(尾崎委員)
水ヲ用ヒル權利ヲ有シテ居ル者ハ償金ヲ拂ハンデモ宜シイダロウ
(南部委員)
元トノト些トモ變ハリハセン
(村田委員)
能ク分テ居ル
(委員長)
宜ケレバ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第二百五十一條
(刪除)
第二百五十二條朗讀ス
第二百五十二條 低地ノ所有者ハ浸水地ノ排洩又ハ乾涸ニ由ル水ノ疏通ノ爲メ及ヒ家用又ハ農工業用ノ餘水ノ排洩ノ爲メ公路公流又ハ下水道ニ至ルマテ其通路ヲ供スルノ責ニ任ス
家用又ハ農工業用ノ爲メニ變質シタル水ノ通過ハ地下ニ於ケルニ非サレハ之ヲ要求スルコトヲ得ス
(委員長)
五十一條ハ起案者ガ刪タノカ
(今村委員)
左樣デス
(村田委員)
之モ良シイ
(松岡委員)
先ヘヤリマスカ
本條ハ原案ニ決ス
第二百五十三條朗讀ス
第二百五十三條 水ノ通路ハ成ル可ク承役地ノ損害少ナキ場所ニ之ヲ設クルコトヲ要ス
如何ナル場合ニ於テモ建物ノ下ヲ經又ハ住家ニ連接シタル庭園ヲ經テ水ノ通過ヲ要求スルコトヲ得ス
(渡委員)
此所ハ喧シカツタ
(尾崎委員)
家ニ接シタル庭園ト云フト一町モ離シテハナランカ
(尾崎委員)
中庭ノコトダ
(尾崎委員)
庭ハ家ニ接シテ居ルノデス
(南部委員)
實際一方ガ宜イト云ヘバ差支ハアリマスマイ
(槇村委員)
宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第二百五十四條朗讀ス
第二百五十四條 水ノ通路ニ必要ナル工作物ノ築造及ヒ保持費用ハ其工作物ニ付キ利益ヲ得ル所有者之ヲ負擔ス
(松岡委員)
之ハ良シイ
本條ハ原案ニ決ス
第二百五十五條朗讀ス
第二百五十五條 承役地ノ所有者ハ其土地ニ存スル水路ヲ要役地ニ出入スル水ノ全部又ハ一分ノ通路ニ供スルコトヲ得但從來其掘割ヲ通過スル水カ要役地ニ供シタル水ヲ變スルノ性質ナラサルトキニ限ル
又承役地ノ所有者ハ其土地ニ要役地ノ所有者ノ爲シタル工作物ヲ右ト同一ノ條件ニ從ヒテ水ノ通過ノ爲メ使用セント請求スルコトヲ得
右孰レノ場合ニ於テモ他人ノ爲シタル工作物ヲ使用スル者ハ自己ノ利益ノ割合ニ應シテ其築造及ヒ保持ノ費用ヲ分擔ス
(三島委員)
水路ト云フノ御座イマスガ之ハ「掘割ト」シテ良イノデアリマス
(村田委員)
之ハ掘割デナケレバナリマセン
(南部委員)
宜シイ
本條ハ「水路」ヲ「掘割」ト改メ其他ハ原案ニ決ス
第二百五十六條朗讀ス
第二百五十六條 第二百四十三條第一項ニ從ヒ流水ヲ使用スルノ權利ヲ有スル所有者ハ堰ヲ設ケテ水ヲ高ムルノ要用アルトキハ償金ヲ拂ヒテ其堰ヲ對岸ニ支持セシムルコトヲ得
同一ノ權利ヲ有スル對岸地ノ所有者ハ前條ニ記載シタル如ク費用ヲ分擔シテ右ノ堰ヲ使用スルコトヲ得
(尾崎委員)
宜シイ
(委員長)
宜シケレバ先キヘ行キマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第二百五十七條朗讀ス
第三款 經界
第二百五十七條 凡ソ相隣者ハ地方ノ慣習ニ從ヒ樹石杭杙ノ如キ標示物ヲ以テ其連接シタル所有地ノ界限ヲ定メント各自ニ強要スルコトヲ得
(南部委員)
各自ト云フ字ヲ報吿委員ノ方デ互ニト云フ方ガ良イト云フ說デアリマスカラ報吿委員ヲ代表シテ申マス
(今村委員)
互ニト云フト此方カラ言フト同時ニ向ウカラモ言フト云フニナルカラ
(南部委員)
ソウデハナイ必ラズ兩方カラ一緒ニヤラナケレバナラント云フノデハナイ、各自ト云フト並ンデ居ル者ガ一人々々ト云フヨウニ聞ヘル
(村田委員)
各自デ宜シイヨウデス、私ハ之ニ杭溝ト云フノヲ入レタイ
(尾崎委員)
溝ヲ互ニ張要シテハ困ルネ
(委員長)
ノ如キト云フノガアルカラ良シイデハナイカ、之ハ「互一句削除建議ヒ」ノ方ガ良シイト思フカドウカ
(松岡委員)
私ハ「互ニ」ニガ良シイト思フ
(委員長)
「互ニ」ニ致シマシヨウ、先ヘヤリマシヨウ
本條ハ「各自」ヲ「互ニ」ト改メ其他原案ニ決ス
第二百五十八條朗讀ス
第二百五十八條 經界訴權ハ建物ニ付キ及ヒ垣柵等ノ圍障アル土地ニ付テハ行ハレス公路又ハ公流ニテ隔テタル土地ニ付テモ亦同シ
(尾崎委員)
之ハ良シイ
本條ハ原案ニ決ス
第二百五十九條朗讀ス
第二百五十九條 經界訴權ハ協議上又ハ裁判上ニテ界限ノ定マラサル間ハ何時ニテモ之ヲ行フコトヲ得
經界ノ訴ニ付キ被吿カ原吿ノ土地ノ全部又ハ一分ニ對シ取得時効又ハ一个年以上ノ占有ヲ申立ツルトキハ原吿ハ先ツ回復又ハ回收ノ訴ヲ爲スコトヲ要ス
(南部委員)
「何時ニテモ時効ニ罹ルコトヲ得ス」ト云フノヲ御改ヘニナツタカ同ジ理窟デシヨウ
(今村委員)
同ジデス
(南部委員)
ソンナラ元トニ復シタイ「何時ニテモ」ト云フト輕ク聞ヘルカラ「時効ニ罹ルコトナシ」デ良シイ
(尾崎委員)
一ケ年以上占有シテ居ルト界限ヲ立ラルルノカ
(松岡委員)
限界ノ爭ヒガ起ルノデス
(今村委員)
境界ノ爭ヒヨリ先ヅ占有ノ爭ヒヲ片付ケテ來イト云フノデス
(尾崎委員)
取得時効ト云フノカ
(南部委員)
占有ノ時効ガ定マルノデス
(南部委員)
更新スルコトガ出來ルダロウ
(南部委員)
取得時効ヲ申立ルトキハデス
(松岡委員)
此方カラ、シテ時効ヲ申立テモ駄目ト云フト訴訟ニナルノダ
(淸岡委員)
時効ヲ得テ居レバ出來ント云フノ論ガ起ル
(尾崎委員)
經界訴權デ回復スルコトガ出來ルダロウ
(南部委員)
出來ン
(槇村委員)
「時効ニ罹ルコトヲ得ス」ノ方ガ宜シイ
(尾崎委員)
其方ガ良シイ、時効ハ別ノヨウニ、殊ニ依ルト思フ
(委員長)
ソレデハ其ヲヤルカ
(松岡委員)
ドウデモ宜シイ
(南部委員)
「時効ニ罹ルコトナクシテ」カ
(尾崎委員)
「時効ニ罹ルコトナシ」カ
(南部委員)
ソレデ良シイ
(渡委員)
一體「得ス」ト云フノハ穩カデナイ
(南部委員)
「ナシ」デ良シイ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ「時効ニ罹ルコトナシ」ト改メ其他原案ニ決ス
第二百六十條朗讀ス
第二百六十條 經界ハ界限ノ確定セサルトキ又ハ爭論アルトキハ所有權ノ證書ニ記載シタル坪數及ヒ界限ニ從ヒテ之ヲ爲ス其證書ナキトキハ之ニ代フルニ足ル他ノ證據又ハ書類ニ依リテ之ヲ爲ス
所有權ニ付キ爭論アルトキハ豫メ其裁判ヲ受クルコトヲ要ス
(松岡委員)
「證書ニ記載シタル坪數云々」ハ訴訟ヲ決スルト云ヘバ宜シイノダ
(淸岡委員)
之ハイランデハナイカ、人ヲ馬鹿ニシタヨウナ條デハナイカ
(南部委員)
何ウ云フ譯ケデス
(淸岡委員)
裁判法ヲ教ヘナクテモ宜シイ
(南部委員)
處ガ、間違ヒマシヨウ經界ノ訴ヘダカラ所有權ノ證書ハ惡ハナイカト云フ疑ヒガアルカモ知レン
(淸岡委員)
ソンナコトヲ云フト一體裁判スルコトハ悉ク書カナケレバナラン
(尾崎委員)
經界ノコトヲ定メタ爲メニ所有權ガ定マツタヨウニナツテハ往カンカラダ
(西委員)
之ハ良シイヨウデス
(尾崎委員)
良ササウデス
本條ハ原案ニ決ス
于時正午十二時休憩
午後零時四十五分開會
第二百六十三條朗讀ス
第二百六十三條 當事者カ協議ヲ以テ界限ヲ定メタルトキハ適宜ノ方式ニ從ヒテ其證書ヲ作ルコトヲ得此證書ハ坪數及ヒ界限ニ付キ各當事者ノ利害ヲ問ハス確定名義ノ効ヲ有ス
當事者ノ議協ハサルトキハ判決ヲ以テ坪數及ヒ界限ヲ定メ其裁判書ニ圖面ヲ添フ此圖面ニハ界標ヲ指示シ且各界標ノ距離及ヒ其近傍ノ移動ナキ目標ト各界標トノ距離ヲ記載ス
(尾崎委員)
「確定名義ノ効ヲ有ス」ト云フノハ如何
(村田委員)
所有權ヲ動カサズ確リナルト云フコトダ
(今村委員)
裁決ヲ受ケテ確定シタルト同ジデアリマス
(淸岡委員)
名義ト云フハ何ウカナランカ
(今村委員)
ドウシテモ外ニナイ名義ト云フヨリ外ニアリマセン佛蘭西デ「チートル」ト云フ言葉ハ名義ト云フヨリ外言ヒヨウガナイ「確定ニ効ヲ有スル」トシテモ宜シイ判決ガ確定シタルモ同ジデ大審院ヘ掛テ行クコトモ出來マセン
(南部委員)
確定證書トハ云ハレンカ
(今村委員)
云ハレン處モアリマス
(南部委員)
此所ハ證書ト謂ハレソウナモノデス
(今村委員)
謂テモ宜シイガ、證書トヤツテモ分リマスマイ、確定證書ト云フハドウ云フコトカ、迚モ講釋ガ付カント分リマセン
(尾崎委員)
良カロウ
(委員長)
ソンナラ仕方ガナイ、先ヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第二百六十四條朗讀ス
第二百六十四條 樹石杭杙ノ代價其設置ノ費用及ヒ證書並ニ訴訟ノ費用ハ相隣者平分シテ之ヲ負擔ス然レトモ判決ニ因リテ不當ト爲リタル爭論ノミニ關スル訴訟ノ費用ハ敗訴者之ヲ負擔ス
測量ノ費用ハ當事者其土地ノ廣狹ニ應シテ之ヲ分擔ス
(今村委員)
此條ハ起案者ガ度々文字ヲ入レ替ヘマシタソレデ續キガ惡イカラ順ガ狂ツテ居リマス併シ意味ハ一向害サン積リデアリマス
(村田委員)
土地ノ廣狹ニ應ジテ、ダロウガ、先キノ例ニ依ルト「相應シテ」デス
(尾崎委員)
先キノトハ違ヒマス
(村田委員)
同ジ理窟ダ
(渡委員)
此所ハ良シイ
(松岡委員)
此所ハ良シイダロウ
(槇村委員)
之ハ良シイ
本條ハ原案ニ決ス
第二百六十五條朗讀ス
第二百六十五條 經界訴訟ノ裁判管轄及ヒ其他ノ方式ハ帝國裁判所構成法及ヒ民事訴訟法ヲ以テ之ヲ規定ス
(今村委員)
之ハ三度目デ物權中ノ一番終リノ條デ御座イマス
(渡委員)
之ハ建議採用
(槇村委員)
建議ヲ採用シテ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ刪除ニ決ス
第二百六十六條朗讀ス
第四款 圍障
第二百六十六條 凡ソ所有者ハ適宜ノ材料ヲ用ヒ適宜ノ高サニ於テ自己ノ不動產ニ圍障ヲ設クルコトヲ得但其不動產カ法律上又ハ人爲上ニテ隣人ノ立入又ハ通行ノ地役ニ腹スルトキハ其地役ヲ行フノ權能ヲ妨クルコトヲ得ス
(今村委員)
二項デアリマシタガ之ヲ但書ニシマシタ之ハ勢ヒ二項ノモノデハナイカラ但書ニシマシタ
(尾崎委員)
後ノコトヲ云ン爲メ初メヲ言ヒ出シタノダネ
(南部委員)
ソウデハナイ
(松岡委員)
圍障ハ所有主ニ出來ルト云フノ原則ダカラ
(今村委員)
云ンデモ宜イコトガ民法ニハ幾ラモアリマス
(松岡委員)
餘所ノ法律ガ正シクナツテ居ルノダロウ
(村田委員)
但書シタハ良シイ
(尾崎委員)
良カロウ、適宜ノ高サ、ト云フト不適宜ノ高サ、ニハ出來ヌノダロウカ
(松岡委員)
出來ヌノデス
(槇村委員)
此所ハ良シイ
本條ハ原案ニ決ス
第二百六十七條朗讀ス
第二百六十七條 二箇ノ住家又ハ農工業用建物ノ間ニ在ル中庭又ハ園圃ノ土地カ各個ノ所有者ニ分屬スルトキハ所在地ノ如何ヲ問ハス各自其隣人ニ分界圍障ノ分擔ヲ強要スルコトヲ得
當事者ノ議協ハサルトキハ其圍障ハ板塀又ハ竹垣ノ類ニ非サレハ之ヲ要求スルコトヲ得ス
其高サハ分界線ノ平面ヨリ少ナクトモ六尺タル可シ
(村田委員)
所在地ノ如何ヲ問ハズ、如何之ハ無クテモ良シイダロウ本條削除建議
(松岡委員)
無イ方ガ良シイ
(今村委員)
無ケレバハ同ホ良シイ
(南部委員)
之ハ無イ方ガ良シイ
(尾崎委員)
所在地ノ如何ヲ問ハズ、ハ刪ルカ
(南部委員)
強ク謂ン方ガ良シイ
(村田委員)
「農工業用ノ」トシテ「ノ」ノ字ヲ入レテハドウカ
(尾崎委員)
二箇ノ建物ノ間二箇ノ住家ノ間ト云フノダ
(今村委員)
簡單ニ書コウト思ヘバ二箇ノ建物ノ間バカリデ良シイノダ
(村田委員)
ソレデ十分ト思フ
(南部委員)
建物デ只農工業用ノ建物デナイト云フトキガアルカラ、アル方ガ良シイ
(槇村委員)
分擔ヲ強要スルト云フコトダカラネ
(尾崎委員)
庭ノ眞中ヘ圍障ヲ立テルノデ家ヲ分擔シヨウト云フノデハナイ
(村田委員)
庭ダカラネ、兩方ノ縁側カラ看ヘルト云フノデ此前論ガアツタノデス
(渡委員)
原案デ良シイダロウ
(今村委員)
若シ御論ガアルト斯ウ云フ不都合ガアル、東京ノヨウナ市街ハ宜シイガ田舎ヘ行クト此ノ地面ニ百姓家ガ在テ住居スル家デ參稻ヲ刈込ム、處ガ所有者ガ違フ界ハ法律ガ板塀ヲシヨト言ハセルノデ、ソレハ卽席考ダガ便利ヲ能クスルニハ一方ガ兎モ角モ住家デナケレバナラン左モナク兩方藁ヲ積ム小屋ナレバ中ヘ垣ヲセンデモ良シイ
(村田委員)
ケレドモ錢ヲ出シ合テスルノダカラ、無用ナ處ヘ強要スル氣遣イハナイ兩方デ必要デナケレバナラン
(南部委員)
良シイダロウ
(今村委員)
東京ノ如キハ銘々ノ裏ト表ノ處ヘ垣根ヲ拵ヘ半分出セバ言テ來タトキハ入要デス
(尾崎委員)
半分出セト云フハ酷ヒネ
(南部委員)
之ハ公平ナコトダ
(今村委員)
理窟上一點モ論ズルコトハ出來マセン
(槇村委員)
良カロウ
(村田委員)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ「所在地ノ如何ヲ問ハス」ヲ刪リ其他原案ニ決ス
第二百六十八條朗讀ス
第二百六十八條 圍障ノ設置、保持及ヒ修繕ノ費用ハ相隣者平分シテ之ヲ負擔ス
相隣者ノ一人ハ前條ニ定メタル材料ヨリ良好ナル他ノ材料ヲ用ヒ又ハ高サヲ增シテ圍障ヲ築造スルコトヲ得但築造費用ノ差額ヲ拂ヒ且保持及ヒ修繕費用ノ全額ヲ負擔ス
(村田委員)
「但築造費用ノ差額ヲ拂ヒ」ト云フノハイラン、之ハ餘分ノ差額ヲ拂ヘト云フノダガソウハ見ヘヌ、當リ前ニ拵イテ行ケバ五圓ヅツデ濟ムニ高ヒモノヲ使フノダロウ
(南部委員)
ソレガ差額デアリマス
(今村委員)
向ウト相談シタガ相談ガ出來ヌカラ一人デ拵ヒ此方ハ板塀ハ否ダト云フノデ煉瓦デ造タ板塀デ造タラ十圓ダガ煉瓦デ造タカラ五圓係タトスルト五圓丈ケヲ出サセル之ガ差額デアリマス
(村田委員)
築造費用ノ餘分ト云テ宜クハナイカ
(今村委員)
餘分デモ宜シイ、之ヲヤル者ハ自分デ損ヲシナケレバナラン物數寄ダカラネ
(尾崎委員)
贊成者ガナケレバ之デ良カロウ
本條ハ原案ニ決ス
第二百六十九條朗讀ス
第二百六十九條 相隣者ノ一人カ他ノ一人ヲ圍障分擔ノ遲滯ニ付セスシテ之ヲ築造シ又ハ修繕シタルトキハ其人ニ對シ費用ノ分擔ヲ要求スルコトヲ得ス
(今村委員)
默テ契約ナシニシタ者ハ自分デ拂フノデアリマス
(尾崎委員)
宜カロウ
本條ハ原案ニ決ス
第二百七十條朗讀ス
第五款 互有
第二百七十條 前款ニ定メタル義務ニ因リ又ハ任意且協議ニ因リ共擔ノ費用ヲ以テ土地ノ分界線上ニ築造シタル圍障ハ其性質ノ如何ヲ問ハス敷地ト共ニ相隣者ノ共有ニ屬ス
性質ノ如何ヲ問ハス相隣者ノ建物ノ隔壁及ヒ溝渠、生籬、柴垣ニシテ共擔ノ費用ヲ以テ土地ノ分界線上ニ設ケタルモノモ亦同シ
(今村委員)
互有ノ所ハ仕舞ノ一二ケ條ヲ「ボアソナード」ガ大變修正シテ來マシタ
(南部委員)
互有ノ圍障ト云フノハ「ボアソナード」ガ修正シタカ
(松岡委員)
共有ニ屬ス、トシタ
(南部委員)
報吿委員デハ互有ノ圍障ト云テ置イタ方ガ二條ノ互有ト推定ス、ト云フノト照應スルト云フノデス
(村田委員)
「共有」ト云フノハ「互有」トシテ良シイダロウ
(南部委員)
ソレダカラ「互有ニ屬ス」トシテ良シイダロウ
(今村委員)
「相隣者ノ互有ニ屬ス」トシテ良シイ
(三島委員)
良シイ
(南部委員)
ソウシマシヨウ
(今村委員)
「ボアソナード」ハオカシイ、分界線ノ上ニト元トアツタ、ソレヲ日本人ニハ分ラント云フノデ修正シタガ却テ我々ノ考ヘデハ「上」ト云フ方ガ聞ヘルト思フカラ向ウノ修正ヲ此方デ、ヒツクリ返シタノデアリマス、ソレデ一寸說明シマスガ法律ガ推定スルハ、斯ウ云フ場合ニハ互有ト推定ヲ下ス民法ノ原則デ實ハ此樣ナモノハ銀座京橋カラ新橋迄ノ間煉瓦ノ家ガ在ルカ知レンガ日本中恐ラクハ何所ヲ索シテモ御座リマセン日本ニナイモノヲ民法ニ之ヲ原則トシテ推定法ガアルカラ、ヒツクリ返シテ貰ヒタイ、互有デナイトシテ、若シ互有ノ證據ガアレバ格別ト云フコトニ組直シテ呉レト注文シタガ承知シマセン、何ゼセンカ分界線ハ兩方カラ請求シ互ニ金ヲ出シテ出來ルト云フ、スルト民法ニ行ハルルト地面ト地面ノ間ニ分界圍障ハ前ノ條ニ依テ拵ヒ、扨テ彼ノ條ニ依タラ兩方カラ金ヲ出シテト云フ互有ナレバ何方カ建ハル氣遣ナイ、借若シ實地線ノ上ニ建タ者ガアツタラ民法ニ依テ拵ヒタモノハ仕方ガナイカラ互有ト推定スルヨリ仕方ガナイト云フ先生原則ニ固リ付キマシタカラ承知シマセン、二三度言タガ替ヘナイノデス
(村田委員)
二百六十八條デ二項ノ場合ニ一方デ物數寄ニ拵ヒタトキハソレモ互有デスカ
(今村委員)
ソレモ後デ出テ來マス、互有ニ出來ルト云フコトガアリマス
(村田委員)
互有ニ出來テハ溜ラン
(今村委員)
證據ガアレバ互有ニ推定シマセン
(村田委員)
私ノ思フニ共同ノ費用ト云フノガアルノデハナイカ
(今村委員)
證據サヘアレバ推定ヲ打毀シマスコトガ出來ルト云フノデス
(村田委員)
ソレダカラ殊更ニ書クノハドウカ
(今村委員)
共擔デナイ者ガ互有ニナツテハ溜ラン
(南部委員)
圍障ヲ以テ直チニ互有トハ云ヘヌ
(村田委員)
圍障ト云フモノハ共擔ノ費用デ出シタト云フノガ眼目デアリマス
(南部委員)
ダカラ共擔ノ費用デハナイ
(村田委員)
互有デナケレバ良シイ
(今村委員)
無論ナ話デアリマス
(委員長)
修正通リナレバ良イデハナイカ
(松岡委員)
土藏ヘ突込マレルコトモナシデ良シイ
(村田委員)
二項ノ「性質如何ヲ問ハス」ハ分ラン
(松岡委員)
二項ノ「性質如何ヲ問ハス」ハ無クテモ良シイ、此度ハ一々分界線上ニナルノカ
(今村委員)
左樣デス皆分界線上ト云フコトハ既ニ入用ナ一條件デアリマス
(松岡委員)
原譯トハ違ヒハセンカ
(今村委員)
違フカモ知レマセン
(村田委員)
些トオカシイ
(南部委員)
此方ガ良シイ
(松岡委員)
前條ト齟齬スルコトハナイカ
(淸岡委員)
之ハ良カリソウデス
(委員長)
前ノ翻譯デハナンダカ、此通リナレバ隔壁モ分界線上ニアルヨウニ見ヘルカラ先ノト違フニハ、相違ナイ
(松岡委員)
元トノ譯ガ違テ居ルノデ今度ノ譯ガ良イト云ヘバ宜シイ
(今村委員)
元來原書ノ書方ガ違テ來タノデス
(委員長)
良シイヨウデス
(今村委員)
若シ元トノ譯ノ通リスルト困ルニハ原書ニ斯ウアルノデ、建物溝渠生籬柴垣ソレ等ノ物ガ分界線上ニ在テ且共擔ノ費用ナルトキハ、トアルノデス
(尾崎委員)
之ハ良シイ
(村田委員)
二項ノ「性質ノ如何ヲ問ハス」ハドウカ
(南部委員)
アツテモ良シイ
(村田委員)
建物デハナイハ「溝渠生籬柴垣」彼所ニ係ルノデスゼ
(南部委員)
建物ノ眞中デ止マルコトハ何ウシテモナイ
(松岡委員)
註ヲ見ルト何方ニモ解釋ガ出來ル
(淸岡委員)
之デ良シイ
本條ハ第一項「共有ニ屬ス」トアルハ「互有ニ屬ス」ト改メ其他原案ニ決ス
第二百七十一條朗讀ス
第二百七十一條 凡ソ土地ノ圍障又ハ建物ノ隔壁ニシテ分界線上ニ在ルモノハ其性質及ヒ所在地ノ如何ヲ問ハス共擔ノ費用ヲ以テ設ケタルモノトシテ之ヲ互有ト推定ス但或ハ證書ニ因リ或ハ證人ニ因リ或ハ三十个年ノ時効ニ因リ或ハ下ニ示シタル非互有ノ目標ニ因リテ反對ノ證據アルトキハ此限ニ在ラス
(村田委員)
元トハ圍障又ハ分界中トアルガ溝渠モ圍障デスガ隔壁ト云フト溝ハ這入ランネ
(南部委員)
之ハ無論這入テ居ルノデス
(松岡委員)
「所在地ノ如何ヲ問ハス」ハイラン「其性質ノ如何ヲ問ハス」デ良シイ
(南部委員)
「性質ノ如何ヲ問ハス」デ良シイ
(村田委員)
「證人ニ因ル」ト云フ字ガ這入タガ、ドウカ
(南部委員)
之ハ良シイ廣クシテ置ント困リマス
(村田委員)
人ノ口デ言タ位ヒデ宜シイカネ
(松岡委員)
互有ニスル方デハナイ非互有ニスル方ダカラ良シイ
(南部委員)
互有ト云フハ危イカラネ
(松岡委員)
之ハ「ボアソナード」ガ入レテ來タノカ
(三島委員)
左樣デス
(村田委員)
ソレデハ仕方ガナイ
(委員長)
非互有ト推定スルト云テ置クト證據ガナケレバ互有デナイトナルノカ
(今村委員)
七十條ノ原則ハソウナケレバナラン
(松岡委員)
分界線上ト跨ガツタラ互有ト云フノハ順デシヨウ
(委員長)
日本ニハ分界線上ニアルノハ少ヒノデ動モスレバアルカ知レンガ私ノ知タコトハナイ之ヲ推定スルニ第一非互有ト推定ス若シ反對ノ證據アレバ互有トスルト云フ、人情ガ違フダロウ、若シ證據ガ無ケレバ互有トスルハドウカ
(松岡委員)
人情ト云テモ分界線上ニ出來ルガ常ダカラ出來テナケレバ非互有ト云フガ順デアリマス
(南部委員)
先優ノ處モ圍障ハ張要ガ出來ルト云フ其精神カラ云フト分界線上ノ物ハ互有ト云フノモ理窟ニモ適シマス證人ニ因テモ證據立ルコトガ出來ルカラ
(淸岡委員)
稀レナモノヲ以テ本體ニシタカ
(今村委員)
稀レナモノヲ民法中モ索ガシテナイモノヲ本則ニスルガオカシイノデス
(松岡委員)
生籬抔ハ分界線上ニ多ヒノデス
(委員長)
生籬抔ハ多ヒダロウ
(村田委員)
土塀ト云フノハ互有デス
(尾崎委員)
分界線上ト云フノハ隨分アル互有ト云フノヲ原則ニ立タ以上ハ之ハ良シイ
(委員長)
家抔ニハ滅多ニナイ
(淸岡委員)
前條ノ方ニハ氣ガ付カンデ通タガ此所ハ非互有ト云フト愈々少シオカシイト思フ
(南部委員)
分界線上ニ在テダカラ良イダロウ
(松岡委員)
分界線ヲ離シテ居レバ全ク自由ダ
本條ハ「及ヒ所在地」ノ五字ヲ刪リ其他ハ原案ニ決ス
第二百七十二條朗讀ス
第二百七十二條 相隣者ノ一人ノ專有權ヲ定ムル直接ノ證據又ハ時効ノ存セサルトキハ非互有ヲ推定ス可キ目標ハ左ノ如シ
第一 土造、石造、煉瓦造ノ牆壁ニ付テハ屋根ノ傾斜面又ハ小櫓、牖孔其他ノ工作物又ハ粧飾物カ一方ノミニ存スルコト
第二 板塀、垣柵ニ付テハ其支柱カ一方ノミニ存スルコト
第三 溝渠ニ付テハ掘浚ノ泥土カ一方ノミニ存スルコト
第四 生籬、柴垣ニ付テハ一方ノ土地ノミ四面ヲ圍ハレタルコト
此四箇ノ場合ニ於テ專有權ハ右目標ノ存スル一方又ハ土地ノ全ク圍ハレタル一方ノ相隣者ニ屬ス
(今村委員)
第四ノ「圍ハレ」ハ「圍マレ」ノ誤リデス
(村田委員)
之レハ良シイ
(松岡委員)
之ハ良シイ
(南部委員)
之ハ大變六ケ敷カツタノダ
(尾崎委員)
分界線上ニ在テモ一方ノモノニ看做スト云フノカ
(南部委員)
左樣デス
(村田委員)
分ラントキハ之ヲ證據ニスルト云フノダネ
(渡委員)
占有ノ證據ダ
(松岡委員)
末項ノ「一方ノ相隣者ニ屬ス」ハオカシイネ、相隣者ト云ヘバ兩方ダロウ
(南部委員)
相隣者ノ一方ダ
(松岡委員)
隣ノ字ガ主ニナツテ居ルノデス
(委員長)
之ハ良カロウ、本日ハ是デ措キマス
本條ハ「圍ハレ」ハ「圍マレ」ト正誤シ其他原案ニ決ス