旧民法・法例(明治23年)

法律取調委員会 民法草案再調査案議事筆記 第5回

参考原資料

備考

  • 未校正のテキストデータです.
民法財產編再調査按第五回議事筆記
自第百九十一條至第二百二十六條
(尾崎委員)
始メマシヨウ
(三島委員)
此間、尊屬卑屬ト云フコトハ村田サンノ御說ノ通リ調ベマスルニ「屬」ノ字ニナツテ居リマス、人第百十七條デアリマス
第百九十一條朗讀ス
第四章 占有
第一節 占有ノ種類及ヒ占有シ得ヘキ物
第百九十一條 占有ニ法定、自然及ヒ容假ノ三種アリ
(村田委員)
占有ハ第二條デ占有ノ所ヲ初メニ物權ハ何ウ云フモノ何々ト云ツテ第四占有ト云ツテ居ルソウシテアルト占有權トシテ彼處ヘ照應シナケレバナリマセン
(今村委員)
占有權デナイモノモアリマス
(村田委員)
ナイモノハ宜シイ
(松岡委員)
村田サンノ言フノハ正論ダガトテモ往カンノハ權デナイモノモアリマス
(今村委員)
ソウ八釜敷云ツテモ兎テモ初マラン占有ノ章ノ中ニ彼ノモノモ這入ツテ居ル御座リマス
(村田委員)
第四ノ中ニ占有權ト云フモノガ無ケレバ宜シイガ第四章ノ始メニ占有權トアリマス
(南部委員)
自然ガ卽チ占有權デアリマス
(村田委員)
其レナラバ占有權デハオカシイデハナイカ
(三島委員)
大ハ少ヲ兼ネル方カラ來テオルノデアリマス
(南部委員)
贊成ガナケレバ默シテ居ルガ宜シイ
(松岡委員)
其レヲ言ツテ見ルト容假ノモノアリ、ヲ止メナケレバナリマセンソウシナケレバ物權ト云フモノハ据ハラン其レヲ三種アルノ二種アルノト云フト此場合ハ村田サンノ平生ノ小サイ論ト違ツテ大ノ論ダガ前ノガ改正ガ出來ルコトナラバ同意イタシマス
(渡委員)
容假ノハ三種トナリマシタカ
(今村委員)
「ボアソナード」ガ書イテ來タニ元來三ツニナツテ居ルノデアリマス
(渡委員)
容假トハ原語ハ何ト言ヒマスカ
(今村委員)
「プレエケー」ト言ヒマス
(北畠委員)
容假トハ如何
(今村委員)
許シテ居ルト云フノデ貴君ノ許可ヲ得ズシテ占有シテ居ルノハ容假デハナイ
(尾崎委員)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第百九十二條朗讀ス
第百九十二條 法定ノ占有トハ占有者カ自己ノ爲メニ有スルノ意思ヲ以テスル有體物ノ所持又ハ權利ノ行使ヲ謂フ
權利ハ物權ト人權トヲ問ハス法定ノ占有ヲ受クルコトヲ得其種々ノ効力ハ場合ニ從ヒ下ニ之ヲ定ム
人ノ身分ニ適用スル占有ハ第一編ニ之ヲ規定ス
(尾崎委員)
末項ハ刪除デ宜ロシイ
(村田委員)
此レハ刪テ宜ロシイ
(渡委員)
刪テ宜カロウ
(今村委員)
此所ハ前ノ例デ刪ルノデハナイ財產ノ事ヲ言フノデ人ノ身分ハ財產デハナイ「ボアソナード」ハ財產外ニ言ツテ居ル我我ノ考ヘデモ人ノ身分ハ財產デナイカラ刪ルト云フノデアリマス
(松岡委員)
刪ルニ異議ハアリマスマイ
(尾崎委員)
容假ト云フ字ハ後カラ這入タノデスカ
(槇村委員)
「ボアソナード」ガ入レタノデス
(尾崎委員)
法律學問ノ講義ヲ讀ムヨウナモノデス
(松岡委員)
此條抔ハ良シイノデ後ニ「ナチウラル、ポツセシヨン」トカ云フモノハ役ヲシナイノダ
(村田委員)
容假ト云フノハ又占有デモ別ダカラネ
(松岡委員)
往キマシヨウ
本條ハ末項刪除シ原案ニ決ス
第百九十三條朗讀ス
第百九十三條 法定ノ占有カ占有シタル權利ヲ授付ス可キ性質アル權利行爲ニ基クトキハ讓渡人カ授付スルノ分限ナキヲ以テ其効力ヲ生スル能ハサルトキト雖モ其占有ハ正名義ノ占有ナリ
占有カ侵奪ニ成リタルトキハ其占有ハ無名義ノ占有ナリ
(松岡委員)
名義ガ良イカ原由ガ良イカ
(南部委員)
契約ノ所ハ往クト原由デス、彼ノ方ガ良クハナイカ原由ト云フノハ瑕疵ガアルカナイカバカリニナリハセンカ
(松岡委員)
法定ノ占有ト云フモノニ基キマスカラ
(南部委員)
權利行用ニ基クトキハ無名義デ矢張リ法定ノ占有デアリマス
(尾崎委員)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第百九十四條朗讀ス
第百九十四條 正名義ノ占有ハ名義創設ノ當時ニ於テ占有者カ其名義ノ瑕疵ヲ知ラサリシトキハ之ヲ善意ノ占有トシ此ニ反スルトキハ惡意ノ占有トス
法律上ノ錯誤ハ善意ニ付テノ利益ヲ受クル爲メニ之ヲ申立ツルコトヲ許サス但第二百六條ニ記載シタル規則ヲ妨ケス
善意タルコトハ名義ノ瑕疵ヲ發見シタルトキハ止ム
(今村委員)
發見ト云フ字ガ契約篇ニ在テ之ハ「覺知」ト云フ方ガ宜シイノデ「覺知」ト改メマシタ
(松岡委員)
宜シユウ御座イマシヨウ
(三島委員)
此處デ島渡私ハ皆ナサンニ質問シマスガ法律ノ錯誤ト云フコトハ古クカラ云ヒマスルガ平心ニ見ルト如何ニ見ヘマシヨウカ
(尾崎委員)
法律ヲ錯誤シタノデ卽チ誤マツタノデアリマス然シナガラ心ハ善意デアリマス
(松岡委員)
私ハ左樣見ナイノデス法律ガ間違ツタノデス
(尾崎委員)
然シソウ云フ理窟ハアリマセン
(今村委員)
法律ノ錯誤ト云フハ法律ガ間違ツテ居ルト讀メルガ一末項削除建議旦感服シタコトガ法律上ノト讀ムト法律デ定メタト云フノデ法律ニ付テ錯誤ガ宜シイノデ處ガ實際ハ誰レモ法律ノ錯誤ハ擬律ノ錯誤ト云ツテ居ルニ今ニ付テト云フノハムツカシイト文字ハ無理ダガ財產ノ如キ無理ナ文字ガ民法中ニ幾等モアリマスカラ世上ニ通ツタ爲又束縛セラレテ止ムヲ得ザル場合デ既ニ日本ニ通ツタ文字ダカラ知リナガラ使ヒマス
(渡委員)
外國デモ法律ノ錯誤ト直カニ書イテ居リマス
(今村委員)
三島氏ニハ氣ニ入ランノデアリマス
(松岡委員)
三島サンハ何ントシマスカ
(三島委員)
法律ノ誤認トシテハ如何デアロウカト思ヒマス
(尾崎委員)
同ジコトデシヨウ
(今村委員)
文字ノ儘解スルト法律ガ間違ツテ居ルト云フ樣ニ見ヘマス
(三島委員)
文字ガ無理ト云フ丈ケヲ申シテ置クノデス
(渡委員)
其レハ其ニ違イナイ
(三島委員)
私ハ文字ヲ見ル丈ケノ用ダカラ後チ人ノ錯誤ト云フト人ガ誤マツタ樣ダガ人ガ見誤マツテ居ルト云フノデアリマス
(渡委員)
法律ノ錯誤ト云フト意味ヲ解セズシテ人ガ解シテ居リマス
(今村委員)
誤認ト云フト知ラナカツタト云フコトニナリマス
(渡委員)
宜カロウデハアリマセンカ先ヘ往キマシヨウ
本條ハ「發見」ヲ「覺知」ト改メ原案ニ決ス
第百九十五條朗讀ス
第百九十五條 強暴又ハ隱密ノ占有ハ之ヲ瑕疵ノ占有トス
占有カ暴力又ハ脅迫ニ因リテ成リ又ハ保持セラレタルトキハ其占有ハ強暴ノ占有ナリ
占有カ公顯且表白ノ所爲ニテ當事者ニ相應ニ見ハレサルトキハ其占有ハ隱密ノ占有ナリ
右占有カ平穩ト爲リ又ハ公顯ト爲リタルトキハ其瑕疵ハ消滅ス
(村田委員)
暴力ト云フ字ハ「暴行強迫」トアリマスガ第二百十六條ニモ暴行強迫トアルガアレト同ジニ矢張リ暴行トシテハ如何
(尾崎委員)
宜シユウ御座イマシヨウ
(松岡委員)
次ニハ強暴ナル占有トアリマス
(村田委員)
「強暴」ハ宜ロシイ
(南部委員)
「暴行」デ宜ロシイ
(今村委員)
意味ニ變リハアリマセン
(村田委員)
「表白」ト云フコトハ如何
(三島委員)
白ノ方ガ能ク分リマス
(村田委員)
「外見」ト云フ字ガ當ルカモ知レマセン元ハ外見トアリマシタ
(三島委員)
同ジデアリマシヨウ字面ハ白ノ方ガ宜ロシイ
(尾崎委員)
同ジ樣デス
(村田委員)
「公顯」ト云ツタヲ「表白」ト云フハ惡イダロウ
(委員長)
却テ先ノ方ガ見宜イデシヨウ
(村田委員)
右占有ガ平穩ト爲リ公顯ト爲リタルトキハ止ムト云ツテ居ルノダカラ前ノ「且表白」ハ不必要デアリマシヨウ
(三島委員)
「且表白」ト云フ丈ケハナイ方ガ良イケレドモ原語ハソウ如何ナイノデアリマス
(尾崎委員)
此文ハ一體オカシイノデ公顯表白ノ所爲デソウシテ顯ハレナイト云フノハ何ウ云フ譯カ
(南部委員)
相應ニト云フ字ガ眼目デアリマス
(尾崎委員)
當事者ノ顯ハレナイト云フノデスカ
(今村委員)
當事者ハ知ランカモ知レン
(南部委員)
卽チ當事者相應ニ顯ハレテ居レバ良イノデス
(尾崎委員)
原文ヲ見ルトソウデナイ公顯表白ノ所爲デナクツテ當事者ニ顯ハレナイト云フノデ然ルニ之ハ所爲ガアツテ顯レナイト云フノデアリマスカラ分リマセン
(三島委員)
相應ニト云フハ穩カナランガ何ウモ仕方ガナイ充分ニ顯ハレザルト云ヘバ良ク分ルノデス
(今村委員)
公顯ハ充分ニト云フノデハナイ鳥渡顯ハレレバ宜イノデス
(渡委員)
相應ニト云フ字ハイラヌノデス
(村田委員)
可成リニ顯ハレト云フノデス
(今村委員)
顯ハレ方ガ此方法デ顯ハレナケレバ如何ノデス
(槇村委員)
所爲デアリナガラデスカ
(今村委員)
アリナガラ、デハナイ公然暴行ノ所爲デ以テソウシテ顯ハレナイノデス
(松岡委員)
公顯ノ所爲ヲ以テトシテ「且暴行」ヲ止メテハ如何
(尾崎委員)
顯ハレザルト云フノハ公顯ナラザルト云フ意味ヲ加ヘルノデアリマシヨウ
(今村委員)
公顯ナラザルト云フ意味デハナイ占有者ガ公顯且表白ノ所爲ヲ以テ當事者ニ顯ハレザルト云フノデス
(尾崎委員)
所爲デ顯ハレテ居ラントキニハト云フノダロウ
(今村委員)
公顯且表白ノ所爲アツテモ當事者ニ顯ハレナクツテハト云フノデアリマス
(槇村委員)
公顯ニ顯ハレアルナレドモ當事者ニ知レナクツテハト云フノカ
(今村委員)
アルナレドモトハ云ヘン所爲ヲ以テト云フノデス
(尾崎委員)
ダカラ内証デ爲タコトニナルノデス
(今村委員)
之ハ當事者ニ顯ハレナクテハ往カンノデス
(尾崎委員)
公顯ノ所爲ナレドモ當事者ニ相應ニ顯ハレナイト云フノダ
(槇村委員)
ナレドモガ
(尾崎委員)
左樣デス
(松岡委員)
ナレドモト云フヲ主ニ立ツタノデハナイニテト云フ同樣ニ公然トセズ當事者ニ分ラン者ト云フ唯公然ト云フノガ些ト不滿足デス
(今村委員)
ナレドモデモ困ルノデス
(村田委員)
所爲ハ公然デナケレバナラヌ例ヘバ人ノ物ヲ買フ所ガ錯誤ガアルケレドモ其レハ見イ出セナイノデス
(松岡委員)
此處デハ所爲ハ内証デナイト云フノデス
(尾崎委員)
所爲ハ公然ナレドモト云フニ聞コヘル
(尾崎委員)
内証デヤツテ當事者ニ知レナカツタト云フノデ之ヲ公然トシタガ當事者ニ顯ハレナイト云フト弊ガアリマス
(今村委員)
ソウデハナイナ
(尾崎委員)
公然タル事ニシテ當事者ニ顯ハレナカツタトキト云フノダ卽チ公然トシテ居ツテモト云フノデハナイ
(今村委員)
左樣
(尾崎委員)
誠ニ顯ハニ仕事ヲシテ居ツテモ當事者ニ知レナカツタト云フニ讀メル
(南部委員)
私ハソウハ讀メマセン
(三島委員)
公顯且表白ノ所爲ニ因テ當事者ニ顯ハレト云ツテ又ザルトヒツクリカイシテクルカラ分リマス
(村田委員)
所爲ニテ顯ハレザルトシマスカ
(尾崎委員)
所爲ニ因リトシテハ如何
(委員長)
元ノ方ガ良イデハナイカ公然ニシテ且云々トアル
(村田委員)
元ノガ宜シイ
(尾崎委員)
「因リ」ハ宜シイ
(尾崎委員)
其方ガ宜シイ
(三島委員)
平穩ト爲リ公顯トナリト云フ後チニアリマス又公然ト云フハ形容詞デアリマス
(委員長)
公顯ト云フト公然ト外見ノ所爲ヲ籠メテ公然ト名付ケテトカ此處デ云フノハ公然デアリ且外見ノ所爲ト云フモノヲ云フ前ニハ公顯ト云テ顯ハレルモノト含ンダモノト公然トシテハ如何
(南部委員)
二項ノ公顯ハ占有ノ公顯ヲ云ツタノデ今迄ノ占有デハナイ反對ノ公顯表白ト云フノガアリマス
(委員長)
公顯ニト云フノト表白ト云フ字ト重ナルノハ宜シクナイ
(南部委員)
公然ハ宜イヨウニ思ヒマス
(尾崎委員)
外見ト云フ方ガ宜イ又公然ノ所爲ト云フモ宜シイ
(南部委員)
其レハ宜シイ
(委員長)
舊案ノ通リニ仕樣デハナイカ
(今村委員)
公然ノ方ガ宜シイカ
(南部委員)
公然ガ宜シイ
(三島委員)
ソウスルト末項ノ平穩トナリ又ハ公然ト爲マスカ
(南部委員)
字ヲ揃ヘルト云フコトハ往ケマセント思ヒマス
(松岡委員)
公顯ノ所爲ニシテ何々ト云ツタラ良イダロウ
(南部委員)
私ハ公然且外見トシテ良イト思イマス
(槇村委員)
上ノ公然外見ト云フノト次ノトハ違イマス
(尾崎委員)
後ノハ公顯前ノハ公然デ良イダロウ
(渡委員)
ソレデハ良シイ
(村田委員)
ソレデ良シイ
(尾崎委員)
公然且外見ノ所爲ニ因リトヤリマスカ
(南部委員)
宜ロシカロウ
(渡委員)
宜カロウ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ第二項「暴力」ヲ「暴行」ト改メ第三項「公顯」ヲ「公然」ト改メ「表白」ヲ「外見」ト改メ「所爲ニテ」ヲ「所爲ニ因リ」ト改メ其他原案ニ決ス
第百九十六條朗讀ス
第百九十六條 自然ノ占有トハ占有者カ自己ノ權利ヲ主張セスシテ爲ス有體物ノ所持ヲ謂フ
公有物ニ付テハ各人ハ自然ノ占有ノミヲ爲スコトヲ得
(尾崎委員)
公有物トハドウ云フ物カ、空氣太陽ノ如キモノカ
(村田委員)
彼レハ公共物デス
(今村委員)
前置條例ニハ御座イマセンカ
(村田委員)
貴君ノ腰掛ケテ居ルノモ自然ノ占有ダ、之ハ良シイ
本條ハ原案ニ決ス
第百九十七條朗讀ス
第百九十七條 容假ノ占有トハ占有者カ他人ノ名ヲ以テ其人ノ爲メニスル物ノ所持又ハ權利ノ行使ヲ謂フ
容假ノ占有者カ自己ノ爲メニ占有ヲ始メタルトキハ其占有ノ容假ハ止ミテ法定ト爲ル
然レトモ占有ノ基本タル名義ノ性質ヨリ生スル容假ハ左ニ揭クル原因ノ一ニ由ルニ非サレハ止マス
第一 占有ノ利益ヲ受クル人ニ吿知シタル裁判上又ハ裁判外ノ行爲ニシテ其人ノ權利ニ對スル明確ノ異議ヲ含メルモノ
第二 契約者又ハ第三者ニ出テタル名義ノ轉換ニシテ其占有ニ新原因ヲ付スルモノ
(松岡委員)
之ハ皆「ボアソナード」ガ直シタノカ
(今村委員)
皆「ボアソナード」ガ直シマシタ占有ノ所ヘ手ヲ入レ刪除ノ處ハ二所アル丈ケデ跡ハ皆「ボアソナード」ガ改テ來タノデス
(尾崎委員)
契約者ト云フノハオカシイ、當ランヨウデス
(南部委員)
契約者ハ良シイデハナイカ
(尾崎委員)
當事者トヤツテ良カリソウナモノデス
(今村委員)
當事者ト云フモ變ハツタコトハナイ
(槇村委員)
契約者ノ方ガ良シイ
(西委員)
最初「容假」ノ「容」ノ字ハ刪タヨウデスカネ
(尾崎委員)
刪リテ「假ノ」トヤツタ
(南部委員)
「容假」ノ字ハ、追テ調査スルトナツテ居タノデシタ
(西委員)
ソウシテ今度生キテ來タノデスネ
(今村委員)
外ノ法學者ハ占有トハ云ハン、ケレドモ「ボアソナード」ハ占有トシテ居ル
(南部委員)
併シナガラ構成法ニハ占有ト謂テ居ル
(松岡委員)
アレハ此所デ云フ占有トハ違フ
(南部委員)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第百九十八條朗讀ス
第百九十八條 占有者ハ常ニ自己ノ爲メニ占有スルモノトノ推定ヲ受ク但占有ノ名義又ハ事實ノ情況ニ因リテ容假ノ證據アルトキハ此限ニ在ラス
(南部委員)
之ニ論ハアルマイ
本條ハ原案ニ決ス
第百九十九條朗讀ス
第百九十九條 正名義ノ證據アル占有ハ之ヲ善意ノ占有ナリト推定ス但反對ノ證據アルトキハ此限ニ在ラス
(村田委員)
前ニハ「推定ヲ受ク」ハ「推定ス」トノ方デアルガ矢張「推定ヲ受ク」デ置キマスカ
(南部委員)
モノト之ヲ推定スト謂ハナケレバナランネ
(委員長)
宜クバ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第二百條朗讀ス
第二百條 強暴ノ證據ナキ占有ハ之ヲ平穩ノ占有ト推定ス
公顯ハ推定ヲ以テ之ヲ認メス必ス其證明ヲ爲スコトヲ要ス
前後二箇ノ時期ニ於テ證據アリタル占有ハ其中間繼續シタリトノ推定ヲ受ク但其占有ノ截斷又ハ停止ノ證據アルトキハ此限ニ在ラス
(栗塚委員)
末項デハ本ニ文字丈ケダカラ成丈ケ報吿委員カラハ別段ニ書カンデモ良イダロウト云フノデ「前後二箇ノ時期ニ於テ證據ヲ得タル」ハ何ノ證據ヲ得タルカ、占有ノ證據ヲ得タルノデスルト言葉ガ足ランノデスカラ「前後二箇ノ時期ニ於テ證據アリタルトキ」ト云フヨウニシテハ如何ト思ヒマス
(渡委員)
之デ良シイヨウデス
(栗塚委員)
原文ハ二箇ニ於テ占有、其占有ガ證據足ラレタル占有トアルカラ分ル
(南部委員)
下ノ「占有」ハドウデモ宜シイガ「證據ヲ得タル占有」ト云フノハ穩カナラン文ト思フ
(栗塚委員)
證セラレタル占有トカ證據ヲ得ヌ占有ト云フハ分ランノデ前後二箇ノ時期占有シタリデモ占有ノデモ宜シイ其中間繼續推定スト改メタリ
(尾崎委員)
其レデ宜シイ
(尾崎委員)
其レデ宜シイ
(三島委員)
宜シウ御座イマシヨウ
(南部委員)
或ハ證據アル占有トシテハ如何
(渡委員)
是レデ宜カリソウナモノデス
(栗塚委員)
御取捨ハ皆ナサンニ任カセマス
(渡委員)
證據アルハ宜カロウ
(槇村委員)
證據アル占有ハ宜カロウ
(村田委員)
ソレデ宜ロシイ
(委員長)
其方ガ未ダ宜ロシイ
(今村委員)
原書ノ意味デハ「前後二箇ノ時期ニ於テ證明シタル占有」トシテ宜シイ
(村田委員)
其レデ宜シイ
(槇村委員)
其方ガ宜シイ
(南部委員)
二箇ニ於テ證明スルトハ云ヘマセンガ「前後ノ二箇ニ於テ」ト云フト前ノモ證明ト見ヘ後ノモ又證明ト見ヘルガ
(尾崎委員)
二ツアツタト云フノダロウ
(南部委員)
證據アルガ宜カロウ
(槇村委員)
二度證明シタト云フノカ
(尾崎委員)
去年モ彼ノ男ガ持テ居ツタ又今年モ持テ居ツタト證明スレバ良イソウスレバ中間繼續スルノダ
(南部委員)
證明シタルハ惡イノデス
(今村委員)
證據ハ十年前一度證據立又今日證據立ツタノデアリマス
(槇村委員)
ソウダロウト思ヒマス
(今村委員)
其間ハ何ウシテ居ツタカ矢張リ續イテ占有シテ居ツタノ云フ原書デアリマス
(委員長)
證據アリタルガ宜ロシイ
(今村委員)
證據立ヲ二度シナケレバナリマセン
(南部委員)
註ノ意味ハ前ニモ證明シ後ニモ證明シタトアルノデス
(委員長)
前後二箇ノ時期ニ於テ證據アリタル占有ノ證明ハトシテハ何ウカ證明デモ證據デモ何方デモ宜シイ「シタル」ヨリハ「アリタル」ガ宜シイ既ニヤツタコトヲ言ハナケレバナリマセン
(村田委員)
二度ノ證明ハ要用ハナイトスルト一度往カントアリマス
(今村委員)
一度證明シテ長イ間ト云フノハ無理デス
(松岡委員)
ソウ兩方往ケルト見ナイト往カン前ニシタモノモ亦シテモ宜モ後ニスルヲ一所ニシテモ宜ロシイ
(今村委員)
二ツノ證據ガナケレバナリマセン
(松岡委員)
其レ人ナケレバナリマセン五年前ニ斯ウト云フ證明シ今日斯ウト云フ證明シ兩方シナケレバナリマセン
(南部委員)
證據アル占有ガ宜ロシイダロウ
(槇村委員)
證據アリタル占有ガ宜ロシイ
(南部委員)
宜カロウ
(尾崎委員)
推定スカ
(松岡委員)
トノ推定ヲ受クダ
(委員長)
ラレ、ラルル、ヲ受ク、トナツタノカ
(村田委員)
ラル、ヲ、ストナツタ所モアリマス
(委員長)
宜カロウ、先ヘヤリマシヨウ
本條ハ第三項「證據ヲ得タル」ヲ「證據アリタル」ト改メ其他原案ニ決ス
第二百一條朗讀ス
第二節 占有ノ取得
第二百一條 法定ノ占有ハ或ル物ノ所有權又ハ或ル權利ヲ自己ノ有ト爲スノ意思ヲ以テ其物ヲ把握シ又ハ其權利ヲ實行スルノ所爲ニ因リテ之ヲ取得ス
(村田委員)
第二百二十六條ニ握取トアルガアレガ宜ロシイガ「把握」ト云フノハオカシイ
(松岡委員)
「把握」ハ宜ロシイ把ムトカ握ルトカ云フ丈ケダカラ宜ロシイ、有ヲ付ケルト重モ過ギル
(今村委員)
所有ノ有ノ字ヲ避ケル爲メデス
(南部委員)
其權利ヲ行フカ
(尾崎委員)
宜カロウデハナイカ
本條ハ原案ニ決ス
第二百二條朗讀ス
第二百二條 物ヲ所持シ又ハ權利ヲ行使スルノ所爲ハ之ヲ第三者ニ委スルコトヲ得但占有スルノ意思ハ占有ニ付キ利益ヲ得ント主張スル其人ニ存スルコトヲ要ス
然レトモ無能力者及無形人ハ其名代人ノ意思及ヒ所爲ニ因リテ占有ノ利益ヲ受クルコトヲ得
(南部委員)
之レハ分テ居ル
(村田委員)
之レハ宜シイ
(尾崎委員)
宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第二百三條朗讀ス
第二百三條 把握ノ所爲ハ簡易ノ引渡又ハ占有ノ改定ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得
權利ノ行使ニ付テハ初メ他人ノ名ヲ以テ行使セル者カ爾後自己ノ爲メニ行使スルニモ亦當事者ノ意思ノミニテ足ル又初メ自己ノ爲メ行使セル者カ爾後他人ノ爲メニ行使スルニ付テモ亦同シ
初メ容假ノ名義ヲ以テ占有シタル物ヲ其占有者ニ爾後自己ノ物ト看做スコトヲ得セシムル新名義ニ依リテ之ヲ留存セシメタルトキハ簡易ノ引渡アリタリトス
初メ物ヲ自己ニ屬ストシテ占有シタル占有者カ爾後他人ノ名ヲ以テ其人ノ爲メ占有ヲ繼續スルコトヲ承諾シタルトキハ占有ノ改定アリタリトス
(南部委員)
此二項ハ起案者ガ改メタノデ之レガ宜ロシイ
(今村委員)
二項ハ全ク新シク這入ツテ來タノデス携帶ノ占有ト云フノハ何ンノ事ヤラ分カリマセン
(村田委員)
携帶上ノ占有デ分ランコトハナイデハナイカ
(渡委員)
論ガナケレバ往キマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第二百四條朗讀ス
第二百四條 占有ハ前主ニ於テ存シタル占有ノ性質及ヒ瑕疵ヲ以テ其相續人及ヒ包括承繼人ニ移轉ス
物又ハ權利ノ特定名義ノ取得者ハ其利益ニ從ヒ或ハ自己ノ占有ノミヲ申立テ或ハ自己ノ占有ニ讓渡人ノ占有ヲ併セテ申立ツルコトヲ得
(村田委員)
援唱利唱ハ往カン
(今村委員)
殊ニ依ルト援唱利唱ハ止ムデシヨウ、他ノ條ヲ引テ來テソレヲ申立ル、所ガ他ノ條ヲ申立ルコトヲ得ト云フト言ヒ憎ヒ其トキハ援引ト云フ
(渡委員)
援引位ヒハ分ルガ援唱利唱ニ至テハ分ランネ
(委員長)
援唱利唱ヲ刪タラ日本文デ讀ミ宜イカ援唱利唱ヲ法律學者代言人トカ裁判所デハ云フダロウガネ之ヲ總テ除テ仕舞フト其言葉ニ困ルヨウナコトハナイカ
(今村委員)
申立テ濟デ仕舞フダロウト思ヒマス
(委員長)
援唱ト云フト物ガアツテ其物ヲ援唱シテ言立ルノデシヨウ
(今村委員)
只申立テハ分リマセン其理由ヲ申立ツルノデス
(委員長)
何々ニテ申立ルト云フコトニスレバ宜シイ只申立トバカリシテ置クト援唱利唱ト云フ語ガ日本法律語ニ用ヒラレナイヨウニナル
(今村委員)
日本法律語ニ援唱利唱ト云フモノヲバ用ヒヌ積リデアリマス抑モ彼ノ文字ガ惡イト云フノデアレヲ廢ス積リデアリマス
(委員長)
廢スルコトガ出來ルカ
(三島委員)
詰リ同ジデアレバ援唱デモ宜シイ
(委員長)
此所デ云ヘバソウダロウガ此字ハ他ノモノノ援ケニ云フトキハ「アンボツケー」ト云フ字ヲ使フコトガアルモノダカラ日本ニ語ガナイカラ言葉ガナイカラ盡サンデモ書イテ置クト良シイ
(今村委員)
「アンボツケー」デモ假令バ二重ニ人ニ占有ヲ援ケニヤルト云フノダカラ矢張リ人ノ占有ヲ申立ルトシテモ異リハ御座イマセン
(委員長)
ドウモ物ハ一時オカシイヨウデモ使ヒ出セバドウカ馴レルダロウ
(松岡委員)
使ヒ出スノガ難儀デス
(委員長)
ナクツテ濟メバ良シイガ後來ハドウカ
(今村委員)
私ハ只他ノ條ヲ引ニハ援引デナケレバナラント覺悟シテ居リマス翻譯デハ利唱ト云フノハ止メタカモ知レン
(尾崎委員)
併シ之ハ分ルヨウデス
(委員長)
援唱利唱ヲ用ヒズ濟マス積リナレバドウデモ宜カロウ
本條ハ原案ニ決ス
第二百五條朗讀ス
第三節 占有ノ効力
第二百五條 法定ノ占有者ハ反對ノ證據ノ出ル有ルニ非サレハ其行使セル權利ヲ適法ニ有スルモノトノ推定ヲ受ク其權利ニ關スル權原ノ訴ニ付テハ常ニ被吿タルモノトス
(村田委員)
元トノヨウニ反對ノ證據アルニ非ザレバ、デ宜サソウナモノデス
(尾崎委員)
證據アルニ非ザレバデ良シイ
(松岡委員)
宜カロウ
(委員長)
回收訴權ト云フノハ廢止シテ良イノカ
(今村委員)
權原ノ中ニ這入テ居ルノデス
(委員長)
占有權丈ケ回收スルコトガ出來マスマイ
(南部委員)
占有ダカラ斯ウ云ヘルノデシヨウ
(今村委員)
ソウデス
(委員長)
「ボアソナード」ニ聞イタノデスカ
(今村委員)
聞キマセンガ皆ナ斯ウヤツテ來マシタ
(南部委員)
第二百二十一條ヲ見ルト權原ノ訴ヘ又ハ占有ノ訴ヘノ云々トアル回收ノ訴ヘト云フノハナクナツテ居リマス
(委員長)
之ハ前カラ刪テ來テ居ルノデスカ
(今村委員)
左樣デス
(委員長)
權原ノ訴ト云ヘバ回收ノ訴ヘヲ併セト云フカ否ヤ聞イテ見テハ如何デス
(今村委員)
「ボアソナード」ノ註ニ委シク書イテアリマスカラ聞カンデモ大丈夫ト思イマス
(南部委員)
之ヲ刪ツタラ、ナイカナラバアルコトハアルノデ權原ノ中ニ籠テ居リマス
(村田委員)
三十七條ヲ見ルト權原訴權ヲ行フコトヲ得トアリマス之モ矢張リ回收訴權ト云フコトヲ云ハナケレバナリマセン其レモ言ハヌノハ含ンデ居ル證據デス
(委員長)
回復訴權ト云フハ確取訴權ト直ホリマシタカ
(村田委員)
直ツテ居リマス
(委員長)
三十七條ノ所ハ「ボアソナード」ガ替ヘタノカ此方デ替ヘタノカ
(今村委員)
此方デ替ヘマシタ又外ニモアツタト思ヒマス
(委員長)
文字丈ケハ私シガ聞イテ見マシヨウ
(南部委員)
三十七條ノ注ニモアリマス又此處ノ注ニモアリマス又此處ノ注ニモアリマス
(委員長)
ソレデハ先ヘ往キマシヨウ
本條ハ「反對ノ證據ノ出ル有ル」ヲ「反對ノ證據アルニ非サレハ」ト改ム其他原案ニ決ス
第二百六條朗讀ス
第二百六條 正名義且善意ノ占有者ハ天然ノ果實及ヒ產出物ニ付テハ自身又ハ代人ヲ以テ土地ヨリ分離シタル時ニ於テ之ヲ取得シ法定ノ果實ニ付テハ用益者ニ關シ規定シタル如ク日割ヲ以テ之ヲ取得ス
占有者カ正名義ヲ有セスシテ事實上又ハ法律上ノ錯誤ニ因リテ惡意ナキトキハ其消耗シタル果實ニ付キ利益ヲ得サリシ證據ヲ擧クルニ於テハ之ヲ返還スルノ責ニ任ス
占有者カ其占有セシ物又ハ權利ノ自己ニ屬セサルコトヲ發見シタルトキハ將來ニ向テ其返還ノ責ヲ生ス又訴訟ニ於テ確定ニ敗訴シタルトキハ其出訴ノ時ヨリ此責ヲ生ス
(村田委員)
末項ノ「將來ニ向テ其責ヲ生ス」ト云フト意味ガ違ガツテ來ハシマセンカ占有者ガ占有セシモノヲ自己ノ發見シタトキ將來ニ向テ其返還ノ責ヲ生ズト云フト占有物ハ占有セシモノ許リデシヨウ卽チ果實ノ利益ヲ受クルノデ所ガ物許リニ書イテハ利益ガ拔ケル樣ニ見ヘマス「其返還」ト云フハ「其」ト云フハ利益マデ往カンカラ斯ウ書イテハ占有セシ物ヲ指ス樣ニナリマスカラ元ノト違ツテ來ルカト思ヒマス
(今村委員)
ソウ見ヘテハ困リマス
(村田委員)
元ノハ右ノ利益トアリマス右ノ利益ハ將來ニ向テ止ムト云フノハ自己ノ利益ヲ云フノデアリマス
(松岡委員)
ソウデスアリマスマイ
(村田委員)
サモナケレバ利益ト云フ字ノ出樣ガアリマセン
(松岡委員)
使ツテシマウモノナラバ皆ナ這入ルノデス
(村田委員)
其返還ノ責ヲ生ズト云ツタラ何ニ見ヘルヤ
(松岡委員)
得取シタ所ノ果實デス
(村田委員)
果實トカ何ニトカ云フモノハ前ノモノデスカ是レラハ見ヘマセン
(南部委員)
其ト云フ字ガアルカラ成程惡ルイ
(村田委員)
右ノ利益ト云フ字ヲ入レテヨイト思フ
(尾崎委員)
原案ノ方ガ宜シイ右ノ利益ト云フヲ入レテ宜シイ
(村田委員)
元ノ通リガ宜シイ
(今村委員)
利益ガ止ムデハ分リマセン返還スルニ及バント云フコトヲ指シテ利益ト云フノカ
(村田委員)
左樣デス
(今村委員)
利益ト云フ字ハ前ニアルカラ何ウデシヨウカ
(尾崎委員)
右ノ利益デ宜ササウデス將來ニ向テ唯返還ノ責ト云フト占有物ノ樣ニ見ヘマス
(南部委員)
「其返還」ト云フハイケマセン
(松岡委員)
果實ニ付キ利益ヲ得ザリシト云フ彼ノコトヲ云フト違ヒマス
(南部委員)
右ノ返還ノ責ヲ生ズトシテハ如何
(尾崎委員)
前項返還ノ責ニ任ズトシテハ如何
(南部委員)
「其」ト云フ字ヲ「右」ト云フ字ニ替ヘテ宜カロウ
(尾崎委員)
原案ガ宜ロシイ
(今村委員)
將來ニ向テ前項返還ノ責ヲ生ズトシテハ如何
(三島委員)
將來デアリマスカラ生ズトシタラ宜ロシイ
(南部委員)
生ズルデ宜ロシイ
(渡委員)
「其」ヲ「右」ト直シテ氣閊ハナササウデス
(村田委員)
前項ノト云フガ宜イダロウト思ヒマス
(松岡委員)
將來ニ向テ右ノ返還ノ責ヲ生ズトシテ宜カロウ
(南部委員)
宜カロウ
(委員長)
返還ト云フノガ主意デナイカラ右ノ利益トカ何ントカ云フガ宜ロシイ
(今村委員)
其レデハ果實トシテハ如何
(村田委員)
元ノ如ク右ノ利益ハ將來ニ向テトシテ宜カロウ
(委員長)
右ノ果實ニ付キカ
(南部委員)
右ト云ハズ果實返還ノ責ヲ生ズトシテ宜イノデス初メ利ヲ得ザリシト云ヒ後ニ利益ト云フタカラ此處ハ同ジク利益ト云フト間違ヲ生ジマス
(委員長)
果實返還ノ責ヲ生ズトシテハ如何
(村田委員)
宜ロシイ
(南部委員)
其方ガ宜ロシイ
(西委員)
其レデ分リ宜クナリマシタ
本條ハ「發見」ヲ「覺知」トシ「其」ヲ刪リ「果實」ト改メ其他原案ニ決ス
第二百七條朗讀ス
第二百七條 惡意ノ占有者ハ回復ノ要求ヲ受ケタル物又ハ權利ハ勿論現物ニテ仍ホ占有スル果實及ヒ產出物ヲ返還シ且其旣ニ消耗シ又ハ過失ニ因リテ損傷シ又ハ收取ヲ怠リタル果實及ヒ產出物ノ價金ヲ返還スルノ責ニ任ス
回復者ハ果實ノ通常ノ負擔タル費用ヲ占有者ニ償還スルコトヲ要ス
強暴又ハ隱密ノ占有者ハ其名義ノ正當ナルコトヲ自ラ信セシトキト雖モ果實ニ關シテハ常ニ之ヲ惡意ノ占有者ト看做ス
(尾崎委員)
宜ロシイ
(委員長)
宜シイノハ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第二百八條朗讀ス
第二百八條 占有者ハ善意ナルト惡意ナルトヲ問ハス物ノ保存ノ爲メ又ハ物ノ增價ノ爲メ費シタル金額ヲ回復者ヨリ償還セシムルコトヲ得
右孰レノ占有者モ其分限ノミニテハ奢樂ノ爲メ費シタル金額ノ償還ヲ求ムルコトヲ得ス
(尾崎委員)
奢樂ト云フノハ分リマセン
(三島委員)
オゴリ樂ムト云フノデアリマス
(南部委員)
オゴリト云フノト樂ミト云フトクツツイタノガアリマスカ
(北畠委員)
支那ニハアルデシヨウ
(尾崎委員)
苦ミト樂ミト云フコトハナカロウ
(尾崎委員)
オゴリ丈ケナレバ樂ニハクツツイテオルノデス
(委員長)
「奢樂」ハ隨分惡イコトハナイ
(今村委員)
奢リト云フ名ノ付カンデ樂モアリマスカラ
(渡委員)
之ハ三島君ニ任カシテ宜シイ
(松岡委員)
「奢樂」ハ「娯樂」デ宜イダロウ
(委員長)
奢ノ字ト樂ノ字ノ間ヘ點ヲ打テ置クト宜ロシイ
(北畠委員)
原案ニモ純然タル娯樂ノ費用トアリマス
(三島委員)
贅澤ノ爲メト云ツテ宜シイ
(松岡委員)
贅澤ト云フト餘程良イモノトスルノデナケレバ言ヘマセン
(村田委員)
我輩ハ論ナシ
(委員長)
奢佚娯樂ト云ツテモ宜シイ
(南部委員)
之ハ宜シウ御座イマシヨウ
(委員長)
宜ロシケレバ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第二百九條朗讀ス
第二百九條 前二條ノ場合ニ於テ善意ノ占有者ハ回復者ノ言渡サレタル保存又ハ增價ノ爲メノ費用ノ全償ヲ得ルマテ物ノ上ニ留置權ヲ有ス
惡意ノ占有者ハ保存ノ費用ノミニ付キ留置權ヲ有ス
(委員長)
必要ナル費用ノミト前ニアリマスガ之ハ「ボアソナード」ガ改メタノデスカ
(南部委員)
八條ニ必要ナル卽チ物ノ保存ニトアリマス
(委員長)
必要ナルト云ヘバ保存ノ爲メ增加ノ爲メデモ何方デモ這入ルト思ヒマス保存ノ爲メハ卽チ增加ノ爲メニナルカモ知レナイ
(今村委員)
ソレハ這入リマセン
(委員長)
保存ノ費用ハ拂ハナケレバナラヌ增加ノ費用ハ拂ハンデモ宜イト云フナゼ保存ノ收入ノ費用ハ拂ハナケレバナラン其理由ハ
(南部委員)
惡意ノデアリマスカラデス
(委員長)
保存スレバ卽チ增加ニナルノデアリマシヨウ
(南部委員)
增加ハ良クスルノデス
(今村委員)
土地ヨリ一石ヨリシカ出來ンモノガ肥シヲシテ二石モ出來タト云フノハ增加ノ方デアリマス保存ハ己レノ地面ト云ツテ訴ヘラレタ時ニ入費ヲ拂ツテ保存シテ居ツタノデアリマス
(委員長)
ケレドモ水ガ出テ流レソウダカラ石垣ヲ築イタノハ保存ノ費用ダロウスルト保存費用ヲ掛ケテナイト增加モ出來ン
(今村委員)
增加ノ方ハ不當ノ利ニナリマス
(委員長)
增加モ所有主ノ利益ニナルノデ元ト百圓ノ收入デアツタガ手入レヲシテ百五十圓收入加アルノダカラ保存モ同ジ理窟ニナリソウデス
(尾崎委員)
元ト不當ノ利ダカラト云フコトガアリマス
(村田委員)
「ボアソナード」ハ最初其區別ヲシナカツタノデス
(南部委員)
其レハ古イコトデス
(今村委員)
之ハ留置權許リヲ言フノデ拂ウノハドウデモ拂ヘナケレバナリマセン卽チ留置權ノアルナシヲ云フノデアリマス
(尾崎委員)
之ハ宜イデハナイカ
(委員長)
宜ケレバ先ヘ往キマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第二百十條朗讀ス
第二百十條 物カ毀損ヲ受ケ又ハ價格ヲ減シ其責ヲ占有者ニ歸ス可キトキハ惡意ノ占有者ニ在テハ如何ナル場合ニ於テモ所有者ニ賠償ヲ爲シ善意ノ占有者ニ在テハ其毀損又ハ減價ニ因リ利益ヲ得タル場合ニ於テ其利益ノ限度ニ應シ賠償ヲ爲スコトヲ要ス
(今村委員)
本條ハ民法デ規則ダツタコトヲ此處デ先ヅ以テ知ラセテ置クト云フ丈ケダカラ刪ツテモ宜カロウト思ヒマス
(尾崎委員)
刪ル可シ
(委員長)
其レデハ刪除シテ先ヘ往キマシヨウ
本條ハ刪除ニ決ス
第二百十二條朗讀ス
第二百十二條 占有者ハ占有ヲ保持シ又ハ回收スル爲メ下ノ區別ニ從ヒテ占有ニ關スル訴權ヲ有ス
占有訴權ハ保持訴權、新工吿發訴權、急害吿發訴權及ヒ回收訴權ノ四種ナリ
(村田委員)
宜シイ
(渡委員)
之ハ宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第二百十三條朗讀ス
第二百十三條 保持訴權ハ不動產ト動產包括ト特定動產トヲ問ハス其占有ニ關シ第三者ヨリ反對ノ主張ヲ含メル事實上又ハ權利上ノ妨害ヲ受クル占有者ニ屬ス
此訴權ハ妨害ヲ止マシメ又ハ賠償ヲ得ルヲ以テ其目的トス
(南部委員)
動產包括ト云フヲ動產ノ、トヤリタイ
(今村委員)
スルト一トハ特定ノ動產トシタイ
(南部委員)
其レハ宜シイ六條ニハ財產包括トアリマス其レカラ十六條ニハ包括ノ財產トアル成ロウコトナレバ包括ノ動產ト云フカ、動產ノ包括ト云フテハ穩カデナイカト思フ十七條モ同ジデアロウ
(今村委員)
動產ヲ指スノデハナイ包括ヲ指スノデアリマス卽チ包括ヲ占有シテ居ルノデス
(南部委員)
詰リ包括ノ卽チ動產デス
(松岡委員)
何ウシテ左樣ナコトヲ云フカ動產不動產ヲ問ハズ位デ宜カリソウナモノデス
(尾崎委員)
一體コンナコトヲ書ンデモ宜カリソウナモノデス
(南部委員)
不動產ノ包括ハ這入ラント云フヲ示シタノデス
(今村委員)
何ゼ「ボアソナード」ガ書イタカ佛蘭西デハ有體物デナイト往カントカ權利ノ占有ハ往カントカアル此内ニモ用收權ト云フモノハ無形物ソレガ一ツ其他ノモノハ往カント謂テ居ル處ガ法律ニ明文ガアルデハナシ學者ノ說ガソウナル或ル學者ハソウデナイト云フ人モアル日本デモ矢張其論ガアルカラ三ツトモ書イタノデ之ヲ刪ルト佛蘭西ノ暖昧ヲ引繼ト云フ其弊ヲ避ケヨウト云フニ過ギマセン
(南部委員)
原書ヲ見テ下サイ、十七條ニ包括財產トアルガ若シ此處デ動產包括トスレバアレハ財產包括トシナケレバナラン
(今村委員)
同ジデアリマス
(南部委員)
此方ヲ包括財產トスルアツチヲ動產包括トスルカ
(今村委員)
「カルクード」ガ八釜敷言ツテ動產包括ト入レタソウデ、此處ハ占有ノ出來ルモノ計リデアリマス
(南部委員)
アレヲ財產包括トヤリマスカ
(今村委員)
此處ノ順ニ往ケバ彼處モソウシナケレバナリマセン
(委員長)
動產ノトヤツテハ如何
(西委員)
ソウデス
(松岡委員)
上ヲ財產ノ包括トスルハオカシイ
(今村委員)
名詞ダカラ此デ置キマシテハ如何
(北畠委員)
前ハ直ホサズニ置キタイ
(松岡委員)
「ノ」ノ字ヲ入レテ宜ロシイ
(今村委員)
「ノ」ノ字ヲ入レルノハ名詞ダカラヨシテモライタイ
(尾崎委員)
特定動產ト云フノハ宜シイデシヨウ
(村田委員)
動產ノ包括ノ占有者ト云フコトデス
(今村委員)
其包括ハ何カラ成リ立ツタカ卽チ動產カラ成リ立ツタモノト云フノデアリマス
(委員長)
「ノ」ノ字ノ這入ツタ方ガ讀ミ宜ロシイ
(西委員)
動產ノ包括ト直ホツタラ十七條モ財產ノ包括ト直ホシタイ
(今村委員)
ソウナリマス
(委員長)
宜カロウ
(今村委員)
可成斯ウ云フモノハ實名詞ニシテ置キタイ
(村田委員)
包括財產トシテ置キタイ
(西委員)
包括財產デアルナレバ彼處ハ矢張リ包括動產トシテ惡ルイコトハアリマセン
(今村委員)
此處ハ一トツ宛ノ動產トハ違イマス
(松岡委員)
一トツ宛ナレバ特定デアリマスケレドモ包括ト云フ字ヲ上ヘ書ケバ有體トナツテ下ヘ書ケバ無體ト云フノモソモソモ無體ノ說デス
(今村委員)
机ノ上ニ財產ト云ヘバ品物デアリマストコロガ此レ丈ケノ物一トツ指立ツ包括ト云ツタラ一トツ取テ退ケテモマダ後トニトマツテ居ル矢張リ包括デアリマス
(松岡委員)
包括動產ト云ツテ一トクルメニ云ツテ机ノ上ノ一トクルメニ言ツテモ同ジデアリマス
(南部委員)
動產包括ト云フ字ハ工合ガ惡ルイカラ包括ノト云ヒタイ
(北畠委員)
動產ノ包括ト入レタイ
(三島委員)
後トニ特定ト云フ處ハ彼レデ宜ロシイカ
(今村委員)
宜ロシイ
(村田委員)
「ノ」ノ字ガアルトシテ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ「動產包括」ノ間ヘ「ノ」ノ一字ヲ挿入シ其他原案ニ決ス
第二百十四條朗讀ス
第二百十四條 新工吿發訴權ハ竣成ノ上占有ノ妨害ト爲ル可キ隣地ノ新工事ヲ止マシメ又ハ變更セシムル爲メ不動產ノ占有者ニ屬ス
(尾崎委員)
之ハ論ナシ
(槇村委員)
先ヘヤリマシヨウ
(村田委員)
二百二十二條ニ廢止又ハ變更トアリマス之レハ「廢止セシメ」トシテ宜ロシイ
(槇村委員)
止マシメデ宜ロシイ
(尾崎委員)
「廢止セシメ」デ宜ロシイ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ「止マシメ」ヲ「廢止セシメ」ト改メ其他原案ニ決ス
第(新)條朗讀ス
第 條〔新〕 急害吿發訴權ハ或ハ建物、樹木其他ノ物ノ傾倒ニ因リ或ハ堤塘、水溜、水樋ノ破潰ニ因リ或ハ火、燃燒物、爆發物ノ必要ノ豫防ヲ爲サヽル使用ニ因リテ隣地ヨリ生スル損害ヲ懼ル可キ至當ノ事由アル不動產ノ占有者ニ屬ス
此訴權ハ右危險ニ對スル豫防ノ處分ヲ命令セシメ又ハ未定ノ損害ニ對スル賠償ノ保證人ヲ立テシムルヲ以テ其目的トス
(尾崎委員)
「命令セシメ」ハ裁判所カラ命令サセルノカ
(南部委員)
左樣デス
(尾崎委員)
之ハオカシイ裁判所ニ此方カラ命令スル樣デス
(南部委員)
訴權ガスルノダカラ宜ロシイ
(尾崎委員)
始メニ或ハト云フノハオカシイ
(松岡委員)
先ヅ之ハ宜カロウ
本條ハ原案ニ決ス
第二百十五條朗讀ス
第二百十五條 保持訴權及ヒ新工吿發訴權ハ平穩且公顯ナル法定ノ占有者ノミニ屬ス但不動產又ハ動產包括ニ付テハ其占有ノ滿一个年以來繼續シタルコトヲ要ス
(今村委員)
之モ動產ノ包括トナリマス
(村田委員)
保持訴權及ビ新工吿發訴權ト云タハ急害吿發訴權ト云フノガ這入ラナケレバナリマセン
(今村委員)
ソレガアツテハ實地困リマシヨウ
(村田委員)
ソレガ拔ケルトドウ云フモノト思ヒマス
(今村委員)
隣リデ危險ナモノヲシテハ一年待タナケレバナラント云フノハ困リマス
(松岡委員)
宜カロウ
本條ハ「動產包括」ノ間ヘ「ノ」ノ一字ヲ挿入シ其他原案ニ決ス
第二百十六條朗讀ス
第二百十六條 回收訴權ハ暴行、脅迫又ハ詐術ヲ以テ不動產若クハ動產包括若クハ特定動產ノ全部又ハ一分ノ占有ヲ奪ハレタル占有者ニ屬ス但其占有カ被吿ニ對シ此等ノ瑕疵ノ一ヲモ帶ヒサルコトヲ要ス
此訴權ハ侵奪ノ占有ヲ特定名義ニテ承繼シタル者ニ對シ之ヲ行フコトヲ得ス但其者カ侵奪ノ不法ノ所爲ニ關與シタルトキハ此限ニ在ラス
(村田委員)
詐術ト云フ字ガアリマスガ之ハ卽チ瑕瑾ノ一トツニ成ツテ居ルノデ處ガ百九十五條ヲ見ルト瑕疵ト云フモノハ之レ丈ケノモノシカ無イト云ツテ居ル此處デ詐術ト云フノガ這入ツテ前ノハ卽チ隱密ノ中ニナイモノデスガ瑕疵ノ占有ハ二ツニ限ルト前ニ言ツテ有ル彼レヘモ詐術ト云フノガ這入ツテモ宜ロシイヨウナ心持ガ致シマス
(今村委員)
修正デ入レテモ宜イカモ知レマセン
(村田委員)
實ハ是等ノ瑕疵ト云フノハ前ニナイトハ言ヘンノダロウ
(今村委員)
彼ノ事ヲ其儘出シテ云フ積リデハアリマセン唯訴權ノ上デ言フ話シデ瑕疵ト云フ文字ハ詰リ訴權ノ上ノ話シデアリマス
(村田委員)
然シ暴行強迫ハ宜ロシイ彼處ニ瑕疵トアリマスカラ
(南部委員)
矢張リ彼レモ暴力ガ宜カツタノデス
(今村委員)
彼方ヲ暴行ニシテ此方ヲ暴力ニスルカデス
(村田委員)
占有ノ瑕疵ト百十五條ニ言ツテアルカラ瑕疵トハ意味ガ違ツテ居ルト見レバ宜ロシイ
(今村委員)
暴行ト云フ文字モ意味ガ違イマス
(渡委員)
宜ロシイデハナイカ
(委員長)
舊ノ末項ヲ刪テシマツタノデスカ
(村田委員)
二條ニ分ケマシタノデアリマス
本條ハ原案ニ決ス
第 條〔新〕
第 條〔新〕 回收訴權及ヒ急害吿發訴權ハ法定ノ占有者及ヒ容假ノ占有者ニ屬ス縱令其占有カ未タ一个年ニ滿タサルモ亦同シ
(尾崎委員)
之ハ前ノ條ノ解除訴權デスネ
(今村委員)
占有ノ解除訴權デアリマス
(尾崎委員)
良カロウ
(村田委員)
法定ノ占有者ハ勿論ト元トアル、無論ナ話デ容假ノ占有ニ屬スト云フモ矢張リ無論デス
(尾崎委員)
容假ノ占有者ニモデスネ
(渡委員)
良カロウ
(委員長)
保持訴權ト云フハ一年ガ期滿特免ニナツテ居ルガ、之ニナルト保持訴權ト云フモノハ一年トハ云ヘヌヨウニナリハセンカ
(今村委員)
十五條ニアリマス
(委員長)
良ケレバ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第二百十七條朗讀ス
第二百十七條 保持及ヒ回收ノ訴ハ妨害又ハ侵奪ヲ受ケタルヨリ一个年內ニ非サレハ之ヲ受理セス
新工吿發ノ訴ハ其工事ノ終ラサル間ハ之ヲ受理ス但其工事ニ付キ占有者カ妨害ヲ受ケタルトキハ其工事竣成ノ前後ニ拘ハラス妨害ヨリ一个年內ニ於テ保持訴權ノミヲ行フコトヲ得
急害吿發ノ訴ハ危險ノ存スル間ハ之ヲ受理ス
(南部委員)
之ハ良シイ
(渡委員)
之ハ明瞭デス
(今村委員)
之モ「ボアソナード」ガ大分修正シテ來マシタ
本條ハ原案ニ決ス
第二百十八條朗讀ス
第二百十八條 占有ノ訴ハ權原ノ訴ト並行スルコトヲ得ス
判事ハ當事者ノ權利ノ本源ヨリ出テタル理由ニシテ其權利ヲ豫決ス可キモノニ基キテ占有ノ訴ヲ裁判スルコトヲ得ス
又判事ハ權原ノ訴カ旣ニ審理中ニ在ルモ占有ノ訴ノ判決ヲ猶豫スルコトヲ得ス
(村田委員)
之ハ一項ハ良シイガ二、三項ハ訴訟法ニ在テ良シイノデス
(尾崎委員)
先ヅ斯ウ云フモノデシヨウ
(北畠委員)
宜シウ御座イマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第二百十九條朗讀ス
第二百十九條 占有ノ訴ヲ起シタル後當事者ノ一方カ其裁判所又ハ他ノ裁判所ニ權原ノ訴ヲ起シタルトキハ占有ノ訴ノ確定判決ニ至ルマテ權原ノ訴ノ訴訟手續ヲ中止スルコトヲ要ス
權原ノ訴ノ被吿カ第二百二十一條ニ定メタル如ク其訴訟中ニ占有ノ訴ノ原吿ト爲リタルトキモ亦同シ
(尾崎委員)
權原ノ訴ヘサヘ定マレバ占有ノ訴ヘハ宜カリソウナモノデス權原ノ訴ヘヲ中止シナケレバナランカ
(南部委員)
最モ急ヲ要スルカラデス
(三島委員)
焦眉ノ急ダカラデス
(尾崎委員)
ソレハ其レ此ハコレト云テ良カリソウナモノデス
(村田委員)
良シイ、往キマシヨウ
(尾崎委員)
之ハ寔ニ訴訟法デスネ
本條ハ原案ニ決ス
第二百二十條朗讀ス
第二百二十條 權原ノ訴ノ原吿ハ訴ヲ取下クルト雖モ其訴以前ノ事實ノ爲メニ更ニ占有ノ訴ヲ起スコトヲ得ス然レトモ旣ニ起シタル占有ノ訴ニ付テハ原吿タルト被吿タルトヲ問ハス之ヲ繼續スルコトヲ得
凡ソ權原ノ訴ニ於テ確定ニ敗訴シタル者ハ占有ノ訴ヲ起スコトヲ得ス
(南部委員)
二項ハオカシイ
(今村委員)
占有權ノ妙ハ此所ニアルノデス
(村田委員)
凡ソト云フ丈ケハ刪テ宜サソウデス
(三島委員)
ナクツテモ宜シイ
(尾崎委員)
「凡ソ」ハ刪ルカ
(三島委員)
如何ナル場合トカ何トカ長イコトアツタカラ「凡ソ」トヤツタノデス
本條末項「凡ソ」ノ二字ヲ刪リ其他原案ニ決ス
第二百二十一條朗讀ス
第二百二十一條 權原又ハ占有ノ訴ノ被吿ハ其訴訟中原吿ト同一ノ訴權又ハ他ノ訴權ニ依リ反訴ニテ占有ノ訴ノ原吿ト爲ルコトヲ得
本條ハ原案ニ決ス
第二百二十二條朗讀ス
第二百二十二條 判事ハ占有ノ訴ニ於テ原吿ヲ直者ト認ムルトキハ場合ニ從ヒ妨害ノ斷止侵奪物ノ返還、吿發新工ノ廢止若クハ變更又ハ吿發急害ノ豫防處分ヲ命令ス可ク若シ損害アラハ同時ニ其賠償ヲ言渡ス可シ
又判事ハ急害吿發ノ訴ニ付テハ其將來不定ノ損害額ヲ斷定シ之ニ對スル保證人ヲ立ツ可キヲ被吿ニ命令スルコトヲ得
(南部委員)
「占有ノ訴ヘヲ正當ナリトスルトキハ」ト原書ニハアリマセンカ
(今村委員)
原書ニハ訴權ガ正シキモノデアツタトキハトアルノデス
(南部委員)
ソレデハ占有ノ訴ヘガ正當ナリト認ムルトキハトヤリタイ
(尾崎委員)
ソウシマシヨウ
(村田委員)
占有ガ有効ナルトキハ、ダ
(今村委員)
意味サヘ違ハナケレバ差支ハナイ
(三島委員)
正當ナル訴ト認ムルトキハデスカ
(松岡委員)
宜カロウ
(村田委員)
良シイ「場合ニ從ヒ被吿ニ」ト云フ字ヲ入レマシヨウ、ソウセント誰ニ言渡スノカ分ラン、元トハ「被吿ニ」ト云フ字ガアツタノデス
(松岡委員)
被吿人ノミデハナイ誰ニモ言渡スノデス
(村田委員)
二項ハ無クトモ良カリソウナモノデス
(尾崎委員)
吿發ハイランネ
(槇村委員)
吿發ハイラン
(松岡委員)
ソレデ良シイ
(尾崎委員)
「吿發」ハ刪リマシヨウ
(村田委員)
「新工事ノ」トシテ「事」ノ字ヲ入レマシヨウ前ノ二百十四條ニハ新工事トアル
(尾崎委員)
ソレハ往カン
(南部委員)
イラン
(尾崎委員)
此條ハ良シイ
(南部委員)
二百十四條ハ起案者ニ聞イタ處ガ起案者ガ刪除スルト私ハ聞イテ居ル
(村田委員)
新工又ハ急進訴權ト云フニ新工事ト云フガ七百十四條ニナイカラ聞キニヤツタノデアリマス
本條一項ハ「判事ハ占有ノ訴ヲ正當ナリト認ムルトキハ場合ニ從ヒ妨害ノ斷止侵奪物ノ返還新工事ノ廢止若クハ變更又ハ急害ノ豫防處分ヲ命令ス可ク若シ損害アラハ同時ニ其賠償ヲ言渡ス可シ」トシ二項ハ原案ニ決ス
第二百二十三條朗讀ス
第二百二十三條 占有ノ訴ニ於テ敗訴シタル原吿ハ仍ホ權原ノ訴ヲ起スコトヲ得
占有ノ訴ニ於テ敗訴シタル被吿モ亦仍ホ權原ノ訴ヲ起スコトヲ得但旣ニ受ケタル言渡ヲ履行セシ後ニ限ル若シ言渡ノ數額カ未定ナルトキハ其言渡ヲ履行スルニ相應ナル金額ヲ裁判所書記局ニ供託ス可シ
(松岡委員)
之ハ原吿ト被吿ト轉倒シタノデスネ
(今村委員)
左樣デス
(村田委員)
「若シ言渡ノ金額」ト云フノハ元トハ「言渡ノ額」トアツタ、額ノ内ニハ金バカリデハナイト云フノデ金ノ字ハ故ラニナイガ今度ハ金ノ字ガ這入ルト米穀ト云フノガ脫ケルガ前ハ額トヤツテソレデ相應ナル金額ト云フニシタハ良シイガ金ノ字ヲ入レルト元トノト違ヒハセンカ
(今村委員)
言渡ノ額トハ言ヘヌノデス
(村田委員)
額ト云フト金バカリニナルカラ、高トヤツテ良シイ
(槇村委員)
「言渡ノ額」ハ言葉ヲ成サン
(尾崎委員)
高トヤツテモ良シイ
(三島委員)
言渡ノ額ト云フノモ、如何デス
(尾崎委員)
言渡ノ額數トヤツテハ如何
(南部委員)
「數額」ガ良シイ
(松岡委員)
「數額」ハ良カロウ
(槇村委員)
「數額」ハ良シイ
(村田委員)
數額ト云フト數バカリニナリハセンカ
(尾崎委員)
數モ額モダ「アマンド」ト云フノデス
本條ハ「言渡ノ金額」ヲ「言渡ノ數額」ト改メ其他原案ニ決ス
第二百二十五條朗讀ス
第二百二十五條 占有ノ訴ニ關スル裁判管轄及ヒ其他方式ノ規則ハ帝國裁判所構成法及ヒ民事訴訟法ヲ以テ之ヲ規定ス
(今村委員)
本條ハ例ニ從テ刪除デス
(尾崎委員)
之ハ要ラン
(渡委員)
之ハ刪除デ良シイ
本條ハ刪除ニ決ス
第二百二十六條朗讀ス
第四節 占有ノ喪失
第二百二十六條 占有ハ左ノ諸件ニ因リテ喪失ス
第一 自己又ハ他人ノ爲メニ占有スル意思ノ斷止
第二 物ノ所持又ハ權利ノ行使ノ任意ノ抛棄又ハ其法律上強要ノ抛棄
第三 不法ト否トヲ問ハス第三者ノ占有ノ握取但其占有カ保持訴權又ハ回收訴權ノ行使ヲ受クルコト無クシテ一个年ヨリ長ク繼續シタルトキニ限ル
第四 占有ノ目的タル物ノ全部ノ毀滅又ハ其權利ノ消滅
(南部委員)
「絕止」ヲ改メ「斷止」トシタカ
(三島委員)
左樣デス
(南部委員)
第三者ノ「不法」ト云フノハ不適法ト云フ理窟デシヨウネ
(三島委員)
左樣デス
(村田委員)
四項ハ元トノ違ヒバセンカ
(今村委員)
同ジデアリマス
(村田委員)
九十五條ノ場合ニハ保證人ヲ立ンデモ良シイ
(今村委員)
此度直シタカラ立ナケレバナランヨウニナリマシタ「ボアソナード」ガ書カレタ元トノ案デハ立ルニハ及バンノデス
(委員長)
ケレドモ公用徵收ヲ受ケタトキノコトガアロウガ「ボアソナード」ハ建物ヲ燒失シタ場合デ殊更ニ指シタコトハナイカ
(今村委員)
ソレハ九十四、五條ニアリマス之ニアルノヲ繰返シタノデ、何ゼト云フト保證人ヲ立ロト云フ爲メニ一度繰返サント言憎イト云フノデ、處ガソレナレバ九十三條モ繰返サナケレバナラン
(南部委員)
斯ウ謂ヘバ繰返スモ同ジダ
(槇村委員)
今村君ノ修正通リニシテ百十二三條ハ刪ルノカ
(今村委員)
左樣デス「ボアソナード」自カラ刪タノデアリマスソレカラ今一ツ一寸申スノハ之デ用收權ハ濟ムガ、數人ノ終身ヲ期シテト云フ五十條ハ「ボアソナード」ニ聞キマシタガ矢張此方等ニ書イテアル通リデ、終身ヲ期セントキハ矢張一ツコトダカライランノデアリマス
(村田委員)
大變簡單ナモノニナツタネ
(南部委員)
期限ヲ定メタモ亦同ジト云フノデスネ
(今村委員)
左樣デス
本條ハ原案ニ決ス