法律取調委員会 民法草案議事筆記 第71回
参考原資料
- 法律取調委員会 民法草案財產取得編議事筆記 , 自 第六十六回 至 第七十一回 [国立国会図書館デジタルコレクション]
備考
- 未校正のテキストデータです.
民法草案債權擔保篇第七十一回議事筆記
自第千三十一條至第千四十六條
明治二十一年七月十六日午前第八時開會
(委員長)
ヤリマシヨウ
第千三十一條朗讀ス
第千三十一條 連帶又ハ不可分ニテ責ニ任スル數名ノ債務者ヨリ保證人ニ委任ヲ爲シタル場合ニ於テハ其總テノ債務者ハ第九百四十五條ニ從ヒ保證人ニ對シ連帶ノ擔保人タリ
(修正案) 「總テノ」三字ヲ刪ル
(栗塚)
「其債務者ハ」デ良カロウト云フノデ「總テ」ヲ刪リマシタ、原文ニハ「皆ナカ」ト云フ字ガ一字書イテアルバカリデ御座イマスガ、日本語ニ直セバ無クモ宜シウ御座イマスカラ削リマシタ
(松岡)
至極結構ダ
(元尾崎)
保證人ニ委任ヲスルト云フコトデスカ
(栗塚)
保證人ヲ立テタ時ハデス
(元尾崎)
保證人ノ出タトキハト云フノカ
(栗塚)
保證人ハ人カラ頼マレテ保證人ニナルコトモアリ又債務者ノ知ラヌノニ保證人ニナルコトガアル、其意ニ反シテ保證人ニナルトキガアリマス、ガ人ニ頼マレテ保證人ニナツタトキハト云フノデス
(元尾崎)
鳥渡分ラヌ
(栗塚)
保證人ハ代理人ダ、私ガ御前ニ代ツテ拂ツテヤルト云フ約束デスカラ、之ハ千三十條デモ第一ニ若シ債務者ガトアル、彼レニ對シテノ言葉デス
(委員長)
宜シウ御座イマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第千三十二條朗讀ス
第千三十二條 第千三十條ニ定メタル求償權ハ債務者カ請求ニ對抗ス可キ手續失效ノ答辯方法ヲ有シタルコトヲ證明スルトキハ其債務者ヲ訴訟ニ參カラシムルコトヲ怠リタル保證人ニ屬セス
若シ債務者カ債權者ニ對抗ス可キ延期抗辯ノミヲ有シタルトキハ懈怠ノ保證人ノ求償ニ對シ亦之ヲ對抗スルコトヲ得
(修正案) 第一項左ノ如ク改ム債務者ヲ訴訟ニ參加セシムルコトヲ怠リタル保證人ハ其債務者カ債權者ニ對抗ス可キ排訴抗辯ヲ有シタルコトヲ證明スルトキハ第千三十條ニ定メタル求償權ヲ有セス第二項「亦」ノ一字ヲ刪ル
(栗塚)
前項ハ修正致シマシテ文章ヲ入レ換ヘマシタ「債務者ヲ訴訟ニ參加セシムルコトヲ怠リタル保證人ハ其債務者カ債權者ニ對抗ス可キ排訴抗辯ヲ有シタルコトヲ證明スルトキハ第千三十條ニ定メタル求償權ヲ有セス」ト致シマス
(委員長)
手續失效ノ答辯ヲ「排訴抗辯」ト云ツタノカ
(栗塚)
再調査ト相談シテ致シマシタ
(松岡)
排訴抗辯ト云フノハ本案ニ付テ其事柄ヲ一々辯ジテ勝テル訴訟ノ手段ガアツタト云フコトニナリマスガ、頭マデ本案ヘ入ラセズシテヤリマスカ
(栗塚)
頭マデ訴ヲ起スノ起サヌノト云テモ日限ガ切レテ到底訴ヘラルルモノデナイ假令バ控訴ノ期限内ニ控訴スレバ何處マデモ控訴權ハ疾クニ過ギテ居ル
(松岡)
期滿免除ヲ向ケ付ケタリスルノカ
(栗塚)
ソウデス
(松岡)
妨訴ノ抗辯トモ違ウカ
(村田)
妨訴ノ抗辯ト同ジ樣ナモノダ
(松岡)
受理セラレヌ抔ハ妨訴抗辯ダ或ハ中ノ本體ヲ論ズル上ニ箇樣ナル證據ハト云フノデハナイカ
(栗塚)
ソウデハナイ、之ハ「ペランプシヨン」ト云フテ期限ニ基イタ話デス
(松岡)
時效ダロウカ
(栗塚)
時效デハナイ、三日間ニ訴狀ヲ出セト云フニ七日ヲ過ギテ居ルカラ之ハイケナイ、時效ト云フト權利ハ其レガ爲メニアツタト推定スルト云フコトデアリマスケレドモ、ソンナコトハナイ
(松岡)
不受理ノ抗辯ト同ジコトダロウ
(栗塚)
同ジコトデス
(松岡)
不受理ナラ妨訴抗辯ト書ケバ宜シイ
(栗塚)
訴訟法ト參酌シテ見マシヨウ、「不受理ノ抗辯」トナルカ知レマセン
(松岡)
四百二十條モ擔保人ガ請求ヲ却下セシムルニ有效ナル方法トアル
(村田)
修正ガ宜シイ
(淸岡)
二項モ怠リタルトシタラ宜カロウ
(村田)
「懈怠ノ保證人」ト云フコトハ分ラナイ英文ハ「債務者ヲ訴訟ニ參カラシムルコトヲ怠リタル保證人」トアル
(松岡)
成程之ハ「怠リタル」トシタ方ガ宜シイ
(栗塚)
ソウスルト訴訟ニ參カラシムルコトヲ怠リタル保證人ノ」ト云ハナケレバナラヌ、「排訴抗辯」ハ「妨訴抗辯」ト致シマスカ
(委員長)
先ヅ「排訴抗辯」トシテ置イテ調ベテ呉レ
(西)
排訴ノ方ガ宜シイ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第千三十三條朗讀ス
第千三十三條 保證人カ有效ニ辨濟シタルモ債務者ニ有益ニ其辨濟ヲ通知スルコトヲ怠リテ債務者カ善意ニテ再ヒ辨濟シ又ハ其他ノ方法ヲ以テ有償名義ニテ自己ノ免責ヲ得タルトキハ保證人ハ亦其求償權ヲ失フ〔第二千三十一條〕
右ニ反シテ債務者カ自ラ債務ヲ消滅セシメタルコトヲ保證人ニ通知スルコトヲ怠リタルトキハ債務者ハ場合ニ從ヒ其債務ノ消滅後保證人ノ爲シタル辨濟ニ付キ責任アリト宣吿セラルルコトヲ得
是等種々ノ場合ニ於テ利害ノ關係アル當事者ハ受取ルコトヲ得サルモノヲ受取リタル債權者ニ對シテ求償權ヲ有ス〔同上〕
(修正案) 第一項「其辨濟」ヲ「其旨ヲ」ト改メ「怠リテ」ヲ「怠リ且」ト改メ「其他」ノ下「ノ方法ヲ以テ」ノ六字ヲ刪ル第三項「是等種々ノ場合」ヲ「是等ノ場合」ト改ム
(栗塚)
一項ハ「テ」ノ字ガ幾ツモアリマスカラ「怠リ且」ト致シマス「辨濟」ハ「旨」ト致シマス、之ハ先例ガアリマス、原文ニハ「之ヲ通知スル」トアリマスガ「之ヲ」デハ分リマセンカラ「其旨」トヤリマシタ
(松岡)
「有益ニ」ハ要リマスカ
(栗塚)
刪ロウト思ツタケレドモ刪リマセン、通知スベキトキニ通知セズニ置イテハ何ニモナラヌ
(松岡)
一日丈ケ善意デ拂ツタトキハ仕樣ガナイ
(西)
間ニ合ウ樣ニト云フノカ
(淸岡)
怠リテノ方ガ分リ良イ
(村田)
彼レノ役ニ立ツ樣ニトアル
(松岡)
有益ニ役ニ立ツト云テモ三日目ニ役ニ立ツカ、二日目デ役ニ立タスカ分ラヌ
(元尾崎)
翌日通知シテモ其レガ役ニ立タヌケレバ仕方ガナイ
(松岡)
セヌノニセナクテモスルカラ押ヘルト云フ意味デハナカロウ
(元尾崎)
先ヅソンナ意味ダロウ
(淸岡)
「怠リテ」ハ元ノ通リガ良イ
(栗塚)
意味ハ「怠リ且」トアリマス
(淸岡)
通知ヲ怠リハ保證人ノ怠ルコト、更ニ辨濟スルハ債務者ノスルコトダカラ保證人ガシタ後、又債務者ガヤルト云フコトヲ別段ニ列ベタノデスカラ「怠リテ」ガ良カロウ
(栗塚)
怠リ且債務者ガ金ヲ拂ツタトキト云フノデ御座イマス
(元尾崎)
「怠リテ」ガ宜シイ
(北畠)
且ト云フト其上ト云フノダ、右ノコトト左ノコトト云フノダガ、「且」ト云フト一直線ニナルカラ「且」ハ惡イ
(栗塚)
保證人ガ怠リ、債務者ガ辨濟シタトキト云フノデス
(北畠)
ソンナラ且ハ惡ウナイ
(渡)
「怠リテ」ガ宜カロウ
(栗塚)
終ノ項デハ「是等種々ノ場合」ト云フノハ「此場合」ト原文ニアリマシテ是等ト云ヘバ「種々」ハ入ラヌト思ヒ「種々」ヲ刪リマシタ
(委員長)
「且」ハドウデス
(栗塚)
千三十四條ニ於テモ無資力トナリテヲ「且」ト致シマシタ
(槇村)
「且」ト直シテナイ
(南部)
ソレハ落チタノデス
(北畠)
「テ」ノ字ヲ刪テ「又」トシタラ良カロウ
(西)
「且」ガ宜シイ
(委員長)
「且」ガ多イカラ「且」ニシマシヨウ
(村田)
二項ノ「右ニ反シテ」ハ「若シ」デ宜シイ、「右ニ反シテ」ト云フ程デハナイ
(栗塚)
日本語デ強ヨケレバ日本語デ當ルノヲ見出シテ下サレバ宜シイ
(南部)
保證人カラ辨濟ヲシタト云フコトヲ見セテ居ルカラ前ハ換ヘル方ガ宜シイ
(淸岡)
「右ニ反シテ」ハ仰山ダト云フニ過ギナイ、我輩モ其感覺ガアル
(栗塚)
「其代ハリニ」ト云ヘルト宜シイノデ御座イマス
(元尾崎)
「宣吿セラルル」ト云フノハ可笑シイ之ハ裁判所デ宣吿セラルルノデスカ
(栗塚)
左樣デス
(淸岡)
宣吿セラルルコトヲ得ルト云フノダガ是等ハドウカシナイト惡イ
(元尾崎)
「責任ヲ有ス」トシテハドウカ
(栗塚)
必ラズ有ルト云フノデハ御座イマセン
(松岡)
「有スルコトアリ」ト云ヘバ宜イ
(南部)
「宣吿ヲ受クルコトアリ」
(槇村)
「宣吿セラルルコトアリ」トシテ如何
(委員長)
「アリ」トスルカ
(松岡)
債務ノ消滅ト云フト一部ノコトデシヨウカ、全部ノコトデシヨウカ
(栗塚)
全部モ一部モアリマセン、全部ト御覽ニナツテモ一部ト御覽ニナツテモ宜シイ
(松岡)
ソウスルト「辨濟」ノ方ガ良クハナイカ
(村田)
消滅ト云フト一部ト云ハナケレバ全部ダ
(栗塚)
「自ラ辨濟ヲ爲シタルコトヲ保證人ニ通知スルコトヲ怠リタルトキハ」トシテモ宜シイ
(槇村)
ソウスルト前ノ消滅モ變リマスカ
(栗塚)
變リマセン
(槇村)
消滅ガ良クハアリマスマイカ
(淸岡)
消滅ト云フト全部ニ限ルト云フ定義ガアレバ惡ルイガ、ソウデナイト半分消滅シテモ半分ト云フコトガアルカラ良カロウ
(栗塚)
唯辨濟ト申シテモ一部ノコトガアリ全部ノコトガアリマスカラ
(松岡)
消滅ト云フノハ辨濟ニハ限ラヌカラ
(栗塚)
千六十四條ニ「連帶債務者中ニテ自己ノ出捐ヲ以テ全部又ハ一分ニ付債務ヲ辨濟シ」トアリマシテ全部一分ト云フテ居リマス又千六十五條ニモ「債務ノ全部一分ヲ辨濟シタル債務ハ」トアル
(委員長)
宜シウ御座イマシヨウ
本條ハ第二項「コトヲ得」ヲ「コトアリ」ト改メ他ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第千三十四條朗讀ス
第千三十四條 委任ヲ受ケテ義務ヲ約シタル保證人ハ辨濟スル前然ノミナラス訴追セラルヽ前ト雖モ左ノ三箇ノ場合ニ於テ豫メ債務者ヨリ賠償ヲ受クル爲メ又ハ未定ノ損失ヲ擔保セシムル爲メ債務者ニ對シテ訴ヲ起スコトヲ得
第一 若シ債務者カ破產シ又ハ無資力ト爲リテ債權者カ淸算ニ於テ配當ヲ受ク可キ順序中ニ入ラサルトキ〔第二千三十二條第二號〕
第二 若シ債務ノ滿期ニ到リタルトキ〔第二千三十二條第四號、第二千三十九條〕
第三 若シ債務カ其日附ヨリ十个年ヲ過キテ其滿期カ極點ニ付テモ不定ナルトキ〔第二千三十二條第五號〕
(修正案) 第一項「然ルノミナラス」ヲ「又」ト改ム第一號「若シ」ノ二字ヲ刪リ「淸算」云々ヲ「淸算中ノ配當ニ加入セサルトキ」ト改ム第二號「若シ」ノ二字ヲ刪ル第三號左ノ如ク改ム債務ノ滿期カ不定ニシテ其日附ヨリ十个年ヲ過キルトキ
(栗塚)
前項ハ「然ノミナラス」ト云フ程ノコトハアリマセンカラ「前ト雖モ」ト云フノデ澤山含ンデ居リマスカラ「又」ト致シマシタ、第一ハ「若シ」ヲ刪リ「淸算中ノ配當ニ加入スルトキ」ト致シマシタ之ハ翻譯ノ間違ヒデ御座イマス第二ハ「若シ」ヲ刪リ第三ハ「債務ノ滿期カ不定ニシテ其日附ヨリ十个年ヲ過キタルトキ」ト致シマシタ
(松岡)
詰リ保證人ハ自分ガ辨濟スレバ求訟權ガ起ラヌトモ辨濟シナイ前デハ辨濟シナイ前デモ求訟權ガ起ルト云フノダロウ、書キ分ケタ丈ケノコトハナイ
(村田)
訴ニ繋ツタラ、コウ云フコトハ出來ナイト云フ考ヘガアリヤセヌカ
(松岡)
ソウ間違ツテハ、大變ダ、前ト云フタカラ後ハ無論ト云ハナケレバナラヌ
(村田)
「雖モ」ハ辨濟ノ方ニハ掛ツテ居ラナイ前ト雖モト云フ方ガ掛ツテ居ル
(栗塚)
辨濟ノ前デモ出來ルシ、後チハ勿論デス
(淸岡)
「然ノミナラス」ト云フノハ甚ダ嫌忌デハアルガ「又」ト取換ヘタノミデハ足ラヌ樣ナ心地ガスル
(栗塚)
報吿委員ハ立派ニ足リル積リデス
(元尾崎)
「又」デ宜シイ
(松岡)
「然ノミナラス」ヲ入レテモ其レ程事柄ガ違ヒハセヌ
(南部)
佛蘭西ハ辨濟セザル前ト雖モトアルカラ孰レヘ掛ツテモ差支ナイ
(松岡)
「三箇ノ場合ニ於テ豫メ」ト云フ此豫メト云フ字ハ些ト落付キ惡クイ樣ダ
(村田)
「豫メ」ト云フ字ハ要用ダロウ、豫メ訴ヲ起スコトヲ得ト云フノダ
(南部)
賠償ヲ受クル爲メ擔保セシムル爲メニ掛ルノデス
(渡)
「豫メ」ノ置キ所ガ惡ルイ「債務者ヨリ豫メ」ト云フノダロウ
(栗塚)
其方ガ宜シイ
(南部)
其レガ宜シイ
(淸岡)
同ジコトダ、ソウナルト仕舞ノ未定ノ損失ニ掛ルカ掛ラヌカト云フ論ガ起ル
(南部)
ソレハ掛ラヌ
(松岡)
「豫メ」ハ債務者ノ下ヘ行クノガ順當ダロウ、第一ノ「無資力」ト云フノハ
(栗塚)
商人ト云フノデス商人ナラ無資力デス
(松岡)
商法デハ破產デナクテ無資力ト云フノガアル、商法ニ聞合セテ下サイ
(栗塚)
尋ネマス
(南部)
民法ノ無資力モ顯然ノ無資力ト顯然デナイ無資力トアリマス
(松岡)
此處デ云フ無資力ハ配當ヲスル順序ヲ踐ムモノト見ヘル
(栗塚)
左樣デス、第三ハ「極點ニ付テモ」ト云フノヲ刪リマシタ
(委員長)
「其」ト云フ字ハ穩デナイ「債務ノ其他」ト云ヘバ宜シイガ、「不定ニシテ其」ト云フト不定ノ日附ノ樣ニナリヤセヌカ
(南部)
不定ノ日附ハアリマセンカラ
(栗塚)
「契約ノ日附ヨリ」デモ宜シウ御座イマス
(元尾崎)
債務ノ日附デモ宜シイ
(委員長)
宜シウ御座イマシヨウ
本條第一項「豫メ債務者ヨリ」ヲ「債務者ヨリ豫メ」ト改メ他ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第千三十五條朗讀ス
第千三十五條 債權者カ完全ノ辨濟ヲ受ケサル間ハ前條及ヒ第千三十條ニ據リ豫メ保證人ニ供ス可キ賠償ハ債務者其債權者ニ對シ自己ノ免責ヲ保スル爲メ債權者ノ名ヲ以テ之ヲ供託シ又ハ其他ノ方法ニテ之ヲ留保スルコトヲ得
(修正案) 「憑リ」ノ下「債務者ヨリ」ノ五字ヲ挿入シ「其債權者ニ對シ」ヲ「其債權者ニ對スル」ト改ム
(栗塚)
「憑リ債務者ヨリ」ト改メマシタ
(元尾崎)
此條ハ要ラヌ樣ダ、之ハ怪シイト云フテ豫メ辨償ヲ受ケルカ保證人ヲ置クカシテ其レヲ債權者ガ拂ハズシテ他ヘ預ケルト云フノハ持テ回ツタ話シダ
(栗塚)
辨濟スル、セヌニ依テ之ト云フノデス
(元尾崎)
本人カラ金ヲ拂テ仕舞ヘバ保證人ニ取テ掛ル筈ハナイ處ガ保證人ニ豫メ賠償スルモノガアルノヲ債權者ニ拂ハズニ他ヘ取テ置クノハ可笑シイ話シダ
(栗塚)
事柄ガ回ハツテ居ル
(南部)
其レカト云フテ三十五條ヲ刪テ三十四條バカリニスルト治マリガ付キマス
(栗塚)
報吿委員デモ三十五條ヲ刪ルト云フ論ガアリマシタガ、ソウスルト三十四條ガ惡ルイコトニナル、併シ三十四條ヲ置クノハ三十五條ノ手段丈ケハ盡シテ置イテヤラヌト三十四條ノ旨意ガ立タヌ
(元尾崎)
日本文ニハナイ
(栗塚)
此樣ナ入込ンデ來タトキノ話シダカラ裁判所デナケレバ分ラヌ
(村田)
前迄ハ保證人ヲ保護スル、此處ハ債務者ヲ保護シテ居ル
(栗塚)
保證人ニヤル金ガアレバ債務者ニヤツテ仕舞ヘバ宜シイト云フ論ガ出マシタガ、三十四條カラ出ルノデ御座イマスカラ三十五條ヲ置ケバ之ヲ置カナケレバナリマセン
(元尾崎)
保證人ガ確クシテ居ルカラ債務者ニ取テ掛ランデ宜シイト云ヘバ債權者ノ過チダロウ
(栗塚)
三十四條ハ當リ前ト思ヒマス、三十四條ガアレバ三十五條ガナケレバナリマセン
(松岡)
三十條ハ直グニ取リニ來タ場合デハナイカ
(栗塚)
之ハ拂ツテ仕舞ツタ後チデス
(松岡)
拂ツテ仕舞ツタ後ハ供託ハ入ルマイ、此處ハ何ヲ引イテ來タノダロウ
(栗塚)
「豫メ」ハ前條丈ケニ掛ツテ居リマス
(松岡)
ソウシテ債務者ノ名ハ入ラヌダロウ
(南部)
第一ノ又ガ掛ツテ居ル
(栗塚)
千三十條ノ第一ノ末段ノ又カラ以下ヲ云フノデ御座イマス
(松岡)
「名ヲ以テ」ト云フノハ可笑シイ、代理ト云フ樣ニナル、誰某ヲ宛ニシテト云フナラ宜シイガ
(栗塚)
ソレデス保證人ガヤルトハ云フモノノ保證人ガ金ヲ借リテ居ルノデハナイカラ
(南部)
自分ノ名デ預ケレバ何時デモ自分ノ名デ取テ來ル
(松岡)
ソウスルト債權者ガ預ケタ金ト云フノモ可笑シイ
(栗塚)
取ルコトガ出來ルノハ債務者ガ取ルコトガ出來ルノデス
(松岡)
代理ヲスルニ誰某ノ名ヲ以テスルト同ジダ、ソウ迄ハ云ヘヌダロウ
(栗塚)
「憑」ノ字ハ「依」ノ字ニナリマシヨウ「債權者ニ對シ」ハ「債權者ニ對スル」ト致シマス
(委員長)
良ケレバ先キヘ行キマシヨウ
本條「債權者ニ對シ」ハ「債權者ニ對スル」ト改メ他ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第千三十六條朗讀ス
第千三十六條 主タル債務ヲ辨濟シ又ハ其他ノ方法ヲ以テ債權者ニ辨濟シタル保證人ハ己レノ權利ニテ有スル訴權ノ外第千三十二條及ヒ第千三十三條ニ定メタル制限ニ從ヒ債務者又ハ第三者ニ對シテ債權者ノ有シタル總テノ權利ニ付キ第五百四條第一號ニ從ヒテ代位ス〔第二千二十九條〕
右代位ノ利益ハ總テノ保證人ノ爲メニ存シ又債務者ノ意ニ反シテ義務ヲ約シタル保證人ノ爲メニモ存ス
若シ債權者カ債務者ノ不動產ニ付キ先取特權又ハ抵當權ノ記入ヲ爲シタルトキハ保證人ハ自己ノ得ヘキ代位ニ着目シテ自己ノ條件付ノ債權ヲ右記入ノ緣邊ニ附記セシムルコトヲ得又移付ノ場合ニ於テハ第三保有者ハ滌除ノ爲メノ提供中ニ保證人ノ條件付ノ債權ヲ包含セシムルコトヲ要ス
若シ債權者カ有益ナル時期ニ於テ記入ヲ爲サヽリシトキハ保證人ハ第五百三十四條及ヒ第千四十五條ニ從ヒ債權者ニ對シテ自己ノ免責ヲ請求スルコトヲ得
(修正案) 第一項主タル債務ヲ辨濟シタル總テノ保證人ハ第千三十二條及ヒ第千三十三條ニ定メタル制限ニ從フニ於テハ己レノ權利ニテ有スル訴權ノ外債務者又ハ第三者ニ對シテ債權者ノ有シタル總テノ權利ニ付キ第五百四條第一號ニ從ヒテ代位ス第二項刪除ス第三項「其先取特權」云々ノ下左ノ如ク改ム其記入ヲ爲シタルトキハ保證人ハ代位ヲ目的トシテ自己ノ條件付ノ債權ヲ右記入ノ縁邉ニ附記セシムルコトヲ得又讓渡ノ場合ニ於テハ其不動產ヲ保有スル第三者ハ滌除ノ爲メ債權者ノ外保證人ニ對シテモ亦提供ヲ爲スコトヲ要ス第四項「記入」ノ上ニ「右ノ」ノ二字ヲ加フ
(栗塚)
此條ハ註ヲ御讀ミ下サルト報吿委員ノ動キマシタコトガ分リマス第一項ハ「其他ノ方法ヲ以テ」ト云フノハ「辯濟シタル」デ良カロウト思ヒマス起案者ハ債務ヲ辨濟シ又ハ身金ヲ以テト云フ積リデ御座イマシヨウガ「取タル債務ヲ辨濟シタル保證人ハ第千三十二條及ヒ第千三十三條ニ定メタル制限ニ從フニ於テハ己レノ權利ニテ有スル訴權ノ外債務者又ハ第三者ニ對シテ債權者ノ有シタル總テノ權利ニ付キ第五百四條第一號ニ從ヒテ代位ス」ト致シマシタ、第二項ハ刪リマス前ノ總テノ保證人ノ内ニ之ガ入リマスカラ
(松岡)
私ハ他ノ人ニ及ンデ行クト云フ積リデアツタ
(栗塚)
三項モ修正致シマシタ、四項ハ記入ノ上ニ「右」ト云フ字ヲ入レマシタ
(槇村)
滌除ノ爲メト云フノハ
(栗塚)
差押ノ處デ書キマシタガ不動產ノ抵當トカ種々ノ物ガ付イテ居ルノヲ洗ヒ流シテ仕舞ト云フノデス
(松岡)
之デハ保證人ガ獨リデハイケナイ、三人行カナケレバナラヌ、債權者ト債務者ト保證人ト此三人ガ行カナケレバナラヌ
(南部)
ソウデス
(村田)
登記ト云フコトガ記入デ分ルカ知レヌ
(南部)
コウ云フノハ登記トハ云ハヌ記入デス
(栗塚)
ソレヲ顛倒シタモノガ登記トナリマス
(委員長)
「債權者ノ外保證人ニ對シテモ」ト云フノハ如何カ
(栗塚)
意味ヲ譯シタモノデ御座イマス
(元尾崎)
不動產ヲ保有シタル第三者ト云フノハ讓リ受ケタノデスネ、讓リ受ケタノカ條件ガ付イテ居テハナラヌカラ提供スルノダ
(栗塚)
ソウデス
(淸岡)
提供ノ上ニ語ガ足ラヌ樣ダ
(委員長)
滌除ノ爲メノ提供ト云フト滌除ノ爲メニ對シテ居ル樣ダガ、先キニ行ツテ提供ヲ爲スト云フト、分ラヌ
(栗塚)
提供中ニ含ンデハ入ラヌ樣デ御座イマス「要ス」ト云フト愈分ラヌ
(委員長)
又滌除ノ爲メニスル提供ヲ爲スコトヲ要ストカ何トカシタラ宜シイカ知ラヌガ、唯提供デハ分ラヌ
(元尾崎)
滌除ノ爲メ提供スルダカラ分ツテ居ル
(栗塚)
尤モ包含ト云フ字サヘ旨イ字ガアレバ元ノ儘デ宜シイノデ御座イマスガ旨イ字ガ出ナイノデ困リマス
(委員長)
前ハ債權者ガ主デ保證人ニ對スルノガ條件付キデ、ソレモ含ンデ居ラヌトナツテ居ルノダガ、今度ハ條件付キト云フノガナイカラ唯債權者ノ權利ハ幾許アルヤラ保證人ノ權利ハ幾許アルヤラ判然シナイ
(栗塚)
起案者ノ云フニハ債權者ノ云フコトハ無論云フ迄モナイカラ、云ハヌノデス、提供スルトキハ保證人モ入ツテ居ラナケレバナラヌゾヨト云フ積リデ書イタノデ御座イマスガ、第一ニヤルノハ債權者デ保證人モ金ヲ取ル權利ガアルト云フコトヲ主ニシテ書イタノデ起案者ハ其意味ヲ含セタノデ御座イマシヨウガ滌除ノトキ保證人ガ含マシテ居ラナケレバナラヌト云フノデス
(委員長)
「條件付ノ債權者ニ對スル」ト云ヘバ分ル
(栗塚)
「滌除ノ爲メ主タル債權ハ勿論保證人ノ條件付ノ債權ニ對シテモ亦提供ヲ爲スコトヲ要ス」トスレバ宜シイ
(委員長)
大槪分ツテ居ル
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第千三十七條朗讀ス
第千三十七條 若シ連帶又ハ不可分ナル義務ノ數名ノ債務者アルトキハ保證人カ其中或ル者ヲ保證シ他ノ者ヲ保證セサルトキト雖モ保證人ハ右ノ代位ニ憑リ債務者ノ各自ニ對シ全部ニ付キ求償スルコトヲ得〔第二千三十條〕
(修正案) 冒頭「若シ」ノ二字ヲ刪リ「保證人カ」ヲ「保證人ハ」ト改メ「右ノ」ノ上「保證人ハ」ノ四字ヲ刪ル
(栗塚)
「連帶又ハ不可分ナル義務ノ數名ノ債務者アルトキハ保證人ハ」ト致シマシテ「右」ノ上ノ保證人ヲ刪リマス
(元尾崎)
餘計ナ御世話ダナ
(栗塚)
尤モ條件付デ借リテ居レバ條件ガ來ナケレバナラヌ、貴君ガ來年ノ夏返スノニ今拂ツテハイケナイ
(元尾崎)
今證文ノ賣買ガ出來ル樣ニナル
(南部)
ソレハ外デ出來マス讓渡ハ百圓ノ物ヲ五十圓デ賣買ガ出來ルガ之ハ百圓ハ百圓ニ換ヘナケレバナラヌ
(元尾崎)
御前ノ爲メニ拂ツテヤツタト云フテ請求ガ出來ルカラ賣買ト同ジニナル
(南部)
百圓借リレバ百圓返ヘスト云フト云フノダカラ弊害ハナイ
(元尾崎)
債主ハ早ク拂ツテ貰ヘバ宜シイガ、負債主ハ相手ガ懇意ナ奴ダカラ催促シナイト思テ居ルニ妙ナ奴ガ來テ返ヘシテハ困ル、有ル時拂ヒノ催促無シト云フノガアル、其レヲ拂ツテ義理モ何モナシニ催促サレテハ困ル
(栗塚)
唯相手方ガ訴ヘマイト云フ想像ガアル丈ケデス
(元尾崎)
日本デ證文ノ賣買ヲ禁ジタノハ、ソウ云フ弊害ガアルカラダロウ
(南部)
アレヲ禁ジタノハ百圓ノモノヲ五十圓デ買テ百圓請求スル弊害ガアルカラ禁ジタノデス
(元尾崎)
日本デハ道徳ニ關係ガアツテ禁ジタノダ
(渡)
代位辨濟ノトキモ其論ガアツタ
(委員長)
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第千三十八條朗讀ス
第三款 共同保證人ノ間ニ於ケル保證ノ效力
第千三十八條 同一ノ債務ニ付キ數名ノ保證人卽チ共同保證人アリテ其中ノ一人カ債務ノ全部ヲ辨償シタルトキハ任意ニ出テタルト否トヲ問ハス保證人ハ主タル債務者ニ對スル其求償ニ付キ上ニ記載シタル條件、制限及ヒ區別ニ從ヒ或ハ事務管理ノ訴權ニ因リ或ハ債權者ノ訴權ニ因リ分頭部分ニ付他ノ保證人ノ各自ニ對シテ求償スルコトヲ得〔第二千三十三條〕
若シ右ノ保證人カ債務ノ全部ヲ辨償セスシテ自己ノ部分ヨリ多ク辨濟シタルトキハ右ノ超過額ノ爲メノ求償ハ他ノ共同保證人ノ間ニ平等ニ分タル
(修正案) 第一項「其中ノ一人カ」ノ下「求償ニ付キ」ノ上ヲ「任意ナルト否トヲ問ハス債務ノ全部ヲ辨濟シタルトキハ其保證人ハ主タル債務者ニ對スル」ト改メ「分頭部分ニ付キ」ノ七字ヲ刪リ「對シ」ノ下「均等部分ニ付」ノ六字ヲ挿入シ「テ」ノ一字ヲ刪ル第二項「辨償」ヲ「辨濟」ト改メ「右ノ超過額」ヲ「其超過額」ト改ム
(栗塚)
「其中ノ一人カ任意ナルト否トヲ問ハス」ト云フノハ辨償ニ掛ラヌ樣デ御座イマスカラ改メマシタ
(委員長)
均等部分ト分頭部分ト違ヒハセヌカ
(栗塚)
千二十三條デ「分等卽チ均等ノ部分」ト致シマシタ
(委員長)
何處ガ「分頭卽チ均等部分」ト云フテアレバ宜シイガ、ツイ「均等」ト云フタラ違ヒハセヌカ
(栗塚)
高イ安イガ出ルノカ心配ナクデス
(委員長)
ソンナラ均等ガ宜シイカ
(栗塚)
佛蘭西デハ出ナイノデス「パール、ビリール、エガール」ト云フノデ卽チ「エガール」デ御座イマス
(委員長)
定限、定償ニシテモ頭マニ割リ付ケテヤル方ヲ云フコトモアル必ラズ均シクヤラヌコトモナイ
(栗塚)
其恐レガアルカラ止メマシタ分頭ト云フノハ均シイ部分ト云フナラ宜シイガ
(南部)
之ガ原則ニナツテ居ル
(栗塚)
二十三條ガ原則デス
(村田)
英吉利ニハ銘々ノ持分トアル
(松岡)
其方ガ宜シイ
(南部)
保證人ハドウダ、數人ノ債務者ガナイカラ頭マ割デ無ケレバナラヌ
(渡)
定限ナラ頭マ割リト云フノダ
(松岡)
任意ナリト否トヲ問ハズト云フノハ意味ガアリマスカ
(委員長)
何モ無イ樣デス、後ヲ均等ニ分タルト致シマス
本條ハ末項「平等」ヲ「均等」ト改メ他ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第千三十九條朗讀ス
第千三十九條 若シ共同保證人ノ一人カ無資力ナルトキハ辨濟シタルモノハ無資力者ヲ保證シ卽チ引受ケタル者ニ對シテ求償權ヲ有ス引受人アラサルトキ無資力者ノ部分ハ債務ヲ辨償シタル者ヲ加ヘ他ノ有資力ナル共同保證人ノ間ニ配當セラル〔第二千三十三條第一項〕
(修正案) 「他ノ有資力」云々ノ上ヲ左ノ如ク改ム共同保證人中ニ無資力者アルトキハ辨濟シタル者ハ其無資力者ノ引受人ニ對シテ求償權ヲ有ス引受人アラサルトキハ無資力者ノ部分ハ債務ヲ辨濟シタル者ヲ加ヘ
(元尾崎)
「無資力ナル者アルトキハ」デハナイカ
(栗塚)
成程「無資力ナル者アルトキハ」ノ方ガ宜シイカ知レマセン
(松岡)
「無資力者アルトキハ」ガ宜シイ
(栗塚)
「辨濟シタル者ハ其無資力者ノ引受人ニ對シテ求償權ヲ有ス引受人アラサルトキハ無資力者ノ部分ハ債務ヲ辨濟シタル者ヲ加ヘ」ト致シマシタ
(松岡)
連帶ト同ジコトニナル、獨リニナツタラ、獨リデシナケレバナラヌ、債務者ニ係ツテナラソレデ宜シイカ
(栗塚)
迷惑至極デハアリマセンカ、ソウシタラ平等デモナクナルデシヨウ外ノ人ハ二十圓出シ貴君ガ四十圓出スト平等デナイ
(南部)
松岡サンノ云フノハ却テ連帶ニナル
本條ハ「無資力ナルトキハ」ヲ「無資力者アルトキハ」ト改メ他ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第千四十條朗讀ス
第千四十條 前條ニ憑テ訴ヘラレタル共同保證人ハ未タ主タル債務者ノ財產ノ討索アラサルトキハ第千二十條以下ニ於テ此事ニ付キ定メタル規則及ヒ條件ヲ遵字シテ豫メ主タル債務者ノ財產ノ討索ヲ請求スルコトヲ得
右同一ノ權利ハ保證人ノ引請人ニ屬ス
(修正案) 第二項「引請人ニ屬ス」ヲ「引受人ニモ屬ス」ト改ム
(栗塚)
「引受人ニモ屬ス」ト致シマス、修正ニハアリマセンガ「前條ニ憑テ訴ヘラレタル共同保證人ハ豫メ主タル債務者ノ財產ノ討索ヲ請求スルコトヲ要ス但未タ債務者ノ財產ノ討索ノアラサルトキハ第千二十條以下ニ於テ此コトニ付キ定メタル規則及ヒ條件ヲ遵守スルコトヲ要ス」トスルト云フ考ヘモアリマシタ
(淸岡)
之デ宜シイ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第千四十一條朗讀ス
第千四十一條 若シ數名ノ保證人カ連帶シテ義務ヲ約シ又ハ不可分債務ノ爲メ義務ヲ約シタルトキハ全部履行ニ付キ訴ヘラレタルモノハ同一ノ判決ヲ以テ前數條ニ許サレタル言渡ヲ共同保證人ニ對シテ得ル爲メ本訴ニ附帶シテ共同保證人ヲ擔保ニ召喚スルコトヲ得
(修正案) 左ノ如ク改ム連帶又ハ不可分債務ノ爲メ義務ヲ約シタル數名ノ保證人中全部履行ニ付キ訴ヘラレタル者ハ本訴ニ附帶シテ共同保證人ヲ擔保ノ爲メ召喚シ之ニ對シ同一ノ判決ヲ以テ前數條ニ許サレタル言渡ヲ受ケシムルコトヲ得
(栗塚)
之ハ「連帶又ハ不可分債務ノ爲メ義務ヲ約シタル數名ノ保證人中全部履行ニ付キ訴ヘラレタル者ハ本訴ニ附帶シテ共同保證人ヲ擔保ノ爲メ召喚シ之ニ對シ同一ノ判決ヲ以テ前數條ニ許サレタル言渡ヲ受ケシムルコトヲ得」ト致シマス
(松岡)
「許シタル」デハイカヌカ
(栗塚)
「許シタル」デ宜シウ御座イマス
(委員長)
宜シウ御座イマシヨウ
本條ハ「許サレタル」ヲ「許シタル」ト改メ他ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第千四十二條朗讀ス
第千四十二條 保證人ノ一人ニ對シテ爲サレタル時效中斷ノ所爲及ヒ付遲滯ハ他ノ保證人ニ對シテ其效ナシ伹其約務カ連帶ナルトキハ此限ニ在ラス
債權者ト保證人一人トノ間ニ主タル債務ニ關シ爲サレタル判決、自白、認知及ヒ裁判外ノ宣誓又ハ其拒絕ハ他ノ保證人ヲ利ス可キトキハ之ヲ利ス然レトモ之ヲ害スルコトヲ得ス
(修正案) 第一項但ノ上ヲ左ノ如ク改ム保證人ノ一人ニ對シテ時效ヲ中斷シ又ハ之ヲ遲滯ニ付スルノ所爲ハ他ノ保證人ニ對シテ其效ナシ第二項「一人」ノ上ニ「ノ」ノ一字ヲ加ヘ「保證人ヲ利ス可キトキハ之ヲ利ス」ヲ「保證人ヲ利スルコトヲ得」ト改ム
(栗塚)
第二項ノ「保證人ノ」ト云フ「ノ」ノ字ガ落チマシタ
(松岡)
「保證人ヲ利シ」デ宜シイノダ
(栗塚)
併シ利スベキトキハ利スト云フノハ利スルコトガ出來ルト云フ意味デスカラ、利スト云フト利サヌトキガアル、其レヲ避ケル積リデス
(元尾崎)
「利スルコトヲ得」デ宜シイ
(松岡)
「一人」ハ無クテ宜シイ
(元尾崎)
之ハ「爲サレタル」カ
(淸岡)
「爲サレタル」ノ樣ダ
(槇村)
良カロウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第千四十三條朗讀ス
第千四十三條 保證人ノ一人又ハ數人カ無資力ト爲リタルトキハ相互ニ連帶シタル保證人ノ間又ハ債務者連帶シタル保證人ニ第千六十八條第千六十九條及ヒ第千七十條ヲ其各條記載シタル區別ヲ以テ適用ス
(修正案) 「債務者連帶シタル」ヲ「債務者ト連帶シタル」ト改メ「保證人ニ」ヲ「保證人ノ間ニ」ト改ム
(栗塚)
「債務者連帶シタル」ヲ「債務者ト連帶シタル」ト致シテ「保證人ニ」ハ「保證人ノ間ニ」ト致シマシタ
(元尾崎)
保證人ガ債務者ト連帶スルト云フノハドウ云フ譯カ
(南部)
此前ニ「連帶シタルトキハ此限ニ在ラス」ト云フコトガアリマシタ
(栗塚)
保證人同士ガ連帶シテ居ルノカ保證人ノ間丈ケデ之ハ連帶シタル保證人ト債務者ノ間デス
(元尾崎)
債務者ト保證人ト連帶スルコトガアルカ
(村田)
此間モアツタ
(元尾崎)
ソウスルト保證人ニ先キヘ係ツテモ構ハヌカ
(栗塚)
左樣デス
(元尾崎)
コウ云フコトハ今ハ無デシヨウ
(松岡)
一向知ラヌ
(元尾崎)
前條ノ但ハ保證ガ連帶ナルトキハノ樣ダ
(委員長)
仕舞ヒバ又ハ保證人ト連帶シタル保證人ノ間デハナイカ
(栗塚)
左樣デハアリマセン矢張リ連帶シテ居ル保證人ノ間デス
(松岡)
ソレナラ相對ニ連帶シテ居ルノダ
(栗塚)
相對バカリデナイ、債務者トモヤツテ居ル
(南部)
「相對ニ連帶シタル又ハ債務者ト連帶シタル」ト云フテモ宜シイ
(栗塚)
ソレデ原文ノ通リデス
(淸岡)
此通リデ宜シイ
(村田)
下ノ間ガアレバ上ノ間ハ要ラヌ
(委員長)
債務者ト連帶シタル保證人ノ間ト云フト債務者ガ中ヘ入ラヌカト思フ
(栗塚)
入リマス
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第千四十四條朗讀ス
第三節 保證ノ消滅
第千四十四條 保證ハ義務消滅ノ通常ノ原由ニ因リ直接ニ消滅ス〔第二千三十四條〕
保證ノ更改、合意上ノ釋放、相殺及ヒ混同ハ第五百廿四條、第五百三十三條、第五百四十三條及ヒ第五百六十條ニ之ヲ規定ス〔第二千三十五條〕
(修正案) 釋放ノ上「合意上ノ」ノ四字ヲ刪ル
(栗塚)
「直接ニ」ハ御耳障リデ御座イマシヨウガ必要ナ字デ御座イマスカラ改メル譯ニ參リマセン、ソレデ「合意上ノ釋放」ト云フノハ必要デ御座イマスガ日本デ釋放ト云フノハ契約編デ分リマシタカラ「合意上ノ」ヲ削リマシタ又起案者モ先キノ方デハ釋放ト云フ字バカリ使ツテ居リマス
(元尾崎)
詰リ入ラヌ條ダ
(村田)
二項ハ無クテモ宜シイ
(栗塚)
「直接ニ」ト云フ字ハ明日千四十六條デ「間接」ト云フ字ガアルカラ必要デ御座イマス
(委員長)
宜シイ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第千四十五條朗讀ス
第千四十五條 債權者カ故意ノ所爲ニ因リ又ハ單純ナル懈怠ニ因リテモ保證人ノ其代位ニ因リテ得取スルコトヲ得ヘキ抵保ヲ減シ又ハ危クシタルトキハ保證人ハ債權者ニ對シ自己ノ免責ヲ請求スルコトヲ得〔第二千三十七條〕
總テ保證人ハ區別ナク又保證人ノ引受人ハ保證人ノ權利ニ依リ右ノ權利ヲ援唱スルコトヲ得
(修正案) 「債權者ニ對シ」ノ上ヲ左ノ如ク改ム債權者カ故意又ハ懈怠ニテ保證人ノ其代位ニ因リテ得取スルコトヲ得ヘキ擔保ヲ減シ又ハ危クシタルトキハ保證人ハ
(栗塚)
「故意又ハ懈怠ニテ保證人ノ」トシテ「シタルトキハ」ノ「トキハ」ヲ削リマシタ
(元尾崎)
「區別ナク」ト云フノハ
(栗塚)
誰レデモト云フノデ御座イマス
(槇村)
「援唱」ハ
(栗塚)
神ノ助ケヲ喚ブト云フ字デ御座イマス、モウ一條願ヒマス
(委員長)
ヤリマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第千四十六條朗讀ス
第千四十六條 保證ハ主タル義務ヲ了終スル總テノ原由ニ因リ間接ニ消滅ス〔第二千三十六條〕
債權者ト主タル債務者トノ間ニ爲サレタル代物辨濟、更改、合意上ノ釋放、相殺及ヒ混同ノ保證人ニ對スル效力ハ第四百八十二條、第五百二十三條、第五百二十八條、第五百四十三條及ヒ第五百六十條ニ之ヲ規定ス〔第千二百八十一條第二項、第千二百八十七條、第千二百九十四條第一項、第百三十條第一項及ヒ第二項、第二千三十八條〕
(修正案) 第一項「義務ヲ了終スル」ヲ「義務消滅ノ」ト改ム第二項釋放ノ上「合意上ノ」ノ四字ヲ刪ル附錄ヲ第四節ト改メ裁判上ノ保證ノ下「ニ特別ナル規則」ノ七字ヲ補足ス
(栗塚)
一項ハ「保證ハ主タル義務消滅ノ總テノ原由」ト致シマス
(委員長)
良カロウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
于時午前第十一時三十五分閉會