旧民法・法例(明治23年)

法律取調委員会 民法草案再調査案議事筆記 第4回

参考原資料

備考

  • 未校正のテキストデータです.
民法財產篇再調査按第四回議事筆記
第三十七條第四十六條修正及ヒ第七十四條ヨリ第百二十條ニ至ル
第三十七條及ヒ第四十六條修正ノ議
(今村委員)
此間留保ニナツタ三十七條ノ末項ハ此所デハ削除ニ決シマシタガ訴訟法ニ書カナケレバナラヌノデ果シテ云ハナケレバナランケレバ民法中ニ云ハナケレバナラヌ、又訴訟法ハ特別法デナイ民法ト並ンデ出ルカラ云フニ及ブマイト云テ「ボアソナード」ニ聞キマシタ、占有ノ所ニモ地役ノ所ニモ御座イマス、果シテ云ハナケレバナランケレバ民法中ヘ一度云ヘバ宜シカロウト云フテヤリマシタ所ガ云フニ及バヌ併シ此處ハ占有ニ關スル訴權ダカラ注意ノ爲メニ云フガ一ツ所ヘ纏メテ云フ所ガナイト云フ事デ御座イマシタ、ソレナラ此處モ先キノ所モ皆刪除シテ良カロウト思ヒマス其レカラ用收權ノ四十六條ガ文字丈ケ決セズニ居リマシタ所ガ元トノ通リニシマスルト「用益權トハ所有權ノ他人ニ屬スルモノニシテ其用方ニ從ヒ其元質本體ヲ變スル事ナク有期ニテ且善良ナル管理者ノ如ク使用及ヒ收益ヲ爲スノ權利ヲ謂フ」トアリマス之ヲ全ク元トノ通リニスルト八十六條ニ「善良ナル管理者ノ如ク」ト云事デアリマス、其事ハ定義中ニモアツテ重複シテモ構ハズ元トノ通リスルカ之丈ケハ削ルカ決セズニ居リマシタ
(松岡委員)
實ハ「用方ニ從ヒ」ト云フト「善良ナル管理者ノ如ク」ト云フノハ重複ダ
(南部委員)
本性ト云フモノト用方ト云フモノトハ指シ所ガ違ウ
(淸岡委員)
重複ダ八十七條ノ方ガ却テ用收者ノ權利ヲ云フ所ダカラ却テ除ケラレナイ
(南部委員)
「善良ナル管理者」ト云フ事ハ入ラヌ事デス
(松岡委員)
定義ノ性質ノモノハ義務ニシナケレバナラヌト云フ論ガアル
(南部委員)
其レハ云フマイ「善良ナル管理者ノ如ク」デ省クカ省カヌカハ云フガ宜シイガ定義ニナルカナラヌカト云フ事ハ論ゼヌガ宜シイ
(渡委員)
八十七條ノ方ヲ除ケテモ元トヘ複スト云フ論デアツタ
(南部委員)
管理者ト云フ事ニ書テ居ルガ原按カラ二タ所ニ書テ居ル、其他ハ之ガ義務ニ屬スルカラ再調査デハ八十七條ニ入レマシタ所ガ又其レヲ四十六條ニ入レタガ、入レルト二タ所ニ出ルカラ決シ度イト云フ報吿委員ノ意見デス
(村田委員)
八十七條ヘ往ツテ論ジテモ宜シイ
(松岡委員)
ソウデハナイ、再調査デ文字ノ修正ヲ出シテ居ルカラ其レヲ決シナケレバナラヌ私ハ此所デ削ル論ダ
(今村委員)
之ハ兎モ角モ此所ヲ置イテ彼方ヲ削ル事ハ出來ナイ此所ヲ削テ彼方ヲ存スル事ハ出來ルケレドモ
(尾崎委員)
此所ハ善良ナル管理者ハ削ツテ良カロウト思フ
(西委員)
此所ハ定義ヲ下スニ付イテ用收權ハコウ云フモノダト云フ事ヲ示シタノダカラ卽チ用收權ハ善良ナル管理者ノ如クト云フノデ善良ナル管理者ノ如クニスル用收權ノ内ノ大事ノ事デアリマスカラ此所ニ在テ相當ナル事デ、後ノ八十七條ニ在テモ重複デナイ
(淸岡委員)
此間報吿委員ノ論ハソレデアツタノデ御座イマシヨウ
(尾崎委員)
定義ヲ定メルニ善良ナル管理者ノ如クト云フノハ使ウ人カラ云フノデ此所デ書イテ置カズトモ宜シイ、先キハ用收者ノ義務ノ場合ダカラ善良ナル管理者ノ如クガ入ルガ此所ハ削ルガ宜シイ
(村田委員)
定義ダカラ入レテ置カナケレバナラヌ栗塚モ八釜シク云ツタ
(南部委員)
栗塚ハ強テ云ハヌ
(北畠委員)
削ロウ
(槇村委員)
「善良ナル管理者」ヲ削ルガ多イカ
(今村委員)
修正ガアリマス用益權トハ所有權ノ他人ニ屬スルモノニ付キ其用方ニ從ヒ其元質本體ヲ變ズル事ナリ且有期ニテ使用及ビ收益ヲ爲スノ權利ヲ云フトナリマス
(尾崎委員)
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ左ノ如ク決ス
第四十六條 用益權トハ所有權ノ他人ニ屬スル物ニ付其用方ニ從ヒ其元質本體ヲ變スル事ナク且有期マテ使用及ヒ收益ヲ爲スノ權利ヲ謂フ
第二項刪除ス
第七十四條朗讀ス
第三款 用益者ノ義務
第七十四條 用益者ハ用益財產ノ占有ヲ始ムル前ニ虛有者ト立會ヒ又ハ合式ニ之ヲ召喚シ完全精確ニ動產ノ目錄、不動產ノ形狀書ヲ作ル事ヲ要ス
(今村委員)
報吿委員ニ於テ「完全ナル正確ニテ」ト云フ文字ヲ除カンカト云フ說ガ御座イマシタ此法律デハ「決シテ何々スル事ヲ得ス、充分ニ注意スル事ヲ要ス」ト云フ字ガアリマス其所デ完全正確ト云フ字ヲ削ツテモ差支アリマセンガ削ツテモ不完全デ宜シイト云フ事ハアリマセンカラ所ニ依ルト肝要ナ事ガ御座イマス箇樣ナ所ヲ削ルト澤山削ラナケレバナリマセン
(南部委員)
形狀ノ完全ナル正確ト云フノハ動產ノ目錄ダケニ係ツテ居ル
(今村委員)
何ゼカト云フト不動產ノ形狀ヲ認メテ記錄スル事ヲ要スト原書ニアリマス其所ヲ削ツテアルノダト思ヒマス、一方ハ唯目錄ヲ作ルトアリマスカラ形容詞ヲ付ケテアリマスガ翻譯スルト形狀書ヲ作ル方ヘハ確カノト云フ字ガ拔ケテ來マスカラ兩方ニ書ケマス
(南部委員)
ソレハ原案ノ文字ヲ修正シタノデハナイカ
(今村委員)
ソウデス修正シタノデス
(南部委員)
修正ナラ拔イテモ宜シイ
(松岡委員)
元トハ動產ニ付テハ完全正確ナル目錄、不動產ニ付テハ其形狀書トアツテ不動產ハ形狀書サヘ付ケレバ完全正確ト云ハズシテ宜シイ、動產ハガチヤガチヤシテ居ルカラダロウ
(今村委員)
不動產ニ付テハ其形狀ヲ證記スルト云フ字ガ使ツテアリマス、其レデ「完全正確」ト云フ字ヲ揭ゲル事ガ出來ヌ事ニ改文デハアリマスケレドモ翻譯スルト誠ニ六ケ敷イノデ
(南部委員)
原案ノ文字ヲ直セバ之デ宜シイ
(村田委員)
不動產ハ完全正確ト云フ事ハ書ケヌダロウ、其時ノ有樣ヲ書クノダカラ
(今村委員)
矢張リ完全正確デス
(松岡委員)
寧ロ無シガ宜シイ
(村田委員)
無イ方ガ良イカ知レヌ、目錄ヲ作ラヌ以上ハ用益權ヲ初メラレヌカラ其レデ完全ダトカ、不完全ダトカ云フト議論ガ起ルカラ
(南部委員)
私ハ動產バカリナラ削ルガ、不動產ニ係ル樣ニ修正スレバ贊成スル
(淸岡委員)
削ツテ不完全デモ權ハヌカ
(今村委員)
之ハ大切ノ問題デナイカラ先キヘ行ク方ガ宜シイ
(尾崎委員)
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ原按ニ決ス
第七十五條朗讀ス
第七十五條 當事者カ雙方出會シ共ニ能力アルトキ又ハ有効ニ代理ヲ立テタルトキハ目錄及ヒ形狀書ハ私署ヲ以テ之ヲ作ル事ヲ得反對ノ場合ニ於テハ公吏之ヲ作ル
(尾崎委員)
宜シイ
本條ハ原按ニ決ス
第七十六條朗讀ス
第七十六條 目錄ニ記シタル代替物ノ評價ハ賣買ニ同シキ効力ヲ有ス但反對ノ明言アルトキハ此限ニ在ラス不代替物ノ評價ハ目錄ニ明記アルニ非サレハ賣買ニ同シキ効力ヲ有セス
有償名義ヲ以テ用益權ヲ設定シタルトキハ目錄及ヒ評價ノ費用ハ用益者、虛有者各其半額ヲ負擔シ無償名義ノ場合ニ於テハ用益者一人ニテ之ヲ負擔ス
(今村委員)
此終リハ後チニ「ボアソナード」ガ入レタノデ御座イマスカラ原按ニハアリマスマイ
(村田委員)
無償名義デヤル者ハ費用迄モ出シテ貰フト云フ者ガアルカ知ラヌ、無償名義ダカラ費用ハ出シテ呉レソウナモノダ又「一人ニテ之ヲ負擔ス」ト云フノハ良クナイ
(今村委員)
ソレハ辭咎メダ
(南部委員)
「一人ニテ」ハ入ラナイ
(松岡委員)
「一人ニテ」ヲ削ロウ
(尾崎委員)
削ツテ宜シイ
(委員長)
「一人ニテ」ヲ削ルカ
本條第二項「一人ニテ」ヲ削リ他ハ原按ニ決ス
第七十七條朗讀ス
第七十七條 用益權設定ノ時用益者ノ目錄又ハ形狀書ヲ作ルノ義務ヲ免除シタリト雖モ虛有者ハ常ニ用益者ト立會ヒ又ハ合式ニ之ヲ召喚シ自費ヲ以テ目錄又ハ形狀書ヲ作ル事ヲ得但此事ニ付キ虛有者ハ十一日以上收益ヲ遲延セシムル事ヲ得ス
第七十五條及ヒ第七十六條第一項ハ右ノ場合ニ之ヲ適用ス
(松岡委員)
「合式ニ之ヲ召喚シ」ト云フ字ガ這入ルノダネ
(今村委員)
ソウデス元トノ翻譯ガ之レ丈ケ脫カシテアリマシタカラ寫字生デモ脫カシタカ知レマセン
本條ハ原按ニ決ス
第七十八條朗讀ス
第七十八條 用益者ハ目錄又ハ形狀書ヲ作ルノ義務ヲ履行セスシテ收益ヲ始メタルトキハ善良ナル形狀ニテ不動產ヲ受取リタリトノ推定ヲ受ク但反對ノ證據アルトキハ此限ニ在ラス
動產ニ付テハ虛有者ハ通常ノ證據ハ勿論世評ヲ以テ其實狀及ヒ價格ヲ證スル事ヲ得
(村田委員)
「形狀書ヲ作ルノ義務ヲ履行セスシテ」ト云フノハ元トノデ見ルト形狀書ヲ作ラザルトキハ免除セラレザルト云フ樣ニ書イテアル
(南部委員)
目錄形狀書ヲ作ルコトノ免除ヲ得ル場合ト得ナイ場合ガアル
(村田委員)
「作ラスシテ收益ヲ始メタル」デ良カロウ
(松岡委員)
云ヒ詰メレバ同ジ事ダ
(尾崎委員)
再調査按デ宜シイ
(村田委員)
「動產ニ付テハ」ト云フノハ別項ニナツテ居ルガ別項デナイ方ガ宜シイ、目錄ト云フノハ動產ニ掛ツテ居ル
(今村委員)
此法律ニハ澤山アツテ直スコトノ出來ナイ所ガアリマス
(南部委員)
二項ハ動產バカリノコトヲ云フノダカラ別項デ宜シイ
本條ハ原按ニ決ス
第七十九條朗讀ス
第七十九條 用益者ハ用益權消滅ノ時負擔ス可キ返還及ヒ償金ノ爲メ保證人ヲ立テ又ハ他ノ相應ナル擔保ヲ供フルニ非サレハ收益ヲ始ムル事ヲ得ス
(村田委員)
之ハ論ハナイ
本條ハ原按ニ決ス
第八十條朗讀ス
第八十條 擔保ノ性質ニ付キ當事者ノ間ニ議協ハサルトキハ裁判所ハ顯然資力アル第三者ノ引受ヲ認許シ又ハ供託物取扱所若クハ當事者ノ認諾スル第三者ニ金錢若クハ有價物ヲ寄託スルヲ認許シ又ハ動產質若クハ抵當ヲ認許スルコトヲ得
(村田委員)
性質ト云フノヲ原質トモ本質トモ云フテ居ル
(今村委員)
性質ハ性質デ貫ク積リデス場合ニ依テハ變則ヲ使ウケレドモ本則ハ變ラヌ
(村田委員)
本質ト使ヒマシタロウ
(今村委員)
本質ト云フコトハ使ヒマセン、性質ト云フコトハ世間一般誰デモ云フコトデ「本性」ト變ヘル要用ハナイト思フ
(尾崎委員)
供託物取扱所ト云フノガ出來マスカ
(今村委員)
出來ル積リデス佛蘭西ノ例ニ依テ日本デ出來ルト想像スルヨリ外ニ仕方ガナイ
(尾崎委員)
特別ノ法ガ出來マスカ
(今村委員)
其レハ行政法デ出來マス
(尾崎委員)
下ノ認許スルハ裁判所デ認許シマスカ
(今村委員)
裁判所ガ認許スル
(尾崎委員)
併シ當事者ガ認許シナケレバ裁判所ガ認許シテモ仕方ガナイ
(今村委員)
當事者ガ議ノ協ハヌトキバカリデス、假令バ第三者カラ日本銀行ヘ預ケレバ宜シイト云フコトハ裁判所デ云ヘル、其レモ無ケレバ裁判所ガ決シテヤル
(尾崎委員)
詰ラヌ動產物デモ一方ガ保證金ハ受取レヌト云テモ裁判所デ其レニスルト云フノデスカ
(今村委員)
ソウデス
(尾崎委員)
ソレナラ當事者ノ認諾ト云フコトハ入リソウモナイモノダ
(南部委員)
損ヲスル程ノ身代ハ今日良クテモ明日惡ルクナルカラ其レハ仕方ガナイ
(今村委員)
當事者ガ彼レデ宜シイト云フニ裁判所ガ他ヘヤレト云ハンデモ宜シイ
(尾崎委員)
有價物ヲ寄託スルコトモ裁判所ガ立入ルニ及バヌ
(今村委員)
當事者ガ日本銀行ヘ金ヲ幾ラ入レルト云フコトガ議ノ協ツタトキデ裁判所ハ構ハヌ
(尾崎委員)
其動產モ仕方ガナケレバ動產質デモ受取リマスト云フタトキデナケレバ釣合ガ合ハヌ樣ダ
(今村委員)
ソレデハ修正說ヲ御提出下サイ
(尾崎委員)
認諾ヲ動產質認諾ニ掛ケテ讀ムガ宜シイ
(南部委員)
掛ケタラ議ノ協ハヌトキハドウスルカ
(今村委員)
ソウスルト議ガ協ツタコトニナル、之ハ供託物取扱所ガ出來ルトシテ日本國中何所ヘデモ出來ハシマセンカラ供託物取扱所ハ東京デナケレバナイガ、田舎デハ質屋ノ親父ガ確カダカラ其レヘ預ケテモ良カロウト云テ承知スレバ宜シイ
(尾崎委員)
ソウスルト其動產質デハ此用益物ヲ引渡スコトハ出來ヌト云テモ裁判所デハ貴樣其レハナラヌト云フコトハ出來マス
(今村委員)
其レハ出來マス
(委員長)
良カロウ
本條ハ原按ニ決ス
第八十一條朗讀ス
第八十一條 擔保ス可キ金額ニ付テハ裁判所ハ用益權ノ直接ニ存スル金高未滿ニ其金額ヲ定ムルコトヲ得ス又動產ノ評價カ賣買ニ同シキ効力ヲ有スルトキハ其評價ノ全額未滿ニ之ヲ定ムルコトヲ得ス又評價カ賣買ニ同シキ効力ヲ有セサルトキハ其評價ノ半額未滿ニ之ヲ定ムルコトヲ得ス
然レトモ右ノ末ノ場合ニ於テ若シ用益者カ評價セシ動產ニ係ル權利ヲ用益權ノ繼續間ニ讓渡シ又ハ賃貸シタルトキハ虛有者ハ常ニ評價ノ全額ニ對シテ擔保ヲ要求スルコトヲ得
不動產ノ擔保金額ノ多寡ハ裁判所之ヲ裁定ス
(尾崎委員)
用益權ノ直接ニ存スル金高ト云フノハ
(今村委員)
卽チ金デス
(南部委員)
金額ニ付テハト云フテ其金額ヲト云フノハ
(今村委員)
「付テハ之ヲ」ト云フ文章ハ出來マセン
(南部委員)
「擔保スヘキ金額ハ」ト云ヘバ宜シイ
(尾崎委員)
千圓ノ用益權ヲ使ヲウト思ヘバ千圓ノ擔保ヲ立テナケレバナラヌ
(今村委員)
ソウデス
(尾崎委員)
千圓ノ金ヲ持テ居レバ他人ノ物ヲ使ハンデモ自分ノ金ヲ使テ宜シイ
(松岡委員)
併シ公債證書ガ預ケテ置ケレバ宜シイソレデ千圓使ツテ公債ノ利子ガ自分ノ物ニナル
(槇村委員)
金高ト金額ト如何ナル違ヒガアリアスカ
(今村委員)
額ト云フコトハ唯物ノ存シテアル物ヲ額トハ云ヒマスマイ、假令バ定額ト云フ、茲百圓ノ金ガアルト云フトキ金額トハ云ヒマセン
(槇村委員)
金額ト云フコトガ金高ト云フ所ニ使ツテアルト思フ
(今村委員)
コロツト其所ニ在ル金ハ幾ラアルカト云フノハ「高」デス
(尾崎委員)
「用益權カ金圓ナルトキハ」ト云ヘバ宜シイ
(今村委員)
「權カ金圓ナルトキ」トハ云ヘヌ
(尾崎委員)
直接ニ存スルト云フノハ分ラヌ
(三島委員)
コウ云フ文章ハ澤山アリマス
本條ハ原按ニ決ス
第八十二條朗讀ス
第八十二條 擔保ノ設定證書ニハ前條ニ定メタル金額ニ對スル保證人又ハ用益者ノ一身ノ引受ヲ併記ス
(村田委員)
「一身ノ引受」ト云フト、擔保ノ所デハ保證人ノ引受人ト見ヘハシマセンカ
(今村委員)
先キノ方ト牴觸論ハ止メテ貰ヒマシヨウ、始メト牴觸論ハヤツテモ宜シイ
(尾崎委員)
保證人ヲ其所ヘ入レルカ或ハ用益者一身ニ私ガ引受ケマスト云フカ
(今村委員)
保證人ガ這入テ來レバ保證人ガ引受ケルガ、用益者ガ財產持チナレバ田地ヲ抵當トスル、假令バ一町歩ノ地面ヲ抵當ニ出シテ萬一違ツテ一町歩ヲ賣テ濟ンデ仕舞フコトハナイ
(尾崎委員)
「自身」トヤツテハドウダ
(三島委員)
「自身」ト云フト用益者バカリニナル
(南部委員)
保證人ノ引受用益者ノ引受ト云フノデハアリマセンカ
(三島委員)
保證人ノ一身ノ引受、用益者ノ一身ノ引受ト、兩方ヘ掛リマス
(村田委員)
「一身」ト云フ字ハ無クテモ宜シイ
(南部委員)
ケレドモ用益者ニハ大變必要ダ
(尾崎委員)
「引受」ハ「約務」トシタラ良カロウ
(松岡委員)
「引受」ガ宜シイ
(尾崎委員)
「用益者自ラノ引受タル事ヲ併記ス」
本條ハ原按ニ決ス
第八十三條朗讀ス
第八十三條 用益者カ動產又ハ不動產ニ對シ相應ナル擔保ヲ供フル能ハス但當事者ノ間ニ別段ノ約束ナキトキハ左ノ如ク所辨ス
日用品其他ノ代替物ハ之ヲ公賣シ其代金ハ虛有者、用益者連名ニテ用益權ノ直接ニ存スル金錢ト共ニ供託物取扱所ニ供託シ又ハ之ヲ國債劵ニ換ヘ用益者ハ其利息ヲ收取ス
其他ノ動產ハ虛有者之ヲ占有ス
不動產ハ之ヲ第三者ニ賃貸シ又ハ虛有者カ賃借ノ名義ニテ之ヲ保存シ用益者ハ保持費用及ヒ第九十二條ニ記載シタル負擔ヲ扣除シテ貸賃ヲ收取ス
(南部委員)
「不動產ハ之ヲ」ト云テ「虛有者」ト云フ字ハアリマセンカ
(村田委員)
有ル方ガ宜シイ
(今村委員)
アレハ翻譯ノ間違デス
本條ハ原按ニ決ス
第八十四條朗讀ス
第八十四條 用益者カ擔保ノ一分ニ非サレハ供フル能ハサルトキハ引渡ヲ受ク可キ用益物ニ付キ其擔保ノ限度ニ應シテ選擇ヲ爲ス
本條ハ原按ニ決ス
第八十五條朗讀ス
第八十五條 用益者ノ保證人ヲ立ツルノ義務ハ設定ノ名義又ハ其後ノ行爲ヲ以テ之ヲ免除スル事ヲ得但用益者ノ無資力ト爲リタルトキハ此免除ハ其効ヲ失フ若シ用益者カ旣ニ收益ヲ始メタルトキハ其用益物ヲ虛有者ニ返還シ且前ノ條ニ從ヒテ處辨ス
本條ハ原按ニ決ス
第八十六條朗讀ス
第八十六條 父母ノ法律上ノ用益權ニ付テハ保證人ヲ立ツルノ義務ナシ
生存者間ノ贈與物ニ付キ贈與者カ自己ノ利益ノ爲メ留存シタル用益權ニ付テモ亦同シ
然レトモ父母又ハ贈與者ノ無資力ノ場合ニ於テハ用益金錢ニ對シ及ヒ第七十六條ニ從ヒ賣買ニ同シキ効力ヲ有スル評價額ニ對シテ保證人ヲ立ツルコトヲ要ス
(淸岡委員)
之ハ前回ニ削除ヲ主張シタガ行ハレナカツタ
(今村委員)
此第二項ノ如キハ民法中ノ外ニハアリマスマイト思ヒマス人事篇ニハアルカシレマセンガ
(淸岡委員)
伊太利ニモ佛蘭西ニモナイト云フ
(尾崎委員)
三項ヲ削除シテハドウダ
(尾崎委員)
トモカク刪ヅロウ
(北畠委員)
削ロウ
(渡委員)
責メテ一項クライ削ルガ宜シイ
(淸岡委員)
詰リ之ハ裁判官ノ心得テ居ルベキモノデ法律ト書クベキモノデナイ
(松岡委員)
併シ報吿委員ノ中ハ子ノ財產ヲ防グコトガ出來ルト云フ論ガ大變アツタ
(西委員)
人事篇ニ關係ガアルカラ削ルトシテモ假リニ削ルノダ
本條第三項ハ削除ニ決ス
第八十七條朗讀ス
第八十七條 用益者ハ用益物ノ元資本體及ヒ用方ヲ變スル事ヲ得ス
用益者カ收益ヲ始メタルトキハ善良ナル管理者ノ如ク用益物ノ保存ニ注意スルコトヲ要ス
用益者ハ其過失又ハ懈怠ヨリ生スル用益物ノ喪失又ハ毀損ノ責ニ任ス但虛有者ノ權利ヲ保護スル爲メ用益者ニ對シ第百七條ニ許可シタル處置ヲ爲スコトヲ妨ケス
(今村委員)
一項ハ四十六條ニ這入リマスカラ削リマス
本條第一項ハ削除ニ決ス
第八十八條朗讀ス
第八十八條 用益物ノ全部又ハ一分カ火災ニテ喪失シタルトキハ用益者ニ過失アリト推定ス但反對ノ證據アルトキハ此限ニ在ラス
(松岡委員)
之ハ酷イ
(南部委員)
コウシナケレバ仕方ガナイ
(北畠委員)
「反對ノ證據アルトキハ此限ニ在ラス」ダカラ宜イ
本條ハ原案ニ決ス
第八十九條朗讀ス
第八十九條 用益者ハ動產及ヒ不動產ノ小修繕ヲ負擔シ求償權ヲ有セス
大修繕ハ用益者ノ過失ニ因リ又ハ小修繕ヲ爲サヽルニ因リテ必要ト爲リタルトキニ非サレハ用益者之ヲ負擔セス
屋根若クハ重モナル牆壁ノ修繕又ハ重モナル梁柱若クハ基礎ノ變更ヲ建物ノ大修繕トス
石垣、堤塘及ヒ圍牆ノ改造モ亦之ヲ大修繕ト看做ス
(南部委員)
「動產及ヒ不動產ノ小修繕ヲ負擔ス但求償權ヲ有セス」トシタラ良カロウ之デハ文ヲ爲サズ
(村田委員)
但デハナイ樣ダ
(槇村委員)
「其求償權ヲ」トシタラ良カロウ
(渡委員)
「其」ガ宜シイ
本條ハ第一項「負擔シ」ノ下「其」ノ一字ヲ加フルコトニ決ス
第九十條朗讀ス
第九十條 過失又ハ懈怠ノ場合ノ外用益者ハ虛有者ヲ立會ハシメ鑑定人ヲシテ大修繕ノ必要ヲ證明セシメタル後虛有者其大修繕ヲ爲スコトヲ拒ミタルトキハ自ラ之ヲ爲スコトヲ得
用益權ノ終ニ於テ虛有者ハ右修繕ヨリ生シタル現時ノ增價額ヲ用益者ニ辨償スルノ責ニ任ス
若シ虛有者カ大修繕ヲ爲ストキハ用益者ヲ立會ハシメ鑑定人ヲシテ其必要及ヒ費用ヲ證明セシメ用益者ハ每年其費用ノ利息ヲ虛有者ニ辨償ス
(今村委員)
二項ノ「用益權ノ終リニ於テ」ト云フノハ惡ルイノデ御座イマス「用益權ノ消滅ノトキ」ト御直シヲ願ヒマス
(尾崎委員)
良カロウ
(南部委員)
鑑定人ヲシテ必要及ビ費用ヲ證明セシメト云フノハ宜シウ御座イマスカ
(今村委員)
「此場合ニ於テハ」ト云フノヲ報吿委員ガ入レ樣ト云フ論ガアリマシタ「消滅セシム」ト切テ「此場合ニ於テハ用益者ハ云々」トヤリ度イト云フコトデ御座イマシタ
(村田委員)
消滅セシメ「又用益者ハ」ダ
(槇村委員)
之デ分ツテ居ル
本條第二項「用益權ノ終ニ於テ」ヲ「用益權ノ消滅ノトキ」ト改ム
第九十一條朗讀ス
第九十一條 前條ノ規定ハ建物カ朽敗ノ爲メ崩頽シ又ハ事變ニ因リテ破壞シタル場合ニモ之ヲ適用ス但第百十條ニ定メタル如ク此等ノ事ニ因リテ用益權ノ消滅ヲ致ストキハ此限ニ在ラス
(南部委員)
宜シウ御座イマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第九十二條朗讀ス
第九十二條 用益物ニ賦セラルヽ租稅及ヒ每年通常ノ公課ハ其全國ニ係ルモノト一地方ニ係ルモノトヲ問ハス用益者之ヲ負擔ス
用益權ノ繼續間用益物ニ賦セラルヽコト有ル可キ非常ノ公課又ハ租稅ニ付テハ虛有者ハ其元本ヲ拂ヒ用益者ハ此時間每年ノ利息ヲ辨償ス
非常ノ公課又ハ租稅ト看做スモノハ左ノ如シ
第一 強要ノ借入
第二 增稅又ハ新稅但其法令ニ於テ臨時又ハ非常ノ名稱ヲ付シタルトキニ限ル
(今村委員)
第一項ハ之モ「負擔シ其求償權ヲ有セス」ト致シマス
(村田委員)
公課ト云フコトガアリマスカ
(三島委員)
拵ヘタノデ御座イマス
(尾崎委員)
公課ハ
(今村委員)
借上ゲ金ノ樣ナモノデス
(尾崎委員)
海防費ナドカ
(今村委員)
彼ハソウデハナイ
(淸岡委員)
「公課」ト云フノハ租稅ト云フコトニ用ヒマシタカ
(三島委員)
借入モ何モ公課デス
(淸岡委員)
是レ迄日本ニ使タコトハナイ
(槇村委員)
疏水工事ナドハ公課ダロウ
本條第一項「之ヲ負擔ス」ヲ「之ヲ負擔シ求償權ヲ有セス」ト改ム
第九十三條朗讀ス
第九十三條 用益者又ハ虛有者カ通常又ハ非常ノ租稅ヲ納メサルトキハ不動產ハ完全ノ所有權ニ於テ之ヲ差押ヘ且賣却シ其代金ヲ怠納租稅ニ充ツ若シ殘額アラハ其元本ハ虛有者ニ屬シ其收益ハ用益者ニ屬ス
此場合ニ於テ用益者ハ第百十三條ニ定メタル如ク其收益金額ニ付キ保證人ヲ立ツルコトヲ要ス
(今村委員)
二項ハ「ボアソナード」ガ削リマシタ
(尾崎委員)
完全ノ所有權ニ依テ之ヲ差押ト云フノハ
(今村委員)
所有權モ虛有權モト云フコトデス
(尾崎委員)
之ハ日本ノ現今ノ有樣ニ合テ居ル樣デス
(淸岡委員)
我々モ用益權ヲ存スルナラ「ボアソナード」ノ原案ノ通リニスルガ良イト云タ
(村田委員)
委員長ガ肯カヌ
(今村委員)
理窟ハ極點デス人ガ惡事ヲシタニ他ノ人ニ及ンデ損ヲサセル
(尾崎委員)
其レガ面白イノダ
(北畠委員)
以前決シタカラ動カサレヌト云フコトハアルマイ
(淸岡委員)
更ニ動議ヲ出シテ建議スレバ宜シイ
(西委員)
之ハ全會一致デ削ツタノデス其レガ再ビ活キテ來タノダカラ
(渡委員)
前ニハ之ヲ取テ見マシタケレドモ用益權ヲ置クコトニナツタラ之ヲ置クノハ論ハナイト云テ決シマシタ
(北畠委員)
削ツタ方ガ宜シイ
(松岡委員)
コウ云フコトハ全ク削ルベキモノナノダ其レヲ伊太利公使ガ云ツタトカ内閣ガ云ツタト云テ置クノダカラドウデモ良カロウ、一ツヤ二ツ削ツテモ仕方ガナイ
(槇村委員)
九十三條ヲ削ツテハドウデス
(南部委員)
削ルコトハ出來ナイ修正シナケレバナラヌ
本條第二項ハ削除ニ決ス
第九十四條朗讀ス
第九十四條 虛有者カ用益權設定ノ前ニ火災ニ對シ建物ヲ保險ニ付シタルトキハ用益者ハ每年保險料ノ利息ヲ拂フノ責ニ任ス但虛有者ハ火災ノ場合ニ於テ得タル償金ノ收益ヲ用益者ニ取ラシムルコトヲ要ス
若シ所有者カ用益權ノ存續中保險ヲ爲シテ其保險カ完全ノ所有權ニ關スルトキハ用益者ハ保險料ノ利息ヲ擔保スルノ義務ナシ然レトモ所有者ヨリ其自身ニテ支拂タル保險料額ヲ扣取シタル殘額上ニ非サレハ收益セス若シ又保險カ虛有權ノミニ關スルトキハ用益者ハ災害ノ場合ニ於テ償金ニ付キ何等ノ權利ヲモ有セス
海上ノ危險ニ對シ保險ニ付シタル船舶ニ付キ用益權ヲ設定シタルトキモ右ノ規定ヲ適用ス
(今村委員)
之ハ起案者ガ換ヘマシタ
(南部委員)
之ハ分ラス
(槇村委員)
一項ト二項トノ區別ガ分ラヌ
(南部委員)
用益權設定ノ場合ト後トダカラ分ル
本條ハ原案ニ決ス
第九十五條朗讀ス
第九十五條 又用益者ハ自己及ヒ虛有者ノ利益ノ爲メ自費ヲ以テ保險ヲ約スルコトヲ得此場合ニ於テハ用益者ハ償金ノ額內ヨリ自己ノ拂ヒタル保險料扣除シ其殘額ニ付テ收益ス
若シ用益者カ其用益權ノ價格ノミニ付キ建物ヲ保險ニ付シタルトキハ用益者ハ一人ニテ每年ノ保險料ヲ專擔ス
凍、雹其他天然ノ事變ニ對シ用益者カ收獲物又ハ產出物ヲ保險ニ付シタルトキモ亦同シ
本條ハ原案ニ決ス
第九十六條朗讀ス
第九十六條 第四十八條ニ定メタル如ク相續ノ包括又ハ包括名義ノ用益者ハ其得益ノ割合ニ應シ相續ノ債劵ノ利息ヲ負擔ス
右相續ノ負擔タル養料又ハ終身年金權ノ年金モ亦同上ノ割合ニ應シテ之ヲ負擔ス
(村田委員)
包括資產ノ上ニ出來ルト云フト全部バカリ外見ヘナイ四十八條ニ卽チ一切ノ動產不動產ト云フノヲ削ツタノハ惡ルイ
(南部委員)
四十八條ノ二項ハ「卽チ」トアル、コウ書イテモ註デ御座イマスカラ註ヲ削ツタ丈ケノ話シダ
(松岡委員)
民法デ包括資產ト云フノハ區別ヲ見テ加ヘナケレバナラヌ
(南部委員)
前回デハ註ダカラト云テ削ツタノダ
(今村委員)
「追訴」ト云フノハ裁判所構成法デ「訴追」トナツテ居ルソウデ御座イマスカラ「訴追」トスルガ良カロウト思ヒマス
(村田委員)
訴訟法デハ「訴ヘ」トシテアル
(渡委員)
構成法ノ方モ直ス說デハナイカ
(今村委員)
直スノガ必要ノモノハ直シマスガ其レ程デナイモノハ直シマセン
本條第二項「追訴」ヲ「訴追」ト改メ他ハ原案ニ決ス
第九十八條朗讀ス
第九十八條 虛有者カ元本ヲ負擔シ用益者カ其利息ヲ負擔ス可キ諸般ノ場合ニ於テハ左ノ三箇ノ方法ノ一ニ依リテ處辨ス
第一 虛有者カ元本ヲ拂ヒ用益者カ其每年ノ利息ヲ拂フ
第二 用益者カ元本ヲ立替ヘ虛有者カ用益權ノ終ニ之ヲ用益者ニ償還ス
第三 要求ヲ受ク可キ金額ニ滿ツルマテ用益財產ノ一分ヲ賣却ス
(今村委員)
第二ノ「終リニ」ハ「消滅ノトキ」ト致シマス
(村田委員)
左ノ三箇ノ方法ニ依テト云テ一、二、三ト號ヲ書イタ例ガアリマシヨウカ每時ノ例ハ「左ノ例ニ依リテ處辨ス」トアル
(槇村委員)
ソレガ良カロウ
本條ハ左ノ如ク決ス第一項「三箇ノ方法ノ一ニ依リテ」ヲ「例ニ依リテ」ト改ム第二號「用益權ノ終ニ」ヲ「用益權消滅ノトキ」ト改ム
第九十九條朗讀ス
第九十九條 用益權ノ繼續間用益不動產ニ第三者カ虛有者ノ權利ヲ害ス可キ侵奪ヲ加ヘヌハ營作ヲ爲ストキハ用益者ハ其事實ヲ虛有者ニ吿發スルコトヲ要ス若シ此吿發ヲ爲サヽルトキハ爲メニ生シタル總テノ損害及ヒ第三者ノ取得スル時効又ハ占有權ニ付キ其責ニ任ス
(村田委員)
之ハ不動產ト云フト大變廣クナル元トノハ土地トアツタ
(南部委員)
其レハ翻譯ノ間違ヒダ
(松岡委員)
「吿發」ト云フ字ハ變ヘラン
(三島委員)
「吿知」トカ何トカ云ツタラ宜シウ御座イマシヨウ
(今村委員)
吿知ハ訴訟ニ在ルカラ使ヘヌガ之ハ刑法ト同ジニナルカラ變ヘル方ガ宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第百條朗讀ス
第百條 虛有者カ原吿又ハ被吿トシテ用益物ノ完全ノ所有權ニ係ル訴訟ヲ爲ストキハ用益者ヲ其訴訟ニ召喚スルコトヲ要ス
用益者ハ右訴訟費用ノ利足及ヒ收益ノミニ關スル訴訟ノ費用ヲ負擔ス然レトモ用益權ノ設定證書ヲ以テ用益者ニ追奪擔保ノ權利ヲ與ヘタルトキハ用益者ハ總テノ訴訟費用ヲ負擔セス
如何ナル場合ニ於テモ用益者ハ虛有權ノミニ關スル訴訟ノ費用ヲ分擔セス
(槇村委員)
宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第百一條朗讀ス
第百一條 訴訟ニ參加ス可クシテ之ニ參加セシメラレサリシ虛有者又ハ用益者ハ其判決ノ害ヲ受クルコト無シ然レトモ事務管理ノ規則ニ從ヒ其利ヲ受クルコトヲ得
(村田委員)
判決ノ害ヲ受ケルト云フノハ惡ルイダロウ直ニ判決ノ害ヲ受クルコトハナイ
(今村委員)
之ハ先キノ契約篇ニモアルガ勝ツタ者カ負ケタ者ガ害トナツテ居リマスガ害ト云フ字ヲ削ロウト思ヒマシタガドウシテモ削ラレマセン
本條ハ原案ニ決ス
第百二條朗讀ス
第四款 用益權ノ消滅
第百二條 用益權ハ第四十四條ニ記載シタル所有權消滅ノ原因ト同一ノ原因ニ由リテ消滅スルノ外尙ホ左ノ原因ニ由リテ消滅ス
第一 用益者ノ死亡
第二 用益權ヲ設定シタル期間ノ經過
第三 用益者ノ明示シタル用益權ノ抛棄
第四 三十ケ年間繼續シタル不使用
第五 用益者ノ收益ノ濫委ニ因ル用益權ノ廢罷
(村田委員)
第三ノ抛棄ハ前ニ異議トナツテ居ル四十四條デ決シテ居ル
(今村委員)
權利ノ抛棄、物ノ異議トナツテ居リマス其トキ說明シタ積リデス
本條ハ原案ニ決ス
第百三條朗讀ス
第百三條 數人ノ終身ヲ期シテ同時ニ且不分ニテ用益權ヲ設定シタルトキハ死亡者ノ持分ハ生存者ヲ利ス其用益權ハ最後ノ死亡者ノ死亡ニ因ルニ非サレハ消滅セス
(村田委員)
「終身ヲ期シテ」ハ惡ルイデハナイカ
(南部委員)
此間ハ原按ノ意味ガ是レダト云フコトニナツタ
(松岡委員)
原案ノ意味ハ是レダ唯委員長ガ終身ヲ期セズシテヤツタトキハ何處デ扱フト云フテ居ルノダ
(今村委員)
未ダ「ボアソナード」ノ答ヘヲ得マセン
本條ハ原案ニ決ス
第百四條朗讀ス
第百四條 無形人ノ爲メニ設定シタル用益權ハ三十个年ノ期間ヲ以テ消滅ス但三十个年ヨリ短カキ期間ヲ以テ設定シタルトキハ此限ニ在ラス
(尾崎委員)
宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第百五條朗讀ス
第百五條 用益者ハ用益權ノ抛棄ヲ以テ其抛棄前ニ履行セサリシ義務ヲ免カルコトヲ得ス
又其抛棄ハ用益者ノ權ニ基キ物ノ上ニ權利ヲ取得シタル第三者ヲ害スルコトヲ得ス
(今村委員)
二項ノ事柄ハ甚ダ六ケ敷ウ御座イマス此前契約篇ノトキモ此事ノ書回ハシ樣ガ發明ガ出來ナイデ胡麻化シテ此議場ヲ通リマシタガ用益者ノ權ニ基クト云フノハ用益者ノ頭マノ上カラト云フノデ假令バ私ガ用益者デ貴君ト約束シテ讓ツテモ用益者ノ方カラ讓ツタト云フコトガ云ヘル處ガ財產差押ヘデ用益權ヲ取テ仕舞ツタ其レハドウシテ取ツタカト云フト用益權ニ基ヒテ其權利ヲ土臺トシテ貴君ガ權利ヲ得タノデス何モ相談ノ上デ御讓リヲシタトキデナクモ行ケルト云フノデ元トハ「用益者ヨリ得タル」トアリマシタガ其人ヨリ得タルトハ聞ヘマセン是レカラ先キニ幾ラモアリマス再調査デ考ヘマシタガ先ヅ權ニ基キト云ヘバ說明サヘスレバ分ル、私ガ用益權ノ家ヲ抵當ニシテ用益權ガ消ヘルカラ抵當ガナクナルカト云フトソウデナイ矢張リ存シテ居ル
(槇村委員)
良ク分ツタ
本條ハ原案ニ決ス
第百六條朗讀ス
第百六條 不使用ハ未成年者ニモ其他ノ人ニシテ之ニ對シ時効ノ經過スルコトヲ得サル者ニモ對抗スルコトヲ得ス
免責時効ニ關スル此他ノ規則ハ不使用ニ之ヲ適用ス
(南部委員)
「不使用ハ對抗スルヲ得ス」デ宜シウ御座イマスカ「之ヲ」ト云ハンデ宜シウ御座イマスカ
(今村委員)
之ハ二章ノ文例デス
(尾崎委員)
未丁年者ノ間デハ年限ヲ數ヘヌノダ
(今村委員)
ソウデス
本條ハ原案ニ決ス
第百七條朗讀ス
第百七條 用益者カ用益物ニ重大ノ毀損ヲ加フルトキ又ハ保持ノ欠缺若クハ收益ノ濫委ニ因リテ用益物ノ保存ヲ危フスルトキハ裁判所ハ用益權消滅ノ他ノ原因ノ其一ノ生スルマテ用益者ノ費用ヲ以テ用益物ヲ監守ニ付シ又ハ此時間虛有者ヨリ每年用益者ニ拂フ可キ金額若クハ果實收額ノ部分ヲ定メ虛有者ノ爲メ用益權ノ廢罷ヲ宣言スルコトヲ得
裁判所ハ右ト同時ニ其年ノ果實及ヒ產出物ノ分割ヲ定ム
將來ニ於テ用益者ニ拂フ可キ金額又ハ果實ノ價額ハ用益者日割ヲ以テ之ヲ取得ス
用益權消滅ノ時ノ計算ハ其年用益權ノ繼續シタル日數ニ應シテ之ヲ爲ス
(今村委員)
末項ノ「收得ス」カラ以下ヲ「ボアソナード」ガ削リマシタ
(村田委員)
ドウ云フ譯デ削ツタカ
(南部委員)
分リ切ツタコトダ
本條末項ハ削除ニ決ス
第百八條朗讀ス
第百八條 用益權ノ廢罷ハ其廢罷前ニ用益者ノ加ヘタル損害ノ賠償ヲ妨ケス
(尾崎委員)
宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第百九條朗讀ス
第百九條 第百七條ニ揭ケタル場合ヲ除クノ外用益權ノ消滅ノ時猶ホ土地ニ附着スル果實及ヒ產出物ハ虛有者ニ屬ス其栽培又ハ作業ノ費用ハ之ヲ償還スルコトヲ要セス但不動產賃借人カ果實ニ付キ旣ニ得タル權利ヲ妨ケス
(今村委員)
本條ヲ百十五條ノ次ヘ入レマス此條ハ用益權ノ消滅シテ云ヒ分ナシデ居タトキハ如何スルト云フノデ前後ヲ見ルト一樣用益權ガ成リ變ツテ來テ用益權ノ存シテ居ルノヲ書イテアル中ヘ狹ツテ居ルノハ可笑シイカラ一番終リヘ入レマス
(南部委員)
十五條ハ削レルカラ十四條ノ次ギニ入ルノダロウ
(今村委員)
十五條ヲ削除スルコトハ無論皆サンノ贊成ヲ得ルダロウト思ヒマス
本條ハ第百十五條ノ次ギニ入レルコトニ決ス
第百十條朗讀ス
第百十條 事變又ハ朽敗ニ因リテ用益權ノ存スル建物ノ全部カ毀滅シタルトキハ用益者ハ土地ニ付テモ材料ニ付テモ收益スルコトヲ得ス但建物カ用益權ノ存スル土地ノ從タルトキハ此限ニ在ラス
本條ハ原案ニ決ス
第百十一條朗讀ス
第百十一條 虛有者又ハ用益者ノ保險ニ付セシ建物カ燒失シタルトキハ用益者ハ第九十四條ニ記載シタル區別ニ從ヒ其償金ニ付キ收益ス
(村田委員)
之ハ重複ダ九十四條ニ同ジコトガアルカラ
(渡委員)
入ラヌ
(南部委員)
削除スルコトヲ云テヤツテ「ボアソナード」カラ返事ガ來テ居ル
(槇村委員)
削リマシヨウ
(今村委員)
之ハ此次ノ會ノトキ迄置キマス
(尾崎委員)
ソレガ宜シイ
本條ハ刪除ノ說アリト雖モ次回迄假リニ存スルコトニ決ス
第百十二條朗讀ス
第百十二條 用益物カ公用徵收ヲ受ケタルトキハ用益者ハ其償金ニ付キ收益ス
(槇村委員)
之ハ宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第百十三條朗讀ス
第百十三條 〔改正第一項〕用益者ハ前二條ニ憑リ其收益スル金額ニ對シ保證人ヲ立ツヘシ但右ノ場合ヲ豫見シテ保證人ヲ立ツルノ義務ヲ免除セラレタルトキハ此限ニ在ラス
(新第二項)第九十三條ニ規定シタル場合ニ於テモ亦同シ
(今村委員)
百十三條ハ「ボアソナード」ガ修正シテ居リマス其レカラ「憑リ」ハ「依リ」ト改メマス「立ツヘシ」ハ「立ツルコトヲ要ス」ト致シマス
(村田委員)
詰リ二項ガ加ハツタニ過ギナイ
(今村委員)
「免除セラレタル」ヲ「免除シタル」トシマス
(槇村委員)
「其」ト云フ字ガアリマスカ
(今村委員)
アリマセン
(西委員)
「特ニ其」ト云フ字ガアリマスカ
(今村委員)
アリマス「豫見シテ特ニ其義務ヲ免除シタルトキハ此限ニ在ラス」ト致シマシヨウ
本條第一項ハ左ノ如ク決ス
用益者ハ前二條ニ依リ收益スル金額ニ對シ保證人ヲ立ツルコトヲ要ス但右ノ場合ヲ豫見シテ特ニ其義務ヲ免除シタルトキハ此限ニ在ラス
第百十四條朗讀ス
第百十四條 湖池ノ用益權ハ其永久乾涸スルニ至リシトキハ消滅ス
之ニ反シテ土地ノ用益權ハ水ノ永久其土地ヲ浸沒スルニ至リシトキハ消滅ス
(槇村委員)
宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第百十五條朗讀ス
第百十五條 畜群ノ用益權ハ全群滅盡スルニ至リシトキハ消滅ス
若シ卒然ノ事變ニ因リテ滅盡シタルトキハ用益者ハ其皮ヲ虛有者ニ還付スルコトヲ要ス
(今村委員)
之ハ刪除ノ建議デ御座イマス理由ヲ申シマセンデモ贊成ヲ得ルダロウト思ヒマスガ此條ガ何ゼ這入ツテ居ルカト云フト二項ヲ云ヒ度イ爲メ這入ツテ居ルト思フ所有權ガアルノガ滅失スレバ所有權ガ消滅スルト云フコトガアリマスカラ云ツタノデアリマスガ二項ヲ云ヒ度イ爲メニ一項ヲ云テアルノデス一項ヲ云ヒ出スト牛ガ死ンダラ角ヲ返ヘセ馬ガ死ンダラ骨ヲ返ヘセト云フ樣ニナル皮ダケデハ足リナイ之ハ羊ヲ目途トシテ云ツタノデアリマシヨウカ、家ガ倒レルト材木ヤ煉瓦ヤ瓦ヲ返ヘセト云フ樣ニナリマスカラ置クナレバ弊ガアルカラ削リ度イト思ヒマス
(槇村委員)
削ツテ宜シイ
本條ハ削除ニ決ス
(淸岡委員)
前ノ百九條ハ此處ヘ這入ルノデシヨウ
(今村委員)
ソウデス
第百十六條朗讀ス
第二節 使用權及ヒ住居權
第百十六條 使用權ハ使用者及ヒ其家屬ノ需用ノ程度ニ限ルノ用益權ナリ
住居權ハ建物ノ使用權ナリ
使用權及ヒ住居權ハ用益權ト同一ノ方法ニ因リテ成立シ及ヒ同一ノ原因ニ由リテ消滅ス
(南部委員)
宜シ
本條ハ原案ニ決ス
第百十七條朗讀ス
第百十七條 使用權及ヒ住居權ノ程度ヲ定ムル爲メ使用者ノ家屬ヲ組成スト看做サルヽ者ハ使用者ト同居スル正當ノ配偶者其正當、養、私ノ卑族親又ハ尊族親及ヒ使用者又ハ此等ノ親屬ノ隨身僕婢ナリ
(今村委員)
「尊族」ノ「族」ノ字ハ「屬」ノ字ノ誤リデ御座イマス
(南部委員)
「看做サル」ハ「看做ス」トシ樣
(村田委員)
「親族」モ「屬」ノ字デ宜シイ
(今村委員)
「家屬」ノ「屬」ハ屬字ノ「屬」ノ字デ、アレハ血統ガナクモ何デモ宜シイ「親屬」ハ血統ノ者バカリデス
(村田委員)
所ガ唐律デモ明律デモ皆「屬」ノ字ダ日本ノ刑法モ「屬」ノ字ダ
(三島委員)
之デ宜シイ積リデス
(淸岡委員)
隨身ノ俸婢迄這入ルニ兄弟ガ這入ラヌト云フノハ良クナイト云フ論ガアリマシタ
(槇村委員)
兄弟モ這入テ居ルダロウ
(西委員)
之デハ這入ラヌ
(松岡委員)
前回ニ傍系親族ヲ加ヘルト云フコトハ親族篇デ定メル云フコトニナツテ居ル
(淸岡委員)
人事篇デ兄弟姉妹ガ這入レバ無論此處ハ這入テ來ル
(南部委員)
ソレデ宜シイ
本條ハ「看做サル」ヲ「看做ス可キ」ト改メ「卑族」ハ「卑屬」ト改メ「尊族」ハ「尊屬」ト改メ「親屬」ハ「親族」ト改ム
第百十八條朗讀ス
第百十八條 設定ノ名義又ハ其後ノ約束ヲ以テ土地ノ使用權ヲ行フノ方法ヲ定メス又ハ住居權ヲ行フ可キ建物ヲ定メサルトキハ當事者立會ノ上裁判所其意見ヲ聽キテ之ヲ定ム
(尾崎委員)
使用ハ定マツテ居ルガ商法ハ定マツテ居ラヌ
本條ハ原案ニ決ス
第百十九條朗讀ス
第百十九條 使用權及ヒ住居權ハ之ヲ讓渡シ又ハ之ヲ賃貸スルコトヲ得ス
(渡委員)
宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第百二十條朗讀ス
第百二十條 使用權又ハ住居權ヲ有スル者ハ用益者ト同シク動產ノ目錄及ヒ不動產ノ形狀書ヲ作リ且保證人ヲ立ツルノ責ニ任ス
又用益者ト同一ノ注意ヲ爲シ及ヒ自己ノ過失ニ付テハ之ト同一ノ責ニ任ス
又其收益ノ割合ニ應シ用益者ト同シク修繕ノ費用每年ノ公課及ヒ訴訟ノ費用ヲ分擔ス
(村田委員)
「公課」ト云フノハ惡ルイ
(南部委員)
「公課」ト云フノハ租稅ガ這入ラヌカラ足ラヌ樣ダ九十二條ガ一緒ダカラ宜シイガ分ケルト變ニナル
(村田委員)
「租稅公課」トシ樣
(南部委員)
「每年ノ」ハ入ラナイ
(村田委員)
租稅ノ下ヘ點ヲ打ツガ宜シイ
(南部委員)
「修繕費用、租稅、公課、訴訟費用」トシ樣
(今村委員)
其レガ宜シイ
本條末項ハ左ノ如ク改ム
又其收益ノ割合ニ應シ用益者ト同シク修繕費用、租稅、公課、訴訟費用ヲ分擔ス