旧民法・法例(明治23年)

法律取調委員会 民法草案再調査案議事筆記 第2回

参考原資料

備考

  • 未校正のテキストデータです.
民法財產編再調査案第二回議事筆記
自第三十一條至第四十五條
(尾崎委員)
始メマセウ
第三十一條朗讀ス
第一部 物權
第一章 所有權
第三十一條 所有權トハ自由ニ物ノ使用、收益及ヒ處分ヲ爲スノ權利ヲ謂フ
此權利ハ法律又ハ約束ヲ以テスルニ非サレハ之ヲ制限スル事ヲ得ス
(第三項削除建議)
(今村報吿委員)
本條ハ三項ヲ削除ノ建議ガアリマスガ之ハ獲得編ニ謂ツテアリマスカラデ御座イマス
(松岡委員)
前項ヲ二ツニ分ケタハ至極宜シフ御座イマス且三項ヲ削ツタノハ立派ナ者デアリマス
(尾崎委員)
感服仕リマス
(槇村委員)
主意ガ違ヒバ致シマセンカ
(西委員)
同ジ事ニナリマス
(今村報吿委員)
所分スルト謂フト從フト謂フノハ定義中ノ者ニナツテ例モ條件ガアル樣ニ見エル所有權ト謂フ者ハ必ズ極ツタ者デ無イ法律ガ出テ來テ制限ヲ附ケナケレバナラントキガアルガ附ケラレ無イトキハ無イカラ定義中ニ入レラレ無イ又法律約束ヲ以テニ非ザレバ云々ト謂フモ所有權ヲ重ンジタ意味ヲ見セテアルノデ御座イマス
(南部委員)
廣クト謂フ字ヲ自由ト謂フ字ニ易ヘマスカ
(今村報吿委員)
固リ自由トアルデ御座イマス
(淸岡委員)
斯フ書クト所有權ハ法律外ノ者デアルト其所有權ハ法律約束ヲ以テスルノデナケレバ決シテ或事ガ出來ント謂フ理窟ニ見エマス
(松岡委員)
事柄ハ左樣デアリマス法律ガ決シテ所有權ヲ與ヘタノデハアリマセン
(淸岡委員)
所有權デモ法律外デ無イ所有權ヲ定ムルニハ法律ヲ以テ所有權ト謂フ者ノ制限ヲ拵ヘテ所有權ト謂フ者ハ加樣ナ者ト謂フ事ヲ法律デ定メタニ因テ所有權ハ確定シテ確定ニ到ルノデアリマセウ
(今村報吿委員)
夫ハ制限デハ無イ認ル丈デアリマス
(南部委員)
所有權ハ天然ニ出來ルト謂フ事カ
(淸岡委員)
所有權ハ物權人權ナリ法律デ定メルノデアリマス
(今村報吿委員)
法律デ拵ヘハスルノデス
(松岡委員)
天然ノ權モ法律ガ認メレバ法律上ノ力ハ一般ダガ茲デ法律ト謂フノハ法律ノ制限ニ從ヒ合意ノ制限ニ從ヒト並ベテ掛ルトナル貴君ノ說ニスルト合意ガ始メテ許スト謂ハナケレバナラン樣ニ成テ來マス夫ガ違ヒマス
(淸岡委員)
修正ノ方ガ宜シイ
(松岡委員)
君ト雖モ贊成ハ間違ヒナイ二項目ヲ削ツタモ好イデセウ
(今村報吿委員)
三項ノトシタノハ間違ヒデ二項デ御座イマス
(尾崎委員)
宜シフ御座イマセウ
本條ハ原案ニ決ス
第三十二條朗讀ス
第三十二條 不動產ノ所有者ハ適法ニ認定シ及ヒ宣言シタル公益ニ因由シ公用徵收法ニ從ヒテ定メタル償金ノ拂渡ヲ豫メ受クルニ非サレハ公用徵收ノ爲メ其所有權ノ讓渡ヲ強要セラルヽ事無シ
動產ノ公用徵收ハ每回定ムル特別法ニ依ルニ非サンハ之ヲ行フ事ヲ得ス
官府ニ屬スル先買權及ヒ徵發令ヲ以テ定メタル物ノ徵發又ハ凶災ノ時ニ行フ物ノ徵求ニ付テハ本條ノ例ヲ用ヒス
(南部委員)
之ハ一向分ランノデス
(松岡委員)
所有權徵收法ト素トアリマス然ルニ今度ハ公用徵收法トナリマシタカ
(今村報吿委員)
所有權何トカ公用徵收法ト謂フノガ先ニ幾個モ出テ來マスカラデ言語ガ長イカラ公用徵收法ト謂フ積デアリマス
(松岡委員)
言語ノ長イノハ構ヒマセン
(今村報吿委員)
公ケノ利益ヲ原因トシテ云々トアルノデアリマス假令バ所有權消滅ト謂フトキ公用徵收ト謂フト一言ニナルガ茲ガ始メデアリマスカラ
(松岡委員)
上ノ方ノハ合意デ遣ツタトキ下ハ所有權徵收法ト遣ルト上ハ呼出ノ爲ニ公用ト遣リマシタカ
(今村報吿委員)
長ク書クノヲ止シテ短ク公用徵收法ト遣ツタノデアリマス
(松岡委員)
法律ノ名ニナルカラ何フデ御座イマセウ今ノ成文法ニ泥ミ過ギタ話デハアリマセンカ唯今ノ法律ノ名ニスレバ公用ニ因由シテト謂ツテ土地買上規則ト謂フ事デスカ左樣ハ往キマセンカ
(今村報吿委員)
公益ニト謂フト今ノ所デハ派ツ切リ極リマセンガ地方ノ府縣ノ樣ダト縣令ガ願ヒ立テ内務大臣ガ許シマスガ佛蘭西ノ例デ中央政府ガ道ヲ附ルトカ謂フハ公用ダト或ハ所ニ依ルト國會ガ許サナケレバナリマセン英國ハ國會ガ許スノデアリマス
(村田委員)
英國ハ憲法ニ因リ國會ガ許スノデアリマス
(今村報吿委員)
日本モ日ナラズ出來ルデアリマセウ適法ニ認定シハ其法律ニ認定シデアリマス
(松岡委員)
其所ハ宜シイ
(今村報吿委員)
公用ト公益ト謂フ適法ノ認定セランスデアリマス
(松岡委員)
公益ニ因由シテ所有權徵收法ニ從ヒトシテハ如何
(今村報吿委員)
公用ト謂フ文字ハ見セタイノデアリマス
(松岡委員)
公益ニ因由シナケレバ外ニ有リ樣ハ無イデセウ
(村田委員)
公益ニ因由シナケレバ所有權ノ讓渡ハ出來マセン
(今村報吿委員)
公用徵收法トハ外ニ謂ツテ無イノデ外ハ公用徵收法ト謂フノハ獨立シテ往テデ設令ハ所有權ハ左ノ原因ニ因テ消滅スト謂フニ公用徵收ト謂フノハ一ツアル其處ニ始終出ル品物デアリマスカラ長イ事ヲ謂フト前後ノ文章ガ分ランカラ短クシタノデス
(松岡委員)
所有權徵收法トシテハ如何
(今村報吿委員)
公益ニ因由シテ法律ニ定メタルト謂ヘバ暗ニ公用徵收法トナルノデス
(南部委員)
所有權徵收ト云フヨリ公益徵收法ト謂ツタ法ガ宜シイ
(今村報吿委員)
公川ノ爲メ徵收ト謂ツタ方ガ宜シイ上ノ公益ニ因由シハ下ノ公用ニ變ツタ事ハアリマセン
(槇村委員)
私ハ解リマセン
(今村報吿委員)
公用ニ因由シナケレバ取揚ラレナイト謂フ事ヲ謂ツタノデアリマス
(槇村委員)
公用徵收法ト謂フノハ外ニアリマセン
(今村報吿委員)
公用微收法ト重ナルノデアルト謂フナラバ此處デ名ヲ附ケズ一特別法ト謂ツテハ如何
(槇村委員)
公用徵收法ト謂フハ宜シイ上ノ公益ニ因由シト謂フハ入ラント思ヒマス
(村田委員)
夫ハ入用デアリマセウ
(南部委員)
入用デアリマセウ此處ハ特別法ト謂フヨリ公用徵收法ト遣ツタガ好イデアリマセウ
(松岡委員)
所有權ト公用ノ例デ所有權ハ自由ニ所分スル併シ公用ノ原因カラ所有權ヲ徵收ト謂フノデアリマス
(今村報吿委員)
所有權徵收ト謂フノハ漠然デアリマセウ
(村田委員)
土地買揚規則ニ償抔ノ事モ皆書テアリマス
(今村報吿委員)
公用徵收ト謂ヒタイノデス
(槇村委員)
下ニ徵收法ト謂フト公用徵收法ト謂フハ公益ニ依ラン事モアリマスカ
(今村報吿委員)
左樣デアリマセン
(槇村委員)
無イカラ分リマセン
(今村報吿委員)
假令バ今迄ハ縣令ガ指令ヲ以テ極メマシタガ佛蘭西ノ例デハ裁判官ガ極メル法律ガアリマシテ夫ハ公用徵收法ニ限ル夫ニ從ツテ定メタル者デアリマス
(槇村委員)
公用徵收法ハ必ズ公益ニ因由シタ事デアリマスカラ夫デ上ノハ入ルマイト思ヒマス
(今村報吿委員)
上ヲ取ルノハ如何ニモ惜イノデアリマス
(松岡委員)
卽チ平タク之ヲ謂フト公益ノ爲ナレバ所有權ハ否應無シニ取ラレル條件ガ粘着イテ居ルノデ詰リ其目的ノ主タル者ハ公益ニ因由シタル爲ナラバト謂フノデアリマス
(南部委員)
公益ノ爲メ定メタ云々ト致シマスカ
(今村報吿委員)
何カ無イト困ルノデ寧ロ名ヲ附ケズニ謂ヘバ又宜シイノデ所有權徵收ト名ガ附クト困ルノデアリマス
(尾崎委員)
簡短デ宜シイ意味ニ於テ違ヒハ無イガ松岡君ノ議論ハ重複スルト謂フ嫌アルニ止テ左シタル意味ニ區別ハアリマセン公用徵收法ハ一ノ法律ト見タテ宜シイ夫ハ何ニ因ルカナラバ公益ニ因由スルト謂フノデ間違フ事ハアリマセン
(槇村委員)
公用徵收法ト謂フ者ハ公益ノ爲ニ土地ヲ買揚ルト謂フ事ヲ書イタノデアリマス
(今村報吿委員)
法律ノ名ガ可笑イト謂フノデアリマス
(松岡委員)
公用徵收法ニ定メタ者ニ非ザレバ公用徵收法ノ爲ト謂フノモ可笑イ
(今村報吿委員)
公用徵收ト謂フ事柄ガアルノデアリマス
(村田委員)
公用ノ爲ニ徵收スルト謂フノデ又一方ハ公益ニ原由シナケレバナラント謂フノデアリマス
(尾崎委員)
宜シフ御座イマセウ
(西委員)
宜シイ
(松岡委員)
公益ニ因由シテ何々ニ非レバ國デバルトマン、コンシユーヌノ爲メ強要セラルル事ナント謂ツテ國府縣抔ト謂フ者ノ行フト謂ツタノデ公用ト謂フ字ニナシタカラ重ナツタノデアリマス
(今村報吿委員)
非レバ公用徵收ノ爲ト謂フヲ下ノ徵收ヲ拔クト謂フ御說ハ御同意致シマス
(淸岡委員)
私ハ御同意ヲ致シマセン之ヲ拔テ見ルト文章ガ惡クナリ受ルト謂フニ非レバト謂フノハホンノ條件ヲ謂テ來タノデ公用徵收ノ爲ニ出ルニ非レバ公用徵收ノ爲ト謂フノデアルヲ拔イタラ何ノ爲ニナルヤラ分リマセン
(松岡委員)
驚キ入ツタ御說デ左樣云フ事ハ條件デハアリマセン
(槇村委員)
夫ハ分リキツテ居リマス
(今村報吿委員)
文章ハ分ルノデアリマス
(尾崎委員)
文章ハ甚ダ好フ御座イマス
(淸岡委員)
公用徵收ノ爲デモ之丈ノ條件ガナケレバ取ラルル事ハ無イト謂フノデアリマス
(松岡委員)
左樣見ルカラ可笑イノデアリマス所有權ハ強イ者デアリマス
(淸岡委員)
公用徵收デハ一モ二モ無ク取ラルルガ左樣デ無イ上ニ之丈ノ者ニアラザレバ公用徵收ノ爲メト雖ドモ強要セラルル事無シト謂フノデアリマス
(今村報吿委員)
仕舞ノ公用徵收ト謂フヲ削ツテハ如何
(渡委員)
削ツテモ宜シフ御座イマセウ
(槇村委員)
之ハ驚キ入リマス
(村田委員)
公用徵收法デ無論取ラルル併シ乍ラ不動產所有者ハ償金ヲ受取ントキハ渡サンデモ好イト謂フノデアリマスカラ駄目ハ謂ハナケレバナリマセン
(今村報吿委員)
直譯デハ不動產所有ハ公用徵收ノ爲ニ非レバ所有權ハ讓渡ヲ強要セラルル事ナシト先ヅ謂ツテ跡ヘ夫デモ適法ニ認定シ云々ト謂フ事ヲ謂ツテアルノデアリマス
(淸岡委員)
左樣ナケレバナリマセン
(今村報吿委員)
日本文章ハ頻リ返サンケレバ分ランデアリマス
(淸岡委員)
私ハ實ニ歎息致シマス文法ナシノ文章ニ成ツテ仕舞イマス
(南部委員)
淸岡君ノ御說ガ宜シイ公用ノ爲メハアルニ違イナイ
(村田委員)
決シテ削ル事ハ出來マセン
(淸岡委員)
松岡君ノ始メノ論ハ重ナルヲ來ルト謂ヒ甚ダ面白ク無イト顔ヲ背ケテ聽イテ居リマスガ下ノ公用徵收ヲ消スト謂フハ驚キイツタ御說デアリマス
(西委員)
公用徵收法ト謂フ者ガ出タ限リハ入ラン事ニナリマス
(南部委員)
公用徵收ト謂フ名前デアリマス
(淸岡委員)
上ガ行ハレタラ下モト謂フ事ハアリマセン
(村田委員)
之ハ委員長ノ出席迄措ク事ニ致シマセウ
(松岡委員)
事柄ハソンナ重イ者デハアリマセンソンナ事ヲ謂フト會ヲ罷メナケレバナリマセン
(村田委員)
夫ナラバ削ランデモ宜シイ
(渡委員)
私ハ削ル方ガ贊成デアリマス
(今村報吿委員)
之ハ箕作君ノ御意見ヲ聞ク事ニ致シマセウデハアリマセンカ
(村田委員)
夫ガ宜シフ御座イマセウ
(淸岡委員)
松岡君ノ說デ削ツタト謂フト大キニ名譽ニ關係シマス
(松岡委員)
公益ニ因由シ公用徵收法ト謂フノデ論モ出テ分ランカラ公益ニ因由シ公用徵收法ト謂フハ可笑イカラ公益ニ因由シテ所有權微收法ト謂ヘバマダ宜シイ公益ニ因由シ公用徵收法ト直グアル然ルニ此丈ハ都合ガ惡イト謂フノデ私ノ改メル說ガ立ニナレバ因由シテ徵收法ニ定メ云々トシテ下ニ「ニ非レハ其所有權ヲ強要セラルル事無シ」トシテハ如何
(北畠委員)
此儘存シテ置イタ方ガ宜シイ
(松岡委員)
夫デハ委員長ノ出席迄ノ事ニ致シマセウ
(渡委員)
考テ聞クモ宜シイガ姑ク此デ置ク事ニシマセウ
(箕作委員)
委員長ハ決シテ削ルトハ謂ヒマスマイ
(尾崎委員)
先ヅ再考スル事ニ致シマセウ
本條ハ委員長缺席ニ就キ未定
第三十三條朗讀ス
第三十三條 所有者ハ償金ヲ得ルニ於テハ公用工事ノ便利ノ爲メ使有物ノ一時ノ占據ヲ強要セラルヽ事有リ
(尾崎委員)
之ハ異議ハアリマセン
(村田委員)
之ハ分リ易クナツテ居リマス
(今村報吿委員)
私ガ心配仕マスルハ文字ヲ削ラント讀ミ好クナランノデ又削ルニハ「ボアソナード」ハ妙ナ癖ガアリマシテ何ニハ則チ何ト謂フ丁寧ニ謂ンデモ好イ事マデ書イテ居ル譯デアリマスケレドモ謂ハナケレバナランノモアリマスカラ容易ニ筆ヲ執レナイノデアリマシタ
(淸岡委員)
之ハ名修正デアリマス
(槇村委員)
前ニハ償金ヲ得テトアリマシタガ於テハト改メタルハ如何
(今村報吿委員)
得テト謂フヨリ得ルニ於テノ方ガ聢カリ致シマセウ
(三島委員)
辭ガ聢カリスルト謂フノデ貰フ以上ト謂フノデアリマス
(淸岡委員)
之ハ中々容易ニ出來ンノデ名修正デアリマス
(尾崎委員)
先ニ往キマセウ
本條ハ原案ニ決ス
第三十四條朗讀ス
第三十四條 物料ノ採掘、道路ノ劃線、樹木ノ伐採、水其他ノ物ノ收取ニ付キ全國又ハ一地方ノ公益ノ爲メ設ケタル地役ハ行政法ヲ以テ之ヲ規定ス
(三島委員)
一般ト謂フハ何處モ易エル積リデアリマシテ或ハ全國ト謂フ時モアリマスカラデ御座イマス
(南部委員)
之ハ大變宜シフ御座イマス
(松岡委員)
公益ト謂フ字ヲ公用ト直シテアリマスガ原ノ儘公益ニシテ差支ハアリマスマイ
(南部委員)
夫ハ三條デ御座イマセウ
(村田委員)
公用トシテモ宜シイ
(三島委員)
何レ公事ノ事ニハ相違御座イマセン
(松岡委員)
公用ト謂フト何ンナ者デスカ
(栗塚報吿委員)
土地買揚規則デアリマス
(松岡委員)
夫ダカラ往ンノデ私立モ出來ルノデアリマス
(今村報吿委員)
易ルナレバ公益トシテ宜シイ三十二條ニモ公益トアリマスカラ一定ニスルナレバ宜シイ
(松岡委員)
公益トシテ宜シイ
(今村報吿委員)
公益ガ宜シイデセウ
(村田委員)
公益工事ノ爲ニスルモ同ジデス
(淸岡委員)
公用ノ方ガ能クハアリマセンカ
(今村報吿委員)
實ハ公益ノ方ガ原書ニハ能ク當リマス
(栗塚報吿委員)
公益トシテハ如何デセウ
(今村報吿委員)
多數ニ因テ公益ト致シマセウ
(槇村委員)
公用ノ方ガ好イデセウ
(三島委員)
工事ノ次ニ公用ト謂フ方ガ粘着ク樣デアリマス
(松岡委員)
先刻全國ト謂ヒ一般ト謂フハ都合ノ好イ場所々々ニ由テ極メルノデアリマスカ
(今村報吿委員)
一般ト謂フハ止メル積リデアリマス
(松岡委員)
一般ノ公益ト謂フハ彼ハ何フ仕マス
(三島委員)
場所ニ因テ違ヒマス
(松岡委員)
四條ハ謂ヒ分ハナシ
本條ハ原案ニ決ス
〔第三十五條削除建議〕
(今村報吿委員)
第三十五條デスガ之ハ三十一條ノ中ニ籠ツテ居リ定義ト謂フ者ノ中ニ自由ニ使用シ收益ト謂ツテアリマスガ夫ヲ制限スルハ二條カラ謂ツテ居リマスガ權利ノアル方ハアルトアラユル者ガ出來ル樣ニ謂ツテ居ルカラ再ビ茲ニ謂ハンデモ好イデアロウ制限ヲ付ルハ二、三、四條ヲ謂ツテアルト謂フ丈デ下ハ無イデモ好イダロウト思ヒマス
(松岡委員)
夫ハ大贊成デアリマス
(南部委員)
私ハ原案ノ方ガ好イト思フ長イ事ハ長イガ併シ三、四條ハ削ツテモ好イガ三十五條ニ地上ニ栽植ヲナシ又廢スル事ヲ得ト謂フ事ガアリマスカラ置イテ好イト思ヒマス
(西委員)
私ハ南部君ノ說贊成
(南部委員)
一項ニモアルノデアリマスカラ置フデハアリマセンカ
(村田委員)
實ハ可笑イノデアリマス
(栗塚報吿委員)
起案者ニ聞イタラ笑ハルルカモ知レマセン
(村田委員)
完全ノ所有權虧缺所有權トモアリマスカラ
(南部委員)
夫ハ別ノ話デ完全ノ所有權虧缺所有權ハ左樣云フ事ニ解セラレテハ大變デアリマス
(村田委員)
此處ハ卽チ完全ナル所有權ヲ謂ツタノデアリマス完全ノ所有權ト謂フハ用收權ノ如ク不利アル權デハナイ卽チ使用收益處分ノ三權ヲ持テ居ル者デ乃チ夫ヲ謂フノデ完全ノ所有權ハ何フカナレバ勝手ニ出來ルト謂フノデ外ノ權ハ制限ガアルカラト謂フノデアリマス
(南部委員)
夫ナラバ三十七條モ入ランノデアリマス
(村田委員)
三十七條ハ虛有權トカ何ントカ謂フノデ併シナガラ其位權利ノ者ヲ以テ植木ヲ作ルノ建物ヲ築ク事ノ出來ルノト餘計ナ事ヲ謂フニハ及バント思ヒマス
(栗塚報吿委員)
地ノ下ハ幾程モ往ケルト謂フ事ヲ謂フノデ又上モ何處迄モ好イト謂フ事ヲ示シタノデアリマス
(松岡委員)
夫ヲ誰ガ疑ヒマセウカ
(栗塚報吿委員)
疑ハアリマスマイガ夫丈ノ權ガアルト謂フ事ヲ示スノハ必要デアリマス
(松岡委員)
夫ガ土地ノ使用デアリマセウ
(淸岡委員)
大キナ水道ヲ掘リ又下ニ穴倉ヲ掘ルト謂フ事ハアリマセウ
(松岡委員)
併シ穴倉ヲ掘テモ物ハ謂ンデアリマセウ
(西委員)
之ハ大事ナ者デアリマスカラ是非存シテ置キタイト思ヒマス
(槇村委員)
其所ハ是非置カナケレバナリマセント思ヒマス置ク方ガ多數デアリマセフ
(村田委員)
吾輩ハ之ヲ削リタイト謂ヒマスガ之ノ解釋ハ學者ノ論モアルノデ差支ハアリマセン
(栗塚報吿委員)
白耳義伊太利亞等ノ條ニハ之ヨリモマタ精シク書イテアリマス故ニ學者ノ說デハ御座イマセン若シ起案者ノ說デ加エタノナレバ彼ノ人ノ學者說カラ出タカト謂フ疑モアリマセフガ此條ニ置キマシテハ決シテ左樣ナ事デハ御座イマセン
(尾崎委員)
之ハ削ルト謂フ說ハ少數デアレバ委員長ノ出席ハ待チマセン
(尾崎委員)
之ハ決シテ置テ好イデセフ
(栗塚報吿委員)
假ニ決シテ御置キ下サイ
(渡委員)
假ニ決スル事ハアリマセン憲法ニ因テ多數ノ決議ナレバ宜シイ
(淸岡委員)
置ク事ニ成ツタナレバ文章ハ調査委員ノ意見ヲ先ヅ第一ニ聞クガ宜シイ此全部ト謂フ者ハ文章ハ調査委員カラ成ツタノデアリマスカラ調査委員ノ文ニ報吿委員カラ異見ガナケレバ又其積リデ聞マセフ
(今村報吿委員)
私ノ考デハ置ク事ニ決シタ所デ報吿委員カラ出テ居ル所ノ說一項二項計リヲ取ツテ夫デ好カロウト思フ二項ハ右孰レノ一方ト謂フ文字モアルガ制限ニ從フト謂フノモ制限ガ出來ルト三十一條ニモアリ又地役ノ條ニモアリマスカラ一向報委員ノ手ヨリ出タ中一項丈デ好カロウト思ヒマス
(栗塚報吿委員)
猶三四項ヲ御置ヲ願ヒマス何故ナレバ地上地下ニ權ガアルゾケレドモ全權ノ一方ト若シ一方ノ利益ニ於テモ制限ヲ付ケラルルカ又隣ノ人ノ權利ニ就テ制限付ケラルルト思ツテ居ルノデ三四項ハ地上地下ニ何ニカ出來ルト謂ツテモ先方カラモ叱言ガ言ハレルゾヨト見セタノデ唯制限ヲ付ルノハ當前ノ事デ法律又ハ何ンデ出來ルト三十一條ニ謂テ居ル以上ハ入ラント謂ツテモ此所ハ殊ニ前二項ト下ノ二項デ全タイ所ヲ期シタノデ多少境ガ何カ出來テモ互ニ火ノ見抔ヲ造リアヒ大風ニ世間ヲ騒シ又隣家ノ迷惑ニ成ツテモイカント謂フノデ相隣地ノ一方ノ利益ハ制限ヲ付ケタノデアリマスカラ此儘ニ置キタイ事ヲ願ヒマス
(渡委員)
三四項ハ削ツテモ、宜シウ御座イマセフ
(淸岡委員)
之ハ有ツテ邪魔デハアリマセンガ盡ク特別法デ遣ルノ行政法デ遣ルノト又何條ニ定メナケレバナラント謂フハ之ハ行政法デ定メルト謂フ以上ハ民法ガアツテモ仕樣ガアリマスマイ
(村田委員)
樹ヲ藝ル事ガ何カアリマスカ
(栗塚報吿委員)
アリマス
(村田委員)
設令バ自分ノ家ヘ來タ鳥ヲ鐵砲デ撃ツ事ガ勝手ニ出來ルノデス
(南部委員)
夫ハ出來ント報吿委員デハ謂ツテ居リマス
(栗塚報吿委員)
佛蘭西ノ五百五十二條ニハ法律規則警察規則ヲ除クノ外多數製產物ヲ採取スルヲ得ベシトアリマス
(村田委員)
建物ヲ立テラレナイデハ自分ノ地所ヘ持ツテ往ツテ何ニ成ルカソンナ事ヲ謂フニハ及バン
(栗塚報吿委員)
伊太利亞ニハ土地所有權ハ其地表面上云々トアリ白耳義ニハマダ譯ニハ成ツテ居リマセンガ佛蘭西ノト同ジデアリマス
(西委員)
私ハ一項二項ヲ置クニ極ツタナラバ下ノ項モ置キタイト思ヒマス
(渡委員)
私ハ入ラント思ヒマス
(北畠委員)
一、二ヲ取ルナレバ丸デ取ツテモ宜シイ
(今村報吿委員)
唯今二項ノ論ニ爲ツテ居ルガ若シ二項ヲ置クナレバ文字論ハ止メテ一應御托シテ願ヒタイ詰リ存廢丈ケハ決シテ下サイ
(南部委員)
存スル事ハ既ニ極テ居リマス
(淸岡委員)
三、四項モ總テ置クトシテ之ハ調査員ニ任シテ宜シイ
(渡委員)
之ヲ置クトシタレバ調査員ハ文字ヲ直ス丈デ箇條ヲ削ル事ハ出來マセン三十五條ノ存廢論モ有ツタガ又置クト爲ツタ以上ハ精神丈ハ殘シテ附加ヘヲ願フト謂ツテ疑問ト成ツタカラ之ヲ極メナケレバナラン之ハ調査員モ如何トモスル事ハ出來マセン
(今村報吿委員)
夫ヲ極テ下サイ
(南部委員)
私ハ淸岡サンノ說ヲ贊成今茲デ一寸極メルト大體論デアルカラ一、二項ノ論ニハ及バンカラ最フ一應再調査ニ爲ツテ調ベテ貰ツテ二項ヲ削ルカ三項ヲ削ルカト謂フ所ヲ考ヘテ決スレバ宜シイ
(今村報吿委員)
二、三項ノ存廢ヲ極メテ戴キタイ
(槇村委員)
皆置ク事ニ致シマセフ
(北畠委員)
私ハ皆置ク事ニ致シマス
(西委員)
私モ皆置ク事ニ仕マス
(尾崎委員)
一、二項ヲ置キ三、四項ハ削ルガ宜シイ
(松岡委員)
「ボアソナード」ガ此條ヲ書イタノデセフガ次ノ條ニハ所有者ガ先ヅ出來ルト謂フ所ニ到ツテ制限シタイナ法ヲ立ツテ遣ツテ來マシタ然ルニ前回特別法ニ至ツテ鑛物ハ政府ノ所有ト現行法デアルカラ採掘抔ト謂フ事ヲ謂ハンデ好イト思ヒマス
(栗塚報吿委員)
砂利ヲ取ルト石ヲ出ス事ハ制限ヲ附ケタガ夫ハ御承知デセフ
(松岡委員)
知ツテ居リマス私ハ三、四項ヲ削ルハ贊成
(淸岡委員)
到底再調査ヲ遣テ來テ又削ルガ宜シイ
(南部委員)
淸岡君ノ說デアリマスガ兎ニ角再調査ガ出テ來テノ事デハアリマセンカ
(松岡委員)
決定シナケレバ再調査ハ出來ン
(淸岡委員)
三十五條ハ再調査ヲシテ報吿員ガ來テ議論ヲ起シテ決スルガ好イカ全文調査ニ任シテ宜シイト思ヒマス
(今村報吿委員)
削除ト謂ツテ今一應熟考シテ見樣ト謂フノデアリマス
(淸岡委員)
左樣デハナイ置クト云フ事ニ極ツタノデ貴君方ハ全部削除スルト云フカ何フカ置クト極ツタノデアリマス
(松岡委員)
皆ナ置クノカ何フカ
(淸岡委員)
夫ハ再調査ノ上デ好イノデアリマセフ
(村田委員)
其樣ナ分ラン事ハアリマセン
(栗塚報吿委員)
一項二項ヲ置クト成ツタラ三、四項ヲ削ルヤ否ト謂フ問題ヲ明日極メルノデス
(松岡委員)
明日ハ待ンデモ宜シイ
(渡委員)
今極メテ宜シイ再調査委員ガ削ルト謂フ論ガ極ツテ有ツタガ報吿委員ハ置クト謂フニ成ツタ決ガ定ツタノデアリマスカラ文字ハ前頂ト繰合セナケレバナランカラ委托シナケレバナラント謂フノデアリマシテ事柄ハ私モ二項三項ヲ再調査委員ニ考ヘサセルノハ無用ト思フ夫ハ既ニ調査委員ハ削ルトシタノデアリマスカラデス
(南部委員)
再調査ヲシテ遣ルト謂フノデアリマス
(淸岡委員)
私モ明日決スル論ハ聢ナラント思ヒマス或ハ考ヘテ見テ置クガ好イト謂フカモ知レン調査委員ノ方デモ二項ヲ置キマストシテ何フナルカ知レン輕率ニ遣ラナケレバナラント謂フ事ハ無イ再調査ノ上最フ一應議ニ上ルカラ其時ニ議シテ好イダロウト謂フノデアリマス
(村田委員)
ソンナラバ全部再調査ニ任シテ宜シイ
(栗塚報吿委員)
之ハ再原案デアリマスカラ報吿委員カラ拵ヘタノダカラ原案ヲ先ヅ削ツテアルカ削ラズニ讀メル文章ニ書ケト謂フノデアリマセフ夫ヲ以テ議サフデハアリマセンカ報吿委員ノ拵ヘタ修正ハ文體ガ一樣ニナルカラ削除セン故ニ五百三十五條ノ文章ハ繼ギニ書ケト謂フ事ハ再調査員ニ托スル事ハ出來ルト思ヒマス
(松岡委員)
之ハ再調査ト謂フノハ分ランデハ無イカ
(南部委員)
明日迄待ツタラ好イデハアリマセンカ
(槇村委員)
此所ハ大事件ダカラ明日迄延ルトシテ好カロウ
(村田委員)
此論ハ明日迄置ク事ニ仕マセフ
(西委員)
明日迄ナレバ好イデハアリマセンカ
(栗塚報吿委員)
報吿委員デハ一般ノ利益ト謂フノハ公益トナリ夫カラ「ニ附シタル」ノ五字ガ消ヘマス夫カラ地役ノ章ニ「於テ之ヲ規定ス」トアリマス
(今村報吿委員)
其議ヲ執ラン前ニ一寸注意迄ニ申シマスガ所有權ハ三十一條カラ始マツテ定義ヲシテ二條カラ制限ヲ附ケタノデ二、三、四デ五條エ往ツテ權利ヲ與ヘタノデ其中制限ヲシテ又六條ニ制限ヲ附マシテ七條デ又權利ヲ與ヘテ居ルノデ前ノト同ジデアリマスカラ五條ハ原案デハ場所ハ穩ニナルマイト思ヒマス權利ヲ與ヘタリ取ツタリスル事ハ不都合デアリマス
(南部委員)
左樣云フ事モアルカラ調査說ガ起ルノデス
(今村報吿委員)
之ガ無クナルト制限ガ出テ來ルノデアリマス
(栗塚報吿委員)
三十七條ハ何フカ
(今村報吿委員)
夫カラ又別ニ成ツテ事柄ガ違ヒマス
(南部委員)
兎ニ角明日迄延バシテハ如何
(西委員)
延バシテモ好イデセフ
(槇村委員)
延バシテ先ヘ往キマセフ
(今村報吿委員)
左樣スルト之ハ未定ニシテ置クノデアリマスカ
(南部委員)
左樣デス
(淸岡委員)
三、四項ガアルニ因テ稍々制限ガアルノデス
(尾崎委員)
削ルノハ如何
(淸岡委員)
制限無クシテ三十五條ヲ置テ不都合ト謂フノ說ハ確ニアルト思フ
(松岡委員)
實ハ三十五條一、二項ハ入ラン者デ三、四項ノ制限ヲ與ヘル爲ニ出シタノト謂フ樣ニ聞エルサウスレバ三、四項丈ヲ殘シテ一、二ヲ削ツテ制限ヲ示スト謂フ論デアリマス
(南部委員)
兎モ角明日迄延バサフデハアリマセンカ
(村田委員)
極メテ仕舞ヒマセフ譯ノナイ事デアリマス
(槇村委員)
三十五條ハ明日迄殘ラズ延バス事ニ仕マセフ
(北畠委員)
サフスレバ宜シイ
(西委員)
置クト謂フ事ハ既ニ極ツテ居ルノデアリマス
(松岡委員)
夫ハ可笑イ
(尾崎委員)
三、四項ヲ取ルヤ否ト謂フ事ヲ極メタラ寛シイ
(栗塚報吿委員)
多數ニ決シテハ如何
(南部委員)
ケレドモ此所丈ハ明日迄ニ延バシテ宜シカロウ
(松岡委員)
夫ハ一向分ラン
(南部委員)
分ランデモ待ツガ好イデハアリマセンカ
(淸岡委員)
唯待ツノハ不同意デアリマス
(松岡委員)
待ツト謂フ論ガ申分アルト見テモ唯待ツト謂フノト調査委員ニ托シテスルノト區チ々々デアルカラ夫デハ甚ダ困リマス
(槇村委員)
唯待ツト謂フ說ハ決ヲ取ツテ好イデハ無イカ
(南部委員)
決ヲ取ル事ハ願ハン何故ナレバ相談デ往クノデアリマス
(村田委員)
三、四項ヲ取ルカ否ヤヲ極メマセフ
(尾崎委員)
夫ガ宜シイ
(南部委員)
明日迄待テ宜シイ
(村田委員)
私ハ決スル
(松岡委員)
私モ決スル
(尾崎委員)
吾輩モ然リ
(南部委員)
夫デハ私ハ置キマス
(槇村委員)
私モ置キマス
(北畠委員)
之ハ茲デ三、四項ヲ削ルナラバ三十五條ハ一般ト云フヲ削ルガ好イ又延バスナラバ三、四項モ皆存スベシ
(西委員)
存スベシ
(槇村委員)
存ス可シ
(南部委員)
然ラバ條件附ニシテ存ス可シ
(松岡委員)
條件附キナレバ未定デナケレバナリマセン
(淸岡委員)
存ス可シ
(松岡委員)
此修正ハ動カス可カラザル者ニ成リマス
(南部委員)
夫ダカラ明日迄待テト謂フノデ卽チ相談ヲシタノデアリマス然ニ君方ガ應ジ無イノデ仕方ガ無イ先エ往ク事ニ仕マセフ
本條ハ第二項「一般ノ利益ノ」六字ヲ削リ「公益ノ」ト改メ第三項「ニ附シタル」ノ五字ヲ削リ行使ノ制限云々トシテ地役ノ章ニ於テ「之ヲ規定ス」ト決ス
第三十六條朗讀ス
第三十六條 鑛物ノ所有權及ヒ其試掘若クハ開坑ハ特別法ヲ以テ之ヲ規定ス
本條ハ原案ニ決ス
第三十七條朗讀ス
第三十七條 所有者其物ノ占有ヲ妨ケラレ又ハ奪ハレタルトキハ所持者ニ對シ回復訴權ヲ行フ事ヲ得但動產及ヒ不動產ノ時効ニ關シ第五編ニ記載シタル規則ハ此限ニ在ラス
又所有者ハ第二百十二條乃至第二百二十五條ニ定メタル規則ニ從ヒ占有ニ關スル訴權ヲ行フ事ヲ得
〔第三項削除建議〕
(今村報吿委員)
之ハ說明シナケレバナリマセンガ刪除ノ建議モアリマスガ「ボアソナード」自カラ大變此條ハ修正シテ來マシタ再調査ニ付キ質問シタガ「ボアソナード」ハ成程ト云ツテ修正シテ來タ其譯ケハ此中主意ハ所有者其物ヲ奪ハレタトキ所有者ニ對シ回復ニ關スル訴權ハト云フヲ刪リマシタ斯フ云フ事カラ刪リマシタ先キニ占有ノ方カラ論ガ波及シテ來テ占有ノ處ヲ見ルト私ガ地面ヲ占有シテ居ルト隣リノ地面ヘ以テ大キナ烟筒ガ倒シ掛ツタ危害ガ生ズルトアノ危害ガ己レノ家ヘ掛ツテ來テハ大變ダカラ除ケト云フ事ヲ訴ヘル權ガアル處ガ私ガ此地面ヲ占有シテ居ラン時分當リ前ニ往クト地面ハ私ガ所有者デアルト云フ事ヲ證據立ツテ置カント訴ヘガ成立タン處ガ今ノ樣ナ場合ニハ證據立テズ先以テ占有者デアレバ往ケルトナツテ居ル樣ナ譯デ一種ノ事デ處ガ制限ヲ付ケテ少ナクモ一年占有シテ居ランデハ訴ヘガ成立タント云ツテ居ルスルト占有シテ一年立タントキハ訴ヘガ取リ揚ゲラレナイトシテハ仕方ガナイガソレデナス本當ニ地面ヘ所有者ガ金ヲ掛ケテ烟筒ガ倒シ掛ツテ居ルト金ヲ掛ケテ二日目デ其時ハ訴ヘヲ起ストキハ何レノ訴權デ往クカ所有權ノ處デ往クモ今ノ訴權ヲ名付ケテ危害ヲ吿發スル訴權ト云フガソウ云フ名ガナイカラ別ニ云ハナケレバナラン三十七條ガアルカラ往ケルト云フ三十七條ヲ見ルト占有ノ原則ニ因ラナケレバナランソウスルト一年占有シナケレバナリマセント云フ不都合ガアルノデ一項ヲ加ヘソウシテ此第三十七條ヲ修正シテ先キハ占有ノ處ト合セテ一年占有シナイデモ直チニ往ケルトシテ來マシタ其關係デ三十七條ハ元トノ案ト競ヘルト替ルガ之ハ卽チ再調査案ノ通リシタノハ「ボアソナード」ガ修正シタノデアリマス
(西委員)
今日ノ通リデ良イノカ
(今村報吿委員)
之ハボアソナードノ修正デアリマス
(村田委員)
占有ニ一年ト云フ事ハ全デナイノカ
(今村報吿委員)
場合ニ因テアルノデアリマス再調査案三十七條ハ我々ガ手ヲ付ケズ「ボアソナード」ノ案ニナツテ修正シタノデアリマスソレカラ今一ツ末項ニ右孰レノ場合ニ於テモ云々トアツタノハ之ハ訴訟手續ニ關スルカラ云フニモ及バント思フ併シ尙ホ「ボアソナード」ニ聞ニヤリマシテ是非言ハナケレバナランカト云フニ其返事ニ凡テ訴訟ヲ起ス場合ハ構成法訴訟法ニ從フト民法ノ何處カヘ置クト言ツテ遣ツタカラ彼樣ニシテ末項ハ削除致シマシタ
(松岡委員)
宜シイ
(北畠委員)
宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第三十八條朗讀ス
第三十八條 數人一物ヲ不分ニテ共有スルトキハ持分ノ均不均ニ拘ハラス各共有者其物ノ全部ヲ使用スル事ヲ得但其用方ニ從ヒ且他ノ共有者ノ使用ヲ妨ケサル事ヲ要ス
各共有者ノ持分ハ相均シキモノト推定ス但反對ノ證據アルトキハ此限ニ在ラス
天然又ハ法定ノ果實及ヒ產出物ハ各共有者ノ權利ノ限度ニ應シ定期ニ於テ之ヲ分割ス
各共有者ハ其物ノ保存ニ必要ナル管理其他ノ行爲ヲ爲ス事ヲ得
各共有者ハ其持分ニ應シテ諸般ノ負擔ニ任ス
右規定ハ使用、收益又ハ管理ヲ各別ニ定ムルノ約束ヲ妨ケス
(今村報吿委員)
第二項共有者ノ持分ハ「之ヲ」ノ二字ガ拔ケテ居リマス
(北畠委員)
不分ニテト言フノハドウ云フモノカ
(三島委員)
分ケナシニ持ツト云フノデアリマス
(松岡委員)
不分ニテハ入ラン
本條ハ第一項「不分ニテ」ヲ刪リ第二項「持分」ノ下「之ヲ」ノ二字ヲ加ヘ其他原案ニ決ス
第三十九條朗讀ス
第三十九條 處分權ニ付テハ各共有者ハ他ノ共有者ノ承諾アルニ非サレハ其物ノ形體ヲ變スル事ヲ得ス又自己ノ持分外ニ物權ヲ付スル事ヲ得ス
共有者ノ一人其持分ヲ讓渡シタルトキハ讓受人ハ他ノ共有者ニ對シ讓渡人ニ代ハリ其地位ヲ有ス但第十五條ニ揭ケタル分割ノ効力ヲ妨ケス
本條ハ原案ニ決ス
第四十條朗讀ス
第四十條 各共有者ハ如何ナル約束アルニ拘ハラス共有物ノ分割ヲ請求スル事ヲ得
然レトモ共有者ハ五ケ年ヲ超エサル定期ノ時間分割セサルヲ約スル事ヲ得
此約束ハ何時ニテモ之ヲ更新スル事ヲ得但其時間ハ亦五ケ年ヲ超エル事ヲ得ス
右規定ハ數箇ノ所有地ニ共通ナル通路、井戶、籬壁、溝渠ノ互有ヨリ生スル共有權ニ之ヲ適用セス
(今村報吿委員)
各共有者ハ如何ナル約束アルニ拘ハラズトアリマスガ如何ナル約束アルモ位デハドウカ
(西委員)
宜シイ
(松岡委員)
宜シイ
(村田委員)
宜シイ
(渡委員)
宜シイ
本條ハ「ニ拘ハラス」ノ五字ヲ刪リ「約束アルモ共有物ノ云云」ト改メ其他原案ニ決ス
第四十一條朗讀ス
第四十一條 相續人、夫婦又ハ社員ノ共有權ニ付テハ第三編相續夫婦財產契約及ヒ會社ノ各章ニ定メタル規則ニ從フ
本條ハ原案ニ決ス
第四十二條朗讀ス
第四十二條 數人ニテ一家屋ヲ區分シ各其一部分ヲ所有スルトキハ相互ノ權利及ヒ義務ハ左ノ如ク之ヲ規定ス
各共有者ハ離隔セル所有物ノ如クニ自己ノ持分ヲ處分スル事ヲ得
諸般ノ租稅及ヒ建物並ニ其附屬物ノ共用ノ部分ニ係ル大小修繕ハ各自ノ持分ノ價格ニ應シテ之ヲ負擔ス
各自ハ己レニ屬スル部分ノ床板及ヒ隔壁ノ費用ヲ一人ニテ負擔ス
本條ハ原案ニ決ス
第四十三條朗讀ス
第四十三條 所有權ハ當事者ノ間ニ於ケルモ第三者ニ對スルモ本編及ヒ第三編ニ記載シタル原因及ヒ方法ニ依リ之ヲ取得シ保存シ及ヒ轉付ス
主タル物ノ處分ハ從タル物ノ處分ヲ帶フ但反對ノ明示アルトキハ此限ニ在ラス
本條ハ原案ニ決ス
第四十四條朗讀ス
第四十四條 所有權ハ左ノ諸件ニ因リテ消滅ス
第一 任意又ハ強要ノ讓渡
第二 他人ノ物ニ自己ノ物ノ添付
第三 法律ニ依リテ宣吿シタル沒收
第四 取得ノ解除、銷除又ハ廢罷
第五 物ヲ處分スル能力アル所有者ノ任意ノ委棄
第六 物ヲ不融通物ト爲シタル當該官ノ命令
第七 物ノ全部ノ毀滅
(南部委員)
當該官トアルガ良ロシウ御座イマスカ
(今村報吿委員)
其筋ニト云フノデアリマス
(南部委員)
當該官ト云フト役人見タ樣ニ見ヘル
(淸岡委員)
官府ノ命令トシテハドウカ
(村田委員)
官吏ト云フ事ノ場合ダロウ
(今村報吿委員)
權限ヲ持ツテ居ル人デス當該官府デモ宜シイ
(三島委員)
相當ノ官府ト云フノデソレヲ當該官トヤツタノデアリマス
(今村報吿委員)
相當官府デ良イデシヨウ
(北畠委員)
宜シイ
(南部委員)
宜カロウ
(村田委員)
相當官府ハオカシイ
(三島委員)
元トハ相當官廳トアリマシタ
(槇村委員)
抛棄ト云フノハ委棄ト替ヘマシタカ
(今村報吿委員)
抛棄ト云フ事モアリマスガ權利ヲ抛棄ニ使フ之ハ只物ヲ棄テルトキダカラ委棄トシテ宜シイ
(尾崎委員)
相當官府ノ命令トシマシヨウ
本條ハ第六「當該官ノ命令」ヲ「相當官府ノ命令」ト改メ其他原案ニ決ス
第四十五條朗讀ス
第四十五條 動產及ヒ不動產ノ所有權ノ取得及ヒ消滅ニ關シ取得時効ト稱スルモノヽ性質及ヒ効力ニ付テハ第五編末章ノ規定ニ從フ
本條ハ原案ニ決ス