旧民法・法例（明治23年）

法律取調委員会 民法草案議事筆記 第66回

参考原資料

備考

  • 未校正のテキストデータです．
民法草按財產取得篇第六十六回議事筆記
自第九百五十六條至第九百六十二條
明治二十一年六月十九日午前八時三十分開會
[画像]
（委員長）缺席
（槇村）
始メマシヨウ
第九百五十六條朗讀ス
第二十一章　雇使及ヒ工作又ハ工業ノ賃貸
第一節　雇使ノ賃貸
第九百五十六條　使用人、番頭又ハ手代主人ノ身ニ隨侍シ又ハ其家ニ奉仕スル僕婢、勞力者又ハ日雇人及農業又ハ工業ノ職工ハ年、月又ハ日ヲ以テ定メタル賃銀又ハ給料ヲ受ケテ其雇使ヲ賃貸スルコトヲ得〔第千七百十條、第千七百十一條第四項、第千七百七十九條第一號〕
右ノ場合ニ於テ賃貸ハ其地ノ慣習ニ因リ定マリタル時期又確定ノ慣習ナキトキハ總テノ時期ニ於テ雙方中孰レヨリモ豫メ與ヘタル解雇申入ニ因リ了終セサル間ハ繼續ス但其解雇申入ハ不利ノ時期ニ於テ爲サス又惡意ニ出テサルコトヲ要ス
（修正按）　第二十一章「雇使」ヲ「勞務」ト改メ「賃貸」ヲ「賃貸借」ト改ム以下之ニ同シ第一項「勞力」ヲ「勞役」ト改メ「日雇人」ヲ「日稼人」ト改ム
（栗塚）
「雇使」ト云フ字ヲ「勞務」ト云フ字ニ改メマシタ
（松岡）
「勞務」ト云フ方ガ宜シイ樣デス
（北畠）
勞務ト云ヘバ賃貸シト云フコトカラシテ、オカシイト思フガ之ハ「勞務」ノ方宜シイ
（箕作）
「勞務」ガ宜シイ
（栗塚）
第九百六十二條ニモ勞務トナツテ居リマス
（北畠）
「雇使」ト云フトキハ賃貸借ト云ヒマスカ
（栗塚）
皆ナ勞務ノ賃貸借デアリマス
（北畠）
何方ラデモ宜シイノデスガ「勞」ト「役」ト二ツアリソウナモノデス
（栗塚）
前ニ賃貸借トアツタ爲メニ入レタノデアリマス
（槇村）
勢務ガ宜シイ
（栗塚）
ソレカラ、「勞力」ヲ「勞役」トシテ日雇人ト云フノヲ「日稼人」ト改メマス
（槇村）
日稼人ト云フハ何ウ云フ譯デスカ
（栗塚）
日雇人トアルハ、年、月又ハ日ヲ以テ定メタル、ト云フコトガ分ラント云フノデ日稼人ト云フハ卽チ日傭取リト云フノデ大槪分ルシ日雇ト云フト每日ニ雇ハルルト云フ樣ニナツテ人ヲ指サン樣ニナリ現在日本デハ日傭ト云フカラデアリマス
（松岡）
日稼人ト云ツテモ日傭ト云ツテモ年月日ニ關係ハ同ジデアリマス
（栗塚）
人ヲ示シタイト云フノデアリマス
（松岡）
日稼人ヨリハ、ソレハ宜シイデシヨウ
（南部）
一年ノ日傭ト云フノハ何フカト云フノデ稼トシタノデス
（松岡）
日稼ト云ツテモ、アレハ其日稼ギト云フノデス
（栗塚）
往來デ草ヲ取ツテ居ル婆サンガアリマス、アレ抔ガ日傭ト云フノデ、併シ、アレヲ假令バ一ケ月ノ間雇ウト、アノ勞力ヲ雇ヒ、アレノ勞務ヲ、買ウ譯デアリマスガ其時ハ何ント云フカ日傭ト云フト每日ニ契約シテ參ル樣ニ見ヘル、一ケ月間オレノ處ヘ來テ働ケト云フト、日稼人ノ方ガ善イト云フノデアリマス
（松岡）
日傭人ト云ハズ日稼人ト云ハセル所ハ無イ
（大尾崎）
之レハ日傭ガ善カロウ
（村田）
始メ之レハ傭人トアツタノデ新律綱領ニ出タノガ初メテ傭ト讀ンダノデ字書ヲ調ベルト雇ノ字デアツタノデス
（南部）
之レハ百姓讀デス
（箕作）
勞力ノ賃貸ト云フノハ全體日本デハ分ランノデアリマスガ之レハ仕方アリマセン
（北畠）
之ハ斯フセンケレバ、ナランノデスカ
（槇村）
「解雇」ヲ「解傭」トシマスカ
（栗塚）
矢張リ解雇デ宜シウ御座イマシヨウ
（西）
雇使ハ勞務ト直シマスカ
（栗塚）
左樣デス
（村田）
勞力ハ勞役ト直シマスカ
（栗塚）
左樣デス
（箕作）
「ボアソナード」ハ定義ガアリマスガ立法者ハ定義ニ據ルト窮窟ニナリマスカラ
（松岡）
雇ハ使用人、番頭、手代、僕婢、何々ト云フノハソレガ賃銀給料ヲ受ケテ勞務ヲ貸スコトヲ得、デスカ
（箕作）
其勞務ノ賃貸デアリマス
（松岡）
人ハ勞務ノ賃貸スルコトヲ得、其勞務ハ斯フ云フモノト、云フナレバ宜シイガ上ニ何々トアルガ首尾ガ分リマセン
（栗塚）
勞務ノ賃傭トヤリマシヨウカ
（村田）
賃貸借ハ、オカシイ
（松岡）
勞務ノ契約、トスルカ
（箕作）
日本ニハ初メニ賃貸借ガアリマスガ此ノ賃貸借ハ何ント云フニ勞力ノ賃貸借デ、何ウモ始終貫ヌカント何ウモ分ランノデスカラ物ノ賃貸借ニ關係ノ無イ樣ニシテ置テ第三篇ノ所ト照應シテ往カント、イヘマセン
（栗塚）
アレモ、勞務ノ賃傭トシテ宜シイ
（箕作）
アスコハ、アノ儘ナレバ之レモ賃貸借デ往カント照應シマセン
（松岡）
之ハ書キ方ガ變ンデ何ンノコトヤラ分リマセン、勞務ヲ賃貸スルヲ得ルト云ツタラ給料ヲ受ケテ居ナガラ番頭、使用人ノ名ガ付テ居ルノデ何ント云フ法律ダカ譯ケガ分ラン
（北畠）
手代番頭モ勞務デスカ
（松岡）
既ニ契約ガ出來タラ其名ガアルノデアリマス
（栗塚）
番頭ハ何ンニ據ツテ居ルカ卽チ賃貸ナリト云フノデアリマス
（西）
スルコトヲ得、ハオカシイ
（松岡）
「得」ト云フノハ、オカシイ
（西）
矢張リ賃貸借、デ宜シイノデス番頭ヲ賃貸スルコトヲ得、ト云フノハ、オカシイ
（渡）
番頭ガ外ヘ又貸コトヲ得ル樣ニナリマス
（松岡）
職工ハ何々スルコトヲ得、職工ト云フ身分ガアツテ番頭、僕婢モ、身分ガアル
（渡）
醫者ハ醫術ノ爲メニ賃貸スルコトヲ得ト云フコトニナリマス
（槇村）
賃銀ニシテハ何ウカ
（大尾崎）
理窟カラモ知レマセンガ之レデ宜シカロウ
（渡）
之ハ三島君ニ任セマシヨウ
（松岡）
茲ノ會議ハ杜撰千萬デ無暗ニ進ンデハ困リマス
（北畠）
定メタル賃料ヲ受取ツテ、トシテ置キマスカ
（渡）
ソレハ賃デモ金デモ宜シイデハアリマセンカ、銀ト云ツテモ、錢ニヲ呉レル、金ト書イテモ矢張リ錢ダカラ宜シイデシヨウ
（栗塚）
賃錢トシテ何ウデ御座イマシヨウ
（南部）
錢ヨリハ金ガ宜シイダロウ
（大尾崎）
我輩ハ何ウデモ宜シイ
（村田）
賃ト云ツタラ一番宜シイデシヨウ
（北畠）
時期ニ於テハト云フノハ如何
（栗塚）
慣習ガナケレバ何時デモ、ト云フノデアリマス
（松岡）
繼續スル方ヲ趣意ニ書イタノデスカ
（栗塚）
左樣デスガ實ハ何時ニテモト云フ意味ニ改メ樣トシタガ時期ト云フヲ二ツ置イタガ善イト云フノデ定マリタル總テノ時期トシタノデアリマス
（松岡）
確定ノ慣習ナキトキハ、ト云フト確定ノアツタトキハ契約ガ出來ン樣ニナリハシマセンカ
（栗塚）
契約ノ方ノ側デハアリマスマイ何方ラカラモ改メ雇ヲ解ト云フ申込ニハ三ケ月ニ入リ代ルト云ヘバ其時分謂ツテナケレバ續クト云フノデス
（松岡）
終了ニ依レバ日傭人僕婢ノ如キハ慣習ニ依テ百日トカ何トカ云フモアルスルト工業、職工、日傭人ト云フコトハ契約カラ起ルモノト見ナケレバナラヌ此處デハ地方ノ慣習ニ因テ定マリタル時期ニ双方カラ申入レヲシナケレバト云フニ定メ慣習ノナイトキハ何レノ時モ申入レニ依リ終了ガ出來ル、ソレヲ、シナケレバ繼續スルト慣習無キトキモ慣習ノアルニモ出來ン樣ニナリハシナイカ
（栗塚）
ソンナコトハ、アリマセン
（松岡）
ソウスルト何ノ爲メニ書キマスカ
（栗塚）
「時期」ハ何ンデモ慣習ニ據レバ其方ガ宜シイ
（松岡）
慣習ニ拘ハラズ出來ルノダト、出來ルケレドモ、無茶苦茶ニシテハ酷イカラト云フ爲メニ止メルノデアリマシヨウガ慣習ニ背イテハ一切出來モノナレバ後トハ云ハズトモ宜シイ
（栗塚）
何ン時ニテモ謂ヘバ善イ
（松岡）
ソコノ善イ惡イハ暫ク措キ斯フアルト慣習ガアツタトキハ出來ン樣ニナリマス
（南部）
ソウ云フコトハ無イ
（松岡）
契約ガアレバ、ト云フノデハ無イカ
（栗塚）
何時デモ、ト云フノデス
（槇村）
何時デモ、トシテハ如何
（南部）
只ダ時期ニ於テ、トシテモ宜シイ
（栗塚）
其地ノ慣習ニ於テ定リタル時期ニ於テ又確定ニ定マリタル慣習ガナケレバ何時ニテモ云フノデアリマス
（大尾崎）
何ン時ニテモ、ト云フノハ素人ニハ分ラン
（栗塚）
何ン時ニテモ謂フノハ其地ニ定マリタル時期ニ於テ又確定ノ慣習ナキトキハ何ン時ニテモ、デアリマス
（松岡）
其方少シハ宜シイ
（槇村）
豫メ與ヘラレタルハ何ウデスカ
（松岡）
豫吿ト、ハ云ヘマセンカ
（箕作）
豫吿デアリマス慣習ガアレバ豫吿シナケレバ一ケ年ノ間デ終ルノデアリマス
（槇村）
了終スト云フハ例ノ講義デアツテ了終セザル間ハ繼續スト、ナツテ居ルカラ惡イ
（南部）
了終ヲ先キヘ言フノハ宜シクアリマスマイ
（栗塚）
日本文ダカラ斯樣デスガ西洋文デハ右ノ場合ニ於テ賃借ス、何ニ々々ノ間ハ、ト云フ趣意ニナツテ居リマス
（松岡）
併シ斯ウ云フトキハ尙ホ繼續シ、ト云ハナケレバナリマセン
（村田）
之レハ大細工ヲシタラ善カロウ
（箕作）
鳥渡繼續位ヒ削ツテモ格別ハアリマセン
（栗塚）
二項ハ實ハ入ランコトデス
（松岡）
仕方ガナイカラ我慢シヨウ「ボアソナード」モ草臥タト見ヘテ此邊ハイケナクナリマシタ
（栗塚）
佛蘭西文ノ樣ニ、ソツクリ、シテ置ケバ分ルガ佛蘭西文ヲ採ツタト見セマイト思ツテヤツタノハ少シ困ルノデアリマス
（松岡）
豫メ與ヘタル、ハ豫メ爲シタル、トシマシヨウ
（渡）
爲シタルガ宜シイ
（北畠）
爲シタル、ナレバ宜シイ
（箕作）
一體、オカシナ文デアリマス
（北畠）
繼續ガ主ニナツテ居ルノデアリマス
（栗塚）
左樣デス
（大尾崎）
先ヘ行キマシヨウ
本條ハ「總テノ時期ニ於テ」ヲ削リ「何時ニテモ」ト改ム「與ヘ」ノ二字ヲ削リ「爲シ」ト改メ其他報吿委員ノ修正ニ決ス
[画像]
第九百五十七條朗讀ス
第九百五十七條　是等ノ者ノ雇使ノ賃貸ハ亦使用人及ヒ僕婢ニ付テハ五ケ年又職工及ヒ勞役者又ハ日雇人ニ付テハ一ケ年ヲ超ユルコトヲ得サル定期ニ付キ之ヲ爲スコトヲ得但徒弟契約ニ關シ下ニ記載スルモノヲ妨ケス〔第千七百八十條〕
一層長キ約務ヲ爲シタル場合ニ於テハ當事者中一方ノ意ニ從ヒ其時期ニ短縮ス但同一ノ期間ニ付キ無限ノ更新ヲ爲スノ權能ヲ妨ケス
（修正）　第二項「一層」ノ上「右ノ時期ヨリ」ノ六字ヲ加ヘ「一方ノ意ニ從ヒ」ヲ「一方ノ隨意ニテ」ト改メ「短縮」ノ上ニ「之ヲ」ノ二字ヲ加ヘ「期間ニ付キ」ヲ「期間ヲ以テ」ト改ム
（松岡）
之モ貸借トヤリマスカ
（栗塚）
左樣デス
（槇村）
第九百五十六條ノ一項ノ勞務ヲ貸スハ賃貸ス、デアロウ
（栗塚）
左樣デス、此處ノ日雇人モ日傭人トナリマス
（村田）
日雇人デアリマシヨウ
（松岡）
五年ト云フハ何ウデシヨウカ前項ハ一年デアリマス
（栗塚）
番頭抔、ト云フモノハ一生涯ノガアリマス
（松岡）
ソレハ契約デ何時モ、ソウ云フモノガアリマスモ僕婢日雇ハ一年ガ極點アルガ五年ト分ケルハ何ウ云フ譯ケカ
（村田）
五年マデハ行クト云フノデアリマス
（南部）
私ハ之ハ長イ方ガ宜シイト思フ短イト有名無實ニナリマス
（箕作）
日本デハ僕婢ハ以前カラ、一ケ年期デアリマス
（村田）
ソウデアリマセン、定メンモノモアリマス
（松岡）
定メンモノハ無期ダカラ宜シイ
（箕作）
僕婢丈ケハ一ケ年ニシタモノデス
（松岡）
一年シテ置キ更新ハ何時モ出來ルノダカラ其儘置クガ宜シイ
（槇村）
田舎デ下男抔ヲ使ウニ何年ト云フハ別段ニ契約スルノデス
（箕作）
僕婢ハ元トカラ一ケ年恐ラク日本全國、ハソウダロウト思ヒマス
（栗塚）
年定メト云フノハ夜具ヲ以テ來ルノデアリマス
（松岡）
今迄百姓抔ノ人ノ家ヘ奉公ニ出ルノハ只ダ往クノデハナイ御年貢差支カラ、ソレデ一年ノ間務メルノデ一年ト云フノハ凡ソ全國定マツタ慣習ダロウト思ヒマス
（箕作）
「一年ヲ超ユルヲ得ス」トシテ置ケバ宜シイ
（北畠）
前ニ使用人番頭ノ二ツヲ書ケバ此處ニ番頭ヲ脫ケバ脫テアルモノト見ナケレバナリマセン
（箕作）
處ガ起案者ノ積リデハソウデ無イノデス、番頭、手代ハ使用人ノ中ニ這入ツテ居ルノデアリマス
（槇村）
ソレ一アハ分リマセン
（大尾崎）
番頭手代モ這入ナケレバナリマセン
（北畠）
使用人ト云フト、使用スル人デ被使用人ト云フノデアロウ
（箕作）
併シ雇人ト云フト被雇人トハ云ヘマセン
（村田）
手代ト云フ字ハ英文ニハ御座イマセン
（栗塚）
「クラーフス」トアリマス
（村田）
ソレハ番頭ノ積リデシヨウ
（北畠）
長イ極點ヲ謂フノダカラ五ケ年ヲ入レテモ差支ハナイ
（村田）
番頭手代ガ這入ルノハ六ケ敷イ樣ニ思フ
（箕作）
斯ウ云フコトヲ始終謂ツテ居ルカラ皆ナ直サナケレバナリマセン
（大尾崎）
下女デモ五年位ガ宜シカロウ
（箕作）
前ニ工業、農業ノ職工トアリマスガ
（栗塚）
報吿員中ノ原書ノ讀メン者ニ聞イテ見マシタガ只利息ト云ヘバ、果實ハ這入ントカ云フ說ガ時々アルガ、ヨモヤ此處テハ繰リ返サンデモ讀ムト云ツタノデ改メマセンデシタガ分ラント云フナレバ繰リ返ヘシマシヨウ
（渡）
惜マズ書入レタ方ガ宜シウ御座イマシヨウ
（村田）
使用人ト云ツタラ前ヘノ番頭、使用人ト云フヲ削ツタラ善カロウ
（松岡）
使用人僕婢ト謂ツタラ上ハ削ツテ此方ヘ入レズニ置クガ宜シイ
（槇村）
前ノ條ノ「番頭」以下「奉仕」マデ削リマシヨウ
（渡）
ソレガ宜シイ
（大尾崎）
是等ノ者ノ勞力、トアルノハ之レハ番頭手代ヲ指シテ居ルノデシヨウ
（村田）
是等ノ者、ト云フハ無イ方ガ宜シイ
（松岡）
僕婢年限ハ一年ノ制限ガアリ番頭手代ナラ無期ト云フニナリマス
（渡）
其恐レガアル
（槇村）
削ツテモ害ハナイ
（松岡）
使用人、僕婢トシマスカ
（大尾崎）
番頭手代ヲ入レマシヨウ
（渡）
脫タ方ガ宜シイ
（北畠）
使用人又ハ主人ノ身ニ隨從シテ、トシテ番頭手代ハ削ツテモ宜シイ
（松岡）
ソレデ宜シイ
（渡）
身ニ隨從スル抔ハ、オカシイ
（栗塚）
第九百五十七條ハ番頭手代ト云フコトハ云フニ及バンデシヨウ
（松岡）
職工勞役者日傭人、トアレバ又書クニモ及バン
（渡）
世ノ中ガ開明進歩シテ明文論デユクト何ウシテモ書イテ置テハ、イカン
（南部）
窮屈ニシテ置イテハイカン害ガナイコトハ無理ニハ及バン
（松岡）
一例ヲ示ス丈ケデアツテ却テ言ハン方ガ宜シイ
（渡）
使用人僕婢デ宜シカロウ
（槇村）
番頭手代トノミ出シタノハ、オカシイ
（村田）
言ヒ出シタラ幾ラモアリマス
（槇村）
使用人デ包含シテ置ガ宜シイ
（北畠）
使用人僕婢デ善カロウ
（槇村）
ソレデ宜シイ
（大尾崎）
多數ナレバ、ソレテ宜シイ
（栗塚）
勞役者、日傭人ハ違ヒマスカ何方カ一ツデ宜シウ御座イマシヨウ
（北畠）
勞役者デ宜シイ
（槇村）
僕婢勞役者トスレバ宜シイ
（箕作）
農業職工ト云フハ何ウデスカ
（栗塚）
勞役者及ビ職工デハ如何デスカ
（松岡）
ソレデ宜シイ
（槇村）
ソレデ宜シイ
（村田）
宜シイ
（槇村）
五年ト云フノハ利害ハアルノデスカ
（松岡）
何ニモ據リ所ハ無イラシイ之レハ「ボアソナード」ガ凡ソダロウト思ヒマス
（渡）
五年ヨリ以下ハナランナラバ差支モアルガ最上限ヲ定メタラ宜シイダロウ
（松岡）
習慣ガ明治ニナツテモ法律デ先ヅ一ケ年ナツテ居ルモノヲ五ケ年ト換ヘルト云フ何カ理由ガアリマスカ
（北畠）
種々ナモノガ含蓄シテ居ルカラ構ハン
（栗塚）
今ノ法律デ弟子奉公人ノミデアリマス
（松岡）
弟子奉公ハ仕方ガナイ
（箕作）
弟子奉公ハ後チノ徒弟契約ノ所ニアリマス
（村田）
更新ガ出來ルト云フノダカラ同ジコトデアリマス
（栗塚）
私ハ十年位ニシテ置キタイ位ヒデアリマス
（松岡）
五年ト定メレバ中途デ彼是レハ言ハレン併シ短カケレバ更新ガ出來ルカラ一ケ年ニシテハ如何
（箕作）
私ハ修正ヲ出スガ使用人ノ勞務ノ賃貸ハ五ケ年又僕婢職工勞役者又ハ日傭人ニ付テハ一ケ年ヲ超ユルコトヲ得ザルトシテ使用人丈ケヲ五ケ年ニシテハ如何
（槇村）
ソレハ宜シイ
（松岡）
日傭人ハ削リマスカ
（栗塚）
日傭人ハ削リマス、勞務ノ賃貸借ハ僕婢及ビ勞役者ニ付テハ五ケ年ヲ超ユルコトヲ得ザル定期ニ付キ云々トシテ、「是等ノ者」ハ削リマス
（槇村）
之レデ宜シイ
（栗塚）
二項ハ「隨意ニテ之ヲ其時期ニ短縮ス但期間ヲ以テ妨ケス」トシマシタ
（松岡）
無限ノ三ツヲ削除致シタイ
（槇村）
無限、ハ不必要デス
（栗塚）
右ノ時期ヨリ一層長キト云ツテ時期ノ積リデアリマス
（箕作）
同一ト云フ字ハ置クノデシヨウ、同一ト云フノハ右ト同樣ト云フノデ元ト三年ト云ツタラ、三年、元ト一年ト云ツタラ今度モ一年ト見ハシマセンカ
（松岡）
御尤モデアリマス、之ハ、上ニ定期何年ヲ超ヘルヲ得ズトアレバ但書キハ更新ヲ爲ス權能ヲ妨ケズト云ヘバ差支ハナイ
（村田）
同一ノ期間ト云ヘバ元ト一年ナレバ二年ヤランデハ更新ハ出來ナイ
（松岡）
此更新ハ更ニ約束セラルルノダカラ今度二年デモ構ハナイノデシヨウ
（村田）
ソウデアリマセン元ト一年ナレバ又一年デアリマス
（松岡）
親方モ奉公人モ氣ニ入ツテ前一年デモ今度ハ四年デモ宜シイノデス
（箕作）
元ト一年デモ期限ガ付ケバ今度ハ二年デモ宜シイノデス
（大尾崎）
宜シクバ先キヘヤリマシヨウ
本條ハ第一項「是等ノ者ノ」ヲ削リ「及ヒ僕婢」ヲ削リ「使用人ニ付テハ五ケ年又僕婢職工及ヒ勞役者ニ付テハ一ケ年ヲ超ユルコトヲ得サル定期ニ付キ之ヲ爲スコトヲ得但」云々トシ第二項但以下「同一ノ期間ニ無限ノ」ヲ削リ其他報吿委員ノ修正ニ決ス且前條ヘ遡リ第九百五十六條第一項左ノ如ク改ム
使用人僕婢勞役者及ヒ職工ハ云々
[画像]
第九百五十八條朗讀ス
第九百五十八條　雇使ノ賃貸カ定期ニ付キ爲サレタルトキト雖モ其賃貸ハ或ハ當事者中一方ノ義務不履行ノ爲メノ解除ニ因リ或ハ雙方中一方ニ出テタル正當ニシテ且已ムヲ得スト認メラレタル原由ノ爲メ其定期前ニ了終スルコトヲ得
總テノ場合ニ於テ主人ノ死亡ハ其身ニ對スル雇使ノ賃貸ヲ當然了終セシム
（修正按）　第一項「定期ニ付キ」ヲ「定期ニテ」ト改ム第二項「主人ノ死亡」以下左ノ如ク改ム主人ノ一身ニ關スル勞務ノ賃貸借ハ其死亡ノ爲メ當然了終ス
（松岡）
解除ト云フノハ銷除ニナルノカ、何トモ謂テナイガ、身體ガ利カナクナレバ自カラ銷除卽チ無效デシヨウ
（北畠）
銷除ノ方ガ
（箕作）
註ニハ銷除トアリマス
（松岡）
「當事者中一方」云々トアツテ「雙方中一方」ト云フハ何ウカ
（栗塚）
同ジコトデアルカラ「雙方中」ハイラヌ「或ハ一方ニ出テタル」デ宜シイ
（南部）
其方ガ宜シイ
（松岡）
ソレデ宜シイ
（北畠）
「其」ノ字ハナイ方ガ宜シイ
（松岡）
スルコトヲ得ハ何ウカ「ス」トハ切レンカ「ルコトヲ得」ハ何ウモイカン
（大尾崎）
「得」デ宜カロウ
（渡）
得ガ宜カロウ
（南部）
定期ニテダカラ得ガ宜カロウ
（松岡）
何レ丈ケニ原由シタラ何レ丈ケト云フコトハアリマセンカ
（栗塚）
アリマセン
（松岡）
之ハ宜シイヨウデス
（大尾崎）
宜ケレバ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ第一項「雙方中」ノ三字ヲ削リ其他報吿委員ノ修正ニ決ス
[画像]
第九百五十九條朗讀ス
第九百五十九條　若シ雇使ノ賃貸ヲ了終セシムル正當ノ原由カ主人又ハ工長ノ一身ニ起リテ地方ノ慣習ニ從ヒ雇使ノ賃貸主カ新約務ヲ契約シ難キ年ノ季節ニ生シタルトキハ裁判所ハ情況ニ從ヒ定メタル償金ヲ其賃貸主ニ付與ス
（修正按）　「地方」ノ上「テ」ヲ「且」ト改ム
（北畠）
之ハ雇主ノ方デスカ
（栗塚）
戶主デアリマス
（箕作）
賃貸人トシテ宜シイ
（松岡）
一身ト云フノハ一方トハ意味ガ違フカ、前ノ一項ノ尋常ノ一身デアルガ其内主人ノ方カラ起タトキハト云フノカ
（南部）
左樣
（松岡）
スルト一身ト云フハ惡イ主人ノ一方ダナ
（栗塚）
使用人ノ裏デス
（村田）
主人ノ内ニ工長モ這入テ居ルノデシヨウ
（松岡）
這入ツタ方ガ宜シイデシヨウ、徒弟契約ハ別ニスルノダカラ、旦那奧サンノ一身ニナルノダカラ此所ハ主人ノ方カラ起テ暇ヲ出サナケレバナランコトニナツタノダカラ廣ク見テ宜クハナイカ
（村田）
ソレデ宜ササウナモノデス
（松岡）
工長ハ主人ニシタ方ガ宜シイ
（村田）
英文ハ一身デハナイ、一方ニナツテ居ル
（南部）
主人ノ一方ト云フノハオカシイ
（松岡）
工長ハ刪テ宜シイ
（栗塚）
實ハ親方ト云フ字ガ一番宜シイ
（南部）
主人ノ方ニ起リトスルカ
（松岡）
ソレデ宜シイ
（栗塚）
主人ノ方ニ起リデモ宜シイ
（大尾崎）
宜シイ
（栗塚）
人力曳抔ハ此方ガ賃借人デス
（大尾崎）
主人トヤツテ置クガ宜シイ
（箕作）
雇主ダナ
（大尾崎）
宜シクバ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ第一項「又ハ工長ノ一身」ヲ刪リ「主人ノ方ニ」トシ末文「賃貸主」ハ「賃貸人」トシ其他ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
[画像]
第九百六十條朗讀ス
第九百六十條　總テノ場合ニ於テ雇使ヲ供給スル者ノ死亡ハ契約ヲ了終セシム但其相續人ハ給料又ハ賃銀ノ中ニテ未タ經過セサル時期ニ付キ拂ハレタルモノヲ返還ス
（北畠）
「拂ハレタル」ト云フノハオカシイ
（村田）
返還スベシト云フ命令調デスネ
（南部）
「ス」ノ字ハ皆ソウデス
（大尾崎）
之ハ宜シイ
（槇村）
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
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第九百六十一條朗讀ス
第九百六十一條　前記ノ規則ハ俳優音樂師、蹈舞師、角力者又ハ幼技師ト演劇、觀物及ヒ其他公衆ノ觀覽ニ供スル遊戯ノ興行者トノ間ニ爲シタル賃貸ニ之ヲ適用ス
此規則ハ亦撃剱、武藝、工技又ハ工藝ノ授業者又ハ敎師及ヒ獸醫ニ之ヲ適用ス
（修正按）　第二項「撃劍」ノ二字竝「及ヒ獸醫」ノ四字ヲ刪ル
（大尾崎）
角力者ハオカシイ
（村田）
者ノ字ハイルマイ
（松岡）
角力取ト書ケバ宜シイ
（村田）
輕業獨樂廻シハドウカ
（槇村）
蹈舞師ハオカシイ
（栗塚）
踊リデアリマス舞子モアリマス
（箕作）
二項ニ獸醫トアリマスガ註ニハ獸醫ト人間ノ醫師ト違フトアリマスガ區別ガアリマスカ
（栗塚）
獸醫ハ除キマシタ
（箕作）
ソレナレバ宜シイ、ガ撃劍ハオカシイ、武藝ニシテモ、榊原健吉ニ適用シハ困ルネ
（村田）
二項ハナクトモ宜シイ
（大尾崎）
「蹈舞師」ハ刪リマシヨウ
（槇村）
狂言者ヲ云フノカ
（栗塚）
俳優ハ皆之デアリマス
（箕作）
藝妓ハ何ウカ
（村田）
踊リノ師匠モ這入ル
（西）
角力者ノ「者」ノ字ハ除テ宜シイ
（栗塚）
一體ハ角力デ宜シイノデス
（箕作）
角力取ト云テハ何ウカ
（北畠）
角力デ、角力取リト云フノデハナイカ
（大尾崎）
宜シウ御座イマシヨウ
（箕作）
二項ハ刪リタイ
（村田）
二項ハ刪テ宜シイ
（南部）
併シ二項ヲ刪テハ往カンデシヨウ此所バカリ刪ルト適用ガ出來ヌ
（松岡）
全體理窟カラ云フト技藝授業者ハ美術デ教師トハ一緒ニナランガ工藝ト云ヘバ美術モアル
（栗塚）
工藝ト云フ字ト工伎ト云フ字ハ六ケ敷イノデ初メ手作ト譯シタガ工伎ト云フノハ職ト云フ字デ職ヲ覺ヘタト云フノデ私ノ娘モ嫁ニ行クマデ職ヲ覺ヘサシテト云フ、指物屋モ左官モ職櫛ノ歯ヲ挽ノモ職デ之ヲ工伎ト稱シソレカラ工藝ト云フハ製作上ノ美術ト云フノデ寫眞トカ假令バ九谷燒ノ茶碗ニ畫ヲ畫クトカ皿ニ畫クトカ云フハ技デ美術ニナルデアリマス
（渡）
二項ハ削リマシヨウ
（箕作）
二項ハ削除シテ宜シイ
（松岡）
結句二項ハ削ルガ宜シイ
（栗塚）
學術ノ中ニ武學ガ這入ルデシヨウ
（槇村）
學術技藝ガ這入ルハ宜シイガ先ヅ二項ハ削ルコトニ致シマシヨウ
（南部）
大工ハ何處ニ這入ルカ
（栗塚）
工技ノ中デアリマス
（箕作）
大工抔ニ至ツテハ徒弟契約ノ方ニアリマス
（西）
二項ハ削リマシヨウ
（大尾崎）
蹈舞師ハ削リマスカ
（栗塚）
能役者ガ這入ランカ
（北畠）
ソレハ俳優ヘ這入リマス
（栗塚）
其他公衆ノ觀覽ニ供スルノ中ニ這入ルカラ宜シイ
（箕作）
俳優、音樂師角力取幻技師、後トハ宜シイデシヨウ
（南部）
ノ如キモノト、シテ如何
（北畠）
其他公衆ノ觀覽ニ供スルトアルカラ宜シイ
（箕作）
之レハ限ツテ仕舞ツテハ、イケマセン
（槇村）
演技師ノ類、トシマスカ
（栗塚）
類ガ宜シイデシヨウ
（村田）
如キモノガ宜シイ
（栗塚）
技師等ノモノトシマスカ
（大尾崎）
ノ如キ、モノト云フガ宜シイ
（村田）
ノ如キ、デ善イ
（南部）
上ノ、其他ヲ削リテ「及ヒ斯ノ如キモノト演劇」云々トシテ宜シイ
（槇村）
ソレデ宜シイ
本條ハ第一項「蹈舞師」ヲ削リ「角力者又ハ幻技師及ヒ斯ノ如キモノト云々賃貸借ニ之レヲ適用ス」トシ第二項ヲ削除ニ決ス
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第九百六十二條朗讀ス
第九百六十二條　醫師、代言人、學術、文學及ヒ美術又ハ心藝ノ敎師ハ其勞務ヲ賃貸セス是等ノ者ハ其患者、訴訟人又ハ生徒ニ與フルコトヲ約シ若クハ與ヘ始メル世話ヲ與ヘ又ハ繼續スルコトニ付キ民事上責ニ任セス又患者、訴訟人又ハ生徒ハ是等ノ者ノ世話又ハ勞務ヲ求メテ其約諾ヲ得タル後其世話又ハ勞務ヲ受クルノ責ニ任セス
然レトモ若シ世話又ハ勞務ノ全部又ハ一分ニ於テ實際與ヘラレ又ハ供セラレタルトキハ其ノ互相ノ分限ト慣習及ヒ合意トヲ商量シテ其謝金又ハ報酬ヲ裁判上ニテ要求スルコトヲ得
是等ノ者ニ世話又ハ勞務ヲ約セシメタル當事者ノ一方カ正當ノ原由ナクシテ之ヲ受クルコトヲ拒絕シタルトキハ若シ其拒絕ヨリ他ノ一方ノ爲メ金錢上ノ損害ヲ生スルトキハ之ニ對シ賠償ノ言渡ヲ受ク
之ニ反シテ世話又ハ勞務ヲ約シタル後正當ノ原由ナクシテ之ヲ拒絕シタル者ハ因テ加ヘタル損害ヲ補償スルノ言渡ヲ受ク
（修正按）　第一項「代言人」ヲ「辯護士」ト改メ「生徒ニ與フルコトヲ約シ」以下左ノ如ク改ム生徒ニ與フルコトヲ約シタル世話ヲ與ヘ又ハ與ヘ始メタル世話ヲ繼續スルコトニ付キ民事上責ニ任セス又患者訴訟人又ハ生徒ハ是等ノ者ノ世話卽チ勞務ヲ求メテ其約諾ヲ得タル後之ヲ受クルノ責ニ任セス第二項「其人」ノ上ヲ左ノ如ク改ム然レトモ若シ勞務ノ全部又ハ一分ヲ實際與ヘタルトキハ第三項左ノ如ク改ム是等ノ者ノ勞務ヲ受クルコトヲ約シタル後正當ノ原由ナクシテ之ヲ受クルコトヲ拒絕シタル者ハ其拒絕ヨリ是等ノ者ニ金錢上ノ損害ヲ生セシメタルトキハ賠償ノ言渡ヲ受ク第四項「世話又ハ」ノ四字ヲ刪リ「勞務ヲ」ノ下「與フルコトヲ」ノ五字ヲ挿入ス
（箕作）
私ハ此條ハ削ツテ仕舞ヒタイト思フト云フモノハ當然ノ話シデ勞力ノ賃貸デハ無イ、一向イラン話シデアリマス
（栗塚）
併シ民法デ代言人又ハ醫師ヲ雇ヒマスコトハ通常ノ契約デアリマス寧ロ品格ヲ貴ブ爲メニ謂ツタノデ實ハ賃貸デアリマス
（松岡）
甚ダ困リマスガ代言人ト云フモノハ民事上責メニ任ゼント云フノハ何ウ云フモノデスカ
（箕作）
「コントラアンノメー」デシヨウ卽チ無名契約デアリマシヨウ
（栗塚）
左樣デス品格ヲ貴ブ丈ケノ話デアリマス
（松岡）
末項ノ損害賠償ノ言渡ヲ受ク、トアリマスハ民事上責メ無クシテ何ンノ責メカ約束シテ其事ヲ、シナカツタナラバ損害ダカラ償ハナケレバナラント云フハ、何ンノ爲メカ
（栗塚）
之レハ是非責ニ任ズルノデアリマス
（松岡）
之レハ何處カラ來タノデスカ
（南部）
一般自然カラ來タノデアリマス
（松岡）
卽チ民事上デ損害賠償ガ出來テ呉レバ又強制シテ出來ント云フト人ノ技術等ニ關係シタコトハ無イ
（栗塚）
私ノ云フノハ勞務ヲ與ヘテ居ルモノノト裏ヲ云フガ當然ト思ツテ居ツタガ云ハンデ置イタラ何ウナルカ
（南部）
無償契約ニスルカ否ヤデス
（松岡）
無償契約デアリマス今一ツ謂フト醫者ト病人ト豫メ約束シテ日本デモ御出入ノ醫者ニ扶持ヲ呉レルト云フコトモアルガ
（北畠）
日本デハ大分ニアリマス
（松岡）
ソウ云フ時分ニ何ウデアリマシヨウ
（南部）
矢張雇ニナルダロウ
（西）
只賃貸ト云ハン丈ケデアリマス
（大尾崎）
一年何程ト云フハ賃貸ラシイ
（箕作）
醫者ガ見テ斯フ云フ病ヒト診タガ私ニハ療治ガ出來ント云ツテ斷ルトカ或ハ向フデヤレト云フ時ハ繼續シナケレバナラント云フコトハ無イト云フノデアリマス
（大尾崎）
スルト之レハ賃貸デハアリマセン
（箕作）
之ハ無名契約デ後ノ二、三項ハ不當ノ利得ノ方カラ云フノデアリマス
（松岡）
之ハ削ル方ニ同意致シマス
（北畠）
言ハン方ガ宜シイ
（渡）
賃貸スルト云ツテ置イテ宜シイデシヨウ、示スコトハ、イラン云フ迄憎ムニモ及バン
（松岡）
スルト、云フニモ及バン
（渡）
前ノ條ト間髪ヲ容ンデシヨウ
（箕作）
餘計ナコトヲ云フノデス
（栗塚）
併シ如何ナモノデスカ
（箕作）
二項ニ至ツテハ裁判上ニ於テ要求スルコトヲ得、後トハ不當ノ利息デ行クノデアロウ
（栗塚）
書イテナケレバ日本民法デ見ルカラ、分ランカラ或ハ賃貸ト云フ人モアリマシヨウ
（松岡）
之レハ、思想ニモ浮バン話シデ是迄モ訴ヘタモノハアリマセン
（西）
俳優抔ニハ隨分他所ヘ往ツタトカ云フノガアリマシヨウ
（大尾崎）
一般ノ契約デヤツテ宜シイデシヨウ
（槇村）
然レドモ以下ハ何ウデスカ
（箕作）
不當ノ利得デ行クノデス
（南部）
精密ニ讀ンデ考ヘルト常ノ契約デハ、イカント云フ說ガアルト云フタ丈ケデアリマス
（松岡）
辯護人抔ハ訴訟法ニモ義務ガ定マリマス
（南部）
代理シタ時ノ話デアリマス
（槇村）
之レハ削ツタ方ガ宜シイ
（南部）
置イテ宜シイデシヨウ
（西）
置イタ方ガ宜シイト思ヒマス併シナガラ多數ナレバ何ンデモ宜シイ
（村田）
賃貸スルナレバ置クガ宜シイ、ソウデナイナラバ削ツテ宜シイ
（松岡）
「代言人」ハ削リタイ
（南部）
序デニ言フト云フノハ差支イハアリマスマイ
（渡）
削ルガ多數デシヨウガ私ハ保守黨デアリマス
（西）
私モ保守黨デアリマス
（村田）
私ハ削ル方デス
（北畠）
私ハアツテモ、ナクツテモ、ト云フ論ナレバ差支ガナイナラバ置イテ宜シイ
（箕作）
削ツタカラト云ツテモ弊ハアリマセン
（大尾崎）
賃貸ノ方ニ入レ無イモノカアリマスカラ
（南部）
序デニ云フコトハ幾ラモアルカラ宜シイデシヨウ
（栗塚）
謂ツテアルト仕合デアリマス、無名契約ノ類似ニ依ツテ捌クトカ賃貸ニ類似シタ代理ニ類イシタ、ト云フ人モアルカラ裁判上アルモノニ從フガ原則デアリマシヨウ
（渡）
何方ガ善イカ、ナラ、アル方ガ宜シイ
（西）
何方ニ、シヨウカナラバ削ル方ガ宜シイ
（松岡）
先ヅハ私モ置クコトニシマシヨウ
（渡）
ソレデハ多數ニ依ツテ置クコトニシマシヨウ
（栗塚）
修正ハ「醫師辯護士學術技藝」トナリマス「約シタル世話ヲ與ヘ」トシテ「生徒ニ與フル」コトヲ「約シタル世話ヲ與ヘ又ハ與ヘ始メタル世話ヲ繼續スルコトニ付キ」トヤリマシタ
（栗塚）
「民事上責メニ任セス」ハ「繼續スルコトニ付イテ法廷上ノ義務ナシ」トシテ宜シイダロウ
（栗塚）
御尤モデアリマス、生徒ニ約シタル世話ヲ與ヘ又ハ與ヘ始メタル世話ヲ繼續スルコトニ付キ法廷ノ義務ナシト致シマス、ソレカラ、又患者訴訟人又ハ生徒ハ是等ノ者ノ世話ヲ求メテ約諾ヲ得タル後チ其世話ヲ受クルノ責ニ任ゼズト致シマス
（箕作）
之レハ分リマシヨウ
（栗塚）
「然レトモ若シ世話ヲ與ヘタルトキハ」云々、トシマシタ
（箕作）
「然レトモ若シ實際ヲ世話ヲ與ヘタル」デシヨウ
（村田）
「若シ現ニ世話ヲ與ヘタルトキハ」デ宜シイ
（栗塚）
「實際ヲ世話ヲ與ヘタルトキハ互相ノ分限ト慣習及ヒ合意トヲ商量シテ謝金又ハ報酬ヲ裁判上ニテ要求スルコトヲ得」デス
（村田）
「慣習」ノ上ニ何時モ「其他ノ慣習」トアリマス、英文ニハ「其他」ト云フノガアリマス
（箕作）
佛蘭西ニハアリマセン
（槇村）
「拒絕ヨリ是等ノ者ニ金錢上ノ損害ヲ生セシメタルトキハ賠償ノ言渡ヲ受ク」デスカ
（栗塚）
左樣デス
（村田）
謝金及ビ報酬ト二ツハ、オカシイ
（栗塚）
三項ハ「是等ノ者ノ勞務ヲ受クルコトヲ約シタル後正當ノ原由ナクシテ之ヲ受クルコトヲ拒絕シタル者ハ其担絕ヨリ是等ノ者ニ金錢上ノ損害ヲ生セシメタルトキハ賠償ノ言渡ヲ受ク」ト致シマス四項ハ「勞務ヲ與フルコトヲ約シタル後」ト致シマシタ
（箕作）
醫者ヲ頼ミマス、スルト醫者ガ藥種屋デ高價ノ藥ヲ買ツテ來タ所デ斷ルト醫者ハ其病氣ノ爲メニ使ウ爲メニ買ツタカラト云フノデ償ヒガ取レルノデアリマス
（南部）
醫師辯護士及ビ、デハアリマセンカ
（箕作）
辯護士及ビ、デアリマシヨウ
（栗塚）
「及ヒ」ト致シマシヨウ
（大尾崎）
今日之レデ置キマシヨウ
本條ハ第一項「辯護士」ノ下「及ヒ」ノ二字ヲ加ヘ「學術技藝ノ教師ハ云々生徒ニ約シタル世話ヲ與ヘ又ハ與ヘ始メタル世話ヲ繼續スルコトニ付キ法廷ノ義務ナシ」云々トシ第二項「然レトモ若シ實際世話ヲ與ヘタルトキハ互相ノ分限ト」云々トシ其他報吿委員ノ修正ニ決ス
于時午前十時二十五分閉會