法律取調委員会 民法草案議事筆記 第63回
参考原資料
- 法律取調委員会 民法草案財產取得編議事筆記 , 自 第五十九回 至 第六十五回 [国立国会図書館デジタルコレクション]
備考
- 未校正のテキストデータです.
民法草按財產取得編第六十三回議事筆記
自第九百四條至第九百十七條
明治二十一年六月十一日午前第八時開會
(槇村)
始メマシヨウ
第九百四條朗讀ス
第九百四條 契約スルコトニ付キ完全ノ能力ヲ有スル者ニ非サレハ寄託ヲ受クルコトヲ得ス〔第千九百二十五條〕
然レトモ無能力者ハ仍ホ自己ノ手裏ニ存スル寄託物又ハ寄託ニ因テ利ヲ得タルモノヽ價額ノ返還ニ付キ民事上責ニ任ス但背信ノ場合ニ於テ刑事ノ訴ヲ爲スヘキトキハ之ヲ爲スコトヲ妨ケス〔第千九百二十六條〕
(修正) 第一項冒頭「契約」ノ上ニ「寄託ハ」ノ三字ヲ置キ「寄託」ノ二字ヲ「之」ニ改ム第二項「寄託物」ノ下ニ「ノ返還」ノ三字ヲ挿入シ「刑事ノ訴ヲ爲スヘキ」云々ヲ「刑事ノ訴權アルトキハ之ヲ行フコトヲ妨ケス」ト改ム
(栗塚)
最初ヲ「寄託」ト致シマス
(槇村)
受託者ハ其レヲ使ツテ仕舞ツタノダロウ
(栗塚)
使ツテモ惡意ガナケレバ宜シイ
(南部)
併シナガラ年ニ依テ違ヒガアルカラ「訴權アルトキハ」トシタノデアリマス
(元尾崎)
寄託スル方ノ奴ハ其レ丈ケノ害ヲ受ケル勘定ニナルソウスレバ能力者ナラ責ニ任ズル場合ガアツテモ不能力者ナラ責ニ任ゼヌ場合ガアル
(栗塚)
ソウデス瓶ヲ割ツテモ能力者ナラ承知セヌケレドモ無能力者ナラバ使ツテ仕舞ヘバ宜シイ
(元尾崎)
丁稚子僧ナドハイケナイダロウ
(村田)
使用人ハ先キニ別ニアリマス
(元尾崎)
天麩羅ヲ食ツテ仕舞ツタトカ何トカ云フコトガアル
(南部)
其レハ代務デス
(元尾崎)
ケレドモ誰某ニ渡シテ來イト云フノハ寄託ダロウ、萬一訟廷ヘ出タトキ裁判官ノ解シ樣次第ダ
(栗塚)
一人ガ之ヲ還償シ、請求次第直チニ原物ヲ還償シ樣ト云フ約束ダカラ矢張リ預カル方ノ側デス
(元尾崎)
其レハ餘程良ク區別ヲ付ケテ置カヌト良クナイ
(村田)
子僧ニ物ヲ持タセテヤルノハ違ウ
(元尾崎)
アレヲ使ツタトキハ費用受寄財產ニ刑法デハナツテ居ル
(元尾崎)
寄託物ノ返還ハ無能力者ニ返還スル場合カネ
(栗塚)
ソウデス
(元尾崎)
返還ハ返還デ利ヲ得ルコトハ變リハシマイ
(淸岡)
手裡ニ存スルト云フノデ初メ自分ガ預カツテ居ルト云フコトガ分ルカ知ラヌ、次項ハ寄託セラレテ自己ガ持テ居ルモノト云フノダロウ
(栗塚)
預ケルト云フコトガ能ク當ルノデ御座イマス
(元尾崎)
寄託物ノ返還ニ付キ民事迄責ニ任ジ寄託ニ依リ利ヲ得タルモノハ額ニ付キ民事上ノ責ニ任ズト云フノダロウ
(栗塚)
ソウデス
(元尾崎)
上ニモ「返還ニ付キ」ト入レレバ宜シイ
(村田)
其レハイラヌ、上ノ返還モ少シ丁寧過ル位ダ
(栗塚)
入ラヌト云フ說モアリマシタケレドモ賭易クシタ方ガ良カロウト云フノデ入レマシタ
(淸岡)
良カロウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第九百五條朗讀ス
第九百五條 受寄者ハ受寄物ノ監守及ヒ保存ニ付テハ自己ノ財產ニ加フルト同一ノ注意ヲ加フルコトヲ要ス〔第千九百二十七條第千九百三十三條〕
然レトモ若シ受寄者自ラ求メテ寄託ヲ受ケ又ハ寄託カ單ニ受寄者ノ利益ノ爲メ且需用ノ場合ニ於テ受寄者ニ物ノ使用ヲ許ス爲メ爲サレタルトキハ受寄者ハ善良ナル管理者ノ注意ヲ加フルノ責ニ任ス〔第千九百二十八條〕
(修正) 第二項「單ニ受寄者」以下「物ノ使用」迄ヲ左ノ如ク改ム單ニ受寄者ノ利益ヲ目的トシ其需用ノ場合ニ於テ之ニ物ノ使用
(栗塚)
二項ハ「單ニ受寄者ノ利益ヲ目的トシ其需用ノ場合ニ於テ之ニ物ノ使用ヲ許ス爲メ」トヤリマシタ
(元尾崎)
「爲サレタル」ハ「爲シタル」デ良カロウ
(栗塚)
「カ」ト云ヘバドウシテモ「ラレ」ト云ハナケレバナリマセン
(元尾崎)
「ヲ」トシタラ良カロウ
(栗塚)
ソウスルト「又ハ單ニ」トシテ「寄託ヲ爲シタルトキハ」ト云ハナケレバナリマセン
(大尾崎)
「需用ノ場合ニ於テ物ノ使用ヲ許ス爲メ」ト云フノハ分ラヌ
(栗塚)
「御入用ノトキハ御使ヒナサレテ宜シウ御座イマス」ト云フノデ御座イマス
(南部)
需用ノ場合ニハ使ヘト云フノデスカラ唯使用ヲ許スト云フト、使用貸借ニナリマス
(栗塚)
馬ヲ村田サンニ預ケテ買フトキハ御用ノトキハ御使ヒ下サイト云フ
(元尾崎)
「使用ヲ許サレテ」ト云フタ方ガ良ク分ル
(栗塚)
ソウスルト受寄者カラ言葉ヲ立テナケレバナリマセン「又ハ單ニ其利益ヲ目的トシ需用ノ場合ニ於テ使用ヲ許サン」
(元尾崎)
其レデ宜シイ
(淸岡)
「單ニ受寄者ノ目的トシテ物ノ使用ヲ許ス爲メ寄託サレタルトキハ」トシタラ良カロウ
(南部)
其レハ良イ樣ダ「寄託ヲ受ケタルトキハ」ガ良イ
(槇村)
此方ガ一番良ク分ル
(淸岡)
原案デ良カロウ
(槇村)
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第九百六條朗讀ス
第九百六條 前條ニ豫定シタル終ノ場合ニ於テ受寄者カ物ヲ使用シタルトキハ第八百九十三條ヲ之ニ適用ス
總テ其他ノ場合ニ於テ若シ受寄物及ヒ受寄者ノ物カ共同ノ危險ニ罹リ受寄者其一ノミヲ救護スルコトヲ得ルトキ受寄物ノ價額カ著シク超ユルニ於テハ之ヲ救護スルコトヲ要ス但自己ノ物ノ價額ノ賠償ヲ受クルコトヲ妨ケス
(元尾崎)
「之ニ」ハ入ラヌダロウ
(栗塚)
宜シウ御座イマシヨウ
(南部)
「之ニ」ハ削リマシヨウ
(槇村)
但自己ノ物ノ額ニ賠償ヲ受ケルト云フコトハドウデシヨウ
(南部)
著シイト云フ字ガアルカラ良サソウナモノデス
(栗塚)
但カラ下ハ隨分綿密論デス
(大尾崎)
出來ルモノデナイ
(栗塚)
火事ノトキ貴君カラ預ツテ居ル書物ガアルニ私ガ行燈ヲ持テ出ルトカ知レマセン、良ク判斷ヲスルコトモ六ケ敷ウ御座イマスケレドモ
(元尾崎)
自分ノ物デモ大事ナ物ヲ捨置イテ下駄ヲ持テ出ル樣ナコトガアルカラ
(槇村)
日本ノ人情デハ人カラ預ツタ大事ノ物ト云ヘバ其レヲ保護シテ自分ノ物ヨリ保護スルカ、後チニ自分ノ物ガ傷ンダト云フテ賠償ヲ受ケル者ハアルマイ
(元尾崎)
之ガアルト好物ガ世ニ蔓ル樣ニナルカラ二項丈ケ削ツテ良イ
(栗塚)
但丈ケ御削リニナツテハ如何デス
(南部)
但カラ下ヲ削ルト可笑シクナル、保護ハシナケレバナラヌ、其レデ賠償ハ求メルコトガ出來ヌト云フト酷イ
(大尾崎)
削ルガ宜カロウ駄目押シモ邪魔ニナル
(淸岡)
八百九十三條ノ權衡カラ云フテモ二項ヲ削ルハ宜シクナイ
(南部)
之ハ九百五條ノコトヲ註解シタノデス――――大キナ貴イ物ト、極ク安イ物トアツタトキハ良イ物ヲ持テ逃ゲルノガ人情デス、其コトヲ註ニ云フテアリマス
(栗塚)
二項ヲ削除スレバ此條ハ前條ノ末項ノ但ニシテ「但此終リノ場合ニ於テ受寄者カ物ヲ使用シタルトキハ第八百九十三條ヲ適用ス」トスレバ良イ
(大尾崎)
良カロウ
(南部)
別項ニシテ「前項ノ場合ニ於テ」トシタラ良カロウ
(大尾崎)
但ニスルガ宜シイ
本條ハ削除シ第一項ハ前條末項ニ但書トシテ左ノ如ク加フルコトニ決ス
第九百五條末項但書但此終リノ場合ニ於テ受寄者カ物ヲ使用シタルトキハ第八百九十三條ヲ適用ス
第九百七條朗讀ス
第九百七條 返還スルコトノ遲滯ニ付セラレタル受寄者ハ普通法ニ從ヒ意外ノ滅失又ハ不可抗力ニ因ル滅失ノ責ニ任ス〔第千九百二十九條〕
(村田)
「意外ノコト又ハ不可抗力ニ因ル」デ良カロウ
(栗塚)
其レデ宜シウ御座イマシヨウ
(槇村)
修正シテ先キヘ行キマシヨウ
本條ハ左ノ如ク決ス
「意外ノ滅失」ヲ「意外ノコト」ト改ム
第九百八條朗讀ス
第九百八條 寄託者カ受寄者ニ寄託物ノ本性ヲ隱秘シタル□□受寄者之ヲ知ラント求ムルコトヲ得ス又如何ナル場合ニ於テモ他人ニ之ヲ知ラシムルコトヲ得ス但損害アルトキハ其賠償ヲ爲ス〔第千九百三十一條〕
(修正) 「求ムル」云々以下左ノ如ク改ム探求ス可ラス又寄託者其本性ヲ知ラシメタル場合ニ於テモ受寄者之ヲ他人ニ泄スコトヲ得ス但損害アルトキハ其賠償ヲ爲ス
(栗塚)
本文ニ書イテアル丈ケハ意ヲ盡シテ居リマセンカラ註ニ在ル意味ヲ取テ言葉ヲ足サナケレバナリマセンカラ修正致シマシタ
(南部)
「求ムル」ト云フ寄託者ニ求ムル樣ニナルカラ「探求」ニ致シマシヨウ
(槇村)
ドウ云フ場合ダロウ
(栗塚)
或ル私ノ友人ガ鍵ヲ預ケズニ箱ヲ預ケテ外國ヘ行キマシタ、何ヤラ分ラヌ昨年友人ガ歸ツタカラ箱ヲ返ヘシマシタ、何デ之ヲ預ケタカト云フト、家内ノ者ニ見ラレテハ困ル物ガ入ツテ居タノデ御座イマス
(村田)
女房ノ衣服ヲ外國デ拵エテ造ルノデス――――外國ヘ往ツテ女房、子ガナイト云ツテ其品物ヲ公使館ヘ頼ンダノデス其時分ニ開カレタ處ガ女ノ衣服ガ出テ虛ダト云フコトガ現ハレタ
(元尾崎)
其レハ損害賠償ヲ訴ヘテ宜シイ原文デハ隱シタ場合バカリ云フテ居ル
(栗塚)
ソウデス、御前サン丈ケニ云フテ置クガ枕繪ヲ集メテアルノダカラ
(元尾崎)
之デハ分ラヌ
(槇村)
下ノ本性ハ寄託者ガ其本性ヲ受寄者ニ明カシタルトキハト云フ意味デスカ
(栗塚)
ソウデス
(元尾崎)
修正デハ公然預ケタト同ジニナル
(南部)
惡ルケレバ原案ノ通リデ良カロウ
(元尾崎)
原文デハ「他人ニ知ラシムルコトカナラヌ、若シ知ラシメテ損害カアツタラ其責ニ任ス」トアル
(村田)
若シ之ヲ泄シタルガ爲メ損害アルトキハト云フ意味デス
(栗塚)
「受寄者ノミニ知ラシメタル場合ニ於テモ之ヲ他人ニ泄スコトヲ得ス」
(槇村)
其レデ宜シイ
(元尾崎)
其レデ「若シ之ヲ泄シタルカ爲メ損害アルトキハ賠償ノ責ニ任ス」トシ樣
(栗塚)
其レデ宜シイ
(村田)
「之ヲ知ラント」ハ可笑シクハナイカ、「知ランコトヲ探求ス可カラサル」デナケレバナラヌ
(栗塚)
ソウスルコトヲ探求スルデス
(槇村)
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ左ノ如ク決ス
寄託者カ受託者ニ寄託物ノ本性ヲ隱秘シタルトキハ受寄者之ヲ知ラント探求スヘカラス又其本性ヲ受寄者ノミニ知ラシメタ場合ニ於テ之ヲ他人ニ泄スコトヲ得ス若シ之ヲ泄シタル爲メ損害アルトキハ賠償ノ責ニ任ス
第九百九條朗讀ス
第九百九條 受寄者ハ受寄物ヲ使用スルコトヲモ又其果實ヲ消費スルコトヲモ得ス但此カ爲メ寄託者ヨリ明示又ハ默示ノ許諾ヲ受ケタルトキハ此限ニ在ラス〔第千九百三十條、第千九百三十六條〕
此許諾ハ寄託ニ使用貸借ノ性質ヲ與フルニ足ラス
(修正) 第一項「默示ノ許諾ヲ受ケ」ヲ「默示ノ許諾アリ」ト改ム
(栗塚)
「寄託者ノ明示又ハ默示ノ許諾アリタルトキハ」ト修正致シマス犬ノ子ガ產レタラ其子ハ自分ノ物ニスルコトハ出來ナイ、鶏ガ卵ヲ產ンデモ卵ヲ自分ノ物ニスルコトハ出來ナイ、寄託ノ承諾デスルノハ宜シイ
(淸岡)
「使用シ又ハ其果實ヲ消費スルコトヲ得ス」デ良カロウ
(南部)
「使用スルコトヲ得ス又其果實ヲ消費スルコトヲ得ス」デ宜カロウ「ヲモ」ハ重モ過ギル
(槇村)
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第九百十條朗讀ス
第九百十條 受寄者ハ其收取シタル果實及ヒ產物ト共ニ又ハ果實及ヒ產物ヲ金圓ニ換ヘサルヲ得サリシトキハ其代價ト共ニ原物其物ヲ返還スルコトヲ要ス但前條ニ豫定シタル場合ニ妨ナシ〔第千九百三十二條、第千九百三十六條〕
若シ受寄者カ物ニ付キ或ル償金ヲ受取リ又ハ或ル權利若クハ利益ヲ得取シタルトキハ之ヲ寄託者ニ移轉スルコトヲ要ス〔第千九百三十四條〕
若シ受寄者カ故意ニテ受寄物ヲ消費シ移付シ又ハ隱竊シタルトキハ遲滯ニ付セラルヽコト無クシテ當然總テノ損害賠償ノ責ニ任ス但背信ノ爲メノ公訴ヲ妨ケス
(槇村)
其代價ト共ニ原物其モノト云フノハ
(栗塚)
預カツタ物カラ出タ果實デス
(淸岡)
產物ハ
(槇村)
鶏ノ卵ダロウ
(栗塚)
犬ノ子ナドハ產物デス
(槇村)
果實ハ
(栗塚)
詰リ一ツコトデス併シ犬ノ子ナドハ果實ト云ヘマセンカラ、其レデ產物トヤツタノデ御座イマス
(槇村)
原物ハ犬ノ親カ
(栗塚)
ソウデス
(元尾崎)
卵ヲ質ツテ代價ヲ取ツタトキハ代ト親トヲヤル
(村田)
預カツタ者ガ子ヲ取ツタトキハ原トノ物ト一緒ニ返ヘス、前條ノ「預定」ト云フノハ豫メ定メルト云フコトハ見ヘマセンカ
(栗塚)
前モ定メタルト云フ意味ガアルノデ御座イマスガ「定メタル」デモ宜シイ
(淸岡)
「豫定」ハ具合ガ惡ルイ「定メタル」ガ宜シイ
(南部)
「定メタル」デ宜シイ
(栗塚)
末項ノ隱竊ト云フノハ餘程六ケ敷イ字デ御座イマス
(村田)
之ハ支那ニ在ルガ胡麻化スト云フ字デス梛移ト云フコトダ
(南部)
處ガ自分ノ物モ入レテアルカラ
(栗塚)
「梛移」デハ盡シマセン
(元尾崎)
隱竊デ宜シイ
(村田)
分ラヌゼ
(元尾崎)
ソウ云フコトハ梛移トシテ置カウ
(栗塚)
意味ハ少シ狹クナリマス
(淸岡)
彼ハ「梛移出納」ダ
(槇村)
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ左ノ如ク決ス
「豫定」ヲ「定メタル」ト改ム
第九百十一條朗讀ス
第九百十一條 若シ受寄者ノ相續人カ寄託ヲ知ラスシテ寄託物ヲ消費シ又ハ移付シタルトキハ相續人ハ因テ得タル利益ノ額ニ滿ツルマテ其責ニ任ス〔第千九百三十五條〕
右ノ條例ハ遺忘又ハ混淆ニ因リ自己ノ物ト思量シテ寄託物ヲ處分シタル受寄者ニ之ヲ適用ス
(修正) 第一項「寄託物」ヲ「其」ト改メ「又ハ」ノ下「之ヲ」ノ二字ヲ挿入シ「相續人ハ」ノ四字ヲ刪ル第二項「混淆」ヲ「錯誤」ト改ム
(栗塚)
其物ヲ處理シ又ハ移付シタルトキハト致シマス
(村田)
之ハ寄託物ハアツタ方ガ宜シイ
(南部)
相續人ハアル方ガ宜シイ
(槇村)
原案ニスルカ
(栗塚)
「消費又ハ之ヲ移付スル」ト云フコト丈ケヲ修正致シマシヨウ、二項ハ「混淆」ヲ「錯誤」ト改メマス
(村田)
ソウダロウ英文デハ「ミステーキ」トアル
本條ハ左ノ如ク決ス
第一項「又ハ移付シタル」ヲ「又ハ之ヲ移付シタル」ト改ム第二項「混淆」ヲ「錯誤」ト改ム
第九百十二條朗讀ス
第九百十二條 寄託物ノ返還ハ寄託者若クハ其相續人又ハ其法律上若クハ合意上ノ代人ニ之ヲ爲スコトヲ要ス〔第千九百三十七條、第千九百三十九條乃至第千九百四十一條〕
(淸岡)
「其法律」トアル「其」ト云フ字ハ可笑シイ
(南部)
法律上ノ代人デス
(栗塚)
「其」ト云フノハ寄託者ノト云フノデ御座イマス
(槇村)
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第九百十三條朗讀ス
第九百十三條 返還ニ付キ場所ノ定ナキトキハ受寄者カ寄託物ヲ移置シタルトキト雖モ詐僞ナキトキハ其寄託物ノ現在ノ場所ニ於テ其返還ヲ爲ス〔第千九百四十二條、第千九百四十三條〕
(栗塚)
之ハ費用ノ内カラ出タノデ御座イマスカラ
(村田)
英文ニハ「返還ノ場所ニ付合意ナキトキハ寄託者ハ寄託物ヲ移置シタルトキト雖モ寄託物ノ現在シタル場所ニ於テ返還ス可シ但詐欺ノ意思ヲ以テ寄託物ヲ移轉シタルトキハ此限ニ在ラス」トアル
(淸岡)
日本文ニハ可笑シイカラ村田サンニ同意シ樣
(栗塚)
但ニスレバ「但受寄者カ寄託物ヲ移置シタルトキト雖モ詐欺ナキトキハ此限ニ在ラス」トシナケレバナリマセン
(槇村)
原案ガ宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第九百十四條朗讀ス
第九百十四條 寄託者ノ請求次第物ヲ返還スヘキ受寄者ノ義務ハ左ノ場合ニ於テ止ム
第一 若シ受寄者カ其物レ己レニ屬スルコトヲ證スルコトヲ得ルトキ
第二 若シ受寄者カ次條ニ從ヒ留置權ヲ行フヘキ場合ニ在ルトキ
第三 若シ渡方差押卽チ返還ニ對スル故障カ正式ヲ以テ受寄者ニ吿知セラレタルトキ
第四 若シ受寄者カ其物ノ盜マレタルモノナルコトヲ發見シテ其所有者ヲ知ルトキ此場合ニ於テハ受寄者ハ所有者ニ寄託ヲ吿發シ相應ノ期間ヲ定メテ寄託者ト立會ノ上物ヲ要求スヘク若シ此期間ヲ過キテ所有者カ來到セサルトキハ寄託者ニ返還ヲ爲スヘキ旨ヲ催吿スルコトヲ要ス〔第千九百三十八條、第千九百四十四條、第千九百四十六條〕
(修正案) 第二號「行フヘキ」ヲ「行フ」ト改メ第四號「發見シテ」ヲ「發見シ且」ト改メ「吿發シ」ノ下ニ「且定メタル」ノ五字ヲ挿入シ「期間ヲ定メテ」ヲ「期限内ニ」ト改メ「來到セサル」ヲ「來ラサル」ト改ム
(栗塚)
盜マレタモノダト云フコトデ御座イマスカラ立會ニヤロウト思ヒマスカラ置イテ下サイ、若シ置イテ下サラヌトキハ此儘ヤツテ仕舞ヒマスゾヨ
(槇村)
受寄者ハ盜マレタル物ト云フノハ可笑シイ
(栗塚)
「盜品ナルコトヲ」デモ宜シイ「盜贓ナルコトヲ」デモ宜シイ
(南部)
物ガアルカラ「贓」ノ方ガ良イカ知レヌ
(槇村)
「盜贓」ガ宜シイ
(元尾崎)
其レガ良カロウ
(淸岡)
「盜マレタル物」トカ何トカ云フコトニ云フテ居ルダロウ
(元尾崎)
「此場合」ト云フ處ガ續クト可笑シイ「此終リノ場合ニ於テ」ガ宜シイ
(村田)
「寄託ヲ吿發シ」ハ分リ惡クイ
(大尾崎)
盜マレタルハ原案デ宜シイ
(槇村)
ソンナラ原按デ宜シイ
(村田)
「寄託ヲ吿發シ」ハ「寄託アリシコトヲ」ノ方ガ良クハナイカ
(大尾崎)
「吿發」ヨリ「通知」ガ宜シイ
(栗塚)
新工事吿發事件ト云フ樣ナ處デス
(元尾崎)
「通知」デハイケマセンカ
(栗塚)
「通知」デモ宜シイ「通知シ」ハ「通知スルコトヲ要ス」ト云フ處ニ掛ル積リデ御讀ミニナラヌトイケマセン
(淸岡)
寄託ノ事實ハ六ケ敷イ
(栗塚)
「寄託アリタルコトヲ」
(村田)
其レデモ宜シイ
(元尾崎)
所有者ノ寄託ガアツタ樣ニ聞ヘル
(槇村)
「受寄者ハ寄託ノアリタルコトヲ所有者ニ通知シ」トヤルカ
(西)
「寄託ノコトヲ通知シ」ガ宜シイ
(槇村)
「寄託ノコトヲ」ニ同意シ樣
(栗塚)
「通吿シ」ハ如何デス
(元尾崎)
「通吿シ」ガ宜シイ
(南部)
「通吿」ガ宜シイ
(大尾崎)
「寄託ノコトヲ通吿シ」デ宜シイ
(元尾崎)
「此場合」ト云フ所カラ別項ニスルガ宜シイ、ソウシテ「此終リノ場合ニ於テ」トスルガ宜シイ
(南部)
コウ云フコトガ治罪法ニモアル
(槇村)
「此場合」カラ別項ニスルガ宜シイ
(南部)
第四ノ内デ分ケルガ宜シイ
(栗塚)
第四ノ内ノ別項ニ致シマシヨウ
本條ノ第四ハ左ノ如ク改メ他ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第四若シ受寄者カ其物ノ盜マレタルモノナルコトヲ發見シ且其所有者ヲ知ルトキ此場合ニ於テハ受寄者ハ所有者ニ寄託ノコトヲ通苦シ且定メタル相應ノ期間内ニ寄託者ト立會ノ上物ヲ要求スヘク若シ此期間ヲ過キテ所有者カ來ラサルトキハ受託者ニ返還ヲ爲スヘキ旨ヲ催吿スルコトヲ要ス
第九百十五條朗讀ス
第九百十五條 寄託者ハ物ノ保存ノ爲メ受寄者ノ爲シタル必要ノ出費ト物カ受寄者ニ加ヘタル損害トヲ之ニ賠償スルコトヲ要ス〔第千九百四十七條〕
右ノ償金ノ皆濟ヲ受クルマテ受寄者ハ寄託物ニ付キ留置權ヲ行フコトヲ得〔第千九百四十八條〕
(修正案) 第一項「出費」ヲ「費用」ト改メ「物カ」ヲ「物ヨリ」ト改メ「受寄者ニ加ヘタル」ヲ「受寄者ノ受ケタル」ト改ム
(栗塚)
貴君カラ預リタル馬ヨリ損害ヲ受ケタルトキハ償ヲ求メル
(元尾崎)
私ノ馬ヲ人ニ預ケタ處ガ其馬ガ馬車ヲ壞ハシタ、其レハ損害ヲ受ケナケレバナラヌカ
(栗塚)
私ガ村田サンニ預ケタ馬ガ病馬デアツテ其病ガ他ノ馬ニ傳染シタル場合ニ其病馬ナルコトヲ知ツテ居タトキハ損害ヲ償ハナケレバナリマセン
(元尾崎)
末ノ方ハ削ツタガ宜カロウ
(大尾崎)
之ハ劍呑ダ
(元尾崎)
日本ノ習慣ニ違ウ
(栗塚)
伊太利ニモアリマス佛蘭西文ハ「寄託ノ爲メ受寄者ニ加ヘタル損害」トアリマス
(槇村)
寄託ノ爲メト、物ヨリ加ヘタルトハ違ヒハセヌカ
(元尾崎)
「其受寄物ニ付イテ受ケタル損害ヲ賠償スヘシ」トアルカラ少シ違ウ
(栗塚)
寄託ニ際シテ出ルモノデ、使用貸借デ御許シニナツタ所ト能ク似テ居リマスカラ削ルコトハ出來マスマイ
(元尾崎)
病ナドハ預ケル前ニ在ツタトカ無イトカ云フコトガ分ル、ガ馬ナドハひよいト物ヲ見テ驚クコトガアルカラ
(栗塚)
ソウ云フコトハ入リマスマイ、私ガ貴君ニ皮ヲ預ケ申シタ處ガ、其レガ腐ツテ他ノ物ニ害ヲ及ボシタト云フノハ大槪承知スルコトガ出來ルニ預ケタ
(淸岡)
重イ物ヲ藏ニ預ケテ其重ミノ爲メニ根太ガ陷チタ
(元尾崎)
其レモ預カル者ガ此位ノ重ミガアルト云フノハ知ツテ居ルカラ
(村田)
油紙ナドヘ包ンデ預ケレバ火ガ付クカラ
(槇村)
之ハ寄託者ハ其瑕疵ヲ知ランデナラヌ有害物ヲ預ケル、其レカラ受寄者ガ受ケタ損害賠償デ、其瑕疵ガ寄託以後ニ生ジタルモノナラ損害ヲ免カレバ、其レダカラ、馬ガ病ノアルコトヲ默シテ預ケタルトキハ損害ヲ出サナケレバナラヌ
(元尾崎)
註ノ通リ本文ガ書イテナイカラ直スガ宜シイ
(栗塚)
伊太利ノハ寄託者ハ受託者ガ寄託物件ノ保存ニ關シテ消費シタル一切ノ費用ヲ還償シ且寄託ニ關シテ受託者ノ蒙ラシメタル一切ノ費用ヲ賠償セシムル
(大尾崎)
其レナラ宜シイ、瑕疵ノ有ル物ヲ隱シテ預ケタ場合ナラ賠償ヲシナケレバナラヌ
(栗塚)
其レハ裁判官ニ委ネテ置イテハドウデス、八百九十九條ト八百九十八條トヲ併セテ此處ヘ出シタノデス
(大尾崎)
之ハ「瑕疵」ト云フ字ガアルカラ良イノダ
(南部)
其レデハ「物ノ瑕疵ニ受ケタル」トスレバ宜シイ
(槇村)
其瑕疵ハ預ケルトキ已ニアツタ瑕疵ト見ラレルカ知ラン
(南部)
其レハ使用ノ所ニ在リマスカラ自然ニ分ラナケレバナラヌ
(栗塚)
詰リ彼ノ條ヲ呼ビ還ヘシテ來タノデ御座イマスカラ「費用ハ物ノ瑕疵ニ依リ受寄者ノ受ケタル」トシテハ如何デス
(大尾崎)
預カツタ後ニ瑕疵ノ付クノニ及バヌトアル
(淸岡)
佛蘭西ノ法律ニハ「付託ノ爲メ受寄者ニ蒙ラシメタル總テノ損害」トアル
(栗塚)
少シ違ウ樣デス、使用貸借ノ方ハ借リタ人ガ知ツテ居タカ居ラヌカト云フコトヲ問フガ、此處ハ預リタル人ガ損ヲスル側デアルカラ違ウゾヨ、故ニ知ル知ラヌニ關ハラズデス
(元尾崎)
預カツタ人ガ損ヲスルトバカリト限ラヌ、飼養料ヲヤツテ預ケテ置ク幾ラカ利益ノアルモノダ
(南部)
處ガ之ハ無償名義デ御座イマスカラ
(大尾崎)
時トシテハ需用ノトキハ御使ヒナサイト云フトキハ得ガアル
(元尾崎)
馬ヲ飼ウニ飼養料ヲヤル
(南部)
飼養料ヲヤル丈ケ馬ニ食ハセルカラ矢張リ得ニナラヌ
(槇村)
此處ハ利益ノナイモノダ
(栗塚)
馬ヲ預カツテヤルト云フノハ預カル人ガ損ヲシテ居ルト見テ居ルノデス
(元尾崎)
利益ガアレバコソ預カル
(栗塚)
ソウ云フコトガアツテモ其レガ本體デハナイ
(元尾崎)
「寄託者カ其瑕疵アルコトヲ知ツテ受寄者ニ知ラシメスシテ損害ヲ加ヘタルトキハ」トシタラ良カロウ
(大尾崎)
ソウスルト使用貸借ト同ジニナル、「物ノ瑕疵ヨリ受寄者ノ受ケタル」トシテ置ケバ宜シイ
(栗塚)
「物ニ依リ受寄者ノ受ケタル」トシテハ如何デス
(村田)
瑕疵ガ無ケレバ受ケル譯ハナイカラ同ジコトダ
(南部)
「物ノ瑕疵ヨリ」トシテ餘リ委シク云ハヌ方ガ宜シイ、裁判官ニ任セル
(槇村)
ソンナラ此儘デ宜シイ
(栗塚)
此處デ書キ分ケ樣トスルト使用貸借ト權衡ガ惡ルクナリマス
(大尾崎)
瑕疵ノアルコトハ預ケ人ハ知テ居ルガ預リ人ハ知ラヌコトニナル
(淸岡)
瑕疵バカリデナイ
(元尾崎)
瑕疵ガナケレバ損害ノ及ボシ樣ガナイ、此通リニシテ置クト跡カラノ瑕疵デモ出來ル樣ニナル
(村田)
書クト却テ分ラナクナル
(元尾崎)
若シ瑕疵アルコトヲ知ツテ受寄者ニ吿ゲズシテ受ケタルトキハトシナイト此條ハ有害ダ
(栗塚)
寄託者ガ賠償ヲシナケレバナラヌ、費用モ償ツテヤラナケレバナラヌ
(大尾崎)
馬車馬ヲ預ケテ損害ヲ蒙ラセレバ償ハナケレバナラヌト云フ論ガ出ル
(槇村)
原案ガ多數ダ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第九百十六條朗讀ス
第二款 已ムヲ得サル寄託及ヒ旅店ニ於ケル寄託
第九百十六條 寄託者カ火災、洪水、難船、地震、暴動ノ如キ不可抗ニシテ且不測ノ事變ニ因リ寄託ヲ爲スニ強要セラレタルトキハ其寄託ハ「已ムヲ得サル寄託」ト稱セラル〔第千九百四十九條〕
已ムヲ得サル寄託ハ總テノ方法ニ因リ又情况ヨリ生スル事實ノ推定ニ因テモ之ヲ證スルコトヲ得〔第千九百五十條〕
其他已ムヲ得サル寄託ハ任意ノ寄託ノ規則ニ從フ但背信ノ場合ニ於テハ刑法ニ記載シタル刑ノ加重ヲ妨ケス〔第千九百五十一條〕
(修正案) 第一項「其寄託ハ」ヲ「其寄託ヲ」ト改メ「寄託ト稱セラル」ヲ「モノト稱ス」ト改ム第三項但以下刪除ス
(栗塚)
一項ハ「寄託ヲ已ムヲ得サルモノト稱ス」ト致シマス
(槇村)
「其寄託ヲ已ムヲ得サル寄託ト稱ス」ガ本統ダロウ
(南部)
「其寄託ヲ」ト云ハナケレバナラヌ
(栗塚)
括孤ヲ刪リマス、其レカラ末項ノ但ハ刪リマシタ、刑ノ加重ヲ民法デ云フノハ變デ御座イマスカラ刪リマス
(元尾崎)
「強要セラレタル」ト云フノハ可笑シイ
(栗塚)
人カラ強要セラルルトキデ、火事ノトキ鳥渡御預リ下サイト云フノデス
(大尾崎)
事變カラ強要セラルルハ可笑シイ
(淸岡)
不測ト云フノハ大火事ト云フコトダロウ
(村田)
先キニ知レナイト云フコトダ
(栗塚)
豫見セザル事變デ御座イマス
(淸岡)
「不可抗ノ事變ニ依リ」デ良カロウ
(村田)
「意外ノ事變」ガ良カロウ
(栗塚)
事柄ニ當ツテ御論ニナレバ同ジコトデス之ハ例デ御座イマス唯「不可抗ニシテ且不測ノ事變ニ依リ」デ宜シイノデ御座イマス
(淸岡)
「如キ」デ宜シイノダ
(栗塚)
其レハ反對デ御座イマス
(元尾崎)
其レハ宜シイガ強要セラルルハ變ダ
(栗塚)
「寄託者何々ノ如キ不可抗ニシテ且不測ノ事變ニ際シ已ムヲ得ス寄託ヲ爲シタルトキハ其寄託ハ已ムヲ得サル寄託ト稱ス」
(南部)
「止ヲ得ス」ト云フコトヲ書ケバ「止ヲ得サル寄託」ト云フコトハ書カンデモ宜シイ樣ニナル
(栗塚)
タベノ客ハ能ク柿ヲ食ウ客ダト云フ樣ニナル
(槇村)
不測ハ如何カ
(淸岡)
二ツ書カナケレバナラヌト云フコトハナイ
(村田)
已ムヲ得ザルノ條件ダカラ宜シイ
(栗塚)
「不可抗ニシテ且不測」ヲ止メテ「暴動ノ如キ事變ニ因リテ」トシテハ如何デス
(淸岡)
「不可抗ニシテ且不測」ト云フノハ良クナイ
(元尾崎)
「不可抗」ヲ「不測ノ事變ニ因リ」トシテハドウダ
(槇村)
不可抗デモ豫テ知レテ居ル事變ナレバ之デハナイト云フノダ
(元尾崎)
二ツ入用ナノダ、火災デモ遠クカラ燒ケテ來タノナラ知レテ居ル
(淸岡)
雨ガ降ルカラ水ガ出ルダロウト思テ居タライケナイト云フコトハナイ
(南部)
ソレデ宜シイ
(槇村)
每年水ノ湛ヘルト云フコトヲ知テ居ルノハ之、デハナイ
(栗塚)
其レハ不測デハナイ
(西)
原案デ宜シイ
(南部)
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第九百十七條朗讀ス
第九百十七條 旅店主人及ヒ下宿屋主人ハ自己ノ方ニ止宿セシ旅人ノ携帶シタル手荷物ニ付テハ已ムヲ得サル受寄者ト看做サル〔第千九百五十二條乃至第千九百五十四條〕
舟車運送人及ヒ其他水陸運送營業人ノ營業カ商業ナルトキハ自己ニ運送ヲ任カセラレタル荷物ニ關シテモ亦同シ〔第千七百八十二條佛商第九十六條以下〕
然レトモ本條ニ定メタル受寄者ハ有償名義ニ於ケル契約者ノ通常ノ責任ニ從フ
(修正案) 第一項「旅人」ヲ「人」ト改ム第二項「其他」以下ヲ左ノ如ク改ム其他水陸運送ノ營業人ノ自己ニ運送ヲ任カセラレタル荷物ニ付テモ亦同シ但其營業カ商業ナルトキニ限ル
(栗塚)
「旅人」ヲ「人」トヤリマシタ
(村田)
「旅人」デ良カロウ
(栗塚)
「族人」ト云フト下宿屋ガ困リマス
(淸岡)
「止宿セシ人」ト云フト誰デモ良イカ
(元尾崎)
雇人デモ良イカ
(南部)
其レハ寄留ダカライケナイ
(淸岡)
親類ノ叔母サンガ泊リニ來タトキハ旅人ニナル
(栗塚)
其レハイケマセン
(村田)
旅人ト看テ良カロウ、コウ書イテ置クト下宿ヲシテ居ル者ガ入ル樣ニナル矢張リ「旅」ノアル方ガ良イ
(淸岡)
「旅」ノアル方ガ良イ
(南部)
其レデハ入レテ置キマシヨウ
(大尾崎)
旅人ガ宜シイ
(元尾崎)
旅人ハ學校生徒モ入ルカ
(栗塚)
入リマセン
(元尾崎)
ソンナラ旅人デ宜シイ
(槇村)
生徒ノ荷物ナドハ已ムヲ得ザル受寄者デハナイカ
(栗塚)
ソウデハアリマセン
(南部)
自分ガ借家ヲシタノモ同ジコトデス
(栗塚)
恰度溫泉ヘ往テ衣物ヲ脫イデ置クトカ時計ヲ置クトカ云フノガ此處デス風呂ニ一杯這入ル人モ旅人ト云ハナケレバナラヌ、二項ハ「其他水陸運送ノ營業人ノ自己ニ運送ヲ任セラレタル荷物ニ付テモ亦同シ但其營業カ商業ナルトキニ限ル」ト致シマス
(村田)
此方ガ宜シイ
(淸岡)
但ハ入ラヌダロウ
(栗塚)
併シ人力曳ガ入リマスカラ
(南部)
人力曳ハ商法デハ商業ニナリマセンカラ
(淸岡)
但ハ削テ良カロウ營業人ナラ仕方ガナイ營業人ノ所ヘ以テ來テヤル所ダカラ己レガ營業者トナレバ商業デアルト云テモナイト云テモ仕方ガナイ
(元尾崎)
人力曳ヲ入レルト何ゼ惡ルイカ
(南部)
人力車ハ營業ニシテ居ラヌ
(槇村)
營業シテ居ランデモ已ムヲ得ザル受寄者ト見テハ惡ルイカ
(南部)
人力車ハ人ヲ乘セルモノデ荷物ヲ乘セルモノデナイ
(淸岡)
人力曳モ都合ニ依テ荷物ヲ載セルダロウ
(槇村)
馬車デモ同ジコトダ、營業デアレバ營業デナイトシテモ已ムヲ得ザル受寄者ト看做セバドウシテ不都合カ、受寄者ト看做シテ良カロウ
(大尾崎)
但ハ削ルガ宜イ
(淸岡)
削ルガ良イ營業人ナラ仕樣ガナイ、其レ丈ケ任ヲ持タナケレバナリマセン
(元尾崎)
其レデ宜シイ
(南部)
ソンナラ起案者ヘ問ハナケレバナリマセン
(淸岡)
起案者ハ但ハ入レテナイ
(南部)
入レテアルノデス、此方デ勝手ニ加ヘタノデハアリマセン
(淸岡)
ソンナラ原案ノ通リニシテ但ハ入レヌガ良イ
(元尾崎)
營業人ノ營業ト云フト分ラヌ
(槇村)
營業人ナラ受寄者ト看做シテ宜シイ
(南部)
營業ト云フ字ガ惡ルイカ知レヌ
(淸岡)
原案ノ通リニシテ但ヲ削ロウ
(槇村)
原案ハ惡ルイ
(元尾崎)
修正ノ通リニシテ但ヲ削ル
(槇村)
其レガ宜シイ
(淸岡)
舟車運送ハドウスル
(栗塚)
商業デアレバ責任ガ重イシ、商業デナイトキハ好意ニ出テ居ルカラ尋常ノ寄託ト云フ處カラデハナイカト思フ
(淸岡)
營業人ハ決シテ好意デナイ
(大尾崎)
原案デ宜シイ
(槇村)
縱令營業バカリニシタ處ガ何ニシテ受寄者ト看做サレヌカ
(南部)
其レハ當リ前ノ受寄者ト看做サレル
(槇村)
已ムヲ得ザル受寄者ト同ジコトデハナイカ
(栗塚)
商業ノトキハ契約ノナイモノト見ル
(淸岡)
「營業人」ト云フ字ヲ變ヘルカ「運送人」トスレバ良イ
(南部)
其レガ宜シイ
(栗塚)
此處ハ恰度會社ヲ見タ樣ナモノヲ指スノデス
(南部)
佛蘭西ノ民法ハ水陸運送人ト譯シテアル
(栗塚)
「舟車運送人及ヒ其他水陸運送人ノ營業カ商業ナルトキ」ト致シマシヨウ
(淸岡)
其レデ宜シイ、ソウシテ終リノ「關シテモ」ヲ「付テモ」トスレバ宜シイ
(栗塚)
其レデ宜シイ
(南部)
其レデ宜シイ
本條ハ左ノ如ク決ス
第一項ハ原案ニ決ス第二項ハ左ノ如ク改ム舟車運送人及ヒ其他水陸運送人ノ營業カ商業ナルトキハ自己ニ運送ヲ任カセラレタル荷物ニ付テモ亦同シ
于時午前十一時十五分閉會